説明

選択透過性のためのナノチューブが埋め込まれた膜

サイズ排除によるろ過用の膜が、ポリマーマトリックス中に埋め込まれた開放末端ナノチューブから形成される。このマトリックスは、その厚さが、ナノチューブの平均長さよりも実質的に小さく、ナノチューブがマトリックスを通してランダムに配向することを可能にしており、一方で、分子種または粒子の大きさに基づく選択的な通過のための、この膜を通して伸びる経路を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年6月30日出願の米国特許仮出願第61/077,088号の利益を主張する、2008年11月12日出願の、同時係属中の米国出願第12/269,714号の部分継続出願である。これらの両方の出願の内容を全て、参照することによって本明細書の内容とする
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、水の脱塩に特に注目した、逆浸透用の膜の分野に属する。また、本発明はナノチューブの使用およびナノチューブを含む構造体に関する。
【背景技術】
【0003】
2.従来技術の説明
多孔質のポリマー膜は、流体の精製用の逆浸透媒体として広汎に研究されてきている。最も一般的な逆浸透膜は、溶解−拡散機構を用いた逆浸透膜であり、そこでは注目した種(脱塩の場合には水)は、供給流体中の他の種(例えば、塩)よりも速い速度で、膜材料中に溶解するとともに、膜材料を通して拡散する。このような膜の例は、Cadotte, J.E.によって、1981年7月7日に発行された米国特許第4,277,344号明細書中に、そしてHoek, E.(カリフォルニア大学の理事)らによって、公開日が2006年9月21日の国際(PCT)特許出願公開第WO 2006/098872号中に、開示されている。不幸にも、溶解−拡散法によって操作される膜は、所望の種の少ない流量しか与えず、そしてこの流量は膜パラメータの変更によって増加することはできるものの、このような変更は通常は膜の排除性能に有害であり、すなわちそれらは透過水の純度を低下させる傾向にある。
【0004】
ナノチューブの使用は、ナノチューブ経路それ自体が、分子輸送に選択性を与えるために、従来の溶解−拡散ポリマー膜に代替策を与える。例えば、水分子は、ナノチューブ経路を、塩イオンもしくは分子の大きさが水を上回る他の種よりも、有意に速い速度で通過する。この目的のために設計されたナノチューブ含有構造体の中で顕著なものは、ナノチューブがシリコンチップに結合されている構造であり、それはHolt, J.ら(カリフォルニア大学の理事)によって、公開日が2007年3月1日の国際(PCT)特許出願公開第2007/025104号中に、そしてHolt, J.K.らによって、「2ナノメータ未満のカーボンナノチューブを通した高速物質移行」("Fast Mass Transport Through Sub-2-Nanometer Carbon Nanotubes")、Science、2006年5月19日、第312巻、p.1034〜1037中に開示されている。これらの開示の中では、これらの膜は、チップの表面上に、2層カーボンナノチューブ(DWCNT)の緻密な、垂直に整列された配列を成長させながら、化学気相堆積(CVD)、それに続くこれまたCVDによる、DWCNTの間の間隙を埋める窒化ケイ素の堆積によって、形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分子種がナノチューブをサイズ排除原理で選択的に通過するように、ポリマーマトリックス中に埋め込まれたナノチューブを含む膜は、モノマーもしくはプレポリマー、すなわち一般に重合可能な種を、末端開放型のナノチューブがランダムに配向して懸濁されている液体媒体中から、重合することによって、そしてマトリックスを固着させて実質的に連続な障壁をナノチューブの周りに形成することによって、作ることができることが、ここに見出された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ナノチューブが分子種を選択的な方法で通過させる能力は、ナノチューブが液体中に懸濁している間に、ナノチューブにいずれかの特別な整列を強制することなく達成することができる。懸濁液が形成され、そして重合可能な種が適切な液体媒体中に溶解されると、これらの液体の接触によってこれらの種が液体界面において重合して膜が形成される。連続な障壁が、それ自体で逆浸透作用を備えた溶解/拡散膜としての役目をする一方で、ナノチューブのサイズ排除作用がこの膜の選択性および透過性の両方を向上させる。本発明の膜は、ナノろ過、限外ろ過、ガス分離、および逆浸透を含めた、種々の方式のろ過において実用性を有している。この膜は、逆浸透膜として、特に水の脱塩用に、特に有用である。
【0007】
本発明の範囲にある膜は、2つの液相の間に分配された重合可能な種の界面重合によって形成される膜である。更なる態様では、本発明は、多孔質の支持体の上に、先ずこの支持体を2つの液相の1つで濡らし、次いでこの濡らされた支持体を第2の液相に接触させ、本発明の態様によっては、続いて第3の液相に接触させることによって、これらの3つの相の1つもしくは2つ以上の中にナノチューブを懸濁させながら、これらの膜を製造する方法に属する。継続的に適用されるこれらの液相のそれぞれの対が、界面重合によってポリマーを形成し、そして最後の対によって形成されたポリマーは、実質的に連続の障壁を形成するほどに十分に緻密である。2つの液相だけが用いられた場合には、ナノチューブはいずれか一方の相または両方の相中に分散されているが、好ましくは第2の(後に適用される)相だけに分散されている。単一のポリマー層が形成され、ナノチューブのランダムな配向を保持するマトリックスとして、および前述の障壁として、の両方の役割をする。3つの液相が用いられる場合には、ナノチューブは、これらの3つの液相の1つもしくは2つに分散されるが、好ましくは第1の相(この相で支持体が最初に濡らされる)もしくは第2の相(この相は第1の相の上に適用される)のいずれか、またはその両方の中に分散され、そして最も好ましくは第2の相中のみに分散される。3つの液相が用いられる場合には、重合は2段階で起こり、第1段階で支持体上に多孔質ポリマーを形成し、そして第2段階でこの多孔質ポリマー上に非多孔質、もしくは実質的に非多孔質のポリマーを形成する。次いで、この多孔質ポリマーは、ナノチューブの下側末端を固定するアンカーとしての役割をすることできるが、一方でナノチューブがポリマーによって閉塞されることを妨き、そして非多孔質ポリマーは障壁としての役割をすることができる。2相または3相のいずれの手順においても、障壁の厚さがナノチューブの平均長さよりも小さくなるように、種々の重合が行なわれる。更なる態様では、本発明は、膜それ自体、ならびにそのような膜の使用による、脱塩を含む逆浸透を実施する方法に属する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1つの利点は、本発明の範囲にある膜は、高い処理量および大容量の用途における使用に好適な、比較的に大きな寸法で作ることができることである。従って、製造方法は、上記の従来技術の大きさのようには、シリコンチップの水準の大きさには限定されない。更なる利点は、製造手順の、そして従って結果として得られる膜の、比較的に少ない費用であり、何故ならば、この手順はシリコンのような高価な基材、または化学気相堆積で用いられるような費用の掛かる工程もしくは装置を必要としないためである。また、本発明は、ナノチューブの製造にも特殊な方法を必要としない。ナノチューブはむしろ大量に得ることができ、いずれかの既知の技術によって合成することができ、そしてナノチューブが既に開放末端型でない場合には、ナノチューブは単純なそして安価な方法によって開放末端を得るように処理することができる。更なる利点、およびナノチューブをろ過媒体として用いる他のろ過システムと共通に有する本発明の利点は、膜のろ過挙動、特にその分子量分離(MWCO)が、適切な内径のナノチューブの選択によって厳密に制御することができることである。従って、このMWCOは、このように形成された障壁が連続しており、そして本質的に孔がない限り、重合条件とは無関係である。
【0009】
本発明のこれらの、そして他の特徴、態様、目的および利点は、以下の記載において更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明による膜の1つの例の断面図である。
【図2a】図2aは、本発明による膜の他の例の製造のための基材の断面図である。
【図2b】図2bは、ナノチューブを含む中間層が適用された後の同じ基材の断面図である。
【図2c】図2cは、外層が前記中間層上に適用された後の同じ基材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ナノチューブは、円筒形の管状構造体であり、当技術分野でよく知られており、そして商業的に入手可能である。種々の材料のナノチューブ、特にカーボンナノチューブ、ホウ素ナノチューブ、および窒化ホウ素のナノチューブ、が研究されてきている。これらの内の最も広範囲に研究されてきているものは、カーボンナノチューブであり、その特徴および製造方法は、一般にナノチューブの例となる。
【0012】
カーボンナノチューブは、純粋な炭素のポリマーであり、そして単層および多層構造体の両方として存在する。カーボンナノチューブおよびそれらの製造方法を記述している刊行物の例としては、Dresselhaus, M.S.ら、「フラーレンおよびカーボンナノチューブの科学」(Science of Fullerenes and Carbon Nanotubes)、1996年、Academic Press、San Diego、Ajayan, P.M.ら、「炭素のナノメータサイズの管」("Nanometre-Size Tubes of Carbon")、Rep. Prog. Phys.、1997年、第60巻、p.1025〜1062、およびPeigney, A.ら、「新規なセラミックマトリックスナノ複合材中のカーボンナノチューブ」("Carbon nanotubes in novel ceramic matrix nanocomposites")、Ceram. Inter.、2000年、第26巻、p.677〜683がある。単層カーボンナノチューブは、開放もしくは閉塞末端のいずれかを備えた、継目のない円筒に巻かれた一枚のグラフェンシートである。閉塞されている場合には、これらの末端は、ハーフフラーレンによって、または五角格子のようなより複雑な構造によってキャップされている。単層カーボンナノチューブの平均直径は、典型的には0.6nm〜100nmの範囲であり、そして多くの場合に1.5nm〜10nmである。アスペクト比、すなわち直径に対する長さの比は、典型的には約25〜約1000000の範囲、そして最も多くの場合には約100〜約1000の範囲である。直径1nmのナノチューブは、従って、約100〜約1000nmの長さを有していることができる。ナノチューブは、しばしば「ロープ」として存在しており、それらは、それらの長さに沿って、ファンデルワールス力によって互いに保持しあっている3〜500の単層ナノチューブの束である。個々のナノチューブは、しばしばロープから分岐して、他のロープのナノチューブに結合している。多層カーボンナノチューブは、2つもしくは3つ以上の同心の、連続的により大きな直径を備えたグラフェンシートの円筒であり、ファンデルワールス力によって互いに結合した積層複合材管を形成しており、約0.34nmの各層間の距離を有している。
【0013】
カーボンナノチューブは、カーボン電極間の、不活性ガス雰囲気中でのアーク放電によって調製することができる。この方法は、単層および多層ナノチューブの混合物をもたらすが、しかしながら鉄またはコバルトのような遷移金属触媒の使用によって、単層ナノチューブの生成を促進することができる。また、単層ナノチューブは、Thess, A.ら、「金属カーボンナノチューブの結晶性ロープ」("Crystalline Ropes of Metallic Carbon Nanotubes")、Science、1996年、第273巻、p.483〜487、およびWitanachi, S.ら、"Role of Temporal Delay in Dual-Laser Ablated Plumes"、J. Vac. Set Technol.、1995年、第A3巻、p.1171〜1174に開示されているように、レーザーアブレーションによっても調製することができる。単層ナノチューブを生成する更なる方法は、高圧一酸化炭素変性法(「HiPCO」)であり、Nikolaev, P.,ら、「一酸化炭素からの単層カーボンナノチューブの気相触媒法での成長」("Gas-phase catalytic growth of single-walled carbon nanotubes from carbon monoxide")、Chem. Phys. Lett.、1999年、第313巻、p.91〜97、およびBronikowski, M. J.,ら、「HiPco法による一酸化炭素からのカーボン単層ナノチューブの気相法での生成:パラメータ研究」("Gas-phase production of carbon single-walled nanotubes from carbon monoxide via the HiPco process: A parametric study")、J. Vac. Sd. Technol.、2001年、第19巻、p.1800〜1805に開示されている。
【0014】
ナノチューブの合成手順によっては、開放末端のナノチューブを生成し、一方で他の手順では閉塞末端のナノチューブを生成する。ナノチューブが閉塞末端の形態で合成された場合には、この閉塞末端は当技術分野で知られている種々の方法によって開放することができる。開放末端のナノチューブを生成するナノチューブ合成手順の例は、公開日が2008年4月24日の、Hua, D.H.(カンサス州立大学研究財団)の、国際(PCT)特許出願公開第WO2008/048227号に記載されているものである。閉塞末端は、機械的方法、例えば切断、または化学的、もしくは熱的方法によって開放することができる。切断法の例は、磨砕(milling)である。化学的方法としては、カーボンナノチューブ分解(degrading)剤の使用が挙げられ、その例は、それぞれ70%および96%以下の濃度の硝酸および硫酸水溶液の混合物である。他の化学的方法は、反応性イオンエッチングである。熱的方法としては、酸化雰囲気中での高温への暴露が挙げられる。酸化雰囲気は、20体積%〜100体積%の範囲の酸素濃度によって達成され、そして温度は200℃〜450℃の範囲であることができる。
【0015】
ナノチューブの長さは、広範囲に変えることができ、そして本発明にとって決定的なものではない。この長さは、ここでは、数平均または算術平均を用いた平均長さとして表される。好ましい態様では、平均長さは、単層、多層もしくは単層と多層との組合せのいずれであっても、約100nm〜約2000nm、最も好ましくは約200nm〜約1000nmである。ナノチューブの内径および外形も、同様に変えることができる。最も一般的な態様では、外形は約0.6nm〜約200nmの範囲とすることができるが、一方で特定の用途では、しばしばより狭い範囲が好ましい。最も一般的な態様では内径は、同様に約0.4nm〜約200nmの範囲であることができるが、特定の用途では最適の内径はより狭い範囲内である。逆浸透用、そして特に水の脱塩用では、好ましい内径は約0.4nm〜約5nmの範囲であり、そして最も好ましい範囲は約0.4nm〜約1.2nmの範囲である。ナノろ過膜としては、好ましい大きさの範囲は、約1nm〜約10nmの範囲である。限外ろ過膜としては、好ましい大きさの範囲は、約5nm〜約200nmの範囲である。
【0016】
2つの液相が用いられる場合には、この2つの相は少なくとも部分的に互いに不混和性であり、そして3つの液相が用いられる場合には、第2相と第3相は、少なくとも部分的に第1相と不混和性である。第2相と第3相は、部分的にせよそうでないにせよ、不混和性であることを必要とされず、そして下記のことから解るように、第2および第3相は、同じ溶媒で形成することができ、そしてそうすることが好ましい。ここで2つの相が「少なくとも部分的に不混和性」として特徴付けられる場合には、引用された表現は、これらの相に用いられたこれらの溶媒は、一方の溶媒の他方の溶媒中への溶解性の欠如のため、または一方のもしくは両方の溶媒の他の溶媒への限定された溶解性のために、平衡状態で、分離した、そして安定な相を形成することを意味している。相互に、しかしながら限定された溶解性を備えた溶媒では、それぞれの溶媒は、重合可能な種をその中に先ず溶解させて、もしくはさせずに、それらの相を接触させて配置する前に、他の溶媒で飽和されている。従って、最適には、これらの相が一旦接触されたら、これらの相の間の拡散は、起こりうるとすれば、重合可能な種の拡散だけである。好ましくは、「少なくとも部分的に不混和性」の相のそれぞれの対は、それぞれに非極性および極性溶媒を備えた、対の一方として非極性相、および他方としての極性相からなる。非極性溶媒の例としては、ベンゼン、ハロベンゼン、アルキルベンゼン、非極性アルカン、非極性ハロアルカン、および非極性アルキル置換アルカンがある。種々の置換ベンゼンおよびアルカンとしては、単一の置換基を有するもの、および複数の置換基を有するものが挙げられ、そして後者としては、同じ構造上のハロおよびアルキルなどの置換基の組合せ、ならびに2種もしくは3種以上のアルキル置換または2種もしくは3種以上のハロ置換のもの、が挙げられる。アルカンの中では、C〜C12アルカンが好ましい。ベンゼンの他では、非極性溶媒の具体的な例としては、クロロホルム、トルエン、キシレン、メシチレン、オルト−ジクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、およびテトラクロロエチレンがある。また、非極性溶媒の混合物も用いることができ、例えばヘキサンとクロロホルムの混合物、好ましくはヘキサン:クロロホルムの体積比が、約1:1〜約10:1、より好ましくは約2:1〜約5:1、そして最も好ましくは3:1である。極性溶媒の例としては、水、アルコール、およびグリコールがあり、単独でまたは混合物としてのいずれかで用いられる。好ましいアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、およびイソプロピルアルコールがあり、そして好ましいグリコールとしては、エチレングリコールおよびプロピレングリコールがある。
【0017】
ここで用いられる用語「重合可能な種」は、重合反応中に反応するであろういずれかの種を表している。重合可能な種は、モノマーまたはプレポリマー、あるいは一方の相中にモノマーそして他方の中にプレポリマーの組合せである。本発明において用いられる重合可能な種は、個々の液相中に可溶性であり、一方の種が一方の相に高度に溶解性であり、そして他の相にはより低い程度にしか溶解せず、好ましくはほんの僅かにだけ可溶性である種であり、そのためにこれらの種は、界面を越えて、界面の反対側で、他の種と反応することになる。例えば、第1の液相が極性溶媒中の極性モノマーの溶液であり、そして第2の液相が非極性溶媒中の非極性モノマーである場合には、好ましい極性モノマーは、非極性溶媒中に僅かに可溶性のモノマーである。このようなモノマーは、第1の液相から界面に向かって移動し、そして第2の液相に侵入して、この界面の非極性の側で、非極性モノマーと反応する。
【0018】
また、有用な重合可能な種は、界面重合して、すなわち2つの液相の界面で反応して、いずれの相にも不溶性の固体の連続なポリマーを形成する種である。「連続な」とは、そのポリマーが、非多孔質の、または少なくとも十分に低い開孔度であり、脱塩もしくはいずれかの他の精製、濃縮、もしくは分離プロセスの間に、処理される液体または気体のいずれかの成分の有意な量がポリマー自体を通過しない、すなわち分子輸送はナノチューブ経路を通してのみ発生する、ことを意味している。このポリマーは界面において薄い膜を形成し、そしてこの膜の厚さは、この膜が形成されている時に、それぞれの重合可能な種の界面を横切っての拡散の程度および速度、ならびに他の一般的な反応因子、例えば濃度および温度、そして重合反応速度、に依存する。このようなやり方で形成することができるポリマーの例としては、ポリウレタン、ポリフタルアミド、ポリエステル、ポリスルホンアミド、およびポリアミドがある。これらのポリマーを形成するために用いることができる種々のモノマーの組合せは、当技術分野で知られている。ポリアミドは、これらのポリマーの主要な例であり、有機(非極性)相中の二塩基酸または多塩基酸ハライドと、水相中のジアミンとの間の反応によって形成することができる。二塩基酸および多塩基酸ハライドの例としては、アジピン酸ジクロリド、セバシン酸ジクロリド、およびドデカンジオイルジクロリド、ホスゲン、ビスクロロホルマート、種々の芳香族ジアシルまたはトリアシルクロリド、ならびに種々の芳香族ジスルホニルもしくはトリスルホニルクロリドがある。ジアミンの例としては、ヘキサメチレンジアミンおよびデカメチレンジアミンがある。芳香族ポリアミドで、多塩基酸(二塩基酸を含む)もしくはジアミンのいずれか、またはそれらの両方の中に芳香族部分を含むものは、特に重要である。芳香族多塩基酸ハライドの例としては、トリメソイルクロリド(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸クロリド)、トリメリト(1,2,4−ベンゼントリカルボン)酸クロリド、ヘミメリト(1,2,3−ベンゼントリカルボン)酸クロリド、およびピロメリト(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン)酸クロリドがある。芳香族ポリアミドの例としては、フェニレンジアミン、例えばオルトフェニレンジアミンおよびメタフェニレンジアミンがある。ポリアミド以外のポリマーとしては、ポリウレタンを、非極性相中のジイソシアネート(例えばエチレンジイソシアネート)および極性相中のポリオール(例えば、エチレングリコール)から形成することができ;ポリフタルアミドを、非極性相中の芳香族酸クロリド(例えば、イソフタル酸ジクロリド)と極性相中のピペラジンから形成することができ;ポリエステルを、非極性相中の芳香族酸クロリド(例えば、イソフタル酸ジクロリド)および極性相中のハロゲン化ビスフェノール(例えば、テトラブロモビスフェノール)から形成することができ;そして、ポリスルホンアミドを、非極性相中のジズルホニルクロリド(例えば、1,5−ナフタレンジスルホニルクロリド)および極性相中のジアミン(例えば、1,6−へキサンジアミン)から形成することができる。
【0019】
それぞれの液相中の重合可能な種の濃度は、本発明には決定的なものではなく、そして変えることができるが、特定の用途では最適な濃度がある。また、これらの最適な濃度は、重合可能な種の特定の組合せによって、そしてまた反応条件によって変わる可能性がある。多くの場合において、非極性相中の重合可能な種の約0.05%〜約3%の濃度で、最もよい結果が得られる。好ましい範囲は、約0.05%〜約1%であり、そして最も好ましい範囲は約0.1%〜約0.3%である。同様に、極性相中で、多くの場合には、重合可能な種の約0.2%〜約5%の濃度で、最も良い結果が得られる。好ましい範囲は、約0.2%〜約2.0%であり、そして最も好ましい範囲は約1.0%〜約2.0%である。これらのパーセントは質量/体積パーセント、すなわちナノチューブが存在する場合にはナノチューブを含めた溶液のミリリットル当たりの重合可能な種のグラム数の100倍である。極性相中の種の濃度は、特に極性相が微孔質支持体を濡らすのに用いられる相である場合には、好ましくは非極性相中の種の濃度に対してモル過剰である。
【0020】
ナノチューブは、最初に、1つの液相または2つ以上の液相中に分散させることができる。従って、微孔質支持体が最初に1つの液相で濡らされ、次いで他の相に接触する手順の場合には、ナノチューブは、支持体を濡らすのに用いられる相もしくは濡らされた支持体の上に適用される相のいずれか、またはそれらの両方中に、最初に在ることができる。同様に、2つの相が非極性相および極性相として特徴付けられる場合には、ナノチューブは、これらの相のいずれか、または両方に、最初に存在することができる。しかしながら、効率を目的として、ナノチューブは1つの相のみに分散していることが好ましく、そして最も好ましくは、液−液界面に形成される膜中のナノチューブを効果的に集結させるために、濡らされた支持体上に適用される相のみに分散している。特定のナノチューブは、特定の種類の溶媒中により容易に懸濁され、そしてまたナノチューブは、特定の溶媒中でのそれらの分散を促進するために官能化することができる。例えば、カーボンナノチューブは、極性溶媒中よりも、非極性溶媒中により容易に懸濁し、従って、本発明の態様によっては、支持体が極性相で濡らされた後に、カーボンナノチューブがその中に懸濁されており、そして重合可能な種がその中に溶解されている非極性溶媒が、微孔質支持体上に適用される液相として用いられる。非極性溶媒中のカーボンナノチューブの分散性を増大させるために、カーボンナノチューブは、炭化水素鎖で官能化することができる。このような官能化は、被覆のない(bare)カーボンナノチューブまたは官能化されたカーボンナノチューブを、アルキル化剤、例えばブチルリチウム、ペンタリチウムおよびヘキシルリチウムで処理することによって成し遂げることができる。あるいは、共役もしくはブロック共重合体を用いることができ、それらではこれらのポリマーの一部が、カーボンナノチューブとπ−π、非共有相互作用を受け、そして他の部分が、非極性溶媒中への溶解性を与える炭化水素鎖を有している。カーボンナノチューブが非極性相ではなく極性相中に分散している場合には、ナノチューブの分散は界面活性剤を含むことによって促進することができる。当技術分野で知られている広範囲の界面活性剤のいずれかを用いることができる。注目すべき例としては、ドデシル硫酸ナトリウムおよびトリトン(Triton)X−100がある。
【0021】
重合可能な種の濃度と同様に、ナノチューブの濃度も、液相の体積当たりに十分な数のナノチューブが存在して、その中で、商業的に実用的な大きさの流量を備えた膜を生成するほどにナノチューブが懸濁されている限りにおいて、本発明に決定的なものではなく、そして、変えることができる。ナノチューブの濃度は、面密度、すなわち最終的な膜の片側の実質的に平らな、もしくは平坦な表面の単位面積当たりのナノチューブの数によって表すことができる。特定の用途では、面密度の好ましい範囲は、約1×1011cm−2(膜表面積の平方センチメートル当たりのナノチューブ)〜約1×1013cm−2、そしてより好ましい範囲は、約2.5×1011cm−2〜約2.5×1012cm−2である。他の特定の用途では、好ましい密度範囲は、約2.5×10cm−2〜約1×1012cm−2、そしてより好ましい密度範囲は、約2.5×10cm−2〜約2.5×1011cm−2である。
【0022】
種々の用途におけるナノチューブ密度および直径の例は、以下の通りである。脱塩用途に用いられる本発明の膜では、好ましいナノチューブは、約0.6nm〜約1.5nm、好ましくは約0.8nm〜約1.2nm、そして最も好ましくは0.8nm〜0.9nmの範囲の外径を有する単層カーボンナノチューブである。脱塩用の好ましいナノチューブ密度は、約1×1011cm−2〜約1×1013cm−2、最も好ましくは約2.5×1011cm−2〜約2.5×1012cm−2の範囲である。ガス分離用に用いられる膜では、好ましいナノチューブは、約0.6nm〜約1.0nm、より好ましくは約0.6〜約0.8nmの範囲、そして最適には約0.7nmの外径を有している単層カーボンナノチューブである。これらの用途では、ナノチューブ面密度は、好ましくは約1×1011cm−2〜約1×1013cm−2、そして最も好ましくは約2.5×1011cm−2〜約2.5×1012cm−2の範囲である。ナノろ過に用いられる膜では、好ましいナノチューブは、約1.5nm〜約10.0nmの内径、ならびに好ましくは約1×1011cm−2〜約1×1013cm−2の範囲のナノチューブ面密度を有する、単層および多層カーボンナノチューブの組合せである。限外ろ過用途および特にはウイルスもしくは細菌ろ過に用いられる膜では、好ましいナノチューブは、約10nm〜約200nmの範囲の外径、ならびに好ましくは約1×10cm−2〜約1×1011cm−2の範囲のナノチューブ面密度を有する、単層および多層カーボンナノチューブの組合せである。
【0023】
上記のように、本発明による膜は、膜が形成されている時に膜の横寸法と横方向の形状を定め、そして最終的な膜に構造的安定性を与える微孔質支持体上に、容易に形成される。本発明による支持体は、膜製造の最初の工程の間に第1の液相を受容し、そして第1の液相を保持して、支持体の外側表面で、第2の液相が第1の液相に接触することを可能にして、これによって2つの相が、支持体表面で、実質的に平坦な、そして連続した界面を形成することを可能にすることによって、これらの目的にかなう。この支持体は、この支持体に最初に接触するように配置される液相によって濡らすことができ、重合反応における反応体に不活性であり、そして反応条件下で安定であるいずれかの材料から作ることができ、そしてこのようにして形成されたポリマーが付着できるようなものである。好ましい態様では、第1液相は、極性相、最も好ましくは水相であり、そして微孔質支持体は、極性液体によって濡らすことができるものである。
【0024】
支持体を作ることができる材料の例としては、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ナイロン(および一般にはポリアミド)、およびポリエステルがある。支持体自体が、サイズ排除によってろ過機能の役割をすることができるが、そのろ過特性は、あったとしても、その微孔質の性質のために、膜自体の、そして特には膜中のナノチューブのろ過特性よりも、実質的により粗いものである。この制約の中で、支持体の開孔度は、広範囲に変えることができる。多くの場合には、約1kDa〜約10MDa、そして好ましくは約5kDa〜約300kDaの分子量分離(MWCO)を備えた支持体を使用するのが都合がよい。現在想定している微孔質支持体の例としては、10kDa〜1MDaのMWCOを備えたポリスルホン、そして好ましくは、300kDaのMWCOを備えたポリスルホンである。孔径の観点では、微孔質支持体は、直径が3nm〜200nmの範囲の孔を有することができる。
【0025】
微孔質支持体の寸法は、通常は特定の用途の必要性に合致するように選択される。これらの必要性としては、その膜が、精製、ろ過もしくは他の流体処理において用いられる場合に流体が通過する側面積(lateral area)、ならびに使用の間に組み合わされた支持体と膜を横切って加えられる差圧が挙げられる。好ましい支持体は、約1気圧〜約85気圧の差圧に、破裂することなく耐えることができる支持体である。多くの用途では、「複合材膜」と称することができる支持体/膜の組合せは、平坦な円盤の形態である。これらの用途では、比較的に小さい大きさの円盤がしばしば最も適切であり、そしてこれらの用途に好ましい直径の範囲は、約10mm〜約100mmである。13mm〜47mmの範囲の直径、特には13mm、25mm、および47mmの円盤は特に重要である。10mm〜100mmの範囲の直径の円盤では、この円盤の厚さはこのましくは約0.15mm〜約0.25mmの範囲である。また、複合材膜は、1インチ(2.5cm)〜40インチ(102cm)の範囲の幅を有する長方形のシートの形態に調製することができる。9.75インチ(24.8cm)、10インチ(25.4cm)、20インチ(51cm)、および40インチ(102cm)の幅は、特に重要である。これらのシートの長さは、最もしばしば、約4インチ(10cm)〜約400フィート(122m)の範囲である。これらの横寸法のシートでは、シート厚さは、好ましくは約0.15mm〜約0.25mmの範囲である。一般には、支持体の厚さは膜の厚さよりも重要性が低い、何故ならば、支持体には、膜に構造的な支持を与えるのに十分な厚さだけが必要とされるからである。
【0026】
膜形成手順の最初の工程では、微孔質支持体が第1液相で濡らされる。ここで用いられる用語「濡らす」は、派生語の「濡らしている」、「濡らすことができる」および「濡らされた」を含めて、支持体の孔を液相で満たしていて、第2の液相が加えられた時に、形成される液体−液体界面が、仮に完全ではなくとも、実質的に完全に、支持体の外側(平坦な)表面に在る、すなわち、もしも界面が孔の内部に広がる場合には、無視できる程度にしか広がらないことを示している。このような濡れは、微孔質支持体を、全ての気泡が流出できるのに十分長くこの液体中に支持体を浸漬させることを含めて、第1の液相で飽和させることによって達成することができる。場合によっては、飽和時間は1分間〜60分間の範囲、好ましくは1分間〜30分間、そして最も好ましくは1分間〜10分間の範囲であることができる。他の場合には、飽和時間は、1時間〜10時間、好ましくは2時間〜5時間の範囲であることができる。
【0027】
一度濡らされたならば、微孔質支持体は、第2液相に接触させられ、そうして第2液相が、支持体の少なくとも1つの外側表面上に層を形成して、外側表面に液体−液体界面を形成する。円盤またはシートの形態の支持体では、第2液相は支持体の両側(上面および底面)の上に適用することができる。しかしながら、一方の側のみに液体を適用し、他の側は、連続した、液体が不浸透の、しかしながら取り外せる障壁で、遮断もしくは密閉することが、通常は好ましい。第2液相は、濡らされた支持体を、その液体を含んだ容器中に浸漬させるか、または濡らされた支持体上にその液体を噴霧もしくはハケ塗りするか、または濡らした固体上に液体を適用する他の慣用のいずれかの方法によって、適用することができる。2つの液相間の接触は、それぞれの相中の重合可能な種に反応を起こさせて、界面でポリマーを形成するような条件下で行なわれる。これらの条件は、重合可能な種およびポリマーの種類によって変わり、そしてポリマー自体の当業者には容易に明らかである。多くの場合には、これらの条件は、これらの相の単純な接触によって満足されるが、一方で、他の条件では、触媒もしくは促進剤を、重合反応を促進するために含めることができる。
【0028】
結果として得られるポリマーの厚さの制御は、重合可能な種のそれぞれの相中の濃度、温度および2つの相間の接触の継続時間を含めた、反応条件の選択によって成し遂げられる。濃度は上記で検討したが、適切な、もしくは最適な温度は、用いられる重合反応の当業者には容易に明らかである。本発明で想定される重合反応の多くは、周囲温度、すなわち約20℃〜約25℃で容易に起こる。接触時間は、所望の間隔での相の接触の終了によって制御される。終了は、支持体を、第2液相を含む容器から取り出すこと、そして過剰の液体を流れ去らせること、支持体を第2液相中に用いた溶媒で濯ぐことのいずれかによって容易に成し遂げられる。接触時間は、目的のポリマー厚さによって変わる。大抵の場合に、最良の結果は、約50nm〜約1000nmの範囲内の厚さで得られる。接触時間は、場合によっては5秒間〜600秒間の範囲、他の場合に200秒間〜600秒間、更に他の場合には30秒間〜200秒間、更に他の場合には15秒間〜30秒間、そして更に他の場合には5秒間〜15秒間の範囲であることができる。大抵の用途では、適切な厚さのポリマー膜は、約3秒間〜約3分間、そして好ましくは約10秒間〜約1分間の範囲内の接触時間で得られる。例としては、第1液相が水中の2%(質量/体積)のm−フェニレンジアミンである極性反応体相であり、そして第2液相が0.1%(質量/体積)のトリメソイルクロリド(ナノチューブがその中に懸濁されている)である非極性反応体相である場合には、周囲温度での10秒間〜60秒間の接触時間の接触時間が、150nm〜300nmの厚さを備えたポリアミド層をもたらす。分子当たりに比較的に大きな数の官能基を有するモノマー、例えばイソフタロイルクロリド(2つのアシルクロリド基を備える)に対して、トリメソイルクロリド(3つのアシルクロリド基を備える)は、比較的に短い接触時間を必要とする。同様に、モノマー濃度の増加、温度の上昇、またはその両方は、所望の厚さの層の生成に必要とされる接触時間を短くする。
【0029】
全ての重合反応が所望の程度まで進んだら、膜およびその下の支持体を、残留する液体から回収し、そして必要であれば洗浄もしくは濯ぎ洗いをする。完成された膜および支持体の回収は、必要であれば高温を用いた、液体の単純な蒸発によって成し遂げることができる。
【0030】
上記のように、ナノチューブの周りに連続な障壁を形成するポリマー膜は、その厚さがナノチューブの平均長さよりも小さいようなやり方で形成される。好ましくは、膜はナノチューブの平均長さの1/10、そしてより好ましくは1/5の最小厚さを有している。更により好ましくは、膜厚さに対する平均ナノチューブ長さは、約1.3〜約5、そして最も好ましくは約2〜約4である。あるいは、膜の厚さは、平均ナノチューブ長さの、好ましくは20%〜90%、より好ましくは20%〜70%、そして更により好ましくは20%〜50%であり、そして場合によっては、平均ナノチューブ長さの、好ましくは30%〜80%、より好ましくは20%〜70%、そして最も好ましくは50%〜60%である。ナノチューブは、それらが最初に分散されている液相中では、ランダムに配向しているので、そしてこの手順の相の接触と重合工程の間には、ナノチューブにはそれらの配向を制御するような条件は何も加えられないので、最終的な膜は、隣接するナノチューブ間の距離、および膜表面に対する個々のナノチューブの配向の角度の観点から、ランダムな、もしくは不規則な配置で埋め込まれたナノチューブを含んでいる。典型的には、その上部および下部末端が膜から突き出ているナノチューブの、大部分、好ましくは20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%より多くは、垂直でない配置にあり、膜の表面と、15度〜90度未満、または特に45度、50度、55度、60度、もしくは65度以下の角度を形成する。
【0031】
上記のように、本発明の態様によっては、濡らされた微孔質支持体の上への、1種ではなく、2種の異なった液体の適用を含んでいる。従って、連続な(すなわち、埋め込まれたナノチューブによって形成される経路の外は、本質的に非多孔質の)ポリマー膜を微孔質支持体上に直接に形成して障壁の役割をさせるのに替えて、支持体と連続な膜もしくは障壁膜との間に、多孔質の層を中間層として支持体上に形成することができる。この中間層は、種々の機能のいずれかの役割をすることができる。1つの機能は、予備の(または中間的な)フィルタとして作用して、下にある微孔質支持体によって取り除かれなかった粒子状物質を、膜によって処理される流体から取り除くことである。他の機能は、ナノチューブのアンカーとしての役割をして、中間層の上に形成された連続(外側)層中のナノチューブが、最終的な膜の入力側に向かって開放末端を有することを確実にする。いずれの場合においても、中間層の多孔性は、膜の臨界的な選択機能が、連続層中に存続することを確実にするような役割をする。
【0032】
中間層は、非多孔質ではなく、多孔質の層をもたらす重合可能な種または重合条件を用いることによること以外は、連続層と同じ種類の界面重合によって形成することができる。従って、中間層は、別個の相を形成する2つの溶液中の重合可能な種から形成することができ、第2相は、第1相で前もって濡らされた支持体上に適用されている。ナノチューブが最初に、濡らされた支持体上に適用された液相に限定されている場合には、形成されるポリマー層は、その下側の末端がこの層の中に在り、一方でこれらのナノチューブの残りの長さおよびそれらの上側の末端が、この層の十分上に伸びている、相当数のナノチューブを含んでいる。カーボンナノチューブが用いられる場合には、ナノチューブは典型的には、ポリマー層の数百ナノメートル上に伸びている。この層の多孔性は、下側末端の大部分もしくは全てが、これらの末端がこの層中に埋め込まれている場合でさえも開放されたままであることを確実にする。連続層が次いで中間層の上に形成される場合には、ナノチューブは、それらの開放入口末端を維持し、そして連続層を通して伸びている。
【0033】
互いに相溶性があるが、なお異なる開孔度を備えたものである、中間(多孔質)層と外(連続)層を生成する1つの方法は、それぞれの層に同じ種類の重合可能な種を用いるが、しかしながら種当たりの官能基の数が異なるものである。従って、両方の層がポリアミドで形成される場合には、分子当たりに2つの官能基のみを有するイソフタル酸ジクロリドのような酸クロリドを中間層用に用いることができ、一方で分子当たりに3つの官能基を有するトリメソイルクロリドのような酸クロリドを連続層用に用いることができる。あるいは、種々の組成の重合可能な種の混合物を、異なる開孔度のより強力な制御のために用いることができる。例えば、モノ−、ジ−、およびトリ−アシッドクロリドを、中間(多孔質)層用に用いる混合物はモノ−およびジ−アシッド種の高い比率を有し、そして外(連続)層用に用いる混合物はトリ−アシッド種の高い比率を有しながら、両方の重合の非極性相種として用いることができる。
【0034】
2つの層を形成するのに用いられる3つの液相の内、第2および第3相は、第1相とは、少なくとも部分的には不混和性、そして好ましくは完全に不混和性であり、そして第2および第3相は両方とも、第1相中に溶解された重合可能な種と反応する、溶解された重合可能な種を含んでいる。第2相中の重合可能な種は、多孔質ポリマーを形成する種であり、一方で第3相中の種は、連続したポリマーを形成する種であり、そしてナノチューブは、第2および第3相の両方中か、または第2相中のみのいずれかに分散させることができる。これらの層は、最初に第1液相で支持体層を濡らし、次いで第2液相を適用し、そして第2と第3の間に、第1の液相を新たに適用して、もしくは適用しないで、最後に第3液相を適用することによって、連続して形成することができる。第3相が、第2相の後に直接に適用される場合には、第3相は、支持体が第1および第2相の両方でなお濡れている間に適用される。2つのポリマー層を形成するのに好ましい方法では、ナノチューブは最初に第2の液相中のみに存在しており、そして一旦中間の多孔質層が形成されてしまったら、外側の連続層がキャッピング層、障壁として、すなわち多孔質層上に、そして十分に薄く、ナノチューブが中間層から、ずっとキャッピング層を通して通過するように伸びているように、適用される。
【0035】
本発明の膜および複合膜は、分離もしくは精製の目的で、液体と気体の両方の処理に用いることができる。この膜は、逆浸透用、特には水の脱塩用に用いた場合に、特に価値がある。
【0036】
図1は、本発明の範囲内の、単一の界面重合工程によって形成された複合材膜11を示している。この複合材は、埋め込まれたナノチューブ13を備えており、微孔質支持体層14の上に直接に形成されたポリマー膜12を含んでおり、そして微孔質支持層14は不織布15の層によって支持されている。この布帛層15は、微孔質層に構造的な支持を与えている。
【0037】
図2a、2b、および2cは、本発明の範囲内の第2の複合材膜の製造を示しており、この膜は中間のポリマー層および外層のポリマー層を有している。図2aは微孔質支持体層21および不織布の下位層22を表しており、それらの上に形成されるポリマー層のための基材としての役割を共に果たしている。図2bは、微孔質層および不織布層21、22を、微孔質層21の上に適用された中間層23とともに表している。中間層23は、微孔質層および不織布層21、22を、非極性溶媒中の第1モノマーの溶液で濡らして、微孔質層21の孔を飽和させ、そして次いで濡らされた基材を、開放末端のナノチューブの分散体をも含む極性溶媒中の第2モノマーの溶液中に浸漬することによって形成される。2つのモノマーは、重合反応において、界面で互いに反応して中間層23を形成するが、その厚さは、この図中では、視覚化を容易にするために誇張されている。これらのモノマーの一方または両方は、官能基を有しており、これらの官能基は重合が多孔質ポリマーをもたらすように十分に数を制限されている。このようにして形成された中間層23は、固体の多孔質ポリマー中にランダムに配向して埋め込まれたナノチューブ24を含んでおり、ナノチューブ24の幾らかはそれらの下側末端がポリマー層21の内部で止まっているが、一方で本質的にはナノチューブの全てがポリマー層の十分に上まで伸びている。このポリマーの多孔性が、埋め込まれた下側末端を開放状態に保持している。示されてはいないが、遮断(blocking)層が、不織布層22の下側表面(微孔質層21で占められている側とは反対側)を、界面反応を微孔質層21の露出した表面に限定するように、保護している。
【0038】
図2cは、外層25が適用された後の複合材膜を表している。この外層25は、なお濡れている図2bの層を、極性溶媒中に溶解されている第3モノマーを含むが、ナノチューブの分散体は含まない第3の溶液中に浸漬することによって形成された。中間層23の多孔性のために、第1モノマー溶液は、界面での重合反応のための、第3モノマー溶液による接触が可能になる。第3モノマーは、分子当たりのより多い官能基数以外は第2モノマーと同様であり、界面において、中間層23のポリマーよりも、有意に多孔性が小さく、そして実際に実質的に連続したポリマーを生成する反応を起こす。結果として得られるポリマーは外層25を形成し、これはなお、ナノチューブ24の上部末端が突き出るのに十分なほどに薄い。
【0039】
ここに示した図面のいずれも計測のために描かれたのではなく、そしてこれらは膜自体の実際の描写ではなく、膜を形成する手順の見本であることを意図しているだけである。
【実施例】
【0040】
以下の例は、説明の目的で提供されており、そして本発明の範囲を限定することを意図してはいない。
【0041】
例1:複合材膜の合成
この例は、ポリエーテルスルホン微孔質支持体上のポリアミド層からなり、単層カーボンナノチューブがポリアミド層中に埋め込まれており、このポリアミド層は、本発明によって支持体上に直接に界面重合によって形成されている、複合材膜の形成を説明している。
【0042】
長さが1000nmで外径が0.8nmであり、そして有機溶媒中でのその溶解性を高めるためにオクタデシルアミンで官能化された単層カーボンナノチューブを、両末端を開放するように、制御された、低温熱酸化によって処理した。このナノチューブの非極性懸濁液を、このナノチューブを50mLのヘキサン中に、0.01質量%の濃度で懸濁することによって調製した。トリメソイルクロリドを、0.1質量%の濃度で、非極性懸濁液中に溶解した。別に、m−フェニルジアミンの極性溶液を、このジアミンを水中に、2.0質量%の濃度で溶解することによって調製した。直径が47mmで厚さが0.25mmであるポリエーテルスルホン微孔質円盤を、この極性懸濁液中に5分間浸漬し、この溶液から取り出し、次いでゴムローラーまたはエアーガンの使用によりその表面上で乾燥させた。次いで、この試料を非極性懸濁液中に、60秒間浸漬させた。結果として起こる界面重合で、厚さが50〜200nmで直径が47mmであり、微孔質基材上に支持されており、ナノチューブが膜を通して伸びていてガスもしくは流体移送のための孔としての役割をする、ポリアミド/ナノチューブ膜を得た。
【0043】
先の段落の手順は、外径0.8nmではなく、内径が5nmの単層カーボンナノチューブを用いて繰り返して、ナノろ過用として有用な膜を生成することができる。また、この手順は、50nmの内径の単層カーボンナノチューブを用いて繰り返して、限外ろ過用に有用な膜を生成することができる。
【0044】
例2:複合材膜の合成
この例は、ポリエーテルスルホン微孔質支持体上の2つのポリアミド層、中間層および外層からなり、本発明によって単層カーボンナノチューブがこのポリアミド層中に埋め込まれている、複合材膜の形成を説明している。
【0045】
オクタデシルアミン官能化した、直径が12〜14オングストローム(1.2〜1.4nm)の単層カーボンナノチューブを用い、そしてポリエーテルスルホン支持体を2度、最初はイソフタロリルクロリド溶液中に、そして次いでトリメソイルクロリド溶液中に浸漬し、ナノチューブはイソフタロイルクロリド溶液中に分散した、以外は、例1と同様の手順に従った。このイソフタロイルクロリド溶液は、0.1質量%のイソフタロイルクロリドおよび0.01質量%のナノチューブをヘキサン中に含んでおり、そしてこの溶液中への浸漬は10秒間維持した。トリメソイルクロリド溶液は、0.1質量%のトリメソイルクロリドをヘキサン中に含んでおり、そしてこの溶液の中への浸漬は、支持体をイソフタロイルクロリド溶液から取り出して1〜5秒間の内に起こらしめた。このトリメソイルクロリド溶液中への浸漬は、10秒間維持した。トリメソイルクロリド溶液からの取り出しに応じて、この試料を空気中で、90分間乾燥させた。
【0046】
14個の膜をこの方法で調製し、そしてかん水(NaClが2000ppm)の脱塩を、膜間差圧200psiで試験した。比較のために、ナノチューブを含まないこと以外は、同じ成分を備えた同じ方法で調製した10個の対照の膜を試験し、そしてナノチューブを含まない、GE Osmonics(登録商標) Inc.(ミネトンカ、ミネソタ州、米国)から商業的に入手可能な塩水逆浸透膜で、4回の測定を行なった。また、この手順を繰り返したが、但し、イソフタロイルクロリド溶液中の非極性溶媒は、75質量%のヘキサンおよび25質量%のクロロホルムの混合物とした。塩排除および透過率についての平均値および標準偏差を、以下の表中に載せた。
【0047】
【表1】

【0048】
1 第1の非極性溶媒として100%ヘキサンを用いた
2 第1の非極性溶媒として75%へキサンおよび25%クロロホルム(体積)の混合物を用いた
【0049】
これらの結果は、ナノチューブのない膜および商業的に入手可能な膜(これもナノチューブを含まない)と比較して、ナノチューブを備えた膜(本発明の範囲内)の透過性の明らかな増大を示している。
【0050】
例3(予言的な): 脱塩、ナノろ過および限外ろ過
0.8nmの外径のナノチューブを備えた例1の脱塩膜は、1モル/LのNaCl濃度を有する1リットルの塩水を、膜に対して、塩水からの水の、ナノチューブを通した収集器中への通過が起こるのに十分な差圧で圧入することによって用いることができる。収集した水は、0.1モル/L未満のNaCl濃度を有するであろうし、90%超の塩排除を示す。
【0051】
内径5nmのナノチューブを備えた例1のナノろ過膜を、5nmコロイド状ナノ粒子を5×1013粒子/mLの濃度で含む10ミリリットルの水を、膜に対して、コロイド状懸濁液からの水の、ナノチューブを通して収集器への通過が起こるのに十分な差圧で圧入することによって用いることができる。収集した水は、分析技術の検出限界より小さい粒子濃度を有しているであろうし、この複合材膜が、全ての5nm粒子がナノチューブを通過するのを妨げることを示す。
【0052】
内径50nmのナノチューブを備えた例1の限外ろ過膜を、50nmコロイド状ナノ粒子を5×1013粒子/mLの濃度で含む10ミリリットルの水を、膜に対して、コロイド状懸濁液からの水の、ナノチューブを通して収集器への通過が起こるのに十分な差圧で圧入することによって用いることができる。収集した水は、分析技術の検出限界より小さい粒子濃度を有しているであろうし、この複合材膜が、全ての5nm粒子がナノチューブを通過するのを妨げることを示す。
【0053】
ここに添付する特許請求の範囲において、用語「a」または「an」は、「1つまたは2つ以上」を意味することを意図している。用語「含む(comprise)」およびその変形、例えば「含む(comprises)」および「含んでいる」は、工程もしくは要素の記述が先行している場合には、更なる工程もしくは要素が任意に選択でき、そして排除されないことを意味することが意図されている。本明細書中に引用した全ての特許、特許出願および他の公開された文献は、参照することによってその全てを本明細書の内容とする。本明細書中に引用したいずれかの参考資料、もしくは一般的な従来技術のいずれかと、本明細書の明示的な教示との間の相違は、本明細書中の教示を支持して解決されることを意図している。このことは、用語もしくは句の従来技術で理解される定義と、同じ用語もしくは句の本明細書中で明示的に与えられている定義との間の相違のいずれかをも含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的透過性の膜の調製方法であって、前記方法が、
(a)第1液相で、前記第1液相で濡らすことができる微孔質支持体を濡らす工程、ここで前記第1液相は第1の重合可能な種をその中に溶解しており、
(b)そのように濡らした前記微孔質支持体を用いて、前記微孔質支持体を、前記第1液相と少なくとも部分的に不混和性であり、その中に第2の重合可能な種が溶解されている第2液相と接触させる工程、ここで前記第1および第2液相の一方もしくは両方はその中にランダムに分散されたナノチューブを有しており、前記ナノチューブは両方の末端が開放されており、かつ平均長さを有しており、前記第1および第2の重合可能な種は、界面重合によって互いに反応性があり、前記第1および第2液相中に不溶性であって、かつ前記微孔性支持体に付着する固体ポリマーを形成し、
(c)前記第1および第2液相を接触させて、前記第1および第2の重合可能な種に、前記微孔質支持体の外側表面上への前記ポリマーの層の形成を起こさせる工程、
(d)前記層を固着させて前記ナノチューブの周りに実質的に連続な障壁を形成する工程、ここで前記障壁は、前記ナノチューブの前記平均長さよりも小さい厚さを有しており、ならびに、
(e)前記第1および第2液相から、前記層が前記外側表面に付着した前記微孔質支持体を回収する工程、
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記工程(c)および(d)が、同時に実施され、かつ前記層が前記障壁である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程(c)および(d)が順番に行なわれ、工程(c)の前記層が中間層として規定され、かつ多孔質層であり、そして工程(d)が前記中間層の上に外層を形成することを含み、前記外層が前記障壁を形成し、かつ前記外層が前記ナノチューブの前記平均長さよりも小さい厚さを有している、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記工程(d)が、前記中間層を、第3液相であって、前記第1液相と少なくとも部分的に不混和性であり、前記第1および第2の重合可能な種の一方もしくは両方と反応性であって、かつ前記第1、第2および第3液相中に不溶性の固体ポリマーを形成する第3の重合可能な種がその中に溶解されている第3液相と接触させることによる界面重合によって構成される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ナノチューブが、カーボンナノチューブである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ナノチューブが、単層カーボンナノチューブである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記微孔質支持体が、極性液体によって濡らすことができ、かつ前記第1液相が極性液体である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記極性液体が水溶液である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記微孔質支持体が、極性液体によって濡らすことができ、前記第1液相が極性液体であり、かつ前記第2液相が非極性液体である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記非極性液体が、ヘキサン:クロロホルム質量比が約1:1〜約10:1であるヘキサンとクロロホルムの混合物である溶媒中の溶液である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記非極性液体が、ヘキサン:クロロホルム質量比が約2:1〜約5:1であるヘキサンとクロロホルムの混合物である溶媒中の溶液である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記微孔質支持体が、極性液体によって濡らすことができ、前記第1液相が極性液体であり、かつ前記第2および第3液相が非極性液体である、請求項4記載の方法。
【請求項13】
前記ナノチューブの前記平均長さの前記層の前記厚さに対する比が、約1.3〜約5である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記ナノチューブの前記平均長さの、前記中間層および結合された外層の前記厚さに対する比が、約1.3〜約5である、請求項3記載の方法。
【請求項15】
前記ナノチューブの前記平均長さの、前記中間層および結合された外層の前記厚さに対する比が、約2〜約4である、請求項3記載の方法。
【請求項16】
前記層が、約50nm〜約300nmの厚さを有している、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記中間層および外層が、約100nm〜約300nmの一体としての厚さを有する、請求項3記載の方法。
【請求項18】
前記微孔質支持体が、第1および第2の対向する外側表面を有し、そして前記工程(b)が、前記第1の外側表面を前記ポリマー層の形成を制限するように遮蔽して、前記第2の外側表面に行なわれる、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記ナノチューブの前記平均長さが、約100nm〜約2000nmである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記ナノチューブの前記平均長さが、約200nm〜約1000nmである、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記ナノチューブが、内径0.4nm〜5nmのカーボンナノチューブである、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記ナノチューブが、内径0.4nm〜1.2nmのカーボンナノチューブである、請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記ナノチューブが、内径1nm〜10nmのカーボンナノチューブである、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記ナノチューブが、内径5nm〜200nmのカーボンナノチューブである、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記微孔質支持体が、約1kDa〜約10MDaの分子量分離を有している、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記微孔質支持体が、約5kDa〜約300kDaの分子量分離を有している、請求項1記載の方法。
【請求項27】
そのように形成された前記層が、前記層の前記微孔質支持体とは反対側の側に平坦な表面を有しており、かつ前記ナノチューブが前記第2液相中に、前記層が前記平坦な表面の平方センチメートル当たりに約2.5×10〜約2.5×1012のナノチューブを含むような濃度で分散されている、請求項1記載の方法。
【請求項28】
そのように形成された前記層が、前記層の前記微孔質支持体とは反対側の側に平坦な表面を有しており、そして前記ナノチューブが前記第2液相中に、前記層が前記平坦な表面の平方センチメートル当たりに約2.5×109〜約1×1011のナノチューブを含むような濃度で分散されている、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記第1および第2液相の一方が、非極性溶媒中の非極性溶液を含み、かつ前記非極性溶液中に溶解されている前記重合可能な種が、前記非極性溶液の約0.05g/100mL〜約3g/100mLを構成し、かつ前記第1および第2液体媒体の他方が、極性溶媒中の極性溶液を含み、かつ前記極性溶液中に溶解された前記重合可能な種が、前記極性溶液の約0.2g/100mL〜約5g/100mLを構成する、請求項1記載の方法。
【請求項30】
前記第1および第2液相の一方が、非極性溶媒中の非極性溶液を含み、かつ前記非極性溶液中に溶解されている前記重合可能な種が、前記非極性溶液の約0.05g/100mL〜約1g/100mLを構成し、かつ前記第1および第2液体媒体の他方が、極性溶媒中の極性溶液を含み、かつ前記極性溶液中に溶解された前記重合可能な種が、前記極性溶液の約0.2g/100mL〜約2g/100mLを構成する、請求項1記載の方法。
【請求項31】
前記微孔質支持体が、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ナイロン、およびポリエステルから選択された一種であり、かつ前記第1液相が極性相である、請求項1記載の方法。
【請求項32】
前記微孔質支持体が極性液体によって濡らすことができ、かつ前記第1液相が、水、アルコール、およびグリコールからなる群から選ばれる極性溶媒中の前記第1の重合可能な種の溶液であり、かつ前記第2液相が、ベンゼン、ハロベンゼン、アルキルベンゼン、C〜C12アルカン、ハロ置換C〜C12アルカン、およびアルキル置換C〜C12アルカンからなる群から選ばれる非極性溶媒中の前記第2の重合可能な種の溶液である、請求項1記載の方法。
【請求項33】
前記微孔質支持体が極性液体によって濡らすことができ、かつ前記第1液相が、水、アルコール、およびグリコールからなる群から選ばれる極性溶媒中の溶液であり、かつ前記第2および第3液相が、ベンゼン、ハロベンゼン、アルキルベンゼン、C〜C12アルカン、ハロ置換C〜C12アルカン、およびアルキル置換C〜C12アルカンからなる群から選ばれる非極性溶媒中の溶液である、請求項3記載の方法。
【請求項34】
前記第1の重合可能な種が芳香族ポリアミドであり、かつ前記第2および第3の重合可能な種が芳香族ポリカルボン酸ハライドである、請求項3記載の方法。
【請求項35】
ナノチューブが埋め込まれた膜であって、前記膜が、両末端が開放され、かつ固体の、実質的に連続なポリマーマトリックス中に埋め込まれた複数のナノチューブを含み、前記ポリマーマトリックスが前記ナノチューブの平均長さよりも小さい厚さを有しており、前記ナノチューブが、前記膜に対して実質的にランダムな配向を有しており、かつ前記複数のナノチューブの少なくとも一部が、前記膜から突き出していて、前記膜を通して液体流通を与えるように開放された両末端を有するようにも配向されている膜。
【請求項36】
前記ポリマーマトリックスを支持する微孔質材料の層を更に含んでなる、請求項35記載の膜。
【請求項37】
前記ポリマーマトリックスの前記厚さに対する前記ナノチューブの前記平均長さの比が、約1.3〜約5である、請求項35記載の膜。
【請求項38】
前記ポリマーマトリックスの前記厚さに対する前記ナノチューブの前記平均長さの比が、約2〜約4である、請求項35記載の膜。
【請求項39】
前記ポリマーマトリックスが、約50nm〜約300nmの厚さを有する、請求項35記載の膜。
【請求項40】
前記ナノチューブの前記平均長さが、約100nm〜約2000nmである、請求項35記載の膜。
【請求項41】
前記ナノチューブの前記平均長さが、約200nm〜約1000nmである、請求項35記載の膜。
【請求項42】
前記ナノチューブが、0.4nm〜5nmの内径を備えたカーボンナノチューブである、請求項35記載の膜。
【請求項43】
前記ナノチューブが、0.4nm〜1.2nmの内径を備えたカーボンナノチューブである、請求項35記載の膜。
【請求項44】
前記ポリマーマトリックスが、実質的に平坦な表面を有しており、かつ前記表面の平方センチメートル当たりに約2.5×10〜約1×1012のナノチューブを含む、請求項35記載の膜。
【請求項45】
前記ポリマーマトリックスが、実質的に平坦な表面を有しており、かつ前記表面の平方センチメートル当たりに約2.5×109〜約2.5×1011のナノチューブを含む、請求項35記載の膜。
【請求項46】
前記ポリマーマトリックスが、ポリアミドである、請求項35記載の膜。
【請求項47】
前記ポリマーマトリックスが、芳香族ポリアミドである、請求項35記載の膜。
【請求項48】
水の脱塩方法であって、前記方法が、前記水を、両末端が開放され、固体の、実質的に連続なポリマーマトリックス中に埋め込まれた複数のナノチューブを含んでいる膜を通過させることを含み、前記ポリマーマトリックスが前記ナノチューブの平均長さよりも小さい厚さを有しており、前記ナノチューブが、前記膜に対して実質的にランダムな配向を有しており、かつ前記複数のナノチューブの少なくとも一部が、前記膜から突き出していて、前記膜を通して液体流通を与えるように開放された両末端を有するようにも配向されている方法。
【請求項49】
前記膜が、前記ポリマーマトリックスを支持する微孔質材料の層を更に含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記ポリマーマトリックスの前記厚さに対する前記ナノチューブの前記平均長さの比が、約1.3〜約5である、請求項48記載の方法。
【請求項51】
前記ポリマーマトリックスの前記厚さに対する前記ナノチューブの前記平均長さの比が、約2〜約4である、請求項48記載の方法。
【請求項52】
前記ポリマーマトリックスが、約50nm〜約300nmの厚さを有する、請求項48記載の方法。
【請求項53】
前記ナノチューブの前記平均長さが、約100nm〜約2000nmである、請求項48記載の方法。
【請求項54】
前記ナノチューブの前記平均長さが、約200nm〜約1000nmである、請求項48記載の方法。
【請求項55】
前記ナノチューブが、0.4nm〜5nmの内径を備えたカーボンナノチューブである、請求項48記載の方法。
【請求項56】
前記ナノチューブが、0.4nm〜1.2nmの内径を備えたカーボンナノチューブである、請求項48記載の方法。
【請求項57】
前記ポリマーマトリックスが、実質的に平坦な露出した表面を有しており、かつ前記露出した外側表面の平方センチメートル当たりに約2.5×10〜約1×1012のナノチューブを含む、請求項48記載の方法。
【請求項58】
前記ポリマーマトリックスが、実質的に平坦な露出した表面を有しており、かつ前記露出した外側表面の平方センチメートル当たりに約2.5×109〜約2.5×1011のナノチューブを含む、請求項48記載の方法。
【請求項59】
前記ポリマーマトリックスが、ポリアミドである、請求項48記載の方法。
【請求項60】
前記ポリマーマトリックスが、芳香族ポリアミドである、請求項48記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【公表番号】特表2011−526834(P2011−526834A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516776(P2011−516776)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/049087
【国際公開番号】WO2010/002805
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(511001437)ナノエイシス テクノロジーズ,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】