説明

避難ルートマップ作成システムおよび避難ルートマップ作成装置

【課題】災害発生時の避難ルートを、移動体の種別ごとに提示するための地図情報を生成する避難ルートマップ作成システムおよび避難ルートマップ作成装置を提供する。
【解決手段】災害発生地域を移動する複数種別の移動体にそれぞれ設置され、
GPS機能により所定時間間隔で取得された位置情報に基づいて生成された、当該移動体が通行した通行区間を示す通行区間情報、および入力された当該移動体の種別を示す移動体種別情報を含む移動情報を生成して送信する移動情報送信部15を有する携帯端末10−1〜10−4と、携帯端末10−1〜10−4から受信した移動情報に基づいて、移動体種別ごとの通行可能な区間により、地図上に避難ルートを明示した避難ルートマップ情報を作成する避難ルートマップ作成部22を有するセンター装置20とが無線通信可能な状態で接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時に通行可能なルートで避難ルートマップを作成する避難ルートマップ作成システムおよび避難ルートマップ作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害発生時に最寄の避難所に避難するための避難ルートを、ユーザの携帯端末等に提供するシステムが提案されている。このシステムを利用することにより、ユーザは携帯している端末で避難ルートを確認しながら避難所へ向かうことができる。
【0003】
しかし、災害発生時には道路の崩壊や水没、土砂災害などにより、避難ルートに示された道路が通行不可能な状態になることもある。
【0004】
このような状態に対応するための技術として、特許文献1または2に記載の避難誘導システムが提案されている。
【0005】
特許文献1には、災害発生時にユーザの携帯端末のGPS情報を利用してユーザの所在を特定するとともに災害発生地の周辺のハザードマップを取得し、このハザードマップにより危険があると認識される経路を迂回等するようにして、ユーザの所在地から予め記憶している避難所への避難経路を地図情報で提供するシステムが記載されている。
【0006】
また特許文献2には、災害発生時にユーザの携帯端末に避難ルートを提供し、さらにこの携帯端末のGPS機能を利用してユーザの移動ルートを監視し、提供した避難ルートと異なるルートでユーザが移動したときには当該提供したルートには通行不可能な場所があると判断し、以降はこの通行不可能なルートを利用しない新たな避難ルートを提供するようにするシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−17027号公報
【特許文献2】特開2006−235980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載のシステムでは、予め作成されたハザードマップの情報を利用するため、実際の災害発生時にこの情報が有効ではない可能性があるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載のシステムでは、GPS機能を利用して最新の道路の通行状況を判断しているが、このシステムに利用される端末を有するユーザが提供された避難ルートと異なるルートで移動したときのみ通行不可能な場所検知することができるため、他に通行不可能な危険な場所があったとしてもそれを検知することができず、ユーザに確実に通行可能な避難ルートを提供することができないという問題があった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、災害発生時に、確実に通行可能な避難ルートを提示するための地図情報を生成する避難ルートマップ作成システムおよび避難ルートマップ作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の避難ルートマップ作成システムは、災害発生地域を移動する複数種別の移動体にそれぞれ設置された携帯端末と、避難ルートマップ作成装置とが接続された避難ルートマップ作成システムにおいて、前記携帯端末は、自携帯端末の位置情報を所定時間間隔で取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部で取得された位置情報に基づいて、自携帯端末が設置された移動体が通行した通行区間を示す通行区間情報を生成する通行区間情報生成部と、自携帯端末が設置された移動体の種別を示す移動体種別情報を入力する移動体種別入力部と、前記通行区間情報生成部で生成された通行区間情報、および前記移動体種別入力部から入力された移動体種別情報を、移動情報として前記避難ルートマップ作成装置に送信する移動情報送信部と有し、前記避難ルートマップ作成装置は、前記携帯端末から送信された移動情報を受信する移動情報受信部と、前記移動情報受信部で受信された移動情報に基づいて、移動体種別ごとの通行区間情報を用いて避難ルートを地図上に明示した避難ルートマップ情報を作成する避難ルートマップ作成部を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の避難ルートマップ作成装置は、災害発生地域を移動する複数種別の移動体にそれぞれ設置され、所定時間間隔で取得された自端末の位置情報に基づいて生成された、当該移動体が通行した通行区間を示す通行区間情報と、入力された当該移動体の種別を示す移動体種別情報とを含む移動情報を生成する携帯端末に接続された避難ルートマップ作成装置において、前記携帯端末で生成された移動情報を受信する移動情報受信部と、前記移動情報受信部で受信された移動情報に基づいて、移動体種別ごとの通行区間情報を用いて避難ルートを地図上に明示した避難ルートマップ情報を作成する避難ルートマップ作成部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の避難ルートマップ作成システムおよび避難ルートマップ作成装置によれば、災害発生時に、確実に通行可能な避難ルートを提示するための地図情報を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による避難ルートマップ作成システムの構成を示す全体図である。
【図2】本発明の一実施形態による避難ルートマップ作成システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による避難ルートマップ作成システムの動作を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の一実施形態による避難ルートマップ作成システムで生成された避難ルートマップが表示された状態を示す画面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〈一実施形態による避難ルートマップ作成システムの構成〉
本発明の一実施形態による避難ルートマップ作成システムの構成について、図1および図2を参照して説明する。
【0016】
本実施形態による避難ルートマップ作成システム1は、図1に示すように、災害発生地域を救助活動等で移動する移動体に設置されたGPS機能を有する携帯端末10−1〜10−4と、避難ルートマップを生成する避難ルートマップ作成装置としてのセンター装置20とが、無線で通信可能な状態で接続されることで構成されている。
【0017】
本実施形態において、移動体は携帯端末10−1が設置された大型車両A、携帯端末10−2が設置された普通車B、携帯端末10−3が設置された二輪車C、および携帯端末10−4を携帯する歩行者である人Dであり、また携帯端末10−1〜10−4は携帯電話であり、携帯端末10−1〜10−4とセンター装置20とは携帯電話網を利用して接続されているものとする。
【0018】
携帯端末10−1〜10−4およびセンター装置20の構成を図2に示す。携帯端末10−1〜10−4は、位置情報取得部としてのGPS情報取得部11と、通行区間情報生成部12と、移動体種別入力部13と、通行障害情報入力部14と、移動情報送信部15とを有する。
【0019】
GPS情報取得部11は、所定時間間隔でGPS機能を利用して自携帯端末10の位置情報を取得する。
【0020】
通行区間情報生成部12は、GPS情報取得部11で取得された位置情報の履歴情報に基づいて、自携帯端末10が設置された移動体が通行した通行区間を示す通行区間情報を生成する。このとき、自端末内に内蔵する計時装置(図示なし)の情報に基づいて、通行区間情報を生成した時の時刻情報を当該通行区間情報に付加する。
【0021】
移動体種別入力部13は、移動体の運転者または歩行者の操作により、自携帯端末10が設置された移動体の種別を示す移動体種別情報を入力する。
【0022】
通行障害情報入力部14は、移動体の運転者または歩行者の操作により、自携帯端末10が設置された移動体での通行が不可能な場所を通知する通行障害情報を入力する。
【0023】
移動情報送信部15は、通行区間情報生成部12で生成された通行区間情報、移動体種別入力部13から入力された移動体種別情報、および通行障害情報入力部14から入力された通行障害情報に、予め記憶されている自携帯端末10の携帯電話番号、利用者名等が付加されて生成された移動情報を生成し、センター装置20に送信する。
【0024】
センター装置20は、移動情報受信部21と、避難ルートマップ作成部22とを有する。
【0025】
移動情報受信部21は、携帯端末10−1〜10−4から送信された移動情報を受信する。
【0026】
避難ルートマップ作成部22は、移動情報受信部21で受信された移動情報から、移動体種別ごとの通行区間情報を用いて避難ルートを明示した避難ルートマップ情報を作成し、インターネット30等を経由して避難情報の閲覧を要求するユーザに提供する。
【0027】
〈一実施形態による避難ルートマップ作成システムの動作〉
次に、本実施形態による避難ルートマップ作成システム1の動作について、図3のシーケンス図を参照して説明する。
【0028】
まず、災害発生地域を移動する大型車両Aに設置された携帯端末10−1、普通車Bに設置された携帯端末10−2、二輪車Cに設置された携帯端末10−3、および人Dが携帯する携帯端末10−4において、それぞれGPS情報取得部11において所定時間間隔でGPS機能が利用されて自携帯端末10の位置情報が取得される(S1)。
【0029】
次に通行区間情報生成部12において、各携帯端末10−1〜10−4において所定時間間隔で取得された位置情報の履歴情報に基づいて、それぞれの移動体が通行した通行区間が特定され、これにより通行区間情報が生成される(S2)。この通行区間情報には、生成された時の時刻情報が付されている。
【0030】
また、各携帯端末10−1〜10−4の移動体種別入力部13では、移動体の運転者または歩行者の操作により、自携帯端末が設置された移動体の種別を示す移動体種別情報が入力される(S3)。本実施形態においては移動体種別情報として、携帯端末10−1には「大型車」が入力され、携帯端末10−2には「普通車」が入力され、携帯端末10−3には「二輪車」が入力され、携帯端末10−4には「人」が入力されたものとする。
【0031】
また、各携帯端末10−1〜10−4の通行障害情報入力部14では、移動体の運転者または歩行者により自身の移動体による通行が不可能な場所が認識されたときに、当該場所が通行不可能な場所であることを通知する通行障害情報が入力される(S4)。
【0032】
次に、通行区間情報生成部12において生成された通行区間情報、移動体種別入力部13から入力された移動体種別情報、および通行障害情報入力部14から入力された通行障害情報に、予め記憶されている自携帯端末10の携帯電話番号、利用者名等が付加されて移動情報が生成され、センター装置20に携帯電話網により送信される(S5)。
【0033】
センター装置20では、携帯端末10−1〜10−4から送信された移動情報が移動情報受信部21で受信され(S6)、この移動情報に基づいて避難ルートマップ作成部22において避難ルートマップ情報が作成される(S7)。
【0034】
作成された避難ルートマップ情報は、インターネット30等を経由して避難情報の閲覧を要求するユーザに提供される。
【0035】
避難情報の閲覧を要求するユーザに提供され携帯端末等に表示された避難ルートマップ情報40の画面構成図の一例を、図4に示す。
【0036】
この避難ルートマップ情報40では、通行区間情報で示される区間が通行可能な区間とされ、この区間を用いた避難ルートが移動体種別ごとに区別して示された道路地図情報が表示され、通行障害情報で示される通行が不可能な場所に「×」印が表示されている。本実施形態においては避難ルートが移動体種別ごとに所定の色で色分けされるように設定され、また通行可能な区間が区別して表示される際の移動体種別の優先順位が予め設定されることで、複数の移動体種別が通行可能な区間は、優先順位の高い移動体種別の色で表示される。この優先順位は例えば、大きい移動体が通行可能であれば小さい移動体も通行可能であるとの前提から、高い順に、大型車>普通車>二輪車>人のように設定される。
【0037】
また、災害発生時には被害状況が刻々と変化するため、ステップS7において避難ルートマップ情報が生成される際に、最新の所定期間(例えば30分)の通行区間情報のみが利用されるように設定しておいてもよい。このように設定しておくことで、この所定期間の時刻情報が付加された通行区間情報のみが用いられて避難ルートマップ情報が生成される。
【0038】
また、この表示された避難ルートマップ情報40は、避難情報を閲覧するユーザの端末操作により特定の移動体種別が指定されたときに、この指定された移動体種別の避難ルートのみを明示するようにしてもよい。例えば、大型車で被害発生地を通行したいユーザにより、移動体種別として「大型車」が指定されて避難ルートマップ情報の閲覧が要求されることにより、大型車の避難ルートのみが明示された地図情報が表示される。
【0039】
また、この避難ルートマップ情報は手動で編集可能な状態にしておき、電話等で新たな通行可能または不可能な区間に関する情報が入ったときにセンター装置20の管理者により更新されるようにしてもよい。
【0040】
また、災害により携帯電話網等が不通の場合には、携帯端末10−1〜10−4をセンター装置20に直接有線により接続したり着脱可能なフラッシュメモリ等を介したりすることにより、移動情報をセンター装置20に送信するようにしてもよい。
【0041】
また、避難ルートマップ作成部22では、移動体種別ごとに異なる避難ルートを推奨ルートとして提供するように、避難ルートマップ情報を作成するようにしてもよい。例えば、車両と人等の移動を混在させないようにするために、移動体種別ごとの通行区間情報に基づいて、車両(大型車および普通車)の避難の推奨ルートと、人等(二輪車および人)の避難の推奨ルートとを、異なるルートで生成する。このように避難ルートマップを作成することで、避難時の安全性を向上させることができる。
【0042】
また、センター装置20は、移動情報に含まれている携帯電話番号、利用者名に基づいて、当該携帯端末10−1〜10−4を携帯している運転者、歩行者に対し、重点復旧箇所への集合指示や危険地域への接近警告、避難通告などの情報を発信することも可能である。
【0043】
以上の本実施形態の避難ルートマップ作成システムによれば、災害発生時に、実際に車両や人が通行した情報に基づいて、確実に通行可能な避難ルートを提示するための地図情報を生成することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…避難ルートマップ作成システム
10−1〜10−4…携帯端末
11…GPS情報取得部
12…通行区間情報生成部
13…移動体種別入力部
14…通行障害情報入力部
15…移動情報送信部
20…センター装置
21…移動情報受信部
22…避難ルートマップ作成部
30…インターネット
40…避難ルートマップ情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害発生地域を移動する複数種別の移動体にそれぞれ設置された携帯端末と、避難ルートマップ作成装置とが接続された避難ルートマップ作成システムにおいて、
前記携帯端末は、
自携帯端末の位置情報を所定時間間隔で取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部で取得された位置情報に基づいて、自携帯端末が設置された移動体が通行した通行区間を示す通行区間情報を生成する通行区間情報生成部と、
自携帯端末が設置された移動体の種別を示す移動体種別情報を入力する移動体種別入力部と、
前記通行区間情報生成部で生成された通行区間情報、および前記移動体種別入力部から入力された移動体種別情報を、移動情報として前記避難ルートマップ作成装置に送信する移動情報送信部と有し、
前記避難ルートマップ作成装置は、
前記携帯端末から送信された移動情報を受信する移動情報受信部と、
前記移動情報受信部で受信された移動情報に基づいて、移動体種別ごとの通行区間情報を用いて避難ルートを地図上に明示した避難ルートマップ情報を作成する避難ルートマップ作成部を有する
ことを特徴とする避難ルートマップ作成システム。
【請求項2】
災害発生地域を移動する複数種別の移動体にそれぞれ設置され、
所定時間間隔で取得された自端末の位置情報に基づいて生成された、当該移動体が通行した通行区間を示す通行区間情報と、入力された当該移動体の種別を示す移動体種別情報とを含む移動情報を生成する携帯端末に接続された避難ルートマップ作成装置において、
前記携帯端末で生成された移動情報を受信する移動情報受信部と、
前記移動情報受信部で受信された移動情報に基づいて、移動体種別ごとの通行区間情報を用いて避難ルートを地図上に明示した避難ルートマップ情報を作成する避難ルートマップ作成部
を有することを特徴とする避難ルートマップ作成装置。
【請求項3】
前記避難ルートマップ作成部は、前記移動体種別ごとに避難ルートを所定の色で色分けし、予め設定された優先順位の高い移動体種別の避難ルートを優先して明示した避難ルートマップ情報を作成する
ことを特徴とする請求項2に記載の避難ルートマップ作成装置。
【請求項4】
前記移動情報には通行不可能な場所に関する情報がさらに含まれ、
前記避難ルートマップ作成部は、前記移動情報に含まれる通行不可能な場所に関する情報で示される場所を、前記地図上に明示した避難ルートマップ情報を作成する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の避難ルートマップ作成装置。
【請求項5】
前記移動情報には前記通行区間情報が生成された時を示す時刻情報がさらに含まれ、
前記避難ルートマップ作成部は、予め設定された期間に該当する時刻情報を含む通行区間情報のみを利用して避難ルートマップ情報を作成する
ことを特徴とする請求項2〜4いずれか1項に記載の避難ルートマップ作成装置。
【請求項6】
前記避難ルートマップ作成部は、指定された移動体種別の通行区間情報のみを利用して避難ルートマップ情報を作成する
ことを特徴とする請求項2、4、5いずれか1項に記載の避難ルートマップ作成装置。
【請求項7】
前記避難ルートマップ作成部は、移動体種別ごとに異なる避難ルートを明示した避難ルートマップ情報を作成する
ことを特徴とする請求項2〜5いずれか1項に記載の避難ルートマップ作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−95850(P2011−95850A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246869(P2009−246869)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】