説明

選挙投票用紙

【課題】投票用紙自体の計数機上での搬送性を改良し、投票用紙の二重送りを軽減することで、開票作業の省力化、開票時間の短縮化に大きく貢献することができる選挙投票用紙を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムを基材層として有する合成紙を基紙とし、この基紙の表面側と裏面側に塗工剤を塗布し、乾燥させて得た、表面塗工層及び裏面塗工層の各々の25℃、相対湿度30%における表面固有抵抗が1×109 〜1×1012Ωの範囲であり、各々のJIS−K−8119:1998で規定するベック平滑度が30〜90秒及び400〜1,400秒の範囲である塗工紙を得、この塗工紙の表面塗工層に被選挙人の記入欄を印刷してなることを特徴とする不透明度が90%以上の選挙投票用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、国会議員や県会議員、市町村の議員および県知事、市町村長の選挙や、最高裁判所の判事の罷免選挙に用いられる選挙投票用紙に関するものである。
本発明の選挙投票用紙は、投票用紙専用計数機を用いた集計作業において、冬場で静電気の発生しやすい低湿度条件下においても、用紙搬送時に重送することがなく、開票・集計作業が容易となるものである。
【背景技術】
【0002】
選挙投票用紙としては、従来、パルプを素材とした紙に候補者氏名の記入欄および投票に当っての注意事項および選挙管理委員会名を印刷した用紙が用いられてきた。
この用紙は、選挙民により候補者氏名が記入欄に書き込まれた後、2つ折りに折り畳まれ、投票箱内に投入される。
選挙投票終了後、投票用紙は投票箱より取り出され、選挙管理委員の立会のもとに折り畳まれた投票用紙を集計人が開き、候補者名毎に投票用紙を振り分け、人手により各候補者毎の票数を数え挙げて集計してきた。
【0003】
近年、選挙投票用紙として、プラスチックを素材とした合成紙よりなる投票用紙を使用することが特許文献1、2に開示されており、さらに機械による投票用紙計数機を使用することで、集計時の省力化を目指すことが可能となり、更には開票時間の短縮に大きく貢献している。
しかしながら、既存の合成紙を素材とした選挙用紙の場合でも、冬場の低湿度条件下の集計作業では投票用紙計数機上の用紙搬送性が不足しており、投票用紙計数機での計数時に用紙つまりや計数ミスを生じたりすることがあり、こうした不具合を回避するために、機械側で二重送りされた投票用紙を一時的に機外に排出するような改良を行われているのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特公平07−051393号公報
【特許文献2】特許第2718753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、投票用紙自体の計数機上での搬送性を改良し、投票用紙の二重送りを軽減することで、開票作業の省力化、開票時間の短縮化に大きく貢献することができる選挙投票用紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記課題を有する二軸延伸フィルムを基材層とする合成紙を基紙とする投票用紙において、該合成紙の表裏面に特定の組成を有する塗工剤を塗布し、乾燥させて表裏の両面に塗工層を設け、投票用紙表面の平滑度を低下させ、かつ優れた帯電防止性能を発現させることによって、低湿度環境下においても選挙投票用紙専用の計数機における用紙搬送性を充分なものとし、機械への用紙の給排紙を円滑とすることで、集計作業上のトラブルが軽減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムを基材層として有する合成紙を基紙とし、この基紙の表面側と裏面側に塗工剤を塗布し、乾燥させて得た、表面塗工層及び裏面塗工層の各々の25℃、相対湿度30%における表面固有抵抗が1×109 〜1×1012Ωの範囲であり、各々のJIS−K−8119:1998で規定するベック平滑度が30〜90秒及び400〜1,400秒の範囲である塗工紙を得、この塗工紙の表面塗工層に被選挙人の記入欄を印刷してなることを特徴とする不透明度が90%以上の選挙投票用紙に関するものである。
【0007】
即ち、本発明の表面塗工層及び裏面塗工層の表面固有抵抗及びベック平滑度は、下記の範囲内のものである。
【表1】

表裏両表面の固有抵抗およびベック平滑度を上記範囲内にするために本発明は、塗工剤が、(A)樹脂バインダーと、(B)無機微細粉末と、(C)帯電防止機能を有するポリマーとを含有する塗工剤であることが好ましく、更には(D)着色剤を含有させることができる。
【0008】
特に、帯電防止機能を有するポリマー(C)が下記一般式で表される構造単位(a)、下記一般式で表される構造単位(b)、及びこれらと共重合可能な単量体からなる構造単位(c)を含有し、これら構造単位の重量割合が(a):(b):(c)=30〜70:30〜70:0〜40の範囲の共重合体の第四級アンモニウム塩型共重合体であることができる。
【化1】

(式中、Aはオキソ基(−O−)または第2級アミン基(−NH−)、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数が2〜4のアルキレン基または2−ヒドロキシプロピレン基(−CH2−CH(OH)−CH2−)、R3,R4,R5及びR6は炭素数が1〜3のアルキル基、R7 は炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が7〜10のアラルキル基、Xは塩素原子、臭素原子、または沃素原子、mは1〜3の整数を表わす。R3,R4,R5及びR6は同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0009】
【化2】

(式中、R8は水素原子またはメチル基、R9は炭素数が1〜30のアルキル基、炭素数が7〜22のアラルキル基、または炭素数が5〜22のシクロアルキル基を表わす。)
【0010】
或いは特に、帯電防止機能を有するポリマー(C)が、下記一般式で表される構造単位(d)、上記一般式で表される構造単位(b)、及びこれらと共重合可能な単量体からなる構造単位(c)を含有し、これら構造単位の重量割合が(d):(b):(c)=1〜99:0〜99:0〜40の範囲の共重合体のアルカリ金属塩含有ポリマーであることが好ましい。
【化3】

(式中、R10は水素原子またはメチル基、R11は水素原子、塩素原子、またはメチル基、Aは下記の<1群>から選択される1種の連結基か、下記の<1群>から選択される1種以上の連結基と下記の<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基か、または単結合を表し、
<1群>置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基、
<2群>−CONH−、−NHCO−、−OCONH−、−NHCOO−、
−NH−、−COO−、−OCO−、−O−、
Mはアルカリ金属イオン、nは1〜100の整数を表す。)
更には、塗工剤に含まれる無機微細粉末(B)の平均粒径は1.6〜10μmであることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
<合成紙>
本発明の選挙投票用紙の基紙として用いる熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムを基材層として有する合成紙とは、特許文献1、2に開示の合成紙と同様に、選挙投票用紙に耐水性、不透明性、耐折れ性、剛性による計数機上での搬送性を付与するものである。
合成紙としては、熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムを基材層とする合成紙であるならば如何なるものでもよく、フィラーを8〜65重量%含有する熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルム基材層単層のものであってもよく、またこの二軸延伸フィルムを基材層として表裏面にフィラーを含有する熱可塑性樹脂の1軸延伸フィルムを紙状層とする層が積層されたものであってもよく、更にこの二軸延伸フィルムを基材層として表裏面にフィラーを含有する熱可塑性樹脂の2軸延伸フィルムを紙状層とする層が積層されたものであってもよい。従って、前述の特許公報群に記載されたもの全てを利用できる。
【0012】
この合成紙は、フィラーを含有する熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを基材層として、特に基材層の内部にフィラーを核とした微細な空孔、即ちマイクロボイド、を有していることが好ましい。
この合成紙の特徴としては、熱可塑性樹脂を構成材とするので耐水性に優れ、雨水等による膨潤などで変形したりしない。また、内部のマイクロボイドによってこれに入射する光を散乱させ、合成紙全体の不透明度を向上させる。また、この合成紙中のマイクロボイドは基紙に柔軟性を与えて折り畳みを容易し、同時にクッション性、即ち復元性、も与えるので折り畳まれた投票用紙のシート状への復元に寄与する。そして該基材層は、樹脂フィルムが二軸延伸されることにより延伸軸方向に樹脂分子鎖が配向して結晶化することで、計数機上での搬送性に寄与する剛度、即ち曲げ弾性やコシ、が付与されている。
この合成紙の肉厚は、投票用紙としての取り扱い易さの観点から60〜150μmであることが一般的であり、70〜130μmであることが好ましく、80〜120μmであることがより好ましい。
この合成紙の不透明度は投票用紙として所望の不透明度を付与するために70〜100%であることが好ましく、85〜100%であることが好ましく、90〜100%であることが特に好ましい。
【0013】
(1)熱可塑性樹脂
本発明で用いる合成紙に用いられる熱可塑性樹脂は、基材層となる二軸延伸フィルムおよび表裏層のマトリクスを形成するものであり、その種類は特に制限されない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、あるいはポリプロピレン等のプロピレン系樹脂、ポリ(4−メチルペンタ−1−エン)、エチレン−環状オレフィン共重合体等のシクロオレフィンコポリマー、等のオレフィン系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルプラスチック、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンプラスチック等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド等の延伸成形が可能な熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
【0014】
本発明では熱可塑性樹脂として、生産性、加工容易性、耐水性、耐薬品性、リサイクル性、コストの面からオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。更にオレフィン系樹脂の中でも、プロピレン系樹脂、高密度ポリエチレンを用いることが好ましく、プロピレン系樹脂を用いることが特に好ましい。
かかるプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体であり、アイソタクティック乃至はシンジオタクティックおよび種々の立体規則性を示すポリプロピレンや、プロピレンを主成分とし、これとエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1,4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンとの共重合体が使用できる。この共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。またプロピレン系樹脂を用いる場合は、延伸性を良好とするためポリエチレン、ポリスチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のプロピレン系樹脂よりも融点が低い熱可塑性樹脂を3〜25重量%配合するのがよい。このような熱可塑性樹脂は、二軸延伸フィルム中に、35〜92重量%で使用することがより好ましく、50〜86重量%で使用することがさらに好ましい。
二軸延伸フィルムにおける熱可塑性樹脂の含有量が35重量%未満であれば、基紙としての強度が不足し、また延伸成形時に破断しやすい傾向がある。逆に92重量%を超えては充分な空孔数が得られない傾向がある。
【0015】
(2)フィラー
本発明で用いる二軸延伸フィルムに熱可塑性樹脂とともに用いることができるフィラーとしては、各種無機フィラーまたは有機フィラーを使用することができる。本発明の合成紙に所望の不透明度を持たせるために、無機フィラーまたは有機フィラーは、二軸延伸フィルム中に、8〜65重量%の範囲で使用することがより好ましく、14〜50重量%で使用することがさらに好ましい。無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、珪藻土、タルク、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、紫外光吸収フィラー等が挙げられる。また紫外光吸収フィラーとして、二酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、同様に使用できる。有機フィラーとしては、マトリクス樹脂がポリオレフィン樹脂の場合に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6、ナイロン−6,6、環状オレフィン重合体、環状オレフィンとエチレンとの共重合体等の用いるポリオレフィン樹脂の融点よりは高い融点、例えば、120〜300℃の範囲、乃至はガラス転移温度、例えば、120〜280℃の範囲、を有するものが使用できる。
【0016】
合成紙には、上記の無機フィラー又は有機フィラーの中から1種を選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、有機フィラーと無機フィラーを混合して使用してもよい。
後述する延伸成形により発生させる空孔のサイズ調整のため、合成紙に含みうる無機フィラーの平均粒径または有機フィラーの平均分散粒径は、好ましくはそれぞれが0.1〜1.5μmの範囲、より好ましくはそれぞれが0.2〜1.2μmの範囲とする。平均粒径または平均分散粒径が1.5μmを超える場合、空孔が不均一になる傾向がある。また、平均粒径または平均分散粒径が0.1μm未満の場合、所定の空孔が得られにくい傾向がある。
これらフィラーの平均粒径または平均分散粒径は、電子顕微鏡により観察された一次粒子または分散粒子10点の粒径を求め、その平均値として求めることができる。
このようなフィラーは、二軸延伸フィルム中に、8〜65重量%で使用することがより好ましく、14〜50重量%で使用することがさらに好ましい。
二軸延伸フィルムにおけるフィラーの含有量が8重量%未満であれば、充分な空孔数が得られず、ひいては投票用紙に所望の不透明度を付与しにくい傾向がある。逆に92重量%を超えては基紙としての強度が不足し、また延伸成形時に破断しやすい傾向がある。
【0017】
(3)添加剤
本発明で用いる二軸延伸フィルムには、必要により、蛍光増白剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤(光安定剤)、紫外線吸収剤、染料、顔料、分散剤、滑剤、帯電防止剤、粘着防止剤、ブロッキング防止剤、難燃剤などの各種公知の添加剤を配合してもよい。熱安定剤としては、立体障害フェノール系やリン系、アミン系等の安定剤を0.001〜1重量%、光安定剤としては、立体障害アミン系やベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などの光安定剤を0.001〜1重量%、無機フィラーの分散剤としては、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸乃至はそれらの塩等を0.01〜4重量%、帯電防止剤としては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルジエタノールアミン等の低分子型界面活性剤を0.01〜4重量%、配合してもよい。
【0018】
(4)積層方法
本発明で用いる合成紙は、上記の熱可塑性樹脂、フィラー、添加剤などを含む樹脂組成物を、溶融混練機や押出機を用いて均一に溶融混練して、シート状等に押し出し、後述する延伸方法により延伸して形成する。
本発明で用いる合成紙は、基材層のみの単層構造でもよいし、これに表面層等を積層した2層以上の複層構造でもよい。投票用紙としての折り回復力、即ち折り畳まれ投票された用紙が自然に開票し元のシート状に復元する能力、の調整が容易になることから、複層構造であることが好ましい。
積層例として、例えば基材層の片面に表面層を積層した2層構造、基材層の両面にそれぞれ表面層、裏面層を形成した3層構造を例示することができる。
【0019】
さらには表面層と基材層の間に中間層を積層することで4層以上の多層構造とすることもできる。従って合成紙が5層構造の場合は表面層/中間層/基材層/中間層/裏面層の積層構造を例示できる。
積層方法に関しては特に限定されず、公知の積層方法、例えば、複数の押出機により溶融した樹脂組成物をフィードブロックまたはマルチマニホールドにより一台のダイに導きダイ内で積層する方法(共押出)、溶融押出ラミネ−トにより積層する方法(溶融ラミ)等が挙がられる。
合成紙が、表面層、基材層、裏面層を含む積層フィルムである場合には、折り回復力を所望の範囲に調整しやすくするために、基材層のフィラー含有量を8〜65重量%、表面層および裏面層のフィラー含有量を0〜55重量%の範囲に設定することが好ましい。
【0020】
(5)延伸方法
本発明で用いる二軸延伸フィルムや合成紙の延伸成形方法としては、一般的な延伸方法が使用できる。具体例としては、スクリュー型押出機に接続されたTダイやIダイを使用して溶融樹脂をシート状に押し出し成形した後、該シートを、ロール群の周速差を利用して縦延伸する方法や、テンターオーブンを利用して横延伸する方法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸方法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸方法、円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに圧空を吹き込み同時二軸延伸するインフレーション方法、該シートをカットしパンタグラフ型延伸装置を用いて同時二軸延伸する方法などが挙げられる。
延伸温度は使用する熱可塑性樹脂の融点より2〜60℃低い温度であり、樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)のときは152〜164℃、高密度ポリエチレン(融点121〜134℃)のときは110〜120℃が好ましい。また、延伸速度は20〜350m/分が好ましい。
【0021】
本発明で用いる二軸延伸フィルムにおいて各軸における延伸倍率は、例えば、使用する熱可塑性樹脂がプロピレン系樹脂の場合、それぞれ2〜12倍の範囲が好ましく、3〜10倍の範囲がより好ましく、4〜9倍の範囲が特に好ましい。各軸における延伸倍率が2倍未満では、延伸ムラが発生し均一な延伸フィルムが得られにくく好ましくない。各軸における延伸倍率が12倍を上回る場合は、延伸時にフィルムが破断しやすいために好ましくない。同じく、面積延伸倍率(縦方向延伸倍率と横方向延伸倍率との積)は25〜70倍の範囲が好ましく、28〜60倍の範囲がより好ましい。面積延伸倍率が25倍未満では、延伸ムラが発生し均一な合成紙が得られにくく好ましくない。面積延伸倍率が70倍を上回る場合は、延伸時にフィルムが破断しやすいために好ましくない。
フィルムが二軸延伸フィルムを含むかどうか、またどの方向に延伸軸があるかを定性的に判断する方法としては、熱可塑性樹脂が結晶性ポリマーの場合、延伸により分子鎖の配向と同時に結晶化を伴うため、結晶部のX線回折を利用した解析方法を利用できる。例えばフィルムを小片に切り出し、X線の入射方向を変えながら数枚の回折パターン写真を撮影して、フィルム中の熱可塑性樹脂の結晶配向度を確認すればよい。
本発明の合成紙は上記(4)の積層方法と、(5)の延伸方法を組み合わせた成形方法により製造することができる。
【0022】
(6)後処理
本発明で用いる合成紙の表裏の表面は、塗工層との接着性を良好とするためにコロナ放電処理されていてもよいし、更にプライマー処理されていてもよい。
<塗工剤>
本発明で用いる塗工紙は、上記合成紙の表裏面には塗工剤を塗布し、更に乾燥させて表面塗工層と裏面塗工層を設けることで得られる。
本発明においてこれらの塗工層は、投票用紙に所望の表面固有抵抗とベック平滑度を付与するものである。また投票用紙に求められる印刷適性、鉛筆筆記適性などを付与するものである。
【0023】
塗布される塗工剤は、例えば(A)樹脂バインダー、(B)無機微細粉末、(C)帯電防止機能を有するポリマーを含有することが好ましく、さらに塗工剤は(D)着色剤を含有することが好ましい。
塗工剤各成分の配合割合は通常、(A)樹脂バインダー中の樹脂の固形分100重量部に対し、(B)無機微細粉末300〜800重量部、好ましくは350〜700重量部、より好ましくは400〜600重量部、(C)帯電防止ポリマー0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1〜3重量部、(D)着色剤0〜10重量部、好ましくは0〜5重量部の割合で用いられる。
特に表裏面での平滑度に差異をつける具体的な手法としては、(A)樹脂バインダーと(B)無機微細粉末の配合割合を変えること、平均粒径の異なる(B)無機微細粉末を用いることなどが挙げられる。
【0024】
(7)樹脂バインダー(A)
本発明で用い得る樹脂バインダー(A)は、塗工層に耐水性、無機微細粉末(B)やポリマー(C)の固着性、および塗工層の合成紙への密着性を付与するものである。
本発明に使用し得る樹脂バインダー(A)は、基材である合成紙の素材の熱可塑性樹脂の種類及びその他の条件を考慮して任意に選択すればよいが、例えば、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体ゴムラテックス、ポリ塩化ビニリデン系エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックス、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ラテックス、アクリル酸エステル−スチレン共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン等を単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
これらバインダーは、塗工剤として用いる際に、同じく用いる溶剤に併せて、組成物を溶剤の相の中に溶解、分散、乳濁分散等の公知の方法で希釈して、流動性があり塗工可能な状態として使用する。
【0025】
(8)無機微細粉末(B)
本発明で用いうる無機微細粉末(B)は、充填材や顔料として用いられ、印刷性の向上、鉛筆筆記性の向上、白度の向上、着色、不透明感付与、表面平滑性調整、質感向上、及び充填材としてコスト低減を目的としている。
(B)成分の無機微細粉末としては、炭酸カルシウム、サチンホワイト、シリカ、酸化チタン、アルミナ、亜鉛華、酸化鉄、クレイ及び硫酸アルミニウム等が挙げられるが、特に炭酸カルシウム等の充填材類、及び酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄等の顔料類が好ましい。
【0026】
本発明を検討するに際し、投票用紙表面の平滑度を低下させる無機微細粉末成分を多数検討した結果、従来用いている無機微細粉末よりも平均粒径が大きい(粗い)ものを用いることで、所期の平滑度が達成できることを見出している。即ち、これら塗工剤に用いうる無機微細粉末(B)の平均粒径は1.6〜10μmであることが好ましく、1.7〜5μmであることがより好ましく、1.8〜3μmであることが特に好ましい。用いる無機微細粉末の平均粒径が1.6μmに満たない場合は、特に表面の平滑度を所定の範囲とすることが困難である。10μmを超えては、得られる選挙投票用紙の表面が粗面となりすぎ、同じく表面の平滑度を所定の範囲とすることが困難である。
【0027】
(9)帯電防止機能を有するポリマー(C)
本発明を検討するに際し、低湿度条件下にて優れた帯電防止性を発揮し、且つ各種の樹脂バインダーや無機微細粉末、着色剤等の塗料成分との配合性・混合性が良好である帯電防止成分を多数検討した結果、下記2種の帯電防止機能を有するポリマーが特に有用であることを見出した。
以下、2種の帯電防止ポリマーにつき個々に詳細を説明する。
《第四級アンモニウム塩型共重合体よりなるマルチカチオン型水溶性ポリマー》
本発明で用い得る帯電防止機能を有するポリマー(C)の一例として、第四級アンモニウム塩型共重合体よりなるマルチカチオン型水溶性ポリマーが挙げられる。該共重合体は下記一般式で表される第四級アンモニウム塩型単量体構造単位(a)、下記一般式で表される疎水性単量体構造単位(b)、及びこれらと共重合可能な単量体からなる構造単位(c)を含有し、これら構造単位の重量割合が(a):(b):(c)=30〜70:30〜70:0〜40の範囲の共重合体の第四級アンモニウム塩型共重合体である。
各構造単位(a)、(b)及び(c)の重量割合は、好ましくは35〜65:35〜65:0〜20、特に好ましくは40〜60:40〜60:0〜10の範囲である。
【0028】
(a)第四級アンモニウム塩型単量体単位
構造単位(a)を形成する第四級アンモニウム塩型単量体は、下記一般式で表されるアクリル酸乃至メタクリル酸のエステルである。該単位は構造内の2以上のカチオンによりポリマー(C)の帯電防止機能に寄与する成分である。ポリマー中の該成分が30重量%より少ないと、十分な帯電防止効果を与えることが出来ない。また70重量%を超えると過度に水溶性となり、高湿度条件下でべたつきの原因となる。
【化4】

【0029】
上記式中、Aはオキソ基(−O−)または第2級アミン基(−NH−)、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数が2〜4のアルキレン基または下記の2−ヒドロキシプロピレン基、
【化5】

であり、R3,R4,R5及びR6は炭素数が1〜3のアルキル基、R7 は炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が7〜10のアラルキル基、Xは塩素原子、臭素原子、または沃素原子、mは1〜3の整数を表わす。R3,R4,R5及びR6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
前記一般式で表される構造単位(a)を形成する第四級アンモニウム塩型単量体は、下記一般式で表されるジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミン含有単量体を、下記一般式で表される3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の変性剤で、重合前に若しくは重合後に変性することによって得ることができる。
【化6】

【0031】
上記式中、Aはオキソ基(−O−)または第2級アミン基(−NH−)、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数が2〜4のアルキレン基または下記の2−ヒドロキシプロピレン基、
【化7】

であり、R3,R4は炭素数が1〜3のアルキル基を表わす。R3とR4は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【化8】

上記式中、R5及びR6は炭素数が1〜3のアルキル基、R7 は炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が7〜10のアラルキル基、Xは塩素原子、臭素原子、または沃素原子、mは1〜3の整数を表わす。R5とR6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
(b)疎水性単量体単位
構造単位(b)を形成する疎水性単量体は、下記一般式で表されるアクリル酸乃至メタクリル酸のエステルである。該単位はポリマー(C)に親油性を付与するものであり、耐水性や印刷インキ転移性に寄与する成分である。油性インキ印刷適性と帯電防止性の両立から、疎水性単量体との共重合が必要となる。ポリマー中の該単位が30重量%より少ないと、上記の効果が低下する。また70重量%を超えると相対的に帯電防止効果が低下する。
【化9】

【0033】
上記式中、R8は水素原子またはメチル基、R9は炭素数が1〜30のアルキル基、炭素数が7〜22のアラルキル基、又は炭素数が5〜22のシクロアルキル基を表わす。
上記一般式で表される構造単位を形成する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0034】
(c)共重合可能な他の単量体単位
また、必要に応じて共重合に使用される上記単量体(a)成分及び単量体(b)成分と共重合可能な他の単量体単位としては、下記一般式で表されるスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル等の疎水性単量体単位や、ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド等の親水性単量体単位を挙げることができる。これらの単量体単位は第四級アンモニウム塩型共重合体中に構造単位(c)として好適に組み込むことができる。該単位はポリマー(C)の共重合を容易とし、また塗工液調整時の溶媒への溶解性を調整するものである。
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
【化13】

【0038】
【化14】

【0039】
〔共重合方法〕
上記共重合体を得るための共重合方法としては、ラジカル開始剤を用いた、塊状重合、溶液重合、乳化重合等の公知の重合方法を採用することができる。これらの中で好ましい重合方法は溶液重合法であり、該重合は各単量体を溶媒に溶解し、これにラジカル重合開始剤を添加して、窒素気流下において加熱攪拌することにより実施される。溶媒は水、乃至はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、セロソルブ等のアルコール類が好ましく、またこれらの溶媒を混合して使用してもよい。重合開始剤は過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリルなどのアゾ化合物が好適に用いられる。
重合時の単量体固形分濃度は通常10〜60重量%であり、重合開始剤の濃度は単量体に対し通常0.1〜10重量%である。第四級アンモニウム塩型共重合体の分子量は、重合温度、重合時間、重合開始剤の種類及び量、溶剤使用量、連鎖移動剤等の重合条件により任意のレベルとすることができる。本発明で用いうる第四級アンモニウム塩型共重合体の分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が1千〜100万の範囲内であることが一般的であるが、1千〜50万の範囲が好ましい。
【0040】
《アルカリ金属塩含有ポリマー》
本発明で用い得る帯電防止機能を有するポリマー(C)の別の一例として、アルカリ金属塩含有ポリマーが挙げられる。該共重合体は下記一般式で表されるポリアルキレンオキシド化合物単量体構造単位(d)、上記一般式で表される疎水性単量体構造単位(b)、及びこれらと共重合可能な単量体からなる構造単位(c)を含有し、これら構造単位の重量割合が(d):(b):(c)=1〜99:0〜99:0〜40の範囲の共重合体のアルカリ金属塩含有ポリマーである。
各構造単位(d)、(b)及び(c)の重量割合は、好ましくは20〜70:30〜80:0〜20、特に好ましくは30〜60:40〜70:0〜10の範囲である。
【0041】
(d)ポリアルキレンオキシド化合物単量体単位
構造単位(d)を形成するポリアルキレンオキシド化合物単量体は、下記一般式で表されるアクリル酸乃至メタクリル酸のエステルである。該単位は構造内のアニオン及びアルカリ金属イオンによりポリマー(C)の帯電防止機能に寄与する成分である。ポリマー中の同成分が1重量%より少ないと、十分な帯電防止効果を与えることが出来ない。また99重量%を超えると過度に水溶性となり、高湿度条件下でべたつきの原因となる。
【化15】

【0042】
上記式中、R10は水素原子またはメチル基、R11は水素原子、塩素原子、またはメチル基、Aは下記の<1群>から選択される1種の連結基か、下記の<1群>から選択される1種以上の連結基と下記の<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基か、または単結合を表し、
<1群>置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基、
<2群>−CONH−、−NHCO−、−OCONH−、−NHCOO−、
−NH−、−COO−、−OCO−、−O−、
Mはアルカリ金属イオン、nは1〜100の整数を表す。
【0043】
<1群>の炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が挙げられ、これらは直鎖状であっても分枝状であってもよいが好ましいのは直鎖状である。置換基としては、ヒドロキシル基、アリール基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基などが挙げられる。置換基としては、ヒドロキシル基、アルキル基などが挙げられる。アルキル基が置換したアリーレン基としては、トリレン基、キリリレン基などが挙げられる。
また、<2群>から選択される連結基としては、ウレタン基やエステル基を好ましく選択することができる。<1群>から選択される1種以上の連結基と<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基としては、「(1群から選択される連結基)−(2群から選択される連結基)」で表される連結基や、「(1群から選択される連結基)−(2群から選択される連結基)−(1群から選択される連結基)−(2群から選択される連結基)」で表される連結基などが挙げられる。後者の場合は、2種類の(1群から選択される連結基)は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、2種類の(2群から選択される連結基)は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
上記一般式において、nが2以上であるとき、n個のR11は同一であっても異なっていてもよいが、好ましいのは同一である場合である。nは1〜100の整数を表すが、2〜50が好ましく、3〜50がより好ましい。例えば、R11が水素原子の場合、nを10〜35、さらには15〜30、さらには20〜25の範囲内から選択したり、R11がメチル基の場合、nを1〜20、さらには3〜16、さらには5〜14の範囲内から選択したりしてもよい。
上記一般式において、Mはアルカリ金属であり、Li、Na、Kなどを挙げることができ、イオン半径の小さいLiを用いることが導電性の観点で好ましい。
【0045】
本発明において好適に用い得るポリアルキレンオキシド化合物単量体の例としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)クロロエチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレンオキシド(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、これらの具体例において、さらに上記一般式のAに相当する箇所に単結合以外の連結基を有するアルキレンオキシドモノマーも挙げられる。例えば、Aにウレタン結合を有する化合物として、特開平09−113704号公報に記載される化合物を使用することができる。
【0046】
Mに相当するアルカリ金属を導入する方法は特に制限されないが、通常はアルキレンオキシドモノマーにアルカリ金属塩を反応させて水酸基末端をイオン化することによりアルカリ金属イオンによるイオン導電性を持たせることができる。本発明において好適に用い得るアルカリ金属塩の例としては、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの過塩素酸塩、またはこれらの塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン化物等の無機塩が挙げられる。これら無機塩を上記ポリアルキレンオキシド化合物単量体に添加してアルコキシド化することによりアルカリ金属イオンによるイオン導電性を得ることができる。また、特開平09−113704公報には式1のAにウレタン結合を持ったアルキシド化合物が提案されている。
【0047】
本発明に用いるアルカリ金属イオンとしては前述のリチウム、ナトリウム、カリウム、を用いることが出来るが、中でもイオン半径の小さいリチウムが最適である。本発明の塗工層にはアルカリ金属イオン濃度として好ましくは0.01〜1.00重量%、より好ましくは0.01〜0.70重量%、更に好ましく0.01〜0.50重量%となる様に帯電防止剤を添加することが望ましい。アルカリ金属イオン濃度が0.01重量%未満では、十分な帯電防止効果が得られず、1.00重量%を超えると帯電防止効果は得られるものの金属イオンの増加から印刷インキとの密着性が低下してしまう。
【0048】
〔共重合方法〕
本発明で用い得るアルカリ金属塩含有ポリマーの共重合方法は、上記一般式で表されるポリアルキレンオキシド化合物単量体構造単位(d)と、上記一般式で表される疎水性単量体構造単位(b)と、これらと共重合可能な上記一般式で表される単量体構造単位(c)とを共重合させることにより製造することができる。
このアルカリ金属塩含有ポリマーの製造方法は特に制限されず、公知の重合手法を単独乃至組み合わせて適宜用いることができるが、前出の第四級アンモニウム塩型共重合体と同様、ラジカル開始剤を用いた、塊状重合、溶液重合、乳化重合等の公知の重合方法を採用することが好ましい。これらの中でより好ましい重合方法は溶液重合法である。具体的には、窒素気流下において、原料として用いるポリアルキレンオキシド化合物単量体構造単位(d)、疎水性単量体構造単位(b)、共重合可能な単量体構造単位(c)等のモノマーを不活性有機溶媒、例えば、n−ヘキサン、n−ブタノール、2−プロパノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノエチルエーテル等、に溶解し、これにラジカル重合開始剤を添加した後に、通常65〜150℃に加熱しながら攪拌することにより実施される。
【0049】
重合時間は通常1〜24時間に設定する。重合時の単量体固形分濃度は通常10〜60重量%であり、重合開始剤の濃度は単量体に対し通常0.1〜10重量%である。アルカリ金属塩含有ポリマーの分子量は、重合温度、重合時間、重合開始剤の種類及び量、溶剤使用量、連鎖移動剤等の重合条件により任意のレベルとすることができる。共重合に用いる重合開始剤は、脂溶性であることが好ましく、好適な重合開始剤として有機過酸化物、アゾニトリル等を挙げることができる。
有機過酸化物には、アルキルパーオキシド(ジアルキルパーオキシド)、アリールパーオキシド(ジアリールパーオキシド)、アシルパーオキシド(ジアシルパーオキシド)、アロイルパーオキシド(ジアロイルパーオキシド)、ケトンパーオキシド、パーオキシカーボネート(パーオキシジカーボネート)、パーオキシカーボレート、パーオキシカルボキシレート、ヒドロパーオキシド、パーオキシケタール、パーオキシエステル等が含まれる。アルキルパーオキシドとしてはジイソプロピルパーオキシド、ジターシャリーブチルパーオキシド、ターシャリーブチルヒドロパーオキシド等を挙げることができる。
【0050】
アリールパーオキシドとしては、ジクミルパーオキシド、クミルヒドロパーオキシド等を挙げることができる。アシルパーオキシドとしてはジラウロイルパーオキシド等を挙げることができる。アロイルパーオキシドとしては、ジベンゾイルパーオキシド等を挙げることができる。ケトンパーオキシドとしては、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等を挙げることができる。アゾニトリルとしては、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等を挙げることができる。
本発明で用いうるアルカリ金属塩含有ポリマーの分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が1万〜100万の範囲内であることが好ましい。分子量が1万以上であれば、形成した塗工層から同ポリマーが染み出し難くなるため、十分な耐水性が得られやすい傾向がある。分子量が100万以下であれば、バインダー成分と混和しやすいため塗工欠陥が生じにくくなり均一な帯電防止効果が得られやすい傾向がある。
【0051】
(10)塗工剤の調合
本発明で用いる塗工剤においては、上記(A)、(B)および(C)、または(D)成分を均一に混合して、基紙への塗布に好適な塗工剤を調整する。
混合方法としては、一般的に用いられる無機微細粉末含有塗工液の調合方式が使用可能である。例えば、攪拌機が付設された調合容器中に水等の溶剤を投入しておき、次いで上記(B)無機微細粉末をゆっくり投入し、無機微細粉末の分散液を作成後、さらに本容器へ、(A)樹脂バインダー、(C)帯電防止機能を有するポリマーを投入し、均一に攪拌混合することで、塗工剤を調合することができる。
なお、無機微細粉末の分散は、プロペラ式の攪拌機で粗分散後、ボールミルといった粉砕機を使用して再度分散するといった方式を採ることも可能である。
【0052】
(11)その他の成分
本発明で用いる塗工剤においては、上記(A)、(B)および(C)、または(D)成分の他に消泡剤、湿潤剤、凍結防止剤、防腐剤、粘度調整剤、反応促進・遅延剤、分散剤、可塑剤、有機着色剤等を添加してもよい。またプラスチック・ピグメントと呼ばれる有機フィラー類を加えてもよい。さらに塗工剤を塗工しやすくし、乾燥しやすくする目的から、若干の有機溶剤等を用いることができる。
【0053】
(12)塗工剤の塗布(表面/裏面塗工層の形成)
本発明で用いる塗工層は、上記の塗工剤を公知の塗工装置により基紙の上に塗布し、塗膜を形成し乾燥して成膜化することにより設けることができる。塗工装置の具体的な例としては、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター等が挙げられる。
表面塗工層、裏面塗工層それぞれの塗工量は、乾燥後の固形分量で0.1〜20g/m2 とすることが好ましく、1〜12g/m2 とすることがより好ましく、4〜10g/m2 とすることが特に好ましい。塗工量が0.1g/m2 以上であれば均一な帯電防止性能が得られやすくなる傾向がある。20g/m2 以下であれば、塗工層は塗工条件や塗工環境による厚み方向の分布を持ちにくいため、安定した帯電防止性能と耐水性が得られやすくなる傾向がある。塗工層の厚みは、表面側、裏面側とも0.05〜20μmとするのが一般的であり、0.5〜15μmとするのが好ましく、2〜10μmとするのが特に好ましい。
【0054】
(13)投票用紙の物性
本発明では塗工剤の素材、組成、量比を、表面塗工層および裏面塗工層の各々の25℃、30%RHの表面固有抵抗、及びJIS−P−8119:1998で規定するベック平滑度が本発明の請求項1に示す範囲となるように選択する。
本発明の投票用紙表裏面の表面固有抵抗は25℃、30%RHの環境下において1×109〜1×1012Ωであり、5×109〜8×1011Ωが好ましい。
同条件での表面固有抵抗が1×1012Ωを超えると、特に冬場、計数機で二重送りが発生しやすくなるため好ましくない。1×109Ω未満となる様に調整すると、過剰の帯電防止ポリマー成分のために印刷インキの密着性が低下するため好ましくない。
また本発明の投票用紙の表面側の平滑度は30〜90秒であり、50〜85秒が好ましい。同じく投票用紙の裏面側の平滑度は400〜1,400秒であり、500〜1,200秒が好ましい。
【0055】
平滑度は、より平滑な(ベック指数が高い)程、開票された投票用紙を手で揃え、めくるなどの作業が容易となるが、余り高くなり過ぎると投票用紙同士の貼りつき(所謂ブロッキング)を起こしやすくなる。また静電気がたまりやすい条件下では計数機で二重送りが発生しやすい。また特に表面の平滑度が高くなり過ぎると鉛筆筆記が困難になる。
投票用紙の表面側の平滑度が90秒を超えると、鉛筆筆記性および低湿度での計数機における給排紙性が低下するため好ましくない。30秒未満であると粗面すぎるために、印刷がきれいに乗らずにざらついた外観となるため好ましくない。同じく投票用紙の裏面側の平滑度が1,400秒を超えると、低湿度での計数機における給排紙性が低下するため好ましくない。400秒未満では紙揃え等、投票用紙を手で取り扱う作業性が低下するため好ましくない。
【0056】
本発明の投票用紙の肉厚は取り扱いやすさの観点から80〜150μmであることが一般的であり、85〜140μmであることが好ましく、90〜130μmであることがより好ましい。
本発明の投票用紙の不透明度(JIS−P−8149−2000に準拠)は90%以上であり、92〜100%であることが好ましく、94〜100%であることがより好ましい。投票用紙の不透明度が90%に満たなければ、投票人の記した候補者氏名が裏面側より透けて見えてしまい好ましくない。
【実施例】
【0057】
以下に、製造例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
なお、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
<製造例1:合成紙の製造例>
ポリプロピレン(日本ポリケム(株)製、商品名:ノバテックPP、EA8W)81重量%、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、商品名:ノバテックHD、HJ360)3重量%、及び炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)製、商品名:ソフトン1800)16重量%を混合した組成物(A1)を、270℃の温度に設定した押出機にて溶融混練した後、ダイよりシート状に押し出し、更に冷却装置により冷却して、無延伸シートを得た。次いで、この無延伸シートを150℃の温度に再度加熱した後、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍の延伸を行って縦延伸シートを得た。
【0058】
さらに表裏面層用として、ポリプロピレン(日本ポリケム(株)製、商品名:ノバテックPP、FY6H)54重量%と、炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)製、商品名:ソフトン1800)46重量%とを混合した組成物(A2)を別の押出機にて210℃で溶融混練させた後、ダイよりシート状に押し出し、これを上記工程で得られた縦延伸シートの両面にラミネート法にて積層し、3層構造の積層フィルムを得た。次いで、この3層構造の積層フィルムを60℃の温度にまで冷却した後、再び約155℃の温度にまで加熱し、テンターを用いて横方向に7.5倍延伸し(面積延伸倍率 37.5倍)、165℃の温度でアニーリング処理し、60℃の温度にまで冷却し、耳部をスリットして、コロナ放電処理を施し、3層構造(一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸)の厚さ90μm(A2/A1/A2=20μm/50μm/20μm)の積層フィルムで、白色度96%、不透明度93%、密度0.78g/cm3の合成紙(基紙)を得た。
【0059】
<製造例2:合成紙の製造例>
別の合成紙として、特許文献1(特公平07−051393号公報)の合成紙の製造例を参照して、基紙を製造した。
ポリプロピレン(日本ポリケム(株)製、商品名:ノバテックPP、MA4)90部、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、商品名:ノバテックHD、HJ381P)10部、酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:CR−60)0.8部、平均粒径1.5μmのクレイ(エンゲルハード社製、商品名:サチントンスペシャル)15部、酸化防止剤としてフェノール系安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガノックス1076)0.3部、分散剤としてオレイン酸(花王(株)製、商品名:ルナック)0.1部、ラジカル補足剤としてヒンダードアミン系安定剤(三共(株)製、商品名:サノールLS−770)0.06重量部よりなる組成物(A1)を、押出機を用いて熔融、混練したのち、ダイより200℃の温度でシート状に押出し、50℃まで該シートを冷却した。次いでこの無延伸シートを135℃に加熱した後、ロール群の周速差を利用して縦方向に4倍延伸して縦延伸シートを得た。
【0060】
別にポリプロピレン(日本ポリケム(株)製、商品名:ノバテックPP、MA4)100部、平均粒径1.5μのクレイ(エンゲルハード社製、商品名:サチントンスペシャル)80部、酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:CR−60)10部、ラジカル補足剤としてヒンダードアミン系安定剤(三共(株)製、商品名:サノールLS−770)0.4部、酸化防止剤としてフェノール系安定剤((株)エーピーアイ・コーポレーション製、商品名:ヨシノックスBHT)0.1部、ヒンダードアミン系安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:チヌビン329)0.1部、酸化防止剤としてフェノール系安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガノックス1076)0.1部、分散剤としてオレイン酸(花王(株)製、商品名:ルナック)0.1部の割合で配合した組成物(A2)を、別の2台の押出機を用いて溶融混練し、ダイスより200℃の温度でシート状に押し出し、前記縦延伸シートの両面にラミネートした。得られた積層フィルムは、一旦室温より20℃高い温度(45℃)まで冷却後、155℃に再加熱し、テンターを用いて横方向に8倍延伸し、次いで160℃のオーブン中を通過させて熱セット(アニーリング処理)し、耳部をスリットした上、更にコロナ放電処理を施し、3層構造の厚さ90μm(A2/A1/A2=10μm/70μm/10μm、一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸)の延伸積層フィルムで、白色度97%、不透明度95%、密度0.73g/cm3の合成紙(基紙)を得た。
【0061】
<製造例3:帯電防止機能を有するポリマー(C)の製造例>
ジメチルアミノエチルメタクリレート(三菱ガス化学(株)製)35部、エチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20部、シクロヘキシルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20部、ステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)25部、エチルアルコール150部と、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)1部を、攪拌装置、還流冷却管(コンデンサー)、温度計及び窒素導入管を備えた四つ口フラスコに導入し、系内を窒素置換し、窒素気流下に80℃の温度で6時間重合反応を行なった。次いで3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの60%水溶液70部を加え、更に80℃の温度で15時間反応させた後、水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、最終固形分として20重量%の第四級アンモニウム塩型共重合体よりなる帯電防止機能を有するポリマーの溶液を得た。
【0062】
<製造例4:帯電防止機能を有するポリマー(C)の製造例>
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、商品名:ブレンマーPE−350)100重量部、過塩素酸リチウム(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、ヒドロキノン(和光純薬工業(株)製、試薬)1重量部およびプロピレングリコールモノエチルエーテル400重量部を、攪拌装置、還流冷却管(コンデンサー)、温度計及び窒素導入管を装着した四つ口フラスコに導入し、系内を窒素置換し、60℃で40時間反応させた。これにステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)5重量部、n−ブチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)5重量部、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)1重量部を添加し、80℃で3時間重合反応した後、プロピレングリコールモノエチルエーテルを添加して固形分を20重量%に調整し、重量平均分子量約30万、固形分中のリチウム濃度0.8重量%のアルカリ金属塩含有ポリマーよりなる帯電防止機能を有するポリマーの溶液を得た。
【0063】
<製造例5:合成紙の製造例>
製造例1の合成紙の製造例において、それぞれの押出機からの吐出量を変更し、更にテンターを用いた横延伸を3層構造の積層フィルムを約165℃の温度にまで加熱して実施した以外は製造例1と同様にして、3層構造(一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸)の厚さ90μm(A2/A1/A2=20μm/50μm/20μm)の積層フィルムで、白色度95%、不透明度81%、密度0.90g/cm3の合成紙(基紙)を得た。
【0064】
<実施例1>
前記製造例1で得た厚さ90μmの基紙の表裏面に、表2記載の組成と配合量を有する表面用塗工剤と裏面用塗工剤を、それぞれバーコーターを用いて塗布し、100℃で乾燥させて、表面塗工層の厚さが8μm、裏面塗工層の厚さが6μmの白色の塗工紙を得た。この塗工紙の表面塗工層の上に被選挙人の記入欄や、注意書事項、選挙管理委員会名を印刷し、本発明の選挙投票用紙を作成した。この選挙投票用紙の物性を表2に示す。
<実施例2〜5>
実施例1で使用した塗工剤を表2記載の組成と配合に変更した以外は、実施例1と同様の手法で、本発明の選挙投票用紙を作成した。この選挙投票用紙の物性を表2に示す。
【0065】
<比較例1>
比較として、特許文献1(特公平07−051393号公報)の実施例を参照して、選挙投票用紙を作成した。製造例2で得た基紙の表裏面に、表3記載の組成と配合量を有する表面用塗工剤と裏面用塗工剤を、それぞれバーコーターを用いて塗布し、100℃で乾燥させて、表面塗工層の厚さが8μm、裏面塗工層の厚さが6μmの白色の塗工紙を得た。この塗工紙の表面塗工層の上に被選挙人の記入欄や、注意書事項、選挙管理委員会名を印刷し、選挙投票用紙を作成した。この選挙投票用紙の物性を表3に示す。
【0066】
<比較例2〜6>
実施例1で使用した塗工剤を表3記載の組成と配合に変更した以外は、実施例1と同様の手法で、選挙投票用紙を作成した。この選挙投票用紙の物性を表3に示す。
特に比較例3では、低湿度でも帯電防止機能を有するポリマーとしてポリピロール(丸菱油化工業(株)製、商品名:PPY−12(固形分8%))を選択し使用した。
<比較例7>
実施例1で使用した基紙を製造例5で得た合成紙に変更した以外は、実施例1と同様の手法で、選挙投票用紙を作成した。この選挙投票用紙の物性を表3に示す。このものは投票用紙としての不透明度が不十分であった。
【0067】
<評価例>
(1)厚さ
JIS−P−8118:1998に記載の方法に基づき、測定した。なお、各層の厚さは合成紙乃至塗工紙の断面を電子顕微鏡で観察し、その比率から算出した。
(2)密度
JIS−P−8124:1998に記載の方法に基づき、算出した。
(3)白色度
JIS−L−1015:1999に記載の方法に基づき、測定した。
(4)不透明度
JIS−P−8149:2000に記載の方法に準拠し、標準黒色板を裏当てして測定した視感反射率を、標準白色板を裏当てして測定した固有視感反射率にて除した値を不透明度とし、百分率で算出した。結果を表2、表3に示す。
【0068】
(5)平滑度(ベック平滑度)
JIS−P−8119:1998に記載の方法に基づき、測定した。結果を表2、表3に示す。
(6)表面固有抵抗
JIS−K−6911:1995に記載の方法に基づき、得られた選挙投票用紙(表裏面)の表面固有抵抗を、温度25℃、相対湿度30%の条件下で、絶縁計(東亜電波工業(株)製、商品名:DSM−8103)を用いて測定した。結果を表2、表3に示す。
【0069】
(7)オフセット印刷インキ密着性
得られた選挙投票用紙の表面側に、評価用印刷機(石川島産業機械(株)製、商品名:RIテスタ−)を用いて、オフセット印刷用油性インキ((株)T&KTOKA製、商品名:ベストSP・墨)を、1.5g/m2の量で転色した。転色したものを23℃、50%RH下にて一日放置後、内部結合強さ試験機(熊谷理機工業(株)製、インターナルボンドテスター)を用いて印刷面のインキ密着強度を測定し、インキ密着性を下記評価基準により判定した。結果を表2、表3に示す。
○ 密着強度 1.5kg−cm 以上
× 密着強度 1.5kg−cm 未満
【0070】
(8)計数機による給排紙性
二重送り防止機能付き投票用紙計数機((株)ムサシ製、商品名:テラックEL15R)を使用し、低湿度条件下での給排紙性試験を行った。すなわち、得られた選挙投票用紙(サイズ:80mm×128mm)を500枚用意し、試験環境を温度25℃、相対湿度30%に設定し、同条件下にて計数機および投票用紙を1日放置後、同条件下で投票用紙を計数機に空通しして計数を行い、異常表専用スタッカーに排紙された枚数を測定して、下記評価基準により判定した。結果を表2、表3に示す。
○ すべて正常表として計数、判別可能
× 1枚以上の判別不可品がスタッカーに排紙
【0071】
(9)手捌き性
得られた選挙投票用紙を100枚用意し、一旦束をばらした後、個々の用紙の上下表裏を揃えて再び束ねる手作業を行い、紙揃えの容易さを下記評価基準により判定した。結果を表2、表3に示す。
○ 端部をきれいに揃えることが容易
× 端部をきれいに揃えることが困難
(10)筆記の裏抜け(透過視認性)
得られた選挙投票用紙の表面の被選挙人の記入欄にHBの鉛筆にて氏名を記入後、室内蛍光灯下で、裏面側から投票用紙を透かし、氏名が読み取れるかどうかを下記評価基準により判定した。結果を表2、表3に示す。
○ 全く読み取れない
× 読み取れる
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の選挙投票用紙は、国会議員や県会議員、市町村の議員および県知事、市町村長の選挙や、最高裁判所の判事の罷免選挙に有用なものとして用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムを基材層として有する合成紙を基紙とし、この基紙の表面側と裏面側に塗工剤を塗布し、乾燥させて得た、表面塗工層及び裏面塗工層の各々の25℃、相対湿度30%における表面固有抵抗が1×109 〜1×1012Ωの範囲であり、各々のJIS−K−8119:1998で規定するベック平滑度が30〜90秒及び400〜1,400秒の範囲である塗工紙を得、この塗工紙の表面塗工層に被選挙人の記入欄を印刷してなることを特徴とする不透明度が90%以上の選挙投票用紙。
【請求項2】
塗工剤が、
(A)樹脂バインダー、
(B)無機微細粉末、
(C)帯電防止機能を有するポリマー、
を含有する塗工剤であることを特徴とする請求項1に記載の選挙投票用紙。
【請求項3】
帯電防止機能を有するポリマー(C)が、下記一般式で表される構造単位(a)、下記一般式で表される構造単位(b)、及びこれらと共重合可能な単量体からなる構造単位(c)を含有し、これら構造単位の重量割合が(a):(b):(c)=30〜70:30〜70:0〜40の範囲である共重合体の第四級アンモニウム塩型共重合体であることを特徴とする請求項2に記載の選挙投票用紙。
【化1】

(式中、Aはオキソ基(−O−)または第2級アミン基(−NH−)、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数が2〜4のアルキレン基または2−ヒドロキシプロピレン基(−CH2−CH(OH)−CH2−)、R3,R4,R5及びR6は炭素数が1〜3のアルキル基、R7 は炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が7〜10のアラルキル基、Xは塩素原子、臭素原子、または沃素原子、mは1〜3の整数を表わす。R3,R4,R5及びR6は同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化2】

(式中、R8は水素原子またはメチル基、R9は炭素数が1〜30のアルキル基、炭素数が7〜22のアラルキル基、または炭素数が5〜22のシクロアルキル基を表わす。)
【請求項4】
帯電防止機能を有するポリマー(C)が、下記一般式で表される構造単位(d)、下記一般式で表される構造単位(b)、及びこれらと共重合可能な単量体からなる構造単位(c)を含有し、これら構造単位の重量割合が(d):(b):(c)=1〜99:0〜99:0〜40の範囲である共重合体のアルカリ金属塩含有ポリマーであることを特徴とする請求項2に記載の選挙投票用紙。
【化3】

(式中、R10は水素原子またはメチル基、R11は水素原子、塩素原子、またはメチル基、Aは下記の<1群>から選択される1種の連結基か、下記の<1群>から選択される1種以上の連結基と下記の<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基か、または単結合を表し、
<1群>置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基、
<2群>−CONH−、−NHCO−、−OCONH−、−NHCOO−、
−NH−、−COO−、−OCO−、−O−、
Mはアルカリ金属イオン、nは1〜100の整数を表す。)
【化4】

(式中、R8は水素原子またはメチル基、R9は炭素数が1〜30のアルキル基、炭素数が7〜22のアラルキル基、または炭素数が5〜22のシクロアルキル基を表わす。)