説明

遺伝子検査およびペット食

本発明は、肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定する方法であって、(a)銅蓄積に対する感受性を示すイヌのGOLGA5、ATP7aまたはUBL5遺伝子中の多型および/または(b)前記多型(a)との連鎖不均衡における多型の有無を検出すること、およびそれによって肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定することを含む方法を提供する。本発明は、ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌにおいて肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する際に使用するための、21mg/kg乾物未満の濃度で銅を含む食品も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓中銅蓄積(liver copper accumulation)および銅関連肝疾患(copper-associated liver disease)に対するイヌの感受性を決定する方法に関する。本発明は、肝臓中銅蓄積および銅関連肝疾患を予防する際に使用するためのイヌ用の食品(foodstuff)、およびその食品の作製法にも関する。
【背景技術】
【0002】
肝疾患はイヌにおいては稀であるが、その最も一般的な形の1つは慢性肝炎(CH)である。CHは、線維症、炎症、および肝細胞のアポトーシスおよび壊死の存在によって特徴付けられる組織学的診断名である。疾患の最終段階で肝硬変が生じる可能性がある。CHの原因の1つは肝臓中銅蓄積である。肝臓中銅蓄積は、銅の取り込みの増大、肝臓中銅代謝における一次性代謝障害、または銅の胆汁中排泄の変化が原因である可能性がある。過剰な肝臓中銅蓄積があるイヌは、典型的にはD−ペニシラミンという強力な銅キレート剤で治療する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、イヌGOLGA5、ATP7aおよびUBL5遺伝子中またはそれらの領域中の多型(polymorphisms)が、イヌにおいて肝臓中銅蓄積に対する感受性を示すことを発見した。この3つのゲノム領域中の多型が肝臓中銅蓄積のリスクと関連するという発見は、多型のスクリーニングによって肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を予測するための試験の基盤をもたらす。検出する(detecting)1つまたは複数の確定された(defined)多型の結果を組み合わせることを含むモデルを使用して、試験の予測力を拡大することができる。
【0004】
イヌの肝臓中の銅の蓄積から、多量の肝臓中の銅に起因する1つまたは複数の肝臓の疾患または状態が生じる可能性がある。例えば、多量の肝臓中の銅から、慢性肝炎、肝硬変および最終的には肝不全が生じる可能性がある。したがって本発明は、多量の銅と関連するこのような肝疾患または状態に感受性であるイヌを同定するのを可能にする。肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を確認した後、本発明の食品の投与などにより、肝臓中の銅レベルを低レベルまたは正常レベルに維持する目的で、そのイヌに適した予防措置を特定(identify)することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定する方法であって、(a)銅蓄積に対する感受性を表す(indicative)イヌのGOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の多型および/または(b)前記多型(a)との連鎖不均衡(linkage disequilibrium)における多型の有無を検出することと、それによって肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定することとを含む方法を提供する。
【0006】
本発明は、
− GOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の1つもしくは複数の多型および/またはその連鎖不均衡における1つもしくは複数の多型、ならびに肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性とこれらの多型との関係に関する情報を含むデータベース、
− 肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定する方法であって、
(a)イヌのゲノムにおける本明細書で定義する多型の有無に関するデータをコンピュータシステムに入力すること、
(b)データを、GOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の1つもしくは複数の多型および/またはその連鎖不均衡における1つもしくは複数の多型、ならびに肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性とこれらの多型との関係に関する情報を含むコンピュータデータベースと比較すること、および
(c)比較に基づいて肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定すること
を含む方法、
− コンピュータシステムで実行されると、本発明の方法を実施するようコンピュータシステムに指令するプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム、
− 本発明のコンピュータプログラムおよび本発明のデータベースを含むコンピュータ記憶媒体、
− 本発明の方法を実施するように構成されたコンピュータシステムであって、
(a)イヌのゲノムにおける本明細書で定義する多型の有無に関するデータを受信するための手段、
(b)データを、GOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の1つもしくは複数の多型および/またはその連鎖不均衡における1つもしくは複数の多型、ならびに肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性とこれらの多型との関係に関する情報を含むデータベースと比較するためのモジュール、および
(c)前記比較に基づいて肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定するための手段
を含むコンピュータシステム、
− イヌのゲノムが肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を示す多型を含有するかどうか決定する方法であって、(a)銅蓄積に対する感受性を示すイヌのGOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の多型および/または(b)前記多型(a)との連鎖不均衡における多型の有無を検出することを含む方法、並びに
− 肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定するための、(a)肝臓中銅蓄積に対する感受性を示すイヌのGOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の多型および/または(b)前記多型(a)との連鎖不均衡における多型の使用も提供する。
【0007】
さらに、また驚くことに、本発明者らは、ラブラドールレトリバーにおいて肝臓中銅濃度を低下させる際に、薬剤ペニシラミンの使用より有効である食品を、今、発見した。したがってこの食品は、ラブラドールレトリバー品種のイヌにおいて肝臓中銅蓄積を予防する際に有用であり、慢性肝炎、肝硬変および肝不全などの、多量の肝臓中の銅と関連する疾患または状態を予防するために使用することができる。
【0008】
したがって本発明は、ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌにおいて肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する際に使用するための、21mg/kg乾物(dry matter)未満の濃度で銅を含む食品も提供する。
【0009】
本発明は、
− ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌにおいて肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する方法であって、本発明の食品をイヌに供給することを含む方法、
− 本発明の食品を作製する方法であって、食品が21mg/kg乾物未満の銅濃度を有するように食品の成分を一緒に混合することを含む方法、
− ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌ用の食品の製造における銅の使用であって、食品が、21mg/kg乾物未満の濃度で銅を含み、前記イヌにおける肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する際に使用するための食品である使用、
− ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌにおける肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する際に、同時、個別または逐次使用するための、21mg/kg乾物未満の濃度の銅を有する食品および少なくとも120mg/kg乾物の濃度をもたらす亜鉛サプリメントを含むパック、および
− 本発明によるラベル付き食品または本発明によるラベル付きパックをさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、治療なしでの肝臓中銅蓄積の進行を示す図である。この図は、任意の治療前の8.7カ月(6〜15カ月の範囲)隔てた2回の実験での、11匹のラブラドールレトリバーの肝臓中銅濃度(mg/kg乾燥重量)を示す。この時間中、全ての動物にそれらの通常のメンテナンス食を与え、それは製造者に従い、乾物ベースで12〜25mg/kgの食用銅濃度および乾物ベースで80〜270mg/kgの亜鉛濃度を含有していた。菱形の記号は異常値を表す。
【図2】図2は、食事管理期間中の、試験の開始時および2つの対照実験における24匹のラブラドールレトリバーの肝臓中銅濃度(mg/kg乾燥重量)を示す図である。イヌは以下のように2群に分けた:群1=食事+グルコン酸亜鉛含有錠剤、群2=食事+プラシーボ。x軸の数字の符号は以下の通りである:1+2=治療前、3+4=再検査1(8カ月後の第一の対照実験(5〜13カ月の範囲))、5+6=再検査2(16カ月後の第二の対照実験(12〜25カ月の範囲))。試験したイヌの数は以下の通りである:1:N=群1中12匹のイヌ、2:N=群2中12匹のイヌ、3:N=群1中9匹のイヌ、4:N=群2中12匹のイヌ、5:N=群1中6匹のイヌ、6:N=群2中10匹のイヌ。菱形の記号は異常値を表す。点線は成長したイヌに関する肝臓中の銅の正常レベルを表す。
【図3】図3は、ペニシラミン単独の影響と比較した、18匹のラブラドールレトリバーにおける肝臓中銅濃度(mg/kg乾燥重量)に対する本発明の食事の有効性を示す図である。x軸の符号は以下の通りである:1=ペニシラミン前、2=ペニシラミン後/食前、3=食後。1から2へのx軸に沿った進行はペニシラミン効果を示し、一方2から3への進行は食事の効果を示す。点線は成長したイヌに関する肝臓中の銅の正常レベルを表す。
【図4】図4は、本発明を実施するように構成された機能要素の実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
配列の簡単な説明
配列番号:1〜129は、本発明のSNPを含むポリヌクレオチド配列を示す。
【0012】
肝臓中銅蓄積に対する感受性の確認
肝臓中の銅の蓄積から、ラブラドールレトリバー、ドーベルマンピンシェル、ジャーマンシェパード、キースホンド、コッカースパニエル、ウエストハイランドホワイトテリア、ベドリントンテリア、およびスカイテリアを含めた、幾つかのイヌ品種において肝疾患が生じる。任意の品種の正常なイヌの肝臓中の銅濃度の平均値は乾燥重量ベースで200〜400mg/kgであるが、新生児は一般により高い肝臓中銅濃度を有する。
【0013】
銅蓄積に感受性であるイヌは、その肝臓中銅濃度が400mg/kgを超える、例えば500mg/kg、600mg/kg、800mg/kg、1000mg/kg、1500mg/kg、2000mg/kg、5000mg/kgを超える、または10000mg/kgを超えるレベルに達するように銅を蓄積する傾向を有する。本発明による肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性の決定は、イヌが400mg/kgを超えるレベルまで肝臓中の銅を蓄積し得る危険または可能性の決定を含む。これは、例えば危険因子、割合または確率として表すことができる。イヌが前に記載したレベルまで銅を蓄積し得るかどうか決定することは可能である。
【0014】
400mg/kgを超えるレベルへの肝臓中の銅の蓄積は肝疾患と関連し、最終的には肝不全をもたらす可能性がある。したがって、肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性の決定は、慢性肝炎、肝硬変および肝不全などの肝臓中銅蓄積に起因する疾患または状態に対するイヌの感受性を決定する方法も与える。
【0015】
遺伝形質と関連する多型を解明する方法
本発明者らは、個体群中の遺伝形質と関連する多型を決定する方法、すなわち(「2Dマッピング」としても知られる)「パーティションマッピング」を開発した。この方法は現在二元条件(症例/対照研究)に限られている。
【0016】
遺伝的関連がある複合疾患は一般に2つ以上の遺伝子によって誘導される。これらの遺伝子は非線形的に相互作用して、従来の方法を使用してそれらをマッピングするのが困難となる可能性がある。一対の個体のレベルで検討する(working on)ことによって、多数の遺伝子の影響を取り除くことができる。遺伝子座はその個体対における表現型に貢献するかまたは貢献しないかであるからである。この方法の完全な作業は以下に記載する。この分析の実施後、それぞれの領域中のリスクがある対立遺伝子を抽出し、他の方法を使用して表現型を予想するためのモデルを構築することができる。
【0017】
「パーティションマッピング」アルゴリズムは、50キロベース毎に中断しながら(stopping every 50 kilobases)ゲノムをスキャンする。これらの地点のそれぞれにおいて、それぞれの個体対を分析する。それぞれの対に関して、全染色体の遺伝子型を分析し、3つの考えられるシナリオの下での遺伝子型の可能性を比較する。第一のシナリオは、この個体対において表現型を誘導する劣性突然変異が存在することである。第二のシナリオは、この個体対において表現型を誘導する優性突然変異が存在することである。第三のシナリオは、このイヌの対においてこの位置での表現型の重要な突然変異が存在しないことである。以下に記載するように、隠れマルコフモデル(hidden markov model)を使用して可能性を計算する。これらの可能性を比較することによって、その地点における劣性または優性表現型誘導突然変異の存在に肯定的または否定的なこの個体対に関するベイズ因子を導く(derive)ことが可能である。これらの値の対数をとり、したがって正の値は、劣性または優性突然変異のシナリオに対する重みを表し、負の値は、ここに重要な突然変異が存在しないことに対するさらなる証拠を表す。
【0018】
個体対はその遺伝子座における対数−ベイズ因子の順に分類する。個体対の対数−ベイズ因子を次いで降順に合計し、それぞれの百分率のデータで累積的な証拠の重みの記録をとる。大抵の場合、幾つかの対数−ベイズ因子は正であり、幾つかは負であり得る。これは記録値の影響を与え、百分率のデータは上昇し次いで低下する。この値の最大値は、劣性または優性モデルのいずれかに対する証拠の重みの指標を与える。これは「ピーク値」と呼ばれる。
【0019】
幾つかの場合、アルゴリズムは、特にゲノムの同型領域、または高密度の多型を有する領域に対する偏向を有する。この影響は4つの考えられる症例/対照状態(症例−症例、症例−対照、対照−症例、対照−対照)中で順序を変えたそれぞれの対で方法を実施することによって定量化する。任意の遺伝子座に関して、順序を変えたモデル下でのピーク値を正常ピーク値から差し引き、これは補正ピーク値を与える。対象とするゲノムの所与の領域中の補正ピーク値を比較することができる。
【0020】
隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model)
パーティションマッピングの重要な要素は、それが遺伝子型データに直接作用しないことである。イヌのペア間の類似度をモデル化する一層の分析を使用し、この分析は、何時2つの個体がそれらのゲノム中の遺伝子座に同じ先祖の対立遺伝子を有するかに関する情報を与える。
【0021】
イヌのペア中の染色体間には9つの考えられる関係が存在し、最も関連があるのは全4本の染色体の同じハプロタイプであり、最も関連がないのはこの位置における4つの異なるハプロタイプである。これら9つの状態の可能性は隠れマルコフモデルを使用して計算する。
【0022】
遺伝子座が問題の個体対に作用している場合、これらの状態の幾つかは症例−対照表現型の幾つかの置換の下では考えられない。このため、相対的可能性から劣性または優性対立遺伝子の存在に関するベイズ因子を計算することができる。
【0023】
多型および銅蓄積に対する感受性
上記した方法を使用して、本発明者らは、イヌGOLGA5、ATP7aおよびUBL5遺伝子中またはそれらの領域中の多型は、肝臓中銅蓄積に対する感受性を示すことを発見した。したがって本発明は、これらのゲノム位置で1つまたは複数の多型マーカーを使用して、肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定する方法に関する。
【0024】
本発明は、肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定する方法であって、(a)銅蓄積に対する感受性を示すイヌのGOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の多型および/または(b)前記多型(a)との連鎖不均衡における多型の有無を検出することと、それによって肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定することとを含む方法を提供する。
【0025】
フレーズ「多型の有無を検出すること」は、多型がイヌのゲノム中に存在するかどうか決定することを典型的には意味する。多型には一塩基多型(SNP)、マイクロサテライト多型、挿入多型および欠失多型がある。多型はSNPであることが好ましい。SNPの有無を検出することは、SNPを遺伝子型決定することまたはイヌのゲノム中に存在するSNPの(1つまたは複数の)ヌクレオチドを型決定することを意味する。典型的には、両方の相同染色体上の同じ位置に存在するヌクレオチドが決定される。したがってイヌは、SNPの第一の対立遺伝子に関して同型、SNPの第二の対立遺伝子に関して異型または同型であると決定することができる。
【0026】
本明細書で定義する多型位置のいずれか1つを、直接、言い換えるとその位置に存在するヌクレオチドを決定することによって、または間接的、例えば前記多型位置と連鎖不均衡である別の多型位置に存在するヌクレオチドを決定することによって、型決定することができる。本明細書で定義する多型位置のいずれか1つと連鎖不均衡である多型を同定するために通常の技法を使用することは、当業者の能力の範囲内であり得る。
【0027】
集団中で互いに連鎖不均衡である幾つかの多型は、典型的には同じ染色体上で1箇所に見られる。典型的には1つは少なくとも30%の場合(times)、例えば少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%の場合で見られ、もう1つは集団内の個体中の特定の染色体上で見られる。したがって、機能的感受性多型ではなく、ただし機能的多型と連鎖不均衡である多型は、機能的多型の存在を示すマーカーとして働くことができる。本発明の多型と連鎖不均衡である多型は、肝臓中銅蓄積に対する感受性を示す。
【0028】
本明細書で言及する多型と連鎖不均衡である多型は、その多型の9mb以内、好ましくは5mb以内、2mb以内、1mb以内、500kb以内、400kb以内、200kb以内、100kb以内、50kb以内、10kb以内、5kb以内、1kb以内、500bp以内、100bp以内、50bp以内または10bp以内に典型的には位置する。
【0029】
したがって本発明は、(a)銅蓄積に対する感受性を示すイヌのGOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の多型および/または(b)前記多型(a)との連鎖不均衡における多型の有無を検出することを含む。任意の数および任意の組合せの多型を検出して本発明を実施することができる。少なくとも2つの多型を検出することが好ましい。2〜5、3〜8または5〜10の多型を検出することが好ましい。
【0030】
多型はGOLGA5、ATP7aまたはUBL5遺伝子のいずれか1つに存在する可能性があり、あるいはこれらの遺伝子のいずれの1つにも存在しないが、これらの遺伝子のいずれか1つにおける多型と連鎖不均衡である可能性がある。これらの遺伝子のいずれか1つにおいて存在する、またはそれと連鎖不均衡である2つ以上の多型を検出することができる。多型は任意の組合せであってよい。
【0031】
イヌのDNAは、
(i)2つ以上の多型(a)、
(ii)2つ以上の多型(b)、または
(iii)1つまたは複数の多型(a)および1つまたは複数の多型(b)のそれぞれの位置で型決定することができる。
【0032】
2つの多型(a)が存在するとき、それぞれの多型はGOLGA5、ATP7aまたはUBL5遺伝子の別個の1つに存在し、またはこれらの遺伝子の1つのみに存在する可能性がある。3つ以上の多型(a)、例えば3〜10のこのような多型が存在するとき、多型は同じ遺伝子中、これらの遺伝子の2つまたは全3個の遺伝子に存在する可能性がある。
【0033】
同様に、2つの多型(b)が存在するとき、それぞれの多型はGOLGA5、ATP7aまたはUBL5遺伝子の別個の1つ、またはこれらの遺伝子の1つのみにおける多型と連鎖不均衡である可能性がある。3つ以上の多型(b)、例えば3〜10のこのような多型が存在するとき、多型は同じ遺伝子中、これらの遺伝子の2つまたは全3個の遺伝子における多型と連鎖不均衡である可能性がある。
【0034】
好ましい方法は、肝臓中銅蓄積に対する感受性を示すイヌのGOLGA5、ATP7aまたはUBL5遺伝子中の少なくとも1つの多型(a)および前記多型(a)との連鎖不均衡における少なくとも1つの多型(b)の有無を検出することを含む。
【0035】
本発明の好ましい方法では、多型はSNPである。SNPは、銅蓄積に対する感受性を示すイヌのGOLGA5、ATP7aまたはUBL5遺伝子中の任意のSNP、および/またはそれとの連鎖不均衡におけるSNPであってよい。SNPは、表IIIおよび表IV中で同定したSNPから選択されることが好ましい。表IIIおよび表IV中では、それぞれのSNPは配列中の位置61に位置する。その位置でのそれぞれのSNPに関する野生型および他の対立遺伝子が与えられる。任意の数のSNPを、表IIIおよびIVから任意の組合せで使用することができる。SNPは異なる型の多型と組み合わせることができる。
【0036】
この方法は、表III中のSNPから選択される1つもしくは複数のSNPおよび/またはそれとの連鎖不均衡における1つもしくは複数のSNPの有無を検出することを含むことが好ましい。したがって、これら5個のSNPのいずれかまたはこれら5個のSNPのいずれかと連鎖不均衡である任意のSNPを型決定することができる。これら5個のSNPまたは連鎖不均衡におけるSNPの少なくとも2つを、型決定することが好ましい。全ての5個の位置を型決定することがより好ましい。したがって、型決定する(1つまたは複数の)ヌクレオチドは、
配列番号:1の位置61(BICF2P506595、SNP1);
配列番号:2の位置61(BICF2P772765、SNP2);
配列番号:3の位置61(BICF2S2333187、SNP3);
配列番号:4の位置61(BICF2P1324008、SNP4);
配列番号:5の位置61(BICF2P591872、SNP5);またはこれらの位置のいずれか1つと連鎖不均衡である任意の位置に相当する位置から選択されることが好ましい。好ましくは、この方法は、SNPBICF2P506595(配列番号:1)、BICF2P772765(配列番号:2)、BICF2S2333187(配列番号:3)、BICF2P1324008(配列番号:4)、およびBICF2P591872(配列番号:5)の有無を検出することを含む。
【0037】
SNP1はGOLGA5遺伝子のイントロン内に存在する。SNP2、3および4はUBL5遺伝子の領域内に位置する。SNP5はATP7a遺伝子の領域内に位置する。したがって本発明の検出法は、1つまたは複数のこれらの遺伝子内またはそれらの領域中(コード領域中または他の領域中)に存在する任意のSNP、または連鎖不均衡である任意の他のSNPに関する。
【0038】
イヌのゲノム中、表IIIまたはIV中で確認した位置に存在する(1つまたは複数の)ヌクレオチドの型決定は、表IIIまたはIV中で確認した配列に正確に対応する配列中のこの位置に存在する、ヌクレオチドが型決定されることを意味することができる。しかしながら、表III中で確認した配列番号:1〜5または表IV中の配列番号:6〜129中に存在する正確な配列は、試験するイヌにおいて必ずしも存在しないことは理解されよう。したがって、存在するヌクレオチドの型決定は、表IIIもしくはIV中で確認した位置、または配列中の相当もしくは対応する位置であってよい。したがって、本明細書で使用する用語相当は、表IIIもしくはIV中で確認した位置、またはそれに対応する位置を意味する。配列、したがってSNPの位置は、例えばイヌのゲノム中のヌクレオチドの欠失または付加のために変わる可能性がある。当業者は、例えばGAP、BESTFIT、COMPARE、ALIGN、PILEUPまたはBLASTなどのコンピュータプログラムを使用して、配列番号:1〜129のそれぞれにおける関連位置に対応またはそれに相当する位置を決定することができるはずである。UWGCGパッケージはGAP、BESTFIT、COMPARE、ALIGNおよびPILEUPを含めたプログラムを提供し、これらを使用して相同性またはラインアップ配列を計算することができる(例えばそれらのデフォルト設定で使用して)。典型的にはそのデフォルト設定で、BLASTアルゴリズムを使用して2つの配列を比較またはラインアップすることもできる。2つの配列のBLAST比較を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって公表されている。このアルゴリズムは以下でさらに記載する。配列のアラインメントおよび比較用の類似の公表されているツールは、European Bioinformatics Instituteウエブサイト(http://www.ebi.ac.uk)、例えばALIGNおよびCLUSTALWプログラムで見ることができる。
【0039】
イヌのゲノム中の1つまたは複数の本発明の多型の有無を検出した後、それによって肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定する。それぞれの多型単独または他の多型と組み合わせた遺伝子型は、肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を示す。一例として、表IはGOLGA5、UBL5およびATP7a遺伝子の領域中の5つのSNPの組合せの異なる考えられる遺伝子型、および多量の銅(600mg/kgを超える肝臓中レベル)を有するこれらの遺伝子型を有するイヌの割合を述べる。この例では、肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定するために、イヌ由来のDNAサンプルを使用して、イヌのゲノム中の5つのSNPを遺伝子型決定することができる。SNPの遺伝子型を決定した後、これらは実施例1中に与えるキーに基づいて、すなわち遺伝子型と多量の銅の関連度に基づいて、2進値に変換することができる。したがって表Iを使用して、その遺伝子型パターンおよび多量の銅を有するイヌの割合に基づいて2進値を危険因子に変換する。
【0040】
任意の年齢、例えば0〜12、0〜6、0〜5、0〜4、0〜3、0〜2または0〜1年齢で、本発明の方法によってイヌを試験することができる。イヌは、可能な限り若い年齢、例えばその寿命の最初の1年、最初の6カ月または最初の3カ月以内で試験することが好ましい。イヌは銅蓄積が起こる前に試験することが好ましい。イヌの病歴は知られているかまたは知られていなくてよい。例えば、イヌは両親が知られている子犬であってよく、かつ銅蓄積に関する両親の病歴が知られていてよい。あるいはイヌは、血統および病歴が知られていない野良犬または救出された犬であってよい。
【0041】
本発明の方法によって試験するイヌは任意の品種であってよい。典型的にはイヌは、ラブラドールレトリバー、ドーベルマンピンシェル、ジャーマンシェパード、キースホンド、コッカースパニエル、ウエストハイランドホワイトテリア、ベドリントンテリア、およびスカイテリアから選択される品種の遺伝的形質を有し得る。イヌは混血もしくは交配種犬、または雑種もしくは非近交系犬であってよい。イヌは、任意の純血種のまたはより好ましくは本明細書で記載する品種のいずれかから遺伝した、少なくとも25%、少なくとも50%、または少なくとも100%のそのゲノムを有する可能性がある。イヌは純血種であってよい。本発明の一実施形態では、試験するイヌの一方または両方の親は純血種のイヌであるか、またはそうであった。別の実施形態では、1匹または複数匹の祖父母が純血種のイヌであるか、またはそうであった。試験するイヌの祖父母の1、2、3または全4匹が純血種のイヌであり得るか、またはそうであった可能性がある。
【0042】
イヌはラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有することが好ましい。イヌは純血種のラブラドールレトリバーであってよい。あるいはイヌは、混血もしくは交配種犬、または非近交系犬(雑種)であってよい。イヌの一方または両方の親は純血種のラブラドールレトリバー犬であってよい。イヌの祖父母の1、2、3または全4匹が純血種のラブラドールレトリバー犬であってよい。イヌはその遺伝的背景で少なくとも50%または少なくとも75%のラブラドールレトリバー品種を有する可能性がある。したがって、少なくとも50%または少なくとも75%のイヌのゲノムが、ラブラドールレトリバー品種に由来する可能性がある。
【0043】
イヌの品種の遺伝的背景は、遺伝子マーカー、例えばSNPまたはマイクロサテライトの対立遺伝子頻度を評価することによって決定することができる。イヌにおける異なるSNPまたはマイクロサテライトの対立遺伝子頻度の組合せは、イヌの品種または混血品種のイヌを構成する品種の決定を可能にする痕跡を与える。このような遺伝子検査は市販の検査であってよい。あるいは、イヌはラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質に関して試験する必要がない可能性がある。例えばイヌの飼い主または獣医がラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質に関する知識を有する可能性があるからである。これは例えばイヌの血統の知識のため、またはその外見のためである可能性がある。
【0044】
本発明の予測試験は、イヌの品種の遺伝的背景または1つまたは複数の他の疾患に対する感受性の決定などの、1つまたは複数の他の予測または診断試験と共に実施することができる。
【0045】
多型の検出(Detection of polymorphisms)
本発明による多型の検出は、イヌのポリヌクレオチドまたはタンパク質と多型の特異的結合因子(specific binding agent)を接触させることと、当該因子がポリヌクレオチドまたはタンパク質と結合するかどうか決定することとを含むことができ、因子の結合が多型の存在を示し、かつ因子の結合の欠如は多型の不在を示す。
【0046】
この方法は一般に、イヌ由来のDNAを含有するイヌ由来のサンプルにin vitroで実施する。サンプルは典型的にはイヌの体液および/または細胞を含み、例えば口腔スワブなどのスワブを使用して得ることができる。サンプルは血液、尿、唾液、皮膚、頬細胞または毛根サンプルであってよい。典型的には、この方法を実施する前にサンプルを処理し、例えばDNA抽出を実施することができる。サンプル中のポリヌクレオチドまたはタンパク質は、例えば適切な酵素を使用して、物理的または化学的のいずれかで切断することができる。一実施形態では、サンプル中のポリヌクレオチドの一部分を、多型の検出前に、例えばクローニングまたはPCRベースの方法を使用することによってコピーまたは増幅する。
【0047】
本発明中では、任意の1つまたは複数の方法は、イヌにおける1つまたは複数の多型の有無を検出することを含むことができる。典型的には、多型はイヌのポリヌクレオチドまたはタンパク質中の多型配列の存在を直接決定することによって検出する。このようなポリヌクレオチドは、典型的にはゲノムDNA、mRNAまたはcDNAである。以下に言及する方法などの任意の適切な方法によって、多型を検出することができる。
【0048】
特異的結合因子は、多型を有するタンパク質またはポリペプチドと優先的または高親和性で結合するが、他のポリペプチドまたはタンパク質とは結合しないまたは低い親和性でのみ結合する因子である。特異的結合因子は、プローブまたはプライマーであってよい。プローブはタンパク質(抗体など)またはオリゴヌクレオチドであってよい。プローブは標識可能であり、または間接的に標識することができる。ポリヌクレオチドまたはタンパク質とプローブの結合を使用して、プローブまたはポリヌクレオチドまたはタンパク質のいずれかを固定することができる。
【0049】
一般にこの方法では、イヌの多型ポリヌクレオチドまたはタンパク質と因子の結合を決定することによって、多型を検出することができる。しかしながら一実施形態では、因子は、例えば変異体の位置と隣接するヌクレオチドまたはアミノ酸との結合によって、対応する野生型配列と結合することもできるが、野生型配列との結合形式は、多型を含有するポリヌクレオチドまたはタンパク質の結合と検出上異なる可能性がある。
【0050】
この方法は2つのオリゴヌクレオチドプローブを使用するオリゴヌクレオチド連結反応アッセイに基づくものであってよい。これらのプローブは多型を含有するポリヌクレオチド上の隣接領域と結合し、結合後2つのプローブが適切なリガーゼ酵素によって1つに連結するのが可能となる。しかしながら、プローブの1つ中の1つのミスマッチの存在は、結合および連結を妨害する可能性がある。したがって、連結プローブは多型を含有するポリヌクレオチドとのみ存在する可能性があり、したがって、連結産物の検出を使用して多型の存在を検出することができる。
【0051】
一実施形態では、ヘテロ二重鎖分析系システムにおいてプローブを使用する。このようなシステムにおいて、プローブが多型を含有するポリヌクレオチド配列と結合するとき、それは多型が存在する部位でヘテロ二重鎖を形成し、したがって二本鎖構造は形成しない。このようなヘテロ二重鎖構造は、一本鎖または二本鎖特異的酵素の使用によって検出することができる。典型的にはプローブはRNAプローブであり、ヘテロ二重鎖領域はRNAaseHを使用して切断し、切断産物を検出することによって多型を検出する。
【0052】
この方法は例えばPCR Methods and Applications3、268〜71(1994)およびProc.Natl.Acad.Sci.85、4397〜4401(1998)中に記載される蛍光化学切断ミスマッチ分析に基づくものであってよい。
【0053】
一実施形態では、それが多型を含有するポリヌクレオチドと結合する場合のみ、PCR反応を促進するPCRプライマー、例えば配列特異的PCRシステムを使用し、多型の存在はPCR産物を検出することによって決定することができる。多型と相補的であるプライマーの領域は、プライマーの3’末端またはその付近であることが好ましい。多型の存在は、蛍光色素を使用すること、およびTagman PCR検出システムなどの因子系PCRアッセイを停止させることによって決定することができる。
【0054】
特異的結合因子は、多型配列によってコードされるアミノ酸配列と特異的に結合することができる。例えば、因子は抗体または抗体断片であってよい。検出法はELISAシステムに基づくものであってよい。この方法はRFLP系システムであってよい。ポリヌクレオチド中の多型の存在が、制限酵素によって認識される制限部位を生成または破壊する場合、この方法を使用することができる。
【0055】
多型の存在は、多型の存在がゲル電気泳動中のポリヌクレオチドまたはタンパク質の移動度を生み出す変化に基づいて決定することができる。ポリヌクレオチドの場合、一本鎖高次構造多型(SSCP)または変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DDGE)分析を使用することができる。多型を検出する別の方法では、多型領域を含むポリヌクレオチドは多型を含有する領域中で塩基配列決定して、多型の存在を決定する。
【0056】
多型の存在は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって検出することができる。特に、二重ハイブリダイゼーションプローブシステムによって多型を検出することができる。この方法は、互いに近くに位置し対象とする標的ポリヌクレオチドの内部セグメントと相補的である、2つのオリゴヌクレオチドプローブの使用を含み、この場合2つのプローブのそれぞれをフルオロフォアで標識する。任意の適切な蛍光標識または色素を、1つのプローブ(ドナー)上のフルオロフォアの発光波長が第二のプローブ(アクセプター)上のフルオロフォアの励起波長と重複するように、フルオロフォアとして使用することができる。典型的なドナーフルオロフォアはフルオレセイン(FAM)であり、かつ典型的なアクセプターフルオロフォアには、テキサスレッド、ローダミン、LC−640、LC−705およびシアニン(Cy5)がある。
【0057】
蛍光共鳴エネルギー移動を起こすために、2つのフルオロフォアは、標的の両方のプローブのハイブリダイゼーション時に極めて接近している必要がある。ドナーフルオロフォアが適切な波長の光で励起するとき、発光スペクトルエネルギーがアクセプタープローブ上のフルオロフォアに移動し、その蛍光が生じる。したがって、ドナーフルオロフォアに適した波長での励起中のこの波長の光の検出は、2つのプローブにおけるフルオロフォアのハイブリダイゼーションおよび密接な結合を示す。それぞれのプローブは、上流(5’)に位置するプローブがその3’末端で標識され、かつ下流(3’)に位置するプローブがその5’末端で標識されるように、片方の末端においてフルオロフォアで標識することができる。
【0058】
標的配列との結合時の2プローブ間のギャップは、1、2、4、6、8または10ヌクレオチドのギャップなどの、1〜20ヌクレオチド、好ましくは1〜17ヌクレオチド、より好ましくは1〜10ヌクレオチドである可能性がある。
【0059】
2つのプローブの第一のプローブは多型と隣接する遺伝子の保存配列と結合するように設計することができ、第二のプローブは1つまたは複数の多型を含む領域と結合するように設計することができる。第二のプローブによって標的化される遺伝子の配列内の多型は、生成する塩基のミスマッチによって引き起こされる溶融温度の変化を測定することによって検出することができる。溶融温度の変化の程度は、ヌクレオチド多型に関与する数および塩基型に依存し得る。
【0060】
プライマー伸長技法を使用して多型の型決定を実施することもできる。この技法中、多型部位周囲の標的領域を、例えばPCRを使用してコピーまたは増幅する。次いで一塩基の配列決定反応を、多型部位から一塩基離れてアニーリングするプライマーを使用して実施する(対立遺伝子特異的ヌクレオチドの取り込み)。次いでプライマー伸長産物を検出して、多型部位に存在するヌクレオチドを決定する。伸長産物を検出することができる幾つかの方法が存在する。例えば1つの検出法では、蛍光標識したジデオキシヌクレオチドターミネーターを使用して、多型部位での伸長反応を停止させる。あるいは、質量改変したジデオキシヌクレオチドターミネーターを使用し、質量分析法を使用してプライマー伸長産物を検出する。1つまたは複数のターミネーターを特異的に標識することによって、伸長したプライマーの配列、したがって多型部位に存在するヌクレオチドを推定することができる。反応当たり2つ以上の反応産物を分析することができ、したがって、2つ以上のターミネーターを特異的に標識する場合、両方の相同染色体に存在するヌクレオチドを決定することができる。
【0061】
本発明は、銅蓄積に対する感受性の予測において使用するための、本明細書で定義するSNPのいずれかの検出において使用することができるプライマーまたはプローブをさらに提供する。本発明のポリヌクレオチドは、本明細書で定義するSNPを検出するためのプライマー伸長反応用のプライマーとして使用することもできる。
【0062】
このようなプライマー、プローブおよび他のポリヌクレオチド断片は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15または少なくとも20、例えば少なくとも25、少なくとも30または少なくとも40ヌクレオチド長であることが好ましい。それらは典型的には最大40、50、60、70、100または150ヌクレオチド長である。プローブおよび断片は、150ヌクレオチド長より長くて、例えば最大200、300、400、500、600、700ヌクレオチド長、またはさらに本発明の完全長ポリヌクレオチド配列より最大5または10ヌクレオチドなど数ヌクレオチド短くてよい。
【0063】
本発明のSNPを遺伝子型決定するためのプライマーおよびプローブは、表IIIおよびIV中のSNP配列を使用して、当技術分野で知られている任意の適切な設計ソフトウェアを使用して設計することができる。これらのポリヌクレオチド配列のホモログも、プライマーおよびプローブを設計するのに適している可能性がある。このようなホモログは、例えば少なくとも15、20、30、100を超える隣接ヌクレオチドの領域で、少なくとも70%の相同性、好ましくは少なくとも80、90%、95%、97%または99%の相同性を典型的には有する。相同性はヌクレオチドの同一性に基づいて計算することができる(時折「確固たる相同性(hard homology)」と呼ぶ)。
【0064】
例えばUWGCGパッケージはBESTFITプログラムを与え、これを使用して相同性を計算することができる(例えばそれらのデフォルト設定で使用して)(Devereuxら(1984)Nucleic Acids Research12、p387〜395)。例えばAltschul S.F.(1993)J Mol Evol36:290〜300;Altschul、S、Fら(1990)J Mol Biol215:403〜10中に記載されたように、PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを使用して、相同性を計算するまたは配列をラインアップすることができる(相当または対応する配列の同定など(典型的にはそのデフォルト設定で)。
【0065】
BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって公表されている。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインメントをとるとき、幾つかの正の値の閾値スコアTと一致するかまたはそれを満たすクエリ配列中の短いワード長のWを同定することによって、高スコア配列対(HSP)を最初に同定することを含む。Tは隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschulら、上記)。これらの初期隣接ワードヒットは、それらを含有するHSPを発見するための検索を開始するためのシードとして働く。累積アラインメントスコアが増大する可能性がある限り、ワードヒットはそれぞれの配列に沿って両方向で延長する。累積アラインメントスコアがその最大獲得値から量Xだけ低下するとき、1つまたは複数の負のスコアの残基アラインメントの蓄積によって累積スコアがゼロ以下になるとき、またはいずれかの配列の末端に達するとき、それぞれの方向におけるワードヒットの延長は止まる。BLASTアルゴリズムのパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTプログラムはデフォルトとして11のワード長(W)、BLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff and Henikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915〜10919参照)50のアラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、および両方の鎖の比較値を使用する。
【0066】
BLASTアルゴリズムは2配列間の類似性の統計分析を実施する、例えばKarlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:5873〜5787を参照。BLASTアルゴリズムによって与えられる類似性の1つの測定値は、2ポリヌクレオチド配列間の一致が偶然に生じ得る確率の指標を与える最小合計確率(P(N))である。例えば、第一の配列と第二の配列の比較における最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01、および最も好ましくは約0.001である場合、配列は別の配列と類似していると考えられる。
【0067】
相同配列は、ヌクレオチドの置換、欠失または挿入であり得る少なくとも1、2、5、10、20またはそれより多くの突然変異によって典型的には異なる。
【0068】
プライマーまたはプローブなどの本発明のポリヌクレオチドは、単離または実質的に精製された形で存在してよい。それらは、それらの目的用途に干渉せずさらに実質的に単離されたとみなされる、担体または希釈剤と混合することができる。これらは実質的に精製された形であってもよく、その場合これらは、調製物のポリヌクレオチドの少なくとも90%、例えば少なくとも95%、98%または99%を一般に含み得る。
【0069】
検出抗体(Detector antibodies)
検出抗体は、1つの多型に特異的であるが、本明細書で記載する任意の他の多型とは結合しない抗体である。検出抗体は、例えば免疫沈降技法を含めた精製、単離またはスクリーニング法において有用である。
【0070】
本発明のポリペプチドの特異的エピトープに対して抗体を産生することができる。抗体、または他の化合物は、それが特異的であるタンパク質と優先的または高親和性で結合するが、他のポリペプチドとは実質的に結合しないまたは低い親和性でのみ結合するとき、ポリペプチドと「特異的に結合する」。抗体の特異的結合能力を決定するための競合結合または免疫放射定量アッセイ用の様々なプロトコルは、当技術分野でよく知られている(例えば、Maddoxら、J.Exp.Med.158、1211〜1226、1993を参照)。このようなイムノアッセイは、特異的タンパク質とその抗体の間の複合体の形成、および複合体形成の測定を典型的には含む。
【0071】
本発明の目的で、用語「抗体」は、反対のことを示さない限り、本発明のポリペプチドと結合する断片を含む。このような断片には、Fv、F(ab’)およびF(ab’)断片、および単鎖抗体がある。さらに、抗体およびその断片は、キメラ抗体、CDR移植抗体またはヒト化抗体であってよい。
【0072】
(本明細書で言及する任意のこのようなサンプルなどの)生物サンプル中の本発明のポリペプチドを検出するための方法中で抗体を使用することができ、この方法は、
I 本発明の抗体を提供すること、
II 抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件下で前記抗体と生物サンプルをインキュベートすること、および
III 前記抗体を含む抗体−抗原複合体が形成されるかどうか決定すること
を含む。
【0073】
本発明の抗体は任意の適切な方法によって生成することができる。抗体を調製および特徴付けするための手段は当技術分野でよく知られており、例えば、Harlow and Lane(1988)「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYを参照。例えば抗体は、宿主動物中で完全ポリペプチドまたはその断片、例えば本明細書で以後「免疫原」と呼ぶその抗原エピトープに対する抗体を産生することによって生成することができる。断片は本明細書で言及する任意の断片であってよい(典型的には少なくとも10または少なくとも15アミノ酸長)。
【0074】
ポリクローナル抗体を生成するための方法は、適切な宿主動物、例えば実験動物を免疫原で免疫処置することと、動物の血清から免疫グロブリンを単離することとを含む。したがって動物に免疫原を接種し、血液をその後動物から除去し、IgG分画を精製することができる。モノクローナル抗体を生成するための方法は、望ましい抗体を生成する細胞を不死化することを含む。ハイブリドーマ細胞は、接種した実験動物由来の脾細胞と腫瘍細胞を融合することによって生成することができる(Kohler and Milstein(1975)Nature256、495〜497)。
【0075】
望ましい抗体を生成する不死化細胞は従来の手順によって選択することができる。ハイブリドーマは培養中に増殖することが可能であり、腹水形成のため腹膜内に、または同種異系宿主または免疫不全宿主の血流中に注射することが可能である。ヒト抗体は、ヒトリンパ球のin vitro免疫処置、次にエプスタインバーウイルスによるリンパ球の形質転換によって調製することができる。
【0076】
モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の両方の生成には、適切には、実験動物はヤギ、ウサギ、ラット、マウス、モルモット、ニワトリ、ヒツジまたはウマである。望む場合、例えば適切な担体とアミノ酸残基の1つの側鎖によって免疫原が結合した結合体として、免疫原を投与することができる。担体分子は典型的には生理的に許容される担体である。得られた抗体は単離、および望む場合は精製することができる。
【0077】
検出キット
本発明は、本明細書で定義する1つまたは複数の多型を型決定するための手段を含むキットも提供する。特に、このような手段は、本明細書で定義する多型を検出することができるかまたはその検出を容易にすることができる、特異的結合因子、プローブ、プライマー、プライマーの対または組合せ、または本明細書で定義する抗体断片を含めた抗体を含むことができる。プライマーまたはプライマーの対もしくは組合せは、本明細書で論じる検出対象の多型を含むポリヌクレオチド配列のPCR増幅のみ引き起こす、配列特異的プライマーであってよい。プライマーまたはプライマーの対は、あるいは多型ヌクレオチドに特異的でない可能性はあるが、領域上流(5’)および/または下流(3’)に特異的である可能性がある。これらのプライマーは、多型ヌクレオチドを含む領域のコピーを可能にする。プライマー伸長技法中で使用するのに適したキットは、標識ジデオキシヌクレオチド3リン酸(ddNTP)を特異的に含み得る。これらは例えば蛍光標識または質量改変して、伸長産物の検出、したがって多型部位に存在するヌクレオチドの決定を可能にすることができる。
【0078】
キットは、多型の不在を検出することができる、特異的結合因子、プローブ、プライマー、プライマーの対または組合せ、または抗体も含むことができる。キットは、バッファーまたは水溶液をさらに含むことができる。
【0079】
キットは、前述の方法の実施形態のいずれかの実施を可能にすることができる、1つまたは複数の他の試薬または計器を追加的に含むことができる。このような試薬または計器は、多型と因子の結合を検出するための手段、蛍光標識などの検出可能な標識、ポリヌクレオチドに作用することができる酵素、典型的にはポリメラーゼ、制限酵素、リガーゼ、RNAseH、または標識とポリヌクレオチドを結合させることが可能である酵素、酵素試薬に適した(1つまたは複数の)バッファーまたは水溶液、本明細書で論じる多型と隣接する領域と結合するPCRプライマー、陽性および/または陰性対照、ゲル電気泳動用装置、サンプルからDNAを単離するための手段、スワブまたはニードルを含む計器などの個体からサンプルを得るための手段、またはその上で検出反応を実施することができるウエルを含む支持体の1つまたは複数を含むことができる。キットは、本発明の特異的結合因子、好ましくはプローブを含むポリヌクレオチドアレイなどのアレイであってよく、またはそれを含むことができる。キットは、キットを使用するための一組の説明書を典型的には含む。
【0080】
バイオインフォマティクス
多型の配列は、電子形式で、例えばコンピュータデータベース中に保存することができる。したがって本発明は、GOLGA5、ATP7aまたはUBL5遺伝子中の1つもしくは複数の多型および/またはその連鎖不均衡における1つもしくは複数の多型、ならびに肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性とこれらの多型との関係に関する情報を含むデータベースを提供する。データベースは、多型に関する情報、例えば肝臓中銅蓄積に対する感受性と多型の関連度をさらに含むことができる。
【0081】
本明細書で記載するデータベースを使用して、肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を予測することができる。このような決定は電子手段によって、例えばコンピュータシステム(PCなど)を使用することによって実施することができる。典型的には、イヌからの遺伝子データをコンピュータシステムに入力し、遺伝子データを、GOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の1つもしくは複数の多型および/またはその連鎖不均衡における1つもしくは複数の多型、ならびに肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性とこれらの多型との関係に関する情報を含むデータベースと比較し、この比較に基づいて肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を予測することによって決定を実施する。したがって、この情報を使用して、イヌの肝臓中銅レベルの管理をガイドすることができる。
【0082】
本発明は、前記プログラムがコンピュータで実行されるとき、本発明の方法の全ステップを実施するためのプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムも提供する。前記プログラムがコンピュータで実行されるとき本発明の方法を実施するための、コンピュータ可読媒体に保存されたプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品も提供する。コンピュータシステムで実行されると、本発明の方法を実施するようコンピュータシステムに指令するプログラムコード手段を搬送波で含むコンピュータプログラム製品を、追加的に提供する。
【0083】
図4中に示すように、本発明は、本発明による方法を実施するように構成された装置も提供する。装置はPCなどのコンピュータシステムを典型的には含む。一実施形態では、コンピュータシステムは、イヌからの遺伝子データを受信するための手段20、そのデータと多型に関する情報を含むデータベース10を比較するためのモジュール30、および前記比較に基づいて肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を予測するための手段40を含む。
【0084】
本発明の食品
本発明は、ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌ用の食品に関する。本発明者らは、市販飼料中で見られる銅のレベルはラブラドールレトリバーにおける肝臓中銅蓄積と関連すること、および飼料中の銅のレベルの低下は驚くことに、薬剤ペニシラミンより有効に肝臓中銅レベルを正常レベルにすることを発見した。本発明の食品は低い銅濃度、具体的には21mg/kg乾物未満の銅濃度を有する。この食品を使用してラブラドールレトリバーの肝臓中の銅の蓄積を予防する。したがってそれは、肝臓中銅蓄積に起因する疾患または状態を予防するのに有用である。本明細書で知られている用語「食品」は、食品、飼料、調理済み食品またはサプリメントを含む。任意のこれらの形は固体、半固体または液体であってよい。
【0085】
より詳細には、本発明の食品は21mg/kg乾物未満の濃度で銅を含む。銅濃度は、乾物1kg当たり20mg未満、17mg未満、15mg未満、12mg未満または10mg未満であることが好ましい。銅濃度は、少なくとも4.5、少なくとも4.75、少なくとも5または少なくとも8mg/kg乾物であることが好ましい。典型的には、銅濃度は、4.5〜21mg/kg、5〜17mg/kgまたは10〜15mg/kg乾物の範囲である。銅は任意の生理的に許容される形で、例えば硫酸銅として食品中に存在してよい。
【0086】
食品は少なくとも120mg/乾燥重量1kgの濃度で亜鉛をさらに含むことができる。亜鉛濃度は少なくとも150、少なくとも180または少なくとも200mg/kg乾物であることが好ましい。亜鉛濃度は、食品監督機関によって許容された最大値を超えないことが好ましい。典型的には、亜鉛濃度は、乾物1kg当たり250mg未満、240mg未満、230mg未満または220mg未満である。典型的には、亜鉛濃度は、120〜250、150〜250または200〜250mg/kg乾物の範囲であり得る。
【0087】
亜鉛を同じ食品中に与え、本発明の銅のレベルを与えることができる。あるいは、亜鉛はサプリメントの形で与えることができ、これは本発明の食品に加えることができる。サプリメントは錠剤、粉末または液剤の形であってよい。亜鉛は任意の生理的に許容される塩の形で与えることができる。亜鉛源の例には、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛および酸化亜鉛がある。
【0088】
食品中の銅または亜鉛の濃度は、本明細書では乾物ベースで、すなわち水を含まない食品に基づいて記載して、異なる水分含量を有し得る異なる食品間の直接的な比較を可能にする。ウェットまたはセミウェット食品中の銅または亜鉛の濃度を測定するために、食品のサンプルは、例えばオーブンを使用して最初に乾燥させて、水分を除去する。その後、任意の適切な技法を使用して、乾燥した食品のサンプル中の銅または亜鉛の濃度を測定することができる。当技術分野でよく知られているこのような技法の一例は、フレーム原子吸光分析である。
【0089】
本発明の食品は、例えばウェットペットフード、セミモイストペットフードまたは乾燥ペットフードの形であってよい。ウェットペットフードは一般に65重量%を超える水分含量を有する。セミモイストペットフードは20〜65重量%の水分含量を典型的には有し、保湿剤および微生物の増殖を妨げるための他の成分を含むことができる。キブル(kibble)とも呼ばれる乾燥ペットフードは20重量%未満の水分含量を一般に有し、その処理は典型的には押出し、乾燥および/または熱中でのベーキングを含む。
【0090】
食品はウェット食品と乾燥食品の混合物として与えることができる。このような組合せは事前に混合した状態で与えることができ、あるいは別々、同時または連続的にイヌに与えられる2つ以上の別個の食品として与えることができる。
【0091】
食品はイヌがその食事中に消費する任意の製品を含む。本発明は、標準的な食品およびペットフードスナックを含む。食品は調理済み製品であることが好ましい。それは(例えばウシ、ニワトリ、シチメンチョウ、ラム、魚類などの)肉または動物由来の物質を取り込むことができる。あるいは製品は肉を含まなくてよい(タンパク源を与えるためにダイズ、トウモロコシグルテンまたはダイズ製品などの肉の代用食品を含むことが好ましい)。製品は1つまたは複数の穀類(例えばコーン、コメ、オートムギ、オオムギなど)などのデンプン源を含有することもでき、またはデンプンを含まなくてよい。
【0092】
乾燥ペットフードの成分は、シリアル、穀類、肉、家禽肉、脂肪、ビタミンおよびミネラルから選択することができる。成分は典型的には混合し、押出機/調理機に通す。次いで製品を典型的には成形し乾燥させ、乾燥後、香料および脂肪を乾燥製品にコーティングまたは噴霧することができる。
【0093】
全てのペットフードは一定レベルの栄養を与えることを必要とされる。例えば、アメリカ飼料検査官協会(AAFCO)およびペットフード協会は、一般的に使用される成分に基づいて、ドッグフードに関する栄養素プロファイルを確立している。これらの確立したプロファイルは、「AAFCOドッグフード栄養素プロファイル」と呼ばれる。これらの統制下では、ドッグフードは、AAFCOにより決定された全ての最小レベルに見合い最大レベルを超えない濃度の栄養素を含有するように処方しなければならない。
【0094】
ドッグフード製品は、イヌのカロリー、タンパク質、脂肪、炭水化物、食物繊維、ビタミンまたはミネラル要件によってカスタマイズすることができる。例えば、ドッグフード製品をカスタマイズして、オメガ−6およびオメガ−3脂肪酸などの必須脂肪酸の正確な量または割合を与えることができる。オメガ−6脂肪酸の主な供給源はヒマワリ、ダイズ油、サフラワーおよびマツヨイグサ油などの植物であり、一方オメガ−3脂肪酸は主にアマニおよび海産源において見られる。銅が多量に存在し食品の生成において避けられる可能性がある食品成分には、甲殻類、肝臓、腎臓、心臓、肉、ナッツ、マッシュルーム、シリアル、ココア、マメ科植物および軟水(銅管)がある。亜鉛が多量に存在し製品中に含めることが可能である食品成分には、乳、ゼラチン、卵黄、コメおよびジャガイモがある。
【0095】
食品はパッケージすることが好ましい。パッケージは金属(通常スズまたはフレキシホイルの形)、プラスチック(通常ポーチまたはボトルの形)、紙またはカードであってよい。任意の製品中の水分含量は、使用することができるかまたは必要とされるパッケージの型に影響を与える可能性がある。
【0096】
本発明の食品は亜鉛の供給源と一緒にパッケージすることができる。亜鉛は任意の形で提供することができる。亜鉛は1つまたは複数の食品内、または本発明の最高レベルの銅を含む食品とパッケージされた別個のサプリメントの形で提供することができる。亜鉛が食品中に提供されるとき、それは本発明の特定レベルの銅を含有する同じ食品内に提供することができ、またはそれは1つまたは複数の別個の食品中に、または両方に提供することができる。したがって本発明は、21mg/kg乾物未満の濃度の銅を有する食品および亜鉛サプリメントを含むパックを提供する。食品に加えたとき、亜鉛サプリメントは少なくとも120mg/kg乾物の濃度をもたらす。食品および亜鉛サプリメントは、ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌにおける肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する際に、同時、個別または逐次使用するためのものである。
【0097】
本発明は、本明細書で論じるラベル付き食品も提供する。ラベルは例えば、食品がラブラドールレトリバー品種のイヌに適していることを示すことができる。他の指標または説明書を提供することが可能である。例えば、飼料または食品が他の成分以外に含有する銅および/または亜鉛の量について言及することができる。さらに、給餌説明書を提供することが可能である。
【0098】
ラブラドールレトリバー
本発明の食品は、ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌにおける肝臓中銅蓄積を予防するのに適している。イヌは典型的にはコンパニオンドッグまたはペットである。イヌは純血種のラブラドールレトリバーであってよい。あるいはイヌは、混血もしくは交配種犬、または非近交系犬(雑種)であってよい。イヌの一方または両方の親は純血種のラブラドールレトリバー犬であってよい。イヌの祖父母の1、2、3または全4匹が純血種のラブラドールレトリバー犬であってよい。イヌはその遺伝的背景で少なくとも50%または少なくとも75%のラブラドールレトリバー品種を有し得る。したがって、少なくとも50%または少なくとも75%のイヌのゲノムが、ラブラドールレトリバー品種に由来し得る。
【0099】
イヌの品種の遺伝的背景は、遺伝子マーカー、例えばSNPまたはマイクロサテライトの対立遺伝子頻度を評価することによって決定することができる。イヌにおける異なるSNPまたはマイクロサテライトの対立遺伝子頻度の組合せは、犬の品種または混血品種の犬を構成する品種の決定を可能にする痕跡を与える。このような遺伝子検査は市販の検査であってよい。
【0100】
あるいは、イヌはラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質に関して試験する必要がない可能性がある。例えばイヌの飼い主または獣医がラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質に関する知識を有する可能性があるからである。これは例えばイヌの血統の知識のため、またはその外見のためである可能性がある。
【0101】
食品は任意の年齢のイヌに適している。食品は0〜12才の年齢、例えば1〜5才の年齢、2〜7才の年齢または3〜9才の年齢を有するイヌに適している可能性がある。
【0102】
一般に、食品は健常なイヌに適している。食品は肝臓中の銅の検出可能な蓄積がないイヌに適している。食品は予防的使用、すなわちイヌの肝臓中の銅の蓄積を予防することを意図するものである。食品は、銅蓄積のリスクを最小にすること、およびそれによって慢性肝炎、肝硬変または肝不全などの肝臓中銅蓄積に起因する疾患または状態をイヌが発症する確率を低下させることを意図するものである。典型的には、食品は、異常な肝臓中銅濃度を有さずしたがって銅関連肝炎を罹患するリスクの可能性がないイヌにおける、銅蓄積を予防する際に使用するためのものである。イヌは銅を蓄積する病歴を有さない可能性もある。したがってイヌは、肝臓乾燥重量約400mg/kg未満の範囲の正常レベルの肝臓中の銅を有することが好ましい。しかしながら、イヌの新生児では、肝臓中の銅の正常レベルは肝臓乾燥重量約600mg/kg未満であると考えることができる。イヌにこの食品を与える目的は、肝臓中銅濃度が正常レベルより著しく高いレベルに達するのを予防することである。イヌの肝臓中の銅の濃度を決定するために使用することができる方法は、当技術分野でよく知られている。適切な方法は実施例1中に記載する。
【0103】
銅関連慢性肝炎を予防するために食品を使用することができる。食品はこのような肝疾患を予防する目的で、検出可能な肝疾患を有さないイヌにおける銅蓄積を予防する際に使用するためのものであることが好ましい。食品を使用して、慢性肝炎、肝硬変または肝不全などの肝臓中銅蓄積に起因する疾患または状態を治療することも可能である。肝疾患の痕跡または症状には、昏睡状態、下痢および黄疸などの臨床的適応がある。肝疾患の生化学的適応には、異常に増大した血清中ビリルビンおよびアルカリホスファターゼ(ALP)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびγ−グルタミルトランスペプチターゼなどの血清中肝臓酵素の活性がある。このような肝疾患の指標の生化学的測定は、当技術分野でよく知られている。
【0104】
食品の対象となるイヌは、如何なる臨床的問題も有さないことが好ましい。
【0105】
食品製造
本発明の食品は、適切な成分を一緒に混合することによって作製することができる。食品が必要とされる銅濃度を有するように製造を調節する。銅の濃度は食品の生産工程中にモニタリングすることができる。したがって本発明は、本発明の食品を作製する方法であって、食品が21mg/kg乾物未満の銅濃度を有するように食品の成分を一緒に混合することを含む方法を提供する。食品中に取り込まれる1つまたは複数の要素は、銅の供給源を与えることができる。しかしながら、銅が豊富である可能性がある要素の使用を避けることは重要である。銅が多量に存在し食品の生成において避けられる可能性がある食品成分には、甲殻類、肝臓、腎臓、心臓、肉、ナッツ、マッシュルーム、シリアル、ココア、マメ科植物および軟水(銅管)がある。場合によっては、1つまたは複数の要素は本発明の食品に亜鉛の供給源を与え得る。亜鉛が多量に存在し製品中に含めることが可能である食品成分には、乳、ゼラチン、卵黄、コメおよびジャガイモがある。要素/成分は食品の製造/加工中の任意の時間に加えることができる。
【0106】
食品中に存在する銅の濃度を測定して、濃度が本発明による限度未満であることを確認することは重要である。亜鉛の濃度を測定して、それが本発明により好ましい最小レベルを超えることを調べることも可能である。食品の製造方法中のステップの1つは、食品のサンプル中の銅濃度を測定することを含むことができる。銅濃度の少なくとも1回の測定は、食品を調製した後に食品のサンプルから行うことができる。測定を食品の調製中に行って、さらなる成分の添加によって蓄積している銅および/または亜鉛のレベルをモニターすることも可能である。例えば、1つまたは複数の成分の添加後に、サンプルに測定を行うことも可能である。銅、亜鉛および他の元素の測定は、フレーム原子吸光分析などの当技術分野で知られている任意の適切な方法を使用して、サンプルに行うことが可能である。
【0107】
典型的には、本発明の食品を作製する方法は、任意の原材料(raw ingredients)を任意選択で調理しつつ成分を一緒に混合するステップと、食品のサンプル中の銅、および場合によっては亜鉛の濃度を測定するステップと、食品をパッケージするステップとを含む。食品を作製する方法は、イヌの飼い主、イヌにエサを与える担当の者もしくは獣医に食品を与えること、および/またはイヌに食品を与えることをさらに含むことができる。
【0108】
食品が如何なる銅も含有しないことが稀である可能性がある一方で、本発明により必要とされるレベル未満に銅濃度を依然として維持しながら、銅をサプリメントとして食品に加えて、(例えばアメリカ飼料検査官協会(AAFCO)によって勧められる)イヌの飼料における銅の最小1日必要量を達成することが可能である。したがって本発明は、ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌ用の食品の製造における銅の使用であって、食品が、21mg/kg乾物未満の濃度で銅を含み、前記イヌにおける銅蓄積に起因を予防する際に使用するための食品である使用も提供する。銅は任意の適切な形で食品に加えることができる。銅サプリメントの例には、塩化第二銅および硫酸銅五水和物がある。
【0109】
本発明中で使用する食品製造装置は、以下の要素:乾燥ペットフード成分用容器、液体用容器、ミキサー、成形機および/または押出機、切断デバイス、調理手段(例えばオーブン)、クーラー、パッケージング手段、およびラベリング手段の1つまたは複数を典型的に含む。乾燥成分用容器は、底部に開口部を典型的に有する。この開口部は、回転式ロックなどの体積制御用エレメントによって覆うことができる。体積制御用エレメントは電子版製造指示書に従い開閉して、ペットフードへの乾燥成分の添加を制御することができる。ペットフードの製造において典型的に使用される乾燥成分には、コーン、コムギ、肉および/または家禽肉がある。ペットフードの製造において典型的に使用される液体成分には、脂肪、獣脂および水がある。液体用容器は、例えば電子版製造指示書により制御して、測定した量の液体をペットフードに加えることができるポンプを含有することができる。
【0110】
一実施形態では、(1つまたは複数の)乾燥成分用容器および(1つまたは複数の)液体用容器をミキサーと結合させ、指定量の乾燥成分および液体をミキサーに送達する。ミキサーは電子版製造指示書により制御することができる。例えば、混合の時間または速度を制御することができる。次いで混合した成分を、典型的には成形機または押出機に送達する。成形機/押出機は、混合した成分を必要とされる形状に成形するために使用することができる、当技術分野で知られている任意の成形機または押出機であってよい。典型的には、混合した成分を、限定した開口部に圧力下で押し通して連続ストランドを形成する。ストランドが押出されたとき、それをナイフなどの切断デバイスによって小片(キブル)に切断することができる。キブルは典型的には、例えばオーブン中で調理する。調理時間および温度は、電子版製造指示書により制御することができる。食品に望ましい水分含量が生じるように、調理時間を変化させることができる。次いで調理したキブルを、クーラー、例えば1つまたは複数のファンを含有するチャンバーに移すことができる。
【0111】
ペットフード製造装置は、パッケージング装置を含むことができる。パッケージング装置は典型的には、プラスチックまたはペーパーバッグまたはボックスなどの容器にペットフードをパッケージする。装置は、典型的には食品をパッケージした後に、ペットフードをラベルするための手段も含むことができる。ラベルは、その食品が適切であるイヌの型(すなわちラブラドールレトリバー)、および/または食品の成分を示すことができる。
【0112】
食品の使用
本発明の食品は、イヌにおける肝臓中銅蓄積を予防するために使用することができる。したがって、本発明の食品は、銅関連慢性肝炎、肝硬変または肝不全などの多量の肝臓中の銅と関連する疾患または状態を予防するために使用することができる。したがって本発明は、ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌにおいて肝臓中銅蓄積および肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する方法であって、本明細書に記載する食品をイヌに供給することを含む方法を提供する。本発明は、ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌにおいて銅関連慢性肝炎を予防する方法であって、本発明の食品をイヌに与えることを含む方法も提供する。本発明の食品は典型的には、ラブラドールレトリバーにおける銅の蓄積を予防する際の予防的使用のためのものである。本発明の食品は典型的には、ラブラドールレトリバーにおける銅関連慢性肝炎を予防するためのものでもある。
【0113】
本発明の食品は、本明細書に記載する遺伝子検査によって、肝臓中銅蓄積に感受性であると決定したイヌにおいて、肝臓中銅の蓄積を予防する際に使用するための食品であることが好ましい。
【0114】
本発明の食品の使用は、イヌに亜鉛の供給源を与えることを含むことができる。本明細書に記載するように、亜鉛は任意の適切な形でイヌに与えることができる。低レベルの本発明の銅を含有する食品は、例えば少なくとも120mg/kg乾物の濃度で亜鉛をさらに含むことができる。あるいは、1つまたは複数の別個の食品またはサプリメントの形で亜鉛を与えることができる。本発明の食品の使用は、イヌに亜鉛サプリメントを与えることを含むことができる。亜鉛サプリメントは、任意の時間で、すなわち個別、同時または逐次に、本発明の食品に与えることが可能である。亜鉛サプリメントは、それをイヌに与える前に、例えば本発明の食品と混合することが可能であり、またはそれをイヌの飲料水に入れることが可能である。
【0115】
本発明の食品は、1日当たり1回または複数回イヌに与えることができる。本発明の食品は、イヌの従来の食品の代わりに与えることが好ましい。銅蓄積を予防する方法または慢性肝炎を予防する方法は、無期限の時間の間、すなわちイヌの寿命を通じて使用することができる。
【0116】
本発明を以下の実施例によって例示する。
【実施例1】
【0117】
銅蓄積に対する感受性と関連するSNPの解明
120匹のラブラドールのDNAサンプルを、22000を超えるSNPで遺伝子型決定した。多量の銅を含むイヌ(銅の肝臓中レベルが600mg/kgを超える)由来の72のイヌのサンプルおよび正常な銅の肝臓中レベル(400mg/kg未満)由来の48のイヌのサンプルが存在した。データはそれぞれの考えられるイヌのペア間で一対比較法を使用して分析した。データは疾患の情報を与える遺伝子座の立証によって整理した。ブール(Boolean)演算子を使用して最適な3箇所のゲノム位置からのデータを使用して、高い銅レベルと関連がある最適化マーカーを見つけた。3箇所の位置を使用した単純化ブールモデルの結果を以下に示す:
【0118】
【表1】

【0119】
表I中の2進値のキーは以下の通りである:

ゲノム位置CFA8(GOLGA5遺伝子)
1=SNP BICF2P506595にAA遺伝子型が存在する場合
0=SNP BICF2P506595に任意の他の遺伝子型が存在する場合

ゲノム位置CFA32(UBL5遺伝子領域)
1=BICF2P772765にGG、BICF2S2333187にCC、およびBICF2P1324008にGGが存在する場合
0=これらのSNPのいずれかが異なる遺伝子型を示す場合

ゲノム位置CFAX(ATP7a遺伝子領域)
1=BICF2P591872にAAまたはAGが存在する場合
0=BICF2P591872にGGが存在する場合

全ての位置において、X=未使用対立遺伝子(unused alleles)。
【0120】
表Iは3箇所のゲノム位置における対立遺伝子の二元条件を表す。ゲノム位置CFA8において、1つのSNPを使用した(SNP1)。ゲノム位置CFA32において、3つのSNPを使用した(SNP2、3および4)。ゲノム位置CFAXにおいて、1つのSNPを使用した(SNP5)。2進値は、銅蓄積に対する感受性を示す対立遺伝子(「悪(bad)」対立遺伝子)を有するイヌを示す。例えば000は3つの悪対立遺伝子のいずれも有していないことを表す。111は3つの悪対立遺伝子の全てを有することを表す。Xはその遺伝子における未使用の対立遺伝子である。ライン1xxおよび0xxは、GOLGA5遺伝子中のSNPのみを使用する1つの遺伝子検査が有し得る検出力を示す。
【0121】
表IIは、示した対立遺伝子うちのより多くを有するイヌは、平均して高い銅濃度を有することを示す。それぞれのパターンを有するイヌの数も見ることができる:
【表2】

【0122】
【表3】

【0123】
【表4】


【表5】


【表6】


【表7】


【表8】


【表9】


【表10】


【表11】


【表12】


【表13】


【表14】


【表15】


【表16】


【表17】

【実施例2】
【0124】
概要
この試験の目的は、食事の管理がペニシラミンを用いた治療後にラブラドールにおける肝臓中銅濃度に影響を与えるのに有効であるかどうか、および亜鉛を用いた追加的な治療が有用であるかどうか調べることであった。
【0125】
この試験は、12匹のメスおよび12匹のオスの純血種のラブラドールからなる24匹のイヌの群に実施した。これらのイヌは銅関連慢性肝炎を有していた元患者(former patient)の家族の一員であった。食事の開始時に、実験用のイヌは臨床上健康であったが、20匹のイヌの肝臓中銅濃度は400mg/kg乾燥重量(平均値:894、範囲:70〜2810mg/kg乾燥重量)の参照範囲を超えていた。これらの濃度は、ペニシラミンを用いた治療の終了後に測定した。
【0126】
全てのイヌに同じ飼料を供給した。追加的な治療はグルコン酸亜鉛(7.5mg/kg PO BID、群1)またはプラシーボ(群2)からなっていた。薬剤師はこの試験の終了までの群の割り当てを理解していた唯一の人間であった。肝臓中銅濃度および組織病理は、平均値で8カ月(5〜13カ月の範囲)、および16カ月(12〜25カ月の範囲)の治療前後に臨床検査および血液検査によって評価した。血漿中亜鉛濃度は治療中の別の時点で測定した。
【0127】
21匹のラブラドール犬が試験を終了した。試験の開始時に、群1中のイヌの年齢の平均値は4.1才(2.7〜8.3才の範囲)であった。6匹のイヌがメスであり(5匹は卵巣摘出、1匹は非摘出)、かつ6匹のイヌがオス(2匹は去勢、4匹は非去勢)であった。群2中のイヌの年齢の平均値は4.8才(3.6〜11.2才の範囲)であった。6匹のイヌがメスであり(4匹は卵巣摘出、2匹は非摘出)、かつ6匹のイヌがオス(2匹は去勢、4匹は非去勢)であった。嘔吐、食欲不振、および下痢を、グルコン酸亜鉛補充群の3匹のイヌにおいて有害作用として観察した。
【0128】
経時的に食事の管理をした両群において肝臓中銅濃度の有意な差が存在した(8カ月:群1p<0.001、群2p=0.001、および16カ月:群1p=0.03、群2p=0.04)。しかしながら、治療前(p=0.65)、再検査−1(p=0.52)、および再検査−2(p=0.79)において群間の肝臓中銅濃度の差は存在せず、肝臓中銅蓄積に対してさらなる亜鉛補充の利点がないことが示唆された。
【0129】
この試験の結果は、食事の管理は、ラブラドールにおいて肝臓中銅濃度を低下させるのに有効である可能性があることを示す。亜鉛を用いた補助的治療は脱銅効果(de-coppering effect)を増幅しなかった。
【0130】
試験をここでより詳細に記載する。
【0131】
材料および方法
ラブラドールレトリバー
試験対象集団は、CACHで前に記載したイヌの家族の一員であった、24匹の純血種のラブラドールレトリバーからなっていた。全てのイヌはオランダラブラドールレトリバー品種クラブ(the Dutch Labrador Retriever breed club)に登録されていた。
【0132】
全てのイヌは、この試験の開始前にペニシラミンを用いたそれらの治療の終了していた。全てのイヌから病歴を得て、身体検査を実施した。クエン酸ナトリウム血液サンプルを、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)およびフィブリノゲンを含めた凝固プロファイルの分析用に採取した。ヘパリン−およびEDTA−血液は肝胆汁性酵素アルカリホスファターゼ(ALP)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、胆汁酸(BA)の分析用、および血小板数、および血漿中亜鉛濃度の測定用にサンプル採取した。Rothuizen(Rothuizen J、I.T.(1998)Tijdschr Diergeneeskd 123:246 - 252)によって与えられたMenghini技法に従って肝生検を得た。少なくとも3つの肝生検をそれぞれのイヌから得た。2つの生検を10パーセントの中性緩衝ホルマリン中に固定し、1つの生検は銅の定量的決定用に銅を含まない容器中に保存した。
【0133】
全ての生検は組織学的に評価した。以前に記載されたように(Van den Ingh T.S.G.A.M.、R.J.、Cupery R.(1988)Vet Q 10:84〜89)、銅分布の評価および半定量化のために肝組織をルベアン酸染色液で染色した。適用評点方式に従い、2を超える銅スコアは異常である(0:銅含まず、1:幾つかの銅染色陽性顆粒を含有する孤立性(solitary)肝細胞および/または細網組織球(RHS)細胞、2:少量〜適量の銅染色陽性顆粒を含有する少群の肝細胞および/またはRHS細胞、3:適量の銅染色陽性顆粒を含有する大群もしくは大領域の肝細胞および/またはRHS細胞、4:多くの銅染色陽性顆粒を有する大領域の肝細胞および/またはRHS細胞、5:多くの銅染色陽性顆粒を有する肝細胞および/またはRHS細胞の広範囲にわたる存在)。
【0134】
肝組織中の銅に関する定量アッセイを、Bode(Bode、P.(1990)Journal of Trace and Microprobe Techniques 8:139;Teskeら(1992)Vet Rec131:30〜32)により記載された設備を使用して、Teskeらにより記載されたプロトコルに従い中性子放射化分析によって実施した。定量銅濃度は凍結乾燥肝生検において測定し、肝臓乾燥重量mg/kgで報告した。
【0135】
銅含有量以外に、さらなる組織学的変化を0と5の間の段階で格付けして、統計的検定を可能にした(0=炎症の組織学的所見なし、1=反応性肝炎、2=軽度の慢性肝炎、3=中程度の慢性肝炎、4=重度の慢性肝炎、5=肝硬変)。
【0136】
この試験はUtrecht University Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。全てのイヌに関して飼い主のインフォームドコンセントを得た。
【0137】
治療なしでの肝臓中銅蓄積の進行
11匹のイヌにおいて、肝臓中銅濃度の測定を、任意の治療前の平均値(mean)で8.7カ月(6〜15カ月の範囲)後に繰り返した。この時間中、全ての動物にそれらの通常のメンテナンス食を与え、それは製造者に従い、12〜25mg/kg乾物の食用銅濃度および80〜270mg/kg乾物の亜鉛濃度を含有していた。
【0138】
飼料
全てのイヌの飼い主に同一の特別に製造した飼料を提供した。与えた飼料の近似分析:水分57.9%、粗タンパク質6.1%、粗脂肪5.9%、ミネラル1.7%。代謝エネルギー(アメリカ飼料検査官協会(Association of American Feed Control Officials)のプロトコルに従い測定):1650kcal/供給1kgとして)。飼料は4.75mg/kg乾物の濃度で銅、および102mg/kg乾物の濃度で亜鉛を含有していた。イヌにはさらなる栄養補助食品および治療剤を含まない飼料を供給した。この試験のラブラドールには1日当たり420〜840gの飼料を与えた。
【0139】
薬物動態試験
2匹の無関係な9才の、健康なラブラドールレトリバー(1匹のメスと1匹のオス)を薬物動態試験中で使用した。亜鉛の経口投与前の12時間の間、および最初の6時間の試験期間中食品は控えた。水は自由に与えた。経口用グルコン酸亜鉛は、イヌ1において10mg/kgの用量で、イヌ2において5mg/kgの用量で投与した。ヘパリン化血液サンプル(4ml)は、投与前(時間0)および薬剤の施用後15、30、45、60、90、120分、ならびに4、8、12および24時間で頸静脈から回収した。原子吸光分析を使用して亜鉛に関して分析するまで、血漿は−20℃で保存した。
【0140】
薬剤調製、ランダム化、および盲検化
グルコン酸亜鉛の選択は、この薬剤が酢酸塩または硫酸塩のような他の塩より少ない副作用を有するという、本発明者らの臨床的観察に基づいて行った。錠剤はVeterinary Pharmacy of the Faculty of Veterinary Medicine、University of Utrechtによって提供された。亜鉛錠剤はグルコン酸亜鉛の塩として25mgの成分亜鉛を含有していた(Toppharm Zink 25 gluconaat、Parmalux BV、Uitgeest、NL)。プラシーボ錠剤は160mgのラクトースを含有していた(Albochin、Pharmachemie BV、Haarlem、NL)。両群由来の錠剤は同一の外見を有していた。
【0141】
薬剤師はコイン投げによって6匹のイヌの組の群の割り当てを予めランダム化した。3匹のイヌにはプラシーボを与え、かつ3匹のイヌは亜鉛で治療した。臨床医の処方において、錠剤(プラシーボまたは亜鉛)は乱数表に従い調合した。
【0142】
用量の処方は以下のスキームに従った:
体重:
<28kg(<61.6ポンド): 8錠剤BID (200mgBID)
28〜35kg(61.6〜77ポンド): 9錠剤BID (225mgBID)
35を超える(>77ポンド): 10錠剤BID (250mgBID)
【0143】
飼い主には、供給前に30分間少量のそれらの飼料と混合した錠剤を与えるように指示した。飼い主にも臨床医にも、どの治療をそれぞれのイヌに与えたかについては知らせなかった。乱数表は試験中薬局に所有された状態であり、試験の終了時にのみ明らかにした。
【0144】
統計解析
薬物動態パラメータ(WinNonlin4.0.1.(Pharsight Corporation、800West El Camino Real、Mountain View、CA、USA)および統計解析(SPSS11.0 for windows、2001、SPSS Inc.、Chicago、IL、USA)を、市販のソフトウェアパッケージの使用によって計算した。小さな群の大きさのため、ノンパラメトリック統計検定を群間の比較用に使用した。2回の対照実験(再検査−1および再検査−2)での飼料およびグルコン酸亜鉛(群1)を用いた治療前後、および両方の対照実験での飼料およびプラシーボ(群2)を用いた治療後に、マンホイットニー検定を使用して肝臓中銅濃度間の差を検出した。さらに、この試験を使用して、試験前、再検査−1、および再検査−2において群1と群2の間の差を検出した(有意水準p≦0.05)。
【0145】
結果
治療なしでの肝臓中銅蓄積の進行
11匹のラブラドール犬において、肝臓中銅濃度の測定を任意の治療を与える前に繰り返し、一方これらのイヌにはそれらの通常のメンテナンス食を与えた。全体ではわずか1匹のイヌの肝臓中銅濃度が、両方の測定間の8.7カ月の時間間隔中に、平均値で1000mg/kg乾燥重量(範囲290〜2370)から平均値で1626mg/kg乾燥重量(範囲630〜3610)に増大した。患者の体重に関して(平均値:33.9kg、範囲25〜39.5kg)、これは8.7カ月の間で体重1kg当たり18mgの銅の増大であった。結果は図1中に示す。
【0146】
薬物動態試験
10mg/kg(イヌ1)および5mg/kg(イヌ2)の元素の亜鉛(elemental zinc)の経口施用後に2匹のイヌにおいて測定した血漿中亜鉛濃度から計算した薬物動態パラメータは以下の通りであった:

イヌ1(10mg/kg):V_F:分布容積=2937.872ml/体重1kg、K01:吸収速度定数=0.567212 l/時間、K10:消失速度定数=0.053728 l/時間、AUC:濃度曲線下面積=63.35272時間*μg/ml、Cl_F:生物学的利用能に関するクリアランス=157.8464ml/時間/kg、Tmax:最大濃度の時間=4.589813時間、Cmax:最大クリアランス=2.659924μg/ml)

イヌ2(5mg/kg):V_F:分布容積=2538.689ml/体重1kg、K01:吸収速度定数=1.160647 l/時間、K10:消失速度定数=0.037886 l/時間、AUC:濃度曲線下面積=51.98513時間*μg/ml、Cl_F:生物学的利用能に関するクリアランス=96.18135ml/時間/kg、Tmax:最大濃度の時間=3.047974時間、Cmax:最大クリアランス=1.754728μg/ml)。
【0147】
計算した亜鉛の半減期はt1/2=15.1時間であった。
【0148】
R=1/(1−exp(−kl0*24)から計算した蓄積率Rは1.52であった。12時間である投与間隔を選択した。両方のイヌからのCL_Fの平均値から計算した用量推定値は127.0139ml/時間/kgであった。
【0149】
適切な用量の推定値は目的とする5μg/mlの最大血漿中亜鉛濃度に基づいた。用量=Cl_F×目的とする血液濃度×投与間隔=7.62mg/kgq12時間
【0150】
飼料試験およびランダム化、プラシーボ対照亜鉛施用
飼料試験の開始時に、20匹のイヌの肝臓中銅濃度は400mg/kg乾燥重量(平均値:894、範囲:70〜2810mg/kg乾燥重量)の参照範囲を超えていた。銅の半定量的評価からの結果は0〜4.5の範囲であった。17匹のイヌ由来の肝生検の組織病理学的検査によって、小葉中心性肝細胞に局在した(2を超える)高い肝臓中銅含有量が明らかになった。銅の染色は5匹のイヌにおいて正常であり、多量の正常染色の結果を、定量分析から高い肝臓中銅含有量を有する2匹のイヌの生検から得た。7匹のイヌにおいて慢性肝炎が存在した。CHは様々な程度の肝細胞アポトーシスおよび壊死、単核細胞の炎症、再生および繊維化によって特徴付けた。肝臓炎症の活性は、炎症の量ならびに肝細胞アポトーシスおよび壊死の程度によって決定した。疾患の段階は、繊維化の程度およびパターンおよび肝硬変の存在によって決定した。肝炎は4患者において軽度であり、2匹のイヌにおいて中程度であり、1匹のイヌにおいて肝硬変を診断した。13匹のイヌでは、肝臓中に存在する炎症の組織学的所見がなく、かつ4匹のイヌの生検において、組織病理学によって反応変化を明らかにした。
【0151】
試験の開始時に、群1中のイヌの年齢の平均値は4.1才(2.7〜8.3才の範囲)であった。6匹のイヌが卵巣摘出したメスであり、かつ6匹のイヌがオス(2匹は去勢、4匹は非去勢)であった。平均体重は33kg(範囲26.2〜37.5)であった。群1中のイヌの肝臓中銅濃度の平均値は961mg/kg乾燥重量(範囲340〜2810)であった。組織学的染色からの銅の半定量的評価の平均値は2〜3+(範囲0〜4.5)であった。
【0152】
群2中のイヌの年齢の平均値は4.8才(3.6〜11.2才の範囲)であった。6匹のイヌがメスであり(4匹は卵巣摘出、2匹は非摘出)、かつ6匹のイヌがオス(2匹は去勢、4匹は非去勢)であった。平均体重は32.3kg(範囲25〜41.9)であった。群2中のイヌの肝臓中銅濃度の平均値は861mg/kg乾燥重量(範囲70〜1680)であった。治療前に両群間の肝臓中銅濃度の差は存在しなかった(p=0.73)。組織学的染色からの銅の半定量的評価の平均値は2〜3+(範囲0.5〜3)であった。
【0153】
群1の3匹のイヌは試験を終了しなかった。中断の理由は全3匹のイヌにおける治療とは無関係であった(1人の飼い主は彼のイヌが年をとりすぎていると感じ、1人の飼い主には個人的な理由があり、かつ1匹のイヌは肥満細胞腫を発症した)。21匹のイヌは試験、および少なくとも1回の対照実験(再検査−1)を終了した。16匹のイヌにおいて、さらに後の時点(再検査−2)で肝生検を得た。
【0154】
嘔吐、および食欲不振を、群1の3匹のイヌにおいて有害作用として観察した。これらのイヌの1匹は一過性の小腸性の下痢も有していた。有害作用は錠剤の施用直後に生じ、錠剤を飼料と混合すると消散した。
【0155】
血液検査
胆汁酸の濃度は、14μmol/l(範囲:3〜101)の平均値から再検査−1で7.8(範囲:1〜39)および再検査−2で7.1(範囲:0〜21)の平均値に低下した。アルカリホスファターゼ(ALP)、およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の濃度の平均値は、全ての実験で正常範囲内に留まった。治療前のALP濃度の平均値は、再検査−1で41U/l(範囲:8〜111)、再検査−2で平均値ALP=37U/l(範囲12〜143)、平均値ALP=37U/l(範囲:19〜152)であった。治療前の平均値ALT濃度は、再検査−1で28U/l(範囲:10〜234)、再検査−2で平均値ALT=47U/l(範囲:11〜78)、平均値ALT=51U/l(26〜68)であった。
【0156】
試験の開始時に、亜鉛の血漿中濃度の平均値は、それぞれ群1および群2中で95μg/dlおよび96μg/dlであった。再検査−1および再検査−2において一方の群の血漿中亜鉛濃度の差は存在しなかった(0.11と0.79の間のp値)。3回の実験のいずれにおいても群1と群2の間の血漿中亜鉛濃度の差は見られなかった(0.34と0.5の間のp値)。血漿中亜鉛濃度の差を見ることができた唯一の時間ポイントは、群1における亜鉛を用いた治療の最初の一カ月後の血液検査であった。血液のサンプル採取は、亜鉛施用後2〜6時間で実施した。この対照実験において、血漿中亜鉛濃度の平均値は165μg/dl(範囲117〜249、p=0.02)に増大した。
【0157】
肝臓中の銅の測定
肝臓中の銅の定量測定は両群において治療中に改善した。再検査−1、および再検査−2において、肝臓中銅濃度は、開始時点と比較して、両群のイヌにおいて有意に低下した。(再検査−1での群1:平均値286mg/kg、範囲84〜700、p<0.001;再検査−2での群1:平均値421mg/kg、範囲220〜790、p=0.03、再検査−1での群2:平均値277mg/kg、範囲80〜450、p=0.001、再検査−2での群2:平均値401mg/kg、範囲118〜850、p=0.04)。再検査−1において両群間の肝臓中銅濃度の差は存在せず(p=0.52)、かつ再検査−2において群間の差は存在しなかった(p=0.79)。さらに、再検査−1と再検査−2の間の肝臓中銅濃度のさらなる低下はなかった(群1でp=0.44、群2でp=0.25)。結果は図2中に示す。
【0158】
組織学
銅の組織学的染色は治療で改善した。銅の半定量測定に関する組織学的スコアは、開始時点と比較して、再検査−1および再検査−2において群1および群2中で低下した(再検査−1での群1:p=0.031、再検査−2での群1:p=0.01、再検査−1での群2:p=0.01、再検査−2での群2:p=0.001)。任意の時点において両群間の差は存在しなかった(p=0.16〜0.75)。
【0159】
肝臓の炎症の重度に関する組織学的スコアは、両群由来のイヌの全ての実験を通して不変状態であった(p=0.25〜0.45)。
【0160】
結論
肝臓中銅濃度のよりバランスのとれた長期管理でCACHを患者に与えるために、この試験の目的は、食事の管理がペニシラミンを用いた治療後にラブラドールにおける肝臓中銅濃度に影響を与えるのに有効であるかどうか、および亜鉛を用いた追加的な治療が有用であるかどうか調べることであった。この試験の結果は、食事の管理は、肝臓中銅濃度を低下させるのに有効である可能性があることを示す。亜鉛を用いた補助的治療は脱銅効果を増幅しなかった。
【実施例3】
【0161】
肝臓中銅濃度に対する亜鉛の影響の調査中に、肝臓中銅濃度を18匹の純血種のラブラドールレトリバーにおいて測定した。半分のイヌに亜鉛のサプリメントを与え、他の半分にはプラシーボを与えた。全てのイヌに実施例2の飼料を供給した。肝臓中銅濃度は、3箇所の時点(1)ペニシラミンを用いた治療前、(2)ペニシラミンを用いた治療後、ただし実施例2の飼料を用いた治療前、および(3)食事療法後で、実施例2の方法を使用して測定した。実施例2中と同様に、亜鉛およびプラシーボで治療したイヌにおいて銅レベルの間に有意な差は存在しなかった(データ示さず)。しかしながら、飼料の使用は銅レベルに対して有意な影響があった。亜鉛で治療したイヌとプラシーボで治療したイヌに関して組み合わせた結果を図3中に示し、これは、少量の銅の飼料は肝臓中の銅のレベルの低下に対してペニシラミン単独より有意な影響を有することを実証する。
【実施例4】
【0162】
本発明の食品の一例を以下に述べる:
【表18】

【0163】
この食品中のミネラルおよび微量元素の量の典型的な分析、ならびに使用した方法を、以下の通り示す:
【表19】

【実施例5】
【0164】
本発明の食品のさらなる例は以下の通りである:
【表20】

【0165】
この食品中のミネラルおよび微量元素の量の典型的な分析、ならびに使用した方法を、以下の通り示す:
【表21】

【符号の説明】
【0166】
10 データベース
20 入力
30 比較モジュール
40 決定手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定する方法であって、(a)銅蓄積に対する感受性を示すイヌのGOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の多型および/または(b)前記多型(a)との連鎖不均衡における多型の有無を検出すること、およびそれによって肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定することを含む、前記方法。
【請求項2】
少なくとも1つの多型(a)および少なくとも1つの多型(b)の有無を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多型が一塩基多型(SNP)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
BICF2P506595(配列番号:1)、BICF2P772765(配列番号:2)、BICF2S2333187(配列番号:3)、BICF2P1324008(配列番号:4)、BICF2P591872(配列番号:5)およびその連鎖不均衡における1つまたは複数のSNPから選択される1つまたは複数のSNPの有無を検出することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
SNP BICF2P506595(配列番号:1)、BICF2P772765(配列番号:2)、BICF2S2333187(配列番号:3)、BICF2P1324008(配列番号:4)、およびBICF2P591872(配列番号:5)の有無を検出することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
イヌがラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
イヌ由来のサンプル中のポリヌクレオチドまたはタンパク質と特異的結合因子を接触させ、因子がポリヌクレオチドまたはタンパク質と結合するかどうか決定することによって有無の検出を実施する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
因子がポリヌクレオチドであり、かつ/またはゲル電気泳動中のポリヌクレオチドの移動度を測定することによって有無を検出する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーをハイブリダイズさせ、プライマー伸長産物の生成に適した条件下でサンプルとポリメラーゼを接触させることによって有無を決定し、多型の存在の検出がプライマー伸長産物の存在の検出を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
GOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の1つもしくは複数の多型および/またはその連鎖不均衡における1つもしくは複数の多型、ならびに肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性とこれらの多型との関係に関する情報を含むデータベース。
【請求項11】
肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定する方法であって、
(a)イヌのゲノムにおける請求項1から5のいずれか一項に記載の多型の有無に関するデータをコンピュータシステムに入力すること、
(b)データを、GOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の1つもしくは複数の多型および/またはその連鎖不均衡における1つもしくは複数の多型、ならびに肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性とこれらの多型との関係に関する情報を含むコンピュータデータベースと比較すること、および
(c)前記比較に基づいて肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定することと
を含む、前記方法。
【請求項12】
コンピュータシステムで実行されると、請求項11の全ステップを実施するようコンピュータシステムに指令するプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムおよび請求項10に記載のデータベースを含むコンピュータ記憶媒体。
【請求項14】
請求項11に記載の方法を実施するように構成されたコンピュータシステムであって、
(a)イヌのゲノムにおける請求項1から5のいずれか一項に記載の多型の有無に関するデータを受信するための手段、
(b)データを、GOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の1つもしくは複数の多型および/またはその連鎖不均衡における1つもしくは複数の多型、ならびに肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性とこれらの多型との関係に関する情報を含むデータベースと比較するためのモジュール、および
(c)前記比較に基づいて肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定するための手段と
を含む、前記コンピュータシステム。
【請求項15】
イヌのゲノムが肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を示す多型を含有するかどうか決定する方法であって、(a)銅蓄積に対する感受性を示すイヌのGOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の多型および/または(b)前記多型(a)との連鎖不均衡における多型の有無を検出することを含む、前記方法。
【請求項16】
肝臓中銅蓄積に対するイヌの感受性を決定するための、(a)肝臓中銅蓄積に対する感受性を示すイヌのGOLGA5、ATP7aもしくはUBL5遺伝子中の多型および/または(b)前記多型(a)との連鎖不均衡における多型の使用。
【請求項17】
ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌにおいて肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する際に使用するための、21mg/kg乾物未満の濃度で銅を含む食品。
【請求項18】
請求項1から9、11または15のいずれか一項に記載の方法によって肝臓中銅蓄積に感受性であると決定したイヌにおいて、肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する際に使用するための、請求項17に記載の食品。
【請求項19】
17mg/kg乾物未満または12mg/kg乾物未満の濃度で銅を含む、請求項17または18に記載の食品。
【請求項20】
少なくとも120mg/kg乾物の濃度で亜鉛をさらに含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の食品。
【請求項21】
純血種のラブラドールレトリバーである少なくとも一方の親を有するイヌにおいて、肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する際に使用するための、請求項17から20のいずれか一項に記載の食品。
【請求項22】
肝臓中銅蓄積と関連する臨床症状がないイヌにおいて、肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する際に使用するための、請求項17から21のいずれか一項に記載の食品。
【請求項23】
肝臓乾燥重量400mg/kg未満の肝臓中銅濃度を有するイヌにおいて、肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する際に使用するための、請求項17から22のいずれか一項に記載の食品。
【請求項24】
検出可能な肝疾患を有していないイヌにおいて使用するための、請求項17から23のいずれか一項に記載の食品。
【請求項25】
銅関連慢性肝炎を予防する際に使用するための、請求項17から24のいずれか一項に記載の食品。
【請求項26】
ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌにおいて肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する方法であって、請求項17から25のいずれか一項に記載の食品をイヌに供給することを含む方法。
【請求項27】
請求項1から9、11および15のいずれか一項に記載の方法によってイヌが肝臓中銅蓄積に感受性であると決定されている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも120mg/kgの濃度で亜鉛を含む食品またはサプリメントをイヌに供給することをさらに含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
肝臓乾燥重量400mg/kg未満の肝臓中銅濃度を有し、かつ/または検出可能な肝疾患を有していないイヌにおいて、肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防するための、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
請求項17から25のいずれか一項に記載の食品を作製する方法であって、食品が21mg/kg乾物未満の銅濃度を有するように食品の成分を一緒に混合することを含む方法。
【請求項31】
(a)任意の原材料を任意選択で調理しつつ成分を一緒に混合するステップ、
(b)食品のサンプル中の銅、および場合によっては亜鉛の濃度を測定するステップ、および
(c)食品をパッケージするステップ
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
イヌの飼い主、イヌにエサを与える担当の者もしくは獣医に食品を与えること、および/またはイヌに食品を与えることをさらに含む、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌ用の食品の製造における銅の使用であって、食品が、21mg/kg乾物未満の濃度で銅を含み、前記イヌにおける肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する際に使用するための食品である使用。
【請求項34】
ラブラドールレトリバー品種の遺伝的形質を有するイヌにおける肝臓中銅蓄積に起因する疾患を予防する際に、同時、個別または逐次使用するための、21mg/kg乾物未満の濃度の銅を有する食品および少なくとも120mg/kg乾物の濃度をもたらす亜鉛サプリメントを含むパック。
【請求項35】
請求項17から25のいずれか一項に記載のラベル付き食品または請求項34に記載のラベル付きパック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−501658(P2011−501658A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527528(P2010−527528)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003351
【国際公開番号】WO2009/044152
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】