避難誘導装置
【課題】メンテナンスを簡略化できると共に避難者の避難目標にできる避難誘導装置を提供すること。
【解決手段】想定される浸水深よりも高い位置にある避難場所(建築物B)の上方に支柱7が立設され、支柱7の上端側に警告灯9aが配置される。津波、洪水、高潮による浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことが検出されると警告灯9aが点灯または点滅されるので、避難の必要性が報知される。その結果、警告灯9aを避難目標にして避難者を避難場所に誘導できる。さらに、避難場所への避難経路に沿って避難誘導装置を設置する場合と比較して、一つの避難場所に対する避難誘導装置1の設置数を大幅に削減できるので、避難誘導装置1のメンテナンスを簡略化できる。
【解決手段】想定される浸水深よりも高い位置にある避難場所(建築物B)の上方に支柱7が立設され、支柱7の上端側に警告灯9aが配置される。津波、洪水、高潮による浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことが検出されると警告灯9aが点灯または点滅されるので、避難の必要性が報知される。その結果、警告灯9aを避難目標にして避難者を避難場所に誘導できる。さらに、避難場所への避難経路に沿って避難誘導装置を設置する場合と比較して、一つの避難場所に対する避難誘導装置1の設置数を大幅に削減できるので、避難誘導装置1のメンテナンスを簡略化できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難者を避難場所へ誘導するための避難誘導装置に関し、特に、メンテナンスを簡略化できると共に避難者の避難目標にできる避難誘導装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
津波や高潮、洪水、大雨による土砂災害(斜面崩壊)等から身を守るには、高台(周囲より高い土地や人工構造物)に避難することが原則である。しかし、高台までの避難に相当の時間を要する平野部や、背後に避難に適さない急峻な地形が迫る集落等では避難場所の確保が容易ではない。また、地震発生から津波到達までの時間的余裕が極めて少なく、高台へ避難するための十分な時間を確保できない地域も多い。
【0003】
そこで、そのような地域や集落等では、堅固なマンションやホテル、ビル等の中・高層建物(建築物)を避難ビル(一時的な避難場所)として活用することが考えられる。また、避難ビルの対象となる施設が周辺にない場合には、想定される最大浸水深よりも高い位置にある高速道路のサービスエリア・パーキングエリアや「道の駅」、鉄道駅舎等の既存の公共施設を一時的な避難場所として活用することも考えられる。
【0004】
このような避難ビルや高台等の避難場所に避難者を誘導するための避難誘導装置が知られている。例えば特許文献1には、避難場所が表示される表示板と、夜間における視認性を向上するために発光する発光部とを備え、避難場所への避難経路に設置されるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−226689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来の技術では、避難誘導装置は避難場所への避難経路に設置されるので、避難経路を避難者が見失わないように、避難経路に沿って十分な数の避難誘導装置を設置しなければならない。避難場所の周辺に相当数の避難誘導装置が設置されることになるため、避難誘導装置ごとに行うメンテナンスに多大な手間とコストとを要するという問題点があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、メンテナンスを簡略化できると共に避難者の避難目標にできる避難誘導装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
この目的を達成するために、請求項1記載の避難誘導装置によれば、1乃至複数の支柱が、想定される浸水深よりも高い位置にある避難場所もしくは斜面崩壊が想定される地域の外側に位置する避難場所に設置される。又は、それら避難場所の上方に支柱が設置される。その支柱の上端側に警告灯が配置されると共に支柱の上端側に発煙口が設けられ、その発煙口から発煙可能に発煙部が構成される。
【0009】
津波、洪水、高潮による浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことが検出手段により検出されると、警告灯発光手段により警告灯は点灯または点滅されると共に、発煙手段により発煙口から発煙される。警告灯および発煙口は支柱の上端側に配置されているので、警告灯を点灯または点滅させると共に発煙口から発煙させることにより、津波、洪水、高潮による浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いこと(避難の必要があること)を、避難場所の周囲の人に報知できる。警告灯および発煙口が設けられた支柱は避難場所または避難場所の上方に設置されるので、警告灯および煙を避難目標にして避難者を避難場所に誘導できる効果がある。
【0010】
また、発煙部は発煙口から煙を吹き上げるので、警告灯に比べて、より遠方の住民や就業者等に煙を視認させることができる。これにより、誘導される避難者のいる範囲を広げ、警告灯だけを避難目標にして誘導される避難者の数より、多数の避難者を避難場所に誘導できる効果がある。
【0011】
さらに、避難場所への避難経路に沿って避難誘導装置を設置する場合と比較して、一つの避難場所に対する避難誘導装置の設置数を大幅に削減できる。避難誘導装置の設置数を削減できるので、避難誘導装置のメンテナンスを簡略化できる効果がある。
【0012】
請求項2記載の避難誘導装置によれば、発煙口は警告灯より高い位置に設置されているので、発煙口から吹き上げた煙によって警告灯が視認され難くなることが防止される。これにより、請求項1の効果に加え、発煙部が吹き上げた煙および警告灯の両方を同時に視認可能にできる効果がある。
【0013】
請求項3記載の避難誘導装置によれば、空気導入部から発煙部に空気が取り入れられ、発煙部に取り入れられた空気が送風手段により発煙口に送られる。これにより、発煙部から発煙口に向かう煙の速度を大きくすることができる。そのため、発煙口から出た煙が横方向に拡散することを防ぎ、発煙口から煙を上昇させることができる。警告灯より高い位置まで煙を立ち昇らせることができるので、請求項1又は2に記載の効果に加え、煙の被視認性を向上できる効果がある。
【0014】
請求項4記載の避難誘導装置によれば、支柱の下端側に設けられた空気導入部から導入された空気は、支柱の内部の送風路を通って発煙部へ送られる。支柱の下端側に空気導入部が設けられているので、支柱の上端側に空気導入部が設けられる場合と比較して、空気導入部の位置を低くできる。よって、請求項3の効果に加え、空気導入部のメンテナンスを容易にできる効果がある。
【0015】
請求項5記載の避難誘導装置によれば、支柱は、機械的接合手段により複数の管状体が長手方向に連接されている。そのため、避難誘導装置の設置場所にばらばらの状態で複数の管状体を運び込んだ後、その設置場所で、機械的接合手段により管状体を連接して支柱を組み立て、避難誘導装置を設置できる。また、管状体なので、材質および外径が同じ中実の部材(棒材)と比較して軽量化できる。よって、請求項1から4のいずれかの効果に加え、管状体の搬送性や支柱の組立作業性を向上できる効果がある。
【0016】
請求項6記載の避難誘導装置によれば、支柱に配置される表示灯は、検出手段により浸水または斜面崩壊の発生の可能性が低下したことが検出された場合に、警告灯とは異なる色で表示灯発光手段により表示灯が点灯または点滅される。避難場所に避難した避難者は、表示灯の点灯または点滅により、浸水または斜面崩壊の発生の可能性が低下したことがわかる。避難した避難者に、表示灯が点灯または点滅するまでは避難場所に留まろうと思わせることができるので、請求項1から5のいずれかの効果に加え、浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いときに、避難者が避難場所から離れて遭難することを防止できる効果がある。
【0017】
また、避難誘導装置を避難目標にして避難場所に向かう避難者に対して、表示灯の点灯または点滅により、浸水または斜面崩壊の発生の可能性が低下したことを報知できる。その結果、請求項1から5のいずれかの効果に加え、避難場所に向かう避難者に、表示灯の点灯または点滅により安心感を与えることができると共に、表示灯を避難目標にして避難場所に誘導できる効果がある。
【0018】
請求項7記載の避難誘導装置によれば、支柱は、避難場所となる建築物の出入口が形成された壁面、避難場所となる建築物の出入口が形成された壁面近くの屋上、又は避難場所となる高台の昇降口に通じる通路に設置されるので、警告灯を避難目標にすれば、避難者は、避難場所となる建築物の出入口や高台の昇降口に誘導される。
【0019】
ここで、建築物や高台の水平投影面積が大きい場合、出入口や昇降口から離れた位置に警告灯が配置されていると、警告灯を避難目標にした避難者は、建築物や高台に到達した後、今度は出入口や昇降口を探すために建築物や高台の周囲を歩かなければならない。避難者は、建築物や高台に到達しているのに、出入口や昇降口を探す間に遭難する可能性がある。
【0020】
これに対し、出入口が形成された建築物の壁面等に警告灯を設置することによって、警告灯を避難目標にして、避難者を建築物の出入口や高台の昇降口に誘導できる。その結果、請求項1から6のいずれかの効果に加え、避難者を、建築物の出入口や高台の昇降口からスムーズに避難場所に導くことができる効果がある。
【0021】
請求項8記載の避難誘導装置によれば、時刻取得手段により現在の時刻が取得され、時刻取得手段により取得された時刻が昼間の時間帯であるか時間帯判断手段により判断される。判断の結果、昼間の時間帯である場合に発煙部より発煙される。発煙されるのが昼間の時間帯であるので、煙の被視認性を確保することができ、請求項1から7のいずれかの効果に加え、発煙によって多数の避難者を避難場所に誘導できる効果がある。
【0022】
請求項9記載の避難誘導装置によれば、照度検出手段により照度が検出され、照度検出手段により検出された照度が所定の照度以上であるか照度判断手段により判断される。判断の結果、所定の照度以上である場合に発煙部より発煙される。発煙されるのが所定の照度以上のときであるので、煙の被視認性を確保することができ、請求項1から8のいずれかの効果に加え、発煙によって多数の避難者を避難場所に誘導できる効果がある。
【0023】
請求項10記載の避難誘導装置によれば、検出手段により浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことが検出された場合に、発音手段により音響が発生されるので、浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことを音響により報知させることができ、避難者の注意を喚起できる。これにより、請求項1から9のいずれかの効果に加え、警告灯に加えて音響が発生されることにより、避難者の避難場所への誘導効果を向上できる効果がある。
【0024】
加えて、発音手段により音響が発生された時間が所定時間以上であるか発音判断手段により判断される。音響が発生された時間が所定時間以上であれば、ある程度の数の避難者が避難場所に到達していると考えられる。避難場所から離れた地点にいる避難者は音響も避難目標となるが、避難場所にいる避難者は音響が騒音となる。これを防止するため、音響が発生された時間が所定時間以上であると発音判断手段により判断された場合に、発音停止手段により発音手段による音響の発生が停止される。その結果、請求項1から9のいずれかの効果に加え、音響が避難場所にいる避難者の騒音となることを防止し、避難者の快適性が損なわれることを防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施の形態における避難誘導装置の斜視図である。
【図2】避難誘導装置が屋上に設置された建築物の斜視図である。
【図3】避難誘導装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図4】警報判断処理を示すフローチャートである。
【図5】第2実施の形態における避難誘導装置の斜視図である。
【図6】避難誘導装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図7】警報判断処理を示すフローチャートである。
【図8】発煙判断処理を示すフローチャートである。
【図9】第3実施の形態における避難誘導装置の斜視図である。
【図10】警報部の斜視図である。
【図11】警報部の一部を切断して示した図10のXI−XI線における傾斜面部、中間部および煙道部の部分断面図である。
【図12】(a)は第4実施の形態における避難誘導装置の一部を切断して示した傾斜面部、中間部および煙道部の部分断面図であり、(b)は支柱の下端側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1から図4を参照して第1実施の形態について説明する。図1は本発明の第1実施の形態における避難誘導装置1の斜視図である。図1に示すように、避難誘導装置1は、台部2と、その台部2に立設される支柱7と、その支柱7の上端側に配置される警告灯9aとを主に備えて構成されている。
【0027】
台部2は、避難場所または避難場所の上方(以下「設置場所」と称す)に設置される部材であり、避難場所としては、津波、洪水、高潮によって想定される最大浸水深より高い位置にある場所、大雨による斜面崩壊(土砂崩れ)が想定される地域の外側に位置する場所が挙げられる。避難場所を具体的にすれば、例えば、高台(周囲より高い土地や人工構造物);堅固なマンションやホテル、ビル等の中・高層建物(建築物);高速道路のサービスエリア・パーキングエリアや「道の駅」、鉄道駅舎等の公共施設等を挙げることができる。
【0028】
台部2は、平面視して方形状の平板で形成された基盤3と、その基盤3の上面に固着された箱型の本体4と、その本体4の4つの側面に側部が固着されると共に基盤3の上面に底部が固着される略三角形の板状に形成された複数の補強板5とを備えている。基盤3と本体4との間に補強板5が固着されているので、支柱7を支持する本体4の耐風強度を向上できると共に避難誘導装置1の耐震性を確保できる。
【0029】
基盤3は、避難場所等の設置場所に固定される金属製の板材であり、設置場所に立設されたスタッドボルト(図示せず)が挿通される孔部3aが穿設されている。避難誘導装置1は避雷設備を備えており、基盤3に突針6が突設されている。突針6は、避雷導線および接地極(いずれも図示せず)により大地に電気的に接続されている。突針6の高さ(基盤3からの突出長さ)は、支柱7及び警告灯9aの高さより大きくなるように設定されている。避難誘導装置1は避雷設備を備えているので、雷撃によって警告灯9aや制御装置(後述する)等が破損することを防止できる。
【0030】
本体4は、制御装置(後述する)を内部に収容すると共に支柱7を支持するための部材であり、アンテナ8aが突設されている。アンテナ8aは、放送局から発せられる緊急警報信号等の警報信号を受信するための装置である。支柱7は、台部2に立設されると共に警告灯9aが上端側に配置される部材であり、本実施の形態では略円筒状に形成されており、上端に警告灯9aが配置され、警告灯9aの下部に表示灯10aが配置されている。避難誘導装置1が設置される避難場所(避難場所の地上高や周囲の状態)に応じて、警告灯9a及び表示灯10aの被視認性を確保できるように、支柱7の長さが適宜設定される。
【0031】
警告灯9aは、避難の必要があることを報知するための装置であり、災害等の異常時に点灯または点滅する。本実施の形態では、赤色LEDを光源とする回転灯として構成されている。表示灯10aは、避難の必要がないことを報知するための装置であり、通常時または警報の解除時に点灯または点滅する。通常時に表示灯10aを点灯または点滅させることにより、避難誘導装置1が設置された避難場所の位置を周知させることができる。なお、本実施の形態では、表示灯10aは、警告灯9aとは異なる色の青色LEDを光源とする回転灯として構成されている。
【0032】
避難誘導装置1は、商用電源11(外部電源)及び蓄電池13の2系統の電源を使用できるように構成されている。第1変換装置12は、蓄電池13を充電するために商用電源11(交流)を直流に変換するための装置であり、蓄電池13は、第1変換装置12により直流に変換された電力により充電される。蓄電池13は太陽電池14が接続されているので、商用電源11が喪失したとき(停電時)でも、日照があれば太陽電池14により充電される。
【0033】
第2変換装置15は、第1変換装置12により直流に変換された電力を交流に変換して警告灯9aや制御装置(後述する)等に供給するための装置である。なお、第2変換装置15は、商用電源11が喪失したとき(停電時)に、蓄電池13の放電電流(直流)を交流に変換して警告灯9aや制御装置等に供給する。これにより、商用電源11が喪失したときも警告灯9aの点灯等を行うことができるので、避難者を誘導するための信頼性を確保できる。
【0034】
次に図2を参照して、一時的な避難場所に指定された建築物Bに避難誘導装置1が設置される状態について説明する。図2は避難誘導装置1が屋上に設置された建築物Bの斜視図である。なお、図2では、理解を容易にするため、建築物Bの壁面B1に形成される窓等の図示を省略している。
【0035】
図2に示すように、避難誘導装置1は、鉄筋コンクリート等で構成された中・高層建物(建築物B)の屋上に設置されている。この建築物Bは、想定される最大浸水深よりも高い位置にある高層階を有し、その高層階につながる内部階段または外部階段に通じる出入口B2が壁面B1に形成されている。避難誘導装置1は、建築物Bの出入口B2が形成された壁面B1近くの屋上B3に台部3(図1参照)が設置されることで立設されている。
【0036】
その結果、警告灯9aを避難目標にすれば、避難者は避難場所となる建築物Bの出入口B2に誘導される。建築物Bの水平投影面積が大きい場合、出入口B2から離れた位置に警告灯9aが配置されていると、警告灯9aを避難目標にした避難者は、建築物Bに到達した後、今度は出入口B2を探すために建築物Bの周囲を歩かなければならない。津波が迫っている場合には、出入口Bを探す間に避難者が遭難する可能性がある。これを防止するため、出入口B2が形成された建築物Bの壁面B1近くの屋上B3に警告灯9aを設置することによって、避難誘導装置1の被視認性を確保して、建築物Bの出入口B2から避難者をスムーズに避難場所に導くようにできる。
【0037】
なお、避難誘導装置1は台部2に支柱7を立設する構成とすることにより、台部2の水平投影面積を小さくできるので、壁面B1近くの屋上B3のような狭いスペースにも設置することが可能となる。
【0038】
次に図3を参照して、避難誘導装置1の電気的構成について説明する。図3は避難誘導装置1の電気的構成を示したブロック図である。避難誘導装置1は、図3に示すように、警告灯9a等の装置が接続された制御装置20を備えている。制御装置20は、CPU21、ROM22及びRAM23を備え、それらがバスライン24を介して入出力ポート25に接続されている。また、入出力ポート25には、警告灯9a等の装置が接続されている。
【0039】
CPU21は、バスライン24により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM22は、CPU21により実行される制御プログラム(例えば、図4に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。RAM23は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。受信装置8は、アンテナ8aが受信した警報信号を検出すると共に、その検出結果をCPU21に出力するための装置であり、アンテナ8aによる検出結果を処理してCPU21に出力する出力回路(図示せず)を備えて構成されている。
【0040】
警告灯装置9は、警告灯9aを点灯するための装置であり、警告灯9aと、その警告灯9aをCPU21からの指示に基づいて駆動制御する制御回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。表示灯装置10は、表示灯10aを点灯するための装置であり、表示灯10aと、その表示灯10aをCPU21からの指示に基づいて駆動制御する制御回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。発音装置30は、警告灯9aを避難目標にする旨(例えば「ここへ逃げなさい」等)の音声案内やサイレン等の警報音(音響)を発音するための装置であり、CPU21からの指示に基づいて音声案内や警報音の電気信号を出力する出力回路および増幅装置(いずれも図示せず)と、その電気信号を音声案内や警報音に変換するスピーカ30aとを主に備えて構成されている。
【0041】
充電状態検出装置31は、蓄電池13(図1参照)の電圧および電流を検出すると共に、その検出結果をCPU21に出力するための装置であり、蓄電池13の電圧および電流を検出する電圧センサ及び電流センサ(いずれも図示せず)と、それら電圧センサ及び電流センサの検出結果を処理してCPU21に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。CPU21は、充電状態検出装置31による検出結果により、商用電源11や太陽電池14による蓄電池13の充電を停止する。これにより蓄電池13の過充電を防止できる。
【0042】
商用電力検出装置32は、商用電源11(図1参照)の電圧および電流を検出すると共に、その検出結果を出力するための装置であり、第2変換装置15に内蔵されている。商用電力検出装置32は、商用電源11の電圧および電流を検出するセンサ(図示せず)と、そのセンサの検出結果を処理して第2変換装置15に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。第2変換装置15は、商用電力検出装置32の検出結果に基づいて、蓄電池13の放電電流の大きさを切り換える。即ち、商用電源11が正常に供給されているときには、蓄電池13の放電電流を小さくすることで蓄電池13を充電し、商用電源11を喪失したときには、蓄電池13の放電電流を大きくすることで、蓄電池13により制御装置20や警告灯装置9等を作動させる。
【0043】
計時装置33は、現在の時刻を報知し時間を計測するための装置であり、CPU21からの指示に基づいて時間を計測する計時回路(図示せず)と、その計時回路により計測された時間を処理してCPU21に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。
【0044】
次いで図4を参照して、警報判断処理について説明する。図4は警報判断処理を示すフローチャートである。この処理は、避難誘導装置1の電源が投入されている間、CPU21によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、避難を必要とする警報発令の状態を判断して、警告を報知する処理である。
【0045】
CPU21は、警報判断処理に関し、まず、警告灯9aは点灯しているか否かを判断し(S1)、警告灯9aが消灯していると判断される場合には(S1:No)、次に警報が発令されているか否かを判断する(S2)。なお、この処理は受信装置8からの出力に基づいて判断される。その結果、警報が発令されていると判断される場合には(S2:Yes)、警告灯装置9を作動して警告灯9aを点灯する(S3)。これにより避難者の誘導が開始される。さらに、発音装置30を作動してスピーカ30aから発音を開始し(S4)、発音(音響)により避難者の注意を喚起し避難を促す。次いでS6の処理を実行する。
【0046】
一方、S1の処理の結果、警告灯9aが点灯していると判断される場合には(S1:Yes)、次に警報が発令されているか否かを判断する(S5)。その結果、警報が発令されていると判断される場合には(S5:Yes)、ROM22に記憶されている閾値(所定時間)と警報が発令されてから現在までの経過時間とを比較して、警報が発令されてから所定時間が経過したか否かを判断する(S6)。その結果、警報が発令されてから所定時間が経過したと判断される場合には(S6:Yes)、発音装置30からの発音を停止し(S7)、この警報判断処理を終了する。
【0047】
ここで、音響が発生された時間が所定時間以上であると判断される場合には(S6:Yes)、ある程度の数の避難者が避難場所(建築物B)に到達していると考えられる。避難場所から離れた地点にいる避難者は音響を避難目標にできるが、避難場所にいる避難者は音響が騒音となる。これを防止するため、S6及びS7の処理によって音響の発生が停止される。その結果、音響が避難場所にいる避難者の騒音となることを防止し、避難者の快適性が損なわれることを防止できる。
【0048】
一方、S5の処理の結果、警報が発令されていないと判断される場合には(S5:No)、警報が解除されて避難の必要性が低下したと考えられるので、警告灯9aを消灯し(S8)、代わりに表示灯10aを点灯する(S9)。次いで発音を停止して(S7)、この警報判断処理を終了する。これにより、避難した避難者に、表示灯10aが点灯するまでは避難場所に留まろうと思わせることができるので、警報発令中に避難者が避難場所から離れて遭難することを防止できる。また、避難誘導装置1を避難目標にして避難場所に向かう避難者に対して、表示灯10aの点灯により警報が解除されたことを報知できる。その結果、避難場所に向かう避難者に安心感を与えることができると共に、表示灯10aを避難目標にして避難場所に誘導できる。
【0049】
ここで、警報が解除されて避難の必要性が低下した場合に、表示灯10aの点灯(又は点滅)に代えて、警告灯9aを消灯することにより報知することは可能である。しかし、警告灯9aの消灯が、故障によるものなのか警報の解除によるものなのか判別できないという問題がある。また、警告灯9aを消灯すると、警告灯9aを目標にして避難場所を目指す人の目標(目印)が失われてしまうという問題がある。これに対し、表示灯10aを点灯(又は点滅)することにより、これらの問題を解決できる。
【0050】
避難誘導装置1は建築物Bの屋上B3(高所)に立設され、支柱7の長さは建築物Bの高さを考慮して設定される。例えば、建築物Bを中心とする半径1km程度の範囲内の避難者に、警告灯9a及び表示灯10aが視認可能となるように設定される。その結果、避難場所への避難経路に沿って避難誘導装置を設置する場合と比較して、一つの避難場所に対する避難誘導装置1の設置数を大幅に削減できる。避難誘導装置1の設置数を削減できるので、避難誘導装置1のメンテナンスを簡略化できると共に、避難誘導装置1の設置コストを削減できる。
【0051】
なお、図4に示すフローチャート(警報判断処理)において、請求項1記載の警告灯発光手段としてはS3の処理が、請求項6記載の表示灯発光手段としてはS9の処理が、請求項10記載の発音手段としてはS4の処理が、発音判断手段としてはS6の処理が、発音停止手段としてはS7の処理がそれぞれ該当する。
【0052】
次に、図5から図8を参照して第2実施の形態について説明する。第2実施の形態では、発煙装置103を備える避難誘導装置101について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5は本発明の第2実施の形態における避難誘導装置101の斜視図である。なお、図5では避難誘導装置101の電源系(商用電源11から第2変換装置15(図1参照))の図示を省略している。
【0053】
図5に示すように、避難誘導装置101は、台部2に立設された支柱7に広告表示部102及び発煙筒103aが配置されている点で、避難誘導装置1と相違する。広告表示部102は、避難誘導装置101や避難場所(建築物B)を提供する企業等の広告を表示するための部位であり、支柱7の一部に設けられている。広告表示部102を設けることにより、災害発生時以外においても避難誘導装置101を有効に活用できる。
【0054】
発煙筒103aは、先端103bに形成される発煙口から煙を吹き上げて被視認性を高めるための装置であり、支柱7に設置された警告灯9aより先端103b(発煙口)が高い位置に設置されている。先端103b(発煙口)を警告灯9aより高い位置に設置することで、発煙筒103が吹き上げた煙によって警告灯9aの被視認性が低下することが防止される。その結果、発煙に妨げられることなく警告灯9aを避難目標にすることができる。
【0055】
次に図6を参照して、避難誘導装置101の電気的構成について説明する。図6は避難誘導装置101の電気的構成を示したブロック図である。発煙装置103は、発煙筒103aを点火し発煙させるための装置であり、発煙筒103aと、その発煙筒103aを点火するためにCPU21からの指示に基づいて駆動制御する制御回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。
【0056】
照度検出装置104は、避難誘導装置101の周囲の照度を検出すると共に、その検出結果をCPU21に出力するための装置であり、照度を検出する照度センサ104aと、その照度センサ104aの検出結果を処理してCPU21に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。
【0057】
次いで図7を参照して警報判断処理について説明し、図8を参照して発煙判断処理について説明する。図7は警報判断処理を示すフローチャートであり、図8は発煙判断処理を示すフローチャートである。図7に示すように、CPU21は、S2の処理において警報が発令されているか否かを判断し(S2)、警報が発令されていると判断される場合には(S2:Yes)、発煙判断処理(S10)を実行する。
【0058】
図8に示す発煙判断処理(S10)において、CPU21は現在の時刻を取得し(S11)、現在の時刻は昼間時間(昼間の時間帯)であるか否かを判断する(S12)。なお、昼間の時間帯(ある程度の照度を期待できる時間帯)は、避難誘導装置101が設置された地点の緯度および経度、現在の月日(天球上の太陽の位置)によって変化するので、これらに基づいて演算し設定される。
【0059】
S12の処理の結果、現在の時刻が昼間の時間帯であると判断される場合には(S12:Yes)、ROM22に記憶されている閾値(所定の照度)と現在の照度とを比較して、照度が所定の照度以上であるか否かを判断する(S13)。照度が所定の照度以上であると判断される場合には(S13)、煙の被視認性は良好であると考えられるため、発煙装置103を作動して発炎筒103aに点火し(S14)、発煙を開始する。次いで、警告灯装置9を作動して警告灯9aを点灯し(S15)、発音装置30を作動して発音を開始する(S16)。これにより、避難者を警告灯9aによって避難場所に誘導するだけでなく、発煙によって誘導することができる。発煙筒103aは煙を吹き上げるので、警告灯9aに比べて、より遠方の住民や就業者等に煙を視認させることができる。これにより、誘導される避難者のいる範囲を広げ、警告灯9aを避難目標にして誘導される避難者の数より、多数の避難者を避難場所に誘導できる。
【0060】
一方、S12の処理の結果、時刻が昼間時間(昼間の時間帯)でないと判断される場合には(S12:No)、夜間等であって煙の被視認性は悪いと考えられるため、S13及びS14の処理をスキップして、警告灯9aを点灯し(S15)、発音を開始する(S16)。また、S12の処理の結果、時刻が昼間時間(昼間の時間帯)であると判断された場合であっても(S12:Yes)、照度が所定の照度以上でないと判断される場合には(S13:No)、天候の影響等により煙の被視認性は悪いと考えられるため、S14の処理をスキップして、警告灯9aを点灯し(S15)、発音を開始する(S16)。
【0061】
以上のように、時刻や天候等の影響によって煙の被視認性が悪いと考えられる場合に発煙を禁止することにより、警告灯9aや表示灯10aの周りに煙が立ち込めることによって警告灯9aや表示灯10aの被視認性が低下することを未然に防止できる。特に、照度が所定の照度以上でないと判断される場合は(S13:No)、昼間の時間帯であっても天候の影響等により煙の被視認性が悪いと考えられる場合である。このような場合に発煙筒103aの点火を禁止するので、警告灯9aや表示灯10aの周りに煙が立ち込めることによって警告灯9aや表示灯10aの被視認性が低下することを未然に防止できる。
【0062】
また、警告灯9aからの発光に加え発煙装置103から発煙するので、避難誘導効果を向上できる。発光は航空障害灯など様々な所でみられるが、発煙は火災でも起こらない限り生じないからである。その結果、発煙により避難者の注意を喚起しつつ、発光および発音により避難者を避難誘導装置101へ誘導することができる。
【0063】
なお、図7に示すフローチャート(警報判断処理)において、請求項6記載の表示灯発光手段としてはS9の処理が、請求項10記載の発音判断手段としてはS6の処理が、発音停止手段としてはS7の処理がそれぞれ該当する。図8に示すフローチャート(発煙判断処理)において、請求項1記載の警告灯発光手段としてはS15の処理が、発煙手段としてはS14の処理が、請求項8記載の時刻取得手段としてはS11の処理が、時間帯判断手段としてはS12の処理が、請求項9記載の照度判断手段としてはS13の処理が、請求項10記載の発音手段としてはS16の処理がそれぞれ該当する。
【0064】
次に、図9から図11を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、支柱7が一体的に形成された場合を説明した。これに対し第3実施の形態では、支柱205が、複数の管状体206を連接することにより組み立てられる場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図9は第3実施の形態における避難誘導装置201の斜視図である。図9に示すように、避難誘導装置201は、台部201と、その台部201に立設される支柱205と、その支柱205の上端に連結される警報部210とを主に備えて構成されている。
【0065】
台部202は、避難場所または避難場所の上方(避難誘導装置201の設置場所)に設置される部材であり、平面視して方形状の平板で形成された基盤203と、その基盤203の上面に固着された円筒状の本体204とを備えている。本体204は、制御装置(図示せず)を内部に収容すると共に支柱205を支持するための部材であり、開閉扉(図示せず)が配設されている。その開閉扉を開けて、本体204に収容された制御装置のメンテナンスを行うことができる。
【0066】
支柱205は、台部202に立設されると共に警報部210が上端側に配置される長尺の部材である。支柱205は、1〜3m程度の長さの略円筒状に形成された管状体206(鋼管)を複数(本実施の形態では3本)長手方向に連接して組み立てられている。管状体206は、軸方向(図9上下方向)の両端に円環状のフランジ207が径方向に突設されている。フランジ207は、孔部(図示せず)が軸方向に貫通形成されている。その孔部を連ねるようにフランジ207同士を突き合わせ、ボルト及びナット(締結部材)等の機械的接合手段により管状体206を連結する。複数の管状体206を長手方向に連接して支柱205が作られるので、管状体206の本数や長さを適宜選択することにより、支柱205の長さを適宜設定することができる。
【0067】
なお、管状体206は、棒状の足場部208が外周面の径方向両側に所定の間隔をあけて突設されている。足場部208は、警報部210のメンテナンスを行うときに、支柱205の昇り降りに用いられる部材である。
【0068】
避難誘導装置201を設置する場合には、台部202、管状体206及び警報部210を設置場所にばらばらの状態で運び込む。避難誘導装置201を台部202、管状体206及び警報部210に分解した状態にできるので、人手によって搬送することを可能にできる。また、管状体206は、材質および外径が管状体と同じ中実の部材(棒材)と比較して軽量化できるので、搬送性を向上できる。台部202、管状体206及び警報部210を、作業者がエレベータを使って避難ビルの屋上の設置場所に運び上げることも可能である。
【0069】
台部202、管状体206及び警報部210を設置場所に運び込んだ後、作業者は、アンカーボルト(図示せず)等を用いて台部202(基盤203)を設置場所に取り付ける。一方、支柱205は、管状体206のフランジ207同士を突き合わせ、締結部材(機械的接合手段)によりそれらを連結することにより組み立てる。支柱205の端部(上端)に位置する管状体206には、フランジ207を用いて警報部210を連結する。最後に、クレーン等を使って、警報部210が連結された支柱205を台部202の上方に吊り上げ、台部202の軸方向上端部のフランジに管状体206のフランジ207を突き合わせる。それらフランジ間を機械的接合手段により連結して、避難誘導装置201を設置できる。
【0070】
なお、台部202(基盤203)を設置場所に取り付け、さらに機械的接合手段により台部202に管状体206を連結した後、その管状体206の足場部208に作業者が手足を掛けて管状体206を昇り、別の管状体206を突き合わせて機械的接合手段により連結していくことは可能である。この場合、最後に支柱205(管状体206)の上端に警報部210を機械的接合手段により連結して、避難誘導装置201を設置できる。
【0071】
次に図10を参照して、支柱205の上端に連結される警報部210について説明する。図10は警報部210の斜視図である。警報部210は、発音のためのスピーカ213、発光のための警告灯216、及び、発煙のための煙道部221を備える部位である。スピーカ213は、避難誘導のための音声案内や警報音等を拡声するための装置であり、警告灯216は、避難の必要があることを報知するための装置である。スピーカ213及び警告灯216は管状体211,214にそれぞれ配設されている。
【0072】
管状体211,214は、金属製や合成樹脂製で筒状に形成された部材であり、円環状のフランジ212,215が管状体211,214のそれぞれの軸方向両端から径方向に突設されている。スピーカ213は、管状体211の外周面に径方向外側を向いて複数が放射状に配設されており、警告灯216も同様に、管状体214の外周面に径方向外側を向いて複数が放射状に配設されている。スピーカ213や警告灯216の電気配線等は、管状体211,214に内設されている。
【0073】
スピーカ213が配設された管状体211は、警告灯216が配設された管状体214が上に位置するように、フランジ212,215同士がボルト及びナット(図示せず)等により連結される。管状体211の他方(軸方向下側)のフランジ212は、支柱205(図9参照)を構成する上端の管状体206のフランジ207にボルト及びナット(図示せず)等により連結される。このように、スピーカ213が配設された管状体211及び警告灯216が配設された管状体214も、ボルト及びナット等の機械的連結手段により連結可能に構成されるので、避難誘導装置201の設置場所で管状体211,214を連結して警報部210を組み立てることができる。
【0074】
管状体214の上部には、平面視して方形状の基体部217が連結されている。基体部217は合成樹脂製や金属製の平板状の部材であり、四辺のそれぞれに傾斜面部218が連結されている。傾斜面部218は、側面視して上端(上底)より下端(下底)が長い略台形状に形成された平板状の部材である。4枚の傾斜面部218は、基体部217の四辺に下端(下底)が密着されると共に側辺同士が密着されている。これにより、基体部217及び傾斜面部218は略四角錐状に形成される。
【0075】
基体部217及び傾斜面部218の内側の空間には、後述する発煙筒226が配置される。また、傾斜面部218は管状体211,214の軸心に近づくにつれて上昇傾斜する4つの傾斜面を形成する。それら4つの傾斜面にはそれぞれ太陽電池パネル219が設置される。太陽電池パネル219は蓄電池13(図1参照)に接続されている。太陽電池パネル219が傾斜面部218の4面に沿って傾斜して設置されるので、太陽の方位および高度に関わらず、太陽光が太陽電池パネル219に照射されていれば発電量を確保できる。
【0076】
傾斜面部218の上端(上底)には、無底四角柱状に形成された中間部220が連結されている。中間部220は、傾斜面部218の内側に形成された空間と連通する空間が内部に形成されている。中間部220の上面には、円筒状に形成されると共に管状体211,214の軸方向に延びる煙道部221が接続されている。
【0077】
アンテナ222は、J−ALERT(全国瞬時警報システム)を利用した緊急情報等の警報信号を受信するための装置であり、煙道部221の軸方向に沿って傾斜面部218に立設されている。支持体223は、煙道部221の軸方向に沿って傾斜面部218に立設される部材である。支持体223の先端には、下斜めに向かって延びる伸縮装置224の一端が連結され、伸縮装置224の他端(先端)には蓋部225が連結されている。
【0078】
伸縮装置224は、軸状部材を直線的に往復動(伸縮)させるための装置であり、本実施の形態では電動シリンダにより構成されている。蓋部225は、煙道部221の先端(発煙口221a)を開閉するための部材であり、津波等の警報信号が発信されていない平常時には、伸縮装置224の伸長により蓋部225が煙道部221を閉鎖し、津波等の警報信号が発信された異常時には、伸縮装置224の収縮により蓋部225が煙道部221を開放する。平常時に蓋部225によって煙道部221が閉鎖されるので、煙道部221に雨や砂等が侵入したり鳥が侵入して巣を作ったりすることを防止できる。これにより、異常時(避難誘導装置201の作動時)に、煙道部221から発煙できなくなる不具合を回避できる。
【0079】
次に図11を参照して、警報部210の内部構造について説明する。図11は警報部210の一部を切断して示した図10のXI−XI線における傾斜面部218、中間部220及び煙道部221の部分断面図である。なお、図11では便宜上、アンテナ222、支持体223、伸縮装置224及び蓋部225の図示を省略している。
【0080】
図11に示すように、基体部217の略中央には、煙を吹き上げるための装置である発煙筒226が設置されている。基体部217は、板厚方向に貫通するスリット状の空気導入部217aが形成されている。空気導入部217aは、基体部217の下面に連結される管状体214のフランジ215(図示せず)と干渉しない位置(フランジ215によって塞がれない位置)に形成されている。従って、基体部217の下面に開放された空気導入部217aから、基体部217の上方の空間に空気を流通させることができる。また、空気導入部217aは基体部217の下面に開口しており、空気導入部217aの上方に傾斜面部218が位置するので、空気導入部217aからの雨水の浸入を抑制できる。
【0081】
発煙筒226の上方であって中間部220の内側には、送風装置227が設置されている。送風装置227は、上下方向(煙道部221の軸方向)に貫通する孔部227aが形成され、その孔部227a内に電動式のファン228が回転可能に配設されている。送風装置227は、発煙筒226の点火に連動して作動すると共に、送風装置227が作動してファン228が回転すると、孔部227aの下方から上方に向かう空気の流れが生じるように設定されている。
【0082】
従って、送風装置227が作動してファン228が回転すると、空気導入部217aからの吸気が傾斜面部218の傾斜面に沿って上昇し、孔部227a及び煙道部221を通過して発煙口221aから流出する。発煙筒226が吹き上げる煙はこの気流に運ばれるので、発煙筒226から発煙口221aに向かう煙の速度を大きくすることができる。そのため、内部に煙が籠って発煙口221aからの発煙量が少なくなることを防止できる。また、発煙口221aから出た煙が横方向に拡散することを防ぎ、発煙口221aから煙を上昇させることができる。
【0083】
よって、警告灯216(図10参照)より高い位置まで煙を立ち昇らせることができ、煙の被視認性を向上できる。発煙筒226が吹き出す煙の絶対量が少なくても煙を立ち上らせることにより煙の被視認性を向上できるので、発煙の絶対量の少ない小型の発煙筒226を採用することができ、装置の小型化を図ることができる。また、単位時間当たりの煙の発生量を少なくできれば、煙の生じる時間(発煙の持続時間)を長くすることができるので、避難者が煙を視認できる時間を長くできる。その結果、多くの避難者を発煙によって誘導できる。
【0084】
次に図12を参照して第4実施の形態について説明する。第3実施の形態では、発煙筒226の付近に電動式のファン228(送風装置227)を配置し、そのファン228を回転させることにより気流を形成して発煙口221aから煙を吹き出させる場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、ファン228(送風装置227)を省略した避難誘導装置301について説明する。なお、第3実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0085】
図12(a)は第4実施の形態における避難誘導装置301の一部を切断して示した傾斜面部218、中間部220及び煙道部221の部分断面図である。図12(a)では、図11と同様に、便宜上、アンテナ222、支持体223、伸縮装置224及び蓋部225の図示を省略している。また、図12(b)は支柱205の下端側の斜視図である。図12(b)では、支柱205の上端側の図示を省略している。
【0086】
図12(a)に示すように、基体部302は発煙筒226を支持する板状の部材であり、警告灯216(図10参照)が配設される管状体214の上部に設置される。基体部302には、板厚方向に貫通する内周縁が円形状の貫通孔302aが略中央に形成されている。その貫通孔302aの内周縁間を繋ぐ連絡部303が内周縁間に橋設され、その連絡部303に発煙筒226が設置される。
【0087】
貫通孔302aは、基体部302の下面に連結されるフランジ215の内周縁と合致する位置に形成されている。基体部302の下方に位置する管状体211,214は、軸方向に貫通する空間(図示せず)が形成されており、それら管状体211,214に形成された空間と貫通孔302aとは連通する。
【0088】
図12(b)に示すように、支柱205は管状体206が長手方向(軸方向)に連接されているので、軸方向に連通する空間(送風路304)が支柱205の内部に形成される。その支柱205の下端側には、管状体206の外周面から内周面に亘って貫通する空気導入部305が形成されている。従って、空気導入部305は、支柱205の内部の送風路304、管状体211,214の軸方向に沿って形成された空間(図示せず)及び貫通孔302aを介して煙道部221と連通されている。即ち、支柱205から煙道部221までを一種の煙突とみなすことができる。
【0089】
津波警報発令等の異常時に、発煙筒226に点火されて発煙筒226の温度が上昇すると、その周囲の空気の温度が外気の温度より高くなり、煙突内の空気に浮力が生じる。そうすると、支柱205の下端側に形成された空気導入部305から外部の冷たい空気を引き入れながら、発煙筒226の周囲の暖かい空気が上昇するという煙突効果が生じる。これにより生じた上昇気流に発煙筒226からの煙が運ばれるので、発煙筒226から発煙口221aに向かう煙の速度を大きくすることができる。そのため、内部に煙が籠って発煙口221aからの発煙量が少なくなることを防止できると共に、発煙口221aから出た煙が横方向に拡散することを防ぎ、発煙口221aから煙を上昇させることができる。また、電動式のファン等を回転駆動させる必要もないので、装置構成を簡素化できる。
【0090】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記各実施の形態で説明した台部の形状、支柱の長さや形状は一例であり、任意に設定することができる。
【0091】
上記各実施の形態では、避難誘導装置1,101,201,301が避難ビル(建築物)に設置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、避難場所として指定された鉄道駅舎等の既存の公共施設や高台、山等に設置することは当然可能である。
【0092】
上記各実施の形態では、避難誘導装置1,101,201,301が商用電源11及び蓄電池13の2系統の電源により作動される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、避難ビル等の建築物や施設が非常用電源(無停電電源等)や自家発電装置を備える場合には、商用電源11に代えて非常用電源や自家発電装置を利用して避難誘導装置1,101,201,301を作動させることは当然可能である。また、商用電源11、非常用電源、自家発電装置のいずれも確保できない場合には、蓄電池13により避難誘導装置1,101,201,301を作動させるようにすることは当然可能である。
【0093】
上記各実施の形態では、避難誘導装置1,101,201,301は、放送局から発せられる緊急警報信号等の警報信号を受信することにより災害の発生の可能性が高いことを検出する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、避難誘導装置1,101に地震計や雨量計等の検出装置(検出手段)を配置して、これらの検出装置により災害の発生の可能性が高いことを検出することは当然可能である。また、受信装置8が受信する警報信号は、放送局から発せられる緊急警報信号に限られるものではなく、J−ALERT(全国瞬時警報システム)を利用した緊急情報、気象庁や各自治体等から発令される各種(大雨、高潮、洪水、斜面崩壊等)の警報や、避難誘導装置1,101,201,301を作動させる旨の命令等を採用することは当然可能である。また、警報信号の受信を無線で行うものを説明したが、これに限られるものではなく、有線で警報信号の受信を行うことは当然可能である。
【0094】
上記各実施の形態では、避難場所となる建築物Bの屋上B3に避難誘導装置1,101,201,301を立設する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、建築物Bの出入口B2が形成された壁面B1の上端寄りに避難誘導装置1,101,201,301を立設することは当然可能である。この場合も、避難誘導装置1,101,201,301の被視認性を確保して出入口B2に避難者を誘導できるからである。
【0095】
また、避難誘導装置1,101,201,301を高台(避難場所)に設置する場合には、高台の通路(階段やスロープ等)に通じる昇降口に避難者を誘導する必要があるが、昇降口は低い位置にあるので被視認性に乏しい。そこで、高台の昇降口に通じる通路に避難誘導装置1,101,201,301を設置する。これにより、避難誘導装置1,101,201,301の被視認性を確保しつつ、避難者を高台の昇降口へ誘導することが可能となる。
【0096】
上記実施の形態では、警告灯9a及び表示灯10aが回転灯により構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、警告灯9aや表示灯10aを点滅可能に構成することは当然可能である。また、上記各実施の形態では、支柱7の上下方向に高さを変えて警告灯9aと表示灯10aとを並設する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、警告灯9aと表示灯10aとを一体にして同一高さに配置することは当然可能である。警告灯9aと表示灯10aとの色を異ならせることにより、警報の発令および解除(避難の要否)を判別できるからである。なお、警告灯9aや表示灯10aの色は適宜設定できる。
【0097】
上記実施の形態では、警告灯9a及び表示灯10aがLEDにより構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の照明具を採用することは当然可能である。他の照明具としては、例えば、特定の方向に光線を投射するための反射体を有するサーチライトを挙げることができる。光源(サーチライト)を中心とする種々の角度に光線を投射できるように、光源を回転式の架台に搭載することも可能である。サーチライトは光線の直進性が高いので、被視認性を向上できる。
【0098】
第2実施の形態、第3実施の形態および第4実施の形態では、支柱7,205の先端に発煙筒103a,226が配置された場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、支柱7,205とは異なる部材(支柱)を台部2,202に立設し、その部材に発煙筒103a,226を配置することは当然可能である。なお、警告灯9a,216及び発煙筒103a,226を支柱7,205に配置することにより、支柱7,205とは異なる部材に発煙筒103a,226を配置する場合と比較して、警告灯9a,216及び発煙筒103a,226の水平投影面積を小さくできる。その結果、避難誘導装置101,201,301をコンパクト化できる。
【0099】
第1実施の形態および第2実施の形態では、警告灯9a及び表示灯10aが単一の支柱7に配置された場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、複数本の支柱7を立設して、それら複数の支柱7に警告灯9a及び表示灯10aをそれぞれ設けるようにすることは当然可能である。なお、単一の支柱7に警告灯9a及び発煙筒103aを設ける場合は、支柱7を立設するために必要な面積を小さくできるので、複数本の支柱を立設する場合と比較して、避難誘導装置1,101をコンパクト化できる。
【0100】
第1実施の形態で説明した避難誘導装置1(支柱7)に発煙筒103aを配置することは当然可能である。発煙筒103aからの煙により避難誘導装置1の被視認性を向上できる。また、第3実施の形態および第4実施の形態で説明した避難誘導装置201,301の支柱205の先端側に、第1実施の形態で説明したのと同様の表示灯を設置することは当然可能である。
【0101】
なお、第2実施の形態では、図8に示すフローチャート(発煙判断処理)において、S11及びS12の処理が実行される場合について説明したが、S11又はS12のいずれかの処理を省略したり、S11及びS12の処理を省略したりすることは当然可能である。
【0102】
第3実施の形態では、送風装置227(ファン228)が発煙筒226の上方に配置された場合(送風装置227が煙を吸い上げる場合)について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、空気導入部217aの近傍に送風装置を配置して、発煙筒226の下側から風を煙道部221に向けて送る(送風装置が煙を煽って上昇させる)ようにすることは当然可能である。
【0103】
また、第3実施の形態では、送風装置227(ファン228)を用い、空気導入部217aから導入された空気の気流を作り、その気流によって発煙筒226から生じる煙を発煙口221aから立ち上らせる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。送風装置227(ファン228)を省略し、煙道部221の煙突効果を利用して、空気導入部217aから導入された空気の気流を作り、その気流によって発煙筒226から生じる煙を発煙口221aから立ち上らせることは当然可能である。この場合は、ファン228を回転駆動させる駆動源を必要としないので、装置構成を簡素化できる。
【0104】
第3実施の形態および第4実施の形態では、支柱205を形成する管状体206をボルト及びナットの機械的接合手段で連結する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の機械的接合手段を採用することは当然可能である。他の機械的接合手段としては、リベット等のピン、カシメ金具等が挙げられる。
【0105】
上記各実施の形態では、発煙筒103a,226は、火薬に点火して発煙するものを説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、化学反応によって煙を生じる発煙筒を採用することは当然可能である。なお、第4実施の形態で説明した煙突効果を利用して煙を吹き出させる場合には、発煙筒103a,226は煙を生じるときに発熱するものが望ましい。
【0106】
なお、上記の各実施形態は、上述の変形例以外に、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0107】
1,101,201,301 避難誘導装置
7,205 支柱
8 受信装置(検出手段の一部)
8a,222 アンテナ(検出手段の一部)
9a,216 警告灯
10a 表示灯
103a,226 発煙筒(発煙部)
103b 先端(発煙口)
104 照度検出装置(照度検出手段)
206 管状体
217a,304 空気導入部
221a 発煙口
228 ファン(送風手段)
305 送風路(送風手段の一部)
B 建築物(避難場所)
B1 壁面
B2 出入口
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難者を避難場所へ誘導するための避難誘導装置に関し、特に、メンテナンスを簡略化できると共に避難者の避難目標にできる避難誘導装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
津波や高潮、洪水、大雨による土砂災害(斜面崩壊)等から身を守るには、高台(周囲より高い土地や人工構造物)に避難することが原則である。しかし、高台までの避難に相当の時間を要する平野部や、背後に避難に適さない急峻な地形が迫る集落等では避難場所の確保が容易ではない。また、地震発生から津波到達までの時間的余裕が極めて少なく、高台へ避難するための十分な時間を確保できない地域も多い。
【0003】
そこで、そのような地域や集落等では、堅固なマンションやホテル、ビル等の中・高層建物(建築物)を避難ビル(一時的な避難場所)として活用することが考えられる。また、避難ビルの対象となる施設が周辺にない場合には、想定される最大浸水深よりも高い位置にある高速道路のサービスエリア・パーキングエリアや「道の駅」、鉄道駅舎等の既存の公共施設を一時的な避難場所として活用することも考えられる。
【0004】
このような避難ビルや高台等の避難場所に避難者を誘導するための避難誘導装置が知られている。例えば特許文献1には、避難場所が表示される表示板と、夜間における視認性を向上するために発光する発光部とを備え、避難場所への避難経路に設置されるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−226689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来の技術では、避難誘導装置は避難場所への避難経路に設置されるので、避難経路を避難者が見失わないように、避難経路に沿って十分な数の避難誘導装置を設置しなければならない。避難場所の周辺に相当数の避難誘導装置が設置されることになるため、避難誘導装置ごとに行うメンテナンスに多大な手間とコストとを要するという問題点があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、メンテナンスを簡略化できると共に避難者の避難目標にできる避難誘導装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
この目的を達成するために、請求項1記載の避難誘導装置によれば、1乃至複数の支柱が、想定される浸水深よりも高い位置にある避難場所もしくは斜面崩壊が想定される地域の外側に位置する避難場所に設置される。又は、それら避難場所の上方に支柱が設置される。その支柱の上端側に警告灯が配置されると共に支柱の上端側に発煙口が設けられ、その発煙口から発煙可能に発煙部が構成される。
【0009】
津波、洪水、高潮による浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことが検出手段により検出されると、警告灯発光手段により警告灯は点灯または点滅されると共に、発煙手段により発煙口から発煙される。警告灯および発煙口は支柱の上端側に配置されているので、警告灯を点灯または点滅させると共に発煙口から発煙させることにより、津波、洪水、高潮による浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いこと(避難の必要があること)を、避難場所の周囲の人に報知できる。警告灯および発煙口が設けられた支柱は避難場所または避難場所の上方に設置されるので、警告灯および煙を避難目標にして避難者を避難場所に誘導できる効果がある。
【0010】
また、発煙部は発煙口から煙を吹き上げるので、警告灯に比べて、より遠方の住民や就業者等に煙を視認させることができる。これにより、誘導される避難者のいる範囲を広げ、警告灯だけを避難目標にして誘導される避難者の数より、多数の避難者を避難場所に誘導できる効果がある。
【0011】
さらに、避難場所への避難経路に沿って避難誘導装置を設置する場合と比較して、一つの避難場所に対する避難誘導装置の設置数を大幅に削減できる。避難誘導装置の設置数を削減できるので、避難誘導装置のメンテナンスを簡略化できる効果がある。
【0012】
請求項2記載の避難誘導装置によれば、発煙口は警告灯より高い位置に設置されているので、発煙口から吹き上げた煙によって警告灯が視認され難くなることが防止される。これにより、請求項1の効果に加え、発煙部が吹き上げた煙および警告灯の両方を同時に視認可能にできる効果がある。
【0013】
請求項3記載の避難誘導装置によれば、空気導入部から発煙部に空気が取り入れられ、発煙部に取り入れられた空気が送風手段により発煙口に送られる。これにより、発煙部から発煙口に向かう煙の速度を大きくすることができる。そのため、発煙口から出た煙が横方向に拡散することを防ぎ、発煙口から煙を上昇させることができる。警告灯より高い位置まで煙を立ち昇らせることができるので、請求項1又は2に記載の効果に加え、煙の被視認性を向上できる効果がある。
【0014】
請求項4記載の避難誘導装置によれば、支柱の下端側に設けられた空気導入部から導入された空気は、支柱の内部の送風路を通って発煙部へ送られる。支柱の下端側に空気導入部が設けられているので、支柱の上端側に空気導入部が設けられる場合と比較して、空気導入部の位置を低くできる。よって、請求項3の効果に加え、空気導入部のメンテナンスを容易にできる効果がある。
【0015】
請求項5記載の避難誘導装置によれば、支柱は、機械的接合手段により複数の管状体が長手方向に連接されている。そのため、避難誘導装置の設置場所にばらばらの状態で複数の管状体を運び込んだ後、その設置場所で、機械的接合手段により管状体を連接して支柱を組み立て、避難誘導装置を設置できる。また、管状体なので、材質および外径が同じ中実の部材(棒材)と比較して軽量化できる。よって、請求項1から4のいずれかの効果に加え、管状体の搬送性や支柱の組立作業性を向上できる効果がある。
【0016】
請求項6記載の避難誘導装置によれば、支柱に配置される表示灯は、検出手段により浸水または斜面崩壊の発生の可能性が低下したことが検出された場合に、警告灯とは異なる色で表示灯発光手段により表示灯が点灯または点滅される。避難場所に避難した避難者は、表示灯の点灯または点滅により、浸水または斜面崩壊の発生の可能性が低下したことがわかる。避難した避難者に、表示灯が点灯または点滅するまでは避難場所に留まろうと思わせることができるので、請求項1から5のいずれかの効果に加え、浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いときに、避難者が避難場所から離れて遭難することを防止できる効果がある。
【0017】
また、避難誘導装置を避難目標にして避難場所に向かう避難者に対して、表示灯の点灯または点滅により、浸水または斜面崩壊の発生の可能性が低下したことを報知できる。その結果、請求項1から5のいずれかの効果に加え、避難場所に向かう避難者に、表示灯の点灯または点滅により安心感を与えることができると共に、表示灯を避難目標にして避難場所に誘導できる効果がある。
【0018】
請求項7記載の避難誘導装置によれば、支柱は、避難場所となる建築物の出入口が形成された壁面、避難場所となる建築物の出入口が形成された壁面近くの屋上、又は避難場所となる高台の昇降口に通じる通路に設置されるので、警告灯を避難目標にすれば、避難者は、避難場所となる建築物の出入口や高台の昇降口に誘導される。
【0019】
ここで、建築物や高台の水平投影面積が大きい場合、出入口や昇降口から離れた位置に警告灯が配置されていると、警告灯を避難目標にした避難者は、建築物や高台に到達した後、今度は出入口や昇降口を探すために建築物や高台の周囲を歩かなければならない。避難者は、建築物や高台に到達しているのに、出入口や昇降口を探す間に遭難する可能性がある。
【0020】
これに対し、出入口が形成された建築物の壁面等に警告灯を設置することによって、警告灯を避難目標にして、避難者を建築物の出入口や高台の昇降口に誘導できる。その結果、請求項1から6のいずれかの効果に加え、避難者を、建築物の出入口や高台の昇降口からスムーズに避難場所に導くことができる効果がある。
【0021】
請求項8記載の避難誘導装置によれば、時刻取得手段により現在の時刻が取得され、時刻取得手段により取得された時刻が昼間の時間帯であるか時間帯判断手段により判断される。判断の結果、昼間の時間帯である場合に発煙部より発煙される。発煙されるのが昼間の時間帯であるので、煙の被視認性を確保することができ、請求項1から7のいずれかの効果に加え、発煙によって多数の避難者を避難場所に誘導できる効果がある。
【0022】
請求項9記載の避難誘導装置によれば、照度検出手段により照度が検出され、照度検出手段により検出された照度が所定の照度以上であるか照度判断手段により判断される。判断の結果、所定の照度以上である場合に発煙部より発煙される。発煙されるのが所定の照度以上のときであるので、煙の被視認性を確保することができ、請求項1から8のいずれかの効果に加え、発煙によって多数の避難者を避難場所に誘導できる効果がある。
【0023】
請求項10記載の避難誘導装置によれば、検出手段により浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことが検出された場合に、発音手段により音響が発生されるので、浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことを音響により報知させることができ、避難者の注意を喚起できる。これにより、請求項1から9のいずれかの効果に加え、警告灯に加えて音響が発生されることにより、避難者の避難場所への誘導効果を向上できる効果がある。
【0024】
加えて、発音手段により音響が発生された時間が所定時間以上であるか発音判断手段により判断される。音響が発生された時間が所定時間以上であれば、ある程度の数の避難者が避難場所に到達していると考えられる。避難場所から離れた地点にいる避難者は音響も避難目標となるが、避難場所にいる避難者は音響が騒音となる。これを防止するため、音響が発生された時間が所定時間以上であると発音判断手段により判断された場合に、発音停止手段により発音手段による音響の発生が停止される。その結果、請求項1から9のいずれかの効果に加え、音響が避難場所にいる避難者の騒音となることを防止し、避難者の快適性が損なわれることを防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施の形態における避難誘導装置の斜視図である。
【図2】避難誘導装置が屋上に設置された建築物の斜視図である。
【図3】避難誘導装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図4】警報判断処理を示すフローチャートである。
【図5】第2実施の形態における避難誘導装置の斜視図である。
【図6】避難誘導装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図7】警報判断処理を示すフローチャートである。
【図8】発煙判断処理を示すフローチャートである。
【図9】第3実施の形態における避難誘導装置の斜視図である。
【図10】警報部の斜視図である。
【図11】警報部の一部を切断して示した図10のXI−XI線における傾斜面部、中間部および煙道部の部分断面図である。
【図12】(a)は第4実施の形態における避難誘導装置の一部を切断して示した傾斜面部、中間部および煙道部の部分断面図であり、(b)は支柱の下端側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1から図4を参照して第1実施の形態について説明する。図1は本発明の第1実施の形態における避難誘導装置1の斜視図である。図1に示すように、避難誘導装置1は、台部2と、その台部2に立設される支柱7と、その支柱7の上端側に配置される警告灯9aとを主に備えて構成されている。
【0027】
台部2は、避難場所または避難場所の上方(以下「設置場所」と称す)に設置される部材であり、避難場所としては、津波、洪水、高潮によって想定される最大浸水深より高い位置にある場所、大雨による斜面崩壊(土砂崩れ)が想定される地域の外側に位置する場所が挙げられる。避難場所を具体的にすれば、例えば、高台(周囲より高い土地や人工構造物);堅固なマンションやホテル、ビル等の中・高層建物(建築物);高速道路のサービスエリア・パーキングエリアや「道の駅」、鉄道駅舎等の公共施設等を挙げることができる。
【0028】
台部2は、平面視して方形状の平板で形成された基盤3と、その基盤3の上面に固着された箱型の本体4と、その本体4の4つの側面に側部が固着されると共に基盤3の上面に底部が固着される略三角形の板状に形成された複数の補強板5とを備えている。基盤3と本体4との間に補強板5が固着されているので、支柱7を支持する本体4の耐風強度を向上できると共に避難誘導装置1の耐震性を確保できる。
【0029】
基盤3は、避難場所等の設置場所に固定される金属製の板材であり、設置場所に立設されたスタッドボルト(図示せず)が挿通される孔部3aが穿設されている。避難誘導装置1は避雷設備を備えており、基盤3に突針6が突設されている。突針6は、避雷導線および接地極(いずれも図示せず)により大地に電気的に接続されている。突針6の高さ(基盤3からの突出長さ)は、支柱7及び警告灯9aの高さより大きくなるように設定されている。避難誘導装置1は避雷設備を備えているので、雷撃によって警告灯9aや制御装置(後述する)等が破損することを防止できる。
【0030】
本体4は、制御装置(後述する)を内部に収容すると共に支柱7を支持するための部材であり、アンテナ8aが突設されている。アンテナ8aは、放送局から発せられる緊急警報信号等の警報信号を受信するための装置である。支柱7は、台部2に立設されると共に警告灯9aが上端側に配置される部材であり、本実施の形態では略円筒状に形成されており、上端に警告灯9aが配置され、警告灯9aの下部に表示灯10aが配置されている。避難誘導装置1が設置される避難場所(避難場所の地上高や周囲の状態)に応じて、警告灯9a及び表示灯10aの被視認性を確保できるように、支柱7の長さが適宜設定される。
【0031】
警告灯9aは、避難の必要があることを報知するための装置であり、災害等の異常時に点灯または点滅する。本実施の形態では、赤色LEDを光源とする回転灯として構成されている。表示灯10aは、避難の必要がないことを報知するための装置であり、通常時または警報の解除時に点灯または点滅する。通常時に表示灯10aを点灯または点滅させることにより、避難誘導装置1が設置された避難場所の位置を周知させることができる。なお、本実施の形態では、表示灯10aは、警告灯9aとは異なる色の青色LEDを光源とする回転灯として構成されている。
【0032】
避難誘導装置1は、商用電源11(外部電源)及び蓄電池13の2系統の電源を使用できるように構成されている。第1変換装置12は、蓄電池13を充電するために商用電源11(交流)を直流に変換するための装置であり、蓄電池13は、第1変換装置12により直流に変換された電力により充電される。蓄電池13は太陽電池14が接続されているので、商用電源11が喪失したとき(停電時)でも、日照があれば太陽電池14により充電される。
【0033】
第2変換装置15は、第1変換装置12により直流に変換された電力を交流に変換して警告灯9aや制御装置(後述する)等に供給するための装置である。なお、第2変換装置15は、商用電源11が喪失したとき(停電時)に、蓄電池13の放電電流(直流)を交流に変換して警告灯9aや制御装置等に供給する。これにより、商用電源11が喪失したときも警告灯9aの点灯等を行うことができるので、避難者を誘導するための信頼性を確保できる。
【0034】
次に図2を参照して、一時的な避難場所に指定された建築物Bに避難誘導装置1が設置される状態について説明する。図2は避難誘導装置1が屋上に設置された建築物Bの斜視図である。なお、図2では、理解を容易にするため、建築物Bの壁面B1に形成される窓等の図示を省略している。
【0035】
図2に示すように、避難誘導装置1は、鉄筋コンクリート等で構成された中・高層建物(建築物B)の屋上に設置されている。この建築物Bは、想定される最大浸水深よりも高い位置にある高層階を有し、その高層階につながる内部階段または外部階段に通じる出入口B2が壁面B1に形成されている。避難誘導装置1は、建築物Bの出入口B2が形成された壁面B1近くの屋上B3に台部3(図1参照)が設置されることで立設されている。
【0036】
その結果、警告灯9aを避難目標にすれば、避難者は避難場所となる建築物Bの出入口B2に誘導される。建築物Bの水平投影面積が大きい場合、出入口B2から離れた位置に警告灯9aが配置されていると、警告灯9aを避難目標にした避難者は、建築物Bに到達した後、今度は出入口B2を探すために建築物Bの周囲を歩かなければならない。津波が迫っている場合には、出入口Bを探す間に避難者が遭難する可能性がある。これを防止するため、出入口B2が形成された建築物Bの壁面B1近くの屋上B3に警告灯9aを設置することによって、避難誘導装置1の被視認性を確保して、建築物Bの出入口B2から避難者をスムーズに避難場所に導くようにできる。
【0037】
なお、避難誘導装置1は台部2に支柱7を立設する構成とすることにより、台部2の水平投影面積を小さくできるので、壁面B1近くの屋上B3のような狭いスペースにも設置することが可能となる。
【0038】
次に図3を参照して、避難誘導装置1の電気的構成について説明する。図3は避難誘導装置1の電気的構成を示したブロック図である。避難誘導装置1は、図3に示すように、警告灯9a等の装置が接続された制御装置20を備えている。制御装置20は、CPU21、ROM22及びRAM23を備え、それらがバスライン24を介して入出力ポート25に接続されている。また、入出力ポート25には、警告灯9a等の装置が接続されている。
【0039】
CPU21は、バスライン24により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM22は、CPU21により実行される制御プログラム(例えば、図4に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。RAM23は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。受信装置8は、アンテナ8aが受信した警報信号を検出すると共に、その検出結果をCPU21に出力するための装置であり、アンテナ8aによる検出結果を処理してCPU21に出力する出力回路(図示せず)を備えて構成されている。
【0040】
警告灯装置9は、警告灯9aを点灯するための装置であり、警告灯9aと、その警告灯9aをCPU21からの指示に基づいて駆動制御する制御回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。表示灯装置10は、表示灯10aを点灯するための装置であり、表示灯10aと、その表示灯10aをCPU21からの指示に基づいて駆動制御する制御回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。発音装置30は、警告灯9aを避難目標にする旨(例えば「ここへ逃げなさい」等)の音声案内やサイレン等の警報音(音響)を発音するための装置であり、CPU21からの指示に基づいて音声案内や警報音の電気信号を出力する出力回路および増幅装置(いずれも図示せず)と、その電気信号を音声案内や警報音に変換するスピーカ30aとを主に備えて構成されている。
【0041】
充電状態検出装置31は、蓄電池13(図1参照)の電圧および電流を検出すると共に、その検出結果をCPU21に出力するための装置であり、蓄電池13の電圧および電流を検出する電圧センサ及び電流センサ(いずれも図示せず)と、それら電圧センサ及び電流センサの検出結果を処理してCPU21に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。CPU21は、充電状態検出装置31による検出結果により、商用電源11や太陽電池14による蓄電池13の充電を停止する。これにより蓄電池13の過充電を防止できる。
【0042】
商用電力検出装置32は、商用電源11(図1参照)の電圧および電流を検出すると共に、その検出結果を出力するための装置であり、第2変換装置15に内蔵されている。商用電力検出装置32は、商用電源11の電圧および電流を検出するセンサ(図示せず)と、そのセンサの検出結果を処理して第2変換装置15に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。第2変換装置15は、商用電力検出装置32の検出結果に基づいて、蓄電池13の放電電流の大きさを切り換える。即ち、商用電源11が正常に供給されているときには、蓄電池13の放電電流を小さくすることで蓄電池13を充電し、商用電源11を喪失したときには、蓄電池13の放電電流を大きくすることで、蓄電池13により制御装置20や警告灯装置9等を作動させる。
【0043】
計時装置33は、現在の時刻を報知し時間を計測するための装置であり、CPU21からの指示に基づいて時間を計測する計時回路(図示せず)と、その計時回路により計測された時間を処理してCPU21に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。
【0044】
次いで図4を参照して、警報判断処理について説明する。図4は警報判断処理を示すフローチャートである。この処理は、避難誘導装置1の電源が投入されている間、CPU21によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、避難を必要とする警報発令の状態を判断して、警告を報知する処理である。
【0045】
CPU21は、警報判断処理に関し、まず、警告灯9aは点灯しているか否かを判断し(S1)、警告灯9aが消灯していると判断される場合には(S1:No)、次に警報が発令されているか否かを判断する(S2)。なお、この処理は受信装置8からの出力に基づいて判断される。その結果、警報が発令されていると判断される場合には(S2:Yes)、警告灯装置9を作動して警告灯9aを点灯する(S3)。これにより避難者の誘導が開始される。さらに、発音装置30を作動してスピーカ30aから発音を開始し(S4)、発音(音響)により避難者の注意を喚起し避難を促す。次いでS6の処理を実行する。
【0046】
一方、S1の処理の結果、警告灯9aが点灯していると判断される場合には(S1:Yes)、次に警報が発令されているか否かを判断する(S5)。その結果、警報が発令されていると判断される場合には(S5:Yes)、ROM22に記憶されている閾値(所定時間)と警報が発令されてから現在までの経過時間とを比較して、警報が発令されてから所定時間が経過したか否かを判断する(S6)。その結果、警報が発令されてから所定時間が経過したと判断される場合には(S6:Yes)、発音装置30からの発音を停止し(S7)、この警報判断処理を終了する。
【0047】
ここで、音響が発生された時間が所定時間以上であると判断される場合には(S6:Yes)、ある程度の数の避難者が避難場所(建築物B)に到達していると考えられる。避難場所から離れた地点にいる避難者は音響を避難目標にできるが、避難場所にいる避難者は音響が騒音となる。これを防止するため、S6及びS7の処理によって音響の発生が停止される。その結果、音響が避難場所にいる避難者の騒音となることを防止し、避難者の快適性が損なわれることを防止できる。
【0048】
一方、S5の処理の結果、警報が発令されていないと判断される場合には(S5:No)、警報が解除されて避難の必要性が低下したと考えられるので、警告灯9aを消灯し(S8)、代わりに表示灯10aを点灯する(S9)。次いで発音を停止して(S7)、この警報判断処理を終了する。これにより、避難した避難者に、表示灯10aが点灯するまでは避難場所に留まろうと思わせることができるので、警報発令中に避難者が避難場所から離れて遭難することを防止できる。また、避難誘導装置1を避難目標にして避難場所に向かう避難者に対して、表示灯10aの点灯により警報が解除されたことを報知できる。その結果、避難場所に向かう避難者に安心感を与えることができると共に、表示灯10aを避難目標にして避難場所に誘導できる。
【0049】
ここで、警報が解除されて避難の必要性が低下した場合に、表示灯10aの点灯(又は点滅)に代えて、警告灯9aを消灯することにより報知することは可能である。しかし、警告灯9aの消灯が、故障によるものなのか警報の解除によるものなのか判別できないという問題がある。また、警告灯9aを消灯すると、警告灯9aを目標にして避難場所を目指す人の目標(目印)が失われてしまうという問題がある。これに対し、表示灯10aを点灯(又は点滅)することにより、これらの問題を解決できる。
【0050】
避難誘導装置1は建築物Bの屋上B3(高所)に立設され、支柱7の長さは建築物Bの高さを考慮して設定される。例えば、建築物Bを中心とする半径1km程度の範囲内の避難者に、警告灯9a及び表示灯10aが視認可能となるように設定される。その結果、避難場所への避難経路に沿って避難誘導装置を設置する場合と比較して、一つの避難場所に対する避難誘導装置1の設置数を大幅に削減できる。避難誘導装置1の設置数を削減できるので、避難誘導装置1のメンテナンスを簡略化できると共に、避難誘導装置1の設置コストを削減できる。
【0051】
なお、図4に示すフローチャート(警報判断処理)において、請求項1記載の警告灯発光手段としてはS3の処理が、請求項6記載の表示灯発光手段としてはS9の処理が、請求項10記載の発音手段としてはS4の処理が、発音判断手段としてはS6の処理が、発音停止手段としてはS7の処理がそれぞれ該当する。
【0052】
次に、図5から図8を参照して第2実施の形態について説明する。第2実施の形態では、発煙装置103を備える避難誘導装置101について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5は本発明の第2実施の形態における避難誘導装置101の斜視図である。なお、図5では避難誘導装置101の電源系(商用電源11から第2変換装置15(図1参照))の図示を省略している。
【0053】
図5に示すように、避難誘導装置101は、台部2に立設された支柱7に広告表示部102及び発煙筒103aが配置されている点で、避難誘導装置1と相違する。広告表示部102は、避難誘導装置101や避難場所(建築物B)を提供する企業等の広告を表示するための部位であり、支柱7の一部に設けられている。広告表示部102を設けることにより、災害発生時以外においても避難誘導装置101を有効に活用できる。
【0054】
発煙筒103aは、先端103bに形成される発煙口から煙を吹き上げて被視認性を高めるための装置であり、支柱7に設置された警告灯9aより先端103b(発煙口)が高い位置に設置されている。先端103b(発煙口)を警告灯9aより高い位置に設置することで、発煙筒103が吹き上げた煙によって警告灯9aの被視認性が低下することが防止される。その結果、発煙に妨げられることなく警告灯9aを避難目標にすることができる。
【0055】
次に図6を参照して、避難誘導装置101の電気的構成について説明する。図6は避難誘導装置101の電気的構成を示したブロック図である。発煙装置103は、発煙筒103aを点火し発煙させるための装置であり、発煙筒103aと、その発煙筒103aを点火するためにCPU21からの指示に基づいて駆動制御する制御回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。
【0056】
照度検出装置104は、避難誘導装置101の周囲の照度を検出すると共に、その検出結果をCPU21に出力するための装置であり、照度を検出する照度センサ104aと、その照度センサ104aの検出結果を処理してCPU21に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えて構成されている。
【0057】
次いで図7を参照して警報判断処理について説明し、図8を参照して発煙判断処理について説明する。図7は警報判断処理を示すフローチャートであり、図8は発煙判断処理を示すフローチャートである。図7に示すように、CPU21は、S2の処理において警報が発令されているか否かを判断し(S2)、警報が発令されていると判断される場合には(S2:Yes)、発煙判断処理(S10)を実行する。
【0058】
図8に示す発煙判断処理(S10)において、CPU21は現在の時刻を取得し(S11)、現在の時刻は昼間時間(昼間の時間帯)であるか否かを判断する(S12)。なお、昼間の時間帯(ある程度の照度を期待できる時間帯)は、避難誘導装置101が設置された地点の緯度および経度、現在の月日(天球上の太陽の位置)によって変化するので、これらに基づいて演算し設定される。
【0059】
S12の処理の結果、現在の時刻が昼間の時間帯であると判断される場合には(S12:Yes)、ROM22に記憶されている閾値(所定の照度)と現在の照度とを比較して、照度が所定の照度以上であるか否かを判断する(S13)。照度が所定の照度以上であると判断される場合には(S13)、煙の被視認性は良好であると考えられるため、発煙装置103を作動して発炎筒103aに点火し(S14)、発煙を開始する。次いで、警告灯装置9を作動して警告灯9aを点灯し(S15)、発音装置30を作動して発音を開始する(S16)。これにより、避難者を警告灯9aによって避難場所に誘導するだけでなく、発煙によって誘導することができる。発煙筒103aは煙を吹き上げるので、警告灯9aに比べて、より遠方の住民や就業者等に煙を視認させることができる。これにより、誘導される避難者のいる範囲を広げ、警告灯9aを避難目標にして誘導される避難者の数より、多数の避難者を避難場所に誘導できる。
【0060】
一方、S12の処理の結果、時刻が昼間時間(昼間の時間帯)でないと判断される場合には(S12:No)、夜間等であって煙の被視認性は悪いと考えられるため、S13及びS14の処理をスキップして、警告灯9aを点灯し(S15)、発音を開始する(S16)。また、S12の処理の結果、時刻が昼間時間(昼間の時間帯)であると判断された場合であっても(S12:Yes)、照度が所定の照度以上でないと判断される場合には(S13:No)、天候の影響等により煙の被視認性は悪いと考えられるため、S14の処理をスキップして、警告灯9aを点灯し(S15)、発音を開始する(S16)。
【0061】
以上のように、時刻や天候等の影響によって煙の被視認性が悪いと考えられる場合に発煙を禁止することにより、警告灯9aや表示灯10aの周りに煙が立ち込めることによって警告灯9aや表示灯10aの被視認性が低下することを未然に防止できる。特に、照度が所定の照度以上でないと判断される場合は(S13:No)、昼間の時間帯であっても天候の影響等により煙の被視認性が悪いと考えられる場合である。このような場合に発煙筒103aの点火を禁止するので、警告灯9aや表示灯10aの周りに煙が立ち込めることによって警告灯9aや表示灯10aの被視認性が低下することを未然に防止できる。
【0062】
また、警告灯9aからの発光に加え発煙装置103から発煙するので、避難誘導効果を向上できる。発光は航空障害灯など様々な所でみられるが、発煙は火災でも起こらない限り生じないからである。その結果、発煙により避難者の注意を喚起しつつ、発光および発音により避難者を避難誘導装置101へ誘導することができる。
【0063】
なお、図7に示すフローチャート(警報判断処理)において、請求項6記載の表示灯発光手段としてはS9の処理が、請求項10記載の発音判断手段としてはS6の処理が、発音停止手段としてはS7の処理がそれぞれ該当する。図8に示すフローチャート(発煙判断処理)において、請求項1記載の警告灯発光手段としてはS15の処理が、発煙手段としてはS14の処理が、請求項8記載の時刻取得手段としてはS11の処理が、時間帯判断手段としてはS12の処理が、請求項9記載の照度判断手段としてはS13の処理が、請求項10記載の発音手段としてはS16の処理がそれぞれ該当する。
【0064】
次に、図9から図11を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、支柱7が一体的に形成された場合を説明した。これに対し第3実施の形態では、支柱205が、複数の管状体206を連接することにより組み立てられる場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図9は第3実施の形態における避難誘導装置201の斜視図である。図9に示すように、避難誘導装置201は、台部201と、その台部201に立設される支柱205と、その支柱205の上端に連結される警報部210とを主に備えて構成されている。
【0065】
台部202は、避難場所または避難場所の上方(避難誘導装置201の設置場所)に設置される部材であり、平面視して方形状の平板で形成された基盤203と、その基盤203の上面に固着された円筒状の本体204とを備えている。本体204は、制御装置(図示せず)を内部に収容すると共に支柱205を支持するための部材であり、開閉扉(図示せず)が配設されている。その開閉扉を開けて、本体204に収容された制御装置のメンテナンスを行うことができる。
【0066】
支柱205は、台部202に立設されると共に警報部210が上端側に配置される長尺の部材である。支柱205は、1〜3m程度の長さの略円筒状に形成された管状体206(鋼管)を複数(本実施の形態では3本)長手方向に連接して組み立てられている。管状体206は、軸方向(図9上下方向)の両端に円環状のフランジ207が径方向に突設されている。フランジ207は、孔部(図示せず)が軸方向に貫通形成されている。その孔部を連ねるようにフランジ207同士を突き合わせ、ボルト及びナット(締結部材)等の機械的接合手段により管状体206を連結する。複数の管状体206を長手方向に連接して支柱205が作られるので、管状体206の本数や長さを適宜選択することにより、支柱205の長さを適宜設定することができる。
【0067】
なお、管状体206は、棒状の足場部208が外周面の径方向両側に所定の間隔をあけて突設されている。足場部208は、警報部210のメンテナンスを行うときに、支柱205の昇り降りに用いられる部材である。
【0068】
避難誘導装置201を設置する場合には、台部202、管状体206及び警報部210を設置場所にばらばらの状態で運び込む。避難誘導装置201を台部202、管状体206及び警報部210に分解した状態にできるので、人手によって搬送することを可能にできる。また、管状体206は、材質および外径が管状体と同じ中実の部材(棒材)と比較して軽量化できるので、搬送性を向上できる。台部202、管状体206及び警報部210を、作業者がエレベータを使って避難ビルの屋上の設置場所に運び上げることも可能である。
【0069】
台部202、管状体206及び警報部210を設置場所に運び込んだ後、作業者は、アンカーボルト(図示せず)等を用いて台部202(基盤203)を設置場所に取り付ける。一方、支柱205は、管状体206のフランジ207同士を突き合わせ、締結部材(機械的接合手段)によりそれらを連結することにより組み立てる。支柱205の端部(上端)に位置する管状体206には、フランジ207を用いて警報部210を連結する。最後に、クレーン等を使って、警報部210が連結された支柱205を台部202の上方に吊り上げ、台部202の軸方向上端部のフランジに管状体206のフランジ207を突き合わせる。それらフランジ間を機械的接合手段により連結して、避難誘導装置201を設置できる。
【0070】
なお、台部202(基盤203)を設置場所に取り付け、さらに機械的接合手段により台部202に管状体206を連結した後、その管状体206の足場部208に作業者が手足を掛けて管状体206を昇り、別の管状体206を突き合わせて機械的接合手段により連結していくことは可能である。この場合、最後に支柱205(管状体206)の上端に警報部210を機械的接合手段により連結して、避難誘導装置201を設置できる。
【0071】
次に図10を参照して、支柱205の上端に連結される警報部210について説明する。図10は警報部210の斜視図である。警報部210は、発音のためのスピーカ213、発光のための警告灯216、及び、発煙のための煙道部221を備える部位である。スピーカ213は、避難誘導のための音声案内や警報音等を拡声するための装置であり、警告灯216は、避難の必要があることを報知するための装置である。スピーカ213及び警告灯216は管状体211,214にそれぞれ配設されている。
【0072】
管状体211,214は、金属製や合成樹脂製で筒状に形成された部材であり、円環状のフランジ212,215が管状体211,214のそれぞれの軸方向両端から径方向に突設されている。スピーカ213は、管状体211の外周面に径方向外側を向いて複数が放射状に配設されており、警告灯216も同様に、管状体214の外周面に径方向外側を向いて複数が放射状に配設されている。スピーカ213や警告灯216の電気配線等は、管状体211,214に内設されている。
【0073】
スピーカ213が配設された管状体211は、警告灯216が配設された管状体214が上に位置するように、フランジ212,215同士がボルト及びナット(図示せず)等により連結される。管状体211の他方(軸方向下側)のフランジ212は、支柱205(図9参照)を構成する上端の管状体206のフランジ207にボルト及びナット(図示せず)等により連結される。このように、スピーカ213が配設された管状体211及び警告灯216が配設された管状体214も、ボルト及びナット等の機械的連結手段により連結可能に構成されるので、避難誘導装置201の設置場所で管状体211,214を連結して警報部210を組み立てることができる。
【0074】
管状体214の上部には、平面視して方形状の基体部217が連結されている。基体部217は合成樹脂製や金属製の平板状の部材であり、四辺のそれぞれに傾斜面部218が連結されている。傾斜面部218は、側面視して上端(上底)より下端(下底)が長い略台形状に形成された平板状の部材である。4枚の傾斜面部218は、基体部217の四辺に下端(下底)が密着されると共に側辺同士が密着されている。これにより、基体部217及び傾斜面部218は略四角錐状に形成される。
【0075】
基体部217及び傾斜面部218の内側の空間には、後述する発煙筒226が配置される。また、傾斜面部218は管状体211,214の軸心に近づくにつれて上昇傾斜する4つの傾斜面を形成する。それら4つの傾斜面にはそれぞれ太陽電池パネル219が設置される。太陽電池パネル219は蓄電池13(図1参照)に接続されている。太陽電池パネル219が傾斜面部218の4面に沿って傾斜して設置されるので、太陽の方位および高度に関わらず、太陽光が太陽電池パネル219に照射されていれば発電量を確保できる。
【0076】
傾斜面部218の上端(上底)には、無底四角柱状に形成された中間部220が連結されている。中間部220は、傾斜面部218の内側に形成された空間と連通する空間が内部に形成されている。中間部220の上面には、円筒状に形成されると共に管状体211,214の軸方向に延びる煙道部221が接続されている。
【0077】
アンテナ222は、J−ALERT(全国瞬時警報システム)を利用した緊急情報等の警報信号を受信するための装置であり、煙道部221の軸方向に沿って傾斜面部218に立設されている。支持体223は、煙道部221の軸方向に沿って傾斜面部218に立設される部材である。支持体223の先端には、下斜めに向かって延びる伸縮装置224の一端が連結され、伸縮装置224の他端(先端)には蓋部225が連結されている。
【0078】
伸縮装置224は、軸状部材を直線的に往復動(伸縮)させるための装置であり、本実施の形態では電動シリンダにより構成されている。蓋部225は、煙道部221の先端(発煙口221a)を開閉するための部材であり、津波等の警報信号が発信されていない平常時には、伸縮装置224の伸長により蓋部225が煙道部221を閉鎖し、津波等の警報信号が発信された異常時には、伸縮装置224の収縮により蓋部225が煙道部221を開放する。平常時に蓋部225によって煙道部221が閉鎖されるので、煙道部221に雨や砂等が侵入したり鳥が侵入して巣を作ったりすることを防止できる。これにより、異常時(避難誘導装置201の作動時)に、煙道部221から発煙できなくなる不具合を回避できる。
【0079】
次に図11を参照して、警報部210の内部構造について説明する。図11は警報部210の一部を切断して示した図10のXI−XI線における傾斜面部218、中間部220及び煙道部221の部分断面図である。なお、図11では便宜上、アンテナ222、支持体223、伸縮装置224及び蓋部225の図示を省略している。
【0080】
図11に示すように、基体部217の略中央には、煙を吹き上げるための装置である発煙筒226が設置されている。基体部217は、板厚方向に貫通するスリット状の空気導入部217aが形成されている。空気導入部217aは、基体部217の下面に連結される管状体214のフランジ215(図示せず)と干渉しない位置(フランジ215によって塞がれない位置)に形成されている。従って、基体部217の下面に開放された空気導入部217aから、基体部217の上方の空間に空気を流通させることができる。また、空気導入部217aは基体部217の下面に開口しており、空気導入部217aの上方に傾斜面部218が位置するので、空気導入部217aからの雨水の浸入を抑制できる。
【0081】
発煙筒226の上方であって中間部220の内側には、送風装置227が設置されている。送風装置227は、上下方向(煙道部221の軸方向)に貫通する孔部227aが形成され、その孔部227a内に電動式のファン228が回転可能に配設されている。送風装置227は、発煙筒226の点火に連動して作動すると共に、送風装置227が作動してファン228が回転すると、孔部227aの下方から上方に向かう空気の流れが生じるように設定されている。
【0082】
従って、送風装置227が作動してファン228が回転すると、空気導入部217aからの吸気が傾斜面部218の傾斜面に沿って上昇し、孔部227a及び煙道部221を通過して発煙口221aから流出する。発煙筒226が吹き上げる煙はこの気流に運ばれるので、発煙筒226から発煙口221aに向かう煙の速度を大きくすることができる。そのため、内部に煙が籠って発煙口221aからの発煙量が少なくなることを防止できる。また、発煙口221aから出た煙が横方向に拡散することを防ぎ、発煙口221aから煙を上昇させることができる。
【0083】
よって、警告灯216(図10参照)より高い位置まで煙を立ち昇らせることができ、煙の被視認性を向上できる。発煙筒226が吹き出す煙の絶対量が少なくても煙を立ち上らせることにより煙の被視認性を向上できるので、発煙の絶対量の少ない小型の発煙筒226を採用することができ、装置の小型化を図ることができる。また、単位時間当たりの煙の発生量を少なくできれば、煙の生じる時間(発煙の持続時間)を長くすることができるので、避難者が煙を視認できる時間を長くできる。その結果、多くの避難者を発煙によって誘導できる。
【0084】
次に図12を参照して第4実施の形態について説明する。第3実施の形態では、発煙筒226の付近に電動式のファン228(送風装置227)を配置し、そのファン228を回転させることにより気流を形成して発煙口221aから煙を吹き出させる場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、ファン228(送風装置227)を省略した避難誘導装置301について説明する。なお、第3実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0085】
図12(a)は第4実施の形態における避難誘導装置301の一部を切断して示した傾斜面部218、中間部220及び煙道部221の部分断面図である。図12(a)では、図11と同様に、便宜上、アンテナ222、支持体223、伸縮装置224及び蓋部225の図示を省略している。また、図12(b)は支柱205の下端側の斜視図である。図12(b)では、支柱205の上端側の図示を省略している。
【0086】
図12(a)に示すように、基体部302は発煙筒226を支持する板状の部材であり、警告灯216(図10参照)が配設される管状体214の上部に設置される。基体部302には、板厚方向に貫通する内周縁が円形状の貫通孔302aが略中央に形成されている。その貫通孔302aの内周縁間を繋ぐ連絡部303が内周縁間に橋設され、その連絡部303に発煙筒226が設置される。
【0087】
貫通孔302aは、基体部302の下面に連結されるフランジ215の内周縁と合致する位置に形成されている。基体部302の下方に位置する管状体211,214は、軸方向に貫通する空間(図示せず)が形成されており、それら管状体211,214に形成された空間と貫通孔302aとは連通する。
【0088】
図12(b)に示すように、支柱205は管状体206が長手方向(軸方向)に連接されているので、軸方向に連通する空間(送風路304)が支柱205の内部に形成される。その支柱205の下端側には、管状体206の外周面から内周面に亘って貫通する空気導入部305が形成されている。従って、空気導入部305は、支柱205の内部の送風路304、管状体211,214の軸方向に沿って形成された空間(図示せず)及び貫通孔302aを介して煙道部221と連通されている。即ち、支柱205から煙道部221までを一種の煙突とみなすことができる。
【0089】
津波警報発令等の異常時に、発煙筒226に点火されて発煙筒226の温度が上昇すると、その周囲の空気の温度が外気の温度より高くなり、煙突内の空気に浮力が生じる。そうすると、支柱205の下端側に形成された空気導入部305から外部の冷たい空気を引き入れながら、発煙筒226の周囲の暖かい空気が上昇するという煙突効果が生じる。これにより生じた上昇気流に発煙筒226からの煙が運ばれるので、発煙筒226から発煙口221aに向かう煙の速度を大きくすることができる。そのため、内部に煙が籠って発煙口221aからの発煙量が少なくなることを防止できると共に、発煙口221aから出た煙が横方向に拡散することを防ぎ、発煙口221aから煙を上昇させることができる。また、電動式のファン等を回転駆動させる必要もないので、装置構成を簡素化できる。
【0090】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記各実施の形態で説明した台部の形状、支柱の長さや形状は一例であり、任意に設定することができる。
【0091】
上記各実施の形態では、避難誘導装置1,101,201,301が避難ビル(建築物)に設置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、避難場所として指定された鉄道駅舎等の既存の公共施設や高台、山等に設置することは当然可能である。
【0092】
上記各実施の形態では、避難誘導装置1,101,201,301が商用電源11及び蓄電池13の2系統の電源により作動される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、避難ビル等の建築物や施設が非常用電源(無停電電源等)や自家発電装置を備える場合には、商用電源11に代えて非常用電源や自家発電装置を利用して避難誘導装置1,101,201,301を作動させることは当然可能である。また、商用電源11、非常用電源、自家発電装置のいずれも確保できない場合には、蓄電池13により避難誘導装置1,101,201,301を作動させるようにすることは当然可能である。
【0093】
上記各実施の形態では、避難誘導装置1,101,201,301は、放送局から発せられる緊急警報信号等の警報信号を受信することにより災害の発生の可能性が高いことを検出する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、避難誘導装置1,101に地震計や雨量計等の検出装置(検出手段)を配置して、これらの検出装置により災害の発生の可能性が高いことを検出することは当然可能である。また、受信装置8が受信する警報信号は、放送局から発せられる緊急警報信号に限られるものではなく、J−ALERT(全国瞬時警報システム)を利用した緊急情報、気象庁や各自治体等から発令される各種(大雨、高潮、洪水、斜面崩壊等)の警報や、避難誘導装置1,101,201,301を作動させる旨の命令等を採用することは当然可能である。また、警報信号の受信を無線で行うものを説明したが、これに限られるものではなく、有線で警報信号の受信を行うことは当然可能である。
【0094】
上記各実施の形態では、避難場所となる建築物Bの屋上B3に避難誘導装置1,101,201,301を立設する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、建築物Bの出入口B2が形成された壁面B1の上端寄りに避難誘導装置1,101,201,301を立設することは当然可能である。この場合も、避難誘導装置1,101,201,301の被視認性を確保して出入口B2に避難者を誘導できるからである。
【0095】
また、避難誘導装置1,101,201,301を高台(避難場所)に設置する場合には、高台の通路(階段やスロープ等)に通じる昇降口に避難者を誘導する必要があるが、昇降口は低い位置にあるので被視認性に乏しい。そこで、高台の昇降口に通じる通路に避難誘導装置1,101,201,301を設置する。これにより、避難誘導装置1,101,201,301の被視認性を確保しつつ、避難者を高台の昇降口へ誘導することが可能となる。
【0096】
上記実施の形態では、警告灯9a及び表示灯10aが回転灯により構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、警告灯9aや表示灯10aを点滅可能に構成することは当然可能である。また、上記各実施の形態では、支柱7の上下方向に高さを変えて警告灯9aと表示灯10aとを並設する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、警告灯9aと表示灯10aとを一体にして同一高さに配置することは当然可能である。警告灯9aと表示灯10aとの色を異ならせることにより、警報の発令および解除(避難の要否)を判別できるからである。なお、警告灯9aや表示灯10aの色は適宜設定できる。
【0097】
上記実施の形態では、警告灯9a及び表示灯10aがLEDにより構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の照明具を採用することは当然可能である。他の照明具としては、例えば、特定の方向に光線を投射するための反射体を有するサーチライトを挙げることができる。光源(サーチライト)を中心とする種々の角度に光線を投射できるように、光源を回転式の架台に搭載することも可能である。サーチライトは光線の直進性が高いので、被視認性を向上できる。
【0098】
第2実施の形態、第3実施の形態および第4実施の形態では、支柱7,205の先端に発煙筒103a,226が配置された場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、支柱7,205とは異なる部材(支柱)を台部2,202に立設し、その部材に発煙筒103a,226を配置することは当然可能である。なお、警告灯9a,216及び発煙筒103a,226を支柱7,205に配置することにより、支柱7,205とは異なる部材に発煙筒103a,226を配置する場合と比較して、警告灯9a,216及び発煙筒103a,226の水平投影面積を小さくできる。その結果、避難誘導装置101,201,301をコンパクト化できる。
【0099】
第1実施の形態および第2実施の形態では、警告灯9a及び表示灯10aが単一の支柱7に配置された場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、複数本の支柱7を立設して、それら複数の支柱7に警告灯9a及び表示灯10aをそれぞれ設けるようにすることは当然可能である。なお、単一の支柱7に警告灯9a及び発煙筒103aを設ける場合は、支柱7を立設するために必要な面積を小さくできるので、複数本の支柱を立設する場合と比較して、避難誘導装置1,101をコンパクト化できる。
【0100】
第1実施の形態で説明した避難誘導装置1(支柱7)に発煙筒103aを配置することは当然可能である。発煙筒103aからの煙により避難誘導装置1の被視認性を向上できる。また、第3実施の形態および第4実施の形態で説明した避難誘導装置201,301の支柱205の先端側に、第1実施の形態で説明したのと同様の表示灯を設置することは当然可能である。
【0101】
なお、第2実施の形態では、図8に示すフローチャート(発煙判断処理)において、S11及びS12の処理が実行される場合について説明したが、S11又はS12のいずれかの処理を省略したり、S11及びS12の処理を省略したりすることは当然可能である。
【0102】
第3実施の形態では、送風装置227(ファン228)が発煙筒226の上方に配置された場合(送風装置227が煙を吸い上げる場合)について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、空気導入部217aの近傍に送風装置を配置して、発煙筒226の下側から風を煙道部221に向けて送る(送風装置が煙を煽って上昇させる)ようにすることは当然可能である。
【0103】
また、第3実施の形態では、送風装置227(ファン228)を用い、空気導入部217aから導入された空気の気流を作り、その気流によって発煙筒226から生じる煙を発煙口221aから立ち上らせる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。送風装置227(ファン228)を省略し、煙道部221の煙突効果を利用して、空気導入部217aから導入された空気の気流を作り、その気流によって発煙筒226から生じる煙を発煙口221aから立ち上らせることは当然可能である。この場合は、ファン228を回転駆動させる駆動源を必要としないので、装置構成を簡素化できる。
【0104】
第3実施の形態および第4実施の形態では、支柱205を形成する管状体206をボルト及びナットの機械的接合手段で連結する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の機械的接合手段を採用することは当然可能である。他の機械的接合手段としては、リベット等のピン、カシメ金具等が挙げられる。
【0105】
上記各実施の形態では、発煙筒103a,226は、火薬に点火して発煙するものを説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、化学反応によって煙を生じる発煙筒を採用することは当然可能である。なお、第4実施の形態で説明した煙突効果を利用して煙を吹き出させる場合には、発煙筒103a,226は煙を生じるときに発熱するものが望ましい。
【0106】
なお、上記の各実施形態は、上述の変形例以外に、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0107】
1,101,201,301 避難誘導装置
7,205 支柱
8 受信装置(検出手段の一部)
8a,222 アンテナ(検出手段の一部)
9a,216 警告灯
10a 表示灯
103a,226 発煙筒(発煙部)
103b 先端(発煙口)
104 照度検出装置(照度検出手段)
206 管状体
217a,304 空気導入部
221a 発煙口
228 ファン(送風手段)
305 送風路(送風手段の一部)
B 建築物(避難場所)
B1 壁面
B2 出入口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
想定される浸水深よりも高い位置にある避難場所もしくは斜面崩壊が想定される地域の外側に位置する避難場所に設置される又はそれら避難場所の上方に設置される1乃至複数の支柱と、
その支柱の上端側に配置される警告灯と、
前記支柱の上端側に発煙口が設けられ、その発煙口から発煙可能に構成される発煙部と、
津波、洪水、高潮による浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことを検出する検出手段と、
その検出手段により浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことが検出された場合に前記警告灯を点灯または点滅させる警告灯発光手段と、
前記検出手段により浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことが検出された場合に前記発煙部より発煙させる発煙手段とを備えていることを特徴とする避難誘導装置。
【請求項2】
前記発煙口は、前記警告灯より高い位置に設置されていることを特徴とする請求項1記載の避難誘導装置。
【請求項3】
前記発煙部に空気を取り入れる空気導入部と、
その空気導入部から前記発煙部に取り入れた空気を前記発煙口に送る送風手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の避難誘導装置。
【請求項4】
前記空気導入部は、前記支柱の下端側に設けられており、
前記支柱は、前記空気導入部から前記発煙部へ空気を送る送風路を内部に備えていることを特徴とする請求項3記載の避難誘導装置。
【請求項5】
前記支柱は、機械的接合手段により複数の管状体が長手方向に連接されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の避難誘導装置。
【請求項6】
前記支柱に配置されると共に前記警告灯とは異なる色で点灯または点滅する表示灯と、
前記検出手段により浸水または斜面崩壊の発生の可能性が低下したことが検出された場合に前記表示灯を点灯または点滅させる表示灯発光手段とを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の避難誘導装置。
【請求項7】
前記支柱は、避難場所となる建築物の出入口が形成された壁面、避難場所となる建築物の出入口が形成された壁面近くの屋上、又は避難場所となる高台の昇降口に通じる通路に設置されるものであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の避難誘導装置。
【請求項8】
現在の時刻を取得する時刻取得手段と、
その時刻取得手段により検出された時刻が昼間の時間帯であるかを判断する時間帯判断手段とを備え、
前記発煙手段は、前記時間帯判断手段により昼間の時間帯であると判断された場合に前記発煙部より発煙させることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の避難誘導装置。
【請求項9】
照度を検出する照度検出手段と、
その照度検出手段により検出された照度が所定の照度以上であるかを判断する照度判断手段とを備え、
前記発煙手段は、前記照度判断手段により所定の照度以上であると判断された場合に前記発煙部より発煙させることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の避難誘導装置。
【請求項10】
前記検出手段により浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことが検出された場合に音響を発生する発音手段と、
その発音手段により音響が発生された時間が所定時間以上であるかを判断する発音判断手段と、
その発音判断手段により音響が発生された時間が所定時間以上であると判断された場合に前記発音手段による音響の発生を停止する発音停止手段とを備えていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の避難誘導装置。
【請求項1】
想定される浸水深よりも高い位置にある避難場所もしくは斜面崩壊が想定される地域の外側に位置する避難場所に設置される又はそれら避難場所の上方に設置される1乃至複数の支柱と、
その支柱の上端側に配置される警告灯と、
前記支柱の上端側に発煙口が設けられ、その発煙口から発煙可能に構成される発煙部と、
津波、洪水、高潮による浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことを検出する検出手段と、
その検出手段により浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことが検出された場合に前記警告灯を点灯または点滅させる警告灯発光手段と、
前記検出手段により浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことが検出された場合に前記発煙部より発煙させる発煙手段とを備えていることを特徴とする避難誘導装置。
【請求項2】
前記発煙口は、前記警告灯より高い位置に設置されていることを特徴とする請求項1記載の避難誘導装置。
【請求項3】
前記発煙部に空気を取り入れる空気導入部と、
その空気導入部から前記発煙部に取り入れた空気を前記発煙口に送る送風手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の避難誘導装置。
【請求項4】
前記空気導入部は、前記支柱の下端側に設けられており、
前記支柱は、前記空気導入部から前記発煙部へ空気を送る送風路を内部に備えていることを特徴とする請求項3記載の避難誘導装置。
【請求項5】
前記支柱は、機械的接合手段により複数の管状体が長手方向に連接されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の避難誘導装置。
【請求項6】
前記支柱に配置されると共に前記警告灯とは異なる色で点灯または点滅する表示灯と、
前記検出手段により浸水または斜面崩壊の発生の可能性が低下したことが検出された場合に前記表示灯を点灯または点滅させる表示灯発光手段とを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の避難誘導装置。
【請求項7】
前記支柱は、避難場所となる建築物の出入口が形成された壁面、避難場所となる建築物の出入口が形成された壁面近くの屋上、又は避難場所となる高台の昇降口に通じる通路に設置されるものであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の避難誘導装置。
【請求項8】
現在の時刻を取得する時刻取得手段と、
その時刻取得手段により検出された時刻が昼間の時間帯であるかを判断する時間帯判断手段とを備え、
前記発煙手段は、前記時間帯判断手段により昼間の時間帯であると判断された場合に前記発煙部より発煙させることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の避難誘導装置。
【請求項9】
照度を検出する照度検出手段と、
その照度検出手段により検出された照度が所定の照度以上であるかを判断する照度判断手段とを備え、
前記発煙手段は、前記照度判断手段により所定の照度以上であると判断された場合に前記発煙部より発煙させることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の避難誘導装置。
【請求項10】
前記検出手段により浸水または斜面崩壊の発生の可能性が高いことが検出された場合に音響を発生する発音手段と、
その発音手段により音響が発生された時間が所定時間以上であるかを判断する発音判断手段と、
その発音判断手段により音響が発生された時間が所定時間以上であると判断された場合に前記発音手段による音響の発生を停止する発音停止手段とを備えていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の避難誘導装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−109755(P2013−109755A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225935(P2012−225935)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【出願人】(511262223)豊川鋼機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【出願人】(511262223)豊川鋼機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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