説明

遺伝的に改変された細胞を含む生体適合性免疫隔離カプセル

【課題】 ヒトへの移植のためのヒトのCNSへ増殖因子または栄養因子を送達するための生体適合性カプセルを提供することを、本発明の課題とする。
【解決手段】 本発明に従って、ヒトへの移植のためのヒトのCNSへ増殖因子または栄養因子を送達するための生体適合性カプセルであって、そのカプセルは1つ以上の細胞を含み、そしてその細胞は、1日あたり1〜1500ngの増殖因子または栄養因子を産生する、カプセルが提供される。また、本発明に従って、1つ以上の細胞を含むカプセル化された細胞システムも、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的活性分子を宿主へ送達するための改良された生体適合性カプセルに関する。特に、この改良されたカプセルは、特定のマクロポア(macropore)の分布ならびにマクロポアのサイズ範囲によって特徴付けられた外表面の形態を有する。さらに本発明は、生物学的活性分子の長期間の安定な発現、およびそれら生物学的活性分子の送達、そして特にこのような発現および送達を達成する生体適合性免疫隔離(immunoisolatory)カプセルに含有された遺伝的に改変された細胞の使用のための改良されたデバイスおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの臨床的状況、不全、および疾患の状態は、生きた細胞によって産生される1つまたは複数の因子を患者に与えることによって、あるいは生きた細胞によって代謝される有害な因子を患者から除去することにより処置されるか、または軽減される。多くの場合これらの因子は、器官または組織の機能の損傷または損失を回復させるか、あるいは補うことができる。疾患の原因が分泌性の器官または組織の機能の損失を包含する疾患または不全状態の例は、(a)膵臓のランゲルハンス島によるインスリンの産生が損傷または損失される糖尿病;(b)上皮小体ホルモンの産生の損失が血清カルシウムのレベルを低下させ、その結果重篤な筋肉のテタニーにつながる上皮小体機能不全症;(c)ドーパミンの産生が減少するパーキンソン病;および(d)エリスロポエチンの欠陥から派生する赤血球産生の損失により特徴付けられる貧血症を包含する。器官または組織の機能の損傷あるいは損失は、結果としてさらなる代謝機能の損失になり得る。例えば、劇症的な肝臓の機能不全において、肝臓組織は、毒物の除去、細胞の代謝産物の排泄、そしてアルブミンおよび第VIII因子のような必須産生物の分泌が不可能となる。Bontempo,F.A.ら(1987)Blood,69,pp.1721−1724を参照。
【0003】
他の場合、これらの因子はリンホカインまたはサイトカインのような生物学的応答修飾因子であり、これらは患者の免疫システムを高めるか、あるいは抗炎症剤として作用する。これらは慢性寄生性または感染性疾患を持つ個人に特に有用であり、そしてある種の癌の処置にも有用であり得る。
【0004】
患者に次のような栄養因子を与えることも望ましい。例えば、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、ニューロトロフィン−4/5(NT−4/5)、線毛性(ciliary)栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来栄養因子(GDNF)、コリン作動性分化因子/白血病阻害因子(CDF/LIF)、表皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由来成長因子(PDGF)などである。
【0005】
多くの疾患または不全状態において、冒された器官または組織は、常態では特定の代謝物のレベルの変動に応答するよう機能し、それによって恒常性を維持する。例えば、海馬のニューロンは高レベルのNGFを産生し、これが海馬を刺激する前脳部コリン作動性ニューロンの基礎量を直接維持する。このニューロンにより産生されるNGFのレベルが減少すると、この生体構造に対するコリン作動性のインプットが失われる結果になり、そしてアルツハイマー病に見られる老化に関連した記憶の損傷にいたる。
【0006】
神経系においては、絶え間なく低レベルの栄養因子を送達することは、成長因子依存性細胞集団の健康を維持するのに十分である。アルツハイマー病およびハンチントン病のような慢性的疾患においては、NGF、BDNF、NT−3、NT−4/5、CNTF、GDNFおよびCDF/LIFのような神経栄養因子の1つまたはそれ以上を長期間送達することが、神経の生存能力を維持するために要求され得る。この成長因子は脳血液関門(blood−brain barrier)を越えることができないので、全身投与による送達は不可能である。従って、この神経栄養因子は中枢神経系(CNS)へ直接送達されなければならない。
【0007】
多くの研究者が、分泌された産生物を提供するか、あるいは代謝機能に作用するような全器官、組織または細胞を移植することによって、器官または組織の機能を再構成、増加あるいは置換することを試みた。さらに、移植は劇的な恩恵を与えることはできるが、移植に適する入手可能な器官の数がかなり少ないので、その適用には限界がある。一般的には、患者は移植による免疫拒否を回避するために免疫抑制されなければならない。この拒否反応は一般に移植物の機能を損失させ、そして最終的には移植された組織または細胞の壊死を起こす結果になる。しかし、多くの場合において移植物は、たとえ患者の生涯の残された時間の間であっても、長期間機能し続けることが望ましい。患者をかなりの期間免疫抑制の状態に維持するのは、望ましくなくそして経費もかかる。
【0008】
移植の手法に用いられる別のアプローチは、細胞または組織を半透過性の天然のバリア内に移植することであるが、このバリアは、栄養物、老廃物そして分泌産物を拡散させるが、免疫拒否反応を起こす細胞性および分子性エフェクターの有毒な影響を最小にする。選択された産生物を産生する組織または細胞を免疫系から保護する種々のデバイスまたはカプセルが探索された。これらは、血管外の拡散チャンバー、血管内の拡散チャンバー、血管内の限外濾過チャンバーおよびマイクロカプセル化された細胞の移植を包含する(Scharp, World J. Surg.,8,pp.221−9(1984)。このデバイスは、患者を免疫抑制の状態にしておく必要性を軽減し、そのために従来の移植術では用い得なかった提供者の細胞または組織の使用を許すことによって、より多くの患者が機能回復する移植または、別の有益な移植を受けられるので、移植の分野における著しい進歩を提供するものであると予見された。
【0009】
カプセル化された細胞の使用は、免疫系の成分がカプセルへ入りこむのを防ぎ、それによってカプセル化された細胞を免疫破壊から保護する。この技術は、処置に使用され得る細胞タイプの多様性を増加する。カプセル膜の半透性はまた、目的の分子をカプセルから周囲の宿主組織へ容易に拡散させる。この技術は、腫瘍の形成という固有の危険性を防ぎ、そしてレシピエントが免疫抑制を起こさずに不適合なヒトまたは動物組織の使用を可能にする。さらに、移植物は必要あるいは所望ならば回収され得る。このような回収可能性は、多くの臨床状況において必須である。
【0010】
外表面の形態は、カプセルの強度、カプセルの回収可能な性質を包含する種々のパラメーター、および長期間にわたって生存細胞を支持するためのカプセルの能力に影響を与え得る。
【0011】
長期間にわたってカプセル化された細胞が生存でき、そして破損することなくより簡単に回収されるようなカプセルを提供することが望まれる。
【0012】
種々の外表面の形態を有するカプセル化のデバイスが非常に多く知られている。カプセルは、その外表面の形態に応じて、タイプ1(T1)、タイプ2(T2)またはタイプ4(T4)に分類されてきた。このような膜は、例えば Lasyら,「カプセル化された膵臓ランゲルハンス島の皮下異種移植片による糖尿病マウスの正常血糖の維持」,Science,254,pp.1782−84(1991)および Dionneら,PCT/US92/03327 に記載されている。本発明の新規な膜は、T1/2と表されるものであり、そしてその全表面部がマクロポアで占められたハイブリットの外表面形態、およびマクロポアの直径が選択された範囲内であることによって特徴付けられている。
【0013】
必要とされる生物学的な機能を供給するために分裂細胞および細胞系を使用することにより、十分に分化した組織および/または器官に対して数多くの有意な利点が提供される。細胞は、インビトロで多量に増殖させ得、そして貯蔵し得、病原体に関してスクリーニングし得る。さらに細胞および細胞系は、初めの器官または組織よりも遺伝子操作がより容易にできる。非相同的組換えDNAを導入する能力は、移植される細胞の機能あるいは表現型の改変について多くの新たな可能性を与える。これは、移植細胞の処置的使用により広い多様性を与える。
【0014】
このような操作に使用される細胞を遺伝的に改変するには、レトロウイルスベクターが一般に利用されてきた(Gageら,米国特許第5,082,670号)。しかし、レトロウイルスの発現ベクターは、異種タンパク質の高レベルで長期間にわたるインビボの発現を提供しないことが知られている。種々の因子が、レトロウイルスのプロモーターの制御下で観察される導入遺伝子(transgene)発現のダウンレギュレーションに寄与している。この因子は、遺伝的に改変された細胞の休止状態、プロモーター内のCpG対のメチル化、および選択圧の除去を包含する。哺乳動物のプロモーターにより駆動される大抵の発現ベクターはまた、固有のプロモーターの活性が低レベルであるため、従来の移植の凡例(paradigm)に最適であるわけではない(M.SchinstineおよびF.Gage,神経性疾病の処置に対する分子的および細胞的研究アプローチ、S.G.Waxman編、Ravan Press pp.311−323(1993)を参照)。
【0015】
CNSにおけるレトロウイルスのプロモーターのダウンレギュレーションに関する問題に加えて、遺伝子処置でレトロウイルスを使用するには、別の不利益がある。例えば、遺伝的要素を含有するウイルスに予め曝されるか、または現在感染されるかによって、移植された哺乳動物の宿主内で組換え事象が起こり、その結果、複製欠損ウイルスが生きたウイルスに改変するようになる可能性についての深刻な問題がある。さらに、感染性ウイルス粒子を用いての作業は、その試薬を生産しそして投与する研究室の作業員および専門医に対する安全性を損なうという問題がある。最終的には、これらの問題によって、研究者および専門医ならびに監視当局の間で危険性についての理解が深められた。
【0016】
遺伝子操作された細胞をカプセル化するか、あるいはカプセル化しない両方の形態でインビトロ移植が行なわれたが、非相同DNAの長期間の安定な発現は、満足すべき結果が得られなかった。例えば、最近公表された研究(Hoffmanら,Experimental Neurology,122,pp.100−106(1993年8月))は、ラットの中枢神経系(CNS)へNGFを送達させるため、マウスNGFを分泌するように遺伝子操作された同種異系の細胞をカプセル化して使用する方法に言及している。記載された系におけるNGF遺伝子の発現は、レトロウイルスのプロモーターによって制御された。上記のように、レトロウイルスのベクターは、インビボで長期間の安定な導入遺伝子の発現を引き起こさない。従って、その研究に報告された方法は、長期間の処置的適用に適さない。
【0017】
従って、適切な量の必要物質(例えば、成長因子、酵素およびホルモン)を遺伝的に改変された細胞から長期間にわたって送達する方法は未だ利用し得ず、そして長期間の処置が必要なときには極めて有益となる。さらに、移植された細胞中の導入遺伝子のインビボでの長期間の安定な発現を維持する方法も利用し得ず必要とされている(例えば、SchinstineおよびGage(1993)、前出、321頁を参照)。
【0018】
従って、インビボでの導入遺伝子の長期間の安定な発現を容易にする遺伝的改変を受けた細胞を導入するデバイスおよび送達方法の必要性が残っている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
本発明は、哺乳動物宿主内の生物学的機能に影響を与えるまたは促進するために、生物学的活性分子の効果的な送達のための、遺伝学的に操作された細胞を含む生体適合性カプセルを用いて、生物学的活性分子の長期の安定な発現のための改良したデバイスおよび方法を提供する。本発明の新規のカプセルは、生体適合性であり、そして容易に回収される。本発明は、詳細には、改良した方法および組成物を提供し、これらは、生物学的活性分子をコードし、プロモーターに作動可能に連結したDNA配列を含む組換えDNA分子でトランスフェクトされた細胞を利用し、このプロモーターは哺乳動物宿主への移植の際にインビボでダウンレギュレーションを受けない。さらに、本発明の方法は、所定の哺乳動物内で生細胞から特定の部位への、生物学的活性分子の長期の安定な効率的な送達を可能にする。さらに、本発明は、維持のための一般的な手段、延長した期間の導入遺伝子のインビボの発現のための一般的な手段を提供する。
【0020】
本発明は、宿主哺乳動物に移植されたときカプセル化された細胞を長期間生存させることができ、そしてより簡単に回収し得る新規なT1/2ハイブリッドカプセルを提供する。
【0021】
本発明は、生体適合性のカプセルを用いて、生物学的活性分子を長期間安定に発現させるためのデバイスおよび方法を提供する。このカプセルは、哺乳動物宿主内で生物学的機能をもたらすか、または高めるような生物学的活性分子の効果的な送達のために遺伝子操作された細胞を含有する。本発明は、組換えDNA分子を移入した細胞を利用する改良された方法および組成物を特に提供するし、哺乳動物宿主に移植されたときインビボでダウンレギュレーションを受けないプロモーターと作動可能に連結された生物学的活性分子をコードするDNA配列を含有する。さらに本発明の方法は、生物学的活性分子を生きた細胞から所定の哺乳動物内の特定部位へ長期間安定でそして有効な送達を提供する。本発明は、長期間にわたってインビボでの導入遺伝子の発現を維持する一般的な手段を提供する。さらに本発明は、老化に関連する(age−related)認識障害を処置するデバイスおよび方法を提供する。
【0022】
従って、本発明は、以下を提供する。
1.哺乳動物宿主に生物学的活性分子を送達する方法であって、該方法は生体適合性のカプセルを該宿主に移植する工程を包含し、該カプセルが1またはそれ以上の細胞を含有し、1または複数の該細胞が組換えDNA分子でトランスフェクトされ、該組換えDNA分子が、生物学的活性分子をコードし、該生物学的活性分子が長期の安定した発現をするような該宿主において、移植の際にダウンレギュレーションを受けないプロモーターに作動可能に連結したDNA配列を含む、方法。
2.前記1または複数の細胞が前記宿主に対して異種である、項目1に記載の方法。
3.前記カプセルが前記哺乳動物宿主の中枢神経系内に移植される、項目1に記載の方法。
4.前記生物学的活性分子が神経栄養因子である、項目1に記載の方法。
5.前記神経栄養因子が神経成長因子(NGF)である、項目4に記載の方法。
6.前記プロモーターが、PNMTプロモーター、DBHプロモーター、GFAPプロモーター、THプロモーター、NF−Lプロモーター、NSEプロモーター、Pプロモーター、MBPプロモーター、およびマウスメタロチオネイン−1プロモーターからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
7.前記組換えDNA分子がpNUT発現ベクターである、項目1に記載の方法。
8.前記細胞がBHK細胞である、項目1に記載の方法。
9.前記哺乳動物宿主が霊長類である、項目1に記載の方法。
10.前記1または複数の細胞がさらに第二の組換えDNA分子でトランスフェクトされ、該第二の組換えDNA分子が第二の生物学的活性分子をコードし、該第二の生物学的活性分子が長期の安定した発現をするような前記宿主において、移植の際にダウンレギュレーションを受けないプロモーターに作動可能に連結したDNA配列を含む、項目1に記載の方法。
11.前記カプセルが1または複数の第二の細胞をさらに含有し、該1または複数の第二の細胞が第二の組換えDNA分子でトランスフェクトされ、該第二の組換えDNA分子が第二の生物学的活性分子をコードし、該第二の生物学的活性分子もまた長期の安定した発現をするような前記宿主において、移植の際にダウンレギュレーションを受けないプロモーターに作動可能に連結したDNA配列を含む、項目1に記載の方法。
12.哺乳動物宿主においてインビボで移植したカプセル化細胞中での生物学的活性分子の長期の安定した発現のための方法であって、該方法は生体適合性の免疫隔離カプセルを該宿主に移植する工程を包含し、該カプセルが1以上の細胞を含有し、該1または複数の細胞が組換えDNA分子でトランスフェクトされ、該組換えDNA分子が生物学的活性分子をコードし、該宿主における移植の際にダウンレギュレーションを受けないプロモーターに作動可能に連結したDNA配列を含む、方法。
13.前記細胞が異種細胞である、項目12に記載の方法。
14.前記カプセルが前記哺乳動物宿主の中枢神経系内に移植される、項目12に記載の方法。
15.前記生物学的活性分子が、NGF、BDNF、NT−3、NT−4/5、CNTF、GDNF、CDF/LIF、EGF、IGF、PDGF、bFGF、aFGF、ニューロテンシン、サブスタンスP、ヘモグロビン、チロシンヒドロキシラーゼ、プロホルモンコンバターゼ、bcl−2、ドーパデカルボキシラーゼ、およびドーパミンβ−ヒドロキシラーゼからなる群から選択される、項目12に記載の方法。
16.前記プロモーターが、PNMTプロモーター、DBHプロモーター、GFAPプロモーター、THプロモーター、NF−Lプロモーター、NSEプロモーター、Pプロモーター、MBPプロモーター、およびマウスメタロチオネイン−1プロモーターからなる群から選択される、項目12に記載の方法。
17.前記哺乳動物宿主が霊長類である、項目12に記載の方法。
18.哺乳動物宿主においてインビボでのカプセルの移植の際に、生物学的活性分子の長期の安定した発現を提供するための移植可能な生体適合性の免疫隔離カプセルであって、該カプセルは以下を含有する:
(a)生体適合性マトリックス中で分散する1以上の細胞を含有するコアであって、該1または複数の細胞が組換えDNA分子でトランスフェクトされ、該組換えDNA分子が生物学的活性分子をコードし、該宿主における移植の際にダウンレギュレーションを受けないプロモーターに作動可能に連結したDNA配列を含む、コア;および
(b)該コアを取り囲む外部拡散表面ジャケットであって、ここで該ジャケットが細胞の免疫学的拒絶に必須な物質の分子量以下の分子量カットオフを有するが、該哺乳動物宿主と該コアとの間を物質が通過することが可能である、ジャケット。
19.前記1または複数の細胞が前記宿主に対して異種である、項目18に記載のカプセル。
20.前記カプセルが前記哺乳動物宿主の中枢神経系内に移植される、項目18に記載のカプセル。
21.前記生物学的活性分子が、NGF、BDNF、NT−3、NT−4/5、CNTF、GDNF、CDF/LIF、EGF、IGF、PDGF、bFGF、aFGF、ニューロテンシン、サブスタンスP、ヘモグロビン、チロシンヒドロキシラーゼ、プロホルモンコンバターゼ、bcl−2、ドーパデカルボキシラーゼ、およびドーパミンβ−ヒドロキシラーゼからなる群から選択される、項目18に記載のカプセル。
22.前記プロモーターが、PNMTプロモーター、DBHプロモーター、GFAPプロモーター、THプロモーター、NF−Lプロモーター、NSEプロモーター、Pプロモーター、MBPプロモーター、およびマウスメタロチオネイン−1プロモーターからなる群から選択される、項目18に記載のカプセル。
23.前記哺乳動物宿主が霊長類である、項目18に記載のカプセル。
24.半透膜から形成されるカプセルであって、選択的透過性である内壁表面、非選択的透過性の外壁表面、およびそれらの間の小柱壁を含有し、該外壁表面がマクロポアを含み、該マクロポアが外壁表面の総面積の約2.0〜20%の間を構成し、そして直径が約5〜15μmの範囲である、カプセル。
25.前記カプセルが円柱中空ファイバーを形成するように成形される、項目24に記載のカプセル。
26.前記カプセルが平らなシートを形成するように成形される、項目24に記載のカプセル。
27.前記マクロポアが前記外壁表面の総面積の約2.5%を構成する、項目24〜26のいずれかに記載のカプセル。
28.前記マクロポアが前記外壁表面の総面積の約10%を構成する、項目24〜26のいずれかに記載のカプセル。
29.前記マクロポアが前記外壁表面の約12%を構成する、項目24〜26のいずれかに記載のカプセル。
30.前記カプセルが項目24〜29に記載のカプセルである、項目1に記載の方法。
31.哺乳動物における神経変性の処置のための方法であって、該方法は該哺乳動物に1以上の細胞を含む生体適合性カプセルを移植する工程を包含し、該細胞が成長因子または栄養因子を生産し、該カプセルが該哺乳動物に1〜1500ng/日の成長因子または栄養因子を送達し得るようにする、方法。
32.前記成長因子がヒト神経成長因子である、項目31に記載の方法。
33.前記哺乳動物がヒトである、項目32に記載の方法。
34.前記生体適合性カプセルがヒトの脳室内に10〜600ng NGF/日を送達し得る、項目33に記載の方法。
35.前記生体適合性カプセルがヒトの実質内に10〜150ng NGF/日を送達し得る、項目33に記載の方法。
36.哺乳動物のCNSへの移植の際に、成長因子または栄養因子の長期の安定した発現を提供するための生体適合性カプセルであって、該カプセルは1以上の細胞を含有し、該細胞が組換えDNA分子でトランスフェクトされ、該組換えDNA分子が成長因子または栄養因子をコードし、ヒトでの移植の際にダウンレギュレーションを受けないプロモーターに作動可能に連結したDNA配列を含み、該カプセルが哺乳動物へ1〜1500ng/日の成長因子または栄養因子を提供し得る、生体適合性カプセル。
37.前記成長因子が神経成長因子である、項目36に記載のカプセル。
38.前記哺乳動物がヒトである、項目37に記載のカプセル。
39.前記カプセルが、脳室内に移植された場合、ヒトに10〜600ng NGF/日を送達し得る、項目38に記載のカプセル。
40.前記カプセルが、実質内に移植された場合、ヒトに10〜150ng NGF/日を送達し得る、項目38に記載のカプセル。
41.前記ヒトが老化に関連する認識障害に罹患している、項目33〜35のいずれかに記載の方法。
42.前記ヒトが老化に関連する認識障害に罹患している、項目38〜40のいずれかに記載のカプセル。
【0023】
(定義)
本明細書に用いられる「生体適合性カプセル」は、カプセルが宿主の哺乳動物に移植されたとき、結果としてカプセルを排除するか、またはカプセルが作用できないようにする(例えば分解によって)のに十分な有害な宿主応答を誘い出さないことを意味する。
【0024】
本明細書に用いられる「免疫隔離カプセル」は、このカプセルが哺乳動物宿主に移植されたとき、カプセルのコア内の細胞に宿主免疫系が与える有毒な影響を最小限に抑えるカプセルを意味する。
【0025】
生物学的活性とは、特定の細胞に対する分子の生物学的に有用な効果をいう。本明細書に用いられる「生物学的活性物質」は、細胞内で生物学的活性を発揮する物質をいう。この物質はその細胞の中で作られるか(例えば、アポトーシスを防止するbcl−2)あるいはその細胞表面上で発現され、そして他の細胞または生物学的活性分子(例えば、神経伝達物質レセプターまたは細胞接着分子)とその細胞との相互作用に影響を及ぼし得るか、もしくはこの物質を作る細胞から放出または分泌され、そして別の標的細胞にその影響を及ぼし得る(例えば、神経伝達物質、ホルモン、成長因子、あるいはサイトカイン)。
【0026】
プロモーターのダウンレギュレーションは、導入遺伝子の産生物の発現が、インビボでの移植後に導入遺伝子産物の有意な生物学的活性の欠乏につながるレベルまで減少することを意味する。「ダウンレギュレーションを受けないプロモーター」は、哺乳動物宿主内にインビボ移植した後、生物学的に活性であるレベルで導入遺伝子の発現を駆動するかまたは駆動し続けるプロモーターを意味する。
【0027】
本明細書に用いられる「生物学的活性分子の長期間の安定な発現」は、生物学的活性分子を、その有用な生物学的活性が維持されるのに十分なレベルで、1ケ月以上、好ましくは3ケ月以上そして最も好ましいくは6ケ月以上の期間連続して産生することを意味する。
【0028】
本明細書に用いられる「老化した」個体は、自然な加齢プロセスの結果、あるいは自然な加齢プロセスに関連した神経変性障害の結果のいずれかで神経の変性が起こったか、または起こりつつある個体である。自然な加齢プロセスの結果としての神経の変性は、以前の状態と比較して神経機能が損失または衰弱することを意味するが、その原因はアルツハイマー病、パーキンソン病またはハンチントン病のような明らかな臨床的異常または神経学的/神経変性的障害ではない。
【0029】
(発明の詳細な説明)
本発明は、カプセル化された細胞が長期間生存でき、そして容易に回収され得る改良カプセルを指向する。本発明はまた、改良されたデバイスおよび方法を指向する。このデバイスおよび方法は、生物学的活性分子を発現させ、そしてこの分子を宿主の哺乳動物へ長期間安定に送達するために生体適合性カプセルに含まれた遺伝的に改変された細胞を使用することである。
【0030】
本発明のデバイスおよび方法は、広範な生物学的活性分子(200kDまでの高分子量の産物を含む)を、それを必要とする個体に長期間安定に発現させ、および/または有害な物質を除去する代謝機能をそれを必要とする個体に提供することに有用である。本発明のデバイスおよび方法に用られる生物学的活性分子は、種々の器官または組織が通常分泌する多種類の因子を包含する。例えば、インスリンは糖尿病患者に、ドーパミンはパーキンソン病の患者に、第VIII因子はA型血友病患者に、あるいは鎮痛剤は疼痛の患者に送達され得る。
【0031】
本発明の実施に使用され得る他の生物学的活性分子は、エリスロポエチン、成長ホルモン、サブスタンス−P、ニューロテンシン、NGF、BDNF、NT−3、NT−4/5、CNTF、GDNF、CDF/LIF、EGF、IGF、PDGF、bFGF、およびaFGFのような栄養因子を包含する。
【0032】
本発明のデバイスおよび方法はまた、ヘモグロビン、チロシンヒドロキシラーゼ、プロホルモンコンバターゼ、bcl−2、ドーパデカルボキシラーゼ、そしてドーパミンβ−ヒドロキシラーゼを包含する生物学的活性分子を長期間安定に発現させるのに有用である。
【0033】
本発明による送達に適した別のファミリーは、リンホカインおよびサイトカインを含む生物学的応答調節剤を包含する。
【0034】
本明細書に記載のカプセル化された細胞は、肝細胞のような細胞による血流からのトキシンまたは有害代謝物(例えば、コレステロール)の除去のような必須の代謝機能を、回復または増強するのにも用い得る。本発明の方法は、レシピエントを処置する間に同時に免疫抑制する必要なしに細胞を移植することを可能にする。本発明の方法を用いることにより、特定の物質の恒常性が回復され、さらに長期間維持され得る。
【0035】
本発明の範囲内に意図される生物学的活性分子は、カプセルまたは移植された細胞から分泌される分子であって、直接的または間接的に哺乳動物宿主において生物学的な効果をもたらす分子、および直接的または間接的にカプセル内に含まれる細胞に生物学的な効果をもたらす分子を包含する。
【0036】
本発明の好ましい実施態様は、宿主哺乳動物の中枢神経系(CNS)に神経栄養因子を送達するための改良方法である。本発明の特定の実施態様では、神経成長因子(NGF)の、哺乳動物宿主のCNSの特定の領域に対する長期間の安定な発現および送達の改良方法が提供される。
【0037】
多くの生物学的活性分子をコードする遺伝子がクローニングされ、それらのヌクレオチド配列が公表されている。これらの遺伝子の多くは、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection (ATCC)) のような寄託機関または種々の販売元から一般に入手できる。本発明に有用な生物学的活性分子をコードする遺伝子で一般に入手できないものは、PCR増幅、オリゴヌクレオチドのプローブを用いるゲノムおよびcDNAライブラリーのスクリーニングのような標準的組換えDNA法を用いて入手し得る。生物学的活性分子をコードする既知の遺伝子であればいずれも本発明の方法に用い得る。例えば、米国特許第5,049,493号; Gage ら,米国特許第5,082,670号;および Genentech 米国特許第5,167,762号参照。
【0038】
本発明に特に有用な遺伝子には、ヒトプロエンケファリンA、ヒトプロホルモンコンバターゼ2、ヒトプロホルモンコンバターゼ3、ヒトBDNF、POMC(プロ−オピオメラノコルチン)、β−エンドルフィン、プロジノルフィン、ヒトNGFシグナル配列を有する成熟ヒトBDNF、ヒトCNTF、ヒトNT3、ヒトNGF、ラットGDNF、ヒトNGFシグナル配列を有する成熟ヒトNT5、ウシドーパミンβヒドロキシラーゼ、ウシドーパミンデカルボキシラーゼ、およびチミジンキナーゼをコードする遺伝子がある。
【0039】
目的の遺伝子(すなわち、適切な生物学的活性分子をコードする遺伝子)は、標準的な技術を用いて適切な発現ベクターのクローニング部位へ挿入し得る。1個より多い遺伝子を適当な発現ベクターに挿入し得るということが認識される。これらの技術は当業者に周知である。
【0040】
次いで、目的の遺伝子を含む発現ベクターは、本発明の方法で用いる細胞系をトランスフェクトするのに用い得る。リン酸カルシウム共沈澱、DEAE−デキストラントランスフェクションまたはエレクトロポレーションのような標準的なトランスフェクション技術を用い得る。市販の哺乳動物トランスフェクションキットは、例えばStratageneより購入し得る。
【0041】
目的の生物学的活性分子をコードする遺伝子を発現するために、広範な種類の宿主/発現ベクターの組合せが用いられ得る。長期間安定なインビボでの発現は、その中で生物学的活性分子をコードする遺伝子が、哺乳動物宿主中にインビボで移植されたときにダウンレギュレーションを受けないプロモーターに作動可能に連結しているような発現ベクター(すなわち、組換えDNA分子)を用いて達成される。従って、そのような発現ベクターは、典型的にはレトロウイルスのプロモーターを含まない。
【0042】
適切なプロモーターは、例えば、SV40の初期および後期のプロモーターまたはアデノウイルスのプロモーターおよび遺伝子発現を制御できる他の既知の非レトロウイルスのプロモーターを含む。
【0043】
有用な発現ベクターは、染色体、非染色体および合成のDNA配列(例えば、SV40およびE.coli由来のpUC、pBlue ScriptTM プラスミドのような既知の細菌プラスミドの誘導体(例えば、pBR322、pCR1、pMB9、pUC、pBlue ScriptTMおよびそれらの誘導体)のセグメントからなる。
【0044】
ゲネチシン(G418)またはヒグロマイシン薬剤選択遺伝子を含む発現ベクター(Southern,P.J.(1981), In Vitro, 18,p. 315, Southern,P.J. および Berg,P.(1982),J.Mol.Appl.Genet.,1,p.327)もまた本発明の実施に有用である。これらのベクターは、目的の生物学的遺伝子(例えば、NGF)、および/または、G418またはヒグロマイシンBのようなトキシンによる選択に対する耐性を付与する遺伝子の発現を起動する種々の異なるエンハンサー/プロモーター領域を用い得る。G418耐性遺伝子は、培養培地に添加されたG418(100−500μg/μl)を酵素的に不活性化するアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードする。APH遺伝子を発現する細胞のみが薬剤選択から生き残り、第二の生物学的遺伝子をも発現するようになる。ヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(HPH)遺伝子は、ヒグロマイシントキシンを特異的に改変し不活性化する酵素をコードする。ヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子と同じプラスミドと同時にトランスフェクトされるか、またはプラスミドに含まれる遺伝子は、50−200μg/mlの濃度のヒグロマイシンB存在下優先的に発現される。
【0045】
種々の異なる哺乳動物のプロモーターが、G418およびヒグロマイシンBの遺伝子および/または目的の生物学的遺伝子の発現を導くために用いられ得る。これらのプロモーターは、hDBH(ヒトドーパミンβヒドロキシラーゼ)のプロモーター(Mercer ら,Neuron,7,pp.703−716,(1991))、hTH(ヒトチロシンヒドロキシラーゼ)(Kaneda ら, Neuron,6,pp.583−594,(1991))、hPNMT(ヒトフェニルエタノールアミンN−メチルトランスフェラーゼ)(Baetge ら, PNAS,85,pp.3648−3652,(1988))、mGFAP(マウスグリア線維酸性タン白質)(Besnard ら, J. Biol. Chem.,266,pp.18877−18883,(1991))、ミエリン塩基性タン白質(MBP)、mNF−L(マウスニューロフィラメント軽鎖サブユニット)(Nakahira ら, J.Biol.Chem.,265,pp.19786−19791,(1990))、hPo(ヒトPo、末梢神経系の主要ミエリン糖タン白質をコードする遺伝子のプロモーター)(Lemke ら, Neuron,1,pp.73−83,(1988))、mMT、rNSE(ラットニューロン特異的エノラーゼ)(Sakimura ら,Gene,60,pp.103−113,(1987))その他を包含するがそれに限定されない。
【0046】
用いられ得る発現ベクターの例は、市販のpRC/CMV、pRC/RSV、およびpCDNA1N EO(InVitrogen) である。薬剤選択および目的の生物学的遺伝子の転写を支配するウイルスのプロモーター領域は、CNS においてウイルスプロモーターが受けるダウンレギュレーションの対象とはならない上記のプロモーター配列の1つと置換される。例えば、GFAPプロモーターは星状細胞および星状細胞系のトランスフェクションに用いられ、THプロモーターはPC12細胞に用いられ、またはMBPプロモーターは乏突起膠細胞に用いられる。
【0047】
1つの実施態様において、pNUT発現ベクターが用いられる(図1参照)。さらに、DHFRのコーディング配列がG418またはヒグロマイシン薬剤耐性のコーディング配列により置き換えられるように、pNUT発現ベクターを改変し得る。pNUT発現ベクター中のSV40プロモーターも、上記のように適切に構造的に発現される哺乳動物のプロモーターと置き換えられ得る。
【0048】
広範な種類の細胞が用いられ得る。それらは、既知の一般に入手可能な不死化細胞系および分裂中の初代細胞培養株を包含する。適切な一般に入手可能な細胞系の例は、幼若ハムスターの腎臓(BHK)、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)、マウス線維芽細胞(L−M)、NIHスイスマウス胎児(NIH/3T3)、アフリカミドリザル細胞系(COS−1、COS−7、BSC−1、BSC−40、BMT−10およびVeroを含む)、ラット副腎クローム親和性細胞腫(PC12およびPC12A)、AT3、ラットグリア腫(C6)、星状細胞および他の線維芽細胞系を包含する。 用い得る初代細胞は、哺乳動物のCNSに由来するbFGF−応答性神経プロジェニター幹細胞(Richardsら,PNAS 89,pp.8591−8595(1992);Ray ら, PNAS 90,pp.3602−3606(1993))、初代線維芽細胞、Schwann細胞、星状細胞、β−TC細胞、Hep−G2細胞、乏突起膠細胞、およびそれらの前駆体、筋原細胞などを包含する。
【0049】
本発明の範囲内のカプセル化細胞による処置に利用され得る細胞のタイプは、同種異系および異種の供給源由来の細胞を包含する。本発明者らのカプセル化のアプローチの主要な利点の1つは、本発明の膜が有する免疫隔離の性質、および移植に適合しない細胞(すなわち、ヒト以外の供給源、不死化および/または腫瘍細胞系)を支持する能力に依存する。同種異系細胞よりも異種細胞を使用する特別の利点は、万一、膜に破損が生じた場合、異種細胞が同種細胞に比べ免疫系による破壊の標的とされ易いということである。さらに、異種細胞の供給源は入手が簡単であり、そしてその使用は、入手が困難でありそして社会的ならびに倫理的考慮を伴うヒトの組織の使用の必要性を排除する。さらにヒトの組織は、移植レシピエントへより容易に送達される外来性物質を含有することができる。最終的に、ヒトに移植するために異種組織および細胞系を用いることは、ヒトの組織の操作および処理に関連する危険性を除外する。
【0050】
本発明の1つの実施態様において、pNUT増幅発現系を用いてBHK細胞をトランスフェクトする。しかしながら、目的の遺伝子を含むるpNUTベクターはまた、前述したようなCOS、L−細胞、CHOなどの多数の他の標準的な不死化または、形質転換された組織培養細胞系をトランスフェクトするために用いられ得る。さらにpNUT発現ベクターは、初代の星状細胞、乏突起膠細胞または神経細胞系(例えば前述したbFGF−応答性神経プロジェニター幹細胞)へトランスフェクトするために用いられ得る。
【0051】
本発明によって形質転換された細胞株は、生物学的に活性な分子の長期間の安定な発現を提供し得る。このような長期間の安定な発現は、生物学的に活性な分子をコードする導入遺伝子のコピー数を、当該分野で周知の増幅方法を用いて増加または増幅させることにより達成され得る。このような増幅方法には、例えば、DHFR増幅(例えば、Kaufmanら、米国特許第4,470,461号参照)またはグルタミンシンセターゼ(「GS」)増幅(例えば、米国特許第5,122,464号およびヨーロッパ特許出願公開EP338,841号参照)が含まれる。
【0052】
哺乳動物細胞で遺伝子の長期間の安定な発現を得るための別な方法は、2つの異なる薬剤選択マーカーを用いる二重トランスフェクションによる。ヒグロマイシンまたはG418耐性発現ベクターを用いて上記の多くの細胞株を連続的にまたは同時にトランスフェクトし、種々の遺伝子コピーの挿入を達成し得、従って、目的の遺伝子の発現レベルを達成し得る。
【0053】
1つの実施態様においては、細胞は、β−NGFまたはGFAPプロモーター/エンハンサー因子(通常このベクターに見られるCMVプロモーター配列に取って代わっている)に作動可能に連結した他の目的の遺伝子のコーディング配列を含むプラスミドpRC/CMVを用いてトランスフェクトされる。トランスフェクトされた導入遺伝子を発現する安定なクローンの選択の際に、このクローンは、同じpRc/GFAP NGF発現ベクター(G418耐性遺伝子の代わりに細菌ヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子(GritzおよびDavies、Gene、pp.179−188(1983))を有する)を用いて再びトランスフェクトされる。安定なクローンをヒグロマイシンおよびG418の両方において再選択した後、この細胞は、RNAおよびタンパク質産物においてトランスフェクトされた導入遺伝子の最大数の組み込まれたコピーおよび/または発現を有するクローンに関してアッセイされ得る。この方式において、複数のベクターを用いてトランスフェクトされた細胞株(高いコピー数の遺伝物質を安定に組み込み、そして種々のレベルで目的の生物学的に活性な分子を発現する)を産生するために、別の組み合わせの薬剤選択発現ベクターを用い得る。
【0054】
ポリマー−カプセルの移植が有効量の必要な物質または機能を個体に提供するのに十分であり得るように、多数の細胞が本発明の方法において用いられ得る。さらに、1より多い生物学的に活性な分子は、1つのカプセルから長期に亘って安定に発現および/または送達され得る。
【0055】
この結果に達する1つの方法は、1より多い異種遺伝子を発現するように遺伝的に変更された単一の細胞株をカプセル化することである。
【0056】
この結果に達する別の方法は、細胞の混合物を単一のカプセルに入れることである。ここで、ある細胞は1つの生物学的に活性な分子を発現するように遺伝的に改変され、別の細胞は第2の生物学的に活性な分子を発現するように遺伝的に改変されている。第2の生物学的に活性な分子を提供するために、遺伝子操作されていない細胞株も利用され得るということが認識されるであろう。
【0057】
例えば、ある細胞株はまた、遺伝子操作されて異なる生物学的に活性な分子を発現し得る。親細胞株のサブクローンは、それぞれが異なる導入遺伝子を発現するが、このサブクローンはプールされ、カプセルに入れられて所望の効果を長期間達成し得る。
【0058】
これらのアプローチは、1より多い生物学的に活性な分子を1つの部位に長期間、安定に発現および送達させるために複数の移植物を用いる必要性を排除する。
【0059】
本発明はまた、異種遺伝子(この遺伝子は、細胞が宿主哺乳動物内に移植される際にカプセル内で生存可能のままであるようにし得る)によって遺伝的に改変されている細胞を含むカプセルを用いることを意図する。言い換えると、本発明の方法はまた、移植されたカプセル内の分子の送達方法に関する。
【0060】
本発明の特定の実施態様において、本発明者らは、マウスメタロチオネインプロモーターに作動可能に連結したヒトβ−NGF遺伝子を含むpNUT発現ベクターを用いて、リン酸カルシウム共沈澱法によりBHK細胞をトランスフェクトした。
【0061】
種々の生体適合性免疫隔離カプセルは、本発明による分子送達に適切である。このようなカプセルは、宿主免疫系の有害な影響を最少にしながら代謝物、栄養分および処置物質を通過させる。好ましくは本発明のカプセルは、Aebischerら、PST公開WO 92/19195(本明細書中に参考として援用する)に記載のカプセルと同じである。
【0062】
最も好ましくは、本明細書に記載されたT1/2膜を用いて、本発明の方法に従って改変された細胞をカプセル化する。本明細書に記載されたT1/2膜はまた、他のいかなる適切な細胞または細胞株のカプセル化にも用いられ得ることが認識されるであろう。したがって、本発明のT1/2膜は初代細胞(primary cell)(非分裂細胞)および分裂細胞をカプセル化するために用いられ得る。
【0063】
有用な生体適合性ポリマーカプセルは、(a)1つの細胞または複数の細胞(液体媒体に懸濁されているか、ヒドロゲルまたは細胞外マトリックス内に固定されている)を含むコア、および(b)単離された細胞を含まない選択透過性マトリックスまたは膜(ジャケット)(生体適合性であり、そしてコアに存在する場合には、単離された細胞を有害な免疫学的攻撃から保護するのに十分である)の周辺または末梢領域を含む。
【0064】
ポリマーカプセルのコアは、コア内に隔離された細胞の連続した生存能力および機能のために適切な局所環境を提供するために構築される。
【0065】
多くの形質転換された細胞および細胞株は、液体コアを有するカプセル内に非常に都合よく隔離されている。例えば、細胞は、コアが栄養培地(任意に細胞の生存能力および機能を維持するためのさらなる因子の液体供給源、例えば、胎児ウシ血清、またはウマ血清を含有する)を有するカプセル内に隔離され得る。
【0066】
マイクロカプセルもまた、時に本発明の方法および組成物における使用に適切であり得る。マイクロカプセルの製造は、Espevikら、PCT公開WO 9107951号およびSefton、米国特許第4,353,888号(本明細書中で参考として援用する)に記載されている。
【0067】
適切には、コアは、細胞凝集塊中の細胞の位置を安定させるヒドロゲルによって形成されるマトリックスから構成される。本明細書中の用語「ヒドロゲル」は、架橋した親水性ポリマーの3次元網状組織をいう。この網状組織は、ゲルの形態であり、実質的に水からなり、好ましくは90%以上が水であるゲルであるが、これに限定されない。
【0068】
ヒドロゲルを形成する組成物は3つのクラスに分類される。第1のクラスは正味で負の電荷(net negative charge)を有する(例えば、アルギネート)。第2のクラスは正味で正の電荷(net positive charge)を有する(例えば、コラーゲンおよびラミニン)。市販の細胞外マトリックス成分の例は、MatrigelTMおよびVitrogenTMを含む。繊維芽細胞は、一般に正に帯電したマトリックスにおいてよく生存し、従って、細胞外マトリックスタイプのヒドロゲルに適切に封入される。第3のクラスは、電荷的に正味で中性(net neutral in charge)である(例えば、高度に架橋したポリエチレンオキシド、またはポリビニルアルコール)。任意の適切なマトリックスまたはスペーサーをコア内で用い得る。これらは沈澱させたキトサン、合成ポリマー、およびポリマーブレンド、マイクロキャリアなどを含み、カプセルに入れられる細胞の成長特性に依存する。
【0069】
好ましくは、カプセルは免疫隔離である。免疫隔離であるためには、カプセルの周辺または末梢領域は、宿主体内の有害な物質がビヒクルのコアに入るのを防止することによって、および単離された細胞と宿主の免疫系との間の有害な免疫学的接触を防止するのに十分な物理的バリアを提供することによって、カプセルが移植される宿主の免疫系からの細胞の保護を与えるべきである。この物理的バリアの厚さは変化し得るが、それは、常にバリアの両側にある細胞および/または物質の直接の接触を防止するのに十分な厚さである。この領域の厚さは、一般に5ミクロンと20ミクロンとの間の範囲である;10ミクロン〜100ミクロンの厚さが好ましく、そして20ミクロン〜75ミクロンの厚さが特に好ましい。このビヒクルの使用によって防止されるかまたは最小化される免疫学的攻撃のタイプは、マクロファージ、好中球、細胞性免疫応答(例えば、ナチュラルキラー細胞および抗体依存性T細胞介在性細胞溶解(antibody−dependent T cell−mediated cytoloysis:(ADCC))および体液性応答(例えば、抗体依存性補体介在性細胞溶解)による攻撃を含む。
【0070】
免疫隔離カプセルの使用は、レシピエントを免疫抑制するという必要を伴わずに、異種細胞または組織の移植を可能にする。免疫隔離カプセルの使用はまた、適合しない(unmatched)細胞(アログラフト)の使用を可能にする。異種細胞に対する免疫応答のタイプおよび活動力は、同系のまたは同種の組織がレシピエントに移植された場合に生じる応答とは異なることが予想される。この応答は、主に細胞介在性の攻撃によって、または補体介在性の攻撃によって生じ得る;特定の場合における決定(determining) パラメーターは、殆ど理解されていない。しかし、ビヒクルのコアからのIgGの排除は、免疫防御の規準ではない。なぜなら、殆どの場合、IgG単独では標的細胞または組織の溶解を生じるには不十分だからである。免疫学的攻撃の仲介に必要である重要な物質が免疫隔離カプセルから排除されているならば、免疫隔離マクロカプセルを用いることによって、必要とされる高分子量の産物を送達すること、または高分子量物質に適する代謝機能を提供することが可能である。このような物質は、補体攻撃複合体成分(complement attack complex component)Clqを含み得るか、またはそれらは、食細胞または細胞障害性細胞を含み得る;この免疫隔離カプセルは、これらの有害な物質と隔離された細胞との間に防御的バリアを提供する。従って、免疫隔離カプセルは、異種細胞からでさえ、広範な分子サイズを有する産生物(例えば、インシュリン、副甲状腺ホルモン、インターロイキン3、エリスロポイエチン、アルブミン、トランスフェリン、エンケファリン、エンドルフィン、カテコールアミン、ファクターVIII、NGF、BDNF、NT−3、NT−4/5、CNTF、GDNF、CDF/LIF、EGF、IGF、bFGF、aFGF、PDGF、TGFなど)の送達に用いられ得る。
【0071】
種々のポリマーおよびポリマーブレンドを用いてカプセルジャケットを製造し得る。これらは、ポリアクリレート(アクリル酸コポリマーを含む)、ポリビニリデン、ポリ塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリスルホン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリロニトリル/コビニルクロライド)、ならびにそれらの誘導体、コポリマー、および混合物を含む。
【0072】
このカプセルは、生物学的活性を維持し、そして産生物または機能の送達のためのアクセスを提供するのに適切な外形であり得る。たとえば、円筒形、矩形、円盤形、パッチ型、卵形、星形、または球形を含む。さらに、このカプセルは、メッシュ様またはネスト様構造にコイルまたはラップされ得る。カプセルが移植された後に回収される場合には、外形は、カプセルの移植部位からの移動に導く傾向の外形、例えばレシピエントの血管を移動するのに十分に小さい球形カプセルは好ましくない。特定の形、例えば矩形、パッチ形、円盤形、円柱形、および平らなシート形は、より高い構造的に完全な状態を提供し、そして回収が望まれる場合には好ましい。
【0073】
本カプセルは、隔離された細胞の生存能および機能を維持するため、コア中の任意の隔離された細胞がレシピエントの周辺組織(レシピエントの血流を含む)に少なくとも1次元的に充分近くとなるように提供されなければならない。しかし、カプセルを形成するために用いられる材料の拡散限界をもって、全ての場合におけるその外形の限界を一通りに規定はしない。基本ビヒクルの拡散特性、即ち栄養物または酸素輸送特性を変化し、あるいは増強する特定の添加物が使用され得る。例えば、内部媒体は、酸素飽和ペルフルオロカーボン(oxygen−saturated perfluorocarbon)で補充され得、このため血液によって運搬された酸素と直接に接触する必要性が減少する。このことにより、隔離された細胞は生存可能でいられるが、一方、例えばアンジオテンシンの勾配がカプセルから周辺組織に放出され、毛細血管の伸長を刺激する。ペルフルオロカーボンの使用についての参考文献および方法は、Faithful, N.S. (1987) Anaesthesia,42,234〜242頁およびNASA Tech Briefs MSC−21480, U.S. Govt. Printing Office, Washington, D.C. 20402により与えられ、この内容は本明細書中に参考として援用されている。
【0074】
一つの実施態様において、移植可能なカプセルは、移植後の完全な回収のために充分なサイズおよび耐久性がある。このようなマクロカプセルは、約1〜10μlの好ましい最小容積のコアを有し、そして用途に依存して100μlを超える容積を有するように容易に構成される。
【0075】
好ましいカプセルは、60〜98%のBSA排除係数および50〜90%のオボアルブミン排除係数の範囲の透過率である透過選択性(permselective)ポアサイズを有する、内側の単一限外濾過膜を有する。カプセルは、PCT出願WO 92/19195に記載の通り、外縁がシールされた平面シートの形態、または末端がシールされた中空のファイバーの形態であり得る。平面シートの形式では、2枚の壁が1000ミクロン未満、好ましくは300ミクロン未満の隙間の厚さで隔てられている。壁の厚さは約25〜200ミクロンの間、好ましくは約30〜75ミクロンの間であるべきである。
【0076】
中空ファイバーの外形では、ファイバーは1500ミクロン未満、好ましくは300〜600ミクロン未満の内径を有する。いずれの外形においても、流体透過率(hydraulic permeability)は1〜100 ml/分/M/mmHgの範囲、好ましくは25〜70 ml/分/M/mmHgの範囲にある。Dionneら、ASAIO Abstracts, p.99 (1993)およびColtonら、The Kidney, Brenner BMおよびRector FC編、2425〜89頁(1981)に記載の通り定義され、測定され、そして算出されたカプセルのグルコース物質移動係数は、10−6cm/秒より大きく、好ましくは10−4cm/秒より大きい。
【0077】
カプセルの外壁表面の形態は、変化しやすい。先に記載されたT1、T2、T4膜および本発明の新規のT1/2膜は、外壁表面の形態が異なる。これらの全ての膜は、透過選択性の内皮により特徴付けられる。
【0078】
T1膜は、「開いた」または窓のある非透過選択性の外壁表面および外壁表面と内壁表面との間の柱状の壁構造により特徴付けられる。例えば、Lacyら、Science,254, 1782〜84頁(1991)を参照のこと。T1膜の外壁表面の「マクロポア」の開口部は、代表的には総外壁膜表面積の約20%〜40%を占める。代表的に、マクロポアは、直径が10μm〜15μmであるかまたはより大きい。
【0079】
T2膜は、内壁と外壁との間に類似の柱状構造(trabecular structure)を有するが、さらに「閉じた」またはより平滑な外表面壁によって特徴付けられる。T2膜は、代表的には、外表面壁上に10%未満のマクロポアを有し、そして5〜15μmの直径サイズの範囲では事実上マクロポアを有さないことを特徴とする。
【0080】
さらにT4膜は、T1またはT2膜とは異なり、外表面も透過選択的である点でさらに異なる。T4膜は、脳室またはくも膜下腔ならびに液体に浸漬された他の移植部位のようなCSF移植部位に有用である。
【0081】
霊長類の脳実質または他の「固形の」組織移植部位に関しては、本発明者らは、細胞に対して実質的に非透過性の平滑壁カプセルを用いることを好む。微小血管新生(microvascularization)を促進する開口壁について記載しているものもある(例えば、Braukerら、WO/92/07525を参照のこと)。T1およびT1/2カプセルは、長期間移植物に特に適している。本発明者らはT1/2カプセルを好む。
【0082】
T1/2カプセルは、総外表面壁面積の約2〜20%、好ましくは2〜15%の間の総マクロポア分布によって特徴付けられる。マクロポアは、直径が約5μm〜約15μmのサイズ範囲内にあるべきである。この範囲内のポアサイズの相対的分布は変化し得る。
【0083】
1つの特定の実施態様において、PAN/PVCから作成されたT1/2中空ファイバー膜カプセルが利用された。この実施態様によると、総マクロポア面積は、総外壁表面積の約12%であった。マクロポアの約20%は、直径5〜10μmの範囲であり、そしてマクロポアの約80%は直径が約10μmであった。
【0084】
別の特定の実施態様では、総外壁表面積の約2.4%の総マクロポア面積を有するT1/2中空ファイバー膜カプセルが構成された。マクロポアの約17%は、直径が約5μmであり、約33%は直径が約10μmであり、そして約50%は直径が約15μmであった。
【0085】
別の特定の実施態様では、総外壁表面積の約10%の総マクロポア面積を有するT1/2中空ファイバー膜カプセルが構成された。99%を超えるこれらのマクロポアは、直径が10〜15μmの範囲であった。
【0086】
任意の標準的な方法を用いて、外表面マクロポアの形態の定量化を行い得る。本発明者らは、2つの方法を使用した。
【0087】
一つの方法では、走査型電子顕微鏡に、中空ファイバー膜の切片を載せる。次にファイバーの外表面を金でスパッタリングコート(sputter coated)した。1000×倍率の画像が生じる。1000×での走査型顕微鏡写真は、約9.2kμm (115μm×80μm)の面積を含む。これらの画像上では、10μm直径のポアは直径が1cmである。円形のテンプレートを用いて、全てのポアを15μm、10μm、5μm、または2.5μmの直径のいずれかに分類し得る。外壁表面開口(即ちマクロポアとして)の総パーセントを(全ポアが占める面積/顕微鏡写真の総面積)×100として算出する。同様の計算を用いて、個々のポアサイズを決定する。
【0088】
自動システムを用いて、定量化を行い得る。上記の通り、中空ファイバー膜切片の1000×での走査型電子顕微鏡写真画像を調製する。イメージグラバー(image grabber)を用いて分析用に画像を保存する(SCION Image)。本発明者らは、NTH Image (バージョン1.55)と呼ばれるMacIntosh画像処理および分析プログラムを用いて保存された画像を処理した。このソフトウエアは、組織学的サンプルの形態的測定分析を実施するために開発され、そして本発明者らは、これを中空ファイバーの形態測定分析に適応している。各ポアをカウントし、そして直径を割り当てる。総マクロポア面積の算出および個々のポアサイズは上記の通りである。
【0089】
本発明のT1/2ファイバーは、当該分野において既知である任意の適切な方法によって調製され得る。ある方法では、Cabasso, I., Encyclopedia of Chemical Technolology、12、492〜517頁(1980)に記載の周知の方法を用いるルミナール(luminal)およびキャスティング(casting)溶液の流速の適切な調整により、同軸紡糸金口(coaxial spinneret)からポリマー性キャスティング溶液と凝集剤との共押出成形を包含する。本明細書中に参考として援用されているDionne, WO 92/19195および米国特許第5,158,881号、同第5,283,187号、および同第5,284,761号に記載の通り、凝集剤は、生物学的組織断片、細胞小器官、または細胞および/または他の治療剤の懸濁液を含み得る。
【0090】
これらの方法に従って、T1膜は、急冷浴(quench bath)に入る前に空気を通してのポリマー溶液および凝集剤溶液の共押出成形によって、形成され得る。T2膜は、加湿空気またはミスト中そして次にバス中へのポリマー溶液および凝集剤溶液の共押出成形によって、形成され得る。T4膜は、ポリマー溶液および凝集剤溶液を直接凝集剤バスへ共押出形成することによって、形成され得、このため透過選択性膜の形成が、外壁表面および内壁表面上で同時に起こる。
【0091】
T1/2膜は、T2膜形成に用いられる同様の方法を用いて形成され得る。しかし、所望の外表面形態を作成するための既知の方法に従って、共押出口でミストまたは湿度が制御され得る。あるいは、ルーチン法に従うと、急冷浴からのノズルの距離は変化し得る。さらに、共押出形成を用いて膜をキャストする場合、ポリマーおよび凝集剤の絶対的および/または相対的流速を調整して所望の外壁表面形態を達成し得る。最後に、ポリマーおよび凝集剤溶液の組成および温度を変化させ、所望の外壁表面形態を達成し得る。例えば、キャスティング溶液は、DMSO (w/w)中の10〜15% PAN/PVCであり得、そして凝集剤は水、またはその他の水性媒体であり得る。あるいは、キャスティング溶液は、例えば、16% PAN/PVCであり得、そして凝集剤は、例えば23℃で40% NMP、60% HOであり得る。
【0092】
カプセルをシールするいずれの適切な方法も用いられ得、この方法は、ポリマー接着剤および/またはクリンピング(crimping)、節止め(knotting)およびヒートシールの使用を含む。これらのシール技術は当該分野において公知である。さらに、いずれの適切な「乾燥」シール方法も使用し得る。このような方法においては、実質的に無孔性のフィッティング(fitting)が提供され、これにより細胞含有溶液が導入される。充填に続いて、カプセルがシールされる。このような方法は、本明細書中に参考として援用されている、同時係属中の米国特許出願第08/082,407号に記載されている。
【0093】
本発明の方法およびデバイスは、哺乳動物の宿主、レシピエント、被検体、または個体、好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトにおける使用が意図される。
【0094】
本発明のデバイスおよび方法に関して、多くの異なる移植部位が意図される。これらの移植部位は、脳、脊髄を含む中枢神経系、ならびに眼の眼房水および硝子体液を含む。脳内の好ましい部位は、線条体体、大脳皮質、視床下核、およびMaynert基底核を含む。他の好ましい部位は、脳脊髄液であり、最も好ましくは、くも膜下腔および側脳室である。本発明はまた、腎被膜下部位、ならびに腹腔内部位および皮下部位、または他の任意の治療的に有益な部位への移植を意図する。
【0095】
本発明の実施態様において、神経の変性によって引き起こされる疾患の処置のための方法が提供される。神経の変性に関連すると考えられるヒト疾患の例としては、アルツハイマー病、ハンチントン病、AIDS関連痴呆、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびパーキンソン病が挙げられる。
【0096】
神経変性状態のいくつかの動物モデルは、特定の傷害がニューロンを損傷または死滅し得るという前提に基づいている。いくつかの場合において、このことは、ニューロン死のカスケードを引き起こし得、特定の脳機能を担う経路に沿った栄養的に相互独立したニューロンに影響する。
【0097】
神経変性状態の処置のためのストラテジーは、
(1)シナプス後ニューロンに対するさらなる損傷を阻害し、そして
(2)傷害を受けた細胞の生存能を改善するために、
成長因子または栄養因子の局所投与を包含する。ニューロンの生存能を改善することが知られている因子としては、NGF、BDNF、NT−3、NT−4/5、CNTF、GDNF、CDF/LIF、bFGF、aFGF、IGF、ニューロテンシン、およびサブスタンス−Pが挙げられる。
【0098】
神経変性興奮性毒性(excitotoxicity)に対する動物モデルにおいて、グルタミン酸アナログであるキノリン酸を、線条体体および/または基底核と知られる脳領域内に定位的に注入してハンチントン病を患う患者の神経病理および徴候と類似の神経病理および徴候を生じさせる。モデルおよび実際のハンチントン病の両者は、運動制御の局面に必要なニューロンに対する傷害によって特徴付けられる。さらに、ハンチントン病の初期の徴候の一つは、体重の減少である(Sanbergら Med J Aust.、1、407〜409頁(1981))。同様の効果がモデル系においても認められる(Sanbergら Exp Neurol、66、444〜466頁(1979))。キノリン酸はまた、AIDS関連痴呆を患うヒトにおいて異常に高いレベルで見出される。
【0099】
ハンチントン病(HD)は、奇異な制御不能な運動および異常な姿勢を伴う進行性の痴呆により特徴付けられる常染色体優性疾患である。HDは、ほぼ全ての民族および人種のグループに見出され、米国での罹患率は約50/1,000,000である(Emerich, D.F.およびSanberg, Neuromethods、21、65〜134頁(1992))。本疾患の症状出現は、代表的には、中年(約35〜45歳)において生じ、続いて精神的低下および進行性の運動異常の難治性の経過をたどり、通常15年以内に死を招く。HDの神経病理学的研究により、関連し、そして相互に独立した神経化学的および組織病理学的変異の複雑なモザイクが示されている。
【0100】
HDの動物モデルを開発するために、種々の手段が検討されている。最近の研究は、選択的細胞毒性化合物の使用から起こる線条体体損傷と歩行運動異常との間の関係に集中している。グルタミン酸は、CNSに見出される主要な興奮性神経伝達物質の一つである。しかし、それは強力な神経毒として作用し、そしてグルタミン酸およびその他の興奮性毒性化合物の比較的特異的な細胞毒性効果に基づくHDの動物モデルを開発するために、多くの試みが成されている。これらの化合物として、カイニン酸(KA)、イボテン酸(IA)、および内因性トリプトファン代謝物であるキノリン酸(QA)のようなグルタミン酸の構造的アナログが挙げられる。極少量をラットの脳内に注入すると、これらの化合物は、通過線維の軸索および求心性神経終末は残す一方で、著しくかつ局所的に限定された毒性効果を生産じる。興奮性毒性の行動的、神経化学的、および解剖学的結果は、HDにおいて観察された結果と類似し、そして内因性興奮性毒性化合物の異常な過剰生産または分解が、HDの病因論的要因であるという推測が導き出された。
【0101】
キノリン酸(2,3−ピリジンジカルボン酸でトリプトファンの代謝物)は、その強力な興奮性毒性特性ならびにラットおよびヒト脳の両方における幅広い分布の故に大いに注目されている(SchwarczおよびKohler、Neurosci. Lett.、38、85〜90頁(1983);およびSchwarczら、Science、219、316〜318頁(1983))。高濃度の異化酵素(キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRT))および直接の同化酵素(3−ヒドロキシアントラニル酸(3HAO)が、尾状核(caudate)内に検出されたことから、これは、通常、線条体体の機能において役割を果たすことが示唆される(Fosterら、Brain Res.、336、207〜214頁(1985))。線条体体は、QAの興奮性毒性効果に対して最も脆弱な構造にあり(SchwarczおよびKohler、(1983)、前出)、そして新生の(成熟ではない)動物は、QAの毒性効果に耐性であるようである。このことは中年における代表的なHDの発症におおよそ対応する。
【0102】
キノリン酸は、線条体体においてKAよりも選択的な変性効果を発揮すると報告されている。KAは、HDの病理をより厳密にまねる(Beal、Synapse、3、38〜47頁(1989);およびRobertsおよびDiFiglia、Synapse、3、363〜371頁(1989))。KAと同様、QAの注入によりGABA感受性ニューロンの涸渇が生じ、一方、コリン作動性ニューロンおよび外部起始の軸索を相対的に残す。KAまたはIAとは異なり、QAの線条体体内注入は、ソマトスタチン含有およびニューロペプチドY含有ニューロンを残すようであることから、このモデルは、本疾患において観察される神経病理を最も厳密に再生することが示唆される(Bealら、J. Neuro Sci、8、3901〜3908頁(1988)。
【0103】
本発明に従って、細胞(適切な因子を分泌する遺伝的に改変した細胞を含む)を含有するカプセルを移植することによって、適切な脳の領域に栄養因子が提供される。ある場合において、遺伝的に改変した細胞は宿主に対して自己由来(autologous)であり、そしてカプセル化を必要としない。
【0104】
ヒトNGFを発現するように操作されているBHK細胞のような神経成長因子分泌細胞は、キノリン酸誘導性神経変性に対する療法の典型示す。
【0105】
別の動物モデルでは、采−脳弓(齧歯類)または脳弓(霊長類)の傷害を包含する。詳細には、中隔海馬系のニューロンを軸索切断して、中隔コリン作動性ニューロンのNGF−依存変性および細胞死を起こす。これらの傷害は、ヒトのアルツハイマー病において影響されるのと同様の脳領域で変性変化を起こす。
【0106】
本発明の方法に従って、NGFを分泌する遺伝的に改変した細胞を含むカプセルの移植によって、NGFが影響された領域に送達され得る。CNTF、BDNF、bFGF、CDF/LIFのような他の神経栄養因子もまた、中隔コリン作動性ニューロンの同様な集団または重複しない集団を萎縮および/または死から保護し得る。好ましくは、細胞は、組換えヒトNGFを産生するように遺伝子的に操作された線維芽細胞である。
【0107】
脳弓の傷害もまた、動物被検体のモデルにおいて行動上の欠損(学習および記憶に関する作業課題(task)において最も容易に観察される)を引き起こす。采−脳弓の傷害を伴うラットへのNGFの慢性投与により動物の行動の回復が促進されることが報告されている(Willsら Behav. Brain Res.、17、17〜24頁(1985))。本発明において、NGF分泌細胞を含むポリマーカプセルの移植は、障害を受けた動物の適切な脳領域に継続的にNGFを送達する実際的な方法を提供する。本発明のカプセルは、病態が特定の脳領域へのNGFの継続的な送達によって改善され得るアルツハイマー患者に対する治療および/または予防処置の実際的な形態を提供する。
【0108】
本発明の方法および組成物は、神経変性から生じる、年齢に関連した認識性欠損の処置に用いられ得る。このような処置は、認識パフォーマンスを増大し得、従って徴候的な利益を提供する。あるいは、処置は徴候的な利益はないものの、神経保護効果を提供し得る。ヒトにおける年齢に関連した認識機能不全および痴呆は、ニューロン変性、特にコリン作動性基底前脳ニューロンのニューロン変性、ならびに皮質および海馬のChATのレベルの低下に関連付けられている(Coyleら、Science、219、1184〜90頁(1983);Whitehouseら、Science、215、1237〜39頁(1982);Phelpsら、Neurobiol. Aging、10、205〜07頁(1989);Gageら、Neurobiol. Aging、9、645〜55頁(1988))。コリン作動性基底前脳ニューロンを選択的に破壊することによって痴呆の齧歯類モデルを作成する試みの前臨床研究では、広範で持続的な認識機能の欠損を生じさせることに失敗した。老齢ラットは、老齢かつ痴呆の患者において報告された神経病理と同様の神経病理を示す。Morris水迷路による空間学習は、これらの病理学的プロセスの有害な効果に極めて敏感である(Morris、J. Neurosci. Meth.、11、47〜60頁(1984);Morris、Learning and Motivation、12、239〜60頁(1981))。この作業課題は、年齢に関連した認識機能の尺度として妥当化されている。この作業課題における老齢ラットのパフォーマンスは、それらの運動、感覚運動または視覚の欠損、学習および記憶に関する他の試験を混同させる要因とは強くは関連していない(Gamzu、Ann. NY Acad. Sci.、444、370〜93頁(1985))。
【0109】
空間地図の発達が要求される認識作業課題(Eichenbaumら、J. Neurosci.、10、3531〜42頁(1990))として、Morris水迷路は、臨床的設定における老化および痴呆傾向の障害に対して特に敏感な認識機能の非言語試験に類似すると思われる。従って、この作業課題は、痴呆の潜在的な新しい処置の評価に有効と思われる。例えば、いくつかの研究は、外因性NGFが老齢および学習障害ラットにおけるMorris水迷路のパフォーマンスを改善すると報告している。例えば、Fischerら、Nature、329、65〜68頁(1987);Fischerら、J. Neurosci.、11、1889〜1906頁(1991)を参照のこと。
【0110】
NGFは、容易には脳血液関門を横切らないため、そのCNSへの投与には、血液脳関門の完全性を弱める侵入手順の使用を要する。例えば、外因性NGFの潜在的有効性を示した齧歯類の前臨床試験においては、NGFは浸透圧ミニポンプで、または慢性脳室内カニューレによって投与された。これらの技術は、カニューレによる注射またはポンプ(これは、リザーバーが涸渇するごとに交換しなければならない)からのいずれかによる脳内への反復注入を要する。ポンプリザーバーを取り替え、または注射シリンジをカニューレにより再挿入しなければならないが、そのたびごとに混入物が特に感染を受けやすい脳内に導入され得る、別の機会があることを示す。
【0111】
滅菌手順を注意深く使用しても、感染の危険は存在する。集中治療室においてでさえ、頭蓋内圧をモニターするために使用する脳室内カテーテルが、約3日後に細菌に感染する(Saffran、Perspectives in Biology and Medicine、35、471〜86頁(1992)。感染の危険性に加えて、注入手順に関連するいくつかの危険があると思われる。脳室への注入は水頭症を生じることが報告されており(Saffranら、Brain Rresearch、492、245〜254頁(1989))、そして実質内への溶液の連続注入は壊死に関連している。
【0112】
胎児組織の使用は倫理的関心から明瞭にされておらず、そして非カプセル化非胎児細胞は拒絶されるか、または腫瘍を生じ得る。さらに、胎児供給源(fatal source)から採取した組織は、高い生存能があり得る。NGF産生細胞をカプセル化することによって、比較的低い感染の危険性で、胎児組織を使用することなく、そして組織拒絶または腫瘍発生の危険性無く、外因性NGFが供給され得る。
【0113】
最後に、既に使用されている用量での外因性NGFが、それ自体で有害または毒性であるかどうかについての懸念が表明されており、おそらくアルツハイマー病に関連する神経変性のプロセスを促進さえすると思われる(Saffran、Perspectives in Biology and Medicine、35、471〜86頁(1992)。外因性NGFは、もつれ形成(tangle formation)を促進し、脳血流の変化を潜在的に招く血管周囲の交感神経軸索の軸索発芽を開始させ、あるいはまだ影響を受けていない基底前脳ニューロンは機能不全となり、従って、痴呆のプロセスが促進されるような外因性NGFに応答する基底前脳ニューロンの投射をリモデリングする。(Saffran、Perspectives in Biology and Medicine、35、471〜86頁(1992))。
【0114】
本発明の1つの局面によると、年齢に関連した認識性の欠損(ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびALSを含む)の処置のための外因性NGFの有益な効果は、外因性hNGF送達に効果的であると既に報告されている用量よりもかなり低い用量で得られる。
【0115】
既に報告された用量のNGFの投与は、所望しない副作用を有し得る。それらには、著しい体重の減少、疼痛、意気消失、低食症(hypophagia)およびヘルペス感染症の再発が含まれる。
【0116】
本発明によると、(インビボで合成された)NGFの脳室、脳実質、または他の適切なCNSの場所へのカプセル送達(1〜1500ng/日の範囲)が望ましい。NGFまたは他の適切な因子の実際の用量は、より少ないまたはより多い数のカプセルを移植することによって変化し得る。本発明者らは、脳室への送達については、1〜1500ng NGF/ヒト/日、好ましくは10〜600ng NGF/ヒト/日、最も好ましくは50〜500ng NGF/ヒト/日、そして実質への送達については1〜1500ng NGF/ヒト/日、好ましくは10〜150ng NGF/ヒト/日を意図する。これらの用量の範囲は、特に、用量を齧歯類、霊長類、およびヒト間の脳容積の差を考慮して規格化すると、齧歯類の研究および霊長類の研究においてCBFニューロンのスペアリング(sparing)/発芽(sprouting)に必要なNGFの既に報告された用量(17〜350μg/日)よりもかなり低い。Tuzynskiら、J. Neurosci.、10、3604〜14頁(1990);Koliatsosら、Ann. Neurol.、30、831〜840頁(1991)、Koliatsosら、Experimental Neurol.、112、161〜73頁(1991);Dekkerら、Neuroscience、60、299〜309頁(1994)。評価された1例の臨床患者においては、送達されたNGFの用量は75μg/日であった。(Olsonら、J. Neural Trans.、4、79〜95頁(1992))。1つの実施態様において、ヒトNGF (hNGF)を分泌する遺伝的に改変された細胞を半透過性膜内にカプセル化し、そして適切な哺乳動物宿主、好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトの脳室内または実質内に移植する。
【0117】
本発明をさらによく理解するために、以下の実施例を示す。これらの実施例は例示のみを目的とするものであって、そして如何なる様式によっても、本発明の範囲を限定するように解釈してはならない。
【実施例】
【0118】
(実施例1:成体ラットのCNSに移植するカプセル化NGF分泌BHK細胞
ヒトβ−NGFの発現およびBHK細胞株の生産)
プレ−プロ形態のNGFの完全なアミノ酸配列をコードするβ−NGFのヒト遺伝子を、SV40プロモーターにより操作される変異形態のジヒドロ葉酸レダクターゼ(例えば、Kaufmanの米国特許第4,470,461号を参照のこと)を含む発現構築物中のマウスメタロチオネインプロモーターの後に、サブクローニングした(図1)。
【0119】
β−NGF遺伝子の5’末端および3’末端をコードする2つのヒトゲノムクローンをATCCから購入した(phbeta N8D8、phbeta N8B9)。phbeta N8D8由来の440bpのSca1−EcoR1フラグメントの5’側を、phbeta N8B9から単離した2.0kbのEcoR1フラグメントの3’側に連結した。スプライシングしたNGFゲノム配列は、第1イントロンの3’末端の約37bp、プレ−プロNGFのタンパク質翻訳を開始すると考えられる2重のATG配列、ならびにヒト遺伝子の完全なコーディング配列および3’側の非翻訳領域全体を含んでいた(Hoyleら、Neuron 10, pp.1019−1034 (1993))。2.51kbの結合したβ−NGF構築物を、 pNUT発現ベクターを基にしたDHFR(Baetgeら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, pp.5454−5458 (1986))のマウスメタロチオネイン−Iプロモーター(−650〜+7)およびラットインスリンII遺伝子(Palmiter R.D.ら、Proc. Natl.Acad. Sci. USA, 88, pp.478−482 (1991))の第1イントロンの直ぐ下流にサブクローニングした。pNUT−β−NGF構築物(図1を参照のこと)を、標準的なリン酸カルシウム介在トランスフェクション方法を用いて、BHK細胞に導入した。トランスフェクトしたBHK細胞を、200μMメトトレキセート(Sigma)を含有する培地で3〜4週間選択し、そして耐性の細胞を、200μMメトトキセレートとともにまたは含まないのいずれかでポリクローナル集団として維持した。
【0120】
(NGF生物活性の定量)
神経成長因子(NGF)は、PC12細胞で神経突起の顕著な伸長を引き起こし、そしてそれ自身が、NGF生物活性について迅速かつ感度の良いアッセイを提供する。NGFトランスフェクトしたBHK細胞により生産されたNGFの生物活性を試験するために、親BHK細胞(BHK−コントロール)およびBHK−NGF細胞由来のならし培地(CM)を、6ウエルの標準組織培養プレートで生育したPC12A細胞(SchweitzerおよびKelly, J. Cell Biol., 101, pp.667−676 (1985))に添加した。コントロールとして、25SのマウスNGFをいくつかのウエルに添加し、神経突起を誘導した(50ng/ml)。 PC12A細胞を、1〜4日間にわたり細胞体の直径の長さを3回以上測定した神経突起について記録した。NGFバイオアッセイはまた、移植したコントロールカプセルおよびNGF分泌性BHK細胞充填カプセルの修復に基づき、カプセル由来のCMを新鮮な培地で24時間インキュベートしたカプセルから取り出した純粋なPC12A細胞に添加することにより行った。全ての実験では、BHK−NGF細胞由来のCMは、24時間以内にPC12A細胞で丈夫な神経突起伸長を生じ、このことはBHK細胞から生産されたNGFが生物活性であることを示す。BHKコントロールは、並行した実験でPC12A細胞の神経突起伸長を起こすこのような能力を示さなかった。
【0121】
神経突起伸長がbFGFのようなNGF以外の因子によるかどうかを決定するために、本発明者らは、CMおよび組換えhNGFを組合せてNGFブロック抗体(マウス抗β−NGF;Boehringer−Mannheimカタログ番号1008−220)を添加した。このブロック抗体の添加は、用量依存様式でPC12A細胞由来の神経突起伸長を十分に阻害した。最後に、本発明者らは、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)の存在について、ELISAによりBHKコントロール細胞のならし培地をプロービングする1組の実験を行った。bFGF ELISA(Research and Diagnostics Systems, QuantikineTM, ヒトFGF塩基性ELISAキット;Burgessら、Ann. Rev. Biochem, 58, p.575(1989))を用いると、本発明者らは、BHK細胞由来の多量のならし培地中の任意のbFGFを検出し得なかった。これら両方の実験は、BHK−NGF CMに応じてPC12A細胞で見られる神経突起伸長が分泌NGFの存在によることを明らかに示す。
【0122】
(NGF ELISA)
カプセル化および非カプセル化BHK−NGF細胞由来のNGF発現の定量を以下のように行った:全ての試薬は、他の記載がない場合、Boehringer Mannheim Biochemicalsから入手した。Nunc−Immuno MaxiSorp ELISAプレートを、コート緩衝液(CAClおよびMgCl/0.1%アジ化ナトリウムを含有しない1×PBS;pH9.6)中、1ng/mlの抗マウス−β(2.5S)神経成長因子を1ウエルにつき150μlでコートした。コートしたプレートを、37℃で少なくとも2時間、あるいは4℃で一晩インキュベートした。コート溶液をウエルから回収し、そしてウエルを300μlの洗浄緩衝液(50mM Tris−HCl/200mM NaCl/10mM CaCl/1% Triton X−100/0.1%アジ化ナトリウム;pH7.0)で、3回洗浄した。次いで、ウエルを10mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)を含む300μlのコート溶液で、室温にて少なくとも30分間ブロックした。次いで、ウエルを300μl洗浄液で3回洗浄した。ならし培地のサンプルを、2×サンプル緩衝液(サンプル緩衝液は、2% BSA含有すること以外洗浄緩衝液と同じである)中に1:1希釈した。100μlの調製サンプルを、ウエルに充填した。プレートを覆い、次いで37℃で少なくとも2時間または4℃で一晩インキュベートした。溶液を、吸引によりウエルから除去し、そして300μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。各ウエルに、4U/mlの抗マウス−β(2.5S)神経成長因子−β−gal結合体を100μl添加した。プレートを少なくとも1時間37℃でインキュベートした。溶液を吸引によりウエルから除去し、300μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。最後に、200μlのクロロフェノールレッド−β−D−ガラクトピラノシド基質溶液(100mM Hepes/150mM NaCl/2mM MgCl/0.1%アジ化ナトリウム/1% BSA中40mg CPRG;pH7.0)をウエルに添加し、そして37℃でインキュベートした。約30分〜1時間後または発色が570nmでの光度測定に十分になった後、サンプルをプレートリーダー上で分析し、そして組換えNGFタンパク質標準に対して測定した。
【0123】
(c−fos誘導アッセイ)
PC12A細胞へのNGF投与により起こる定量的なc−fos誘導を、免疫蛍光アッセイにより測定した。PC12A細胞を、1mlにつき100,000細胞の密度で、ポリオルニチン処理したガラスカバーグラス(12mm)上に播き、そして24ウエルプレートで少なくとも24時間平衡化した。細胞を、神経突起伸長バイオアッセイのセクションにすでに記載したように、同じ培地中で増殖した。
【0124】
PC12A細胞におけるc−fos誘導について試験するために、BHKおよびBHK−NGF細胞、または組換えヒトNGF(50ng/ml)を含有するカプセル由来のならし培地を、PC12A細胞に2時間添加し、そして37℃かつ5% COでインキュベートした。このインキュベーションの後、カバーグラスを4%パラホルムアルデヒド(0.1M PBS、pH7.4中)で固定し、PBS中の10mMグリシンで2回洗浄し、1% Triton X100(PBS中10分間)および1% nonidet P40(PBS中10分間)で透過した。カバーグラス上の細胞をPBSで5分間の洗浄を3回行い、PBS中の5%正常ヤギ血清(NGS)で1時間ブロックし、そしてPBS中1% NGSで1:10希釈したc−fosに対して生じたウサギポリクローナル抗血清(Oncogene Science)中で3時間インキュベートした。次いで、カバーグラスをPBSで5分間の洗浄を2回行い、そしてフルオレセイン結合ヤギ抗ウサギIgG抗体とともにインキュベートした。最後に、カバーグラスをPBSで2回洗浄し、そしてCitifluorアンチフェーデント(antifadent)で固定し、そして蛍光顕微鏡で観察した。蛍光を顕微鏡によりモニターし、そしてc−fos誘導を、蛍光標識した核の存在により測定した。
【0125】
(カプセル化の手順)
不均斉な単一皮膚中空ファイバーを、ジメチルスルホキシド中12.5%ポリ(アクリロニトリル塩化ビニル、すなわちPAN−PVC)コポリマー(w/w)の溶液からキャストした。製造プロセスは、Cabasso、Encyclopedia of Chemical Technology, 12, pp.492−517(1980)によりドライーウエット(ジェット)スピニング技法を用いる相転位として公知である。スピニングプロセス後、中空ファイバーを、25%グリセロールを含有する蒸留水浴に無菌的に移した。このことは、乾燥手順の間に完全なポアを維持する方法を提供する(Cabasso, 1980, 前出)。製造したファイバー(XP11)は、450±25μmの内径、53ml/(m分mmHg)の液浸透性、88.7±2.1%のBSA排除係数、82.0±1.7%のオボアルブミン排除係数、および約8×10−4cm/秒のグルコース質量移動係数を有するT1/2膜タイプであった。乾燥後、デバイスを、6〜7mmの長さの乾燥中空ファイバーを遠位のシールで、近位末端に中隔定着物を有する光硬化アクリレートハブ上にマウントすることにより製造した。近位末端は、デバイスの内腔に注入される細胞のための充填アクセスを有する。グリセロールを、濾過滅菌した70%エタノールでデバイスから除去し、そしてカプセル化を行う前にHBSS中に入れた。
【0126】
細胞を以下のように予め製造したカプセル化デバイスに充填した:BHKコントロール細胞またはBHK−NGF細胞のいずれかを、約10/mlの密度で予め製造したデバイスに充填した。2×10/mlの密度のBHK細胞懸濁液を、生理学的Vitrogen(Celtrix, Palo Alto, CA)と1:1で混合し、そして中隔アクセスポートから予め製造したデバイスに注入した。2〜2.5μlの細胞懸濁液を注入後、中隔を破り、そしてアクセスポートを光硬化アクリレート(Zeneca)を用いてシールした。BHK細胞充填デバイスを、移植前に、無血清培地であるPC1(Hycor)で4〜5日間維持した。インビトロで3または4日後、細胞を充填したカプセルをHBSSで2回洗浄し、そして1mlの新鮮な培地に入れ、ELISAによりNGFについて分析した。
【0127】
(成体ラットCNSにおけるβ−NGFの長期発現)
本発明者らのインビトロでの実験は、BHK細胞でのヒトβ−NGFの長期で安定な高レベルの発現を示した。この長期で安定な発現がインビボで達成され得るかどうかを決定するために、本発明者らは、BHK細胞を含有するカプセルを成体LewisラットのCNSに移植した。
【0128】
移植前に、BHK−NGFカプセルおよびBHKコントロールカプセルから採取したならし培地(CM)を、上記のようにNGFについて神経突起伸長アッセイに供した。BHK−NGF細胞由来の0.5mlのCMは、神経突起伸長の程度について、50ng/mlの外因的に添加したNGFと同等であったが、BHKコントロール細胞由来のCMは、検出可能なレベルのNGFを含んでいなかった。
【0129】
カプセルを、成体Lewisラットの線状体に1、3、および6カ月間移植した。上記の説明に基づき、カプセルを、神経突起伸長アッセイによりNGFの生産について試験した。
【0130】
インビボで1、3、および6カ月後、BHK−NGFを充填したカプセルは、50ng/mlのNGFと同等またはより大きいPC12A細胞で神経突起伸長を生じ得た。NGF活性は、BHKコントロールカプセル由来のCMで検出できなかった。表Iに示すように、カプセル化BHK−NGF細胞由来のサンプルのELISA定量は、3および6カ月後のインビボにおいて、約20ng/24時間/カプセルまで放出した。
【0131】
【表1】

(実施例2:ラットにおける采−脳弓損傷の研究)
カプセル化NGF分泌BHK細胞(実施例1に記載のとおり)が、インビボで有効量のNGFを放出する能力を評価するために、采−脳弓吸引性損傷(aspirative lesion)を14匹のLewisラットで定位手術で行った。損傷の直後、実施例1に記載のように、BHKコントロールまたはBHK−NGF充填XP−11デバイスを損傷部位に定位手術で移植した。
【0132】
(被験体)
約3カ月齢であり、そして約300グラムの体重の成体の雄Lewisラット(Harlan Breeders, Indianapolis, IN)を以下の研究に用いた。動物を3つのグループで温度および湿度を制御したコロニー部屋で飼育し、その部屋は、0700時に点灯する12時間の明/暗サイクルで維持された。
【0133】
(定位手術)
手術の直前に、ラットを、ケタミン、キシラジン、およびアセプロマジン混合物の筋肉内注射で麻酔をかけ、そしてKopf定位手術器具(Emerichら、1992参照)に置いた。矢状切開を頭皮に行い、そしてブレグマから2.0mm後方に、そして3.0mm側方にわたり開頭手術を行った。20ゲージのチップを有する吸引デバイスを、定位手術フレーム(Kopf Instruments)にマウントし、そして内壁皮質(medial parietal cortex)、帯状皮質(cingulate cortex)、脳梁、海馬の背面、視床の背面、および采−脳弓を、ブルグマの1.40mm後ろに吸引チップを置き、そして矢状洞の直ぐ側方に5.0mmの深さまでそれを入れ込むことにより吸引した。次いで、ブレグマの3.0mm側方の位置に達するまで、チップを0.5mmずつ側方に動かす。吸引直後に、定位フレームにマウントした18ゲージのテフロン(登録商標)カテーテル内にカプセルを置くことにより、ラットに、トランスフェクト(N=8)または非トランスフェクトBHK細胞含有カプセル(N=6)のいずれかを片側に移植した。各デバイスは、直径600ミクロンで長さ0.7cmを測定し、そして約15〜25×10細胞を含んでいた。
【0134】
ステンレス鋼オブドュレーター(obdurator)をカニューレ内に置き、外側のカニューレが予め調製された窩内にカプセルを無抵抗に置けるようになるまで、オブドュレーターをその場所に保持した。移植のための定位手術座標は、ブレグマより0.5mm後方、矢状縫合の1.0mm側方、および皮質表面より7.5mm下方であった。
【0135】
(組織学)
動物に手術後3週目に麻酔をかけ、そして組織学的分析用に調製した。動物を、以下のものでペリスタポンプを用いて、心臓を介して(transcardially)灌流した:20ml生理食塩水(0.9%、室温)、120mlのグルタルアルデヒド(0.1%)、500mlの0.1%グルタルアルデヒド/4%パラホルムアルデヒド、300mlのパラホルムアルデヒド(4%)、および最後に300mlの10%スクロース。全ての溶液を氷冷し(4℃)、そして他に記載がない場合、リン酸緩衝化生理食塩水中(pH=7.4)で調製した。
【0136】
固定後、脳を取り出し、25%緩衝化スクロース(pH=7.4)に入れ、そして24〜48時間冷却した。組織を低温槽で20μmの間隔で切り、そしてポリリジンでコートしたスライドにマウントした。中隔全体を通しての3番目毎の切片を保存し、以下のプロトコールに従ってコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)免疫反応性について処理した:(1)0.8% Triton X−100+10%正常血清を含むPBS中で一晩インキュベーション、(2)1:1000の希釈した一次抗体(ChATに対するヤギ抗血清;Chemicon)とともに48時間インキュベーション、(3)PBS+0.2% Triton X−100で6×5分のすすぎ、続いて、ビオチン化二次抗体(IgG)中で1.5時間インキュベーション、(4)PBS+0.2% Triton X−100中で6×5分のすすぎ、(5)1.5時間、アビジン−ビオチン結合体(ABC、Vector elite)とともにインキュべーション、(6)PBS中で3×5分のすすぎ、(7)蒸留水で5分のすすぎ、(8)0.1% Tris緩衝液に溶解した3,3−ジアミノベンジジン(DBA)(0.05%)+2%ニッケルアンモニウム硫酸塩とともに5分間インキュベーションし、続いて5分間過酸化水素(0.01%)でインキュベーション、(9)反応をPBSで3×1分のすすぎにより停止した。
【0137】
切片をマウントし、脱水し、そしてカバーグラスを載せた。隣接した切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H+E)で染色した。采−脳弓の吸引後に生じた損傷の広がりを確認するために、10番目毎の切片を海馬全体を通して取り出し、そしてVan Ooteganら(Brain Res. Bull., 12, pp.543−553(1984))の方法に従ってアセチルコリンエステラーゼについて染色した。コリン作動性細胞の損失を定量するために、ChAT陽性ニューロンを10×の倍率で対角帯(diagonal band)の中隔の内側および鉛直肢(vertical limb)で計数した。各動物由来のブレグマから約0.7、0.5、および0.2mm前方に位置する代表的な切片(脳あたり3つ)をこの分析のために用いた。
【0138】
(NGF放出の結果)
移植後3.5週後、動物を麻酔し、そしてデバイスをシリコーン鎖をゆっくりと引っ張ることにより回収した。各カプセルを、1mlの培地で24時間インキュベートし、そしてCMをELISAによりNGFについてアッセイした。移植の前および後のNGF分泌レベルを表IIに掲げる。
【0139】
【表2】

全ての動物の海馬および中隔から採取した組織学的切片を、海馬ではアセチルコリンエステラーゼ(AchE)、中隔ではコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)について免疫細胞化学により試験した。海馬でのAchE免疫反応性を、損傷の完全性の第二の指標として用い、そして中隔でのChAT免疫反応性は、移植および損傷の結果としてコリン作動性細胞体の減少または萎縮の証拠を提供した。海馬の損傷対コントロール部位のAchE免疫染色の代表的な比較では、損傷部位へ求心性のAchEのほぼ完全な損失を示した。
【0140】
BHKコントロールおよびBHK−NGF移植動物の損傷後3.5週の中隔に残っている総ChAT−陽性ニューロンを計数し、そして合わせた結果を図2に示す。ChAT−陽性ニューロンの定量は、BHKコントロールカプセルを用いると、非損傷側と比較して、15±3%のみのニューロンが、脳の損傷側で陽性のままであり、一方、BHK−NGFカプセルを用いると、90±5%のコリン作動性ニューロンがChATについて免疫陽性であった。カプセル化細胞の生存は、BHKコントロールとBHK−hNGF細胞充填カプセルとの間で等しかった(データは示さず)。
【0141】
(実施例3:霊長類の脳弓損傷)
実施例2は、本発明のBHK細胞から成体ラットの采−脳弓損傷を有する側脳室へのhNGFの慢性送達が、損傷の結果死んでしまうであろう中隔内側のコリン作動性ニューロンを保護することを示した。同様の実験をヒト以外の霊長類で行ったことを本明細書に記載する。サル(Cebus apella)の脳弓の損傷を起こさせることは、(KordowerおよびFiandaca, J. Comp. Neurol., 298, pp.443, (1990))に記載されている。
【0142】
成体カニクイザルを、これらの損傷実験で用いた。一側性損傷を完了した後、実施例1に記載されるように5個のXP−11カプセルデバイス(番号により同定される)を、中隔内側の、損傷に同側に近接する側脳室内に手で置いた。コントロールとして、いくつかの動物に、BHKコントロール細胞を充填したデバイスを移植した。移植手順に続いて、手術部位を閉じ、そして動物を回復させ、そして3.5週間綿密にモニターした。3.5週の生存期間に続き、番号を付けたカプセルを注意深く取り出し、そして標準細胞培養培地に入れ、そして次いで、移植前であるとして、NGF放出についてELISAにより再アッセイした(表III)。次いで、動物をアルデヒド固定剤を灌流することにより屠殺し、そして脳を、組織化学および免疫組織化学手順のために切片にし処理した。
【0143】
【表3】

表IIIに示すデータは、2匹のBHK−NGFを移植したサルおよび1匹のコントロールのサルの分析を示す。同じ研究で追加の6匹の動物からのNGF放出データのその後の分析は、移植前までにカプセルにより生じたhNGFの平均レベルが、NGF ELISAにより測定されるように、回収したカプセルにおいて21.4±2.0ng/カプセル/24時間および8.5±1.2ng/カプセル/24時間であることが明らかになった。各サルに5つのカプセルを移植したので、動物1匹につき生じたNGFの総量は、移植前および移植後1カ月ではそれぞれ107ng/24時間および41.5ng/24時間であった。BHKコントロールカプセルは、検出可能なhNGFを生産しなかった(25pg NGF/mlまで感度のあるアッセイ)。
【0144】
動物は、直ぐに手術から回復し、そして実験の間生存していた。BHK−hNGF含有カプセルを受けている動物は、嗜眠状態であり、手術後数日間減少した食欲を示した。これらの動物うち1匹はまた、複数の発作が手術後約2日で始まり、そして手術後5日以内におさまることを示した。このような合併症は、BHKコントロール細胞移植物を受けたいずれの動物にも示されず、そしてBHK−hNGF動物とBHKコントロール動物との間の違いは、手術後の最初の1週間後では観察されなかった。
【0145】
BHKコントロール移植物を受けている1匹の動物のポリマーのカプセルを、インサイチュに残して置いた。全ての他のサルにおいては、BHK細胞充填デバイスを、移植後23〜28日の側脳室から、カプセルに宿主組織がほとんど付着しないように回収した。
【0146】
カプセル取り出し時の視覚的観察に基づき、全てのカプセルを、側脳室内に位置させ、そして尾状核の頭および中隔外側の両方で隣接させた。全てのカプセルを完全に取り出し、いずれのカプセルもインサイチュまたは回収の手順のいずれかの間で壊れなかったことを証明した。細胞充填デバイスを1匹のBHKコントロール動物にインサイチュで残したままにし、デバイスの位置を示し、そして宿主組織の応答を評価した。この動物および全ての他の動物におけるカプセルへの宿主の応答は最小であった。かなり少量の反応性グリアが存在し、これは、全て観察された場合、移植片−宿主の界面で外接した位置でのみ見られた。さらに、マクロファージのような他の非ニューロン細胞は、移植片の周辺領域内で観察されなかった。
【0147】
全てのサルは、損傷の同側の海馬内のアセチルコリンエステラーゼ含有線維の広い損失により示されるような、脳弓の完全な横断切開を示した。移植されていないか、またはBHKコントロール(NGF非分泌)細胞移植物を受けたかのいずれかであるコントロールのサルは、互いに異ならず、そしてコリンアセチルトランスフェラーゼおよびp75 NGFレセプター(NGFr)−免疫反応性ニューロンの広い損失を、損傷の同側の対角帯の中隔内側(MS;それぞれ53および54%)および鉛直肢(VLDB;それぞれ21および30%)内で示した。対照的に、BHK−hNGF細胞の移植物を受けたサルは、コリン作動性ニューロンのあまり大きくない損失のみを中隔(それぞれ19および20%)およびVLDB(7%)内で示した。さらに、hNGF分泌細胞の移植物のみが、中隔内でコリン作動性線維の稠密伸長を誘導し、これは、移植部位に隣接する脳室の上衣内層に対して分岐した。回収したカプセルの試験は、検出可能なレベルのhNGFを、培養でPC12A細胞を分化するために十分な濃度で生産する大量の細胞を示した。
【0148】
(実施例4: ハンチントン病動物モデルにおけるBHK−NGF移植片の効果)
(A.齧歯類)
(手術と移植)
手術の直前に、Lewisラットをペントバルビタールナトリウム(45mg/kg, i.p.)で麻酔しKopf定位器に置いた。頭皮に矢状切開を施し、2ヶ所に穴をあけNGFを分泌するBHK細胞を含有するXP−11ポリマー製カプセルを(実施例1に記載した様に)側脳室に設置した。ラットの片側あるいは両側の移植は定位枠に取り付けた18ゲージのテフロン(登録商標)製カテーテル中にカプセルを入れ、それを適切な位置に低下させて行った。移植の定位座標は以下のとおりである:ブレグマ(Bregma)の0.5 mm前方、矢状縫合の1.5 mm側方、皮質表面の8.0 mm下方。
【0149】
約1週間後、動物を麻酔し、定位器に設置して225(片側)または150(両側)nmolのQAあるいはリン酸緩衝化生理食塩水を賦形剤として、線条体に以下の座標で片側に注射した: 脳表面から下方にAP=+1.2 mm、ML=±2.6 mm、DV=5.5 mm。QAを2N水酸化ナトリウムに溶解してpH7.2のリン酸バッファーで希釈し、最終pHを7.4、最終濃度を225nmol/μlとした。QAの各線条体への注入は28ゲージのハミルトンシリンジを用い5分間にわたって1μl量の条件で実施した。注射カニューレをその場所にさらに2分間放置し潅流の拡散を可能にした。この手順の結果3つの実験グループが形成された: 1)キノリン酸のみ(QA)、2)キノリン酸 + NGF−分泌BHK細胞(QA/NGF)、および3)キノリン酸 + NGF非分泌BHK細胞(QA/NON−NGF)。手術後ただちに、動物に10 mlの乳酸化リンガー溶液を腹腔内注射した。手術後、動物はマッシュ飼料と水を自由摂取で飼育した。
【0150】
(行動試験)
(回旋行動:)
片側のキノリン酸注射後10日目から、動物を、自動化されたデータ収集用にIBMコンピューターを接続した自動化回旋計測器(Rotoscan, Omnitech Instruments)中でのアポモルヒネ誘導回旋行動試験に供した。まず動物を5分間の慣らし期間のために試験チャンバーに置き、次いでアポモルヒネ(1.0 mg/kg、0.1%アスコルビン酸を含有する標準の生理食塩水中)を注射し、続く30分間の間に試験した。アポモルヒネにより誘導された回旋行動の増感作用は、線条体の刺激毒性損傷の後で起こる。それゆえ、動物の試験は各セッションを3ないし4日の間隔を開けて4回実施した。回旋は完全な360度の同側の回旋で定義され、2方向間の正味の差として報告された。
【0151】
(自発的運動能力:)
手術前および両側QAの30日後に、それぞれの動物を自動化Digiscan−16 Animal Activity Monitor System (Omnitech Electronics, Columbus, Ohio)の5個の開放場ボックス中の1個に入れ、1時間の試験期間中の運動能力を試験した。以下に示す行動変数を収集した:(1)水平活動(HA):水平センサー中断の総数; (2)総距離(TD):インチで表現した動物の移動距離;(3)移動回数(NM):移動1回毎に増加するこのパラメーターは最後の中断から少なくとも1秒間分離された光線の遮断によって記録された;(4)移動時間(MT):秒で表現した動物の移動に要した時間;(5)平均速度(AS):cm/秒で表現した動物の移動の平均速度;(6)平均距離(AD):インチで表現した動物が1回の移動発作中に移動した平均距離;(7)垂直活動(VA):垂直センサーにおける光線中断の総数;(8) 垂直時間 (VT):このパラメーターは動物が垂直センサーの光線を遮断する間に増加した;(9)垂直移動回数(VM):これは少なくとも1秒間分離された垂直センサーの光線中断により増加する;(10)常同症的移動数(NS):このパラメーターは同じ光線が1秒間隔で繰り返し遮断されると増加した;(11)常同症時間(SC):常同症に費やされた時間の蓄積。
【0152】
(カタレプシー:)
運動活動試験1日後、動物にD1およびD2ドーパミンレセプターのアンタゴニストであるハロペリドールとSCH2388を投与した後、運動機能減少(カタレプシー)の試験を実施した。カタレプシーは、動物の後ろ足を台の上に置き、前足を台の上9.0 cmの所に吊るした水平棒(直径0.6cm)に置く棒試験により測定した。動物に生じたカタレプシーの度合いは、自分自身を棒から引き離すのにそれぞれの動物がどれだけの時間を要したかで測定した。許容範囲は最高300秒までとした。動物を3つの処置グループの1つにランダムに割り当て、ハロペリドール(1.0 mg/kg)、SCH23388(1.0mg/kg)あるいはコントロール賦形剤 (0.9%生理食塩水)のいずれかを注射した。棒試験は、薬物および/またはコントロール賦形剤の投与後1、2、3、および4時間後に再度実施した。すべての動物の試験は、各処理条件のもと3〜4日の間隔をおいて実施した。
【0153】
(結果)
すべての動物は、試験セッションの繰り返しの中でアポモルヒネに対する感受性を増した。図3に示す様に、QAはアポモルヒネで誘導した回旋行動の顕著な増加を生じさせた。非NGFグループの動物は、QAのみを受けた動物と差がなかった。しかし、QAと同時にNGF分泌BHK細胞を受けた動物は(表IV、QA 片側を参照のこと)すべての試験セッション期間の間、回旋行動の有意な減少を示した。
【0154】
片側QA後に見られた行動保護と一致して、動物は、QAの両側注射により生じた活動亢進状態の減少を示した。QAのみ、またはQAおよび非NGF分泌BHK細胞移植物を受けた動物(即ちBHKコントロール)は、移植前のレベルの約100〜350%の範囲で活動の増加を示した(図4)。対照的に、QAと同時にNGF分泌BHK細胞を受けた動物(表IV、QA 両側)は、非NGF処理動物に比較して非常に減少した、移植前の値の約25〜150%の範囲の行動レベルを示した。
【0155】
同様の行動保護パターンが、両側QA動物をカタレプシーについて試験した時にも見られた。QAを単独で、あるいは非NGF分泌BHK細胞と組み合わせて受けた動物は、4時間の試験期間中、ハロペリドールとSCH23390の後、約30〜60秒の継続時間の範囲のカタレプシー時間を示した(図5)。対照的に、QAおよびNGF分泌BHK細胞を受けた動物は、強いカタレプシー応答を、ハロペリドール(180〜220秒で)およびSCH23390(150〜220秒で)の両方に対して示した。全体にまとめると、これらの結果より、ポリマーでカプセル化したBHK細胞の事前移植は、QAの片側、両側いずれの注射後にも観察された行動結果を顕著に減少し得た。
【0156】
【表4】

(B.霊長類)
上記の研究を霊長類に拡張した。
【0157】
4匹のカニクイザル(cynomologous monkey)が、実施例1に記載した様にXP−11ポリマーでカプセル化したBHK−hNGF細胞の移植物を受けた。4匹のコントロールのサルは、hNGF構築物を欠く同じカプセル化BHKコントロール移植物を受けた。それぞれの動物において3個の移植物を尾状核の頭部に、そして3個の移植物を後方被殻に設置した。座標はMRIガイダンスに基づいた。
【0158】
手術は標準的な手法を用いて実施した。サルは麻酔した。無菌条件化で、正中線に基づいたU字型の切開を行い、右側線条体の上にある頭蓋骨を露出させた。高速ドリルを用いて線条体の上にある2cm×3cmの頭骨切開を行い、脳骨髄硬膜はU字型の態様を反映した。次いで3個のポリマーカプセル移植物を右方尾状核の頭部に定位的に設置し、そして3個のカプセルを右方被殻に定位的に設置した。つなぎ綱(tether)は、後の検証と回収を容易にするために皮質の表面で切断した。脳脊髄硬質と頭蓋帽を再び相接させてもとの場所に縫合し直した。皮下組織は4−0 Coated Vicryl逆縫合糸で縫合し、皮膚は4−0 Ethilon縫合糸を用いて通常の方法で閉じた。
【0159】
カプセル移植の1週間後、サルは、尾状核と被殻のカプセル移植物の直ぐ近傍に、キノリン酸注射を受け、サルのビデオテープ撮影を、通常の条件下およびアポモルヒネ処置の後に、週に1回、移植の1週間前にはじまりそして損傷の後3週間に開始して2週間の間実施した。カプセルは屠殺の直前に取り出した。
【0160】
それぞれのカプセルからのhNGF放出レベルはELISA法で定量した。回収の際のカプセルからのこのhNGF放出の生物的活性の適切さは、PC12細胞を用いたバイオアッセイにより評価し、移植したBHK細胞の生存率はニッスル染色で評価し得る。サルの脳は、ChAT、GAD、NADPH、NPY、ソマトスタチン、およびニッスルのために免疫組織学的に処理した。損傷領域はニッスル染色セクションで定量され、ChAT−ir、GAD−ir、NPY−ir、ソマトスタチン−ir、NADPH染色細胞は両側で定量される。
【0161】
(実施例5: ヒトCNSへのNGFの送達)
近年Olsenら(J. Neural Transmission, 4, pp. 79−95 (1993))は、ミニポンプシステム(Medtronic)を用いた脳室内注入によるマウスNGFの投与について報告した。この注入システムを腹壁(abdominal wall)の皮下に移植し、皮下カテーテルによって脳室内カテーテルに接続した。この脳室内カテーテルは頭骨の2 mmバーの穴を通して右側の脳室に挿入した。総量32.4 mlのマウスNGFを3ヶ月の期間にわたって注入した。
【0162】
1−10 XP−11からヒトNGFを放出するカプセル化BHK細胞を用いる臨床試験において、カプセルは中隔と尾状核の間に位置する脳室空間または選択した新皮質/海馬領域に定位的に設置した。カプセルは24時間当たり50〜500 ngのヒトNGFを放出した。カプセルは3〜12ヶ月移植したままにしておき、その間患者は行動と生化学的改善についてモニターされ得る。患者は以下を含まむがそれに限定はされない一連の認識機能試験によって評価され得る:(1)ミニ精神状態試験 (mini−mental state examination):これは認識機能のレベルを評価するために用いられる (Folsteinら, J. Psychiatr. Res., 12, pp. 189−198 (1975));(2)顔認識試験 (Backmanら, Psychol. Aging, 6, pp. 489−492 (1991));(3)即時および遅延(30分)空間記憶試験。患者はまた多くの非侵害的な方法でコリン作動性機能および血流の検査についてモニターされ得る。死後のインビトロ研究の結果、コリン作動性ニコチンレセプターはアルツハイマー病では消失している事が示されている(NordbergおよびWinblad, Neuroscience Lett., 72, pp. 115−119 (1986))。陽電子射出断層撮影 (PET) を用いて、ニコチンレセプターの利用性と機能の指標としての11C−ニコチンの取り込みを視覚化し得る。さらに11C−ブタノール(butamol)を用いて、脳の様々な領域における脳血流を評価し得る(Herseovitchら, J. Cereb. Blood Flow Metab., 7, pp. 527−542 (1987))。
【0163】
(実施例6:鎮痛剤の送達)
以下の実施例では、エンケファリンを分泌する自己細胞の使用により、末期ガン患者における慢性の痛みの緩和に対する本発明の使用を示す。神経幹細胞は、将来の被験者より摘出した脳側室の側背面の脳室下領域から得た1mgの脳組織バイオプシーから得た。胚海馬前駆細胞の増殖集団は、大脳皮質、海馬、間脳、線条体、および/または中隔の組み合わせで、bFGFの存在下、Richards の方法(Richardsら, Proc. Natl. Acsd. Sci. USA, 89, pp. 8591−8595 (1992))に従って得られる。増殖中の前駆細胞は、メタロチオネインのような構成的なプロモーターによって駆動されるエンケファリン遺伝子を含むpNUTベクターを用いてトランスフェクトされ、上述のとおりメトトレキセートによって選択される(例えば、Kaufmanら、米国特許第4,740,461号参照)。成功した形質転換体は、選択薬剤に対するそれらの耐性によって同定され、異種遺伝子の発現レベルはラジオイムノアッセイ(RIA)によって確認される。
【0164】
約 250,000 の未分化前駆細胞をSagenの方法(Sagenら、米国特許第4,753,635号)で被験者のCSFに直接移植する。移植の後、幹細胞は複製の数サイクルの内に分裂を停止し、エンケファリン発現グリア細胞へと分化する。CSF内における増加したエンケファリンの持続的な存在は、数日から1ヶ月内にの被験者の鎮痛をもたらす。
【0165】
上述した細胞、あるいはウシ副腎クロム親和性細胞は、例えば本発明のT1/2膜カプセルでカプセル化して、ヒトの脳室あるいはクモ膜下腔に移植され得る。
【0166】
(実施例7:T1/2膜の製作)
T1、T2およびT1/2中空ファイバー膜の製作は、米国特許第5,158,881号、同第5,284,761号、および同第5,283,187号に記載された共押出成形紡糸技術と類似の技術により行った。表Vにこれら T1、T2およびT1/2膜の特徴を示す。これらの膜の注型溶液は12.5% PAN/PVC (Dynel)のDMSO溶液(w/w)であった。溶液は使用前に0.22μmフィルターで濾過した。ファイバーは凝固溶液としての脱イオン水(MilliQ)の入った23℃の水浴中で紡糸した。ノズルの寸法は以下のとおりである:口環(面板)0.650mm、キャピラリー0.475mm。ポリマー流速(unitless)はGilmont #0 flowmeter (GFO)で計測した。凝固剤流速(unitless)はGilmont #4 flowmeter(GF4)(unitless)で測定した。T2およびT1/2膜については、ノズルと冷却浴の間の空気空隙の環境を、室内湿度調節装置を用いたミストチャンバー内で湿度調節した。表V中のT1/2ファイバーの破壊強度は19.3 ± 0.5グラムであった。
【0167】
これらのカプセルは移植に際して組織の内部成長の低下を示し、破損なしに100%の回収率を示した(10中10)。
【0168】
【表5】

表Vに記載したT1/2 XP−11ファイバーは総外壁表面域の約12%の総マクロポア域を有していた。約20%のマクロポアは直径が5〜10μmの範囲にあり、そして約80%のマクロポアは直径約10μmであった。
【0169】
やはり共押出成形で作製した第2のT1/2 膜は、内径522.5±10μmで、外径670±11μmであった。
【0170】
ポリマー性キャスティング溶液は、12.5% PAN/PVCのNMP溶液(w/w)であった。ボア凝固溶液と浴は、23℃の水 (MilliQ 脱イオン化)であった。ポリマー流速はGilmont flowmeter #0で測定したところ25 psiで63であった。凝固剤流速はGilmont #4 flowmeterで測定したところ58 psiで69であった。ノズル口環(面板)直径は650μmであった。キャピラリーO.D.は400μm、キャピラリーI.D.は310μmであった。ノズルと冷却浴の間の空気空隙は8.0インチであった。空気空隙の環境は雰囲気空気であった(ミスト無し)。
【0171】
応用流体力学的浸透率は約35.0ml/(m 分 mmHg) であった。破壊強度は31.0±0.3グラムであった。これらのファイバーは総外壁表面域の約10%のマクロポア域を有していた。99%以上のこれらのマクロポアは、直径が10〜15μmの範囲にあった。
【0172】
第3のT1/2膜を共押出成形で作製した。重合注型溶液は16.0% PAV/PVC (Mw 約40 K)のNMP溶液(w/w)で、10%の水を含んでいた。ボア凝固液と浴溶液は23℃の40%NMP、60%水であった。ポリマー流速はGilmont #0 flowmeterで測定したところ28 psiで40であった。凝固剤流速はGilmont #4 flowmeterで測定したところ15psiで97であった。ノズル寸法は以下のとおりであった:キャピラリーO.D. 400 μmおよび口環I.D.650μm。ノズルと冷却浴との間の空隙は10.3インチであった。空気空隙の環境は室内湿度調節装置を用いてミストチャンバー内で湿度調節した。
【0173】
T1/2ファイバーは内径約545μm、外径約639μmであった。これらのファイバーの応用流体力学的浸透率は、約29 ml/(m 分 mmHg)であった。破壊強度は29.3±0.5グラムであった。これらのファイバーは、総外壁表面域の約2.4%の総マクロポア域を有していた。約17%のマクロポアは直径約5μm、約33%は直径約10μm、そして約50%は直径約15μmであった。
【0174】
これらのT1/2中空ファイバーは非対称である;これらは密な内側の選択透過性障壁と大きなマクロヴォイド小柱壁構造とを有する。外側表面は宿主組織の浸潤にはほんの僅か開放されているが、残りは多孔性(即ち選択的で無い)であるが宿主組織の内部成長に対して閉鎖されている。
【0175】
(実施例8:老齢ラットにおける認識機能の改善)
本研究では、痴呆の齧歯類モデルにおける、カプセル化したNGF産生ベビーハムスター(BHK)細胞の潜在的な治療効能を評価した。さらに、ラットは、毒性のような、処置による非認識効果についても試験された。その理由から、ラットの苦痛閾値はホットプレート装置で評価した;そしてラットは有害な効果の証拠について、それらの死亡率、体重、昼/夜サイクルを通しての活動レベルに関連して調べられた。
【0176】
(細胞のトランスフェクションと培養)
細胞は実施例1に記載のように調製した。
【0177】
(細胞のカプセル化)
個々の長さ7.0±0.5 mmのT1/2(XP1193−001)カプセルを実施例7に記載のように作製した。カプセルの内径は425〜500μmのサイズ範囲にあり、壁の厚みは50〜65 μmの範囲であった。これらの膜の公称分子量カット・オフ値は、デキストラン運搬ふるい実験で測定したところ約100kDであった。
【0178】
ファイバーデバイスは、細胞の添加接近について近位端で隔膜の固定物を持ち、そして遠位端でシールされていた。BHK細胞は単細胞懸濁液として調製し、そして隔膜口に10 細胞/μlの密度で、生理的コラーゲンと1:1で混合した後注入した。202.5 μlの細胞懸濁液を注入した後、隔膜を除去し、そして接近口をシールした。BHK細胞を添加したデバイスは、移植の前、PC−1培地に4〜5日間維持した。3または4日後、カプセルをハンクス調節塩溶液でリンスし、そしてhNGFをELISAで分析するために一晩新鮮な1mlのPC−1培地中に置いた。
【0179】
(カプセルのNGF産生評価)
BHK−NGFを添加したカプセルから放出されたhNGFの定量は、2部位の酵素免疫アッセイで実施した。Boehringer Mannheimにより記載されたプロトコールを改変し、Nunc−Immuno Maxisorp ELISAプレートを使用した。発色(30分)の後、サンプルをプレートリーダーで分析し、そして組換えマウスNGFタンパク質を標準として測定した。カプセルは所定の範囲のhNGF産生を示した。すべてのラットが同等量の外因性hNGFを受けることを保証するため、それぞれのラットに明白に高いhNGF産生カプセル1個と明白に低いhNGF産生カプセル1個を移植した。
ラット
雄性Fischer 344ラットをNational Institutes of AgingのHarlan Sprague Dawley aging rat colonyから購入した。比較的高齢のこのラットは引退した繁殖動物であった。これらのラットは行動試験開始前の1.5ヶ月間コロニー室で慣らし、その間ずっとNIH−31飼料で生命を維持した。カゼインを含む飼料を用いるとF−344ラットにおける腎不全の発生が高く、問題となる老齢の動物モデルとしてのそれらラットの使用を可能とする。NIH−31飼料は大豆蛋白を含むので寿命を伸ばし、随意に飼料を与えたF−344ラットにおける重度の慢性腎臓病の発生を劇的に低減させる。このことから、腎臓疾患が老化研究におけるそれらの使用を混乱させることは無い。Winnら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92, pp. 2324−28 (1994)参照。行動試験開始時、ラットは3.3ヶ月(n=30)、18.5ヶ月(n=45)、および24.6ヶ月(n=60)であった。結果におけるラットの年齢は、試験のその部分の間のそれらの実際の年齢で表した。
【0180】
(カプセル移植)
ラットの麻酔はケタミン(33 mg/ml)、キシラジン(1.7 mg/ml)、およびアセプロマジン(10 mg/ml)の混合物1.0 ml/kgを注入して実施した。ラットはKopf定位器に置き、頭皮に矢状切開を施し、脳室にポリマーカプセルを設置するために適切な座標にバー穴をあけた。ラットへの移植はカプセルを定位枠に取付けた18−ゲージテフロン(登録商標)製カテーテルに入れて実施した。ステンレス鋼製のオブジュレーター(obdurator)をカニューレ内に入れ、デバイスを脳内に低下させ、側脳室内のカプセルを動かない様に設置するために外のカニューレを上げる間、オブジュレイターを適所に維持した。移植のための定位座標は以下のとおりであった: ブレグマの0.5 mm前方、矢状縫合の1.5 mm側方、および皮質表面の7.5 mm下方。移植物を受けていないラットには疑似手術を施した(麻酔、頭皮切開、頭蓋ドリル、および脳脊髄硬膜せん刺)。
【0181】
(死亡率)
日付と一般的外観をそれぞれのラットについて死亡した日に記した。研究を完了したラットの死亡した日付は潅流日付として記録した。
【0182】
(体重)
ラットの体重は動物飼育施設到着時から、週に一度測定した。
モリス水迷路(Morris water maze)
装置: 直径1.5m、深さ76cmのガラス繊維製黒色タンクに、水深32cmまで水(21℃)を満たした。10cm×10 cmの矩形の台を、参照およびワーキングメモリー試験の間、水面下0.5cmに沈めた。指示試行試験(cued trial)の間、台は木製のジベルで出来た白色の筒(高さ39cm、直径1.2cm)を台から垂直に立てて印を付けた。探試行試験(probe trial)には折り畳み式の台を使用した。Poly−Track Softwareを搭載したSA−3 Tracker (San Diego Instruments, San Diego, CA)を、白色のラットが黒色のバックグラウンドを移動するのを追跡して座標を記録するのに使用した。カメラを水面の178cm上に設置し、タンクの中心に向けた。タンクは、部屋の周囲でタンクの縁の下に位置する2個の18ワット蛍光灯と4個の50ワット白熱灯で照明された部屋で、壁に向けて置いた。大きな122cm×183 cmの白黒視覚指示(チェッカー盤と標的中心円)をタンクそばの反対側の壁に設置した。
【0183】
参照記憶試験と処置の割り当て: 静止台を、タンクの中央と外壁との中間にすべての試験について設置した。4個の4分円弧のランダムな位置から開始する方法を使用した。試験はラットが台を見つけたとき、または2分たった時点で終了した。各試験の後、ラットを台の上に10秒間置いた。手術の前、ラットは最初の7セッションについては1日あたり1回受け、次の8セッションについては1日あたり2回受けた。手術の後は、移植後15〜19日に1日あたり1セッションを5日間受けた。
【0184】
移植後探試験: 折り畳み式の台を参照記憶試験で使用したのと同じ4分円弧の中央に設置した。台は試験開始時は低位置にあり、そして30秒後に高位置に上昇させた。ランダムな位置から開始する方法を使用した。試験はラットが台を見つけたとき、または2分たった時点で終了した。各試験の終了時、ラットを台の上に10秒間置いた。データは最初の30秒間のみ収集した。最初の30秒間(台がタンクの底に折り畳まれているとき)にラットが台の位置を泳いで渡る回数を記録した。ラットは、移植後参照記憶試験が行われたのと同じ日に、1日あたり1試験を5日間受けた。探試験と参照記憶試験の順序は、ある日とその翌日で交互させた。
【0185】
移植後指示試験: ゴムバンドで上部に固定された黒色カバーを有する静止台を、参照記憶試験で使用したのと同じ4分円弧の中央に設置した。3個の木製ジベルを、1つを他の上部にテープでつなぎ、そして黒色カバーに取り付けた。ランダムな位置から開始する方法を使用した。探試験完了の後、ラットは3回の試験を試験間の間隔無しに受けた。
【0186】
移植後のワーキングメモリー試験: 静止台を、セッション毎に4個の4分円弧すべてからランダムに選択した新たな場所に設置した。ランダムな位置から開始する方法を使用した。1セッションは試験間の間隔無しで3回の試験からなり、移植後26〜29日目の4日間実施した。他のシリーズのワーキングメモリーモリス水迷路試験は、試験間の間隔を2時間とって、手術後30〜35日目の6日間行った。試験はラットが台を見つけたとき、または2分たった時点で終了した。最初の2試験の終了時に、ラットを台の上に10秒間置いた。
ホットプレート侵害受容閾値
ホットプレートは50℃に熱してプレキシガラス製の箱で覆った。ラットをプレートに乗せ、不快の兆候(例えば、足をなめる、足を早く軽く打つ)が示されたら直ちに取り出した。たとえなんら不快な兆候が示されなくても、試行は60秒後に停止した。応答までの潜伏期間を依存する測定値として記録した。移植の45日前に、ラットは1日1試行を5日間受け、これら5試行の平均をベースラインパフォーマンスとして計算した。手術の15日後に、別の5セッションを1日あたり1回行った。最後に、手術の35日後に別のセッションをホットプレートで実施した。
手術後のフォン・フレイ(von Frey)毛体知覚機能
計量した7.37、12.5および20.9 gのフォン・フレイ毛を使用した。ラットをテーブルから45cm上に上げた網目状の床(120×45cm)にのせ、透明なプラスチック製のケージ(24×14×13 cm)で覆い、10分間順応させた。フォン・フレイ毛を、後ろ足の底に対して、足の裏の皮膚に、曲がり始めるまで押し付け、1秒当たり約2回の接触の頻度で最高20回まで押し付けた。ラットが20回の接触の後応答しなくなった場合、21の値が割り当てられた。閾値において、ラットは足を早く軽く打つ、足を引っ込める、足をなめるなどして応答した。毛は左右の後ろ足にランダムな順序で存在した。ラットは手術後1セッションを受け、そして左側と右側の平均値を使用した。
活動レベル
ラットを、視野計の回りに赤外光線のならび(Integrated Animal Monitoring System, Omnitech Electronics, Inc.)を有し、ベータチップの薄層を底に敷いたプレキシガラス製のケージ(42cm×42 cm×30 cm)に、5:00pmから9:00amまで(消灯は8:00pmから8:00amまで)、移植の前後に入れた。光線の遮断回数を変換して、16時間のセッションの1時間当たりの総移動距離とした。
【0187】
(データ解析)
データの解析にはSAS−PCTMを使用した。分散の解析には、適所に繰り返し測定値のためのオプションを用いて一般線形モデルに対する手順を使用して実施し、クロンバックの係数αを内部信頼性の測定値として計算した(SAS Institute Inc., 1989)。ωを、効果の大きさの測定値として計算した(DoddおよびSchultz, Jr., Psychol. Bull., 79, pp. 391−95 (1973))。積限界法を用いたSAC−PC PROC LIFETEST法を、階級に従った生存の分布を評価するために使用した。log−rankテストを、階級間の生存の同等性を検定するために使用した。死亡率以外、すべての報告し解析したデータは、研究の終了まで生き残った実験動物のデータに限定した。
【0188】
(カプセルのhNGF産生)
14個すべての(非トランスフェクト・コントロールからの)カプセル化したBHK−コントロール細胞は、外植の時点で0ng/20時間のNGFを放出していた。43匹の、両側にBHK−NGFカプセルを移植したラットが研究の終了まで生存した。移植前のBHK−NGFカプセルからのhNGF産生は0.80 ng/20hrから17.4ng/20hrの範囲にあり、外植後は0.00ng/20時間から12.1ng/20h時間であった。各動物の2個のカプセルからのhNGF放出の総計は、移植前が11.5±0.56 ng/20時間であり、外植後の測定では7.3±0.75ng/20時間に減少した。移植前の2個のカプセルからのhNGF放出の総計および外植後の総計のいずれもが、どの水迷路試験の反応性とも相関しなかった。
【0189】
(死亡率)
動物飼育施設到着時のラットは1.8ヶ月(n=30)、17ヶ月(n=45)、および23.1ヶ月(n=60)であった。最も若齢のラットの0匹、中齢ラットの45匹中7匹(15%)、および最も高齢のラットの60匹中18匹(30%)が、動物飼育施設到着と約65日後の手術予定時との間に死亡した。
【0190】
手術および麻酔からの回復の間に死亡したラットはどの月齢集団にも無かった。最も若齢のラットの0匹、カプセル化BHK−NGF細胞を移植した中齢ラットの18匹中1匹(5.5%)、最も高齢のコントロールラット20匹中4匹(20%)、およびカプセル化BHK−NGF細胞を移植した高齢ラットの22匹中6匹(27%)が、移植時と約40日後の安楽死予定時の間に死亡した。
【0191】
安楽死時点のラットの生存数とそれらの月齢は以下のとおりである:合計N=99の研究の最後まで生存したラットについて、それぞれ5.4ヶ月(n=30)、20.6ヶ月(n=37)、および26.7ヶ月(n=32)。これら99匹の生存ラットについてのデータのみが、以下に報告するデータのセットの解析に含まれた。
【0192】
(体重)
最も若齢のラットは体重が最も軽く、中齢ラットは最も重く、そして最も高齢のラットは中間の体重であった。年齢がデータの分散、ω=0.89、F(2,81)=722.6、p=.0001、の大部分を説明した。体重は手術前の8週間で有意に変化した。最も若齢のラットが体重の増加を続けた一方で、中齢および最も高齢のラットは連続的に体重を減少させた。ラットのグループ割り当ては、移植前の体重には基づかず、モリス水迷路の参照試験における移植前の反応性に基づいて行った。その結果、中齢ラットでは、カプセル化BHK−NGF細胞を移植する予定のラットは、コントロール群に割り当てられたラットほど(移植前の時点で)非常に重くはなかった。
【0193】
体重は手術後の4週間で変化した。移植/疑似手術の後、最も若齢のラットが体重の増加を続けた一方で、中齢および最も高齢のラットは体重の減少を続けた。事後(post−hoc)の対比の結果、カプセル化BHK細胞を移植したラットは、疑似手術を施したコントロールに比較して有意に軽量であった、F(1,81)=8.34、p=0.005。その一方、カプセル化BHK−NGF細胞を移植したラットは、カプセル化BHK細胞を移植したラットと比較して軽量ではなかった、F(1.81,)=0.07、p=0.79。移植後の平均体重を見ると、疑似移植ラットの体重は386.8 ± 9.3 gであり、その一方カプセル化BHK細胞を移植したラットの体重は疑似移植群より3%少なく(375.5 ± 11.0 g)、そしてカプセル化BHK−NGF細胞を移植したラットの体重は2%少なかった(379.8 ± 6.5 g)。分散の比率の点から説明しても、処置の体重に対する影響は小さい。さらに、体重変化の速度とパターンのいずれもが、移植後4週間の処置によって影響を受けたという証拠はなかった。
【0194】
(活動レベル)
5:00pmから9:00amまで(消灯は8:00pm〜8:00amまで)の16時間の期間にわたる1時間毎の総移動距離を見ると、移植前の活動レベルは最初高くて減少したが、箱の中での第4時間目に照明が消えると劇的に増加した。若齢ラットは高齢ラットに比較してより活動的であった。活動レベルは1日単位の時間によっても有意に影響された。
【0195】
処置による主要な効果は、移植後の活動レベルについて統計的に有意であった、F(2,81)=4.32、p=0.017。それぞれの月齢グループの移植後の活動レベルを事後解析した結果、処置(BHK−NGF移植物)による有意な効果が、3.3ヶ月ラットについて見られた、F(2,24)=4.18、p=0.027。処置による主要な効果は、中齢ラット、F(2,31)=1.92、p=0.16、または最も高齢のラット、F(2,26)=2.12、p=0.14のいずれでも有意では無かった。
【0196】
(ホットプレート)
カプセル化した、脳室内のBHK−NGF細胞により送達されるNGFは、ホットプレートに応答する潜伏期間に影響しないように見受けられた。処置の主要な効果は統計的に有意で無かった、F(1,87)=0.03、p=0.865。
【0197】
(フォンフレイ毛体知覚閾値)
ラットはより堅いフォン・フレイ毛により早く応答した。若齢ラットはまた高齢ラットに比較してより早く応答する傾向を見せた。外因性NGFは高齢ラットのより軽い刺激に対する反応性に影響したが、若齢グループには影響しなかった。しかしながら、外因性NGFを受けた最も高齢のラットは若齢ラットに比較してより応答性ではなかった(図6)。
【0198】
(空間学習モリス水迷路)
移植前参照記憶モリス水迷路反応性: 移植前の台への遊泳経路の距離は、11日間の最初の試験で、すべてのグループについて減少した。高齢ラットは若齢ラットよりも大きく減少していた。すべての月齢に於いてパフォーマンスにはかなり大きな範囲が存在した。動物の処置グループへの割り当ては、移植前の参照記憶モリス水迷路でのそれらのパフォーマンスに従ってそれらをマッチさせて行い、移植前の処置の間には有意な差は存在しなかった。
【0199】
移植後参照記憶モリス水迷路: 2つのコントロールグループ間には、移植後のモリス水迷路の参照記憶試験におけるそれらのパフォーマンスに差は無かった。それゆえこれら2つのグループ、カプセル化非トランスフェクトBHK細胞を移植したグループと疑似手術を受けたグループとを統合して単一のコントロールグループとした。遊泳距離は、移植前の最後に獲得した到達距離より減少することは無かった。
【0200】
異なる月齢グループ間ではパフォーマンスに差が見られた。カプセル化BHK−NGF細胞はパフォーマンスについて統計的に有意な効果を及ぼさなかった。移植前の参照記憶モリス水迷路でパフォーマンスがより良い50%とより悪い50%のラット間では、これら移植後の試験で有意な差が見られた。
【0201】
移植後探試験: 2つのコントロールグループ間では、移植後のモリス水迷路探試験におけるそれらの反応性について差は見られなかった。それゆえカプセル化した非トランスフェクトBHK細胞を移植したグループと疑似手術を受けたグループとを統合して単一のコントロールグループとした。若齢ラットは高齢ラットよりも、最初30秒の遊泳時間の間、台の位置をより頻繁に横断した。BHK−NGF細胞は統計的に有意な効果をもたらさなかった。
【0202】
0 ITIのワーキングメモリーモリス水迷路: 手術の26〜29日後、ラットにモリス水迷路のワーキングメモリーバージョンを1日あたり3回試験した。台は試験日毎に、プールの壁からの距離の差異を含めて、プール中のランダムに選択した位置に移動させた。各試験間での遅延は無かった(0 ITI)。4日間のパフォーマンスを試行1、2、および3について平均した。BHKと疑似手術コントロールグループに差は見られなかったのでこれらのグループとを統合して1つのコントロールグループとした。パフォーマンスは3回の試験を通して一貫して改善された。試験における改善パターンは高齢ラットと若齢ラットで異なっていた。カプセル化BHK−NGF細胞によって供給されるNGFはこの課題に於いて統計的に有意な効果を示さなかった。
【0203】
2時間のITIのワーキングメモリーモリス水迷路: 手術後の30〜35日後、ラットにモリス水迷路のワーキングメモリー試験を1日あたり3試験実施した。台は試験日毎に、プールの壁からの距離の差異を含めて、プール中のランダムに選択した位置に移動させた。試験の間に2時間の間隔を取り、その間ラットを15分間赤外熱ランプで乾燥し温めてからそれらをもとのケージに戻した。6日間のパフォーマンスを試験1、2、3について平均した(図7)。 BHKと疑似手術コントロールグループとの間に差は見られなかったので、これらのグループを統合して1つのコントロールグループとした。
【0204】
パフォーマンスは3回の試験を通して一貫して改善された。若齢動物は一般に高齢ラットより良好なパフォーマンスを示した。
【0205】
手術前にパフォーマンスのより劣っていたカプセル化BHK−NGF細胞を移植したラットのパフォーマンスは、コントロールグループ内でパフォーマンスの劣るものよりは良好であった(図7)。
【0206】
これらの結果から、遺伝的に改変された異種の細胞を含むCNS−移植半透性膜は、連続的にhNGFを産生して非免疫抑制ラットにおける老化に関連した認識障害(cognitive defect)を弱めること、および手術による移植の手順と低用量のhNGFに対する長期間の接触のいずれもが安全であるようであることを示唆する。
【0207】
(実施例9: カプセル化BHK−NGF細胞の悩弓損傷老齢サルへの移植)
本研究では、ポリマーでカプセル化した、遺伝的に改変されたヒトNGF (hNGF)を分泌する細胞の移植が、老齢サルにおける軸索が切断されたCBFニューロンの衰退を防止し得、そしてこれらの移植が移植物に近接するコリン作動性線維の成長を誘発することを示す。
【0208】
年齢24〜29歳の間(ヒトのほぼ75〜87歳に相当)の6匹の雌性アカゲザル(Macaca mullata)を本研究に使用した。すべてのサルは左の悩弓に片側の損傷を受けた。サルの麻酔はイソフラン(1.5〜2.0%)で行った。マンニトール(0.25 g/kg, iv)を用いた前処理の後、左悩弓の片側切断を実施した(J.H. Kordower, M.S. Fiandaca, J. Comp. Neurol., 298, pp. 443 (1990))。手術ドリルを用いて側矢状骨皮弁(サイズ=1.5cm×4.0 cm)を作り、前頭骨上矢状静脈洞を露出させた。脳脊髄硬膜を引っ込め、自己保持性開創器を用いて半球間の列溝を露出させた。脳梁を縦軸にそって切開した。モンロ開口のレベルで、悩弓は分離した2〜3 mm幅の白色線維束として容易に見ることが出来る。悩弓を先ず球状解剖器具を用いて切断した。次いで悩弓の切断末端を吸引して損傷の終了を確実にした。
【0209】
その後直ちに、各サルに(実施例1に記載したように)、hNGFを分泌するように遺伝的に改変された(n=3)、またはされてない(n=3)ベビーハムスター腎臓(BHK)繊維芽細胞を含むXP−11ポリマーカプセルの、左側脳室への移植を施した。BHK細胞を含むXP−11カプセルを、個々に、手で側脳室内に精密鉗子を用いて尾状核の頭部と中隔核との間に設置した。合計5個のデバイスを、各動物に吻尾状核(rostrocaudal)の方向に向けて1列に移植した。尾状核と中隔に隣接したカプセルは、まっすぐなままであり、さらなる固定を必要としなかった。脳脊髄硬膜を再び近づけ、骨皮弁をもとどおりに縫合し、そして帽状器官と皮膚を通常の方法で縫合した。
【0210】
すべてのサルを移植後3〜4週間後に屠殺し、そしてアセチルコリンエステラーゼ(AChE; Hedreenら, Cytochem., 33, pp. 134 (1985))の組織学的可視化、およびコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)、低親和性NGFレセプター(p75 NGFr)、ドーパミンβ−ヒドロキシラーゼ(DβH)およびβアミロイドの免疫組織学的可視化のために処理した。動物を再度定位枠に設置し、先に調製した骨皮弁を取り除き、脳半球を引っ込めてBHK細胞添加カプセルを取り除いた。カプセル除去の直後、動物にリン酸緩衝化生理食塩水(pH=7.4)による、心臓を経由する潅流とそれに続く3.5リットルの4%ザンボニ固定剤による固定を施した。凍結したセクションをスライド式ナイフミクロトームで切断(40μm)した。中隔/斜走(diagonal)列複合体を通るセクションを3番目毎に、先に記載された手法(例えば、J.H. KordowerおよびFiandaca、上記; Kordowerら, J. Comp. Neurol., 277, pp. 465 (1988))を用いて、ChAT(1:7,500; Chemicon)、p75 NGFレセプター(1:80,000; Dr. Mark Bothwell)またはA4(1:1,000; Dr. Dennis Selkoe)のために免疫細胞化学的に処理した。中間中隔内のコリン作動性ニューロンのカウントは手動で行った。中間中隔内のChAT−およびp75 NGFr−irニューロンの数は、両側について動物あたりレベルにマッチさせた最低5セクションから定量した。コリン作動性ニューロンの数は、グループを横断して両側スチューデントT検定を用いて比較した。
【0211】
手術後に始まりそして実験の間中継続していたが、NGF分泌移植物を受けたサルはコントロール移植サルに比較して昏睡状態にある様子であった。それぞれの動物において多くのβアミロイド−免疫反応性斑様構造が、側頭と頭頂の新皮質、扁桃状部および海馬に見られた。NGFの投与は、コントロール動物と比較したところ、アミロイド斑の数または分布に影響を与えなかった(データ省略)。損傷部位のニッスルおよびAChE−染色セクションの結果から、左悩弓はすべての動物に於いてモンロの尾状開口のレベルで切断されており、その結果インタクトな対側に比較して同側の海馬でのAChE−含有線維の広範囲にわたる欠失が生じていることを示した。
【0212】
BHK−コントロール移植片を受けたサルは、移植と同側の中間中隔内でChAT(57〜75%)とp75 NGFr−ir(52〜53%)ニューロンの有意な減少を示した(図8)。中隔に残存するニューロンの多くは、対側のChAT−およびp75 NGFr−ir中隔ニューロンに比較して萎縮しているように見えた。損傷により誘発された中隔ニューロンの衰退は、ポリマーでカプセル化されたBHK−hNGF細胞の移植片を受けたサルにおいて軽減された。というのは、これらのサルでは、対側と比較して損傷と同側の中間中隔内で、ChATニューロンの減少が0〜36% (p<.001)、そしてp75 NGFr−irニューロンの減少が7〜23%だけであったからである(図8)。
【0213】
中隔ニューロンにおける生存率の維持とコリン作動性表現型の発現に加え、BHK−hNGF移植片によって同側中隔内でのコリン作動性線維の強い成長が誘発された。BHK−hNGF移植片を受けたすべてのサルは、移植片近傍の中隔の側面に於いてp75 NGFr−ir線維の網目構造を示した。これらの線維は側脳室の上衣裏装(ependymal lining)に対して枝状に広がっていた。対照的に、いずれのBHK−コントロール移植サルもコリン作動性成長応答を示さなかった。これらの線維はまた、ChAT−irかつAChE−陽性であり、このことはこの成長応答のコリン作動性表現型を裏付けた。1例において、BHK−hNGFカプセルは側脳室を貫いて、吻側基底(rostral basal)前脳の実質組織にとどまっていた。p75 NGFr−ir線維の病巣網目構造は、この移植部位の近傍に観察された。後中隔と斜状帯(diagonal band)の垂直突起の後外側部分から生じている僅かな線維がこの線維網目構造に貢献している様に見受けられるが、この線維網目構造を引き起こす発生源の正確な細胞は確認されていない。明らかなのは、これらの線維は交感神経系に由来していないということである。なぜならこれらは薄く、拡張しており、そしてDBHに免疫反応性でなかったからである。興味深いことに、線維網目構造内に時おりp75 NGFr−irニューロンが見られたが、これらの細胞はこの線維システムに有意に貢献するには数が少な過ぎた。
【0214】
移植前、ELISAによる分析結果から、BHK−hNGF移植サルは、動物あたり24時間あたり合計44.65± .95ng NGFを産生するカプセルを受けたことを示した。屠殺直前の回収時、多くのニッスル染色BHK細胞が、hNGFを目下、動物あたり24時間あたり9.6ngの速度で産生するカプセル内に見られた。老齢サル内に1ヶ月間移植された後のこれらのカプセルから得た媒体は、インビトロでのPC12A細胞の強い分化を誘導した。このことはこのレベルのNGF産生が生物学的に適切である事を示す。
【0215】
本研究は、NGFが老齢霊長類の脳におけるコリン作動性基底前脳(CBF)ニューロンの衰退に対して、栄養的および刺激的影響を提供し得ることを初めて示す。現在観察されている栄養的および刺激的効果は高度の確実性で移植由来のhNGFに起因し得る。なぜなら、それぞれBHK−hNGFおよびBHK−コントロール移植を受けたサルの2つグループにおける処置ストラテジーは、hNGF合成をコードする単一の遺伝子によって全く異なるからである。軸索切断時、予想どおりのCBFニューロンの衰退がコントロール移植サルに観察された。対照的に、遺伝的に改変されたhNGFを分泌するBHK細胞を含むポリマーカプセルの移植物は、損傷されたコリン作動性中間中隔ニューロンの衰退を防止した。
【0216】
CBFニューロンは脳において唯一低親和性p75 NGFレセプターと高親和性trkAレセプターの両方を発現することが示されている細胞である(Steiningerら, Brain Res., 612, pp. 330 (1993))。興味深いことに、本研究はまた、老齢動物における軸索切断に応答したこれら2種のコリン作動性マーカーの発現において、損傷の効果に対してp75 NGFRよりChATの発現がより感受性であるという部分的な不一致が示された。通常ChATとp75 NGFRの発現は高度に一致しているので、これはサルの中隔ニューロンが軸索切断後もなお生存しているが、検出可能なレベルのコリン作動性マーカーは発現していないことを示す。
【0217】
さらに、hNGF分泌カプセルの移植物は、移植物近傍のコリン作動性線維の強い成長を誘発した。重要なことに、hNGF分泌移植片の栄養的および刺激的効果の両方が29歳の老サルに於いて観察された。これらのデータから、老齢霊長類におけるCBFニューロンはその生涯の間hNGFに応答することを示唆する。
【0218】
このデータからはまた、比較的低レベル(ng/day)のhNGFが、基底前脳ニューロンの衰退を援助するために十分であり得ることを示唆する。
【0219】
本研究は老齢霊長類の脳への、遺伝的に改変されてhNGFを分泌するカプセル化細胞移植の実現性を示す。このカプセル化手法は、免疫系を抑制する薬物を使用した、潜在的に毒性のある処置の必要性無しに異種移植を使用することを可能にする。本研究に於いてカプセル化細胞は良好に受容されており、僅かに最小限の星状細胞が移植物近傍で見られたのみであった。BHK細胞はカプセル内で生存を維持しており、実験の期間中検出可能な生物的なレベルのhNGFを産生した。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】図1は、pNUT−β−NGFの発現ベクターの制限地図を表わす。
【図2】図2は、采−脳弓横断切開(fimbria−fornix transection)後、NGFのBHK細胞移植物と一緒にまたは無しで生存する中隔コリン作動性ニューロンの%を表わす。
【図3】図3は、一側性損傷QAラットのアポモルヒネ誘導回旋運動に対するカプセル化されたNGF分泌性BHK細胞の効果を表わす。動物は、3回の別々の場合の回旋運動に対してに試験された。データは、30分の試験時間の間の、または各処置群の完全な同側回旋運動の平均(±)SEM数として表わされる。黒丸/黒線は、QAのみを与えた動物のデータを表わし、白丸/黒線は、QAおよびNGF分泌性BHK細胞移植物を与えた動物のデータを表わし、そして黒丸/破線は、QAおよびNGF非分泌性BHK細胞移植物を与えた動物のデータを表わす。
【図4】図4は、両側性損傷QAラットの自発的な歩行運動(locomotor activity)に対する、カプセル化されたNGF分泌性BHK細胞の効果を示す。データは、それぞれの活動測定について、予備手術の活動レベルの平均(±)SEM%として表わされる。図中、HA=水平活動量、TD=合計距離、NM=移動回数、AD=平均距離、MT=移動時間、AS=平均速度、VA=垂直活動量、VM=垂直移動の回数、VT=垂直活動時間、SC=ステレオタイプ活動時間、そしてNS=ステレオタイプ移動の回数である。パネルA−QA;パネルB−2A/NGFなし;パネルC−QA/NGF。
【図5】図5は、両側性損傷QAラットにハロペリドール(パネルA)およびSCH23390(パネルB)で誘導したカタレプシーに対するカプセル化されたNGF分泌性BHK細胞の効果を示す。データは、処置群のそれぞれについて、カタレプシーに罹っている時間の平均(±)量として表わされる。黒丸/黒線は、QAおよびNGF非分泌性BHK細胞移植物を与えた動物のデータを表わし、白丸/黒線は、QAおよびNGF分泌性BHK細胞移植物を与えた動物のデータを表わし、そして黒丸/破線は、QAのみを与えた動物のデータを表わす。
【図6】図6は、3種類の強度の張力のそれぞれに応答する接触によって測定されたvon Freyの体性感覚閾値(Somatosensory Threshold)を図解する。パネルA−5.4mo.;パネルB−20.6mo.;パネルC−26.7mo.。カプセル化されたBHK−NGF細胞を移植された老齢ラット(26.7mos)は、コントロール群の老齢ラットよりも軽い刺激物質に対して良く応答したが、若齢ラットより応答は良くなかった。黒丸はコントロールを表わし;四角はNGF−BHK細胞のデータを表わす。
【図7】図7は、試行間隔2時間の条件で、Morrisの水迷路テストのワーキングメモリーの結果を示す。パネルA−移植前より良好な50%(better 50% pre−implant);パネルB−移植前より悪い50%(worse 50% pre−implant)。黒丸はコントロールを表わし;四角はNGF−BHK細胞のデータを表わす。
【図8】図8は、カプセル化されたBHK−NGF細胞を与えた老齢サルでは、損傷により誘導される中隔ニューロンの変性がコントロールに比べて顕著に弱められたことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトへの移植のために該ヒトのCNSへ増殖因子または栄養因子を送達するための生体適合性カプセルであって、該カプセルは1つ以上の細胞を含み、該細胞は1日あたり1〜1500ngの増殖因子または栄養因子を産生する、カプセル。
【請求項2】
前記増殖因子がヒト神経成長因子である、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
ヒトの脳室内に移植される、請求項1に記載のカプセル。
【請求項4】
ヒトの実質内に移植される、請求項1に記載のカプセル。
【請求項5】
前記細胞が1日あたり10〜600ngの増殖因子または栄養因子を産生する、請求項1に記載のカプセル。
【請求項6】
前記細胞が1日あたり10〜150ngの増殖因子または栄養因子を産生する、請求項1に記載のカプセル。
【請求項7】
前記細胞が1日あたり50〜500ngの増殖因子または栄養因子を産生する、請求項1に記載のカプセル。
【請求項8】
前記増殖因子または栄養因子が、エリスロポエチン、成長ホルモン、サブスタンスP、ニューロテンシン、NGF、BDNF、NT−3、NT−4/5、CNTF、GDNF、CDF/LIF、EGF、IGF、PDGF、bFGF、およびaFGFからなる群より選択される、請求項1に記載のカプセル。
【請求項9】
第二の生物学的な活性分子を産生する細胞を包含する、請求項1に記載のカプセル。
【請求項10】
半透膜を含有するカプセルであって、該膜は、選択的透過性である内壁表面、非選択的透過性の外壁表面、およびそれらの間の小柱壁を含有し、該外壁表面がマクロポアを含み、該マクロポアが該外壁表面の総面積の約2.0〜20%の間を構成し、そして直径が約5〜15μmの範囲である、カプセル。
【請求項11】
前記カプセルが円柱中空ファイバーを形成するように成形される、請求項10に記載のカプセル。
【請求項12】
前記カプセルが平面シートを形成するように成形される、請求項10に記載のカプセル。
【請求項13】
前記マクロポアが前記外壁表面の総面積の約2.5%を構成する、請求項10〜12のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項14】
前記マクロポアが前記外壁表面の総面積の約10%を構成する、請求項10〜12のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項15】
前記マクロポアが前記外壁表面の総面積の約12%を構成する、請求項10〜12のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項16】
1つ以上の生体適合性カプセルを含むヒトCNSへの移植のためにカプセル化された細胞システムであって、各カプセルは1つ以上の細胞を含み、該細胞は増殖因子または栄養因子を産生し、該カプセル化された細胞システムは、1日あたり1〜1500ngの増殖因子または栄養因子を産生する、細胞システム。
【請求項17】
前記増殖因子がヒト神経成長因子である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
1日あたり10〜600ngの神経成長因子を産生する、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
1日あたり10〜150ngの神経成長因子を産生する、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
1日あたり10〜600ngの成長因子または栄養因子を産生する、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
1日あたり10〜150ngの成長因子または栄養因子を産生する、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
1日あたり50〜500ngの成長因子または栄養因子を産生する、請求項16に記載のシステム。
【請求項23】
前記増殖因子または栄養因子が、エリスロポエチン、成長ホルモン、サブスタンスP、ニューロテンシン、NGF、BDNF、NT−3、NT−4/5、CNTF、GDNF、CDF/LIF、EGF、IGF、PDGF、bFGF、およびaFGFからなる群より選択される、請求項16に記載のシステム。
【請求項24】
少なくとも1つのカプセルが、第二の生物学的な活性分子を産生する1つ以上の細胞を含む、請求項16に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−63081(P2006−63081A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261280(P2005−261280)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【分割の表示】特願平7−504228の分割
【原出願日】平成6年8月12日(1994.8.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Macintosh
【出願人】(505052308)サイトセラピューティクス,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】