説明

選択的視覚効果を有して層状に硬化可能な液状放射線硬化性樹脂およびその使用方法

本発明は、少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤を含む、照射すると固体状に硬化可能な液状放射線硬化性樹脂を形成する方法に関する。液状放射線硬化性樹脂は、硬化させて選択的視覚効果を有する三次元物品にすることが可能である。得られた三次元物品は、優れた色安定性および/または透明度安定性ならびに優れた機械的性質を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、積層造形プロセスを用いて三次元物品を形成する際に使用するのに好適な放射線硬化性樹脂に関する。
【0002】
[発明の背景]
[0001]三次元物品を作製するための積層造形プロセスは、当該技術分野で公知である。積層造形プロセスでは、物体のコンピューター支援設計(CAD)データを利用して三次元部品が1層ずつ構築される。この三次元部品は、液状樹脂、粉末、または他の材料から形成可能である。
【0003】
[0002]積層造形プロセスの例としては、光造形(SL)が挙げられるが、これに限定されるものではない。光造形は、特定の用途でモデル、プロトタイプ、パターン、および製造部品を迅速に作製するための周知のプロセスである。SLでは、物体のCADデータが使用され、このデータは、三次元物体の薄い断面体に変換される。データは、コンピューターにロードされ、これにより、バット内に入っている液状放射線硬化性樹脂組成物を介して断面体のパターンをトレースするレーザービームを制御し、断面体に対応する樹脂の薄層を凝固させる。凝固層は、樹脂でリコートされ、レーザービームは、他の断面体をトレースして前の層の上に他の樹脂層を硬化させる。このプロセスは、三次元物体が完成するまで1層ずつ反復される。初期形成時、三次元物体は、一般に完全には硬化されないので、所要により後硬化に付されることもある。SLプロセスの例は、米国特許第4,575,330号明細書に記載されている。
【0004】
[0003]三次元物体を形成するための光造形プロセスおよび他の積層造形プロセスで使用される液状放射線硬化性樹脂は、光エネルギーにより凝固可能である。典型的には、液状放射線硬化性樹脂は、紫外(UV)光により硬化される。そのような光は、典型的には、レーザー(たとえば光造形の場合)、ランプ、または発光ダイオード(LED)により生成される。2010年12月16日出願のPCT特許出願PCT/US10/60677(その全体が参照により組み入れられるものとする)を参照されたい。光造形システムでのレーザーによるエネルギー供給は、連続波(CW)またはQスイッチパルスでありうる。CWレーザーは、連続したレーザーエネルギーを提供し、高速走査プロセスで使用可能である。
【0005】
[0004]既知の樹脂では、典型的には、最終的な色および/または透明度は、その硬化に伴って三次元物品中に生じる。既知の樹脂は、液体形態では透明であり硬化すると不透明な三次元物品を形成するものでありうる。他の既知の樹脂は、液体形態では無色であり硬化させて着色した三次元物品にすることが可能なものでありうる。さらにまた、いくつかの樹脂は、液体形態では第1の色として出現し硬化すると第2の色に変化する。
【0006】
[0005]本特許出願全体を通じて、色という用語は、次のように定義される。すなわち、色(color)(または他の綴りの色(colour))とは、人間では赤色、黄色、緑色などと呼ばれる分類に対応する視知覚性のことである。黒色は、すべての色の不在の視知覚であり、一方、白色は、すべての色の視知覚である。色は、光受容器の分光感度と眼内で相互作用する光のスペクトル(波長に対する光エネルギーの分布)に由来する。色の分類および色の物理的仕様はまた、光の吸収、反射、または発光スペクトルなどの物理的性質に基づいて、物体、材料、光源などに関連付けられる。典型的には、人間が検知しうる光(およそ400nm〜700nmの波長スペクトル)の構成の特徴のみが含まれるので、色の心理現象は、その物理的仕様に客観的に関連付けられる。
【0007】
[0006]色および透明度は、2つの異なる主要素である。たとえば、あるものは、視覚的に完全に透明であるうえに着色して見えることもある。たとえば、特定の着色ガラスは、眼にはまったく透明でありかつ色を有する。同様に、あるものは、無色でありさらにまた透明または不透明でありうる。無色は、すべて色の欠如として定義される。たとえば、純液体水は無色透明である。完全に透明でありかつたとえば青色などの色があるとして視知覚される物品は、青色を反射するとともに他の波長の光をすべて透過する。目視者が白色を知覚する場合、すべて色が目視者の方向に反射されて物品を透過しないので、物品は、それほど透明に見えないであろう。
【0008】
[0007]近年、優れた寸法確度、形状安定性、機械的性質などを有する三次元物品を作製する液状放射線硬化性樹脂の需要は、増大してきている。この開発に伴って、所望の色または透明度/不透明度を有するとともに記載の優れた性質をも有する三次元物品の需要は、伸びてきている。これらの着色三次元物品は、審美的に満足でき、市販材料の外観を模倣可能であり、かつ遮光性を有しうるので、有用である。この開発に伴って、色または不透明度を硬化時に選択的に制御可能な放射線硬化性組成物の需要もまた、増大してきている。
【0009】
[0008]選択的に着色された三次元物品を作製するという難題への取組みは、2000年10月17日に発行されかつZeneca Limitedに譲渡された米国特許第6,133,336号明細書に記載されている。この特許には、単一の波長かつより低線量およびより高線量の光を用いて三次元物品の硬化および色付与を行う方法が記載されている。より低線量の光は、液状樹脂を硬化させて固体を形成するために使用され、より高線量の光は、樹脂の色付与を行うために使用される。特許請求されたプロセスは、色付与のみが対象であり、色除去が対象になっていない。この特許はまた、光硬化性かつ光着色性の樹脂の組成物を特許請求している。しかしながら、開示された組成物は、不十分な機械的性質および不十分な色安定性を有する。たとえば、初期硬化後、物品の無着色部分は、周囲光下で経時的に着色状態になる。そのような問題は、光応答性着色技術でよく見受けられる。
【0010】
[0009]Spectra Group Limited,Inc.に譲渡された米国特許第5,677,107号明細書には、色付与または色除去により三次元物品の作製および選択的着色を行う方法が開示されている。着色剤は、光応答性であり、かつ特許請求された方法は、光応答性着色剤の使用に依存する。
【0011】
[0010]Spectra Group Limited,Inc.に譲渡された米国特許第5,942,554号明細書には、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂のいずれかの高分子体の色変化を行う方法が開示されている。色変化化合物は、樹脂の重合時に生成される酸に対して感応性を有する。酸は、光または温度のいずれかにより活性化された開始種から生成される。色変化は、着色剤が酸に暴露された場合に起こる。
【0012】
[0011]American Dye Source,Inc.に譲渡された米国特許第6,664,024号明細書には、光活性化着色化合物を利用した選択的に着色可能な、三次元物体を形成するための光硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0013】
[0012]Vantico Limitedに譲渡された米国特許第6,649,311号明細書には、マイクロカプセル内に含有される感光性着色化合物を使用可能な、三次元物体の形成に使用するための樹脂が開示されている。同様に、米国特許出願公開第2004/0076909号明細書には、感光性色変化組成物を含有するマイクロカプセルである組成物中に分散された粒子を含む、三次元物体の形成に使用するための液状樹脂組成物が開示されている。
【0014】
[0013]3D Systems,Inc.に譲渡された米国特許出願公開第2004/0170923号明細書には、三次元物体を形成するのに有用な着色樹脂が開示されているが、そのような樹脂は、種々の線量の光への暴露により選択的に着色することができない。
【0015】
[0014]発明者に譲渡された米国特許第6,746,814号明細書には、硬化時に液状樹脂を放射線に過剰暴露してから物品の過剰暴露部分で色変化を引き起こすために有効量の熱でモデル全体を加熱することにより作製される物品の選択的な着色または調色を行う方法が開示されている。着色改質剤や透明度改質剤は使用されていない。
【0016】
[0015]優れた機械的性質を有すると同時にいくつかの領域では実質的に透明および/または無色でありかつ他の領域では所望の色および/または透明度を有するように三次元物品の色および/または透明度を選択的に制御可能な、硬化して三次元物品になりうる液状放射線硬化性樹脂を開発することが望ましいであろう。さらには、選択的に制御された部分の色および/または透明度が経時的に実質的に一定した色もしくは無色および/または透明度を維持する液状放射線硬化性樹脂を開発することが望ましいであろう。
【0017】
[発明の概要]
[0016]特許請求された本発明の第1の態様は、活性化温度を有する少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤を含む液状放射線硬化性樹脂を適切なイメージング放射線に晒して三次元物品を1層ずつ形成するとともに、同時に液状放射線硬化性樹脂の温度を選択的に制御して液状放射線硬化性樹脂の少なくとも1つの部分を感熱性視覚効果開始剤の活性化温度以上にすることにより三次元物品の少なくとも1つの選択的に着色されたおよび/または透明な領域を形成するようにすることを含む、少なくとも1つの選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する三次元物品の形成方法である。
【0018】
[0017]特許請求された本発明の第2の態様は、物品を形成するために使用された液状放射線硬化性樹脂が約0.005wt%〜約5wt%の少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤を含む、積層造形プロセスを用いて作製された少なくとも1つの選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する三次元物品である。
【0019】
[0018]特許請求された本発明の第3の態様は、液状放射線硬化性樹脂組成物が少なくとも2種の感熱性視覚効果開始剤を含む、液状放射線硬化性樹脂である。
【0020】
[0019]特許請求された本発明の第4の態様は、以下の工程、すなわち、
光を用いて液状放射線硬化性樹脂の層を硬化させることにより硬化された固体高分子層を形成する工程と、
工程(a)から得られる硬化された固体高分子層、すでに硬化された固体高分子層、または液状放射線硬化性樹脂の層の選択された領域に工程(a)で使用したよりも高線量の光を照射することにより、より高線量の光が照射された領域の色除去および/または透明度変化を行う工程と、
選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する所望の三次元物品が形成されるまで、必要に応じて、すでに硬化された固体高分子層または液状放射線硬化性樹脂の層に対して工程(a)および(b)を反復する工程と、
を含み、
工程(a)および(b)のそれぞれの光の波長が同一であり、かつ工程(b)が工程(a)の前、その時、またはその後に実施可能である、
液状放射線硬化性樹脂から選択的な色および/または透明度の領域を有する三次元物品を形成する方法である。
【0021】
[0020]特許請求された本発明の第5の態様は、選択的に着色されたおよび/または透明な領域の着色および/または透明度が液状放射線硬化性樹脂の温度の選択的制御により生成される、液状放射線硬化性樹脂から作製される選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する三次元物品の形成方法である。
【0022】
[0021]特許請求された本発明の第6の態様は、周囲温度で蛍光灯に30日間暴露したとき、蛍光灯への暴露の初日に測定されたΔEの50%以内に維持された、蛍光灯への暴露期間全体を通じて測定されたΔEが達成され、好ましくは、蛍光灯への暴露を介して測定されたΔEが、蛍光灯への暴露の初日に測定されたΔEの30%以内に維持され、より好ましくは、蛍光灯への暴露を介して測定されたΔEが、蛍光灯への暴露の初日に測定されたΔEの15%以内に維持され、さらにより好ましくは、蛍光灯への暴露を介して測定されたΔEが、蛍光灯への暴露の初日に測定されたΔEの10%以内に維持される、積層造形プロセスを介して作製された着色部分および無着色部分を有する三次元物品である。
【0023】
[0022]特許請求された本発明の第7の態様は、以下の工程、すなわち、
a.少なくとも2つの異なる線量の光を用いて液状放射線硬化性樹脂の層を選択的に硬化させることにより選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する硬化された固体層を形成する工程と、
b.三次元物品を形成するために工程(a)から形成された少なくとも2つの硬化された固体層を並置する工程と、
を含む、液状放射線硬化性樹脂から選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する三次元物品を形成する方法である。
【0024】
[0023]特許請求された本発明の第8の態様は、0.005wt%〜5wt%の少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤、好ましくは0.005wt%〜3wt.%、より好ましくは0.005wt%〜2.5wt.%、さらにより好ましくは0.005wt%〜1wt%、さらにより好ましくは0.005wt%〜0.5wt%の少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤を含む、照射すると固体状に硬化可能な液状放射線硬化性樹脂組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明を例示する硬化された三次元物品を示している。
【図2】図2は、本発明を例示する硬化された三次元物品を示している。
【図3】図3は、本発明を例示する硬化された三次元物品を示している。
【図4】図4は、本発明を例示する硬化された三次元物品を示している。
【図5】図5は、初期硬化後(上側)および蛍光灯への30日間暴露後(下側)について右側の現状技術の例と比較して左側に本発明を例示する硬化された三次元物品を示している。
【0026】
[0026][発明の詳細な説明]
[0027]本出願は、2010年1月22日出願の米国特許仮出願第61/297467号および2010年10月12日出願の米国特許仮出願第61/392153号(両方ともそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に基づく優先権を主張する。
【0027】
[0028]本特許出願全体を通じて、感熱性視覚効果開始剤は、三次元物体を形成するために使用可能なかつ硬化すると温度に応答してそれから作製された三次元物品の色または透明度の変化を生成可能な、液状放射線硬化性樹脂中に組込み可能な成分として定義される。一般的には、感熱性視覚効果開始剤は、2種類すなわち1)色に影響を及ぼす成分および2)透明度に影響を及ぼす成分の一方または両方に分類可能である。
【0028】
[0029]感熱性視覚効果開始剤の活性化温度は、感熱性視覚効果開始剤成分が色および/または透明度の変化を示し始める温度として定義される。感熱性視覚効果開始剤のロック温度は、感熱性視覚効果開始剤が液状放射線硬化性樹脂中に組み込まれたときに感熱性視覚効果開始剤または液状樹脂もしくはそれから作製された三次元物品の色および/または透明度のいずれの変化も永久的または半永久的である温度である。永久的色変化は不可逆的色変化である。半永久的色変化は特定の状況下では可逆的である。すなわち、色変化を逆転するために、サーモクロミック成分は、室温を有意に下回るように冷却しなければならない。非永久的色変化は、永久的でも半永久的でもない生じる任意の色変化である。非永久的色変化は可逆的である。
【0029】
[0030]本特許出願全体を通じて、サーモクロミズムは、物質が温度変化に起因して色を変化させる能力として定義される。サーモクロミック成分は、温度変化に起因して色を変化させる能力を有する液状放射線硬化性樹脂中に組込み可能な成分である。感熱性透明度改質剤は、温度変化に起因して液状放射線硬化性樹脂またはそれから作製された三次元物品の透明度を変化させる能力を有する液状放射線硬化性樹脂中に組込み可能な成分である。透明度は、典型的には、液状放射線硬化性樹脂から作製された三次元物品の選択的に硬化された部分の光散乱性を改質することにより変化させる。サーモクロミック成分は、感熱性透明度改質剤でもありうる。また、感熱性透明度改質剤は、サーモクロミック成分でもありうる。実際には、実質的にサーモクロミックな成分でさえも、多くの場合、わずかながら三次元物品の視覚透明度にも影響するであろう。感熱性視覚効果開始剤は、サーモクロミック成分、感熱性透明度改質剤、またはその両方でありうる。
【0030】
[0031]本特許出願全体を通じて、マイクロカプセルは、他の成分をカプセル化可能な小粒子である。樹脂の重合熱は、発熱重合反応により放出される熱である。強度は、単位面積あたりの時間平均パワーとして定義される。線量は、単位面積あたりのトータルパワーである。
【0031】
[0032]特許請求された本発明の第1の態様は、活性化温度を有する少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤を含む液状放射線硬化性樹脂を適切なイメージング放射線に晒して三次元物品を1層ずつ形成するとともに、同時に液状放射線硬化性樹脂の温度を選択的に制御して液状放射線硬化性樹脂の少なくとも1つの部分を感熱性視覚効果開始剤の活性化温度以上にすることにより三次元物品の少なくとも1つの選択的に着色されたおよび/または透明な領域を形成するようにすることを含む、少なくとも1つの選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する三次元物品の形成方法である。適切なイメージング放射線は、三次元物品を形成するために1層ずつ液状放射線硬化性樹脂を硬化するのに十分な放射線である。一実施形態では、感熱性視覚効果開始剤はサーモクロミック成分である。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤は感熱性透明度改質剤である。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤はサーモクロミック成分および感熱性透明度改質剤の両方である。
さらなる実施形態では、液状放射線硬化性組成物は、種々の感熱性視覚効果開始剤の混合物を含む。
【0032】
[0033]感熱性視覚効果開始剤を含む液状放射線硬化性樹脂の色および/または透明度を選択的に制御するために、樹脂温度は、感熱性視覚効果開始剤の活性化温度に達しなければならず、好ましくは、ロック温度に達しなければならない。選択された領域で活性化温度およびロック温度に達するために、選択された領域の樹脂の局所温度は、選択的に制御されなければならない。選択された領域で液状放射線硬化性樹脂の局所温度が適切に制御可能であるかぎり、任意の活性化温度またはロック温度の感熱性視覚効果開始剤を使用しうる。
【0033】
[0034]樹脂の局所温度は、液状放射線硬化性樹脂の重合熱、重合される液状放射線硬化性樹脂の量、および積層造形機の加熱素子などの外部源により提供される任意の加熱または冷却に依存する。選択的視覚効果は、これらの方式のいずれか1つまたは組合せで局所温度を制御することにより生成可能である。
【0034】
[0035]液状放射線硬化性樹脂の重合熱は、樹脂の組成に依存する。多くの化合物の重合熱は、Brandrup et al,Polymer Handbook,4th Edition,2003に見いだしうる。使用される積層造形機のタイプに依存して、より低い重合熱は、バット温度(バットが特定の機械に存在する場合)もしくは局所加熱素子(特定の機械に存在する場合)を変化させることにより、より大きい線量の光を提供することにより、または層厚さを増大させることにより、いくらか補償可能である。
【0035】
[0036]液状放射線硬化性樹脂の重合熱は、示差走査熱量計(DSC)、たとえば、フォトカロリメーターアクセサリー(PCA)モデルS2000を備えたTA Instruments示差走査熱量計モデルQ2000を用いて、測定可能である。たとえば、10mgのサンプルをTzeroアルミニウムパンに入れることが可能である。サンプルは、液状放射線硬化性樹脂の典型的な硬化温度を模倣するために30℃で1分間等温に保持することが望ましい。次いで、適切な光源、たとえば、365nmフィルターなどの適切なフィルターを備えた200W水銀アークランプを用いて、500mW/cmでサンプルに6秒間照射することが可能である。500mW/cmで約145±20J/g超を生成する液状放射線硬化性樹脂を特許請求された本発明に使用することが好ましい。しかしながら、光の線量、硬化される層の厚さを増大させることにより、または温度に影響を及ぼしうる積層造形機の種々のパラメーター(たとえばバット温度または局所加熱素子の出力)を調整することにより、より少ない熱を生成する液状放射線硬化性樹脂を特許請求された本発明に使用することが可能である。
【0036】
[0037]重合される樹脂の量は、液状放射線硬化性樹脂に供給される光の線量および硬化される層の厚さに依存する。より多量のエネルギーを各領域に移動させれば、液状放射線硬化性樹脂組成物のその領域でより多くの重合が開始されるであろう。重合量が増大すれば、その領域で温度が上昇するであろうから、その領域の局所温度を選択的に制御することが可能になるであろう。一般的には、より低い重合熱を有する樹脂は、より厚い層の硬化が必要になるであろうから、1層あたりより多くの重合を開始させて生成される熱レベルを高くすることが必要になるであろう。同様に、当技術分野で周知の検量線法により決定したときにより高い臨界エネルギー(Ec)およびより低い浸透深さ(Dp)値を有する樹脂は、三次元物品の色および/または透明度を選択的に制御するのに必要な局所温度を達成するためにより厚い層および/またはより高い光線量の構築が必要になることもある。
【0037】
[0038]局所温度は、積層造形機の種々のパラメーターの調整により少なくとも部分的に制御可能である。一実施形態では、使用される特定のタイプの積層造形機(たとえば光造形機)がバットを有する場合、温度は、バット温度の調整によりおよび液状放射線硬化性樹脂の硬化に使用される光の強度の調整により少なくとも部分的に制御可能である。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の温度は、重合位置で局所加熱素子によりおよび液状放射線硬化性樹脂の硬化に使用される光の強度の調整により制御可能である。さらなる実施形態では、局所温度は、局所加熱素子のみにより制御される。光造形機を使用する場合、樹脂温度、光強度、または局所加熱素子を調整するための類似の設定に調整して樹脂の局所温度に影響を及ぼすことが可能である、いくつかの光造形機では、光強度は、樹脂の選択された領域での層ハッチオーバーキュアの増大または減少により制御可能である。層ハッチオーバーキュアは、層に投入されるエネルギー量である。層ハッチオーバーキュアを呼ばれる機械設定は、光造形機の異なるメーカーおよびモデルでは異なって参照されることがある。光造形機は、適正な層を形成するために層ハッチオーバーキュアを用いて光源パワーおよび速度を計算する。積層造形機を操作する当業者であれば、特定の領域で液状放射線硬化性樹脂温度および光強度を操作するために積層造形機をどのように調整するかはわかる。単一の光源または複数の光源を用いて液状放射線硬化性樹脂の硬化および/または加熱を行いうる。
【0038】
[0039]感熱性視覚効果開始剤の使用は、現状技術よりも優れたいくつかの利点を有する。第1に、感熱性視覚効果開始剤は、ハイブリッド硬化系と併用可能である。ハイブリッド硬化系は、フリーラジカル重合性成分およびカチオン重合性成分と共にフリーラジカル光開始剤およびカチオン光開始剤からなる硬化系である。
三次元物品を形成するために非ハイブリッド系に照射を行った場合、形成された三次元物品は、望ましくない物理的性質を有する。ハイブリッド系は、優れた機械的性質を有する三次元物品を可能にする。積層造形プロセスで選択的着色が可能な積層造形用液状放射線硬化性樹脂の現状技術では、たとえば米国特許第6,133,336号明細書では、ハロクロミック成分を用いて選択的着色を引き起こす。ハロクロミック成分は、pHに基づいて色が変化させる。そのような成分は、適切に閉じ込められてカチオン重合時に存在する酸から遮蔽可能でないかぎり、ハイブリッド硬化系では効果的ではない。ハロクロミック成分が適切に閉じ込められていなければ、たとえば、酸に対して不浸透性のマイクロカプセル内に閉じ込められていなければ、カチオン光開始系から生成された酸は、ハロクロミック成分と反応してハロクロミック成分の色変化を引き起こすであろう。サーモクロミック成分は、特定の感光性着色剤またはハロクロミック着色剤よりもかなり酸に安定になるようにすることが可能であるので、ハイブリッド硬化系で機能しうる。一実施形態では、非ハイブリッド硬化系が使用される。他の実施形態では、ハイブリッド硬化系が使用される。一実施形態では、感熱性視覚効果開始剤は、液状放射線硬化性樹脂の重合時に生成された酸に応答していかなる有意な視覚色変化も視覚透明度変化も受けることはない。一実施形態では、感熱性視覚効果開始剤は、酸に対して不浸透性のマイクロカプセルを含む。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤は、酸に対して実質的に不浸透性のマイクロカプセルを含む。
【0039】
[0040]第2に、選択的に着色された三次元物品の選択的着色の寿命は、選択的着色が可能な現状技術の着色成分を用いるよりも感熱性視覚効果開始剤を用いるほうがかなり長くすることが可能である。感熱性視覚効果開始剤は、感光性であってもなくてもよく、他の感光性着色剤よりもかなり低い感光性であってもよい。選択的着色が可能な現状技術の着色成分を用いて選択的に着色された物品は、多くの場合、カラーブリードと思われる影響を受ける。さらにまた、硬化直後の色は、硬化後の時間の経過に伴って実質的に変化する。これが起こる理由は、ハロクロミック着色剤または感光性着色剤が周囲光に暴露されると着色剤または特定のハロクロミック着色系の場合には着色剤を活性化する顕色剤もしくは光開始剤が周囲光下で作用を開始することにある。これにより無着色部分で経時的に追加の望ましくない色形成が引き起こされる。感熱性視覚効果開始剤を用いて選択的に着色された物品は、一般的には、感光性でなく、より少ないカラーブリードの影響を受ける。さらに、そのような物品は、硬化後、時間が経過しても、硬化直後と実質的に同一の色を有する。一実施形態では、感熱性視覚効果開始剤は感光性でない。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤はわずかに感光性である。
【0040】
[0041]一実施形態では、感熱性視覚効果開始剤は、1種または複数種の感熱性成分を含有するマイクロカプセルである。視覚効果の起源は、光吸収、光反射、および/または光散乱が温度と共に変化することから生じうる。感熱性視覚効果開始剤は、種々のタイプの化合物中に存在可能である。ポリマー中でのサーモクロミズムについての解説記事は、Thermochromic Phenomena in Polymers,(著作権)2008 Arno Seeboth and Detlef Loetzschに見いだしうる。サーモクロミック化合物に関する追加情報は、Organic Photochromic and Thermochromic Compounds. Volume 2.(著作権)1999 John C.Crano and Robert J.Guglielmettiに見いだしうる。サーモクロミック成分の例は、米国特許第7,304,008号明細書、同第6,008,269号明細書、および同第4,424,990号明細書ならびに国際公開第2009/137709号パンフレットに見いだしうる。他のサーモクロミック化合物は、たとえば、特開2005−220201号公報、同2007−332232号公報、同2003−313453号公報、同2001−242249号公報、特開平10−152638号公報、同03−076783号公報、同03−076786号公報、および日本特許第1522236号公報に見いだしうる。
【0041】
[0042]驚くべきことに、感熱性視覚効果開始剤は、樹脂の機械的性質の実質的な低下をなんら伴うことなく液状放射線硬化性樹脂中に組込み可能である。一実施形態では、感熱性視覚効果開始剤は、感熱性視覚効果開始剤を液状放射線硬化性樹脂中に混合することにより液状放射線硬化性樹脂中に組み込まれる。一実施形態では、感熱性視覚効果開始剤は、液状放射線硬化性樹脂を感熱性視覚効果開始剤中に混合することにより液状放射線硬化性樹脂中に組み込まれる。一実施形態では、感熱性視覚効果開始剤は、感熱性視覚効果開始剤を含有する溶媒と共に、他の実施形態では、溶媒を用いずに、液状放射線硬化性樹脂中に組み込まれる。
【0042】
[0043]液状放射線硬化性樹脂組成物で使用する感熱性視覚効果開始剤の適切な量を決定するために、硬化後に一部の目視検査を行うことが可能である。液状放射線硬化性樹脂組成物中の感熱性視覚効果開始剤の量は、主に視覚選好度の関数である。しかしながら、過剰量または過少量の感熱性視覚効果開始剤を液状放射線硬化性樹脂組成物中に組み込んだ場合、硬化された物品の選択的に着色された部分は、十分に識別可能でない可能性があり、または硬化された物品は、十分に透明もしくは不透明でない可能性がある。感熱性視覚効果開始剤の粒子サイズを低減すると、硬化された物品の十分に識別可能な選択的に着色された/無着色のおよび/または透明/不透明な部分を有するように、より多くの感熱性視覚効果開始剤を添加することが可能である。一実施形態では、感熱性視覚効果開始剤は約5wt%未満の量で存在する。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の量は約1wt%未満である。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の量は約0.5wt%未満である。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の量は約0.2wt%未満である。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の量は約0.1wt%未満である。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の量は約0.1wt%である。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の量は約0.024wt%である。
【0043】
[0044]他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の量は、約0.005wt%〜約5wt%の量で存在する。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の量は、約0.005wt%〜約3wt%の量で存在する。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の量は、約0.005wt%〜約2wt%の量で存在する。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の量は、約0.005wt%〜約1wt%の量で存在する。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の量は、約0.01wt%〜約5wt%の量で存在する。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の量は、約0.05wt%〜約5wt%の量で存在する。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤の量は、約0.01wt%〜約2wt%の量で存在する。
【0044】
[0045]一実施形態では、感熱性視覚効果開始剤は、Somos(登録商標)WaterClear(登録商標)Ultra10122液状放射線硬化性樹脂中に組み込まれる。他の実施形態では、感熱性視覚効果開始剤は、Somos(登録商標)WaterShed(登録商標)XC11122液状放射線硬化性樹脂中に組み込まれる。Somos(登録商標)WaterClear(登録商標)Ultra10122およびSomos(登録商標)WaterShed(登録商標)XC11122は、DSM Desotech,Inc.により製造されている液状放射線硬化性樹脂である。Somos(登録商標)WaterClear(登録商標)Ultra10122およびSomos(登録商標)WaterShed(登録商標)XC 11122は両方とも、完全硬化後、実質的に無色透明である。Somos(登録商標)WaterClear(登録商標)Ultra10122は、45〜70wt%のエポキシ、10〜25wt%のアクリレート、5〜15wt%のオキセタン、5〜15wt%のポリオール、5〜15wt%の光開始剤、および0〜10wt%の添加剤を含む。Somos(登録商標)WaterShed(登録商標)XC11122は、45〜70wt%のエポキシ、5〜20wt%のアクリレート、10〜25wt%のオキセタン、5〜15wt%の光開始剤、および0〜10wt%の添加剤を含む。
【0045】
一実施形態では、感熱性視覚効果開始剤はサーモクロミック成分である。サーモクロミック成分は、一般的には、硬化された三次元物品の視知覚色を変化させるように機能するが、この成分はまた、硬化された三次元物品の透明度にもいくらかの影響を及ぼしうる。UV光で重合可能なインク組成物中でのサーモクロミック成分含有マイクロカプセルの使用は、米国特許第5500040号明細書(その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に開示されている。しかしながら、この特許には、積層造形用液状放射線硬化性樹脂中でのサーモクロミック成分の使用についても選択的視覚効果を有する三次元物品の作製についても言及されていない。R.A.M.HikmetおよびR.Polessoは、種々の温度で液状放射線硬化性樹脂を重合することにより、液状放射線硬化性樹脂中に組み込まれたコレステリック液晶ゲルの反射性を制御しうることを実証した。特定の温度への暴露により整列された液晶の配向をロックするために重合を使用し、後続の温度変化によって有意な色変化が起こらないようにする。R.A.M.Hikmet and R. Polesso,“Patterned Multicolor Switchable Cholesteric Liquid Crystal Gels,”Advanced Materials,2002,14,No.7,April 4(参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。選択的に着色された領域を有する硬化された三次元物体の作製方法については、論じられていない。
【0046】
[0046]一実施形態では、サーモクロミック成分は、Matsui Shikiso Chemical Co.Ltd.,http://www.matsui−color.com/により製造されているThermolock(登録商標)79s Pink to Clear中に含有されている。Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearは、サーモクロミック成分を含有するインクである。サーモクロミック成分は、感熱性インクを含有するマイクロカプセルである。Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearは、エチルシクロヘキサンおよび他の成分中に組み込まれたサーモクロミック成分を含有する。Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearは、ロイコ染料および他の成分を含有するマイクロカプセルを利用する。Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearは、約50〜53wt%のエチルシクロヘキサン、約14wt%のサーモクロミック成分、約15wt%の2−ブトキシエチルアセテート、0.1wt%未満のホルムアルデヒド、および他の成分を含む。エチルシクロヘキサンは、Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearを空気に暴露すると経時的に蒸発する。Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearのwt%が本出願で参照された場合は常に、wt%は、エチルシクロヘキサンの実質的な蒸発前のThermolock(登録商標)79s Pink to Clearを基準にする。他の実施形態では、サーモクロミック成分は、なにか他の色から透明に変わる。たとえば、色は、Thermolock(登録商標)79s Blue to Clear、Thermolock(登録商標)79s Red to Clear、およびThermolock(登録商標)79s Green to Clearにそれぞれ含有される青色、赤色、または緑色でありうる。
【0047】
[0047]一実施形態では、サーモクロミック成分は、液状放射線硬化性樹脂の約5wt%未満の量で存在する。他の実施形態では、サーモクロミック成分の量は約1wt%未満である。他の実施形態では、サーモクロミック成分の量は約0.5wt%未満である。他の実施形態では、サーモクロミック成分の量は約0.2wt%未満である。他の実施形態では、サーモクロミック成分の量は約0.1wt%未満である。他の実施形態では、サーモクロミック成分の量は約0.1wt%である。他の実施形態では、サーモクロミック成分の量は約0.024wt%である。
【0048】
[0048]他の実施形態では、サーモクロミック成分の量は、液状放射線硬化性樹脂の約0.005wt%〜約5wt%の量で存在する。他の実施形態では、サーモクロミック成分の量は、約0.005wt%〜約3wt%の量で存在する。他の実施形態では、サーモクロミック成分の量は、約0.005wt%〜約2wt%の量で存在する。他の実施形態では、サーモクロミック成分の量は、約0.005wt%〜約1wt%の量で存在する。他の実施形態では、サーモクロミック成分の量は、約0.01wt%〜約5wt%の量で存在する。他の実施形態では、サーモクロミック成分の量は、約0.05wt%〜約5wt%の量で存在する。他の実施形態では、サーモクロミック成分の量は、約0.01wt%〜約2wt%の量で存在する。
【0049】
[0049]Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearは、特定の温度上昇に付されたときに第1の色から無色に変化する。Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearの活性化温度は約65℃でありかつロック温度は約79℃である。ロック温度に達すると、温度を約−10℃に低下させることにより、色変化を逆転することが可能である。一実施形態では、不可逆的に色変化するサーモクロミック成分が使用される。他の実施形態では、液状放射線硬化性樹脂中に組み込まれるサーモクロミック成分は、特定の温度上昇に起因して第1の色から第2の色に変化可能である。他の実施形態では、サーモクロミック成分は、特定の温度上昇に起因して無色から第1の色に変化可能である。
【0050】
[0050]一実施形態では、Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearは、市販のSomos(登録商標)WaterClear(登録商標)Ultra10122液状放射線硬化性樹脂と組み合わされる。他の実施形態では、Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearは、市販のSomos(登録商標)WaterShed(登録商標)XC11122液状放射線硬化性樹脂と組み合わされる。他の実施形態では、Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearは、充填剤入り液状放射線硬化性樹脂と組み合わされる。充填剤入り樹脂は、実質的量の充填剤を含む液状放射線硬化性樹脂であり、通常、硬化後は不透明または実質的に不透明である。一実施形態では、Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearは、液状放射線硬化性樹脂組成物の約5wt%未満の量で存在する。他の実施形態では、Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearの量は約1wt%未満である。他の実施形態では、Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearの量は約0.3wt%である。図1および2は、99.7wt%のSomos(登録商標)WaterShed(登録商標)XC11122および0.3wt%のThermolock(登録商標)79s Pink to Clearの液状放射線硬化性樹脂組成物から作製された硬化された三次元物品を示している。
【0051】
[0051]一実施形態では、サーモクロミック成分は、Thermolock(登録商標)80sに含有されている。Thermolock(登録商標)80sは、サーモクロミック成分、充填剤、および他の顔料を含有する市販のインクである。Thermolock(登録商標)80sは、Matsui Shikiso Chemical Co.Ltd.から入手可能であり、同様にMatsui Shikiso Chemical Co.Ltd.から入手可能なThermolock(登録商標)Marker80で使用されているインクである。Thermolock(登録商標)80sは、Thermolock(登録商標)79s Pink to Clearと同一のサーモクロミック成分を含有するが、他の顔料も組み込まれており赤色から黄色への可視色変化を引き起こす。
【0052】
[0052]Thermolock(登録商標)80sは、液状放射線硬化性樹脂中に組込み可能である。市販のThermolock(登録商標)Marker80を取得することが可能である。次いで、たとえば剃刀刃を用いてマーカーを解体することにより、マーカーを解体することが可能である。次いで、マーカーのフェルトチップを除去してインクを取り出すことが可能である。次いで、インクを液状放射線硬化性樹脂中に注加することが可能である。バッチサイズに依存して、2本以上のThermolock(登録商標)Marker80が必要になることもある。次いで、混合により液状放射線硬化性樹脂およびThermolock(登録商標)80sを組み合わせることが可能である。
【0053】
[0053]一実施形態では、Thermolock(登録商標)80sは、市販のSomos(登録商標)WaterClear(登録商標)Ultra10122液状放射線硬化性樹脂と組み合わされる。他の実施形態では、Thermolock(登録商標)80sは、市販のSomos(登録商標)WaterShed(登録商標)XC11122液状放射線硬化性樹脂と組み合わされる。Somos(登録商標)WaterClear(登録商標)Ultra10122液状放射線硬化性樹脂およびSomos(登録商標)WaterShed(登録商標)XC11122液状放射線硬化性樹脂は、完全硬化後は実質的に透明である。他の実施形態では、Thermolock(登録商標)80sは、充填剤入り液状放射線硬化性樹脂と組み合わされる。一実施形態では、Thermolock(登録商標)80sは、液状放射線硬化性樹脂組成物の約5wt%未満の量で存在する。他の実施形態では、Thermolock(登録商標)80sの量は約1wt%未満である。他の実施形態では、Thermolock(登録商標)80sの量は約0.3wt%である。
【0054】
[0054]他の実施形態では、液状放射線硬化性樹脂は、少なくとも1種の感熱性透明度改質剤(これもまたサーモクロミック成分であってもよい)を含む。感熱性透明度改質剤は、光が三次元物品を透過する形態を改変することにより機能しうる。この光散乱効果により物品は特定の部分で不透明または実質的に不透明になる。感熱性透明度改質剤が活性化されない部分では三次元物品が無色透明であれば、透明度が改質された部分では物品は白色に見えるであろう。この理由は、透明度の改質により光が目視者の方向に反射されて白色を生成することにある。透明度の低下は、液状放射線硬化性樹脂中に組み込まれる感熱性不透明度改質剤の量または液状放射線硬化性樹脂の局所温度に依存して制御可能である。
【0055】
[0055]一実施形態では、感熱性透明度改質剤は、約0.005wt%〜約5wt%の量で存在する熱膨張性マイクロスフェアである。熱膨張性マイクロスフェアの活性化温度に達した場合、熱膨張性マイクロスフェアは膨張する。膨張は、三次元物品を透過する光の散乱を引き起こし、三次元物品の漸増的不透明外観を生成する。この不透明外観は、硬化されるときの液状放射線硬化性樹脂の局所温度を制御することにより選択的に制御可能である。
【0056】
[0056]一実施形態では、感熱性透明度改質剤は熱膨張性マイクロスフェアである。一実施形態では、熱膨張性マイクロスフェアは、AkzoNobel NVにより製造されているExpancel(登録商標)未膨張マイクロスフェア製品の形態である。http://www.akzonobel.com/expancel/を参照されたい。種々の膨張性マイクロスフェアおよびそれらの製造についての詳細な説明は、たとえば、米国特許第3,615,972号明細書、同第3,945,956号明細書、同第4,287,308号明細書、同第5,536,756号明細書、同第6,235,800号明細書、同第6,235,394号明細書、および同第6,509,384号明細書、欧州特許第486080号明細書、欧州特許第1054034号明細書、欧州特許第1288272号明細書、および欧州特許第1408097号明細書、国際公開第2004/072160号パンフレット、ならびに特開1987−286534号公報に見いだしうる。一実施形態では、熱膨張性マイクロスフェアは、乾燥未膨張マイクロスフェアである。一実施形態では、感熱性透明度改質剤は、Expancel(登録商標)031DU40である。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤は、Expancel(登録商標)820DU40である。活性化温度およびロック温度は、膨張性マイクロスフェアのExpancel(登録商標)系列に関しては同一である。Expancel(登録商標)031DU40およびExpancel(登録商標)820DU40の活性化温度およびロック温度は約75℃であり、最大の活性化温度およびロック温度は約115℃である。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤は、Expancel(登録商標)551DU40である。Expancel(登録商標)551DU40の活性化温度およびロック温度は約95〜100℃であり、最大の活性化温度およびロック温度は約139〜147℃である。
【0057】
[0057]熱膨張性マイクロスフェアは、三次元物体の形成に使用される液状放射線硬化性樹脂ですでに使用されている。特開平2−116537号公報を参照されたい。熱膨張性マイクロスフェアの使用は、三次元物体が形成されるときの反りまたは収縮を制御するためにすでに使用されている。この日本国特許出願では、液状放射線硬化性樹脂中の熱膨張性マイクロスフェアの使用が論じられており、適切な量の膨張を開始するために硬化時に樹脂に熱エネルギーを加えることが論じられている。選択的に透明な物品の視覚効果を生成するために特定の領域でのみ熱膨張性マイクロスフェアの膨張を開始することまたは特定の位置でマイクロスフェアの膨張を選択的に制御することについては、論じられていない。同様に、硬化される三次元物体の特定の領域でのみ熱膨張を開始するために重合時の液状放射線硬化性樹脂の局所温度を制御することについては、論じられていない。インベストメントキャスティング用途で三次元物体に及ぼす温度の影響を制御するために液状放射線硬化性樹脂で圧潰性マイクロスフェアを使用することも公知である。たとえば、両方ともDSM IP Assets BVに譲渡された米国特許第5176188号明細書および米国特許第5364889号明細書を参照されたい。
【0058】
[0058]液状放射線硬化性樹脂中に組み込まれる感熱性透明度改質剤の量は、マイクロスフェアのサイズに依存する。より小さいマイクロスフェアでは、選択的な透明度変化を引き起こすためにより多量の感熱性透明度改質剤が含まれていなければならない。一実施形態では、感熱性透明度改質剤は、液状放射線硬化性樹脂組成物の約5wt%未満の量で存在する。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤の量は約1wt%未満である。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤の量は約0.5wt%である。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤の量は約0.5wt%未満である。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤の量は約0.1wt%である。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤の量は約0.005〜約0.25のwt%である。
【0059】
[0059]他の実施形態では、感熱性透明度改質剤の量は、約0.005wt%〜約5wt%の量で存在する。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤の量は、約0.005wt%〜約3wt%の量で存在する。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤の量は、約0.005wt%〜約2wt%の量で存在する。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤の量は、約0.005wt%〜約1wt%の量で存在する。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤の量は、約0.01wt%〜約5wt%の量で存在する。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤の量は、約0.05wt%〜約5wt%の量で存在する。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤の量は、約0.01wt%〜約2wt%の量で存在する。
【0060】
[0060]一実施形態では、感熱性透明度改質剤は、実質的に透明な液状放射線硬化性樹脂中に組み込まれる。他の実施形態では、感熱性透明度改質剤は、実質的に無色透明な液状放射線硬化性樹脂中に組み込まれる。図3および図4は、感熱性透明度改質剤が実質的に無色透明な液状放射線硬化性樹脂中に組み込まれた2つの実施例組成物を示している。図3および図4では両方とも、写真で示された三次元物体の硬化に使用された液状放射線硬化性樹脂は、約0.1wt%のExpancel031DU40および約99.9 wt%のSomos(登録商標)WaterClear(登録商標)Ultra10122を含む。図3では、歯の白色外観は、それらの領域内で感熱性透明度改質剤の活性化温度を達成することにより生成される。同様に、図4では、手の中の骨の白色外観は、それらの領域内で感熱性透明度改質剤の活性化温度を達成することにより生成される。
【0061】
[0061]他の実施形態では、2種以上の感熱性視覚効果開始剤が液状放射線硬化性樹脂組成物中に組み込まれる。一実施形態では、2種以上の感熱性視覚効果開始剤のそれぞれは、同一の活性化温度および/またはロック温度を有する。他の実施形態では、2種以上の感熱性視覚効果開始剤の少なくとも1つは、他の感熱性視覚効果開始剤と異なる活性化温度および/またはロック温度を有する。この実施形態では、樹脂の温度を制御して、いくつかの領域では感熱性視覚効果開始剤の一部のみについて色および/もしくは透明度の変化の活性化、色および/もしくは不透明度の付与、または色および/もしくは不透明度の除去を行い、一方、他の領域では感熱性視覚効果開始剤の全部について色および/もしくは透明度の変化の活性化、色および/もしくは不透明度の付与、または色および/もしくは不透明度の除去を行うか、あるいはそれらをまったく行わないようにすることにより、追加の色および/または透明度が達成される。硬化前の液状放射線硬化性樹脂の色および/または透明度は、硬化された三次元物品のいずれの部分とも同一であってもなくてもよい。
【0062】
[0062]本発明の一実施形態によれば、液状放射線硬化性樹脂は、感熱性視覚効果開始剤、フリーラジカル重合性成分、およびフリーラジカル重合を開始可能な光開始系を含む。他の実施形態では、液状放射線硬化性樹脂は、感熱性視覚効果開始剤、カチオン重合性成分、およびカチオン重合を開始可能な光開始系を含む。さらなる実施形態では、液状放射線硬化性樹脂は、感熱性視覚効果開始剤、フリーラジカル重合性成分、フリーラジカル重合を開始可能な光開始系、カチオン重合性成分、およびカチオン重合を開始可能な光開始系を含む。
【0063】
[0063]本発明の一実施形態によれば、本発明に係る液状放射線硬化性樹脂は、少なくとも1つのフリーラジカル重合性成分、すなわち、フリーラジカルにより開始される重合を行う成分を含みうる。フリーラジカル重合性成分は、モノマー、オリゴマー、および/またはポリマーであり、それらは、単官能性または多官能性の材料であり(すなわち、フリーラジカル開始により重合可能な1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100個、またはそれ以上の官能基を有し)、脂肪族、芳香族、脂環式、アリール脂肪族、ヘテロ環式の部分(複数可)またはそれらの任意の組合せを含有しうる。多官能性材料の例としては、デンドリティックポリマー、たとえば、デンドリマー、リニアデンドリティックポリマー、デンドリグラフトポリマー、ハイパーブランチポリマー、スターブランチポリマー、およびハイパーグラフトポリマーが挙げられる(米国特許出願公開第2009/0093564A1号明細書を参照されたい)。デンドリティックポリマーは、1つのタイプの重合性官能基または異なるタイプの重合性官能基、たとえば、アクリレート官能基およびメタクリレート官能基を含有しうる。
【0064】
[0064]フリーラジカル重合性成分の例としては、アクリレート類およびメタクリレート類、たとえば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、カプロラクトンアクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ベータ−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルカルバミルエチル(メタ)アクリレート、n−イソプロピル(メタ)アクリルアミドフッ素化(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0065】
[0065]多官能性フリーラジカル重合性成分の例としては、(メタ)アクリロイル基を有するもの、たとえば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、[2−[1,1−ジメチル−2−[(1−オキソアリル)オキシ]エチル]−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル]メチルアクリレート、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2、4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、リン酸モノおよびジ(メタ)アクリレート、C〜C20アルキルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート(dipentaerythritol hexa(meth)crylate)、トリシクロデカンジイルジメチルジ(メタ)アクリレート、および以上のモノマーのいずれかのアルコキシル化物(たとえば、エトキシル化物および/またはプロポキシル化物)、さらにはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとビスフェノールAとの付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドと水素化ビスフェノールAとの付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートとジグリシジルエーテルのビスフェノールAとの付加物であるエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキル化ビスフェノールAのジアクリレート、およびトリエチレングリコールジビニルエーテル、ならびにヒドロキシエチルアクリレートの付加物が挙げられる。
【0066】
[0066]一実施形態によれば、多官能性成分の多官能性(メタ)アクリレートは、すべてメタクリロイル基、すべてアクリロイル基、またはメタクリロイル基およびアクリロイル基の任意の組合せを含みうる。一実施形態では、フリーラジカル重合性成分は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エトキシル化もしくはプロポキシル化ビスフェノールAまたはビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、[2−[1,1−ジメチル−2−[(1−オキソアリル)オキシ]エチル]−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル]メチルアクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート(dipentaerythritol hexa(meth)crylate)、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびプロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0067】
[0067]他の実施形態では、フリーラジカル重合性成分は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジアクリレート、[2−[1,1−ジメチル−2−[(1−オキソアリル)オキシ]エチル]−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル]メチルアクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、およびプロポキシル化、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0068】
[0068]特定の実施形態では、本発明に係る液状放射線硬化性樹脂組成物は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、および/またはプロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートの1つ以上、より特定的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジアクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレートでプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、および/またはプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートの1つ以上を含む。
【0069】
[0069]液状放射線硬化性樹脂組成物は、任意の好適な量、たとえば、特定の実施形態では組成物の約95重量%までの量、特定の実施形態では組成物の約50重量%までの量、さらなる実施形態では組成物の約5〜約25重量%の量のフリーラジカル重合性成分を含みうる。
【0070】
[0070]いずれの実施形態でも、本発明に係る液状放射線硬化性樹脂組成物は、光開始系を含む。光開始系は、フリーラジカル光開始剤もしくはカチオン光開始剤または同一の分子上にフリーラジカル開始官能基およびカチオン開始官能基の両方を含有する光開始剤でありうる。光開始剤は、光の作用に起因してまたは光の作用と増感色素の電子励起との相乗作用に起因して化学変化することによりラジカル、酸、および塩基の少なくとも1つを生成する化合物である。
【0071】
[0071]典型的には、フリーラジカル光開始剤は、「ノリッシュI型(Norrish Type I)」として知られる開裂によりラジカルを生成するものおよび「ノリッシュII型」として知られる水素引抜きによりラジカルを生成するものに分類される。ノリッシュII型光開始剤は、フリーラジカル源として作用する水素供与体を必要とする。開始が二分子反応に基づくので、ノリッシュII型光開始剤は、一般的には、ラジカルの単分子生成に基づくノリッシュI型光開始剤よりも遅い。一方、ノリッシュII型光開始剤は、近UV分光領域でより良好な光吸収性を有する。水素供与体、たとえば、アルコール、アミン、またはチオールの存在下で、芳香族ケトン、たとえば、ベンゾフェノン、チオキサントン、ベンジル、およびキノンを光分解すると、カルボニル化合物から生じるラジカル(ケチル型ラジカル)および水素供与体に由来する他のラジカルが生成される。ビニルモノマーの光重合は、通常、水素供与体から生じるラジカルにより開始される。ケチルラジカルは、通常、立体障害および不対電子の実在性消失に起因してビニルモノマーに対して反応性ではない。
【0072】
[0072]液状放射線硬化性樹脂組成物をうまく配合するために、組成物中に存在する光開始剤(複数可)の波長感度を精査して方法および組成物を硬化すべく選択される照射波長により活性化されるかを調べることが必要である。
【0073】
[0073]一実施形態によれば、液状放射線硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種のフリーラジカル光開始剤、たとえば、ベンゾイルホスフィンオキシド、アリールケトン、ベンゾフェノン、ヒドロキシル化ケトン、1−ヒドロキシフェニルケトン、ケタール、メタロセン、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択されるものを含む。
【0074】
[0074]一実施形態では、液状放射線硬化性樹脂組成物は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニル、エトキシホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル))−フェニルホスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1,2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イルフェニル)−ブタン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、および4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラー(Michler)ケトン)、ベンゾフェノン、4−メチル−ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、ジメトキシベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、4−イソプロピルフェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトン、オリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、カンホルキノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、ビス(η5−2−4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタン、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1種のフリーラジカル光開始剤を含む。
【0075】
[0075]300〜475nmの波長範囲で発光する光源、特定的には、365nm、390nm、または395nmで発光するものでは、この領域で吸収する好適なフリーラジカル光開始剤の例としては、ベンゾイルホスフィンオキシド類、たとえば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF製のルシリン(Lucirin)TPO)および2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルなど、エトキシホスフィンオキシド(BASF製のルシリンTPO−L)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Ciba製のイルガキュア(Irgacure)819またはBAPO)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1(Ciba製のイルガキュア907)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Ciba製のイルガキュア369)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(Ciba製のイルガキュア379)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド(Chitec製のChivacure BMS)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(Chitec製のChivacure EMK)、および4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)が挙げられる。同様に好適なのはそれらの混合物である。
【0076】
[0076]そのほかに、この波長領域で発光する光源を用いて硬化を行う際、光増感剤を光開始剤と組み合わせることが有用である。好適な光増感剤の例としては、アントラキノン類、たとえば、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tertブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、および2−アミルアントラキノン、チオキサントン類およびキサントン類、たとえば、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、および1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、メチルベンゾイルホルメート(Ciba製のダロキュア(Darocur)MBF)、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート(Chitec製のChivacure OMB)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド(Chitec製のChivacure BMS)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(Chitec製のChivacure EMK)が挙げられる。
【0077】
[0077]より短い波長で発光するようにUV光源を設計することが可能である。約100〜約300nmの波長で発光する光源では、光開始剤と共に光増感剤を利用することが望ましい。以上に列挙したような光増感剤が配合物中に存在する場合、より短い波長で吸収する他の光開始剤を使用することが可能である。そのような光開始剤の例としては、ベンゾフェノン類、たとえば、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、およびジメトキシベンゾフェノン、ならびに1−ヒドロキシフェニルケトン類、たとえば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ(hroxyethoxy))フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、および4−イソプロピルフェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトン、ベンジルジメチルケタール、ならびにオリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン](Lamberti製のエスカキュア(Esacure)KIP150)が挙げられる。
【0078】
[0078]可視光を発するように光源を設計することも可能である。約475nm〜約900nmの波長で発光する光源では、好適なフリーラジカル光開始剤の例としては、カンホルキノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(Chitec製のChivacure EMK)、4,4’−ビス(N,N’ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Ciba製のイルガキュア819またはBAPO)、メタロセン類、たとえば、ビス(η5−2−4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタン(Ciba製のイルガキュア784)、ならびにSpectra Group Limited,Inc.製の可視光開始剤、たとえば、H−Nu 470、H−Nu−535、H−Nu−635、H−Nu−Blue−640、およびH−Nu−Blue−660が挙げられる。
【0079】
[0079]液状放射線硬化性樹脂組成物は、任意の好適な量、たとえば、特定の実施形態では組成物の約15重量%までの量、特定の実施形態では組成物の約10重量%までの量、さらなる実施形態では組成物の約1〜約5重量%の量のフリーラジカル光開始剤を含みうる。他の実施形態では、フリーラジカル光開始剤の量は、全組成物の約1wt%〜約8wt%、より好ましくは全組成物の約1wt%〜約6wt%の量で存在する。
【0080】
[0080]一実施形態によれば、本発明に係る液状放射線硬化性樹脂組成物は、少なくとも1つのカチオン重合性成分、すなわち、カチオンによりまたは酸発生剤の存在下で開始される重合を行う成分を含む。カチオン重合性成分は、モノマー、オリゴマー、および/またはポリマーであってもよく、脂肪族、芳香族、脂環式、アリール脂肪族、ヘテロ環式の部分(複数可)、およびそれらの任意の組合せを含有していてもよい。好適な環状エーテル化合物は、側基または脂環式もしくはヘテロ環式の環系の一部を形成する基として環状エーテル基を含みうる。
【0081】
[0081]カチオン重合性成分は、環状エーテル化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、環状ラクトン化合物、およびビニルエーテル化合物、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0082】
[0082]カチオン重合性成分の例としては、環状エーテル化合物、たとえば、エポキシ化合物およびオキセタン類、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、ならびにビニルエーテル化合物が挙げられる。カチオン重合性成分の特定例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(epoxycyclohexcylmethyl)−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)−シクロヘキサン−1,4−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキシド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンオキシド、リモネンジオキシド、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ビシクロヘキシル−3,3−’エポキシド、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−C(CH−、−CBr−、−C(CBr−、−C(CF−、−C(CCl−、または−CH(C)−の結合を有するビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロジオクチルフタレート、エポキシヘキサヒドロ−ジ−2−エチルヘキシルフタレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1種以上のアルキレンオキシドを脂肪族多価アルコール、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセロールに付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖状二塩基酸のジグリシジルエステル、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、またはポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル(アルキレンオキシドをこれら化合物に付加することにより得られる)、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化ダイズ油、エポキシブチルステアリン酸、エポキシオクチルステアリン酸、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(3−ヒドロキシプロピル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(4−ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(5−ヒドロキシペンチル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、ビス(1−エチル(3−オキセタニル))(メチル)エーテル、3−エチル−3−((2−エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン、3−エチル−((トリエトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン、3−(メタ)−アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン)、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]−ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(tetrahydrofurfuyl)(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。カチオン重合性である多官能性材料の例としては、エポキシ官能基またはオキセタン官能基を有するデンドリティックポリマー、たとえば、デンドリマー、リニアデンドリティックポリマー、デンドリグラフトポリマー、ハイパーブランチポリマー、スターブランチポリマー、およびハイパーグラフトポリマーが挙げられる。デンドリティックポリマーは、1つのタイプの重合性官能基または異なるタイプの重合性官能基、たとえば、エポキシ官能基およびオキセタン官能基を含有しうる。
【0083】
[0083]本発明に係る実施形態では、カチオン重合性成分は、少なくとも脂環式エポキシおよびオキセタンからなる群から選択されるものである。特定の実施形態では、カチオン重合性成分は、オキセタン、たとえば、2個または2個超のオキセタン基を含有するオキセタンである。他の特定の実施形態では、カチオン重合性成分は、脂環式エポキシ、たとえば、2個または2個超のエポキシ基を有する脂環式エポキシである。
【0084】
[0084]一実施形態では、エポキシドは、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(Daicel Chemicalからセロキサイド(CELLOXIDE)TM 2021PとしてまたはDow Chemicalからサイラキュア(CYRACURE)TM UVR 6105として入手可能)、水素化ビスフェノールAエピクロロヒドリン系エポキシ樹脂(HexionからEPONEXTM 1510として入手可能)、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(HexionからHELOXYTM 107として入手可能)、ジシクロヘキシルジエポキシドとナノシリカとの混合物(NANOPOXTMとして入手可能)、およびそれらの任意の組合せである。
【0085】
[0085]以上に挙げたカチオン重合性化合物は、単独でまたはそれらの2種以上の組合せで使用可能である。
【0086】
[0086]液状放射線硬化性樹脂組成物は、任意の好適な量、たとえば、特定の実施形態では組成物の約95重量%までの量、特定の実施形態では組成物の約50重量%までの量、さらなる実施形態では組成物の約5〜約25重量%の量のカチオン重合性成分を含みうる。他の実施形態では、カチオン重合性成分の量は、全組成物の約10wt%〜約80wt%である。
【0087】
[0087]一実施形態によれば、液状放射線硬化性樹脂組成物の重合性成分は、フリーラジカル重合およびカチオン重合の両方により重合可能である。そのような重合性成分の例は、ビニルオキシ化合物、たとえば、ビス(4−ビニルオキシブチル)イソフタレート、トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート、およびそれらの組合せからなる群から選択されるものである。
【0088】
[0088]一実施形態によれば、液状放射線硬化性樹脂組成物は、カチオン開始官能基およびフリーラジカル開始官能基の両方を有する光開始剤である光開始系を含む。一実施形態によれば、液状放射線硬化性樹脂組成物は、カチオン光開始剤を含む。カチオン光開始剤は、光を照射すると光酸を生成する。それらは、照射するとブレンステッド(Broensted)酸またはルイス(Lewis)酸を生成する。
【0089】
[0089]カチオン光開始剤トリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートは、Bayer/Cibaから入手可能である。トリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートは、光硬化性組成物中に存在する唯一のカチオン光開始剤としてまたは他のカチオン光開始剤との組合せで使用可能である。一実施形態では、トリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートは、スルホニウムアンチモネート型光開始剤と組み合わせて使用される。
【0090】
[0090]一実施形態では、任意の好適なカチオン光開始剤、たとえば、オニウム塩、ハロニウム塩、ヨードシル塩、セレニウム塩、スルホニウム塩、スルホキソニウム塩、ジアゾニウム塩、メタロセン塩、イソキノリニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、トロピリウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、チオピリリウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、スルホニウムアンチモネート塩、フェロセン、ジ(シクロペンタジエニル鉄)アレーン塩化合物、シクロヘキセンオキシド化合物、そしてピリジニウム塩、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択されるものを使用することが可能である。オニウム塩、たとえば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、およびフェロセンは、熱に安定であるという利点を有する。したがって、いかなる残留する光開始剤も、照射光の除去後、硬化を持続することはない。カチオン光開始剤は、大気中に存在する酸素に敏感でないという利点を提供する。
【0091】
[0091]本発明に係る液状放射線硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種のカチオン光開始剤を含み、このカチオン光開始剤は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン系化合物、芳香族ホスホニウム塩、およびシラノールアルミニウム錯体、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される。一実施形態では、カチオン光開始剤は、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、およびメタロセン系化合物、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される。他の実施形態では、カチオン光開始剤は、トリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、およびメタロセン系化合物、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0092】
[0092]特定の実施形態では、カチオン光開始剤は、BF、AsF、SbF、PF、B(C、ペルフルオロアルキルスルホネート、ペルフルオロアルキルホスフェート、およびカルボランアニオンからなる群から選択されるアニオンを有する。
【0093】
[0093]一実施形態では、カチオン光開始剤は、少なくともSbF、PF、B(C、ペルフルオロアルキルスルホネート、ペルフルオロアルキルホスフェート、および(CH11Clからなる群から選択されるアニオンと共に、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、およびメタロセン系化合物からなる群から選択されるカチオンを有する。
【0094】
[0094]特定の実施形態では、カチオン光開始剤は、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(3−クロロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−メチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−ヒドロキシエチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(4−ヒドロキシエチルオキシベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(4−ヒドロキシエチルオキシベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(4−ヒドロキシエチルオキシベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−メトキシエトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(3−メトキシベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(3−メトキシカルボニルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(2−ヒドロキシメチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(4−メチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(4−)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(4−フルオロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(2−メトキシカルボニルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、およびビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される芳香族スルホニウム塩系カチオン光開始剤である。
【0095】
[0095]他の実施形態では、カチオン光開始剤は、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、および4メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される芳香族ヨードニウム塩系カチオン光開始剤である。
【0096】
[0096]特定の実施形態では、カチオン光開始剤は、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(−4ヒドロキシエチルオキシフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−クロロフェニル)スルホニウム、4−[4−(3−クロロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−[4−(2−クロロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4フルオロフェニル)スルホニウム、(4−チオフェノキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、S,S,S’,S’−テトラフェニルチオビス(4,1−フェニレン)ジスルホニウム、トリフェニルスルホニウム(クロロフェニル)、ジフェニルスルホニウム、クロロ[S−(フェニル)チアントレニウム]、S−(フェニル)チアントレニウム、ジフェニル−4−(4’−チオフェノキシ)チオフェノキシフェニルスルホニウム、フェニルジ(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、S−(4−チオフェノキシフェニル)チアントレニウム、および(チオジ−4,1−フェニレン)ビス[ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニウム、トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、[4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−[[2−[[[[3−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]オキシ]テトラデシル]オキシ]フェニル]ヨードニウム、ビス(4ドデシルフェニル)ヨードニウム、[4−(1−メチルエチル)フェニル](4−メチルフェニル)ヨードニウム、ならびにそれらの任意の組合せ、のテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩またはヘキサフルオロアンチモネート塩からなる群から選択される。
【0097】
[0097]例示的な実施形態では、液状放射線硬化性樹脂組成物は、トリアリールスルホニウムSbF、トリアリールスルホニウムボレート、トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジアリールヨードニウムボレート、ヨードニウム[4−(1−メチルエチル)フェニル](4−メチルフェニル)−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択されるカチオン光開始剤を含む。非求核性アニオンは、対イオンとして機能する。そのようなアニオンの例としては、BF、AsF、SbF、PF、B(C、ペルフルオロアルキルスルホネート、ペルフルオロアルキルホスフェート、およびカルボランアニオンたとえば(CH11Clが挙げられる。
【0098】
[0098]増感剤を用いずに300〜475nmとくに365nmのUV光で硬化させるのに有用なカチオン光開始剤の例としては、4−[4−(3−クロロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4−(3−クロロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0099】
[0099]いくつかの実施形態では、液状放射線硬化性樹脂組成物は、光増感剤を含むことが望ましい。「光増感剤」という用語は、光開始重合の速度の増加または重合が起こる波長のシフトのいずれかを行う任意の物質を参照すべく使用される(G.Odian,Principles of Polymerization,3rd Ed.,1991の教科書の222頁を参照されたい)。光増感剤の例としては、メタノン類、キサンテノン類、ピレンメタノール類、アントラセン類、ピレン、ペリレン、キノン類、キサントン類、チオキサントン類、ベンゾイルエステル類、ベンゾフェノン類、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択されるものが挙げられる。光増感剤の特定例としては、[4−[(4−メチルフェニル)チオ]フェニル]フェニル−メタノン、イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−ピレンメタノール、9−(ヒドロキシメチル)アントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブチルオキシアントラセン、9−アントラセンメタノールアセテート、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンおよび2−メチル−9,10−ジエトキシアントラセン、アントラセン、アントラキノン類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tertブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、チオキサントン類およびキサントン類、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、メチルベンゾイルホルメート、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0100】
[00100]そのほかに、300〜475nmの波長領域で発光する光源を用いて硬化を行う際、光増感剤を光開始剤と組み合わせることが有用である。好適な光増感剤の例としては、アントラキノン類、たとえば、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tertブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、および2−アミルアントラキノン、チオキサントン類およびキサントン類、たとえば、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、および1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、メチルベンゾイルホルメート(Ciba製のダロキュア(Darocur)MBF)、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート(Chitec製のChivacure OMB)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド(Chitec製のChivacure BMS)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(Chitec製のChivacure EMK)が挙げられる。
【0101】
[00101]一実施形態では、光増感剤は、フルオロン化合物、たとえば、5,7−ジヨード−3−ブトキシ−6−フルオロン、5,7−ジヨード−3−ヒドロキシ−6−フルオロン、9−シアノ−5,7−ジヨード−3−ヒドロキシ−6−フルオロンであるか、または光増感剤は、
[00102]
【化1】



およびそれらの任意の組合せである。
【0102】
[00103]液状放射線硬化性樹脂組成物は、任意の好適な量、たとえば、特定の実施形態では組成物の約10重量%までの量、特定の実施形態では組成物の約5重量%までの量、さらなる実施形態では組成物の約0.05〜約2重量%の量の光増感剤を含みうる。
【0103】
[00104]光増感剤を利用する場合、より短い波長で吸収する他の光開始剤を使用することが可能である。そのような光開始剤の例としては、ベンゾフェノン類、たとえば、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、およびジメトキシベンゾフェノン、ならびに1−ヒドロキシフェニルケトン類、たとえば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、および4−イソプロピルフェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトン、ベンジルジメチルケタール、ならびにオリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン](Lamberti製のエスカキュアKIP150)が挙げられる。光増感剤と組み合わせて使用するときのこれらの光開始剤は、約100nm〜約300nmの波長で発光する光源と共に使用するのに好適である。
【0104】
[00105]可視光を発する光源もまた公知である。約400nm超たとえば約475nm〜約900nmの波長で発光する光源では、好適な光開始剤の例としては、カンホルキノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(Chitec製のChivacure EMK)、4,4’−ビス(N,N’ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Ciba製のイルガキュア819またはBAPO)、メタロセン類、たとえば、ビス(η5−2−4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタン(Ciba製のイルガキュア784)、ならびにSpectra Group Limited,Inc.製の可視光開始剤、たとえば、H−Nu 470、H−Nu−535、H−Nu−635、H−Nu−Blue−640、およびH−Nu−Blue−660が挙げられる。が挙げられる。
【0105】
[00106]カチオン光開始剤の活性を改良するために光増感剤または共開始剤を使用してもよい。それは、光開始重合の速度の増加または重合が起こる波長のシフトのいずれかのためである。以上に挙げたカチオン光開始剤と組み合わせて使用される増感剤は、とくに限定されるものではない。ヘテロ環式および縮合環式の芳香族炭化水素、有機染料、および芳香族ケトンをはじめとするさまざまな化合物を光増感剤として使用することが可能である。増感剤の例としては、J.V.Crivello in Advances in Polymer Science,62,1(1984)、およびJ.V.Crivello & K.Dietliker,“Photoinitiators for Cationic Polymerization”in Chemistry & technology of UV & EB formulation for coatings,inks & paints,Volume III,Photoinitiators for free radical and cationic polymerization,by K.Dietliker;[Ed.by P.K.T.Oldring],SITA Technology Ltd,London,1991に開示されている化合物が挙げられる。特定例としては、ポリ芳香族炭化水素およびそれらの誘導体、アントラセン、ピレン、ペリレンおよびそれらの誘導体、たとえば、チオキサントン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、アクリジンオレンジ、およびベンゾフラビンが挙げられる。
【0106】
[00107]好適である多数の公知のかつ技術的に実証済みのカチオン光開始剤が存在する。たとえば、弱求核性のアニオンを有するオニウム塩が挙げられる。例としては、欧州特許出願公開第153904号明細書および国際公開第98/28663号パンフレットに記載されるようなハロニウム塩、ヨードシル塩、またはスルホニウム塩、欧州特許出願公開第35969号明細書、同第44274号明細書、同第54509号明細書、および同第164314号明細書などに記載されるようなスルホキソニウム塩、または米国特許第3,708,296号明細書および同第5,002,856号明細書に記載されるようなジアゾニウム塩が挙げられる。これらの開示は8件ともすべて、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする。他のカチオン光開始剤としては、欧州特許出願公開第94914号明細書および同第94915号明細書(それらの全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)などに記載されるようなメタロセン塩が挙げられる。
【0107】
[00108]他の現用のオニウム塩開始剤および/またはメタロセン塩に関する概説は、“UV Curing,Science and Technology”,(Editor S.P.Pappas,Technology Marketing Corp.,642 Westover Road,Stamford,Conn.,U.S.A.)または“Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings,Inks & Paints”,Vol.3(edited by P.K.T.Oldring)に見いだしうる。
【0108】
[00109]好適なフェロセン型カチオン光開始剤としては、たとえば、中国特許第101190931号明細書に開示される式(I):
[00110]
【化2】



[00111]
〔式中、アニオンMXnは、BF4、PF6、SbF6、AsF6、(C6F5)4B、ClO4、CF3SO3、FSO3、CH3SO3、C4F9SO3から選択され、かつArは、縮合環式または多環式のアレーンである〕
で示されるジ(シクロペンタジエニル鉄)アレーン塩化合物が挙げられる。
【0109】
[00112]
他の例示的なフェロセン型カチオン光開始剤としては、たとえば、(η6−カルバゾール)(η5−シクロペンタ−ジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート塩、とくに[シクロペンタジエン−Fe−N−ブチルカルバゾール]ヘキサフルオロ−ホスフェート(C4−CFS PF6)および[シクロペンタジエン−Fe−N−オクチル−カルバゾール]ヘキサフルオロホスフェート(C8−CFS PF6)(それぞれC4およびC8アルキル鎖を窒素原子上に有する)(Polymer Eng.& Science(2009),49(3),613−618を参照されたい)、フェロセニウムジカチオン塩、たとえば、Chinese J.Chem.Engnrng(2008),16(5),819−822およびPolymer Bulltn(2005),53(5−6),323−331に開示されるビフェニルビス[(π−シクロペンタジエニル)鉄]ヘキサフルオロホスフェート([ビス(Cp−Fe)−ビフェニル](PF6)2)および直線状シクロペンタジエン−鉄−ビフェニルヘキサフルオロホスフェート([Cp−Fe−ビフェニル]+PF6−)、J Photochem.& Photobiology,A:Chemistry(2007),187(2−3),389−394およびPolymer Intnl(2005),54(9),1251−1255に開示されるシクロペンタジエニル−Fe−カルバゾールヘキサフルオロホスフェート([Cp−Fe−カルバゾール]+PF6−)、シクロペンタジエニル−Fe−n−エチルカルバゾールヘキサフルオロホスフェート([Cp−Fen−エチルカルバゾール]+PF6−)、およびシクロペンタジエニル−Fe−アミノナフタレンヘキサフルオロホスフェート([Cp−Fe−アミノナフタレン]+PF6−)、アルコキシ置換型フェロセニウム塩、たとえば、Chinese J.of Chem Engnrng(2006),14(6),806−809に開示される[シクロペンタジエン(cyclopendadien)−Fe−アニソール]PF6、[シクロペンタジエン(cyclopendadien)−Fe−アニソール]BF4、[シクロペンタジエン(cyclopendadien)−Fe−ジフェニルエーテル]PF6、[シクロペンタジエン(cyclo−pendadien)−Fe−ジフェニルエーテル]BF4、および[シクロペンタジエン(cyclopendadien)−Fe−ジエトキシ−ベンゼン]PF6)、シクロペンタジエン−鉄−アレーンテトラフルオロボレート、たとえば、Imaging Science J(2003),51(4),247−253に開示されるシクロペンタジエン−鉄−ナフタレンテトラフルオロボレート([Cp−Fe−Naph]BF4)塩、Ganguang Kexue Yu Guang Huaxue(2003),21(1),46−52に開示されるフェロセニルテトラフルオロボレート([Cp−Fe−CP]BF4)、Ganguang Kexue Yu Guang Huaxue(2002),20(3),177−184に開示される[CpFe](η6−tol)BF4、Int.J of Photoenergy(2009),Article ID 981065に開示されるフェロセニウム塩(η6−α−ナフトキシベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート(NOFC−1)および(η6−β−ナフトキシベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート(NOFC−2)、Progress in Organic Coatings(2009),65(2),251−256に開示される(η6−ジフェニル−メタン)(η5−シクロペンタ)鉄ヘキサフルオロホスフェートおよび(η6−ベンゾフェノン)(η5−シクロペンタ−ジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、Chem Comm (1999),(17),1631−1632に開示される[CpFe](η6−イソプロピル−ベンゼン)PF6、
ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0110】
[00113]好適なオニウム型カチオン光開始剤としては、たとえば、特開2006−151852号公報に開示されるヨードニウム塩およびスルホニウム塩が挙げられる。他の例示的なオニウム型光開始剤としては、たとえば、次のようなオニウム塩、すなわち、米国特許第5,639,413号明細書、同第5,705,116号明細書、同第5,494,618号明細書、同第6,593,388号明細書、およびChemistry of Materials(2002),14(11),4858−4866に開示される、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリール−ジアゾニウム塩、フェロセニウム塩、ジアリールスルホキソニウム塩、ジアリール−ヨードキソニウム塩、トリアリール−スルホキソニウム塩、ジアルキルフェナシル−スルホニウム塩、ジアルキルヒドロキシ−フェニルスルホニウム塩、フェナシル−トリアリールホスホニウム塩、およびヘテロ環式窒素含有化合物のフェナシル塩、米国特許出願公開第2008/0292993号明細書に開示される、芳香族スルホニウム塩またはヨードニウム塩、米国特許出願公開第2008/260960号明細書およびJ.Poly Sci,Part A(2005),43(21),5217に開示される、ジアリール、トリアリール、またはジアルキルフェナシルスルホニウム塩、Macromolecules(2008),41(10),3468−3471に開示される、ジフェニル−ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Ph2I+PF6−)、それほど毒性でないアニオン(次のアニオン、すなわち、Nettowaku Porima(2007),28(3),101−108に開示される、B(C6F5)4−、Ga(C6F5)4−、およびペルフルオロアルキルフルオロホスフェートPFnRf(6−n)−が挙げられる)を用いてSbF6−などを置き換えたオニウム塩を用いたオニウム塩、Eur Polymer J(2002),38(9),1845−1850に開示される、構造中にベンゾフェノン部分を含有する光活性アリルアンモニウム塩(BPEA)、Polymer (1997),38(7),1719−1723に開示される、1−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)テトラヒドロチオフェニウムヘキサフルオロアンチモネート、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0111】
[00114]例示的なヨードニウム型カチオン光開始剤としては、たとえば、ヘキサフルオロ−ホスフェートなどのような対イオンを有するジアリールヨードニウム塩、たとえば、米国特許出願公開第2006/041032号明細書に開示される(4−n−ペンタデシルオキシ−フェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなど、米国特許第4394403号明細書およびMacromolecules(2008),41(2),295−297に開示されるジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、Polymer(1993),34(2),426−8に開示されるジフェニルヨードニウムイオン、Yingyong Huaxue(1990),7(3),54−56に開示される、ホウ素テトラフルオリドとのジフェニルヨードニウム塩(Ph2I+ BF4−)、Nuclear Inst.& Methods in Physics Res,B(2007),264(2),318−322に開示されるSR−1012(ジアリールジヨードニウム塩)、J Polymr Sci,Polymr Chem Edition(1978),16(10),2441−2451に開示されるジアリールヨードニウム塩、たとえば、4,4’−ジ−tert−ブチルジフェニル−ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、J Polymr Sci,Poly Sympos(1976),56,383−95に開示される錯体金属ハロゲン化物アニオン含有ジアリールヨードニウム塩、たとえば、ジフェニルヨードニウムフルオロボレート、
ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0112】
[00115]例示的なスルホニウム型カチオン光開始剤としては、たとえば、特開2007−126612号公報に開示されるUVI6992(スルホニウム塩)、日本特許第10101718号公報に開示される式:
[00116]
【化3】



[00117]〔式中、R1〜2=F、R3=イソプロピル、R4=H、X=PF6〕
で示される化合物、米国特許第6,054,501号明細書に開示されるチオキサントン系スルホニウム塩、たとえば、式:
[00118]
【化4】



で示されるもの、
[00119]米国特許第5,159,088号明細書に開示される型R3−xS+R3x A−〔式中、A−は、AsF6−などの非求核性アニオンであり、かつR3は、以下に示されるフェニル基:
[00120]
【化5】



でありうる〕の(アシルオキシフェニル)スルホニウム塩、
[00121]米国特許第4,760,013号明細書に開示される9,10−ジチオフェノキシアントラセンアルキルジアリールスルホニウム塩、たとえば、エチルフェニル(9−チオフェノキシ−アントラセニル−10)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートなど、米国特許第4,245,029号明細書に開示されるトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩、J Poly Sci,Part A(2003),41(16),2570−2587に開示されるS,S−ジメチル−S−(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)スルホニウム塩、J Photochem & Photobiology,A:Chemistry(2003),159(2),161−171に開示されるアントラセン結合スルホニウム塩、J Photopolymer Science & Tech (2000),13(1),117−118およびJ Poly Science,Part A(2008),46(11),3820−29に開示されるトリアリールスルホニウム塩、J Macromol Sci,Part A(2006),43(9),1339−1353に開示されるS−アリール−S,S−シクロアルキルスルホニウム塩、UV & EB Tech Expo & Conf,May 2−5,2004,55−69およびACS Symp Ser(2003),847,219−230に開示されるジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ACS 224th Natnl Meeting,August 18−22,2002,POLY−726に開示されるジアルキル(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム塩およびその異性体ジアルキル(2−ヒドロキシフェニル)スルホニウム塩、ドデシル(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートおよびドデシル以外の類似のアルキル類似体、ACS Polymer Preprints(2002),43(2),918−919に開示される、テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)チオフェニウムヘキサフルオロホスフェートおよびテトラヒドロ−1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)チオフェニウムヘキサフルオロホスフェート、J Polymr Sci,Part A(2000),38(9),1433−1442に開示される一般構造Ar’S+CH3(C12H25)SbF6−〔式中、Ar’は、フェナシル(I)、2−インダノニル(II)、4−メトキシフェナシル(III)、2−ナフトイルメチル(IV)、1−アントロイルメチル(V)、または1−ピレノイルメチル(VI)である〕を有する光開始剤、J Polymr Sci,Part A(1996),34(16),3231−3253に開示される、BF4−、AsF6−、PF6−、およびSbF6−などの錯体金属ハロゲン化物アニオンとのトリアリールスルホニウムAr3S+MXn−塩、Macromolecules(1981),14(5),1141−1147に開示される、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩およびジアルキル(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム塩、J.Polymr.Sci,Polymr Chem Edition(1979),17(4),977−99に開示される、トリアリールスルホニウム塩R2R1S+MFn−(R、R1=Phまたは置換フェニル、M=B、As、P、n=4または6)および式(I):
[00122]
【化6】



で示されるスルホニウム塩、
[00123]特開2000−239648号公報に開示される、PF6−アニオンなどとの芳香族スルホニウム塩、たとえば、UVI6970、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0113】
[00124]好適なピリジニウムが型カチオン光開始剤としては、たとえば、Turkish J of Chemistry(1993),17(1),44−49に開示されるN−エトキシ2−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(EMP+ PF6−)、Polymer (1994),35(11),2428−31に開示される、ピリジニウム塩と芳香族電子供与体(ヘキサメチル−ベンゼンおよび1,2,4−トリメチオキシ−ベンゼン)との電荷移動錯体、Macromolecular Rapid Comm (2008),29(11),892−896に開示されるN,N’−ジエトキシ−4,4’−アゾビス(ピリジニウム)ヘキサフルオロホスフェート(DEAP)、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0114】
[00125]他の好適なカチオン光開始剤としては、たとえば、Macromolecules (2008),41(18),6714−6718に開示される、オニウム塩の存在下のアシルゲルマン系光開始剤、たとえば、ベンゾイルトリメチルゲルマン(BTG)およびオニウム塩、たとえば、ジフェニル−ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Ph2I+PF6−)またはN−エトキシ−2−メチル−ピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(EMP+PF6−)、Macromolecular Symposia(2006),240,186−193に開示されるDi−Phジセレニド(DPDS)、Macromol Rapid Comm(2002),23(9),567−570に開示されるN−フェナシル−N,N−ジメチル−アニリニウムヘキサフルオロアンチモネート(PDA+SbF6−)、Designed Monomers and Polymers(2007),10(4),327−345に開示される、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロ−アンチモネート(IA)とトリルクミル−ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(IB)との、およびクメンシクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートとIAおよびIBとの、相乗ブレンド、ACS Symp Series(2003),847,202−212に開示される、錯アニオンとのジアゾニウム塩、たとえば、4−(ヘキシルオキシ)置換ジアゾニウム塩、J Poly Sci,Part A(2002),40(20),3465−3480に開示される5−アリールチアントレニウム塩、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0115】
[00126]他の好適なカチオン光開始剤としては、たとえば、長波長UVを吸収すべく変性されたトリアリールスルホニウムボレートなどのトリアリールスルホニウム塩が挙げられる。そのような変性ボレートの具体例としては、たとえば、Denkaから入手可能なSP−300、Ciba/BASFから入手可能なトリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(GSID4480−1またはイルガキュアPAG−290)、ならびに国際公開第1999/028295号パンフレット、国際公開第2004/029037号パンフレット、国際公開第2009/057600号パンフレット、米国特許第6368769号明細書、国際公開第2009/047105号パンフレット、国際公開第2009/047151号パンフレット、国際公開第2009/047152号パンフレット、米国特許第20090208872号明細書、および米国特許第7611817号明細書に開示される光開始剤が挙げられる。
【0116】
好ましいカチオン光開始剤としては、ビス[4−ジフェニルスルホニウムフェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(ChitecからChivacure1176として入手可能)、トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ciba/BASF製のGSID4480−1)、ヨードニウム,[4−(1−メチルエチル)フェニル](4−メチルフェニル)−,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Rhodiaからロードルシル(Rhodorsil)2074として入手可能)、4−[4−(2−クロロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(SP−172として)およびSP−300(両方ともAdekaから入手可能)、の混合物が挙げられる。
【0117】
[00128]液状放射線硬化性樹脂組成物は、任意の好適な量、たとえば、特定の実施形態では組成物の約50重量%までの量、特定の実施形態では組成物の約20重量%までの量、さらなる実施形態では組成物の約1〜約10重量%の量のカチオン光開始剤を含みうる。さらなる実施形態では、カチオン光開始剤の量は、全組成物の約0.25wt%〜約8wt%、より好ましくは約1wt%〜約6wt%である。一実施形態では、以上の範囲は、エポキシモノマーと共に使用するのにとくに好適である。
【0118】
[00129]一実施形態によれば、液状放射線硬化性樹脂組成物はさらに、連鎖移動剤、とくにカチオン性モノマー用の連鎖移動剤を含みうる。連鎖移動剤は、活性水素を含有する官能基を有する。活性水素含有する官能基の例としては、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、スルホ基、およびチオール基が挙げられる。一実施形態では、連鎖移動剤は、1つのタイプの重合すなわちカチオン重合またはフリーラジカル重合の伝搬を終了させ、異なるタイプの重合すなわちフリーラジカル重合またはカチオン重合を開始させる。一実施形態によれば、異なるモノマーへの連鎖移動は、好ましい機構である。いくつかの実施形態では、連鎖移動は、分岐状分子または架橋分子を生成する傾向がある。したがって、連鎖移動は、硬化された樹脂組成物の分子量分布、架橋密度、熱的性質、および/または機械的性質の制御方法を提供する。
【0119】
[00130]任意の好適な連鎖移動剤を利用することが可能である。たとえば、カチオン重合性成分用の連鎖移動剤は、ヒドロキシル含有化合物、たとえば、2個または2個超のヒドロキシル基を含有する化合物である。一実施形態では、連鎖移動剤は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ヒドロキシル基を有するエトキシル化またはプロポキシル化脂肪族または芳香族化合物、デンドリティックポリオール、ハイパーブランチポリオールからなる群から選択される。ポリエーテルポリオールの例は、式[(CH2)O]〔式中、nは1〜6が可能であり、かつmは1〜100が可能である〕で示されるアルコキシエーテル基を含むポリエーテルポリオールである。
【0120】
[00131]連鎖移動剤の特定例は、TERATHANETMなどのポリテトラヒドロフランである。
【0121】
[00132]液状放射線硬化性樹脂組成物は、任意の好適な量、たとえば、特定の実施形態では組成物の約50重量%までの量、特定の実施形態では組成物の約30重量%までの量、特定の実施形態では組成物の約10〜約20重量%の量の連鎖移動剤を含みうる。
【0122】
[00133]本発明に係る液状放射線硬化性樹脂組成物はさらに、気泡崩壊剤、酸化防止剤、界面活性剤、酸捕捉剤、顔料、染料、増粘剤、遅炎剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、樹脂粒子、コアシェル粒子耐衝撃性改質剤、可溶性ポリマーおよびブロックポリマー、8ナノメートル〜約50ミクロンの範囲内のサイズの有機、無機、または有機無機ハイブリッドの充填剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を含みうる。
【0123】
[00134]安定剤は、多くの場合、粘度上昇、たとえば、ソリッドイメージングプロセスでの使用時の粘度上昇を防止するために組成物に添加される。一実施形態では、安定剤としては、米国特許第5,665,792号明細書(その全開示内容が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載のものが挙げられる。そのような安定剤は、通常、第IA族および第IIA族の金属の炭化水素カルボン酸塩である。他の実施形態では、これら塩は、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、および炭酸ルビジウムである。本発明に係る配合物では炭酸ルビジウムが好適であり、推奨量は、組成物の0.0015〜0.005重量%の間で変化する。他の選択肢安定剤としては、ポリビニルピロリドンおよびポリアクリロニトリルが挙げられる。他の利用可能な添加剤としては、染料、顔料、充填剤(たとえば、シリカ粒子(好ましくは円柱状または球状のシリカ粒子)、タルク、ガラス粉末、アルミナ、アルミナ水和物、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩鉱物、珪藻土、ケイ砂、シリカ粉末、酸化チタン、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末、亜鉛粉末、銅粉末、鉛粉末、金粉末、銀ダスト、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカー、炭素ウィスカー、サファイアウィスカー、ベリリヤウィスカー、炭化ホウ素ウィスカー、炭化ケイ素ウィスカー、窒化珪素ウィスカー、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、金属酸化物およびチタン酸カリウムウィスカー)、酸化防止剤、湿潤剤、フリーラジカル光開始剤用光増感剤、連鎖移動剤、均展剤、脱泡剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0124】
[00135]本発明の一実施形態によれば、液状放射線硬化性樹脂組成物は、開始剤および/または重合性成分の適切な比を選択することにより所望の感光性が得られるように重合性成分を含有する。成分と開始剤との比は、液状放射線硬化性樹脂組成物または硬化された物品の、感光性、硬化速度、硬化度、架橋密度、熱的性質(たとえばTg)、および/または機械的性質(たとえば、引張り強度、貯蔵弾性率、損失弾性率に影響を及ぼす。
【0125】
[00136]したがって、一実施形態では、カチオン光開始剤とフリーラジカル光開始剤との重量比(CPI/RPI)は、約4.0未満、好ましくは約0.1〜約2.0、より好ましくは約0.2〜約1.0である。
【0126】
[00137]一実施形態によれば、液状放射線硬化性樹脂組成物は、カチオン重合性成分とフリーラジカル重合性成分との重量比(CPC/RPC)が約7.0未満または約5.0未満、たとえば約0.5〜約2.0、より好ましくは約1.0〜約1.5である。
【0127】
[00138]特許請求された本発明の第2の態様は、物品を形成するために使用された液状放射線硬化性樹脂が約0.005wt%〜約5wt%の少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤を含む、積層造形プロセスを用いて作製された少なくとも1つの選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する三次元物品である。
【0128】
[00139]特許請求された本発明の第3の態様は、液状放射線硬化性樹脂組成物が少なくとも2種の感熱性視覚効果開始剤を含む、液状放射線硬化性樹脂である。
【0129】
[00140]1種超の感熱性視覚効果開始剤を液状放射線硬化性樹脂中に組み込むことにより、さまざまなレベルの色および/または透明度を達成することが可能である。一実施形態では、1種超の感熱性視覚効果開始剤を液状放射線硬化性樹脂中に組み込むことが可能であり、この場合、1種超の感熱性視覚効果開始剤はすべて、色および/または透明度の一意的な組合せを得るために同一の活性化温度およびロック温度を有する。
【0130】
[00141]各感熱性視覚効果開始剤が活性化に対する異なる温度要件を有する場合、1種超の感熱性視覚効果開始剤を液状放射線硬化性樹脂中に組み込んで、硬化時に局所温度を選択的に変化させることにより、三次元物品に複数の色または透明度をもたせることが可能である。たとえば、3つの異なる色、透明度、またはいくつかの組合せを有する物品は、2種の感熱性視覚効果開始剤を有し、たとえば3つの異なる線量の光を照射することにより、硬化時に3つの異なる局所温度に暴露されるであろう。第1の線量は、いずれの成分をも活性化させずに物品を硬化させるために使用されるであろう。第1の線量よりも高い第2の線量は、第2の線量の光に暴露された領域で感熱性視覚効果開始剤の1つを活性化させるために使用されるであろう。第1の線量および第2の線量よりも高い第3の線量は、第3の線量の光に暴露された領域で両方の感熱性視覚効果開始剤を活性化させるであろう。したがって、いくつかの領域では複数の異なる色レベルおよび/または透明度レベルを有しかつ他の領域では場合により透明かつ実質的に無色である物品が作製されるであろう。液状放射線硬化性樹脂に添加される感熱性視覚効果開始剤の量および液状放射線硬化性樹脂に照射するために使用されるさまざまな線量の光の量は、樹脂の温度を適切に制御することが可能であるかぎり制限されない。
【0131】
[00142] 特許請求された本発明の第4の態様は、以下の工程、すなわち、
光を用いて液状放射線硬化性樹脂の層を硬化させることにより硬化された固体高分子層を形成する工程と、
工程(a)から得られる硬化された固体高分子層、すでに硬化された固体高分子層、または液状放射線硬化性樹脂の層の選択された領域に工程(a)で使用したよりも高線量の光を照射することにより、より高線量の光が照射された領域の色除去および/または透明度変化を行う工程と、
選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する所望の三次元物品が形成されるまで、必要に応じて、すでに硬化された固体高分子層または液状放射線硬化性樹脂の層に対して工程(a)および(b)を反復する工程と、
を含み、
工程(a)および(b)のそれぞれの光の波長が同一であり、かつ工程(b)が工程(a)の前、その時、またはその後に実施可能である、
液状放射線硬化性樹脂から選択的な色および/または透明度の領域を有する三次元物品を形成する方法である。
【0132】
[00143]この方法では、樹脂は、工程(a)の実施後、第1のレベルの色および/または透明度を有し、工程(b)の実施後、異なるレベルの色および/または透明度を有する。工程(a)および(b)は、逐次または同時のいずれかで行うことが可能である。工程(c)に従って工程(a)および(b)を反復する回数は、高分子層の厚さおよび形成される三次元物品のサイズに依存する。高分子層は、すべて同一の深さや厚さである必要はない。
【0133】
[00144]工程(b)を行った場合、光が照射された領域の色および/または透明度は変化するので、選択的に着色されたおよび/または透明な物品が形成される。特定の層では、その層のいずれかの部分の色および/または透明度を変化させないようにするために、工程(b)を省略することが可能である。また、特定の層では、その層のいずれかの部分のみの色および/または透明度を変化させるために、工程(a)を省略することが可能である。
【0134】
[00145]工程(b)で使用される光の線量は、工程(a)で使用される光の線量よりも高い。一実施形態では、工程(b)で使用される光の線量は、工程(a)で使用される線量の少なくとも2倍である。より高い光線量は、たとえば、組成物の層に光を照射する時間を増加することにより、達成可能である。より高い光線量はまた、組成物の層に照射するために使用される光の強度を増大させることにより達成可能である。積層造形により三次元物品の作製を行う当業者であれば、光源の強度を変化させてより高線量の光を層に照射するためにどのように機械を調整するかはわかる。
【0135】
[00146]一実施形態では、単一の線量の光のみを用いて少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤を含む液状放射線硬化性樹脂を硬化させることにより液状放射線硬化性樹脂の全部で色および/もしくは透明度を変化させるかまたは液状放射線硬化性樹脂のそうした変化をまったくおこなわない。特許請求された本発明の第4の態様に追加の工程を加えて、より高線量の光を用いることにより、追加の感熱性視覚効果開始剤を活性化されるよう
【0136】
[00147]液状放射線硬化性樹脂の硬化に使用される光の波長は、好ましくは約100nm超かつ約900nm未満である。より好ましくは、光の波長は、約200nm〜約700nmである。より好ましくは、光の波長は、約250nm〜約450nm、より好ましくは300〜415nmである。
【0137】
[00148]一実施形態では、特許請求された本発明の第4の態様で使用される液状放射線硬化性樹脂は、少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤を含む。他の実施形態では、特許請求された本発明の第4の態様で使用される液状放射線硬化性樹脂は、少なくとも1種のサーモクロミック成分を含む。一実施形態では、特許請求された本発明の第4の態様で使用される液状放射線硬化性樹脂は、少なくとも1種の感熱性透明度改質剤を含む。
【0138】
[00149]他の実施形態では、工程(b)または工程(c)で形成された硬化された固体高分子層を過剰暴露する追加の工程が行われる。硬化された固体高分子層を過剰暴露すると、層はいくらか色焼けを起こし、硬化された固体高分子層の色または色調のさらなる変化が起こるであろう。積層造形機を操作する当業者であれば、硬化された固体高分子層の色調または色を操作するために硬化された固体高分子層をどのように過剰暴露するかはわかる。
【0139】
[00150]いくつかの実施形態では、液状放射線硬化性樹脂の硬化に使用される光源は、He−Cdレーザーやアルゴンイオンレーザーなどのレーザーである。そのようなレーザーは、市販の光造形機ではよく見受けられ、当技術分野で公知である。他の実施形態では、光源は発光ダイオード(LED)である。他の実施形態では、光源はランプである。そのほかのさらなる実施形態では、光は、DMD(ディジタルマイクロミラーデバイス)チップまたはLCDディスプレイから形成される像を用いて液状放射線硬化性樹脂に供給される。単一の光源または複数の光源により少なくとも2つの強度を生成することが可能である。一実施形態では、単一の光源が使用される。他の実施形態では、放射線硬化性樹脂の特定の領域に供給される光の強度を増加するために、第1の光源と組み合わせて第2の光源が使用される。
【0140】
[00151]重合後、硬化された三次元物品のいくつかの領域で、色または透明度の変化が不十分である可能性がある。これは、硬化時に温度を局所制御することがより困難な部分の縁で起こる可能性が最も高い。液状放射線硬化性樹脂の硬化後、色および/または透明度を変化させるために、硬化された三次元物品をそれらの領域で局所加熱することが可能である。そのような局所加熱は、ヒートガンや小型トーチなどのように局所加熱を提供可能な任意の熱源を用いて達成可能である。
【0141】
[00152]特許請求された本発明の第5の態様は、選択的に着色されたおよび/または透明な領域の着色および/または透明度が液状放射線硬化性樹脂の温度の選択的制御により生成される、液状放射線硬化性樹脂から作製される選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する三次元物品の形成方法である。
【0142】
[00153]一実施形態では、特許請求された本発明の第5の態様で使用される液状放射線硬化性樹脂は、少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤を含み、他の実施形態では、特許請求された本発明の第5の態様で使用される液状放射線硬化性樹脂は、少なくとも1種のサーモクロミック成分を含む。一実施形態では、特許請求された本発明の第5の態様で使用される液状放射線硬化性樹脂は、少なくとも1種の感熱性透明度改質剤を含む。
【0143】
[00154]特許請求された本発明の第6の態様は、周囲温度で蛍光灯に30日間暴露したとき、蛍光灯への暴露の初日に測定されたΔEの50%以内に維持された、蛍光灯への暴露期間全体を通じて測定されたΔEが達成され、好ましくは、蛍光灯への暴露を介して測定されたΔEが、蛍光灯への暴露の初日に測定されたΔEの30%以内に維持され、より好ましくは、蛍光灯への暴露を介して測定されたΔEが、蛍光灯への暴露の初日に測定されたΔEの15%以内に維持され、さらにより好ましくは、蛍光灯への暴露を介して測定されたΔEが、蛍光灯への暴露の初日に測定されたΔEの10%以内に維持される、積層造形プロセスを介して作製された着色部分および無着色部分を有する三次元物品である。
【0144】
[00155]特許請求された本発明の第7の態様は、以下の工程、すなわち、
a.少なくとも2つの異なる線量の光を用いて液状放射線硬化性樹脂の層を選択的に硬化させることにより選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する硬化された固体層を形成する工程と、
b.三次元物品を形成するために工程(a)から形成された少なくとも2つの硬化された固体層を並置する工程と、
を含む、液状放射線硬化性樹脂から選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する三次元物品を形成する方法である。
【0145】
[00156]特許請求された本発明の第8の態様は、0.005wt%〜5wt%の少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤、好ましくは0.005wt%〜3wt.%、より好ましくは0.005wt%〜2.5wt.%、さらにより好ましくは0.005wt%〜1wt%、さらにより好ましくは0.005wt%〜0.5wt%の少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤を含む、照射すると固体状に硬化可能な液状放射線硬化性樹脂組成物である。
【0146】
[00157]以下の実施例により本発明をさらに説明するが、当然ながら、その範囲をなんら限定するものとみなしてはならない。
【0147】
[実施例]
[00158]いくつかの実施例の組成物は、0.3wt%のThermolock(登録商標)79s Pink to Clearを市販のSOMOS(登録商標)WaterClear(登録商標)Ultra10122液状放射線硬化性樹脂に添加し、次いで、一体化されるまでミキサーで約15分間混合することにより作製される。追加の比較例の組成物は、他の成分をなんら添加することなく、Huntsman Advanced Materialsから入手可能な市販のRenshape(登録商標)SL Y−C9300液状放射線硬化性樹脂を用いて作製される。三次元物品はすべて、これらの試験では保護クリアコートでコーティングしなかった。
【0148】
[00159]サイズ3.0in×0.25in×1.5in(7.62cm×0.635cm×3.81cm)の矩体部片を形成する。この部片の半分(1.5in×0.25in×1.5in、すなわち、3.81cm×0.635cm×3.81cm)は、着色すべく選択され、残りの半分は、無色にすべく選択される。この部片は、Coherent AVIA 355−1800 Solid State Laserを用いて構築される。スポット径は、y方向に0.0277cm、x方向に0.0245cmである。周波数を80kHzに設定してその部分で91mWのレーザーパワーを与えるようにする。使用した光造形機は、1990年製造のデュポン(DuPont)製の実験用Solid State Imaging機である。Soliformソフトウェアを用いて部片の設計および構築を行う。スライス層0.007インチ(0.1778mm)、係合(engagement)3ミル、走査間隔0.001インチを用いて、線幅を変化させて(走査速度の変化)、各部分が受ける暴露を変化させることにより、部片を構築する。線幅68(走査速度725.6cm/secに対応する)を用いて桃色部分を形成する。線幅が線幅144(走査速度437.2cm/sec)または線幅184(走査速度343.2cm/sec)のいずれかである場合、無色の部分が形成される。熱を散逸するために層間で40秒間の浸漬待ち時間を用いる。この機械での樹脂の温度は、外部加熱器により制御可能である。32±4℃の樹脂バット温度を用いて部片を作製した。イソプロパノールを用いて部片を洗浄する。
【0149】
[00160]Huntsman Advanced Materialsから入手可能な市販のRenshape(登録商標)SL Y−C9300材料を用いて、類似の寸法の比較例の部片を形成する。SLA−5000機を用いてこの部片を構築する。Renshape(登録商標)SLY−C 9300部片にはクリアコートを添加しない。この部片は、非常に大きなサグおよびカールを示す。適正形状を得るために、粒度600番のサンドペーパーを用いて部片をウェットサンダー処理し、続いて、粒度1000番、次いで、粒度2000番でペーパーサンダー処理する。サンダー処理に続いて、Novis 1バフ車で処理する。実施例の組成をwt%単位で以下の表1に示す。CEは、本発明の実施例とみなされない比較例を意味する。
【0150】
【表1】



【0151】
[透過度、ヘイズ、および透明度]
[00161]透過度、ヘイズ、および透明度の測定値は、いくつかのサンプルでBYK−Gardner haze−gard plus(C光源を用いた0°拡散ジオメトリー)を用いて得られる。
透過度は、入射光に対する透過光の比であり、サンプルの吸収性および反射性により影響を受ける。ヘイズは、通過時に入射ビームから平均で2.5度超外れる光のパーセントとしてASTM D1003により定義される。透明度は狭角散乱光である。測定器および方法に関する追加情報は、QC Solutions for Coatings and Plastics 2005−2006,(著作権)2004 BYK−Gardner Instruments(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に見いだしうる。
試験結果を表2に示す。透過、ヘイズ、または透明度に関する各報告値は、ランダムに選択された5つサンプル領域から得られた5つの読みを平均した結果である。透明部分のための理想的な結果は低いヘイズ値および高い透明度値である。着色部分の理想的な結果は、高いヘイズ値および低い透明度値である。
【0152】
【表2】



【0153】
色安定性
[00162]色の測定は、彩度計を用いて実施可能である。彩度計は、不透明な物品もしくは樹脂または透明もしくは半透明な物品もしくは樹脂のいずれかを測定するために使用可能である。
物品または樹脂が不透明である場合、物品または樹脂の色は、彩度計を用いて色を直接測定することにより使用可能である。しかしながら、物品または樹脂が透明または半透明である場合、測色は白色硫酸バリウムタイルバックグラウンドに対して行われる。
【0154】
[00163]国際照明委員会(CIE)は、色の知覚に関する公認標準を公表している。標準は、http://www.cie.co.at/index.php/Publications/StandardsのCIEウェブサイトから購入可能である。CIEはまた、標準D65光源や標準C光源などの照明光源に関する公認標準を公表している。D65は、UV波長光を含めて標準平均昼光をシミュレートするために使用される。C光源は、UV波長光を含めずに昼光をシミュレートするために使用される。彩度計は、3つの値、すなわち、「L」、「a」、および「b」を測定する。Lは、明度である。明度(L)は、白色材料では100であり、完全黒色材料では0である。「a」および「b」の値は、実際の色を測定するために使用される。「a」および「b」の値は、−60〜+60のスケールで測定される。「−a」値は緑色を表し、「+a」値は赤色を表し、「−b」値は青色を表し、かつ「+b」値は黄色を表す。「a」および「b」の値が−20〜20の間である部分は、いくぶん灰色の外観を有するであろう。「a」および「b」の値が−20〜−60の間または20〜60の間である部分は、より色彩豊かになるであろう。
【0155】
[00164]色安定性は、Macbeth Model 7000 Color Eye Colorimeter(彩度計)を用いて測定される。Macbeth Model 7000 Color Eye Colorimeterは、CIE L色空間(D65光源−10°観測器)で色を包括的に測定するために使用される。色の読みは、1ヶ月間にわたり2〜3日ごとに測定される。サンプルの着色部分および無着色部分のコントラスト変化は、透明半体および着色半体の間で全色変化(ΔE)を計算することにより測定される。ΔEは、
【数1】



により計算される。3つの条件が試験される。対照条件では、サンプルは、布で包まれて暗い机の引出し内の暗色バッグ内に入れられる。蛍光灯条件では、サンプルは、標準25ワットオフィス蛍光灯(Trimline T8 F25T8 SP35)下に配置される。自然光条件では、サンプルは、東向き窓の敷居に配置される。サンプルの色およびコントラストの変化は、経時的に記録される。表3は、対照条件を表し、表4は蛍光灯条件を表し、かつ表5は自然光条件を表す。
【0156】
[00165]図5は、実施例1、2、および3で使用された組成物を無着色領域では線幅184および着色領域では線幅68(184/68)で硬化させて作製された三次元物品を現状技術のRenshape(登録商標)SL Y−C9300と比較して示している。図5の上側の物品(左上および右上)は、初期硬化後の物品の色を示している。図5の下側の物品(左下および右下)は、周囲温度で30日間にわたり標準25ワットオフィス蛍光灯(Trimline T8 F25T8 SP35)下でエージングした後の物品を示している。本発明の実施例は、大幅に改良された色安定性を呈する。
【0157】
[00166]サーモクロミック成分を含有する実施例は、30日間の試験にわたりかなり一定したΔEを有することが見いだされた。これらの実施例は、対照条件では、試験期間全体にわたり測定されたΔEが試験の初日に測定されたΔEの4%以内に維持され、蛍光灯条件では、試験期間全体にわたり測定されたΔEが試験の初日に測定されたΔEの7%以内に維持され、かつ自然光条件では、試験期間全体にわたり測定されたΔEが試験の初日に測定されたΔEの10%以内に維持されることが判明した。特定の日に測定されたΔEと初日に測定されたΔEとの差を計算し、その結果を初日に測定されたΔEで割り算し、そして100を掛け算することにより、変化パーセントを計算した。
【0158】
【表3】



【0159】
【表4】



【0160】
【表5】



【0161】
[00167]0.05wt%の膨張性マイクロスフェア(Expancel(登録商標)031 DUX40)を市販のSOMOS(登録商標)WaterClear(登録商標)Ultra10122液状放射線硬化性樹脂に添加し、次いで、一体化されるまでミキサーで約30分間混合することにより、追加の実施例の組成物を作製する。
【0162】
[00168]サイズ3.0in×0.25in×1.5in(7.62cm×0.635cm×3.81cm)の矩体部片を形成する。この部片の半分(1.5in×0.25in×1.5in、すなわち、3.81cm×0.635cm×3.81cm)は、白色すべく選択され、残りの半分は、無色にすべく選択される。三倍波Nd:YAG固体レーザーを備えた3D Systems製のSLA 250光造形システムを用いて、部片を構築する。レーザーは、355nmの波長、40psのパルス持続時間、100MHzのパルス繰返し周波数を有し、400mWの平均パワーを与える。ビーム径は1mmであり、0.5mradの広がり角を有する。0.006(0.1524mm)インチのスライス層を用いて、ハッチ間隔、ハッチオーバーキュア、およびボーダーオーバーキュアを変化させて、各部分が受け取る暴露を変化させるようにして、部片を構築する。2つの追加の境界を用いるとともに、0.004インチのハッチ間隔、−0.002のハッチオーバーキュア、0.002のボーダーオーバーキュアを用いて、部片の透明領域を形成する。2つの追加の境界を用いるとともに、0.0025インチのハッチ間隔、0.006のハッチオーバーキュア、0.010のボーダーオーバーキュアを用いて、部片の白色領域を形成する。この機械での樹脂の温度は、外部加熱器により制御可能である。30±4℃の樹脂バット温度を用いて部片を作製した。イソプロパノールを用いて部片を洗浄し、空気乾燥させ、そして片面あたり30分間の後処理硬化を行う。
【0163】
[00169]実施例の組成物の処方を表6に示す。
【0164】
【表6】



【0165】
[00170]色安定性は、以上で述べた色安定性に関する方法に従ってMacbeth Model 7000 Color Eye Colorimeterを用いて測定される。サンプルの色およびコントラストの変化は、経時的に記録される。表7は、対照条件を表し、表8は蛍光灯条件を表し、かつ表9は自然光条件を表す。N/MのΔEは、その日に色の読みが測定できなかったことを意味し、したがって、その日はΔEを計算できなかった。比較例1、2、および3の先行技術の組成物の不十分なΔE安定性と比較して、実施例の組成物では、優れたΔE安定性が達成された。試験全体を通じて測定されたΔEは、3つの照明条件すべてで試験の初日に測定されたΔEの20%以内に保持された。
【0166】
【表7】



【0167】
【表8】



【0168】
【表9】



【0169】
[00171]本明細書中で引用されている出版物、特許出願、および特許を含むすべての参照は、あたかも各参照が参照により組み込まれることが個別にかつ特定的に示されてその全体が本明細書中に記載されたのと同程度まで参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0170】
[00172]本発明の説明との関連(特定的には以下の特許請求の範囲との関連)での「a」および「an」および「the」という用語ならびに類似の参照語の使用は、とくに本明細書中に指定がないかぎりまたは文脈から明らかに矛盾しないかぎり、単数形および複数形の両方を包含するとみなされるものとする。「comprising(〜を含む)」、「having(〜を有する)」、「including(〜を含む)」、および「containing(〜を含有する)」という用語は、とくに断りのないかぎり、オープンエンドの用語(すなわち、「〜を含むが、それらに限定されるものではない」ことを意味する)とみなされるものとする。本明細書中での値の範囲の記述は、とくに本明細書中に指定がないかぎり、単に、その範囲内に入る各個別値を個別に参照する簡略表記法として機能するものとし、各個別値は、あたかも個別に本明細書中に記載されたがごとく本明細書中に組み入れられるものとする。本明細書中に記載のすべての方法は、とくに本明細書中に指定がないかぎりまたは文脈から明らかに矛盾しないかぎり、任意の好適な順序で実施可能である。本明細書中に提供されているありとあらゆる実施例または例示的な表現(たとえば「such as(〜などの)」)の使用は、単に、より十分に本発明を例示しようとしたものであり、とくに要求されないかぎり、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中での表現は、特許請求されていない要素が本発明の実施に不可欠であることをなんら示唆するものとみなしてはならない。
【0171】
[00173]本発明の好ましい実施形態は、本発明を実施するための本発明者らの知るかぎり最良の形態を含めて、本明細書中に記載されている。それらの好ましい実施形態の変形形態は、当業者であれば、以上の説明を読むことにより明らかになろう。本発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変形形態を利用すると予想しており、本発明者らは、本明細書中に特定的に記載した以外の方法で本発明が実施されると思っている。したがって、本発明は、準拠法により認められる本明細書に添付された特許請求の範囲に記載の保護対象のすべての変更形態および等価形態を包含する。さらには、とくに本明細書中に指定がないかぎりまたは文脈から明らかに矛盾しないかぎり、すべての可能なそれらの変形形態において以上に記載の要素の任意の組合せが本発明に包含される。
【0172】
[00174]本発明についてその特定の実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、当業者であれば、特許請求された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、それに種々の変更および修正を行いうることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する三次元物品の形成方法であって、活性化温度を有する少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤を含む液状放射線硬化性樹脂を適切なイメージング放射線に晒して三次元物品を1層ずつ形成するとともに、同時に前記液状放射線硬化性樹脂の温度を選択的に制御して前記液状放射線硬化性樹脂の少なくとも1つの部分を前記感熱性視覚効果開始剤の活性化温度以上にすることにより前記三次元物品の少なくとも1つの選択的に着色されたおよび/または透明な領域を形成するようにすることを含む、方法。
【請求項2】
以下の工程、すなわち、
(a)液状放射線硬化性樹脂の層を形成する工程と、
(b)前記液状放射線硬化性樹脂の層を選択的に硬化させるとともに、前記液状放射線硬化性樹脂の温度を選択的に制御して少なくとも1つの選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する硬化された固体層を形成する工程と、
(c)工程(a)および(b)を十分な回数反復して三次元物品を構築するようにする工程と、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液状放射線硬化性樹脂の温度が、少なくとも2つの異なる線量の光を前記液状放射線硬化性樹脂に選択的に照射することにより選択的に制御される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記液状放射線硬化性樹脂が、フリーラジカル重合性成分とフリーラジカル重合を開始可能な光開始系とを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記液状放射線硬化性樹脂が、カチオン重合性成分とカチオン重合を開始可能な光開始系とを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記感熱性視覚効果開始剤が、約0.005wt%〜約5wt%、より好ましくは約0.005wt%〜約2wt%、より好ましくは約0.005wt%〜約1wt%の量で存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤が、少なくとも1つのサーモクロミック成分を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記サーモクロミック成分が、マイクロカプセル内に閉じ込められた感熱性インクを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤が、少なくとも1種の感熱性透明度改質剤を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記感熱性透明度改質剤が熱膨張性マイクロスフェアを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記感熱性視覚効果が、前記液状放射線硬化性樹脂の重合時に生成された酸に応答して視覚色または視覚透明度の変化を受けることがない、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤がロック温度を有し、かつ前記液状放射線硬化性樹脂の温度が選択的に制御されて前記液状放射線硬化性樹脂の少なくとも1つの部分が前記少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤のロック温度以上になる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記液状放射線硬化性樹脂が少なくとも2種の感熱性視覚効果開始剤を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも2種の感熱性視覚効果開始剤が異なるロック温度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法により作製された、三次元物品。
【請求項16】
周囲温度で蛍光灯に30日間暴露したとき、蛍光灯への暴露の初日に測定されたΔEの50%以内に維持された、蛍光灯への暴露期間全体を通じて測定されたΔEが達成され、好ましくは、蛍光灯への暴露を介して測定されたΔEが、蛍光灯への暴露の初日に測定されたΔEの30%以内に維持され、より好ましくは、蛍光灯への暴露を介して測定されたΔEが、蛍光灯への暴露の初日に測定されたΔEの15%以内に維持され、さらにより好ましくは、蛍光灯への暴露を介して測定されたΔEが、蛍光灯への暴露の初日に測定されたΔEの10%以内に維持される、積層造形プロセスを介して作製された着色部分および無着色部分を有する、好ましくは請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法により得られた三次元物品。
【請求項17】
選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する、積層造形プロセスにより液状放射線硬化性樹脂から得られた三次元物品であって、前記記液状放射線硬化性樹脂が少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤を含む、三次元物品。
【請求項18】
少なくとも1種の感熱性視覚効果開始剤を含む液状放射線硬化性樹脂であって、積層造形プロセスを介して選択的に着色されたおよび/または透明な領域を有する三次元物体を形成するために使用される、液状放射線硬化性樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−517961(P2013−517961A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550143(P2012−550143)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/022010
【国際公開番号】WO2011/091228
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】