説明

選択的シグナル阻害剤を用いた非分離アッセイ

試料中の被検体を測定するための方法、試薬、キット、およびシステムが開示されており、このアッセイ法は、化学発光標識された、固定化された特異的結合メンバー、アクチベーター標識特異的結合メンバー、選択的シグナル阻害剤、および試料を添加することによって、水溶液中で反応混合物を形成するステップであって、化学発光標識された、固定化された特異的結合メンバー、およびアクチベーター標識特異的結合メンバーは、試料中に存在する被検体に結合することによって、結合複合体を形成するステップと、反応混合物中に存在する、被検体が結合した結合複合体の量に相関した、検出可能な化学発光シグナルを放出するために、トリガー溶液を反応混合物に添加するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
特異的結合アッセイは、物質の量の存在を検出するための試験方法であり、特異的結合パートナーの特異的な認識およびこれとの結合に基づく。イムノアッセイは、特異的結合アッセイの例であり、抗体が特定のタンパク質または化合物に結合する。この例では、抗体は、特異的結合対メンバーの一メンバーである。核酸結合アッセイは、別の型であり、相補的核酸鎖が特異的結合対である。特異的結合アッセイは、技術の広く、成長しつつある分野を占め、これは、疾患状態、感染性の生物、および乱用薬物の正確な検出を可能にする。要求される感度、ダイナミックレンジ、ロバスト性、自動化のための広い適用性および適正を有するアッセイおよびアッセイ法を考案するために、多くの研究が過去数十年にわたって捧げられている。これらの方法は、2つのカテゴリーに広く分類することができる。
【0002】
ホモジニアス法は、被検体特異的結合反応を利用することによって、被検体特異的反応物と被検体非特異的反応物の間の分離ステップを必要とすることなく、検出可能なシグナルを調節し、または作り出す。ヘテロジニアス形式は、被検体が結合した、および遊離した(被検体に結合していない)検出可能な程度に標識された特異的結合パートナーの物理的な分離に依拠する。分離は一般に、極めて重要な反応物が、いくつかの型の物理的プロセス、例えば、濾過、沈殿、凝集、または磁気分離を使用することができるように、いくつかの型の固体基材上に固定されることを必要とし、一般に、遊離した検出可能な程度に標識された特定の結合パートナーを除去するために、洗浄ステップも必要とする。
【0003】
化学発光シグナルの生成に依拠し、これを被検体の量に関連づけるアッセイ法は、ますます使用されてきている。そのような方法は、相対的に単純な機器を用いて実施され、それでも良好な分析特性を示すことができる。特に、被検体のために酵素標識特異的結合パートナー(enzyme−labeled specific binding partner)、および検出のために化学発光酵素基質を使用する方法は、広範な用途がある。一般的な標識酵素には、アルカリホスファターゼ、および西洋わさびペルオキシダーゼが含まれる。
【0004】
特許文献1は、第1の膜上の増感剤または増感剤標識プローブに結合したポリヌクレオチド被検体を検出する方法を開示している。この膜は、固定化された化学発光前駆体を有する第2の膜と接触している。サンドイッチ状になった膜中の増感剤が励起されると一重項酸素が生成し、これは、化学発光前駆体と反応することによって、第2の膜上に作動可能な(triggerable)化学発光化合物を生成する。作動可能な化学発光化合物は、試薬と反応することによって、第2の膜上で、被検体を検出するための化学発光を生じさせる。これらの方法は、反応物を接触させるための特異的結合反応に依拠せず、むしろ第2の膜は、試薬送達デバイスとして機能を果たす。
【0005】
特許文献2は、被検体が、光感受性物質および化学発光化合物をごく接近させるような条件下で、被検体を含有する疑いのある媒質を処理するステップを含むアッセイ法を開示している。光増感剤は、光源で照射されると一重項酸素を生成し、一重項酸素は、溶液を通じて拡散し、化学発光化合物がごく近くにあるとき、化学発光化合物を活性化する。活性化された化学発光化合物は、引き続いて光を生成する。生成される光の量は、媒質中の被検体の量に関係する。一実施形態では、光増感剤または化学発光化合物の少なくとも1つは、懸濁可能な(suspendible)粒子と結合し、特異的な結合対メンバーがそれに結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,911,305号明細書
【特許文献2】米国特許第6,406,913号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
米国特許出願公開第US20070264664号、および同第US20070264665号は、固定化された化学発光化合物と、特異的な結合反応によって反応性の配置にされたアクチベーター化合物との反応を伴う、特異的結合対アッセイを実施するためのアッセイ法を開示している。過剰の非結合の化学発光化合物またはアクチベーターの分離または除去をまったく必要としない。これらのアッセイ形式は、従来技術のアッセイ技法と比較して、自動化における優れた操作の利便性および柔軟性をもたらす。これらの利点にもかかわらず、アッセイ設計および性能の追加の改善は、依然としてアッセイ開発者の目標となっている。本開示のアッセイ法は、改善された感度の単純なアッセイ法を提供することによって、これらの必要性に対処する。
【0008】
定義
アルキル −− 1〜20個の炭素を含有する分枝、直鎖、または環状の炭化水素基であり、これは、H以外の1つ以上の置換基と置換されていてもよい。低級アルキルは、本明細書で使用する場合、最大8個の炭素を含有するアルキル基を指す。
【0009】
被検体 −− アッセイにおいて検出されるべき試料中の物質。被検体への特異的な結合親和性を有する1つ以上の物質が、被検体を検出するのに使用される。被検体は、タンパク質、ペプチド、抗体またはハプテン(それに結合する抗体が作られ得る)とすることができる。被検体は、相補的な核酸またはオリゴヌクレオチドによって結合される核酸またはオリゴヌクレオチドであってもよい。被検体は、特異的結合対のメンバーを形成する任意の他の物質とすることができる。他の例示的な型の被検体として、ステロイドなどの薬物、ホルモン、タンパク質、糖タンパク質、ムコタンパク質、核タンパク質、リンタンパク質、乱用薬物、ビタミン、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス剤、プリン、抗腫瘍薬、アンフェタミン、アゼピン化合物、ヌクレオチド、およびプロスタグランジン、ならびにこれらの薬物のいずれかの代謝産物、農薬および農薬の代謝産物、ならびに受容体が挙げられる。被検体には、細胞、ウイルス、細菌、および真菌も含まれる。
【0010】
アクチベーター:トリガーの存在下で、化学発光が生じるような化学発光化合物の活性化をもたらす、標識と呼ばれる場合もある化合物。
【0011】
アクチベーター標識sbm、またはアクチベーター特異的結合メンバーコンジュゲート − 連結している配置で少なくとも以下のものを含むアッセイミックス中の反応物:a)被検体のための特異的結合メンバー、およびb)化学発光化合物の活性化をもたらすアクチベーター化合物または標識。
【0012】
抗体 −− 天然および操作された完全免疫グロブリン、ならびにその天然および操作された一部および断片を含む。
【0013】
アラルキル −− アリール基で置換されたアルキル基。例には、ベンジル、ベンズヒドリル(benzyhydryl)、トリチル、およびフェニルエチルが含まれる。
【0014】
アリール −− H以外の1つ以上の置換基で置換されている場合がある、1〜5個の炭素環式芳香環を含有する芳香環含有基。
【0015】
生体物質 −− 例えば、全血、抗凝固処理全血(anticoagulated whole blood)、血漿、血清、組織、動物細胞および植物細胞、細胞の内容物、ウイルス、ならびに真菌を含む。
【0016】
化学発光化合物 −− 例えば、電子励起状態において形成される別の化合物に変換されることによって、光の放出を引き起こすように反応を起こす、標識と呼ばれる場合もある化合物。励起状態は、一重項励起状態であっても、三重項励起状態であってもよい。励起状態は、基底状態に緩和すると光を直接放出することができ、または放出性エネルギーアクセプター(emissive energy acceptor)に励起エネルギーを移し、それによって基底状態に戻ることができる。エネルギーアクセプターは、このプロセスにおいて励起状態に上げられ、光を放出する。
【0017】
化学発光標識固定sbm(chemiluminescent−labeled immobilized sbm):連結している配置で少なくとも以下のものを含むアッセイミックス中の反応物:a)被検体のための特異的結合メンバー、b)化学発光化合物または標識、およびc)固相。
【0018】
連結している −− 本明細書で使用する場合、2つ以上の化学種または支持体材料(support material)が、例えば、1つ以上の共有結合によって化学的に連結され、または例えば、吸着、イオン引力、もしくは親和結合などの特異的結合プロセスによって受動的に結合されていることを示す。そのような種または物質が互いに連結されているとき、1つを超える型の連結を伴っていてもよい。
【0019】
ヘテロアルキル −− 環または非末端鎖炭素原子の少なくとも1つが、N、O、またはSから選択されるヘテロ原子で置換されているアルキル基。
【0020】
ヘテロアリール −− 環炭素原子の1〜3個が、N、O、またはSから選択されるヘテロ原子で置換されているアリール基。例示的な基には、ピリジル、ピロリル、チエニル、フリル、キノリル、およびアクリジニル基が含まれる。
【0021】
磁性粒子 −− 本明細書で使用する場合、磁気応答性成分を有する微粒子材料を包含する。磁気応答性には、強磁性材料、常磁性材料、および超常磁性材料が含まれる。一例示的な磁気応答性材料は、磁鉄鉱である。粒子は、磁気応答性であり、1つ以上の非磁気応答性層によって囲繞されている固体コア部分を有することができる。交互に(alternately)、磁気応答性部分は、非磁気応答性コアの周囲の層とすることができ、または非磁気応答性コア内に配置された粒子とすることができる。
【0022】
試料 −− アッセイにおいて測定される被検体を含有するか、または含有する疑いのある混合物。被検体として、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、ホルモン、抗体、薬物、およびステロイドが挙げられる。本開示の方法において使用することができる典型的な試料として、体液、例えば、収集された血液試料中に一般に見出されるような抗凝固処理血液であってもよい血液、血漿、血清、尿、精液、唾液、細胞培養物、組織抽出物などが挙げられる。他の型の試料として、溶媒、海水、工業用水試料、食物試料、および土壌または水などの環境試料、植物材料、真核生物、細菌、プラスミド、ウイルス、真菌、および原核生物に由来する細胞が挙げられる。
【0023】
SSIA、(選択的シグナル阻害剤(Selective Signal Inhibiting Agent)) − 非特異的なシグナルまたはバックグラウンドシグナルが、アッセイ反応混合物の化学発光生成反応から生じる被検体特異的シグナルより大きい量で低減されるように、本開示のアッセイ反応混合物で提供される化合物。
【0024】
固体支持体 −− アッセイ成分が固定化される表面を有する物質。物質は、粒子、微粒子、ナノ粒子、金属コロイド、繊維、シート、ビーズ、膜、フィルター、ならびに他の支持体、例えば、試験管、マイクロウェル、チップ、ガラススライド、およびマイクロアレイなどの形態とすることができる。
【0025】
可溶性の、溶解度、可溶化する − 1つの物質が、別の物質と均一にブレンドする能力または傾向。本開示では、溶解度および関連用語は一般に、液体中の固体、例えば、水性緩衝液中のSSIAの特性を指す。固体は、これらがその結晶形態を失い、溶媒(例えば、液体)中に、分子的またはイオン的に溶解または分散した状態になることによって真の溶液を形成する程度に可溶性である。対照的に:1つの相が、沈殿を阻止するように安定化されていても、安定化されていなくても、バルク物質全体にわたって分布した小さい粒子(微粒子またはコロイドサイズの粒子を含む)からなる2相系。
【0026】
置換された −− 1つの基上の少なくとも1つの水素原子の、非水素基による置換を指す。置換される基に関して、別段の明らかな指示のない限り、複数の置換箇所が存在し得ることが意図されていることに留意すべきである。
【0027】
試験デバイス −− 本発明によるアッセイの試料および他の成分を含めるための容器または装置。例えば、様々なサイズおよび形状の試験管、マイクロウェルプレート、上にアレイが形成またはプリントされるチップおよびスライド、試験紙および膜が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】図1Aは、実施例10に記載したような本方法の化学発光反応におけるバックグラウンド化学発光に対するpHの影響を実証するプロットである。
【図1B】図1Bは、実施例10に記載したような本方法の化学発光反応における特異的シグナル化学発光に対するpHの影響を実証するプロットである。
【図2A】図2Aは、実施例17に記載したようなイムノアッセイ法におけるcTnIの検出を例示するプロットである。
【図2B】図2Bは、実施例17に記載したようなイムノアッセイ法における希釈系列中のcTnIの検出を例示するプロットである。
【図2C】図2Cは、実施例17に記載したようなイムノアッセイ法における希釈系列中のcTnIの検出を例示するプロットである。
【図3】図3は、実施例18に記載したような参照方法の結果と比較した、本発明の方法によって行われたcTnIアッセイの結果の比較を例示するプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、試料中の被検体を測定するための、改善されたアッセイ法を提供する。特に、本開示は、分離ステップを必要としない被検体特異的結合アッセイを記述し、非特異的シグナルまたはバックグラウンドに対する被検体特異的シグナル応答の改善を提供する。
【0030】
目ざましいことに、出願人らは、そのようなアッセイ法は、選択的シグナル阻害剤(Selective Signal Inhibiting Agent)、SSIAを使用することによって、さらに改善することができることを発見した。本方法では、過剰のアクチベーターおよび/または過剰の化学発光化合物が除去されないアッセイシステムにSSIAを添加することにより、感度のよい、特異的な、被検体濃度依存性結合アッセイを実施する能力が著しく改善される。それによって、アッセイの精度および感度が改善され、より信頼でき、有用な試験をもたらす。この改善は、予期されておらず、または予測可能でなかった。SSIAを使用することによって、共に、被検体との標識された特異的結合対メンバーの複合体中に結合した、固定された化学発光標識とアクチベーター標識との反応によって生じるシグナルと、存在するが、そのような複合体中ではない標識からのシグナルとの比は、劇的に改善される。さらに、低レベルの被検体でのバックグラウンド効果が最小化される。
【0031】
米国特許出願公開第US20070264664号、および同第US20070264665号において以前に開示された方法は、被検体特異的結合反応を使用することによって、物質の存在、位置、または量を検出するための、改善された、迅速で単純なアッセイ法を提供した。このアッセイ法は、固定化された化学発光化合物と、被検体に媒介される特異的な結合反応によって反応性の配置にされたアクチベーター化合物との反応を伴う。アッセイおよび方法は、複合体中に結合した特異的結合パートナーから遊離の特異的結合パートナーを分離することなく実施される。
【0032】
本方法は、化学発光標識に連結している、固定された被検体特異的結合メンバー、化学発光標識と反応するためのアクチベーターに連結している被検体のための、固定されていない被検体特異的結合メンバー、および選択的シグナル阻害剤の使用を必要とする。トリガー溶液の添加により、被検体を検出するための化学発光の放出が開始される。アッセイおよび方法は、複合体中に結合した特異的結合パートナーから遊離の特異的結合パートナーを分離することなく実施される。
【0033】
本開示は、被検体特異的結合反応によって、物質の存在、位置、または量を検出するための、改善された、迅速で単純なアッセイ法に関する。この方法は、固定された被検体特異的結合メンバー、および被検体のための固定されていない被検体特異的結合メンバーの使用を必要とする。一方の被検体特異的結合メンバーは、化学発光標識と結合している一方で、他方の被検体特異的結合メンバーは、アクチベーターと結合している。多くの実施形態では、化学発光反応を誘導するアクチベーター化合物は、被検体、エンハンサー、選択的シグナル阻害剤、およびトリガー溶液を含有する水溶液中で、被検体に結合している被検体特異的結合メンバーのいずれか、または両方によって媒介される場合、固体支持体上の化学発光標識と近接した状態にされ、それによって、被検体濃度に関係する検出可能な化学発光シグナルを生成する。他の実施形態では、固体支持体上で、化学発光反応を誘導するアクチベーター化合物は、被検体、エンハンサー、選択的シグナル阻害剤、およびトリガー溶液を含有する水溶液中で、他方の被検体特異的結合メンバーへの結合を被検体と競合する一方の被検体特異的結合メンバーによって媒介される場合、化学発光標識と近接になることを妨げられ、それによって、被検体濃度に逆に関係する検出可能な化学発光シグナルを生成する。
【0034】
多くの実施形態では、一方の被検体特異的結合メンバー(「sbm」)は、固体支持体および化学発光標識(「化学発光標識固定sbm」)に連結されている一方で、別の被検体特異的結合メンバーは、水溶液中で固定化されていないアクチベーターと連結されている(「アクチベーター標識sbm」)。化学発光標識固定sbm、アクチベーター標識sbm、エンハンサー、選択的シグナル阻害剤、試料、およびトリガー溶液は、アクチベーターが、トリガー溶液を添加すると化学発光を生じさせる反応を活性化するのに有効であるように、固定化された化学発光化合物に作動可能に近接した状態にされるとき、検出可能なシグナルを生成する。作動可能な近接とは、化学発光化合物およびアクチベーターが、最大で物理的接触を含めて、これらが反応することができるほど十分に近いことを意味する。多くの実施形態では、アクチベーター標識特異的結合メンバーは、被検体の存在、位置、または濃度を決定するのに必要な量に対して過剰にシステムに供給される。
【0035】
一態様では、本方法は、化学発光化合物およびアクチベーターが、トリガー溶液を添加すると化学発光反応が実施されるのを可能にするように、固体支持体において作動可能に近接された1つ以上の被検体特異的結合メンバーの被検体特異的結合反応を介して、共に空間的に束縛されているという点で、ほとんどの従来の試験方法と異なる。一般に、自己の特許出願PCT WO2007/013398は、過剰の固定されていない、または固定されたメンバーの存在により、除去されない場合でも、感度のよい特異的結合アッセイを実施する能力を無効にされないアッセイ法を教示している。例えば、固定化されていないアクチベーターは、トリガー溶液の添加および検出の前に除去されず、その理由は、その存在は、化学発光検出シグナルが被検体の量と相関することを妨げないためである。
【0036】
アッセイ感度の改善におけるSSIAの機能は、スキーム1を参照して理解される。遊離した、および複合体形成した、化学発光標識sbm、およびアクチベーター標識sbmの組合せが、トリガー溶液が添加されるとき、観察される化学発光シグナルに寄与することができる。
【0037】
スキーム1
1 結合−Act+結合−CL→特異的シグナル
2 結合−Act+遊離−CL→非特異的シグナル
3 遊離−Act+結合−CL→非特異的シグナル
4 遊離−Act+遊離−CL→非特異的シグナル
スキームに示したように、反応1は、アッセイにおいて被検体の量に関係づけられるシグナルを生成する。SSIAは、少なくとも部分的には、反応1からのシグナルの量と関連して、反応2からのシグナルの量を選択的に阻害または抑制することによって、その目ざましい機能を実現する。SSIAは、外因性干渉物質からのシグナル生成を抑制することによって、シグナル:バックグラウンドの比を改善することもできる。
【0038】
一実施形態では、アッセイ法、特に、結合アッセイ法であって、化学発光標識固定sbm化合物、アクチベーター標識sbmが、被検体の存在による少なくとも1つの特異的結合反応を介して、作動可能に近接され、ここで、結合したアクチベーターコンジュゲートが、被検体の存在、位置、または量を検出するために、選択的シグナル阻害剤およびエンハンサーの存在下でトリガー溶液を添加すると、化学発光を生成する反応を活性化する、アッセイ法が提供される。
【0039】
いくつかの他の実施形態では、アクチベーター標識sbmが、化学発光標識固定sbmと結合することに対して被検体と競合する競合アッセイ形式が利用され、それによって、被検体濃度または競合アッセイと逆の関係で化学発光を生じさせる。そのような実施形態では、アクチベーターは、化学発光標識固定sbmに結合しているアクチベーター標識sbmによって、固定化された化学発光化合物に作動可能に近接した状態にされることによって、エンハンサーの存在下でトリガー溶液を添加すると化学発光を生じさせる反応を活性化する。化学発光シグナルは、被検体濃度が増大するにつれて減少し、それによって、化学発光標識固定sbmに結合するアクチベーター標識sbmの結合を競合的にブロックする。
【0040】
アッセイ成分、例えば、被検体を含有する試料、アクチベーター標識sbm、化学発光標識固定sbm、選択的シグナル阻害剤、およびエンハンサーなどは、洗浄も分離もすることなく、試験容器に様々な順序および組合せで添加することができ、トリガー溶液を添加すると発光を読み取ることができる。一実施形態では、例えば、試料ならびにアクチベーター標識sbmおよび/または化学発光標識固定sbmは、予め混合することができる。一実施形態では、SSIAは、アクチベーター標識sbmおよび/または化学発光標識固定sbmおよび/または試料とのプレミックス中に含めることができる。エンハンサーを、プレミックス中に含め、またはトリガー溶液と共に添加することができる。過剰の非結合の反応物の洗浄も分離もまったく必要としない。
【0041】
化学発光基質、および酵素標識コンジュゲートを使用する従来のアッセイは、標識酵素の量に対して大過剰で化学発光基質を供給する。しばしば、基質/酵素のモル比は、10の9乗、すなわち、10億倍過剰を超える場合がある。連続的な酵素ターンオーバーのために基質の適切な供給を確実にし、このプロセスがアッセイ法において適切な検出感度を保証するために、そのような非常に大過剰の化学発光化合物を供給することが、従来のアッセイにおいて必要であると考えられている。出願人らは、化学発光化合物とアクチベーターの比を数桁低減する高感度のアッセイ法を考案することが可能であることを見出した。この点において、本明細書に記載されるこれらの方法は、公知の酵素連結アッセイ法と基本的に異なる。
【0042】
上記したように、かつ以下に記載される例示的なアッセイにおいて実証されるように、洗浄ステップおよび分離ステップの排除は、アッセイプロトコールの設計を単純化する機会をもたらす。操作ステップの数の低減は、アッセイ時間、不完全な洗浄に由来するアッセイ間ばらつき、および費用を減少させる。同時に、これは、自動化および小型化に付帯的な固有の利点のすべてを伴って、アッセイの実行を自動化および小型化する能力を増強する。
【0043】
一般に、本方法によって実施されるアッセイでは、対象とする被検体を特異的に捕捉するために、固体支持体が試験デバイス内に提供される。固体支持体は、検出される被検体に直接または間接的に結合するための、固定化された特異的結合メンバーとともに提供される。固体支持体は、その上に固定化される標識、多くの実施形態では、化学発光標識とともにさらに提供される。
【0044】
アクチベーター標識sbmも試験デバイスに導入される。アクチベーター標識sbmおよび化学発光標識固定sbmは、被検体を含有する試料の存在下で、特異的結合複合体を形成することが可能になる。試料、アクチベーター標識sbm、化学発光標識固定sbm、SSIA、およびエンハンサーは、任意の順序で別個に、もしくは同時に添加することができ、または予め混合し、組合せとして添加することができる。反応を誘導する前に、結合反応を起こさせる時間期間(「インキュベーション」)を、任意の添加の間または後に挿入することができる。
【0045】
最後に、トリガー溶液が添加されることによって、被検体を検出するための化学発光が生じ、化学発光が検出される。トリガー溶液は、以下にさらに記載されるように過酸化物を最小限で含有するが、エンハンサー、および時折SSIAも含有することができる。一般に、ピーク光強度レベル、指定された時間期間にわたる全RLU、または全積分光強度のいずれかが測定される。光の量(quantity)は、一般に公知の方法に従って較正曲線を構築することによって、被検体の量(amount)と関連付けることができる。発光が、トリガー溶液を添加すると急速に引き続いて起こる場合、適当な注射器を用いての添加に対する測定の開始の時間を機械的に調節し、または検出器にすでに曝された試験デバイスを用いて添加を実施することが望ましい。反応物の最適量、体積、希釈、特異的結合対反応のためのインキュベーション時間、反応物の濃度などは、日常の実験によって、特異的結合アッセイを実施する方法に対する標準的な論文を参照することによって、および以下に詳細に記載される具体例を指針として使用して容易に決定することができる。
【0046】
本方法およびアッセイにおいて使用される被検体特異的結合メンバーの濃度または量は、被検体濃度、所望の結合の速度/アッセイ時間、費用、およびコンジュゲートの利用可能性、被検体特異的結合メンバーの非特異的結合の程度などの要因に依存する。通常、被検体特異的結合メンバーは、最小の予測される被検体濃度に少なくとも等しく、より通常には、少なくとも予期される最高の被検体濃度で存在し、非競合的アッセイについては、濃度は、最高被検体濃度の10〜10倍である場合があるが、通常、10−4M未満、好ましくは10−6M未満、しばしば10−11〜10−7Mの間である。sbmメンバーと連結されるアクチベーターまたは化学発光化合物の量は、通常、被検体特異的結合メンバー当たり少なくとも1つの分子であり、アクチベーターまたは化学発光分子が粒子に固定されている場合、10ほどの多さ、通常少なくとも10〜10もの多さとなり得る。アクチベーターと化学発光化合物の例示的な比は、加工した実施例に提供されている。
【0047】
選択的シグナル阻害剤(SSIA)
本発明の選択的シグナル阻害剤は、遊離した、および/または被検体が結合した化学発光標識sbm、遊離した、および/または被検体が結合したアクチベーター標識sbm、エンハンサー、ならびにトリガー溶液を含むアッセイ反応混合物中に含められる場合、被検体が結合した標識sbmメンバーから得られるシグナルが、SSIAの不存在下で起こるより、有意に大きい程度でバックグラウンドシグナルを超えるような化合物である。
【0048】
1つ以上の選択的シグナル阻害剤が、10−6M〜10−1Mの間、しばしば10−6M〜10−2Mの間、多くの場合10−5M〜10−3Mの間、時折10−5M〜10−4Mの間の濃度で、反応方法において存在する。いくつかの実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、5×10−6M〜5×10−4Mの間で、本方法による反応において存在する。なおさらなる実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、5×10−5M〜5×10−4Mの間で、本方法による反応において存在する。
【0049】
選択的シグナル阻害剤は、反応溶液中で意図されるより高い濃度で、別個の試薬または溶液として供給することができる。この実施形態では、測定された量の作業溶液(working solution)が反応溶液中に投与されることによって、所望の反応濃度が実現される。別の実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、標識sbmメンバーの1つ以上を含有する溶液中に合わされる。別の実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、トリガー溶液の成分として提供される。
【0050】
選択的シグナル阻害剤が、シグナル:バックグラウンド比を改善する程度は、他の要因の中でも、化合物の素性、およびこれが使用される濃度に応じて変化する。この程度は、改善係数の観点からその枠を決めることができ、この観点では、アッセイが選択的シグナル阻害剤を用いて実施される、特定の被検体濃度でのアッセイのシグナル:バックグラウンド比が、選択的シグナル阻害剤を用いない、同じ被検体濃度でのアッセイのシグナル:バックグラウンド比と比較される。改善係数>1は、改善されたアッセイの尺度、および選択的シグナル阻害剤の有益な効果の証拠である。本発明の実施形態では、少なくとも5など、および少なくとも10、または少なくとも50を含めた少なくとも2の改善係数が実現される。以下の実施例を参照すると、改善係数は、被検体濃度の関数としてアッセイ内で変化し得ることが分かる。例えば、改善係数は、被検体濃度が増大するにつれて増大する場合がある。別の実施形態では、濃度間の改善係数の変動は、より直線的な較正曲線、すなわち、化学発光強度対被検体濃度のプロットをもたらす場合がある。
【0051】
以下の表は、選択的シグナル阻害剤として有効に機能することができる化合物を、限定することなく列挙する。明確に列挙されていない追加の化合物は、実施例に記載されるアッセイおよびスクリーニング検査方法の通常の適用によるものを含めて、本開示の技法を使用して見出すことができる。
【0052】
【表1−1】

【0053】
【表1−2】

【0054】
いくつかの実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、ジアルキルヒドロキシアミンから選択される。いくつかの実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、オルトまたはパラ関係に配向した少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物から選択される。例示的な化合物は、以下のものを含む。
【0055】
【化1】

【0056】
いくつかの他の実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、オルトまたはパラ関係に配向した、少なくとも1つのヒドロキシル基および1つのアミノ基を有する芳香族化合物から選択される。例示的な化合物は、以下のものを含む。
【0057】
【化2】

【0058】
さらに他の実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、エンジオールとしても公知である、C−C二重結合上で置換された少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物から選択される。例示的な化合物は、以下のものを含む。
【0059】
【化3】

【0060】
一実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、窒素複素環式化合物から選択される。例示的な化合物は、以下のものを含む。
【0061】
【化4】

【0062】
一実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、過酸化物と接触すると活性SSIAに変換可能な化合物として、マスクされた形態で供給される。適当なマスクされたSSIA化合物は、例えば、ヒドロキシル置換またはアミノ置換アリールボロン酸化合物から選択される。例示的な化合物は、以下のものを含む。
【0063】
【化5】

【0064】
一実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、
【0065】
【化6】

【0066】
から選択される。
【0067】
様々な実施形態では、上記選択的シグナル阻害剤の1つ以上が、本開示のアッセイ法、アッセイ、またはキットにおいて組み合わせて使用される。
【0068】
いくつかの実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、水溶液中で10倍作業溶液の溶解度を有する。作業溶液は、濃縮溶液の一部が反応混合物に添加されることによって、トリガー溶液を添加した後に必要とされる最終濃度を与えるような濃縮水溶液として定義される。
【0069】
選択的シグナル阻害剤の作業溶液のための適当な水溶液は、以下の追加の成分のうちの1つ以上を含む:塩、生物学的緩衝液、エタノール、メタノール、グリコールを含めたアルコール、および界面活性剤。いくつかの実施形態では、水溶液には、緩衝液II(Beckman Coulter,Inc.、Brea CAから市販されている、TRIS緩衝食塩水、界面活性剤、<0.1%のアジ化ナトリウム、および0.1%のProClin300(Rohm and Haas))、25%のエタノール/75%の緩衝液II、25%のエタノール/75%のTriton−X−100(1%)、または10%の0.1NのNaOH/90%の緩衝液IIなどのTris緩衝水溶液が含まれる。
【0070】
固相支持体
本開示の方法の多くの実施形態では、化学発光標識は、試験システムの成分に固定化される。標識は、以下により詳細に記載されるように、いくつかの異なる方法で提供することができる。各改変体において、標識は、それを固定された状態にする様式で物質または材料に安定に、または不可逆的に結合される。「不可逆的に」とは、標識が、意図されたアッセイにおける使用条件下で、固体支持体から実質的に除去されないことを意図する。受動的結合または非共有結合的な結合も企図され、ただし、標識は、使用条件下で固体支持体上に、安定に結合および保持される。これは、いくつかの方法のいずれでも実現することができる。
【0071】
アッセイを実施するための本開示の実施形態では、化学発光標識は、固体支持体の表面に固定化された状態になる。被検体は、例えば、未標識の被検体特異的結合メンバーによって、固体支持体の表面に結合される。化学発光標識は、固体支持体に結合した、固定化された化学発光標識付近にアクチベーターを運ぶ特異的結合反応によって、アクチベーターと反応性の配置にされる。次いで、トリガー溶液が添加され、化学発光が測定される。
【0072】
一実施形態では、化学発光標識は、固定化された被検体特異的結合メンバーに共有結合でつながれる。一例は、マイクロプレートのウェル上、または粒子上に固定化された、標識された捕捉抗体または抗体断片である。被検体特異的結合メンバーの固定化は、共有結合(covalent linkage)または吸着プロセスによるものとすることができる。この形式では、化学発光標識は、「サンドイッチ」形式で被検体を共に結合している2つの特異的結合パートナーによって、アクチベーターと反応性の配置にされる。
【0073】
別の実施形態では、化学発光標識は、ランダムな様式で固体支持体上に固定化された補助物質(auxiliary substance)に共有結合でつながれる。補助物質の固定化は、共有結合または吸着プロセスによるものとすることができる。それによって標識は、固体支持体の表面のまわりに大体均一に分布される。被検体は、例えば、未標識の被検体特異的結合メンバーによって、固体支持体の表面に結合される。化学発光標識は、支持体の表面上に結合され、または受動的にコーティングされた補助物質に結合した化学発光標識付近にアクチベーターを運ぶ特異的結合反応によって、アクチベーターと反応性の配置にされる。
【0074】
別の実施形態では、化学発光標識は、被検体特異的捕捉抗体に対して結合親和性を有する、固定化されたユニバーサル抗体に共有結合でつながれる。
【0075】
別の実施形態では、化学発光標識が共有結合でつながれる補助物質は、タンパク質またはペプチドである。例示的なタンパク質には、アルブミンまたはストレプトアビジン(SA)が含まれる。化学発光化合物は、ビオチン−化学発光化合物コンジュゲートを使用することによる固定化のために提供される場合がある。この型のアッセイ形式は、ビオチンコンジュゲートとして、または固体支持体への直接固定化、もしくは種特異的抗免疫グロブリンなどの一般的な捕捉成分を通じた間接的な結合によって、被検体特異的結合メンバーを提供することができる。
【0076】
別の実施形態では、化学発光標識が共有結合でつながれる補助物質は、合成ポリマーである。化学発光化合物を固定化するためにポリマー助剤を使用するアッセイ形式は、ビオチンコンジュゲートとして、または固体支持体への直接固定化、もしくは種特異的免疫グロブリンなどの一般的な捕捉成分を通じた間接的な結合によって、被検体特異的結合メンバーを提供することができる。
【0077】
別の実施形態では、化学発光標識は、固体支持体の表面に共有結合でつながれる。そのような実施形態では、それによって標識は、固体支持体の表面のまわりに大体均一に分布される。被検体は、例えば、未標識被検体特異的結合メンバーによって、固体支持体の表面に結合される。化学発光標識は、支持体の表面に直接結合した化学発光標識付近にアクチベーターを運ぶ特異的結合反応によって、アクチベーターと反応性の配置にされる。次いで、洗浄も分離もすることなく、トリガー溶液が添加され、化学発光が測定される。
【0078】
別の実施形態では、被検体の類似体が使用され、アクチベーター−被検体類似体コンジュゲートを構成する。別の実施形態では、標識された被検体が使用され、アクチベーター−被検体コンジュゲートを構成する。アクチベーター−被検体類似体コンジュゲートまたはアクチベーター−被検体コンジュゲート、および被検体は、被検体特異的結合メンバーと競合的に結合する。この型のアッセイ法において、試料中の被検体の量と化学発光の強度の間に負の相関が生じることは明らかである。
【0079】
抗原もしくは他のタンパク質に結合するための抗体、またはイムノアッセイを介した他の抗体を通じた化学発光標識の結合に加えて、本方法は、相補的核酸の結合を通じて核酸を検出するための化学発光標識核酸を使用することができる。この点において、使用は、核酸のサイズに関して特に限定されず、唯一の基準は、相補性パートナーが、安定なハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な長さのものであることである。核酸には、本明細書で使用する場合、遺伝子長の核酸、核酸のより短い断片、ポリヌクレオチド、およびオリゴヌクレオチドが含まれ、そのいずれも一本鎖であっても二本鎖であってもよい。被検体特異的結合メンバーとして核酸を使用して本開示を実施する際、核酸は、被検体核酸を捕捉するために、固体支持体の表面上に共有結合している(covalently attached)か、または物理的に固定化されている。化学発光標識は、捕捉核酸に結合することができ、または標識は、上記に説明したように、支持体に連結することができる。捕捉核酸は、被検体核酸の配列領域と完全、または実質的に完全な配列相補性を有する。
【0080】
実質的に相補性である場合、捕捉核酸は、被検体と相補性でない末端オーバーハンギング部分、末端ループ部分、または内部ループ部分を有することができ、ただしこれは、被検体とのハイブリダイゼーションを妨害または阻止しない。逆の状況も起こり得、この場合、オーバーハングまたはループは、被検体核酸内に属する。捕捉核酸、被検体核酸、アクチベーターのコンジュゲート、および第3の核酸が、ハイブリダイズさせられる。第3の核酸は、捕捉核酸と相補性の配列領域とは異なる、被検体核酸の配列領域と実質的に相補性である。捕捉核酸およびアクチベーターコンジュゲート核酸の被検体とのハイブリダイゼーションは、いずれの順序でも連続して、または同時に実施することができる。このプロセスの結果として、化学発光標識は、支持体の表面に結合した化学発光標識付近にアクチベーターを運ぶ特異的なハイブリダイゼーション反応によって、アクチベーターと結合した状態になる。上記したように、トリガー溶液が供給され、化学発光が検出される。
【0081】
別の実施形態は、被検体のアクチベーターとのコンジュゲートが使用される変形を含む。被検体核酸−アクチベーターコンジュゲートおよび被検体核酸は、被検体特異的結合メンバーと競合的に結合する。この型のアッセイ法において、試料中の被検体の量と化学発光の強度の間に負の相関が生じることは明らかである。
【0082】
抗体に基づくシステムおよび核酸に基づくシステムに加えて、結合アッセイの当業者に一般に公知であるような他の特異的結合対も、本開示による試験方法の基礎として機能を果たすことができる。抗体−ハプテン対も使用することができる。フルオレセイン/抗フルオレセイン、ジゴキシゲニン/抗ジゴキシゲニン、およびニトロフェニル/抗ニトロフェニルの対は、例示的である。さらなる例として、周知の(ストレプト)アビジン/ビオチン結合対を利用することができる。この結合対を使用することができる一方法を例示するために、ストレプトアビジン−化学発光標識コンジュゲートは、固体支持体上に共有結合でつなぐことができるか、または吸着することができる。次いで、ビオチン標識被検体およびアクチベーターコンジュゲートが添加され、コンジュゲートは、抗ビオチン抗体または抗被検体抗体に結合される。複合体が形成させられた後、上記のようにトリガー溶液が添加され、検出が行われる。別の実施形態では、アビジンまたはストレプトアビジンが固体支持体上に堆積される。ビオチン−化学発光化合物コンジュゲートは、アビジンに結合され、ビオチン化抗体も結合される。別の実施形態では、ビオチンは、固体支持体につながれ、アビジンまたはストレプトアビジンを捕捉するのに使用される。ビオチン化抗体も結合される。化学発光化合物は、ビオチン−化学発光化合物コンジュゲートを(ストレプト)アビジンに結合させることによって、または化学発光化合物で表面に直接標識することによって、固体支持体に固定することができる。当技術分野で公知の追加の被検体特異的結合メンバーとして、抗体のFab部分、レクチン−炭水化物、プロテインA−IgG、およびホルモン−ホルモン受容体が挙げられる。固体支持体への化学発光化合物の間接的結合を、本開示の取り扱いにおいて使用することができることが理解されるべきである。これらの例および当業者が考えつく他の例は、本発明の方法の範囲内であると見なされる。
【0083】
本開示を実施するのに有用な固体支持体は、様々な材料、多孔度、形状、およびサイズのものとすることができる。96ウェル、384ウェル、またはより多い数の種類のマイクロウェルプレート、試験管、試料カップ、プラスチック球、セルロース、紙またはプラスチックの試験紙、ラテックス粒子、0.10〜50μmの直径を有するポリマー粒子、0.10〜50μmの直径を有するシリカ粒子、磁性粒子、特に0.1〜10μmの平均直径を有するもの、様々な材料のナノ粒子、および金属コロイドを含めた結合アッセイに既に使用されている材料はすべて、化学発光標識を結合するため、および被検体特異的結合メンバーを固定化するための有用な固体支持体をもたらすことができる。磁性粒子は、磁性金属、金属酸化物、または金属硫化物コアを含むことができ、これらは、磁気成分を遮蔽するための、吸着的に結合したかまたは共有結合した層によって一般に囲繞されている。磁気成分は、鉄、酸化鉄、または硫化鉄とすることができ、鉄は、Fe2+もしくはFe3+、または両方である。このクラスにおいて使用可能な材料には、例えば、磁鉄鉱、磁赤鉄鉱、および黄鉄鉱が含まれる。他の磁性金属酸化物には、MnFe、NiFe、およびCoFeが含まれる。磁性成分は、例えば、非磁性シェルによって囲繞された固体コアとすることができ、または散在した磁性材料および非磁性材料のコアとすることができ、または別の非磁性シェルによって必要に応じて囲繞された、非磁性コアを囲繞している層とすることができる。そのような磁性粒子中の非磁性材料は、シリカ、ポリスチレンなどの合成ポリマー、Merrifield樹脂、ポリアクリレートもしくはスチレン−アクリレートコポリマーとすることができ、またはこれは、アガロースもしくはデキストランなどの天然ポリマーであってもよい。
【0084】
本開示は、本アッセイ法において使用するために、そのような材料を機能化する方法を教示する。特に、化学発光標識化化合物(chemiluminescent labeling compound)、および抗体などの被検体特異的結合メンバーの両方を、同じ表面、特にマイクロプレートのウェルまたは微粒子に結合させるための方法が開示される。アッセイにおいて使用される適当な支持体として、合成ポリマー支持体、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、置換ポリスチレン(例えば、アミノ化またはカルボキシル化ポリスチレン)、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリ塩化ビニルなど、ガラスビーズ、シリカ粒子、官能性シリカ粒子、金属コロイド、アガロース、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフルオリド、表面修飾ナイロンなどが挙げられる。
【0085】
アクチベーター標識
アクチベーター化合物は、アクチベーター標識sbmの一部を形成し、これは、アクチベーター−特異的結合メンバーコンジュゲートと呼ばれる場合もある。アクチベーター標識sbmは、二重の機能を果たす:1)直接に、または中間の特異的結合パートナーを通じて、特異的結合パートナー部分を通じて、アッセイにおける被検体の量に比例した特異的結合反応を起こし、かつ2)アクチベーター部分を通じて化学発光化合物を活性化する。アクチベーター標識sbmのアクチベーター部分は、トリガー溶液の存在下で化学発光が生じるように、化学発光化合物の活性化を起こす化合物である。アクチベーター標識として機能を果たすことができる化合物には、遷移金属の塩および錯体ならびに酵素を含めたペルオキシダーゼ様活性を有する化合物、特に遷移金属含有酵素、最も特に、ペルオキシダーゼ酵素が含まれる。アクチベーター化合物において有用な遷移金属として、周期表の3〜12族のもの、特に、鉄、銅、コバルト、亜鉛、マンガン、クロム、およびバナジウムが挙げられる。
【0086】
化学発光反応を起こすことができるペルオキシダーゼ酵素として、例えば、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、バナジウムブロモペルオキシダーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、真菌ペルオキシダーゼ類、リグニンペルオキシダーゼ、Arthromyces ramosusに由来するペルオキシダーゼ、白色腐朽菌(white rot fungi)で産生されるMn依存性ペルオキシダーゼ、およびダイズペルオキシダーゼが挙げられる。hemeなどの鉄錯体、およびMn−TPPS4を含めた、酵素でないが、ペルオキシダーゼ様活性を有する他のペルオキシダーゼ模倣化合物も公知である(Y.−X. Ciら、Mikrochem. J.、52巻、257〜62頁(1995年))。これらは、基質の化学発光酸化を触媒し、本明細書で使用する場合、ペルオキシダーゼの意味の範囲内であると明確に見なされる。
【0087】
いくつかの実施形態では、アクチベーター標識sbmは、化学発光を生じさせるための方法において、ペルオキシダーゼおよび生体分子のコンジュゲートまたは複合体を含むことができ、唯一の条件は、コンジュゲートがペルオキシダーゼ活性またはペルオキシダーゼ様活性を示すことである。ペルオキシダーゼの1つ以上の分子にコンジュゲートすることができる生体分子として、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体断片、抗体−DNAキメラ、抗原、ハプテン、タンパク質、ペプチド、レクチン、アビジン、ストレプトアビジン、およびビオチンが挙げられる。ペルオキシダーゼを含む、または組み込んでいる複合体、例えば、生体分子への結合に関して機能化されているリポソーム、ミセル、ベシクル、およびポリマーなども、本開示の方法において使用することができる。
【0088】
トリガー溶液&エンハンサー
トリガー溶液は、化学発光に必要な励起状態の化合物を生成するのに必要な反応物を提供する。反応物は、化学発光標識と直接反応することによって化学発光反応を実施するのに必要なものとすることができる。これは、この機能の代わりに、またはこの機能に加えて、アクチベーター化合物の作用を促進する機能を果たすことができる。これは、例えば、アクチベーターがペルオキシダーゼ酵素である場合、そのようになる。一実施形態では、トリガー溶液は、過酸化物化合物を含む。過酸化物成分は、ペルオキシダーゼと反応することができる、任意の過酸化物またはアルキルヒドロペルオキシドである。例示的な過酸化物には、過酸化水素、尿素過酸化物、および過ホウ酸塩が含まれる。トリガー溶液中に使用される過酸化物の濃度は、一般に約10−8M〜約3M、より一般に約10−3M〜約10−1Mという値の範囲内で変更することができる。別の実施形態では、トリガー溶液は、過酸化物、およびペルオキシダーゼ活性を有するアクチベーターの触媒ターンオーバーを促進するエンハンサー化合物を含む。代表的な実施形態では、アクチベーターとしてのペルオキシダーゼコンジュゲート、被検体のアクリダン標識特異的結合パートナー(ここで、アクリダン標識は、以下に記載されるように、特異的結合パートナーをアクリダン標識化化合物と反応させることによって提供される)、および過酸化水素を含むトリガー溶液が使用される。過酸化物は、ペルオキシダーゼと反応することによって、おそらく、酵素の活性部位における鉄の酸化状態を、異なる酸化状態に変化させる。この変化した状態の酵素は、エンハンサー分子と反応することによって、酵素の触媒ターンオーバーを促進する。エンハンサーまたは酵素から形成される反応性種は、酵素に近接して維持されたアクリダン標識と反応する。化学発光反応は、化学発光化合物から形成される中間体と過酸化物とのさらなる反応を含み、最終反応生成物および光を生成する。
【0089】
ある特定のエンハンサー化合物をトリガー溶液中に取り込むことにより、酵素の反応性が促進され、もしくはバックグラウンドシグナルが低減され、または両方の機能が実施される。これらのエンハンサーの中に含まれるのは、ペルオキシダーゼ反応を増強することが公知であるフェノール化合物および芳香族アミンである。米国特許第5,171,668号に開示されているような、フェノキサジン化合物またはフェノチアジン化合物の、インドフェノール化合物またはインドアニリン化合物との混合物を、本発明においてエンハンサーとして使用することができる。置換ヒドロキシベンゾオキサゾール、2−ヒドロキシ−9−フルオレノン、および米国特許第5,206,149号に開示されているような化合物、
【0090】
【化7】

【0091】
も、本発明においてエンハンサーとして使用することができる。米国特許第5,512,451号に開示されているような置換および非置換のアリールボロン酸化合物、ならびにこれらのエステルおよびアンヒドリド誘導体も、本開示において有用なエンハンサーの範囲内であると見なされる。例示的なフェノールエンハンサーとして、それだけに限らないが、p−フェニルフェノール、p−ヨードフェノール、p−ブロモフェノール、p−ヒドロキシケイ皮酸、p−イミダゾリルフェノール、アセトアミノフェン、2,4−ジクロロフェノール、2−ナフトール、および6−ブロモ−2−ナフトールが挙げられる。上記したクラスからの1つを超えるエンハンサーの混合物も使用することができる。
【0092】
本発明を実施するのに有用な追加のエンハンサー、および誘導体には、ヒドロキシベンゾチアゾール化合物、ならびに以下の式を有するフェノキサジン化合物およびフェノチアジン化合物が含まれる。
【0093】
【化8】

【0094】
フェノキサジンエンハンサーおよびフェノチアジンエンハンサーの窒素原子上で置換されたR基には、1〜8炭素原子のアルキル、およびスルホン酸塩またはカルボン酸塩の基で置換された1〜8炭素原子のアルキルが含まれる。例示的なエンハンサーとして、3−(N−フェノチアジニル)−プロパンスルホン酸塩、3−(N−フェノキサジニル)プロパンスルホン酸塩、4−(N−フェノキサジニル)ブタンスルホン酸塩、5−(N−フェノキサジニル)−ペンタン酸塩、およびN−メチルフェノキサジン、ならびに関連同族体が挙げられる。トリガー溶液中で使用されるエンハンサーの濃度は、一般に約10−5M〜約10−1M、より一般に約10−4M〜約10−2Mという値の範囲内で変更することができる。
【0095】
本開示の検出反応は、一般に水性緩衝液であるトリガー溶液を用いて実施される。適当な緩衝液には、化学発光反応の進行を可能にする環境を維持することができる、任意の一般に使用される緩衝液が含まれる。一般に、トリガー溶液は、約5〜約10.5の範囲内のpHを有する。例示的な緩衝液として、ホスフェート、ボレート、アセテート、カーボネート、tris(ヒドロキシ−メチルアミノ)メタン[tris]、グリシン、トリシン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、MOPS、HEPES、MESなどが挙げられる。
【0096】
トリガー溶液は、光生成反応の発光効率を増強し、またはアッセイのシグナル/ノイズ比を改善するために、1つ以上の界面活性剤またはポリマー界面活性剤も含有することができる。本開示を実施するのに有用な非イオン性界面活性剤には、例として、ポリオキシエチレン化(polyoxyethylenated)アルキルフェノール、ポリオキシエチレン化アルコール、ポリオキシエチレン化エーテル、およびポリオキシエチレン化ソルビトールエステルが含まれる。CTABなどの4級アンモニウム塩化合物、および4級ホスホニウム塩化合物を含めた、モノマーの陽イオン性界面活性剤を使用することができる。4級アンモニウム塩およびホスホニウム塩の基を含むものを含めた、ポリマーの陽イオン性界面活性剤も、この目的のために使用することができる。
【0097】
一実施形態では、トリガー溶液は、水性緩衝液、約10−5M〜約1Mの濃度の過酸化物、および約10−5M〜約10−1Mの濃度のエンハンサーを含む組成物である。この組成物は、界面活性剤、金属キレート化剤、および微生物混入を予防し、または最小限にするための保存剤を含めた添加剤を必要に応じて含有することができる。
【0098】
特異的結合対
特異的結合対メンバーまたは特異的結合パートナー(sbm)は、別の物質に対して特異的な結合親和性を有する、生体分子を含めた分子として本明細書で定義される。特異的結合対メンバーとして、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体断片、抗体−DNAキメラ、抗原、ハプテン、タンパク質、ペプチド、レクチン、アビジン、ストレプトアビジン、およびビオチンが挙げられる。特異的結合対の各特異的結合対メンバーは、同じ物質(例えば、被検体)に対して特異的な結合親和性を有する。各特異的結合対メンバーは、少なくとも、被検体上の同じまたは重複結合部位を競合するべきでないという点で、特異的結合対中の他の特異的結合対メンバーと非同一である。例えば、特異的結合対が2つの抗体からなる場合、各sbm抗体は、被検体上に、異なる、非競合エピトープを有する。
【0099】
特異的な結合物質として、限定することなく、抗体および抗体断片、抗原、ハプテンおよびその同族抗体、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン、プロテインAおよびIgG、相補的核酸またはオリゴヌクレオチド、レクチンおよび炭水化物が挙げられる。
【0100】
上記の抗原−抗体、ハプテン−抗体、または抗体−抗体対に加えて、特異的結合対として、相補性のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、アビジン−ビオチン、ストレプトアビジン−ビオチン、ホルモン−受容体、レクチン−炭水化物、IgGプロテインA、結合タンパク質−受容体、核酸−核酸結合タンパク質、および核酸−抗核酸抗体も挙げることができる。薬物候補のスクリーニングにおいて使用される受容体アッセイは、本方法についての使用の別の範囲である。これらの結合対のいずれも、上記した3成分サンドイッチ技法または2成分競合技法によって、本方法において使用するのに適応することができる。
【0101】
化学発光化合物
本開示の実施において化学発光標識として使用される化合物は、一般式CL−L−RGを有し、式中、CLは、化学発光部分を表し、Lは、化学発光部分と反応基を連結するための連結部分(linking moiety)を表し、RGは、別の物質にカップリングするための反応基部分を表す。用語「化学発光基」および「化学発光部分」は、用語「連結部分」および「連結基(linking group)」と同様に互換的に使用される。化学発光部分CLは、アクチベーターと反応を起こし、活性化された化合物に変換される化合物を含む。活性化された化合物とトリガー溶液の反応により、電子励起状態化合物が形成される。励起状態は、一重項励起状態であっても、三重項励起状態であってもよい。励起状態は、基底状態に緩和すると光を直接放出することができ、または放出性エネルギーアクセプターに励起エネルギーを移し、それによって基底状態に戻ることができる。エネルギーアクセプターは、このプロセスにおいて励起状態に上げられ、光を放出する。CL基、アクチベーター、およびトリガー溶液の化学発光反応は急速であり、非常に短期間で起こることが望ましいが、必須ではなく、一実施形態では、数秒以内にピーク強度に到達する。
【0102】
本開示の一実施形態では、化学発光化合物は、アクチベーターおよびトリガー溶液の存在下で、酸化されることによって化学発光を生じることができる。リンカーおよび反応基を取り込むことによって、化学発光標識として機能することができる化合物の例示的なクラスとして、イソルミノール、アミノブチルエチルイソルミノール(ABEI)、アミノヘキシルエチルイソルミノール(AHEI)、7−ジメチルアミノナフタレン−1,2−ジカルボン酸ヒドラジド、環置換アミノフタルヒドラジド、アントラセン−2,3−ジカルボン酸ヒドラジド、フェナントレン−1,2−ジカルボン酸ヒドラジド、ピレンジカルボン酸ヒドラジド、5−ヒドロキシフタルヒドラジド、6−ヒドロキシフタルヒドラジド、ならびにMasuyaらへの米国特許第5,420,275号およびYamaguchiへの米国特許第5,324,835号において開示された他のフタラジンジオン類似体を含めた、ルミノールならびに構造的に関連した環状ヒドラジドなどの芳香族環状ジアシルヒドラジドが挙げられる。
【0103】
過酸化水素およびペルオキシダーゼの作用によって化学発光を生じることが公知である任意の化合物が、本開示において使用される化学発光標識化合物の化学発光部分として機能すると考えられる。キサンテン色素(例えば、フルオレセイン色素、エオシン色素、ローダミン色素、またはロドール色素など)、芳香族アミン、および複素環式アミンを含めた、様々な構造上のクラスの多数のそのような化合物が、これらの条件下で化学発光を生じることが当技術分野で公知である。別の例は、化合物MCLA、2−メチル−6−(p−メトキシフェニル)−3,7−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3−オンである。別の例はインドール酢酸であり、別の例はイソブチルアルデヒドであり、後者は一般に、可視光の出力を増大させるための蛍光エネルギーアクセプターを伴っている。トリヒドロキシ芳香族化合物のピロガロール、フロログルシノール、およびプルプロガリンは、個々に、または組合せて、本開示の化学発光標識化化合物中の化学発光部分として機能を果たすことができる化合物の他の例である。
【0104】
一実施形態では、本開示の方法において有用なアクリダンケテンジチオアセタール(AK)を含む一群の化学発光標識化合物は、式IVを有するアクリダン化合物
【0105】
【化9】

【0106】
を含み、式中、基R〜R11の少なくとも1つは、式−L−RGの標識化置換基であり、Lは、結合、または別の二価もしくは多価の基となり得る連結基であり、RGは、化学発光標識化化合物が別の化合物に結合することを可能にする反応基であり、R、R、およびRは、1〜50の非水素原子を含有する有機基であり、R〜R11のそれぞれは、水素、または干渉しない置換基である。標識化置換基−L−RGは、RまたはRの1つに存在することができるが、これは、RまたはR〜R11の1つに置換基として存在することもできる。
【0107】
式IVの化合物中の基RおよびRは、光生成を可能にするC、N、O、S、P、Si、およびハロゲン原子から選択される、1〜約50の非水素原子を含有する任意の有機基とすることができる。後者とは、式Iの化合物が本開示の反応を起こすとき、励起状態生成物の化合物が生成され、1つ以上の化学発光中間体の生成を含むことができることを意味する。励起状態生成物は、直接光を放出することができ、またはエネルギー移動を通じて蛍光アクセプターに励起エネルギーを移し、この蛍光アクセプターから光を放出させることができる。一実施形態では、RおよびRは、1〜20炭素原子の、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換または非置換のアルキニル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のアラルキル基から選択される。RまたはRが置換された基である場合、これは、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、C(=O)NHNH、4級アンモニウム基、および4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよい。一実施形態では、RまたはRは、式−L−RGの標識化置換基で置換されており、式中、Lは連結基であり、RGは反応基である。
【0108】
基Rは、基内の原子の価数を満たすのに要求される必要な数のH原子に加えて、C、N、O、S、P、Si、およびハロゲンから選択される1〜50の非水素原子を含有する有機基である。一実施形態では、Rは、1〜20の非水素原子を含有する。別の実施形態では、有機基は、1〜20炭素原子の、アルキル、置換アルキル、置換または非置換のアルケニル、置換または非置換のアルキニル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のアラルキル基からなる群から選択される。別の実施形態では、Rについての基には、置換または非置換のC〜Cアルキル基、フェニル、置換または非置換のベンジル基、アルコキシアルキル、カルボキシアルキル、およびアルキルスルホン酸基が含まれる。Rが置換された基である場合、これは、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、C(=O)NHNH、4級アンモニウム基、および4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよい。基Rは、5または6員環を完成するために、RまたはRに結合することができる。一実施形態では、Rは、式−L−RGの標識化置換基で置換されている。
【0109】
式IVの化合物では、基R〜R11はそれぞれ、独立してH、または励起状態生成物が生成されるのを可能にし、一般にC、N、O、S、P、Si、およびハロゲンから選択される1〜50の原子を含有する置換基である。存在することができる代表的な置換基として、限定することなく、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボアルコキシ、カルボキサミド、シアノ、およびスルホネート基が挙げられる。隣接する基の対、例えば、R−RまたはR−Rは、一緒に結合することによって、この2つの基が結合されている環に縮合した少なくとも1つの5員環または6員環を含む炭素環系または複素環系を形成することができる。そのような縮合複素環は、N、O、またはS原子を含有することができ、上記したものなどのH以外の環置換基を含有することができる。基R〜R11の1つ以上は、式−L−RGの標識化置換基とすることができる。一実施形態では、R〜R11は、水素、ハロゲン、およびアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、t−ブトキシなどから選択される。別の実施形態では、一群の化合物は、ハロゲンとしてR、R、R、またはR10の1つを有し、R〜R11の他のものは、水素原子である。
【0110】
置換基は、化合物の特性を改変し、または合成の利便性をもたらすために、様々な量で、アクリダン環内の選択された環または鎖の位置で組み込むことができる。そのような特性として、例えば、化学発光量子収率、酵素との反応速度、最大光強度、発光の継続時間、発光波長、および反応媒質中の溶解度が挙げられる。特定の置換基およびこれらの効果は、以下の具体例において例示されているが、これは、本開示の範囲を限定すると決して見なされるべきではない。合成の便宜のために、式Iの化合物は、水素原子としてR〜R11のそれぞれを有することが望ましい。
【0111】
別の実施形態では、一群の化合物は式Vを有し、式中、R〜R11のそれぞれは水素である。基R、R、およびRは上記に定義された通りである。
【0112】
【化10】

【0113】
式IVまたはVの標識化化合物は、基RまたはR上に置換基として基−L−RGを有する。一実施形態では、標識化化合物は、式VIを有する。
【0114】
【化11】

【0115】
代表的な標識化化合物は、以下の構造を有する。追加の例示的な化合物、ならびに他の分子および固体表面への結合におけるこれらの使用は、以下の具体例において記載されている。以下に示された構造は、式CL−L−RGの例示的な化合物を例示する。
【0116】
【化12】

【0117】
上記の特定のAK化合物、ならびに上に示された一般式IV、V、およびVIの化合物は、公開された出願US2007/0172878に開示された方法を含む、一般に公知の方法を使用して、熟練した有機化学者によって調製することができる。例示的な方法では、N−置換、かつ必要に応じて環置換アクリダン環化合物は、強塩基、その後にCSと反応されることによって、アクリダンジチオカルボキシレートを形成する。ジチオカルボキシレートは、従来法によってエステル化されることによって、Rと命名した置換基の1つが組み込まれる。得られたアクリダンジチオエステルは、非プロトン性溶媒中で、n−BuLiまたはNaHなどの強塩基を用いて再び脱プロトン化され、脱離基およびR部分を含有する適当な試薬を用いてS−アルキル化される。R部分は、適当な反応基を組み込むためにさらなる操作にかけることができることが、有機化学における当業者に容易に明らかである。
【0118】
別のクラスの化学発光部分には、米国特許第5,491,072号;同第5,523,212号;同第5,593,845号;および同第6,030,803号に開示された、アクリダンエステル、チオエステル、およびスルホンアミドが含まれる。このクラスにおける化学発光標識化化合物は、以下の式VIIの化学発光部分CLを有し、式中、Zは、O、S、またはNR11SOArであり、R11は、アルキルまたはアリールであり、Arは、アリール、またはアルキル置換アリールであり、Rは、C1〜8アルキル、ハロ置換C1〜8アルキル、アラルキル、アリール、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、アルコキシ、アルコキシアルキル、ハロゲン、カルボニル、カルボキシル、カルボキサミド、シアノ、トリフルオロメチル、トリアルキルアンモニウム、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、およびメルカプト基で置換されたアリールであり、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、およびアラルキル基から選択され、R3〜10はそれぞれ、水素であり、または1もしくは2個の置換基が、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、およびハロゲンから選択され、R3〜10の残りは水素である。一実施形態では、R3〜10のそれぞれは水素であり、Rは標識化置換基である。別の実施形態では、R3〜10の1つは標識化置換基であり、R3〜10の他のものは水素である。
【0119】
【化13−1】

【0120】
別のクラスの化学発光部分には、米国特許第5,922,558号;同第6,696,569号;、および同第6,891,057号に開示された複素環式化合物が含まれる。一実施形態では、この化合物は、窒素、酸素、または硫黄を含有する5員もしくは6員の環、または複数の環基を含む複素環式環を含み、これに環外の二重結合が結合しており、その末端炭素は、酸素および硫黄原子から選択される2つの原子で置換されている。
【0121】
別の実施形態では、化学発光標識化合物は、以下の式VIIIの化学発光アクリダンエノール誘導体を含み、式中、Rは、1〜20炭素原子のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびアラルキル基から選択され、そのいずれも、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、4級アンモニウム基、または4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、Xは、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル基、1〜20炭素原子を有するアルキルカルボキシル基またはアリールカルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、グリコシル基、および式PO(OR’)(OR’’)のホスホリル基(式中、R’およびR’’は独立して、C〜Cアルキル、シアノアルキル、アリール、およびアラルキル基、トリアルキルシリル基、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類陽イオン、アンモニウム陽イオンおよびトリアルキルホスホニウム陽イオンから選択される)から選択され、Zは、OおよびS原子から選択され、Rは、置換または非置換のC〜Cアルキル、フェニル、ベンジル、アルコキシアルキル、およびカルボキシアルキル基から選択され、R7〜14はそれぞれ、水素であり、または1もしくは2個の置換基が、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、およびハロゲンから選択され、R7〜14の残りは水素である。一実施形態では、R7〜14のそれぞれは水素であり、Rは標識化置換基である。別の実施形態では、R7〜14の1つは標識化置換基であり、R7〜14の他のものは水素である。
【0122】
【化13−2】

【0123】
別の実施形態では、化学発光標識化化合物は、以下の式IXの化学発光化合物を含み、式中、Rは、1〜20炭素原子のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびアラルキル基から選択され、そのいずれも、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、4級アンモニウム基、または4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、Xは、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル基、1〜20炭素原子を有するアルキルカルボキシル基またはアリールカルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、グリコシル基、および式PO(OR’)(OR’’)のホスホリル基(式中、R’およびR’’は独立して、C〜Cアルキル、シアノアルキル、アリール、およびアラルキル基、トリアルキルシリル基、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類陽イオン、アンモニウム陽イオンおよびトリアルキルホスホニウム陽イオンから選択される)から選択され、ZおよびZはそれぞれ、OおよびS原子から選択され、RおよびRは独立して、水素およびC〜Cアルキルから選択される。
【0124】
【化14】

【0125】
連結基(L)。本開示において使用される任意の化学発光化合物における連結基は、結合、原子、二価の基、および多価の基、またはいくつかは環状構造の一部となり得る、直鎖もしくは分枝鎖の原子とすることができる。置換基は通常、1〜約50の非水素原子、より通常には1〜約30の非水素原子を含有する。別の実施形態では、鎖を構成する原子は、C、O、N、S、P、Si、B、およびSe原子から選択される。別の実施形態では、鎖を構成する原子は、C、O、N、P、およびS原子から選択される。鎖中の炭素以外の原子の数は、通常0〜10である。ハロゲン原子は、鎖または環上の置換基として存在することができる。連結置換基を構成する典型的な官能基として、アルキレン、アリーレン、アルケニレン、エーテル、過酸化物、カルボニル(ケトン、エステル、炭酸エステル、チオエステル、またはアミド基としての)、アミン、アミジン、カルバメート、尿素、イミン、イミド、イミデート、カルボジイミド、ヒドラジノ、ジアゾ、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、ホスホン酸エステル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸エステル、硫酸エステル、およびチオ尿素基が挙げられる。別の実施形態では、基は、−CH−、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiO−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−SC(=O)−、−C(=O)S−、−NRC(=O)−、−NRC(=S)−、または−C(=O)NR−基で終止する1〜20原子のアルキレン鎖であり、式中、RはC1〜8アルキルである。別の実施形態では、連結基は、−CH−、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiO−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−SC(=O)−、−C(=O)S−、−NRC(=O)−、−NRC(=S)−、または−C(=O)NR−基で終止する3〜30原子のポリ(アルキレン−オキシ)鎖であり、式中、RはC1〜8アルキルである。
【0126】
反応基。反応基RGは、その存在が、共有結合または物理的な力による別の分子への結合を促進する原子または基である。いくつかの実施形態では、本開示の化学発光標識化化合物の、別の化合物または物質への結合は、例えば、反応基が、ハロゲン原子またはトシレート基などの脱離基である場合、反応基から1つ以上の原子を失うことになり、化学発光標識化化合物は、求核置換反応によって別の化合物に共有結合的に結合している。
【0127】
一実施形態では、RGは、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル基である。当業者は、NHSエステル基を含むそのような標識化化合物で標識される物質は、その物質上の部分、一般にアミン基と、エステルのC−O結合を分割し、N−ヒドロキシスクシンイミドを放出し、その物質の原子(アミン基の場合N)と、標識化化合物のカルボニル炭素との間に新しい結合を形成するプロセスにおいて反応することを容易に理解する。
【0128】
別の実施形態では、RGは、ヒドラジン部分、−NHNHである。当技術分野で公知であるように、この基は、標識される物質中のカルボニル基と反応することによって、ヒドラジド結合を形成する。
【0129】
他の実施形態では、化学発光標識化化合物の、共有結合形成による別の化合物への結合は、マイケル付加などの付加反応において起こる場合、または反応基がイソシアネートまたはイソチオシアネート基である場合、反応基内の結合の再編成を伴う。さらに他の実施形態では、結合は、共有結合形成を伴わず、むしろ物理的な力を伴い、この場合、反応基は変化しないままである。物理的な力とは、引力、例えば、水素結合、静電気引力またはイオン引力、塩基スタッキングなどの疎水性引力など、ならびに特定の親和性相互作用、例えば、ビオチン−ストレプトアビジン、抗原−抗体、およびヌクレオチド−ヌクレオチド相互作用などを意味する。
【0130】
標識が有機分子および生体分子に化学結合するための反応基として、それだけに限らないが、以下のものが挙げられる:a)アミン反応基:−N=C=S、−SOCl、−N=C=O、−SOCHCF;N−ヒドロキシスクシンイミドエステル;b)チオール反応基:−S−S−R;c)カルボン酸反応基:−NH、−OH、−SH、−NHNH;d)ヒドロキシル反応基:−N=C=S、−N=C=O、−SOCl、−SOCHCF;e)アルデヒド/ケトン反応基:−NH、−ONH、−NHNH;およびf)他の反応基、例えば、R−N、R−C≡CH。
【0131】
一実施形態では、反応基として、OH、NH、ONH、NHNH、COOH、SOCHCF、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエーテル、およびマレイミド基が挙げられる。
【0132】
二官能性カップリング試薬も、適度に反応性の基を有する有機分子および生体分子に標識をカップリングさせるのに使用することができる(L. J. Kricka、Ligand−Binder Assays、Marcel Dekker, Inc.、New York、1985年、18〜20頁、表2.2、およびT. H Ji、「Bifunctional Reagents」、Methods in Enzymology、91巻、580〜609頁(1983年)を参照)。2つの型の二官能性試薬、すなわち、最終的な構造中に組み込まれた状態になるもの、および組み込まれず、2つの反応物をカップリングするためだけに機能を果たすものが存在する。
【0133】
水溶液
本開示において使用するのに適した水溶液は、一般に、50%超の水を含有する溶液である。反応混合物、試料希釈物、キャリブレーター溶液、化学発光標識sbp溶液、アクチベーター標識sbp溶液、エンハンサー溶液、ならびにトリガー溶液、または化学発光標識sbp、アクチベーター標識sbp、エンハンサー、トリガー、試料、および/もしくは選択的シグナル阻害剤の1つもしくは複数の濃縮溶液を含めて、本明細書に記載される水溶液は、使用に適している。多くの実施形態では、水溶液は緩衝水溶液である。適当な水性緩衝液には、水溶液中の環境を維持し、被検体の溶解度を維持し、反応物の溶解度を維持し、および化学発光反応を進行させることができる、一般に使用される緩衝液のいずれも含まれる。例示的な緩衝液として、ホスフェート、ボレート、アセテート、カーボネート、tris(ヒドロキシ−メチルアミノ)メタン(tris)、グリシン、トリシン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、MOPS、HEPES、MESなどが挙げられる。一般に、本開示によって使用するための水溶液は、約5〜約10.5の範囲内のpHを有する。
【0134】
適当な水溶液は、以下の追加の成分の1つ以上を含むことができる:塩、生物学的緩衝液、エタノール、メタノール、グリコールを含めたアルコール、および界面活性剤。いくつかの実施形態では、水溶液には、緩衝液II(Beckman Coulter)などのTris緩衝水溶液が含まれる。
【0135】
いくつかの実施形態では、ヒト血清を模倣する水溶液が利用される。1つのそのような合成マトリクスは、0.1%のProClin300を含む、20mMのPBS、7%のBSA、pH7.5である。合成マトリクスは、それだけに限らないが、試料希釈液、キャリブレーター溶液、化学発光標識sbp溶液、アクチベーター標識sbp溶液、エンハンサー溶液、およびトリガー溶液に使用することができる。用語「PBS」は、慣例的な意味において、当技術分野で公知であるような、リン酸緩衝食塩水を指す。用語「BSA」は、慣例的な意味において、当技術分野で公知であるような、ウシ血清アルブミンを指す。
【0136】
検出
本方法によって放出される光は、任意の適当な公知のデバイスまたは技術、例えば、ルミノメーター、X線フィルム、高速写真フィルム、CCDカメラ、シンチレーションカウンター、化学光量計、または視覚的などによって検出することができる。各検出デバイスまたは技術は、異なるスペクトル感度を有する。ヒトの眼は、緑色光に対して最適に感度がよく、CCDカメラは、赤色光に対して最大感度を示し、UVから青色光または緑色光に最大応答を有するX線フィルムは、利用可能である。検出デバイスの選択は、用途、および費用の考慮、利便性、および永続的な記録の作成が必要とされるかどうかによって支配される。発光の時間過程が急速である実施形態では、検出デバイスの存在下で、化学発光を生じさせるためのトリガー反応を実施することが有利である。例として、検出反応は、ルミノメーター内に収容された試験管またはマイクロウェルプレート、または試験管もしくはマイクロウェルプレートを受け入れるように適応した収納容器内のCCDカメラの前に配置された試験管またはマイクロウェルプレートで実施することができる。
【0137】
用途
本アッセイ法は、多くの型の特異的結合対アッセイにおいて適用性を見出す。これらの中で主要なのは、ELISAなどの化学発光酵素結合イムノアッセイである。免疫化学的ステップを実施するための様々なアッセイ形式およびプロトコールは、当技術分野で周知であり、競合アッセイおよびサンドイッチアッセイの両方を含む。本開示によるイムノアッセイによってアッセイすることができる物質の型には、タンパク質、ペプチド、抗体、ハプテン、薬物、ステロイド、およびイムノアッセイの技術分野で一般に公知である他の物質が含まれる。
【0138】
本開示の方法は、核酸の検出にも有用である。一実施形態では、一方法は、酵素標識核酸プローブを使用する。例示的な方法として、溶液ハイブリダイゼーションアッセイ、サザンブロット法におけるDNA検出、ノーザンブロット法によるRNA、DNA配列決定、DNAフィンガープリント法、コロニーハイブリダイゼーション、およびプラークリフトが挙げられ、その実施は、当業者に周知である。
【0139】
アッセイ材料およびキット
本開示は、本開示の方法に従ってアッセイを実施するためのキットを提供することも企図する。キットは、パッケージされた組合せで、トリガー溶液および使用するための指示書と共に、遊離標識化化合物、化学発光標識被検体特異的結合メンバー、化学発光誘導体化された固体支持体、例えば粒子もしくはマイクロプレート、またはブロッキングタンパク質などの化学発光標識補助物質として化学発光標識を含むことができる。キットは、化学発光標識化がユーザーによって実施される場合、アクチベーターコンジュゲート、被検体キャリブレーター、および対照、希釈剤、および反応緩衝液も必要に応じて含むことができる。
【0140】
本開示の別の実施形態では、化学発光化合物を上に固定化された固体支持体を含むアッセイ材料が提供される。一実施形態では、化学発光化合物は、上記した化学発光化合物の群のいずれかから選択される。別の実施形態では、化学発光化合物は、ペルオキシダーゼ酵素についての基質である。固体支持体上に固定化された化学発光化合物の量は、様々な負荷密度の範囲にわたって変化し得る。例として、固体支持体が微粒子材料である場合、粒子1mg当たり、100〜0.01μgの範囲の化学発光化合物の負荷を使用することができる。別の例では、粒子1mg当たり、5〜0.1μgの範囲の化学発光化合物の負荷を使用することができる。化学発光化合物は一般に、固体支持体上にランダムまたは均一に分布している。これは、固体支持体の表面上、またはアクセス可能な孔内に固定化することができる。化学発光化合物は、共有結合(covalent attachment)によって固体支持体上に固定化することができる。この実施形態では、反応基を有する化学発光標識化化合物が、固体支持体上に存在する官能基と反応することによって、化学発光化合物と固体支持体の間で共有結合(covalent bond)を形成する。代替の実施形態では、化学発光化合物は、1つ以上の中間物質を使用することによって、固体支持体上に固定化することができる。ビオチンが固体支持体に共有結合している一例では、共有結合されたビオチンがストレプトアビジンに結合され、次いで、ビオチン−化学発光化合物コンジュゲートが結合される。別の例では、ストレプトアビジンが固体支持体上に吸着され、次いで、ビオチン−化学発光化合物コンジュゲートが結合される。別の例では、アルブミンなどの補助タンパク質にコンジュゲートされた化学発光化合物が、固体支持体上に吸着、または共有結合でつながれる。別の例では、抗体にコンジュゲートされた化学発光化合物が、固体支持体上に吸着、または共有結合でつながれる。
【0141】
固体支持体は、96ウェル、384ウェル、またはより多い数のウェルを有するマイクロウェルプレート、試験管、試料カップ、プラスチック球、セルロース、紙またはプラスチックの試験紙、ラテックス粒子、0.10〜50μmの直径を有するポリマー粒子、0.10〜50μmの直径を有するシリカ粒子、磁性粒子、特に0.1〜10μmの平均直径を有するもの、およびナノ粒子など、様々な材料、多孔度、形状、およびサイズのものとすることができる。一実施形態では、固体支持体は、0.10〜50μmの直径を有するポリマー粒子またはシリカ粒子を含み、上記したような磁性粒子であってもよい。
【0142】
本開示の固定化された化学発光化合物は、固体支持体に固定された化学発光標識を含み、この化学発光標識は、一般式CL−L−RGを有する化学発光標識化化合物によって提供され、式中、CLは、化学発光部分を表し、Lは、化学発光部分と反応基を連結するための連結部分(linking moiety)を表し、RGは、別の材料にカップリングするための反応基部分を表す。化学発光部分CLは、アクチベーターと反応を起こし、活性化された化合物に変換される化合物を含む。活性化された化合物とトリガー溶液の反応により、電子励起状態化合物が形成される。化学発光部分には、限定することなく、ルミノール、および構造的に関係した環状ヒドラジド、アクリダンエステル、チオエステル、およびスルホンアミド、ならびにアクリダンケテンジチオアセタール化合物を含めて、表題「化学発光標識化合物」の下で上記した各クラスの化合物が含まれる。
【0143】
本開示の別の実施形態では、化学発光化合物、および被検体に対して特異的な結合親和性を有し、または被検体に対して特異的な結合親和性を有する別の物質に対して特異的な結合親和性を有する、少なくとも1つの特異的な結合物質が上に固定化された固体支持体を含むアッセイ材料が提供される。これらの実施形態では、固定化された化学発光化合物は、上に固定化された化学発光化合物を有する固体支持体を含む実施形態について、直前に記載した通りである。固定化された特異的な結合物質は、1つ以上の特異的親和結合反応を通じて被検体に、直接または間接的に結合する。特異的な結合物質として、限定することなく、抗体および抗体断片、抗原、ハプテンおよびその同族抗体、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン、プロテインAおよびIgG、相補的核酸またはオリゴヌクレオチド、レクチンおよび炭水化物が挙げられる。
【0144】
本開示の別の実施形態は、1)化学発光化合物、2)被検体に対して特異的な結合親和性を有し、または被検体に対して特異的な結合親和性を有する別の物質に対して特異的な結合親和性を有する、少なくとも1つの特異的な結合物質、3)被検体、および4)アクチベーターコンジュゲートが上に固定化された固体支持体を含むアッセイにおいて形成されるシグナル伝達システムを含む。用語「固体支持体」、「化学発光化合物」、および「特異的な結合物質」の意味、ならびにこれらの用語によって包含される実施形態は、本開示の組成物として見なされるアッセイ材料について上記に確立した意味および実施形態と同一である。本シグナル伝達システムのエレメントを形成することができる被検体には、上記に特定された任意の被検体が含まれ、その存在、位置、または量は、アッセイにおいて決定されるべきものである。アクチベーターコンジュゲートは、被検体−特異的結合パートナーコンジュゲートに結合したアクチベーター化合物を含む。このコンジュゲートは、二重の機能を果たす:1)直接に、または中間の被検体特異的結合メンバーを通じて、被検体特異的結合メンバー部分を通じて、アッセイにおける被検体に特異的に結合し、かつ2)アクチベーター部分を通じて化学発光化合物を活性化する。このコンジュゲートのアクチベーター化合物部分は、トリガー溶液の存在下で化学発光が生じるように、化学発光化合物の活性化を起こす化合物である。アクチベーターとして機能を果たすことができる化合物には、遷移金属の塩および錯体ならびに酵素を含めたペルオキシダーゼ様活性を有する化合物、特に遷移金属含有酵素、特に、ペルオキシダーゼ酵素が含まれる。アクチベーター化合物において有用な遷移金属として、周期表の3〜12族のもの、特に、鉄、銅、コバルト、亜鉛、マンガン、およびクロムが挙げられる。化学発光反応を起こすことができるペルオキシダーゼとして、例えば、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、バナジウムブロモペルオキシダーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、真菌ペルオキシダーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、Arthromyces ramosusに由来するペルオキシダーゼ、白色腐朽菌(white rot fungi)で産生されるMn依存性ペルオキシダーゼ、およびダイズペルオキシダーゼが挙げられる。ペルオキシダーゼ様活性を有する他の化合物には、hemeなどの鉄錯体、およびMn−TPPSが含まれる。
【0145】
システム
本開示において記載されるアッセイ法は、システムを使用することによって、迅速に実行するために自動化することができる。本開示のアッセイを実施するためのシステムは、他の反応物を含有する反応容器にトリガー溶液をアリコートおよび送達し、得られる化学発光シグナルを読むための流体取り扱い能力を必要とする。そのようなシステムの実施形態では、ルミノメーターが、トリガー溶液注入の時点および箇所で、反応容器の近位に配置される。さらに、本開示のアッセイを実施するための自動システムは、他の反応物および試料を反応容器にアリコートおよび送達するための流体取り扱い能力を有する。
【0146】
改変DXI800機器は、本開示のアッセイ法を実施するために改変された。改変されていないDXI800機器のさらなる説明は、参照により本明細書に組み込まれている、UniCel DXI User’s Guide、(著作権)2007年、Beckman Coulterにおいて入手可能である。本明細書に記載される方法を実施するのに使用するために、DXI(登録商標)800イムノアッセイ機器は、トリガー溶液注入の間、および注入直後に、反応容器の位置付近(反応容器から約19mm)で検出するために配置された光子計数ルミノメーター(市販のDXI800機器において使用されるのと同じモデル)を組み込むことによって改変された。
【0147】
DXI(登録商標)800イムノアッセイ内の基質送達システムが、トリガー溶液を送達するのに使用された。本明細書に記載される方法によるアッセイに必要でない、DXI(登録商標)800イムノアッセイ機器のいくつかの追加のコンポーネント、例えば、従来のイムノアッセイに必要であるが、本発明の方法において使用されない、分離および洗浄のために使用される磁石および吸引システムは、便宜上取り除かれた。改変DXI(登録商標)800イムノアッセイ機器は、反応容器の取り扱い、試薬のピペッティング、検出を自動化することにおいて便宜上利用され、温度制御を37℃で施された。他の市販の計測装置も、機器が、トリガー溶液を反応容器中に注入し、同時またはほぼ同時の様式で化学発光シグナルの検出を開始するように改変することができ、または改変されてもよい限り、本明細書に記載されるアッセイ法を実施するために、同様に利用することができる。化学発光シグナルの検出は、非常に短い継続時間、すなわち、光電子増倍管(PMT)の1周期などの数ミリ秒のものとすることができ、または数秒間に延長することもできる。収集されるシグナルのすべてまたは一部を、後続のデータ分析に使用することができる。
【0148】
化学発光シグナルの検出は、非常に短い継続時間、すなわち、光電子増倍管(PMT)の1周期などの数ミリ秒のものとすることができ、または数秒間に延長することもできる。収集されるシグナルのすべてまたは一部を、後続のデータ分析に使用することができる。例えば、以下に記載される一般的な手順では、光強度は、閃光に集中させて0.25秒間合計され、他の手順では、光強度は、注入を最初の0.5秒遅らせて、5秒間合計される。
【実施例】
【0149】
用語集:
AHTL:N−アセチルホモシステインラクトン
AK:アクリダン
CKMB:クレアチンキナーゼイソエンザイム
DMF:ジメチルホルムアミド
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
HRP:西洋わさびペルオキシダーゼ
MS−PEG:末端メチル基を有するアミン反応性直鎖状ポリエチレングリコールポリマー
Na2EDTA:エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩
NHS:N−ヒドロキシスクシンイミド
PEG:ポリエチレングリコール;特に、分子量<20,000g/molのオリゴマーまたはポリマー
PEO:ポリエチレンオキシド;特に、分子量>20,000g/molのポリマー
PMP:1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン
PSA:前立腺特異的抗原
Sulfo−SMCC:スルホスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート
TBS:Tris緩衝食塩水
TnI:トロポニンI;cTnIは心臓トロポニンIである。
Tris:2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3−ジオール、tris−(ヒドロキシメチル)アミノメタンとしても公知
Tween(登録商標)−20:ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(sodium)モノラウレート;Sigma−Aldrich、St.Louis(MO)から市販されている。
【0150】
材料:
エンハンサーを含むトリガー溶液:以下の実施例の多くで使用したトリガー水溶液を、トリガー溶液Aと呼ぶ。トリガー溶液Aは、pH8.0の、25mMのTrisの緩衝水溶液中に、8mMのp−ヒドロキシケイ皮酸、1mMのNaEDTA、105mMの尿素過酸化物、3%のエタノール、および0.2%のTween(登録商標)−20を含有する。すべての成分は、Sigma、St.Louis、MOなどの様々な供給者から市販されている。
【0151】
緩衝液II:(Beckman Coulter,Inc.、Brea CAから市販されている、TRIS緩衝食塩水、界面活性剤、<0.1%のアジ化ナトリウム、および0.1%のProClin(登録商標)300(Rohm and Haas))。
【0152】
機器:
改変DxI(登録商標)800イムノアッセイ機器(Beckman Coulter):改変DXI(登録商標)800機器を、以下のいくつかの実施例において記載されるアッセイ法を実施するのに使用し、そこで注記した。本明細書に記載される方法を実施するのに使用するために、DXI(登録商標)800機器は、トリガー溶液注入の間、および注入直後に、反応容器の位置付近(反応容器から約19mm)で検出するために配置された光子計数(photo−counting)ルミノメーター(市販のDXI(登録商標)800機器において使用されるのと同じモデル)を組み込むことによって改変した。DXI(登録商標)800イムノアッセイ内の基質送達システムを、トリガー溶液を送達するのに使用した。本明細書に記載される方法によるアッセイに必要でない、DXI(登録商標)800イムノアッセイ機器のいくつかの追加のコンポーネント、例えば、従来のイムノアッセイに必要であるが、本発明の方法において使用されない、分離および洗浄のために使用される磁石および吸引システムは、便宜上取り除いた。改変DXI(登録商標)800イムノアッセイ機器は、反応容器の取り扱い、試薬のピペッティング、検出を自動化することにおいて便宜上利用され、温度制御を37℃で施した。他の市販の計測装置も、機器が、トリガー溶液を反応容器中に注入し、同時またはほぼ同時の様式で化学発光シグナルの検出を開始するように改変することができ、または改変されてもよい限り、本明細書に記載されるアッセイ法を実施するために、同様に利用することができる。他の例の機器は、以下に列挙されている。化学発光シグナルの検出は、非常に短い継続時間、すなわち、光電子増倍管(PMT)の1周期などの数ミリ秒のものとすることができ、または数秒間に延長することもできる。収集されるシグナルのすべてまたは一部を、後続のデータ分析に使用することができる。
【0153】
化学発光シグナルの検出は、非常に短い継続時間、すなわち、光電子増倍管(PMT)の1周期などの数ミリ秒のものとすることができ、または数秒間に延長することもできる。収集されるシグナルのすべてまたは一部を、後続のデータ分析に使用することができる。例えば、以下に記載される一般的な手順では、光強度は、閃光に集中させて0.25秒間合計され、他の手順では、光強度は、注入を最初の0.5秒遅らせて、5秒間合計される。
【0154】
Luminoskan Ascent(登録商標)プレートルミノメーター、(Thermo Fischer Scientific,Inc.、Waltham、MA)。改変されていない。室温で実施された方法。
【0155】
SpectraMax(登録商標)Lマイクロプレートルミノメーター、(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)。改変されていない。高速読取りキネティックモードを使用して、室温で実施された方法。
【0156】
(実施例1)
モデル系を使用するSSIAの選択
モデル系も開発および使用することによって、本開示のアッセイにおいて選択的シグナル阻害剤として機能する特性を有する化合物をスクリーニングおよび選択した。このモデル系は、ストレプトアビジンおよび化学発光標識sbpとして、アクリダンケテンジチオアセタール化学発光標識(AK1)を標識されたBSA(ウシ血清アルブミン)、ならびにアクチベーター標識特異的結合対としてビオチン化HRPにコンジュゲートした微粒子を使用する。このモデル系では、様々な量のBtn−HRPを、化学発光標識特異的結合対に、0、1、10、100、および250ng/mLで添加する。各反応混合物中で、500ng/mLの濃度の全HRPに到達するために、追加の未標識HRPを添加する。アクチベーター標識sbpと組み合わせた未標識HRPを化学発光標識sbp微粒子に供給することによって、試料を模倣した。SSIAとして評価するための化合物も添加した。次いでこのモデル系のこの反応混合物を、本開示のアッセイの様式で、トリガー溶液を添加することによってトリガーした。
【0157】
モデル系のための材料の調製:
微粒子上に化学発光標識sbpを調製するために、4倍モル過剰のビオチン−LC−sulfoNHS(Pierce Biotechnology Inc.、Rockford、IL、USA)を用いてウシ血清アルブミン(BSA)をビオチン化した。非結合反応物を脱塩または透析によって除去した。次いで、ビオチン−BSAを、pH7.2の20mMのリン酸ナトリウム:DMSO(75:25、v/v)中の5倍モル過剰のアクリダンケテンジチオアセタールAK1と反応させ、その後、同じ緩衝液中で脱塩した。次いで二重標識(ビオチンおよびAK1)BSAを、トシル活性化M280微粒子(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA、USA)と、pH9.5の0.1Mのホウ酸塩緩衝液中で、微粒子1mg当たり標識されたBSA約20μgの濃度で、40℃で16〜24時間カップリングさせた。カップリングした後、微粒子を、0.2MのTRIS塩基、2%のSDS、pH約11を用いて40℃で1時間ストリップした。ストリッピングプロセスをさらに1回繰り返した。次いで微粒子を0.1%のBSA/TRIS緩衝食塩水(BSA/TBS)緩衝液中に懸濁させ、ストレプトアビジン(SA)を、微粒子1mg当たりSA約15μgで添加した。ストレプトアビジンを、室温で45〜50分間微粒子と混合した。次いで微粒子を、同じBSA/TBS中で3回洗浄し、懸濁させた。試験により、これらのベース微粒子は、微粒子1mg当たり、ビオチン化タンパク質約5μgを結合することができることが示された。
【0158】
HRP、(Roche Diagnostics、Indianapolis、IN、USA)を、4倍モル過剰のビオチン−LC−sulfoNHS(Pierce Biotechnology Inc.、Rockford、IL、USA)を用いてビオチン化した。非結合反応物は、脱塩または透析によって除去した。
【0159】
評価のための各SSIA化合物を、反応混合物の最終濃度の少なくとも10倍の濃度で緩衝液II中に溶解させた(トリガー溶液を添加した後)。
【0160】
常磁性粒子(PMP):(M280)−(btn−BSA−AK)−(ストレプトアビジ);
試料エミュレーター:B−HRP:HRP;Btn−HRPの変化:0、1、10、100、および250ng/mLを伴って、500ng/mLの全HRP濃度でB−HRP:HRPを滴定して、合計500ng/mL。
【0161】
SSIA:100μMの最終濃度を与えるように目標としたBUFFER II中で、以下の表による。
【0162】
トリガー溶液Aは上記に定義されている。
モデル系を使用する試験手順
1mg/mlの二重標識(ビオチンおよびAK1)BSA M280粒子25μlを、緩衝液II中の作業濃度のSSIA 45μlと混合した。アッセイ体積を、緩衝液II 15μlを添加することによって85μlにした。様々な比のBtn−HRP:HRP(ビオチン化HRPの量は、0から、1、10、100、および250ng/mLで変更した)を含有する試料15μlを添加した。反応混合物を37℃で30分間インキュベートし、次いでトリガー溶液100μLを添加し、光強度を記録した。トリガー溶液を含む反応混合物の全体積は200μLであり、SSIAの最終濃度は100μMであった。
【0163】
【表2】

【0164】
【表3】

【0165】
【表4−1】

【0166】
【表4−2】

【0167】
結論
SSIAとして有用性を実証する化合物には、アスコルビン酸、アスコルビン酸の6−パルミテート誘導体および5,6−イソプロピリデン誘導体、およびTROLOX、トコフェロールの誘導体、2−アミノフェノール、4−アミノ−3−ヒドロキシ−安息香酸、4−アミノレソルシノールヒドロクロリド、4−クロロカテコール、ならびに2−クロロ−1,4−ジヒドロキシベンゼンが含まれ、S0値を対照と比較することによって示されるバックグラウンドシグナルの低減、およびS1/S0値の増加によって実証されるシグナル対ノイズの改善を伴う。
【0168】
モデル系において効果を示さなかった化合物は、グルタチオン、システイン、N−アセチルシステイン、リポ酸(ジスルフィド)、ペグ化トコフェロール、メラトニン(トリプタミン誘導体)、TEMPOL(安定な窒素酸化物)、ニコチン酸ヒドラジド、ニコチン酸、および2つのアクリルアミド/ビスアクリルアミド溶液である。αおよびγ−トコフェロール、尿酸、ならびにフェルラ酸を含む、第2の分類の化合物は、75〜88%の範囲でS0シグナルの低減を示すが、10ng/mLのBtn−HRPでの第3のキャリブレーターレベルまでS/S0の増大を示さない。
【0169】
(実施例2)
ホモジニアスPSAイムノアッセイによるSSIAのスクリーニング
この実施例は、本開示のアッセイにおけるSSIAとしての機能性について、候補化合物を試験するのに使用した一方法を示す。試験は、タンパク質PSAのモデルスクリーニングイムノアッセイにおいて行った。マウス抗−PSA試験は、96ウェルマイクロタイタープレート形式を使用して行った。マウス抗−PSA−AK1 30μL(66ng)、マウス抗−PSA−HRPコンジュゲート30μL(7.8ng)、ヒト女性の血清36μL、およびPSAキャリブレーター24μLを含有する溶液を、ピペットで各ウェルに入れた。プレートを37℃で10分間インキュベートした。試験化合物のアリコート5μL(様々な濃度)を各ウェルに添加した。化学発光は、トリガー溶液Aの溶液100μLを添加することによってトリガーした。化学発光の閃光は、Luminoskan Asent(登録商標)プレートルミノメーター、(Thermo Fischer Scientific, Inc.、Waltham、MA)を使用して、トリガー溶液を添加した後に5秒間積分した。
【0170】
各候補化合物は、少なくとも2つレベルのPSA、すなわち、ゼロ、ならびに129ngのPSA/mL(キャリブレーターS5)および/または2ngのPSA/mL(キャリブレーターS2)で試験した。簡潔さのために、各候補化合物の1つの代表的な濃度の結果のみを示した。S5/S0が、対照との関連で改善されている場合、化合物は、アッセイ性能の改善に有効であると見なされる。本スクリーニングにおいて、改善係数は、少なくとも2(S5/S0≧約20〜30)であることが望ましく、改善係数は、少なくとも5(S5/S0≧約50)であることがより望ましく、S5/S0は、≧100であることがさらにより望ましい。多くの化合物は、このスクリーニング検査においてSSIAとして有効性を示すことが見出され、他の化合物は、効果的でないか、または限定された効果を有することが見出された。
【0171】
【表5−1】

【0172】
【表5−2】

【0173】
【表5−3】

【0174】
【表5−4】

【0175】
(実施例3)
AK1およびAB1を有する粒子の調製
この実施例では、AK化学発光標識および特異的結合対のメンバー、Ab1を有する固体表面(LodeStars(商標)カルボキシル常磁性粒子、「LodeStar PMP」)を調製するための方法を記載する。Ab1は、後続の実施例において示される被検体(CK−MB、βhCG、ミオグロビン、cTnI、およびPSA)についてのモノクローナル抗体である。当技術分野で慣例的であるように、数値または文字識別子が必要に応じて後に続く用語「Ab」は、指定された数値または文字名称を有する抗体を指す。同様に、用語「Ag」は、抗体−抗原相互作用との関連で抗原を指す。
【0176】
Lodestar PMP(30mg/mLで8.33ml)を、0.1MのMES/DMSO(75:25)(9.95ml)中に懸濁させた。EZ−Linkビオチン−PEO−ヒドラジド(20mg/mLで31.6μl)、EDC(25mg/mLの最終濃度)、およびヒドラジド標識化部分を有するAK4(80mmol/Lで15.6μL)を、Lodestar PMPに添加し、室温で、140〜160RPMで1分間、次いで4℃で一晩(16〜24時間)撹拌した。次いでこの粒子をBUFFER II中で洗浄し、再懸濁させた。SA21ストレプトアビジン−Plus(10.2mg/mLで0.49mL)をPMPに添加することによって、AK−ストレプトアビジンLodestar粒子を形成した。
【0177】
2つの代表的なプロトコールのうちの1つを使用して、抗体をビオチン標識した。
1)10倍モル過剰のNHS−LC−ビオチン(Thermo Scientific、Rockford IL)を抗cTnIモノクローナル抗体に添加し、この混合物を室温で2時間インキュベートした。ビオチン化抗体を、pH7.2のPBS中で、透析によって精製した。ビオチン:抗体のモル比は、市販のビオチン定量化キット(Thermo Scientific)を使用して決定した場合、4.9であった。または
2)DMSO中で2mg/mLに溶解させた、6倍モル過剰のNHS−(PEO)4−ビオチン(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を、MxPSA抗体(pH7.4のPBS中で7.6mg/mL)6mgに添加することによって、ビオチン化PSA抗体を調製した。周囲温度で60分間インキュベートした後、ビオチン化抗体を、製造者の指示書に従って、pH7.4のPBS中で平衡化した、Sephadex G−25カラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ)を通して精製した。
【0178】
AK−ストレプトアビジンLodestar粒子(5mg/mL)をBUFFER II中に入れた。Ab1の必要量を計算し、AK−ストレプトアビジンLodestar粒子(10μg/mgであったβhCGを除いて、通常5μg/mg)に添加した。反応混合物をボルテックスし、4℃で一晩インキュベートし、それによってAK−Ab1粒子を形成した。
【0179】
(実施例4)
HRP−Ab2コンジュゲートの調製
HRP−Ab2コンジュゲートを、当技術分野で公知の方法を使用して調製した。HRP−Ab2コンジュゲートを生成するために、HRPを抗体にコンジュゲートする詳細な方法は、例えば、Journal of Immunoassay、4巻、3号、1983年、209〜321頁に提供されている。Ab2は、後続の実施例において示される被検体(CK−MB、βhCG、ミオグロビン、およびTnI)についてのモノクローナル抗体であり、これは、Ab−1とは異なる、被検体上の抗原部位に結合する。
【0180】
一般に、生成物依存性濃度のN−アセチル−DL−ホモシステインチオラクトン(AHTL)を使用して、遊離チオールを抗体(Ab2)に結合させた。脱塩によって過剰のAHTLを抗体から除去した。モル過剰のスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sulfo−SMCC)を使用して、マレイミドをHRPに結合させた。脱塩によって過剰のsulfo−SMCCをHRPから除去した。抗体およびHRPを、4HRPと1 Ab2のモル比で合わせ、反応物の基同士間で共有結合を形成した。HRPを過剰に維持しながら、抗体を計量してHRP中に供給した。適切な時間量の間インキュベートした後、β−メルカプトエタノール(βME)およびN−エチルマレイミド(NEM)を用いて未反応の官能基をブロックすることによって反応を停止した。コンジュゲーション生成物(HRP−Ab2コンジュゲート)を濃縮し、ゲル濾過によって、任意の凝集したコンジュゲーション生成物および未反応の抗体またはHRPから分離した。コンジュゲーション生成物を、OD280およびOD403活性に基づいてプールした。
【0181】
(実施例5)
CK−MB
この実施例は、実施例3に示したように調製したAK−Ab1粒子、および実施例4に示したように調製したHRP−Ab2コンジュゲートを使用して、CK−MB(クレアチンキナーゼ心筋型)を検出する方法を記載し、この場合、Ab2は、CK−MBに対する抗体を表す。この方法は、アスコルビン酸を使用することによってバックグラウンドシグナルを減少させた。
【0182】
HRP−Ab2コンジュゲート懸濁液は、1.0μg/mLで調製し、0または1mMのアスコルビン酸を含有した。試料は、指定量(indicated mounts)のCK−MBを添加された、または対照としてCK−MBをまったく含まないヒト血清試料から構成した。試験手順は、1.0μg/mLのHRP−Ab2コンジュゲート15μL、ならびに1mg/mLのBSAおよび1mg/mLのMIgGを含有するpH5.9のMES緩衝液35μLを反応容器に添加するステップから構成した。次に、患者の血清試料25μLを添加し、その後、1.0mg/mLのAK−Ab1コンジュゲート懸濁液25μLを添加し、それによって、反応容器内で100μLの全体積を得た。15.2分後に、トリガー溶液A 100μLを反応容器に添加し、光強度を改変DxI機器で記録した。化学発光強度を相対光単位(RLU)で表す。
【0183】
【表6】

【0184】
(実施例6)
βHCG
この実施例は、実施例3に示したように調製したAK−Ab1粒子、および実施例4に示したように調製したHRP−Ab2コンジュゲートを使用して、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βhCG)を検出する方法を記載し、この場合、Ab2は、βhCGに対する抗体を表す。この方法は、アスコルビン酸を使用することによってバックグラウンドシグナルを減少させた。
【0185】
HRP−Ab2コンジュゲート懸濁液は、1.0μg/mLで調製し、0または1mMのアスコルビン酸を含有した。試料は、指定量のβhCGを添加された、または対照としてβhCGをまったく含まないヒト血清試料から構成した。試験手順は、1.0μg/mLのHRP−Ab2コンジュゲート20μL、ならびに1mg/mLのBSAおよび1mg/mLのMIgGを含有するpH5.9のMES緩衝液30μLを反応容器に添加するステップから構成した。次に、患者の血清試料25μLを添加し、その後、10mg/mLのAK−Ab1コンジュゲート懸濁液25μLを添加し、それによって、反応容器内で100μLの全体積を得た。15.2分後に、トリガー溶液A 100μLを反応容器に添加し、光強度を改変DxI機器で記録した。化学発光強度を相対光単位(RLU)で表す。
【0186】
【表7】

【0187】
(実施例7)
ミオグロビン
この実施例は、実施例3に示したように調製したAK−Ab1粒子、および実施例4に示したように調製したHRP−Ab2コンジュゲートを使用して、ミオグロビンを検出する方法を記載し、この場合、Ab2は、ミオグロビンに対する抗体を表す。この方法は、アスコルビン酸を使用することによってバックグラウンドシグナルを減少させた。
【0188】
HRP−Ab2コンジュゲート懸濁液は、1.0μg/mLで調製し、0または1mMのアスコルビン酸を含有した。試料は、指定量のミオグロビンを添加された、または対照としてミオグロビンをまったく含まないヒト血清試料から構成した。試験手順は、1.0μg/mLのHRP−Ab2コンジュゲート20μL、ならびに1mg/mLのBSAおよび1mg/mLのMIgGを含有するpH5.9のMES緩衝液30μLを反応容器に添加するステップから構成した。次に、患者の血清試料25μLを添加し、その後、5.0mg/mLのAK−Ab1コンジュゲート懸濁液25μLを添加し、それによって、反応容器内で100μLの全体積を得た。15.2分後に、トリガー溶液A 100μLを反応容器に添加し、光強度を改変DxI機器で記録した。化学発光強度を相対光単位(RLU)で表す。
【0189】
【表8】

【0190】
(実施例8)
ヘテロジニアスアッセイを介したcTnI検出
この実施例は、例えば、実施例3に示したように調製したAK−Ab1粒子、および例えば、実施例4に示したように調製したHRP−Ab2コンジュゲートを使用して、cTnI(心臓トロポニンI)を検出する方法を記載し、この場合、Ab2は、cTnIに対する抗体を表す。バックグラウンドシグナルに対するアスコルビン酸の効果を調査した。
【0191】
HRP−Ab2コンジュゲート懸濁液は、1.0μg/mLで調製し、0または1mMのアスコルビン酸を含有した。試料は、指定量のcTnIを添加された、または対照としてcTnIをまったく含まないヒト血清試料から構成した。試験手順は、1.0μg/mLのHRP−Ab2コンジュゲート20μL、ならびに1mg/mLのBSAおよび1mg/mLのMIgGを含有するpH5.9のMES緩衝液30μLを反応容器に添加するステップから構成した。次に、患者の血清試料25μLを添加し、その後、1.0mg/mLのAK−Ab1コンジュゲート懸濁液25μLを添加し、それによって、反応容器内で100μLの全体積を得た。15.2分後に、トリガー溶液A 100μLを反応容器に添加し、光強度を改変DxI機器で記録した。化学発光強度を相対光単位(RLU)で表す。以下の表に示した結果は、アスコルビン酸の存在下で、バックグラウンドシグナルの有意な低減を示す。
【0192】
【表9】

【0193】
(実施例9)
GM−CSFについてのヘテロジニアスアッセイ
用語「GM−CSF」は、ヒト遺伝子地図座位5q31.1を有する、造血前駆細胞の生存、増殖、および分化に必要なタンパク質である、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(colon−stimulating factor)を指す。GM−CSFに対する様々な抗体が市販されている。
【0194】
GM−CSFに関するヘテロジニアス相アッセイは、実施例3に記載したようなAK4およびビオチン/ストレプトアビジンで標識されたLodeStars PMP(AK−PMP−SA)、抗体−ビオチンコンジュゲート、ならびにGM−CSFに結合する抗体−HRPコンジュゲートを使用して行った。抗体−HRPコンジュゲート、(抗GM−CSF−HRP)は、Antigenixから購入した。
【0195】
抗体−ビオチン(抗GM−CSF−ビオチン)コンジュゲートは、DMF中に溶解した(1mg/mL)、25倍モル過剰(9.28μg)のスルホNHS−ビオチン(Pierce)を、pH8.25の0.1Mのホウ酸ナトリウム0.1mL中の抗体(Antigenix)0.1mgに添加することによって合成した。周囲温度で60分間インキュベートした後、反応物を放置して4℃で一晩インキュベートした。ビオチン化抗体を、製造者の指示書に従って、pH7.4のPBS中で平衡化した、Sephadex G−25カラム(GE Healthcare)を通して精製した。
【0196】
ヘテロジニアスアッセイを実施するために、抗GM−CSF−ビオチンコンジュゲート溶液30μL(0.75μg/mL、22.5ng)、0〜30,000pg/mLの範囲内でGM−CSFを有するキャリブレーター溶液30μL、抗GM−CSF−HRPコンジュゲート30μL(2.25μg/mL、67ng)、およびAK−ストレプトアビジン磁性粒子溶液30μL(粒子10μg)を、白色マイクロタイタープレートのウェル中にピペットで入れた。プレートを室温で60分間インキュベートした。2−アミノフェノール溶液5μL(11mM、55nmoles)をSSIAとして添加した。プレートを、注入プレートルミノメーター内に配置した。トリガー溶液A 100μLを、ルミノメーターによって添加し、化学発光シグナルを5秒間読み取った。
【0197】
反応混合物中のGM−CSFの濃度の関数としての、化学発光の平均強度(RLU)、および反応混合物中にGM−CSFが存在しないものと比べた比(S/S0)を、以下の表に提供する。
【0198】
【表10】

【0199】
(実施例10)
トリガー溶液のpHの効果
A.ヘテロジニアス固相アッセイの性能に対するpHの効果を、実施例3に記載したようなAK4およびビオチンヒドラジドで直接コンジュゲートされたLodeStars粒子に対して、実施例1のビオチン−HRPモデル系を使用するモデルアッセイにおいて評価した。次いで、上記したように、粒子にSAを受動的にオーバーコートし、その後すすぐことによって、ビオチンに結合しなかったSAを除去した。緩衝塩は、6〜9の範囲のpHをもたらすように選択した。pHの関数としての、アッセイのバックグラウンド化学発光に対する効果を、図1Aに示す。16:184のbtn−HRP:HRPの比を使用した特定のシグナルに対するpHの効果を、図1Bに表す。
B.様々な試験アッセイシステムに対するトリガー溶液のpHの効果を決定するために、一連の実験を、トリガーのpHを変更して行った。以下の表11Aは、6.2〜8.4のpH範囲内でLodeStars粒子上のPSAを使用するアッセイにおける、PSA濃度の関数としての平均化学発光強度を提供する。表11Bは、5.9〜8.6のpH範囲内での、LodeStar粒子上のCK−MBについての対応する結果を提供する。表11Cは、5.9〜8.7のpH範囲内での、LodeStar粒子上のTnIについての対応する結果を提供する。これらの表において、2つのpH値を各データセットについて列挙する。第1のpHは、反応混合物に添加された緩衝液試料のpHである。第2のpHは、最終的な反応ミックスの得られたpHである。
【0200】
【表11A】

【0201】
【表11B】

【0202】
【表11C】

【0203】
(実施例11)
PMPモデル系におけるアッセイシグナルに対するpHの効果
ヘテロジニアス固相アッセイの性能に対するpHの効果を、実施例1に一般に記載したようなビオチン−HRPを伴うモデル系における、Dynal M−280およびLodeStars粒子を用いたアッセイについてさらに調査した。AK1−ストレプトアビジン−PMPで標識されたLodeStars粒子は、実施例3に記載した通りであった。トシル活性化M−280粒子は、実施例1に記載したようなAK−BSA−ビオチン、その後にストレプトアビジンを共有結合性にカップリングすることによって標識した。
【0204】
緩衝液
表12を参照して、緩衝液は、緩衝液イオンが100mM、Triton X−100が0.2%、およびNaClが150mMであった。「トリガー後」のpHは、緩衝液が1部(1 part)、pH8の25mMのトリスが1部、およびトリガー溶液Aが2部の組合せによって決定した。pHを読み取るための温度は、37.4℃であった。
【0205】
【表12】

【0206】
この実験についての試料のpH、トリガー後のpH、相対的化学発光、およびシグナル対ノイズ(S/N)の結果を、LodeStars PMPおよびDynal M−280 PMPについてそれぞれ表13Aおよび13Bにおいて表にする。
【0207】
【表13A】

【0208】
【表13B】

【0209】
結論
pHは、LodeStars PMPおよびDynal M−280 PMPの両方について、化学発光に大いに影響し、その効果は、PMPの型の間である程度異なることが観察された。
【0210】
(実施例12)
化学発光に対するアスコルビン酸インキュベーション時間の効果
化学発光強度の観察される低減に対する、試料がアスコルビン酸に曝される時間の長さの効果を、実施例11に記載したDynal M−280 PMP粒子およびビオチン−HRP系を使用して、一連の実験において調査した。簡単に言えば、ビオチン標識PMP、および様々なビオチン−HRP/HRP溶液を結合させ、アスコルビン酸溶液を添加した。80〜330秒の範囲の遅延期間の後、トリガー溶液Aを注入し、化学発光強度を積分した。ビオチン−HRP/HRP溶液は、比率1:200、8:192、および32:168のビオチン−HRP:HRPで、合計200ng/mLのHRPを含有した。0、25、50、100、および200μMで、水中の試料として様々な濃度のアスコルビン酸を使用して試験を行った。
【0211】
これらの調査の結果は、80〜330秒の範囲内のアスコルビン酸インキュベーション時間は、観察される化学発光に対して有意な効果を引き起こすように現われないことを実証した。結果は、ビオチン−HRP/HRPの比に無関係に、本質的に同じであった。
【0212】
(実施例13)
cTnIアッセイに対するアスコルビン酸の効果の詳細化
微粒子形式でのアッセイ性能の改善におけるアスコルビン酸の有効性を、様々な磁性粒子を含むcTnI被検体を使用して調査した。評価した磁性粒子には、LodeStars PMP、ラテックスPMP、およびカルボキシレート改変ポリスチレンラテックスPMPが含まれていた。「ロットBの磁性粒子」は、6.2μmの直径のカルボキシルPMP(Bangs Laboratories、Fishers、IN)である。「ロットDの磁性粒子」は、8.1μmの直径のカルボキシルPMP(Bangs Laboratories)である。「ロットFのラテックス粒子」は、3.1μmの直径のカルボキシルPMP(Seradyn Products、Thermo−Fisher、Indianapolis、IN)である。「CML PMP」は、2.9μmの直径のカルボキシレート改変ラテックス粒子(Invitrogen、Carlsbad、CA)である。LodeStars PMPを、実施例3の一般的なプロトコールに従って、EDCカップリングによってAK4およびビオチンで標識し、ストレプトアビジンでオーバーコートした。ロットB、D、およびF、ならびにCML PMPを、実施例1に従ってAK−BSA−ビオチンで標識した。次いで、粒子をストレプトアビジンでコーティングし、ビオチン標識抗cTnIに結合させた。実験プロトコールは、実施例8に一般に記載した通りであり、インキュベーション時間は10.2分であった。cTnI(すなわち、S0〜S6)の濃度は、表9に提供した通りであった。
【0213】
結果
初期の実験において、cTnIアッセイを、反応物ミックス中にアスコルビン酸を用いないで実施した。表14に示したように、LodeStars粒子は、最高の特異的シグナルを有するが、バックグラウンドシグナルが、低キャリブレーターシグナルの多くを圧倒する。
【0214】
【表14−1】

【0215】
【表14−2】

【0216】
トリガーを添加する前に150μMのアスコルビン酸を用いて実験を繰り返す場合、表15に示す結果が得られる。この場合、LodeStars粒子は、他の粒子タイプよりはるかに多くの特異的シグナルを保持し、それでもバックグラウンドは、ほとんど300%減少する。
【0217】
【表15−1】

【0218】
【表15−2】

【0219】
結論
この実施例でもたらされる結果は、アッセイ反応混合物中にアスコルビン酸を含めることにより、アッセイ感度が著しく改善されることを実証する。
【0220】
(実施例14)
粒子タイプの効果の調査
本明細書に記載されるアッセイに対する特定の固相粒子の効果をさらに調査するために、シリカ、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含めた、様々な粒子タイプの比較を行った。カルボキシル改変PMMA粒子(PolyAn GmbH、Berlin)を、実施例3に記載したようにAKおよびビオチンで標識し、その後、ストレプトアビジンでコーティングした。シリカ粒子を、1mMの酢酸中の3−アミノプロピルシロキサンと反応させることによって、アミン反応基を提供した。アミン官能基をAK−3およびビオチン−LC−sulfoNHSと反応させ、その後、ストレプトアビジンでコーティングした。
【0221】
シリカおよびPMMA粒子を用いたシグナル生成。実施例1に一般に記載されるような、HRPモデル系を使用するアッセイを、反応混合物中にアスコルビン酸を含めて、および含めずに、シリカ粒子およびPMMA粒子で行った。アッセイは、上記したような改変DxI機器で実施した。アッセイ条件は、BUFFER II(アスコルビン酸を含む、または含まない)45μL、粒子懸濁液25μL、および試料15μLを合わせるステップと、30分間インキュベートするステップから構成した。次いで、トリガー溶液A 100μLを反応容器に添加し、光強度を記録した。
【0222】
結果を、表中に示した濃度条件と共に、表15A(シリカ)および表15B(PMMA)に提供する。
【0223】
【表16A】

【0224】
【表16B】

【0225】
(実施例15)
粒子タイプの効果の調査
シリカおよびPMMA粒子を用いたシグナル生成。Dynal M−280、3μmのCML、6μmのCML、PMMA、シリカ、およびLodeStars粒子の比較を、上記したcTnIアッセイを使用して行った。ストレプトアビジンのコーティングを有する各粒子の調製は、前述の実施例に記載されている。アスコルビン酸は、存在する場合、150μMであった。結果を以下の表17に提供する。試験した各粒子系において、150μMのアスコルビン酸の存在により、最高のキャリブレーター(calibtrator)レベルでS/S0が著しく改善され、最低レベルで試験した場合も同様であった。
【0226】
【表17−1】

【0227】
【表17−2】

【0228】
(実施例16)
アスコルビン酸濃度の効果の調査
様々な粒子を使用する、cTnIアッセイに対するアスコルビン酸の効果。化学発光に対する、150μM〜9.4μMの範囲内でアスコルビン酸濃度を変更することの効果を、Dynal M−280、6μmのCML、およびLodeStars粒子を使用するアッセイについて調査した。cTnIについてのアッセイは、実施例8に一般に記載した通りであり、濃度は、表18A〜Cに提供した通りであった。試験した各粒子タイプは、すべての濃度のアスコルビン酸により、シグナル/バックグラウンドを増大させることによって分析感度が改善されることを明らかにした。
【0229】
【表18A】

【0230】
【表18B】

【0231】
【表18C】

【0232】
(実施例17)
cTnI分析のための方法の比較:アッセイの線形性
限定されないが、バックグラウンドシグナルの低減、アッセイに必要とされる時間の減少、望まれない化学的相互作用の排除などのために追加の試薬を含めることを含めた、本明細書に記載されるアッセイ手順の改変は、当業者に利用可能である。したがって、本明細書に記載されるような被検体検出のための方法をさらに特徴づけるために、アッセイ成分が以下に記載される通りである一連の実験を行った。
【0233】
PMPは、実施例3における一般的な手順によって調製された、AK1およびcTnIに対する抗体(Ab1)とコンジュゲートされた、100mMのTris、0.15MのNaCl、0.1mMのEDTA、0.2%のTween20、1%のBSA、0.1%のProclin、pH8.0中の1mg/mLのLodeStarsであった。製造者のプロトコールに従って、Lightning−Link(商標)方法(Novus Biologicals、Littleton、CO)を用いて得られたHRP−Ab2コンジュゲートを、50μg/mLのPolyMak−33(Roche)、1mg/mLのMIgG(マウスIgG)、および0.5MのNaClと組み合わせて、1μg/mLで使用した。標準的なTnI溶液(SCIPAC)および正常な臨床的ヒト試料を用意した。キャリブレーターのTnI値は、AccuTnIアッセイ(Beckman coulter)によって決定した。
【0234】
cTnIアッセイプロトコールは、1mg/mLのAK−Ab1粒子懸濁液25μL、333μMのアスコルビン酸45μL、1μg/mLのHRP−Ab2 15μL、および試料15μLをピペッティングするステップから構成した。混合物を、37℃で5分間インキュベートした。次いで、トリガー溶液A 100μLを注入することによってトリガーする。得られる閃光を、トリガー添加直後から始めて250ミリ秒間にわたって測定する。
【0235】
図2Aに表した結果を伴う代表的な実験において、一連のcTnI較正標準物質(濃度範囲:0〜25.92ng/mL)を、上記した手順によって分析した。実験条件下で、この濃度範囲内で、線形の結果(R=0.9999)が観察される。
【0236】
応答の線形性に対する試料希釈の効果を、陽性のcTnI試料を希釈し(2×)、次いで、0:10、1:9、2:8、3:7、4:6、5:5、6:4、7:3、8:2、9:1、および10:0のシリーズで試料を系統的に希釈することによって調査した。10:0希釈(すなわち、最大のcTnI濃度)で、RLUの絶対値は418,256であった。これは、約9.6ng/mLの濃度に対応する。図2Bに示したように、良好な線形性(すなわち、R=0.9948)が、これらの希釈条件下で、RLUの観察値と予測値の間で見出される。
【0237】
希釈試験プロトコールを、図11Bについて記載した系統的な希釈スキームと共に、8倍希釈の陽性のcTnI試料を使用することによって、さらに調査した。これらの条件下で、8倍希釈された試料は、約76,832のRLU値をもたらした。これは、約1.8ng/mLのcTnIの濃度に対応する。図2Cに示したように、そのような希釈条件下でさえ、妥当な線形性(R=0.9785)が観察される。
【0238】
アッセイの分析感度を、ゼロ被検体キャリブレーターの20の複製物を作製し、引き続いて2倍標準偏差を計算することによって測定した。2倍標準偏差は、既知の濃度のcTnIを用いて収集された較正曲線に対する幅(swath)として見積もられ、この手順についての0.005ng/mLのcTnIの感度の推定値をもたらす。
【0239】
(実施例18)
cTnI分析方法のACCESS ACCUTNIとの比較
本発明の方法によって行われたcTnIアッセイの結果を、参照方法、すなわちAccess AccuTnIシステム(Beckman Coulter)の結果と比較した。アスコルビン酸試薬を、反応物ミックス中に500μMのアスコルビン酸45μLとして添加したことを除いて、先の実施例で記載したように本方法を実施した。
【0240】
臨床試料を、以下のように得た:被検体(cTnI)が存在しない(25試料)、陽性のリチウムヘパリン血漿患者試料、陽性の血清、ならびに同じ患者(N=15)からのマッチングされた血漿および血清試料。標準的なcTnI溶液を使用し、0〜17.48ng/mLの範囲内のcTnI投与を提供した。
【0241】
54の血漿試料および41の血清試料を含む95の臨床試料の分析を、上記した手順(3回の反復)、およびAccess AccuTnI手順(2回の反復)を使用して行った。Access AccuTnIシステムの結果は、製造者の指示書に従って得た。本手順についての被検体濃度は、標準的なキャリブレーター濃度のcTnIと比較することによって作製した。
【0242】
本手順およびAccess AccuTn手順についての対にした結果の散布図を図3に表す。この図において、縦軸は、本手順を用いて観察されたcTnIの濃度であり、横軸は、Access AccuTnI手順を用いて決定したcTnIの対応する濃度である。図12に提供されたデータの、当技術分野で公知であるようなDeming回帰分析により、R=0.9169およびR=0.958(N=95)を得た。
【0243】
(実施例19)
dna被検体についてのヘテロジニアスアッセイ
磁性粒子を使用し、2868塩基対のpUC18プラスミドDNAに関するヘテロジニアス相アッセイを、AKおよびストレプトアビジンで標識した常磁性粒子(AK−PMP−SA)、2つのビオチン化捕捉オリゴヌクレオチド、一連のフルオレセイン標識レポーターオリゴヌクレオチド、ならびに抗フルオレセイン−HRPコンジュゲートを使用して行った。AK−ストレプトアビジン常磁性粒子コンジュゲートは、実施例1および2に一般に記載したように作製した。ビオチンおよびフルオレセイン標識オリゴヌクレオチドは、カスタム合成によって調製し、鋳型に相補性であるように設計した。抗体−HRPコンジュゲートは、市販されていた(Roche)。ヒトgDNA(Roche)を、陰性対照として使用した。アニーリング緩衝液は、pH8.3の10mMのTRIS.Cl、50mMのKCl、および1.5mMのMgClを含有した。ハイブリダイゼーション緩衝液は、pH7の6×SSC(NaOHでpH調整した塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)、0.1%のSDS、24%のホルムアミド、0.37%の酢酸、および1μg/mLのビオチンを含有した。
【0244】
手順
1.ビオチン標識oligoの粒子への結合。pH7.4の1×PBS緩衝液150μL中で、2つのoligo(100ng/μLの溶液のそれぞれ10μL)および粒子(LodeStarsの5μg/μLの懸濁液1μL)を、ボルテックス混合し、シェーカーインキュベーター内に、37℃で30分間置いた。粒子を磁石で管の側部に引き寄せ、上澄みを廃棄した。粒子を、0.05%のTween−20を含有する1×PBSで2回洗浄した。粒子をアニーリング緩衝液140μL中に再懸濁させ、1から6のラベルを付けた6本の1.5mLのマイクロチューブ内に20μL/管でアリコートした。
2.オリゴヌクレオチド−鋳型ハイブリダイゼーションおよび捕捉。以下のアニーリング反応を、250μLの管内で進めた。管を95℃で5分間加熱し、50℃で保持した。50℃で5分後、ハイブリダイゼーション緩衝液200μLを各管に添加し、混合した。アニーリング反応物を、ビオチン標識oligoに結合した粒子20μLを含む、対応して番号を付けた1.5mLの管に移した。混合物を、シェーカーインキュベーター内で、37℃で1時間ハイブリダイズした。管を磁石上に1分間配置し、ハイブリダイゼーション緩衝液を除去した。
【0245】
0.05%のTween−20を含む1×PBS中に再懸濁することによって非結合の核酸を除去するために、粒子を3回洗浄し、磁気分離した。
【0246】
【表19A】

【0247】
3.抗フルオレセイン−HRP抗体の、ハイブリダイズしたフルオレセインoligoへの結合。ステップ2からの洗浄した粒子を、1:150,000希釈の抗フルオレセイン−HRP抗体中に再懸濁させ、穏やかに振盪しながら室温で30分間インキュベートした。非結合の抗体を磁気分離によって除去した。粒子を、0.05%のTween−20を含む1×PBS中で再懸濁させ、磁石上で1分間保持し、洗浄緩衝液を除去することによって3回洗浄した。
4.化学発光SPARCL検出。ステップ3からの洗浄した粒子を、1×PBS 100μL中に再懸濁させた。粒子を、白色マイクロタイタープレート(Nunc)の2つのウェル中に等しく分割した(それぞれ約48μL)。化学発光は、Luminoskanルミノメーター(Labsystems)内にプレートを配置し、トリガー溶液(pH8.0の25mMのTRIS、0.1%のTween−20、1mMのEDTA、8mMのp−ヒドロキシケイ皮酸、100mMの尿素過酸化物)100μLを注入し、注入して直ちに5秒間読み取ることによって測定した。
【0248】
【表19B】

【0249】
(実施例20)
AK化学発光標識および抗PSA抗体で標識されたシリカ粒子の調製
3−アミノプロピルシロキサン(Silicycle Quebec City、Canada)で誘導体化されたシリカ粒子(5.0g)を、DMF 50mL中で、AK標識化化合物AK3(2.5mg)およびトリエチルアミン1mLと、Ar下で撹拌しながら一晩反応させた。混合物を濾過し、粒子をDMF、次いで1:1のCHCl/MeOHで洗浄した後、空気乾燥させた。出発粒子は、1.77mmol/gのNH×5g=8.85mmolのNHを含有した。使用したAK標識化合物は、2.5mg/659mg/mmol=3.8μmolであった。したがって、アミド結合の形成による標識の取り込みは、利用可能なNH基の0.05%未満であった。
【0250】
【化15】

【0251】
AK標識粒子の25mg部分を、マイクロチューブ内で、2%のトリエチルアミンを含有するDMF 1.0mLに添加し、管を10分間振盪し、溶媒をデカントした。粒子をDMFで洗浄し、DMF 1.2mL中の二官能性リンカーDSS 50mgの溶液中に懸濁させた。振盪機上で30分インキュベートした後、溶液をデカントし、粒子をDMFで洗浄した。活性化された粒子を、pH8.25のホウ酸緩衝液1.0mL中に希釈された、9.0mg/mLの抗体ストック25μLの溶液と、4℃で20時間反応させることによって、マウス抗−PSA(MxPSA、Beckman)に結合させた。
【0252】
(実施例21)
化学発光検出およびSSIAとしてEtNOHを用いた、ヘテロジニアス(heterogeneos)PSAイムノアッセイ
材料
実施例19の標識された粒子(1×PBS中、3.3mg/mLの溶液)
アッセイ緩衝液:1×PBS中、0.2%のBSA、0.2%のスクロース、0.2%のTween−20
1×PBS中、EtNOHの9.73mMの溶液
MxPSA−HRPコンジュゲート(アッセイ緩衝液中、0.0152μg/mL)
PSAキャリブレーター:S0、S1、S5
トリガー溶液A(実施例1)
1×PBS中の0.2%のBSA、0.2%のスクロースで予めブロックした管に、標識した粒子30μL、MxPSA−HRPコンジュゲート30μL、アッセイ緩衝液36μL、PSAキャリブレーター24μL、およびEtNOH溶液20μLをチャージした。単一の管をルミノメーター内に配置し、コンピューター制御された注入およびデータ収集を行った。トリガー溶液A(100μL)を注入し、注入を最初の0.5秒遅らせて、光強度を5秒間合計した。結果は、二つ組の測定値の平均である。
【0253】
【表20】

【0254】
本明細書におけるすべての刊行物および特許出願は、本発明が属する技術分野における通常の技術のレベルを示し、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0255】
上記した様々な実施形態は、例示としてのみ提供され、本発明を限定すると解釈されるべきでない。当業者は、本明細書に例示および記載された実施形態例および用途例に従うことなく、本明細書に例示および記載された実施形態例および用途例に従うことなく本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、以下の特許請求の範囲に示される本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に行うことができる様々な改変および変更を容易に認識する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の被検体のためのアッセイ法であって、
固体支持体を含み、前記固体支持体にコンジュゲートされた第1の被検体特異的結合メンバー、および前記固体支持体または第1の被検体特異的結合メンバーに連結している化学発光標識を含む、化学発光標識された、固定化された特異的結合メンバー、
第2の被検体特異的結合メンバー、および前記第2の被検体特異的結合メンバーに連結しているアクチベーターを含むアクチベーター標識特異的結合メンバー、
選択的シグナル阻害剤、および
試料
を任意の順序で、または同時に添加することによって、水溶液中で反応混合物を形成するステップであって、
前記化学発光標識された、固定化された特異的結合メンバー、および前記アクチベーター標識特異的結合メンバーは、前記試料中に存在する被検体に結合することによって、結合複合体を形成するステップと、
前記反応混合物にトリガー溶液を添加するステップであって、前記トリガー溶液は、前記反応混合物中に存在する、前記被検体が結合した結合複合体の量に相関した、検出可能な化学発光シグナルを放出するステップと
を含む方法。
【請求項2】
アクチベーター標識特異的結合メンバーが、前記被検体の類似体に連結しているアクチベーターを含み、前記被検体および前記アクチベーター標識類似体が、前記化学発光標識された、固定化された特異的結合パートナーと競合して結合する、請求項1のいずれかに記載の方法。
【請求項3】
化学発光標識特異的結合メンバーが、前記被検体の類似体である第1の被検体特異的結合メンバーを含み、前記被検体および前記化学発光標識特異的結合メンバーが、前記アクチベーター標識された、固定化された特異的結合メンバーと競合して結合する、請求項1のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
任意の順序で、または同時に、反応混合物を形成するステップが、エンハンサーをさらに含む、試料中の被検体についての、請求項1から3のいずれかに記載のアッセイ法。
【請求項5】
前記選択的シグナル阻害剤が、前記結合複合体中でない場合の化学発光標識とアクチベーターとの反応からのシグナルを超える、前記被検体との前記結合複合体中の、化学発光標識とアクチベーターとの反応によって生じる前記シグナルの割合を引き起こす、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記選択的シグナル阻害剤が、オルトまたはパラ関係に配向した少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物、オルトまたはパラ関係に配向した、少なくとも1つのヒドロキシル基および1つのアミノ基を有する芳香族化合物、C−C二重結合上で置換された少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物、ならびに窒素複素環式化合物からなる群から選択される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
選択的シグナル阻害剤が、アスコルベート、イソアスコルベート、Trolox、L−アスコルビン酸6−パルミテート、5,6−イソプロピリデン−L−アスコルビン酸、BHT、グルタチオン、尿酸、トコフェロール、およびカテキンからなる群から選択される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記化学発光標識固定特異的結合メンバーが、特異的結合メンバーに直接または間接的に連結している化学発光標識化合物を含み、前記化学発光標識が、芳香族環状ジアシルヒドラジド、トリヒドロキシ芳香族化合物、アクリダンケテンジチオアセタール化合物、アクリダンエステル、アクリダンチオエステル、アクリダンスルホンアミド、アクリダンエノール誘導体、および下記式の化合物
【化16】

[式中、Rは、炭素原子1〜20個のアルキル、炭素原子1〜20個のアルケニル、炭素原子1〜20個のアルキニル、炭素原子1〜20個のアリール、および炭素原子1〜20個のアラルキル基から選択され、そのいずれもカルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、4級アンモニウム基、または4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、Xは、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアルキルカルボキシル基またはアリールカルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、グリコシル基、および式PO(OR’)(OR’’)のホスホリル基(式中、R’およびR’’は独立してC〜Cアルキル、シアノアルキル、アリールおよびアラルキル基、トリアルキルシリル基、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類陽イオン、アンモニウムおよびトリアルキルホスホニウム陽イオンから選択される)から選択され、ZおよびZはそれぞれ、OおよびS原子から選択され、RおよびRは独立して、水素およびC〜Cアルキルから選択される]から選択される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記化学発光標識された、固定化された特異的結合メンバーが、特異的結合メンバーに直接または間接的に連結している化学発光標識化合物を含み、前記化学発光標識が、式
【化17】

[式中、
【化17−1】

は、前記化学発光標識の前記特異的結合メンバーへの結合箇所を指定し、RおよびRは独立して、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルキル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルケニル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルキニル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアリール、および炭素原子1〜20個の置換または非置換のアラルキル基から選択され、RまたはRが置換された基である場合、これは、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、C(=O)NHNH、4級アンモニウム基、および4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、Rは、炭素原子1〜20個のアルキル、炭素原子1〜20個の置換アルキル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルケニル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルキニル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアリール、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアラルキル基や、フェニル、置換または非置換のベンジル基、アルコキシアルキル、カルボキシアルキルおよびアルキルスルホン酸基からなる群から選択され、Rが置換された基である場合、これは、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、C(=O)NHNH、4級アンモニウム基、および4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよい]
の化合物である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記アクチベーター標識特異的結合メンバーが、特異的結合メンバーに直接または間接的に連結しているアクチベーター化合物を含み、前記アクチベーター標識が、遷移金属塩、遷移金属錯体、および酵素から選択され、前記アクチベーター標識がペルオキシダーゼ活性を有する、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記アクチベーターがペルオキシダーゼ酵素である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記化学発光標識固定特異的結合メンバーおよび前記アクチベーター標識特異的結合メンバーの少なくとも1つが、可溶性タンパク質、ストレプトアビジン、アビジン、ニュートラビジン、ビオチン、陽イオン化されたBSA、fos、jun、可溶性合成デンドリマー、可溶性合成ポリマー、可溶性天然ポリマー、多糖、デキストラン、オリゴヌクレオチド、リポソーム、ミセル、およびベシクルから選択される補助物質を含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記エンハンサーが、ペルオキシダーゼ活性を有するアクチベーターの触媒ターンオーバーを促進する化合物または化合物の混合物である、請求項4から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記エンハンサーが、フェノール化合物、芳香族アミン、ベンゾオキサゾール、ヒドロキシベンゾチアゾール、アリールボロン酸、およびこれらの混合物から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記トリガー溶液が過酸化物化合物を含む、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記トリガー溶液が、フェノール化合物、芳香族アミン、ベンゾオキサゾール、ヒドロキシベンゾチアゾール、アリールボロン酸、およびこれらの混合物から選択されるエンハンサーを含む、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
試料中の被検体を検出するためのキットであって、
前記被検体のための第1の特異的結合パートナーと;
前記第1の特異的結合パートナーにコンジュゲートされる化学発光化合物と;
前記被検体のための第2の特異的結合パートナーと;
前記第2の特異的結合パートナーにコンジュゲートされるアクチベーター化合物と;
前記化学発光化合物−第1の特異的結合パートナーコンジュゲート、または第2の特異的結合パートナー−アクチベーター化合物コンジュゲートに連結している固体支持体と;
選択的シグナル阻害剤と;
トリガー溶液と
を含むキット。
【請求項18】
前記選択的シグナル阻害剤が、オルトまたはパラ関係に配向した少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物、オルトまたはパラ関係に配向した、少なくとも1つのヒドロキシル基および1つのアミノ基を有する芳香族化合物、C−C二重結合上で置換された少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物、ならびに窒素複素環式化合物からなる群から選択される、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記化学発光化合物が、芳香族環状ジアシルヒドラジド、トリヒドロキシ芳香族化合物、アクリダンケテンジチオアセタール化合物、アクリダンエステル、アクリダンチオエステル、アクリダンスルホンアミド、アクリダンエノール誘導体、および下記式の化合物
【化18】

[式中、Rは、炭素原子1〜20個のアルキル、炭素原子1〜20個のアルケニル、炭素原子1〜20個のアルキニル、炭素原子1〜20個のアリール、および炭素原子1〜20個のアラルキル基から選択され、そのいずれもカルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、4級アンモニウム基、または4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、Xは、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル基、炭素原子1〜20個を有するアルキルカルボキシル基またはアリールカルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、グリコシル基、および式PO(OR’)(OR’’)のホスホリル基(式中、R’およびR’’は独立して、C〜Cアルキル、シアノアルキル、アリールおよびアラルキル基、トリアルキルシリル基、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類陽イオン、アンモニウム陽イオンおよびトリアルキルホスホニウム陽イオンから選択される)から選択され、ZおよびZはそれぞれ、OおよびS原子から選択され、RおよびRは独立して、水素およびC〜Cアルキルから選択される]
から選択される、請求項17または18に記載のキット。
【請求項20】
前記化学発光標識された、固定化された特異的結合メンバーが、特異的結合メンバーに直接または間接的に連結している化学発光標識化合物を含み、前記化学発光標識が、式
【化19】

[式中、
【化20】

は、前記化学発光標識の前記特異的結合メンバーへの結合箇所を指定し、RおよびRは独立して、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルキル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルケニル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルキニル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアリール、および炭素原子1〜20個の置換または非置換のアラルキル基から選択され、RまたはRが置換された基である場合、これは、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、C(=O)NHNH、4級アンモニウム基、および4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、Rは、炭素原子1〜20個のアルキル、炭素原子1〜20個の置換アルキル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルケニル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルキニル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアリール、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアラルキル基や、フェニル、置換または非置換のベンジル基、アルコキシアルキル、カルボキシアルキルおよびアルキルスルホン酸基からなる群から選択され、Rが置換された基である場合、これは、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、C(=O)NHNH、4級アンモニウム基、および4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよい]
の化合物である、請求項17または18に記載のキット。
【請求項21】
前記アクチベーター化合物が、遷移金属塩、遷移金属錯体、および酵素から選択され、前記アクチベーター標識がペルオキシダーゼ活性を有する、請求項17から20のいずれかに記載のキット。
【請求項22】
前記トリガー溶液が、過酸化水素、尿素過酸化物、および過ホウ酸塩から選択される過酸化物を含む、請求項17から21のいずれかに記載のキット。
【請求項23】
前記トリガー溶液が、フェノール化合物、芳香族アミン、ベンゾオキサゾール、ヒドロキシベンゾチアゾール、アリールボロン酸、およびこれらの混合物から選択されるエンハンサーを含む、請求項17から22のいずれかに記載のキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−519284(P2012−519284A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552199(P2011−552199)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025645
【国際公開番号】WO2010/099479
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】