説明

避難用地下施設

【課題】本発明は学校,病院,事務所,会社,商業施設などの建物と直結し、津波や竜巻等の自然災害の警告が発せられた際、速やかに避難用地下施設へ避難することが容易に出来る避難用地下施設を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は建物Bと地下施設Aが階段Cによって直結されたものであり、地下施設Aには少なくとも、カルバート用コンクリート製品1を水平方向に連結して所定長さの避難空間2が形成されると共に該避難空間2を適宜間隔毎に出入口付き遮水壁3が設けられ、カルバート用コンクリート製品1の周囲には、該カルバート用コンクリート製品1の周囲を囲うトラスが配筋されると共にコンクリートを打設した補強コンクリート層5が形成され、その補強コンクリート層5の周囲に、固化材で固めた埋戻し土層6を設けた構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は津波や竜巻等の自然災害から容易に避難可能な避難用地下施設に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に津波や洪水などが発生した際は、自治体等の定めた高台の学校や公民館等の公共施設へ避難するのが一般的であるが、津波の進行速度は極めて早いため、避難する高台まで離れている住民は、避難が間に合わず、逃げ遅れて津波に飲み込まれてしまう恐れがあった。このため、高い位置に避難場所を設けた津波避難タワーや高架式津波避難所、或いは家屋付設式津波避難用シェルターや家屋自体が浮上するもの等が多種提案されている。
【0003】
又、地下シェルターとしては、特開2000−310059が提案されている。この構造は、ほぼ水平に地下に埋設されると共に、実質的に密封される筒状のシェルター本体から成る地下シェルターであって、内側から外側に向けて鉄骨を多重に配置すると共に、内外の鉄骨を相互に適当な間隔を保った状態でコンクリートを充填し、該コンクリート内に適当な大きさと形状の粒状あるいは塊状の鉛を分散せしめると共に、適当な長さの強化繊維を混入せしめて構成したものである。
【0004】
また特開2000−310059の目的は、多数の被災民や避難民等が長期間安全且つある程度快適な状態で避難生活を送ることが可能な地下シェルターであり、又、居住可能な独立した多数の建物を多数散在させて、全体として一群の集落を構成する基礎構造物の地下に構築したものである。
【0005】
しかしながら特開2000−310059は、本願のように、学校,病院,事務所,会社,商業施設などの建物と直結した避難用地下施設と異なり、且つ、津波や竜巻等の自然災害から一時的に且つ安全に避難可能な本願の目的とも相違するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−310059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は学校,病院,事務所,会社,商業施設などの建物と直結し、津波や竜巻等の自然災害の警告が発せられた際、速やかに避難用地下施設へ避難することが容易に出来る避難用地下施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記現状に鑑みて成されたものであり、つまり、建物と地下施設が階段によって直結されたものであり、地下施設には少なくとも、カルバート用コンクリート製品を水平方向に連結して所定長さの避難空間が形成されると共に該避難空間を適宜間隔毎に出入口付き遮水壁が設けられ、カルバート用コンクリート製品の周囲には、該カルバート用コンクリート製品の周囲を囲うトラスが配筋されると共にコンクリートを打設した補強コンクリート層が形成され、その補強コンクリート層の周囲に、固化材で固めた埋戻し土層を設けた構造とする。又、前記カルバート用コンクリート製品の外周面と、固めた埋戻し土層の内外面とに、止水材を施すと良い。またカルバート用コンクリート製品を水平方向に連結して所定長さに形成した避難空間が複数本平行に並べられ、且つ、カルバート用コンクリート製品を水平方向に連結して所定長さに形成した連結空間を、各避難空間の端部が連結されるように配設すると共に連結空間が階段によって建物と直結されたものとしても良い。尚、本発明で言う「カルバート用コンクリート製品」とは、暗渠,地下排水溝,地下水路などで用いるコンクリート製品で且つそれを連結した際、人が収容される広さを有した空間部が形成可能なものを指す。
【発明の効果】
【0009】
請求項1のように建物(B)と地下施設(A)が階段(C)によって直結されたものとすることにより、学校,病院,事務所,会社,商業施設などの建物(B)内部に居る人たちは、津波や竜巻等の自然災害の警告が発せられた際、階段(C)から地下施設(A)へ速やかに避難することが容易に出来るため、安心して且つ落ち着いて確実に避難することが可能となる。また前記地下施設(A)には少なくとも、カルバート用コンクリート製品(1)を水平方向に連結して所定長さの避難空間(2)が形成されると共に該避難空間(2)を適宜間隔毎に出入口付き遮水壁(3)が設けられることにより、避難空間(2)が区画化されて、クラス別,会社別,業務別等にまとまって避難待機することが出来るものとなる。更にカルバート用コンクリート製品(1)の周囲には、トラス(4)が配筋されると共にコンクリートを打設した補強コンクリート層(5)が形成され、その補強コンクリート層(5)の周囲に、固化材で固めた埋戻し土層(6)を設けることにより、避難空間(2)が強度的に強化されると共に遮水効果が向上するものとなる。
【0010】
請求項2のようにカルバート用コンクリート製品(1)の外周面と、固めた埋戻し土層(6)の内外面とに止水材(12)を施すことにより、避難空間(2)の防水性が向上すると共に長期間に渡って避難空間(2)の強度が確保可能なものとなるため、維持管理が容易となる。
【0011】
請求項3に示すようにカルバート用コンクリート製品(1)を水平方向に連結して所定長さに形成した避難空間(2)が複数本平行に並べられ、且つ、カルバート用コンクリート製品(1)を水平方向に連結して所定長さに形成した連結空間(21)を、各避難空間(2)の端部と連結されるように配設すると共に連結空間(21)が階段(C)によって建物(B)と直結されることにより、特に学校などの建物(B)と直結させることにより、クラス毎に避難空間(2)へ避難出来ると共に生徒の避難状況が容易に把握できるものとなる。更に近隣の住民たちの利用も可能なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の要部構成を示す説明図である。
【図2】本実施形態の地下施設の断面を示す説明図である。
【図3】別実施形態の地下施設全体を示す説明図である。
【図4】図3の断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図1、図2に基づいて説明する。避難用の地下施設(A)は階段(C)によって建物(B)と直結されている。建物(B)としては、学校,病院,事務所,会社,商業施設などに対応させる。(1)はコンクリート製のカルバート用コンクリート製品であり、該カルバート用コンクリート製品(1)としては、例えば日本アーチカルバート工業会の製品「標準形アーチカルバートの特厚形」を使用すると良い。尚、後述する避難空間(2)が形成出来るものであれば、他のものでも良い。(2)はカルバート用コンクリート製品(1)を水平方向に連結して形成された所定長さの長尺な避難空間であり、該避難空間(2)の長さとしては、例えば60〜100メートル前後とするのが良いが、この長さに限定されるものではない。(3)は長尺な避難空間(2)に適宜間隔毎に設けられた出入口付き遮水壁であり、該出入口付き遮水壁(3)は、カルバート用コンクリート製品(1)と同材料で作るのが好ましいが、遮水が出来れば金属板や合成樹脂製板など他の材料で作った扉等を設置したものとしても良い。また前記出入口付き遮水壁(3)が設けられる適宜間隔としては、例えば10メートル毎とするのが好ましいが、この長さに限定されるものではない。(4)はカルバート用コンクリート製品(1)の周囲を四角形状に囲うトラスであり、該トラス(4)は鉄筋を用いて形成されている。
【0014】
(5)はカルバート用コンクリート製品(1)の周囲を四角形状に囲うトラス(4)が配筋された後、コンクリートを打設して断面が四角形状に形成された補強コンクリート層である。(6)は補強コンクリート層(5)の周囲に、セメント系固化材を埋戻し土に混ぜて形成した埋戻し土層であり、該埋戻し土層(6)は固化されている。(7)はカルバート用コンクリート製品(1)の内周面上部に装着した照明灯であり、(8)はカルバート用コンクリート製品(1)の内周面上部に設けられた吸気口であり、(9)はカルバート用コンクリート製品(1)の内周面上部に設けられた排気口である。(10)はカルバート用コンクリート製品(1)の底面と補強コンクリート層(5)の間に打設した敷モルタルであり、(11)は基礎材であり、(12)はカルバート用コンクリート製品(1)の外周面と、固めた前記埋戻し土層(6)の内外面とに施された水止材であり、該止水材(12)としてはビニールなどの合成樹脂製のシートを用いると良い。(13)はゴム系の板材を用いた水止板である。(14)は吸気口(8)と排気口(9)と連通する換気ダクトである。(15)は電気や電話などの電線である。(16)は埋戻し土層(6)上面を覆う粘性土層である。
【0015】
図3は本発明の他の実施形態を示す図であり、これは学校等の全員が避難出来る地下施設であり、これについて説明する。図3は避難空間(2)が100メートル前後の列に形成されてその複数本の列を平行に配置され、各避難空間(2)の端部が所定長さに形成した連結空間(21)で連結されるように配設されると共に連結空間(21)が階段(C)によって建物(B)と直結されている。また前記避難空間(2)は10メートル毎に出入口付き遮水壁(3)が設けられ、区切られた適宜間隔に、各クラス単位でまとまって避難待機できるようにしている。
【0016】
次に本発明の避難用の地下施設(A)を施工する場合について説明する。先ず始めに学校の建物(B)から少し離れた敵宜な場所(例えば運動場など)を所定形状に掘削しておく。掘削した地盤面に止水材(12)を敷設し、セメント系固化材を埋戻し土に混ぜながら所定高さ(厚さ)になるまで埋戻して、セメント系固化材で固めた埋戻し土層(6)の下方部分を作り、次に基礎材(11)を敷き均し、且つ、転圧する。転圧後、止水材(12)を敷き、更にその上に鉄筋を組んでトラス(4)の下方部分を配筋させると共にコンクリートを流し込み、補強コンクリート層(5)の底版部分が形成される。該底版部分の上部にも止水材(12)を敷く。そして、敷モルタル(10)で補強コンクリート層(5)の底版の高さと水平を調整する。調整後、カルバート用コンクリート製品(1)を水平方向に順次据え付けて連結させることにより、避難空間(2)が形成される。カルバート用コンクリート製品(1)の連結が終了した後、カルバート用コンクリート製品(1)の側壁部分、天頂部分に渡り止水材(12)を巻き付け、補強コンクリート層(5)の側壁、天頂部分の配筋及びコンクリート打設の施工を行う。その後、止水板(13)を図2の図中に示す如く補強コンクリート層(5)の底版上縁に沿って取付けると共に補強コンクリート層(5)の側壁と天頂部分に止水材(12)を巻き付ける。そして、セメント系固化材を埋戻し土に混ぜながら所定高さ(厚さ)になるまで埋戻すと共に止水材(12)を一般施工と同様にして巻き付けて行く。このようにして、埋戻し土層(6)の側壁部分と天頂部分を埋戻すと共に止水材(12)の巻き付けも終了させる。その後、更に埋戻し土層(6)の天頂部分に止水材(12)を敷くと共に、地表面まで粘性土層(16)を埋め戻す。この時、埋戻し土層(6)の天頂部分と地表面まで間に止水材(12)を複数枚敷設させると良い。
【0017】
図3、図1に基づいて本発明の避難用の地下施設(A)を利用する場合について説明する。先ず、津波や竜巻等の自然災害の警告が発せられた際には、校内放送で速やかに地下施設(A)へ避難する放送を行う。放送を聞いた生徒及び先生は、日頃の避難訓練時と同様にクラス毎まとまって、地下施設(A)と直結されている各階段(C)によって、教室から避難用地下施設(A)へ順次入る。この時、先ず出入口付き遮水壁(3)の扉を開けば、長尺な避難空間(2)に入ることが出来る。そして予め決められた区画位置へ各出入口付き遮水壁(3)の扉を開けて到達すれば、クラス毎に避難空間(2)へ避難待機出来るものとなる。従って、避難した後であっても生徒の避難状況が容易に把握できるものとなる。この状態で津波が去るのを待てば良い。この時、階段(C)と通じる連結空間(21)の図示しない扉を閉めておく。又、避難待機している間は照明灯(7)を点灯させ、換気装置を作動させておくのが好ましい。津波が去った後は、階段(C)と連結空間(21)の間には水が充填されている状態となるが、水の充填量は連結空間(21)と各避難空間(2)の容積に比べると、極めて小さなものであるため、階段(C)から外へ出る際に足元が濡れる程度であり、身体に危険を及ぼすようなことはない。
【0018】
尚、本発明は地中に埋設されているので、大きな地震による揺れが生じても、地下施設(A)は殆どその揺れによる影響を受けないものである。
【符号の説明】
【0019】
A 地下施設
B 建物
C 階段
1 カルバート用コンクリート製品
2 避難空間
21 連結空間
3 出入口付き遮水壁
4 トラス
5 補強コンクリート層
6 埋戻し土層
12 止水材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物(B)と地下施設(A)が階段(C)によって直結されたものであり、前記地下施設(A)には少なくとも、カルバート用コンクリート製品(1)を水平方向に連結して所定長さの避難空間(2)が形成されると共に該避難空間(2)を適宜間隔毎に出入口付き遮水壁(3)が設けられ、前記カルバート用コンクリート製品(1)の周囲には、該カルバート用コンクリート製品(1)の周囲を囲うトラス(4)が配筋されると共にコンクリートを打設した補強コンクリート層(5)が形成され、その補強コンクリート層(5)の周囲に、固化材で固めた埋戻し土層(6)を設けたことを特徴とする避難用地下施設。
【請求項2】
前記カルバート用コンクリート製品(1)の外周面と、固めた前記埋戻し土層(6)の内外面とに、止水材(12)が施された請求項1記載の避難用地下施設。
【請求項3】
前記カルバート用コンクリート製品(1)を水平方向に連結して所定長さに形成した前記避難空間(2)が複数本平行に並べられ、且つ、前記カルバート用コンクリート製品(1)を水平方向に連結して所定長さに形成した連結空間(21)を、前記各避難空間(2)の端部が連結されるように配設すると共に前記連結空間(21)が階段(C)によって建物(B)と直結された請求項1記載の避難用地下施設。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−40522(P2013−40522A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179273(P2011−179273)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(311009789)
【Fターム(参考)】