説明

遺伝子発現を改変するための標的化オリゴヌクレオチド組成物

本発明は、遺伝子発現を改変するための組成物および方法を含む。本発明の改変されたオリゴは、let−7野性型miRNA分子の失われた機能(それらの結合部位内で生じる変異によって標的遺伝子をサイレンシングすることが妨げられる)を修復する。特定の改変されたオリゴ(配列番号22)の投与により、LCS6 SNPを有する癌細胞における細胞死が増加する。本発明の一態様では、治療組成物は、miRNA結合部位での新規な変異または遺伝性の変異が野性型miRNAの結合有効性を改変し、その結果、標的遺伝子が、癌の発症を防ぐためにもはや十分にサイレントでない場合、失われた機能を修復する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2008年5月30日に出願された、米国仮特許出願第61/130,528号に関し、この米国仮特許出願は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に、癌および分子生物学の分野に関する。本発明は、癌などの種々の障害を生じる遺伝子の発現を改変するための組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
癌は多くの場合、必須の細胞機能、例えば、DNA修復、細胞の周期、増殖および細胞接着を制御する遺伝子の調節配列内に生じる新規な変異によって生じる。現行の治療法は、癌の発症をもたらす、背景にある遺伝的機構に取り組むことができない。そのようなものとして、個人に合わせられ、かつ癌細胞で作動する背景にある遺伝子機構および分子機構に取り組む、新種の癌治療法が長年にわたって必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
本発明の組成物および方法は、癌を処置することができる新型の遺伝子療法および分子療法を提供する。本発明の医薬組成物は、意図される対象の遺伝子的および後成的な背景に存在する調節不全の遺伝子および/または特異的な変異を標的するように個人に合わせられ、かつ最適化されている。本発明の一態様では、治療組成物は、miRNA結合部位での新規な変異または遺伝性の変異が野性型miRNAの結合有効性を改変し、その結果、標的遺伝子が、癌の発症を防ぐためにもはや十分にサイレントでない場合、失われた機能を修復する。
【0005】
本発明は上記の単離された改変されたオリゴを含む組成物を提供する。特定の実施形態では、単離された改変されたオリゴを含む組成物はまた、薬学的に受容可能なキャリアも含む。本発明の他の実施形態では、組成物はさらに、細胞毒性化合物を含む。例示的な細胞毒性化合物としては、限定するものではないが、全ての放射性同位体および化学療法化合物が挙げられる。
【0006】
本発明は、細胞増殖障害の症状を処置または緩和する方法であって、それが必要な対象に本発明の組成物を投与する工程を含む、方法を提供する。好ましい実施形態では、細胞増殖障害は癌である。従って、本発明は、癌の症状を処置または緩和する方法であって、それが必要な対象に本発明の組成物を投与する工程を含む、方法を提供する。本発明によって包含される例示的な癌としては、限定するものではないが、全ての種類の肺癌、卵巣癌、乳癌、子宮癌、頭頸部癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、または結腸癌が挙げられる。本発明の一態様では、対象はLSC6 SNPを有する。
【0007】
組成物は本明細書に提供される方法を用いて、局所的に投与される。あるいは、またはさらに、組成物は、本明細書に提供される方法を用いて、全身的に投与される。組成物は、静脈内に、皮内に、皮下に、経口的に、経皮的に、局所に、経粘膜的に、眼を通じて、気管内に、鼻腔内に、表皮に、腹腔内に、眼窩内に、動脈内に、関節内に、脊髄内に、胸骨内に、頭蓋内に、くも膜下腔内に、脳室内に、非経口的に、非経口的でなく、直腸にまたは外科的に投与される。さらに、複数の組成物を、任意の列挙されたまたは当該分野で認識される方法によって連続して、または同時に同じ対象に投与してもよい。
【0008】
本発明は、癌細胞で細胞死を誘導する方法であって、該癌細胞に改変されたオリゴ組成物を接触させる工程を含む、方法を提供する。本明細書の方法は、インビボ、インビトロ、エキソビボおよびインサイチュの癌細胞を含む。本発明の癌細胞としては、限定するものではないが、肺癌、卵巣癌、乳癌、子宮癌、頭頸部癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、または結腸癌を含む全ての種類の癌由来の細胞が挙げられる。本発明の一態様では、本明細書の方法を用いて接触される癌細胞は、変異を含む。好ましい実施形態では、変異は、LSC6 SNPである。あるいは、癌細胞はLSC6 SNPを含む。
【0009】
本発明の組成物は、局所投与または全身投与による即時的な方法を用いて癌細胞に接触する。組成物は、例えば、局所、静脈内、眼内、皮下、腹腔内、筋肉内、脊髄内、または外科的な投与の後に癌細胞と接触する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1Aは図1Bで用いられる改変されたオリゴ(配列番号22)の配列である。図1Bは野性型(prelet−7b)、改変されたlet−7bオリゴ、またはアンチセンスlet−7(anti−let−7)のmiRNAに対する曝露後の癌細胞、野性型(左側の2つのカラム)または変異体(LCS6 SNP変異体を含む、右側の2つのカラム)の生存割合を示すグラフである。
【図2A】図2Aは、ルシフェラーゼレポータータンパク質が野性型およびLCS6 SNP(KRAS 3’UTR領域を含む)のいずれかに融合した場合の各々の3つの改変されたオリゴについての正規化されたルシフェラーゼ発現の値および平均の標準偏差を示す表である。値は、コントロールの発現が1に等しいようにコントロールのmiRNA構築物に対して正規化される。
【図2B】図2Bは、図2Aで示した値のグラフ表示である。
【図3】図3は、種々のオリゴヌクレオチドの組み合わせ(1−2、1−3、2−1、2−3、3−2)がKRAS発現をサイレンシングし、それによって、LCS6 SNP(onco−SNPとも呼ばれる)を含む発癌性細胞株の細胞生存に影響にする能力を示すクローン形成のアッセイのグラフ表示である。
【図4】図4は、種々のオリゴヌクレオチドの組み合わせ(1.2、1.3、2.1、および2.3)がKRAS発現をサイレンシングし、それによって、LCS6 SNPを含む卵巣癌および膵臓癌細胞株の細胞生存に影響にする能力を示すクローン形成のアッセイのグラフ表示である。細胞生存は、LCS6 SNPを含まない卵巣癌および膵臓癌細胞の株に対して正規化し、非SNP細胞株で観察された生存の割合として表した。
【図5】図5は、種々のオリゴヌクレオチドの組み合わせ(1.2、1.3、および2.1)がKRAS発現をサイレンシングし、それによって、LCS6 SNPを含む卵巣癌細胞株の細胞生存に影響にする能力を示すクローン形成のアッセイのグラフ表示である。細胞生存は、LCS6 SNPを含まない卵巣癌細胞株に対して正規化した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、改変されるかまたは合成のオリゴヌクレオチド(本明細書において「オリゴ」と呼ばれる)分子が、癌などの種々の障害を生じる、細胞中で損なわれるかまたは失われる機構または機能をサイレンシングする遺伝子を修復または改善するという予期せぬ発見に基づく。詳細には、本発明の改変されるかまたは合成のオリゴ分子は癌遺伝子の過剰発現をサイレンシングするために投与される。本発明は一部は、野性型miRNAの、結合部分または相補性部分の内に存在する変異であって、これらのmiRNAの結合有効性を改変し、かつ遺伝子サイレンシングに影響する変異に基づく。変異が、癌原遺伝子または癌遺伝子内に存在するmiRNA結合部位内で生じる場合、少なくとも1つの野性型miRNAの遺伝子サイレンシング機能が影響して、癌原遺伝子または癌遺伝子の過剰発現が生じる。本発明の改変されるかまたは合成のオリゴは、miRNA結合部位に結合するように操作され、その結果、遺伝子サイレンシングは、野性型miRNA結合を改変する変異の場合には修復されるか、または変異の非存在下で遺伝子が誤って調節されて過剰発現される場合には、増強される。
【0012】
本発明の一態様では、改変されるかまたは合成のオリゴは、LCS6 SNPを含むKRAS遺伝子または転写物内のlet−7相補性部位(LCS)に結合するように操作される。LCS6 SNPを有する対象は、変異を担持しない対象と比較して、遺伝子の発現の変更を呈する。LCS6 SNPを有する多くの対象では、KRASが過剰発現される。KRASは、8個のlet−7相補性部位(LCS)を含むが、LCS6(配列番号21)の第4位に存在する一塩基多型(SNP)は、癌の出現の指標である。LCS6 SNPの存在は、野性型let−7のmiRNAの結合有効性を改変する。LCS6 SNPの結果として、KRAS発現は、野性型let−7 miRNAで十分にサイレンシングされない。LCS6 SNPを有する結果は、癌の発症である。
【0013】
従って、本発明は、癌の徴候または症状を処置または緩和するためにlet−7相補性部位に変異を有する対象において遺伝子発現を改変するための組成物および方法を提供する。本発明はまた、let−7によって調節される遺伝子が、多くの癌のタイプで上方制御されるため、このような変異のキャリアでない対象も含む。本明細書で提供される組成物および方法はまた、これらの対象に治療的な利益を提供する。
【0014】
例えば、本明細書に提供される組成物および方法を用いて、KRAS 3’UTRにおけるLCS6 SNPと塩基対合する能力を有する改変されたオリゴ(配列番号22)が、LCS6 SNPを含むヒト癌細胞に送達される。改変されたオリゴ(配列番号22)は、これらの細胞において、天然に存在するmiRNA前駆体let−7(これもこの部位を標的することが予想される)よりも細胞生存を劇的に低下することが示された(図1)。これらの結果によって、これらの標的化オリゴヌクレオチドを用いて、LCS6 SNPを含有する癌細胞の増殖を低減し、および/または死滅を刺激する固有の能力が示される。さらに、このデータは、このアプローチを用いて、LCS6 SNPを含む全ての癌における治療として支持する。
【0015】
一塩基多型(SNP)
一塩基多型(SNP)は、ゲノム(または他の共有される配列)中の一ヌクレオチドが、ある種のメンバーの間(または個体の対の染色体の間)で異なる場合に生じるDNA配列のバリエーションである。SNPは遺伝子のコード配列、遺伝子の非コード領域、または遺伝子間の遺伝子間領域内に存在する場合がある。コード配列内のSNPは、遺伝子コードの縮重に起因して、産生されるタンパク質のアミノ酸配列を必ずしも変化しない。同じポリペプチド配列をコードする新規なDNA配列を生じるSNP変異は、同義(サイレント変異とも呼ばれる)と名付けられる。逆に、異なるポリペプチド配列をコードする新規なDNA配列を生じるSNP変異は、非同義と呼ばれる。タンパク質コード領域でないSNPはやはり、遺伝子スプライシングの結果、転写因子結合または非コードRNAの配列を有する場合がある。
【0016】
遺伝子の非コード領域は、miRNA分子に相補的であって、かつ他の調節因子との相互作用に必要である調節配列を含むため、遺伝子の非コード領域、例えば、非翻訳領域内に存在するSNPは特に重要である。ゲノム配列内に生じるSNPは、変性または翻訳スプライシングのためにmiRNA分子によって標的されるmRNA転写物へ転写される。ある遺伝子のゲノム配列またはmRNA転写物の3’非翻訳領域(UTR)内に生じるSNPは、本発明の方法に特に重要なSNPである。
【0017】
マイクロRNA
マイクロRNA(miRNA)とは、細胞の代謝、発達、細胞周期、細胞分化および細胞死を制御する、最近特定された遺伝的調節因子である、小型の、非コードRNAである。さらに、miRNAは、数百の遺伝子標的を調節する能力におそらく起因して、癌、加齢、および他の疾患状態において重要であることが見出されている。
【0018】
miRNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)のタンパク質への翻訳を、その標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)への結合によって阻害することにより作用する。3’UTRにおけるこれらのマイクロRNA結合部位は、ヒトにおいて極めて高度に保存された領域であることが見出されており、これによって天然の選択におけるこれらの領域での重要な役割が示唆される。3’UTRの高度の保存は、この領域の破壊が疾患をもたらすという仮説を支持する。理論で拘束されることはないが、miRNAはmRNAの変性を生じるか、または翻訳自体を阻害することによってmRNAの翻訳を阻害する。
【0019】
miRNAは、約21〜23ヌクレオチド長の一本鎖RNA分子である。miRNAは、RNAポリメラーゼIIによってDNAから転写される内因性遺伝子および外因性遺伝子によってコードされるが、miRNAは決してポリペプチド配列には翻訳されない。そのようなものとして、miRNAは、当該分野では、「非コードRNA」とみなされる。「内因性」遺伝子という用語は本明細書において用いる場合、個体のゲノム内に天然に存在する全ての遺伝子を含むことを意味する。「外因性」遺伝子という用語は本明細書において用いる場合、個体のゲノム内に天然に存在しない全ての遺伝子を含むことを意味する。例えば、miRNAはウイルスによって外因性に誘導され得る。
【0020】
理論によって拘束されるものではないが、本発明は、miRNAの生合成が以下の機序によって生じるという理解を包含し、かつ一部はその理解に基づく。miRNAは、Droshaというヌクレアーゼおよび二本鎖RNA結合タンパク質DGCR8/Pashaによって、「pri−miRNA」と呼ばれる一次mRNA転写物からプロセシングされる。一旦プロセシングされれば、これらの転写物は、「pre−miRNA」と呼ばれるステム−ループ構造を形成する。pre−miRNAは、1工程でエンドヌクレアーゼDicerによってさらにプロセシングされ、これが二重鎖のpre−miRNA分子を一本鎖の成熟miRNAに変換し、RNA−誘導サイレンシング複合体(RISC)の形成を開始する。2つの得られた一本鎖の相補的miRNA鎖の1つ、ガイド鎖は、RISCのアルゴノートタンパク質によって選択されて、RISCに組み込まれるが、他の鎖である、アンチガイド鎖またはパッセンジャー鎖は分解される。RISCへの組み込み後、miRNAは、標的mRNAに結合して、引き続き翻訳を阻害する。
【0021】
miRNAは、1つ以上のmRNAの一部に相補的である。さらに、miRNAは、mRNAに結合する絶対的な配列相補性を必要とせず、miRNAは広範な標的転写物を調節することができる。本明細書において用いる場合、「絶対的な配列相補性」という用語は、2つの配列の長さにそって各々のヌクレオチド対、例えば、miRNAおよび標的遺伝子または転写物がギャップなしで結合するという必要性を記述するという意味である。miRNAはその相補性部位に、より低い程度の相補性で結合することが一般的である。miRNAは代表的には、マッチしたヌクレオチド間でギャップのある標的配列に結合する。本明細書において用いる場合、「相補的な」という用語は、2つの配列であって、ヌクレオチドのうち少なくとも50%が1つの配列から他の配列へトランスで結合する2つの配列を記述するという意味である。
【0022】
miRNAは、配列の5’末端でヌクレオチド2〜7または2〜8からなるシード配列を有する。シード配列は、ワトソン−クリックの塩基対合の古典的な規則に従って、そのmiRNAの3’配列にさらに密接に結合する。miRNAのシード配列とその標的との間の配列相補性は、miRNA結合を決定するために必要かつ十分である。実験アプローチおよびコンピューターアプローチの両方によって、miRNAの5’末端で7つ以上の塩基対の相補性がインビボで調節を付与するのに十分であり、かつ生物学的に関連の標的で用いられることが確認された(Brennekeら PLoS Biology.2005,3(3):e85)。Brennekeらはまた、miRNAの3’配列に対する過度の相補性はシード配列内の5’相補性の最小エレメントなしに調節を付与するには十分ではないことを見出した。しかし、miRNA3’配列のその標的に対する相補性は、ファミリー内のmiRNAの特異性を決定し得る。シード配列内では、G:U塩基対、単一ヌクレオチドバルジおよびミスマッチが生じ、これは、miRNAがその標的に結合する能力を損なう。シード配列結合が、これらの不規則性に起因して弱められる場合、miRNAのその標的に対する有効な結合を可能にするために、より大きい相補性がmiRNAの3’末端内に必要である。従って、miRNA結合を予想するために、miRNA配列およびそれらの標的部位は、以下の2つのグループに分類され得る:その完全な塩基対合が5’末端に存在するmiRNA、およびそのシード配列対合がより弱く、かつ3’配列がより強力な相補性を代償するmiRNA。Brennekeらは、これらのグループをそれぞれ5’ドミナントおよび3’代償性(Compensatory)と呼ぶ。例示的な3’代償性部位としては限定するものではないが、4〜6塩基対のより小さいシードマッチ、および7〜8塩基対および中断、例えばG:U塩基、単一ヌクレオチドバルジ、またはミスマッチ(その各々がより強力な3’代償性を伴う)を有するシードマッチが挙げられる。
【0023】
本発明の改変されたオリゴヌクレオチドは、5’ドミナントまたは3’代償性である。さらに、特定の環境では、本発明の改変されたオリゴヌクレオチドは、「カノニカル」miRNA部位に結合し、ここでは、miRNAのシード配列および3’配列の両方が、標的配列に強力に結合する。あるいは、本発明の改変されたオリゴヌクレオチドは、「シード部位」に結合し、ここでは、miRNAのシード配列は単独で、標的配列に強力に結合し、かつ標的配列に対するmiRNAの3’配列の結合相補性にかかわらずサイレンシングを媒介する。
【0024】
miRNAは、mRNA転写物の3’UTRに相補性である頻度が高い。さらに、または加えて、miRNAは、標的されたmRNAをコードする遺伝子に対応するメチル化ゲノム部位を標的する。ゲノムDNAのメチル化部位は、部分的に、そのDNAの転写因子に対する接近性を決定する。そのようなものとして、DNAメチル化および脱メチル化は、それぞれ遺伝子のサイレンシングおよび発現を調節する。
【0025】
癌遺伝子のmiRNAおよび腫瘍サプレッサーのmiRNA
腫瘍サプレッサー遺伝子の発現をサイレンシングするmiRNAは癌遺伝子である。あるいは、miRNAは腫瘍サプレッサー遺伝子であり、これは癌遺伝子のmRNA転写物の翻訳をサイレンシングする。「癌遺伝子」という用語は、本明細書において用いる場合、発現されるとき、直接または間接的に、不適切な時点で、または未制御の機序によって細胞を細胞周期に入れるか、適切に死滅できない任意の遺伝子を含むことを意味する。例示的な癌遺伝子としては限定するものではないが、増殖因子、転写因子、調節タンパク質、例えば、GTPaseおよびレセプター、ならびに細胞周期タンパク質が挙げられる。「癌原遺伝子」という用語は本明細書において用いる場合、もし改変されれば、直接または間接的に、細胞を不適切に細胞周期に入れる任意の遺伝子を含むことを意味する。癌原遺伝子の例としては、限定するものではないが、RAS、WNT、MYC、ERKおよびTRKが挙げられる。「腫瘍サプレッサー遺伝子」という用語は、本明細書において用いる場合、抑制またはサイレンシングされ、細胞分裂の調節不全および/または癌原遺伝子または癌遺伝子の過剰発現をもたらす任意の遺伝子を含む。例示的な腫瘍サプレッサー遺伝子としては限定するものではないが、網膜芽細胞腫(Rbタンパク質をコードする)、TP53(p53タンパク質をコードする)、PTEN、APC、およびCD95が挙げられる。腫瘍サプレッサー遺伝子産物は、細胞周期の継続に必須である遺伝子を抑制する。これらの遺伝子が発現されない場合、細胞周期は効果的に続かず、細胞分裂が効果的に阻害される。腫瘍サプレッサー遺伝子産物は、細胞周期をDNA損傷に連関させる。従って、これらの遺伝子産物は、細胞分裂を避けるかまたは防ぐ細胞周期チエックポイントおよびDNA修復機構を活性化する。損傷を修復することができない場合、細胞はアポトーシスまたはプログラムされた細胞死を開始する。いくつかの腫瘍サプレッサー遺伝子産物は細胞接着に関与し、従って、腫瘍細胞が分散するのを防ぎ、接触阻害の喪失をブロックし、かつ転移を阻害する。これらのタンパク質はまた、転移抑制因子としても公知である。
【0026】
結合有効性を低下し、それによって癌遺伝子をサイレンシングする腫瘍抑制miRNAの結合部位内のSNPは、細胞増殖疾患の1つ以上の症状を提示するリスク、感受性または可能性を増大させる。同様に、結合を増加し、それによって遺伝子抑制を増加する癌遺伝子のmiRNAの結合部位内のSNPは、細胞増殖疾患の1つ以上の症状を提示するリスク、感受性または可能性を増大させる。
【0027】
本発明は、全ての公知の腫瘍サプレッサーおよび癌遺伝子のmiRNA、ならびにそれらの対応する相補性結合部位を含む。さらに、全ての内因性ヒトmiRNAが本発明によって包含され、その名称、配列および標的は、その全体が参照によって本明細書に援用されるWellcome Trust Sanger Institute MicroRNA Listing for Homo sapiensのデータベースに提供される。
【0028】
KRAS遺伝子
KRAS遺伝子は、ヒトにおけるRASの1つの形態である。RAS遺伝子は、Ras、Rho、Arf、Rab、およびRanのファミリーを含む、小さいGTPasesのより大きいスーパーファミリーに属するタンパク質をコードする。機能的には、GTPaseタンパク質は、細胞内の事実上あらゆる機能を制御する広範な種々のシグナル伝達経路の分子スイッチである。GTPaseタンパク質によって調節される例示的な機能は、細胞骨格統合性、細胞増殖、細胞接着、アポトーシス、および細胞遊走である。従って、細胞内で調節不全のRasタンパク質は細胞浸潤を増大し、転移およびアポトーシスを減少させる場合が多い。重要なことに、Rasタンパク質は、プレニル化によって細胞膜に接着され、成長因子レセプターを細胞増殖または分化に関与する下流の分裂促進エフェクターに結合させる。
【0029】
HRAS、KRAS、およびNRASを含む3つのヒトRAS遺伝子がある。各々の遺伝子は、それらのmRNA転写物の3’UTRに複数のmiRNA相補性部位を含む。具体的には、各々のヒトRAS遺伝子は、複数のlet−7相補性部位(LCS)を含む。
【0030】
重要なことに、KRASは、腫瘍サプレッサー遺伝子、癌原遺伝子または癌遺伝子として機能し得る。KRASの3’UTR中のSNPは、野性型miRNAの結合有効性の増大または低下をもたらし得る。LCS6(下の配列番号3および4に示される)に生じるSNPは、let−7ファミリーのmiRNAの結合を改変する。本発明の一態様では、KRASは癌原遺伝子または癌遺伝子として作用し、LCS6 SNPは少なくとも1つのmiRNAの結合有効性を低下し、癌遺伝子の発現が増加され、LCS6 SNPは細胞増殖疾患のマーカーである。本発明の別の態様では、KRASは腫瘍サプレッサー遺伝子として作用し、LCS6 SNPは、少なくとも1つのmiRNAの結合有効性を増大し、腫瘍サプレッサー遺伝子の発現が抑制され、LCS6 SNPは細胞増殖性疾患のマーカーである。
【0031】
ヒトKRAS、転写物変異体aは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_ 033360および配列番号1)によってコードされる(非翻訳領域は太字であり、LCS6は下線を付しており、本明細書に示される全ての配列は5’から3’である):
【0032】
【化1】

【0033】
【化2】

ヒトKRAS、転写物変異体bは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM 004985および配列番号2)によってコードされる(非翻訳領域は太字であり、LCS6は下線を付している):
【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

ヒトKRAS、転写物変異体aは、LCS6 SNPを含み、以下のmRNA配列(配列番号3)によってコードされる(非翻訳領域は太字であり、LCS6は下線を付しており、SNPは大文字である):
【0036】
【化5】

【0037】
【化6】

【0038】
【化7】

ヒトKRAS、転写物変異体bは、LCS6 SNPを含み、以下のmRNA配列(配列番号4)によってコードされる(非翻訳領域は太字であり、LCS6は下線を付しており、SNPは大文字である):
【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

改変されたオリゴヌクレオチド
本明細書において用いる場合、「let−7相補性部位」という用語は、miRNAのlet−7ファミリーのメンバーに結合する遺伝子または遺伝子転写物の任意の領域を記載するという意味である。さらに、この用語は、let−7ファミリーのmiRNAの配列に相補性である遺伝子または遺伝子転写物内の配列を含む。
【0041】
ヒトKRAS 3’ UTRは、それぞれ、LCS1からLCS8と命名された8つのLCSを含む。以下の配列についてはチミン(T)でウラシル(U)を置き換えてもよい。LCS1は配列GACAGUGGAAGUUUUUUUUUCCUCG(配列番号5)を含む。LCS2は配列AUUAGUGUCAUCUUGCCUC(配列番号6)を含む。LCS3は配列AAUGCCCUACAUCUUAUUUUCCUCA(配列番号7)を含む。LCS4は配列GGUUCAAGCGAUUCUCGUGCCUCG(配列番号8)を含む。LCS5は配列GGCUGGUCCGAACUCCUGACCUCA(配列番号9)を含む。LCS6は配列GAUUCACCCACCUUGGCCUCA(配列番号10)を含む。LCS7は配列GGGUGUUAAGACUUGACACAGUACCUCG(配列番号11)を含む。LCS8は配列AGUGCUUAUGAGGGGAUAUUUAGGCCUC(配列番号12)を含む。
【0042】
本発明は、配列GAUGCACCCACCUUGGCCUCA(強調のためにSNPを太字)(配列番号13)によって規定されるLCS6 SNPに結合する改変されたオリゴを含む組成物を提供する。好ましい実施形態では、改変されたオリゴはlet−7b由来である。前述の配列については、チミン(T)でウラシル(U)を置き換えてもよい。
【0043】
本発明は、野性型let−7ファミリーのmiRNAに由来する改変されたオリゴを含む組成物を提供する。例示的なlet−7のmiRNAとしては限定するものではないが、let−7a、let−7b、let−7c、let−7d、let−7e、let−7f、let−7g、let−7h、およびlet−7iが挙げられる。以下の配列については、チミン(T)でウラシル(U)を置き換えてもよい。let−7aは配列UUGAUAUGUUGGAUGAUGGAGU(配列番号14)を含む。let−7bは配列UUGGUGUGUUGGAUGAUGGAGU(配列番号15)を含む。let−7cは配列UUGGUAUGUUGGAUGAUGGAGU(配列番号16)を含む。let−7dは配列UGAUACGUUGGAUGAUGGAGA(配列番号17)を含む。let−7eは配列UAUAUGUUGGAGGAUGGAGU(配列番号18)を含む。let−7fは配列UUGAUAUGUUAGAUGAUGGAGU(配列番号19)を含む。let−7gは配列GACAUGUUUGAUGAUGGAGU(配列番号20)を含む。let−7iは配列UGUCGUGUUUGUUGAUGGAGU(配列番号21)を含む。
【0044】
本発明は、改変されたオリゴ分子を含む単離された核酸および組成物を提供し、オリゴ分子としては限定するものではないが、配列
【0045】
【化10】

(位置20の変異核酸残基は太字)(配列番号22)によって規定される好ましい改変されたオリゴが挙げられる。前述の配列については、チミン(T)でウラシル(U)を置き換えてもよい。
【0046】
単離された核酸分子
本発明は、推定上のmiRNA結合部位を含む配列に結合する単離された核酸分子、例えば、改変されたオリゴヌクレオチド(本明細書では「オリゴ」と呼ばれる)を提供する。これらのmiRNA結合部位は、1つ以上の変異を含む。本発明の特定の態様では、これらの変異はSNPである。1つ以上のSNPを含んでいる例示的な単離された核酸分子としては、限定するものではないが、配列番号3、4および13の核酸分子が挙げられる。本明細書に開示される1つ以上のSNPを含む単離された核酸分子は、「SNP含有核酸分子」として本明細書全体を通じて交換可能に呼ばれ得る。本発明の一態様では、単離された核酸分子である改変されたオリゴを、SNP含有核酸分子に結合するように操作する。本発明の他の態様では、単離された核酸分子、例えば、改変されたオリゴは、1つ以上の挿入、欠失、逆位、フレームシフト、転位、組み換えまたは置換を含む配列に結合する。
【0047】
本発明の単離された核酸分子は、一本鎖および二本鎖のリボ核酸(RNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)分子、ならびにその全ての当該分野で認識されるアナログ、誘導体またはハイブリッド分子を含む。本発明の単離された核酸分子としてはまた、単離された全長遺伝子、転写物、cDNA分子、プライマー、ベクター、プラスミド、内因性または天然に存在するmiRNA、およびそれらのフラグメントなどの、改変されたオリゴを合成するための試薬が挙げられる。
【0048】
本明細書において用いる場合、「単離された核酸分子」とは一般に、miRNA結合部位またはmiRNA相補性部位に結合する核酸分子である。本発明の単離された核酸分子は、少なくとも1つの内因性および/または天然に存在するmiRNAの結合有効性を変更または改変する1つ以上の変異を含む配列に結合するように操作され、核酸分子の天然の供給源に存在するほとんどの他の核酸から分離される。さらに、「単離された」核酸分子は実質的に、組み換え技術によって産生された場合、他の細胞物質もまたは培養培地も含まないことが可能で、化学的に合成される場合、化学的前駆体または他の化学物質を含まないことが可能である。核酸分子は、他のコード配列または調節配列に融合されてもよく、かつやはり「単離された」とみなされる。動物において天然に存在しない、非ヒトトランスジェニック動物に存在する核酸分子もまた、「単離された」とみなされる。例えば、ベクターに含まれる組み換え核酸分子は、「単離された」とみなされる。「単離された」核酸分子のさらなる例としては、異種宿主細胞で維持される組み換えのDNAまたはRNA分子、および溶液中の(部分的にまたは実質的に)精製されたDNAまたはRNAの分子が挙げられる。単離されたRNA分子としては、本発明の単離された核酸分子のインビボまたはインビトロのRNA転写物が挙げられる。さらに、単離されたRNA分子としては、限定するものではないが、メッセンジャーRNA(mRNA)、干渉性RNA(RNAi)、低分子干渉性RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、およびマイクロRNA(miRNA)が挙げられる。本発明による単離された核酸分子としてはさらに、合成的に産生されたこのような分子が挙げられる。
【0049】
一般には、単離された核酸分子は、1つ以上の変異体を含むmiRNA結合部位に結合するように操作された1つ以上の配列を、改変されたオリゴ配列のいずれかの側の隣接するヌクレオチド配列とともに含む。隣接する配列は、標的されたmiRNA結合部位および/または異種ヌクレオチド配列と天然に会合しているヌクレオチド残基を含み得る。好ましくは、隣接する配列は、改変されたオリゴ配列のいずれかの側の最大約500、300、100、60、50、30、25、20、15、10、8、または4ヌクレオチド(またはその間の任意の他の長さ)、またはできるだけ長い全長遺伝子、全体のコード配列もしくは非コード配列(またはその任意の部分、例えば、エキソン、イントロン、または5’もしくは3’非翻訳領域)である。
【0050】
本発明の単離された核酸分子は、ウイルス(またはその任意の一部もしくはフラグメント)、リポソーム、脂質、抗体、細胞内抗体、タンパク質、レセプター、リガンド、細胞毒性化合物、放射性同位体、毒素、化学療法剤、塩、エステル、プロドラッグ、ポリマー、ヒドロゲル、マイクロカプセル、ナノカプセル、マイクロスフェア、シクロデキストリン、プラスミド、発現ベクター、タンパク質性ベクター、検出可能な標識(例えば、蛍光、放射活性、磁気、常磁性などの標識)、抗原、希釈剤、賦形剤、アジュバント、乳化剤、緩衝液、安定化剤または防腐剤と会合されるか、結合されるか、コンジュゲートされるか、連結されるか、または組み合わされる。
【0051】
本明細書において用いる場合、「フラグメント」という用語は、由来する単離された核酸分子よりも短い、単離された核酸分子を記述することを意味する。本発明の単離された核酸分子のフラグメントは、由来する単離された核酸分子の任意の一部を含むか、またはそれからなるかまたはそれらを含む。フラグメントは代表的には、連続するヌクレオチド配列、少なくとも約8個以上のヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも約10個以上のヌクレオチド、およびさらに好ましくは少なくとも約16個以上のヌクレオチドを含む。さらに、フラグメントは、少なくとも約18、20、21、22、25、30、40、50、60、100、250または500個(またはその間の任意の他の数)のヌクレオチド長を含んでもよい。フラグメントの長さは、その意図される用途に基づく。次いで、標識されるプローブを用いて、例えば、cDNAライブラリー、ゲノムDNAライブラリー、またはmRNAをスクリーニングして、目的の領域に対応する核酸を単離してもよい。さらに、プライマーを増幅反応において、例えば、1つ以上のmiRNA結合部位をアッセイする目的のため、または遺伝子の特異的な領域をクローニングするために用いてもよい。
【0052】
本発明の単離された核酸分子はさらに、核酸サンプル中で目的のポリヌクレオチドのコピー数を増大するために用いられる種々の核酸増幅方法のうち、任意の1つの産物である改変されるかまたは合成のオリゴを含む。このような増幅方法は、当該分野で周知であり、それらの方法としては、限定するものではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許第4,683,195号;および同第4,683,202号;PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,編集.H.A.Erlich,Freeman Press,NY,N.Y.,1992)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace,Genomics 4:560,1989;Landegrenら、Science 241:1077,1988)、鎖置換増幅(SDA)(米国特許第5,270,184号;および同第5,422,252号)、転写媒介増幅(TMA)(米国特許第5,399,491号)、連結直鎖増幅法(LLA)(米国特許第6,027,923号)など、ならびに等温増幅方法、例えば、核酸配列系増幅NASBA)、および自己維持配列複製(Guatelliら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874,1990)が挙げられる。このような方法論に基づいて、当業者は本明細書で開示されるSNPに対して5’および3’の任意の適切な領域で容易にプライマーを設計できる。
【0053】
本明細書において用いる場合、本発明の「増幅されたポリヌクレオチド」とは、試験サンプル中の出発量と比較して、インビトロで行った任意の核酸増幅方法によって少なくとも2倍までその量が増大された、単離された核酸分子である。他の好ましい実施形態では、増幅されたポリヌクレオチドとは、試験サンプル中のその出発量と比較して、少なくとも10倍、50倍、100倍、1000倍、またはさらに10000倍増大という結果である。代表的なPCR増幅では、目的のポリヌクレオチドは、増幅されないゲノムDNAよりも量が少なくとも50000万倍増幅する場合が多いが、アッセイに必要な増幅の正確な量は、用いられるその後の検出方法の感度に依存する。
【0054】
一般には、増幅されたポリヌクレオチドは、少なくとも約10ヌクレオチド長である。さらに代表的には、増幅されたポリヌクレオチドは少なくとも約16ヌクレオチド長である。本発明の好ましい実施形態では、増幅されたポリヌクレオチドは、少なくとも約2025ヌクレオチド長である。本発明のさらに好ましい実施形態では、増幅されたポリヌクレオチドは少なくとも約21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、または60ヌクレオチド長である。本発明のさらに別の好ましい実施形態では、増幅されたポリヌクレオチドは少なくとも約100、200、または300ヌクレオチド長である。本発明の増幅されたポリヌクレオチドの総長は、エキソン、イントロン、5’UTR、3’UTR、または目的の変更されたmiRNA結合部位が残る遺伝子全体と同じくらい長くてもよいが、増幅された産物は典型的には、約1,000ヌクレオチド長以下である(ただし、特定の増幅方法は、1000ヌクレオチド長より大きい増幅産物を生じる場合がある)。さらに好ましくは、増幅されたポリヌクレオチドは約600ヌクレオチド長以下である。
【0055】
本発明の特定の実施形態では、増幅された産物は、少なくとも約24ヌクレオチド長であり、かつSNP含有let−7相補性部位(LCS)に結合する。特定の実施形態では、増幅された産物は、少なくとも約24ヌクレオチド長であり、かつ配列番号22を含む。このような産物は、その5’末端もしくは3’末端またはその両方に追加の配列を有してもよい。
【0056】
本発明は、変異されるかまたは変更されたmiRNA結合部位および/またはそのフラグメントに結合する1つ以上のポリヌクレオチド配列を含むか、それからなるか、または本質的にそれらからなる、単離された核酸分子を提供する。
【0057】
従って、本発明は、配列番号22〜36のヌクレオチド配列からなる核酸分子を提供する。核酸分子は、ヌクレオチド配列がその核酸分子の完全なヌクレオチド配列である場合、このヌクレオチド配列からなる。
【0058】
本発明はさらに、本質的に配列番号22〜36のヌクレオチド配列からなる核酸分子を提供する。核酸分子は本質的に、ヌクレオチド配列が最終核酸分子中にわずか2〜3個の追加のヌクレオチド残基とともに存在する場合、本質的にこのようなヌクレオチド配列からなる。
【0059】
本発明はさらに、配列番号22〜36のヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。核酸分子は、ヌクレオチド配列が核酸分子の最終のヌクレオチド配列の少なくとも一部である場合、このヌクレオチド配列を含む。このような方式では、核酸分子は、単にヌクレオチド配列であってもよいし、または追加のヌクレオチド残基、例えば、天然にそれと会合している残基または異種ヌクレオチド配列を有してもよい。このような核酸分子は、1から数個の追加のヌクレオチドを有してもよいし、またはさらに多くの追加のヌクレオチドを含んでもよい。これらの核酸分子の種々のタイプを容易に作製しかつ単離できる方法の簡易な説明は、下に示しており、かつこのような技術は当業者に周知である(SambrookおよびRussell,2000,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,NY)。
【0060】
単離された核酸分子としては限定するものではないが、ペプチド単独をコードする配列、成熟ペプチドをコードする配列、および追加のコード配列、例えば、リーダー配列または分泌配列(例えば、プレ−プロ配列またはプロ−タンパク質配列)、追加のコード配列を有する、または有さない成熟ペプチドをコードする配列、それに加えて追加の非コード配列、例えば、イントロンならびに非コード5’および3’配列、例えば、転写、mRNAプロセシング(スプライシングおよびポリアデニル化シグナルを含む)、リボソーム結合および/またはmRNAの安定性においてある役割を果たす、転写されるが翻訳されない配列などの配列を有する核酸分子が挙げられる。さらに、核酸分子は、例えば、精製を容易にするペプチドをコードする異種マーカー配列に融合されてもよい。
【0061】
単離された核酸分子は、mRNAなどのRNA型であっても、またはcDNAおよびゲノムDNAを含むDNA型であってもよく、これらは、例えば、分子クローニングによって得てもよいし、または化学合成技術によって生成してもよいし、またはそれらの組み合わせによってもよい(Sambrook and Russell,2000,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,NY)。さらに、単離された核酸分子はまた部分的にまたは完全に、ペプチド核酸(PNA)などの1つ以上のタイプの核酸アナログの形態であってもよい(米国特許第5,539,082号;同第5,527,675号;同第5,623,049号;同第5,714,331号)。核酸、特にDNAは、二本鎖であってもまたは一本鎖であってもよい。一本鎖核酸は、コード鎖(センス鎖)であっても、または相補性非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。DNA、RNA、またはPNAのセグメントは、例えば、ヒトゲノムのフラグメント(DNAまたはRNAの場合)もしくは単一ヌクレオチド、短いオリゴヌクレオチドリンカーから、または一連のオリゴヌクレオチドからアセンブルして、合成の核酸分子を得てもよい。核酸分子は、参照として本明細書に提供される配列を用いて容易に合成できる;オリゴヌクレオチドおよびPNAオリゴマー合成技術は当該分野で周知である(例えば、Corey,「Peptide nucleic acids:expanding the scope of nucleic acid recognition」,Trends Biotechnol.1997 June;15(6):224〜9,およびHyrupら、「Peptide nucleic acid(PNA):synthesis,properties and potential applications」,Bioorg Med Chem. 1996 January;4(1):5〜23を参照のこと)。さらに、大規模自動化オリゴヌクレオチド/PNA合成(アレイまたはビーズ表面または他の固体支持体上の合成を含む)は、市販の核酸シンセサイザー、例えばApplied Biosystems(Foster City,Calif.)3900 High−Throughput DNA Synthesizer or Expedite 8909 Nucleic Acid Synthesis System、および本明細書に提供される配列情報を用いて容易に達成できる。
【0062】
本発明は、当該分野で公知の、改変された、合成のもしくは天然に存在するヌクレオチド、または構造的エレメントまたは他の代替的な/改変された核酸化学を含む核酸アナログを含む。このような核酸アナログは例えば、検出試薬(例えば、プライマー/プローブ)として有用である。さらに、これらのアナログを含むキット/システム(例えば、ビーズ、アレイなど)もまた、本発明によって包含される。例えば、本発明のポリマー配列に基づくPNAオリゴマーが具体的には意図される。PNAオリゴマーは、リン酸骨格がペプチド様骨格で置き換えられているDNAのアナログである(Lagriffoulら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,4:1081〜1082(1994),Petersenら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,6:793〜796(1996)、Kumarら、Organic Letters 3(9):1269〜1272(2001),WO96/04000)。PNAは相補的なRNAまたはDNAに対して、従来のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドアナログよりも高い親和性および特異性でハイブリダイズする。PNAの特性は、伝統的なオリゴヌクレオチドおよびペプチドでは達成できない新規な分子生物学および生化学的な適用を可能にする。
【0063】
「改変されるかまたは合成のオリゴヌクレオチド(オリゴ)分子」という用語は、天然に存在するRNAまたはDNAのみを含む分子に限定されるのではなく、化学的に修飾されたヌクレオチドおよび非ヌクレオチドも含む。
【0064】
特定の実施形態では、改変されたオリゴ分子は、2’−ヒドロキシ(2’−OH)含有ヌクレオチドを欠く。特定の実施形態では、改変されたオリゴは、遺伝子サイレンシングを媒介するための2’−ヒドロキシ基を有するヌクレオチドの存在を必要とせず、そのようなものとして、単離された核酸分子、例えば、改変されたオリゴは、必要に応じて、なんらリボヌクレオチド(例えば、2’−OH基を有するヌクレオチド)を含まない。しかし、遺伝子サイレンシングを支持するためのオリゴ分子内のリボヌクレオチドの存在を必要としないこのようなオリゴ分子は、結合されたリンカー(単数または複数)または他の結合されるかもしくは会合された基、部分もしくは鎖(2’OH基を有する1つ以上のヌクレオチドを含む)を有してもよい。必要に応じて、miRNA分子は、ヌクレオチド位置の約5、10、20、30、40または50%でリボヌクレオチドを含み得る。
【0065】
本明細書において用いる場合、「改変されたオリゴ」という用語は、配列特異的遺伝子サイレンシングまたは干渉を媒介し得る核酸分子、例えば、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉性RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、干渉性RNA(RNAi)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉性オリゴヌクレオチド、低分子干渉性核酸、低分子干渉性の改変されたオリゴヌクレオチド、化学的に修飾されたsiRNA、転写後遺伝子サイレンシングRNA(ptgsRNA)、および他の当該分野で認識される等価物を記載するために用いられる他の用語と等価であることを意味する。本明細書において用いる場合、「遺伝子サイレンシング」という用語は、遺伝子、転写物および/またはポリペプチド産物の発現の下方制御、ノックダウン、分解、阻害、抑制(suppression)、抑止(repression)、防止(prevention)または低下を記述することを意味する。遺伝子サイレンシングおよび干渉はまた、mRNA転写物のポリペプチドへの翻訳の防止を記述する。翻訳は、mRNA転写物を分解すること、またはmRNA翻訳をブロックすることによって防止、阻害または低減される。
【0066】
他の実施形態では、改変されたオリゴ分子、またはその前駆体は、別々のセンス配列およびアンチセンス配列または領域(このセンスおよびアンチセンス領域がヌクレオチドもしくは非ヌクレオチドリンカー分子によって共有結合されるか、またはイオン相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用および/もしくはスタッキング相互作用によって非共有結合的に連結される)を含んでもよい。
【0067】
本明細書において用いる場合、「アンチセンスRNA」という用語は、標的遺伝子mRNAに相補的な配列を有するRNA鎖であり、標的遺伝子mRNAに結合することによって遺伝子のサイレンシングまたは干渉を誘発すると考えられる。本明細書において用いる場合、「センスRNA」という用語は、アンチセンスRNAに相補的であって、その相補的なアンチセンスRNAにアニーリングされた場合、siRNAを形成する配列を有する。アンチセンスおよびセンスのRNAはRNAシンセサイザーを用いて都合よく合成される。
【0068】
改変されたオリゴは、ここで一方の鎖はセンス鎖であり、他方の鎖はアンチセンス鎖であり、アンチセンス鎖およびセンス鎖は自己相補的である(すなわち、各々の鎖は、他方の鎖のヌクレオチド配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む;例えば、アンチセンス鎖およびセンス鎖が二重鎖または二本鎖の構造を形成する場合、例えば、二本鎖領域が約1、2、5、10、15もしくは19塩基対、またはその間の任意の値である場合)、2つの別のオリゴヌクレオチドからアセンブルされる。アンチセンス鎖は、標的核酸分子またはその一部におけるヌクレオチド配列に相補的であるヌクレオチド配列を含んでもよく、センス鎖は、標的核酸配列またはその一部に対応するヌクレオチド配列を含んでもよい。あるいは、改変されたオリゴは、単一のオリゴヌクレオチドからアセンブルされてもよく、ここでオリゴの自己相補的なセンス領域およびアンチセンス領域は核酸系または非核酸系リンカー(単数または複数)によって連結されている。改変されたオリゴは、アンチセンス鎖に相当する単一のオリゴヌクレオチドとしてアセンブルされる。
【0069】
特定の実施形態では、本発明の方法および組成物による細胞内送達のために操作された改変されたオリゴは、自己相補的なセンス領域およびアンチセンス領域を有する、二重、非対称二重鎖、ヘアピンまたは非対照ヘアピン二次構造を有するポリヌクレオチドを包含し、ここでアンチセンス領域は、別々の標的核酸分子またはその一部の中のヌクレオチド配列に相補的であるヌクレオチド配列を含み、センス領域は、標的核酸配列またはその一部に対応するヌクレオチド配列を含む。
【0070】
改変されたオリゴ中で作製される化学的修飾の非限定的な例としては限定するものではないが、ホスホロチオエートヌクレオチド連鎖、2’−デオキシリボヌクレオチド、2’−O−メチルリボヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、「非環式」ヌクレオチド、5−C−メチルヌクレオチド、および末端グリセリルおよび/または反転デオキシ脱塩基残基の組み込みが挙げられる。これらの化学修飾は、改変されたオリゴで用いられる場合、細胞中のサイレンシングまたは干渉活性を保存するが、同時に、これらの化合物の血清安定性を劇的に増大する。
【0071】
非限定的な実施例では、核酸分子への化学的に修飾されたヌクレオチドの導入は、外因的に送達される天然のRNA分子に固有のインビボ安定性およびバイオアベイラビリティの潜在的な限界を克服する強力なツールを提供する。例えば、化学的に修飾された核酸分子の使用によって、所定の治療効果について特定の核酸分子がさらに低用量で可能になる。なぜなら化学的に修飾された核酸分子は、血清中でより長い半減期を有する傾向であるからである。さらに、特定の化学的修飾は、特定の細胞もしくは組織を標的すること、および/または核酸分子の細胞取り込みを改善することによって核酸分子のバイオアベイラビリティを改善し得る。従って、化学的に修飾された核酸分子の活性が天然の核酸分子と比較して、例えば、全RNA核酸分子に比較した場合、低下される場合でさえ、修飾された核酸分子の全体的活性は、その分子の安定性および/または送達の改善に起因して天然の分子の活性よりも大きい場合がある。天然の未修飾のオリゴとは異なり、化学的に改変されたオリゴはまた、ヒトにおいてインターフェロン活性を活性化する能力を最小限にし得る。
【0072】
本発明の改変されたオリゴ分子のアンチセンス領域は、アンチセンス領域の3’末端でホスホロチオエートヌクレオチド連鎖を含んでもよい。本明細書に記載される改変されたオリゴ分子の任意の実施形態では、アンチセンス領域は、アンチセンス領域の5’末端でおよそ1〜約5つのホスホロチオエートヌクレオチド連鎖を含んでもよい。本明細書に記載される改変されたオリゴ分子の任意の実施形態では、本開示の改変されたオリゴ分子の3’末端ヌクレオチドのオーバーハングは、核酸の糖、塩基または骨格で化学的に修飾されているリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含んでもよい。本明細書に記載される改変されたオリゴ分子の任意の実施形態では、3’−末端ヌクレオチドオーバーハングは、1つ以上のユニバーサル塩基リボヌクレオチドを含んでもよい。本明細書に記載される改変されたオリゴ分子の任意の実施形態では、3’−末端のヌクレオチドオーバーハングは1つ以上の非環式ヌクレオチドを含んでもよい。
【0073】
例えば、非限定的な実施例では、化学的に修飾された改変されたオリゴは、1つの変異miRNA鎖の中に、約1、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上のホスホロチオエートヌクレオチド連鎖を有してもよい。さらに別の実施形態では、化学的に修飾された改変されたオリゴは個々に、約1、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上のホスホロチオエートヌクレオチド連鎖を、両方の変異miRNA鎖中に有してもよい。ホスホロチオエートヌクレオチド連鎖は、改変されたオリゴ二重鎖の1つまたは両方のオリゴヌクレオチド鎖に存在してもよく、例えば、センス鎖、アンチセンス鎖またはその両方の鎖に存在してもよい。本発明の改変されたオリゴ分子は、センス鎖、アンチセンス鎖またはその両方の鎖の3’末端、5’末端もしくは3’末端および5’末端の両方に1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド連鎖を含んでもよい。例示的な改変されたオリゴ分子は、センス鎖、アンチセンス鎖またはその両方の鎖の5’末端におよそ1〜約5つ以上(例えば、約1、2、3、4、5またはそれ以上)連続するホスホロチオエートヌクレオチド連鎖を含んでもよい。別の非限定的な実施例では、本発明の改変されたオリゴ分子は、センス鎖、アンチセンス鎖またはその両方に1つ以上の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の)ピリミジンホスホロチオエートヌクレオチド連鎖を含んでもよい。さらに別の例示的な実施例では、本発明の改変されたオリゴ分子はセンス鎖、アンチセンス鎖またはその両方の鎖に1つ以上の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の)プリンホスホロチオエートヌクレオチド連鎖を含んでもよい。
【0074】
改変されたオリゴ分子は、環状の核酸分子から構成されてもよく、ここで改変されたオリゴは、約18〜約23(例えば、約18、19、20、21、22、または23)塩基対を有する、約38〜約70(例えば、約38、40、45、50、55、60、65、または70)ヌクレオチド長であり、ここで環状オリゴヌクレオチドは、約19塩基対および2つのループを有するダンベル形状の構造を形成する。
【0075】
環状の改変されたオリゴ分子は、2つのループモチーフを含み、ここで改変されたオリゴ分子の一方または両方のループ部分は生分解性である。例えば、本開示の環状の改変されたオリゴ分子は、インビボの改変されたオリゴ分子のループ部分の分解が約2ヌクレオチドを含む3’末端ヌクレオチドオーバーハングなどの3’末端オーバーハングを有する二本鎖改変オリゴヌクレオチド分子を精製できるように設計される。
【0076】
改変されたオリゴ分子中に、好ましくは改変されたオリゴのアンチセンス鎖中に、ただしまた必要に応じて、センス鎖ならびに/またはアンチセンスおよびセンス鎖の両方の中に存在する改変されたヌクレオチドは、天然に存在するリボヌクレオチドと類似の特性または特徴を有する改変されたヌクレオチドを含む。例えば、本発明は、ノーザン高次構造(例えば、ノーザンシュードローテーションサイクル(northern pseudorotation cycle)、例えば、Saenger,Principles of Nucleic Acid Structure,Springer−Verlag 編集,1984を参照のこと)を有する改変されたヌクレオチドを含む改変されたオリゴ分子を提供する。そのようなものとして、本発明の改変されたオリゴ中に、好ましくは本発明の改変されたオリゴ分子のアンチセンス鎖中に、ただしまた、必要に応じて、センスならびに/またはアンチセンスおよびセンス鎖の両方に存在する、化学的に修飾されたヌクレオチドは、ヌクレアーゼ分解に耐性であるが、同時にサイレンシングまたは干渉を媒介する能力を維持する。ノーザン高次構造を有するヌクレオチドの非限定的な例としては、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド(例えば、2’−O,4’−C−メチレン−(D−リボフラノシル)ヌクレオチド);2’−メトキシエトキシ(MOE)ヌクレオチド;2’−メチル−チオ−エチル、2’−デオキシ−2’−フルオロヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−クロロヌクレオチド、2’−アジドヌクレオチド、および2’−O−メチルヌクレオチドが挙げられる。
【0077】
二本鎖の改変されたオリゴ分子のセンス鎖は、センス鎖の3’末端、5’末端、または3’および5’末端の両方で逆位のデオキシ塩基性部分などの末端キャップ部分を有してもよい。
【0078】
改変されたオリゴはさらに、改変されたオリゴのアンチセンス領域に、改変されたオリゴのセンス領域を結合する、ヌクレオチド、非ヌクレオチド、または混合ヌクレオチド/非ヌクレオチドリンカーから構成される。一実施形態では、ヌクレオチドリンカーは、2ヌクレオチド長を超える、例えば、約3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチド長のリンカーであってもよい。別の実施形態では、ヌクレオチドリンカーは、核酸アプタマーであってもよい。「アプタマー」または「核酸アプタマー」とは本明細書において用いる場合、標的分子に特異的に結合する核酸分子であって、その核酸分子が標的分子によって認識される配列をその天然の設定で含む配列を有する核酸分子を意味する。あるいは、アプタマーとは、標的分子に結合する核酸分子であって、その標的分子が核酸に天然に結合しない核酸分子であってもよい。標的分子は、目的の任意の分子であってもよい。例えば、アプタマーを用いて、タンパク質のリガンド結合ドメインに結合してもよく、それによって天然に存在するリガンドとタンパク質との相互作用を妨げる。これは非限定的な例であって、当業者は、他の実施形態が当該分野で一般に公知の技術を用いて容易に行うことができることを理解する(例えば、Goldら、Annu.Rev.Biochem.64:763,1995;BrodyおよびGold,J.Biotechnol 74:5,2000;Sun,Curr.Opin.Mol.Ther.2:100,2000;Kusser,J.Biotechnol.74:27,2000;HermannおよびPatel,Science 287:820,2000;ならびにJayasena,Clinical Chemistry 45:1628,1999を参照のこと)。
【0079】
非ヌクレオチドリンカーは、無塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、脂質、ポリヒドロカーボン、または他のポリマー化合物(例えば、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチエングリコール、例えば、2〜100個のエチレングリコール単位を有するもの)から構成されてもよい。特定の例としては、SeelaおよびKaiser,Nucleic Acids Res.18:6353,1990、ならびにNucleic Acids Res.15:3113,1987;CloadおよびSchepartz,J.Am.Chem.Soc.113:6324,1991;RichardsonおよびSchepartz,J.Am.Chem.Soc.113:5109,1991;Maら、Nucleic Acids Res.21:2585,1993、ならびにBiochemistry 32:1751,1993;Durandら、Nucleic Acids Res.18:6353,1990;McCurdyら、Nucleosides & Nucleotides 10:287,1991;Jschkeら、Tetrahedron Lett.34:301,1993;Onoら、Biochemistry 30:9914(1991);Arnoldら、国際公開番号WO 89/02439;Usmanら、国際公開番号WO 95/06731;Dudyczら、国際公開番号WO 95/11910、ならびにFerentzおよびVerdine,J.Am.Chem.Soc.113:4000,1991に記載されるものが挙げられる。「非ヌクレオチド」はさらに、糖および/またはリン酸置換基のいずれかを含む1つ以上のヌクレオチド単位にかわって核酸鎖に組み込まれてもよく、かつ残りの塩基がそれらの酵素活性を呈することを可能にする任意の基または化合物を意味する。その基または化合物は、例えば、糖のCl部位で、アデノシン、グアニン、シトシン、ウラシルまたはチミジンなどの一般に認識されるヌクレオチド塩基を含まないという点で無塩基であってもよい。
【0080】
核酸の結合特性および/または安定性を改善する核酸修飾の追加の例としては、塩基アナログ、例えば、イノシン、インターカレーター(米国特許第4,835,263号)およびマイナーグルーブバインダー(米国特許第5,801,115号)の使用が挙げられる。従って、核酸分子に対する本明細書の言及は、PNAオリゴマーおよび他の核酸アナログが挙げられる。当該分野で公知の核酸アナログおよび代替的な/修飾された核酸化学の他の例は、Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry,John Wiley & Sons,N.Y.(2002)に記載されている。本発明の単離された核酸は、塩基アナログ、例としては、限定するものではないが、DNAおよびRNAの任意の公知の塩基アナログ、例えば、限定するものではないが、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N−6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン,2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシ−アミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、2,6−ジアミノプリン、および2’−修飾されたアナログ、例えば、限定するものではないがO−メチル、アミノ−、およびフルオロ−修飾されたアナログから構成される。
【0081】
本発明の改変されるかまたは合成のオリゴおよび組成物は、ヌクレアーゼ耐性の基、例えば、2’−アミノ、2’−Cアリル(Callyl)、2’−フルオロ、2’−O−メチル、および2’−Hでの改変によって安定性を向上するように改変される(概説については、UsmanおよびCedergren,TIBS 17:34,1992;Usmanら、Nucleic Acids Symp.Ser.31:163,1994を参照のこと)。改変されたオリゴおよび組成物はを、一般的な方法を用いてゲル電気泳動によって精製するか、または高圧液体クロマトグラフィーによって精製して、水に再懸濁してもよい。
【0082】
修飾(塩基、糖、および/またはリン酸塩)を有する核酸分子の化学的合成は、血清リボウヌクレアーゼによる分解を防ぎ、これがその力価を増大する。例えば、Ecksteinら、国際公開番号WO 92/07065;Perraultら、Nature 344:565,1990;Piekenら、Science 253:314,1991;UsmanおよびCedergren,Trends in Biochem.Sci.17:334,1992;Usmanら、国際公開番号WO 93/15187;およびRossiら、国際公開番号WO 91/03162;Sproat,米国特許第5,334,711号;Goldら、米国特許第6,300,074を参照のこと。上記の引用文献は全て、本明細書に記載される単離された核酸分子の塩基、リン酸塩および/または糖部分に対してなされる種々の化学修飾を記載する。
【0083】
本発明の単離された核酸分子へ導入され、そのヌクレアーゼ安定性および有効性が有意に増強している、糖、塩基およびリン酸塩修飾を記述する実施例が当該分野にはいくつか存在する。例えば、オリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ耐性の基、例えば、T−アミノ、2’−C−アリル、2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−H、ヌクレオチド塩基修飾での修飾によって安定性を向上および/または生物学的活性を増強するように修飾される。概説については、UsmanおよびCedergren,TIBS 17:34,1992;Usmanら、Nucleic Acids Symp.Ser.31:163,1994;Burginら、Biochemistry 35:14090,1996を参照のこと。核酸分子の糖修飾は、当該分野で広範に記載されている。Ecksteinら、国際公開番号WO 92/07065;Perraultら、Nature 344:565〜568,1990;Piekenら、Science 253:314〜317,1991;UsmanおよびCedergren,Trends in Biochem.Sci.17:334〜339,1992;Usmanら、国際公開番号WO 93/15187;Sproat,米国特許第5,334,711号およびBeigelmanら、J.Biol.Chem.270:25702,1995;Beigelmanら、国際公開番号WO 97/26270;Beigelmanら、米国特許第5,716,824号;Usmanら、米国特許第5,627,053号;Woolfら、国際公開番号WO 98/13526;Thompsonら、Karpeiskyら、Tetrahedron Lett.39:1131,1998;EarnshawおよびGait,Biopolymers(Nucleic Acid Sciences)48:39〜55,1998;VermaおよびEckstein,Annu.Rev.Biochem.67:99〜134,1998;ならびにBurlinaら、Bioorg.Med.Chem.5:1999〜2010,1997を参照のこと。このような刊行物は、調節触媒なしの、核酸分子への糖、塩基および/またはリン酸塩などの組み込みの位置を決定するための一般的な方法およびストラテジーを記載する。このような技術を考慮して、改変されたオリゴが細胞中で遺伝子サイレンシングを促進する能力が有意に阻害されない限り、本明細書に記載されたのと同様の修飾を用いて、本発明のオリゴヌクレオチド分子を修飾する。
【0084】
ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、および/または5’−メチルホスホネート連鎖を有するオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間結合の化学的修飾は安定性を改善するが、過度の修飾は、なんらかの毒性または活性の低下を生じ得る。従って、本発明の単離された核酸分子を操作する場合、これらのヌクレオチド連鎖の量は最小化される。これらの連鎖の濃度の低下は毒性を下げ、結果としてこれらの分子の有効性の増大を生じ、特異性を高くする。
【0085】
一実施形態では、本発明は、改変されるかまたは合成のオリゴ分子であって、1つ以上のホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、モルホリノ、アミデート カルバメート、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファミン酸塩、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、および/またはアルキルシリル、置換基を含むリン酸骨格修飾を有する分子を提供する。オリゴヌクレオチド骨格修飾の概説については、HunzikerおよびLeumann,「Nucleic Acid Analogues:Synthesis and Properties,in Modern Synthetic Methods,」VCH,331〜417,1995,およびMesmaekerら、「Novel Backbone Replacements for Oligonucleotides、in Carbohydrate Modifications in Antisense Research,」ACS,24−39,1994を参照のこと。
【0086】
限定するものではないが、配列番号14〜36として特定される核酸分子を含む核酸分子のさらなる変異体、例えば、天然に存在する対立遺伝子変異体(ならびにオルソログおよびパラログ)および変異誘発技術によって生成される合成の変異体が特定され、および/または当該分野で周知の方法を用いて生成され得る。このようなさらなる変異体は、配列番号14〜36として開示される核酸配列(またはそのフラグメント)と少なくとも70〜80%、80〜85%、85〜90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%配列の同一性を共有するヌクレオチド配列を含んでもよい。従って、本発明は特に、配列番号14〜36と比較して特定の程度の配列変異体を有する単離された核酸分子を意図する。
【0087】
本発明の改変されたオリゴおよび組成物は、固相合成などの技術を通じて慣用的に作製される。このような合成のための装置は、例えば、例えば、Applied Biosystems,(Foster City,Calif.)を含めていくつかの供給業者によって販売されている。当該分野で公知のこのような合成のための任意の他の手段は、さらにまたは代替的に使用される。ホスホロチオエート類およびアルキル化誘導体などのオリゴヌクレオチドを調製するために同様の技術を用いることも周知である。
【0088】
オリゴヌクレオチド(例えば、特定の改変されたオリゴヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを欠いているオリゴヌクレオチドの部分)は、例えば、Caruthersら、Methods in Enzymology 211:3〜19,1992;Thompsonら、国際公開番号WO 99/54459;Wincottら、Nucleic Acids Res.23:2677〜2684,1995;Wincottら、Methods Mol.Bio.74:59,1997;Brennanら、Biotechnol Bioeng.61:33〜45,1998;ならびにBrennan,米国特許第6,001,311号に記載されるような、当該分野で公知のプロトコールを用いて合成する。本発明の特定の改変されたオリゴ分子を含めてRNAの合成は、例えば、Usmanら、J.Am.Chem.Soc.109:7845,1987;Scaringeら、Nucleic Acids Res.18:5433,1990;およびWincottら、Nucleic Acids Res.23:2677〜2684,1995;Wincottら、Methods Mol.Bio.74:59,1997に記載のような一般的手順に従う。
【0089】
2つの配列の間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成され得る(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,編集,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,編集,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,およびGriffin,H.G.,編集,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;ならびにSequence Analysis Primer,Gribskov,M.およびDevereux,J.,編集,M Stockton Press,New York,1991)。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸配列の間の同一性パーセントは、Blossom 62マトリクスまたはPAM250マトリクス、ならびに16、14、12、10、8、6、または4というギャップウェイトおよび1、2、3、4、5、または6という長さウェイトを用いて、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(J.Mol.Biol.(48):444〜453(1970))を用いて決定される。
【0090】
さらに別の好ましい実施形態では、2つのヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリクスならびに40、50、60、70、または80というギャップウェイトおよび1、2、3、4、5、または6という長さウェイトを用いて、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(Devereux,J.ら、Nucleic Acids Res.12(1):387(1984))を用いて決定される。別の実施形態では、2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、PAM120ウェイト残留テーブル(weight residue table)、12というギャップ長ペナルティー、および4というギャップペナルティーを用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている、E.MyersおよびW.Miller(CABIOS,4:11〜17(1989))のアルゴリズムを用いて決定される。
【0091】
本発明のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をさらに、「クエリー配列」として用いて、配列データベースに対する検索を行い、例えば、他のファミリーのメンバーまたは関連の配列を特定してもよい。このような検索は、Altschulら、(J.Mol.Biol.215:403〜10(1990))のNBLASTおよび)(BLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で行い、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で行い、本発明のタンパク質に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためのギャップアラインメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschulら(Nucleic Acids Res.25(17):3389〜3402(1997))に記載のとおり利用してもよい。BLASTおよびギャップのあるBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば)(BLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを用いてもよい。BLASTに加えて、当該分野で用いられる他の検索および配列比較のプログラムの例としては、限定するものではないが、FASTA(Pearson,Methods Mol.Biol.25,365〜389(1994))およびKERR(Dufresneら、Nat Biotechnol 2002 December;20(12):1269〜71)が挙げられる。バイオインフォマティクス技術に関するさらなる情報については、Current Protocols in Bioinformatics,John Wiley & Sons,Inc.,N.Y.を参照のこと。
【0092】
治療方法
本発明の核酸分子を用いて、野性型miRNA結合の変更、従って種々の障害の発症をもたらす変異を含む遺伝子の発現を改変する。例示的な障害としては、限定するものではないが、発達障害、加齢の障害、炎症の障害、変性の障害、代謝の障害、増殖性障害、循環系障害、認知障害、生殖障害、および行動障害が挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、この障害は癌である。例えば、本発明の単離された核酸分子は、対応する野性型または変更/変異されたmiRNA結合部位に結合する場合、少なくとも1つの内因性または天然に存在するmiRNAによって達成される結合有効性以上の結合有効性でもって、変更されるかまたは変異されたmiRNA結合部位に結合する。本発明の一態様では、遺伝子発現を改変するために用いられる単離された核酸分子は改変されたオリゴである。
【0093】
本発明の組成物の治療上有効な量とは、対象に投与された場合、少なくとも1つの遺伝子またはmRNA転写物のサイレンシングまたは発現の減少を生じる、改変されたオリゴまたはその前駆体の量である。本発明の医薬組成物の投与の有効性は、この実施態様では、対象、例えば、生検組織または体液を、当該分野で認識される方法を用いて遺伝子発現の低下について検査することによって測定される。
【0094】
あるいは、またはさらに、本発明の組成物の薬学的に有効な量とは、障害の徴候または症状(ある程度まで)を予防し、その出現もしくは再発を阻害し、処置し、または緩和する、改変されたオリゴまたはその前駆体の量である。好ましい実施形態では、薬学的に有効な用量とは、癌の少なくとも1つの徴候または症状を緩和するために必要な用量である。本明細書において用いる場合、「処置する」という用語は、癌などの障害の徴候または症状を排除するプロセスを記述することを意味する。あるいは、またはさらに、複数の位置で生じ得る癌などの障害は、その癌が少なくとも1つの複数の位置内で排除される場合に、処置されるものである。
【0095】
本明細書において用いる場合、「緩和する」という用語は、ある障害の徴候または症状の重篤度が低下されるプロセスを記述することを意味する。重要なことに、ある徴候または症状は、排除されずに緩和される場合もある。好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物の投与は、徴候または症状の排除をもたらすが、排除は必要ではない。有効な投薬量は、ある徴候または症状の重篤度を軽減することが予想される。例えば、複数の位置で生じ得る、癌などの障害の徴候または症状は、癌の重篤度が少なくとも1つの複数の位置内で低減される場合に、緩和される。
【0096】
本明細書において用いる場合、「重篤度」という用語は、癌が前癌状態または良性の状態から悪性の状態へ変換する能力を記述することを意味する。あるいは、またはさらに、重篤度とは、例えば、TNMシステム(国際対ガン協会(UICC)および対癌米国合同委員会(AJCC)によって承認される)に従って、または他の当該分野で認識される方法によって、癌の病期を記述することを意味する。癌の病期とは、原発性腫瘍の位置、腫瘍サイズ、腫瘍数、およびリンパ節関与(リンパ節への癌の伝播)などの要因に基づいた、癌の程度または重篤度を指す。あるいは、またはさらに、重篤度とは、当該分野で認識される方法による腫瘍の異型度を記述することを意味する(National Cancer Institute,www.cancer.govを参照のこと)。腫瘍の異型度とは、顕微鏡下でどのように異常が見られるか、およびその腫瘍がどの程度急速に増殖および伝播すると考えられるかに関して癌細胞を分類するために用いられるシステムである。細胞の構造および増殖パターンを含めて、腫瘍異型度を決定する場合、多くの要因が考慮される。腫瘍の異型度を決定するために用いられる特定の要因は、各々のタイプの癌で異なる。重篤度とはまた、分化とも呼ばれる組織学的異型度を記述しており、この組織型異型度とは、どのくらい多くの腫瘍細胞が同じ組織型の腫瘍細胞に似ているかを指す(National Cancer Institute,www.cancer.govを参照のこと)。さらに、重篤度とは、核の異型度を記述しており、核の異型度とは、腫瘍細胞中の核のサイズおよび形状、ならびに分裂している腫瘍細胞の割合を指す(National Cancer Institute,www.cancer.govを参照のこと)。
【0097】
本発明の別の態様では、重篤度とは、腫瘍が増殖因子を分泌した程度、細胞外基質を分解した程度、血管新生した程度、隣り合った組織に対する接着を失った程度、または転移した程度を記述する。さらに、重篤度とは、原発性腫瘍が転移した位置の数を記述する。最終的に、重篤度とは、種々のタイプおよび位置の腫瘍を処置する困難さを含む。例えば、処置不能な腫瘍、多数の身体系に対してより多くの接近手段を有する癌(組織学的および免疫学的な腫瘍)、および伝統的な処置に最も耐性である癌が最も重篤であるとみなされる。これらの状況では、対象の寿命を延ばすこと、および/または疼痛を軽減、癌性細胞の割合が低下するか、もしくは1つの系に細胞を限定すること、および癌の病期/腫瘍の異型度/組織学的異型度/核の異型度を改善することは、癌の徴候または症状を緩和することとみなされる。
【0098】
本発明の一態様では、本発明の組成物の治療上有効な量とは、対象の防御的な利益が得られる、改変されたオリゴまたはその前駆体の量である。本明細書において用いる場合、「予防的な利益」という用語は、癌などの障害の徴候または症状の重篤度の発症または低下における遅延を記述することを意味する。
【0099】
薬学的に有効な用量は、疾患のタイプ、用いられる組成物、投与経路、検討される対象の個々のかつ身体的な特徴(例えば、年齢、性別、体重、食事療法、喫煙習慣、運動の習慣、遺伝的背景、既往歴、水分補給、血液化学)、併用薬、および医学分野の当業者が認識する他の要因に依存する。
【0100】
一般には、1日あたり、体重1kgあたり、約0.01mg/kgおよび25mg/kgという活性成分の量が、負に荷電されたポリマー、例えば、改変されたオリゴ組成物の力価に応じて投与される。別の実施形態では、投薬範囲としては、限定するものではないが、0.01〜0.1mg/kg、0.01〜1mg/kg、0.01〜10mg/kg、0.01〜20mg/kg、0.01〜30mg/kg、0.01〜40mg/kg、0.01〜50mg/kg、0.01〜60mg/kg、0.01〜70mg/kg、0.01〜80mg/kg、0.01〜90mg/kg、0.01〜100mg/kg、0.01〜150mg/kg、0.01〜200mg/kg、0.01〜250mg/kg、0.01〜300mg/kg、0.01〜500mg/kg、ならびにその間の全ての範囲およびポイントが挙げられる。別の実施形態では、投薬範囲としては、限定するものではないが、0.01〜1mg/kg、1〜10mg/kg、10〜20mg/kg、20〜30mg/kg、30〜40mg/kg、40〜50mg/kg、50〜60mg/kg、60〜70mg/kg、70〜80mg/kg、80〜90mg/kg、90〜100mg/kg、100〜150mg/kg、150〜200mg/kg、200〜300mg/kg、300〜500mg/kg、ならびにその間の全ての範囲およびポイントが挙げられる。
【0101】
組成物または改変されたオリゴヌクレオチドの血漿濃度は、約0.1μM〜約1000μM、約0.1μM〜約1μM;約0.1μM〜約10μM;約10μM〜約100μM;約100μM〜約500μM、約500μM〜約1000μM、およびその間の任意のμM濃度であってもよい。あるいは、またはさらに、組成物または改変されたオリゴヌクレオチドの脊髄液濃度は、約0.1μM〜約1000μM、約0.1μM〜約1μM;約0.1μM〜約10μM;約10μM〜約100μM;約100μM〜約500μM、約500μM〜約1000μM、またはその間の任意のμM濃度であってもよい。
【0102】
医薬組成物は、1日あたり約1mg/m〜5000mg/m、1日あたり約1mg/m〜10mg/m、1日あたり約10mg/m〜100mg/m、1日あたり約100〜1000mg/m、1日あたり約1000〜2500mg/m、1日あたり約2500〜5000mg/m,またはその間の任意の1日投薬量(mg/m)で投与されてもよい。好ましくは、1日あたり1mg/m〜5000mg/mがヒトへ投薬される投薬量である。
【0103】
本発明では、細胞増殖性障害の症状を処置または緩和する方法が提供される。本発明の例示的な細胞増殖性障害は、細胞分裂が調節不全される種々の状態を含む。例示的な細胞増殖性障害としては限定するものではないが、新生物(腫瘍)、良性腫瘍、悪性腫瘍、前癌状態、インサイチュの腫瘍、被嚢性腫瘍、転移性腫瘍、液状腫瘍、固形腫瘍、免疫学的腫瘍、血液学的腫瘍、癌、癌腫、白血病、リンパ腫、肉腫および急速に分裂する細胞が挙げられる。「急速に分裂する細胞」という用語は、本明細書において用いる場合、同じ組織内で隣接する細胞または隣り合った細胞の間で期待されるかまたは観察される以上の速度で分裂する任意の細胞として規定される。
【0104】
本発明の好ましい実施形態では、本明細書で提供される方法を用いて癌の症状を処置または緩和する。例示的な癌としては限定するものではないが、急性のリンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、小児小脳星細胞腫、小児小脳星細胞腫、芽細胞癌腫、皮膚癌(非悪性)、肝外胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨肉腫および悪性繊維性組織球症、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣細胞腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚伝導路および視床下部神経膠腫、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、胃腸の腫瘍、脳神経系リンパ腫、子宮頸部癌、小児癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、大腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、セザリー症候群、子宮内膜癌、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼球内黒色腫、網膜芽腫、胆嚢癌、胃(gastric)(胃(stomach))癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、生殖細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍神経膠腫、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼球内黒色腫、島細胞腫瘍(内分泌脾臓)、カポジ肉腫、腎臓(腎細胞)癌、腎癌、喉頭癌、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞白血病、唇および口腔の癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、髄芽腫、黒色腫、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫悪性、中皮腫、転移性扁平頸部癌、口腔癌、多発性内分泌新生組織形成症候群、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄腫白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔(oral)癌、口腔(oral cavity)癌、口腔咽頭癌、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣低悪性度潜在腫瘍、膵癌、島細胞膵臓癌、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽細胞腫およびテント上原始神経外胚葉腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎盂および尿管、移行細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫のユーイングファミリー、カポジ肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫、皮膚癌(非黒色腫)、皮膚癌(黒色腫)、メルケル細胞皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃(stomach)(gastric)癌、テント上原始神経外胚葉腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫(thymoma)、胸腺腫および胸腺癌(thymic carcinoma)、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行細胞癌、妊娠性絨毛腫瘍、尿道癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、およびウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0105】
本明細書において用いる場合、「症状」という用語は、疾患、病気、損傷の指標、または身体中で何か正しくないものとして規定される。症状は、その症状を経験している個体によって感じられるかまたは認識されるが、他者には容易に認識されない場合もある。他者とは、医療従事の専門家以外と定義される。
【0106】
本明細書において用いる場合、「徴候」という用語はまた、身体中で何か正しくないという指標として規定される。しかし、徴候とは、医師、看護師、または他の医療従事の専門家によって理解されるものとして規定される。
【0107】
癌は、ほとんどの任意の徴候または症状を生じ得る一群の疾患である。その徴候および症状は、癌がどこにあるか、癌の大きさ、およびすぐ近くの臓器または構造にどの程度影響するかに依存する。癌が広がる(転移する)ならば、症状は、身体の異なる部分で出現し得る。
【0108】
癌が増殖するにつれて、癌は近傍の臓器、血管および神経を圧迫し始める。この圧力により、癌のいくつかの徴候および症状が生じる。癌が重要な領域、例えば脳の特定の領域にある場合、最小限の腫瘍でさえ、早期に症状を生じ得る。
【0109】
しかし、時には、癌は、癌がかなり大きく増殖するまでなんら症状を生じない場所で始まる。例えば、膵臓癌は、通常身体の外側から感じとるのに十分な大きさまで増殖しない。いくつかの膵臓癌は、近傍の神経の周囲に増殖し始める(これは背痛を生じる)まで症状を生じない。他には、胆管の周囲に増殖し、これが胆汁の流れを遮断して、黄疸として公知の皮膚の黄色化をもたらす。膵臓癌がこれらの徴候または症状を生じる時点までに、膵臓癌は通常は進行段階に達している。
【0110】
癌はまた、発熱、疲労または体重減少を生じ得る。これは、癌細胞が身体のかなりのエネルギー供給を消費するか、または身体の代謝を変える物質を放出するという理由である場合がある。または癌は、免疫系がこれらの症状を生じる方法で反応させ得る。
【0111】
時には、癌細胞は、癌から通常生じるとは考えられない症状を生じる物質を血流中に放出する。例えば、膵臓のいくつかの癌は、足の血管で血栓を生じる物質を放出し得る。いくつかの肺癌が、血液カルシウムレベルに影響するホルモン様物質を生じ、これが神経および筋肉に影響し、かつ衰弱および眩暈を生じる。
【0112】
癌は、種々のサブタイプの癌細胞が存在する場合に生じるいくつかの一般的な徴候または症状を示す。癌を有するほとんどの人が、それらの疾患のある時点で体重が減少する。10ポンド以上の説明できない(意図的でない)体重減少は、癌、特に膵臓、胃、食道または肺の癌の最初の徴候であり得る。
【0113】
発熱は、癌では極めて一般的であるが、進行した疾患でさらに高頻度にみられる。癌を有するほぼ全ての患者が、ある時点で、特に癌またはその処置が免疫系に影響して身体が感染と戦うことを困難にする場合、発熱する。頻度は低いものの、発熱は、白血病またはリンパ腫などを有する癌の初期徴候であり得る。
【0114】
疲労は、癌の進行として重要な症状であり得る。しかし、疲労は、白血病などを有する癌では、またはいくつかの結腸癌または胃癌においてのように、癌が進行中の血液の減少を生じている場合、早期に生じる場合がある。
【0115】
疼痛は、骨癌または他の精巣癌などのいくつかの癌での早期の症状であり得る。しかしほとんどの場合、疼痛は進行した疾患の症状である。
皮膚の癌とともに(次の節を参照のこと)、いくつかの内部の癌は、確認できる皮膚の徴候を生じ得る。これらの変化としては、皮膚がさらに黒く見える(色素沈着過剰)、黄色(黄疸)、または赤色(紅斑);掻痒;または過剰な発毛が挙げられる。
【0116】
あるいは、またはさらに、癌のサブタイプは、特定の徴候または症状を示す。用便習慣または膀胱機能の変化は、癌を示し得る。長期の便秘、下痢または便の大きさの変化は、結腸癌の徴候であり得る。排尿時痛、尿中血液、または膀胱機能の変化(例えば、排尿頻度増加または減少)は、膀胱または前立腺の癌に関連し得る。
【0117】
皮膚状態の変化または新しい皮膚状態の出現は、癌を示し得る。皮膚癌は、出血し、かつ治癒しないびらんのように見え得る。口腔内の長期のびらんは、特に、喫煙、噛みタバコ、または頻繁にアルコールを飲用する患者においては、口腔癌であり得る。陰茎または膣のびらんは、感染の徴候または早期の癌のいずれかの場合がある。
【0118】
異常な出血または滲出は、癌を示し得る。異常な出血は、早期の癌または進行した癌のいずれでも起こり得る。喀痰(痰)中の血液は、肺癌の徴候であり得る。糞便中の血液(または暗い便もしくは黒い便)は、結腸癌または直腸癌の徴候であり得る。(子宮)頸部または子宮内膜(子宮の内面)の癌は、膣の出血を生じ得る。子宮中の血液は、膀胱癌または腎臓癌の徴候であり得る。乳頭からの血液の滲出は、乳癌の徴候であり得る。
【0119】
乳房におけるまたは身体の他の部分における肥厚または塊は、癌の存在を示し得る。多くの癌が、皮膚を通じて、ほとんどは乳房、精巣、リンパ節(腺)および身体の軟部組織で感じられ得る。塊または肥厚は、早期または後期の癌の徴候であり得る。特に形成が新規であるかまたは大きさが成長した場合、なんらかの塊または肥厚は癌の指標であり得る。
【0120】
消化不良または嚥下困難は癌の指標であり得る。これらの症状は一般には他の原因を有し得るが、消化不良または嚥下困難は、食道、胃または咽頭(のど)の癌の徴候であり得る。
【0121】
いぼおよびあざの最近の変化は癌の指標であり得る。色、大きさもしくは形状が変化するか、または明確な境界を失う任意のいぼ、あざまたはしみは、癌の発生の可能性を示す。例えば、皮膚病変は、黒色腫であり得る。
【0122】
持続的な咳または嗄声は、癌の指標であり得る。治らない咳は肺癌の徴候であり得る。嗄声は喉頭(発声器)または甲状腺の癌の徴候であり得る。
【0123】
上記で列挙される徴候および症状は、癌でみられるより一般的なものであるが、他にもそれほど一般的ではなくここに列挙していないものが多くある。しかし、癌の全ての当該分野で認識される徴候および症状が、本発明によって考慮され、かつ包含される。
【0124】
本発明の方法は、種々の対象を包含し、その全てが哺乳動物である。特定の実施形態では、この哺乳動物はヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであるが、これらの例に限定するものではない。ヒト以外の哺乳動物は、特定の障害の動物モデルを示す対象として有利に用いられる。好ましい対象はヒトである。対象は雄性または雌性である。
【0125】
対象はmiRNA結合部位に変異を有するとして特定される。miRNA結合部位に少なくとも1つの変異を有すると特定されている対象は、癌などの障害の徴候も症状も示さなかった。あるいは、miRNA結合部位で少なくとも1つの変異を有すると特定されている対象は、癌などの障害の徴候または症状を示した。必要に応じて、対象は、1つ以上の障害、例えば、癌を有すると診断された。本発明の特定の実施形態では、対象は、LCS6 SNPの存在と最も高頻度に関連する癌を有すると診断され、この癌としては限定するものではないが、全ての種類の肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)および小細胞肺癌)、卵巣癌、乳癌、子宮癌、頭頸部癌、膵臓癌、および結腸癌が挙げられる。
【0126】
本明細書の方法の対象は、miRNA結合部位中になんら変異を有さない場合がある。癌で過剰発現される遺伝子の多くは、let−7miRNA結合部位を含む。そのようなものとして、本発明の改変されたオリゴおよび組成物は、変異を欠いている対象に投与された場合、let−7標的遺伝子のこのような過剰発現を抑制する。特定の実施形態では、意図する対象の遺伝子発現プロフィールを分析し、遺伝子の過剰発現をサイレンシングし得る適切な改変されたオリゴを投与する。例えば、KRAS対立遺伝子を含むLCS6 SNPに結合する改変されたオリゴ(配列番号22〜36)はまた、野性型KRAS対立遺伝子にも結合して、発現を効率的に低下する。
【0127】
本発明は、改変されたオリゴおよび少なくとも1つの細胞毒性化合物を含む組成物を投与することによって癌の症状を処置または緩和する方法を提供する。細胞毒性化合物としては限定するものではないが、全ての形態の放射性同位体および化学療法化合物、例えば、化学療法薬物が挙げられる。例示的な放射性同位体としては限定するものではないが、モリブデン−99、テクネチウム−99m、ビスマス−213、炭素−11、クロム−51、コバルト−57、コバルト−60、銅−64、ジスプロシウム−165、エルビウム−169、フッ素−18、ガリウム−67、ホルミウム−166、インジウム−111、ヨウ素−123、ヨウ素−125、ヨウ素−131、イリジウム−192、鉄−59、クリプトン−81m、ルテニウム−177、窒素−13、酸素−15、パラジウム−103、リン−32、カリウム−42、レニウム−186、レニウム−188、ルビジウム−81、サマリウム−153、セレニウム−75、ナトリウム−24、ストロンチウム−89、ストロンチウム−92、タリウム−201、キセノン−133、イッテルビウム−177、イッテルビウム−169、イッテリウム−90、ならびにセシウム、金およびルテニウムの放射性同位体が挙げられる。例示的な化学療法薬物としては限定するものではないが、ダカルバジン/DTIC、フルオロウラシル/5−FU、フルダラビン、ゲムシタビン、トラスツズマブ/ハーセプチン、ヒドロキシウレア/ハイドレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、クラドリビン/ロイスタチン、メルカプトプリン/ピュリネソール/6−MP、メトトレキセート、ミトラマイシン/プリカマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン/ノバントロン(Novatrone)、ナベルビン/ビノレルビン、ナイトロジェンマスタード、リツキサン、パクリタキセル/タキソール、ドセタキセル/タキソテール、トポテカン、ベルバン/ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびエトポシド/VP−16が挙げられる。
【0128】
医薬組成物
本発明は、少なくとも1つの改変されたオリゴおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を提供する。薬学的に受容可能なキャリアは、その薬学的に受容可能なキャリアが改変されたオリゴ分子の細胞取り込み、安定性、溶解度、半減期、結合有効性、特異性、標的化、分布、吸収または腎クリアランスを増大するように、改変されたオリゴと共有結合または非共有結合、混合、カプセル封入、コンジュゲート、作動可能に連結またはそうでなければ会合される。あるいは、またはさらに、薬学的に受容可能なキャリアは、改変されたオリゴ分子の免疫原性を増大または減少する。さらに、薬学的に受容可能なキャリアは、標的された癌細胞に対してこの改変されたオリゴ組成物の細胞毒性を増大し得る。
【0129】
あるいは、またはさらに、薬学的に受容可能なキャリアは、塩(例えば、酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、酢酸およびベンゼンスルホン酸の塩)、エステル、このようなエステルの塩、または対象への投与の際に、本発明の生物学的に活性な組成物を(直接または間接的に)提供し得る任意の他の化合物である。そのようなものとして、本発明は、プロドラッグおよび他の生物学的同等物を含む。本明細書において用いる場合、「プロドラッグ」という用語は、不活性(または有意に活性が少ない)型で投与される薬理学的な物質を記述することを意味する。一旦投与されれば、そのプロドラッグは、インビボで活性な代謝物に代謝される。薬学的に受容可能なキャリアは、代替的にまたは追加で、希釈剤、賦形剤、アジュバント、乳化剤、緩衝液、安定化剤、および/または防腐剤である。
【0130】
本発明の薬学的に受容可能なキャリアは、標的された細胞による改変されたオリゴの取り込みを増大する、改変されたオリゴ送達のシステム/機構である。例えば、本発明の薬学的に受容可能なキャリアは、ウイルス、組み換えウイルス、操作されたウイルス、ウイルス粒子、複製欠損ウイルス、リポソーム、陽イオン性脂質、陰イオン性脂質、陽イオン性ポリマー、ポリマー、ヒドロゲル、マイクロカプセルまたはナノカプセル(生分解性)、マイクロスフェア(必要に応じて生体接着性)、シクロデキストリン、プラスミド、哺乳動物発現ベクター、タンパク質性ベクター、または前述の要素の任意の組み合わせである(O’HareおよびNormand,国際公開番号WO 00/53722;米国特許出願公開第2008/0076701号)。さらに、細胞取り込みを増大する薬学的に受容可能なキャリアは、細胞特異的なタンパク質または他の要素、例えば、レセプター、リガンド、抗体で改変されて、選択された細胞タイプに対する細胞取り込みを特異的に標的し得る。
【0131】
本発明の別の態様では、組成物は、対象に引き続いて投与される細胞または細胞集団に最初に導入される。いくつかの実施形態では、改変されたオリゴは、細胞内に、例えば、肺などの標的組織の細胞に、または炎症を起こした組織に送達される。本発明には、対象の細胞を除去すること、除去された細胞に単離された改変されたオリゴまたは組成物を送達すること、ならびに対象に細胞を再導入することにより、単離された改変されたオリゴおよび/または組成物の送達のための組成物および方法が包含される。いくつかの実施形態では、改変されたオリゴ分子は、陽イオン性脂質またはトランスフェクション物質、例えば、LIPOFECTAMINE(Invitrogen)と組み合わされる。
【0132】
一態様では、活性な化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化された送達システムを含む、徐放性処方物などの、身体からの急速な排泄に対してこの改変されたオリゴ分子を保護する薬学的に受容可能なキャリアとともに調製される。生分解性の、生体適合性のポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が用いられてもよい。このような処方物の調製のための方法は、当業者に明らかである。この材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから商業的に入手可能である。ヒドロゲルを形成し得る材料の例としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー類、アルギン酸塩類およびアルギン酸誘導体類、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、天然および合成のポリサッカライド類、ポリアミノ酸類、例えば、ポリペプチド類、特にポリ(リジン)、ポリエステル類、例えば、ポリヒドロキシ酪酸塩およびポリ−ε−カプロラクトン、ポリ酸無水物類;ポリホスファゼン類、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)類、特にポリ(エチレンオキシド)類、ポリ(アリルアミン)類(PAM)、ポリ(アクリレート)類、修飾されたスチレンポリマー類、例えば、ポリ(4−アミノメチルスチレン)、プルロニックポリオール類、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)類、ポリ(ビニルピロリドン)および上記のコポリマー類、例としては、グラフトコポリマー類が挙げられる。
【0133】
リポソーム懸濁物(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体とともに、感染された細胞に対して標的するリポソームを含む)もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして用いられ得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるように、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0134】
薬学的に受容可能なキャリアは、改変されたオリゴと結合するかまたは会合される陽イオン性脂質である。あるいは、またはさらに、改変されたオリゴは、インビボ送達のために、陽イオン性脂質、例えば、リポソーム中にカプセル化されるかまたはそれに包まれる。例示的な陽イオン性脂質としては、限定するものではないが、N41−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピリ(propyli)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA);1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−3−(トリメチルアンモニウム)プロパン(DOTAP)、1,2−ビス(ジミリストイルオキシ)−3−3−(トリメチルアンモニア)プロパン(DMTAP);1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB);3−(N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(DC−Chol);3.β−[N’,N’−ジグアニジノエチル−アミノエタン)カルバモイルコレステロール(BGTC);2−(2−(3−(ビス(3−アミノプロピル)アミノ)プロピルアミノ)アセトアミド)−N,N−ジテトラデシルアセトアミド(RPR209120);それらの薬学的に受容可能な塩、およびそれらの混合物が挙げられる。さらに例示的な陽イオン性脂質としては限定するものではないが、1,2−ジアルケノイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン類(EPC類)、例えば1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン、それらの薬学的に受容可能な塩、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0135】
例示的なポリ陽イオン性脂質類としては、限定するものではないがテトラメチルテトラパルミトイルスペルミン(TMTPS)、テトラメチルテトラオレイルスペルミン(TMTOS)、テトラメチルテトララウリル(tetramethlytetralauryl)スペルミン(TMTLS)、テトラメチルテトラミリスチルスペルミン(TMTMS)、テトラメチルジオレイルスペルミン(TMDOS)、それらの薬学的に受容可能な塩、およびそれらの混合物が挙げられる。さらなる例示的なポリ陽イオン性脂質類としては限定するものではないが、2,5−ビス(3−アミノプロピルアミノ)−N−(2−(ジオクタデシルアミノ)−2−オキソエチル)ペンタンアミド(DOGS);2,5−ビス(3−アミノプロピルアミノ)−N−(2−(ジ(Z)−オクタデカ−9−ジエニルアミノ)−2−オキソエチル)ペンタンアミド(DOGS−9−エン);2,5−ビス(3−アミノプロピルアミノ)−N−(2−(ジ(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエニルアミノ)−2−オキソエチル)ペンタンアミド(DLinGS);3−β−(N−(N,N−ジカルボベンゾキシスペルミジン)カルバモイル)コレステロール(GL−67);(9Z,9Z)−2−(2,5−ビス(3−アミノプロピルアミノ)ペンタンアミド)プロパン−1,3−ジイル−ジオクタデカ−9−エノエート(DOSPER);2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウム(propanamini−urn)トリフルオロ−アセテート(DOSPA);それらの薬学的に受容可能な塩、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0136】
陽イオン性脂質の例は、米国特許第4,897,355号;同第5,279,833号;同第6,733,777号;同第6,376,248号;同第5,736,392号;同第5,334,761号;同第5,459,127;米国特許出願公開第2005/0064595号;米国特許第5,208,036号;同第5,264,618号;同第5,279,833号;同第5,283,185号;同第5,753,613;および同第5,785,992号(その各々がその全体が本明細書に参照によって援用される)に記載される。
【0137】
本発明の薬学的に受容可能なキャリアとしてはまた、非陽イオン性脂質類、例えば、中性、両性イオン性、および陰イオン性の脂質が挙げられる。例示的な非陽イオン性脂質類としては、限定するものではないが、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロール(DLG);1,2−ジミリストイル−sn−グリセロール(DMG);1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロール(DPG);1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール(DSG);1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸(ナトリウム塩;DLPA);1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸(ナトリウム塩;DMPA);1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸(ナトリウム塩;DPPA);1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸(ナトリウム塩;DSPA);1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC);1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DLPC);1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC);1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−O−エチル−3−ホスホコリン(クロライドまたはトリフレート;DPePC);1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC);1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC);1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE);1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DMPE);1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE);1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE);1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(ナトリウム塩;DLPG);1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(ナトリウム塩;DMPG);1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−グリセロール(アンモニウム塩;DMP−sn1−G);1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(ナトリウム塩;DPPG);1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロ(ナトリウム塩;DSPG);1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−グリセロール(ナトリウム塩;DSP−sn−1−G);1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(ナトリウム塩;DPP S);1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PLinoPC);1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC);1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(ナトリウム塩;POPG);1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(ナトリウム塩;POPG);1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(アンモニウム塩;POPG);1−パルミトイル−2−4o−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(P−リゾ−PC);1−ステアロイル−2−リゾ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(S−リゾ−PC);およびその混合物が挙げられる。さらなる例示的な非陽イオン性脂質類としては、限定するものではないが、ポリマー化合物およびポリマー−脂質コンジュゲートまたはポリマー脂質、例えばペグ化脂質、例としては、ポリエチレングリコール類、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(ナトリウム塩;DMPE−MPEG−2000);N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−5000)−1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(ナトリウム塩;DMPE−MPEG−5000);N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(ナトリウム塩;DPPE−MPEG−2000);N−(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール5000)−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(ナトリウム塩;DPPE−MPEG−5000);N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール750)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(ナトリウム塩;DSPE−MPEG−750);N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(ナトリウム塩;DSPE−MPEG−2000);N−(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール5000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(ナトリウム塩;DSPE−MPEG−5000);硫酸コレステリルナトリウム(SCS);それらの薬学的に受容可能な塩、およびそれらの混合物が挙げられる。非陽イオン性脂質類としては限定するものではないが、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン(DPhPE)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、1,2−ジフタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPhPC)、コレステロール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0138】
本発明の薬学的に受容可能なキャリアとしてさらに、陰イオン性脂質が挙げられる。例示的な陰イオン性脂質としては限定するものではないが、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、血小板活性化因子(PAF)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジル−DL−グリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルイノシトール(pi(4)p,pi(4,5)p2)、カルジオリピン(ナトリウム塩)、リゾホスファチド類、水素化リン脂質類、スフィンゴ脂質類、ガングリオシド類、フィトスフィンゴシン、スフィンガニン類、それらの薬学的に受容可能な塩、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0139】
本明細書での使用のための核酸分子の送達のための補充的な方法または相補的な方法は、例えば、Akhtarら、Trends Cell Bio.2:139,1992;Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics,編集.Akhtar,1995;Maurerら、Mol.Membr.Biol.16:129〜140,1999;HoflandおよびHuang,Handb.Exp.Pharmacol.137:165〜192,1999;ならびにLeeら、ACS Symp.Ser.752:184〜192、2000に記載されている。Sullivanら、国際公開番号WO 94/02595はさらに、酵素的な核酸分子の送達のための一般的な方法を記載する。これらのプロトコールは、本発明の実質上任意の核酸分子の補充的または相補的な送達に対して利用され得る。
【0140】
医薬組成物は、局所的におよび/または全身的に投与される。本明細書において用いる場合、「局所投与」という用語とは、周囲の組織または領域に対する組成物の播種が最小である、身体の特異的な組織または領域に対する本発明の医薬組成物の投与を記載する意味である。局所的に投与される医薬組成物は、投与の部位に対してすぐ隣接もしないし、下にもない部位でサンプリングした場合、全身の血流では検出可能ではない。
【0141】
本明細書において用いる場合、「全身性投与」という用語は、インビボの全身性吸収または血流中の薬物の蓄積、その後の全身にわたる分布を記述する意味である。全身性吸収をもたらす投与経路としては限定するものではないが以下が挙げられる:静脈内、皮下、腹腔内、吸入、経口、肺内および筋肉内。これらの投与経路の各々は、所望の負に荷電したポリマー、例えば核酸を、接近可能な疾病状態の組織に曝す。循環への薬物の進入の速度は分子の重量または大きさの関数であることが示されている。本発明の開示の化合物を含むリポソームまたは他の薬物キャリアの使用は、例えば、特定の組織タイプ、例えば、細網内皮系(RES)の組織に薬物を潜在的に局在化し得る。リンパ球およびマクロファージなどの細胞の表面との薬物の会合を容易にし得るリポソーム処方物も有用である。このアプローチは、癌細胞のような異常な細胞のマクロファージおよびリンパ球免疫認識の特異性を利用することによって標的細胞に対する薬物送達の増強をもたらし得る。
【0142】
薬学的に受容可能なキャリアは、その意図する投与経路と適合するように選択される。投与経路の例としては、非経口的投与、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入またはガス吸入)、経皮(局所)、経粘膜、眼を通じて、気管内、鼻腔内、表皮、腹腔内、眼窩内、動脈内、関節内、脊髄内、胸骨内、頭蓋内、くも膜下腔内、脳室内および直腸の投与が挙げられる。あるいは、またはさらに、本発明の組成物は、非経口的ではなく、例えば、口腔に投与される。あるいは、またはさらに、本発明の組成物は、外科的に、例えば、インプラントまたは生体適合性ポリマーとして投与される。
【0143】
医薬組成物は、注射または注入を介して、例えば、インフュージョンポンプの使用によって投与される。本発明の核酸分子の直接注入は、標準的なニードルおよびシリンジの方法を用いて、またはConryら、Clin.Cancer Res.5:2330〜2337,1999およびBarryら、国際公開番号WO 99/31262に記載の技術などのニードルなしの技術によって行う。
【0144】
非経口、皮内または皮下の適用のために用いられる溶液または懸濁物は、以下の成分を含んでもよい:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば、アセテート、シトレート、またはホスフェート、および張度の調整のための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基で調整され得る。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックからなるアンプル、ディスポーザブルシリンジまたは複数用量のバイアル中に封入され得る。
【0145】
本発明の単離された核酸が薬学的に受容可能なキャリアとともに、化学療法処置のために現在用いられる周知の方法の多くで対象に投与され得る。例えば、癌の処置のためには、本発明の化合物を、腫瘍に直接注射しても、血流もしくは体腔に注射しても、または経口的に摂取するか、もしくはパッチを用いて皮膚を通じて適用してもよい。選択される用量は、構成的に有効な処置に十分でありながら、許容できない副作用を生じるほど高くてはならない。疾患状態(例えば、癌、膵臓など)の状況および対象の健康度は好ましくは、処置の間、および処置後の合理的な期間密接にモニターされなければならない。
【0146】
注射可能な用途に適切な組成物としては、滅菌水溶液(ここでは、水溶性)または分散剤、および滅菌注射可能溶液もしくは分散剤の即時調製物のための滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与のために、適切なキャリアとしては、生理学的食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は無菌性であるべきであり、そして容易な注入可能性が存在する程度に流体でなければならない。それは、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、そして微生物、例えば、細菌および真菌の汚染作用に対して保護されなけれなならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であってもよい。
【0147】
医薬組成物は、滅菌の注射可能な水性懸濁液または脂肪性懸濁液の形態である。この懸濁液は、上述された適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて当該分野で公知の技術によって処方される。この無菌注入用調製物は、例えば1,3−ブタンジオールの溶液などの無毒の非経口的に受容可能な希釈剤または溶剤中の滅菌の注射可能な溶液または懸濁液である。例示的な受容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌の固定油が溶媒または懸濁培地として都合よく使用される。この目的のためには、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性の固定油を使用する。さらに、脂肪酸、例えば、オレイン酸を注射可能な調製物中で用いる。
【0148】
滅菌の注射可能溶液は、上記に列挙された成分の1つまたは組み合わせを有する適切な溶媒中に、必要とされる量の改変されたオリゴを組み込むこと、必要に応じて、続いて濾過滅菌することによって調製され得る。一般的に、分散剤は、塩基性分散媒および上記に列挙された成分から必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル中に、活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、予め濾過滅菌されたその溶液から、活性成分に加えて任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0149】
経口組成物は一般に、不活性希釈液または食用の薬学的に受容可能なキャリアを含む。少なくとも1つの2’−O−メトキシエチル修飾を含む改変されたオリゴが、経口投与のための組成物を処方するときに用いられる。それらをゼラチンカプセルに包含してもよく、または錠剤に圧縮してもよい。経口の治療投与の目的のために、この活性化合物は、賦形剤とともに組み込まれてもよく、錠剤、トローチまたはカプセルの形態で用いられてもよい。経口組成物は、うがい薬としての使用のために流体キャリアを用いて調製してもよく、ここでこの流体キャリアの化合物は、経口的に与えられ、局所使用され、痰排出されるかまたは嚥下される。薬学的に適合性の結合剤および/またはアジュバント物質は、組成物の一部として含まれてもよい。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、任意の以下の成分または類似の性質の化合物を含んでもよい:結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンもしくはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)もしくはコーンスターチ;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(Sterote);流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味料、例えば、スクロースもしくはサッカリン;または香味料、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料。
【0150】
吸入による投与のためには、化合物は、適切な噴霧剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0151】
全身投与はまた、経粘膜手段によってもまたは経皮手段によってもよい。経粘膜投与または経皮投与のために、透過されるべき障壁に適切な浸透剤が処方物中に用いられる。経粘膜投与のための例示的な浸透剤としては、限定するものではないが、脂質、リポソーム、脂肪酸(単数または複数)、エステル、ステロイド、キレート剤、およびサーファクタントが挙げられる。本発明の好ましい脂質およびリポソームは、天然、陰性または陽イオン性である。組成物は、リポソーム内にカプセル化されるか、または、それに対する複合体、例えば、陽イオン性リポソームを形成する。
【0152】
あるいは、またはさらに、組成物は、脂質、例えば、陽イオン性脂質に複合体化される。経皮投与のために調製される組成物は、イオン泳動によって提供される。このような浸透剤は一般に、当該分野で公知であり、例えば、経粘膜投与のための、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。
【0153】
経粘膜投与は、経鼻スプレーまたは坐剤の使用を通じて達成され得る。経皮投与のために、活性な化合物は、当該分野で一般に公知であるパッチ、軟膏(ointment)、ローション、軟膏(salve)、ゲル、ドロップ、スプレー、液体、粉末またはクリーム中に処方される。
【0154】
本発明の医薬組成物は、全身に投与され、血液脳関門を横切って中枢神経系の細胞に接触することが意図される。あるいは、またはさらに、医薬組成物は、脊髄内に、例えば、腰椎穿刺によって、または頭蓋内に、例えば、くも膜下腔内にまたは脳室内に投与される。前述の経路によって、医薬組成物は、脳脊髄液に直接導入される。特に神経系組織を標的するための、本発明の核酸分子を含む処方物に適切な薬剤の非限定的な例としては以下が挙げられる:CNSへの薬物の進入を増強し得る(Jolliet−RiantおよびTillement,Fundam.Clin.Pharmacol.13:16〜26,1999)、P−糖タンパク質インヒビター(例えば、Pluronic P85);脳内移植後の徐放性の送達のための、生分解性ポリマー類、例えばポリ(DL−ラクチド−コグリコリド)マイクロスフェア(Emerich,D.F.ら、Cell Transplant 8:47〜58,1999)(Alkermes,Inc.Cambridge,Mass.);ならびに血液脳関門を横切って薬物を送達し得、かつ神経取り込み機構を変更し得る、ロードされたナノ粒子、例えばポリブチルシアノアクリレートからなるナノ粒子(Prog.Neuropsychopharmacol Biol.Psychiatry 23:941〜949,1999)。本発明の開示の核酸分子のための送達ストラテジーの他の非限定的な例としては、Boadoら、J.Pharm.Sci.87:1308〜1315,1998;Tylerら、FEBS Lett.421:280〜284,1999;Pardridgeら、PNAS USA.92:5592〜5596,1995;Boado,Adv.Drug Delivery Rev.15:73〜107,1995;Aldrian−Herradaら、Nucleic Acids Res.26:4910〜4916,1998;ならびにTylerら、PNAS USA.96:7053〜7058,1999に記載される物質が挙げられる。
【0155】
本発明の改変されたオリゴおよび組成物はまた、例えば、薬物の直腸投与のための坐剤の形態で投与される。これらの組成物は、通常の温度では固体であるが、直腸温度では液体であり、従って直腸では溶けて薬物を放出する安定な非刺激性の賦形剤と薬物とを混合することによって調製される。このような物質としては、ココアバターおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0156】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造のために適切な賦形剤と混合して活性な物質を含む。このような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴムである。分散剤または湿潤剤は、天然に存在するホスファチド、例えばレシチン、または酸化アルキレンと脂肪酸の縮合生成物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、または酸化エチレンと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、または酸化エチレンと脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート、または酸化エチレンと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合生成物、例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレアートであってもよい。水性懸濁物はまた、1つ以上の防腐剤、例えば、エチルパラヒドロキシベンゾアート、またはn−プロピルパラヒドロキシベンゾアート、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、および1つ以上の甘味剤、例えば、スクロースおよびサッカリンを含む。
【0157】
油性懸濁物は、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ、ゴマ油もしくはココナツ油中に、または鉱油、例えば液体パラフィン中に活性成分を懸濁することによって処方される。油性の懸濁物は、増粘剤、例えば、蜜ろう、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含む。甘味剤および香味剤が、口当たりの良い経口調製物を得るために添加される。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存される。
【0158】
水の添加による水性懸濁液の調製のために適切な分散可能な粉末および顆粒によって、分散剤または湿潤剤、懸濁剤および1つ以上の防腐剤と混合した活性成分が得られる。適切な分散剤または湿潤剤または懸濁剤は、既に上記したものによって例証する。追加の賦形剤、例えば、甘味剤、香味剤および着色剤も存在する。
【0159】
本発明の薬学組成物は、水中油型エマルジョンの形態である。油性相は植物油もしくは鉱油またはそれらの混合物である。適切な乳化剤は、天然に存在するゴム、例えば、アカシアゴムまたはトラガカントゴム、天然に存在するリン脂質、例えば、ダイズ、レシチン、ならびにソルビタンモノオレアートといった、脂肪酸とヘキシトール無水物とから誘導されたエステルまたは部分エステル、ならびにポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートといった、酸化エチレンとこのような部分エステルとの縮合生成物である。これらのエマルジョンはまた、甘味剤または着香剤を含む。
【0160】
好ましい態様では、薬学的に受容可能なキャリアは、可溶性のキャリア分子であってもよい。さらに好ましくは、可溶性キャリア分子は、ポロキサマー、ポピドンK17、ポピドンK12、Tween80、エタノール、クレモフォール(Cremophor)/エタノール、リピドール(Lipiodol)、ポリエチレングリコール(PEG)400、プロピレングリコール、トラプソル(Trappsol)、αシクロデキストリンまたはそのアナログ、βシクロデキストリンまたはそのアナログ、およびγシクロデキストリンまたはそのアナログであってもよい。
【0161】
本発明はまた、貯蔵または投与のために調製した組成物を提供する。治療剤の用途のための受容可能なキャリアまたは希釈剤は、薬学分野では周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,A.R.Gennaro編集,1985に記載されている。例えば、防腐剤、安定化剤、色素および香味剤が提供される。これらとしては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、およびp−ヒドロキシ安息香酸(phydroxybenzoic acid)のエステルが挙げられる。さらに、抗酸化剤および懸濁剤が用いられる。
【実施例】
【0162】
(実施例1)
標的化SNPを測定するクローン形成アッセイ
目的の癌細胞および/または細胞株を、特定された一塩基多型(SNP)を標的するように設計された、標的されたおよびコントロールのオリゴヌクレオチド、二本鎖RNA(dsRNA)、およびDNA分子でトランスフェクトする。変異(しばしばSNP)を有する癌細胞および/または細胞株と、変異を担持しない同一または類似の癌細胞および/または細胞株とを含む実験を並行して行う場合が多い。
【0163】
用いられたトランスフェクション方法は、マイクロRNAレベルに鋭敏なルシフェラーゼ(luc)レポーター構築物(NRAS 3’UTRに融合されたluc、NRAS配列についてはNCBIアクセッション番号NM_002524を参照のこと(参照によって本明細書に援用される))を用いることによって最適化した。これらの研究のための選択されたトランスフェクション方法は、生じる毒性が最小限であって、最も効率的なトランスフェクションをもたらす(X−tremeGENE,Roche、データ示さず)。トランスフェクション後、細胞をある範囲の希釈でプレートして、コロニー形成を可能にするために2週間妨害することなく増殖させる。コロニー計数は、細胞染色手順を用いることによって行う。コロニーの出現は、細胞の生存およびそのクローンの子孫に相当する。そのようなものとして、細胞生存の総量は、各々の処置の結果として形成されたコロニーの数によって示され得る。
【0164】
核酸によるSNP標的が細胞毒性処置(例えば、放射線または化学療法)と組み合わせて試験される場合、細胞を漸増用量の細胞毒性処置を用いてトランスフェクションの24時間後に処置し、次いである範囲の希釈でプレートし、分布させることなく増殖させる。細胞生存は、上記のように評価する。実験は、各々の用量について、および各々のSNP標的方法について四通りで行う。実験は、最低でも2回繰り返す。層別化t検定を行って実験についての統計学的有意性を分析する。
【0165】
(実施例2)
KRAS3’UTRに対する改変されたオリゴの直接標的:RNA−DNAキメラの設計
二本鎖のRNA−DNAオリゴマーキメラからなるか、本質的にそれからなるか、またはそれを含む、本明細書においてsiRNAとも呼ばれる、改変されたオリゴを、LCS6SNPを標的するように設計した。RNA−DNAキメラを使用すれば、二本鎖のRNA−RNAキメラとは対照的に、限定するものではないが、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)へのパッセンジャー鎖(passenger strand)(PS)の導入阻害、PSを非機能性にすること、およびシード結合をさらに特異的にすることを含めて、多数の理由のためにオフターゲティングが最小になる。
【0166】
RNA−DNAキメラの使用は、2つの鎖の間の変化した結合エネルギーを通じてRISCへのPSの導入を阻害する。DNAに結合するRNA(およびDNAに結合するDNA)はRNAに結合するRNAよりも低い結合エネルギーを示す。5’末端で弱い結合を有する鎖は、RISCに組み込まれ、従って、ガイド鎖(guide strand)(GS)の5’末端でDNA(またはミスマッチ)を導入して、パッセンジャー鎖をこえてガイド鎖を組み込むためのバイアスを導入する。PSにわたるGSの組み込みのためのバイアスは、オフターゲティングを妨げるだけでなく、siRNAをより効率的に生じる。
【0167】
RNA−DNAキメラの使用によって、PSは非機能的になる。3’末端でDNA塩基を有するSiRNAは非機能的である。従って、PSの3’末端でのDNA塩基の導入はオフターゲット効果を回避する。
【0168】
RNA−DNAキメラの使用によって、シード結合はさらに特異的にされる。DNAとRNAとの間の低い結合エネルギーの結果として、シード領域でDNA塩基を有するsiRNA(代表的には、5’末端の最初の2〜10ヌクレオチド)は、標的mRNAに結合するとき、シード領域でのミスマッチに対して、より高感度を示す。従って、シード領域に組み込まれたDNA塩基を有するsiRNAは、オフターゲティングを低下するかまたは最小限にする。
【0169】
あるいは、またはさらに、修飾された塩基、例えば、2’OMが、オフターゲティングをさらに低下するためにシード領域に追加される。
【0170】
(実施例3)
KRAS 3’UTRに対する改変されたオリゴの直接標的:改変されたオリゴ1の生成
本発明の方法は、KARSなどの遺伝子の3’UTRとのlet−7相補性部位(LCS)に対して改変されたオリゴ分子を直接標的する工程を含む。
【0171】
本発明の一実施形態では、標的された遺伝子は、ヒトKRAS(遺伝子ID Hs KRAS、およびGenBankアクセッション番号M54968(参照によって本明細書に援用される)として公知)である。このヒトKRAS遺伝子では、LCS6 SNPは、ヌクレオチド塩基対2509で生じる。本発明の改変されたオリゴは、miRNA結合部位を標的するだけでなく、LCS6 SNPを含む、含有する、または含む任意の領域または配列も標的する。本発明の改変されたオリゴ、例えば、本明細書に提供されるオリゴは、非限定的な例示的な改変されたオリゴである。LCS6 SNPを含む、含有する、または含む、領域または配列を特異的に標的する全ての改変されたオリゴが本発明によって包含される。
【0172】
以下の配列は、改変されたオリゴ1に関しており、ここでRNAは、黒の小文字であり、DNAは大文字であり、配列の改変は太字である。ガイド鎖(Guide Strands)(GS)はパッセンジャー鎖(Passenger Strands)(PS)と対になって、二本鎖siRNA分子を形成する。温度はセ氏である。標的された配列内の「G」はLCS6 SNPに相当する。
【0173】
【化11】

融解温度 8ヌクレオチド 5’ GS:
RNA−RNA → 36.8度
RNA−DNA → 20.8度
DNA−DNA → 21.5度
融解温度 8ヌクレオチド 5’ PS:
RNA−RNA → 36.9度
融解温度 8ヌクレオチド 5’ GS(ミスマッチあり)
RNA−DNA →<10度
DNA−DNA → 10.9度。
【0174】
(実施例4)
KRAS 3’UTRに対する改変されたオリゴの直接標的:改変されたオリゴ2の生成
以下の配列は、改変されたオリゴ2に関し、ここでRNAは黒の小文字であり、DNAは大文字であり、配列の改変は太字である。ガイド鎖(GS)はパッセンジャー鎖(PS)と対になって、二本鎖siRNA分子を形成する。温度はセ氏である。標的された配列内の「G」はLCS6 SNPに相当する。
【0175】
【化12】

融解温度 8ヌクレオチド 5’ GS:
RNA−RNA → 32.0度
RNA−DNA → 12.5度
DNA−DNA → 18.4度
融解温度 8ヌクレオチド 5’ PS:
RNA−RNA → 40.7度
(実施例5)
KRAS 3’UTRに対する改変されたオリゴの直接標的:改変されたオリゴ3の生成
以下の配列は、改変されたオリゴ3に関しており、ここでRNAは黒の小文字であり、DNAは大文字であり、配列の改変は太字である。ガイド鎖(GS)はパッセンジャー鎖(PS)と対になって、二本鎖siRNA分子を形成する。温度はセ氏である。標的された配列内の「G」はLCS6 SNPに相当する。
【0176】
【化13】

融解温度 8ヌクレオチド 5’ GS:
RNA−RNA → 16.3度
融解温度 8ヌクレオチド 5’ PS:
RNA−RNA → 41.5度。
【0177】
(実施例6)
KRAS 3’UTRに対する改変されたオリゴの直接標的:ルシフェラーゼ活性。
【0178】
実施例3〜5に記載される改変されたオリゴを再懸濁し、次いでアニーリングした(組み合わせは下に詳しい)。
【0179】
用いたアニーリングしたオリゴの組み合わせ(図2B、3、4、および5を参照のこと):
KRAS #1−1:KRAS1 GS1 + KRAS1 PS
KRAS #1−2:KRAS1 GS2 + KRAS1 PS
KRAS #1−3:KRAS1 GS3 + KRAS1 PS
KRAS #2−1:KRAS2 GS1 + KRAS2 PS1
KRAS #2−2:KRAS2 GS1 + KRAS2 PS2
KRAS #2−3:KRAS2 GS2 + KRAS2 PS1
KRAS #2−4:KRAS2 GS2 + KRAS2 PS2
KRAS #3−1:KRAS3 GS1 + KRAS3 PS1
KRAS #3−2:KRAS3 GS1 + KRAS3 PS2
アニーリングされた改変されたオリゴは、Lipofectamine(商標)を用いて293T細胞中にトランスフェクトした。KRAS 3’UTRを含有するルシフェラーゼレポーター構築物(LCS6 SNPは有無の場合がある)もこれらの293T細胞中にトランスフェクトした。アニーリングされた改変されたオリゴは、いずれかのルシフェラーゼ構築物に結合して、レポータータンパク質構築物の分解またはレポータータンパク質構築物の翻訳の阻害のいずれかによって、遺伝子発現をサイレンシングする。
【0180】
これらのルシフェラーゼアッセイに用いられる陰性コントロールは、改変のないQiagen AllStars陰性コントロールのsiRNAであった。この陰性コントロールは、マイクロアレイによってオフターゲティングについてチエックされており、細胞の周期、生存度および/または核の大きさに対して影響がないことを実験的に確認されている。
【0181】
ホタルのルシフェラーゼの値を、ウミシイタケのルシフェラーゼの値に対して正規化した。3つの独立したトランスフェクションについてのこの比の平均を、各々の実験についての各々の時点で算出した。次いで、この算出された平均をコントロールのsiRNAのトランスフェクションにおける平均の比に対して正規化した(図2AおよびB)。
【0182】
ルシフェラーゼレポーターアッセイの結果によって、アニーリングされた改変されたオリゴが直接、LCS6 SNPを含むKRAS 3’UTRに結合することが示される。さらに、アニーリングされた改変されたオリゴは、野性型KRAS構築物に比較して、この構築物からのルシフェラーゼ発現の減少によって示されるLCS6 SNPを含むレポーター構築物を特異的にサイレンシングし得る(図2B)。このアッセイは、概念実証であって、結果は、少なくとも1つのSNP、例えば、LCS6 SNPを含有する領域を直接標的する、改変されたオリゴが操作可能であって、この領域を含む遺伝子のサイレンシングが生じるということを示している。
【0183】
(実施例7)
改変されたオリゴ処理は、複数の癌細胞タイプの生存を低下させる。
【0184】
オリゴヌクレオチドの異なる組み合わせをアニーリングして、onco−SNP(LCS6 SNP)陽性細胞株 IGR−OV1(卵巣)、DU−145(前立腺)、789−0(腎臓)、MIAPACA(膵臓)、EKVX(肺)およびMCF7(乳房)にトランスフェクトした(組み合わせの概要説明については実施例6、段落176を参照のこと)。細胞はクローン形成アッセイで増殖させて、細胞生存に対するオリゴの影響を決定した(クローン形成アッセイの説明については実施例1を参照のこと)。
【0185】
図3では、1つ以上の改変されたオリゴの投与により、癌細胞がLCS6 SNPを含む場合、癌細胞の生存が低下することを示す。最も劇的な結果が、卵巣、肺、乳房および膵臓の癌細胞株で観察された。さらに変化したが、いくつかのオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いた場合、有効な細胞死が前立腺および腎臓の細胞株で観察された。従って、図3のデータでは、本発明の改変されたオリゴヌクレオチドの投与がLCS6 SNPを含む癌の有効な広いスペクトルの処置であることを示す。
【0186】
単一の腫瘍タイプにおけるオリゴヌクレオチドの組み合わせの間の有効性の変動は、多数の方式で説明できる。第一に、これらのオリゴヌクレオチドの組み合わせは、種々のRNA対DNA比を含む。実施例2に説明されるとおり、RNA−DNAキメラの使用は、二本鎖のRNAキメラとは対照的に、複数の機構、例えば、RISCへのパッセンジャー鎖(PS)の導入を阻害すること、およびmiRNAプロセシングの間にPSを非機能的にすること、ならびにmRNA標的に対するmiRNAのシード配列結合の特異性を増大すること(これは、相互作用をさらに有益でかつ有望なものにするmiRNAとそのmRNAとの間の結合エネルギーを低くする)によってオフ・ターゲティングを最小化し得る。第二に、改変されたオリゴヌクレオチドがルシフェラーゼ遺伝子に融合されたKRASの3’UTRを含む合成的にかつ外因性に導入された構築物を標的した、図2Bに示される結合事象とは対照的に、図3のオリゴヌクレオチドは、内因性のKRASのmRNAを標的する。この第二の相違は重大である。なぜなら、内因性のmRNAはmiRNA結合部位の利用可能性およびmiRNA−mRNAの相互作用に必要な結合エネルギーに影響する二次構造を有するからである。さらに、mRNAは、それらが同じ組織由来のmRNAであっても、細胞株の間で変化する生理学的レベルで発現される。mRNAはまた、種々の内因性の調節性RNAおよびこの改変されたオリゴヌクレオチドと競合するタンパク質によって標的される。
【0187】
図3に用いられる細胞株は、それらがLCS6 SNPを含むという理由で選択されるだけでなく、それらがこれらの癌のタイプの当該分野で認識されるモデルであるという理由でも選択された。しかし、当業者は、ある細胞株、特に多世代にわたってインビトロで維持されている細胞株は、LCS6 SNPを含み、かつKRASを過剰発現する場合でさえ、その発癌能力についてKRASに依存しない場合があることを容易に理解できる。従って、改変されたオリゴヌクレオチドが図3の細胞株でKRASを効果的にサイレンシングした場合でさえ、細胞生存は、全てのクローンで達成されていない場合もある。従って、本発明の改変されたオリゴヌクレオチドの有効性は、原発性腫瘍細胞で確認される。
【0188】
個体での変動をさらに説明するために、LCS6 SNP癌細胞株は、異なるレベルの内因性のlet−7のmiRNAまたはlet−7のmiRNAの異なる対立遺伝子(LCS6 SNP部位に結合するのに改変されたオリゴヌクレオチドと競合する)を発現し得る。内因性のlet−7のmiRNAは、LCS6 SNPに対する結合について有効性が低くなければならないと期待されるが、いくつかの改変されたオリゴヌクレオチドの配列は、かなり有益な結合相互作用を可能にし、かつこれらのオリゴが内因性でかつ有効でないmiRNAをさらによく打ち負かすことを可能にするということが可能である。この競合を克服するため、改変されたオリゴヌクレオチドの投薬量を増大する。あるいは、またはさらに、2つ以上の改変されたオリゴヌクレオチドを、治療上有益な結果が得られるまで、対象に同時にまたは連続して投与する。
【0189】
最終的に、任意の所定の改変されたオリゴヌクレオチドは、内因性のmiRNAのmRNA標的に対して実質的に類似の配列を有する場合があり、従って、分解について宿主細胞によって標的され得る。これが発生することを克服するために、LCS6 SNPにこれもまた結合する種々の配列を有するいずれか別の改変されたオリゴヌクレオチドを対象に同時にまたは連続して投与する。
【0190】
重要なことに、図3のデータは堅実であって、本発明の改変されたオリゴヌクレオチドの組み合わせが、癌細胞タイプを含む各々のLCS6 SNPの細胞生存を効果的に低下し、上記の障害の各々を克服したことを示しており、この図は説得力があり、かつ2〜3の異常値を説明できる。さらに、図3は、LCS6 SNPを少なくとも1つおよび実際には複数含んでいるあらゆる癌細胞タイプで、改変されたオリゴヌクレオチドが癌細胞の生存を効率的に低下したことを示すという理由がある。従って、複数の改変されたオリゴヌクレオチドの投与は、図3のデータをもたらした正の治療結果を保証するはずである。
【0191】
細胞に対する改変されたオリゴヌクレオチドを含む組成物の投与の有効性は、LCS6−SNP陽性または陰性のいずれかの細胞(LCS6−SNP陽性または陰性のいずれかの細胞は改変されたオリゴを投与され、いずれかは陰性のオリゴヌクレオチドコントロールのオリゴまたはプラシーボの陰性コントロールを投与される)の癌細胞生存を低下する有効性を比較することによって決定される。例示的な陰性のオリゴヌクレオチドコントロールのオリゴはAllstars陰性のコントロールのオリゴであって、このオリゴはQiagenから入手できる、アニーリングされた二本鎖のsiRNAである。
【0192】
(実施例8)
改変されたオリゴの処置により、卵巣癌および膵臓癌の細胞タイプの生存が低下する
オリゴヌクレオチドの異なる組み合わせをアニーリングして、onco−SNP(LCS6 SNP)陽性の卵巣癌細胞株および膵臓癌細胞株にトランスフェクトした(組み合わせの概要説明については実施例6、176段落を参照のこと)。細胞をクローン形成アッセイで増殖させて、細胞生存に対するオリゴの影響を決定した(クローン形成アッセイの説明については実施例1を参照のこと)。
【0193】
図4では、1つ以上の改変されたオリゴの投与により、癌細胞がLCS6 SNPを含む場合、LCS6 SNPを含まない癌細胞と比較して、癌細胞の生存が低下することを示す。図3と同様に、極めてわずかな例外はあるが、本発明の改変されたオリゴヌクレオチドは、卵巣癌細胞および膵臓癌細胞の細胞生存を、それらの細胞がLCS6 SNPを含む場合、効果的に低下した。重要なことに、各々の癌のタイプにおいて、図4は、癌細胞生存を少なくとも50%まで低下した1つのオリゴヌクレオチドの組み合わせを示す。卵巣癌細胞株の生存は、オリゴヌクレオチドの組み合わせ1.3および2.1の投与後に50%を超えるまで低下した。同様に、膵臓癌細胞の生存は、オリゴヌクレオチドの組み合わせ2.3の投与後に少なくとも50%まで低下した。
【0194】
(実施例9)
改変されたオリゴの処置により、卵巣癌細胞の生存が低下する
異なる組み合わせのオリゴヌクレオチドをアニーリングして、onco−SNP(LCS6 SNP)陽性の卵巣細胞株およびonco−SNP陰性の細胞株にトランスフェクトした(概要説明については実施例6、段落176を参照のこと)。細胞をクローン形成アッセイで増殖させて、細胞生存に対するオリゴの影響を決定した(クローン形成アッセイの説明については実施例1を参照のこと)。
【0195】
図5では、1つ以上の改変されたオリゴの投与により、癌細胞がLCS6 SNPを含む場合、LCS6 SNPを含まない癌細胞と比較して、癌細胞の生存が低下することを示す。示された全ての改変されたオリゴヌクレオチドの組み合わせは、SNP陰性の卵巣癌細胞株と比較して、LCS6 SNP陽性の癌細胞の生存を効果的に低下した。図4と同様に、改変されたオリゴヌクレオチドの組み合わせ1.3および2.1は、卵巣癌細胞の生存を、50%を超えて低下した。
【0196】
(実施例10)
改変されたオリゴヌクレオチド結合のコンピューター予想
本発明の改変されたオリゴヌクレオチドがLCS6 SNP、または別の癌遺伝子に結合するか否か、および相互作用が生じるのに必要な結合エネルギーの量を決定するために、コンピューターアプローチを用いる。例えば、RNAハイブリッド、公的に利用可能なアルゴリズムを用いて、所定の標的RNAに対する本発明の改変されたオリゴヌクレオチドおよび公知のmiRNAの結合エネルギーを比較する(Kruger,J.およびRehmsmeier,M.Nucleic Acids Research,2006,34:W451〜454;Rehmsmeier,M.およびSteffen,P.RNA,2004,10:1507〜1517を参照のこと)。RNAhybridプログラムの1つの利点は、シード配列の長さ、G:U塩基対合、およびシードマッチオプションなどのパラメーターが非標準的な相互作用を説明するために改変され得るということである。
【0197】
従って、対象の処置のために上記のアルゴリズムを用いるために、癌対象の1つ以上のKRAS対立遺伝子を(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、PCRを用いて)、特に3’UTR内で増幅し、増幅された遺伝子のこの部分を、当該分野で公知の方法に従って配列決定する。一旦、KRAS遺伝子のDNA配列が決定されれば、mRNA配列は以下の規則に従って描写される:アデノシン(DNA)は、ウラシル(RNA)と対になり、チミン(DNA)はアデノシン(RNA)と対になり、シトシン(DNA)はグアニン(RNA)と対になり、そしてグアニン(DNA)はシトシン(RNA)と対になる。KRAS転写物のmRNA配列を、RNAハイブリッドを用いて本発明の改変されたオリゴヌクレオチドの配列と比較する。KRAS遺伝子に改変されたオリゴヌクレオチドが結合するのに必要な結合エネルギーが、同じKRAS遺伝子に野性型または内因性のlet−7のmiRNAが結合する(この相互作用はコントロールとして用いられる)ための結合エネルギーよりも小さいならば、この改変されたオリゴヌクレオチドは、KRASを治療的にサイレンシングする。改変されたオリゴヌクレオチドが野性型let−7のmiRNAよりも有益な結合エネルギーを有する場合、KRAS遺伝子は変異を含と予想される。この変異はLCS6 SNPである場合が多い。
【0198】
(実施例11)
原発性腫瘍細胞における改変されたオリゴヌクレオチドの有効性の実験的な確認
対象の癌または腫瘍を処置するのにおける本発明の改変されたオリゴヌクレオチドの有効性を決定するために、生検を行い、原発性の腫瘍細胞を除去する。これらのエキソビボの原発性腫瘍細胞は、処置が意図される同じ患者から採取されるか、または同様の医学的背景の患者から採取され、LCS6 SNPの有無について試験される。本発明の改変されたオリゴヌクレオチドでの処置は、LCS6 SNP変異を有する対象においてよりも有効であると期待されるが、本発明の組成物は全てのKRAS依存性腫瘍またはRAS依存性腫瘍について意図される。「同様の医学的背景」という用語は、等価な年齢、性別、身長、体重、既往歴(例えば、医学的状態の履歴)、LCS6 SNP状態、癌のタイプおよび病期、ならびに処置計画という対象を記述するものとする。
【0199】
あるいは、またはさらに、改変されたオリゴヌクレオチドの組み合わせをアニーリングして、白血病、リンパ腫、癌腫、肉腫、胚細胞癌、または芽細胞腫癌(例示的な組み合わせについては、実施例6、段落176を参照のこと)から単離された原発性腫瘍にトランスフェクトする。細胞を細胞生存に対する改変されたオリゴの影響を決定するためのクローン形成アッセイで増殖させる(クローン形成アッセイの説明については実施例1を参照のこと)。処置された原発性の癌細胞を、未処置のLCS6−SNP陽性、処置したLSC6−SNP陰性、および/または未処置のLCS6−SNP陰性の原発性癌細胞と比較する。
【0200】
原発性の癌細胞が本発明の改変されたオリゴヌクレオチドに反応性である対象、例えば、原発性癌細胞が、SNPを含まない原発性癌細胞に比べて、または本発明の改変されたオリゴヌクレオチドを含む組成物で処置されてない原発性細胞に比べた場合、生存細胞の減少を示す対象には、局所的にまたは全身的に提供される、本発明の少なくとも1つの改変されたオリゴヌクレオチドを含む組成物を投与する。対象に最も高頻度に投与される組成物は、原発性癌細胞に投与される同じ改変されたオリゴヌクレオチドを含む。必要に応じて、2つ以上の改変されたオリゴヌクレオチドを含む組成物を、原発性癌細胞の試験、および対象の処置で用いる。
【0201】
(実施例12)
マウス異種移植片モデルにおける改変されたオリゴヌクレオチドの有効性および送達の実験的な確認
実施例7に記載されるような、樹立されたヒト癌細胞株、または実施例11に記載されるような原発性のヒト癌細胞を、免疫力が低下したマウス腫瘍モデルに導入して、インビボで改変されたオリゴヌクレオチド組成物の処置および送達の有効性を決定する。例えば、野性型のマウスと比較して、B細胞、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞数が低下しているマウスは、免疫力が低下しているとみなされる。異種移植片実験に共通して用いられる例示的な免疫力の低下したマウスとしては限定するものではないが、SCID、NOD、NSG(NOD SCIDγ)、およびヌード無胸腺マウスが挙げられる。追加の例は、例えば、癌のための研究ツールとして用いられるマウス株のJackson Laboratories’のリストに見ることができる(http://jaxmice.jax.org/list/rax3.html)。
【0202】
本発明の異種移植片マウスモデルを、必要に応じてLCS6 SNP変異を担持してインビトロで改変されたオリゴヌクレオチド処置に応答する、癌細胞株または原発性癌細胞を移植する。細胞を、例えば、腫瘍起源の部位で、皮下にまたは同所性に移植して、もとのヒト条件を繰り返し用いる。異種移植片は本発明の組成物で、またはコントロールの処置(例えば、アンチセンスまたはスクランブルの(scrambled)オリゴヌクレオチド)で処置して、限定するものではないが、腫瘍の異型度、腫瘍の大きさ、腫瘍の被嚢性、転移能または転移、腫瘍の退行、癌の寛解、腫瘍の血管新生、腫瘍細胞媒介性の血管新生因子または増殖因子の分泌、腫瘍細胞媒介性の腫瘍周囲の細胞マトリクスの分解、および癌細胞の生存または死滅を含めて種々のパラメーターで変化について評価する。治療有効性の例示的な徴候としては、腫瘍の異型度の改善;腫瘍の大きさの減少;腫瘍の被嚢性の維持;転移能の維持または低下;転移の予防、阻害または停止;腫瘍の退行の維持または増大;癌の寛解の維持;腫瘍の血管新生の防止、阻害または逆行;腫瘍細胞媒介性の血管新生因子または増殖因子の分泌の防止または阻害;腫瘍細胞媒介性の細胞マトリクスの分解の防止または阻害;癌細胞生存の減少;癌細胞の死滅の増大が挙げられる。さらに、マウスの長期の生存も治療有効性の徴候である。
【0203】
異種移植片を含むマウスは、処置後に毒性の徴候についてモニターする。本発明の組成物の投薬量を、最大耐量が決定されるまで増大する。言いかえれば、無毒性量(no observed adverse effect level)(NOAEL)を決定する。これらの投薬レベルは、United States Federal Drug Administrationのガイドラインを用いて置き換えて、ヒトの臨床試験のための最大推奨出発用量(maximal recommended starting dose)(MRSD)としてヒトでの等価投与量(Human Equivalent Dosage)決定する。この変換は代表的には、本発明の組成物を全身に投与した場合の体表面積に基づく。しかし、組成物は、用量を局所毒性に限定する経路によって投与されるとき(例えば、局所、経鼻、皮下、筋肉内)、ヒトの濃度は、適用部位の組成物の濃度または量に正規化される。さらに、組成物がわずかな引き続く全身の分布を伴う解剖学的区画に投与された場合(例えば、クモ膜下腔内、膀胱内、眼内、胸膜内および腹腔内)、ヒトの濃度は、組成物の区画容積および濃度に対して正規化しなければならない。
【0204】
本発明の好ましい実施形態では、組成物の治療上有効な用量を、異種移植片を有するマウスに、またはヒト対象に投与して、個体の血液中または脳脊髄液(CSF)中の改変されたオリゴヌクレオチドの濃度を、経時的な用量のグラフの曲線下免疫を算出することによって決定する。個体の最適の処置計画は、濃度が個体においてまたは個体間で変化するのに達するのに必要な投薬量であっても、本発明の組成物の一定の血液またはCSF濃度を維持することによって決定され得る。
【0205】
他の実施形態
本発明はその詳細な説明と組み合わせて記載してきたが、前述の説明は、本発明を例示する意図であって、その範囲を限定するものではなく、本発明は添付の特許請求の範囲によって規定される。他の態様、利点および改変は添付の特許請求の範囲内である。
【0206】
本明細書で言及される特許および化学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書で引用される全ての米国特許および公開または未公開の米国特許出願は、参照によって援用される。本明細書に引用される全ての公開された外国特許および特許出願は、参照によって本明細書に援用される。本明細書に引用されるアクセッション番号によって示されるGenbankおよびNCBI提出物は、参照によって本明細書に援用される。本明細書に引用される全ての他の公開された引用文献、書類、原稿および科学文献は参照によって本明細書に援用される。
【0207】
本発明は、その好ましい実施形態を参照して詳細に示されかつ記載されてきたが、形態および詳細における種々の変化が添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく本明細書においてなされ得ることが当業者によって理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号22、24、25、26、27、29、30、31、32、34、35、または36のヌクレオチド配列を含む、単離された改変されたオリゴ。
【請求項2】
請求項1に記載の単離された改変されたオリゴを含む組成物。
【請求項3】
細胞毒性化合物をさらに含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記細胞毒性化合物が放射性同位体であるか、または化学療法化合物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
癌の症状を処置または緩和する方法であって、該処置または緩和が必要な対象に請求項2に記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項6】
前記癌が、肺癌、卵巣癌、乳癌、子宮癌、頭頸部癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、または結腸癌である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が局所的に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が全身的に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、局所、静脈内、眼内、皮下、腹腔内、筋肉内、脊髄内、または外科的に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
癌細胞において細胞死を誘導する方法であって、該癌細胞に請求項2に記載の組成物を接触させる工程を含む、方法。
【請求項11】
前記癌細胞がインビボで存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記癌細胞がインビトロで存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記癌細胞がエキソビボで存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記癌細胞がインサイチュで存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記癌が肺癌、卵巣癌、乳癌、子宮癌、頭頸部癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、または結腸癌である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が局所的に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が全身的に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、局所、静脈内、眼内、皮下、腹腔内、筋肉内、脊髄内、または外科的に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記対象がLCS6 SNPを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項20】
前記癌細胞が変異を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記変異がLCS6 SNPである、請求項20に記載の方法。

【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−521649(P2011−521649A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511849(P2011−511849)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/045648
【国際公開番号】WO2009/155100
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(392019352)イェール ユニバーシティー (38)
【氏名又は名称原語表記】YALE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】