説明

遺伝子変異型に対応したサプリメントセット及びその提供方法

【課題】 本発明は、肥満関連遺伝子の変異の状態に対応して、適切な有効成分を含む肥満防止又は抑制用のサプリメント及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 脂肪燃焼遺伝子であるアドレナリン受容体遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪燃焼補助成分群と、脂肪燃焼遺伝子であるアドレナリン受容体遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪燃焼補助成分群と、脂肪燃焼促進遺伝子である熱産生蛋白遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪燃焼促進補助成分群と、脂肪燃焼促進遺伝子である熱産生蛋白遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪燃焼促進補助成分群と、脂肪分解遺伝子であるβ2アドレナリン受容体の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪分解機能調整補助成分群と、脂肪分解遺伝子であるβ2アドレナリン受容体の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪分解機能調整補助成分群との6つのサプリメントに、グループ分けされた成分群を配合するサプリメントセットとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子変異型に対応したサプリメントセット及びその提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトが健康的な生活を営み続けるには、規則正しい生活習慣を維持することが不可欠であることは周知の事実である。しかし、暴飲・暴食、喫煙又は運動不足等の外的な原因によって適正な体重を超えることが多くのヒトに見受けられる。体重が増える、すなわち、太る原因は、食物から摂取するエネルギーが基礎代謝や運動などで消費されるエネルギーを超えるために生じることも良く知られている。従って、体重を減少させるためには、食事を減らし、運動を増やせばよいという考えに基づき、従来は体重減少のプログラムや方法が考案されてきた。しかし、食事の制限で体調を崩したり、リバウンドと言われるような逆に体重が増加したりするような現象も発生し、多くのヒトに適合する適切な方法を確立するのは困難であるとされている。
【0003】
一方、近年のヒトゲノムプロジェクト解読の終結の結果、ヒトの肥満に関係する遺伝子が発見され、特定の遺伝子が変異を起こしていると食事制限や運動によっても体重の制御ができにくい場合があることが判明してきた。ここで言う変異とは、一塩基多型やマイクロサテライトのような遺伝子型多型のことを指し、DNA塩基配列における変異によって生じる個体差のことを指す。この遺伝子多型の存在により、個体間で遺伝子の働きに違いが生じる結果として、個体差を生じる。このような遺伝子変異の様態は、対立遺伝子の両方に変異が無いタイプ(ワイルド型)、対立遺伝子の一方に変異があるタイプ(ヘテロ型)、及び対立遺伝子の両方に変異があるタイプ(ホモ型)の3タイプがあることが確認されている。
【0004】
例えば、従来の肥満タイプの研究と遺伝子研究の結果、特に日本人の多くでは、内臓脂肪がつきやすい体質、下半身に皮下脂肪がつきやすい体質、及びそれほど太っていないが筋肉がつきにくいためにいったん太るとやせにくい体質が存在し、それぞれの肥満体質に対してそれらを制御している遺伝子が存在することが判明してきた。このような肥満に関与する遺伝子が複数あれば、その複数の遺伝子のワイルド型、ヘテロ型、ホモ型の変異型の組み合わせが存在することになり、単純にその3乗の種類の肥満体質が存在すると考えることができる。したがって、このような遺伝子の変異を考慮しない従来のダイエット方法等のように、多くの種類の肥満体質に対して一種類又は複数種類の栄養素や有効成分を画一的に与えても非効率的であることが考えられ、肥満体質に関連する遺伝子の変異を考慮すれば、従来よりも適切で効率的なダイエット方法の提供が行える可能性がある。
【0005】
同様に、肥満体質以外の種々の体質、例えば骨や肌に関する体質、女性ホルモンや男性ホルモンといったホルモン分泌、脱毛症、いらいらし易いなどの性格、アルコール分解能、歯の健康に関連する体質などの種々の体質に関しても、その体質を改善したり、その体質を補うために必要な栄養素や有効成分を摂取したりする上で、その体質に関連する遺伝子の変異を考慮すれば、従来よりも適切で効率的に栄養素や有効成分を摂取できるサプリメントを提供できる可能性がある。このように、種々の体質を改善するために、遺伝子の変異に対応した合理的で効率的に栄養素や有効成分を摂取できるサプリメントの提供が望まれている。
なお、特許文献1には、遺伝子型多型情報やその他の個人情報から、各個人に最も適した栄養補助食品を提供するシステムが記載されている。しかし、この特許文献1には、1つの体質に関連する複数の遺伝子の変異型に応じて種々の栄養素や有効成分を摂取できるサプリメントを提供することについては何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−223515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、体質に関連する複数の遺伝子の変異の状態に対応して適切な栄養素や有効成分を含む複数のサプリメントからなるサプリメントセット及びその提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る遺伝子変異型に対応したサプリメントセットは、体質に関連する1以上の遺伝子に対し、各々の遺伝子の変異から生じる体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一補助成分群と、各々の遺伝子の変異から生じる体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二補助成分群とをグループ分けし、体質に関連する上記1以上の遺伝子ごとに二成分群を割り当てるようにしてグループ分けされた成分群を配合してなることを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る遺伝子変異型に対応したサプリメントセットは、その実施の形態で、脂肪燃焼遺伝子であるβ3アドレナリン受容体遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪燃焼補助成分群と、
脂肪燃焼遺伝子であるβ3アドレナリン受容体遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪燃焼補助成分群と、
脂肪燃焼促進遺伝子である熱産生蛋白遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪燃焼促進補助成分群と、
脂肪燃焼促進遺伝子である熱産生蛋白遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪燃焼促進補助成分群と、
脂肪分解遺伝子であるβ2アドレナリン受容体の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪分解機能調整補助成分群と、
脂肪分解遺伝子であるβ2アドレナリン受容体の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪分解機能調整補助成分群との
6つのサプリメントに、グループ分けされた成分群を配合してなる、
ことを特徴とする。
なお、「及び/又は」の語は、JIS Z8301(規格票の様式)で、並列する二つの語句の両者を併合したもの、及び一方ずつの三通りを一括して厳密に示す表記法として認められている。これ以降の記載、及び特許請求の範囲においてもこの意味で用いる。
【0009】
本発明に係るサプリメントセットは、その実施の形態で、上記β3アドレナリン受容体遺伝子がβ3ARであり、上記熱産生蛋白遺伝子がUCP1であり、上記β2アドレナリン受容体がβ2ARである。しかし、所望の効果を得られる場合、これらの特定の遺伝子に限定されるものではない。
【0010】
本発明に係るサプリメントセットは、その実施の形態で、上記第一脂肪燃焼補助成分群が、クロム、マグネシウム、ビタミンB、パントテン酸、ナイアシン、及びシトラスアランチウムからなる群であり、
上記第二脂肪燃焼補助成分群が、フォルスコリン、α−リポ酸、及び共役リノール酸からなる群であり、
上記第一脂肪燃焼促進補助成分群が、ビタミンB、パントテン酸、食物繊維、及びγ−トコフェロールからなる群であり、
上記第二脂肪燃焼促進補助成分群が、L−カルニチン、ガルシニア・カンボジア、及びキトサンからなる群であり、
上記第一脂肪分解機能調整補助成分群が、ビタミンB、ビタミンB、パントテン酸、アミノ酸(BCAA)、及び白インゲン豆エキスからなる群であり、
上記第二脂肪分解機能調整補助成分群が、オルニチンからなる群である。
【0011】
本発明に係るサプリメントセットは、その実施の形態で、上記第二脂肪分解機能調整補助成分群が、さらにビール酵母を含む。
【0012】
本発明は、他の側面で、サプリメントセットの提供方法であり、
(i)上記6つのサプリメントに対応させて6つの処方枠を規定し、
(ii)変異が1種の遺伝子にのみ見られる場合、変異が有る遺伝子に6つの処方枠を割り当て、β3アドレナリン受容体遺伝子又は熱産生蛋白遺伝子の変異がホモの場合には、上記第一補助成分群に3つの処方枠を、第二補助成分群に3つの処方枠を割り当て、アドレナリン受容体遺伝子又は熱産生蛋白遺伝子の変異がヘテロの場合には、上記第一補助成分群に2つの処方枠を、上記第二補助成分群に4つの処方枠を割り当て、β2アドレナリン受容体の変異がホモの場合には、割り当てる処方枠は5つとし、上記第一補助成分群に3つの処方枠を、第二補助成分群に2つの処方枠を割り当て、β2アドレナリン受容体の変異がヘテロの場合には、割り当てる処方枠は4つとし、上記第一補助成分群に2つの処方枠を、上記第二補助成分群に2つの処方枠を割り当て、
(iii)変異が2種の遺伝子に見られる場合、変異が有る2種の遺伝子に各々3つの処方枠を割り当て、変異が3種の遺伝子に見られる場合、全ての遺伝子に各々2つの処方枠を割り当て、変異が2種又は3種の遺伝子に有る場合は、男性のときβ3アドレナリン受容体遺伝子>熱産生蛋白遺伝子>β2アドレナリン受容体の順に、女性のとき熱産生蛋白遺伝子>β3アドレナリン受容体遺伝子>β2アドレナリン受容体の順に従って多くの処方枠が与えられるように処方枠を割り当て、さらに、割り当てられた各処方枠の中で、対応する遺伝子の変異がホモの場合は、上記第一補助成分群を含むサプリメントを、ヘテロの場合は、上記第二補助成分群を含むサプリメントを割り当て、ただし、変異がヘテロの場合でも2つ以上の処方枠が割り当てられている場合は、必ず1つには第一補助成分群を含むサプリメントを割り当て、第一補助成分群を含むサプリメントに割り当てる最大の処方枠は2つとなるようにしている。
【0013】
本発明に係るサプリメントセットの提供方法では、その実施の形態で、上記β3アドレナリン受容体遺伝子をβ3AR、上記熱産生蛋白遺伝子をUCP1、上記β2アドレナリン受容体をβ2ARとしている。しかし、所望の効果を得られる場合、これらの特定の遺伝子に限定されるものではない。
【0014】
本発明に係るサプリメントセットの提供方法は、別の形態で、脂肪燃焼遺伝子であるβ3アドレナリン受容体遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループ
である第一脂肪燃焼補助成分群と、
脂肪燃焼遺伝子であるβ3アドレナリン受容体遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪燃焼補助成分群と、

脂肪燃焼促進遺伝子である熱産生蛋白遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪燃焼促進補助成分群と、
脂肪燃焼促進遺伝子である熱産生蛋白遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪燃焼促進補助成分群と、
脂肪分解遺伝子であるβ2アドレナリン受容体の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪分解機能調整補助成分群と、
脂肪分解遺伝子であるβ2アドレナリン受容体の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪分解機能調整補助成分群との
6つのサプリメントに、グループ分けされた成分群を配合してなる、遺伝子変異型に対応したサプリメントセットの提供方法であって、
上記第一脂肪燃焼補助成分群が、クロム酵母及び酸化マグネシウムを含むサブセット・サプリメントS1、ビタミンB、パントテン酸カルシウム、及びナイアシンを含むサブセット・サプリメントS2、並びにシトラスアランチウムエキスを含むサブセット・サプリメントS3からなる群であり、
上記第二脂肪燃焼補助成分群が、フォルスコリンを含むサブセット・サプリメントS10、α−リポ酸を含むサブセット・サプリメントS11、共役リノール酸を含むサブセット・サプリメントS12、並びに白インゲン豆エキスを含むサブセット・サプリメントS13からなる群であり、
上記第一脂肪燃焼促進補助成分群が、ビタミンB、及びパントテン酸カルシウムを含むサブセット・サプリメントS4、食物繊維を含むサブセット・サプリメントS5、並びにγ−トコフェロールを含むサブセット・サプリメントS6からなる群であり、
上記第二脂肪燃焼促進補助成分群が、L−カルニチンフマル酸を含むサブセット・サプリメントS14、ガルシニア・カンボジアエキスを含むサブセット・サプリメントS15、並びにキトサンを含むサブセット・サプリメントS16からなる群であり、
上記第一脂肪分解機能調整補助成分群が、ビタミンB、ビタミンB、及びパントテン酸カルシウムを含むサブセット・サプリメントS7、BCAAを含むサブセット・サプリメントS8、並びに白インゲン豆エキスを含むサブセット・サプリメントS9からなる群であり、
上記第二脂肪分解機能調整補助成分群が、L−オルニチン塩酸塩を含むサブセット・サプリメントS17、並びにビール酵母を含むサブセット・サプリメントS18からなる群であり、
上記第二補助成分群から選択するサブセット・サプリメントの数がn2=1のとき、上記第一補助成分群から選択するサブセット・サプリメントの数n1=2〜3の間となるように選定し、上記3種類の各遺伝子の変異の状態に対応して含有させるサブセット・サプリメントの選定数を、
a)遺伝子変異度が異なる二つの複合型の場合、すなわち、2種の遺伝子の変異が各々ホモ型とヘテロ型で、1種の遺伝子の変異がワイルド型の場合は、ホモ型の変異に対して第一補助成分群から選択するサブセット・サプリメントの数n1を基本としてn1=2、例外的にn1=3となるように設定し、第二補助成分群から選択するサブセット・サプリメントの数n2をn2=1とし、
b)3種の遺伝子のうち、ホモ型変異が1つである場合、n1=3、n2=3とし、
c)3種の遺伝子のうち、ヘテロ型変異が1つである場合、n1=2、n2=最大4とし、
d)2種の遺伝子がヘテロ型で、1種に変異がない場合、n1=1、n2=2とし、
e)3種の遺伝子に変異が存在する場合、その遺伝子変異が肥満度の判定方法の1つであるBMI指数(ボディ・マス・インデックス)の値に対する寄与度、そして、体型に対する寄与度を総合的に考慮したときに寄与度が最も大きい遺伝子についてn1=2もしくは、例外的にn1=3として優先的に設定し、
f)遺伝子に変異がないワイルド型はn1=0、n2=0とし、
g)3種の遺伝子が全てホモ型の場合、3つの遺伝子に対するn1=2、n2=1とし、
h)3種の遺伝子が全てヘテロ型の場合、n1=2、n2=1と設定し、
i)2種の遺伝子がホモ型の場合、その遺伝子に対するn1=2、n2=1とし、そして
j)3種の遺伝子に変異がない場合、各タイプの代表的サブセット・サプリメントを選定するようにしてなる選出ロジックに従って決定し、
摂取すべきサブセット・サプリメントを選出することとしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明により提供されるサプリメントセットにより、複数の関連する遺伝子の変異の状態によって生じる体質又は症状に対応するため、各遺伝子の変異の状態に対応する成分及び量を摂取できるサプリメントセットを提供することができる。これにより、複数の関連する遺伝子の変異の状態によって生じる体質又は症状を改善、防止又は抑制するために必要とされる成分を、より効率的に摂取することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一の実施形態)
本発明を適用してなる第一の実施形態の遺伝子変異型に対応したサプリメントセット及びその提供方法について説明する。ここでは、説明をわかり易くするため、肥満関連遺伝子の変異の状態に対応するサプリメントセット及びその提供方法を例として説明する。
日本人の肥満を解消するため、従来通りの食事制限や運動による方法を、該当者が有している遺伝子の変異に応じて適切に変更させるのが効果的と考えられている。例えば、遺伝子の変異により皮下脂肪よりも内臓脂肪がつきやすい体質の人には、糖質を控え内臓脂肪がつきにくいような食事をし、内臓脂肪が燃焼しやすいような運動を取り入れることが必須となってくる。しかしながら、これらの生活習慣を日ごろから継続的に怠りなく実行することは、なかなか困難であることも事実である。よって、サプリメントのような比較的摂取しやすい食品で栄養素や有効成分を摂取又は補うことで食事のバランスや運動の効果をサポートすることが重要である。このようにサプリメントを含めたダイエットメニューを遺伝子変異の状態に対応した内容にできれば、遺伝子が変異することによって発生する可能性のある肥満タイプのほぼ全数をカバーし、各肥満タイプに対応した適切なダイエットが可能となる。
【0017】
一方、これまでの栄養学の研究から、たとえば内臓脂肪の軽減に効果的な食品成分の特定が行われており、また、肥満に関連する個々の遺伝子の変異の状態と、その変異によって起る体質に対応する栄養素や有効成分について論文等などにより知られているものもある。このため、複数の肥満に関連する遺伝子の変異のタイプに対応する食事・サプリメントの選定においてはこれらの従来の知見を活用できる可能性がある。これら従来の知見は、個々の栄養素や有効成分についての知見や、1つの遺伝子の変異に対して1つの有効な成分を対応させているものが多く、有効性が報告されている栄養素や有効成分を複数組み合わせて摂取することについて報告されているものは少ない。しかし、肥満に関連する3つの遺伝子の変異の状態に応じて複数の栄養素や有効成分を適切に組み合わせて摂取することが、遺伝子が変異することによって発生する可能性のある肥満タイプのほぼ全てにおいて効果を得る上で必要であると考えられる。一方で、各遺伝子の変異に対して有効であることが知られている個々の栄養素や有効成分を単純に組み合わせただけでは、効果が相殺されてしまい効果が得られないか、又は、低くなってしまうことも懸念される。
【0018】
そこで、本発明者らは、鋭意検討を行い、遺伝子の変異の状態に応じた適切な栄養素や有効成分を適正量摂取できるサプリメントセット及びその提供方法を開発した。
本発明者らが開発したサプリメントセット及びその提供方法では、まず、組み合わせても効果が相殺される恐れが低く、種々の遺伝子の変異から生じる体質に対して改善効果がある栄養素や有効成分を選定する。選定した栄養素や有効成分を、改善効果がより強いとされている栄養素や有効成分のグループと、その他の栄養素や有効成分のグループとに分け、1つの遺伝子の変異に対応する栄養素や有効成分を2つのグループに分ける。したがって、選定した栄養素や有効成分は、遺伝子の変異の種類と、その遺伝子の変異から生じる体質に対する改善効果の強さに対応してグループ分けされ、各グループには1以上の栄養素や有効成分が割り当てられた状態となる。
【0019】
そして、1つのグループに割り当てられた成分を全て配合した1つの錠剤やカプセル形状などのサプリメントを形成することで、グループ数に対応する種類のサプリメントを準備する。このように準備したグループ数に応じた種類のサプリメントを、遺伝子の変異の状態に対応させて組み合わせ、サプリメントセットとする。このとき、遺伝子の変異の状態に対応させて栄養素や有効成分を適切な量摂取できるよう、各遺伝子の変異の態様の組み合わせに応じて組み合わせるサプリメントの種類と数を決定した。このようなサプリメントセットとして提供することで遺伝子の変異の状態に応じた適切な栄養素や有効成分を適正量摂取できるようにしている。
【0020】
したがって、例えば、本発明を適用してなる本実施形態の肥満関連遺伝子の変異型に対応したサプリメントセットは、肥満関連遺伝子の変異の状態から生じる肥満体質つまり肥満タイプに対応して適切な栄養素や有効成分を摂取できることで肥満を改善、防止又は抑制できるサプリメントセットとなる。前述のように、肥満関連遺伝子は、1つの遺伝子について検討するよりも、複数の遺伝子変異を測定した方がより適切な成分をサプリメントで摂取することができる対象の1つである。肥満関連遺伝子は、脂肪燃焼遺伝子と、脂肪燃焼促進遺伝子と、脂肪分解遺伝子とに分けることができる。そして、それぞれのホモ型、ヘテロ型、又はワイルド型の変異の状態を特定し、その肥満タイプに合った最も好ましい栄養素や有効成分を含有するサプリメントを組み合わせて摂取させることができる。
【0021】
本実施形態における脂肪燃焼遺伝子としては、β3アドレナリン受容体遺伝子(β3AR)を挙げることができる。β3AR(β3−adrenergic receptor)はヒト第8番染色体上8p12〜8p11.2に位置し、Gタンパク質共役受容体たんぱく質であるβ3アドレナリン受容体をコードしている。このβ3ARは、そのN末端から64番目のトリプトファンがアルギニンに置き換わった変異が知られており、ワイルド型、ホモ型、ヘテロ型の遺伝子型が存在する。このホモ又はヘテロ型変異を有する人は、ワイルド型の人と比べて基礎代謝が低く、痩せにくい体質を有する。また、腹部に脂肪が付きやすく、皮下脂肪よりも内臓脂肪が蓄積されやすい体質をしているとされている。
【0022】
本実施形態における脂肪燃焼促進遺伝子としては、熱産生蛋白遺伝子(UCP1)を挙げることができる。UCP1(Uncoupling protein 1)は、ヒト第4番染色体の4q28〜4q31に位置し、ミトコンドリアにおけるプロトン移送に関与する遺伝子として知られている。このUCP1には、5’末端から3826番目のアデニンがグアニンに変異した変異型が報告されており、ワイルド型、ホモ型、ヘテロ型の遺伝子型が存在する。このホモ又はヘテロ型変異を有する人は、ワイルド型の人と比べて基礎代謝が低く、痩せにくい体質を有する。また、下半身や臀部に脂肪が付きやすく、内蔵脂肪よりも皮下脂肪が蓄積されやすい体質をしているとされている。
【0023】
本実施形態における脂肪分解遺伝子としては、β2アドレナリン受容体(β2AR)を挙げることができる。β2AR(β2−adrenergic receptor)は、ヒト第5番染色体の5q31〜5q32に存在し、Gタンパク質共役受容体タンパク質であるβ2アドレナリン受容体をコードしている。このβ2ARには、N末端から16番目のアルギニンがグリシンに置き換わった変異が報告されており、ワイルド型、ホモ型、ヘテロ型の遺伝子型が存在する。このホモ又はヘテロ型変異を有する人は、ワイルド型の人と比べて基礎代謝量が高く、全体的に痩せた体型をしている。また、この遺伝子に変異を有する人は脂肪や筋肉が付きにくいとされている。
【0024】
このような脂肪燃焼遺伝子、脂肪燃焼促進遺伝子、及び脂肪分解遺伝子に対し、その遺伝子の変異により生じる体質に対して改善効果のある成分を機能的に割りつけて適正成分を選出する。本実施形態では、β3AR、UCP1、及びβ2ARをコードする各遺伝子の変異に対応させて、摂取すべき成分を決定するため、各々の遺伝子に変異がある場合に摂取すべき既知の成分を複数選出した。さらに、β3AR、UCP1、及びβ2ARをコードする各遺伝子の変異によって生じる潜在的体質を改善する成分、例えばUCP1に変異がある場合、皮下脂肪がつきやすいため、皮下脂肪の燃焼を補助する複数の成分を、β3ARに変異がある場合、糖代謝が低くなりやすい、内臓脂肪がつきやすいといった体質があるため、糖代謝を促進する成分や内臓脂肪を減らしたり、つきにくくしたりする複数の成分を選出した。これらの成分は、文献により栄養学的な観点からは、その効果が実証されてはいるが、遺伝子の研究からはその効果は評価されていない。
【0025】
さらに、β3AR、UCP1、及びβ2ARの各遺伝子の変異に対して有効であることが知られている個々の成分を単純に組み合わせただけでは、互いの成分の効果が相殺されてしまい効果が得られないか、又は、低くなってしまうことも懸念される。そこで、本発明者らは、鋭意検討を行い、前述のように選出した各遺伝子の変異型に対応する複数の成分の中から、組み合わせても効果が相殺され難いこと、さらに、各成分の作用の強さ、原料又は成分のコスト、入手しやすさなどを考慮して栄養素や有効成分を選定した。そして、このような3種類の遺伝子の変異に対して、表1に示すように、各遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がある栄養素や有効成分を、改善効果がより強いとされている栄養素や有効成分のグループである第一補助成分群と、その他の栄養素や有効成分のグループである第二補助成分群とに分けた。これにより栄養素や有効成分が6つのグループに分けられ、このようにグループ分けされた成分群を配合した6種類のサプリメントを作成した。
【0026】
【表1】

【0027】
なお、脂肪燃焼遺伝子、脂肪燃焼促進遺伝子、及び脂肪分解遺伝子として本実施形態ではβ3AR、UCP1、β2ARを挙げたが、変異により同様の影響を示す遺伝子であれば、本発明で対象とする遺伝子となり得、また他の肥満に関連する遺伝子も測定の対象とすることができる。
【0028】
脂肪燃焼遺伝子の変異に対して有効な成分(脂肪燃焼補助成分)としては、以下に限定されないが、クロム、マグネシウム、ビタミンB、パントテン酸、ナイアシン、シトラスアランチウム、フォルスコリン、α−リポ酸、共役リノール酸を挙げることができる。また、クロム、マグネシウム、ビタミンB、パントテン酸、ナイアシン、及びシトラスアランチウムは高い改善効果を有し、脂肪燃焼遺伝子の変異の影響が強い場合に摂取することがより好ましい。よって、脂肪燃焼補助成分を、クロム、マグネシウム、ビタミンB、パントテン酸、ナイアシン、及びシトラスアランチウムからなる群である第一脂肪燃焼補助成分と、フォルスコリン、α−リポ酸、及び共役リノール酸からなる群である第二脂肪燃焼補助成分とに分けることができる。
【0029】
脂肪燃焼促進遺伝子の変異に対して有効な成分(脂肪燃焼促進補助成分)としては、以下に限定されないが、ビタミンB、パントテン酸、食物繊維、γ−トコフェロール、L−カルニチン、ガルシニア・カンボジア、キトサンを挙げることができる。また、ビタミンB、パントテン酸、食物繊維、及びγ−トコフェロールは高い改善効果を有し、脂肪燃焼促進遺伝子の変異の影響が強い場合に摂取することがより好ましい。よって、脂肪燃焼促進補助成分を、ビタミンB、パントテン酸、食物繊維、及びγ−トコフェロールからなる群である第一脂肪燃焼促進補助成分と、L−カルニチン、ガルシニア・カンボジア、及びキトサンからなる群である第二脂肪燃焼促進補助成分とに分けることができる。
【0030】
脂肪分解遺伝子の変異に対して有効な成分(脂肪分解機能調整補助成分)としては、以下に限定されないが、ビタミンB、ビタミンB、パントテン酸、アミノ酸(BCAA)、白インゲン豆エキス、及びオルニチンを挙げることができる。また、ビタミンB、ビタミンB、パントテン酸、アミノ酸(BCAA)、及び白インゲン豆エキスは高い改善効果を有し、脂肪分解遺伝子の変異の影響が強い場合に摂取することがより好ましい。よって、脂肪分解機能調整補助成分をビタミンB、ビタミンB、パントテン酸、アミノ酸(BCAA)、及び白インゲン豆エキスからなる群である第一脂肪分解機能調整補助成分と、オルニチンからなる第二脂肪分解機能調整補助成分とに分けることができる。さらに、脂肪分解遺伝子に変異がある場合、胃腸の働きが弱い傾向が見られる。このため、脂肪分解遺伝子に変異がある場合は、ビール酵母からなる胃腸賦活成分を摂取することがより好ましい。
【0031】
このように選出、選択された成分をグループ分けしたものが表1であり、第一脂肪燃焼補助成分となるβ3AR遺伝子の変異に対応する第一補助成分群が、クロム、マグネシウム、ビタミンB、パントテン酸、ナイアシン、及びシトラスアランチウムからなり、これらの成分を含むサプリメントをA1とする。第二脂肪燃焼補助成分となるβ3AR遺伝子の変異に対応する第二補助成分群は、フォルスコリン、α−リポ酸、共役リノール酸からなり、これらの成分を含むサプリメントをA2とする。第一脂肪燃焼促進補助成分となるUCP1遺伝子の変異に対応する第一補助成分群は、ビタミンB、パントテン酸、食物繊維、及びγ−トコフェロールからなり、これらの成分を含むサプリメントをB1とする。第二脂肪燃焼促進補助成分となるUCP1遺伝子の変異に対応する第二補助成分群は、L−カルニチン、ガルシニア・カンボジア、及びキトサンからなり、これらの成分を含むサプリメントをB2とする。第一脂肪分解機能調整補助成分となるβ2AR遺伝子の変異に対応する第一補助成分群は、ビタミンB、ビタミンB、パントテン酸、アミノ酸(BCAA)、及び白インゲン豆エキスからなり、これらの成分を含むサプリメントをC1とする。第二脂肪分解機能調整補助成分となるβ2AR遺伝子の変異に対応する第二補助成分群は、オルニチンからなり、これらの成分を含むサプリメントをC2とする。なお、本実施形態では、胃腸賦活成分であるビール酵母をβ2AR遺伝子の変異に対応する第二補助成分群に加えており、サプリメントC2は、オルニチンとビール酵母を含んでいる。
【0032】
これらのサプリメントA1、A2、B1、B2、C1、C2に含まれる各成分の詳細は以下の通りであり、本実施形態では以下に説明する物質と量が各々のサプリメントに配合されている。第一脂肪燃焼補助成分に含まれる各成分の詳細は下記の通りである。
クロムは、糖質や脂質の代謝に関係の深いミネラルで、体内に糖質や脂質を含む栄養素が入ると、膵臓から発生するインシュリンを活性化させ、糖質や脂質を代謝させる。クロムの存在なくしては、糖質や脂質から摂取するエネルギー源・ブドウ糖を筋肉や肝臓に取り込むことができず、糖質や脂質も代謝されることなく、肥満へとつながる。クロムの成人1日の摂取量は、12μg〜54μgであることが好ましい。なお、クロムはクロム酵母として摂取することもできる。この場合、クロム酵母中のクロムの含有量に応じ、クロムの量が12μg〜54μgになるようにクロム酵母の量を決定する。本実施形態では、クロム酵母を、クロムの量が4μg〜6μgの範囲となるように1錠のサプリメントA1に配合している。
【0033】
マグネシウムは、糖の代謝を促進する効果を有し、ダイエットの面ではビタミンB1とクエン酸とともに摂取するとさらに効果的である。また、マグネシウムは脂肪酸のβ酸化という化学反応を促進するので脂肪が燃えやすくなり、さらなる脂肪燃焼効果を期待することができる。マグネシウムの成人1日の摂取量は、75mg〜360mgであることが好ましい。なお、マグネシウムは酸化マグネシウムとして摂取することもできる。この場合、酸化マグネシウム中のマグネシウムの含有量に応じ、マグネシウムの量が75mg〜360mgになるように酸化マグネシウムの量を決定する。本実施形態では、酸化マグネシウムを、マグネシウムの量が25mg〜40mgの範囲となるように1錠のサプリメントA1に配合している。
【0034】
ビタミンBは、糖質やブドウ糖をエネルギーに変える際の補酵素として作用する。ビタミンBが不足すると、糖代謝が悪くなり、疲れやすくなったり、手足がしびれたり、むくんだりなどといった症状が出る。マグネシウムと併せて摂取すると糖質を効率良く燃焼させる効果を発揮することができる。ビタミンBの成人1日の摂取量は、0.30mg〜36mgであることが好ましい。本実施形態では、ビタミンBを1mg〜4mgの範囲となるように1錠のサプリメントA1に配合している。
【0035】
パントテン酸は、脂質、糖質、タンパク質の代謝に効果を発揮する。パントテン酸の成人1日の摂取量は、パントテン酸カルシウムとして、1.65mg〜36mgであることが好ましい。本実施形態では、パントテン酸カルシウムを1mg〜4mgの範囲となるように1錠のサプリメントA1に配合している。
【0036】
ナイアシンは、糖質、脂質、タンパク質の代謝に不可欠である。ナイアシンの成人1日の摂取量は、3.3mgNE(ナイアシン当量)〜65mgNEであることが好ましい。本実施形態では、ナイアシンを2mgNE〜7mgNEの範囲となるように1錠のサプリメントA1に配合している。
【0037】
シトラスアランチウムエキスは、空腹感を抑え、体脂肪を燃焼させる効果がある。シトラスアランチウムエキスの成人1日の摂取量は、シトラスアランチウムエキス末として、50mg〜165mgであることが好ましい。本実施形態では、シトラスアランチウムエキス末を17mg〜18mgの範囲となるように1錠のサプリメントA1に配合している。
【0038】
第二脂肪燃焼補助成分に含まれる各成分の詳細は下記の通りである。
α−リポ酸には、2つの作用がある。ひとつは、α−リポ酸の持つ抗酸化能であり、活性酸素の発生を抑えたり、除去したりする事により、コレステロールや中性脂肪の酸化を抑える事ができる。これにより、高コレステロール血症や高脂血症などの、肥満の原因を防止して肥満を防ぐ。
また、ミトコンドリアに、糖質や脂質を運ぶ働きを持つため、α−リポ酸が体内に豊富に存在する事により、脂肪や糖分の代謝を助け、燃焼を促進することになる。このような、作用から肥満対策にα−リポ酸は適しているとされている。α−リポ酸の成人1日の摂取量は、75mg〜400mgであることが好ましい。本実施形態では、α−リポ酸を25mg〜33mgの範囲となるように1錠のサプリメントA2に配合している。
【0039】
フォルスコリンは、β3アドレナリン受容体を介せず直接脂肪細胞内の活性を促し、デンプンや脂肪、糖分の消化酵素であるリパーゼや、α−グルコシダーゼを抑制する事により、腸内でのそれぞれの吸収を阻害する。これにより、体が必要とする以上のデンプンや脂肪、糖分が蓄積されるのを防ぎ、ダイエット効果を持つとされている。また、フォルスコリンは、体内代謝を活発化し、摂取カロリーの基礎消費量を増やす働きもある。フォルスコリンの成人1日の摂取量は、20mg〜100mgであることが好ましい。なお、フォルスコリンはコレウスフォルスコリエキス末に含まれており、コレウスフォルスコリエキス末として摂取することもできる。この場合、コレウスフォルスコリエキス末中のフォルスコリンの含有量に応じ、フォルスコリンの量が20mg〜100mgになるようにコレウスフォルスコリエキス末の量を決定する。本実施形態では、コレウスフォルスコリエキス末を、フォルスコリンの量が7mg〜10mgの範囲となるように1錠のサプリメントA2に配合している。
【0040】
リノール酸は、殆どの植物油脂に含まれている脂肪酸で、血中の悪玉コレステロールを減少させて血管の健康を守り、動脈硬化などを予防します。また、リノール酸からできる共役リノール酸(別名異性化リノール酸)は、脂肪を分解する酵素の働きをサポートするため、肥満防止作用がある。共役リノール酸の成人1日の摂取量は、240mg〜1500mgであることが好ましい。なお、共役リノール酸を含有する紅花由来食用油脂を用いることもでき、この場合、紅花由来食用油脂中の共役リノール酸の含有量に応じ、共役リノール酸の量が240mg〜1500mgになるように紅花由来食用油脂の量を決定する。本実施形態では、紅花由来食用油脂を、共役リノール酸の量が80mg〜125mgの範囲となるように1錠のサプリメントA2に配合している。
【0041】
第一脂肪燃焼促進補助成分に含まれる各成分の詳細は下記の通りである。
ビタミンBは、細胞の再生やエネルギーの代謝を促し、脂質の代謝、体内で過酸化脂質ができるのを防ぐので成人病や肥満を予防するとされている。ビタミンBの成人1日の摂取量は、0.33mg〜36mgであることが好ましい。本実施形態では、ビタミンBを1mg〜4mgの範囲となるように1錠のサプリメントB1に配合している。
【0042】
食物繊維は、同時に摂取した食品の胃などの消化器官での滞留時間を増やすことで、食品のグリセミック・インデックス値を下げる働きやインスリンの分泌を抑制する効果がある。こうした食物繊維のメカニズムから、食物繊維を多く含む果物などの食品を摂取することは肥満を予防し、メタボリックシンドロームの回避に有効とされている。食物繊維の成人1日の摂取量は、490mg〜7000mgであることが好ましい。なお、食物繊維を含有する難消化性デキストリンを用いることもでき、この場合、難消化性デキストリン中の食物繊維の含有量に応じ、食物繊維の量が490mg〜7000mgになるように難消化性デキストリンの量を決定する。本実施形態では、難消化性デキストリンを、食物繊維の量が165mg〜700mgの範囲となるように1錠のサプリメントB1に配合している。
【0043】
γ−トコフェロールは、脂質状態を改善し、血小板活性を抑えることにより血栓が発生するリスクを抑える効果がある。γ−トコフェロールの成人1日の摂取量は、30mg〜300mgであることが好ましい。なお、γ−トコフェロールを含有するγ−トコフェロール末を用いることもでき、この場合、γ−トコフェロール末中のγ−トコフェロールの含有量に応じ、γ−トコフェロールの量が30mg〜300mgになるようにγ−トコフェロール末の量を決定する。本実施形態では、γ−トコフェロール末を、γ−トコフェロールの量が10mg〜30mgの範囲となるように1錠のサプリメントB1に配合している。
【0044】
第二脂肪燃焼促進補助成分に含まれる各成分の詳細は下記の通りである。
カルニチンは、必須アミノ酸であるリジンとメチオニンによって主に肝臓で生成され、主に骨格筋と心臓の筋肉に含まれる。カルニチンは、細胞内のミトコンドリアの膜の部分で待ち受けて、血液で運ばれてきた脂肪酸を次々と分解して、ミトコンドリアに送りこみ、やがてエネルギーとして消費される。しかし、ミトコンドリアに入れなかった脂肪酸は、エネルギーとして消費されずに脂肪に合成されて体内に蓄積し、肥満の要因となる。このようにカルニチンは、血液中の脂質を筋肉に運び代謝を促進するために重要な働きをするが、20代をピークにして年齢を重ねるごとに体内の合成能力が衰えるためにカルニチンが減少する。そこで体外からカルニチンを補ってあげることが、肥満防止に効果的と考えられる。カルニチンの成人1日の摂取量は、L−カルニチンとして200mg〜1700mgであることが好ましい。なお、カルニチンとして、L−カルニチンフマル酸塩、L−カルニチン酒石酸塩などを用いることもできる。この場合、カルニチンフマル酸塩、カルニチン酒石酸塩などのカルニチンの含有量に応じ、カルニチンの量が200mg〜1700mgになるようにL−カルニチンフマル酸塩、L−カルニチン酒石酸塩などの量を決定する。本実施形態では、L−カルニチンフマル酸塩を、L−カルニチンの量が67mg〜140mgの範囲となるように1錠のサプリメントB2に配合している。
【0045】
ガルシニア・カンボジアは、肥満の防止に役立つとされている。果実の皮に含まれる有効成分ヒドロキシクエン酸が、脂肪の合成を妨げる作用を持っており、炭水化物とタンパク質の代謝によって脂肪の生成を遅らせる「脂質生成抑制剤」として食欲を抑える効果がある。ヒドロキシクエン酸が食欲を抑制するので、自然と食べる量が減少し、肥満の防止につながる。ガルシニア・カンボジアエキス末としての成人1日の摂取量は、140mg〜1000mgであることが好ましい。本実施形態では、ガルシニア・カンボジアエキス末を50mg〜83mgの範囲となるように1錠のサプリメントB2に配合している。
【0046】
キトサンは、脂質の吸収・分解を抑制し、燃焼と排泄を促進し体脂肪を減少させ、ダイエット効果を示し、ひいては生活習慣病の予防や改善に役立つとされている。キトサンの成人1日の摂取量は、30mg〜1000mgであることが好ましい。本実施形態では、キトサンを10mg〜83mgの範囲となるように1錠のサプリメントB2に配合している。
【0047】
第一脂肪分解機能調整補助成分に含まれる各成分の詳細は下記の通りである。
ビタミンBは、脂質の代謝をよくして脂肪肝を予防する効果がある。ビタミンBの成人1日の摂取量は、0.30mg〜45mgであることが好ましい。本実施形態では、ビタミンBを1mg〜5mgの範囲となるように1錠のサプリメントC1に配合している。
【0048】
バリン・ロイシン・イソロイシンからなるアミノ酸(BCAA)は、肥満防止には適度な運動が不可欠であることを考慮して、運動前後に摂取することで効果があがる。筋肉のエネルギー源として働くので、運動前に取ると筋力がアップし、代謝がよくなって太りにくい体になり、運動後に取ると疲労が蓄積されにくくなる。結果的に無理なく運動を継続できるようになり、肥満防止につながる。BCAAの成人1日の摂取量は、240mg〜2000mgであることが好ましい。本実施形態では、BCAAを80mg〜200mgの範囲となるように1錠のサプリメントC1に配合している。
【0049】
白インゲン豆エキスは、αアミラーゼを抑制する働きがある。体内に摂取された炭水化物はαアミラーゼという酵素とデンプンが小腸で結合してブドウ糖に分解され、体内に吸収される。ブドウ糖は身体がカロリーを必要としているときはエネルギーとして燃やされるが、余分なブドウ糖は肝臓や筋肉からさらに脂肪細胞へと移行して蓄えられる。これが肥満を引き起こす原因となる。白インゲン豆抽出物によってαアミラーゼの分泌が抑制されると、このデンプンの分解がブロックされるためにブドウ糖に分解されず、結果として小腸でも吸収されないので肥満防止にもなる。白インゲン豆エキスの成人1日の摂取量は、300mg〜1035mgであることが好ましい。本実施形態では、白インゲン豆エキスを100mg〜115mgの範囲となるように1錠のサプリメントC1に配合している。
【0050】
第二脂肪分解機能調整補助成分に含まれる各成分の詳細は下記の通りである。
オルニチンは、脳の下垂体に作用して成長ホルモンの分泌を促進する。成長ホルモンの分泌は、タンパク質の合成を促進して筋肉を増強し、基礎代謝を高めて肥満の予防につながる。オルニチンの成人1日の摂取量は、L−オルニチン塩酸塩として450mg〜1050mgであることが好ましい。本実施形態では、L−オルニチン塩酸塩を150mg〜170mgの範囲となるように1錠のサプリメントC2に配合している。
【0051】
第二脂肪分解機能調整補助成分と共にサプリメントC2に配合される胃腸賦活成分の詳細は下記の通りである。
ビール酵母は、乳酸菌などの腸の働きに役立つ菌の増加、胃の働きの活性化などの作用があり、胃腸の働きを活発にする。さらに、ビタミンB類が栄養の燃焼代謝をスムーズにして基礎代謝を高める効果も期待できる。ビール酵母の成人1日の摂取量は、90〜600mgであることが好ましい。本実施形態では、ビール酵母を30mg〜100mgの範囲となるように1錠のサプリメントC2に配合している。
【0052】
ここで、各成分の有効量としては、摂取回数に応じて、その成分単独で摂取する場合に1日に摂取するべき量となるように各サプリメントに含有させる有効量を決定すればよい。さらに、本発明では、各サプリメントの1回に摂取する数を2又は2の倍数としている。
したがって、例えば1つの成分のサプリメントに関し1回2錠の摂取を基本とする場合、1日3回摂取するのであれば、1日に摂取するべき量の6分の1の量が有効量として1錠のサプリメントに含まれていればよい。1つの成分のサプリメントに関し1回4錠の摂取を基本とする場合、1日3回摂取するのであれば、1日に摂取するべき量の12分の1の量が有効量として1錠のサプリメントに含まれていればよい。したがって、摂取回数に応じて適宜含有量を変更することができる。各成分の摂取量は、成分の性質により異なるため一概には言えないが、各成分の好ましい1日の摂取量の1.5〜2倍を上限の目安として1日に摂取されることが好ましい。
【0053】
1つの成分のサプリメントに関し1回2錠の摂取を基本とすれば、サプリメントセットに含まれる錠数を最小限にできるため、1回に摂取するサプリメント数を減らす上では、1つの成分のサプリメントに関し1回2錠の摂取を基本し、1日に摂取するべき量の6分の1の量が有効量として含まれているサプリメントを形成することが好ましい。このため、本実施形態では、1日に摂取するべき量の6分の1の量が有効量として含まれているサプリメントを形成している。
【0054】
このような各補助成分群の成分を配合したサプリメントA1、A2、B1、B2、C1、C2の6種類のサプリメントをサプリメントセットとするため、遺伝子の変異の状態に応じ、以下の方法によって、サプリメントセットとして組み合わせるサプリメントの種類と数、つまり、処方を決定する。1つのサプリメントセットは、原則、6つのサプリメントを含む構成とするため、1種類の遺伝子の変異の状態に応じて6つのサプリメントの処方枠を用意する。なお、本実施形態では、肥満体質に関連する3つの遺伝子に対し、それぞれの遺伝子の変異から生じる体質に対する改善効果が強いものとその他のものとの2種類に栄養素や有効成分をグループ分けし、6種類のサプリメントを作製している。このため、必要に応じて6種類のサプリメントをすべて組み合わせることができるようにサプリメントセットは、原則、6つのサプリメントで構成するようにしている。
【0055】
遺伝子検査の結果、本実施形態ではβ3AR、UCP1、β2ARの3つの遺伝子の変異の有無の結果を参照する。そして、6つのサプリメントに対応させて6つの処方枠を想定し、変異がある遺伝子の数に応じて、変異が有る遺伝子にこの処方枠を割り当てる。このとき、基本は、変異が1種の遺伝子にのみ見られる場合、変異が有る遺伝子に6つの処方枠を割り当てる。変異が2種の遺伝子に見られる場合、変異が有る2種の遺伝子に各々3つの処方枠を割り当てる。変異が3種の遺伝子に見られる場合、全ての遺伝子に各々2つの処方枠を割り当てる。
【0056】
変異が1種の遺伝子にのみ見られる場合、変異が有る遺伝子に6つの処方枠を割り当てるが、体質等への影響がより強いβ3AR又はUCP1の変異がホモの場合には、第一補助成分群に3つの処方枠を、第二補助成分群に3つの処方枠を割り当てる。体質等への影響がより強いβ3AR又はUCP1の変異がヘテロの場合には、第一補助成分群に2つの処方枠を、第二補助成分群に4つの処方枠を割り当てる。体質等への影響が最も弱いβ2ARの変異がホモの場合には、割り当てる処方枠は5つとし、第一補助成分群に3つの処方枠を、第二補助成分群に2つの処方枠を割り当てる。β2ARの変異がヘテロの場合には、割り当てる処方枠は4つとし、第一補助成分群に2つの処方枠を、第二補助成分群に2つの処方枠を割り当てる。
【0057】
複数の遺伝子に変異が有る場合は、男性はβ3AR>UCP1>β2ARの順に、女性はUCP1>β3AR>β2ARの順に体質等に影響を受けるので、このような影響の強さに応じ、体質への影響が大きい遺伝子に対して多くの処方枠が与えられるように処方枠を割り当てる。さらに、割り当てられた各処方枠の中で、対応する遺伝子の変異がホモの場合は、第一補助成分群を含むサプリメントを、ヘテロの場合は、第二補助成分群を含むサプリメントを割り当てる。ただし、変異がヘテロの場合でも2つ以上の処方枠が割り当てられている場合は、必ず1つには第一補助成分群を含むサプリメントを割り当てる。また、1つの遺伝子にしか変異が無い場合を除き、第一補助成分群を含むサプリメントに割り当てる最大の処方枠は2つとする。
【0058】
このように遺伝子の変異の状態に応じて割り当てられた処方枠に対応するサプリメントを当てはめることで、表2及び表3のように、遺伝子の変異の状態に対応して組み合わせるサプリメントの種類と数、つまり、処方が決まる。そして、このように遺伝子の変異の状態に対応して構成したサプリメントセットを摂取することで、遺伝子の変異の状態に応じた適切な栄養素や有効成分を適正量摂取できるようになる。なお、表2及び表3において、β3ARに変異を有し、UCP1に変異を有さない場合に、「脂肪燃焼低下型」とし、UCP1に変異を有し、β3ARに変異を有さない場合に、「脂肪燃焼促進低下型」とし、β2ARのみに変異を有する場合に、「脂肪分解促進型」とし、脂肪燃焼遺伝子、脂肪燃焼促進遺伝子、脂肪分解遺伝子のいずれにも変異を有するか、脂肪分解関連遺伝子以外の2種類の遺伝子に変異を有する肥満型の総称を「混合型」とした。なお、「混合型」では、前述のように、女性において脂肪燃焼促進遺伝子の影響が強く、男性では脂肪燃焼遺伝子の影響が強い。
【0059】
【表2】

【表3】

【0060】
例えば、表2の遺伝子型13の男性の場合、β3AR、UCP1及びβ2ARの全てに変異を有しているので「混合型」に分類される。さらにこの男性は、β3AR、UCP1及びβ2ARの全てがホモの変異を有している。このため、基本では、全ての遺伝子に各々2つの処方枠を割り当てることになる。しかし、β3AR>UCP1>β2ARの順に体質等に影響を受けるので、β3ARの変異に対する有効成分に3つの処方枠、UCP1の変異に対する有効成分に2つの処方枠、β2ARの変異に対する有効成分に1つの処方枠を割り当てる。そして、全ての遺伝子の変異がホモであるため、β3ARの変異に対する第一補助成分群を含むサプリに2つの処方枠、第二補助成分群を含むサプリに1つの処方枠、UCP1の変異に対する第一補助成分群を含むサプリに2つの処方枠、β2ARの変異に対する第一補助成分群を含むサプリに1つの処方枠を各々割り当てる。
【0061】
また、例えば、表3の遺伝子型46の女性の場合も、β3AR、UCP1及びβ2ARの全ての遺伝子に変異があるので「混合型」に分類される。さらにこの女性は、β3ARとUCP1がヘテロの変異を有し、β2ARがホモの変異を有している。このため、基本では、全ての遺伝子に各々2つの処方枠を割り当てることになる。しかし、UCP1>β3AR>β2ARの順に体質等に影響を受けるので、UCP1の変異に対する有効成分に3つの処方枠、β3ARの変異に対する有効成分に2つの処方枠、β2ARの変異に対する有効成分に1つの処方枠を割り当てる。そして、β3ARの変異に対する有効成分に2つの処方枠が割り当てられ、β3ARの変異がヘテロであるため、β3ARの変異に対する第一補助成分群に1つの処方枠を割り当て、残りの1つが第二補助成分群に割り当てられる。最も影響が大きいUCP1の変異に対する有効成分に3つの処方枠が割り当てられ、UCP1の変異がヘテロであるため、第一補助成分群に1つの処方枠を割り当て、残りの2つがUCP1の変異に対する第二補助成分群に割り当てられる。β2ARの変異に対する有効成分に1つの処方枠が割り当てられ、β2ARの変異がホモであるため、β2ARの変異に対する第一補助成分群に1つの処方枠が割り当てられる。
【0062】
このような本実施形態のサプリメントセット及びその提供方法の具体例について説明する。
表1に示すように、各成分群に含まれる成分を含有するサプリメントを製造し、6種類のサプリメントA1、A2、B1、B2、C1、C2を準備した。すなわち、β3ARの変異に対する第一脂肪燃焼補助成分つまりβ3ARの第一補助成分群の栄養素や有効成分を含む第一脂肪燃焼補助成分群含有サプリメントであるサプリメントA1、第二脂肪燃焼補助成分つまりβ3ARの第二補助成分群の栄養素や有効成分を含む第二脂肪燃焼補助成分群含有サプリメントであるサプリメントA2、UCP1の変異に対する第一脂肪燃焼促進補助成分つまりUCP1の第一補助成分群の栄養素や有効成分を含む第一脂肪燃焼促進補助成分群含有サプリメントであるサプリメントB1、第二脂肪燃焼促進補助成分つまりUCP1の第二補助成分群の栄養素や有効成分を含む第二脂肪燃焼促進補助成分群含有サプリメントであるサプリメントB2、さらに、β2ARの変異に対する第一脂肪分解機能調整補助成分つまりβ2ARの第一補助成分群の栄養素や有効成分を含む第一脂肪分解機能調整補助成分群含有サプリメントであるサプリメントC1、第二脂肪分解機能調節補助成分つまりβ2ARの第二補助成分群の栄養素や有効成分を含む第二脂肪分解機能調整補助成分群含有サプリメントであるサプリメントC2を製造した。
【0063】
本実施形態では、各サプリメントA1、A2、B1、B2、C1、C2の1錠は、1日に摂取されるべき量の6分の1の成分量を含んでおり、これらのサプリメントからなるサプリメントセットを原則1日3回で摂取されるように構築した。ただし、表2及び表3中の※が付いた番号12、及び番号6では、表2に示すように第二脂肪燃焼補助成分が、サプリメントセット中に4つ含まれているため、1日3回摂取すると過度に摂取しすぎてしまうため、1日2回の摂取とする。
【0064】
このような各サプリメントA1、A2、B1、B2、C1、C2を表2及び表3に従って組み合わせ、例えば1回に摂取する分のサプリメントを1つの袋などで包装して1包のサプリメントセットとする。そして、利用者の遺伝子情報を入手し、肥満関連遺伝子であるβ3AR、UCP1、β2ARの変異の状態から表2及び表3に従って必要なサプリメントセットを選択し利用者に提供する。利用者にサプリメントを提供するときは、摂取回数や日数などの単位に応じて必要な数のサプリメントセットを、例えば1日3回摂取の場合は、30日分であれば90包提供する。
【0065】
遺伝子情報は、サプリメントセットの利用者つまり被検者の遺伝子検査用検体を公知の様々な遺伝子診断方法により処理し、β3AR、UCP1、及びβ2ARをコードする各遺伝子の変異の検出を行うことで得ることができる。検体としては、被検者の血液、唾液、口内粘膜細胞等を用いることができる。検査は、PCR−SSCP法、PCR−RFLP法、PCR−シークエンス法又はダイレクトシークエンス法、DNAチップによるSNP検出法、インベーダー法、TaqMan法、シングルヌクレオチドプライマー伸長反応法、SNaPshot法、MassARRAY法、SNP−IT法、BeadArray法、ASP−PCR法、SSCP法等の種々の遺伝子診断により行うことができる。遺伝子多型としては、例えば、一塩基多型(SNP)、1〜数十塩基が欠失や挿入しているもの、及び2塩基から数十塩基を1単位とする配列が繰り返し存在する部位において、その繰り返し回数が異なるものが挙げられる。
【0066】
例えば、まず、被検者のほおの内側を専用の採取棒でこするようにして口腔内の粘膜を採取する。採取した粘膜を適宜のPBS緩衝液に懸濁する。続いて遠心分離を行い、上清を除去する。この溶液中に、プロテアーゼKを含むリン酸緩衝液を混合して撹拌しながらインキュベートする。その後、フェノール処理、エタノール処理などを行うことでDNAを抽出精製する。このような公知の方法で得られたβ3AR遺伝子、UCP1遺伝子、β2AR遺伝子をポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)により増幅する。
【0067】
PCRによる目的遺伝子の増幅も公知の様々な方法で行うことができる。例えば、抽出精製したDNAにPCR反応組成液を添加し、90〜95℃で目的の二本鎖DNAを熱変性し、50〜60℃で一本鎖になったDNAをアニーリングさせ、70〜75℃で目的とするDNAの伸長反応を進めるというサイクルを1サイクルとし、このような温度変化サイクルを必要となる目的遺伝子の量に応じ20回から50回といったような所定の回数繰り返すことでPCR反応を行い、目的遺伝子を含むDNA断片の増幅を行う。PCR反応組成液も公知のものでよく、例えばPCR緩衝液、dNTP、必要となるプライマーDNA、TaqDNAポリメラーゼ、蒸留水などからなる組成である。温度変化サイクルは、温度や時間の条件を適宜調整できるが、例えば、94℃で30秒→64℃で30秒→72℃で2分を1サイクルとし、このサイクルを30サイクル繰り返す。
【0068】
こうして得られた目的遺伝子を含む増幅DNAは、電気泳動などの公知の方法を用いて各遺伝子の変異の検出を行う。電気泳動で検出を行う場合は、公知の方法を用い、目的遺伝子を含む増幅DNAを制限酵素で処理した後、アガロースゲル電気泳動法により電気泳動を行う。電気泳動後、エチジウムブロミドを加えた緩衝液にアガロースゲルを浸漬して染色を行う。染色後、暗室でゲルに紫外線を照射し、DNA断片の移動度を見ることで変異の有無及び変異の状態を判断する。なお、変異の検出は、上記のような制限酵素を用いた方法に限定されず、例えばDNAシーケンサーなど公知の種々の方法を用いることができる。
【0069】
このように検出された遺伝情報において、例えば、利用者が男性であり、利用者の肥満関連遺伝子の変異の状態が脂肪燃焼遺伝子であるβ3ARと脂肪分解遺伝子であるβ2ARとにホモ型変異を有し、脂肪燃焼促進遺伝子であるUCP1に変異を有していない場合、表2に示す脂肪燃焼低下型の番号7のタイプであり、表2より、2つの第一脂肪燃焼補助成分群含有サプリメントであるサプリメントA1と、2つの第二脂肪燃焼補助成分群含有サプリメントであるサプリメントA2と、2つの第一脂肪分解機能調節補助成分群含有サプリメントであるサプリメントC1とを組み合わせたサプリメントセットを提供する。
【0070】
このような本実施形態のサプリメントセットとすることにより、遺伝子の変異の状態に応じた適切な栄養素や有効成分を適正量摂取できるようになる。さらに、遺伝子の変異の状態に応じた適切な栄養素や有効成分を適正量摂取できることにより、サプリメントの摂取によって体質又は体質から来る症状等を従来よりも適切で効率的に改善できる。加えて、遺伝子の変異に対応させて成分群を設定し、その成分群を配合したサプリメントを組み合わせてサプリメントセットとするため、遺伝子の変異の状態に対応させて必要な個々の成分のサプリメントを必要とする成分の数だけ組み合わせたり、個々の遺伝子の変異の状態に対応した成分を配合したオーダーメイドのサプリメントを作製したりするのに比べ、煩雑な製造作業や手間を省くことができ、また、サプリメントの製造コストを削減することもできる。
【0071】
なお、各サプリメントの1回に摂取する数を4錠、6錠などとした場合は、サプリメントセットに組み合わせる各サプリメントの数は、表2、表3に示した数の2倍、4倍となる。したがって、サプリメントセットに組み合わせる各サプリメントの数をn、各サプリメントの1回に摂取する数をm(ただしmは2の倍数)、各サプリメントの1回に摂取する数を2錠としたときのサプリメントセットに組み合わせる各サプリメントの数をNとすると、n=N×(m/2)となる。
【0072】
また、本発明は、肥満関連遺伝子に限らず複数の遺伝子の変異が影響する体質や症状に対応するサプリメントに適用することができる。また、本発明のサプリメントは、形態としてカプセルや錠剤に限らず、組み合わせて摂取することが可能な様々な形態を採用することができる。また、サプリメントは、栄養素や有効成分のほかに、公知の添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば、担体、嬌味剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、保存剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0073】
(第二の実施形態)
本発明を適用してなる第二の実施形態である肥満関連遺伝子の変異の状態に対応したサプリメントセット及びその提供方法について説明する。本実施形態が第一の実施形態と相違する点は、本実施形態では、個々の成分を含む既存のサプリメントなどを組み合わせて製品化することを前提とし、一回に摂取する錠数を制限するため、肥満タイプに応じた効果を得るのに必要な最低限の成分のサプリメントを組み合わせ、サプリメントセットとしたことにある。
【0074】
すなわち、既存のサプリメントなどを用いて肥満関連遺伝子の変異の状態から生じる肥満体質つまり肥満タイプに対応した適切な栄養素や有効成分を全て摂取させようとすると、多数の錠剤やカプセル状などのサプリメントを摂取しなければならないことになる。例えば、第一の実施形態の表1に示す成分を個々のサプリメントで摂取する場合、表3の番号1の女性の場合には、第一脂肪燃焼補助成分となるβ3AR遺伝子の変異に対応する第一補助成分群、第二脂肪燃焼補助成分となるβ3AR遺伝子の変異に対応する第二補助成分群、第一脂肪分解機能調整補助成分となるβ2AR遺伝子の変異に対応する第一補助成分群を摂取する必要があり、仮に各サプリメントが成分を必要な量含んでいたとしても、1回に14個のサプリメントを摂取しなければいけないことになる。このように、1つのサプリメントに栄養素や有効成分が1、2種しか含まれていないときには多数の錠剤やカプセルなどを摂取しなければならなくなる。
【0075】
そこで、本発明者らは鋭意検討を行い肥満関連遺伝子の変異の状態に応じた適切な栄養素や有効成分を、既存のサプリメントなどで摂取する場合でも、できるだけ少ない数のサプリメントの摂取で肥満関連遺伝子の変異の状態に応じて効果が得られるサプリメントセット及びその提供方法を開発した。本発明者らが開発した本実施形態の肥満関連遺伝子の変異の状態に対応したサプリメントセット及びその提供方法でも、まず、組み合わせても効果が相殺される恐れが低く、種々の遺伝子の変異から生じる体質に対して改善効果がある栄養素や有効成分を選定する点は第一の実施形態と同じである。したがって、第一の実施形態と同様、肥満に関連する3種類の遺伝子の変異に対して、表4に示すように、各遺伝子の変異から生じる体質に対して改善効果がある栄養素や有効成分を、改善効果がより強いとされている栄養素や有効成分のグループである第一補助成分群と、その他の栄養素や有効成分のグループである第二補助成分群とに分けた。
【0076】
【表4】

【0077】
なお、本実施形態でも、脂肪燃焼遺伝子、脂肪燃焼促進遺伝子、及び脂肪分解遺伝子として本実施形態ではβ3AR、UCP1、β2ARを例として説明するが、変異により同様の影響を示す遺伝子であれば、本発明で対象とする遺伝子となり得る。
【0078】
脂肪燃焼遺伝子の変異に対して有効な成分(脂肪燃焼補助成分)としては、クロム、マグネシウム、ビタミンB、パントテン酸、ナイアシン、シトラスアランチウム、フォルスコリン、α−リポ酸、共役リノール酸、白インゲン豆エキスを挙げることができる。また、クロム、マグネシウム、ビタミンB、パントテン酸、ナイアシン、及びシトラスアランチウムは高い改善効果を有し、脂肪燃焼遺伝子の変異の影響が強い場合に摂取することがより好ましい。よって、脂肪燃焼補助成分を、クロム、マグネシウム、ビタミンB、パントテン酸、ナイアシン、及びシトラスアランチウムからなる群である第一脂肪燃焼補助成分と、フォルスコリン、α−リポ酸、共役リノール酸、及び白インゲン豆エキスからなる群である第二脂肪燃焼補助成分とに分けることができる。このとき、本実施形態では、各補助成分群から選んだ一部の成分のみを摂取することになるため、第一の実施形態と異なり、表4に示すように、第二脂肪燃焼補助成分であるβ3AR遺伝子の変異に対応する第二補助成分群には、白インゲン豆エキスを入れてある。
【0079】
脂肪燃焼促進遺伝子の変異に対して有効な成分(脂肪燃焼促進補助成分)としては、ビタミンB、パントテン酸、食物繊維、γ−トコフェロール、カルニチン、ガルシニア・カンボジア、キトサンを挙げることができる。また、ビタミンB、パントテン酸、食物繊維、及びγ−トコフェロールは高い改善効果を有し、脂肪燃焼促進遺伝子の変異の影響が強い場合に摂取することがより好ましい。よって、脂肪燃焼促進補助成分を、ビタミンB、パントテン酸、食物繊維、及びγ−トコフェロールからなる群である第一脂肪燃焼促進補助成分と、カルニチン、ガルシニア・カンボジア、及びキトサンからなる群である第二脂肪燃焼促進補助成分とに分けることができる。
【0080】
脂肪分解遺伝子の変異に対して有効な成分(脂肪分解機能調整補助成分)としては、ビタミンB、ビタミンB、パントテン酸、アミノ酸(BCAA)、白インゲン豆エキス、オルニチン、及びビール酵母を挙げることができる。また、ビタミンB、ビタミンB、パントテン酸、アミノ酸(BCAA)、及び白インゲン豆エキスは高い改善効果を有し、脂肪分解遺伝子の変異の影響が強い場合に摂取することがより好ましい。よって、脂肪分解機能調整補助成分をビタミンB、ビタミンB、パントテン酸、アミノ酸(BCAA)、及び白インゲン豆エキスからなる群である第一脂肪分解機能調整補助成分と、オルニチンからなる第二脂肪分解機能調整補助成分とに分けることができる。さらに、脂肪分解遺伝子に変異がある場合、胃腸の働きが弱い傾向が見られる。このため、脂肪分解遺伝子に変異がある場合は、ビール酵母からなる胃腸賦活成分を摂取することがより好ましい。
【0081】
すなわち、本実施形態では、表4に示すように、β3ARの変異に対する脂肪燃焼補助成分を、クロム酵母、酸化マグネシウム、ビタミンB、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、及びシトラスアランチウムエキス末からなる群である第一脂肪燃焼補助成分となるβ3AR遺伝子の変異に対応する第一補助成分群と、フォルスコリンとしてコレウスフォルスコリエキス末、α−リポ酸、共役リノール酸として紅花由来食用油脂、及び白インゲン豆エキスからなる群である第二脂肪燃焼補助成分となるβ3AR遺伝子の変異に対応する第二補助成分群とに分けた。また、UCP1の変異に対する脂肪燃焼促進補助成分を、ビタミンB、パントテン酸カルシウム、食物繊維として難消化性デキストリン、及びγ−トコフェロール末からなる群である第一脂肪燃焼促進補助成分となるUCP1遺伝子の変異に対応する第一補助成分群と、L−カルニチンフマル酸塩、ガルシニア・カンボジアエキス末、及びキトサンからなる群である第二脂肪燃焼促進補助成分となるUCP1遺伝子の変異に対応する第二補助成分群とに分けた。さらに、β2ARの変異に対する脂肪分解機能調整補助成分をビタミンB、ビタミンB、パントテン酸カルシウム、アミノ酸(BCAA)、及び白インゲン豆エキスからなる群である第一脂肪分解機能調整補助成分となるβ2AR遺伝子の変異に対応する第一補助成分群と、L−オルニチン塩酸塩からなる第二脂肪分解機能調整補助成分となるβ2AR遺伝子の変異に対応する第二補助成分群とに分けた。なお、本実施形態でもビール酵母からなる胃腸賦活成分を第二脂肪分解機能調整補助成分のグループに入れている。
【0082】
このような各補助成分群を構成する成分の詳細は第一の実施形態で説明した通りであり、第一の実施形態で説明したような物質を、第一の実施形態で説明したような量で摂取することが好ましい。また、各成分の有効量としては、摂取回数に応じて1日に摂取するべき量を摂取できればよく、例えば1日3回摂取するのであれば、1日に摂取するべき量の3分の1の量が有効量として含まれているサプリメントを組み合わせてサプリメントセットとすればよい。したがって、摂取回数に応じて適宜の有効量のサプリメントを組み合わせることができる。各成分の摂取量は、成分の性質により異なるため一概には言えないが、各成分の好ましい1日の摂取量の1.5〜2倍を上限の目安として1日に摂取されることが好ましい。
【0083】
このように選択した各々の成分を、その必要な量で含むサプリメントを既存のサプリメントから選出し、肥満関連遺伝子の変異の状態に対応させて組み合わせ、サプリメントセットとする。このとき、選択した各成分を含むサプリメントを選出して使用するが、成分によっては従来から組み合わせて1つのサプリメントに配合されている場合があり、そのような複数の成分を含有するサプリメントを使用することで、サプリメントセットに組み合わせるサプリメントの数をより減らすことができる。例えば、β3AR遺伝子の変異に対応する第一補助成分群のクロムとマグネシウムは共に摂取されることが好ましいため、既存のサプリメントにおいて1つのサプリメントに共に含有されている場合が多い。そこで、本実施形態では、クロムとマグネシウムとを含有するサプリメントを選出して使用する。ビタミンB、パントテン酸、及びナイアシンも共に摂取されることが好ましいため、既存のサプリメントにおいて1つのサプリメントに共に含有されている場合が多い。そこで、本実施形態では、ビタミンB、パントテン酸、及びナイアシンを含有するサプリメントを選出して使用する。
【0084】
UCP1遺伝子の変異に対応する第一補助成分群のビタミンB及びパントテン酸は共に摂取されることが好ましいため、既存のサプリメントにおいて1つのサプリメントに共に含有されている場合が多い。そこで、本実施形態では、ビタミンB、パントテン酸、及びナイアシンを含有するサプリメントを選出して使用する。β2AR遺伝子の変異に対応する第一補助成分群のビタミンB、ビタミンB、及びパントテン酸は共に摂取されることが好ましいため、既存のサプリメントにおいて1つのサプリメントに共に含有されている場合が多い。そこで、本実施形態では、ビタミンB、ビタミンB、及びパントテン酸を含有するサプリメントを選出して使用する。
【0085】
このようにして選択した各遺伝子の変異に対応する第一補助成分群と第二補助成分群の栄養素や有効成分を含有するサプリメントを既存のサプリメントの中から選出し、表4のように、サブセット・サプリメントS1〜S18として準備する。そして、本実施形態では、表4に示すサブセット・サプリメントS1〜S18の中から、各遺伝子の変異の状態に応じ、1つのサプリメントセットに好ましい栄養素や有効成分を含むサブセット・サプリメントを6つ以下で組み合わせることを条件として組み合わせるサプリメントを選定した。このとき、肥満関連遺伝子の変異の状態に対応させてサプリメントセットを構成するための第一補助成分群と第二補助成分群とからの成分の選定において、以下の基準を原則的に選定基準として用いる。なお、組み合わせるサブセット・サプリメントの選定数は実施に際し、用いるサプリメントが含有する栄養素や有効成分の数に応じ、当然に適宜変更することができる。
【0086】
(肥満関連遺伝子ロジック)
遺伝子変異の違いから生じるヘテロ型とホモ型が体型にもたらす寄与度数値は、1:2.2となるとうい統計解析データ(データ省略)がある。1つの変異の状態に対応する1つのサブセット・サプリメントを合計6つに絞りこむには、基本として、第二補助成分群から選択するサブセット・サプリメントの数n2=1のとき、第一補助成分群から選択するサブセット・サプリメントの数n1=2〜3の間となるように選定すればよい。このような条件で3種類の各遺伝子の変異の状態に対応して含有させるサブセット・サプリメントの選定数を設定する基本設定条件を以下のように決めることが考えられる。
a)遺伝子変異度が異なる二つの複合型の場合、つまり、2種の遺伝子の変異が各々ホモ型とヘテロ型で、1種の遺伝子の変異がワイルド型の場合は、ホモ型の変異に対して第一補助成分群から選択するサブセット・サプリメントの数n1を基本としてn1=2、例外的にn1=3となるように設定し、第二補助成分群から選択するサブセット・サプリメントの数n2をn2=1とする。
b)3種の遺伝子のうち、ホモ型変異が1つである場合、n1=3、n2=3とする。
c)3種の遺伝子のうち、ヘテロ型変異が1つである場合、n1=2、n2=最大4とする。
d)2種の遺伝子がヘテロ型で、1種に変異がない場合、n1=1、n2=2とする。
e)3種の遺伝子に変異が存在する場合、その遺伝子変異が肥満度の判定方法の1つであるBMI指数(ボディ・マス・インデックス)の値に対する寄与度、そして、体型に対する寄与度を総合的に考慮したときに寄与度が最も大きい遺伝子についてn1=2もしくは、例外的にn1=3として優先的に設定する。
f)遺伝子に変異がないワイルド型はn1=0、n2=0とする
g)3種の遺伝子が全てホモ型の場合、3つの遺伝子に対するn1=2、n2=1とする。
h)3種の遺伝子が全てヘテロ型の場合、n1=2、n2=1で設定する。
i)2種の遺伝子がホモ型の場合、その遺伝子に対するn1=2、n2=1とする。
j)3種の遺伝子に変異がない場合、各タイプの代表的サブセット・サプリメントを選定する。
【0087】
このような基本設定基準に沿えばある程度、遺伝子の変異型に対応させて第一補助成分群と第二補助成分群とから有効成分を選定することができる。しかし、3種類の遺伝子が体質に及ぼす影響は、互いの変異の状態によって変化し、また、どの遺伝子が大きく体質に影響するかは性別によっても異なる。このため、基本設定基準のように遺伝子の種類を考慮せず、変異の状態からだけ見たロジックでは、性別との組み合わせも考慮した54パターン全ての遺伝子の変異の状態に対して有効なサプリメントを提供することは難しい。
【0088】
そこで、本発明者らは鋭意検討を行い、β3AR、UCP1、及びβ2ARの各遺伝子に関し、どの遺伝子に、どのような変異があるのか、また、性別を考慮し、基本設定基準に沿って仮に決定したn1及びn2を補正し、各遺伝子に対して第一補助成分群から選択する成分の数n1、第二補助成分群から選択する成分の数n2を決定し、表5A〜表5Eに示すようなβ3AR、UCP1、及びβ2ARの各遺伝子の変異の状態に対応する有効成分を選定した。なお、表5A〜表5Eに記載のそれぞれの番号は、第一の実施形態の表2及び表3の番号と対応しており、同様の遺伝子変異を有することを意味する。
【0089】
【表5A】

【表5B】

【表5C】

【表5D】

【表5E】

【0090】
(遺伝子変異に対応した有効成分を含むサプリメントを組み合わせたサプリメントセット)
表5A〜表5Eに記載のそれぞれの番号は、第一の実施形態の表2及び表3の番号と対応しており、同様の遺伝子変異を有することを意味する。表5A〜表5Eによれば、β3AR、UCP1、及びβ2ARの変異の状態に対応した適切な成分を含むサプリメントセットを提供することができる。表5A〜表5Eにおいて、β3ARに変異を有し、UCP1に変異を有さない場合に、「脂肪燃焼低下型」とし、UCP1に変異を有し、β3ARに変異を有さない場合に、「脂肪燃焼促進低下型」とし、β2ARのみに変異を有する場合に、「脂肪分解促進型」とし、脂肪燃焼遺伝子、脂肪燃焼促進遺伝子、脂肪分解遺伝子のいずれにも変異を有するか、脂肪分解遺伝子以外の2種類の遺伝子に変異を有する肥満型の総称を「混合型」とした。なお、「混合型」では、女性において脂肪燃焼促進遺伝子の影響が強く、男性では脂肪燃焼遺伝子の影響が強い。
【0091】
例えば、表2に示す番号1の女性は、β3ARに変異を有し、UCP1に変異を有さないので、「脂肪燃焼低下型」に分類される。さらにこの女性は、β3ARとβ2ARにホモの変異を有し、UCP1はワイルド型であるため、この女性に対しては、第一脂肪燃焼補助成分であるクロム及びマグネシウムを含有するサプリメントS1と、第二脂肪燃焼補助成分であるフォルスコリンを含有するサプリメントS10及びα−リポ酸を含有するサプリメントS11と、第一脂肪分解機能調節補助成分であるビタミンB、ビタミンB、パントテン酸を含有するサプリメントS7及びBCAAを含有するサプリメントS8と、第二脂肪分解機能調節補助成分であるオルニチンを含有するサプリメントS17を組み合わせた6つのサプリからなるサプリメントセットとして提供する。
【0092】
ここで、もし、本実施形態でも第一の実施形態のように好ましい全ての成分を既存のサプリメントを組み合わせて摂取させようとするとき、1つのサプリメントが1つの成分を含んでいるとすると、β3AR遺伝子の変異に対応する第一補助成分群の全ての成分を摂取させるための6つのサプリメント、β3AR遺伝子の変異に対応する第二補助成分群の全ての成分を摂取させるための3つのサプリメント、そして、β2AR遺伝子の変異に対応する第一補助成分群の全ての成分を摂取させるための5つのサプリメントの14個のサプリメントの摂取が必要となる。仮に、表4のS1などのように複数の成分を含むサプリメントを組み合わせたとしても、β3AR遺伝子の変異に対応する第一補助成分群の全ての成分を摂取させるための3つのサプリメント、β3AR遺伝子の変異に対応する第二補助成分群の全ての成分を摂取させるための3つのサプリメント、そして、β2AR遺伝子の変異に対応する第一補助成分群の全ての成分を摂取させるための3つのサプリメントの、少なくとも9つのサプリメントの摂取が必要となる。
【0093】
これに対し、本実施形態のサプリメントセット及びその提供方法では、肥満関連遺伝子変異の状態に対応する効果が得られるようにしながら6つのサプリメントを組み合わせたサプリメントセットとできるため、サプリメントセットに組み合わせるサプリメントの数を低減できる。すなわち、本実施形態によれば、52通りの肥満関連遺伝子変異の状態に対応して効果が得られる適切なサプリメントセットにできる上、既存のサプリメントなどを組み合わせてサプリメントセットとしても、サプリメントセットに組み合わせるサプリメントの数を低減できる。
【0094】
さらに、従来、市場で販売されているサプリメントは、遺伝子の変異に効果が発揮されるように必然的に複数のサプリメントを消費者が購入して、毎日複数回にわたり複数個のサプリメントを服用しなければならないとう不便さが生じていた。これに対し、本発明に係るサプリメントによれば、このような課題を解決するサプリメントを提供することができる。
【0095】
また、本実施形態における各サプリメントに含有される成分群は、適宜変更することができる。さらに、必要に応じ本実施形態に示した有効成分以外の成分を、本実施形態に示した有効成分の作用を損なわない範囲で組み合わせることもできる。さらに、サプリメントは、1錠又は1粒の錠剤やカプセルなどの形態の他、1包の粉末や顆粒などの形状のサプリメントなどを組み合わせると言った様々な形態にできる。
【0096】
また、本実施形態のサプリメントは、各有効な成分を少なくとも1つずつその有効量で含み、そのサプリメントの組み合わせとして提供することもできる。さらに、各遺伝子の変異の状態に対応して選択された各成分を、例えば1錠又は1粒の錠剤やカプセルなどの様々な剤形のサプリメントを組み合わせて用いることができる。また、必要に応じ本実施形態に示した有効成分以外の成分を含むサプリメントや、本実施形態に示した有効成分以外の成分のみからなるサプリメントを、本実施形態に示した有効成分の作用を損なわない範囲で組み合わせることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体質に関連する1以上の遺伝子に対し、各々の遺伝子の変異から生じる体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一補助成分群と、各々の遺伝子の変異から生じる体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二補助成分群とをグループ分けし、体質に関連する上記1以上の遺伝子ごとに二成分群を割り当てるようにしてグループ分けされた成分群を配合してなることを特徴とする遺伝子変異型に対応したサプリメントセット。
【請求項2】
脂肪燃焼遺伝子であるアドレナリン受容体遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪燃焼補助成分群と、
脂肪燃焼遺伝子であるアドレナリン受容体遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪燃焼補助成分群と、
脂肪燃焼促進遺伝子である熱産生蛋白遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪燃焼促進補助成分群と、
脂肪燃焼促進遺伝子である熱産生蛋白遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪燃焼促進補助成分群と、
脂肪分解遺伝子であるβ2アドレナリン受容体の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪分解機能調整補助成分群と、
脂肪分解遺伝子であるβ2アドレナリン受容体の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪分解機能調整補助成分群との
6つのサプリメントに、グループ分けされた成分群を配合してなる、
ことを特徴とする遺伝子変異型に対応したサプリメントセット。
【請求項3】
上記アドレナリン受容体遺伝子がβ3ARであり、上記熱産生蛋白遺伝子がUCP1であり、上記β2アドレナリン受容体がβ2ARであることを特徴とする請求項2に記載のサプリメントセット。
【請求項4】
上記第一脂肪燃焼補助成分群が、クロム、マグネシウム、ビタミンB、パントテン酸、ナイアシン、及びシトラスアランチウムからなる群であり、
上記第二脂肪燃焼補助成分群が、フォルスコリン、α−リポ酸、及び共役リノール酸からなる群であり、
上記第一脂肪燃焼促進補助成分群が、ビタミンB、パントテン酸、食物繊維、及びγ−トコフェロールからなる群であり、
上記第二脂肪燃焼促進補助成分群が、L−カルニチン、ガルシニア・カンボジア、及びキトサンからなる群であり、
上記第一脂肪分解機能調整補助成分群が、ビタミンB、ビタミンB、パントテン酸、アミノ酸(BCAA)、及び白インゲン豆エキスからなる群であり、
上記第二脂肪分解機能調整補助成分群が、オルニチンからなる群である
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の遺伝子変異型に対応したサプリメントセット。
【請求項5】
上記第二脂肪分解機能調整補助成分群が、さらにビール酵母を含むことを特徴とする請求項4に記載の遺伝子変異型に対応したサプリメントセット。
【請求項6】
(i)上記6つのサプリメントに対応させて6つの処方枠を規定し、
(ii)変異が1種の遺伝子にのみ見られる場合、変異が有る遺伝子に6つの処方枠を割り当て、アドレナリン受容体遺伝子又は熱産生蛋白遺伝子の変異がホモの場合には、上記第一補助成分群に3つの処方枠を、第二補助成分群に3つの処方枠を割り当て、アドレナリン受容体遺伝子又は熱産生蛋白遺伝子の変異がヘテロの場合には、上記第一補助成分群に2つの処方枠を、上記第二補助成分群に4つの処方枠を割り当て、β2アドレナリン受容体の変異がホモの場合には、割り当てる処方枠は5つとし、上記第一補助成分群に3つの処方枠を、第二補助成分群に2つの処方枠を割り当て、β2アドレナリン受容体の変異がヘテロの場合には、割り当てる処方枠は4つとし、上記第一補助成分群に2つの処方枠を、上記第二補助成分群に2つの処方枠を割り当て、
(iii)変異が2種の遺伝子に見られる場合、変異が有る2種の遺伝子に各々3つの処方枠を割り当て、変異が3種の遺伝子に見られる場合、全ての遺伝子に各々2つの処方枠を割り当て、変異が2種又は3種の遺伝子に有る場合は、男性のときアドレナリン受容体遺伝子>熱産生蛋白遺伝子>β2アドレナリン受容体の順に、女性のとき熱産生蛋白遺伝子>アドレナリン受容体遺伝子>β2アドレナリン受容体の順に従って多くの処方枠が与えられるように処方枠を割り当て、さらに、割り当てられた各処方枠の中で、対応する遺伝子の変異がホモの場合は、上記第一補助成分群を含むサプリメントを、ヘテロの場合は、上記第二補助成分群を含むサプリメントを割り当て、ただし、変異がヘテロの場合でも2つ以上の処方枠が割り当てられている場合は、必ず1つには第一補助成分群を含むサプリメントを割り当て、第一補助成分群を含むサプリメントに割り当てる最大の処方枠は2つとなるようにしてなる
ことを特徴とする請求項2、4及び5のいずれかに規定されるサプリメントセットの提供方法。
【請求項7】
上記アドレナリン受容体遺伝子がβ3ARであり、上記熱産生蛋白遺伝子がUCP1であり、上記β2アドレナリン受容体がβ2ARであることを特徴とする請求項5に記載のサプリメントセットの提供方法。
【請求項8】
脂肪燃焼遺伝子であるアドレナリン受容体遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪燃焼補助成分群と、
脂肪燃焼遺伝子であるアドレナリン受容体遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪燃焼補助成分群と、
脂肪燃焼促進遺伝子である熱産生蛋白遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪燃焼促進補助成分群と、
脂肪燃焼促進遺伝子である熱産生蛋白遺伝子の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪燃焼促進補助成分群と、
脂肪分解遺伝子であるβ2アドレナリン受容体の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果がより強いとされている、栄養素及び/又は有効成分のグループである第一脂肪分解機能調整補助成分群と、
脂肪分解遺伝子であるβ2アドレナリン受容体の変異から生じる可能性がある体質に対して改善効果のある、その他の栄養素及び/又は有効成分のグループである第二脂肪分解機能調整補助成分群との
6つのサプリメントに、グループ分けされた成分群を配合してなる、遺伝子変異型に対応したサプリメントセットの提供方法であって、
上記第一脂肪燃焼補助成分群が、クロム酵母及び酸化マグネシウムを含むサブセット・サプリメントS1、ビタミンB、パントテン酸カルシウム、及びナイアシンを含むサブセット・サプリメントS2、並びにシトラスアランチウムエキスを含むサブセット・サプリメントS3からなる群であり、
上記第二脂肪燃焼補助成分群が、フォルスコリンを含むサブセット・サプリメントS10、α−リポ酸を含むサブセット・サプリメントS11、共役リノール酸を含むサブセット・サプリメントS12、並びに白インゲン豆エキスを含むサブセット・サプリメントS13からなる群であり、
上記第一脂肪燃焼促進補助成分群が、ビタミンB、及びパントテン酸カルシウムを含むサブセット・サプリメントS4、食物繊維を含むサブセット・サプリメントS5、並びにγ−トコフェロールを含むサブセット・サプリメントS6からなる群であり、
上記第二脂肪燃焼促進補助成分群が、L−カルニチンフマル酸を含むサブセット・サプリメントS14、ガルシニア・カンボジアエキスを含むサブセット・サプリメントS15、並びにキトサンを含むサブセット・サプリメントS16からなる群であり、
上記第一脂肪分解機能調整補助成分群が、ビタミンB、ビタミンB、及びパントテン酸カルシウムを含むサブセット・サプリメントS7、BCAAを含むサブセット・サプリメントS8、並びに白インゲン豆エキスを含むサブセット・サプリメントS9からなる群であり、
上記第二脂肪分解機能調整補助成分群が、L−オルニチン塩酸塩を含むサブセット・サプリメントS17、並びにビール酵母を含むサブセット・サプリメントS18からなる群であり、
上記第二補助成分群から選択するサブセット・サプリメントの数がn2=1のとき、上記第一補助成分群から選択するサブセット・サプリメントの数n1=2〜3の間となるように選定し、上記3種類の各遺伝子の変異の状態に対応して含有させるサブセット・サプリメントの選定数を、
a)遺伝子変異度が異なる二つの複合型の場合、すなわち、2種の遺伝子の変異が各々ホモ型とヘテロ型で、1種の遺伝子の変異がワイルド型の場合は、ホモ型の変異に対して第一補助成分群から選択するサブセット・サプリメントの数n1を基本としてn1=2、例外的にn1=3となるように設定し、第二補助成分群から選択するサブセット・サプリメントの数n2をn2=1とし、
b)3種の遺伝子のうち、ホモ型変異が1つである場合、n1=3、n2=3とし、
c)3種の遺伝子のうち、ヘテロ型変異が1つである場合、n1=2、n2=最大4とし、
d)2種の遺伝子がヘテロ型で、1種に変異がない場合、n1=1、n2=2とし、
e)3種の遺伝子に変異が存在する場合、その遺伝子変異が肥満度の判定方法の1つであるBMI指数(ボディ・マス・インデックス)の値に対する寄与度、そして、体型に対する寄与度を総合的に考慮したときに寄与度が最も大きい遺伝子についてn1=2もしくは、例外的にn1=3として優先的に設定し、
f)遺伝子に変異がないワイルド型はn1=0、n2=0とし、
g)3種の遺伝子が全てホモ型の場合、3つの遺伝子に対するn1=2、n2=1とし、
h)3種の遺伝子が全てヘテロ型の場合、n1=2、n2=1と設定し、
i)2種の遺伝子がホモ型の場合、その遺伝子に対するn1=2、n2=1とし、そして
j)3種の遺伝子に変異がない場合、各タイプの代表的サブセット・サプリメントを選定するようにしてなる選出ロジックに従って決定し、
摂取すべきサブセット・サプリメントを選出することを特徴とするサプリメントセットの提供方法。
【請求項9】
上記アドレナリン受容体遺伝子がβ3ARであり、上記熱産生蛋白遺伝子がUCP1であり、上記β2アドレナリン受容体がβ2ARであることを特徴とする請求項8に記載のサプリメントセットの提供方法。

【公開番号】特開2011−234664(P2011−234664A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108410(P2010−108410)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(599098518)株式会社ディーエイチシー (31)
【Fターム(参考)】