説明

選択的エストロゲン受容体モジュレーターと性ステロイド前駆体の組合せの医学的使用

【課題】ヒトを含む温血動物における骨粗鬆症、乳癌、高コレステロール血症、高脂血症またはアテローム性動脈硬化症の医学的治療および/または進行の抑制のための新規方法の提供。
【解決手段】選択的エストロゲン受容体モジュレーター、特に一般式(I)


の構造を有するもの(R,Rは水酸基等、n=2等)、およびデヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、アンドロスト−5−エン−3β,17β-ジオールおよびこれらの化合物へとインビボで変換される化合物からなる群から選択される性ステロイド前駆体の投与、さらに、ビスホスホネート類と選択的エストロゲン受容体モジュレーターおよび/または性ステロイド前駆体の投与、及び医薬組成物、キットの提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトを含む感受性温血動物に対する新規の組合せ療法を使用する、後天性骨粗鬆症、高コレステロール血症、高脂血症またはアテローム性動脈硬化症の可能性を処置または低減する方法に関する。特に、この組合せは、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)の投与及び患者の性ステロイド前駆体のレベルの上昇を含み、この前駆体は、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEA−S)およびアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオール(5−ジオール)からなる群より選択される。本発明はまた、上記組合せの実施のためのキットおよび医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多量の前駆体ステロイド、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEA−S)およびデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)を分泌する副腎を有することは、いくつかの他の霊長類とともにヒトに特有である。硫酸デヒドロエピアンドロステロンおよびデヒドロエピアンドロステロンは、アンドロステンジオン(4−ジオン)に、次いで活性なアンドロゲンおよび/またはエストロゲンに末梢組織において変換される(Labrie et al., In: Important Advances in Oncology, Edited by V.T. de Vita, S. Hellmann, S.A. Rosenberg, J.B. Lippincott, Philadelphia, 193-217, 1985; Labrie, Mol. Cell. Endocrinol., 78: C113-C118, 1991; Labrie, et al., In Signal Transduction in Testicular Cells. Ernst Schering Research Foundation Workshop, Edited by V. Hansson, F.O. Levy, K. Tasken, Springer-Verlag, Berlin-New York (Suppl. 2), pp. 185-218, 1996; Labrie et al., Steroids, 62: 148-158, 1997)。最近の研究において(Labrie et al., J. Clin. Endocrinol. Metab., 82: 2403-2409, 1997)、本発明者らは、20〜80才の男性および女性の両方におけるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、硫酸DHEA(DHEA−S)、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオール(5−ジオール)、5−ジオール−S、5−ジオール脂肪酸エステルおよびアンドロステンジオンの循環レベルの劇的な減衰を記載した。
【0003】
加齢の間に女性における内因性アンドロゲンが顕著に低下するにもかかわらず、閉経後の女性におけるアンドロゲンの使用は、主に、アンドロゲンについての好ましくない脂質プロフィールを示す以前の研究に基く心臓血管疾患の危険性の増加の恐れのために制限されていた。しかし、最近の研究によっては、エストロゲン単独に比較しての、エストロゲンおよびアンドロゲンの組合せ療法の、コレステロール、トリグリセリド、HDL、LDLの血清レベルおよびHDL/LDL比に対する有意な効果は示されていない(Sherwin et al., Am. J. Obstet. Gynecol., 156: 414-419, 1987)。これらの観察に一致して、本発明者らは、優勢にアンドロゲン性の影響を有する化合物であるDHEAが血清脂質プロフィールに対する有害な影響を見かけ上有しないことを示した(Diamond, et al., J. Endocrinol., 150: S43-S50, 1996)。同様に、エストロジオール+テストステロン移植物を用いる治療の6ヶ月後に、エストラジオール単独での処置において、コレステロール、その細画分またはトリグリセリドの濃度の変化は観察されていない(Burger et al., Br Med. J. Clin. Res. Ed., 294: 936-937, 1987)。ヒトにおける研究が、血清DHEA−Sと低密度リポタンパク質との間の逆の相関を示したことに言及しなければならない(Parker et al., Science, 208: 512-514, 1980)。より最近には、低血清テストステロンおよびDHEAおよび増加した内臓脂肪(より高い心臓血管の危険性のパラメーター)の間に相関が見出された(Tchernof et al., Metabolism, 44: 513-519, 1995)。
【0004】
5−ジオールは、還元性17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(17β−HSD)の作用を介してDHEAから生合成される化合物であり、弱いエストロゲンである。これは、ラット前下垂体細胞質ゾルにおけるエストロゲン受容体に対して、17β−エストラジオール(E2)よりも85倍低い親和性を有している(Simard and Labrie, J. Steoid Biochem., 26: 539-546, 1987)。このことはさらにヒト子宮筋層および乳癌組織における同じパラメーターについて得られたデータを確認する(Kreitmann and Bayard, J. Steroid Biochem., 11: 1589-1595; Adams et al., Cancer Res., 41: 4720-4926, 1981; Poulin and Labrie, Cancer Res., 46: 4933-4937, 1986)。しかし、成人女性において見出される血漿レベルの範囲に十分入る濃度で、5−ジオールは、ヒト乳癌ZR−75−1細胞において細胞増殖およびプロゲステロン受容体レベルを増強し(Poulin and Labrie, Cancer Res., 46: 4933-4937, 1986)、MCF−7細胞において52kDa糖タンパク質のエストロゲン依存性合成を増加させる(Adams et al., Cancer Res., 41: 4720-4926, 1981)。
【0005】
上記のように、DHEA、DHEA−Sおよび5−ジオールの血清レベルは年齢とともに低下し、これに対応して末梢標的組織におけるアンドロゲンおよびエストロゲンの形成が劇的に加齢依存的に低下することが知られている。このようなDHEA−SおよびDHEAの分泌の変化の結果、性ステロイドによって刺激される生化学的および細胞性機能が顕著に低下する。その結果、DHEAおよびDHEA−Sは最近、性ステロイドのレベルの低下および/または不均衡に関連する種々の症状の処置に使用されている。
【0006】
男性および女性の両方に影響を及ぼす症状である骨粗鬆症は、アンドロゲンおよびエストロゲンの低下に関連している。エストロゲンは骨分解速度を減少させることが示されており、一方アンドロゲンは骨量を増加させることが示されている。しかし、骨粗鬆症に対して一般に使用されているエストロゲン置換療法は、プロゲスチンを添加して、エストロゲンによって誘発される子宮内膜増殖および子宮内膜癌の危険性を防止すること必要とする。さらに、エストロゲンおよびプロゲスチンの両方は乳癌の危険性を増加させると考えられているので(Bardon et al., J. Clin. Endocrinol. Metab., 60: 692-697, 1985; Colditz et al., N. Engl. J. Med., 332: 1589-1593, 1995)、エストロゲン−プロゲスチン置換療法の使用は、通常短かすぎる期間での、限られた数の女性に許容されている。
【0007】
いくつかの研究が、骨粗鬆症は男性におけるアンドロゲン欠乏の臨床的発現であることを示唆している(Baran et al., Calcif. Tissue Res. 26: 103-106, 1978; Odell and Swerdloff, West J. Med. 124: 446-475, 1976; Smith and Walker, Calif. Tissue Res. 22 (Suppl.): 225-228, 1976)。アンドロゲン療法は、ナンドロロンデカノエートについて観察されるように、閉経後の女性における脊椎骨塩量を増加させることが見出されている(Need et al., Arch. Intern. Med., 149: 57-60, 1989)。ナンドロロンを用いる閉経後の女性の治療は皮質骨塩含量を増加させる(Need et al., Clin. Orthop. 225: 273-278, 1987)。しかし、アンドロゲン性副作用が患者の50%において記録された。現在の療法のほとんどずべては骨損失の減少に制限されており、骨量の増加は同化ステロイドであるナンドロロンの使用について見出されたので、このデータは興味深い。アンドロゲンによる骨形成の同様な刺激が性機能低下雄性において示唆された(Baran et al., Calcif. Tissue Res. 26: 103, 1978)。12ヶ月間DHEAで処置した閉経後の女性における骨形成の刺激がLabrie et al.(J. Clin. Endocrinol. 82: 3498-3505, 1997)に報告されている。
【0008】
DHEA(450mg/kg,b.w.、1週間に3回)は、乳癌を発達させるように遺伝学的に育種されたC3Hマウスにおける乳癌の出現を顕著に遅延させた(Schwartz, Cancer Res. 39: 1129-1132, 1979)。さらに、膀胱癌の発達の危険性が、より低い血清DHEAレベルを有する男性において増加することが見出された(Gordon et al., Cancer Res. 51: 1366-1369, 1991)。
【0009】
米国特許出願第5,550,107号は、感受性温血動物における乳癌および子宮内膜癌の処置法に関し、この方法は外科手術手段(卵巣摘出術)または化学的手段(LHRHアゴニスト(例えば、[D−Trp6,des−Gly−NH210]LHRHエチルアミド)またはアンタゴニストの使用)による卵巣ホルモン分泌の阻害を、組合せ療法の一部として含み得る。抗エストロゲン、アンドロゲン、プロゲスチン、性ステロイド形成(特に、17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼまたはアロマターゼ触媒性の性ステロイド生産)のインヒビター、プロラクチン分泌および成長ホルモン分泌およびACTH分泌のインヒビターが考察されている。その対応出願が国際公開番号WO 90/10462のもとに公開されている。
【0010】
さらに、心臓血管疾患がDHEAおよびDHEA−Sの血清レベルの低下に関連付けられており、DHEAとDHEA−Sの両方がこれらの症状を予防または処置することが示唆されている(Barrett-Connor et al., N. Engl. J. Med. 315: 1519-1524, 1986)。
【0011】
加齢Sprague−DawleyラットにおいてSchwartz(Kent, Geriatrics 37: 157-160, 1982)は、食物摂取に影響を及ぼすことなくDHEAによって体重が600gから550gに減少したことを観察した。Schwartz(Cancer 39: 1129-1132, 1979)は、DHEA(450mg/kg、1週間に3回)を投与したC3Hマウスが有意に少ない体重を獲得し、コントロール動物よりも長生きし、より低い体脂肪を有し、より活動的であったことを観察した。体重の減少は、食欲の喪失も食餌制限もなしに達成された。さらに、DHEAは成熟期に肥満になるように育種された動物における体重獲得を防止し得た(Kent, Geriatrics 37: 157-160, 1982)。
【0012】
痩身ZucherラットへのDHEA投与は、食物摂取の増加にかかわらず体重獲得を減少させた。処置された動物はより小さな脂肪パッドを有していた。総合すると、このことは、DHEAが食物代謝を増加させ、その結果体重獲得および脂肪蓄積を低下させることを示唆する(Svec et al., Proc. 2nd Int. Conf. Cortisol and Anti-Cortisols, Las Vegas, Nevada, USA, p.56 abst., 1997)。
【0013】
肥満症がAvy変異体マウス(Yen et al., Lipids 12: 409-413, 1977)およびZucherラット(Cleary and Zisk, Fed. Proc. 42: 536, 1983)において改善されたことが見出された。DHEA処置C3Hマウスはコントロールより若い外観を有していた(Schwartz, Cancer Res. 39: 1129-1132, 1979)。
【0014】
DHEAはコレステロールを与えたウサギにおけるアテローム性動脈硬化症の発生率を減少させた(Gordon et al., J. Clin. Invest. 82: 712-720, 1988; Arad et al., Arteriosclerosis 9: 159-166, 1989)。さらに、DHEA−Sの高血清濃度は、ヒトにおける心臓血管疾患に起因する死亡を保護することが報告された(Barett-Connor et al., N. Engl. J. Med. 315: 1519-1524, 1986)。DHEAおよびDHEA−Sの循環レベルが心臓血管疾患に起因する死亡率と逆に相関し(Barrett-Connor et al., N. Engl. J. Med. 315: 1519-1524, 1986)、免疫能力の衰弱と並行して低下することが見出された(Thoman and Weigle, Adv. Immunol. 46: 221-222, 1989)。ヒトにおける研究は、胎児血清DHEA−Sレベルと低密度リポタンパク質(LDL)レベルの間の逆の相関を示している(Parker et al., Science 208: 512, 1980)。
【0015】
DHEAの使用ならびにアンドロゲンおよびエストロゲン療法の恩恵はWO 94/16709において考察されている。
【0016】
先行技術において観察された相関は、本明細書に開示する組合せ療法ほど有効であるかまたは所望されない副作用がない処置法または予防法を示唆するとは考えられない。
【発明の開示】
【0017】
従って、本発明の目的は、骨粗鬆症、高コレステロール血症、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、乳癌、子宮内膜癌、子宮癌および卵巣癌の治療のための有用で、副作用の少ない方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、上記疾患に罹患する危険性を減ずるための方法を提供することである。
本発明のその他の目的は、上記方法に適したキットおよび医薬組成物を提供することである。
【0018】
1の態様において、本発明は骨粗鬆症の治療もしくは罹患危険性減少の必要がある患者において、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEA−S)、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオール(5−ジオール)からなる群から選択される性ステロイド前駆体のレベルを上昇させること、さらに該患者へ治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)を組み合わせ療法の一部として投与することを含む、骨粗鬆症の治療または骨粗鬆症の罹患危険性減少のための方法に関する。
【0019】
他の態様において、本発明は高コレステロール血症の治療もしくは罹患危険性減少の必要がある患者において、デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロンおよびアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールからなる群から選択される性ステロイド前駆体のレベルを上昇させること、さらに該患者へ治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを組み合わせ療法の一部として投与することを含む、高コレステロール血症の治療または高コレステロール血症の罹患危険性減少のための方法に関する。
他の態様において、本発明は高脂血症の治療もしくは罹患危険性減少の必要がある患者において、デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロンおよびアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールからなる群から選択される性ステロイド前駆体のレベルを上昇させること、さらに該患者へ治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを組み合わせ療法の一部として投与することを含む、高脂血症の治療または高脂血症の罹患危険性減少のための方法に関する。
【0020】
さらに別の態様において、本発明はアテローム性動脈硬化症の治療もしくは罹患危険性減少の必要がある患者において、デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロンおよびアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールからなる群から選択される性ステロイド前駆体のレベルを上昇させること、さらに該患者へ治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを組み合わせ療法の一部として投与することを含む、アテローム性動脈硬化症の治療またはアテローム性動脈硬化症の罹患危険性減少のための方法に関する。
【0021】
さらに別の態様において、本発明は乳癌の治療もしくは罹患危険性減少の必要がある患者において、デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロンおよびアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールからなる群から選択される性ステロイド前駆体のレベルを上昇させること、さらに該患者へ治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを組み合わせ療法の一部として投与することを含む、乳癌の治療または乳癌の罹患危険性減少のための方法に関する。
【0022】
さらに別の態様において、本発明は子宮内膜癌の治療もしくは罹患危険性減少の必要がある患者において、デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロンおよびアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールからなる群から選択される性ステロイド前駆体のレベルを上昇させること、さらに該患者へ治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを組み合わせ療法の一部として投与することを含む、子宮内膜癌の治療または子宮内膜癌の罹患危険性減少のための方法に関する。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は子宮癌の治療もしくは罹患危険性減少の必要がある患者において、デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロンおよびアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールからなる群から選択される性ステロイド前駆体のレベルを上昇させること、さらに該患者へ治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを組み合わせ療法の一部として投与することを含む、子宮癌の治療または子宮癌の罹患危険性減少のための方法に関する。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は卵巣癌の治療もしくは罹患危険性減少の必要がある患者において、デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロンおよびアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールからなる群から選択される性ステロイド前駆体のレベルを上昇させること、さらに該患者へ治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを組み合わせ療法の一部として投与することを含む、卵巣癌の治療または卵巣癌の罹患危険性減少のための方法に関する。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、少なくとも1のデヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールおよびこれらの前駆体へとインビボで変換される全てのプロドラッグからなる群から選択される性ステロイド前駆体の治療有効量を含有する第1容器;およびさらに少なくとも1の選択的エストロゲン受容体モジュレーターの治療有効量を含有する第2容器を含む、キットを提供する。
【0026】
さらに別の態様において、本発明はa)医薬上許容される賦形剤、希釈剤または担体;b)少なくとも1のデヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールおよびこれらの前駆体へとインビボで変換される全てのプロドラッグからなる群から選択される、性ステロイド前駆体の治療有効量および、c)少なくとも1の選択的エストロゲン受容体モジュレーターの治療有効量を含む医薬組成物を提供する。
【0027】
さらに別の態様において、本発明は乳癌に罹患する危険性を減少する必要のある患者に対して、予防有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを投与することを含む、乳癌に罹患する危険性を減少する方法を提供する。
【0028】
乳癌に罹患する可能性を減少する方法の1態様において、SERMの投与を性ステロイド前駆体の投与と組み合わせて行うのが望ましい。しかしながら、本発明にはSERM単独で投与する場合も含まれ、この態様によって図1および図2へ示されているように、性ステロイド前駆体を投与しなくとも有意な予防効果が示される。この目的に対して好ましいSERMは本明細書中で他に使用するとして説明されるものと同じである。好ましい用量および投与方法もまた、同じである。
【0029】
本明細書において、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)は、直接またはその活性な代謝物が、エストロゲン受容体アンタゴニスト(抗エストロゲン)として乳房組織においては機能するが、エストロゲン作用のもしくはエストロゲン様作用を、骨組織および血清コレステロールレベル(即ち血清コレステロールの減少)においては示す化合物である。ヒトおよびラットの乳房組織に対してインビトロでエストロゲン受容体アンタゴニストとして機能する(特に、化合物がヒト乳癌細胞上で抗エストロゲンとして作用する)非ステロイド性化合物は、SERMとしての機能を示すものと予測される。反対に、ステロイド性の抗エストロゲン類は、SERMとしての作用を示さないものと考えられる、というのは、これらの化合物は血清コレステロールレベルに益する効果を何ら示さないからである。我々は非ステロイド性抗エストロゲン類を試験し、EM−800、EM01538、ラロキシフェン、タモキシフェンおよびドロロキシフェンがSERMとして機能することを見出した。ステロイド性抗エストロゲンであるICI182,780も試験したが、SERMとしての機能は無かった。本発明においてSERM類はこの化合物が抗エストロゲンとして使用される際に採用される用量として当業者に知られる用量と同じ用量を投与すればよい。
【0030】
我々は、SERM類の血清コレステロールに対する有益な効果と、骨および血清脂質に対する有益なエストロゲン作用もしくはエストロゲン様作用の相関関係に気づいた。我々の研究により、SERMが骨量、コレステロールおよびトリグリセライドレベルを含む全てのパラメーターに対して有益に作用することが示された。本発明を理論により限定するつもりはないが、SERMの多くのうちの特に1または2つの炭素原子で連結されている二つの芳香族環を含有するものは、分子のこの部分の構造によって、エストロゲン受容体も非常に良く認識されると考えられる。好ましいSERMは側鎖を有しているものであり、これは乳房組織において選択的なアンタゴニスト作用を示し、他の組織においては有意なアンタゴニスト性を示さない。即ち、SERM類は好ましくは乳房中で抗エストロゲンとして働き、一方で驚くべきことに、また好ましくは、エストロゲン(またはエストロゲン様活性を示すもの)として骨および血液中にて作用し、血液中では脂質およびコレステロール濃度について、好ましい作用を示す。コレステロールおよび脂質に対する好ましい作用は、コレステロールおよび脂質の異常レベルにより悪影響を受けるアテローム性動脈硬化症に対する好ましい作用へと翻訳される。
【0031】
本発明により治療される全ての疾患に対して、アンドロゲンは好ましい反応をする。アンドロゲンそのものを用いずに、出願人らはDHEA、DHEA−S、5−ジオールまたはこれらのうちのいずれかの性ステロイド前駆体へと変換されるプロドラッグを用いた。インビボにおいてDHEA−SはDHEAへと変換され、これが次いで5−ジオールへと変換される。これらのうちのいずれか1に対して好ましい反応を示す組織は、別の化合物に対しても好ましく反応する可能性が高い。活性代謝物のプロドラッグ形は当業者に良く知られている:H. Bundgaard "Design and Application of Prodrugs" (A Textbook of Drug Design and Development中、H. BundgaardとP. Krogsgaard-Larsen編集; Harwook Academic Publishers GmfH, Chur: Switzerland, 1991)を参照されたい。本文献の内容は引用によって本明細書に含まれる。特に154-155頁には、活性代謝物の様々な官能基および、インビボでこれらの官能基へと変換される適当な対応プロドラッグ基が開示されている。本発明において患者の性ステロイド前駆体のレベルを上昇させるには、該前駆体を投与するか、あるいは該前駆体のプロドラッグを投与すれば良い。アンドロゲンではなく前駆体を用いることによって、標的ではない組織においける好ましくないアンドロゲン性活性を減少させることができる。組織がDHEAなどの前駆体をアンドロゲン類に変換させるのは、天然のそして非常に調節されたしくみによる。アンドロゲンの多くの部分は局所の抹消組織において産生され、その程度は各組織により異なる。
【0032】
本発明によって治療される癌は、エストロゲン活性に対して不利に応答する。一方、骨粗鬆症、高コレステロール血症、高脂結晶およびアテローム性動脈硬化症はエストロゲンもしくは硫酸エストロゲンに対して有利に応答する。本発明によってSERM類を用いることにより、特定の他の組織において好ましくない作用を惹起することなく標的組織に対して所望の作用が与えられる。例えば、SERMは骨においては(または脂質やコレステロールに対しては)好ましく作用する一方、乳房においての好ましくないエストロゲン性作用を生じない。
【0033】
即ち、前駆体およびSERMの両方は、標的組織において好ましく作用し、一方で特定の他の組織における好ましくない作用を最小化する。さらに、この2つを本発明により共に用いることにより、顕著な相乗作用もまた得られる。例えば、エストロゲン類およびアンドロゲン類は骨粗鬆症に対して有益な作用を、別の機構により及ぼす(エストロゲンは骨の再吸収を減少し、アンドロゲンは骨形成に寄与する)。本発明の組み合わせは骨に対してSERMの有益なエストロゲンもしくはエストロゲン様作用を及ぼし、そして骨内での局所的な前駆体からアンドロゲンへの変換によるアンドロゲンもまた、有益な作用を及ぼす。前駆体はエストロゲンもまた供するものであると考えられている。脂質またはコレステロールの制御についても、同じことが言え、アテローム性動脈硬化症の治療もしくは予防に有用である。同様の相乗効果は、乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌または子宮癌に対しても提供され、SERMが好ましい抗エストロゲン作用を及ぼし、前駆体が好ましいアンドロゲン作用を示す(付随して生じる前駆体のエストロゲンへの変換は、抗エストロゲンによって緩和される)。好ましくない作用もまた、本発明で採用されている組み合わせによって緩和される。本出願において議論されている全ての疾患に対して作用させる際、前駆体により(本発明に基づき前駆体をアンドロゲン作用の増強に用いた場合)生成するエストロゲン類の乳房組織に対する他のいかなる作用も乳房組織中のSERMの抗エストロゲン活性により緩和される。
【0034】
いくつかの態様においては、プロゲスチン類を更なるアンドロゲン作用のために添加してもよい。プロゲスチン類は低い容量で用いられ、アンドロゲン受容体以外の受容体、例えばグルココルチコイド受容体に対して不利益な作用を示さないことが当業者に知られている。プロゲスチン類はまた、比較的好ましくないアンドロゲン性副作用(女性患者の顔への発毛など)が少ない。
【0035】
本明細書にて記載する好ましいSERM類は(1)本発明により影響を受けるとされる全ての疾病;(2)治療および予防の両方への適用;および(3)好ましい医薬組成物およびキットに関与する。
【0036】
1の態様において、前駆体はDHEAである。
別の態様において、前駆体はDHEA−Sである。
別の態様において、前駆体は5−ジオールである。
【0037】
特定の疾患の治療またはその発症の危険性を減ずる必要のある患者とは、該疾患に罹患していると診断が下されたか、または該疾患に罹患しやすいと予測される患者である。
【0038】
特に断らない限り、本発明の活性化合物の投与量(濃度および投与方法)についての好ましい用量は、治療および予防目的のいずれの場合でも同じとしてよい。明細書中に記載されている各活性成分の用量は、治療する疾患(もしくは、発症の危険性を減少させる疾患)にかかわらず同じとしてよい。
【0039】
特に断わっている場合と、文脈から明らかな場合を除き、本明細書において用量は活性成分の重量で表記し、薬剤の賦形剤、希釈剤、担体または他の成分を含まない。ただし、かかる追加成分は好ましくは、本願実施例に示されるように含有されている。本発明において、通常製薬業界で用いられているいかなる投与形態(カプセル、錠剤、注射剤など)を用いてもよい。「賦形剤」、「希釈剤」、「担体」の語は、製薬業界で常用される製剤中に通常活性成分と共に含まれる不活性成分である。例えば、典型的なカプセル、ピル、腸溶性被覆剤、固体または液体希釈剤もしくは賦形剤、香料、保存料などを含んでいてもよい。
【0040】
本明細書で議論された治療のいずれかにおいて用いられる活性成分は全て、1または複数の他の活性成分を含有する医薬組成物として処方してもよい。または、各活性成分を個別ではあるが、十分に近い時間に投与して、患者において各活性成分の血中濃度が同時に上昇するか、または患者が各活性成分(または戦略)の利益を同時に享有できるようにしてもよい。本発明の好ましい態様において、例えば1または複数の活性成分を単一の医薬組成物として処方してもよい。本発明の他の態様においては、少なくとも2つの容器を含み、含有される活性成分に関して、少なくとも1の容器の内容物の、全体あるいは一部が、これとは別の少なくとも1の容器の内容物と相違するキットが提供される。
【0041】
本明細書で議論する組み合わせ療法には、活性成分(の組み合わせ)の、問題となっている疾患の治療(または危険減少)のための医薬の製造のための使用であって、該治療または予防に、本発明の組み合わせに用いられる他の活性成分が使用される場合も含まれる。例えば、ある態様として本発明は、DHEA、DHEA−S、5−ジオールおよびこれらの性ステロイド前駆体へとインビボで変換されるプロドラッグからなる群から選択される性ステロイド前駆体と組み合わせて、この組み合わせ療法が有用であると考えられる疾患(即ち乳癌、子宮内膜癌、子宮癌、卵巣癌、骨粗鬆症、高コレステロール血症、高脂血症およびアテローム性動脈硬化症)の治療に用いるための医薬を製造するための、SERMの使用を提供する。他の態様においては、本発明はSERMと組み合わせて上記と同じ疾患の治療のために使用するための医薬を製造するための、、DHEA、DHEA−S、5−ジオールおよびこれらの性ステロイド前駆体へとインビボで変換されるプロドラッグからなる群から選択される性ステロイド前駆体の使用を提供する。
【0042】
本発明の1の態様において、DHEAは前駆体として用いられない。他の態様において、EM−800はSERMとして用いられない。別の態様において、DHEAおよびEM−800の組み合わせは用いられない。
ある好ましい態様において、DHEAはEM−1538と組み合わせて用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
エストロゲンが乳房上皮細胞の増殖を刺激することはよく知られており、細胞増殖自体は新形成を生じ得るランダムな遺伝子の誤りを蓄積させることによって癌の危険性を増加させると考えられている(Preston Martin et al., Cancer. Res. 50: 7415-21, 1990)。この概念に基いて、抗エストロゲンが、エストロゲンによって刺激される細胞分裂の速度を低下させる目的で乳癌の防止のために導入されている。
【0044】
10月齢後の雌性Sprague−Dawleyラットにおいて見出された卵巣周期の消失は、血清エストロゲンおよびプロラクチンのレベルの上昇ならびに血清アンドロゲンおよびプロゲステロンの濃度の低下を伴う(Lu et al., 61st Annual Meeting of the Endocrine Society 106 (abst. #134), 1979; Tang et al., Biol. Reprod. 31: 399-413, 1984; Russo et al., Monographs on Pathology of Laboratory Animals: Integument and Mammary Glands 252-266, 1989; Sortino and Wise, Endocrinology 124: 90-96, 1989; Cardy, Vet. Pathol. 28: 139-145, 1991)。加齢雌性ラットにおいて自発的に生じるこれらのホルモンの変化は、腺房/肺胞組織の多病巣性増殖および分泌活性の増加ならびに乳腺管拡張および嚢の形成に関連する(Boorman et al., 433, 1990; Cardy, Vet. Pathol. 28: 139-145, 1991)。ラット乳腺の過形成的および新形成的変化が、エストロゲンおよびプロラクチンのレベルの上昇をしばしばを伴うことに言及すべきである(Meites, J. Neural. Transm. 48: 25-42, 1980)。本発明のSERMであるEM−800での処置は、乳腺の萎縮を誘発し、これは小葉構造のサイズおよび数の減少によって特徴付けられ、分泌活性の証拠はない。このことは乳腺におけるEM−800の強力な抗エストロゲン活性を示す(Luo et al. Endocrinology 138: 4435-4444, 1997)。
【0045】
本発明の性ステロイド前駆体であるDHEAでの処置は、血清DHEAおよび5−ジオールの上昇を導き、血清4−ジオン、テストステロン、ジヒドロテストステロンおよびエストラジオールのレベルは中程度にのみ上昇するか、しばしば変化しないままである。このことは末梢組織におけるこの前駆体ステロイドの細胞内生体内変化を確認する(Labrie et al., Mol. Cell. Endocrinol. 78: C113-C118, 1991)。しかし、経口投与したDHEAの血清アンドロゲン(例えば、テストステロンおよびジヒドロテストステロン)に対する刺激効果は、血清エストロゲンに対する効果よりも大きい。このことは、DHEAがこれらの動物において優勢にアンドロゲンに変換されることを示唆する。この観察は、DHEAからのアンドロゲンの形成がDHEAのエストロゲンへの変換よりも重要な経路である女性において得られたデータと一致する(Morales et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 78: 1360-1367, 1994; Labrie et al., Ann. N. Y. Acad. Sci. 774: 16-28, 1995; Labrie et al., Steroids 62: 148-158, 1997)。
【0046】
上記の、乳腺に対するDHEAの、乳腺萎縮を生じる強力な抗エストロゲン活性および優勢なアンドロゲン性効果についての知識をもって、SERMおよび性ステロイド前駆体の組合せで処置した動物において見られる組織形態学的変化は、ラット乳腺におけるDHEAの無競争のアンドロゲン作用によって最もよく説明される。
【0047】
最も重要なことに、アンドロゲンがインビトロにおいてZR−75−1ヒト乳癌細胞の増殖に対する直接的な抗増殖活性を示すこと、およびアンドロゲンのこのような阻害効果が抗エストロゲンの効果に相加的であることが観察された(Poulin and Labrie, Cancer Res. 46: 4933-4937, 1986; Poulin et al., Breast Cancer Res. Treat. 12: 213-225, 1988)。同様な阻害効果が、ヌードマウスにおけるZR−75−1異種移植片についてインビボにおいて観察された(Dauvois et al., Cancer Res. 51: 3131-3135, 1991)。アンドロゲンも、ラットにおけるDMBA誘発性乳癌の成長を阻害することが示され、この阻害は純粋な抗アンドロゲンであるフルタミドの同時投与によって逆転された(Dauvois et al., Breast Cancer Res. Treat. 14: 299-306, 1989)。総合すると、本データは乳癌に対するDHEAの阻害作用へのアンドロゲン受容体の関与を示す。
【0048】
抗エストロゲンおよび性ステロイド前駆体は異なる機構を介して乳癌に対する阻害効果を発揮するので、図1および2に示すように、本発明はSERM(EM−800)と性ステロイド前駆体(DHEA)の組合せが、単独で使用したそれぞれの化合物よりも強力な、DMBA誘発性ラット乳癌の発達に対する阻害効果を発揮することを示す。実際、DHEAおよびEM−800の両方を投与した動物においては実験の終了時にDMBA誘発性腫瘍は見出されなかった。
【0049】
本発明は、性ステロイド前駆体(DHEA)とSERM(EM−800)の組合せが、両方の化合物を組合せた場合に、尿ヒドロキシプロリンおよびカルシウム排出のさらなる減少によって示されるように、骨形成に対するDHEAの刺激効果を維持し、骨代謝回転および骨吸収に対するSERM(EM−800)単独の阻害効果を増強したことを記載する。
【0050】
本発明者らは、DHEAが雌性ラット(Luo et al., Endocrinology 138: 4435-4444, 1997)および閉経後の女性(Labrie et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 82: 3498-3505, 1997)の両方において骨に対する有益な効果を有することを示した。インタクトな雌性ラットにおいて、DHEAでの処置は、全骨格、腰椎および大腿の骨塩量(bone mineral density)(BMD)を増加させる(Luo et al., Endocrinology 138: 4435-4444, 1997)。
【0051】
一方、EM−800での処置はインタクトな動物におけるBMDに対する有意な効果を有しなかったが、強力な刺激効果が卵巣摘出ラットにおいて観察された(Martel et al., 未発表データ)。EM−800は卵巣摘出ラットにおいて全骨格、腰椎および大腿のBMDに対する刺激効果を示すので、インタクトな動物においてEM−800の有意な刺激効果がないことは、インタクトな雌性ラット中に存在する性ステロイドがBMDに対する最大効果を発揮するという事実に起因する可能性がある(Luo et al., Endocrinology 138: 4435-4444, 1997)。同様に、既にDHEAを投与された卵巣摘出ラットにおけるEM−800の有意な効果がないことは、おそらく外因性DHEAから骨細胞において合成されたアンドロゲン(およびおそらくエストロゲン)によって発揮される最大刺激効果に起因する。
【0052】
エストロゲンは血清コレステロールを低下させるが、血清トリグリセリドレベルは増加させるかまたはそれに対して効果を有しないことが知られている(Love et al., Ann. Intern. Med. 115: 860-864, 1991; Walsh et al., New Engl. J. Med. 325: 1196-1204, 1991; Barrett-Connor, Am. J. Med. 95 (Suppl. 5A): 40S-43S, 1993; Russell et al., Atherosclerosis 100: 113-122, 1993; Black et al., J. Clin. Invest. 93: 63-69, 1994; Dipippo et al., Endocrinology 136: 1020-1033, 1995; Ke et al., Endocrinology 136: 2435-2441, 1995)。図3は、EM−800がラットにおいて低コレステロール効果および低トリグリセリド効果の両方を有することを示し、従って、タモキシフェン(Bruning et al., Br. J. Cancer 58: 497-499, 1988; Love et al., J. Natl. Cancer Inst. 82: 1327-1332, 1990; Dipippo et al., Endocrinology 136: 1020-1033, 1995; Ke et al., Endocrinology 136: 2435-2441, 1995)、ドロロキシフェン(Ke et al., Endocrinology 136: 2435-2441, 1995)およびラロキシフェン(Black et al., J. Clin. Invest. 93: 63-69, 1994)のような他のSERMとは見かけ上異なる血清脂質プロフィールに対する特有の作用を示す。DHEAとEM−800の組合せはEM−800の低コレステロール効果および低トリグリセリド効果を維持した。このことはこの組合せが血清脂質に対する有益な効果を示し得ることを示唆する。
【0053】
血清脂質プロフィールはラットとヒトの間で顕著に異なることに言及するべきである。しかし、エストロゲン受容体媒介性機構がエストロゲンおよび抗エストロゲンの低コレステロール効果に関与しているので(Lundeen et al., Endocrinology 138: 1552-1558, 1997)、ラットは依然としてヒトにおけるエストロゲンおよび「抗エストロゲン」のコレステロール低下効果研究用の有用なモデルである。
【0054】
すなわち、上記のデータは、SERM(EM−800)および性ステロイド前駆体(DHEA)の組合せの、DMBAによって誘発される乳癌の発達に対する効果、ならびに、この組合せの、骨量および血清脂質に対する保護効果を明らかに示す。このデータは、脂質プロフィールを改善する一方で骨粗鬆症を処置および防止するこの組合せのさらなる有益な効果を示唆する。
【0055】
本発明者らは、また、ヌードマウスにおけるヒトZR−75−1乳癌異種移植片の増殖に対する新規抗エストロゲン(EM−800)の阻害作用と性ステロイド前駆体(DHEA)の阻害作用との起こり得る相互作用をこの2つの薬物を組み合わせて投与することにより研究した。図4および図5は、DHEAは、単独で、用いた投与量では、腫瘍増殖の50〜80%の阻害を引き起こすが、低投与量の抗エストロゲンで得られた腫瘍増殖のほぼ完全な阻害は、DHEAの影響を受けなかったことを示している。
【0056】
骨ミネラル密度(BMD)測定の限界はよく知られている。例えば、BMD測定は、ステロイド系抗エストロゲンICI 182780で処置したラットにおいては全く変化を示さなかった(Wakeling, Breast Cancer Res. Treat. 25: 1-9, 1993)が、組織体型測定により阻害の変化が見られた(Gallagher et al., Endocrinology 133: 2787-2791, 1993)。同様の差異がタモキシフェン(Tamoxifen)について報告された(Jordan et al., Breast Cancer Res. Treat. 10: 31-35, 1987;Sibonga et al., Breast Cancer Res. Treatm. 41: 71-79, 1996)。
【0057】
骨ミネラル密度の低下は、骨強度の低下に関与する唯一の異常性ではないことが指摘されている(Guidelines for preclinical and clinical evaluation of agents used in the prevention or treatment of postmenopausal osteoporosis, Division of Metabolism and Endocrine Drug Products, FDA, 1994年5月)。かくして、種々の化合物および処置により誘発される骨代謝の生化学的パラメーターの変化を、それらの作用のより十分な知識を得るために分析することが重要である。
【0058】
DHEAとEM−800との組合せが骨代謝の重要な生化学的パラメーターに対して意外な有益な作用を及ぼしたことを指摘することが特に重要である。実際、DHEA単独では、骨吸収のマーカーである尿ヒドロキシプロリン/クレアチニン比に影響を及ぼさない。さらにまた、DHEAの、毎日の尿カルシウムまたはリン排出に対する作用は検出されなかった(Luo et al., Endocrinology 138; 4435-4444, 1997)。他方、EM−800は、尿ヒドロキシプロリン/クレアチニン比を48%低下させるが、DHEAと同様に、EM−800の尿カルシウムまたはリン排出に対する作用はみられなかった。さらにまた、EM−800は、骨形成のマーカーである血清アルカリホスファターゼ活性に対して影響を及ぼさなかったが、DHEAは、該パラメーターの値を約75%低下させた(Luo et al., Endocrinology 138: 4435-4444, 1997)。
【0059】
DHEAとEM−800との組合せの意外な作用の一は、骨吸収のマーカーである尿ヒドロキシプロリン/クレアチニン比に関与しており、これは、DHEAとEM−800とを組み合わせた場合には69%低下し、この値は、EM−800単独により得られる48%阻害とは統計学的に異なる(p<0.01)が、DHEA単独による影響は全く示されなかった。かくして、EM−800にDHEAを添加すると骨吸収に対するEM−800の阻害作用が50%上昇した。最も重要なことには、EM−800にDHEAを添加することによるもう1つの意外な作用は、尿カルシウムが約84%低下し(100gあたり24時間につき23.17±1.55から3.71±0.75μmolへ(p<0.01))、尿リンが55%低下した(100gあたり24時間につき132.72±6.08から59.06±4.76μmolへ(p<0.01))(各々、Luo et al., Endocrinology 138: 4435-4444, 1997)。
【0060】
【表1】

【0061】
血清コレステロールに対するEM−800の有効な阻害作用がDHEAとの同時処置により妨げられない(Luo et al., Endocrinology 138: 4435-4444, 1997)ことに注目するのは重要なことである。
【0062】
ラロキシフェン(Raloxifene)および同様の化合物は、骨損失を防止し、血清コレステロール(例えば、エストロゲン)を減少させるが、ラロキシフェンをBMDについてプレマリン(Premarin)と比較すると、ラロキシフェンのBMDに対する作用は、プレマリンの作用よりもあまり有効ではなかったことが言及されている(Minutes of the Endocrinology and Metabolism Drugs Advisory Committee, FDA Thursday, Meeting #68, 1997年11月20日)。
【0063】
ラットにおいて得られた本結果は、明らかに、EM−800、ラロキシフェンなどの選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)の単独使用にあっては欠けている有益な効果をDHEAが与えることができることを示している。SERMは、骨吸収の阻害に限定された効果を与えるが、DHEA、5−ジオール、DHEA−5の添加は、骨形成を刺激する(SERMまたはエストロゲンにあっては見出されなかった作用)と考えられ、さらに、EM−800を用いて得られた作用以上に骨吸収を低下させる。
【0064】
重要なことには、卵巣摘出ラットをEM−800およびDHEAの組合せで12ヶ月間処置すると、骨体型測定に対する有益な効果が得られる。小柱骨(trabecular bone)体積は、骨強度について、および骨折の予防に、特に重要である。かくして、上記研究において、脛骨の小柱骨体積は、DHEA単独にあっては卵巣摘出ラットにおいて4.1±0.7%から11.9±0.6%に増加した(p<0.01)が、DHEAにEM−800を添加すると、小柱骨体積が、無傷対照において見出された値と同様の値である14.7±1.4%にさらに増加した(図6)。
【0065】
DHEAで処置した結果、卵巣摘出対照と比較して卵巣摘出ラットにおける小柱骨数が0.57±0.08個/mmの値から137%増加した。かくして、DHEAの刺激作用は、1.27±0.1個/mmに達したが、EM−800およびDHEAによる同時処置により、小柱骨数は、DHEA単独により得られた小柱骨数と比較してさらに28%増加した(p<0.01)(図7)。同様に、DHEAにEM−800を添加した結果、小柱骨分離がDHEA単独で得られた小柱骨分離と比較してさらに15%低下し(p<0.05)、かくして、無傷対照において見られた値とは異ならない値となった。
【0066】
図6および図7にて示された数値データの補足として、図8は、卵巣摘出対照(B)と比較して、処置した卵巣摘出動物(C)におけるDHEAにより誘発された近位脛骨骨幹線の小柱骨体積の増加、およびDHEAにフルタミド(Flutamide)を添加して処置した後のDHEAの刺激作用の部分阻害(D)を例示している。他方、DHEAをEM−800と組み合わせて投与することにより卵巣摘出誘発性オステオペニアが完全に予防され(E)、小柱骨体積は、無傷対照において見られた該体積に匹敵した(A)。
【0067】
女性の月経閉止期にみられる骨損失は、骨形成の二次的増加により完全には相殺されない骨吸収率の増加に関与していると考えられる。実際、骨形成および骨吸収の両方のパラメーターは、骨粗鬆症において増大し、骨吸収および形成は、共に、エストロゲン置換療法により阻害される。かくして、骨形成に対するエストロゲン置換の阻害作用は、骨吸収の一次エストロゲン誘発性減少が骨形成の減少を引き起こすような骨吸収および骨形成間で連結したメカニズムにより引き起こされると考えられる(Parfitt, Calcified Tissue International 36 Suppl. 1: S37-S45, 1984)。
【0068】
海綿骨強度および二次的な骨折抵抗性は、海綿骨の全量に依存するだけでなく、小柱の数、大きさおよび分布により決定される小柱微小構造にも依存する。。月経閉止後の女性の卵巣機能の喪失は、全小柱骨体積の有意な減少を伴い(Melsen et al., Acta Pathologica & Microbiologica Scandinavia 86: 70-81, 1978;Vakamatsou et al., Calcified Tissue International 37: 594-597, 1985)、主に、小柱の数の減少および幅の減少と関係している(Weinstein and Hutson, Bone 8: 137-142, 1987)。
【0069】
本研究において、DHEAのアンドロゲン刺激作用は、研究されたほとんど全ての骨組織体型測定パラメーターについて観察された。かくして、DHEAは、小柱骨体積および小柱数の有意な増加を引き起こすが、一方、小柱間面積は減少した。
【0070】
本明細書で検討するいずれもの適応症について本発明の組合せ治療を容易にするために、本発明は、同時投与用の単一組成物中にSERMまたはビスホスホネート化合物および性ステロイド前駆体(DHEA、DHEA−S、5−ジオール)の両方を含む医薬組成物を意図する。該組成物は、経口投与、皮下注射、筋肉注射または経皮投与を包含するがこれらに限定されるものではない伝統的な方法での投与に適している。他の実施態様において、分離容器中または1個の容器中に1つまたはそれ以上のSERMまたはビスホスホネートおよび性ステロイド前駆体を含むキットが提供される。該キットは、錠剤、カプセル剤、シロップ剤などの経口投与用の適当な物質、および軟膏剤、ローション剤、ゲル剤、クリーム剤、徐放性パッチ剤などの経皮投与用の適当な物質を含んでよい。
【0071】
本出願人は、SERMおよび性ステロイド前駆体の投与が骨粗鬆症、乳癌、高コレステロール血症、高脂血症またはアテローム性動脈硬化症の治療および/またはその発生の予防における利用能を有すると考えている。本発明の有効成分(SERMまたは前駆体またはビスホスホネートまたはその他)は、種々の方法で製剤化され、投与される。
【0072】
経皮または経粘膜用の有効成分は、好ましくは、医薬組成物の全重量に対する0.5重量%〜20重量%で、より好ましくは、2〜10%で存在している。DHEAまたは5−ジオールは、経皮投与用には少なくとも7%の濃度であるべきである。別法として、有効成分は、当該技術分野で知られている構造、例えば、EP 0279982 に記載されているような構造を有する経皮パッチ中に含まれてもよい。
【0073】
軟膏剤、ローション剤、ゲル剤またはクリーム剤などとして製剤化する場合、活性化合物を、ヒトの皮膚または粘膜に適しており、かつ、皮膚または粘膜を介する化合物の経皮浸透を増強する適当な担体と混合する。適当な担体は、当該技術分野で知られており、Klucel HFおよびGlaxal基剤が挙げられるがこれらに限定されるものではない。市販品もあり、例えば、グラクサル・カナダ・リミテッド・カンパニー(Glaxal Canada Limited Company)から入手可能なGlaxal基剤がある。他の適当なビヒクルは、Koller and Buri, S.T.P. Pharma 3(2), 115-124, 1987 にて見つけることができる。該担体は、好ましくは、有効成分が有効成分の使用濃度で室温で可溶性であるものである。該担体は、皮膚または粘膜の局部を介して所望の臨床効果を生じるであろう血流中に前駆体を浸透させるのに十分な時間ランニングまたは蒸発させずに当該組成物を塗布した皮膚または粘膜の局部上に阻害剤を維持するのに充分な粘性を有する。該担体は、典型的には、医薬上許容される溶媒および増粘剤などのいくつかの成分の混合物である。水とエタノールのようなアルコールなどの有機溶媒と無機溶媒との混合液は、親水性および親油性の溶解性を補助することができる。
【0074】
好ましい性ステロイド前駆体は、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)(米国イリノイ州シカゴのジオシンス・インコーポレイテッド(Diosynth Inc.)から入手可能)、そのプロドラッグ(米国ニューハンプシャー州ウィルトンのステラロイズ(Steraloids)から入手可能)、5−アンドロステン−3β,17β−ジオールならびにそのプロドラッグであるEM−1304およびEM−01474−D(米国ニューハンプシャー州ウィルトンのステラロイズから入手可能)である。
【0075】
EM−1304
【化1】

【0076】
EM−01474−D
【化2】

【0077】
性ステロイド前駆体は、2.0〜10%のカプリル酸−カプリン酸トリグリセリド(Neobee M−5);10〜20%のヘキシレングリコール;2.0〜10%のジエチレングリコールモノメチルエーテル(Transutol);2.0〜10%のCyclomethicone(Dow Corning 345);1.0〜2%のベンジルアルコールおよび1.0〜5.0%のヒドロキシプロピルセルロース(Klucel HF)を含有するアルコール性ゲル剤として製剤化されるのが好ましい。
【0078】
該担体は、また、軟膏剤およびローション剤にて通常用いられており、化粧品および医薬の分野でよく知られている種々の添加剤を含んでもよい。例えば、フレグランス、抗酸化剤、香料、ゲル化剤、カルボキシメチルセルロースのような増粘剤、界面活性剤、安定剤、皮膚軟化剤、着色料および他の同様の薬剤が存在してもよい。全身性疾患の処置に用いる場合、有効成分の過剰な局所濃度および性ステロイド前駆体のアンドロゲン代謝により起こり得る皮膚および皮脂腺の過剰な刺激を回避するために皮膚上の適用部位を変える。
【0079】
経口投与用医薬組成物において、DHEAまたは他の前駆体は、好ましくは、該組成物の全重量に対して5〜98重量%、さらに好ましくは、50〜98%、特に、80〜98%の濃度で存在する。DHEAのような単一の前駆体が唯一の有効成分であってもよく、また、別法として、複数の前駆体および/またはそれらのアナログを用いてもよい(例えば、DHEA、DHEA−S、5−ジオールの組合せ、インビボでDHEA、DHEA−Sまたは5−ジオールに転換される2種類またはそれ以上の化合物の組合せ、またはDHEAまたは5−ジオールとインビボでDHEAもしくは5−ジオールに転換される1種類またはそれ以上のそのアナログとの組合せなど)。DHEAの血中レベルは、適当な用量の最終基準であり、吸収および代謝における個々の変化を考慮に入れる。
【0080】
好ましくは、所属臨床医は、特に、治療開始時に、個々の患者の全応答およびDHEAの血清レベルをモニターし(上記した好ましい血清濃度と比較)、処置に対する患者の全応答をモニターし、所定の患者の処置に対する代謝または反応が典型的ではない場合には必要に応じて用量を調節する。
【0081】
本発明の処置は、無期限の継続に適している。DHEAおよび/または5−ジオール処置は、月経閉止期前の女性(1リットル当たり4〜10μgの血清濃度)または若い成人男性(1リットル当たり4〜10μgの血清濃度)において自然に生じるDHEAレベルと同様の範囲内のDHEAレベルを簡単に維持すると考えられる。
【0082】
SERM化合物またはビスホスホネートおよび/または性ステロイド前駆体は、また、経口経路によって投与することができ、慣用的な医薬賦形剤、例えば、スプレイ乾燥ラクトース、微結晶性セルロース、およびステアリン酸マグネシウムを用いて経口投与用錠剤またはカプセル剤に製剤化できる。
【0083】
有効成分は、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウムまたはリン酸二カルシウムなどの固形の粉状担体物質、およびポリビニルピロリドン、ゼラチンまたはセルロース誘導体などの結合剤と混合することにより、可能であれば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、「カルボワックス」(Carbowax)またはポリエチレングリコールなどの滑沢剤もまた添加することにより錠剤または糖衣丸コアに加工することができる。もちろん、経口投与剤形の場合、味を改善する物質を添加することもできる。
【0084】
さらなる剤形として、プラグカプセル剤、例えば、ハードゼラチンのプラグカプセル剤、および軟化剤または可塑剤、例えば、グリセリンを含む密閉型ソフトゼラチンカプセルを用いることができる。該プラグカプセル剤は、有効成分を、好ましくは、顆粒剤の剤形で、例えば、充填剤、例えば、ラクトース、サッカロース、マンニトール、デンプン、例えば、ポテトデンプンまたはアミロペクチン、セルロース誘導体または高分散ケイ酸との混合物で含有する。ソフトゼラチンカプセル剤において、活性物質は、好ましくは、植物油または液体ポリエチレングリコールなどの適当な液体に溶解または懸濁する。
【0085】
ローション剤、軟膏剤、ゲル剤またはクリーム剤は、過剰量がはっきりと目視できないように皮膚に完全にすり込み、該皮膚は、経皮浸透の大部分が生じるまで、好ましくは、少なくとも4時間、より好ましくは、少なくとも6時間、その部分を洗浄しない。
【0086】
経皮パッチを用いて、既知の技術に従って前駆体をデリバリーしてもよい。典型的には、非常に長期間、例えば、1〜4日間、適用されるが、典型的には、狭い表面積に有効成分を接触させ、有効成分をゆっくりと一定にデリバリーする。
【0087】
開発されて一般に用いられている多くの経皮薬物デリバリーシステムは、本発明の有効成分のデリバリーに適している。放出速度は、典型的には、マトリックス拡散、または、有効成分の制御膜通過により制御される。
【0088】
経皮装置の機械的な態様は、当該技術分野において十分に知られており、例えば、米国特許第5,162,037号、第5,154,922号、第5,135,480号、第4,666,441号、第4,624,665号、第3,742,951号、第3,797,444号、第4,568,343号、第5,064,654号、第5,071,644号、第5,071,657号に説明されている(出典明示により本明細書の記載とする)。付加的な背景は、欧州特許0279982およびイギリス特許出願2185187により提供される。
【0089】
該装置は、接着マトリックスおよびリザーバー型経皮デリバリー装置を包含する当該技術分野で一般的なタイプのいずれであってもよい。該装置は、有効成分および/または担体を吸収する繊維を取込んだ薬物含有マトリックスを包含する。リザーバー型装置において、該リザーバーは、担体および有効成分を透過できない高分子膜により定義される。
【0090】
経皮装置において、該装置自体は、所望の局所皮膚表面と接触した有効成分を維持する。かかる装置では、担体の有効成分に対する粘性は、クリーム剤またはゲル剤に関するよりもあまり関係がない。経皮装置用の溶媒系としては、例えばオレイン酸、線状アルコールラクテートおよびジプロピレングリコール、または当該技術分野で知られている他の溶媒系が挙げられる。有効成分は、担体に溶解しても、または、懸濁してもよい。
【0091】
皮膚への付着について、中央に穴をあけた外科的絆創膏に経皮パッチを載せることができる。接着剤は、好ましくは、使用前に保護するために剥離ライナーにより覆われている。剥離に適している典型的な物質としては、ポリエチレンまたはポリエチレン塗布紙が挙げられ、好ましくは、取り外しの容易さのためにシリコーン塗布されている。該装置を適用するには、剥離ライナーは、簡単に剥ぎ取られ、接着剤が患者の皮膚に付着する。米国特許第5,135,480号において、Bannon et al. は、皮膚に装置を固定する非接着手段を有する代替装置を開示している(その開示内容は出典明示により本明細書の記載とする)。
【0092】
本発明の経皮または経粘膜デリバリーシステムは、また、骨粗鬆症、またはアンドロゲンおよび/またはエストロゲンによる処置に対して有利に応答する他の疾患の予防および/または治療用の新規かつ改良されたデリバリーシステムとして用いることもできる。
【0093】
本発明の選択的エストロゲン受容体モジュレーターは、以下の特徴をもつ分子式を有する:a)2個の芳香環が1個または2個の介在炭素原子により離間しており、両方の芳香環が非置換であるか、または、ヒドロキシル基またはインビボでヒドロキシルに転換される基により置換されている;b)側鎖が芳香環および第三アミン官能基またはその塩を有している。
【0094】
本発明の一の好ましいSERMは、PCT/CA96/00097(WO 96/26201)に報告されているEM−800である。EM−800の分子構造は、以下のとおりである。
【化3】

【0095】
本発明のもう1つの好ましいSERMは、EM−01538である。
【化4】

【0096】
EM−1538(EM−652 HCLとも称される)は、EM−800と比べて有効な抗エストロゲンEM−652の塩酸塩であり、EM−1538は、合成するのがより簡単かつ容易である。単離、精製が容易であり、結晶化可能であり、良好な固体状態安定性を示した。EM−800またはEM−1538のいずれを投与しても、インビボで同一の活性化合物を生じると考えられる。
【0097】
本発明の他の好ましいSERMとしては、タモキシフェン((Z)−2−[4−(1,2−ジフェニル−1−ブテニル)]−N,N−ジメチルエタンアミン)(イギリス国のゼネカ(Zeneca)から入手可能)、トレミフェン(Toremifene)(フィンランド国のオリオン−ファーモス・ファーマシューチクラ(Orion-Farmos Pharmaceuticla)またはシェリング−プラウ(Schering-Plough)から入手可能)、ドロロキシフェン(Droloxifene)およびCP−336,156(シス−1R−[4'−ピロリジノ−エトキシフェニル]−2S−フェニル−6−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン・D−(−)−酒石酸塩)(米国のファイザー・インコーポレイテッド(Pfizer Inc.))、ラロキシフェン(米国のイーライ・リリー・アンド・カンパニー(Eli Lilly and Co.))、LY 335563およびLY 353381(米国のイーライ・リリー・アンド・カンパニー)、ヨードキシフェン(Iodoxifene)(米国のスミスクライン・ビーチャム(SmithKline Beecham))、レボルメロキシフェン(Levormeloxifene)(3,4−トランス−2,2−ジメチル−3−フェニル−4−[4−(2−(2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ)フェニル]−7−メトキシクロマン)(デンマーク国のノボ・ノルディスク・アクティー・ゼルスカブ(Novo Nordisk, A/S))(Shalmi et al. のWO 97/25034、WO 97/25035、WO 97/25037、WO 97/25038;および Korsgaard et al. のWO 97/25036に開示されている)、GW5638(Willson et al., Endocrinology, 138(9), 3901-3911, 1997 に開示されている)およびインドール誘導体(Miller et al., EP 0802183A1 に開示されている)およびTSE 424(米国のワイス・エアズ(Wyeth Ayers)により開発され、JP10036347(アメリカン・ホーム・プロダクツ・コーポレーション(American Home Products Corporation))に開示されている)および非ステロイド系エストロゲン誘導体(WO 97/32837 に開示されている)が挙げられる。
【0098】
製造者により推奨されているように、効力のために必要とされる場合に用いられるSERMを用いることができる。適当な用量は、当該技術分野で知られている。市販のいずれもの他の非ステロイド系抗エストロゲンを本発明に従って用いることができる。いずれもの化合物は、SERMと同様の活性を有する(例:ラロキシフェンを用いることができる)。
【0099】
本発明に従って投与されるSERMは、好ましくは、経口投与する場合に平均体重の人について1日に体重1kgあたり0.01〜10mg(好ましくは、0.05〜1.0mg/kg)の投与範囲で、1日5mg、特に、1日10mgを、好ましくは、2等分した用量で投与され、非経口投与(すなわち、筋肉投与、皮下投与または経皮投与)する場合に平均体重の人について1日に体重1kg当たり0.003〜3.0mg(好ましくは、0.015から0.3mg/ml)、1日1.5mg、特に、1日3.0mgを、好ましくは、2等分した用量で投与される。好ましくは、SERMは、上記した医薬上許容される希釈剤または担体と一緒に投与される。
【0100】
本発明の好ましいビスホスホネートとしては、メルク・シェイプ・アンド・ドーム(Merck Shape and Dohme)からフォサマックス(Fosamax)の商品名の下に入手可能なアレンドロネート(Alendronate)[(4−アミノ−1−ヒドロキシブチリデン)ビスホスホン酸二ナトリウム塩・水和物]、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter and Gamble)からジドロカル(Didrocal)およびジドロネル(Didronel)の商品名の下に入手可能なエチドロネート(Etidronate)[(1−ヒドロキシエチリデン)ビスホスホン酸2,2'−イミノビスエタノール]、ローヌ・プーラン・ローラー(Rhone-Poulenc Rorer)からボーンフォス(Bonefos)の商品名の下またはベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)からオスタック(Ostac)の商品名の下に入手可能なクロドロネート(Clodronate)[(ジクロロメチレン)ビスホスホン酸二ナトリウム塩]、および、ガイギー(Geigy)からアレジア(Aredia)の商品名の下に入手可能なパミドロネート(Pamidronate)((3−アミノ−1−ヒドロキシプロピリデン)ビスホスホン酸二ナトリウム塩)が挙げられる。リセドロネート(Risedronate)(1−ヒドロキシ−2−(3−ピリジニル)エチリデンビスホスホン酸一ナトリウム塩)は、臨床開発下にある。本発明に従って、いずれもの市販の他のビスホスホネートを、全て製造者が推奨する用量で用いることができる。同様に性ステロイド前駆体は、従来技術において推奨された用量で、好ましくは、循環レベルを年齢20〜30歳の健康な男性または月経閉止期前の成人女性のレベルに戻す用量で利用できる。
【0101】
本明細書に記載した推奨される用量の全てに関して、所属臨床医は、個々の患者の反応をモニターし、これに応じて用量を調節する。
【実施例】
【0102】
実施例1
材料および方法
動物
雌性Sprague-Dawleyラット[Crl:CD(SD)Br]をチャールズ・リバー・カナダ・インコーポレイテッド(Charles River Canada Inc.)(ケベック州セント・コンスタント)から44〜46日齢で入手し、照明制御(照明12時間/日;7時15分に点灯)および温度制御(22±2℃)環境下、1ケージにつき2匹を入れた。動物は、Purina齧歯類用餌および水道水を任意に摂取した。動物実験は、カナディアン・カウンシル・オン・アニマル・ケア(Canadian Council on Animal Care)(CCAC)に認可された設備の中で実験動物の管理および使用に関するCCACガイド(CCAC Guide for Care and Use of Experimental Animals)に従って行った。
【0103】
DMBAによる乳癌の誘発
50〜52日齢でコーン油1ml中のDMBA(ミズーリ州セントルイスのシグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Co.))20mgを一回胃内投与することにより乳癌を誘発させた。2ヶ月後、2週間ごとに腫瘍測定を行った。Asselin et al., Endocrinology 101: 666-671, 1977 の記載に従って、各腫瘍の2つの最大垂直直径をカリパスで記録して腫瘍の大きさを評価した。腫瘍の部位、大きさおよび数を記録した。
【0104】
処置
動物を、無作為に、対照群に動物40匹をあてる以外は、各々ラット20匹からなる群に分けた。動物を以下のとおり282日間処置した:(1)対照ビヒクル、DHEAおよびEM−800の両方について;(2)4%エタノール、4%ポリエチレングリコール−600、1%ゼラチン、0.9%NaCl懸濁液0.5ml中のEM−800((+)−7−ピバロイルオキシ−3−(4'−ピバロイルオキシフェニル)−4−メチル−2−(4''−(2'''−ピペリジノエトキシ)フェニル)−2H−ベンゾピラン)(75μg、経口、1日1回);(3)50%エタノール、50%プロピレングリコールの0.5ml中のDHEA(10mg、経皮、1日1回);および(4)EM−800およびDHEAの両方。DMBAの経口投与の3日前に処置を開始した。EM−800は、本発明者らの研究室のメディカル・ケミストリー・ディビジョンにて合成したが、DHEAは、ニューハンプシャー州ウィルトンのステラロイズ・インコーポレイテッド(Steraloids Inc.)から購入した。
【0105】
対照動物の多くおよびEM−800処置またはDHEA処置動物の数匹は、腫瘍が大きすぎるためにDMBA投与の6ヵ月後にイソフルランによる麻酔下で頚部脱臼により屠殺した。屠殺時のこれらのラットの腫瘍の大きさおよび数を、生存している動物からその後時折測定した数値と一緒に、その後の腫瘍発生、腫瘍をもつラット1匹あたりの平均腫瘍数および腫瘍をもつラット1匹あたりの平均腫瘍サイズの分析に用いた。残存動物(対照群からラット9匹および他の各群からラット13〜19匹)をさらに3ヶ月間処置し続けて、DHEAおよびEM−800の単独または組合せの長期予防効力を観察した。DMBA投与の279日後にラットを屠殺した。子宮、膣および卵巣をすぐに取り出し、結合組織および脂肪組織を除去し、計量した。
【0106】
試料採取および処理
代謝ケージ(ニュージャージー州アレンタウンのアレンタウン・ケージング・イクィップメント・カンパニー(Allentown Caging Equipment Co.))に移した後、実験の最後に各群の最初のラット9匹から24時間尿試料を採取した。各動物につき異なる日に尿試料2個を採取し、分析して、毎日の変動の影響を最小化した。したがって、示された各数値は、2つの異なる日に行った2つの測定値の平均を表す。採尿管にトルエン0.5mlを添加して尿の蒸発および細菌増殖を防止し、尿の容量を記録した。屠殺時に大幹血を採取し、4℃で一夜凝固させた後、3000rpmで30分間遠心分離した。
【0107】
尿および血清の生化学的パラメーターの分析
尿クレアチニン、カルシウムおよびリンならびに血清全アルカリホスファターゼ(tALP)活性、コレステロールおよびトリグリセリドのアッセイに新しい試料を用いた。これらの生化学的パラメーターを、製薬承認基準条件下でMonarch 2000 Chemistry System(マサチューセッツ州レキシントンのインストゥルメンテーション・ラボラトリー・カンパニー(Instrumentation Laboratory Co.))を用いて自動測定した。Podenphant et al., Clinica Chimica Acta 142: 145-148, 1984 の記載に従って、尿ヒドロキシプロリンを測定した。
【0108】
骨量測定
塩酸ケタミンおよびジアゼパムを各々体重1kgあたり50mgおよび4mgの用量でラットに腔内注射して麻酔した。全骨格および右大腿骨を、Regional High Resolution ソフトウエアを装備したデュアルエネルギーX線吸収計(DEXA;QDR 2000−7.10C、マサチューセッツ州ウォールサムのホロジック(Hologic))を用いてスキャンした。全骨格および大腿骨について、各々、スキャン領域サイズは、28.110×17.805cmおよび5.0×1.902cmであり、分解能は、0.1511×0.0761cmおよび0.0254×0.0127cmであり、スキャン速度は、0.3608mm/秒および0.0956mm/秒であった。全骨格および大腿骨のスキャン画像で全骨格、腰椎および大腿骨の骨ミネラル含量(BMC)および骨ミネラル密度(BMD)の両方を測定した。
【0109】
統計学的分析
ダンカン−クラマー(Duncan-Kramer)のマルチプルレンジ検定(Biometrics 12: 307-310, 1956)に従って統計学的有意さを測定した。乳癌の発生率の分析は、フィッシャー(Fisher)の完全検定(Conover, Practical nonparametric Statistics, 2nd Edition 153-170, 1980)を用いて行った。データは、平均±S.E.M.で表した。
【0110】
結果
DMBAにより誘導された乳癌の発生に対する影響
図1に示すように、DMBA投与から279日後に対照動物の95%が触知できる乳癌を発生させた。DHEAまたはEM−800での治療はDMBAにより誘導される乳癌の発生を部分的に防止し、その発生率はそれぞれ57%(p<0.01)および38%(p<0.01)であった。興味深いことに、2種の化合物の組み合わせは、各化合物単独の場合よりも有意に高い抑制効果を導いた(DHEAまたはEM−800単独の場合に対してp<0.01)。実際、両方の化合物で治療された動物の群において発生した2つの腫瘍のみが実験終了前に消失した。
【0111】
DHEAまたはEM−800での治療は、対照動物において、腫瘍保有動物1匹あたり平均腫瘍数を4.7±0.5個からそれぞれ3.4±0.7個(N.S.)および1.4±0.3個(p<0.01)に減少させたが、両方の薬剤を投与された動物において実験終了時に腫瘍のないものはいなかった(3つの他の群に対してp<0.01)(図2A)。後に消失した2個の腫瘍のうち1つはDMBA投与後79日〜201日目に存在していたが、他方の腫瘍は176日〜257日目に触知可能であった。図2Bからわかるように、DHEAまたはEM−800は単独で、実験終了時の腫瘍保有動物1匹あたりの平均腫瘍面積を12.8±1.3cmからそれぞれ10.2±2.13cm(N.S.)および7.7±1.8cm(N.S.)に減少させたが、組み合わせ治療はゼロにまで減少させた(他の3つの群に対してp<0.01)。DHEAおよびEM−800の両方で治療した動物の群において発生した2個の腫瘍は1cmよりも大きくならなかった。腫瘍面積の真の値ならびに腫瘍保有動物1匹あたりの平均腫瘍数は図2に示す値よりも高いはずである。なぜなら、腫瘍サイズが過大であったために多くのラットを実験終了前に殺さなければならなかったからである。したがって、後でする計算において屠殺時の測定値をそのようなものとして含めて、いずれの場合にも他の群より有意に高いままである対照群におけるバイアスを最小にした。
【0112】
骨に対する効果
メスのラットへのDHEAの長期経皮投与は、全骨格、腰椎および大腿骨の骨鉱物質密度をそれぞれ6.9%(p<0.01)、10.6%(p<0.01)および8.2%(p<0.01)の増加させた(表2)。他方では、EM−800で治療した動物においては有為な変化は見られなかった。さらにそのうえ、両方の化合物を同時投与した場合、得られた値はDHEAのみで達成された値と同等であった。
【0113】
DHEAでの治療は血清中の全アルカリ性ホスファターゼ(tALP)活性を74%増加させたが(p<0.05)、1日の尿カルシウムおよびリン排出量ならびに尿のクレアチニンに対するヒドロキシプロリンの比には影響しなかった(表3)。他方、EM−800での治療は尿のクレアチニンに対するヒドロキシプロリンの比を48%減少させたが(p<0.01)、1日の尿カルシウムおよびリン排出量ならびにtALP活性には統計学的に有為な影響を及ぼさなかった。DHEAおよびEM−800の組み合わせは血清tLAP活性を増大させ(p<0.01)、それはDHEA単独で達成された結果と同様であり、さらに尿のクレアチニンに対するヒドロキシプロリンの比を69%低下させ、その値はEM−800単独の場合よりも有意に低かった(p<0.01)。さらに2つの薬剤の組み合わせは1日の尿カルシウムおよびリン排出量をそれぞれ84%(p<0.01)および56%(p<0.01)減少させたが、各薬剤単独では有意な変化は観察されなかった(表3)。
【0114】
血清脂質レベルに対する影響
EM−800での長期治療は血清トリグリセリドおよびコレステロールレベルをそれぞれ72%(p<0.01)および45%(p<0.01)低下させたが、DHEAの長期投与は血清トリグリセリドレベルを60%(p<0.01)低下させ、血清コレステロールレベルには影響しなかった。そのうえ、血清中におけるトリグリセリドおよびコレステロール濃度のそれぞれ42%(p<0.01)および52%(p<0.01)の低下がEM−800およびDHEAの両方で治療された動物において測定された(図3)。
【0115】
表2.メスのラットにおける大腿骨、腰椎および全骨格の骨鉱物質密度(BMD)に対するDHEA(10mg、経皮投与、1日1回)またはEM−800(75μg、経口投与、1日1回)単独あるいは組み合わせの9カ月間の効果。1群あたり9匹のラットにおいて測定を行った。対照に対する実験値について、*はp<0.05、**はp<0.01である。
【表2】

【0116】
表3.ラットの1日の尿カルシウムおよびリン排出量、尿のクレアチニンに対するヒフォロキシプロリンの比(HP/Cr)、および血清の全アルカリ性ホスファターゼ活性(tALP)におけるラットにおける骨代謝のパラメーターに対するDHEA(10mg、経皮投与、1日1回)またはEM−800(75μg、経口投与、1日1回)単独あるいは組み合わせの9カ月間の効果。1群あたり9匹のラットから試料を得た。対照に対する実験値について、*はp<0.05、**はp<0.01である。
【表3】

【0117】
実施例2
概要
乳腺において、前駆体ステロイドであるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)からアンドロゲンが形成される。臨床的証拠は、アンドロゲンが乳癌に対して抑制効果を有することを示している。一方、エストロゲンは乳癌の発生および増殖を刺激する。我々は、卵巣切除ヌードマウスにおけるヒト乳癌細胞系ZR−75−1により形成された腫瘍異種移植物の増殖に対するDHEA単独または新たに記載された純粋な抗エストロゲンEM−800との組み合わせの影響を調べた。
【0118】
卵巣切除直後から毎日皮下注射により0.5μgのエストロン(エストロゲン作動性ホルモン)をマウスに与えた。EM−800(15、50または100μg)を1日1回経口投与した。DHEA(全用量0.3、1.0または3.0mg)を1日2回、単独でまたは15μgの経口用量のEM−800と組み合わせて背中の皮膚に適用した。治療に応答した腫瘍サイズの変化を、初日の測定値と比較することにより定期的に評価した。実験の終了時に、腫瘍を切除し、秤量した。
【0119】
エストロンを投与されなかったマウスと比較すると、エストロン単独投与された卵巣切除マウスにおいて9.5カ月で9.4倍の腫瘍サイズの増加が観察された。エストロンに15、50または100μgのEM−800を補足して投与された卵巣切除マウスはそれぞれ88%、93%および94%の腫瘍サイズの抑制となった。一方、DHEAは0.3、1.0または3.0mgの用量で最終的な腫瘍重量をそれぞれ67%、82%および85%抑制した。異なる用量のDHEAを経皮投与して、あるいはせずに毎日15μgのEM−800を経口投与した場合、同等の腫瘍の抑制が得られた。
【0120】
DHEAおよびEM−800は独立して、エストロンにより刺激されたヌードマウス中のZR−75−1マウス異種移植腫瘍の増殖を抑制した。限定された用量のDHEAの投与はEM−800の抑制効果を変化させない。
【0121】
材料および方法
ZR−75−1細胞
American Type Culture Collection(Rockville, MD)からZR−75−1ヒト乳癌細胞を得て、記載されたようにして(Poulin and Labrie, Cancer Res. 46: 4933-4937, 1986; Poulin et al., Breast Cancer Res. Treat. 12: 213-225, 1988)、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、100 IUペニシリン/ml、100μgストレプトマイシン/ml、および10%ウシ胎児血清を補足したRPMI 1640培地中、95%空気/5% CO2の加湿雰囲気下、37℃にて単層としてルーチンに培養した。0.05%トリプシン:0.02% EDTA(w/w)で処理後、細胞を毎週継代した。この報告に記載する実験に使用する細胞培養物は93代継代された細胞系ZR−75−1に由来するものであった。
【0122】
動物
メスのホモ接合Harlan Sprague-Dawley(nu/nu)胸腺切除マウス(生後28ないし42日)をHSD(Indianapolis, Indiana, USA)から得た。ラミナーエアーフローフード(laminar air flow hood)中エアーフィルター付き天井を有するビニール製ケージにてマウスを飼育し、病原体を制限した条件下に維持した。ケージ、寝わらおよびエサを使用前にオートクレーブした。水をオートクレーブし、酸性にしてpH2.8とし、任意に飲ませた。
【0123】
細胞の接種
腫瘍細胞接種1週間前に、動物1匹あたり0.25mlのAvertin(アミリックアルコール:0.8g/100ml 0.9% NaCl;およびトリブロモエタノール:2g/100ml 0.9% NaCl)を腹腔内注射することにより麻酔下でマウスの両側の卵巣を切除(OVX)した。単層を0.05%トリプシン/0.02% EDTA(w/w)で処理した後、対数増殖期の1.5x106個のZR−75−1細胞を集め、25% Matrigelを含む0.1mlの培地に懸濁し、すでに記載されているようにして(Dauvois et al., Cancer Res. 51: 3131-3135, 1991)長さ1インチの20−ゲージの注射針を用いて動物の両脇腹に皮下接種した。腫瘍の増殖を容易にするため、0.9% NaCl、5%エタノール、1%ゼラチンからなる担体中の10μgのエストラジオール(E2)を5週間にわたり各動物に毎日皮下注射した。触知可能なZR−75−1腫瘍の出現後、カリパスを用いて腫瘍直径を測定し、0.2ないし0.7cmの直径の腫瘍を有するマウスをこの研究のために選別した。
【0124】
ホルモン治療
対照OVX群マウス以外のすべての動物に、0.2mlの0.9% NaCl、5%エタノール、1%ゼラチン中の0.5μgのエストロン(E1)を毎日皮下注射した。示された群において、0.02mlの体積中の0.3、1.0または3.0mg/動物の用量のDHEAを、腫瘍増殖部位の外側の背中の皮膚部位に毎日2回経皮的に投与した。DHEAを50%エタノール、50%プロピレングリコールに溶解した。以前記載されたようにして(Gauthier et al., J. Med. Chem. 40: 2117-2122, 1997)、Laboratory of Molecular Endocrinology of the CHUL Research CenterにおいてEM−800((+)−7−ピバロイルオキシ−3−(4’−ピバロイルオキシフェニル)−4−メチル−2−(4’’−(2’’−ピペリジノエトキシ)フェニル)−2H−ベンゾピラン)が合成された。EM−800を4%(v/v)エタノール、4%(v/v)ポリエチレングリコール(PEG)600、1%(w/v)ゼラチン、0.9%(w/v)NaCl中に溶解した。指示された群の動物には、15μg、50μg、または100μgのEM−800を単独で、あるいはDHEAと組み合わせて毎日経口投与し、OVX群の動物には、担体(0.2mlの4%エタノール、4% PEG600、1%ゼラチン、0.9% NaCl)のみを与えた。1週間に1回、腫瘍をカリパスにて測定した。縦横2つの直径(LおよびW)をcmで記録し、式:L/2xW/2xπ(Dauvois et al., Cancer Res.51: 3131-3135, 1991)を用いて腫瘍面積(cm2)を計算した。治療初日に測定した面積を100%とし、腫瘍サイズの変化を初期腫瘍面積に対するパーセンテージとして表した。皮下腫瘍の場合、一般的には、腫瘍の3次元的体積を正確に評価することは不可能なので、腫瘍面積のみを測定した。治療291日目(あるいは9.5カ月目)に動物を屠殺した。
【0125】
記載されたようにして(Dauvois et al., Breast Cancer Res. Treat 14: 299-306, 1989; Dauvois et al., Eur. J. Cancer Clin. Oncol. 25: 891-897, 1989; Labrie et al., Breast Cancer Res. Treat. 33: 237-244, 1995)、応答のカテゴリーを評価した。簡単に説明すると、部分的逆行とは、元のサイズの50%に等しいかまたは50%より多く逆行した腫瘍についていう。安定な応答とは、元のサイズの50%より少なく逆行、あるいは元のサイズの50%より少なく進行した腫瘍についていい、完全な逆行とは、治療終了時に検出不可能であった腫瘍についていう。進行とは、元のサイズの50%より多く進行した腫瘍についていう。実験終了時に、斬首によりすべての動物を殺した。腫瘍、子宮、および膣を即座に取り、結合組織および脂肪組織を除去し、秤量した。
【0126】
統計学的分析
DHEA、EM−800による効果、および時間、ならびに治療開始時および終了時において行った同じ動物における繰り返し測定(群ファクター中の対象)を評価する分散(ANOVA)の分析を用いて腫瘍サイズに対する治療効果の統計学的有意さを評価した。治療についての時間0および9.5カ月における繰り返し測定はランダム化された動物のブロックを構成する。かくして、ブロック中の効果として時間が分析されるが、両方の治療はブロック間の効果として評価される。主な効果の間のすべての相互作用がモデル中に含まれる。群中の主題をエラーターム(error term)として用いて治療ファクターおよびそれらの相互作用の有意さを分析した。データを対数変換した。ANOVAの基礎となる仮定は、残差の正規性および分散の均一性を仮定するものである。
【0127】
最小の有意差に関するFisherの検定を用いてポステリオリペアワイズ(posteriori pairwise)比較を行った。相互作用に関して標準的なツーウェイ(two-way)ANOVAを用いて体重および器官重量に対する治療の主な効果および相互作用を分析した。SASプログラム(SAS Institute, Cary, NC, USA)を用いてすべてのANOVAを行った。5%の全レベルに関して2−テイルド(2-tailed)検定を用いて相違の有意さを宣言した。
【0128】
序列化されたカテゴリー応答変数(完全応答、部分的応答、安定な応答、および腫瘍の進行)に関してKruskall-Wallis検定を用いてカテゴリーのデータを分析した。治療効果の全体的評価後に、表4に示される結果の部分集合を分析し、多重比較のためにクリティカルなp−値を調整した。StaXactプログラム(Cytel, Cambridge, MA, USA)を用いて正確なp−値を計算した。
データを、各群12〜15匹のマウスの平均値±標準偏差(SEM)として表す。
【0129】
結果
図4Aに示すように、1日に0.5μgの用量のエステロンを皮下注射された卵巣切除ヌードマウスにおいてヒトZR−75−1腫瘍は291日目に9.4倍に増大したが、担体のみを与えられた対照OVXマウスにおいては腫瘍サイズは研究期間中に元の値の36.9%に減少した。
【0130】
経皮的DHEA投与量を増加させる治療は、E1により刺激されるZR−75−1腫瘍増殖の進行的抑制を引き起こした。動物1匹あたり1日あたり0.3mg、1.0mgおよび3.0mgのDHEAでの治療では、それぞれ50.4%、76.8%および80.0%の抑制となった(図4A)。全腫瘍負荷の減少と一致して、DHEAでの治療は実験終了時に残存している腫瘍の平均重量の著しい減少を導いた。実際、1日につき0.3mg、1.0mgおよび3.0mgのDHEAを与えられた対照E1補足卵巣切除ヌードマウスの群において、平均腫瘍重量は、1.12±0.26gからそれぞれ0.37±0.12g(p=0.005)、0.20±0.06g(p=0.001)および0.17±0.06g(p=0.0009)に減少した(図4B)。
【0131】
1日の用量が15μg、50μgおよび100μgの用量の抗エストロゲンEM−800は、9.5カ月目において対照動物の腫瘍サイズと比較して、エストロゲンにより刺激される腫瘍サイズをそれぞれ87.5%(p<0.0001)、93.5%(p<0.0001)および94.0%(p=0.0003)抑制した(図5A)。
【0132】
3種のEM−800用量により達成された腫瘍サイズの減少は互いに有意には異ならなかった。図4Bに示すように、9.5カ月の研究の終了時の腫瘍重量は、1日につき15μg、50μgおよび100μgの用量のEM−800で治療した対照E1補足OVXマウスにおいて、1.12±0.26gからそれぞれ0.08±0.03g、0.03±0.01gおよび0.04±0.03gに減少した(E1補足OVXに対するすべての用量のEM−800についてp<0.001)。
【0133】
上記のように、1日の経口用量が15μgの抗エストロゲンEM−800は、9.5カ月において測定した場合、エストロゲンにより刺激された腫瘍増殖を87.5%抑制した。3種の用量のDHEAの添加は、1日に15μgのEM−800ですでに達成された腫瘍サイズの著しい抑制に対して有意な効果を示さなかった(図5B)。よって、1日15μgの抗エストロゲンのみ、あるいは0.3、1.0および3.0mgのDHEAを併用した対照エストロン補足マウスにおいて、平均腫瘍重量は、1.12±0.26gから、それぞれ0.08±0.03g(p<0.0001)、0.11±0.04g(p=0.0002)、0.13±0.07g(p=0.0004)および0.08±0.05g(p<0.0001)に劇的に減少した(当該4群の間に有意差はなかった)(図4B)。
【0134】
上記治療により達成された応答のカテゴリーを調べることも興味深いものであった。よって、DHEA用量を増加させる治療は、1日につき0.3、1.0または3.0mgのDHEAで治療されたエストロン補足OVX動物において、進行中の腫瘍の数は87.5%からそれぞれ50.0%、53.3%および66.7%に減少したが、統計学的に有意なレベルには至らなかった(p=0.088)(表4)。一方、1日につき0.3、1.0または3.0mgのDHEAで治療されたエストロン補足マウスにおいて、完全な応答は0%からそれぞれ28.6%、26.7%および20.0%に上昇した。一方、安定な応答は、それぞれの上記用量のDHEAを投与された3群の対照E1補足マウスの12.5%、21.4%、20.0%および13.3%において見られた。対照卵巣切除マウスにおいて、完全、部分的および安定な応答の割合はそれぞれ68.8%、6.2%および18.8%であったが、進行は6.2%の腫瘍においてのみ見られた(表4)。
【0135】
腫瘍の完全な応答または消失は、抗エストロゲンEM−800(p=0.0006)単独(15μg)または0.3mg、1.0mgもしくは3.0mgのDHEAと組み合わせを投与された動物の腫瘍のそれぞれ29.4%、33.3%、26.7%および35.3%において達成された(表4)。一方、進行は、同じ動物群において、腫瘍のそれぞれ35.3%、44.4%、53.3%において見られた。EM−800単独またはDHEAとの組み合わせで治療したEM−800治療群間に有意差はない。
【0136】
DHEAまたはEM−800での治療の有意な効果は、腫瘍重量に関して調整された体重に対しては観察されなかった。エストロンでのOVXマウスの治療は、OVX対照マウスにおいて子宮重量を28±5mgから132±8mg(p<0.01)に増加させたが、DHEA用量を増加させて高用量のDHEAを用いた場合には、エストロンの刺激効果に対する進行的であるが比較的小規模な抑制が26%に達した(p=0.0008)。同じ図において、1日の経口用量15μg、50μg、または100μgのEM−800を投与した対照エステロン補足マウスにおいて、エステロンにより刺激された子宮重量が132±8mgからそれぞれ49±3mg、36±2mg、および32±1mg(対照に対するすべての用量においてp<0.0001)に減少したことがわかる(全体としてp<0.0001)。1日の用量が0.3mg、1.0mgまたは3.0mgであるDHEAと15μgのEM−800とを組み合わせた場合、子宮重量はそれぞれ46±3mg、59±5mgおよび69±3mgであった。
【0137】
一方、エストロンでの治療は、OVX動物において膣重量を14±2mgから31±2mg(p<0.01)に増加させたが、DHEAの添加は有意な効果を示さなかった。その後、1日に15μg、50μgまたは100μgのEM−800での治療した後、膣重量は23±1mg、15±1mg、および11±1mgに減少した(対照に対してすべての用量において、全pおよびペアワイズp<0.0001)。0.3mg、1.0mgまたは3.0mgのDHEAおよびEM−800を組み合わせると、膣重量はそれぞれ22±1mg、25±2mg、および23±1mgとなった(15μgのEM−800に対してすべての群につき有意でない)。最高用量、すなわち1日100μgのEM−800を用いた場合、エストロン補足OVX動物の子宮重量は減少し、OVX対照動物の子宮重量の値と違いがない値になったが、膣重量はOVX対照動物の測定値未満の値に減少した(p<0.05)。DHEAは、おそらくそのアンドロゲン作動性効果により、子宮および膣重量に対するEM−800の効果を不完全に中和したのであろう。
【0138】
表4.9.5カ月間にわたるDHEA経皮投与または単独または組み合わせEM−800経口投与の、ヌードマウスにおけるヒトZR−75−1乳癌異種移植物に対する影響
【表4】

E1= エストロン; DHEA= デヒドロエピアンドロステロン; OVX=卵巣切除
【0139】
実施例3
本発明の好ましい化合物の、メスの卵巣切除ラットのコレステロールレベルに対する影響
動物および処理
卵巣切除時に体重約190gの生後50ないし60日のSprague-Dawleyラット(Crl:CD(SD)Br)(Charles River Laboratory, St-Constant, Canada)を使用した。手術前に、動物を周囲の環境(温度22±3℃;湿度50±20%;明12時間−暗12時間のサイクル、7時15分に照明オン)に1週間馴らした。1ケージあたり3匹の動物を飼育し、水道水およびペレット状の保証された齧歯類用エサ(Lab Diet 5002, Ralston Purina, St-Louis, MC)を自由に取らせた。実験動物のケアおよび使用に関するCCACガイドに従ってCanadian Council on Animal Care認可施設において実験が行われた。
【0140】
研究0日目にイソフルラン麻酔下で136匹のメスのラットを卵巣切除し、ランダムに17群に分けて下記研究を行った。
群 1: OVX 対照

群 2: OVX + EM-800 (0.01 mg/kg, po, ID)
群 3: OVX + EM-800 (0.03 mg/kg, po, ID)
群 4: OVX + EM-800 (0.1 mg/kg, po, ID)
群 5: OVX + EM-800 (0.3 mg/kg, po, ID)
群 6: OVX + EM-800 (1 mg/kg, po, ID)

群 7: OVX + EM-01538 (0.01 mg/kg, po, ID)
群 8: OVX + EM-01538 (0.03 mg/kg, po, ID)
群 9: OVX + EM-01538 (0.1 mg/kg, po, ID)
群 10: OVX + EM-01538 (0.3 mg/kg, po, ID)
群 11: OVX + EM-01538 (1 mg/kg, po, ID)

群 12: OVX + ラロキシフェン (EM-1105) (0.01 mg/kg, po, ID)
群 13: OVX + ラロキシフェン (EM-1105) (0.03 mg/kg, po, ID)
群 14: OVX + ラロキシフェン (EM-1105) (0.1 mg/kg, po, ID)
群 15: OVX + ラロキシフェン (EM-1105) (0.3 mg/kg, po, ID)
群 16: OVX + ラロキシフェン (EM-1105) (1 mg/kg, po, ID)

群 17: 無処理対照
【0141】
研究10日目に治療薬の投与を開始し、研究13日目まで1日1回経口栄養により投与した。0.4%メチルセルロース中に投与懸濁液を調合し、研究10日目に記録した群の平均体重に応じて濃度を調整して、ラッット1匹あたり0.5mlの投与懸濁液を与えた。最後の投与から約24時間後に、一晩絶食した動物をイソフルラン麻酔下で腹部大動脈において全採血することにより殺し、血液試料を血清調製用に処理した。子宮を取り、残存脂肪組織を剥ぎ取って秤量した。
【0142】
血清コレステロールおよびトリグリセリドのアッセイ
Boehringer Mannheim Diagnostic Laboratory Systemsを用いて全血清コレステロールおよびトリグリセリドレベルを調べた。
【0143】
実施例4
アンドロステン−3β,17β−ジオール(5−ジオール)は固有のエストロゲン作動性の活性を有する。さらに、性ステロイドの前駆体として、それは末梢内分泌組織において活性アンドロゲン類および/または他のエストロゲン類に変換される。骨重量に対する5−ジオール作用のアンドロゲン作動性要素およびエストロゲン作動性要素の総体的重要性を評価するために、生後24週間のラットを卵巣切除し、1日あたり2、5または12.5mgの5−ジオール単独または抗アンドロゲン剤フルタミド(FLU、10mgを1日1回皮下注射)、および/または抗エストロゲン剤EM−800(100μgを1日1回皮下注射)と組み合わせて12カ月治療した。治療11カ月後に骨鉱物質密度(BMD)を測定した。OVX後11カ月間に、卵巣切除(OVX)は大腿骨BMDを12.8%減少させたが(p<0.01)、最高用量の5−ジオールは失われた大腿骨BMDの34.3%を回復させた(p<0.01)。FLUの同時投与は、大腿骨BMDに対する5−ジオールの刺激効果を妨げたが、EM−800の添加により、5−ジオール単独と比較してさらに28.4%の刺激を生じさせた。5−ジオール、FLUおよびEM−800の同時投与はEM−800の効果(27%)を示しただけであった。なぜなら、5−ジオールの効果はFLUによって完全にブロックされたからである。腰椎のBMDに関して同等の結果を得たが、12.5mgの5−ジオール単独、12.5mgの5−ジオール+EM−800、または5−ジオール+FLU+EM−800を投与されたOVXラットの腰椎BMDは無処理動物の値と有意に変わりない値にまで回復した。骨体積および小柱数に対する5−ジオールの刺激効果、ならびにFLUにより廃止された近位脛骨幹端の続発性スポンギオーサの小柱分離に対する抑制効果が、組織形態の分析により示されたが、EM−800により該効果はさらに促進されなかった。5−ジオールでの治療後に得られた血清アルカリ性ホスファターゼ活性に対するこの著しい刺激は、FLUの同時投与により57%逆行した(12.5mgの5−ジオール単独に対してp<0.01)。5−ジオールでの治療は、尿のクレアチニンに対するカルシウムの割合に対しては統計学的に有意な抑制効果を示さなかった。最高用量の5−ジオールは血清コレステロールの有意な23%(p<0.01)の減少を引き起こしたが、EM−800の添加は血清コレステロールを62%減少させた(p<0.01)。このデータは、骨形成に対する5−ジオールの刺激効果を明確に示し、5−ジオールが弱いエストロゲンであっても、骨形成に対するその刺激効果がアンドロゲン作動性効果によって優勢に維持されることを示唆する。そのうえ、EM−800および5−ジオールの骨量に対する付加的な刺激効果は、ラットにおける抗エストロゲンEM−800の骨節約効果を示すものである。5−ジオールおよびEM−800の両方のコレステロール低下活性は、心臓血管系の疾患の予防に関して興味深い有用性がありうる。
【0144】
【表5】

【0145】
実施例6
本発明の好適な化合物の合成例
(S)-(+)-7-ヒドロキシ-3-(4'-ヒドロキシフェニル)-4-メチル-2-(4''-(2'''-ピペリジノエトキシ)フェニル)-2H-1-ベンゾピラン塩酸塩 EM-01538 (EM-652, HCl)の合成
【0146】
【化5】

【0147】
工程A:BF3・Et2O、トルエン;100℃;1時間。
工程C:3,4−ジヒドロピラン、p−トルエンスルホン酸一水和物、酢酸エチル;窒素下25℃、16時間、ついでイソプロパノール中で結晶化。
【0148】
工程D、EおよびF:
(1)ピペリジン、トルエン、Dean & Stark装置、窒素下還流;(2)1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン、DMF、還流3時間;
(3)CH3MgCl、THF、−20〜0℃、ついで室温24時間;
工程G、H:(1S)-(+)-10-カンファースルホン酸、アセトン、水、トルエン、室温、48時間。
【0149】
工程HH:95%エタノール、70℃、ついで室温3日間。
工程HHR:母液の再利用および工程HHの洗浄
(S)-10-カンファースルホン酸、還流;36時間、ついで室温16時間。
工程I:
(1)DMF水溶液、Na2CO3、酢酸エチル;
(2)エタノール,希HCl;
(3)水。
【0150】
2-テトラヒドロピラニルオキシ-4-ヒドロキシ-2'-(4''-テトラヒドロピラニルオキシフェニル)アセトフェノンの合成(4)。2,4-ジヒドロキシ-2'-(4''-ヒドロキシフェニル)アセトフェノン 3 (97.6 g, 0.4 mole)(Chemsyn Science Laboratories, Lenexa, Kansasから入手可能)の3,4-ジヒドロピラン (218 ml, 3.39 mole)および酢酸エチル (520 ml) 中の懸濁液をp-トルエンスルホン酸一水和物(0.03 g, 0.158 mmole)を用い約25℃で処理した。該反応混合物を窒素下、外部加熱なしで、約16時間撹拌した。ついで混合物を炭酸水素ナトリウム (1 g)および塩化ナトリウム (5 g)の水 (100 ml)中の溶液で洗浄した。相分離させ、有機相 を塩水 (20 ml)で洗浄した。各洗浄を50 ml 酢酸エチルで戻し抽出した。全有機相をあわせ、硫酸ナトリウムを通して濾過した。
【0151】
溶媒(約600ml)を大気圧で蒸留によって除去し、イソプロパノール(250ml)を加えた。さらに溶媒(約300ml)を大気圧で蒸留し、イソプロパノール(250ml)を加えた。さらに溶媒(約275ml)を大気圧で蒸留し、イソプロパノール(250ml)を加えた。該溶液を撹拌しながら25℃で冷却し、12時間後、結晶固体を濾取し、イソプロパノールで洗浄し、乾燥させた(116.5g、70%)。
【0152】
4-ヒドロキシ-4-メチル-2-(4'-[2''-ピペリジノ]-エトキシ)フェニル-3-(4'''-テトラヒドロピラニルオキシ)フェニル-7-テトラヒドロピラニルオキシ-クロマン (10) の合成。2-テトラヒドロピラニルオキシ-4-ヒドロキシ-2'-(4''-テトラヒドロピラニルオキシフェニル)アセトフェノン 4 (1 kg、2.42 mole)、4-[2-(1-ピペリジノ)エトキシ]ベンズアルデヒド 5 (594 g、2.55 mole)(Chemsyn Science Laboratories, Lenexa, Kansasから入手可能)およびピペリジン (82.4 g, 0.97 mole) (Aldrich Chemical Company Inc., Milwaukee, Wis. から入手可能)のトルエン (8L)中の溶液をDean & Stark装置を用いて、一当量の水 (44 mL)が集まるまで窒素下還流した。
【0153】
トルエン(6.5L)を大気圧で蒸留によって除去した。ジメチルホルムアミド(6.5L)および1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン (110.5g、0.726mol) を加えた。該溶液を室温で約8時間撹拌してカルコン(chalcone)8をクロマノン(chromanone)9へ異性化し、ついで水および氷(8L)ならびにトルエン(4L)の混合物を添加した。相分離させ、トルエン層を水洗浄(5L)した。混合した水性洗浄液をトルエン抽出(3×4L)した。混合したトルエン抽出液を最終的に塩水(brine)洗浄(3×4L)し、大気圧で5.5Lまで濃縮し、ついで−10℃まで冷却した。
【0154】
引き続き外部冷却し、および窒素下撹拌し、塩化メチルマグネシウムのTHF(2.5L、7.5mole)中の3M溶液 (Aldrich Chemical Company Inc., Milwaukee, Wis. から入手可能) を添加し、温度を0℃以下に維持した。全てのグリニャール試薬を添加した後、外部冷却を除去し、混合物を室温まで暖めた。混合物をこの温度で約24時間撹拌した。
【0155】
再び混合物を約-20℃まで冷却し、引き続き外部冷却し、および撹拌しながら、飽和塩化アンモニウム溶液 (200 ml)をゆっくりと添加し、温度を20℃以下に維持した。該混合物を2時間撹拌し、ついで飽和塩化アンモニウム溶液(2L)およびトルエン(4L)を加え、5分間撹拌した。相分離させ、水層をトルエン抽出(2x4L)した。混合したトルエン抽出物を溶液が均一になるまで希塩酸で洗浄し、ついで塩水(3x4L)で洗浄した。該トルエン溶液を最終的に大気圧で2Lまで濃縮した。該溶液を直接次の工程に用いた。
【0156】
(2R,S)-7-ヒドロキシ-3-(4'-ヒドロキシフェニル)-4-メチル-2-(4''-[2'''-ピペリジノ]エトキシ)フェニル)-2H-1-ベンゾピラン (1S)-10-カンファースルホン酸塩 (±12)の合成。4-ヒドロキシ-4-メチル-2-(4'-[-2''-ピペリジノ]-エトキシ)-フェニル-3-(4'''-テトラヒドロピラニルオキシ)フェニル-7-テトラヒドロピラニルオキシクロマン (10)のトルエン溶液に、アセトン (6 L)、水 (0.3 L)および(S)-10-カンファースルホン酸 (561 g、2.42 mole) (Aldrich Chemical Company Inc., Milwaukee, Wis. から入手可能)を添加した。該混合物を窒素下で48時間撹拌し、その後固体の(2R,S)-7-ヒドロキシ-3-(4'-ヒドロキシフェニル)-4-メチル-2-(4''-[2'''-ピペリジノ]エトキシ)フェニル)-2H-1-ベンゾピラン (1S)-10-カンファースルホン酸塩 (12)を濾過し、アセトンで洗浄し、および乾燥した(883 g)。該物質をさらに精製することなく次の(HH)工程に用いた。
【0157】
(2S)-7-ヒドロキシ-3-(4'-ヒドロキシフェニル)-4-メチル-2-(4''-[2'''-ピペリジノ]エトキシ)フェニル)-2H-1-ベンゾピラン (1S)-10-カンファースルホン酸塩 (13, (+)-EM-652(1S)-CSA塩) の合成。(2R,S)-7-ヒドロキシ-3-(4'-ヒドロキシフェニル)-4-メチル-2-(4''-[2'''-ピペリジノ]エトキシ)フェニル)-2H-ベンゾピラン (1S)-10-カンファースルホン酸塩±12 (759 g)の95% エタノール中の懸濁液を撹拌しながら固体が溶解するまで約70℃へ加温した。該溶液を撹拌しながら室温まで冷却させ、ついで少量の(2S)-7-ヒドロキシ-3-(4'-ヒドロキシフェニル)-4-メチル-2-(4''-[2'''-ピペリジノ]エトキシ)フェニル)-2H-1-ベンゾピラン (1S)-10-カンファースルホン酸塩 13の結晶を種にした。該溶液を室温で合計約3日間撹拌した。結晶を濾過し、95% エタノールで洗浄し、乾燥させた(291 g、76%)。生産物のdeは94.2%であり、純度は98.8%であった。
【0158】
(S)-(+)-7-ヒドロキシ-3-(4'-ヒドロキシフェニル)-4-メチル-2-(4''-(2'''-ピペリジノエトキシ)フェニル)-2H-1-ベンゾピラン 塩酸塩 EM-01538 (EM-652, HCl) の合成。化合物13 (EM-652-(+)-CSA塩、500 mg、0.726 mmol)のジメチルホルムアミド (11 μL, 0.15 mmol)中の懸濁液を0.5M水性炭酸ナトリウム溶液 (7.0 mL、3.6 mmol)で処理し、15分間撹拌した。該懸濁液を酢酸エチル (7.0 mL)で処理し、4時間撹拌した。ついで有機相を水性飽和炭酸ナトリウム溶液(2 x 5 mL)および塩水 (1 x 5 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ濃縮した。その結果得られたピンク色の泡のエタノール (2 mL)中の溶液(EM-652)を2 N 塩酸 (400 μL, 0.80 mmol)で処理し、1時間撹拌し、蒸留水 (5 mL)で処理し、および30分間撹拌した。その結果得られた懸濁液を濾過し、蒸留水 (5 mL)で洗浄し、大気中および高真空下で乾燥させ(65℃)、クリーミーな粉末 (276 mg, 77%)を得た:微細なオフホワイトの粉末;熱量測定スキャン;溶解ピークは219℃で開始、△H=83 J/g;[α]24D=154°、メタノール中、10 mg/ml;1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ(ppm) 1.6 (ブロード, 2H, H-4'''), 1.85 (ブロード, 4H, H-3''''および5''''), 2.03 (s, 3H, CH3), 3.0および3.45 (ブロード, 4H, H-2''''および6''''), 3.47 (t, J=4.9Hz, 2H, H-3’’’), 4.26 (t, J=4.9Hz, 2H, H-2'''), 5.82 (s, 1H, H-2), 6.10 (d, J=2.3Hz, 1H, H-8), 6.35 (dd, J=8.4, 2.43 Hz, 1H, H-6), 6.70 (d, J=8.6 Hz, 2H, H-3',およびH-5'), 6.83 (d, J=8.7Hz, 2H, H-3''およびH-5''), 7.01 (d, J=8.5 Hz, 2H, H-2'およびH-6'), 7.12 (d, J=8.4Hz, 1H, H-5), 7.24 (d, J=8.6Hz, 2H, H-2''およびH-6''); 13C RMN (CD3OD, 75 MHz) δppm 14.84, 22.50, 23.99, 54.78, 57.03, 62.97, 81.22, 104.38, 109.11, 115.35, 116.01, 118.68, 125.78, 126.33, 130.26, 130.72, 131.29, 131.59, 134.26, 154.42, 157.56, 158.96, 159.33. 基本成分: C, H, N, Cl : 理論値 ; 70.51, 6.53, 2.84, 7.18, %, 測定値 : 70.31, 6.75, 2.65, 6.89% 。
【0159】
実施例7
アンドロスト-5-エン-3β,17β-ジオールのプロドラッグの生物学的利用能のインビボアッセイ
1)原理
性ステロイド前駆体のプロドラッグの生物学的利用能のアッセイを該化合物の単独の経口投与後の該化合物の血漿濃度の測定により雄性Sprague Dawleyラットにおいて実施した。
【0160】
a)動物および処置
体重275-350gの雄性Sprague Dawleyラット [Crl:CD(SD)Br]をCharles-River Canada社から入手し、馴化期間はケージあたり2匹を飼育し、研究期間は個々に飼育した。該動物を12時間 明: 12時間 暗 (08:00に点灯)の措置下に維持した。該動物は認証げっ歯類食餌 (Lab Diet # 5002、ペレット)を与えられ、水道水は自由摂取可能にした。投与前の夕方に開始して、ラットを絶食させた(水のみ利用)。
【0161】
各試験化合物を、0.4%メチルセルロース中の懸濁液として、経口胃管栄養法により、150μmg/ラットの投与量で3動物に投与した。胃管栄養法1、2、3、4および7時間後に、一の血液試料−0.7 mlをイソフルラン誘導麻酔下のラットの頚静脈から採取した。血液試料をただちに冷凍したEDTA含有ミクロテナー(Microtainer)に移し、3000rpm、10分間の遠心分離までは氷水浴中に保持した。血液採取後、迅速に(50分間以内に)血漿分離を実施した。ついで、血漿0.25mlの1アリコートをホウケイ酸チューブ(13 x 100)に移し、ドライアイス上で迅速に凍結させた。GC-MSによる性ステロイドまたは性ステロイド前駆体の血漿濃度の測定まで、血漿試料を−80℃で維持した。
【0162】
結果:
経口吸収およびAUCsを図12および13に示した。
【0163】
医薬組成例
以下に、例示でありこれに限定されるものではないが、好適な活性SERM EM-800またはEM-1538および好適な活性性ステロイド前駆体 DHEA、EM-1304またはEM-01474-Dを利用するいくつかの医薬組成物を記載する。本発明の他の化合物またはその組成物は、EM-800またはEM-1538、DHEA、EM-1304またはEM-01474-Dに代えて(または加えて)用いることができる。活性成分の濃度は本明細書中に記載するように広い範囲で異なりうる。含まれうる他の成分の量およびタイプは同業者に周知である。
【0164】
例A
【表6】

【0165】
例B
【表7】

【0166】
キット例
以下に、例示でありこれに限定されるものではないが、好適な活性SERM EM-800またはEM-1538および好適な活性性ステロイド前駆体 DHEA、EM-1304またはEM-01474-Dを利用するいくつかのキットを記載する。本発明の他の化合物またはその組成物は、EM-800またはEM-1538、DHEA、EM-1304またはEM-01474-Dに代えて(または加えて)用いることができる。活性成分の濃度は本明細書中に記載するように広い範囲で異なりうる。含まれうる他の成分の量およびタイプは同業者に周知である。
【0167】
例A
SERは経口投与され、性ステロイド前駆体は経皮投与される。
SERM組成
【表8】

【0168】
【表9】

【0169】
例B
SERMおよび性ステロイド前駆体は経口投与される。
【表10】

【0170】
【表11】

【0171】
上記処方中、他のSERMをEM-800またはEM-01538と交換でき、および他の性ステロイド阻害剤をDHEA、EM-1304またはEM-01474-Dと交換できる。1以上のSERMまたは1以上の前駆体が、合計重量%が好ましくは上記例中で与えられた単独の前駆体または単独のSERMについての重量%のものである場合に包含されうる。
【0172】
本発明は好適な具体例および例という形で記載されているが、これらに限定されるものではない。当業者は広い適用性および本明細書中特許請求の範囲によってのみ制限される発明の範囲を容易に理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】DHEA(10mg、経皮、1日1回)またはEM−800(75μg、経口、1日1回)の単独または組合せでの9ヶ月間の処置の、ラットにおけるDMBA誘発性乳癌の発生率に対する279日の観察期間の効果を示す。データを各群の動物の総数の割合として表す。
【図2A】DHEA(10mg、経皮、1日1回)またはEM−800(75μg、経口、1日1回)の単独または組合せでの9ヶ月間の処置の、腫瘍保有動物当りの平均腫瘍数(A)および腫瘍保有ラット当りの平均腫瘍サイズ(B)に対する279日の観察期間の効果を示す。データを平均±SEMとして表す。
【図2B】DHEA(10mg、経皮、1日1回)またはEM−800(75μg、経口、1日1回)の単独または組合せでの9ヶ月間の処置の、腫瘍保有動物当りの平均腫瘍数(A)および腫瘍保有ラット当りの平均腫瘍サイズ(B)に対する279日の観察期間の効果を示す。データを平均±SEMとして表す。
【図3A】DHEA(10mg、経皮、1日1回)またはEM−800(75μg、経口、1日1回)の単独または組合せでの9ヶ月間の処置の、ラットにおける血清トリグリセリド(A)およびコレステロール(B)のレベルに対する効果を示す。データを平均±SEMとして表す。**:P<0.01実験対各コントロール。
【図3B】DHEA(10mg、経皮、1日1回)またはEM−800(75μg、経口、1日1回)の単独または組合せでの9ヶ月間の処置の、ラットにおける血清トリグリセリド(A)およびコレステロール(B)のレベルに対する効果を示す。データを平均±SEMとして表す。**:P<0.01実験対各コントロール。
【図4】A)エストロンを補充した卵巣摘出(OVX)ヌードマウスにおける平均ZR−75−1腫瘍サイズに対する、1日2回経皮投与した漸増用量のDHEA(0.3mg、1.0mgまたは3.0mg)の効果を示す。ビヒクル単独を投与したコントロールOVXマウスをさらなるコントロールとして使用する。開始腫瘍サイズを100%とした。DHEAを50%エタノール−50%プロピレングリコール溶液0.02ml中で背部皮膚に経皮(p.c.)投与した。B)エストロンを補充したOVXヌードマウスにおけるZR−75−1腫瘍重量に対する9.5ヶ月間の漸増用量のDHEAまたはEM−800の単独または組合せでの処置の効果を示す。**、p<0.01、処置対エストロン補充コントロールOVXマウス。
【図5】エストロンを補充した卵巣摘出(OVX)ヌードマウスにおける平均ZR−75−1腫瘍サイズに対する9.5ヶ月間の、漸増経口用量の抗エストロゲンEM−800(15μg、50μgまたは100μg)(A)またはEM−800(15μg)と組合せた漸増用量のDHEA(0.3、1.0または3.0mg)もしくはEM−800単独の経皮投与(B)の効果を示す。開始腫瘍サイズを100%とした。ビヒクル単独を投与したコントロールOVXマウスをさらなるコントロールとして使用した。エストロンを1日1回0.5μgの用量で皮下投与し、DHEAを50%エタノール−50%プロピレングリコールに溶解し、0.02mlの容量で1日2回背部皮膚領域に塗布した。ビヒクル単独を投与したOVX動物についても比較した。
【図6】卵巣摘出ラットにおける海綿質容積に対するデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)単独またはフルタミドもしくはEM−800との組合せでの12ヶ月の処置の効果を示す。インタクトな動物をさらなるコントロールとして追加する。データを平均±SEMとして表す。**p<0.01対OVXコントロール。
【図7】卵巣摘出ラットにおける海綿質数に対するデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)単独またはフルタミドもしくはEM−800との組合せでの12ヶ月の処置の効果を示す。インタクトな動物をさらなるコントロールとして追加する。データを平均±SEMとして表す。**p<0.01対OVXコントロール。
【図8A】インタクトなコントロール(A)、卵巣摘出コントロール(B)およびDHEA単独(C)またはフルタミド(D)もしくはEM−800(E)との組合せで処置した卵巣摘出ラット由来の近位脛骨骨幹端を示す。卵巣摘出コントロール動物(B)における海綿質(T)の量の減少およびDHEA投与(C)後に誘発された海綿質容積(T)の有意な増加に留意のこと。DHEAへのフルタミドの添加は、海綿質容積に対するDHEAの効果を部分的にブロックし(D)、DHEAおよびEM−800の組合せは、卵巣摘出関連骨損失に対する完全な保護を提供した。改変3色マッソン−ゴールドナー(Masson-Goldner)、倍率×80。T:海綿質、GP:成長板。
【図8B】インタクトなコントロール(A)、卵巣摘出コントロール(B)およびDHEA単独(C)またはフルタミド(D)もしくはEM−800(E)との組合せで処置した卵巣摘出ラット由来の近位脛骨骨幹端を示す。卵巣摘出コントロール動物(B)における海綿質(T)の量の減少およびDHEA投与(C)後に誘発された海綿質容積(T)の有意な増加に留意のこと。DHEAへのフルタミドの添加は、海綿質容積に対するDHEAの効果を部分的にブロックし(D)、DHEAおよびEM−800の組合せは、卵巣摘出関連骨損失に対する完全な保護を提供した。改変3色マッソン−ゴールドナー(Masson-Goldner)、倍率×80。T:海綿質、GP:成長板。
【図8C】インタクトなコントロール(A)、卵巣摘出コントロール(B)およびDHEA単独(C)またはフルタミド(D)もしくはEM−800(E)との組合せで処置した卵巣摘出ラット由来の近位脛骨骨幹端を示す。卵巣摘出コントロール動物(B)における海綿質(T)の量の減少およびDHEA投与(C)後に誘発された海綿質容積(T)の有意な増加に留意のこと。DHEAへのフルタミドの添加は、海綿質容積に対するDHEAの効果を部分的にブロックし(D)、DHEAおよびEM−800の組合せは、卵巣摘出関連骨損失に対する完全な保護を提供した。改変3色マッソン−ゴールドナー(Masson-Goldner)、倍率×80。T:海綿質、GP:成長板。
【図8D】インタクトなコントロール(A)、卵巣摘出コントロール(B)およびDHEA単独(C)またはフルタミド(D)もしくはEM−800(E)との組合せで処置した卵巣摘出ラット由来の近位脛骨骨幹端を示す。卵巣摘出コントロール動物(B)における海綿質(T)の量の減少およびDHEA投与(C)後に誘発された海綿質容積(T)の有意な増加に留意のこと。DHEAへのフルタミドの添加は、海綿質容積に対するDHEAの効果を部分的にブロックし(D)、DHEAおよびEM−800の組合せは、卵巣摘出関連骨損失に対する完全な保護を提供した。改変3色マッソン−ゴールドナー(Masson-Goldner)、倍率×80。T:海綿質、GP:成長板。
【図8E】インタクトなコントロール(A)、卵巣摘出コントロール(B)およびDHEA単独(C)またはフルタミド(D)もしくはEM−800(E)との組合せで処置した卵巣摘出ラット由来の近位脛骨骨幹端を示す。卵巣摘出コントロール動物(B)における海綿質(T)の量の減少およびDHEA投与(C)後に誘発された海綿質容積(T)の有意な増加に留意のこと。DHEAへのフルタミドの添加は、海綿質容積に対するDHEAの効果を部分的にブロックし(D)、DHEAおよびEM−800の組合せは、卵巣摘出関連骨損失に対する完全な保護を提供した。改変3色マッソン−ゴールドナー(Masson-Goldner)、倍率×80。T:海綿質、GP:成長板。
【図9】4日間毎日経口投与した漸増用量(0.01、0.03、0.1、0.3および1mg/kg)のEM−800、EM−1538およびラロキシフェン(Raloxifene)(EM−1105)の、卵巣摘出ラットのコレステロールレベルに対する効果を示す。
【図10】デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)単独またはEM−1538(EM−652.HCl)との組合せでの34週間の処置の、卵巣摘出ラットにおける腰椎BMDに対する効果を示す。インタクトな動物をさらなるコントロールとして追加する。データを平均±SEMとして表す。**p<0.01対OVXコントロール。
【図11】閉経パラメーターに対するSERM(EM−652)およびDHEAの組合せの効果を示す。負の効果は予想されない。
【図12】雄性ラットにおける本発明の好ましい性ステロイド前駆体の単回経口吸収(150μmol/ラット)後の時間の関数(X軸)のDHEAの血漿濃度(ng/mL)(Y軸)を示す。箱中に、これらの化合物によって誘発されたDHEAのAUC 24hを報告する。EM−760 デヒドロエピアンドロステロンEM−900 アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールEM−1304 アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオール3アセテートEM−1305−CS アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールジアセテートEM−1397 アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオール3アセテート17ベンゾエートEM−1400 アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールジベンゾエートEM−1410 アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールジプロピオネートEM−1474−D アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールジヘミスクシネート
【図13】雄性ラットにおける本発明の性ステロイド前駆体の単回経口吸収(150μmol/ラット)後の時間の関数(X軸)のアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールの血漿濃度(ng/mL)(Y軸)を示す。箱中に、これらの化合物によって誘発されたアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールのAUC 24hを報告する。EM−760 デヒドロエピアンドロステロンEM−900 アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールEM−1304 アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオール3アセテートEM−1305−CS アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールジアセテートEM−1397 アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオール3アセテート17ベンゾエートEM−1400 アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールジベンゾエートEM−1410 アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールジプロピオネートEM−1474−D アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールジヘミスクシネート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨粗鬆症、高コレステロール血症、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、乳癌、子宮内膜癌、子宮癌、卵巣癌、膣乾燥および筋肉量の減少からなる群から選択される症状の治療または該症状に罹患する危険性を減ずることを必要とする患者の、デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールおよび4−アンドロステン−3,17−ジオンからなる群から選択される性ステロイド前駆体レベルを増加させること、さらに、該患者へ治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを組み合わせ療法の一部として投与することを含む、骨粗鬆症、高コレステロール血症、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、乳癌、子宮内膜癌、子宮癌、卵巣癌、膣乾燥および筋肉量の減少からなる群から選択される症状の治療または該症状に罹患する危険性を減ずるための方法。
【請求項2】
a)薬学上許容される賦形剤、希釈剤または担体、
b)デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールおよび4−アンドロステン−3,17−ジオンからなる群から選択される少なくとも1の性ステロイド前駆体の治療有効量、
c)少なくとも1の選択的エストロゲン受容体モジュレーターの治療有効量
を含有する、医薬組成物。
【請求項3】
デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールおよび4−アンドロステン−3,17−ジオン、およびインビボでこれら前駆体へと変換されるプロドラッグからなる群から選択される少なくとも1の性ステロイド前駆体の治療有効量を含有する第1の容器および;少なくとも1の選択的エストロゲン受容体モジュレーターの治療有効量を含有する第2の容器を含有するキット。
【請求項4】
治療有効量のビスフォスホネートを、組み合わせ療法の一部として投与することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1のさらなる容器を含有し、該容器が少なくとも1のビスフォスホネートの治療有効量を含有している、請求項3記載のキット。
【請求項6】
組成物が、さらに少なくとも1のビスフォスホネートの治療有効量を含有している、請求項2記載の組成物。
【請求項7】
さらに治療有効量のプロゲスチンを投与することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
該前駆体が4−アンドロステン−3,17−ジオンではない、前記各項いずれかに記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項9】
乳癌に罹患する危険性を減ずることが望ましい患者へ、選択的エストロゲン受容体モジュレーターの予防有効量を投与することを含む、乳癌に罹患する危険性を減ずる方法。
【請求項10】
選択的エストロゲン受容体モジュレーターが、以下の性質:
a)両芳香族環が1または2の介在炭素原子により隔てられている二つの芳香族環であって、両方の芳香族環は置換されていないかまたはヒドロキシル基またはインビボでヒドロキシル基へと変換される基にて置換されいるかのいずれかである二つの芳香族環を有する;
b)芳香族環および三級アミン官能基もしくはその塩を有する側鎖を有する。
【請求項11】
側鎖が以下の群:
【化1】

からなる基から選択される、請求項10記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項12】
2つの芳香族環の両方がフェニルであり、側鎖がメチン、メチレン、−CO、−O―、および―S−、芳香族環および第三アミン官能基もしくはその塩からなる群から選択される、請求項10記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項13】
選択的エストロゲン受容体モジュレーターがベンゾチオフェン誘導体、トリフェニルエチレン誘導体、インドール誘導体、ベンゾピラン誘導体、およびセントクロマン誘導体からなる群から選択される、請求項10記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項14】
選択的エストロゲン受容体モジュレーターが、以下の式:
【化2】

(式中、R1およびR2は独立してそれぞれ水素、ヒドロキシルおよびインビボでヒドロキシルに変換される基からなる群から選択される;
3およびR4は、それぞれ独立してC1−C4アルキルからなる群から選択されるかまたは、R3、R4および両者が結合している窒素が共に、ピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノおよびモルホリノからなる構造から選択される;
Aは−CO−、−CHOH、および−CH2−からなる群から選択される;
Bはフェニレン、ピリジリデンおよび−シクロC422−からなる群から選択される)
で示されるベンゾチオフェン誘導体である、請求項10記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項15】
選択的エストロゲン受容体モジュレーターがラロキシフェン、LY353381およびLY335563からなる群から選択される、請求項14記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項16】
選択的エストロゲン受容体モジュレーターが以下の式:
【化3】

(式中、Dは−OCH2CH2N(R3)R4または−CH=CH−COOHである(RおよびR4はそれぞれ独立してC1−C4アルキルであるかまたは、R,R、および両者が結合している窒素原子が合わせて、ピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノおよびモルホリノからなる群から選択される環状構造をとっている);
EおよびKはそれぞれ独立して、水素またはヒドロキシルである;
Jは水素またはハロゲンである)
で示されるトリフェニルエチレン誘導体である、請求項10記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項17】
選択的エストロゲン受容体モジュレーターがタモキシフェン、OH−タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、ヨードキシフェンおよびGW5638からなる群から選択される、前記請求項1から9いずれかに記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項18】
選択的エストロゲン受容体モジュレーターが以下の式
【化4】

(式中、Dは−OCH2CH2N(R7)R8、−CH=CH−CON(R7)R8、−CC−(CH2)n−N(R7)R8(R7およびR8はそれぞれ独立してC1−C6アルキルからなる群から選択されるか、またはR7、R8および両者が結合している窒素原子が共にピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノ、モルホリノ環からなる群から選択される、環状構造を形成している);
Xは水素およびC1−C6アルキルからなる群から選択される;
1、R2、R3、R4、R5、およびR6はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、C1−C6アルキル、およびインビボでヒドロキシル基に変換される基からなる群から選択される)
で示されるインドール誘導体である、請求項10記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項19】
選択的エストロゲン受容体モジュレーターが式:
【化5】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシルまたはインビボでヒドロキシル基へと変換される基である;
5およびR6はそれぞれ独立して水素またはC1−C6アルキルである;
Dは−OCH2CH2N(R3)R4(R3およびR4はそれぞれ独立してC1−C4アルキルからなる群から選択されるかまたは、R3、R4および両者が結合している窒素原子が共にピロリジノ、ジメチルー1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノ、モルホリノ環からなる群から選択される環状基を構成している)である)
で示されるセントクロマン誘導体である、請求項10記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項20】
セントクロマン誘導体が、(3,4−トランス−2,2−ジメチル−3−フェニル−4−[4−(2−(2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ)フェニル]−7−メトキシクロマン)である、請求項19記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項21】
選択的エストロゲン受容体モジュレーターが下式:
【化6】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して水素、ヒドロキシルまたはインビボで水素に変換される部分である;
Zは2価の閉鎖部分である;
R100はLを4-10原子分、B−環から隔てる2価の基である;
Lは−SO−、−CON−、−N<、および−SON<からなる群から選択される2価または3価の極性基である;
1は水素、C1−C5炭化水素または、G2およびLと結合して5−から7−員の複素環を形成させる2価の基、もしくはハロまたはこれらの不飽和誘導体からなる群から選択される;
2は存在しないか、または水素、C1からC5の炭化水素、もしくはG1およびLを結合して5−から7−員の複素環を形成する2価の基、およびハロまたはこれらの不飽和誘導体からなる群から選択される;
3は水素、メチルおよびエチルからなる群から選択される)
の構造を有している、請求項10記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項22】
Zが−O−、−NH−、−S−、および−CH2−からなる群から選択される、請求項21記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項23】
該化合物が下式:
【化7】

(式中、Dは−OCH2CH2N(R3)R4(R3およびR4はそれぞれ独立してC1−C4アルキルからなる群から選択されるかまたは、R3、R4および両者が結合している窒素原子が共にピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノ、モルホリノ環からなる群から選択される、環状構造を形成している)である;
1およびR2はそれぞれ独立して水素、ヒドロキシル、およびインビボでヒドロキシルに変換される基からなる群から選択される)
で示されるベンゾピラン誘導体である、請求項22記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項24】
ベンゾピラン化合物が、2位の炭素についての絶対配置がS型である光学活性化合物であるかまたはその薬学的に許容される塩であり、該化合物の構造が下式:
【化8】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、ヒドロキシルおよびインビボでヒドロキシルに変換される基からなる群から選択される;
3は飽和、不飽和もしくは置換ピロリジニル、飽和、不飽和もしくは置換ピペリジノ、飽和、不飽和もしくは置換ピペリジニル、飽和、不飽和もしくは置換モルホリノ、窒素含有環状基、窒素含有多環式基、およびNRaRb(RaおよびRbはそれぞれ独立して水素、直鎖もしくは分岐鎖状のC1−C6アルキル、直鎖もしくは分岐鎖状のC2−C6アルケニル、および直鎖もしくは分岐鎖状のC2−C6アルキニルである)である)
を有するものである、請求項23記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項25】
該化合物もしくはその塩が実質的に(2R)−エナンチオマーを含有しない、請求項24記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項26】
選択的エストロゲン受容体モジュレーターが以下:
【化9】

からなる群から選択される、請求項23記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項27】
ベンゾピラン誘導体が、酢酸、アジピン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、くえん酸、フマル酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、塩酸、ヒドロクロロチアジド酸、ヒドロキシナフトエ酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、メチル硫酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、硝酸、パルミチン酸、ピバリン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、テレフタル酸、p−トルエンスルホン酸、および吉草酸からなる群から選択される酸との塩である、請求項23記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項28】
酸が塩酸である。請求項27記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項29】
選択的エストロゲン受容体モジュレーターが、式:
【化10】

であり、性ステロイド前駆体が、デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールからなる群から選択される、請求項1から9いずれかに記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項30】
性ステロイド前駆体がデヒドロエピアンドロステロンである、請求項1から9いずれかに記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項31】
インビボで性ステロイド前駆体へと変換される化合物が、
【化11】

(式中、XはH−、ROC−、RCO2CHRa−およびRbSO2−(Rは水素、直鎖または分岐鎖(C1−C18)アルキル、直鎖または分岐鎖−(C2−C18)アルケニル、直鎖または分岐鎖(C2−C18)アルキニル、アリール、フリル、直鎖または分岐鎖−(C1−C18)アルコキシ、直鎖または分岐鎖−(C2−C18)アクケニルオキシ、直鎖または分岐鎖−(C2−C18)アルキニルオキシ、アリールオキシ、フリルオキシ、およびこれらのハロゲン化物またはカルボキシル化類縁体からなる群から選択される;Raは水素または(C1−C6)アルキルである;およびRbはヒドロキシル(またはその塩)、メチル、フェニルおよびp−トルイルからなる群から選択される)からなる群から選択される;
Yはカルボニル酸素であるかまたはYはβ−OX(Xは上記と同意)およびα−Hを示す)
で示される一般式で示される化合物である、請求項2,3または8記載の医薬組成物またはキット。
【請求項32】
インビボで性ステロイド前駆体へと変換される化合物が、
【化12】

からなる群から選択される、請求項2、3または8記載の医薬組成物またはキット。
【請求項33】
薬学上許容される賦形剤、希釈剤または担体、治療有効量の
【化13】

および治療有効量のデヒドロエピアンドロステロンを含有する、医薬組成物。
【請求項34】
選択的エストロゲン受容体モジュレーターがTSE424である、請求項18記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−191484(P2007−191484A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54169(P2007−54169)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【分割の表示】特願2000−553043(P2000−553043)の分割
【原出願日】平成11年6月10日(1999.6.10)
【出願人】(598009810)アンドルシェルシュ・インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】ENDORECHERCHE, INC.
【Fターム(参考)】