説明

遺伝子組み換え真皮小器官

【課題】真皮小器官(Dermal Micro Organ:DMO)及びそれを作成及び使用するための方法及び器具を提供する。
【解決手段】真皮組織のミクロ構造及び三次元構造を実質的に保持する複数の真皮成分を含んでいるDMOであって、前記真皮成分は、前記DMO内における栄養不足及び老廃物の蓄積に起因する細胞毒性及びそれに付随する死を最小限に抑えるために、前記DMOの細胞への十分な量の栄養素及び気体の受動拡散と前記細胞から出る老廃物の拡散とが可能になるように選択された寸法を有する遺伝子組換えDMO。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織に基づいた小器官、治療用組織に基づいた小器官、並びに、真皮組織を採取、処理、移植及び操作するための方法及び器具の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
治療物質を送達するための様々な方法が知られている。例えば、治療物質は、経口的に、経皮的に、吸入によって、注射によって、及び徐放性のデポー剤によって送達することができる。これらのいずれの場合でも、送達方法は、頻繁な投与の要求によってもたらされる治療物質による身体作用、及び、利用可能な分子サイズの限定によって制限される。それらのいくつかの方法では、治療物質の量は投与方法によって異なる。
【0003】
身体の外側(エキソビボ又はインビトロ)で長時間に渡って自律的な機能状態に維持でき、様々な操作を行える真皮小器官(Dermal Micro Organ:DMO)は、その後、病気又は疾患を治療する目的或いは形成外科の目的で、皮下又は体内に移植できる。DMOは、目的とする遺伝子産物を発現するように、遺伝子組み替えすることができる。これらの遺伝子が組み替えられた真皮小器官は、一般に、真皮治療用小器官(Dermal Therapeutic Micro Organ:DTMO)と呼ばれる。
【0004】
表皮及び真皮組織の層を含んでいる皮膚小器官(Skin Micro Organ)は、例えばPCT/IL02/0880に記載されているように、多くの臨床実験で観察されている。皮膚サンプルの採取は、数週間存続し瘢痕を残すであろう浅い傷を患者に残す。採取された皮膚サンプルから小器官を作成するためには重要な処理が必要である。また、皮膚小器官を皮下又は身体のより深い所に移植すると、角質嚢腫又は角質小嚢腫を発達させることが知られている。さらに、皮膚小器官を移植片として皮膚表面の「スリット(slit)」に移植するためには、MOを適切な方向を保ちつつ取り扱うための重要な技術的専門技術が必要とされる。
【0005】
例えば形成外科又は美容整形で「充填剤」として使用される真皮の採取は、当該技術分野では周知である。従来の採取技術では、真皮の一部を露出させるべく、表皮層をはがすためには、デルマトーム(dermatome)又はメスを使用していた。デルマトーム又はメスは、その後、露出された真皮の一部を手動で採取するために再び使用される。
【0006】
真皮を採取するための他の従来の器具は、一般的には使用されないが、パジェット(Padgett)から販売されているマーティン真皮採取器(Martin Dermal Harvester)(Part No. P-225)がある。これは、真皮のコアを後ろから採取するのに使用される。採取されたコアは、その後、美容の唇増大手術中に唇に移植される。この一般的には使用されない器具を操作するには、鋭利な切断管(再利用可能な、内径が約4.5mmの厚肉のチューブ)を手動で非常ゆっくりとした速度で回転させる。このタイプの器具を使用するには、皮膚表面における採取部位の上側に圧力を直接的に加えつつ、切断管が前方に向かって進むように、積極的に引っ張りながら縫合糸を挿入することが必要である。さらに、一般に、採取された真皮の寸法は均一ではなく、真皮のコアの片側に、表皮の「プラグ(plug)」を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,883,666号
【特許文献2】米国特許第4,892,538号
【特許文献3】米国特許第5,106,627号
【特許文献4】米国特許第4,391,909号
【特許文献5】米国特許第4,353,888号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Concise Encyclopedia of Medical & Dental Materials, ed. By David Williams (MIT Press: Cambridge, MA, 1990)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある実施形態では、目的とする治療物質の高い生成及び分泌レベルを保ちながら、DMOに対して行われる様々な操作ができるように、一般には、生存可能な状態で生体外で維持される能力を有するDMO/DTMOを提供する。また、本発明の他の実施形態では、DMOの採取方法、及び、移植後に角質嚢腫又は角質小嚢腫が形成されることのないDTMOの皮下移植方法(皮下又は身体の深くに移植されたDTMO上に角質が形成されない)を提供する。さらに、当業者なら容易に理解するであろうが、本発明のある実施形態の方法及び装置は比較的簡単なものとなるため、当業者が本発明に係る方法及び装置を使用する際は、従来の手法に必要されるほど高い熟練度は必要とされない。
【0010】
本発明のある例示的実施形態では、真皮組織及び周囲の基質などの複数の真皮成分を含む真皮小器官(dermal micro organ:DMO)を提供する。本発明のある実施形態では、このDMOは、一般に、それが採取された真皮器官のミクロ構造及び三次元構造を保持しており、そのDMO構造は、真皮小器官内における栄養不足及び老廃物の蓄積に起因する細胞毒性及びそれに付随する死を最小限に抑えるために、真皮小器官の細胞への十分な量の栄養素及び気体の受動拡散と細胞から出る老廃物の拡散とを可能にする。
【0011】
本発明のある例示的実施形態では、本発明に係る真皮小器官は、ケラチンを生成しない、又はケラチンをほとんど生成しない。
【0012】
本発明のある実施形態では、真皮小器官は、皮下又は身体の深部への移植後に、ケラチン(keratin)及び/又は角質嚢腫(keratin cyst)を生成しない。
【0013】
本発明の他の実施形態では、本発明に係る真皮小器官は、比較的短期間(例えば、移植後数日又は数週間)で萎縮する角質嚢腫を生成する。
【0014】
本発明の他の実施形態では、本発明に係る真皮小器官は、短期間(例えば、移植後数日又は数週間)で萎縮する毛嚢及び脂腺を含んでいる。
【0015】
本発明の他の実施形態では、本発明に係る真皮小器官は、短期間(例えば、数日又は数週間)の後に皮膚表面に結合する腺を含んでいる。
【0016】
別の例示的実施形態では、真皮小器官を採取するための方法及び装置を提供する。前記方法は、採取される真皮小器官の皮膚関連組織構造を皮膚関連組織構造が望ましい形状及び/又は位置に維持されるように固定及び/又は支持するステップと、真皮小器官の少なくとも一部を皮膚関連組織構造から分離さるステップと、分離した真皮小器官を身体から離すステップとを含んでいる。本発明のある例示的実施形態では、支持構造は、第1の管状部材、及び、第1の管状部材に沿って実質的に同軸方向に挿入されるように構成された第2の管状部材を有する切断ツールを備えている。本発明の他の例示的実施形態では、支持構造は、切断ツールが皮膚関連組織構造からDMOを分離させることができるように、皮膚関連組織構造を望ましい形状及び位置で保持可能な支持内面を有する真空槽を備えている。
【0017】
本発明の別の例示的実施形態では、それが由来する真皮組織のミクロ構造及び三次元構造を実質的に保持する複数の真皮成分(真皮組織の細胞及びマトリックスを含む)を含んでおり、少なくとも1つの組み換え型の遺伝子産物を発現する遺伝子組み換え真皮小器官であって、前記真皮成分は、前記真皮小器官内における栄養不足及び老廃物の蓄積に起因する細胞毒性及びそれに付随する死を最小限に抑えるために、前記真皮小器官の細胞への十分な量の栄養素及び気体の受動拡散と前記細胞から出る老廃物の拡散とが可能になるように選択された大きさを有しており、前記真皮小器官の少なくともいくつかの細胞は、少なくとも1つの組み換え型の遺伝子産物(又はその一部)を発現する遺伝子組み換え真皮小器官を提供する。
【0018】
さらに、本発明の別の例示的実施形態では、それが由来する真皮組織のミクロ構造及び三次元構造を実質的に保持する複数の真皮成分(真皮組織の細胞及びマトリックスを含む)を含んでおり、少なくとも1つの組み換えタンパクを発現する遺伝子組み換え真皮小器官であって、前記真皮成分は、前記真皮小器官内における栄養不足及び老廃物の蓄積に起因する細胞毒性及びそれに付随する死を最小限に抑えるために、前記真皮小器官の細胞への十分な量の栄養素及び気体の受動拡散と前記細胞から出る老廃物の拡散とが可能になるように選択された大きさを有しており、前記真皮小器官の少なくともいくつかの細胞は、少なくとも1つの組み換えタンパク(又はその一部)を発現する遺伝子組み換え真皮小器官を提供する。
【0019】
本発明のある例示的実施形態では、本発明に係る遺伝子組み換えされた真皮小器官は実質的にケラチンを生成しない。
【0020】
ある実施形態では、本発明は、真皮小器官によって生成された組み換え遺伝子を被移植者に送達する方法を提供する。
【0021】
ある実施形態では、本発明は、真皮小器官を移植することにより、被移植者の局部又は全身の生理的効果を誘導する方法を提供する。
【0022】
他の実施形態では、本発明は、患者に目的のタンパク質を届ける方法を提供する。この方法は、遺伝子組み換えされた真皮小器官を皮膚の下(又は身体の他の位置)に移植することを含む。
【0023】
他の実施形態では、本発明は、角質嚢腫形成を回避又は減少させるために、真皮小器官を移植する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の例示的実施形態における、DTMO(delmal therapeutic micro organ)の作成及び使用方法を概略的に示すブロック図である。
【図2】(a)は本発明のある実施形態における、インビトロでの移植前のmIFNα―TMOの分泌と、インビボでの移植後のmIFNα―TMOの血清中濃度との相関分析を示す図であり、(b)は本発明のある実施形態における、インビトロでの移植前のhEPO―TMOの分泌と、インビボでの移植後のhEPO―TMOの血清中濃度との相関分析を示す図である。
【図3】(a)は本発明のある実施形態における、ELISA分析によって測定されたhEPOの血清中濃度の上昇を示す図であり、(b)は本発明のある実施形態における、ミニブタにTMOを自己移植した後の網状赤血球数の上昇を示す図である。
【図4】6つの異なるヒトの皮膚から作成されたDTMO−hEPOによるヒトエリスロポエチン(human erydropoietin:hEPO)の分泌レベルを概略的に示すグラフである。
【図5】DTMO及び中間層皮膚TMOの組織構造を示す図である。
【図6】DTMOの免疫組織化学(immunohistochemistry:IHC)及びHematoxylin & Eosin(H&E)染色を示す図である。
【図7】SCIDマウスにDTMO−hEPO及び中間層皮膚TMO−hEPOを皮下移植した後の、インビボでのhEPOの血清中濃度とヘマトクリット値への生理的影響とを示す図である。
【図8】SCIDマウスに皮下移植されたDTMO−hEPO及び中間層皮膚TMO−hEPOの臨床及び組織学的分析を示す図である。
【図9】健康な被験者に移植した17日後の組織学的分析を示す図であり、右側の図は皮膚のスリットに移植された中間層皮膚MOの図であり、左側の図はS.C.移植された真皮MOの図である。
【図10】本発明の例示的実施形態における、DMOの採取方法を概略的に示すフローチャートである
【図11】(a)〜(c)は、図10に示した方法における、DMOを採取する例示的な段階を示す概略図である。
【図12】本発明のある例示的実施形態に係る、皮膚採取用具と共に使用されるクランプツールを示す概略図である。
【図13】本発明のある例示的実施形態に係る真皮採取装置であって、DMOを得るための組織に挿入されるコアリングチューブを備えており、インナーガイドニードルと同軸的に採取する真皮採取装置を示す図である。
【図14】(a)〜(c)は、本発明のある例示的実施形態に係る真皮採取真空装置を概略的に示す正面図である。
【図15】本発明のある例示的実施形態に係る、真皮小器官を望ましい位置で支持する図14(a)〜(c)に示した装置を概略的に示す側断面図である。
【図16】望ましい位置で採取するために真皮小器官を外部から支持する図15に示した装置を概略的に示す断面図である。
【図17】本発明の他の例示的実施形態に係る真皮採取装置を示す概略図である。
【図18】本発明の別の例示的実施形態に係る採取装置を示す概略図である。
【図19】図18に示した採取装置の使用状態を示す概略図である。
【図20】本発明のある例示的実施形態に係る、DTMOの移植方法を概略的に示すフローチャートである。
【図21】本発明のある例示的実施形態に係る、DTMOの切除方法を概略的に示すフローチャートである。
【図22】本発明のある例示的実施形態に係る、採取したDMOを処理するためのシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで使われる「移植片」という用語は、本発明のある実施形態では、被験者の1つ又はそれ以上の組織又は器官から採取した生体組織又は器官の切片を意味している。
【0026】
ここで使われる「真皮小器官(dermal micro organ:DMO)」という用語は、本発明のある実施形態では、少なくともインビボでのある相互作用(それらが採取された組織又は器官と類似した相互作用)を保ちながら、細胞の生存性及び機能を助長する形で作成された移植片に由来する又は同一の分離組織又は器官を意味している。真皮小器官は、それが由来する真皮組織のミクロ構造及び三次元構造を保つ複数の真皮成分を含んでおり、栄養不足及び老廃物の蓄積に起因する細胞毒性及びそれに付随する死を最小限に抑えるために、MO内の細胞への十分な量の栄養素及び気体の受動拡散と、MO内の細胞から出る老廃物の拡散とが可能になるように選択された寸法を有している。真皮小器官は、基本的に、複数の真皮成分(表皮の下側に位置する皮膚組織成分)から成る。これらの成分は、皮膚線維芽細胞、上皮細胞、並びに、毛嚢の基部、神経終末、汗腺、脂腺、血管及びリンパ管に基づいた他の種類の細胞を含む。以下のMO又は真皮MOに関する実施形態の説明では、「真皮組織」という用語は「真皮器官」という意味も含む。
【0027】
ここで使われる「ミクロ構造」という用語は、移植片の細胞集団が、インビトロで、少なくとも1つの細胞又は非細胞性物質との物理的及び/又は機能的な接触を保っているという特徴であって、ある実施形態では少なくとも約50%、他の実施形態では少なくとも約60%、ある実施形態では少なくとも約70%、ある実施形態では少なくとも約80%、ある実施形態では少なくとも約90%又はそれ以上の細胞集団が接触を保っている。移植片の細胞は、それが採取された器官又は組織の少なくとも1つの生物活性を保持していることが望ましい。
【0028】
ここで使われる「ドナー」という用語は、移植片が採取される及び移植片を形成するのに使用される、或いは、すでに1つ又はそれ以上の小器官が形成されている被験者を意味している。
【0029】
ここで使われる「治療用小器官(Therapeutic Micro Organ:TMO)」という用語は、例えば、タンパク質やRNA分子などの治療物質を生成するように遺伝子組み換えされたMOのような、治療対象を手助けするために使用される小器官(Micro Organ:MO)を意味している。治療物質は、自然に分泌される体物質であってもよいし、自然に分泌される体物質でなくともよい。以下のTMOに関する実施形態の説明は、DTMOについても関連している。
【0030】
ここで使われる「移植」という用語は、1つ又はそれ以上のTMO又はDTMOを被移植者へ導入することを意味している。TMO又はDTMOは、被移植者の組織、又は、他のヒト或いは動物の組織に由来する。TMO又はDTMOは、皮下移植によって皮膚のスリット(slit)に移植できる。又は、TMO又はDTMOは、被移植者の身体における他の目的部位に置くことによって移植できる。
【0031】
ここで使われる「被移植者(recipient)」という用語は、1つ又はそれ以上のTMO又はDTMOが移植される被験者(患者)を意味している。
【0032】
ここで使われる「(例えば皮膚を)クランプする(clamping)」という用語は、例えば「(例えば皮膚を)つまむ(pinching)」と同様の動作、又は、同様の目的の動作を意味している。
【0033】
ここで使われる「インビトロ(in vitro)」という用語は、当然のことながら「生体外(ex-vivo)」という意味を含んでいる。
【0034】
ここで使われる「コアリングチューブ(coring tube)」という用語は、単独で又は集団で、「切断ツール(cutting tool)」又は「切断チューブ(cutting tube)」及び「コアリングニードル(coring needle)」を意味している。また、他の同様の機能を有する要素を意味している。
【0035】
説明を明確及び完全にするために、ここではDTMOの作成及び利用の全ての態様について説明する。そして、本発明の実施形態は、プロセスの最初から最後まで説明する。当然のことながら、ここで説明する各態様は、他の態様を実施するための他の方法及び/又は装置と共に、又は、他の目的に使用することもできる(それらのいくつかについてはここで説明する)。本発明は、DTMOに形質変換するための真皮小器官の作成及び維持についての内容を含む。当然のことながら、本発明のこれらの態様によって作成された真皮小器官は、DTMOに形質変換する目的以外にも使用できる。
【0036】
本発明のある実施形態では、小器官は、例えば、線維芽細胞及び/又は上皮成分(神経終末、汗腺、脂腺、血管、リンパ管、エラスチン繊維、コラーゲン繊維、内皮成分、免疫系由来細胞、細胞外マトリックスなどを含んでいる)などの複数の真皮成分を含んでいる真皮小器官である。後述する実施例の欄(実施例5、実施例8)に要約した試験結果に示すように、マウス及びブタにおける(ブタについてのデータは示していない)、従来の、表皮層を含んでいる小器官(中間層皮膚MO:split thickness skin MO)の皮下移植では、角質嚢腫又は角質小嚢腫が形成される。対照的に、本発明の例示的実施形態によって、DMOを得るべく皮膚組織を採取した場合は、マウス、ブタ又は人に嚢胞又は小嚢胞は観察されなかった。本発明に係るDTMOの生物活性は、中間層皮膚由来のTMOと比べると、同等又は高いことに留意されたい。なお、前記生物活性としては、例えば治療用タンパク質の分泌(エリスロポエチンの分泌及びその結果としてのヘマトクリット値の上昇)がある(実施例4参照)。すなわち、どちらの方法で作成しても、同量のエリスロポエチン(erythropoietin)を放出するが、DTMOが生成及び分泌するユニット当たりのタンパク質レベルは、中間層皮膚由来TMOのそれよりも高い。
【0037】
一般的に、DTMOの作成は、DMOの採取、DMOの保存、DMOの改質、DMOの遺伝子組み換えを含んでおり、ある実施形態ではDMOによって目的とする物質(例えばタンパク質)の確認を行う。DTMOの利用は、患者又は動物の体内での、患者を治療するための治療物質(例えばタンパク質)の作成を含んでいる。例えば、DTMOは、インビボで物質(タンパク質)を作成すべく、患者の皮下又は体内に移植される。他の患者から採取した組織を使用する場合は、移植片は、随意的に、被移植者の免疫系反応から保護される(例えば、DTMOを免疫保護カプセル又はシース(sheath)で保護する)。例えば、移植前に、DTMOをカプセル内に入れるなどによって、DTMOの周囲を膜で覆うこともできる。膜は、栄養素、老廃物及び治療物質を十分に通過させることができ、免疫系細胞の通過を防止できるサイズの細孔を持つ必要がある。
【0038】
本発明のある実施形態では、真皮小器官は、表皮基底層(及び随意的に皮膚の他の表皮層)の組織を含んでいる。他の実施形態では、真皮小器官は表皮基底層を含まない。
【0039】
本発明のある実施形態では、DMOは表皮層を含まない。他の実施形態では、DMOは数層の表皮組織を含んでいる。
【0040】
本発明のある実施形態では、DMOは真皮の全断面を含んでいる。本発明の他の実施形態では、真皮小器官は、真皮の断面の一部を含んでいる。別の実施形態では、DMOは、真皮の断面の大部分(すなわち、真皮乳頭層及び真皮網状層を含む、真皮の大部分の層及び成分)を含んでいる。別の実施形態では、DMOは、主に真皮組織を含んでいるが、脂肪組織も含むことができる。本発明のある実施形態では、DMOはケラチンを生成しない、又はケラチンをほとんど生成しない。その結果、被移植者に皮下移植した後に、角質嚢腫が形成されるのを防止できる。
【0041】
採取されたDMOは、生体組織検査方法(biopsy)などの、当該技術分野では周知の任意の組織除去方法によって身体から取り除くことができる。採取行為は、取り除く組織のミクロ構造が損なわれないように行う。ある実施形態では、DMOは直接的な生体組織検査方法によって採取した後、所定のサイズに切断する又は必要としない組織を取り除く。他の実施形態では、組織サンプルは、目的とするサイズの真皮小器官が得られ、それ以上の処理を必要としない直接的な生体組織検査方法によって採取される。
【0042】
本発明のある実施形態では、真皮小器官は身体から直接的に採取される。真皮小器官を採取するに使用される切断ツールの寸法は、例えば、直径が約1〜4mmである。他の実施形態では、寸法は、例えば、直径が約1.71mmである。他の実施形態では、寸法は、例えば、直径が約1〜3mmである。他の実施形態では、寸法は、例えば、直径が約2〜4mmである。他の実施形態では、寸法は、例えば、直径が約1〜2mmである。他の実施形態では、寸法は、例えば、直径が約1.5mmである。他の実施形態では、寸法は、例えば、直径が約2mmである。ある実施形態では、採取された真皮小器官は、その円筒形状を保つことができない(つまり、その断面の少なくとも1つの寸法が広がり、少なくとも他の寸法が収縮する)。ある実施形態では、例えば、少なくとも1つの寸法は0.5〜3.5mmであり、少なくとも1つの寸法は1.5〜10mmである。
【0043】
他の実施形態では、採取された組織の寸法は、例えば長さが約5〜100mmである。他の実施形態では、採取された組織の寸法は、例えば長さが約10〜60mmである。他の実施形態では、採取された組織の寸法は、例えば長さが約20〜60mmである。他の実施形態では、採取された組織の寸法は、例えば長さが約20〜50mmである。他の実施形態では、採取された組織の寸法は、例えば長さが約20〜40mmである。他の実施形態では、採取された組織の寸法は、例えば長さが約20〜100mmである。他の実施形態では、採取された組織の寸法は、例えば長さが約30〜100mmである。他の実施形態では、採取された組織の寸法は、例えば長さが約40〜100mmである。他の実施形態では、採取された組織の寸法は、例えば長さが約50〜100mmである。他の実施形態では、採取された組織の寸法は、例えば長さが約60〜100mmである。他の実施形態では、採取された組織の寸法は、例えば長さが約70〜100mmである。他の実施形態では、採取された組織の寸法は、例えば長さが約80〜100mmである。他の実施形態では、採取された組織の寸法は、例えば長さが約90〜100mmである。他の実施形態では、寸法は、例えば長さが約20mmである。寸法は、例えば長さが約40mmである。本発明のある実施形態では、採取中に、DMO又はDTMOを持ち運ぶ、支持する及び/又は改質させるのに、密閉された無菌のバイオリアクター装置を使用する。
【0044】
真皮MOが上記に記載された寸法を有する場合、長期間(例えば、数日、数週間又は数ヶ月)に渡って、インビトロ(例えば、適切な組織培養条件下の成長培地)内で維持される。DMOは、インビトロの合成成長培地内で維持される。ある例示的実施形態では、成長培地は、成長因子、ウシ胎仔血清(fetal calf serum:FCS)又はヒト血清(例えば、人工の血清代替物(Synthetic Serum Substitute:SSS)である。他の例示的実施形態では、成長培地は、ドナー又は被移植患者由来の血清を含み得る。別の実施形態では、成長培地は、自己血清を含み得る。
【0045】
本発明のある実施形態では、採取、改質及び移植プロセス中に、DMO又はDTMOを持ち運ぶ、支持する及び/又は変質させるのに、密閉された無菌のバイオリアクター装置を使用する(例えば、図22を参照しつつ後述する採取から移植までのプロセスに)。ある例示的実施形態では、バイオリアクター装置の少なくとも一部は、使い捨て可能な材料で作成する。
【0046】
本発明のある実施形態では、バイオリアクター装置は、様々なプロセスを実行する及び/又はDMO/DTMOを所望する条件下で維持するのに使用される結合ステーション内に設置される。この装置は、随意的に、プロトコルによってコンピュータ制御される。
【0047】
本発明のある実施形態では、作成されたDTMOの一部のみを所定の治療活動に使用する。残りのDTMO組織は維持のために戻される、及び/又は、その後の使用のために保存される(例えば低温で)。
【0048】
ある実施形態では、多数の真皮小器官をバッチ操作によって同時に処理して、DTMOを作成することができる(詳細については後述する)。このことによって、より便利な処理が可能になる。しかし、その場合は、各DTMOの分泌レベルは、個別には測定できない。
【0049】
本発明のある例示的実施形態では、単独のDTMO又は一群のDTMOにより生成及び/又は分泌された治療物質に対しての効力検定が実施される。効力検定は、例えば、細胞増殖分析(細胞の増殖応答が主に細胞成長培地内における治療物質の存在に依存している)を含んでいる。
【0050】
ここで使われる「皮膚関連組織構造(skin-related tissue structure)」という用語は、それからの真皮小器官の採取を可能にするために、ここで定義される装置によって固定及び/又は支持される組織成分の構造を意味している。皮膚関連組織構造は、表皮組織の成分及び真皮組織の成分を含んでいる。随意的に、皮膚関連組織構造は、真皮組織の近くの、脂肪組織及び/又は筋肉組織を含む。
【0051】
本発明のある実施形態では、真皮小器官の採取方法は、皮膚関連組織構造の近くの少なくとも真皮小器官及び/又は1つ或いはそれ以上の組織片を目的とする形状及び/又は位置で維持されるように、真皮小器官が採取される皮膚関連組織構造を固定及び/又は支持し、少なくとも真皮小器官の一部を周囲組織から分離させ、分離させた真皮小器官を引き出すことを含んでいる(詳細については後述する)。
【0052】
図1は、本発明の例示的実施形態に係るDMO及びDTMOの作成及び使用方法200の概要を示すブロック図である。ブロック202では、患者からDMOが採取される。本発明のある実施形態では、DMOは、後に治療を受ける患者から採取される。本発明のある実施形態では、DMOは真皮組織に由来する。随意的に、他の組織を採取し、後述する真皮組織の方法と同様の方法で使用することもできる。後述する方法は例示的なものであり、ある実施形態では、他の組織サンプル採取方法を用いることもできる。必要に応じて、DMOは、後に使用するために(プロセスの同じ段階での導入)、低温で保存することもできる。また、ある実施形態では、DMOは、治療、美容又は他の生理学的な作用を提供するために、採取した患者の元の場所に直接的に移植して戻すこともできる。
【0053】
DMOを生存可能な小器官にするためには、その少なくとも1つの寸法は、DMOと接触する栄養媒体からDMOの全ての細胞へ栄養素が拡散でき、DMOから栄養媒体へ老廃物が拡散できるような小ささである必要がある。このことにより、後述するさらなるプロセス、及び、随意的にDMOを治療物質(例えばタンパク質)としてさらに利用する間、DMOがインビトロで生存できる。上述したDMOの採取方法は、一般的に、インビトロでの寿命が数ヶ月あるDMOを採取できる。
【0054】
DMOを採取した後、適切な形状及び望ましい寸法であることを確かめるために、DMOは随意的に視覚的に検査される。また、検査は、必要に応じて行うことができる。そして、DMOは随意的にホルダ上に載置され、DMOの遺伝子組み替えが行われる装置(後述するバイオリアクター)に移送される(ブロック206)。適切な遺伝子組み替え物質が作成される(ブロック208)。物質を作成する他の例示的な方法としては、管理された温度下(0〜4℃)において冷凍保存可能で、組み替え物質の解凍可能及び活性の有効化が可能な組み替え物質(例えば、ウイルスベクター)の所定の希釈緩衝液を使用して、所望する量のアリコートを作成する方法がある。こられのプロセスのすべては当該技術分野では周知である。この時点では、DMOは、後のプロセスの同じ場所での導入のために、低温で保存することができる。これは、例えば10%DMSOを含んでいるDMEM培地を使用した、周知の組織及び細胞の段階的な冷凍方法を使用して実施できる。
【0055】
ブロック210では、DMOが遺伝子的に組み替えられる。上述したように、多くの遺伝子組み替え方法が知られており、本発明と共に使用される。一例として、以下の説明では、DMOの細胞に遺伝子を挿入するのに、ウイルスベクターを使用している。この方法は周知であるので、DMOにウイルスを導入するための特別な方法及び装置以外は、説明を省略する。
【0056】
ブロック212では、遺伝子組み替えされたDTMOが、随意的に、治療物質の生成及び分泌率について検査される。分泌量を測定する方法としては、例えば、ELISA、他の免疫学的検定、スペクトル解析などの様々な方法がある。また、分泌量は、随意的に検査される(例えば、分泌されたタンパク質の不稔性及び活性について)。これらの検査は、オンラインで定期的に又は継続的に実施される。この時点では、DTMOは後の使用のために、低温で保存することができる。
【0057】
ブロック214及び216では、目的とする治療物質を作成するために必要なDTMOの量が決定される。以下に説明するように、必要とされる治療用量は、測定された分泌率、患者のパラメータ及び人口統計(インビトロでの分泌とインビボでの血中濃度との間の推定される又は周知の関係についての)から推測できる。
【0058】
ブロック218では、選択された数のDTMOが移植ツール内に装填される。例示的な移植ツールについては上述した。必要ならば、同種移植片又は異種移植片のために、或いは別の理由で、DTMOをカプセル内に入れることができる。もし、DTMOを移植ツールに装填する前に、移送する必要がある場合は、DTMOは、随意的に、温度や湿度などを一定に保ち、移送中にDTMOを生存可能に保つ保持ステーションで維持される(220)。残りのDTMO物質は、随意的に、後での使用のためにインビボで維持される。例えば、インビボにおける生存能力を延長するインキュベーターの暖かい環境下(30〜37℃)、又は、インキュベーターの寒い環境下(4℃)で維持される。
【0059】
ブロック224では、DTMOのサブセットが患者に移植される。移植方法の例示的実施形態は、上述したとおりである。他の方法は、当該技術分野では周知であり、主に、使用される小器官の形状によって決定される。動物実験は、DMO及びDTMOはインビトロで生存を保つことを示している。これは、DTMOは、移植後の数週間及び数ヶ月、治療物質を生成し分泌し続けることを意味する(図7参照)。動物実験では、治療量は160日間(又はそれ以上)生成された。DMO又はDTMOの組織は、移植される患者の組織と融合又は十分に取り込まれるように見えるが(特に、組織が、それが採取されたのと同じ種類の組織に移植された場合は)、細胞は治療物質を生成又は分泌するDMO又はDTMOを含んでいる。
【0060】
どちらの場合でも、DTMOのインビトロでの能力は、随意的に、測定される(ブロック228)。患者への用量は、例えば、この測定の評価、及び/又は過去の患者のデータ(ブロック226)に基づいて(詳細については後述する)、移植片の量を増やす又は移植片をいくつか取り除くことによって調整する(ブロック230)。移植片の効果を変化させるために、さらなるDTMOを移植することもできる。
【0061】
遺伝子操作は、一般的に、選択された遺伝子を細胞内に挿入し、細胞に目的とする治療物質(例えばタンパク質)を生成させる及び随意的に分泌させる遺伝子組み換えを含んでいる。本発明のある実施形態では、遺伝子操作中にDMOを維持するプロセスの少なくとも一部は、遺伝子操作と同様に、バイオリアクター内で行われる(詳細については後述する)。
【0062】
図10は、本発明のある例示的実施形態に係る、真皮小器官の採取方法を概略的に説明したフローチャートである。また、図11(a)〜(c)は、図10に示した方法における、皮膚組織部分1120の下側に位置する真皮小器官1160を採取する例示的な段階を概略的に示した図である。
【0063】
ブロック1002に示すように、本方法は、随意的に、麻酔の局部的な投与(例えば、当該技術分野では周知のように、採取されるDMOの近傍に)を含む。
【0064】
ブロック1004に示すように、本方法は、組織部分1120へのインナーガイド(inner guide)1110の挿入さらに含む。薄い切開部(ランセット切開部:lance cut)1190及び/又は1130が、インナーガイド1110の挿入を容易にすべく、及び、表皮組織の採取を防止する又は最小限に留めるために、好ましくは外科的ランセット、メス又は他の鋭利なプローブを使用して外皮に形成される。インナーガイド1100は切開部1190を経由して組織部分1120に挿入される(例えば、一般には、皮膚表面に平行に、及び/又は真皮の目的とする深さに、或いは皮膚の真下に)。インナーガイド1100は、細い針、ロッド、又は、真皮内部又は皮下腔に挿入できる他の適切な細い物(一般的には真っ直ぐである)を含む。例えば、インナーガイド1110は、20〜25G(例えば約22G)のサイズの、当該技術分野では周知の針である。インナーガイド1110は、真皮又は皮下腔に挿入される、及び/又は一般に水平方向に(すなわち皮膚表面と平行に)に押し入れられる。インナーガイド1110を真皮内に挿入させる長さは、一般に採取するDMOの長さと一致する。例えば、インナーガイド1110は、手動で挿入され、真皮内に目的とする深さに手動で案内される。前記深さは、挿入プロセス中は、実質的に一定に保たれる。或いは、インナーガイド1110は、手動で、繊維状の真皮とその下側の滑らかな脂肪層との境界線をセンシングしながら、皮下腔内に皮下腔に沿って挿入される。
【0065】
ブロック1006に示すように、本方法は、随意的に、インナーガイド1110を(例えば、切開部1130から)皮膚から突き出るように案内することを含む。本発明のある例示的実施形態では、切開部1190と1130との間の距離は、採取されるDMOの必要とされる長さとほとんど等しい又はそれよりも長い。
【0066】
ブロック1008に示すように、本方法は、例えば、インナーガイド1110と切断ツールとの間に位置するDMOをトラップするために、チューブ状の切断ツールをインナーガイド1110と同軸的及び周囲に挿入することを含む。これは、例えば、内径がインナーガイド1110の外径よりも大きいチューブ状の切断ツールを使用することによって実現される。この切断ツールとしては、例えば、コアリングチューブ(coring tube)1150などの任意の切断ツールを用いることができる。コアリングチューブ1150は、一般に、対称形状のチューブ状の用具(例えば、刃の先端が望ましい鋭利な形状に形成されたハイポチューブ(hypo tube))を使用することができる。コアリングチューブ1150としては、例えば、肉薄の(例えば、0.05mm〜0.3mmの厚さの)、標準的な医療グレードのチューブを用いることができる。コアリングチューブ1150の直径は、例えば、1mm〜10mmである。コアリングチューブ1150及び/又はインナーガイド1110の大きさ(例えば直径)は、採取する組織の量及び/又は寸法に基づいて決定される。コアリングチューブ1150は、刃先として機能するように構成された、鋭利な端部(先端)1140を有している。コアリングチューブ1150は、表皮組織の採取を防止するために、好ましくは皮膚の外面に最初の開切部(例えば開切部1130)を形成した後に、組織部分1120の中に挿入される。
【0067】
本発明のある例示的実施形態では、図11(b)に示すように、本方法は、例えば開切部1130において、最初に、コアリングチューブ1150の端部1140を、インナーガイド1110の遠心端上に位置させ、その後、真皮DMOを採取するために、例えば開切部1190に向かってコアリングチューブ1150をインナーガイド1110の長さ方向にスライドさせることを含んでいる。
【0068】
ブロック1110に示すように、本方法のある実施形態は、切断工具を前進させるときに(例えばインナーガイドの近位端に向かって)切断ツールを回転させることを含んでいる。例えば、コアリングチューブ1150を手動又は自動的に前進させながら回転させるのに、医療用ドリル又は他の適切なツール或いは回転構造を使用することができる。このことにより、DMO1160をよりスムーズに採取することができる。例えば、コアリングチューブ1150の近位端1180は、制御ユニット、モータ、接続コード、ハンドピース及び/又はフットスイッチを備えた医療用ドリル1170に接続される。前記医療用ドリルとしては、例えば、Aesculap AG & Co. KG(Am Aesculap Plate, D-78532 Tuttlingen, Germany)社製のAesculap Micro Speed drill(カタログ番号:GD650, GD658, GB661, GBl66、GB660など)がある。切断ツールの刃先を皮膚組織の切断に適した回転速度(例えば、回転速度よりも高くなる、例えば1000rpm高くなる、例えば1000〜10000rpm高くなる)で回転させるのに、そのようなドリル又は他の回転構造を使用することができる。例えば、チューブ1150は、2000rpm以上の速度(例えば、約7000rpm)で回転させられる。また、後述するように、1000rpm以下の回転速度が比較的遅いものを、又は、全く回転しないものを使用することができる。随意的に、ドリルの回転速度を、発振状態で変化させることができる。例えば、回転方向を、時計周りにと反時計回りに定期的に変化させることができる。ドリル1170によって回転させている間、コアリングチューブ1150は、例えばインナーガイド1110の近位端に向かって、例えば開切部1190に向かって、手動で又は自動的に前進させる。また、本方法は、例えば、先端1140が開切部1190をちょうど越えた際に、コアリングチューブ1150の前進運動を停止させることを含んでいる。本発明のある例示的実施形態では、その後の作業で、採取した組織を切断ツールの内面から分離するのを容易にするために、及び/又は、切断作業中に組織に作用する力を減少させるために、チューブ1150の内面及び外面の少なくとも一部は、例えば低摩擦材料(例えば、テフロン(登録商標)、パリレン、又は他の被覆材料など)によって被覆される。
【0069】
他の実施形態では、採取目標を貫通して真皮を切断するコアリングチューブ1150を補助するために、高速に作動する(例えばバネ仕掛けの)挿入機構が使用される(コアリングチューブを実質的に回転運動させない)。
【0070】
ブロック1012に示すように、本方法は、その上に移植されたDMO1160を保持しているインナーガイド1110を、コアリングチューブ1150から引き出すことを含んでいる。このことにより、組織部分1120からDMO1160を抽出することができる。
【0071】
本発明のある実施形態によれば、DMO1160は、インナーガイド1110内に残すこともできる。そのような場合は、インナーガイド1110は、DMO1160を扱う、移送する及び/又は操作するのに使用できる。また、DMO1160は、インナーガイド1110からバイオリアクター処理槽へ慎重に移動させることができる。(詳細については図22を参照しつつ後述する)。又は、DMO1160は、DMOを異なるマウント或いはさらなるプロセスのための槽に移送するのに適した様々な移送器具(図示しない)へ慎重に移動させることができる。そのような移送器具としては、例えば、ピンセット、真空グリッパー、又はDMOを掴む及び/又はDMOをインナーガイド1110から押し出すことができる他の機械器具がある。さらに、DMOをインナーガイド1110から取り出すのを補助するために、適切な流動体(無菌の液体)を、単独で又は上記した手段と共に使用することもできる。
【0072】
ブロック1014に示すように、本方法は、皮膚部分1120から切断ツール(例えばコアリングチューブ1150)を引き出すことを含んでいる。
【0073】
当業者なら容易に理解するであろうが、本発明に係る採取を実施すべく、上述した動作の任意の組み合わせを実施することができる。さらに、他の動作又は一連の動作を用いることができる。
【0074】
図12は、本発明のある例示的実施形態に係る真皮採取用具と共に使用される、固定クランプツール1200を概略的に示している。
【0075】
本発明のある例示的実施形態では、ツール1200は、クランプ先端1210を有するクランプ機構を含んでいる。例えば、ツール1200は、周知のピンチクランプ又はピンセットである。ツール1200には、一定のクランプ力を有する、又は、クランプ力を制御的に変更可能な、バネクランプを用いることもできる。ツール1200は、閉じた際にクランプ先端1210がインナーガイド1110の真下となるように、皮膚表面に、インナーガイド1110の両側にインナーガイド1110と平行に配置される。DMOがチューブ1150で切断される際に固定されるように、クランプ先端1210は閉じた際にインナーガイド1110及び/又は採取するDMOに関連する皮膚部分1240を固定及び/又は支持する働きをする。コアリングチューブ1150は、この場合、力が作用する間、インナーガイド1110と同軸又は非同軸にクランプ先端1210に押される。本発明のある例示的実施形態では、皮膚の一部1240のクランプを向上させ、コアリングプロセス中の皮膚の側方への動きを減少させる(最小限に抑える)ために、クランプ先端1210は少なくとも1列又は2列のギザギザの歯1260を有している。
【0076】
インナーガイドの周囲の皮膚に同様の圧力を加えるために、外皮へ力を加える他のツール及び/又は機構を使用することもできる。また、例えば、インナーガイドをねじって、コアリングチューブの回転に対して実質的に定位置で保持するような、採取する皮膚を固定するための他の装置及び/又は機構を使用することもできる。
【0077】
図13は、本発明のある例示的実施形態のインナーガイド1110を覆うように及びに沿って同軸的に挿入されたコアリングチューブ1150を概略的に示す断面図である。
【0078】
本発明のある実施形態では、ガイド1110の軸1125が実質的にDMO1160の中心に位置するように、インナーガイド1110は皮膚の一部1120に挿入される。この場合、DMO1160がインナーガイド1110上におおよそ対称的に固定されるように、コアリングチューブ1150は、インナーガイド1110と実質的に同軸である。
【0079】
また一方、本発明の他の例示的実施形態では、インナーガイド及びコアリングチューブは、他の適切な位置に配置することもできる。例えば、目的とする採取するDMOが主としてインナーガイドの上方に位置してインナーガイドを取り囲むように、インナーガイドを皮下腔に配置することもできる。したがって、DMOを切断する際に、インナーガイドがコアリングチューブの下端の内面と近接する又は接触するように位置するように、コアリングチューブはインナーガイドの真上に挿入及び/又は案内される。その場合、インナーガイドは、取り除いたときにインナーガイドの上面に沿って残ったDMOを保持する。
【0080】
本発明のある実施形態では、上述した手動による作業は、上述したDMOを採取するためのいくつかの又は全て作業を実行するように構成された一体化された装置(図示しない)によって容易になる。例えば、ある採取方法では、一体化された装置は、インナーガイド1110の挿入の位置決めと案内、クラップツール1200の取り付け、コアリングチューブ1150の挿入の案内及び切断プロセス中におけるコアリングチューブの動作の制御、及び/又は、インナーガイド1110に付着したDMO1160の除去を行うように構成されている。
【0081】
本発明のある例示的実施形態では、患者からDMOを採取する方法は、DMOに関連する皮膚関連組織構造(一般的に、DMOを採取するための標的とする採取場所に位置する)を目的とする形状及び位置(切断ツールが、少なくともDMOの一部をDMO周辺の組織から分離することができる位置)で作成及び/又は維持することを含んでいる。例えば、膚関連組織構造の一部が目的とする形状及び/又は位置で持ち上げられ維持されるように、その表皮の少なくとも一部を所定の(例えば実質的に平坦な)表面部分に付着させることにより、標的とする採取位置近傍の表皮の一部が持ち上げられる。また、ある例示的実施形態では、表皮を所定の表面に付着させるのは、真空状態を作り出すことを含んでいる(詳細については後述する)。また、表皮を所定の表面に付着させるのは、その表面に接着することを含んでいる。
【0082】
図14(a)〜(c)は、それぞれ、本発明のある例示的実施形態に係る、DMOを採取するための真皮採取装置1400を概略的に示す正面図、側面図及び上面図である。また、図15は、本発明のある例示的実施形態に係る、DMO1510を含んでいる皮膚関連組織構造を外部から支持する装置1400を概略的に示す断面図である。
【0083】
装置1400は、真空槽(一般的に、複数のチャネル1404を介して真空口1402と流体的に接続している上部支持面1430を有する、縦置円筒型槽1406)を備えている。真空口1402は、槽1406に真空状態を作成するために、少なくとも真空源(例えば図示しない真空ポンプ)と流体的に接続している。表面1430及び/又はチャネル1404は、表面1430がDMO1510と関連する表皮層1508の少なくとも一部と付着することができるように、真空源によって槽1406に真空状態が作成された際に、一般にDMO1510の上方に位置するように構成されている。
【0084】
装置1400は、切断ツール(コアリングチューブ1520)を案内し、切断ツールを所定位置(上面1430から所定の距離)に保つためのガイドチャネル1416をさらに含んでいる。例えば、切断ツール1520の上面は、上面1430から例えば約1mmの所に位置する。他の実施形態では、前記距離は、0.3〜2.0mmの範囲である。例えば、チャネル1416は、一般的に、直径がコアリングチューブ1520よりも少し大きい円筒型のチャネルである。コアリングチューブ1520には、1〜10mmの間のサイズの例えば14G(外径が約2.11である)で、相称的な鋭利な刃先を備えているコアリングニードル(coring needle)を用いることができる。
【0085】
本発明のある例示的実施形態では、上面1430は平坦であり、一般的に湾曲している(又は他の形状である)。例えば、ある実施形態では、上面1430の曲半径は、約3.5mmである。他の実施形態では、槽1406の幅は、約4mmである。さらに、ある実施形態では、槽1406の高さは、約5mmである。他の実施形態では、前記曲半径、幅、高さは、他のもの(例えば、曲半径が3〜25mmの範囲)を用いることができる。槽1406の長さは、一般に、DMOの長さと同様であり、例えば約30mmである。或いは、5〜100mmの範囲である。
【0086】
ある例示的実施形態では、装置1400は、表皮槽1508をクランプするための2つのチャネル1408を含んでいる(詳細については後述する)。各々のチャネル1408は、槽1406の両側に、少なくとも部分的に沿って位置している。チャネル1408の中心は、所定の高さ(採取するDMOの中心とほぼ同じ高さ)に位置する。ある実施形態では、クランプが固定される及び/又は切断する組織を支持するように、チャネル1408の中心は、上面1430の約2mm下側に位置する。これらの例示的実施形態では、装置1400は、槽1406に作成される真空状態に実質的に影響を与えることなく、外部から組織をクランプできるように、チャネル1408の内面又は外面に2つの可撓性膜要素1412を備えている。本発明の他の実施形態では、装置1400は、要素1412及び/又はチャネル1408を備えていない。
【0087】
本発明の例示的実施形態では、装置1400を使用してDMO1510を採取する方法は、例えばメスを使用して、DMO1510に関係する皮膚の一部に、所定の距離(例えば、約30mm)で、コアリングチューブ1520が表皮に入る位置及び出る位置(穿通される入口と出口)となる2つの切開部(図示せず)を形成することを含んでいる。切開部は、採取されたDMO1510の両端に表皮成分が実質的に存在すること、及び/又は、効率的に治癒するために(例えば、素早く及び/又は比較的小さな傷しか残らないように)挿入部位の目的とする形状を維持することを確実にするために形成される。この方法は、点1410と点1414との間で、切開部が槽1406の真下に位置するように、装置1400を上皮層1508(採取部位)と接触した状態で配置することを含む。各々の切開部は、槽1406に真空状態がもたらされた際に、ランセットでの切開の力を助けるべく、点1410及び/又は点1414(又は点1410と点1414との間)に位置する。本発明のある例示的実施形態では、装置1400は、随意的に、例えば、装置1400を採取部位に配置した後、及び、槽1406に真空状態を作成する前に、ランセット切開を行うように構成された構造(例えば、バネ仕掛けのランセット)を含んでいる。
【0088】
この方法は、コアリングチューブ1520をチャネル1416に挿入することを含んでいる。コアリングチューブ1520は、例えばコネクタ(例えば、Jacobs Chuck又は、摩擦ホルダ)を介して、コアリングチューブ1520を回転させることができる医療用ドリル又は他の適切な用具及び/又は構造(例えば、ドリル1170、図11参照)に接続される。随意的に、ドリルの回転速度は発信状態によって変化する(すなわち、回転方向は定期的に時計方向又は半時計方向に変化する)。
【0089】
この方法は、槽1406に真空状態を作成する(例えば、真空源を駆動して)ことを含む。その結果、皮膚関連組織構造は槽1406に引き込まれ、表皮1508(例えば、ランセット切開部の間の)は上面1430に完全に保持される。また、表皮1508、真皮1506及び/又は脂肪組織成分1504も、各組織層の厚さ及び槽1406の大きさに応じて、槽1406に引き込まれる。したがって、槽1406の大きさは、1つ以上の組織層の予想される厚さ及び/又は外部からのクランプ(ここで説明したような)に応じて設計され、脂肪組織1504を真空槽1406に引き込み、及び槽1406の下向き及び実質的に外側に作用する。
【0090】
この方法は、さらに、例えば、ドリル1170(図11参照)を使用して、比較的高い回転速度(例えば、1000rpmよりも高い速度、或いは、1000〜10000rpmの間の速度)で、コアリングチューブ1520を回転させることを含んでいる。例えば、コアリングチューブ1520は、2000rpm以上の回転速度、又は、約7000rpmで回転する。又は、1000rpm以下の比較的遅い回転速度で回転する、或いは、上述したように全く回転しない。この方法は、コアリングチューブ1520を真空槽1406に沿って前進させることを含んでいる(例えば、少なくとも槽1406の全長に沿って)。コアリングチューブ1520は、DMO1510が槽1406に沿って皮膚関連組織構造の略同一の深さから採取されるように、チャネル1416によって案内される。コアリングチューブ1520は、前進させる速度を制御すべく、手動で又は電動アクチュエータ(図示せず)を使用して前進させる。
【0091】
この方法は、DMO1510を、DMOの周囲の組織から分離することを含んでいる。例えば、装置1400は、チャネル1416の実質的に反対側に設けられた、延長部1418(例えば、長さは1〜5mmであり、半径はチャネル1416半径とほぼ同じである)を有しており、コアリングチューブ1520は槽1406を通過した後に、延長部1418内に入ることができる。また、採取されたDMOを分離するために、コアリングチューブが表面1440に切り込むように、切断表面1440(シリコン又は他の適切な材料で形成されている)は延長部1418内に位置される。また、DMO1510がコアリングチューブ1520内に積極的に引き込まれるように、コアリングチューブ1520内には、その後端から真空状態が作成される。このことにより、DMOの周囲組織からの最終的な脱離が促される。
【0092】
この方法は、さらに、その内部にDMOを保持したコアリングチューブ1520を装置1400から引き出すことを含んでいる。
【0093】
図16は、本発明の他の例示的実施形態に係る、目的とする位置で皮膚関連組織構造を外部から支持する装置1400を概略的に示す断面図である。
【0094】
図16の例示的実施形態では、真空槽内で支持された皮膚関連組織構造を外部からクランプすることによって、皮膚1506の固定及び/又は脂肪1504の槽1406内へのレクリートメント(recruitment)の防止を向上させることができる。例えば、クランプツール1600(例えば、図12を参照しつつ説明したクランプツールと類似している)は、真空槽1406内で支持されている皮膚関連組織構造を対称的につかむ。クランプツール1600の2つのクランプ端1502は、それぞれチャネル1408内に挿入される。クランプツール1600は、クランプ端1502が可撓性要素1412に押し付けられるように閉じられる。したがって、槽1406内の真空状態に実質的に影響を与えることなく、槽1406内の皮膚関連組織構造は側方からクランプされる。クランプ端1502によって加えられるクランプ力は、例えば、ばね1512又は他の適切な装置の一定力又は可変力に相当する。
【0095】
上記に説明した真空槽は、一般に、その長手方向軸に沿って一定の形状及びサイズを有しているが、当業者なら容易に理解するであろうが、本発明の他の実施形態では、真空槽は、後述するように、その他の所定のサイズ及び/又は形状であってもよい。
【0096】
図17は、本発明の他の例示的実施形態に係る真皮採取装置1700を概略的に示す図である。
【0097】
真皮採取装置1700は、高位突出部1706を有する真空槽1701を備えている。高位突出部1706は、例えば、コアリングチューブ1716の軌道上で一般に水平方向である皮膚組織単層の高平部(plateau)を作成するのに適した所定のサイズ及び/又は形状を有している。例えば、突出部1706は、脂肪層1718を突出部1706内に吸い込み、コアリングチューブ1716の軌道に沿って支持できるように、槽1701内の他の部分よりも高い位置にある。結果として、所定の長さのDMOを採取した後、コアリングチューブ1716は、脂肪層1718内部に若干前進するので、採取されたDMOは、その周囲組織から分離される。採取されたDMOはコアリングチューブ1716内に残り、身体から引き出される。装置1700のこの構造によれば、上述したように、皮膚に「出口」の切開部を形成するのを省くことができる。したがって、DMOの採取は1つの切開部のみから行うことができる。
【0098】
本発明のある例示的実施形態では、装置1700は、コアリングチューブ1716を槽1701に沿って所定の距離だけ(例えば、コアリングチューブ1716が脂肪組織に少し入り込む位置まで)手動で前進させることができるように、ドリルストッパー1708を備えている。
【0099】
図18は、本発明の別の例示的実施形態に係る採取装置1800の概略図であり、図19は、DMO1830を採取するのに使用される装置1800の概略断面図である。
【0100】
本発明のある例示的実施形態では、DMOを採取するのに、コア生検装置(例えば、乳癌の生体検査に使用される装置と似ている)を使用する。装置1800は、切断ツール1808(例えば、上述したようなツール)と皮下採取トロカール(Subcutaneous Harvest Trocar:HST)1806を備えている。HST1806は、例えば、鋭利な先端1804と適切な内径(切断ツール1808がHST1806内に同軸的に挿入されるように、切断ツール1808の外径よりも若干大きい)を有する皮下注射針である。HST1806には、適切な深さ(例えば、1mm又はそれ以上)及び適切な長さ(例えば、採取するDMOの目的とする長さと実質的に等しい)のノッチ切欠(notch cutout、窓)1802が形成されている。
【0101】
図18の例示的実施形態では、HST1806が切断ツール1808と共に単一ユニットとして挿入される切開部(ランセット切開部)が1つだけが形成される。切開部は、例えば手術用メスの刃を使用して、皮膚の真下又は内部の目的位置(好ましくは皮下腔)に、形成される。ノッチ切欠1802は、真皮層1840に向けて上側に位置している。切断ツール1808は、HST1806のスムーズな穿通を可能にすべく、窓切欠1802が閉じるように、穿通中はHST1806内に位置する。ツール1808及びその中に挿入されるHST1806は、ノッチ切欠1802の長さだけ皮下の接触部分に沿って延び、端部1804は皮膚表面からは突き出ない。適切な位置に達すると、ノッチ切欠1802を露出させるべくツール1808は引っ込められ、真皮組織がノッチ切欠に十分に詰められる。ノッチ1802内に真皮を十分に詰めるのを助けるために、適切なクランプツール(例えば図12を参照しつつ前述したような)を使用して皮膚表面には適切な圧力が加えられる、及び/又は、図示しない真空マニホールド(例えば、ノッチ切欠1802の下側に設けられた)によってHST1802内に真空状態を生成する。ツール1808はモータ(例えば、前述したような、回転速度が真皮組織を切断するのに適切な回転ツール1808)に接続することができる。前記回転速度は比較的高い回転速度であり、例えば、1000rpm、又は、1000〜10000rpmの間である。ツール1808は、例えば、2000rpm以上の高い回転数(例えば約7000rpm)で回転する。ツール1808は、その後、切欠1802内のDMO1830を切断すべく、切欠窓1802の終端部を越えるまで、手動又は自動的によって前進させられる。それが完了すると、ツール1808の前進及び回転運動は停止し、切断ツール1808はその内部に採取されたDMO1830と共に引っ込められる。SHT1806は、その後、切断部位から取り除かれる。DMO1830は、例えば、ツール1808の中に殺菌した液体(例えば食塩水)を噴出させる注射器、又はDMO1830を切断ツール1808の終端部(図示しない)から引き出す真空源を使用して、切断ツール1808から取り出される。
【0102】
当業者なら容易に理解するであろうが、装置1800は、切開部を1つだけ形成することにより、DMOを採取できる。さらに、装置1800は、比較的厚い皮膚の領域(例えばドナーの背部の領域)からDMOを採取するのに効果的に使用し得る。
【0103】
当業者なら容易に理解するであろうが、上述したような本発明に係る採取方法及び/又は装置は、真皮内に薄い皮膚切断装置を導入することを含んでいる。したがって、発明に係る採取方法及び/又は装置は、皮膚の外面に対して比較的最小限の損傷でDMOを採取することができる。したがって、目的とする組織を採取するための、低侵襲方法を提供することができる。
【0104】
また、ここまでの本発明のある実施形態では、DMOを採取するための方法及び/又は装置に関して説明したが、当業者なら容易に理解するであろうが、本発明の他の実施形態では、方法及び/又は装置の少なくとも一部は、他の手段(例えば、形成外科的処置、皮膚科手術、又は、組織の採取を含んでいる他の手段)によって実施される。本発明に係る方法及び/又は装置は、例えば、その後の移植に充填材料として使用される真皮組織を採取するのに使用される。
【0105】
本発明のある実施形態では、真皮小器官を取り扱う及び処理するための、生体外(インビボ)用のシステム及び方法が提供される。直接的MOとして採取された真皮小器官は、MO用のマウントとして、それらのインナーガイド上に置かれる。これらの実施形態では、その後の処理中にMOの位置及び方向を保つためにインナーガイドが使用される。他の実施形態では、真皮MOはインナーガイドから取り出され、組織培養ウエル上に又はバイオリアクターの浸出槽上に直接的に載置される(詳細については図22を参照しつつ後述する)。ある実施形態では、皮膚内から回収したコアリングチューブ内にDMOが残っている場合は、生物学的に適合する液体(生理食塩水又は成長溶剤)をコアリングチューブの後端に流し込んで、DMOをコアリングチューブから流し出す。DMOは、バイオリアクターの槽内へ直接的に流し出すこともできる(詳細については後述する)。
【0106】
本発明のある実施形態では、DTMOを移植するためのシステム及び方法を提供する。例えばDMOを遺伝子改質して、DMOを作成及び/又は処理した後、タンパク質療法又はRNA療法のために、改質されたDMO又はDTMOは患者に移植して戻される。移植される全ての又は一部のDTMOの数は、分泌タンパク質の所望する治療用量によって決定される。DTMOは、皮下(又は身体の他の場所)に移植される。トロカール針を使用して皮下移植すると、DTMOを皮下腔に線形状に残すことができる。線形状に移植すると、後にDTMOを除去する場合(例えば、治療を終了する又は治療タンパク質の用量を減らす場合)の位置決めが容易になる。他の周知の幾何学的な移植パターンを用いることもできる。また、線形移植は、真皮組織の周囲の組織への融合を助長することもできる。
【0107】
図20は、本発明のある例示的実施形態に係る、DTMOの移植方法を概略的に示したフローチャートである。
【0108】
ブロック2002に示すように、目的とする移植部位に、局部麻酔薬を随意的に投与する。
【0109】
ブロック2004に示すように、本発明のある例示的実施形態では、DTMO(随意的に周囲の殺菌された生理食塩水溶液と一緒に)は、キャリア(例えば、注射器に装着される移植針)内に吸引される。針は適切な直径(例えば17〜12ゲージ)を有している。随意的に、針の先端には、シリコンチューブの短い伸長部(又は同様のもの)を有している(注射器のブランジャを引っ込めるときに、針のカニューレにDTMOを吸引するのを容易にするために)。
【0110】
ブロック2006に示すように、DTMOを装填した後、皮下の目的位置へ、DTMOの長さと略同一である距離だけ、移植針を皮膚に突き刺す(シリコンチューブの延長部なしで)。
【0111】
ブロック2008に示すように、ある実施形態では、移植針は、移植部位の遠位端で、皮膚の表面から突き出る。
【0112】
本発明のある例示的実施形態では、この方法は、真皮治療小器官がキャリアから移植部位に放出されるように、吸引された真皮治療小器官に圧力を加えることを含んでいる。
【0113】
ブロック2010に示すように、DTMOの先端は、放出位置において、把持ツール(例えばピンセット)によって把持される。
【0114】
ブロック2012に示すように、移植針からDTMOを放出し、針トラック(needle tract)に沿って直線的にDTMOを留置しながら、移植針は皮下腔から引き戻される。必要であれば、例えば、引き戻す際に、注射器のブランジャを徐々に押し下げることにより、DTMOの放出を促進することができる。
【0115】
ブロック2014に示すように、DTMOを留置したら、DTMOの先端を把持ツールから離す。
【0116】
本発明のある実施形態では、移植した真皮小器官のインビトロでの区分(demarcation)及び位置決めを行うためのシステム及び方法を提供する。処理された組織(例えばDTMOなど)の身体内での皮下移植(又は身体の他の部分)での位置決めは、例えば、タンパク質治療の終了又は分泌タンパク質の用量を減少させる必要がある場合は重要である。例えば、用量の終了又はタイトレーション(titration)は、1つ又はそれ以上のDTMOを完全に除去することにより、及び/又は、移植したDTMOの1つの一部或いは1つ以上のDTMを除去することにより行われる。本発明のある実施形態では、皮下移植したDTMOを同定するために、肉眼で視認できる又は視認するために特定の照明条件を必要とする不活性の生体適合性インク又は染色液(例えば発色団を含んでいる)によって、DTMOを移植する前に着色する。このようにして、目視検査及び/又は視認補助手段(enhanced imaging means)によってDTMOをその周囲の組織と区別できる。
【0117】
ある実施形態では、DTMOの周囲表面は、例えば、生体適合性カーボン粒子、生体適合性タトゥーインク又は他の適切な材料によってコーティングされる。皮下に移植すると、DTMOは、肉眼又は適切な視認補助装置によって視認される。移植されたBTMOの視認性を高めるための他の方法としては、皮膚表面の上方に強い光源を配置することや、又は、皮膚が半透明に見えるようにして染色したDTMOがよりよく視認できるように、皮膚をつかんで光源を皮膚の一方側に配置することがある。また、蛍光性の染色液を用いて、UV光線を当てたときにだけ視認できるようにする方法もある(例えば蛍光性プラスチックビーズを使用する)。
【0118】
他の実施形態では、皮下に移植されたDTMOの位置を、DTMOと共に埋め込んだ生体適合性構造によって識別する。そのような生体適合性構造としては、様々な外科的処置において一般的に使用される、非吸収性一本鎖ナイロンがある。そのような縫合糸は、DTMOと同じ移植トラックに埋め込まれる。又は、DTMOの空間的位置が縫合糸の位置によって判別できるように、真皮上層内のDTMOの上に直接的に埋め込まれる。さらに、DTMOの深さは、皮下腔の深さにあることが分かっている。縫合糸は、肉眼で視認する、照明手段を用いて観察する、及び/又は、他の適切な視覚化手段(例えば超音波検査)の助けを借りて観察する。また、蛍光性の縫合糸を用いると、適切なUV照明下で視認することができる。また、非吸収性材料の縫合糸を用いると、所定の期間(例えば数週間)、位置を判別することができる。
【0119】
他の実施形態では、DTMOは、蛍光マーカー又は他の視認可能なマーカーを発現するための遺伝子を含むように遺伝子組み換えされる。例えば、DTMOは、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein:GFP)遺伝子又は発光酵素遺伝子(治療用タンパク質用の遺伝子と共に発現する)によって遺伝子組み換えすることができる。このようにして、適切なUV照明(又は他の適切な照明)及び視覚条件を用いて、DTMOを非侵襲的に視認することができる。
【0120】
本発明のある実施形態では、移植したDTMOを除去又は切除するためのシステム及び方法を提供する。例えば、患者に対するDTMO療法が終了した場合、又はタンパク質の分泌を減らす必要がある場合は、移植したDTMOを部分的に又は全体的に除去する、或いは、部分的又は全体的に切除する。ある実施形態では、DTMOを除去するのに、DMOを採取するのに使用したコアリングチューブと直径が同様又は若干大きいコアリングチューブを使用する。
【0121】
図21に示すように、ブロック21では、皮下に移植したDTMOの位置を判別する。ブロック2103では、随意的に、DTMOを除去する部位に局部麻酔薬を行う。ブロック2104では、DTMOを含んでいる組織のコアの採取すべく、皮下にインナーガイドを挿入する(DTMOの長さ方向に沿って挿入する)。ブロック2106では、インナーガイドに、コアリングニードルを同軸的に挿入する。コアリングニードルの直径は、移植針の直径(例えば11ゲージ)と同じである又は大きい。ブロック2108では、DTMOを含んでいる組織のコアを採取する。ブロック2110では、組織のコアを保持したインナーガイド及びコアリングニードルをDTMOと共に皮膚から引き出す。ある実施形態では、身体から切断物質を取り出すのを助けるために、そのようなコアリング方法は、真空吸引方法と組み合わされる。
【0122】
本発明のある実施形態では、患者の外傷及び侵襲性を低くするために、低侵襲性または非侵襲性のDTMO切除方法が使用される。ある実施形態では、染色されたDTMOの場合は、レーザー(例えば低侵襲性ヤグレーザー)が使用される。ヤグレーザーのエネルギーは、エネルギーが主にDTMOに直接的に向けられて周囲に与えるダメージが最小限となるように、発色団によって選択的に吸収される。また、他の光エネルギー源を使用することもできる。
【0123】
他の実施形態では、DTMOは、皮下腔にDTMOの長さ方向に挿入された低侵襲性プローブから伝達される破壊的エネルギーによって切断される。そのようなプローブは、ラジオ周波数、低温、マイクロ波、抵抗熱などの様々なタイプのエネルギーを伝達することができる。縫合糸などの共に移植される構造物は、DTMOの位置を判別するのに使用され、それによってプローブを皮下に挿入する(例えば、縫合糸に沿って又は縫合糸の真下に)ことが可能にある。その場合は、例えば、縫合糸が皮下腔に存在したまま、破壊的エネルギーが伝達される。又は、縫合糸は、プローブを設置した後、破壊的エネルギーが伝達される前に取り除くこともできる。加えられるエネルギーの量は、ジアテルミー凝固中で組織内のタンパク質を変性させるのに必要なエネルギーと等しい。又は、加えられるエネルギーの量は、組織を焼き切る外科手術電気メスに使用するのに必要なエネルギーと同程度である。もちろん、位置確認及び破壊エネルギー伝達には、他の手段を用いることもできる。
【0124】
例えば本発明に係る実施形態によってDMOを採取した後に、DMOは随意的に遺伝子操作される。組織を遺伝子操作するのには、周知のどの方法を用いてもよい。ある例示的な方法では、遺伝子を組み換えウイルスベクターと共に、組織の細胞に挿入する。治療物質をエンコードするための外生的な核酸断片を標的細胞及び/又は組織に導入するためには、当該技術分野では周知の多種多様なベクター(ウイルスベクター、プラスミドベクター、線形DNAなど)を使用することができる。これらのベクターは、感染、形質導入、トランスフェクション、リン酸カルシウム介在トランスフェクション、DEAEデキストラン介在トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム介在トランスフェクション、微粒子銃遺伝子導入、融合及びアニオン・リポソーム(カチオン・リポソームの使用の代替物である)を用いたリポソーム介在トランスフェクション、直接噴射、受容体介在取り込み、マグネットポレーション(magnetoporation)、超音波、及び他の周知の方法を使用して挿入される。遺伝子挿入は、ベクターがDMOの細胞と反応できるように、ベクターをDMOの周辺に導入することにより成し遂げられる。外生的な核酸断片が細胞に組み込まれると、核酸断片によりエンコードされた治療物質の生成及び/又は分泌レートが定量化される。
【0125】
本発明のある例示的実施形態では、DMOの遺伝子組み換えは、内在性遺伝子の発現プロフィールを改質することによって行われる。これは、例えば、内在性遺伝子の発現を制御するために、エンハンサー又は抑制性或いは誘導性調節エレメントを導入することにより達成される。
【0126】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る遺伝子組み換えされたDMOを患者に移植することによって、目的とする遺伝子産物を患者に送達する方法を提供する。
【0127】
上述したように、プロセス中は、DMOは栄養溶液と接触することができる。したがって、DTMOによって生成された治療物質は、濃度が測定可能な溶液中に分泌される。目的遺伝子は、RNA分子(センス又はアンチセンス)、ペプチド、ポリペプチド、糖タンパク質、リポタンパク、又はそれらの組み合わせ、或いは他の改質後ペプチドなどにエンコードされる任意の遺伝子である。本発明のある実施形態では、目的遺伝子は、組織サンプル内で自然に発現する。本発明の他の実施形態では、組織サンプルは、少なくとも1つの細胞が目的遺伝子(細胞によって自然に発現しない、又は細胞内に改質された遺伝子プロフィールを有している)を発現させるように遺伝子操作される。
【0128】
ここで使用される「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)、及び、適切な場合には、リボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド或いはそれらの模倣剤のことである。この用語は、当然、ヌクレオチド類似体から作成されたRNA又はDNAの同等物、類似物、及び、上述した実施形態に適用できるような、一本鎖(センス又はアンチセンス)及び二本鎖のポリヌクレオチドを含んでいる。この用語は、同様に機能する非自然的に生成されたタンパク質と同様に連鎖する、自然発生的核酸塩基、砂糖、共有結合インターヌクレオシド(バックボーン)から成るオリゴヌクレオチドを含んでいる。そのような改質又は置換されたオリゴヌクレオチドは、望ましい性質(例えば、高められた細胞取り込み、核酸目標に対しての高められた親和性、及び、ヌクレアーゼの存在下での高められた安定性)を有するため、しばしば自然の形態よりも好ましい。
【0129】
当該技術分野では周知であるが、「タンパク質」、「ペプチド」又は「ポリペプチド」は、ペプチド結合による特定配列で結合された、アミノ酸の線形ポリマーを意味する。ここで使用する「アミノ酸」は、特別に指定しない限り、アミノ酸のD又はL立体異性体である。本発明の範囲には、同等のタンパク質又は同等のペプチド(例えば精製した野生型の腫瘍抑制タンパク質の生物活性を有する)が含まれる。「同等のタンパク質」及び「同等のペプチド」は、自然発生のタンパク質又はポリペプチドの直鎖状配列から離脱したアミノ酸置換(しかし生物活性は変化しない)を有する化合物を意味する。これらの同等物は、アミノ酸と関連した1つ又はそれ以上のアミノ酸(例えば同様に荷電したアミノ酸)の置き換え、又は、側鎖或いは官能基の置換又は改質によって、天然配列とは異なる。
【0130】
タンパク質、ペプチド、ポリペプチド糖タンパク又はリポタンパクは、限定されるものではないが、次のタンパク質又はそれらのタンパク質の様々な組み合わせであり得る。プロテアーゼ、リパーゼ、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、血液凝固因子、チトクロームp450酵素、転写因子、MHC成分、サイトカイン、インターロイキン、BMP、ケモカイン、成長因子、ホルモン、酵素、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、オキシドレダクターゼ、p450、ペルオキシダーゼ、ヒドロゲナーゼ、脱水素酵素、カタラーゼ、転移酵素、ヒドロラーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ、アミノアシルtRNA合成酵素、キナーゼ、リンタンパク質、突然変異トランスポゾン、酸化還元酵素、コリンエステラーゼ、グルコアミラーゼ、グリコシルヒドロラーゼ、トランスカルバミラーゼ、ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、ATPアーゼ、ペプチダーゼ、環状ヌクレオチドシンテターゼ、ホスホジエステラーゼ、リンタンパク質、DNA又はRNA関連タンパク質、高移動度グループタンパク質、対ボックスタンパク質、ヒストン、ポリメラーゼ、DNA修復タンパク質、リボソームタンパク質、電子伝達タンパク質、グロビン、メタロチオネイン、膜内輸送タンパク質、構造タンパク質、受容体、細胞表面受容体、核内受容体、Gタンパク質、嗅覚受容体、イオンチャネル受容体、チャネル、チロシンキナーゼ受容体、細胞接着分子又は受容体、光受容体、活性ペプチド、プロテアーゼ阻害剤、シャペロン、シャペロニン、ストレス関連タンパク質、転写因子、及び、キメラタンパク質。
【0131】
ある実施形態では、本発明に係るDMOから分泌されるタンパク質の量は、移植前は、少なくとも1.6μg/DTMO/日である。
【0132】
本発明のある実施形態では、目的とする遺伝子は、エリスロポエチン又はそれと同等のタンパク質にエンコードされる。
【0133】
本発明の他の実施形態では、目的とする遺伝子は、限定されるものではないが、次のタンパク質又はそれらのタンパク質(及びその等価物)の様々な組み合わせであり得る。インスリン、トリプシノーゲン、キモトリプシノゲン、エラスターゼ、アミラーゼ、血清胸腺因子、胸腺液性因子、サイモポイエチン、ガストリン、セクレチン、ソマトスタチン、P物質、成長ホルモン、ソマトメジン、コロニー刺激因子、赤血球生成促進因子、上皮細胞増殖因子、肝臓赤血球生成因子(ヘパトポエチン)、肝細胞増殖因子、インターロイキン、陰性成長因子、βファミリーの線維芽細胞成長因子及び形質転換成長因子、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、ヒト成長ホルモン、G−CSF、GM−CSF、TNF受容体、PDGF、AAT、VEGF、スーパーオキシド・ジスムターゼ、インターロイキン、TGF、CTNF、PEDF、NMDA、AAT、アクチン、アクチビンβ‐A、アクチビンβ−B、アクチビンβ−C、アクチビンβ−C、アデノシン・デアミナーゼ、アデノシン・デアミナーゼ アガラーゼβ、アルブミンHASアルブミン、アルコール脱水素酵素アルドラーゼ、アルフィメプラーゼ(alfimeprase)、アルファ 1−アンチトリプシン、アルファ 1−ガラクトシダーゼ、アルファ 1−酸性糖タンパク質(AGP)、アルファ 1−抗キモトリプシン、アルファ 1−抗トリプシンン AT、アルファ 1−ミクログロブリン A1M、アルファ 2−ミクログロブリン A2M、アルファ−フェトプロテイン、アルファ−ガラクトシダーゼ、アミノ酸酸化酵素、D−、アミノ酸酸化酵素、L−、アミラーゼ、アルファ、アミラーゼ、ベータ、アンギオスタチン、アンギオテンシン、変換酵素、アンキリン、APO−SAA、アルギナーゼ、アスパラギナーゼ、アスパルチル、アミノトランスフェラーゼ、心房性ナトリウム利尿因子(ANF)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、アビジン、ベータ−2−糖タンパク質1、ベータ−2−ミクログロブリン、ベータ−N−アセチルグルコサミニダーゼ B−NAG、ベータアミロイド、脳性ナトリウムタンパク質(BNP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、カドヘリンE、カルクa、カルクb、カルシトニン、カルサイクリン、カルデスモン、カルギザザリン(Calgizzarin)、カルグラニュリン(Calgranulin)A、カルグラニュリンC、カルモジュリン、カルレティキュリン、カルバスキュリン(calvasculin)、カルボニックアンヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼB、カルボキシペプチダーゼY、CARDIAC TROPONIN I、CARDIAC TROPONIN T、カゼイン、アルファ タラーゼ、カテニン、カテプシンD、CD95L、CEA、セルラーゼ、動原体タンパク質B、セルロプラスミン、セルプラスミン、コレシストキニン、コレステロール・エステラーゼ、コリンエステラーゼ、アセチル、コリンエステラーゼ・ブチリル、絨毛膜ゴナドトロピン(HCG)、絨毛膜ゴナドトロピン・ベータ・コア(BchCG)、キモトリプシンキモトリプシノゲン、キモトリプシン、クレアチンキナーゼ、K−BB、CK−MB(クレアチンキナーゼMB)、CK−MM、クララ細胞リン脂質結合タンパク質、クロストリパイン、クルステリン、CNTF、コラーゲン、コラゲナーゼ、コラーゲン(タイプ1−VI)、コロニー刺激因子、相補体C1q、相補体C3、相補体C3a、相補体C3bアルファ、相補体C3bベータ、相補体C4、相補体C5、相補体ファクターB、相補体C5、コンカナバリンA、コルチコリベリン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、C反応性タンパク質(CRP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(Cnp)、シスタチンC、D−ダイマー、デルタ1デルタ様キナーゼ1(D1k1)、デオキシリボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼI、デオキシリボヌクレアーゼII、デオキシリボ核酸、デルサラザイン(dersalazine)、デキストラナーゼ、ジアフォラーゼ、DNAリガーゼ、T4、DNAポリメラーゼI、T4、EGF、エラスターゼ、エラスチン、内分泌腺由来血管内皮成長因子(EG−VEGF)、エラスチン・エンドセリン、エラスチン・エンドセリン1、エラスチン・エオタキシン・エラスチン、上皮細胞増殖因子(EGF)、上皮好中球活性化ペプチド78(ENA−78)、エリスロポエチン(Epo)、エストリオール、エクソダス(exodus)、ファクターIX、ファクターVIII、脂肪酸結合タンパク質、フェリチン、線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子10、線維芽細胞増殖因子11、線維芽細胞増殖因子12、線維芽細胞増殖因子13、線維芽細胞増殖因子14、線維芽細胞増殖因子15、線維芽細胞増殖因子16、線維芽細胞増殖因子17、線維芽細胞増殖因子18、線維芽細胞増殖因子19、線維芽細胞増殖因子20、線維芽細胞増殖因子3、線維芽細胞増殖因子4、線維芽細胞増殖因子5、線維芽細胞増殖因子6、線維芽細胞増殖因子7、線維芽細胞増殖因子8、線維芽細胞増殖因子9、フィブロネクチン、焦点接着キナーゼ(FAK)、ホリトロピン・アルファ、ガラクトース酸化酵素、ガラクトシダーゼβ、ガマIP−10、ガストリン、GCP、G−CSF、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、グリア細胞繊維性酸性、グリア・フィラメント・タンパク質(GFP)、グリア由来神経栄養因子ファミリー受容体(GFR)、グロブリン、ブドウ糖酸化酵素、グルコース−6−リン酸塩、デヒドロゲナーゼ、グルコシダーゼ・アルファ、グルコシダーゼ・ベータ、グルクロニダーゼ・ベータ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、グリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ、グリセロール、デヒドロゲナーゼ、グリセロール・キナーゼ、グリコーゲン・ホスホリラーゼISO BB、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、成長刺激ホルモン(GRO)、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヘモペキシン、肝臓赤血球生成因子(ヘパトポエチン)、ヘレグリン・アルファ、ヘレグリン・ベータ1、ヘレグリン・ベータ2、ヘレグリン・ベータ3、ヘキソキナーゼ、ヒストン、ヒト骨形成タンパク質、ヒト・レラキシンH2、ヒアルロニダーゼ、ヒドロキシステロイド脱水素酵素、低酸素誘導因子−1アルファ(HIF−1 アルファ)、I−309/TCA−3、IFNアルファ、IFNベータ、IFNガンマ、IgA、IgE、IgG、IgM、インスリン、インスリン様成長因子I(IGF−I)、インスリン様成長因子II(IGF−II)、インターフェロン、インターフェロン誘導性T細胞アルファ化学誘引物質(I−TAC)、インターロイキン、インターロイキン12ベータ、インターロイキン18結合タンパク質、腸トレフォイル因子、IP10、ジャグド1、ジャグド2、カッパーL鎖、ケラチノサイト成長因子(KGF)、キスル、La/SS−B、乳酸脱水素酵素、乳酸脱水素酵素、L‐ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ラムダL鎖、ラミニン・アルファ1、ラミニン・アルファ2、ラミニン・ベータ1、ラミニン・ベータ2、ラミニン・ベータ3、ラミニン・ガンマ1、ラミニン・ガンマ2、LD78ベータ、レプチン、ロイシン、アミノペプチダーゼ、黄体形成ホルモン(LH)、LIF、リパーゼ、肝細胞成長因子、LEC(liver-expressed chemokine)、LKM抗原、TNF、TNFベータ、ルシフェラーゼ、黄体形成ホルモン放出ホルモン、リンパ球活性化遺伝子1(LAG−1)、Lymphotactin、リゾチーム、マクロファージ炎症性タンパク質1アルファ(MIP−1アルファ)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)、リンゴ酸脱水素酵素、マルターゼ、MCP(マクロファージ/単球走化性タンパク質)−1,2及び3,4、M−CSF、MEC(CCL28)、膜型FRP(frizzled-related protein)、ミッドカイン、MIF、MIG(インターフェロンγによって誘導されたモノカイン)、MIP2〜5、MIP−1ベータ、Mp40、P40T細胞及びマスト細胞成長因子、ミエリン塩基性タンパク質ミエロペルオキシダーゼ、ミオグロビン、ミオスタチン成長分化因子8(GDF−8)、ミオシンLC、ミオシンHC、ATPase、NAP−2、ネガティブ成長因子、神経成長因子(NGF)、ノイラミニダーゼ、ニューレグリン1、ニューレグリン2、ニューレグリン3、ニューロン特異的エノラーゼ、ニューロトロフィン−3(NT−3)、ニューロトロフィン−4(NT−4)、Neuturin、NGF、NGFベータ、ニカストリン、硝酸還元酵素、一酸化窒素シンテターゼ、ノルテストステロン、Notch1、Notch2、Notch3、Notch4、NP−1、NT−1〜4、NT−3、Tpo、NT−4、ヌクレアーゼ、オンコスタチンM、オルニチン・トランスカルバモイラーゼ、OPG(Osteoprotegerin)、オボアルブミン、シュウ酸塩デカルボキシラーゼ、P16、パパイン、PBP、PBSF、PDGE、PDGF−AA、PDGF−AB、PDGF−BB、PEDF、ペプシン、ペプチドYY(PYY)、ペルオキシダーゼ、Persephin、PF−4、P−糖タンパク、ホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、アルカリ、ホスホジエステラーゼI、ホスホジエステラーゼII、ホスホエノールピルビン酸塩カルボキシラーゼ、ホスホグルコムターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼC、ホスホチロシン・キナーゼ、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド、胎盤性ラクトゲン、プラコグロビン、Plakophilin、血漿アミン・オキシダーゼ、血漿レチノール結合タンパク質、プラスミノーゲン、PTN(Pleiotrophin)、PLGF−1、PLGF−2、ヤマゴボウ抗ウイルス性毒素(Pokeweed Antiviral Toxin)、プレアルブミン、妊娠関連血漿タンパク質A、妊娠特異的ベータ1糖タンパク(SP1)、プロダイノルフィン、プロエンケファリン、プロゲステロン・プロインスリン、プロラクチン、プロメラニン凝集ホルモン(Pmch)、プロオピオメラノコルチン、Proorphanin、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、プロトロンビン、PSA−A1、肺表面活性剤タンパク質A、ピルビン酸塩キナーゼ、ランピルナーゼ、RANTES、Reelin、レニン、レジスチン、レチノール結合グロブリン(RBP)、RO/SS−A 60kda、RO/SS−A 52kda、S100(ヒトの脳)(BB/AB)、S100(ヒト)BBホモ二量体、Saposin、SCF、SCGFアルファ、SCGFベータ、SDF−1アルファ、SDF−1ベータ、sFRP1(Secreted frizzled related protein 1)、sFRP2(Secreted frizzled related protein 2)、sFRP3(Secreted frizzled related protein 3)、sFRP4(Secreted frizzled related protein 4)、sFRP5(Secreted frizzled related protein 5)、セクレチン、血清胸腺因子、結合グロブリン(SHBG)、ソマトメジン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、s-RankL、P物質、スーパーオキシド・ジスムターゼ、TGFアルファ、TGFベータ、チオレドキシン、トロンボポエチン(TPO)、トロンボスポンジン1、トロンボスポンジン2、トロンボスポンジン3、トロンボスポンジン4、トロンボスポンジン5、トロンボスポンジン6、トロンボスポンジン7、胸腺液性因子、チモポイエチン、サイモシン・アルファ1、胸腺及び活性化調節ケモカイン(TARC)、胸腺発現ケモカイン(TECK)、サイログロブリン(TG)、甲状腺ミクロソーム抗原、甲状腺ペルオキシダーゼ、甲状腺ペルオキシダーゼTPO、サイロキシン(T4)、サイロキシン結合グロブリン(TGB)、TNFアルファ、TNF受容体、トランスフェリン、トランスフェリン受容体、bファミリーの形質転換成長因子、トランスサイレチン、トリアシルグリセロール・リパーゼ、トリヨードチロニン(T3)、トロポミオシン・アルファ、トロポミオシン関連キナーゼ(trk)、トロポニンC、トロポニンI、トロポニンT、トリプシン、トリプシン阻害剤、トリプシノーゲン、TSH、Tweak、チロシン・デカルボキシラーゼ、ユビキチン、UDPグルクロニ
ルトランスフェラーゼ、ウレアーゼ、ウリカーゼ、尿中タンパク、Urocortin 1、Urocortin 2、Urocortin 3、Urotensin II、Vang-like 1(Vangl 1)、Vang-like 2(Vangl 2)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血管活性腸管ペプチド前駆物質、ビメンチン、ビタミンD結合タンパク質、フォン・ヴィレブランド因子、Wntl、Wnt10a、Wnt10bWnt11、Wntl2、Wntl3、Wntl4、Wntl5、Wntl6、Wnt2、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9、キサンチン酸化酵素。
【0134】
遺伝子組み換え処理の後は、組織サンプルによる目的遺伝子の発現を確認するために組織サンプルを分析する。これは、タンパク質のELISA検出法やRNAのノーザンブロット法などの、公知の任意の方法によって行われる。特定の発現ベクター系、及び、核酸の細胞内導入方法の有効性は、当該技術分野で通常用いられる標準的な方法によって評価される。例えば、細胞内に導入されたDNAは、フィルター・ハイブリダイゼーション法(例えば、サザンブロット法)によって検出される。また、導入されたDNAの転写によって作成されたRNAは、例えば、ノーザンブロット、RNase protection、又は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって検出される。遺伝子産物は、例えば、特異抗体などを用いた生成タンパク質の免疫学的検出や、遺伝子産物の機能活性を検出するための機能分析(例えば酵素的分析)などの適切な分析法によって検出される。もし、細胞によって発現されるはずの目的の遺伝子産物をすぐに分析可能でなければ、まず、発現系を調節要素及びベクターと関係のあるレポーター遺伝子を使用して最適化する。レポーター遺伝子は、容易に検出される遺伝子産物をエンコードするので、発現系を評価するのに使用できる。当該技術分野で使用される標準的なレポーター遺伝子としては、βガラクトシダーゼ、クロラムフェニコール・アセチル・トランスフェラーゼ、発光酵素、GFP/EGFP、及び、ヒト成長ホルモンをエンコードしている遺伝子がある。
【0135】
本発明は、ある実施形態では、有機体に移植するための遺伝子組み換えされたDTMOの使用を提供する。ここで使用する「投与」、「導入」、「移植(implanting)」及び「移植(transplanting)」は同義的に使用され、DTMOを目的位置に位置させる方法又は手段によって、本発明に係るDTMOを被験者(例えば、自系、同種異系。異種の被験者)に配置することを意味する。DTMOは、少なくともDTMO細胞の一部が生存性を保つように、被験者内の目的位置に移植される。ある実施形態では少なくとも約5%、他の実施形態では少なくとも約10%、他の実施形態では少なくとも約20%、他の実施形態では少なくとも約30%、他の実施形態では少なくとも約40%、他の実施形態では少なくとも約50%又はそれ以上の細胞が、被験者への移植後に生存性を保つ。被験者に移植後の細胞の生存期間は、数時間(例えば24時間)、数日、数週間、数ヶ月又は数年である。例えば、ブタ−ヒト移植のような異種移植を行った際に、ホストから免疫的攻撃を受ける組織への細胞集団の移植を容易にするために、DTMOは生体適合性免疫防御材料(例えば、再装薬可能、非生物分解性、又は生体分解性のデバイス)に挿入又は被包して、被験者に移植する。そのような細胞/組織によって作成された遺伝子産物は、その後、例えば、化合物(例えば、タンパク性の生物医薬品を含む医薬品)を制御送達するように設計されたポリマーデバイスを介して送達される。特定の標的部位での本発明に係る細胞集団の遺伝子産物の持続放出を行うための移植片を作成するために、生分解性高分子及び非分解性高分子の両方を含む様々な生体適合性ポリマー(例えば、ヒドロゲル)を使用することができる。そのような移植片の作成は当該技術分野では周知である。例えば、「Concise Encyclopedia of Medical & Dental Materials, ed. By David Williams (MIT Press: Cambridge, MA, 1990)」、サベル(Sabel)らによる米国特許第4,883,666号、アービッシャー(Aebischer)らによる米国特許第4,892,538号、アービッシャー(Aebischer)らによる米国特許第5,106,627号、リム(Lim)による米国特許第4,391,9O9号、及び、セフトン(Sefton)による米国特許第4,353,888号を参照されたい。本発明に係るDTMO内の細胞集団は、例えば滅菌された生理食塩水や水性緩衝溶液などの、薬剤的許容されるキャリア又は希釈剤で投与することができる。それらのキャリア又は希釈剤の使用は当該技術分野では周知である。
【0136】
分泌タンパク質は、上述したどのタンパク質でもよい(ただし、これらに限定されるものではない)。ある実施形態では、目的とするタンパク質は、エリスロポエチンである。他の実施形態では、当該技術分野では周知の任意のタンパク質及びそれらの組み合わせを発現及び分泌させるのに、本発明に係る方法を使用することができる。さらに、RNA分子(センス又はアンチセンス)を発現させるのに、本発明に係る方法を使用することができる。
【0137】
また、遺伝子組み替え細胞を含んでいるDMOはインビトロで保存され、組織サンプルの上清媒体に残された治療物質は単離され、同じ又は異なる患者に注射又は適用される。
【0138】
また、遺伝子組み替え細胞を含んでいる真皮小器官は、組織サンプルから作成した又は遺伝子変化のすぐ後に、当該技術分野では周知の方法、例えば10%DMSOを含んでいるDMEM培地での段階的な冷凍方法(0℃、−20℃、−80℃、−196℃)によって低温で保存される(ただし、これに限定されるものではない)。
【0139】
本発明のある例示的実施形態では、移植する組織サンプル(遺伝子組み替え細胞を含んでいる)の量は、規定の指針、特定の臨床試験計画書又は同様の患者の人口統計に基づいて患者に定期的に投与される目的治療物質の1つ又はそれ以上の対応量によって決定される。治療物質(例えば、目的タンパク質)の対応量は、同じ患者が以前に注射又は他の経路を介して受け取った場合に特異的である。体重、年齢、健康状態、臨床状態などの患者のデータ。他の同様な患者に投与された以前の遺伝子組み替え細胞を含んでいる組織サンプルからの薬物動態データ。その患者に投与された以前の遺伝子組み替え細胞を含んでいる組織サンプルへの反応。
【0140】
本発明のある例示的実施形態では、DTMOの一部だけを治療に使用する。残りのDTMOは、後の使用のためにメンテナンスに戻される(又は低温で保存される)。
【0141】
そこで、本発明のある実施形態では、患者に移植する治療用真皮小器官の量を決定する方法を提供する。この方法は、インビトロでのDTMOの量によって、治療物質の生成及び/又は分泌レベルを測定するステップと、治療物質のインビトロでの生成及び/又は分泌とインビボでの血清中濃度との関係を推定するステップと、測定した生成及び/又は分泌レベルと推定した関係とに基づいて、移植するDTMOの量を決定するステップとを含んでいる。随意的に、前記関係は、次のグループから選択される1つまたはそれ以上の要因に基づいて推定される。
(a)体重、年齢、健康状態、臨床状態などの患者のデータ。
(b)他の同様な患者に以前DTMOを投与したときの薬物動態データ。
(c)その患者に以前DTMOを投与したときの薬物動態データ。
【0142】
随意的に、前記関係は、上記した要因の少なくとも2つに基づいて推定される。随意的に、前記関係は、上記した3つの要因に基づいて推定される。
【0143】
本発明のある実施形態では、患者に移植する治療用真皮小器官の量は、次の一方又は両方に基づいて決定される。規定の指針、特定の臨床試験計画書又は同様の患者の人口統計に基づいて、前記患者に定期的に投与される同一の治療用タンパク質の対応する量。患者が以前に注射又は他の経路を介して受け取った場合の、同じ患者に特異的な同一の治療物質の対応する量。
【0144】
本発明のある実施形態では、この方法は移植するDTMOの量を、測定された量に基づいて調整することを含んでいる。
【0145】
また、本発明のある実施形態では、患者に移植されたDTMOから生成される治療物質の用量を調整する方法を提供する。この方法は、(a)患者内の治療物質のレベルをモニタリングするステップと、(b)前記治療物質のレベルを所定のレベルと比較するステップと、(c)治療物質のレベルが最低レベルよりも低い場合は、さらなる治療用真皮小器官を移植するステップと、(d)治療物質のレベルが最高レベルよりも高い場合は、移植したDTMOの一部を不活性化は除去するステップとを含んでいる。随意的に、この方法は、(a)〜(d)を定期的に繰り返す。また、DTMOの一部を不活性化又は除去するステップは、移植したDTMOの一部を除去することを含む。随意的に、前記除去は、外科的に除去することを含む。随意的に、前記不活性化は、移植したDTMOの一部を死滅させることを含む。随意的に、前記除去は、移植したDTMOの一部を切除することを含む。
【0146】
図1を参照しつつ説明したように、遺伝子改質中にDMOを維持するプロセスの少なくとも一部は、後述するようにバイオリアクター内で行われる。
【0147】
本発明のある実施形態では、バイオリアクターは、次のいくつか又は全ての性質を有している。
(a)栄養素及び気体がDMO内に拡散してDMOの生存性を保つように、DMOの表面への栄養素及び気体の提供を可能にする。このことにより、DMOの表面及び容積の大部分は、DMOの周囲と接触する液体によってブロックされない。
(b)DMOを望ましい温度で維持することを可能にする。
(c)DMOの周辺で、望ましいpH及びガス組成を保つことを可能にする。
(d)DMO及び/又はバイオリアクターから廃棄物を排出することを可能にする。
(e)実質的に挿入ベクターが周囲を汚染することなく、遺伝子組み替えベクターの容易な挿入方法を可能にする。
(f)使わない過剰ベクターを取り除くことを可能にする。
(g)生成された治療物質の量を測定することを可能にする。
(h)実質的に無菌の治療物質を取り除くことを可能にする。
(i)DTMOの挿入、及び、全て或いは一定量のDTMOの容易な除去を可能にする。
【0148】
図22は、本発明のある実施形態に係る、DMO2204を採取するプロセスに使用するシステム2207を概略的に示す図である。
【0149】
本発明のある例示的実施形態では、システム2207は、各々DMO2204に対応するように構成された1つ以上の槽2202を有するバイオリアクター2200を備えている。ある例示的実施形態では、バイオリアクター2200は、特定の患者から採取されるDMOの数と等しい数の、多数の槽を有している。前記槽には、近くの貯蔵タンク2208からの適切な液体(例えば成長培質)が満たされる、及び/又は、槽2202から廃棄タンク2210へ液体を放出するように構成されている。液体は、注入ライン2242を介して貯蔵タンク2208に供給される。注入ライン2242は、例えば、殺菌されたコネクタ2258によって貯蔵タンク2208に連結される。
【0150】
DMO2204は、上述したようなDMO2204を採取するのに使用した切断ルールによって、槽2202に移送される。DMOの槽2202への移送は、望ましくは、DMO2204を採取した直後に無菌状態を保ちながら行われる。処理槽2202は、DMO2204を受け取るように構成されたDMO挿入口2201を有している。例えば、DMO挿入口2201としては、ブラントカニューレ(例えばBraun Medical Inc 社から市販されているSafeLine(TR)Injection Site)を受け入れることができる、無菌隔壁インターフェイスを用いることができる。切断ツールの先端が隔壁に挿入されると、DMO2204は、例えば切断ツールの後端に接続された注射器を使用して、槽2202内に緩やかに流し込まれる(一般に無菌状態で)。ある例示的実施形態では、DMO2204は、槽2202内の培地槽2206に流し込まれる。また、例えば、DMO2204が上述したようなインナーガイドに採取されると、後述するように、槽2202の蓋2232は取り除かれ、DMO2204はインナーガイドから静かに移動されて槽2202内に置かれる。その後、蓋2232は戻され、槽2202の不稔性を保つべく槽2202は密閉される。
【0151】
バイオリアクター2200は、一般に、同一の方法では、少なくともいくつかの処理槽に収容されたDMOへの1つ又はそれ以上の処理に適合するように構成されている。本発明のある例示的実施形態では、バイオリアクター2200は、後述するように、1つ又はそれ以上の処理槽の内容物を他の処理槽の内容物から流体的に分離するように構成されている。
【0152】
本発明のある例示的実施形態では、バイオリアクター2200は、後述するように、液体の処理槽2202への流入及び/又は処理槽2202からの流出を制御するための機構を備えている。
【0153】
本発明のある例示的実施形態では、バイオリアクター2200は殺菌バッファ2222を有しており、バッファ2222は、殺菌フィルタ2220(例えば、0.45μmの微細孔の空気浄化フィルタ)を介して、バッファ2222内に空気を注入する及び/又はバッファ2222から空気を排出するように構成された非殺菌注射器ポンプ2214と流体的に接続されている。バイオリアクター2200は制御バルブ2212を有しており、制御バルブ2212は、少なくとも4つの位置、例えば、バッファ入口位置(貯蔵タンク2208がバッファ2222と流体的に接続する入口)、バッファ出口位置(廃棄タンク2210がバッファ2222と流体的に接続する入口)、槽−バッファ位置(槽2202がバッファ2222と流体的に接続する位置)、及び/又はバッファ2222内の非接続位置で動作可能である。槽2202、貯蔵タンク2208及び廃棄槽2210は、互いに流体的に分離されている。ピストン2226は、異なる位置の間で、バルブ2212とモータ2224との間を接続する。随意的に、例えばピストン2226の動作中に殺菌されていない空気が殺菌バッファに実質的に送達されないように、ベロー隔膜2228がピストン2226上に取り付けられる。
【0154】
システム2207は、注射器ポンプ2214のプランジャ2218を作動させるためのモータ2916を備えている。バイオリアクター2200が2つ以上の槽を有する場合は、槽に関係する各プランジャを同時に作動させるのは、1つのモータ又は複数のモータを使用して行う。
【0155】
本発明のある例示的実施形態では、システム2207は、後述するように、モータ2216及び/又はモータ2224の動作を制御する制御装置2286を備えている。
【0156】
本発明のある例示的実施形態では、貯蔵タンク2208からの液体は、槽2202を満たすべく、槽2202内に制御可能に移送される。例えば、制御装置2286は、注射器2214がバッファ2222から所定量の空気を排出させるために、バルブ2212をバッファ入口位置に位置させるようにモータ2224を駆動させる。その結果、前記所定量の空気に対応する所定量の液体が、貯蔵タンク2208からバッファ2222へ引き出される。制御装置2286は、その後、バルブ2212を槽−バッファ位置に移動させるべく、モータ2224を制御可能に作動させる。そして、注射器ポンプ2214がバッファ内の液体を槽2202に排出するように、モータ2216を制御可能に作動させる。同様にして、注射器ポンプ及び制御バルブは、槽2202の中身又はその一部を排出タンク2210に排出するように制御される。
【0157】
本発明のある例示的実施形態では、例えば、ウイルス形質導入及び/又は他のDMO2204に適用される生体外維持方法を補助するために、槽2202内の液体は制御可能に攪拌及び/又は混合される。例えば、制御装置2286は、前述したように、モータ2216及び/又はモータ2224を制御可能に作動させて、槽2209からバッファへ液体又はその一部を定期的に排出する。そして、その後、バッファ2222内に注入するために、液体を槽2202内に戻す。
【0158】
本発明のある例示的実施形態では、空気は、例えば、貯蔵タンク2208、廃棄タンク2210及び/又は槽2202を流体的に接続する「流路」に位置する液体を浄化するために使用される(例えば、液体を槽2202、貯蔵タンク2208及び/又はバッファ2222へ(又はそれらから)移送した後、流路を洗い流すために)。この態様は、例えば、流路に溜まった、液体の「デッドボリューム(dead volume)」を減少するのに有用である。例えば、制御装置2286は、貯蔵タンク2208からバッファ2222に液体を引き込む前に、所定量の空気をバッファ2222内に引き込むべく、モータ2216を制御可能に駆動して注射器プランジャ2218を動かす。注射器ポンプ2214を駆動するとバッファ2222内の液体が最初に排出され、その後に流路内に残存する液体を流す空気が排出されるように、バッファ2222は、バッファ2222内で空気が流体よりも上となるような形状大きさを有している。
【0159】
本発明のある例示的実施形態では、槽2202の底面2230は、槽内へ及び/又は槽から液体を実質的に一定に移送できるように、及び/又は、槽2202から液体の大部分を排出できるように形成された、複数の孔又はメッシュ状のパターンを有している。この構造は、液体の流れがよどむ及び/又は流れない「デッドスポット(dead spot)」の発生を減少させることができる。
【0160】
本発明のある例示的実施形態では、蓋2232は、取り外し可能な接着剤やシリコンプラグなどによって取り付けられた、膜のような取り外し可能な無菌の蓋である。蓋2232は、槽2209とその周囲との間で、無菌「バリア」を保つように構成される。随意的に、槽2202とその周囲を流体的に接続するのに、殺菌エアフィルタ2234(例えば、約0.45μmの微細孔のエアフィルタ)が使用される。したがって、槽2202とその周囲で殺菌「バリア」を維持している間は、圧力の平衡が保たれる。また、蓋2232を介しての圧力の釣り合いが可能となるように、蓋2232には「通気性のある」材料を使用することもできる。
【0161】
貯蔵タンク2208及び/又は廃棄タンク2210は、一般に、図示しないマニホールドを介して、特定の患者用の処理槽2202に接続されている。また、貯蔵タンク2208及び/又は廃棄タンク2210は、各々独立して処理槽に接続されている。貯蔵タンク2208及び/又は廃棄タンク2210は、無菌状態で圧力平衡を保つためのメカニズムを有している。例えば、貯蔵タンク2208及び/又は廃棄タンク2210は、それぞれ、殺菌エアフィルタ2236及び/又は殺菌エアフィルタ2238を介して周囲と流体的に接続されている。フィルタ2236及び/又はフィルタ2236は、例えば、約0.45μmの微細孔のエアフィルタである。また、廃棄タンク2210には、圧力平衡を必要としない(そのため殺菌フィルタを必要としない)拡張可能な廃棄物容器を用いることもできる。
【0162】
本発明のある例示的実施形態では、バイオリアクター2200は、槽2202への液体の注入又は槽202からの液体の排出を直接的に行えるように構成されている。サンプリング隔膜口2240は、例えば、ウイルスベクター液の注入に使用される。又は、バイオリアクターの様々なパラメータ(例えば、ELISA、グルコース摂取、乳酸産生、又は他の指標パラメータ)を試験するために成長培地をサンプリングするのに使用される。隔膜口2240には、標準的なシリコン口(例えば、DMO挿入口2210に関して前述したような)を用いることができる。注射器(図示しない)は、隔膜口2240に、取り外し可能に挿入される。注射器は、手動又は自動的に駆動される(例えば制御装置によって)モータ(例えば、モータ2216と同様の)によって動かされる。
【0163】
本発明のある例示的実施形態では(少なくとも1つの又は全ての例示的実施形態では)、バイオリアクター2200の成分は、所定の状態(培養状態)で維持される。培養状態は、例えば、温度は約37℃、気体雰囲気は空気が約90〜95%で、二酸化炭素が約5〜10%、及び/又は、やや高めの湿気である。本発明のある例示的実施形態では、槽2202だけがインキュベーター状態に保たれる。前述したように、これらの培養状態は、DMO組織培養の生存性の維持をするために必要である。
【0164】
本発明のある例示的実施形態では、液体供給配置は、少なくとも1つの液体タンク(液体タンク2244及び2246)から注入ライン2242へ液体を供給する。ある例示的実施形態では、一方のタンクが他方のタンクの予備貯蔵タンクとして使用される場合は、タンク2244及び2246は同じ液体(例えば、成長媒体)を収容している。本発明の他の例示的実施形態では、タンク2244及び2246は、2つの異なる種類のタイプの液体(例えば、DMO処理の異なる段階で使用される2種類の成長媒体)を収容している。タンク2244及び/又は2246は、無菌状態で圧力の平衡を保つための殺菌エアフィルタを有している(貯蔵タンク2208に関して前述したように)。また、タンク2244及び/又は2246には、例えば公知の無菌ビニール袋などの、折りたたみタンクを用いることもできる。
【0165】
本発明のある例示的実施形態では、各タンク2244及び2246は、バルブ2252(例えば、ピンチバルブ)を介して、結合コネクタ2954、隔膜口コネクタ2248及び穿通スパイク2250と流体的に接続している。コネクタ2254としては、例えば、公知のY字型又はT字型のコネクタを用いることができる。バルブ2252は、タンク2244及び/又は2246からコネクタ2254への液体の流れを制御するように構成されている。ポンプ(例えば蠕動ポンプ)2256は、注入ライン2242に沿って、コネクタ2254とコネクタ2258との間に位置している。制御装置2286は、貯蔵タンク2208に提供される液体の流量及び流速を制御するのに使用され、モータ2257及び/又はバルブ2252を制御可能に駆動することにより制御を行う。
【0166】
本発明のある例示的実施形態では、タンク2244及び/又はタンク2246に収容された液体は、冷凍状態(4℃)で9日間の保存寿命を有する。したがって、図示しない冷凍システムを使用して、タンク2244及び/又はタンク2246内の液体の温度を貯蔵タンク2208の培養温度よりも低く維持する。したがって、注入ライン2242は、冷凍状態から培養状態までの接合部分を通る。保存寿命が過ぎると、タンク2244及び/又はタンク2246は新しいタンクと交換される。
【0167】
本発明のある例示的実施形態では、バイオリアクター2200の少なくともいくつかの要素は、使い捨ての殺菌プラスチック部品から成る。これらの実施形態によれば、バイオリアクター装置2200は、使い捨ての無菌パッケージ化されたバイオリアクター装置を含む。前記バイオリアクター装置は、DMO採取部位に運ばれ、無菌環境下で開かれ、成長培地が各バイオリアクター槽2202に注入されるように、部位上で準備される。DMOを採取するのに使用されるツールは、上述したように、無菌状態でDMOを槽2202内に流すために、DMO挿入口2201を介して挿入される。バイオリアクター装置2200は、例えば培養状態下で、システム2207の他のコンポーネント(例えば、コネクタ2258、モータ2216及び/又は2224、ピンチバルブ2252、及び/又は、蠕動ポンプ2256)と接続されている処理部位に運搬される。制御装置2286は、その後、採取されたDMOからDTMOを作成する生体外処理の間、DMOの維持及びDMOの形質導入を制御する。特定の患者に必要な用量は、(例えばここで説明するような)薬動力学モデルを使用して決定される。その後、バイオリアクター槽2200はシステム2207から取り外され、例えば培養条件下で、移植部位に搬送される。例えば上述した移植方法によって特定のDTMOを移植するために、特定のDTMO用のバイオリアクター槽2202は蓋2232を取り外すことによって開けられ、DTMOは槽から摘出される。
【実施例】
【0168】
《実施例1 DTMO−hEPOによるヒトエリスロポエチンのインビトロでの分泌レベル》
異なるヒト皮膚サンプルから得られたDTMO−hEPO間における、インビトロでのhEPOの分泌レベルのばらつきを分析するために実験を実施した。
【0169】
〈実験手順〉
6人の異なるヒトから採取した皮膚サンプルより、hEPOを作成した(3つ)。そして、ウイルスベクターを洗浄した後、図4に示すように、様々な時点でhEPO分泌レベルを測定した。
【0170】
〈実験結果〉
DTMO−hEPOの分泌レベルは、異なるヒト皮膚サンプル間で類似していた。さらに、DTMO−hEPOの分泌レベルは、従来の中間層(split thickness)から得られたhEPOの分泌レベルと類似していた(データは示さず)。
【0171】
《実施例2 組織学的分析》
DTMOが主に真皮成分を含有していることを確認するために、組織学的分析を実施した。MOは中間層又は真皮組織サンプルから作成した。組織学的分析は真皮病理学者が行った。図5の左側に示すように、DTMOは真皮層と真皮成分を含んでおり、基底層及び/又は表皮層の残りは含んでいない。相対的に、図5の右側に示す中間層TMOは、基底層及び/又は表皮層を含む全皮膚層を含んでいる。
【0172】
《実施例3 免疫細胞化学研究》
DTMO−hEPO組織にどの細胞が形質導入されるのかを調べるために、アンチhEPOモノクローナル抗体(1:20に希釈)を使用して、採取した9日後に、DTMO−hEPOの組織学的免疫組織化学分析を実施した。図6に示すように、分析の結果から、真皮線維芽細胞が強く着色されているのが明らかになった。着色はDTMO全体に広がっていた。
【0173】
《実施例4 DTMO−hEPO及びTMO全体に由来するSCIDマウスにおける長期間に渡るhEPO造血活性の比較》
DTMO−hEPOと中間層に由来するDTMO−hEPOとをSCIDマウスに皮下移植した際の長期間に渡る影響を調査及び比較するために実験を実施した。
【0174】
〈実験手順〉
ヒトDTMO−hEPO及びヒト中間層由来TMO−hEPOを作成し、2つのグループのSCIDマウス(各グループは5匹)に皮下移植する。対照グループには、Ad/lacZウイルスベクターを形質導入したヒトDTMO及び中間層由来TMOを移植した。
【0175】
〈実験結果〉
図7に示すように、2つの実験グループで似たような分泌レベル及び生理反応が確認された。予想通りに、対照グループのマウスの血液中にはhEPOは存在しなかった。
【0176】
早ければ移植15日後にも見られるように、全ての実験グループでヘマトクリット値の上昇が見られ、それは5か月以上も維持された。一方、Ad/lac対照マウスには、そのようなヘマトクリット値の上昇は見られなかった。DTMO−hEPOは、中間層由来のTMO−hEPOと比べると、同様の期間、同様の分泌レベルを示すように見える。
【0177】
《実施例5 皮下に移植したとき、DTMO−hEPOは角質嚢腫を形成しない》
〈実験手順〉
DTMO−hEPO及び中間層に由来するDTMO−hEPOをSCIDマウスにS.C.移植し、角質嚢腫の形成を臨床的及び組織学的分析によってモニタリングした。
【0178】
〈実験結果〉
図8に見られるように、中間層に由来するDTMO−hEPOを移植した場合、移植後76日及び141日に角質嚢腫の形成が観察された。対照的に、DTMO−hEPOを移植した場合には、移植後113日が経過してもSCIDマウスに角質嚢腫の形成は観察されなかった。
【0179】
《実施例6 健康なヒトにおける中間層に由来するDMOの融合》
〈実験手順〉
市販のデルマトーム(皮膚切断器)を使用して、ヒト真皮MO及びヒト中間層由来TMOを採取する。前記デルマトームとしては、例えば、Aesculap GA 630がある。採取前に、Emlaローション(表面麻酔)及びMarcain-Adrenalin(局所麻酔)の皮下注射によって、ドナー部位及び被移植部位の両方に対して表面及び局所麻酔を行う。
【0180】
ヒト真皮MOとヒト中間層由来MOを作成するために、2種類の皮膚サンプルを採取する。ヒト中間層由来MOとして、下腹部から健康な皮膚の一片を切除する。この皮膚切片から、前述したように、6つの線状のMOを作成する。同時に、調節可能なスリットメーカーを使用して、移植部位に特定の寸法のスリットを形成する。そして、直後に、皮膚スリット内にMOを移植する。ヒト真皮MOを作成するために、皮膚を2つのステップで採取する。まず、深さ200μmの皮膚弁を採取して、湿ったガーゼで保持する。この採取部位から、深さ1mmの真皮の皮膚片を採取する。皮膚を採取した後、バイオロジカルドレッシング(biological dressing)としての機能を果たすドナー部位に、200μmの皮膚弁を戻す。採取した真皮切片から、中間層由来MOのときと同様の方法を用いて、4つの真皮MOを作成する。その直後、トロカール(trocar)を使用してヒト真皮MOを移植する。ドナー部位及び移植部位を、Bioclusive(TR)透明細胞膜(Johnson & Johnson, USA)によってドレス(dress)する。一週間後、ドレッシングを交換し、移植片の融合を調べるために移植片を検査する。MOを移植した2〜3週間後、計画的な腹部形成を行い、皮膚切片(移植片及び移植領域を含んでいる)を切り取る。MO融合を検査するために、移植領域の臨床評価(写真及び組織学的検査を含む)を行う。
【0181】
〈実験結果〉
移植1週間後に行った臨床検査と、腹部形成の直後(移植2〜3週間後)に行った組織学的検査により、皮膚スリット内に移植したMOの優れた融合が明らかになった。また、皮下に移植された真皮MOの優れた融合も明らかになった(図9参照)。スリットに移植された中間層に由来するMOも、皮下に移植された真皮MOも、炎症又は腫れの兆候は見られなかった。
【0182】
《実施例7 ヒトエリスロポエチンを発現する、ミニブタ皮膚の線状中間層TMOの自己移植(免疫担当動物内へのhEPOの移植)》
一般的な麻酔方法を用いて、生きた動物から採取した新鮮な皮膚サンプルから、直線状(長さ30.6mm、幅0.6μm)のミニブタ(シンクレアブタ:Sinclair swine)の真皮小器官を作成する。市販のデルマトーム(Aesculap GA 630)を使用して、0.9〜1.1mmの皮膚中間層の組織サンプルを採取し、ペトリ皿(90mm)内のグルタミン含有DMEM及びPen-Strepを使用して洗浄する。
【0183】
線状小器官を作成するために、上述したような刃構造を用いたプレス装置を使用して、上記の組織サンプルを所望する寸法(30.6mm×600μm)に切断する。その結果得られた線状小器官を、ウエル毎に500μlのDMEM(Biological Industries - Beit Haemek)を含んでいる24ウエルのマイクロプレート内に、血清を除外して、37℃、5%のCO2で24時間、ウエル毎に置く。各ウエルは、ミニブタの皮膚治療用小器官(pig skin-TMO)を作成するために、ヒトエリスロポエチン遺伝子を保持するアデノウイルスベクター(1x1010IP/ml)を使用した形質導入処理を受ける。培地は2〜4日毎に交換し、特定のELISAキット(カタログ# DEP00、Quantikine IVD, R&D Systems)を使用して分泌されたhEPOの存在の有無を分析する。
【0184】
上記したミニブタの皮膚のhEPO線状TMOは、いくつかの免疫担当ミニブタに、植皮として皮下移植又は移植される(2匹のミニブタに、TMO−hEPOは皮下移植される。また、異なる2匹のミニブタに、TMO−hEPOは1mmの深さのスリット内に移植される)。各ミニブタには十分な数のTMO−hEPOを移植し、各ブタにおける移植前の分泌レベル(TMO−hEPOを組み合わせた)が約7mg/日となるようにする。hEPOの血清濃度の上昇はELISA分析によって測定される(図3(a)。そして、網状赤血球数の上昇は移植後7日間見られる。
【0185】
以上、本発明について説明したが、本発明は前記した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく限りにおいて、種々の変形が可能である。例えば、ここでは、限られた数の遺伝子の変化のみを示したが、ここで説明した方法(生きている組織を患者の身体に移植し、身体内に移植した後の組織の生存力を保つ方法)に基づいて、任意の公知の方法によって誘導された、組織内での任意の遺伝子変化は、結果として、患者内の標的タンパク質又は他の治療物質の分泌作用をもたらすことは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それが由来する真皮組織のミクロ構造及び三次元構造を実質的に保持する複数の真皮成分を含んでいる真皮小器官であって、
前記真皮成分は、前記真皮小器官内における栄養不足及び老廃物の蓄積に起因する細胞毒性及びそれに付随する死を最小限に抑えるために、前記真皮小器官の細胞への十分な量の栄養素及び気体の受動拡散と前記細胞から出る老廃物の拡散とが可能になるように選択された寸法を有する真皮小器官。
【請求項2】
請求項1に記載の真皮小器官であって、
ケラチンをほとんど生成しないことを特徴とする真皮小器官。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の単離された真皮小器官であって、
約5〜100nmの長さを有することを特徴とする真皮小器官。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の真皮小器官であって、
前記真皮の断面の一部を含むことを特徴とする真皮小器官。
【請求項5】
請求項4に記載の真皮小器官であって、
前記真皮の断面の大部分を含むことを特徴とする真皮小器官。
【請求項6】
請求項5に記載の真皮小器官であって、
実質的に前記真皮の全断面を含むことを特徴とする真皮小器官。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の真皮小器官であって、
脂肪組織をさらに含むことを特徴とする真皮小器官。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の真皮小器官であって、
少なくとも1つの表皮層に由来する組織をさらに含むことを特徴とする真皮小器官。
【請求項9】
請求項8に記載の真皮小器官であって、
少なくとも1つの表皮層は表皮基底層を含むことを特徴とする真皮小器官。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の真皮小器官であって、
インビトロ内で少なくとも数日維持可能であることを特徴とする真皮小器官。
【請求項11】
請求項10に記載の真皮小器官であって、
インビトロ内で少なくとも数週間維持可能であることを特徴とする真皮小器官。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の真皮小器官であって、
インビボ分画を含むことを特徴とする真皮小器官。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の真皮小器官であって、
免疫防御ハウジング内に被包されることを特徴とする真皮小器官。
【請求項14】
それが由来する真皮組織のミクロ構造及び三次元構造を実質的に保持する複数の真皮成分を含んでおり、少なくとも1つの組み換え型の遺伝子産物を発現する遺伝子組み換え真皮小器官であって、
前記真皮成分は、前記真皮小器官内における栄養不足及び老廃物の蓄積に起因する細胞毒性及びそれに付随する死を最小限に抑えるために、前記真皮小器官の細胞への十分な量の栄養素及び気体の受動拡散と前記細胞から出る老廃物の拡散とが可能になるように選択された大きさを有し、
前記細胞の少なくともいくつかは、少なくとも1つの組み換え型の遺伝子産物の少なくとも一部を発現する遺伝子組み換え真皮小器官。
【請求項15】
請求項14に記載の遺伝子組み換え真皮小器官であって、
前記真皮の断面の一部を含むことを特徴とする遺伝子組み換え真皮小器官。
【請求項16】
請求項15に記載の遺伝子組み換え真皮小器官であって、
前記真皮の断面の大部分を含むことを特徴とする遺伝子組み換え真皮小器官。
【請求項17】
請求項16に記載の遺伝子組み換え真皮小器官であって、
実質的に前記真皮の全断面を含むことを特徴とする遺伝子組み換え真皮小器官。
【請求項18】
請求項14乃至17のいずれかに記載の遺伝子組み換え真皮小器官であって、
脂肪組織をさらに含むことを特徴とする遺伝子組み換え真皮小器官。
【請求項19】
請求項14乃至18のいずれかに記載の遺伝子組み換え真皮小器官であって、
前記少なくとも1つの組み換え型の遺伝子産物は、真皮小器官が由来する器官によって自然に生成されることを特徴とする遺伝子組み換え真皮小器官。
【請求項20】
請求項14乃至18のいずれかに記載の遺伝子組み換え真皮小器官であって、
前記少なくとも1つの組み換え型の遺伝子産物は、真皮小器官が由来する器官によって自然に生成されないことを特徴とする遺伝子組み換え真皮小器官。
【請求項21】
請求項14乃至20のいずれかに記載の遺伝子組み換え真皮小器官であって、
インビボ分画を含むことを特徴とする遺伝子組み換え真皮小器官。
【請求項22】
請求項14乃至21のいずれかに記載の遺伝子組み換え真皮小器官であって、
免疫防御ハウジング内に被包されることを特徴とする遺伝子組み換え真皮小器官。
【請求項23】
患者の局部又は全身の生理的効果を誘導する方法であって、
請求項1乃至22のいずれかに記載の真皮小器官を身体内に移植するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、
前記真皮小器官を移植するステップは、前記真皮小器官を皮膚の内部又は下部に移植することを特徴とする方法。
【請求項25】
目的の遺伝子産物を患者に送達させる方法であって、
請求項14乃至24のいずれかに記載の遺伝子組み替え真皮小器官を身体内に移植するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、
前記遺伝子組み替え真皮小器官を移植するステップは、前記遺伝子組み替え真皮小器官を皮膚の内部又は下部に移植することを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項23乃至26のいずれかに記載の方法であって、
前記真皮小器官は前記患者に由来することを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項23乃至26のいずれかに記載の方法であって、
前記真皮小器官はドナーに由来することを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、
前記ドナーは人間であることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法であって、
前記ドナーは人間以外の動物であることを特徴とする方法。
【請求項31】
患者に移植する治療用真皮小器官の量を決定する方法であって、
インビトロでの前記真皮小器官の量によって、治療物質の生成及び/又は分泌レベルを測定するステップと、
治療物質のインビトロでの生成及び/又は分泌とインビボでの血清中濃度との関係を推定するステップと、
測定した生成及び/又は分泌レベルと推定した関係とに基づいて、移植する治療用真皮小器官の量を決定するステップとを含む方法。
【請求項32】
移植部位に治療用真皮小器官を移植する方法であって、
吸引によってその内部に前記治療用真皮小器官を保持するキャリアを前記移植部位に挿入するステップと、
前記移植部位内で前記真皮小器官を保持しながら前記キャリアを引き出すステップとを含む方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、
前記移植部位は、皮膚の内部又は下部であることを特徴とする方法。
【請求項34】
移植部位に治療用真皮小器官を移植する方法であって、
吸引によってその内部に前記治療用真皮小器官を保持するキャリアを前記移植部位に移植するステップと、
前記治療用真皮小器官が前記キャリアから脱離して移植部位に至るように、前記吸引されている治療用真皮小器官に圧力を加えるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記目的とする移植部位は身体の内部であることを特徴とする方法。
【請求項36】
患者に移植された治療用真皮小器官によって生成される治療物質の用量を調整して放出する方法であって、
患者内の治療物質のレベルをモニタリングするステップと、
前記治療物質のレベルと少なくとも1つの閾値レベルとの比較に基づいて、前記患者内の前記治療用真皮小器官の量を調節するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの閾値レベルは最低レベルと最高レベルとを含んでおり、
前記治療用真皮小器官の量を調節するステップは、
治療物質のレベルが前記最低レベルよりも低い場合は、さらなる治療用真皮小器官を移植し、治療物質のレベルが前記最高レベルよりも高い場合は、前記治療用真皮小器官の一部を不活性化は除去することを含む方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、
前記物質のレベルが前記最低レベルと最高レベルとの間になるまで、前記モニタリングステップ及び調整ステップを定期的に繰り返すことを含む方法。
【請求項39】
請求項37又は38に記載の方法であって、
前記治療用真皮小器官の一部を不活性化は除去するステップは、前記一部を除去することを含む方法。
【請求項40】
請求項37又は38に記載の方法であって、
前記治療用真皮小器官の一部を不活性化は除去するステップは、前記一部を外科的に除去することを含む方法。
【請求項41】
請求項37又は38に記載の方法であって、
前記治療用真皮小器官の一部を不活性化は除去するステップは、前記一部を切除することを含む方法。
【請求項42】
請求項37又は38に記載の方法であって、
前記治療用真皮小器官の一部を不活性化は除去するステップは、前記部分を死滅させることを含む方法。
【請求項43】
真皮小器官を採取するための装置であって、
前記真皮小器官が採取される皮膚関連組織構造を支持する支持構造と、
前記真皮小器官を前記皮膚関連組織構造から分離する切断ツールとを備えた装置。
【請求項44】
請求項43に記載の装置であって、
前記支持構造は第1のチューブ状要素を有し、
前記切断ツールは、前記第1要素に沿って挿入され、前記第1要素と実質的に同軸であるように構成された第2のチューブ状要素を有することを特徴とする装置。
【請求項45】
請求項44に記載の装置であって、
前記第1のチューブ状要素はインナーガイドニードルを有することを特徴とする装置。
【請求項46】
請求項44又は45に記載の装置であって、
前記第1のチューブ状要素は、前記第2のチューブ状要素から前記真皮小器官を取り出すように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項47】
請求項44乃至46のいずれかに記載の装置であって、
前記第2のチューブ状要素は、切断軸に沿って前進させたときに、前記皮膚関連組織構造を切断できるコアリングチューブを含むことを特徴とする装置。
【請求項48】
請求項47に記載の装置であって、
前記コアリングチューブは、回転可能であることを特徴とする装置。
【請求項49】
請求項47又は48に記載の装置であって、
前記コアリングチューブの内面及び外面の少なくとも1つは、少なくとも部分的に低摩擦材料でコーティングされていることを特徴とする装置。
【請求項50】
請求項49に記載の装置であって、
前記低摩擦材料は、テフロン(登録商標)又はパリレンを含むことを特徴とする装置。
【請求項51】
請求項44に記載の装置であって、
前記第1のチューブ状要素は、ノッチ切欠を有することを特徴とする装置。
【請求項52】
請求項43乃至51のいずれかに記載の装置であって、
前記支持構造は、前記皮膚関連組織構造を支持するためのクランプ機構を含むことを特徴とする装置。
【請求項53】
請求項43に記載の装置であって、
前記支持構造は真空槽を備えており、
前記真空槽は、前記切断ツールが前記皮膚関連組織構造から前記真皮小器官を分離できるように前記皮膚関連組織構造を望ましい形状及び位置に維持する内部支持面を有していることを特徴とする装置。
【請求項54】
請求項53に記載の装置であって、
前記皮膚関連組織構造は、前記槽に真空状態を作成したときに、前記槽の内側に位置されることを特徴とする
【請求項55】
請求項53又は54に記載の装置であって、
前記真空槽に接続されるガイドチャネルを備えており、
前記切断ツールを前記ガイドチャネルに挿入したときに、前記切断ツールを前記支持面から所定の距離で保持するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項56】
請求項55に記載の装置であって、
前記距離は、前記皮膚関連組織構造内の前記真皮小器官を採取するための望ましい位置に基づいて予め決められることを特徴とする装置。
【請求項57】
請求項53乃至56のいずれかに記載の装置であって、
前記支持面の少なくとも一部を少なくとも1つの真空源と流体的に接続する1つ以上の真空チャネルを備えていることを特徴とする装置。
【請求項58】
請求項53乃至57のいずれかに記載の装置であって、
前記皮膚関連組織構造が前記支持面によって支持されたときに、前記皮膚関連組織構造をクランプするためのクランプ構造
【請求項59】
請求項53乃至58のいずれかに記載の装置であって、
前記槽の少なくとも1つの寸法は、前記真皮小器官の少なくとも1つの目的とする寸法に基づいて予め決められたことを特徴とする装置。
【請求項60】
請求項53乃至59のいずれかに記載の装置であって、
前記切断ツールは、前記真皮小器官を前記槽の内部から取り出すように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項61】
請求項53乃至60のいずれかに記載の装置であって、
前記真空槽は、1回のランセット切断で採取した真皮小器官が身体から分離されるように、皮膚の水平状態を一般に切断ツールの軌道の上側で保つ高位突出部を有することを特徴とする装置。
【請求項62】
請求項43乃至61のいずれかに記載の装置であって、
前記切断ツールを回転させる回転機構を備えたことを特徴とする装置。
【請求項63】
請求項62に記載の装置であって、
前記回転機構は、前記切断ツールを少なくとも1000rpmで回転させることを特徴とする装置。
【請求項64】
請求項63に記載の装置であって、
前記回転機構は、前記切断ツールを少なくとも2000rpmで回転させることを特徴とする装置。
【請求項65】
請求項64に記載の装置であって、
前記回転機構は、前記切断ツールを約7000rpmで回転させることを特徴とする装置。
【請求項66】
請求項43乃至65のいずれかに記載の装置であって、
前記皮膚関連組織構造は一般に円筒型の形状を有することを特徴とする装置。
【請求項67】
請求項43乃至66のいずれかに記載の装置であって、
前記皮膚関連組織構造は、表皮組織の成分及び真皮組織の成分を含むことを特徴とする装置。
【請求項68】
請求項67に記載の装置であって、
前記皮膚関連組織構造は、少なくともいくつかの脂肪組織及び筋肉組織をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項69】
請求項43乃至68のいずれかに記載の装置であって、
前記採取された真皮小器官は、前記真皮の断面の少なくとも一部を含むことを特徴とする装置。
【請求項70】
請求項69に記載の装置であって、
前記真皮小器官は、脂肪組織をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項71】
請求項69又は70に記載の装置であって、
前記真皮小器官は、表皮組織をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項72】
請求項43乃至71のいずれかに記載の装置であって、
前記真皮小器官は、それが由来する真皮組織のミクロ構造及び三次元構造を実質的に保持する複数の真皮成分を含んでおり、
前記真皮成分は、前記真皮小器官内における栄養不足及び老廃物の蓄積に起因する細胞毒性及びそれに付随する死を最小限に抑えるために、前記真皮小器官の細胞への十分な量の栄養素及び気体の受動拡散と前記細胞から出る老廃物の拡散とが可能になるように選択された大きさを有することを特徴とする装置。
【請求項73】
前記真皮小器官を患者から採取する方法であって、
前記真皮小器官が採取される皮膚関連組織構造を支持するステップと、
前記真皮小器官を前記皮膚関連組織構造から分離するステップとを含む方法。
【請求項74】
請求項73に記載の方法であって、
前記支持ステップは、前記皮膚関連組織構造にインナーガイドを挿入することを含み、
前記分離ステップは、切断ツールを前記インナーガイドに沿ってかつ同軸的に挿入することを含む方法。
【請求項75】
請求項74に記載の方法であって、
前記支持ステップは、前記皮膚関連組織構造をクランプすることを含む方法。
【請求項76】
請求項74又は75に記載の方法であって、
前記真皮小器官を取り出すべく、前記インナーガイドを引き出すことを含む方法。
【請求項77】
請求項74乃至76のいずれかに記載の装置であって、
前記インナーガイドを挿入するステップは、前記インナーガイドを一般に前記皮膚関連組織構造の皮膚表面と平行に挿入することを含む方法。
【請求項78】
請求項74乃至77のいずれかに記載の装置であって、
前記分離ステップは、前記切断ツールを回転させることを含む方法。
【請求項79】
請求項78に記載の方法であって、
前記回転ステップは、前記切断ツールを1000rpm以上の速度で回転させることを含む方法。
【請求項80】
請求項79に記載の方法であって、
前記回転ステップは、前記切断ツールを2000rpm以上の速度で回転させることを含む方法。
【請求項81】
請求項80に記載の方法であって、
前記回転ステップは、前記切断ツールを約7000rpmの速度で回転させることを含む方法。
【請求項82】
請求項73に記載の方法であって、
前記支持プロセスは、前記皮膚関連組織構造に真空状態を作り出すこと含む方法。
【請求項83】
請求項73乃至82のいずれかに記載の方法であって、
前記皮膚関連組織構造は、表皮組織の一部及び真皮組織の一部を含むことを特徴とする方法。
【請求項84】
請求項83に記載の方法であって、
前記皮膚関連組織構造は、少なくともいくつかの脂肪組織及び筋肉組織をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項85】
請求項73乃至84のいずれかに記載の方法であって、
前記真皮小器官は、前記真皮の断面の少なくとも一部を含むことを特徴とする方法。
【請求項86】
請求項85に記載の方法であって、
前記真皮小器官は、脂肪組織をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項87】
請求項73乃至86のいずれかに記載の方法であって、
少なくとも1つのランセット切開を含むことを特徴とする方法。
【請求項88】
請求項73乃至87のいずれかに記載の方法であって、
それが由来する真皮組織のミクロ構造及び三次元構造を実質的に保持する複数の真皮成分を含んでおり、少なくとも1つの組み換え型の遺伝子産物を発現する遺伝子組み換え真皮小器官であって、
前記真皮成分は、前記真皮小器官内における栄養不足及び老廃物の蓄積に起因する細胞毒性及びそれに付随する死を最小限に抑えるために、前記真皮小器官の細胞への十分な量の栄養素及び気体の受動拡散と前記細胞から出る老廃物の拡散とが可能になるように選択された大きさを有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−70733(P2012−70733A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207648(P2011−207648)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2006−513420(P2006−513420)の分割
【原出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(504174881)メドジニックス・インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】MEDGENICS, INC.
【Fターム(参考)】