説明

遺伝子検出方法

【課題】特定の配列を有する検出すべき遺伝子を高感度に検出できる遺伝子検出方法を提供する。
【解決手段】検出すべき遺伝子配列に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖の核酸プローブが固定化された電極と、一本鎖に変性された遺伝子サンプルとを反応させ、該電極に固定化された核酸プローブと前記遺伝子サンプルとがハイブリダイズした二本鎖核酸を形成する二本鎖核酸形成工程と、電気化学的に活性であり、且つ前記二本鎖核酸に特異的に結合される挿入剤を、前記二本鎖核酸形成工程にて得た前記二本鎖核酸に添加する挿入剤添加工程と、前記二本鎖核酸に未結合の挿入剤を、前記挿入剤と同種の電荷を有する試薬を含む洗浄液で除去する洗浄工程と、前記二本鎖核酸に結合された挿入剤を電気化学的な測定により検出する検出工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に存在する特定の遺伝子配列を高感度に検出するための遺伝子検出方法に関し、特に、挿入剤により電気化学的に遺伝子を検出する遺伝子検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、電気化学的に特定の遺伝子配列を検出するDNAチップは、検出すべき目的遺伝子に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖の核酸プローブを電極表面に固定化し、該核酸プローブと一本鎖に変性された目的遺伝子サンプルとをハイブリダイズさせた後、該核酸プローブと目的遺伝子サンプルとで形成された二本鎖核酸に特異的に結合し且つ電気化学的に活性な挿入剤を、該核酸プローブと遺伝子サンプルとの反応系に添加し、電極を介した電気化学的な測定により、前記二本鎖核酸に結合した挿入剤を検出することで、目的遺伝子サンプルとハイブリダイズした前記核酸プローブを検出し、目的とする遺伝子の存在を確認する(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
ここでの挿入剤とは、前記二本鎖核酸を認識して、該二本鎖核酸と特異的に結合する物質を指し、前記挿入剤は、何れも分子中にフェニル基等の平板状挿入基を有し、該挿入基が二本鎖核酸の塩基対と塩基対との間に介入することによって、二本鎖核酸と結合する。この挿入剤と二本鎖核酸との結合は、前記挿入剤の二本鎖核酸の塩基対間への挿入、及びその塩基対間からの解離が一定の速度で繰り返される平衡反応による結合である。
【0004】
さらに、前述した挿入剤には、電気的に可逆な酸化還元反応を起こす物質もあり、このような電気化学的に可逆である酸化還元反応を起こす挿入剤を用いれば、電気化学的変化の測定によって、前記二本鎖核酸に結合した挿入剤の存在を検出することができる。なお、この電気化学的変化の出力信号としては、酸化還元時に発生する電流や発光が挙げられる。
【0005】
従って、このような従来の遺伝子検出方法においては、前記挿入剤を二本鎖核酸にのみ特異的に結合させ、該二本鎖核酸に結合した挿入剤の量を正確に検出することが重要となる。
【0006】
そのため、従来の遺伝子検出方法においては、前記挿入剤を前記核酸プローブと遺伝子サンプルとの反応系に添加して、該挿入剤を前記核酸プローブと遺伝子サンプルとで形成された二本鎖核酸に結合させた後、該二本鎖核酸に結合していない挿入剤を除去する洗浄処理を行っている。
【0007】
前記洗浄処理は、通常、純水や有機溶剤あるいは界面活性剤を含む溶液等の洗浄液を用いて、二本鎖核酸と結合していない挿入剤を洗い流すことにより行う。
【0008】
そして、前記洗浄液に用いられる界面活性剤は、核酸の抽出やタンパクの除去等といった、生体分野で一般的に使用されている界面活性剤であり、SDS、Triton−X、Tween−20等に代表されるアニオン性もしくはノニオン性の界面活性剤である。
【0009】
しかし、前述したような洗浄液を用いた洗浄処理では、挿入剤の除去効果が十分得られず、洗浄後においても、一本鎖の核酸プローブや、該核酸プローブが固定される電極表面に非特異的に吸着した挿入剤が多数存在していた。
【0010】
この挿入剤の非特異吸着の大きな原因の一つに、静電吸着が挙げられる。これは、一本鎖の核酸プローブや、該核酸プローブが固定される電極が、負に荷電しやすい物質であるのに対し、前記挿入剤が正に荷電する物質が多いためである。
【0011】
そして、この電極表面に非特異的に吸着した挿入剤は、前記二本鎖核酸に結合した挿入剤の量の検出時に、バックグランドノイズとなり、検出感度を低下させる原因となっていた。
【0012】
以上のような問題を解消するため、従来の遺伝子検出方法においては、洗浄による挿入剤の除去効果を高めるために、核酸プローブが固定される電極表面にマスキングを施したり、あるいは該電極に電位印加したりする等して、該電極表面への挿入剤の非特異吸着を低減するようにしている。詳細に述べると、前記マスキングによる方法は、前記電極に核酸プローブを固定した後、該電極の表面を核酸やアルキル鎖、脂肪族等の物質で被覆することで、前記電極表面への挿入剤の吸着を抑制するものであり、前記電位印加による方法は、挿入剤を二本鎖核酸と反応させた後に、前記電極に正の電位を印加することで、前記電極表面に非特異吸着した挿入剤を除去するものである。
【特許文献1】特許第2573443号公報
【特許文献2】特許第3233851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述したような挿入剤の電極表面への非特異吸着低減処理を施しても、洗浄工程において、十分な除去効果が得られてないという課題があった。
さらに、従来の低減方法では、核酸プローブに悪影響を与えてしまうため、検出信号が減少して、逆に検出感度を低下させてしまうという問題もある。
【0014】
例えば、前記マスキングを施す方法には、前記電極表面を被覆する被覆物質が核酸プローブよりも大きい分子である場合、該被覆物質が、電極表面だけでなく核酸プローブをも被覆してしまい、また逆に、被覆物質がプローブDNAよりも小さい分子である場合は、被覆分子が核酸プローブと置き換わる置換反応が起こり、核酸プローブが電極表面から外れてしまうという問題が生じる。
【0015】
また、電位を印加する方法においては、たしかに電極に印加する電位を高くするほど除去効果は高くなるのだが、電位を高くするに伴って、核酸プローブと電極の結合が切断されて、核酸プローブが電極から脱離してしまうという問題が生じる。そのため、高電位の印加を行うことができず、十分な除去効果を得ることができなかった。
【0016】
以上のように、従来における挿入剤の非特異吸着を低減方法は、有効なものといえるものではないため、効果的に挿入剤の非特異吸着を除去する他の手法が必要となっている。
【0017】
本発明は、前記課題を解決するためにされたものであって、一本鎖の核酸プローブや電極表面に非特異吸着した挿入剤を除去し、目的遺伝子サンプルを高感度に検出可能な遺伝子検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するため、本発明の遺伝子検出方法は、検体試料中の特定の配列を有する遺伝子を検出する遺伝子検出方法において、前記検体試料中の検出すべき遺伝子を、一本鎖に変性して遺伝子サンプルを作製する遺伝子サンプル作製工程と、前記検出すべき遺伝子配列に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖の核酸プローブを電極に固定する固定化工程と、前記一本鎖の遺伝子サンプルを、前記一本鎖の核酸プローブが固定化された電極に添加し、前記電極に固定化された核酸プローブと前記遺伝子サンプルとがハイブリダイズした二本鎖核酸を形成する二本鎖核酸形成工程と、前記二本鎖核酸形成工程で得た前記二本鎖核酸に、電気化学的に活性であり、且つ前記二本鎖核酸に特異的に結合される挿入剤を添加する挿入剤添加工程と、前記二本鎖核酸と未結合の挿入剤を、前記挿入剤と同種の電荷を有する試薬を含む洗浄液で除去する洗浄工程と、前記洗浄工程後の、前記二本鎖核酸に結合された挿入剤を電気化学的な測定により検出する検出工程と、を含むものである。
これにより、一本鎖の核酸プローブや電極表面に非特異吸着した挿入剤を効果的に除去することができ、この結果、検出対象である遺伝子サンプルを高感度に検出できる。
【0019】
さらに、本発明の遺伝子検出方法は、前記洗浄液に含まれる前記挿入剤と同種の電荷を有する試薬は、カチオン性の試薬であるものである。
これにより、挿入剤の非特異的吸着の要因となる前記一本鎖の核酸プローブや前記電極の静電力を排除できるとともに、該挿入剤の一本鎖の核酸プローブや電極への静電的な非特異吸着を抑制することができるため、洗浄工程における挿入剤の除去がより容易となる。
【0020】
さらに、本発明の遺伝子検出方法は、前記カチオン性の試薬は、カチオン性界面活性剤、第4級アミン、あるいは酸のいずれかであるものである。
これにより、前記挿入剤からの電気化学的な信号を妨げることなく、洗浄工程で二本鎖核酸と未結合の挿入剤を除去できる。
【0021】
さらに、本発明の遺伝子検出方法は、前記挿入剤添加工程は、前記二本鎖核酸形成工程で得た前記二本鎖核酸に、前記挿入剤と該挿入剤と同種の電荷を有する試薬とを添加するものである。
これにより、前記一本鎖の核酸プローブや前記電極表面への前記挿入剤の非特異吸着を効果的に抑制でき、洗浄工程における挿入剤の除去がより容易となる。
【0022】
さらに、本発明の遺伝子検出方法は、前記挿入剤と同種の電荷を有する試薬は、カチオン性の試薬であるものである。
これにより、前記電極の静電力を排除できるとともに、前記挿入剤の一本鎖の核酸プローブや電極への静電的な非特異吸着を抑制することができるため、洗浄工程における挿入剤の除去がより容易となる。
【0023】
さらに、本発明の遺伝子検出方法は、前記カチオン性の試薬は、第4級アミン、あるいは酸のいずれかであるものである。
これにより、前記挿入剤からの電気化学的な信号を妨げることなく、洗浄工程で二本鎖核酸と未結合の挿入剤を除去できる。
【0024】
さらに、本発明の遺伝子検出方法は、前記挿入剤が、酸化還元性を有する化合物であるものである。
これにより、二本鎖核酸に特異的に結合した挿入剤由来の電気化学的な信号を測定して、検出対象である遺伝子サンプルを検出することができる。
【0025】
さらに、本発明の遺伝子検出方法は、前記酸化還元性を有する化合物は、電気化学発光を示す化合物であるものである。
これにより、酸化還元反応時に電気化学発光を生じるので、その発光を測定することで、検出対象である遺伝子サンプルを検出することができる。
【0026】
さらに、本発明の遺伝子検出方法は、前記電気化学発光を示す化合物は、金属錯体であるものである。
【0027】
さらに、本発明の遺伝子検出方法は、前記金属錯体の中心金属は、ルテニウム、あるいはオスニウムのいずれかであるものである。
【0028】
さらに、本発明の遺伝子検出方法は、前記検出工程は、前記電極に対して電圧を印加し、前記二本鎖核酸に結合させた挿入剤による電気化学発光量を測定するものである。
これにより、前記検出対象である遺伝子サンプルの存在を的確に確認できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の遺伝子検出方法によれば、核酸プローブと遺伝子サンプルの反応系に添加された挿入剤のうちの、該核酸プローブと遺伝子サンプルとで形成される二本鎖核酸と未結合の挿入剤を除去する際に、前記挿入剤と同種の電荷を有する試薬を含む洗浄液を用いて洗浄するようにしたので、検出感度に悪影響を与えずに、前記二本鎖核酸と結合していない挿入剤の非特異吸着を抑制し、且つ効果的に除去することができるため、前記検体試料中の二本鎖核酸を高感度に検出して、目的とする遺伝子の存在を適切に確認することができる。
【0030】
また、本発明の遺伝子検出方法によれば、挿入剤添加工程の際に、挿入剤とともに挿入剤と同種の電荷を有する試薬を添加するようにしたので、前記一本鎖の核酸プローブや前記電極に対して、前記挿入剤と同種の電荷が静電的に非特異吸着し、挿入剤の非特異的吸着の要因となる前記一本鎖の核酸プローブや前記電極の静電力を排除できるとともに、前記挿入剤と同種の電荷によって、前記一本鎖の核酸プローブや前記電極表面から挿入剤を静電的に排除して、挿入剤の一本鎖の核酸プローブや電極への静電的な非特異吸着を抑制することができるため、洗浄工程における挿入剤の除去がより容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の遺伝子検出方法について詳細に説明する。なお、以下の実施の形態における遺伝子サンプルとは、例えば、血液、白血球、血清、尿、糞便、精液、唾液、培養細胞、各種臓器細胞のような組織細胞、その他遺伝子を含有する任意の試料から、該試料中の細胞を破壊して二本鎖核酸を遊離させ、熱処理あるいはアルカリ処理によって、一本鎖の核酸に解離させたものである。また、本実施の形態における遺伝子サンプルは、制限酵素で切断して電気泳動による分離等で精製した核酸断片でもよい。
【0032】
(実施の形態1)
以下に、実施の形態1における遺伝子検出方法について説明する。
まず、検査対象となる遺伝子サンプルを作成する。この遺伝子サンプルは、前述したように、任意の試料中の細胞を破壊して二本鎖核酸を遊離させ、熱処理あるいはアルカリ処理によって、一本鎖に変性させる。
【0033】
ここで、前記試料中の細胞の破壊は、常法により行うものであり、例えば、振とう、超音波等の物理的作用を外部から加えて行うことができる。また、核酸抽出溶液(例えば、SDS、Triton−X、Tween−20等の界面活性剤、又はサポニン、EDTA、プロテアーゼ等を含む溶液等)を用いて、細胞から核酸を遊離させることもできる。
【0034】
次に、検出すべき遺伝子配列に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖の核酸プローブを生成する。
この核酸プローブは、生物試料から抽出した核酸を制限酵素で切断し、電気泳動による分離等で精製した核酸あるいは化学合成で得られた一本鎖の核酸を用いることができる。生物試料から抽出した核酸の場合には、熱処理あるいはアルカリ処理によって、一本鎖の核酸に解離させておくことが好ましい。
そしてこの後、生成した核酸プローブを電極表面に固定する。
【0035】
本発明で用いる電極は、電極として使用可能であればどのようなものであってもよく、例えば、金、白金、白金黒、パラジウム、ロジウムのような貴金属電極や、グラファイト、グラシーカーボン、パイロリティックグラファイト、カーボンペースト、カーボンファイバーのような炭素電極や、酸化チタン、酸化スズ、酸化マンガン、酸化鉛のような酸化物電極や、Si、Ge、ZnO、CdS、TiO、GaAsのような半導体電極等が挙げられる。これらの電極は、導電性高分子によって被覆しても良く、このように被覆することによって、より安定なプローブ固定化電極を調製することができる。
【0036】
なお、前記核酸プローブを前記電極に固定化する方法としては、公知の方法が用いられる。一例をあげると、例えば前記電極が金である場合、固定する核酸プローブの5’−もしくは3’−末端(好ましくは、5’−末端)にチオール基を導入し、金とイオウとの共有結合を介して、前記核酸プローブが該金電極に固定される。この核酸プローブにチオール基を導入する方法は、文献(M.Maeda et al.,Chem.Lett.,1994,1805〜1808及びB.A.Connolly,Nucleic Acids Res.,1985,vol.13,4484)に記載されているものが挙げられる。
【0037】
即ち、前記方法によって得られたチオール基を有する核酸プローブを、金電極に滴下し、低温下で数時間放置することにより、該核酸プローブが電極に固定され、核酸プローブが作製される。
【0038】
また別の例をあげると、例えば前記電極がグラシーカーボンである場合、まずグラシーカーボンを過マンガン酸カリウムで酸化することによって、電極表面にカルボン酸基を導入し、これにより、核酸プローブが、アミド結合によりグラシーカーボン電極表面に固定される。このグラシーカーボン電極に核酸プローブを固定する、実際の固定化方法については、文献(K.M.Millan et al.,Analytical Chemistry,1993,vol.65,2317〜2323)に詳細が記載されている。
【0039】
さらに、別の例をあげると、核酸プローブがすでに結合した担体粒子を、電極上に付着させることによっても、同様の結果が得られる。前記担体粒子としては、例えば、ラテックス、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン等の高分子からなる粒子、活性炭等の炭素系材料、金属粒子、セラミック、マグネタイト、サマリウム‐コバルト、フェライト等の磁性体粒子等が挙げられる。また、前記担体粒子への核酸プローブの結合方法は、担体粒子にアビジンコーティングを施し、末端をビオチン修飾した核酸プローブと結合させる、公知の方法が用いることができる。
【0040】
次に、核酸プローブが固定された電極を、前記遺伝子サンプルを含む溶液に接触させる。これにより、前記固定された核酸プローブと、相補的な配列を有する遺伝子サンプルとがハイブリダイズし、二本鎖核酸が形成される。この核酸プローブと遺伝子サンプルをハイブリダイズさせる方法は周知であるため、ここでは説明を省略する。
【0041】
このように、前記核酸プローブが固定された電極と前記遺伝子サンプルを含む溶液とを接触させて二本鎖核酸を形成した後、該核酸プローブと遺伝子サンプルの反応系に挿入剤を添加し、該挿入剤を前記二本鎖核酸に挿入反応させる。なお、この挿入剤の添加は、二本鎖核酸を形成する前、つまりハイブリダイゼーション反応前に、前記検体試料中に添加するものであってもよい。
【0042】
以下、前記挿入剤について説明する。
本実施の形態1にかかる挿入剤は、電気化学的に活性で、且つ前記二本鎖核酸に特異的に結合される特徴を持つ物質である。従って、本実施の形態1では、前記二本鎖核酸に特異的に結合された挿入剤由来の電気化学的な信号を測定することにより、二本鎖核酸の存在、すなわち遺伝子サンプルの存在を高感度に検出することができる。
【0043】
このような挿入剤としては、例えば、可逆な酸化還元反応時に生じる酸化還元電流を測定することで物質の検出が可能な、酸化還元性を有する化合物を挙げることができる。
【0044】
このような酸化還元性を有する化合物としては、例えば、フェロセン、カテコールアミン、配位子に複素環系化合物を有する金属錯体、ルブレン、アントラセン、コロネン、ピレン、フルオランテン、クリセン、フェナントレン、ペリレン、ビナフチル、オクタテトラエン、ビオローゲン等がある。
【0045】
さらに、前述した、配位子に複素環系化合物を有する金属錯体、ルブレン、アントラセン、コロネン、ピレン、フルオランテン、クリセン、フェナントレン、ペリレン、ビナフチル、オクタテトラエンには、酸化還元反応時に電気化学発光を生じるものもあり、その発光を測定することで検出することもできる。
【0046】
前記配位子に複素環系化合物を有する金属錯体としては、酸素や窒素等を含む複素環系化合物、例えば、ピリジン部位、ピラン部位等を配位子に有する金属錯体があり、特にピリジン部位を配位子に有する金属錯体が好ましく、該ピリジン部位を配位子に有する金属錯体としては、例えば、金属ビピリジン錯体、金属フェナントロリン錯体等がある。
【0047】
さらに、前記配位子に複素環系化合物を有する金属錯体における、中心金属としては、例えば、ルテニウム、オスニウム、亜鉛、コバルト、白金、クロム、モリブデン、タングステン、テクネチウム、レニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、銅、インジウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム等を挙げることができる。
【0048】
そして特に、前記中心金属がルテニウム、オスニウムである錯体は、良好な電気化学発光特性を有し、このような良好な電気化学発光特性を有する物質としては、例えば、ルテニウムビピリジン錯体、ルテニウムフェナントロリン錯体、オスニウムビピリジン錯体、オスニウムフェナントロリン錯体等を挙げることができる。
【0049】
また、前述した挿入剤に、二本鎖核酸に特異的に挿入し、且つ光照射により該二本鎖核酸と共有結合を形成する感光性二本鎖核酸結合化合物を修飾すれば、より高感度な検出が可能となる。
【0050】
前記感光性二本鎖核酸結合化合物は、二本鎖核酸に挿入された後、光照射されると、前記二本鎖核酸と共有結合を形成し、二本鎖核酸と強固且つ不可逆的に結合する物質である。従って、感光性二本鎖核酸結合化合物が修飾された挿入剤を、前記二本鎖核酸に挿入させれば、この後の工程である洗浄工程の際、前記二本鎖核酸に特異的に反応した挿入剤が解離することがなくなり、この結果、二本鎖核酸の存在、すなわち遺伝子サンプルの存在をより高い感度で検出できる。
【0051】
前記感光性二本鎖核酸結合化合物としては、例えば、フロクマリン誘導体が挙げられ、特に、ソラレン誘導体が好ましい。このソラレン誘導体は、二本鎖核酸に挿入すると、二本鎖核酸と非共有的相互作用を起こし、さらにこれに長波長紫外線(300〜400nm)を照射すると、二本鎖核酸と安定な共有結合を形成する。
【0052】
そして、ソラレン誘導体部分が、強固且つ不可逆的に二本鎖核酸と共有結合すれば、この後の工程である、前記一本鎖の核酸プローブや、該核酸プローブが固定される電極表面に非特異吸着した挿入剤を洗浄する時に、前記二本鎖核酸に特異的に結合している挿入剤が抜け落ちることがなくなるため、二本鎖核酸への結合特異性が向上し、さらに、前記洗浄工程において、一本鎖の核酸プローブ及び電極表面に非特異吸着した挿入剤を強い洗浄を行って除去することができるようになるため、前記遺伝子サンプルの存在をより高感度に検出できるようになる。このようなソラレン誘導体の具体的な例としては、ソラレン、メトキシソラレン、トリメチルソラレン等が挙げられる。
【0053】
さらに、前述した挿入剤の添加時に、電極等に対する非特異吸着抑制剤として、挿入剤と同種の電荷を有する試薬を添加するようにしてもよい。このようにすれば、該挿入剤の電極や核酸プローブに対する非特異吸着を抑制し、後の洗浄工程での挿入剤の除去効果をさらに高めることができる。
【0054】
以下、前記非特異吸着抑制剤について説明する。
非特異吸着抑制剤は、挿入剤と同種の電荷を有する試薬であり、前記挿入剤と同様、一本鎖の核酸プローブや、該核酸プローブが固定される電極に対して、静電的な非特異吸着が生じる物質である。従って、前記二本鎖核酸形成工程後の、核酸プローブと遺伝子サンプルの反応系に、前記非特異吸着抑制剤を添加すると、前記非特異吸着抑制剤は、一本鎖の核酸プローブや、該核酸プローブが固定される電極に対して静電的に吸着するため、挿入剤の非特異吸着の要因である、前記一本鎖の核酸プローブや前記電極の静電力を排除することができる。
【0055】
また、前記一本鎖の核酸プローブや前記電極に非特異吸着した非特異吸着抑制剤は、その電荷によって、挿入剤を静電的に反発するため、挿入剤の挿入時における、電極表面への挿入剤の静電的な非特異吸着を抑制することができ、後の洗浄工程においての余分な挿入剤の除去も容易となる。
【0056】
なお、前記非特異吸着抑制剤は、挿入剤添加前に添加することが好ましいが、挿入剤と同時に添加するものであってもよい。
前記非特異吸着抑制剤としては、挿入剤が正に荷電する物質が多いことから、カチオン性の試薬が挙げられる。
【0057】
そして、前記カチオン性の試薬としては、第4級アミン、酸、金属イオン等が挙げられる。これらの物質は、後の電気化学的な検出工程において、核酸物質に悪影響を与えず、また挿入剤からの電気化学的な信号を妨げることもないため、これらの物質が電極に吸着したままでも、問題なく挿入剤を電気化学的に検出することが可能である。
【0058】
特に、第4級アミンは非特異吸着の抑制効果が高く、このような第4級アミンの具体的な例としては、テトラメチルアミン、テトラエチルアミン、テトラプロピルアミン等が挙げられる。
【0059】
そして、このように二本鎖核酸を形成した後、二本鎖核酸と結合せず、一本鎖の核酸プローブや、前記電極表面に非特異的に吸着した挿入剤を、洗浄液で除去する洗浄工程を行う。
【0060】
本実施の形態1における洗浄液は、前記挿入剤と同種の電荷を有する試薬を含む溶液であり、挿入剤と同様、一本鎖の核酸プローブや、該核酸プローブが固定される電極に対して、静電的な非特異吸着が生じる物質である。従って、このような洗浄液によって洗浄処理を行うと、前記電極に対して、前記挿入剤と同種の電荷を有する試薬が静電的に非特異吸着するため、挿入剤の非特異吸着の要因である、前記一本鎖の核酸プローブや前記電極の静電力が排除される。
【0061】
さらに、前記洗浄液に含める、前記挿入剤と同種の電荷を有する試薬として、該挿入剤よりも静電力の強いものを使用した場合、電極表面に非特異吸着している挿入剤と交換吸着を起こして、非特異吸着している挿入剤を電極表面より遊離させることができ、この結果、非特異吸着している挿入剤の除去がより容易となる。
【0062】
また、前記挿入剤と同種の電荷を有する試薬は、その電荷によって、前記挿入剤と静電的に反発するため、一本鎖の核酸プローブや電極表面への前記挿入剤の静電的な非特異吸着を抑制することができ、挿入剤の除去が容易となる。
【0063】
前記挿入剤と同種の電荷を有する試薬を含む溶液としては、挿入剤が正に荷電する物質が多いことから、カチオン性の試薬が挙げられる。
【0064】
さらに、前記カチオン性の試薬としては、カチオン性界面活性剤、第4級アミン、酸、金属イオン等が挙げられるが、特に、カチオン性界面活性剤がより好ましい。カチオン性界面活性剤には、前述した静電的な効果の他に、界面活性剤としての除去効果もあるためである。
【0065】
この結果、洗浄処理後の電極表面には、前記ハイブリダイズした二本鎖核酸に、特異的に共有結合した挿入剤のみが残るようになり、この挿入剤由来の電気化学的な信号を測定することにより、二本鎖核酸の存在、すなわち遺伝子サンプルの存在を高感度に検出することが可能となる。
【0066】
前記挿入剤由来の電気化学的な信号は、添加する挿入剤の種類により異なるが、酸化還元電流を生じる挿入剤を用いた場合には、ポテンショスタット、ファンクションジェネレータ等からなる計測系で測定できる。一方、電気化学発光を生じる挿入剤を用いた場合には、フォトマルチプライヤー等を用いて計測が可能である。
【実施例1】
【0067】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
(1)金電極表面への核酸プローブの固定化
ガラス基板上にスパッタ装置(アルバック製SH−350)によりチタン10nmを下地に金200nmを形成し、フォトリソグラフィ工程により電極パターンを形成することで、金電極を準備した。電極表面をピラニア溶液(過酸化水素:濃硫酸=1:3)で1分間洗浄し、純水ですすいだ後、窒素ブローで乾燥させた。
【0068】
核酸プローブには、ヒト由来Cytochrome P−450の遺伝子配列の5’−末端より629−668番目に位置するCCCCCTGGAT CCAGATATGC AATAATTTTC CCACTATCATの配列を有する5’−末端のリン酸基を介してチオール基を修飾した40塩基のオリゴデオキシヌクレオチド(タカラバイオ製)を使用した。そして、該核酸プローブを10mMのPBS(pH7.4のリン酸ナトリウム緩衝液)に溶解させ、100μMに調整した。
【0069】
この調整した核酸プローブの溶液を前記金電極上に滴下し、飽和湿潤下、室温で4時間放置することで、チオール基と金とを結合させて、核酸プローブを金電極に固定した。
【0070】
(2)ハイブリダイゼーション
遺伝子サンプルには、前記核酸プローブと相補的な5’−末端からATGATAGTGGGAAAATTATT GCATATCTGG ATCCAGGGGGの配列を有するオリゴデオキシヌクレオチド(タカラバイオ製)を使用した。そして、該遺伝子サンプルを、10mMのPBS、及び2XSSCを混合したハイブリダイゼーション溶液に溶解させ、20μMに調整した。
【0071】
この調整した、遺伝子サンプルが溶解したハイブリダイゼーション溶液を、前記核酸プローブを固定した金電極上に滴下し、40℃の恒温槽内で4時間反応させ、二本鎖核酸を形成させた。これにより、二本鎖核酸が形成された金電極xを得た。
【0072】
さらに、本実施例1においては、比較対象として、二本鎖核酸が形成されていない金電極yを作成する。この二本鎖核酸が形成されない金電極yは、前記核酸プローブと非相補的な配列を有する遺伝子サンプル(以下、「比較遺伝子サンプル」と称す。)を使用して、前記二本鎖核酸が形成された金電極xを得る時と同様の処理をする。なお、ここでは、前記比較遺伝子サンプルとして、40merのPoly−A(タカラバイオ製)、AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA AAAAAAAAAA AAAAAAAAAAの配列を有する遺伝子サンプルを使用した。
【0073】
(3)非特異吸着抑制剤の添加
非特異吸着抑制剤として、0.1Mのテトラエチルアミンの溶液を調製した。この調整した溶液を、二本鎖核酸が形成された金電極x、及び二本鎖核酸が形成されていない金電極yのそれぞれに3μL滴下し、10分間室温で放置した。
【0074】
(4)挿入剤の添加
挿入剤には、下記の化1に示すソラレン修飾ルテニウム錯体を使用した。
【0075】
【化1】

【0076】
ソラレン修飾ルテニウム錯体の合成は、以下の手順により得ることができる。
まず、公知の方法(Biochemistry,1977,vol.16,No.6)により合成した4’−クロロメチル−4,5,8−トリメチルソラレン(0.5g、1.81mmol)を、水酸化ナトリウム溶解ジメチルホルムアミド(乾燥)に溶かし、160℃で撹拌しながら1,4−ジアミノブタン(0.32g、3.63mmol)を滴下し12時間反応させた。溶媒を留去した後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー処理により精製し、生成物Aを得た(収率40%)。
【0077】
次に、THF60.0mLに溶解させた4,4’−ジメチル−2,2’ビピリジン2.50g(13.5×mmol)溶液を窒素雰囲気の容器に注入した後、リチウムジイソプロピルアミド2M溶液16.9mL(27.0×mmol)を滴下し、冷却しながら30分撹拌した。一方、同様に窒素気流中で乾燥させた容器に、1,2−ジブロモエタン7.61g(40.5mmol)とTHF10mLとを加え、冷却しながら撹拌させた。
【0078】
この1,2−ジブロモエタンとTHFとが挿入された容器に、先程のTHFに溶解させた4,4’−ジメチル−2,2’ビピリジン溶液とリチウムジイソプロピルアミド2M溶液とを反応させた反応液をゆっくり滴下させ、2.5時間反応させた。そして、この反応溶液を、2Nの塩酸で中和して、THFを留去した後、クロロホルムで抽出し、さらに、前記溶媒を留去して得た粗生成物をシリカゲルカラムで精製し、生成物Bを得た(収率47%)。
【0079】
そして、前記生成物A(0.50g、1.52mmol)と前記生成物B(0.49g、1.68mmol)とを、水酸化ナトリウム溶解ジメチルホルムアミド(乾燥)に溶かし、160℃で18時間撹拌させた。そして、この攪拌した溶媒を留去した後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー処理により精製し、生成物Cを得た(収率38%)。
【0080】
さらに、塩化ルテニウム(III)(2.98g、0.01mol)、及び2,2’−ビピリジン(3.44g、0.022mol)をジメチルホルムアミド(80.0mL)中で6時間還流した後、溶媒を留去した。その後、アセトンを加え、一晩冷却することで得られた黒色沈殿物を採取し、エタノール水溶液170mL(エタノール:水=1:1)を加え、1時間加熱還流を行った。ろ過後、塩化リチウムを20g加え、エタノールを留去し、さらに一晩冷却した。析出した黒色物質は、吸引ろ過で採取し、生成物Dを得た(収率68.2%)。
【0081】
そして、前記生成物C(0.30g、0.56mmol)と前記生成物D(0.32g、0.66mmol)とを、ジメチルホルムアミドに溶かして6時間還流し、反応後、溶媒を留去させて得た黒紫色の物質に蒸留水を加えて溶解させ、未反応錯体をろ過により除去した後、溶媒を留去した。
【0082】
得られた粗生成物は、シリカゲルクロマトグラフィー処理により精製し、ソラレン修飾ルテニウム錯体を得た(収率68%)。表1は、前述のようにして得たソラレン修飾ルテニウム錯体のプロトンNMR(1H‐NMR)結果である。
【0083】
(表1)
1H‐NMR(300MHz、DMSOd−6)
σ:
1.4〜1.8 (6H,m)
2.4〜2.6 (12H,m)
2.74 (2H,t)
3.8〜3.1 (6H,m)
4.31 (2H,s)
6.32 (1H,s)
7.38 (2H,d)
7.54 (7H,m)
7.77 (4H,m)
8.16 (4H,t)
8.70 (2H,d)
8.88 (4H,d)
【0084】
このようにして得られたソラレン修飾ルテニウム錯体を、10mMのPBSで20μMに調整した。
この調整した溶液を、非特異吸着抑制剤を滴下後の二本鎖核酸が形成された金電極x、及び二本鎖核酸が形成されていない金電極yのそれぞれに7μL添加し、30分間4℃の冷蔵庫内で暗反応を行った。
【0085】
(5)UV照射による二本鎖核酸と挿入剤との共有結合
30分後、前記金電極x,yのそれぞれに、UVクロスリンカー(UVP製UVPCL1000L型)を用いて、波長365nm、5mW/cm2の紫外線を10分間照射し、ソラレンと二本鎖核酸とを共有結合させた。
【0086】
(6)洗浄処理
前記UV照射による、二本鎖核酸と挿入剤とを共有結合させた後、洗浄液として、カチオン性界面活性剤であるカチオーゲンTML(第一工業化学製)を5%に調整した50mLの水溶液を作成し、その溶液中に前記金電極x,yそれぞれを浸漬させ、5分間揺動した。その後、洗浄液に浸漬させたまま3分間流水でリンスした後、風乾させ、未反応のRu錯体を取り除いた。
【0087】
(7)電気化学測定
以上の工程の後、前記二本鎖核酸が形成された電極x、及び二本鎖核酸が形成されていない電極yのそれぞれに、0.1MのPBS、及び0.1Mのトリエチルアミンを混合した電解液を滴下した。
【0088】
その後、それぞれの金電極x、yに電圧を印加し、この時に生じた挿入剤由来の電気化学発光の測定を行った。
【0089】
なお、電圧の印加は、0Vから1.3Vまで走査し、1秒間電気化学測定を行った。電気化学発光量の測定は、光電子増倍管(浜松ホトニクス製H7360−01)を用いて行い、電圧走査中における最大発光量を測定した。
【0090】
図1は、本実施例1の電気化学測定にて、二本鎖核酸が形成された金電極x、及び二本鎖核酸が形成されていない金電極yそれぞれにおいて検出された最大電気化学発光量を示したものである。図1から明らかなように、二本鎖核酸が形成された金電極xでの発光量は、二本鎖核酸が形成されていない金電極yでの発光量と比較して著しく高い値となっており、本実施例1の挿入剤を用いれば、高感度に二本鎖核酸の検出が可能であることが分かる。
【0091】
また、二本鎖核酸が形成されていない金電極yでの発光量は非常に低い値であることから、前記洗浄工程において、電極表面に非特異吸着した挿入剤が効果的に除去されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明にかかる遺伝子検出方法は、特定の配列を有する遺伝子を高感度に検出することができ、遺伝子診断、感染症診断、ゲノム創薬等の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施例1における、二本鎖核酸が形成された金電極x、及び二本鎖核酸が形成されていない金電極yにおいて検出された最大電気化学発光量を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体試料中の特定の配列を有する遺伝子を検出する遺伝子検出方法において、
前記検体試料中の検出すべき遺伝子を、一本鎖に変性して遺伝子サンプルを作製する遺伝子サンプル作製工程と、
前記検出すべき遺伝子配列に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖の核酸プローブを電極に固定する固定化工程と、
前記一本鎖の遺伝子サンプルを、前記一本鎖の核酸プローブが固定化された電極に添加し、前記電極に固定化された核酸プローブと前記遺伝子サンプルとがハイブリダイズした二本鎖核酸を形成する二本鎖核酸形成工程と、
前記二本鎖核酸形成工程で得た前記二本鎖核酸に、電気化学的に活性であり、且つ前記二本鎖核酸に特異的に結合される挿入剤を添加する挿入剤添加工程と、
前記二本鎖核酸と未結合の挿入剤を、前記挿入剤と同種の電荷を有する試薬を含む洗浄液で除去する洗浄工程と、
前記洗浄工程後の、前記二本鎖核酸に結合された挿入剤を電気化学的な測定により検出する検出工程と、を含む、
ことを特徴とする遺伝子検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の遺伝子検出方法において、
前記洗浄液に含まれる前記挿入剤と同種の電荷を有する試薬は、カチオン性の試薬である、
ことを特徴とする遺伝子検出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の遺伝子検出方法において、
前記カチオン性の試薬は、カチオン性界面活性剤、第4級アミン、あるいは酸のいずれかである、
ことを特徴とする遺伝子検出方法。
【請求項4】
請求項1に記載の遺伝子検出方法において、
前記挿入剤添加工程は、前記二本鎖核酸形成工程で得た前記二本鎖核酸に、前記挿入剤と該挿入剤と同種の電荷を有する試薬とを添加する、
ことを特徴とする遺伝子検出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の遺伝子検出方法において、
前記挿入剤と同種の電荷を有する試薬は、カチオン性の試薬である、
ことを特徴とする遺伝子検出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の遺伝子検出方法において、
前記カチオン性の試薬は、第4級アミン、あるいは酸のいずれかである、
ことを特徴とする遺伝子検出方法。
【請求項7】
請求項1に記載の遺伝子検出方法において、
前記挿入剤は、酸化還元性を有する化合物である、
ことを特徴とする遺伝子検出方法。
【請求項8】
請求項7に記載の遺伝子検出方法において、
前記酸化還元性を有する化合物は、電気化学発光を示す化合物である、
ことを特徴とする遺伝子検出方法。
【請求項9】
請求項8に記載の遺伝子検出方法において、
前記電気化学発光を示す化合物は、金属錯体である、
ことを特徴とする遺伝子検出方法。
【請求項10】
請求項9に記載の遺伝子検出方法において、
前記金属錯体の中心金属は、ルテニウム、あるいはオスニウムのいずれかである、
ことを特徴とする遺伝子検出方法。
【請求項11】
請求項1に記載の遺伝子検出方法において、
前記検出工程は、前記電極に対して電圧を印加し、前記二本鎖核酸に結合させた挿入剤による電気化学発光量を測定する、
ことを特徴とする遺伝子検出方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−343156(P2006−343156A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167507(P2005−167507)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】