説明

選択的VP端切替方式

【課題】 任意の切替アルゴリズムを有する任意の切替方式に対してより整合性の高い選択的VP端切替方式を得る。
【解決手段】 VP−AISセルフォーマットに切替表示ビットを定義する。切替端ノードがVP障害の発生時にこのVP障害の発生を検出し、切替実行可否の識別のための符号が設定されたVP−AISセルフォーマットを下流に送出する。VP端ノードがVP−AISセルフォーマットを受信し、切替表示ビットの設定状態を調べ、設定状態によりVP端切替の実行を選択する。例えば、XC2−XC3間の伝送路障害21が発生した場合、切替端ノードであるATMクロスコネクト装置XC2及びXC3間において任意の切替31が行われ、XC2−XC6−XC3間に迂回され、XC1−XC2−XC6−XC3−XC4の経路によるXC1−XC4間の通信が確保される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、選択的VP端切替方式に関する。更に詳述すると、本発明は、ATMクロスコネクト装置(以降、XCともいう)の複数を構成要素とし、途中区間の任意の切替方式とVP端切替方式とを選択的に併用してVP−Protectionを行う、ATM区間におけるVP−AISセルフォーマットを切替トリガとする選択的VP端切替方式に関する。
【0002】尚、途中区間に有する任意の切替方式は、文字通り任意であり、例としてVP端切替方式やSDHにおけるAPS(Automatic Protection Switching)方式を含むことを付記する。
【0003】
【従来の技術】従来、VP端切替方式は一般に、複数のATMクロスコネクト装置XCを構成要素として構成される。このVP端切替方式は、途中区間に有する任意の切替方式とVP端切替方式とを併用しVP−Protectionを行うATM区間における切替方式である。
【0004】図4および図5は従来例1のVP切替方式を表している。本図4、図5を用いて従来の一般的なVP端切替の動作例について説明を行う。図4は従来の切替方式であり、6局のATMクロスコネクト装置XC11〜XC16を構成要素とするXC11−XC14間のATM区間において、ATMクロスコネクト装置XC12−XC13間に伝送路障害が生じた場合の動作例を概念的に示している。
【0005】本従来例1の動作例において、ATMクロスコネクト装置XC11及びATMクロスコネクト装置XC14間はVP端切替を行い、XC11−XC12−XC13−XC14の迂回ルートはXC11−XC15−XC14であるとする。またXC12−XC13間は任意の切替を行い、XC12−XC13の迂回ルートはXC12−XC16−XC13であるとする。VP−Protection方式は、任意の切替方式とVP端切替方式とを併用するものとする。
【0006】また図5は、ATMクロスコネクト装置XC12にノード障害24が生じた場合の動作例を概念的に表している。まず、任意の切替方式とVP端切替方式とを併用したVP−Protection方式について説明する。図4、5において、XC11−XC12−XC13−XC14間にVPコネクションを設定した通信を考える。
【0007】図4に表わすATMクロスコネクト装置XC12−XC13間に伝送路障害23が発生した場合には、切替端ノードであるATMクロスコネクト装置XC12及びXC13間において任意の切替32が行われ、XC12−XC16−XC13間に迂回され、XC11−XC12−XC16−XC13−XC14の経路によるXC11−XC14間の通信が確保される。また図5に示すように、ATMクロスコネクト装置XC12にノード障害24が発生した場合には、VP端ノードであるATMクロスコネクト装置XC11及びXC14間でVP端切替33が行われ、XC11−XC15−XC14の経路によるXC11−XC14間の通信が確保される。
【0008】従来例2の特開平8−237253号公報の「ATM網のバーチャルパス切替方法及び装置」は、バーチャルバス(VP)を現用、予備の二重に設定したATM網において、現用、予備VP間の切替時に瞬断無く同期のとれた切替を実現することを目的としている。
【0009】また、従来例3の特開平5−235983号公報の「バーチャルパス切替装置および切替方法」は、あらかじめ常用バーチャルバスに対して切替用バーチャルパスを設定しておき、ATM伝達網において、障害発生時に高速で経済的に障害を救済できるようにすることを目的としている。
【0010】さらに、従来例4の特開平8−195745号公報の「パス切替装置およびパス切替方法」は、複数ノードから構成されるATM網のパス切替装置およびパス切替方法に関し、複数のパスの同時切替を正しい接続関係において行い得るようにすることを目的としている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来例1のVP端切替方式では、両VP端においてVP−AISセルフォーマットの受信に基づくVP端切替を行っているが、本従来例のVP−AISセルフォーマットでは、途中区間における任意の切替実行の有無を受信ノードにて判断できない。このため、途中区間の伝送路障害に対し任意の切替により高速に救済できる場合でも、VP端切替を起動してしまうという問題を伴う。
【0012】例えば図4において、XC12−XC13間に伝送路障害23が発生した場合、上記したように、切替端ノードであるATMクロスコネクト装置XC12及びXC13間において任意の切替32が行われる。しかし、ATMクロスコネクト装置XC12及びXC13から送出された従来のVP−AISセルフォーマット41の受信に基づき、両VP端であるATMクロスコネクト装置XC11及びXC14において、VP端切替33が起動されてしまう。よって、途中区間の伝送路障害に対して、途中区間に有する任意の切替方式に基づく切替により高速に救済できる場合でも、VP端切替を起動してしまう。この結果として任意の切替32による高速な救済が阻止されてしまう問題が生じる。
【0013】上記の理由は、従来のVP端切替方式では両VP端においてVP−AISセルフォーマットの受信に基づきVP端切替を行っている。このため、従来のVP−AISセルフォーマットでは、途中区間における任意の切替実行の有無を受信側ノードにて判断することができないからである。
【0014】また、従来例2〜4は、任意の切替方式とVP端切替方式とを併用したVP−Protectionにおいて、より高い効率性、整合性を追求した技術を開示していない。
【0015】本発明は、任意の切替アルゴリズムを有する任意の切替方式に対してより整合性の高い選択的VP端切替方式を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するため、本発明の選択的VP端切替方式は、ATMクロスコネクト装置の複数により構成された途中区間の任意の切替方式とVP端切替方式とを併用してVP−Protectionを行う選択的VP端切替方式であり、VP−AISセルフォーマットが任意の切替実行の可否を識別するための切替表示ビットを有して構成される。切替端ノードがVP障害の発生時にこのVP障害の発生を検出し切替実行可否の識別のための符号の設定を行い、設定したVP−AISセルフォーマットを下流に送出する。VP端ノードがVP−AISセルフォーマットを受信し切替表示ビットの設定状態を調べ、この調べた切替表示ビットの設定状態によりVP端切替の実行を選択することを特徴としている。
【0017】また、上記の切替表示ビットは1ビットで構成され、切替端ノードはVP障害の検出時にON、非検出時にOFFを設定するとよい。
【0018】さらに、選択を、途中区間に有する任意の切替方式で救済できる障害に対しては任意の切替方式による救済を行い、この救済ができない障害に対して下流区間のVP端切替を行う実行の選択とするとよい。
【0019】
【発明の実施の形態】次に添付図面を参照して本発明による選択的VP端切替方式の実施の形態を詳細に説明する。図1〜図3を参照すると本発明の選択的VP端切替方式の一実施形態が示されている。
【0020】図1において、6局のATMクロスコネクト装置XC1−XC6を構成要素とするXC1−XC4間のATM区間を考える。図1のATMクロスコネクト装置XC1及びXC4間はVP端切替32を行い、XC1−XC2−XC3−XC4の迂回ルートはXC1−XC5−XC4であるとする。またXC2−XC3間は任意の切替を行い、XC2−XC3の迂回ルートはXC2−XC6−XC3であるとする。XC1−XC4間のATM区間VP−Protection方式は、任意の切替方式とVP端切替方式を併用するものとする。
【0021】なお、図中の白丸印○は、ATMクロスコネクト装置の切替端ノードがVP障害の発生を検出し、VP−AISセルフォーマットを下流に送出することを表わしている。また、黒丸印●は、それを検出することを表わしている。
【0022】まず、任意の切替方式とVP端切替方式を併用したVP−Protection方式について説明する。図1、図2において、XC1−XC2−XC3−XC4間にVPコネクションを設定した通信を考える。図1において、XC2−XC3間の伝送路障害21が発生した場合、切替端ノードであるATMクロスコネクト装置XC2及びXC3間において任意の切替31が行われ、XC2−XC6−XC3間に迂回され、XC1−XC2−XC6−XC3−XC4の経路によるXC1−XC4間の通信が確保される。
【0023】また図2に示すように、XC2ノード障害22が発生した場合は、VP端ノードであるATMクロスコネクト装置XC1及びXC4間でVP端切替32が行われ、XC1−XC5−XC4の経路によるXC1−XC4間の通信が確保される。
【0024】図3は、本実施形態に適用される切替表示ビットを定義したVP−AISセルフォーマットの構成例を示している。図3において、本実施形態のVP−AISセルフォーマットは、8×5ビットのHeader、8ビットのOAM type IDs、8ビットのFailure type、8×nビットのFailure location、符号*で示した1ビットの切替表示ビット11、切替表示ビット11も含んだ8×(44−n)ビットの標準VP−AISセルの未使用領域(unused octets )等により構成される。
【0025】本実施形態では、任意の切替に切替実行中を表すビット(以下、切替表示ビット11とする)を、VP−AISセルの未使用領域(*部)に新規に1bitで定義する。この定義は、任意の切替実行中をONとし、デフォルト及び任意の切替停止中をOFFとする。また、切替表示ビット11のON設定は、該当するVP障害の検出時に各切替端ノードが行うものとする。
【0026】本定義に基づく、切替表示ビット付きのVP−AISセルフォーマット、を使用する。伝送路障害を検出した切替端ノードでは、該当するVP障害の検出と同時に、切替表示ビットをONに設定した切替表示ビット付きのVP−AISセルフォーマットを下流に送出する。
【0027】VP端ノードでは、受信した切替表示ビット付きのVP−AISセルフォーマットの切替表示ビットを調べ、ONを検出した場合には上流で任意の切替を行っている区間があると認識し、VP端切替は行わない。またOFFである場合には任意の切替で救済できない障害、例えば、任意の切替における多重障害またはノード障害等が上流で発生したと判断し、VP端切替を実行する。
【0028】本実施形態を使用すると、図1に示すように、XC2−XC3間に伝送路障害21が発生した場合、切替端ノードであるATMクロスコネクト装置XC2及びXC3間において任意の切替31が行われ、XC1−XC2−XC6−XC3−XC4の経路によるXC1−XC4間の通信が確保される。
【0029】切替端ノードであるATMクロスコネクト装置XC2及びXC3は、該当するVP障害の検出と同時に、切替表示ビット11をONに設定した切替表示ビット付きのVP−AISセルフォーマット42を送出する。両VP端であるATMクロスコネクト装置XC1及びXC4では、VP−AISセルフォーマット42を受信すると、切替表示ビット11がONである識別により、上流で任意の切替を行っている区間があると認識し、VP端切替は行わない。
【0030】また、本実施形態を使用すると、従来例の図5に示すATMクロスコネクト装置XC2のノード障害24と同様の、ATMクロスコネクト装置XC2にノード障害22が発生した場合には、両VP端のATMクロスコネクト装置XC1およびATMクロスコネクト装置XC4で受信したVP−AISセルフォーマット43の任意の切替表示ビット11は、デフォルトのOFFである。このことにより、両VP端のATMクロスコネクト装置XC1およびATMクロスコネクト装置XC4では、任意の切替で救済できない障害が発生した場合と判断し、VP端切替32を実行し、XC1−XC5−XC4の経路によるXC1−XC4間の通信が確保される。
【0031】上記により、従来発生していた、途中区間に有する任意の切替方式で救済できる障害、例えば、途中区間の伝送路障害に対しては任意の切替方式による救済を行い、下流区間のVP端切替の起動を行わない。
【0032】本実施形態は任意の切替実行の有無のみを利用するものであり、任意の切替アルゴリズムを有する任意の切替方式に対してより整合性の高いVP端切替方式を実現する。また、途中区間に有する任意の切替方式とVP端切替方式を選択的に併用することにより、より高速度処理のVP−Protection方式が実現可能となる。
【0033】尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0034】
【発明の効果】以上の説明より明かなように、本発明の選択的VP端切替方式は、VP−AISセルフォーマットが任意の切替実行の可否を識別するための切替表示ビットを有し、切替端ノードがVP障害の発生を検出し切替実行可否の識別のための符号の設定を行い、設定したVP−AISセルフォーマットを下流に送出する。VP端ノードがVP−AISセルフォーマットを受信し切替表示ビットの設定状態を調べ、調べた切替表示ビットの設定状態によりVP端切替の実行を選択する。
【0035】本方式により、任意の切替アルゴリズムを有する任意の切替方式に対してより高い整合性のVP端切替を実現し、途中区間に有する任意の切替とVP端切替を併用することによる、高速なVP−Protectionが実現可能となる。
【0036】また、高速なVP−Protectionを実現できるだけでなく、途中区間に有する任意の切替の救済後に生じるVP端切替による2次障害およびユーザへの無意味な被害を予防でき、ATM区間を有する通信事業者、特に大容量の回線を扱う基幹系の通信事業者に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の選択的VP端切替方式の実施形態が適用される網図であり、XC2−XC3間に伝送路障害21が生じた場合の切替の状態を概念的に示す図である。
【図2】ATMクロスコネクト装置XC2にノード障害22が生じた場合の切替の状態を概念的に示す図である。
【図3】切替表示ビットを定義したVP−AISセルフォーマットの構成例を示す図である。
【図4】従来の切替方式におけるXC2−XC3間に伝送路障害21が生じた場合の切替の状態を概念的に示す図である。
【図5】従来の切替方式におけるATMクロスコネクト装置XC2にノード障害22が生じた場合の切替の状態を概念的に示す図である。
【符号の説明】
XC ATMクロスコネクト装置
21 XC2−XC3間の伝送路障害
22 XC2のノード障害
31 途中区間(XC2及びXC3間)に有する任意の切替
32 XC1及びXC4間でのVP端切替

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ATMクロスコネクト装置の複数により構成された途中区間の任意の切替方式とVP端切替方式とを併用してVP−Protectionを行う選択的VP端切替方式において、VP−AISセルフォーマットが任意の切替実行の可否を識別するための切替表示ビットを有して構成され、切替端ノードがVP障害の発生時に該VP障害の発生を検出し前記可否の識別のための符号の設定を行い、該設定したVP−AISセルフォーマットを下流に送出し、VP端ノードが前記VP−AISセルフォーマットを受信し前記切替表示ビットの設定状態を調べ、該調べた前記切替表示ビットの設定状態によりVP端切替の実行を選択することを特徴とする選択的VP端切替方式。
【請求項2】 前記切替表示ビットは1ビットで構成され、前記切替端ノードは前記VP障害の検出時にON、非検出時にOFFを設定することを特徴とする請求項1記載の選択的VP端切替方式。
【請求項3】 前記選択とは、途中区間に有する任意の切替方式で救済できる障害に対しては任意の切替方式による救済を行い、該救済ができない障害に対して下流区間のVP端切替を行う実行の選択であることを特徴とする請求項1または2記載の選択的VP端切替方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平10−336195
【公開日】平成10年(1998)12月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−142852
【出願日】平成9年(1997)6月2日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)