説明

遺伝子療法のための非ウイルス性媒体としてのデンドリマー

本発明は、遺伝子療法における非ウイルス性媒体として使用するための一般式(I)及び(II)で表される新規化合物、並びに薬剤の調製のためのそれらの使用に関連する。本発明は、一般式(I)及び(II)で表される化合物の合成方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、遺伝子療法における非ウイルス性媒体としての使用のための、一般式(I)及び(II)で表される新規化合物、並びに薬剤の調製のためのそれらの使用に関連する。本発明は、上記一般式(I)及び(II)で表される化合物の合成方法も開示する。
【0002】
[先行技術]
FDAが、ウイルス(アデノウイルス、アデノ関連ウイルス)を用いた臨床試験を、これらのウイルスが前記試験に参加した患者の一部で死亡を引き起こした免疫反応を生じるという事実により無期限に延期したため、遺伝子療法における非ウイルス性ベクターの使用は特に意義がある。ウイルスベクターは、これらを取り扱う際の安全性の欠如、毒性、ウイルスベクターの有効性を低下させる免疫反応、又は細胞特異性の欠如等のいくつかの欠点を有する。これと共に、かかる系は循環系から速やかに排除され、トランスフェクションプロセスが第1段階の器官(肺、肝臓、及び脾臓)に制限される。
【0003】
また、組み換えプロセスは、危険は切迫していないものの、レプリカントウイルスを生じさせる可能性があることに留意することも必要である。それにもかかわらず、遺伝子療法でベクターとして用いられるウイルスにより引き起こされる問題は深刻であり、例えば米国で行われた遺伝子療法の治験は、多臓器不全により数人の患者が死亡したことから、FDAにより最近中止された。この種の深刻な問題から、遺伝子物質のベクターとしてウイルスを使用することに対する代替法について、調査、開発が実施されてきた。
【0004】
非ウイルス性ベクターはウイルス類似体に対して一連の長所を有する:a)調製(数グラム規模であっても)及び修飾が容易である、b)トランスフェクションする遺伝物質サイズについてより柔軟性がある、c)非ウイルス性ベクターは一般的にin vivoで安全である、並びにd)特異的免疫反応の原因とはならず、したがって繰り返し投与が可能である。
【0005】
デンドリマーは、ナノメートルサイズであり、球形構造を有し、多分散性が低い、及び分子容積が小さく表面上の機能密度が高いので、非ウイルス性ベクターのうちデンドリマーは、上記代替法のうちの1つを代表する。
【0006】
[発明の説明]
本発明は、遺伝子療法において非ウイルス性媒体として使用するための、一般式(I)及び(II)で表される新規化合物、並びに薬剤又はトランスフェクションキットの調製のためのそれらの使用に関連する。本発明は、前記一般式(I)及び(II)で表される化合物の合成方法も開示する。
【0007】
したがって、本発明の第1の態様は、一般式(I)で表される化合物、又はその塩、プロドラッグ、若しくは溶媒和物に関連する。
【化1】


[一般式(I)中、
Wは、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンエチリデン、若しくは両者の混生物、その構造内で二重結合、三重結合、若しくは両方の組成が組み合わされた任意の共役有機化合物、これらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、二重結合、三重結合、若しくは両方の組成と、フェニル、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、例えばシトシン、ウラシル、アデニン、チミン、及びグアニン等の芳香族複素環式塩基の芳香環とが、その構造内で交互に並ぶ任意の共役有機化合物、若しくはこれらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、フェニル、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、例えばシトシン、ウラシル、アデニン、チミン、及びグアニン等の芳香族複素環式塩基の芳香環を含有する任意の非共役有機化合物、若しくはこれらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、又はこれらの任意の組み合わせに由来する任意のポリマー又はデンドリマーによって構成される群から選択され、
、X、及びXは、同一又は異なり、及び任意のヘテロ原子から選択され、
Yは、飽和若しくは不飽和アルキル基(C〜C12)若しくはシクロアルキル(C〜C)、シクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、
及びRは、同一又は異なり、一級、二級、又は三級アミノ基と結合し、水素、飽和若しくは不飽和アルキル(C〜C12)、シクロアルキル(C〜C)、シクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、
nは分岐数を表し、1〜10から選択される整数である。]
【0008】
好ましい実施形態は、一般式(II)で表される化合物、又はその塩、プロドラッグ、若しくは溶媒和物に関連する。
【化2】


[一般式(II)中、
Wは、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンエチリデン、若しくは両者の混生物、その構造内で二重結合、三重結合、若しくは両方の組成が組み合わされた任意の共役有機化合物、これらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、二重結合、三重結合、若しくは両方の組成と、フェニル、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、例えばシトシン、ウラシル、アデニン、チミン、及びグアニン等の芳香族複素環式塩基の芳香環とが、その構造内で交互に並ぶ任意の共役有機化合物、若しくはこれらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、フェニル、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、例えばシトシン、ウラシル、アデニン、チミン、及びグアニン等の芳香族複素環式塩基の芳香環を含有する任意の非共役有機化合物、若しくはこれらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、又はこれらの任意の組み合わせに由来する任意のポリマー又はデンドリマーによって構成される群から選択され、
、X、及びXは、同一又は異なり、任意のヘテロ原子から選択され、
Yは、飽和若しくは不飽和アルキル基(C〜C12)若しくはシクロアルキル(C〜C)、シクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、
及びRは、同一又は異なり、一級、二級、又は三級アミノ基と結合し、水素、飽和若しくは不飽和アルキル(C〜C12)、シクロアルキル(C〜C)、シクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、
nは分岐数を表し、1〜10から選択される整数である。]
【0009】
別の好ましい実施形態では、一般式(I)又は(II)で表される化合物は、塩の形態であってもよく、トリフルオロ酢酸塩、塩化物イオン、DNA、RNA、siRNA、miRNA、アンタゴmir、任意の薬物、抗体、画像化法(核磁気共鳴法、単光子放射型コンピュータ断層撮影法、又は陽電子放出形コンピュータ断層撮影法)により疾患を診断するためのプローブ(放射性又は非放射性)又はそれらの任意の組み合わせに静電的に結合していてもよい。
【0010】
別の好ましい実施形態によれば、X、X、及びXは、同一又は異なり、窒素又は酸素から選択される。
【0011】
別の好ましい実施形態では、一般式(I)で表される化合物、及び一般式(II)で表される化合物の両方について、Xは、
【化3】


から選択されるが、但しこれに全く限定されない。
【0012】
別の好ましい実施形態によれば、基R及びRが同一であっても又は異なってもよく、水素原子、任意の置換又は非置換アミン、例えばリジン又はアルギニン等の塩基性アミノ酸、コレステリルクロロホルメートに由来するコレステロール誘導体、葉酸、乳酸、デキサメタゾン、例えば全く限定されないが、トシル誘導体に由来するラクトース又はマンノース等の糖、例えばクロロキン等のリソソーム作用剤、例えばウリジン、ピペリジン又はピペラジン等の含窒素複素環、ポリエチレングリコール誘導体親水性鎖、任意のジアクリレート、任意の塩基性アミノ酸、及び下記構造
【化4】


からそれぞれ独立に選択される。
【0013】
好ましい実施形態では、上記一般式(I)又は(II)で表される化合物は、
【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


を含む群から非限定的に選択される。
【0014】
用語「アルキル」は、本発明では、2〜12個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状、飽和又は不飽和脂肪族の鎖と関連する。例えば、非限定的に、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル等と関連する。さらに、用語アルキルは、例えばヒドロキシル、カルボキシル、カルボニル、アミン、アミド等の官能基により置換され得る、又は窒素、酸素、及び硫黄から選択される任意のヘテロ原子を当該鎖構造内に含み得る、2〜12個の炭素原子からなる直鎖状又は分岐状、飽和又は不飽和脂肪族の鎖と関連する。
【0015】
用語「シクロアルキル」は、飽和した又は部分的に飽和した、炭素原子及び水素原子のみから構成される、3〜8個のメンバーからなる安定な単環式又は二環式基と関連する。例えば、非限定的に、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、又はシクロヘプタン等である。さらに、用語シクロアルキルは、飽和した又は部分的に飽和した、炭素原子及び水素原子のみから構成され、例えばヒドロキシル、カルボキシル、カルボニル、アミン、アミド等の官能基により置換され得る、又は窒素、酸素、及び硫黄から選択される任意のヘテロ原子を当該構造内に含み得る、3〜8個のメンバーからなる安定な単環式又は二環式基とも関連する。
【0016】
用語「薬学的に許容される塩、溶媒和物、又はプロドラッグ」は、任意の薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、又は受容体に投与されたときに、本明細書に記載するような化合物を(直接的又は間接的に)供給する能力を有する任意の他の化合物と関連する。しかし、薬学的に許容されない塩も、薬学的に許容される塩の調製において有用であり得るので、本発明の範囲内であると認識されなければならない。塩、プロドラッグ、及び誘導体の調製法は、本技術分野で公知の方法により実施され得る。
【0017】
例えば、本明細書に記載する化合物の薬学的に許容される塩は、従来方式の化学的方法により塩基性又は酸性残基を含む原化合物から合成される。一般的に、上記塩は、例えば水若しくは有機溶媒又は両者の混合物中で本化合物の遊離した塩基又は酸の形態を、理論量の適する塩基又は酸と反応させることにより調製される。一般的に、非水性媒体、例えばエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリル等が好ましい。酸添加塩の例として、無機酸添加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、並びに例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸、酒石酸塩、リンゴ酸、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、及びp−トルエンスルホネート等の有機酸添加塩が挙げられる。塩基添加塩の例として、無機塩、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウム、アルミニウム、及びリチウム塩等、並びに有機塩基の塩、例えばエチレンジアミン、エタノールアミン、N,N−ジアルキレンエタノールアミン、グルカミン、及び塩基性アミノ酸の塩が挙げられる。
【0018】
特に好ましい誘導体又はプロドラッグは、上記化合物が患者投与されたときに(例えば、化合物を経口ルートで投与すれば、血液により、さらに容易に吸収される)、本発明の化合物の生物学的利用能を高めるもの、又は生物学的コンパートメント(例えば、脳又はリンパ系)における原化合物の放出を、当初の種と比較して亢進するものである。
【0019】
式(I)で表される化合物のプロドラッグである任意の化合物は、本発明の範囲に含まれる。用語「プロドラッグ」はその最も広い意味において用いられ、in vivoで本発明の化合物に変換される誘導体も対象に含む。上記誘導体は当業者にとって明白であり、分子中に存在する官能基に応じて、及び非限定的に、下記の本化合物の誘導体を含む:エステル、アミノ酸エステル、リン酸エステル、金属塩スルホン酸エステル、カルバメート及びアミノ酸エステル、金属塩のスルホン酸エステル、カルバメート及びアミド。
【0020】
式(I)、(II)、及び(III)で表される化合物は、遊離化合物又は溶媒和物として結晶性の形態で存在し得るが、両方の形態が本発明の範囲に含まれるように意図されている。溶媒和させる方法は、本技術分野において一般的に公知である。適する溶媒和物は、薬学的に許容される溶媒和物である。特定の実施形態では、溶媒和物は水和物である。
【0021】
本発明の第2の基本的な態様は、下記工程を含む、一般式(I)で表される化合物を調製する方法に関連する。
【化9】


【化10】


【化11】


[ここで、
Wは、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンエチリデン、若しくは両者の混生物、その構造内で二重結合、三重結合、若しくは両方の組成が組み合わされた任意の共役有機化合物、これらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、二重結合、三重結合、若しくは両方の組成と、フェニル、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、例えばシトシン、ウラシル、アデニン、チミン、及びグアニン等の芳香族複素環式塩基の芳香環とが、その構造内で交互に並ぶ任意の共役有機化合物、若しくはこれらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、フェニル、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、例えばシトシン、ウラシル、アデニン、チミン、及びグアニン等の芳香族複素環式塩基の芳香環を含有する任意の非共役有機化合物、若しくはこれらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、又はこれらの任意の組み合わせに由来する任意のポリマー又はデンドリマーによって構成される群から選択され、
Aは、X、X、及びXから選択され、
、X、及びXは、同一又は異なり、任意のヘテロ原子から選択され、
Yは、飽和若しくは不飽和アルキル基(C〜C12)若しくはシクロアルキル(C〜C)、シクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、
及びRは、同一又は異なり、一級、二級、又は三級アミノ基と結合し、水素、飽和若しくは不飽和アルキル(C〜C12)、シクロアルキル(C〜C)、シクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、
nは分岐数を表し、1〜10から選択される整数である。]
【0022】
本発明の別の基本的な態様は、上記最後の化合物から開始する、本発明の一般式(I)で表される化合物を調製するのと同一の工程を含む、一般式(II)で表される化合物を調製する方法と関連する。
【0023】
別の態様では、本発明は、薬剤を製造するための、式(I)、(II)、又は(III)で表される化合物の使用に関連する。
【0024】
別の態様では、本発明は、神経系と関連する疾患、例えば神経変性疾患、脳血管障害等、及び複数のプロセスを含む疾患、骨粗鬆症、腹膜透析、ウイルス感染により引き起こされる疾患を治療及び/又は予防するための、上記薬剤の使用に関連する。
【0025】
したがって、本発明の化合物は、神経変性疾患等の神経系疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病を含む痴呆、ハンチントン舞踏病、多発性硬化症及び筋萎縮性側索硬化症等の脱髄性疾患)、脳血管障害(血栓症及び脳出血に由来する病理を含む)を含むリストから選択される疾患の予防又は治療のための薬剤の調製で利用可能である。本セクションでは、腫瘍の治療も含まれる(特に前立腺、肺、及び乳房、但しこのリストは限定的ではなく、他の種類の腫瘍病理を除外するものでもない)。このリストには、特にヒト免疫不全症候群ウイルス(HIV)を引き起こすウイルス感染症(但し、排他的ではなく)も含まれる。
【0026】
別の態様では、本発明は、神経細胞、グリア、及び他の初代細胞、例えば肝細胞等の初代培養物(但し、後者では他の初代培養物を除外しない)における、並びに腫瘍細胞株、線維芽細胞株、骨芽細胞株(但し、他の細胞株を除外しない)における、siRNAトランスフェクションキットの調製のための、式(I)又は(II)で表される化合物の使用に関連する。
【0027】
別の態様では、本発明は、遺伝子療法における、非ウイルス性ベクターとしての式(I)又は(II)で表される化合物の使用に関連する。
【0028】
別の態様では、本発明は、画像化法(核磁気共鳴法、単光子放射型コンピュータ断層撮影法、又は陽電子放出形コンピュータ断層撮影法)により疾患を診断するためのプローブ(放射性又は非放射性)の調製のための、式(I)又は(II)で表される化合物の使用に関連する。
【0029】
別の態様では、本発明は、薬物、遺伝物質、又は細胞株画像プローブの選択的送達のための、式(I)、(II)で表される化合物の使用に関連する。この目的のためには、かかる化合物は塩の形態であり、ターゲッティング基と静電的に結合しなければならない。上記基は、全く限定されないが、細胞タンパク質を標的とする抗体、トランスフェリン等の血液脳関門をより有効に横断可能にする分子又は前記分子の機能を模倣するペプチドの類似体、様々な受容体の作動薬、又は分子を異なる細胞内コンパートメント(核、ミトコンドリア、小胞体、リソゾーム、エンドソーム等)に差し向けるシグナル伝達ペプチド等を含む。
【0030】
これらを治療に適用する場合、式(I)及び(II)で表される化合物、これらの異性体、塩、プロドラッグ、又は溶媒和物は、薬学的に許容される、又は実質的に純粋な形態中に好ましくは見出され、すなわち同形態は、賦形剤及び担体等の標準的な医薬添加物を除いて薬学的に許容される純度レベルを有し、標準的な投与レベルで毒性と考えられる物質を含まない。
【0031】
本発明に記載されている化合物、その薬学的に許容される塩、プロドラッグ、及び/又は溶媒和物、並びにこれらを含有する医薬化合物を使用する場合、かかる使用は、併用療法を提供するために他の追加の薬物と共に利用可能である。
【0032】
上記追加の薬物は、同一の医薬組成物の一部分を形成してもよく、又は代替として同薬物は、これらを同時又は非同時に投与するため、式(I)若しくは(II)で表される化合物、又はその薬学的に許容されるプロドラッグ、溶媒和物、誘導体若しくは塩を含む医薬組成物とは、分離した組成物の形態で提供され得る。
【0033】
本発明の別の好ましい実施形態は、神経変性疾患等の神経系疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病を含む痴呆、ハンチントン舞踏病、多発性硬化症及び筋萎縮性側索硬化症等の脱髄性疾患)、脳血管障害(血栓症及び脳出血に由来する病理を含む)を含むリストから選択される疾患の予防又は治療のための薬剤として有用な医薬組成物に関連する。本セクションでは、腫瘍の治療も含まれる(特に前立腺、肺、及び乳房、但しこのリストは限定的ではなく、他の種類の腫瘍病理を除外するものでもない)。このリストには、特にヒト免疫不全症候群ウイルス(HIV)を引き起こすウイルス感染症(但し、排他的ではなく)が含まれる、又は一般的に、患者に投与するために、薬学的に許容される担体アジュバント又は媒体と共に、式(I)、又は(II)で表される化合物、又はこれらの混合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、これらの溶媒和物若しくは立体異性体を治療上有効な量で含む、本明細書では以後本発明の医薬組成物と呼ぶ本発明に記載する化合物により明らかにされる生物活性が有益であり得るウイルス感染症が含まれる。
【0034】
上記組成物中で利用することができる薬学的に許容されるアジュバント及び媒体として、当業者に公知の、及び治療組成物を調製するのに一般的に用いられるアジュバント及び媒体が挙げられる。
【0035】
本記載内容の趣旨からすれば、表現「治療上有効な量」は、薬剤又は化合物の薬理学的特性により決定され、所望の効果を生み出すように算出された、治療作用を発現する能力を有する薬剤又は化合物の量と関連し、一般的に、この量は、他の原因もあるなかでとりわけ、年齢、患者の状態、変質又は疾患の重症度、及び投与経路及び投与頻度を含む化合物の代表的な特徴により決定される。
【0036】
別の特定の実施形態では、上記治療組成物は、薬学的に許容される賦形剤中において固体又は水溶液の状態で調製される。本発明により提供される治療組成物は、任意のしかるべき投与経路により投与可能である。
【0037】
本記載内容及び特許請求の範囲全体を通じて、単語「含む」及びその変形形態は、他の技術的特徴、添加物、成分、又はステップを除外するようには意図されていない。当業者であれば、本発明の他の目的、長所、及び特徴は本記載内容から部分的に及び本発明の実践から部分的に推測される。下記の図及び実施例は、説明を目的として記載されており、本発明を制限するようには意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】一般式(I)で表される化合物への結合によるsiRNAの電気泳動移動度シフト分析に関連する図である。(A)中の番号は、異なるN/P比に対応する(一般式(I)で表される化合物中の含窒素アミン/siRNA中のリン酸塩):(1)1:0(siRNA単独)、(2)6:1、(3)12:1、(4)24:1、(5)48:1、(6)96:1、(7)192:1、及び(8)384:1。ゲルシフト実験結果のデンシトメトリー分析を(B)に示す。
【図2】一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体のヘパラン硫酸との競合によるsiRNA解離試験に関連する図である。N/P比が12:1の一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体を、ヘパラン硫酸濃度を増加させながら37℃で1時間インキュベーションし、アガロースゲル中で電気泳動することにより複合体の解離を測定した。A、ヘパラン硫酸濃度の増加により遊離したsiRNAを示すアガロースゲル。異なるレーンは、ヘパラン硫酸(μg)/一般式(I)で表される化合物(μg)が下記の濃度のときの一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体のインキュベーションに対応する:(1)0.78、(2)1.52、(3)3.04、(4)6.08、(5)12.48、(6)24.32、及び(7)0:0(siRNA単独)。ヘパラン硫酸を用いた競合実験結果のデンシトメトリー分析を(B)に示す。
【図3】RNAaseが存在するときの、一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体の安定性の測定に関連する図である。A、様々な処理がsiRNAの安定性に与える効果。B、Aのデンシトグラム。白の棒グラフは、ローディングウェル中のsiRNA量を表し、黒の棒グラフはヘパラン硫酸により遊離した実験終了時の量を表す。
【図4】PC12細胞(A)、小脳顆粒ニューロン(B)、及び皮質ニューロン(C)における一般式(I)で表される化合物の毒性試験を表す図である。細胞は、異なる濃度の一般式(I)で表される化合物(5〜80μM)で、24時間(白の棒グラフ)、48時間(グレーの棒グラフ)、又は72時間(黒の棒グラフ)処理された。細胞の生存能力は、培養液中に放出されたLDHの割合(%)を定量して評価された。データを、平均値(対照%(%対照)±SEM、n=12として表す。対照と比較してp<0.05。
【図5】PC12細胞における一般式(I)で表される化合物のトランスフェクション及び毒性に関する試験を表す。フローサイトメトリー法に基づく試験による、一般式(I)−蛍光siRNAからなる化合物複合体のPC12細胞におけるトランスフェクション量の定量(A、C)、及び複合体により生成された本実験の同一細胞種における毒性(ヨウ化プロピジウムで標識された細胞の割合(%))の定量(B、D)。複合体は、異なる濃度の一般式(I)で表される化合物及び100nMの蛍光siRNAを用いて形成された。処理は24時間(A、B)又は48時間(C、D)継続した。データを、最低3回の異なる実験の平均値(%対照)±SEMとして表す。対照と比較してp<0.05。
【図6】LnCaP細胞における一般式(I)で表される化合物のトランスフェクション及び毒性に関する試験を表す図である。フローサイトメトリー法に基づく試験による、一般式(I)−蛍光siRNAからなる化合物複合体のLnCaP細胞におけるトランスフェクション量の定量(A、C)、及び複合体により生成された本実験の同一細胞種における毒性(ヨウ化プロピジウムで標識された細胞の割合(%))の定量(B、D)。複合体は、異なる濃度の一般式(I)で表される化合物及び100nMの蛍光siRNAを用いて形成された。48時間(A、B)又は72時間(C、D)処理した後に効果を試験した。データを、最低3回の異なる実験の平均値(%対照)±SEMとして表す。対照と比較してp<0.05。
【図7】小脳顆粒細胞における一般式(I)で表される化合物のトランスフェクション及び毒性に関する試験を表す図である。フローサイトメトリー法に基づく試験による、一般式(I)−蛍光siRNAからなる化合物複合体の小脳顆粒細胞における処理後48時間のトランスフェクション量の定量(A)、及び複合体により生成された本実験の同一細胞種における毒性(ヨウ化プロピジウムで標識された細胞の割合(%))の定量(B)。複合体は、異なる濃度の一般式(I)で表される化合物及び100nMの蛍光siRNAを用いて形成された。4μMの一般式(I)で表される化合物及び100nMの蛍光siRNAにより形成された複合体を用いてトランスフェクションされた小脳顆粒ニューロンの顕微鏡試験(C)。データを、最低3回の異なる実験の平均値(%対照)±SEMとして表す。対照と比較してp<0.05。
【図8】ラット皮質ニューロンにおける一般式(I)で表される化合物のトランスフェクション及び毒性を表す図である。フローサイトメトリー法に基づく試験による、一般式(I)−蛍光siRNAからなる化合物複合体のラット皮質ニューロンにおけるトランスフェクション量の定量(A、C)、及び複合体により生成された本実験の同一細胞種における毒性(ヨウ化プロピジウムで標識された細胞の割合(%))の定量(B、D)。複合体は、異なる濃度の一般式(I)で表される化合物及び100nMの蛍光siRNAを用いて形成された。48時間(A、B)又は72時間(C、D)処理した後に効果を試験した。データを、最低3回の異なる実験の平均値(%対照)±SEMとして表す。対照と比較してp<0.05。
【図9】PC12細胞内GAPDH遺伝子発現において、一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体がGAPDH又はSCRAMBLE(対照)に与える効果をリアルタイムPCRにより調べた試験を表す図である。GAPDH及びβ−アクチン(内部対照)のmRNAの定量は、48時間(A)又は72時間(B)トランスフェクションされた細胞において実施された。データを、最低3回の異なる実験の平均値(%対照)±SEMとして表す。対照と比較してp<0.05。
【図10】ラット小脳顆粒ニューロンにおけるCOFILIN1又はSCRAMBLE(対照)を対象とする一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体の48時間トランスフェクション試験を表す図である。A、リアルタイムPCR(A)により、COFILIN1及びβ−アクチン(内部対照)のmRNAを定量した。B、COFILIN1及びGAPDH(内部対照)のタンパク質発現に関するウェスタンブロット解析。データを、最低3回の異なる実験の平均値(%対照)±SEMとして表す。対照と比較してp<0.05。
【図11】ラット皮質ニューロンにおけるCOFILIN1又はSCRAMBLE(対照)を対象とする一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体の48時間トランスフェクション試験を表す図である。A、COFILIN1及びβ−アクチン(内部対照)のmRNAを、リアルタイムPCR(A)により定量した)。B、タンパク質発現COFILIN1及びGAPDH(内部対照)に関するウェスタンブロット解析。データを、最低3回の異なる実験の平均値(%対照)±SEMとして表す。対照と比較してp<0.05。
【図12】ウシクローム親和細胞における電圧依存性カルシウムチャンネルCaV2.2、CaV1.2、及びCaV2.1、又はSCRAMBLE(対照)を対象とする一般式(I)−siRNA(電圧依存性カルシウムチャンネルCaV2.2に対して特異的)からなる化合物複合体の48時間トランスフェクション試験を表す図である。上記チャンネルについてmRNAを、リアルタイムPCRにより定量した。データを、最低3回の異なる実験の平均値(%対照)±SEMとして表す。***対照と比較してp<0.001。
【図13】ヒト前立腺癌細胞AにおけるPTHrP又はSCRAMBLE(対照)を対象とする一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体の48時間トランスフェクション試験を表す図である。AはLnCaP、及びBはPC3。PTHrPのmRNAを、リアルタイムPCRを用いて定量した。データを、最低3回の異なる実験の平均値(%対照)±SEMとして表す。対照と比較してp<0.05。
【図14】ヒト骨芽細胞におけるp42MAPK又はSCRAMBLE(対照)を対象とする一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体のA、48時間又はB、72時間トランスフェクション試験を表す図である。p42MAPKのmRNAを、リアルタイムPCRにより定量した。データを、最低3回の異なる実験の平均値(%対照)±SEMとして表す。対照と比較してp<0.05。
【図15】ラット皮質ニューロンにおけるBECLIN1又はSCRAMBLE(対照)を対象とする一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体の48時間トランスフェクション試験を表す図である。BECLIN1のmRNAを、リアルタイムPCRにより定量した。データを、最低3回の異なる実験の平均値(%対照)±SEMとして表す。***対照と比較してp<0.01。
【図16】ヒト前立腺癌細胞、LnCaPにおけるBECLIN1又はSCRAMBLE(対照)を対象とする一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体の48時間トランスフェクション試験を表す図である。BECLIN1のmRNAを、リアルタイムPCRにより定量した。データを、最低3回の異なる実験の平均値(%対照)±SEMとして表す。***対照と比較してp<0.01。
【図17】ラット腹膜培養細胞におけるMAPK1又はSCRAMBLE(対照)を対象とする一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体の96時間トランスフェクション試験を表す図である。リアルタイムPCRを用いて、MAPK1のmRNAを定量した。データを、最低3回の異なる実験の平均値(%対照)±SEMとして表す。対照と比較してp<0.05。
【0039】
[本発明の実施形態の実施例]
下記の実施例は、本発明を説明する。但し、これらの実施例は制限的ではない。これら実施例は情報の提供が目的であり、いかなる場合でも用いられる方法を制限するものではなく、類似した結果を実現することを目的として変化し得る。
【0040】
本明細書では、これらのプロセスで用いられる記号や約束事、図や例は、国際システム及び現代科学文献、例えばJournal of Medicinal Chemistryで用いられるものと一致している。別途明記しない限り、すべての出発物質は、市販給業者から得られ、さらに精製することなく用いられた。特に、下記の略号が実施例及び本明細書全体を通じて利用可能である:g(グラム)、mg(ミリグラム)、Kg(キログラム)、mL(ミリリットル)、μL(マイクロリットル)、mmol(ミリモル)、mp(融点)、Hz(ヘルツ)、MHz(メガヘルツ)、δ(化学置換)、ppm(百万分の一)、s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、c(五重線)、m(多重線)、J(結合定数)、NMR(核磁気共鳴)、MS(質量分析)、ES(電子スプレイ)、m/z(質量/電荷比)、Anal.(元素分析)、Yld(収率)、TEA(トリエチルアミン)、CHCl(ジクロロメタン)、CDCl(重水素化クロロホルム)、CDOD(重水素化メタノール)DMSO(ジメチルスルホキシド)、i.p.(非経口投与)。すべての温度は℃(摂氏)で表される。
【0041】
実施例1
PC12
細胞株ソースバンクのマニュアル及びこれまでの公表文献(J Neurochem.、2007年、第103巻:1396〜1407頁)に基づき、PC12ラット細胞(副腎、クローム親和細胞腫)を、10%熱失活ウマ血清、5%ウシ胎仔血清(FBS)、2mMグルタミン、100U/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンが補給されたRPMI培地内で、5%CO雰囲気、37℃において培養した。
【0042】
SH5YSY
SH−SY5Y細胞株は、特徴的な表現型を発現した細胞の群から人工的にクローン化された神経芽細胞腫に由来する(Cancer Res.、1978年、38:3751〜3757頁)。原細胞株は、4歳の少女で発症した神経芽細胞腫の骨転移の生検から1970年に確立されたので、この細胞株は、遺伝学的には雌性である。この細胞には第1染色体に異常があり、トリソミー1qが認められる。SH−SY5Y細胞は、ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ活動性、アセチルコリン作動性、グルタミン酸作動性、及びアデノシン作動性として公知である。細胞は、有糸分裂により、及び神経突起により増殖作用を受けて末梢領域まで延在する。当該細胞は、細胞株ソースバンクのマニュアルに基づき、10%FBS、2mMグルタミン、0.5mg/mlネオマイシン、100U/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンが補給されたDMEM培地とHAM’S−F12培地とを1:1で含む混合物内で培養された。
【0043】
LnCaP
LnCaP細胞(ATCC CRL 1740)は、ヒト前立腺癌の十分に特徴づけされた細胞株である。同細胞は、細胞株ソースバンクのマニュアル及びこれまでの公表文献(Life Sci.、2009年、第85巻:421〜430頁)に基づき、10%FBS、2mMグルタミン、及び抗生物質(100UI/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシン)を含むRPMI−1640培地内で培養された。
【0044】
PC3
PC3細胞(ATCC CRL 1435)は、ヒト前立腺癌の十分に特徴づけされた細胞株である。同細胞は、細胞株ソースバンクのマニュアル及びこれまでの公表文献(Life Sci.、2009年、第85巻:421〜430頁)に基づき、10%FBS、2mMグルタミン、及び抗生物質(100UI/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシン)を含むRPMI−1640培地内で培養された。
【0045】
ラット腹膜中皮細胞の培養
これまでに記載されたプロトコール(Perit Dial Int.、1989年、第9巻、341〜347頁)に基づき、ラット腹膜中皮細胞を酵素消化により単離した。要するに、体重が200〜400gのSprague−Dawley系統の雌ラットを、Royal Decree1201/2005年、10月10日付けの、実験及び他の科学目的で用いられる動物の保護に関する規定に従い屠殺した。腹腔を速やかに開き、腹壁(腹膜及び平滑筋)を無菌条件で取り出した。中皮細胞を酵素消化し、上記表面を199培地(Sigma)及び1mg/mlコラゲナーゼA(Sigma)を用いて37℃で30分間インキュベーションすることにより、腹壁の内表面から分離した。インキュベーション後、消化された腹壁表面を削り取って接着した中皮細胞を完全に遊離させた。得られた中皮細胞を増殖及び試験用の培養皿内に播種し、10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンが補給された199培地内で、37℃、5%CO2雰囲気において維持した。播種後24時間経過時、次に2日毎に培地を取り替えた。それぞれ培養した後、細胞の形態的な外観、及び特異的マーカーの発現により、腹膜中皮細胞の有無を確認した。この試験では、細胞はステップ3〜6で用いられる。
【0046】
細胞の泳動を行うために、コンフルエントな培養物を生理食塩水リン酸バッファー溶液で2回洗浄し、次に、細胞が完全にはがれるまで0.05%トリプシン−EDTA(Gibco)に曝露した。トリプシンの効果を、10%ウシ胎仔血清が補給された199培地でブロックした。細胞を900r.p.m、20℃で5分間遠心分離し、これをこれまでに記載された通りに培養した。
【0047】
ヒト骨芽細胞の培養
ヒト骨芽細胞を、股関節手術を受けた患者の骨(55〜83歳)の骨梁領域から得た。すべての参加者には手術前に通知を行い、その同意を得た。サンプルは、General Universitario de Albacete病院の手術室から、4℃のロック溶液に入れられて研究室に到着し、速やかに処理された。大腿骨頭を、L−グルタミン(2mM)、ペニシリン−ストレプトマイシン(1%)及びFBS(15%)(完全培地)を含むα−MEM(Invitrogen)培地、10mLが入ったペトリ皿上に置き、これにファンギゾンを添加した(2.5μg/ml)。骨梁ゾーンの体外移植片を取り出し、小断片(2〜4mm)に切断し、当該大腿骨頭を、ファンギゾンを含む完全培地を用いて無菌シリンジで数回洗浄した。培地を、骨梁骨体外移植片と共に無菌状態のファルコン内に配置し、これを機械的に撹拌し、10gで3分間遠心分離した。上清を別のファルコンに移し、1500gで5分間再度遠心分離した。次に、得られたペレットを6mLの完全培地内で再懸濁し、P6皿に細胞を播種した。当該細胞を5%CO雰囲気において37℃でインキュベーションした。24時間後、培地を取り替え、その後2〜3日毎に培地を交換した。コンフルエンスに達したら、スプリッター1:3を実施し、ステップ3に達するまでスプリッターを連続して実施した。この時点で、培地にアスコルビン酸(50μg/μl)及びβ-グリセリンリン酸(10mM)を補給して、骨芽細胞の分化を誘発した。
【0048】
アルカリホスファターゼを測定し、ヒト線維芽細胞の細胞株を陰性対照として用いて、q−PCR法によりRUNX2及びOSXのmRNAの発現レベルを測定することにより、骨芽細胞として細胞を特徴づけた。
【0049】
ウシクローム親和細胞の初代培養
副腎髄質のクローム親和細胞は、ウシ副腎から単離され、現地の畜殺場で当該動物から取り出され、50UI/mlペニシリン(Sigma、St.Louis、MO)、50μg/mlストレプトマイシン(Sigma)、及び1mMグルタミン(Invitrogen、Carlsbad、CA)が補給された4℃のロック溶液(mM単位:NaClは154、KClは5.6、NaHCOは3.6、グルコースは5.6、Hepesは5、pH7.4)に入れて研究室に輸送された。
【0050】
準拠した培養プロトコールは、1984年にLivettら(Livett、B.G.、1984年)が記載したコラゲナーゼによる副腎髄質の消化のプロトコールに、Moroら(Moro、M.A.ら、1990年)が1990年に導入した改変を加えたものである。要約すれば、第1に、副腎周囲の脂肪組織を除去し、0.25%コラゲナーゼ(Roche Applied Sciences、Indianapolis、IN)及び5%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma)を含む酵素溶液、3.5mlを腎腰部血管(又は延髄中心)経由で注射し、37℃で45分間、当該腺をインキュベーションした。次に、髄質を取り出し、これを細胞への障害が最小となるように小片(1mm未満)に切断し、これを37℃で、30分間、コラゲナーゼ酵素溶液中で再度インキュベーションした。
【0051】
次に、アドレナリン作動性及びノルアドレナリン作動性のクローム親和細胞を、Percoll勾配を用いて精製し、ロック溶液で連続洗浄した後、これらの細胞を10%ウシ胎仔血清(FBS、Invitrogen)、1mMグルタミン、及び抗生物質(50UI/mlペニシリン及び50μg/mlストレプトマイシン)が補給されたDMEM培地(Invitrogen)内で再懸濁した。クローム親和細胞を、50μg/mlのポリ−L−リジン(ポリ−L、Sigma)を用いて事前に処理された皿の中又はガラスプレート上に、100,000個の細胞/cmの濃度で播種した。細胞を、水で飽和した5%CO雰囲気のインキュベータ内において37℃で維持した。この実験では、1〜5日間培養した細胞が用いられた。
【0052】
ラット小脳顆粒ニューロンの初代培養
これまでに記載されたプロトコール(J Neurochem.、2007年、第103巻、1396〜407頁;Brain Res Dev Brain Res.、1991年、第63巻、1〜12頁)に基づき、これに若干の修正を加えて、小脳顆粒ニューロンの培養物を得た。要するに、Spragle−Dawley系統の7日齢ラットを速やかに断頭し、その脳を慎重に取り出した。小脳を無菌的に分離し、髄膜を除去し、脳を約0.4mmの断片に切断した。次に、当該組織をカルシウム及びマグネシウムを含まない培地内でトリプシン及びDNAseに曝露し、これをポリ−リジンで事前に処理された培養皿内に播種した。当該細胞を24.5mMカリウム、2mMグルタミン、10%FBS、及び50μg/mlゲンタマイシンが補給されたBME培地内で培養した。24時間後、星状細胞の増殖を抑えるために、Ara−C(シトシンアラビノシド)を培地に添加して、最終濃度を10μMまで低下させた。当該細胞は、細胞が完全に分化するのに必要な時間である培養後7日間より前には使用されなかった。
【0053】
ラット皮質ニューロンの初代培養
皮質ニューロンの初代培養を、これまでに記載された方法(Eur J Neurosci.、2001年、第13巻、1469〜78頁)に基づき実施した。Spragle−Dawley系統の雌ラットの17日胎仔について、前側方の皮質葉を切除し、これをHBSS中で機械的に分離した。パスツールピペットを用い、皮質葉を10回ピペッティング定量分取した。800×gで5分間遠心分離した後、当該細胞を、B27、2mMグルタミン、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンが補給されたNeuobasal培地内で再懸濁した。当該細胞を、ポリ−リジンで事前に処理された培養皿内に播種したが、細胞が完全に分化し、グルタメート受容体が出現するのに必要な時間である培養後7日間より前には使用されなかった。
【0054】
一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体の形成
一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体を、一般式(I)で表される化合物を含有する溶液、及びsiRNA(Org Biomol Chem.、2007年、第5巻、1886〜1893頁;Pharm Res.、2009年、第26巻、1181〜1191頁)を含む溶液を等量混合することにより形成し、当該混合物を、周囲温度で30分間撹拌しながらインキュベーションした。両分子をDEPC水中に(RNAseを含まない)に溶解した。
【0055】
ゲルシフト実験、ヘパリンによる排除試験、及びRNAse作用に対する一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体のプロテクター効果
アガロースゲルにおける移動度シフトが、両分子間で可能な最大結合効果が得られるように構成されたN/P比(一般式(I)で表される化合物中の含窒素アミン量/siRNA中のリン酸塩量)を確認するのに用いられた(Mol Biol Rep.、2009年、第36巻、1083〜1093頁;Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet.、2008年、第147巻B、769〜777頁)。異なる濃度の一般式(I)で表される化合物と、siRNA250ngとの混合について試験された。当該混合物を、0.017%臭化エチジウムを含む1.2%アガロースゲル内で、60Vで15分間泳動する。ゲルを写真撮影し、適する画像分析システム(Quantity One)を用いてバンドを定量化した。
【0056】
ヘパリンシフト実験は、一般式(I)で表される化合物とsiRNAとの間の結合力を評価するために実施された。siRNAと一般式(I)で表される化合物との完全な結合を保証するのに最適と考えられる12:1のN/P比で、複合体を調製した。次に、両者を0.78、1.52、3.04、6.08、12.48、及び24.32μgのヘパラン硫酸と共に37℃で1時間インキュベーションした。一般式(I)で表される化合物−siRNAについて行った上記の比の試験と同一条件で、当該溶液をアガロースゲルにて泳動した。
【0057】
一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体のプロテクター効果を評価する実験では、異なる量のヘパラン硫酸を用いる替わりに、0.25%のRNase Aと共に、12:1のN/P比を有する複合体を37℃で30分間インキュベーションした。次に、複合体からsiRNAが完全に遊離するのを保証するために、このサンプルを過剰のヘパラン硫酸と共にインキュベーションした。インタクトなsiRNAの割合(%)を、これまでに記載した実験と同じ条件で、アガロースゲル電気泳動により分析した。
【0058】
上記試験のそれぞれについて最低2回の実験を行った。
【0059】
細胞毒性試験
一般式(I)で表される化合物の毒性を評価する試験を異なる細胞型において実施し、乳酸脱水素酵素(LDH)活性を測定した(Pharm Res.、2009年、第26巻:1181〜1191頁)。そのために、細胞を24ウェルプレートに播種し、濃度依存性毒性曲線を得るために、それを異なる濃度の一般式(I)で表される化合物の溶液(5〜80μM)に24、48、又は74時間暴露した。毒性効果を、細胞膜の破裂とその後の上清へのLDHの放出をサイトトックス96(CytoTox96)(登録商標)キット(Promega)を用いて測定することにより評価した。細胞を機械的に取り出し、これをPBSで洗浄し、10,000rpmで10分間遠心分離した。ライセート及び細胞上清の吸収を、マイクロプレート分光光度計を用いて波長490nmで測定した。
【0060】
一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体の処理による毒性を、異なる濃度の一般式(I)で表される化合物(1〜8μM)を100nMのsiRNAと組み合わせて用いながら、フローサイトメトリー法により試験した。そのために、処理後、当該細胞を、ヨウ化プロピジウム(0.5mg/mL)と共に暗光、37℃で少なくとも1時間インキュベーションした。次に、当該細胞をトリプシン処理し、これをフローサイトメーター(FACSCalibur、Becton−Dickinson、Franklin Lakes、NJ、米国)で分析した。1実験条件当り10,000個の細胞の評価を行い、この評価から細胞膜が障害を受けた細胞の割合(%)を計算した(ヨウ化プロピジウム陽性)(Weber Nら、2008年;Perumal OPら、2008年)。
【0061】
一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体の細胞内への移動割合(%)に関する試験
100nMの蛍光siRNAを用いて、一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体の存在下で細胞を24〜72時間維持した後、コンディション培地を収集し、当該細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄した。細胞トリプシン処理物及びコンディション培地を混合して得られた懸濁液中に存在するすべての細胞を、生死を含めフローサイトメーター(FACSCalibur、Becton−Dickinson、Franklin Lakes、NJ、米国)で分析した。1実験条件当り10,000個の細胞の評価を行い、蛍光siRNAでトランスフェクションされた細胞の割合(%)を計算した(J Control Rlease、2008年、第132巻、55〜64頁;Biomaterials、2008年、第29巻、3469〜76頁)。
【0062】
一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体の移動についても、共焦点顕微鏡検査により試験する。そのために、細胞をスライド上に播種し、上記サンプルと同様の方法で処理した。蛍光siRNA(単独又は一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体)で処理された細胞を、共焦点顕微鏡(Nikon Eclipse TE200)内で、siRNAが標識された蛍光体の励起に適する波長を用いて観察及び写真撮影した(Pharm Res.、2009年、第26巻:577〜86頁)。結果は、siRNAの細胞内トランスフェクションが陽性の細胞の割合(%)を決定するのに用いた。
【0063】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCR)の連鎖反応による遺伝子発現抑制試験
全細胞RNAを、グアニジン−フェノール−クロロホルムチオシアネート(TriPure Isolation Reagent、Roche Applied Sciences、Indianapolis、IN)を用いて標準法により単離した。RNAをcDNAに形質転換し、リアルタイムPCRを行うのにこれを利用した。異なる濃度の一般式(I)で表される化合物により媒介される(vehicularized)100nMのsiRNAを用いて、異なる遺伝子の発現抑制を試験するために、リアルタイムPCRを使用した。すべてのリアルタイムPCR実験で、参照遺伝子としてβ−アクチン遺伝子を用いた。反応は、StepOnePlus Real−Time PCR System(Applied Biosystems)について標準的な方法を用いて行われた。
【0064】
各実験では、試験対象遺伝子及び参照に用いられた遺伝子、1種類につき3回の測定を行い、それぞれについて閾値サイクル数(C)の平均値を計算したが、こうして異なる処理における遺伝子発現の比較が可能となった(Pharm Res.、2009年、第26巻、577〜86頁;Cancer Res.、2007年、第67巻、8156〜8163頁)。
【0065】
ウェスタンブロットによるタンパク質発現抑制度の評価
50mMトリス−HCl、pH7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、1%トリトンX−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、及び0.1%SDS及びプロテアーゼ阻害剤(5μg/mlアプロチニン及び1mM PMSF)内で溶解することにより、細胞抽出物を得た。溶解したら、当該細胞を13,000r.p.m.で15分間遠心分離した。上清に存在するタンパク質の濃度を、ウシ血清アルブミンを標準として用いて、Bradford法(Pierce、Rockford、IL、米国)により求めた。40μgの総タンパク質を含むサンプルを、試験するタンパク質に応じてポリアクリルアミドゲル(10〜15%)の各ウェルに適用した。セミドライブロッターを用いて、電気泳動によりニトロセルロース膜に移した。ニトロセルロースに結合したタンパク質をポンソーで観察し、その後5%のスキムミルクを含むTTBS(50mMトリス、pH7.5、200mM NaCl、0.1%ツイーン)でブロックキングし、次にこれを対応する一次抗体と共に4℃で一晩インキュベーションした。TTBS内で洗浄した後、周囲温度で1時間二次抗体を適用した。化学発光により検出を行った。しかるべき画像解析システム(Quantity One)を用いてグレーレベルにより、バンド強度を分析した(Pharm Res.、2009年、第26巻:1181〜1191頁)。
【0066】
結果
ゲルシフト実験、ヘパリンによる排除試験、及びRNAseの作用に対する一般式(I)−siRNAからなる化合物複合体のプロテクター効果
40μMのsiRNA、2.5μlを、全部で6.02×1011個の負電荷を含む最終濃度が2μMの溶液が得られるように、デンドリマーの窒素/siRNAのリン酸塩(N/P)の比が6:1とするのに十分なある濃度の一般式(I)で表されるデンドリマー化合物と共に、エッペンドルフチューブ内において最終容積50μl、周囲温度で30分間インキュベーションし、P/N比が384:1に到達するまでsiRNAを一定に保ったままデンドリマー量を高める(図1)。インキュベーション後、サンプルを1%アガロースゲルにおいて60Vで15分間電気泳動し、これを臭化エチジウム物と共にインキュベーションし、siRNAを紫外線により観察する。図1で観察可能なように、P/N比が12:1(一般式(I)で表される化合物の濃度が22μM)のとき、すべてのsiRNAはデンドリマーにより固定化され、ゲル内で置換されることはない。
【0067】
実施例2 一般式(I)で表される化合物の合成
不活性雰囲気(アルゴン)を必要とするすべての反応では、Schlenk標準法が用いられる。
【0068】
不活性雰囲気内で行う反応では、クロマソルブ(CHROMASOLV)(登録商標)グレードのテトラヒドロフラン(THF)及びジクロロメタン(CHCl)の両方(Aldrich)を、Innovative Technology製の溶媒精製システムを用いて事前に精製した。エチレンジアミンを周囲温度、水素化カルシウム上で2時間乾燥させ、これを濾過し、減圧(30〜40mmHg)で蒸留し、モレキュラースクリーン(4Å)上で保管した。MeOHは、酸化カルシウム上で乾燥させ、これを濾過、蒸留し、モレキュラースクリーン(4Å)上で保管した。他の溶媒は、事前精製せずに用いた。
【0069】
2.1 合成図:
【化12】


化合物1は、Synthesis,Characterization,and Optical Response of Dipolar and Non−Dipolar Poly(phenylenevinylene)Dendrimers.J.J.Org.Chem.、2001年、第66巻(17)、5664〜5670頁に基づき作製される。
【0070】
2.2 化合物2の合成:
【化13】


エチレンジアミン(8.6mL、128mmol)を、無水CHCl(50mL)中にトリアルデヒド1(300mg、0.64mmol)を乾燥モレキュラースクリーンと共に含む溶液に、アルゴン雰囲気下で滴下した。当該反応物を30分間撹拌し、モレキュラースクリーンを濾過した。最初に、水素化ホウ素ナトリウム(145mg、3.84mmol)をアルゴン雰囲気下で当該溶液に添加し、次に無水MeOH、10mLを添加した。反応させるために2時間これを放置した。次に、減圧下で溶媒を除去し、トルエン/MeOHが9:1の比の混合物(10mL)を、最終回ではMeOH、10mLを用いて溶解−蒸発のサイクルを3回行った。次に、得られた白色固形物を5mLの水3分量で遠心分離し、固形物をCHClに溶解し、MgSOで2時間乾燥させる。濾過及び減圧下で溶媒除去後、当該化合物を、THFを用いた熱洗浄により精製し、白色固形物として所望の化合物、351mg(0.58mmol)(91%)を得た。
【0071】
H−NMR(CDOD,500MHz) δ:2.73(t,6H,J=6Hz,−C−NH)、2.83(t,6H,J=6Hz,−NH−C−)、3.79(s,6H,−C−NH−)、7.21(ABのA,3H,J=16.5Hz,3×CH=)、7.29(ABのB,3H,J=16.5Hz,3×CH=)、7.37(ABのA,6H,J=7.5Hz,6×ArH)、7.58(ABのB,6H,J=7.5Hz,6×ArH)、7.63(s,3H,ArH)。
13C NMR及びDEPT(CDOD,125MHz) δ:140.27(C)、139.62(C)、137,85(C)、129.98(CH)、129.92(CH)、129.30(CH)、127.78(CH)、124.90(CH)、53.82(−CH−NH−)、50.59(−NH−CH−)、41.09(−CH−NH)。
【0072】
2.3 化合物3の合成:
【化14】


MeOH(20mL)中の化合物2(0.250g、0.416mmol)の溶液を氷浴中で0℃まで冷却した。この温度に達したら、メチルアクリレートを徐々に添加し(3.06g、35.53mmol)、これを反応させるために周囲温度で4日間放置した。次に、過剰のメチルアクリレートを用いて減圧下で溶媒を除去し、当該化合物を、THFを用いた熱洗浄により精製し、白色固形物として所望の生成物、0.324g(57%)を得た。
【0073】
H−NMR(CDCl,500MHz) δ:2.41(t,12H,J=7Hz,−CH−CO−)、2.49(t,6H,J=7Hz,−CH−CO−)、2.54(s,12H,−N−C−C−N−)、2.74(t,12H,J=7Hz,−N−CH−)、3.61(s,6H,−C−NH−)、3.65(s,18H,−OCH)、3.67(s,9H,−C−NH−)、7.14(ABのA,3H,J=16.5Hz,3×CH=)、7.20(ABのB,3H,J=16.5Hz,3×CH=)、7.31(ABのA,6H,J=8.5Hz,6×ArH)、7.50(ABのB,6H,J=8Hz,6×ArH)、7.55(s,3H,3×ArH)。
13C NMR,DEPT及びgHSQC(CDCl,125MHz) δ:173.01(−CO−)、172.94(−CO−)、139.16(C)、138.08(C)、135.65(C)、129.05(3xCH=,6xArH)、127.88(3×CH=)、126.42(6×ArH)、123.72(3×ArH)、58.69(−−NH−)、52.12(−N−CH−CH−N−)、51.93(−N−CH−CH−N−)、51.52(CH)、49.50(−C−NH−)、49.63(−N−CH−)、32.66(−−CO−)、32.52(−−CO−)。
IR υ:1734cm−1(−CO)。
MALDI−TOF m/e:1375.43(M+H)及び1397.45(M+Na)
【0074】
2.4 化合物4の合成:(IR8)
【化15】


エチレンジアミン(10mL)中の化合物3(324mg、0.236mmol)の溶液を周囲温度で48時間撹拌した。次に、減圧内で溶媒を除去し、トルエン/MeOHが9:1の比の混合物(10mL)を、最終回ではMeOH、10mLを用いて溶解−蒸発のサイクルを3回行った。当該化合物を、THFを用いた熱洗浄により精製し、白色固形物として化合物4、384mg(85%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される化合物、又はその塩、プロドラッグ、若しくは溶媒和物。
【化1】


[一般式(I)中、
Wは、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンエチリデン、若しくは両者の混生物、その構造内で二重結合、三重結合、若しくは両方の組成が組み合わされた任意の共役有機化合物、これらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、二重結合、三重結合、若しくは両方の組成と、フェニル、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、例えばシトシン、ウラシル、アデニン、チミン、及びグアニン等の芳香族複素環式塩基の芳香環とが、その構造内で交互に並ぶ任意の共役有機化合物、若しくはこれらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、フェニル、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、例えばシトシン、ウラシル、アデニン、チミン、及びグアニン等の芳香族複素環式塩基の芳香環を含有する任意の非共役有機化合物、若しくはこれらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、又はこれらの任意の組み合わせに由来する任意のポリマー又はデンドリマーによって構成される群から選択され、
、X、及びXは、同一又は異なり、及び任意のヘテロ原子から選択され、
Yは、飽和若しくは不飽和アルキル基(C〜C12)若しくはシクロアルキル(C〜C)、シクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、
及びRは、同一又は異なり、一級、二級、又は三級アミノ基と結合し、水素、飽和若しくは不飽和アルキル(C〜C12)、シクロアルキル(C〜C)、シクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、
nは分岐数を表し、1〜10から選択される整数である。]
【請求項2】
一般式(II)で表される、請求項1に記載の化合物、又はその塩、プロドラッグ、若しくは溶媒和物。
【化2】


[一般式(II)中、
Wは、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンエチリデン、若しくは両者の混生物、その構造内で二重結合、三重結合、若しくは両方の組成が組み合わされた任意の共役有機化合物、これらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、二重結合、三重結合、若しくは両方の組成と、フェニル、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、例えばシトシン、ウラシル、アデニン、チミン、及びグアニン等の芳香族複素環式塩基の芳香環とが、その構造内で交互に並ぶ任意の共役有機化合物、若しくはこれらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、フェニル、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、例えばシトシン、ウラシル、アデニン、チミン、及びグアニン等の芳香族複素環式塩基の芳香環を含有する任意の非共役有機化合物、若しくはこれらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、又はこれらの任意の組み合わせに由来する任意のポリマー又はデンドリマーによって構成される群から選択され、
、X、及びXは、同一又は異なり、任意のヘテロ原子から選択され、
Yは、飽和若しくは不飽和アルキル基(C〜C12)若しくはシクロアルキル(C〜C)、シクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、
及びRは、同一又は異なり、一級、二級、又は三級アミノ基と結合し、水素、飽和若しくは不飽和アルキル(C〜C12)、シクロアルキル(C〜C)、シクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、
nは分岐数を表し、1〜10から選択される整数である。]
【請求項3】
塩の形態であってもよく、トリフルオロ酢酸塩、塩化物イオン、DNA、RNA、siRNA、miRNA、アンタゴmir、任意の薬物、抗体、画像化法により疾患を診断するためのプローブ又はそれらの任意の組み合わせに静電的に結合していてもよい、請求項1又は2に記載の一般式(I)又は(II)の化合物。
【請求項4】
、X、及びXが、同一又は異なり、窒素又は酸素から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の一般式(I)又は(II)の化合物。
【請求項5】
Yが、
【化3】


から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の一般式(I)又は(II)の化合物。
【請求項6】
及びRが同一であっても又は異なってもよく、水素原子、任意の置換又は非置換アミン、塩基性アミノ酸、コレステロール誘導体、葉酸、乳酸、デキサメタゾン、糖、リソソーム作用剤、含窒素複素環、ポリエチレングリコール誘導体親水性鎖、任意のジアクリレート、任意の塩基性アミノ酸、及び下記構造、
【化4】


からそれぞれ独立に選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の一般式(I)又は(II)の化合物。
【請求項7】
【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


を含むリストから選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の一般式(I)又は(II)の化合物。
【請求項8】
1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤と共に、請求項1、3、4、5、及び6のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤と共に、請求項2、3、4、5、及び6のいずれか一項に記載の一般式(II)の化合物を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
1つ又は複数の有効成分をさらに含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
下記工程a〜c
【化9】


【化10】


【化11】


を含むことを特徴とする、一般式(I)で表される化合物の合成方法。
[ここで、
Wは、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンエチリデン、若しくは両者の混生物、その構造内で二重結合、三重結合、若しくは両方の組成が組み合わされた任意の共役有機化合物、これらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、二重結合、三重結合、若しくは両方の組成と、フェニル、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、例えばシトシン、ウラシル、アデニン、チミン、及びグアニン等の芳香族複素環式塩基の芳香環とが、その構造内で交互に並ぶ任意の共役有機化合物、若しくはこれらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、フェニル、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、例えばシトシン、ウラシル、アデニン、チミン、及びグアニン等の芳香族複素環式塩基の芳香環を含有する任意の非共役有機化合物、若しくはこれらの電子供与基若しくは電子誘引基による任意の置換体、又はこれらの任意の組み合わせに由来する任意のポリマー又はデンドリマーによって構成される群から選択され、
Aは、X、X、及びXから選択され、
、X、及びXは、同一又は異なり、任意のヘテロ原子から選択され、
Yは、飽和若しくは不飽和アルキル基(C〜C12)若しくはシクロアルキル(C〜C)、シクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、
及びRは、同一又は異なり、一級、二級、又は三級アミノ基と結合し、水素、飽和若しくは不飽和アルキル(C〜C12)、シクロアルキル(C〜C)、シクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、
nは分岐数を表し、1〜10から選択される整数である。]
【請求項12】
一般式(I)の化合物から開始し、請求項11に記載の全工程a〜cを反復する、一般式(II)の化合物を得る方法。
【請求項13】
薬剤の調製のための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の一般式(I)又は(II)の化合物の使用。
【請求項14】
神経系疾患、腫瘍の外観を呈する任意の疾患、骨粗鬆症、糖尿病、腹膜透析、及びヒト免疫不全症候群ウイルスにより引き起こされるもの(AIDS)を含むウイルス感染症等の病的状態を予防及び/又は治療するための薬剤の調製のための、請求項13に記載の一般式(I)又は(II)の化合物の使用。
【請求項15】
神経細胞、グリア、腫瘍細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、及び初代細胞の初代培養におけるsiRNAトランスフェクションキットの調製のための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の一般式(I)又は(II)の化合物の使用。
【請求項16】
遺伝子療法における、非ウイルス性ベクターとしての請求項1〜6のいずれか一項に記載の一般式(I)又は(II)の化合物の使用。
【請求項17】
画像化法により疾患を診断するためのプローブの調製のための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の一般式(I)又は(II)の化合物の使用。
【請求項18】
薬物、遺伝物質、又は細胞株イメージングプローブの選択的送達のための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の一般式(I)又は(II)の化合物の使用。

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2013−521328(P2013−521328A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556549(P2012−556549)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/ES2011/070141
【国際公開番号】WO2011/107648
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512230937)ユニヴェルシダード デ カスティーリャ ラ マンチャ (2)
【Fターム(参考)】