説明

避難装置の梯子取付構造

【目的】スラブに取付けられる収納枠内に枢着されると共に、折畳み可能に収納される梯子の収納状態及び伸長状態を安定にし、構成部材の削減及び組立て工数の低減を図る。
【構成】収納枠6の内側面に固着されるブラケット9に梯子6の最上部の縦桟6aを枢着する。梯子6の下端側の縦桟6a間に連結される横杆15の中央部に張出し部16を設ける。張出し部16と緩降機7に引出し及び巻取可能に巻回されるワイヤ14の端部とを回転可能に繋着する。これにより、梯子6の収納時に張出し部16が緩降機7の直下に位置しワイヤ14を完全に巻上げた状態にすることができ、梯子の収納状態を安定にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は避難装置の梯子取付構造に関するもので、更に詳細には、床、ベランダ等のスラブに穿設された孔部に取付けられる収納枠と、この収納枠内に折畳まれて収納されるパンタグラフ式の梯子と、梯子の降下及び引上げ収納を司る緩降機とを具備する避難装置における梯子取付構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、この種の避難装置として、床、ベランダ等のスラブに穿設された孔部に取付けられる収納枠と、この収納枠の床面側及び天井面側にそれぞれ枢着される上方及び下方蓋と、収納枠内に折畳まれて収納されると共に上方及び下方蓋が開かれたとき、階下の床若しくはその付近まで傾斜状に伸長するパンタグラフ式の梯子と、避難時に梯子の降下を開始し、梯子の伸長降下を制御し、かつ梯子を引上げ収納する緩降機とを具備するものが知られている。
【0003】上記のように構成される避難装置において、梯子は多数の縦桟をパンタグラフ式に枢着した左右一対の伸縮体を足踏み用の横桟にて連結した構造となっており、そして、梯子の最上部が収納枠内に固着された取付具に回転可能に枢支されている。このように構成される梯子は伸長状態になって降下する際に、回転が規制されて下端部側が壁面から離れた傾斜状に伸長するのが、安全に避難できる点で好ましいとされている。また、伸長された梯子を引上げる手段として緩降機に巻取可能に巻回されたワイヤロープやチェーン等の索条を梯子の下端部の伸縮体間に連結された横杆に連結する構造のものが使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のこの種の避難装置においては、左右の伸縮体を連結する直状の横杆に索条を連結するため、梯子の収納時の横杆の水平方向の位置が緩降機の垂下位置よりずれるので、索条が完全に巻取られない状態のまま梯子が収納枠内に収納されていた。したがって、梯子の収納状態が不安定となるばかりか、索条に他の避難装置の構成部材が引っ掛かる虞れがあり、梯子の降下、引上げに支障をきたすという問題があった。この問題を解決する手段として、緩降機の取付位置を変えることも考えられるが、狭い収納枠内のスペース内においては緩降機の取付位置を変えることは困難である。
【0005】また、索条が横杆上を移動するため、梯子の伸長状態及び収納状態が不安定となり、梯子の降下及び引上げ時に梯子が左右に揺れるので避難者に不安感を与えるという問題もあった。
【0006】更には、梯子の組立の他に横杆を梯子へ取付ける作業が必要となるため、取付に多くの工数がかかると共に、多くの構成部材が必要となるという問題もあった。
【0007】この発明は上記事情に鑑みなされたもので、梯子の降下及び収納状態を安定させると共に、構成部材の削減及び組立工数の低減を図れるようにした避難装置の梯子取付構造を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この発明の避難装置の梯子取付構造は、床、ベランダ等のスラブに穿設された孔部に取付けられる収納枠と、この収納枠内に折畳まれて収納されると共に、階下の床若しくはその付近まで傾斜状に伸長するパンタグラフ式の梯子と、避難時に上記梯子の降下を開始し、梯子の伸長降下を制御し、かつ梯子を引上げ収納する緩降機とを具備する避難装置において、上記梯子の最上部の縦桟を、上記収納枠内に回転可能に枢着し、上記梯子の下端側の縦桟間に連結される横杆の中央部に張出し部を設けると共に、この張出し部と上記緩降機に引出し及び巻取可能に巻回される索条の端部とを回転可能に繋着してなることを特徴とするものである。
【0009】この発明において、上記横杆の中央部に設けられた張出し部に索条を回転可能に繋着するものであれば、その繋着形態は任意であってもよいが、好ましくは張出し部における索条の両側に、索条の水平方向の移動防止体を装着してなる方がよい。
【0010】また、上記横杆の梯子への取付位置は任意であってもよいが、横杆の連結端部を内側縦桟と外側縦桟のいずれか一方に回転不能に連結すると共に、他方に対して回転可能に連結すれば、構成部材の削減が図れる点で好ましい。
【0011】
【作用】上記のように構成されるこの発明の避難装置の梯子取付構造によれば、梯子の下端側の縦桟間に連結される横杆の中央部に設けられた張出し部に、緩降機に引出し及び巻取可能に巻回される索条の端部を回転可能に繋着することにより、梯子の収納状態において、緩降機の直下位置に張出し部を位置させることができるので、索条を完全に巻き取った状態で梯子を折畳むことができ、梯子の収納状態を安定することができる。
【0012】また、張出し部における索条の両側に、索条の移動防止体を装着することにより、梯子の降下及び引上げ時に索条の水平移動が防止でき、梯子の降下及び収納状態を安定させることができる。
【0013】更に、横杆の連結端部を内側縦桟と外側縦桟のいずれか一方に回転不能に連結すると共に、他方に対して回転可能に連結することにより、横杆の梯子への連結と梯子の縦桟の連結とを同時に行うことができ、構成部材の削減が図れると共に、組立工数の低減を図ることができる。
【0014】
【実施例】以下にこの発明の実施例を図面に基いて詳細に説明する。
【0015】図1はこの発明の梯子取付構造を具備する避難装置の使用状態の斜視図、図2はその側断面図、図3R>3は梯子の収納状態の断面図、図4は梯子の収納状態の斜視図が示されている。
【0016】避難装置は、床、ベランダ等のスラブ1に穿設された孔部1aに取付けられる収納枠2と、この収納枠2の床面側及び天井面側にそれぞれ枢着される上方及び下方蓋3,4と、上方及び下方蓋3,4を互いに連結し、上方蓋3の開閉に連動して下方蓋4を開閉し、かつ開放されたとき上方蓋3をほぼ直立状に固定維持するリンク機構5と、複数の縦桟6a,6a…をパンタグラフ式に枢着した一対の伸縮体6c,6c間に複数の足踏み用の横桟6b,6b…を適宜間隔をおいて横架し、かつ収納枠2内に折畳まれて収納されると共に上方及び下方蓋が開かれたとき、階下の床若しくはその付近まで傾斜状に伸長する梯子6と、上方及び下方蓋3,4が開かれた後、梯子6の降下を開始し、梯子6の伸長降下速度を制御し、かつ梯子6を引上げ収納するための緩降機7とで主要部が構成されている。
【0017】この場合、収納枠2は、上端に外向きの上部フランジ2aを有し、かつ下端には外向きのL形状の下部フランジ2bを折曲した4個の側壁部材2cを方形状に枠組みしてなり、上部フランジ2aの上方に断面ほぼクランク状の上枠部材2dを装着した構造となっている。なお、梯子取付側の側壁部材2cにはスラブ1内に埋設されるアンカー部材8が固着されている。
【0018】上記のように構成される収納枠2の側壁部材2cの内側面には左右一対の取付具9(以下にブラケットという)が固着され、これらブラケット9に梯子6の最上部の縦桟6aの上端部が回転可能に枢着されている。
【0019】この場合、ブラケット9は、図5に示すように、収納枠2の側壁部材2cの内面に固定ボルト9fによって固着される固定部9aと、この固定部9aの一側端から直角状に折曲される梯子6の取付部9bとからなるアングル状部材にて形成されている。取付部9bには梯子6の最上部の縦桟6aが枢支軸10をもって枢着され、その枢着部の下方側には、梯子6の最上部の縦桟6aを当接支持する傾斜状支持片9cが切起こされ、かつ下端部側には伸長した梯子6の傾斜状態を維持するための案内部材11を枢着する取付片9dが設けられている。また、取付部9bの先端には内側に向って翼片9eが折曲され、この翼片9eに案内部材11が当接し得るようになっている。
【0020】なお、枢支軸10の突出側に、縦桟6aと傾斜状支持片9cとの当接支持部を覆うカバー部材12が遊嵌された状態で取付けられており、このカバー部材12によって縦桟6aと傾斜状支持片9cとの間に誤って手が挟まれるのを防止することができるようになっている。
【0021】上記のように構成されるブラケット9,9間には取付板7aが連結されており、この取付板7aに緩降機7が固設されている。そして、緩降機7は側壁部材2cのブラケット9,9間に突設された受金具13上に載置固定されるようになっている。
【0022】一方、緩降機7の内部には、梯子6の降下を制御する制御機構及び梯子6の引上げ用の索条であるワイヤ14の巻取用ドラム(図示せず)が内蔵されており、この巻取用ドラムに引出し及び巻取可能に巻回されるワイヤ14の端部は梯子6の下端側の縦桟6a,6a間に連結される横杆15に回転可能に繋着されている。
【0023】この場合、横杆15は、図6に示すように、その中央部に張出し部16を有するほぼハット状に形成されており、張出し部16に回転可能に遊嵌されるフック板17に設けられたバーリング部17aに座金18aを介して固定ボルト18とナット19をもってワイヤ14の端部のループ部14aが固定されている。したがって、バーリング部17aの高さによってワイヤ14は締付けられずにバーリング部17aの外周を自由に回転することができる。なお、フック板17には横杆15に突設された突起15aを通すための溝付孔17bが設けられて、横杆15の軸を中心に回転可能に遊嵌されている。また、張出し部16おけるフック板17の両側には例えば塩化ビニル製チューブ等にて形成される筒状の移動防止体20,20が装着されてワイヤ14の水平方向の移動が防止されている。なおこの場合、移動防止体20は横杆15への取付けを容易にするために、片側をVカットしたスリット20aが設けられている。
【0024】また、横杆15の連結端部には外側縦桟6aに設けられた小判形孔23に嵌合する小判形軸部22aが設けられ、この小判形軸部22aの先端にはねじ軸22bが設けられている。このように形成される横杆15の小判形軸部22aは、外側縦桟6aの小判形孔23内に挿入され、ねじ軸22bに座金24を介してナット25をねじ結合することにより、外側縦桟6aと一体に固定される。なお、内側縦桟6aはスライドカラー26及び座金27を介して横杆15を嵌合している。すなわち、内側縦桟6a、スライドカラー26及び座金27は外側縦桟6aと突起15aとの間に挾持されて、軸方向のずれが規制された状態となっている。したがって、内側縦桟6aは横杆15の軸を中心に回転することができるため、伸縮体6cは折畳み可能となる。このように構成することにより、張出し部16は梯子6の伸長状態及び降下あるいは引上げ状態時には、梯子6の傾斜角に沿う下方側に位置し(図1及び図7参照)、また、梯子6の収納時には、上記下方側位置から90°の向きすなわち張出し部16が緩降機7の直下に位置するように固定される(図4参照)。
【0025】なお、上記説明では、横杆15が内側縦桟6aに対して回転可能に連結され、外側縦桟6aは回転不能に連結される場合について説明したが、必ずしもこのような構造である必要はなく、逆に外側縦桟6aを横杆15に対して回転可能に連結し、内側縦桟6aを横杆に回転不能に連結してもよい。
【0026】一方、上方蓋3の裏面側の中央部には手掛け部3aが突設され、下方蓋4の自由端側には、梯子6の降下及び引上げ時に梯子6との接触による損傷を防止するためのプラスチック製の緩衝部材4aが取付けられている。
【0027】上記のように構成されるこの発明の梯子取付構造を有する避難装置において、梯子6を降下させる場合は、緩降機7の図示しないストッパ機構を解除すれば、梯子6は緩降機7による制御機構によって制御されつつ降下して階下の床もしくはその付近まで梯子6は伸長する。このとき、梯子6の最上部の縦桟6aがブラケット9の傾斜状支持片9cに当接して梯子6は下端が躯体壁から離れた傾斜状に支持されると共に、横杆15の張出し部16が梯子6の傾斜角に沿う下方位置におかれるので、ワイヤ14は梯子6の伸長方向と平行な状態となる。
【0028】また、梯子6を収納するには、図示しない巻取ドラムの巻上げハンドルによって巻取ドラムを巻取方向に回転すれば、ワイヤ14が巻き取られ、梯子6の伸長状態が徐々に収縮されて隣接する縦桟6a,6a同士が接触した状態で収納される。このとき、横杆15の張出し部16は緩降機7の直下に位置し、ワイヤ14は完全に巻き取られた状態となる(図4参照)。したがって、梯子6の収納が確実となり、梯子6の収納状態が安定する。
【0029】なお、上記実施例ではブラケット9に設けた傾斜状支持片9cによって伸長時の梯子6の傾斜状態を維持しているが、必ずしもこのような構造とする必要はなく、例えば梯子6の縦桟6aに突設した当接部材を収納枠2の側壁部材2c等に当接させるような構造としてもよい。
【0030】
【発明の効果】以上に説明したように、この発明の避難装置の梯子取付構造によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0031】1)請求項1記載の梯子取付構造によれば、梯子の下端側の縦桟間に連結される横杆の中央部に設けられた張出し部に、緩降機に引出し及び巻取可能に巻回される索条の端部を回転可能に繋着するので、梯子の収納状態において、緩降機の直下位置に張出し部を位置させることができで、索条を完全に巻き取った状態で梯子を折畳むことができると共に、梯子の収納状態を安定することができる。
【0032】2)請求項2記載の梯子取付構造によれば、張出し部における索条の両側に、索条の水平方向の移動防止体を装着するので、梯子の降下及び引上げ時に索条の水平移動が防止でき、梯子の降下及び収納を安定させることができる。
【0033】3)請求項3記載の梯子取付構造によれば、横杆の連結端部を内側縦桟と外側縦桟のいずれか一方に回転不能に連結すると共に、他方を回転可能に連結するので、構成部材の削減が図れると共に、組立工数の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の梯子取付構造を有する避難装置の使用状態を示す斜視図である。
【図2】図1の側断面図である。
【図3】この発明における梯子の収納状態を示す断面図である。
【図4】梯子の収納状態を示す斜視図である。
【図5】梯子の収納枠への取付状態を示す斜視図である。
【図6】この発明における横杆と索条の取付状態を示す分解斜視図である。
【図7】梯子の降下及び引上げ状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
2 収納枠
6 梯子
6a 縦桟
7 緩降機
9 ブラケット(取付具)
9b 取付部
9c 傾斜状支持片
10 枢支軸
14 ワイヤ(索条)
15 横杆
16 張出し部
20 移動防止体
21 矩形孔
22a 矩形軸
22b ねじ軸
23 取付孔
25 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】 床、ベランダ等のスラブに穿設された孔部に取付けられる収納枠と、この収納枠内に折畳まれて収納されると共に、階下の床若しくはその付近まで傾斜状に伸長するパンタグラフ式の梯子と、避難時に上記梯子の降下を開始し、梯子の伸長降下を制御し、かつ梯子を引上げ収納する緩降機とを具備する避難装置において、上記梯子の最上部の縦桟を上記収納枠内に回転可能に枢着し、上記梯子の下端側の縦桟間に連結される横杆の中央部に張出し部を設けると共に、この張出し部と上記緩降機に引出し及び巻取可能に巻回される索条の端部とを回転可能に繋着してなることを特徴とする避難装置の梯子取付構造。
【請求項2】 横杆の張出し部における索条の両側に、索条の水平方向の移動防止体を装着してなることを特徴とする請求項1記載の避難装置の梯子取付構造。
【請求項3】 横杆の連結端部を内側縦桟と外側縦桟のいずれか一方に回転不能に連結すると共に、他方に対して回転可能に連結してなることを特徴とする請求項1記載の避難装置の梯子取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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