説明

選択的グルココルチコイド受容体リガンドとしてのD−ホモアンドロスタ−17−イル−カーバメート誘導体

本発明は、様々な自己免疫性および炎症性疾患または状態の治療に有用な選択的グルココルチコイド受容体リガンドであるD−ホモアンドロスタ−17−イル−カーバメート誘導体を目的とする。本発明はまた医薬組成物および使用方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細胞内受容体(IR)は、遺伝子発現の調節に関与する構造的に近縁のタンパク質のクラスである。ステロイドホルモン受容体は、典型的にはエストラジオール、プロゲステロンおよびコルチゾールのような内因性ステロイドから成る天然リガンドをもつこのスーパーファミリーのサブセットである。これらの受容体に対する人工リガンドはヒトの健康に重要な役割を果たし、これらの受容体のうちでグルココルチコイド受容体はヒトの生理および免疫応答に不可欠な役割を有している。グルココルチコイド受容体と相互作用するステロイドは強力な抗炎症剤であることが証明された。本発明の目的は、強力な抗炎症性および免疫抑制活性を有しており副作用、効力、毒性および/または代謝に関してステロイド系グルココルチコイドリガンドよりも優れた利点を有している選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターである新規な化合物のクラスを提供することである。
【発明の開示】
【0002】
本発明は、様々な自己免疫性および炎症性疾患または状態の治療に有用な選択的グルココルチコイド受容体リガンドであるD−ホモアンドロスタ−17−イル−カーバメート誘導体を目的とする。本発明はまた、医薬組成物および使用方法を含む。
【0003】
本発明は、式I
【0004】
【化2】

[式中、
およびRは独立に、R、−C(O)−Rおよび−C(O)−N(R)Rから成るグループから選択され、
およびRは独立に、水素、C1−10アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−10シクロアルキル、アリール、ヘテロアルール、ヘテロシクリルおよびC1−10フルオロアルキルから成るグループから選択され、
Raのおのおのは独立に、水素、C1−10アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−10シクロアルキル、アリール、ヘテロアルール、ヘテロシクリルおよびC1−10フルオロアルキルから成るグループから選択される]
の化合物属を含む。
【0005】
この属内で、本発明はRが水素およびCH−C(O)−から選択される式Iの化合物の亜属を含む。
【0006】
同じくこの属内で、本発明はRが水素およびCF−(CO)−から選択される式Iの化合物の亜属を含む。
【0007】
同じくこの属内で、本発明はRが水素である式Iの化合物の亜属を含む。この亜属内で、本発明はRがC1−10アルキルおよびC3−10シクロアルキルから選択される式Iの化合物のクラスを含む。
【0008】
同じくこの属内で、本発明はRが水素またはCF−(CO)−から選択され、Rが水素およびCH−C(O)−から選択され、Rが水素であり、RがC1−10アルキルおよびC3−10シクロアルキルから選択される式Iの化合物の亜属を含む。
【0009】
この亜属内で、本発明はRがC1−6アルキルである式Iの化合物のクラスを含む。
【0010】
同じくこの亜属内で、本発明はRがシクロペンチル、シクロヘキシルおよびアダマンタニルから選択される式Iの化合物のクラスを含む。
【0011】
同じくこの亜属内で、本発明はRおよびRが水素である式Iの化合物のクラスを含む。
【0012】
本発明の代表例は以下の化合物である:
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(1−アダマンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(2−ペンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(2−メチル−ペンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(3−メチル−2−プロピル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−トリフルオロアセトキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−[(アセチルオキシ)メチル]−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(1−アダマンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−[(アセチルオキシ)メチル]−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(1−アダマンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−トリフルオロアセトキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(1−アダマンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(シクロペンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(シクロヘキシル)カーバメート
または上記のいずれかの医薬的に許容される塩。
【0013】
本発明の別の実施態様は、式Iの化合物を医薬的に許容される担体と共に含む医薬組成物を包含する。
【0014】
本発明の別の実施態様は、式Iの化合物をグルココルチコイド受容体介在疾患または状態の治療に有効な量で患者に投与する、このような治療を要する哺乳類患者のグルココルチコイド受容体介在疾患または状態の治療方法を包含する。
【0015】
この実施態様は、グルココルチコイド受容体介在疾患または状態が以下のグループから選択される上記方法を包含する:組織拒絶、白血病、リンパ腫、クッシング症候群、急性副腎不全、先天性副腎過形成、リウマチ熱、結節性多発動脈炎、多肉芽腫性動脈炎、骨髄様細胞系阻害、免疫増殖/アポトーシス、HPA軸抑制および調節、高コルチゾール血症、卒中および脊髄損傷、高カルシウム血症、高グリシン血症、急性副腎不全、慢性原発性副腎不全、続発性副腎不全、先天性副腎過形成、脳水腫、血小板減少症、リトル症候群、肥満症、代謝症候群、炎症性腸疾患、全身性ループス・エリテマトーデス、結節性多発動脈炎、ウェジナー肉芽腫症、巨細胞性動脈炎、リウマトイド関節炎、若年性リウマトイド関節炎、ブドウ膜炎、枯草熱、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、血管神経性浮腫、閉塞性肺疾患、喘息、腱炎、滑液嚢炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、自己免疫性慢性活動性肝炎、臓器移植、肝炎、硬変、炎症性頭皮脱毛症、皮下脂肪組織炎、乾癬、円板状ループス・エリテマトーデス、炎症嚢胞、アトピー性皮膚炎、壊疽性膿皮症、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、全身性ループス・エリテマトーデス、皮膚筋炎、妊娠性ヘルペス、好酸球性筋膜炎、再発性多発性軟骨炎、炎症性脈管炎、サルコイドーシス、スイーツ病、反応性1型らい病、毛細血管腫、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、剥脱性皮膚炎、結節性紅斑炎、にきび、多毛症、中毒性皮膚融解症、多形性紅斑、皮膚T細胞リンパ腫、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、細胞アポトーシス、癌、カポジ肉腫、色素性網膜炎、認識能力、記憶および学習強化、抑鬱、耽溺、情緒障害、慢性疲労症候群、統合失調症、睡眠障害および不安。
【0016】
本発明の別の実施態様は、式Iの化合物をグルココルチコイド受容体の変調に有効な量で哺乳動物に投与する、哺乳動物のグルココルチコイド受容体の活性化、阻害、作動および拮抗作用の選択的変調方法を包含する。
【0017】
本発明の代表例は後述の実施例の化合物である。
【0018】
定義
異なる指示がない限り、以下の定義を使用して本発明を記載する。
【0019】
“アルキル”、および、アルコキシ、アルカノイルのような接頭辞“アルキ”を有する他の基は、直鎖状または分枝状または双方の混在する炭素鎖を意味する。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−およびtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルなどを含む。
【0020】
“フルオロアルキル”は、1つ以上の水素原子が置換可能位置の最大数までのフルオロ原子で置換されている上記に定義のアルキルを意味する。
【0021】
“アルケニル”は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、直鎖状または分枝状または双方の混在する炭素鎖を意味する。アルケニルの例は、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニルなどである。
【0022】
“アルキニル”は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含み、直鎖状または分枝状または双方の混在する炭素鎖を意味する。アルキニルの例は、エチニル、プロパルギル、3−メチル−1−ペンチニル、2−ヘプチニルなどである。
【0023】
“シクロアルキル”は、指示された数の炭素原子を有している単環、二環または三環式飽和炭素環を意味する。この用語はまた、結合点が非芳香部分に存在するアリール基に融合した単環を包含する。シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、テトラヒドロナフチル、デカヒドロナフチル、インダニル、アダマンタニルなどである。
【0024】
“アリール”は、炭素原子だけを含有する単環または二環式芳香環を意味する。この用語はまた、結合点が芳香部分に存在する単環式シクロアルキルまたは単環式ヘテロシクリル基に融合したアリール基を含む。アリールの例は、フェニル、ナフチル、インダニル、インデニル、テトラヒドロナフチル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾピラニル、1,4−ベンゾジオキサニルなどである。
【0025】
“ヘテロアリール”は、N、OおよびSから選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含有し各環に5−6原子を含む単環または二環式芳香環を意味する。ヘテロアリールの例は、ピロリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラニル、トリアジニル、チエニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、フロ(2,3−b)ピリジル、キノリル、インドリル、イソキノリルなどである。
【0026】
“ヘテロシクリル”は、N、SおよびOから選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含有し各環に3−10原子を含み結合点が炭素または窒素である単環または二環式飽和環を意味する。この用語はまた、アリールまたはヘテロアリール基に融合し結合点が非芳香部分に存在する単環式複素環を含む。“ヘテロシクリル”の例は、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、2,3−ジヒドロフロ(2,3−b)ピリジル、ベンズオキサジニル、テトラヒドロヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ジヒドロインドリルなどである。この用語はまた、芳香族でない部分不飽和の単環、例えば、窒素を介して結合した2−または4−ピリドン、または、N−置換−(1H,3H)−ピリミジン−2,4−ジオン(N−置換ウラシル)を含む。
【0027】
略号
略号は以下に指示した意味を有している:
AIBN=2.2’−アゾビスイソブチロニトリル、
B.P.=過酸化ベンゾイル、
Bn=ベンジル、
CCl=四塩化炭素、
D=−O(CHO−
DAST=ジエチルアミン三フッ化イオウ、
DCC=ジシクロヘキシルカルボジイミド、
DCI=1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド、
DEAD=ジエチルアゾジカルボキシレート、
DIBAL=ジイソブチルアルミニウムヒドリド、
DME=エチレングリコールジメチルエーテル、
DMAP=4−(ジメチルアミノ)ピリジン、
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド、
DMSO=ジメチルスルホキシド、
EtN=トリエチルアミン、
LDA=リチウムジイソプロピルアミド、
m−CPBA=メタクロロ過安息香酸、
NBS=N−ブロモスクシンイミド、
NSAID=非ステロイド系抗炎症薬、
PCC=ピリジニウムクロロクロメート、
PDC=ピリジニウムジクロメート、
Ph=フェニル、
1,2−Ph=1,2−ベンゼンジイル、
Pyr=ピリジンジイル、
Qn=7−クロロキノリン−2−イル、
=−CHSCHCHPh、
r.t.=室温、
rac.=ラセミ、
THF=テトラヒドロフラン、
THP=テトラヒドロピラン−2−イル、
アルキル基略号
Me=メチル、
Et=エチル、
n−Pr=ノーマルプロピル、
i−Pr=イソプロピル、
n−Bu=ノーマルブチル、
i−Bu=イソブチル、
s−Bu=第二級ブチル、
t−Bu=第三級ブチル、
c−Pr=シクロプロピル、
c−Bu=シクロブチル、
c−Pen=シクロペンチル、
c−Hex=シクロヘキシル、
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異性体
式Iの化合物は1つ以上の非対称中心を含み、従って、ラセミ化合物およびラセミ混合物、単一鏡像異性体、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして生じ得る。本発明は式Iの化合物のこのような異性体形態をすべて含意する。
【0028】
本文中に記載の化合物のあるものは、オレフィン系二重結合を含んでおり、異なる記載がない限り、EおよびZ幾何異性体の双方を含意する。
【0029】
本文中に記載の化合物のあるものは、異なる水素結合点を有して存在でき、互変異性体と呼ばれる。このような例はケトンおよびケト−エノール互変異性体として知られたそのエノール形態である。個々の互変異性体とそれらの混合物は式Iの化合物に包含される。
【0030】
式Iの化合物は、例えばMeOHまたはEtOAcまたはそれらの混合物のような適当な溶媒から分別結晶化することによって鏡像異性体のジアステレオ異性体対に分割できる。このようにして得られた鏡像異性体対は、例えば光学活性アミンを分解剤として使用するかキラルHPLCカラムを使用する慣用の手段によって個々の立体異性体に分割できる。
【0031】
あるいは、一般式IまたはIaの化合物の鏡像異性体のいずれかを、光学的に純粋な出発材料または既知の立体配置の試薬を使用する立体特異的合成によって得ることもできる。
【0032】

“医薬的に許容される塩”という用語は、無機または有機の塩基および無機または有機の酸のような医薬的に許容される無毒性塩基または酸から製造された塩を表す。無機塩基から誘導された塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などを含む。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムの塩が特に好ましい。医薬的に許容される有機の無毒性塩基から誘導された塩は、第一級、第二級および第三級アミン、天然産生置換アミンを含む置換アミン、環状アミンの塩、および、塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどを含む。
【0033】
本発明の化合物が塩基性のとき、塩は医薬的に許容される無機および有機の酸を含む無毒性酸から製造できる。このような酸は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコ酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などである。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸が特に好ましい。
【0034】
用量範囲
本文中に使用した式Iの化合物という表現が医薬的に許容されるその塩を含意することは理解されよう。
【0035】
式Iの化合物の予防的または治療的用量の多少はもちろん、治療される状態の種類と重篤度、特定の式Iの化合物およびその投与経路次第で変更されるであろう。用量はまた、個人患者の年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与時期、排泄速度、併用薬剤、応答、などの多様な要因次第で変更されるであろう。一般的に、1日あたりの用量は、哺乳動物の体重1kgあたり約0.001mg−約100mg、好ましくは0.01mg−約10mg/kgである。また、いくつかの症例ではこれらの範囲外の投薬量を使用することが必要であろう。
【0036】
単一剤形を調製するために担体材料に組合せる有効成分の量は、治療される宿主および特定の投与方式次第で変更されるであろう。例えば、ヒトへの経口投与目的の配合物は、全組成物の約5−95パーセントの範囲で変更できる適正量の担体材料に配合した約0.5mg−約5gの有効成分を含有するであろう。薬量単位形態は一般に、約1mg−約2gの有効成分、典型的には25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mgまたは1000mgの有効成分を含有するであろう。
【0037】
医薬組成物
グルココルチコイド受容体介在疾患を治療するためには式Iの化合物を、医薬的に許容される慣用の無毒性担体、アジュバントおよびビヒクルを含有する薬量単位配合物として経口、表在、非経口、スプレー吸入、直腸内経由で投与するとよい。本文中に使用した非経口という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または注入方法を含む。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコなどの温血動物の治療に加えて、本発明の化合物はヒトの治療に有効である。
【0038】
有効成分を含有する医薬組成物は、錠剤、トローチ剤、甘味入り錠剤、溶液、水性または油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、エマルション、硬または軟カプセル、シロップまたはエリキシル剤のような経口使用に適した形態でよい。経口使用目的の組成物は医薬組成物製造業界で公知のいずれかの方法に従って調製でき、このような組成物は、医薬的にエレガントで服用し易い製剤を提供するために、甘味料、着香料、着色料および保存料から成るグループから選択された1種以上の補助剤を含有し得る。錠剤は、錠剤の製造に適した医薬的に許容される無毒性賦形剤に混合された有効成分を含有する。これらの賦形剤は例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤;トウモロコシデンプン、アルギン酸のような造粒および崩壊剤;デンプン、ゼラチンまたはアラビアガムのような結合剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクのような滑沢剤であろう。錠剤は剤皮なしでもよく、または、胃腸管での崩壊および吸収を遅らせて長期間持続作用を与えるように公知技術によって剤皮をかけてもよい。例えば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートのような徐放材料を使用し得る。また、調節放出される浸透圧治療用錠剤を形成するためにU.S.Patent 4,256,108;4,166,452;および4,265,874に記載された技術によって剤皮をかけてもよい。
【0039】
経口使用するための配合物はまた、有効成分を、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンのような不活性固体担体と混合した硬質ゼラチンカプセル、または、有効成分を、プロピレングリコール、PEGおよびエタノールのような水混和性溶媒またはピーナツ油、液体パラフィンもしくはオリーブ油のような油媒体と混合した軟質ゼラチンカプセルとして提供されてもよい。
【0040】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合された有効物質を含有する。このような賦形剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアラビアガムのような懸濁化剤である。分散剤または湿潤剤は、天然産生ホスファチド例えばレシチン、または、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合産物例えばポリオキシエチレンステアレート、または、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、または、脂肪酸およびヘキシトールに由来の部分エステルとエチレンオキシドとの縮合産物例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、または、脂肪酸および無水ヘキシトールに由来の部分エステルとエチレンオキシドとの縮合産物例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートでよい。水性懸濁液はまた、1種以上の保存料、例えば、エチルまたはn−プロピル,p−ヒドロキシベンゾエート、1種以上の着色料、1種以上の着香料、または、ショ糖、サッカリンまたはアスパルテームのような1種以上の甘味料を含有し得る。
【0041】
油性懸濁液は、有効成分を落花生油、オリーブ油、ゴマ油またはココヤシ油のような植物油または液体パラフィンのような鉱油に懸濁させることによって配合し得る。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含有し得る。服用し易い経口製剤を提供するために上記に挙げた甘味料、着香料を添加してもよい。これらの組成物はアスコルビン酸のような抗酸化剤の添加によって保存できる。
【0042】
水を加えて水性懸濁液を調製するための適当な分散性粉末および顆粒は、有効成分を分散または湿潤剤、懸濁化剤および1種以上の保存剤と混合して提供される。適当な分散または湿潤剤および懸濁化剤の例は上記に示した。追加の賦形剤、例えば、甘味料、着香料および着色料を存在させてもよい。
【0043】
本発明の医薬組成物はまた、水中油エマルションの形態でもよい。油相は、オリーブ油もしくは落花生油のような植物油または液体パラフィンのような鉱油またはそれらの混合物でよい。適当な乳化剤は、大豆レシチンのような天然産生ホスファチド、脂肪酸と無水ヘキシトールに由来のエステルまたは部分エステル例えばソルビタンモノオレエート、および、上記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合産物例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートでよい。エマルションはさらに甘味料および着香料を含有し得る。
【0044】
シロップおよびエリキシル剤は、甘味料、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはショ糖と共に配合される。このような配合物はさらに、粘滑薬、保存料、着香料および着色料を含有し得る。医薬組成物は水性または油性の注射用滅菌懸濁液の形態でもよい。この懸濁液は上述の適当な分散または湿潤剤および懸濁化剤を使用して公知の技術に従って配合し得る。注射用滅菌製剤はまた、非経口的に許容される無毒性希釈剤または溶媒中の注射用滅菌溶液または懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液でもよい。使用し得る適格なビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム溶液である。エタノール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールのような助溶媒を使用してもよい。さらに、溶媒または懸濁媒体として無菌の不揮発油が慣用である。このためには、合成モノ−またはジグリセリドのような口当たりのいい不揮発油を使用し得る。さらに、オレイン酸のような脂肪酸も注射剤の調製に有用である。
【0045】
式Iの化合物はまた、薬物を直腸投与する座薬剤の形態で投与されてもよい。これらの組成物は、周囲温度で固体であるが直腸温度で液体になり従って直腸で融解して薬物を放出する適当な非刺激性賦形剤に薬物を混合することによって調製できる。このような材料はカカオ脂およびポリエチレングリコールである。
【0046】
表在使用には、式Iの化合物を含有するクリーム、軟膏、ジェル、溶液または懸濁液などを使用する。(本願で、表在使用は口内洗剤および含嗽剤を含む)。表在用配合物は一般に、医薬担体、助溶媒、乳化剤、浸透促進剤、保存剤系および皮膚緩和剤を含み得る。
【0047】
用途
式Iの化合物はグルココルチコイド受容体を選択的に変調する能力を有するので、様々な炎症性および自己免疫性疾患および状態の治療、予防または進行阻止に有用である。従って本発明の化合物は、以下の疾患または状態の治療、予防または軽減に有用である:炎症、組織拒絶、自己免疫、白血病およびリンパ腫のような様々な悪性疾患、クッシング症候群、急性副腎不全、先天性副腎過形成、リウマチ熱、結節性多発動脈炎、多肉芽腫性動脈炎、骨髄様細胞系阻害、免疫増殖/アポトーシス、HPA軸抑制および調節、高コルチゾール血症、卒中および脊髄損傷、高カルシウム血症、高グリシン血症、急性副腎不全、慢性原発性副腎不全、続発性副腎不全、先天性副腎過形成、脳水腫、血小板減少症、リトル症候群、肥満症および代謝症候群。
【0048】
本発明の化合物はまた、炎症性腸疾患、全身性ループス・エリテマトーデス、結節性多発動脈炎、ウェジナー肉芽腫症、巨細胞性動脈炎、リウマトイド関節炎、若年性リウマトイド関節炎、ブドウ膜炎、枯草熱、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、血管神経性浮腫、慢性閉塞性肺疾患、喘息、腱炎、滑液嚢炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、自己免疫性慢性活動性肝炎、臓器移植、肝炎および硬変のような全身的炎症を示す疾患状態の治療、予防または進行阻止に有用である。
【0049】
本発明の化合物は、炎症性頭皮脱毛症、皮下脂肪組織炎、乾癬、円板状ループス・エリテマトーデス、炎症嚢胞、アトピー性皮膚炎、壊疽性膿皮症、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、全身性ループス・エリテマトーデス、皮膚筋炎、妊娠性ヘルペス、好酸球性筋膜炎、再発性多発性軟骨炎、炎症性脈管炎、サルコイドーシス、スイーツ病、反応性1型らい病、毛細血管腫、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、剥脱性皮膚病、結節性紅斑炎、にきび、多毛症、中毒性皮膚融解症、多形性紅斑、皮膚T細胞リンパ腫のような様々な表在性疾患の治療、予防または進行阻止に有用である。
【0050】
本発明の化合物はまた、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、細胞アポトーシス、カポジ肉腫を非限定例とする癌、免疫系活性化および変調、炎症性応答の減感、IL−1発現、ナチュラルキラー細胞発生、リンパ性白血病に関連する疾患状態の治療、予防または進行阻止、および、色素性網膜炎の治療に有用である。認識および行動のプロセスもグルココルチコイド治療に感受性である。この場合、アンタゴニストが認識能力、記憶および学習強化、抑鬱、耽溺、情緒障害、慢性疲労症候群、統合失調症、卒中、睡眠障害および不安のようなプロセスの治療に有用である可能性を秘めている。
【0051】
好ましくは本発明の化合物は以下に挙げる疾患または状態の治療に有用である。
【0052】
1.アレルギー状態
適正な慣用治療試験に応答しない重篤なまたは病的なアレルギー状態のコントロール;季節性または通年性アレルギー性鼻炎;気管支喘息;接触皮膚炎;アトピー性皮膚炎;血清病;薬物過敏反応。
【0053】
2.リウマチ性疾患
以下の疾患の急性エピソードまたは急性憎悪中に補助療法として短期間投与:乾癬性関節炎;若年性リウマトイド関節炎を含むリウマトイド関節炎(選択される症例は低用量維持を要する);強直性脊椎炎;急性および亜急性滑液嚢炎;急性非特異的腱滑膜炎;急性痛風性関節炎;外傷後骨関節炎;骨関節炎の滑膜炎;および上顆炎。
【0054】
3.皮膚科疾患
天疱瘡;水疱性疱疹状皮膚炎;重篤な多形性紅斑(スチーブンス−ジョンソン症候群);剥脱性皮膚炎;きのこ状真菌症;重篤な乾癬;重篤な脂漏性皮膚炎。
【0055】
4.眼科疾患
眼およびその付属器に関与する重篤な急性および慢性のアレルギーおよび炎症プロセス例えば:アレルギー性結膜炎;角膜炎;アレルギー性角膜辺縁潰瘍;眼性帯状疱疹;虹彩炎および虹彩毛様体炎;脈絡網膜炎;前眼部炎症;びまん性後部ブドウ膜炎および脈絡炎;視神経炎;交感性眼炎。
【0056】
5.内分泌障害
原発性または続発性副腎皮質不全;先天性副腎過形成;非化膿性甲状腺炎;癌に付随する高カルシウム血症。
【0057】
6.呼吸器疾患
症候性サルコイドーシス;他の手段で管理できないレフレル症候群;ベリリウム中毒;劇症または播種性肺結核(適正な抗結核化学療法に併用);嚥下性肺炎。
【0058】
7.肝臓障害
成人の特発性血小板減少性紫斑病;成人の続発性血小板減少性紫斑病;後天性(自己免疫性)溶血性貧血;赤芽球減少症(RBC貧血);先天性(赤血球系)形成不全貧血。
【0059】
8.腫瘍形成疾患
成人の白血病およびリンパ腫;小児の急性白血病の緩和的管理。
【0060】
9.浮腫状態
特発型またはループス・エリテマトーデス原因の尿毒症のないネフローゼ症候群の利尿またはタンパク尿の寛解を誘導するため。式Iの化合物は様々な原因の脳水腫患者の治療に使用できる。脳腫瘍に続発した頭蓋内圧上昇患者の手術前準備、手術不能患者または脳新生物再発患者の緩和、神経外科手術に伴う脳浮腫の管理にも使用できる。頭部傷害または偽脳腫瘍が原因の脳浮腫患者のうちには式Iの化合物による治療で効果が得られるものもある。
【0061】
10.胃腸疾患
潰瘍性大腸炎および限局性腸炎の危険期。
【0062】
11.その他
クモ膜下ブロックおよび切迫ブロックのある結核性髄膜炎に適切な抗結核化学療法と併用;神経または心筋に関与するトリキネラ症;全身性ループス・エリテマトーデスおよび急性リウマチ性心臓炎の選択症例の急性憎悪期または維持療法として;シスプラチンおよび非シスプラチン催吐性化学療法に付随する嘔吐および吐き気を管理するためにオンダンセトロンと併用。
【0063】
併用療法
本発明はまた、式Iの化合物と1種以上の別の薬剤とを要治療患者に同時に投与する、グルココルチコイド受容体介在疾患の治療方法を包含する。喘息または慢性閉塞性肺疾患の治療または予防には、式Iの化合物を、以下のグループから選択された1種以上の薬剤と併用し得る:9−アゴニスト(例えば、サルメテロール)、テオフィリン、抗コリン作用薬(例えば、アトロピンおよびイプラトロピウムブロミド)、クロモリン、ネドクロミリルおよびロイコトリエンモディファイア(例えば、モンテルカスト)。炎症の治療または予防には式Iの化合物を以下のグループから選択された1種以上の薬剤と併用し得る:アセチルサリチル酸のようなサリチレート、インドメタシン、スリンダク、メフェナミク、メクロフェナミク、トルフェナミク、トルメチン、ケトロラック、ジコフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフィンおよびオキサプロジンなどの非ステロイド系抗炎症薬、エタネルセプトおよびインフリキシマブのようなTNFインヒビター、IL−1受容体アンタゴニスト、メトトレキセート、レフルノミド、アザチオプリンおよびシクロスポリンなどの細胞障害または免疫抑制薬、金化合物、ヒドロキシクロロキンまたはスルファサラジン、ペニシラミン、ダルブフェロンおよびρ38キナーゼインヒビター。式Iの化合物はまた、グルココルチコイド介在疾患を治療し同時に破骨細胞介在骨吸収を阻害するためにアレンドロネートのようなビスホネートと併用し得る。
【0064】
合成方法および実施例
つぎに本発明を以下の非限定実施例によって説明する。異なる注釈がなければ、実施例は以下の記載通りに行った。
【0065】
(i)すべての処理は室温または周囲温度、すなわち、18−25℃の範囲の温度で行った。
【0066】
(ii)溶媒の蒸発は、回転蒸発器を使用し、減圧(600−4000パスカル:4.5−3.0mm.Hg)下、浴温度60℃以下で行った。
【0067】
(iii)反応の進行は薄層クロマトグラフィー(TLC)によって追跡した。反応時間は代表例として示しただけである。
【0068】
(iv)融点は非補正であり、‘d’は分解を示す;記載の手順で製造した材料で得られた融点を示す;いくつかの調製物は多形性があるので異なる融点の材料が単離される。
【0069】
(v)すべての最終生成物の構造および純度は、以下の技術、すなわち、TLC、質量分光法、核磁気共鳴(NMR)分光法または微量分析データの少なくとも1つによって確認した。
【0070】
(vi)収率は代表例として示しただけである。
【0071】
(vii)NMRデータが与えられているとき、データは、指定溶媒を使用し、500MHzまたは600MHzで測定したときの、内部標準であるテトラメチルシラン(TMS)に対してパーツ・パー・ミリオン(ppm)で与えられた主要診断プロトンのデルタ(δ)値の形態である。シグナル形態に使用した慣用の略号は:s.singlet;d.doublet;t.triplet;m.multiplet;br.broad;などである。さらに、“Ar”は芳香族シグナルを表す。
【0072】
(viii)化学記号は常用の意味を有している。以下の略号も使用した:v(容量)、w(重量)、b.p.(沸点)、m.p.(融点)、L(リットル)、mL(ミリリットル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、eq(当量)。
【0073】
(実施例1)
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(1−アダマンチル)カーバメートの合成
【0074】
【化3】


(11β,16β)−9−フルオロ−17,21−ジヒドロキシ−16−メチル−3,20−ジオキソ−11−トリフルオロアセトキシ−プレグナ−l,4−ジエン(1−3)
ベタメタゾン(1−1,96g,245mmol)およびDMAP(6.0g,49mmol)を2.8Lの無水THFに撹拌しながら溶解した。溶液を氷浴に入れ、10−15℃に冷却した。冷却溶液に無水トリフルオロ酢酸(129g,614mmol)を添加漏斗から20分を要して添加した。氷浴を除去し、溶液を室温で15時間撹拌した。溶液に675mLの水を添加し、得られた混合物を15時間撹拌した。真空下で混合物を初期容量の1/4に減量し、残渣を2Lの水で希釈した。沈殿物を濾過によって単離し、減圧下で15時間乾燥すると、122.5gの1−3が青白色固体として得られた。
MS(ESI):m/z=489.2(MH)。
【0075】
(11β,16β)−9−フルオロ−17−ヒドロキシ−16−メチル−3,20−ジオキソ−11−トリフルオロアセトキシ−21−アセトキシ−プレグナ−1,4−ジエン(1−4)
室温のTHF(1L)中の1−3(122.5g)の溶液にDMAP(6.0g,49 mmol)および無水酢酸(50.2g,491mmol)を添加し、混合物を15時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を1Lの水で希釈した。沈殿物を濾過によって単離し、温めた(35℃)真空オーブンで15時間乾燥すると、123.4g(94.7%)の1−4が黄白色固体として得られた。
MS(ESI):m/z=531.2(MH)。
【0076】
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−17−ヒドロキシ−11−トリフルオロアセトキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−[(アセチルオキシ)メチル]−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン(1−5)
630mLの無水アセトニトリル中の1−4(42.0g,79.168mmol)の懸濁液を−5℃に冷却し、SnCl(41.24g,158.335mmol)を滴下した。得られた均質溶液を周囲温度に加温し72時間撹拌すると、その間に白色固体が沈殿した。固体を濾過し、35℃で一夜乾燥すると、34.10gの1−5が得られた。濾液を酢酸エチル(2L)で希釈し、300mLの水に入れた炭酸水素ナトリウム(6.651g,79.168mmol)の混合物で希釈した。集めた有機層を水、飽和ブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮すると、追加量の3gの1−5が薄茶色の発泡性固体として得られた。
MS(ESI):m/z=531.3(MH)。
【0077】
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−トリフルオロアセトキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−[(アセチルオキシ)メチル]−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(1−アダマンチル)カーバメート(1−6)
2.2mLの無水N,N−ジメチルホルムアミド中の1−5(0.815g,1.536mmol)の溶液を窒素流で10分間掃気し、次いで1−アダマンチルイソシアナート(0.545g,3.072mmol)およびCuCl(0.152g,1.536mmol)を添加した。得られた緑色溶液を周囲温度で1時間撹拌した。反応混合物を15mLの水に入れ、酢酸エチルで抽出した(2×50mL)。集めた有機層を10mLの水、10mLの飽和ブライン溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮すると、1.18gのオレンジ色粘性油が得られた。この油をトルエン(15mL)で溶解し、真空下で濃縮すると、淡緑色固体(1.00g)が得られた。残渣を40gのシリカゲルカラムに通すフラッシュクロマトグラフイーによって処理し、55分間で0%B/100%A−20%B/80%Aの勾配で溶出させると(A=50%ジクロロメタン/50%ヘキサン、B=酢酸エチル)、0.646g(59%)の1−6が薄茶色固体として得られた。
MS(ESI):m/z=708.3(MH)。
【0078】
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−トリフルオロアセトキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(1−アダマンチル)−カーバメート(1−7)
固体1−6(610g,0.862mmol)を30mLのメタノール/クロロホルム/6N HCl(10:2:1)プレミックス溶液に溶解し、得られた混合物を周囲温度で15時間撹拌した。追加量の1mLの6N HClを添加し、混合物をさらに20時間撹拌した。真空下で混合物を濃縮すると、0.544gの1−7が薄茶色固体として得られた。
MS(ESI):m/z=666.3(MH)。
【0079】
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(1−アダマンチル)カーバメート(1−8)
36mLのメタノール中の1−7(0.492g,0.739mmol)の溶液にトリエチルアミン(0.206mL,1.478mmol)を添加し、得られた無色溶液を周囲温度で30分間撹拌し、次いで真空下で濃縮すると、薄茶色の発泡性固体が得られた。固体を7mLの高温ジクロロメタンに溶解し、40gのシリカゲルカートリッジに充填し、0%B/100%Aで10分、次いで0%B/100%A−50%B/50%Aの勾配で50分間溶出させると、0.330gの1−8が白色固体として得られた(78%)。
MS(ESI):m/z=570.3(MH)。
【0080】
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−[(アセチルオキシ)メチル]−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(1−アダマンチル)カーバメート(1−9)
7mLのメタノール中の1−6(0.100g,0.141 mmol)の溶液にトリエチルアミン(0.039mL,0.283mmol)を添加し、得られた無色溶液を室温で30分間撹拌し、次いで真空下で濃縮すると、0.076gの1−9が薄茶色固体として得られた。
MS(ESI):m/z=612.3(MH)。
【0081】
(実施例2−9)
先行実施例に記載の方法と同様の方法を使用して以下の化合物を合成した。
【0082】
【化4】

【0083】
【表1】


【0084】
生物学的評価
本願に例示した化合物は以下のアッセイの1つ以上で活性を示した。
【0085】
リガンド結合アッセイ
材料
結合バッファ:TEGM(10mM トリス−HCl、1mM EDTA、10%グリセロール、1mMベータ−メルカプトエタノール、10mMモリブデン酸ナトリウム,pH7.2)
50% HAPスラリー:Calbiochem Hydroxylapatite,Fast Flow、10mMトリス,pH8.0および1mM EDTA中。
洗浄バッファ:40mMトリス,pH7.5、100mM KCl、1mM EDTAおよび1mM EGTA
95% EtOH
デキサメタゾン−メチル−H,(DEX);(Amersham cat#TRK645)
デキサメタゾン(DEX)(Sigma,cat#D1756):
Hydroxylapatite Fast Flow;Calbiochem Cat#391947
モリブデン酸塩=モリブデン酸(Sigma,M1651)
MDA−MB−453細胞培養培地
RPMI 1640(Gibco 11835−055)w/23.8mM NaHCO3、2mM L−グルタミン
500mLの完全培地中の最終濃度
l0mL(lM Hepes) 20mM
5mL(200mM L−glu) 4mM
0.5mL(0.01NのHCl中に
10mg/mLのヒトインスリン
Calbiochem#407694−S) 10μg/mL
50mL FBS(Sigma F2442) 10%
1mL(10mg/mLゲンタマイシン
Gibco#15710−072) 20μg/mL
細胞継代
20mMのHepes、4mMのL−glu、10ug/mlのヒトインスリン(Sigma,I−0259)、10%FBSおよび20ug/mlのゲンタマイシン(Gibco#15710−072)を含有しているRPMI 1640(Gibco 11835−055)で培養したMDA−MB−453(ATCC)細胞(Hall R.E.ら,European Journal of Cancer,30A:484−490(1994))をPBSで2回洗浄する。フェノールレッド非含有トリプシン−EDTAを同じPBSで1:10に希釈する。細胞層を1×トリプシンで洗浄し、余剰トリプシンを除去し、細胞層を37℃で〜2分間インキュベートする。フラスコを閉栓し、細胞剥離の徴候を点検する。細胞がフラスコから離れて滑り始めると、完全培地を添加する。この時点で細胞をカウントし、次いで適正濃度に希釈し、フラスコまたは皿に分け入れてさらに培養を続ける(通常は希釈度1:3−1:6)。
【0086】
MDA−MB−453細胞溶解液の調製
細胞が70−85%の単層集密状態になると、細胞を上述のように剥離し、4℃、1000gで10分間遠心することによって収集する。細胞ペレットをTEGM(10mM トリス−HCl、1mM EDTA、10%グリセロール、1mMベータ−メルカプトエタノール、10mMモリブデン酸ナトリウム、pH7.2)で2回洗浄する。最終洗浄後、細胞を10細胞/mLの濃度でTEGMに再浮遊させる。細胞浮遊液を液体窒素またはエタノール/ドライアイス浴で瞬間冷凍し、ドライアイスに載せた−80℃フリーザーに移す。結合アッセイを開始する前に、凍結サンプルを氷水に載せてほぼ解凍する(〜1時間)。次いで、サンプルを4℃、12,500g−20,000gで30分間遠心する。上清を使用して直ちにアッセイを開始する。50μLの上清を使用する場合、被験化合物は50μLのTEGMバッファ中で調製できる。
【0087】
多数化合物スクリーニング手順
1×TEGMバッファを調製し、同位体含有アッセイ混合物を以下の処方で調製する:EtOH(反応中に2%最終濃度)、H−DEX(Amersham Biosciences)および1×TEGM。[例えば、100サンプルの場合、200μL(100×2)のEtOHと4.25μLの1:10H−−Dex予製液と2300μL(100×23)の1×TEGMとを合せる]。化合物を系列希釈する。例えば、出発最終濃度が1μMで化合物が25μLの溶液ならば、重複サンプル用に75μLの4×1μM溶液を調製し、3μLの100μMを72μLのバッファに添加し、1:5に系列希釈する。
【0088】
最初に25μLのH−DEX(6nM)トレースと25μLの化合物溶液とを混合し、次いで50μLの受容体溶液を添加する。反応混合物をゆるやかに撹拌し、約200rpmで短時間回転させ、4℃で一夜インキュベートする。100μLの50%HAPスラリーを調製し、インキュベートした反応混合物に添加し、次いで渦流させ、氷上で5−10分間インキュベートする。インキュベーション中に反応混合物をさらに2回渦流させてHAPを再懸濁させる。次に、96−ウェルフォーマット中のサンプルをThe FilterMateTM Universal Harvesterプレート洗浄機(Packard)を使用し、洗浄バッファで洗浄する。洗浄プロセスで、リガンド結合発現受容体を含有しているHAPペレットがUnifilter−96 GF/Bフィルタープレート(Packard)に移る。フィルタープレート上のHAPペレットを50μLのMICROSCINT(Packard)シンチラントと共に30分間インキュベートした後、TopCountマイクロシンチレーションカウンター(Packard)でカウントする。DEXを標準として使用してIC50を計算する。
【0089】
リガンド結合アッセイで試験すると、実施例1−9は1000nM未満のIC50を示した。
【0090】
グルココルチコイド受容体のトランス活性化変調(GRAMMER)
このアッセイは、肺腺癌A549細胞、または、ヒトGRを天然に発現するヒト乳癌細胞系であるMDA−MB−453細胞中のMMTV−LUCレポーター遺伝子から被験化合物の転写コントロール能力を評価する。アッセイは、LUCレポーター遺伝子につないだ修飾MMTV LTR/プロモーターの誘導を測定する。
【0091】
常用の一過性アッセイは、底部透明な白色96−ウェルプレートで7,000−25,000細胞/ウェルを平板培養することから成る。あるいは、384−ウェルプレートを細胞濃度10,000/ウェルで使用してもよい。細胞の平板培養培地は、“対数増殖培地”であり、これは、10%FBS、4mM L−グルタミン、20mM HEPES、l0ug/mLヒトインスリンおよび20ug/mLゲンタマイシンを含有するフェノールレッド非含有RPMI1640から成る。インキュベーター条件は37℃および5%COである。トランスフェクションはバッチ方式で行う。細胞をトリプシン処理し、適量の新しい培地中で正確な細胞数までカウントする。次にFuGene6/DNAミックスとゆるやかに混合し、96または384−ウェルプレートで平板培養する。全部のウェルにそれぞれ、100uLまたは40uLの培地+脂質/DNA複合体を導入し、次いで37℃で一夜インキュベートする。トランスフェクションカクテルは、無血清OptiMEM、FuGene6試薬およびDNAから成る。製造業者(Roche Biochemical)によるカクテル調製プロトコルは以下の通りである:脂質対DNA比は約2.5:1、インキュベーション時間は室温で20分。トランスフェクションの16−24時間後、細胞を最終濃度10nMまでのデキサメタゾン、および、DMSO(ビヒクル)中の最終濃度1%以下の被験化合物で処理する。各プレートはまた、10nMのデキサメタゾンだけで処理するサンプルを含む。これは100%活性対照として使用する。細胞を化合物に24時間接触させる。24時間後、Promega細胞培養物溶解バッファによって細胞を約30分間溶解し、次いで抽出物中のルシフェラーゼ活性を96−ウェルフォーマットルミノメーターで定量する。384−ウェルフォーマットでは、Steady−Glo(Promega)またはSteady−Lite(PerkinElmer)を、各ウェルに存在する培地に等容の試薬を添加することによって使用できる。10nMのデキサメタゾン単独によって誘導された活性を100%活性と設定する。アンタゴニスト活性は、デキサメタゾン単独処理サンプルに比べた化合物処理応答デキサメタゾン誘導活性の減少を測定することによって計算する。結果を10nMデキサメタゾン活性の阻害%または10nMデキサメタゾン活性の倍率として表す。このトランス活性化アッセイはこれらの種々の活性を同定するためにアゴニストモードまたはアンタゴニストモードで行うことができる。
【0092】
被験化合物の活性は、300nMのデキサメタゾンで得られた活性に対するEmaxとして計算する。被験化合物の活性は、300nMのDEXで得られた活性に対するEmaxとして計算する。本発明の代表的な組織選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターはこのアッセイで5%を上回る部分アゴニスト活性を示す。
【0093】
また、化合物の作用をアンタゴニストモード(Anti−GRAMMER)で試験する。この場合には細胞を、10nM DEXのようなアゴニストを含有する培地で処理し、アゴニストによる活性化を阻害する薬剤の能力を測定する。
【0094】
トランス阻害アッセイ
このアッセイは、ヒトGRを天然に発現するヒト骨髄組織球性白血病細胞系のU937細胞中のTNFα−β−ラクタマーゼレポーター遺伝子から被験化合物の転写コントロール能力を評価する。アッセイは、レポーター遺伝子につないだTNFaプロモーターの化合物依存性阻害を測定する。
【0095】
このアッセイにはβ−ラクタマーゼを作動するTNFαを安定にトランスフェクトしたヒトU937細胞を使用する。U937細胞は、内因性グルココルチコイド受容体(GR)を含有している。25mM HEPES、10%FBS、2mM L−グルタミン、1mMピルピン酸ナトリウム、25μg/mlゲンタマイシン(Gibco Cat#15710−064)、1:1000の2−メルカプトエタノール(Gibco Cat#21985−023)および0.8mg/mlのG418(Gibco Cat#10131−027)を含有しているRPMI1640増殖培地(Gibco Cat#11875−093)中に細胞を維持する。フラスコ内の細胞密度は採取時点で約1×10−3×10/mlが必要である。通常は、アッセイの3日前に細胞を1.2−1.4×10/ml(1:10)に分割する。アッセイ当日に50,000細胞/ウェルを96ウェルの黒壁プレートに平板培養する。被験化合物を10μL/ウェルで添加し、細胞を37℃で30−45分間インキュベートする。アッセイ用に、化合物を最初にDMSOで1:10に希釈して1mMとし、次いで細胞に添加する前に培地で1:100に希釈して10×予製液を調製する。50ng/ml PMA(Sigma,cat#P8139)10μL/ウェルを最終濃度5ng/mlに添加し、1μg/ml LPS(Sigma,cat#L4130)10μL/ウェルを最終濃度100ng/mlに添加する。細胞を37℃で一夜〜18時間インキュベートする。PMAはDMSO中の100μg/ml予製液として凍結保存する。DMSOで1:10に希釈して10μg/mlの処理用予製液とし、−20℃で保存する。アッセイ用に、10μg/mlの処理用予製液を培地で1:200に希釈して10×溶液(50ng/ml)を調製する。凍結LPSはPBS中に1mg/mlで保存し、アッセイ用に培地で1:1000に希釈して10×(1μg/ml)を調製する。6×ローディングバッファ(CCF2−AM)20μL/ウェルを添加し、室温で70−90分間インキュベートする。CytoFluor IIプレートリーダーを使用し、製造業者の示唆したプロトコルに従ってプレートを読取る。100nMのデキサメタゾン単独によって阻害された活性を100%活性と設定する。
【0096】
トランス阻害アッセイで試験した実施例1−9は5%を上回る最大活性を示した。
【0097】
マイクロアレイ分析
細胞培養試薬はいずれも、Invitrogen Life Tech,Carlsbad CAから購入した。A549細胞は10% FBSを補充したフェノールレッド非含有DMEM/F12培地で培養した。細胞は5%CO、37℃で増殖させた。RNeasy Kit(Qiagen Corp,Valencia CA.)を使用し、種々のCG化合物で24時間処理したA549細胞から全RNAを完全活性用量で抽出し、精製した。これらの細胞は大量のGRを発現し、GC処理に極めて反応性である。全部のサンプルをビヒクル処理細胞に比較した。Agilent Technologies,Incから購入したオリゴヌクレオチドマイクロアレイを使用して23000遺伝子の発現レベルを測定した。各比較は、一対のマイクロアレイにリバースフルオロホア試験を行った。原像の強度データを特許6,351,712に記載の方法で処理した。この方法は、色素バイアスを除去し、各遺伝子および各サンプル対のRosetta確率(p)およびfold change値を導出するために使用した。さらに、各遺伝子について、全処理のANOVAモデルを作成し、誤差推定値を導出した。発現差を評価するP値は、Lonnstedt and Speed(2002)によって開発されSmyth(2003)によって拡張されたベイズの調整t−検定を使用して計算した。比較分析に用いた遺伝子が2つの判定基準:
1.処理の少なくとも1つでRosetta p値が0.1未満であり、Rosetta fold change値が1.4よりも大きい;
2.考察した比較でANOVA p値が0.01未満であり、fold changeが2よりも大きい:、
を満たしているならば、遺伝子が発現差を示したと判定した。
【0098】
In Vivo炎症アッセイ
健全な成年(6ヶ月齢)雌スプレーグ・ドーリーネズミをオキサゾロン(OX)接触皮膚炎モデルに使用する。day0に、ラットの腹部表面をOXで感作した。day7およびday9に、無作為に選択した耳にOXを抗原投与した(両日とも同じ耳)。他方の耳はビヒクルで処理した。day7に、一日一回の治療を開始し、種々の用量の被験化合物の投与および陽性対照として1.3mpkの6−メチルプレドニゾロンまたは0.lmpkのDEXの投与を7日間継続した。day11およびday14に両耳の厚みを測定した。day14に剖検を行った。先ずラットを計量し、次いでCO室で仮死状態まで麻酔する。心臓穿刺によって約5mlの全血を採取する。次にラットの死および完了のいくつかの兆候を観察する。組織をほぼ様式通りに解剖する。以下の終点を評価した:a)オキサゾロンによって誘導された耳炎症の阻害;b)血清インスリンの増加;c)血清ACTHの減少;d)脾臓重量の減少;e)皮膚厚みの減少;f)体重の減少;g)骨に対して負のグルココルチコイド作用に関係のありそうな骨関連遺伝子の発現増加;e)皮膚炎症、皮膚厚み減少、筋肉萎縮および肝のブドウ糖代謝に相関関係のある分子マーカーの変化。すべての全血サンプルは最終化合物処理〜4−5時間後1330−1530時間の範囲で収集した。
【0099】
このアッセイの一次データは左右の耳の厚みである。両耳の厚みの差(etd)を使用して炎症のレベルを推定し、炎症を生じた耳の肥厚を抑える化合物の能力によって化合物の効果を判定する。ラットの皮膚厚みの背後の脾臓重量、血清インスリン、皮膚炎症、皮膚萎縮、筋肉萎縮および肝ブドウ糖代謝の分子マーカーの発現に対するgcsの効果を測定する。fisher plsd事後検定を加えたanovaによってデータを分析し、群間差を確認する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、
およびRは独立に、R、−C(O)−Rおよび−C(O)−N(R)Rから成るグループから選択され、
およびRは独立に、水素、C1−10アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−10シクロアルキル、アリール、ヘテロアルール、ヘテロシクリルおよびC1−10フルオロアルキルから成るグループから選択され、
Raのおのおのは独立に、水素、C1−10アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−10シクロアルキル、アリール、ヘテロアルール、ヘテロシクリルおよびC1−10フルオロアルキルから成るグループから選択される]
の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項2】
が水素およびCH−C(O)−から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が水素およびCF−(CO)−から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が水素である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
がC1−10アルキルおよびC3−10シクロアルキルから選択される請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が水素またはCF−(CO)−から選択され、
が水素およびCH−C(O)−から選択され、
が水素であり、
がC1−10アルキルおよびC3−10シクロアルキルから選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
がC1−6アルキルである請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
がシクロペンチル、シクロヘキシルおよびアダマンタニルから選択される請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
およびRが水素である請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
以下のグループ:
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(1−アダマンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(2−ペンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(2−メチル−ペンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(3−メチル−2−プロピル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−トリフルオロアセトキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−[(アセチルオキシ)メチル]−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(1−アダマンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−[(アセチルオキシ)メチル]−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(1−アダマンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−トリフルオロアセトキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(1−アダマンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(シクロペンチル)カーバメート、
(11β,16β,17α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,17a−ジオキソ−17−(ヒドロキシメチル)−D−ホモアンドロスタ−1,4−ジエン−17−イル−(シクロヘキシル)カーバメート
または上記のいずれかの医薬的に許容される塩から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物を医薬的に許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物をグルココルチコイド受容体介在疾患または状態の治療に有効な量で患者に投与する、このような治療を要する哺乳類患者のグルココルチコイド受容体介在疾患または状態の治療方法。
【請求項13】
グルココルチコイド受容体介在疾患または状態が、組織拒絶、白血病、リンパ腫、クッシング症候群、急性副腎不全、先天性副腎過形成、リウマチ熱、結節性多発動脈炎、多肉芽腫性動脈炎、骨髄様細胞系阻害、免疫増殖/アポトーシス、HPA軸抑制および調節、高コルチゾール血症、卒中および脊髄損傷、高カルシウム血症、高グリシン血症、急性副腎不全、慢性原発性副腎不全、続発性副腎不全、先天性副腎過形成、脳水腫、血小板減少症、リトル症候群、肥満症、代謝症候群、炎症性腸疾患、全身性ループス・エリテマトーデス、結節性多発動脈炎、ウェジナー肉芽腫症、巨細胞性動脈炎、リウマトイド関節炎、若年性リウマトイド関節炎、ブドウ膜炎、枯草熱、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、血管神経性浮腫、閉塞性肺疾患、喘息、腱炎、滑液嚢炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、自己免疫性慢性活動性肝炎、臓器移植、肝炎、硬変、炎症性頭皮脱毛症、皮下脂肪組織炎、乾癬、円板状ループス・エリテマトーデス、炎症嚢胞、アトピー性皮膚炎、壊疽性膿皮症、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、全身性ループス・エリテマトーデス、皮膚筋炎、妊娠性ヘルペス、好酸球性筋膜炎、再発性多発性軟骨炎、炎症性脈管炎、サルコイドーシス、スイーツ病、反応性1型らい病、毛細血管腫、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、剥脱性皮膚炎、結節性紅斑炎、にきび、多毛症、中毒性皮膚融解症、多形性紅斑、皮膚T細胞リンパ腫、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、細胞アポトーシス、癌、カポジ肉腫、色素性網膜炎、認識能力、記憶および学習強化、抑鬱、耽溺、情緒障害、慢性疲労症候群、統合失調症、睡眠障害および不安から成るグループから選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
グルココルチコイド受容体介在疾患または状態が、組織拒絶、クッシング症候群、炎症性腸疾患、全身性ループス・エリテマトーデス、リウマトイド関節炎、若年性リウマトイド関節炎、枯草熱、アレルギー性鼻炎、喘息、臓器移植、炎症性頭皮脱毛症、乾癬、円板状ループス・エリテマトーデスおよび抑鬱から成るグループから選択される請求項12に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物をグルココルチコイド受容体の変調に有効な量で哺乳動物に投与する、哺乳動物のグルココルチコイド受容体の活性化、阻害、作動および拮抗作用の選択的変調方法。
【請求項16】
有効量の請求項1に記載の化合物を哺乳動物に投与する、哺乳動物のグルココルチコイド受容体を部分的または全面的に拮抗、阻害、作動または変調する方法。

【公表番号】特表2008−540657(P2008−540657A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512387(P2008−512387)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/018613
【国際公開番号】WO2006/124710
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】