説明

還元された炭水化物類及び炭水化物誘導体で被覆された熱的に安定なコロイド状酸化鉄

【課題】哺乳類の被験体への投与のための酸化鉄錯体を提供すること。
【解決手段】増強された磁気共鳴画像剤及び増血剤のための、組成物、該組成物を作る方法、及び該組成物を使用する方法が提供され、該薬剤はカルボキシアルキル化された還元多糖で被覆の超微粒な超常磁性酸化鉄を含む。血漿増量薬としてカルボキシメチル還元デキストランを用いる方法が提供される。更にもう1つの態様において、本発明は、還元多糖で被覆された酸化鉄錯体を調合する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本技術分野は、カルボキシメチル還元多糖である組成物、血漿増量剤としての
使用のため及び酸化鉄粒子の被覆のための方法、還元多糖又は誘導体化された還
元多糖で被覆された超常磁性及び非超常磁性の酸化鉄から成る組成物、及びMR
Iの造影剤及び造血薬としての使用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
磁気共鳴画像法(MRI)の発明以来、造影剤と呼ばれる注射可能な化学物質
の対応する技術が発達した。造影剤は、診断の目的のためにより有用なMRI像
を生じるのを助けるように、医療業務において重要な役割を演じる。特に、2種
類の造影剤が開発され、臨床業務で採用された。これらは、Magnavist
(登録商標)のような低分子量のガドリニウム錯体と、FeridexI.V.
(登録商標)及びCombidex(登録商標)のようなコロイド状酸化鉄であ
る。これら2種類の薬剤何れも理想的ではない。これらの薬剤が直面した問題を
表1に示し、それらは、成分の費用、合成の非効率、最後の滅菌(オートクレー
ブ処理)の間の被覆剤の消失、画像化の目的での器官の取り込み量の狭い範囲、
毒性の副作用、第一の段階又は平衡投与の何れかへの使用の制限、及びここで記
載されたその他のものを含む。これらの問題を克服し、これら2種類の造影剤の
特性を兼ね備える薬剤が大いに望まれている。
【0003】
【表1】

【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本発明の1つの態様は、哺乳類の被験体への投与のための酸化鉄錯体を提供す
る方法であって、該方法は、還元多糖の酸化鉄錯体を製造し、及び該錯体をオー
トクレーブ処理で滅菌することを含む。一般的に、還元多糖は、還元されたグル
コースのポリマーである。還元されたグルコースのポリマーの一例は、還元デキ
ストランである。還元多糖は、硼水素化塩から成る群から選択される試薬又は水
素化触媒存在下での水素との多糖の反応を通して製造される。本方法のさらなる
側面においては、酸化鉄は超常磁性である。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) 哺乳類の被験体への投与のための酸化鉄錯体を提供する方法
であって、該方法は、
還元多糖の酸化鉄錯体を製造し、及び
該錯体をオートクレーブ処理で滅菌することを含む、方法。
(項目2) 前記還元多糖が、還元されたグルコースのポリマーである、
項目1に記載の方法。
(項目3) 前記還元されたグルコースのポリマーが、還元デキストラン
である、項目2に記載の方法。
(項目4) 前記還元多糖が、多糖を、硼水素化塩から成る群から選択さ
れる試薬及び水素化触媒の存在下での水素と反応させることにより製造される、
項目1に記載の方法。
(項目5) 哺乳類の被験体へ投与する酸化鉄錯体を提供する方法であっ
て、該方法は、
誘導体化された還元多糖の酸化鉄錯体を製造し、及び
該錯体をオートクレーブ処理で滅菌することを含む、方法。
(項目6) 該錯体の製造が、カルボキシアルキル化によって還元多糖を
誘導体化することを含む、項目5に記載の方法。
(項目7) カルボキシアルキル化がカルボキシメチル化である、項目
6に記載の方法。
(項目8) 還元多糖が還元デキストランである、項目7に記載の方法

(項目9) 哺乳類の被験体への投与が、人への投与である、項目8に
記載の方法。
(項目10) ナトリウム塩として単離された、誘導体化された還元多糖
が、約1650cm−1乃至約1800cm−1の領域に赤外吸収ピークを含ま
ない、項目5に記載の方法。
(項目11) 誘導体化された還元多糖の製造が、約50℃より低い温度
で達成される、項目5に記載の方法。
(項目12) 誘導体化された還元多糖の製造が、約40℃より低い温度
で達成される、項目11に記載の方法。
(項目13) 該酸化鉄が超常磁性である、項目5に記載の方法。
(項目14) 薬の用途のデキストラン組成物を配合する方法であって、
該組成物が未処理デキストランに比べて減少した毒性を有し、該方法が、デキス
トランを与えること、及びデキストランを、硼水素化塩から成る群から選択され
る還元剤の1つ及び水素化触媒の存在下での水素と反応させることを含む、方法

(項目15) 該薬の用途が、血漿増量剤としての哺乳類の被験体への体
内投与である、項目14に記載の方法。
(項目16) 多糖組成物であって、該組成物が減少した毒性を与えるよ
うに、該組成物がデキストランを含むという種類の多糖組成物を哺乳類の被験体
へ投与する改良された方法であって、該改良が、組成物の配合において還元多糖
を利用することを含む、方法。
(項目17) 該組成物が減少した毒性を与えるように、哺乳類の被験体
に多糖を投与する改良された方法であって、該改良が、組成物の配合において還
元多糖を利用することを含む、方法。
(項目18) 還元多糖の酸化鉄錯体であって、該錯体が少なくとも約1
00℃の温度で安定である、錯体。
(項目19) 項目18に記載の還元多糖の酸化鉄錯体であって、該錯
体が約121℃の温度で安定である、錯体。
(項目20) 項目19に記載の還元多糖の酸化鉄錯体であって、該錯
体が少なくとも約121℃の温度で、該錯体を滅菌するのに有効な時間安定であ
る、錯体。
(項目21) 項目18に記載の還元多糖の酸化鉄錯体であって、該還
元多糖が誘導体化されている、錯体。
(項目22) 項目21に記載の還元多糖の酸化鉄錯体であって、誘導
体化された還元多糖がカルボキシアルキル還元多糖である、錯体。
(項目23) 項目22に記載の還元多糖の酸化鉄錯体であって、カル
ボキシアルキルが、カルボキシメチル、カルボキシエチル、及びカルボキシプロ
ピルから成る群から選択される、錯体。
(項目24) 項目23に記載の還元多糖の酸化鉄錯体であって、還元
多糖が還元デキストランである、錯体。
(項目25) 項目22に記載の還元多糖の酸化鉄錯体であって、誘導
体化された還元デキストランがカルボキシメチル還元デキストランである、錯体

(項目26) 項目24記載の還元多糖の酸化鉄錯体であって、還元デ
キストランの誘導体化量が、多糖1g当たり少なくとも約750マイクロモルの
カルボキシル基であり、該組成物が、誘導体化がより少量の組成物に比較して哺
乳類において減少した毒性を有する、錯体。
(項目27) 項目26記載の還元多糖の酸化鉄錯体であって、還元デ
キストランの誘導体化濃度が、多糖1g当たり少なくとも約900マイクロモル
のカルボキシル基であり、該組成物が、誘導体化がより少量の組成物に比較して
哺乳類において減少した毒性を有する、錯体。
(項目28) 項目27記載の還元多糖の酸化鉄錯体であって、還元デ
キストランの誘導体化量が、多糖1g当たり少なくとも約1100マイクロモル
のカルボキシル基であり、該組成物が、誘導体化がより少量の組成物に比較して
減少した毒性を有する、錯体。
(項目29) 項目24記載の還元多糖の酸化鉄錯体であって、還元デ
キストランの誘導体化量が、多糖1g当たり約1300マイクロモルより少ない
カルボキシル基であり、該錯体が、実質的な凝集がなくコロイド状懸濁液のまま
である、錯体。
(項目30) 未処理デキストランに比べて被験者への減少した毒性を有
する薬の用途のデキストラン組成物を配合する方法であって、該方法が、
デキストランを提供すること、及び提供されたデキストランを、硼水素化塩又は
水素化触媒の存在下の水素と反応させ、その後カルボキシルメチル化を行い、カ
ルボキシルメチル化された還元されたデキストラン組成物が減少した毒性を有す
ること、を含む方法。
(項目31) 反応工程の後に、カルボキシメチル化された還元デキスト
ラン組成物を滅菌する更なる工程を有する、項目30に記載の方法。
(項目32) 滅菌工程の後に、滅菌組成物を1回投薬量単位として供す
る更なる工程を有する、項目31に記載の方法。
(項目33) 血漿増量剤を必要とする哺乳類に該組成物を投与する追加
の工程を有する、項目31に記載の方法。
(項目34) 項目31に記載の方法により製造された、血漿増量剤と
しての使用のための生成物。
(項目35) 該組成物が減少した毒性を与えるように多糖を哺乳類の被
験体へ投与する改良された方法であって、該改良が、組成物の配合において誘導
体化され、還元された多糖を利用することを含む、方法。
(項目36) 多糖組成物であって、該組成物が減少した毒性を与えるよ
うに、該組成物がデキストランを含む種類の多糖組成物を、哺乳類の被験体へ投
与する改良された方法であって、該改良が、配合においてデキストランの代わり
にカルボキシメチル化された還元デキストランを利用することを含む、方法。
(項目37) 未処理デキストランに比べて高いpH安定性を有するデキ
ストラン組成物を、薬の用途に配合する方法であって、該方法が、
デキストランを提供すること、及びデキストランを、硼水素化塩又は水素化触媒
の存在下での水素と反応させ、還元デキストランが安定なpHを有する配合を与
えること、を含む方法。
(項目38) 未処理デキストランに比べて高いpH安定性を有するデキ
ストラン組成物を、薬の用途に配合する方法であって、該方法が、
デキストランを提供すること、
硼水素化塩又は水素化触媒の存在下での水素を用いてデキストランを還元し、及

還元デキストランをカルボキシメチル化してカルボキシメチル化された還元デキ
ストランが安定なpHを有する配合を生成するようにさせることを含む、方法。
(項目39) カルボキシル化工程の後に、カルボキシメチル化された還
元デキストラン配合物をオートクレーブ処理により滅菌することを更に含む、請
求項38に記載の方法。
(項目40) 滅菌されたカルボキシメチル化された還元デキストラン配
合物を、血漿増量剤を必要とする被験体に投与することを更に含む、項目39
に記載の方法。
(項目41) カルボキシメチル化工程の後に、減少した毒性を有するカ
ルボキシメチル化された還元デキストランの鉄コロイドの配合物を形成するため
に、鉄塩の溶液を与えることを更に含む、項目38に記載の方法。
(項目42) 鉄塩の溶液を与える工程の後に、オートクレーブ処理によ
り、カルボキシメチル化された還元デキストランの鉄の配合物を滅菌することを
更に含む、項目41に記載の方法。
(項目43) 前記薬の用途が、鉄を必要とする被験体に配合物を投与す
ることを含む、項目38に記載の方法。
(項目44) 鉄を必要とする被験体が、癌患者、胃腸炎患者、及びエリ
スロポイエチンレシピエントの群から選択される、項目43に記載の方法。
(項目45) 前記薬の用途が、組織又は臓器の改良された磁気共鳴画像
法(MRI)を得るために有効な量の配合物を、被験体に投与することを含む、
項目41に記載の方法。
(項目46) MRIを得るために有効な量のカルボキシメチル化された
還元デキストランの鉄の配合物の投与が、その後にさらなるMRIを得るために
更なる有効量を投与することである、項目45に記載の方法。
(項目47) 前記有効な量が、被験体の体重1kg当たり約0.1乃至
約4.0mgの鉄である、項目46に記載の方法。
(項目48) 前記有効な量が、被験体の体重1kg当たり約0.2乃至
約0.6mgの鉄である、項目47に記載の方法。
(項目49) 前記有効な量が、被験体の体重1kg当たり約0.4乃至
約1.0mgの鉄である、項目47に記載の方法。
(項目50) 前記有効な量が、被験体の体重1kg当たり約1.0乃至
約4.0mgの鉄である、項目47に記載の方法。
(項目51) 有効な量の投与と更なる有効な量の投与との間の間隔が1
時間未満である、項目46に記載の方法。
(項目52) 前記間隔が30分未満である、項目51に記載の方法。
(項目53) 被験体の生体内MRI用の造影剤を提供する方法であって
、カルボキシメチル化された還元された被覆された超微粒な超常磁性の酸化鉄コ
ロイドである組成物を配合する工程、及び最後に該組成物をオートクレービンブ
処理によって滅菌する工程を含む、方法。
(項目54) 鉄の不足した被験体を治療するための造血剤を提供する方
法であって、カルボキシメチル化された還元された被覆された超微粒な酸化鉄コ
ロイドである組成物を配合する工程、及び最後に該組成物をオートクレービンブ
処理によって滅菌する工程を含む、方法。
(項目55) オートクレーブされた組成物を単位投与量で提供する更な
る工程を有する、項目53又は54に記載の方法。
(項目56) 項目55の方法により調製された剤の複数回の投薬量を
含むキット。
【0005】
本発明のもう1つの好ましい態様は、哺乳類の被験体への投与のための酸化鉄
錯体を提供する方法であって、該方法は、誘導体化された還元多糖の酸化鉄錯体
を製造し、及び該錯体をオートクレーブ処理で滅菌することを含む。この方法に
よると、錯体の製造は、カルボキシアルキル化(例えば、カルボキシアルキル化
はカルボキシメチル化である)によって還元多糖を誘導体化することを含むこと
ができる。更に、この方法によると、還元多糖は、還元デキストランであり得る
。誘導体化された還元多糖は、ナトリウム塩として単離することができ、165
0乃至1800cm−1の領域に赤外吸収ピークを含まない。本方法の1つの側
面において、誘導体化された還元多糖の製造は、約50℃未満の温度で達成され
る。本方法のもう1つの側面においては、誘導体化された還元多糖の製造は、約
40℃未満の温度で達成される。本方法の更なる側面においては、酸化鉄は超常
磁性である。
【0006】
更にもう1つの態様において、本発明は、還元多糖で被覆された酸化鉄錯体を
調合する方法を提供する。この組成物は薬の用途のためであり、該組成物は、未
処理多糖で被覆された類似の酸化鉄触媒に比較して減少した毒性を有する。この
ような酸化鉄錯体を調合する方法は、還元多糖の酸化鉄錯体を製造すること、及
び該錯体をオートクレーブ処理で滅菌すること、を含む。該調合物は、多糖を、
硼水素化塩から成る群から選択される還元剤の1つ又は水素化触媒の存在下での
水素と反応させることにより製造される多糖を提供する。還元多糖の酸化鉄錯体
はこのような減少した毒性を有する。本方法の更なる側面においては、酸化鉄は
超常磁性である。
【0007】
更にもう1つの態様において、本発明は、還元された誘導体化された多糖で被
覆された酸化鉄錯体を調合する方法を提供する。この組成物は薬の用途のためで
あり、該組成物は、未処理の誘導体化された多糖で被覆された類似の酸化鉄錯体
に比較して減少した毒性を有する。このような酸化鉄錯体を調合する方法は、還
元された誘導体化された多糖の酸化鉄錯体を製造すること、及び該錯体をオート
クレーブ処理で滅菌すること、を含む。本方法によると、錯体を製造することは
、還元多糖をカルボキシアルキル化(例えば、カルボキシアルキル化はカルボキ
シメチル化である)により誘導体化することを含むことができる。更に、本方法
によると、還元多糖は、還元デキストランであり得る。誘導体化された還元多糖
は、ナトリウム塩として単離され得、1650乃至1800cm−1の領域内に
赤外吸収ピークを含まない。本方法の1つの側面において、誘導体化された還元
多糖の製造は、約50℃未満の温度で達成される。本方法のもう1つの側面にお
いて、誘導体化された還元多糖の製造は、約40℃未満の温度で達成される。本
方法の更なる側面において、酸化鉄は超常磁性である。
【0008】
本発明のもう1つの態様は、造影剤にT1シーケンス(sequence)の
シグナル増加及びT2シーケンスのシグナル減少を与えるT1及びT2緩和特性
を有する還元された誘導体化された多糖の酸化鉄錯体を提供する。本態様の更な
る側面は、還元された誘導体化された多糖の酸化鉄は、1回の検査において連続
画像のため複数回投与され得る。本薬剤の更にもう1つの側面は、血管系、肝臓
、脾臓、骨髄、及びリンパ節を含む複数の器官系を映すのに用いられ得る。
【0009】
本発明のもう1つの態様は、静注用鉄補給剤として使用するために、還元多糖
の酸化鉄錯体を提供する。
【0010】
本発明のもう1つの態様は、静注用鉄補給剤として使用するための、還元され
た誘導体化された多糖の酸化鉄錯体を提供する。
【0011】
また、更なる態様において、本発明は、哺乳類の被験体にオートクレーブ処理
した還元多糖の酸化鉄錯体を投与する改良された方法を提供する。改良された投
与方法は、15ml以下の容量のオートクレーブ処理した還元多糖の酸化鉄錯体
の注射を含む。本態様のもう1つの側面において、注射される容積は塊薬(bo
lus)として注射される。本方法の更なる側面において、酸化鉄は超常磁性で
ある。本態様の更なる側面において、注射される容積は、改良される画質を与え
る。
【0012】
また、更なる態様において、本発明は、哺乳類の被験体にオートクレーブ処理
した誘導体化された還元多糖の酸化鉄錯体を投与する改良された方法を提供する
。改良された投与方法は、15ml以下の容量のオートクレーブ処理した還元さ
れた誘導体化された多糖の酸化鉄錯体の注射を含む。本態様のもう1つの側面に
おいて、注射される容積は塊薬として注射される。本方法の更なる側面において
、酸化鉄は超常磁性である。本態様の更なる側面において、注射される容積は、
改良される画質を与える。
【0013】
本発明の1つの態様は、該組成物が減少した毒性を与えるように、哺乳類の被
験体に還元多糖の酸化鉄錯体を投与する改良された方法を提供し、ここで改良は
、組成物の調合において還元多糖を利用することを含む。本態様の更なる側面に
おいて、酸化鉄は超常磁性である。
【0014】
本発明の1つの態様は、該組成物が減少した毒性を与えるように、哺乳類の被
験体に還元された誘導体化された多糖の酸化鉄錯体を投与する改良された方法を
提供し、ここで改良は、組成物の調合において還元された誘導体化された多糖を
利用することを含む。本態様の更なる側面において、酸化鉄は超常磁性である。
【0015】
本発明の1つの態様は、還元多糖の酸化鉄錯体を提供し、ここで還元多糖は誘
導体化され、例えば、還元された誘導体化された多糖はカルボキシアルキル多糖
である。カルボキシアルキルは、カルボキシメチル、カルボキシエチル、及びカ
ルボキシプロピルから成る群から選択される。更に、還元多糖は還元デキストラ
ンであり得、例えば、還元デキストランは還元カルボキシメチルデキストランで
あり得る。本発明の本態様の更なる側面は、還元デキストランの誘導体化の濃度
は、多糖1g当たりカルボキシル基が少なくとも750マイクロモルで、150
0マイクロモル未満であり、ここで、該組成物は、誘導体化の程度がより低い組
成物に比べ減少した毒性を有する。
【0016】
本発明の1つの態様は、少なくとも約100℃の温度で安定であるような還元
多糖の酸化鉄錯体を与える。好ましい態様において、そのような錯体は約121
℃の温度で安定である。還元多糖の酸化鉄錯体のなお一層好ましい側面において
、そのような錯体は、該錯体を滅菌するのに十分な時間、少なくとも121℃の
温度で安定である。本態様の更なる側面において、酸化鉄は超常磁性である。
【0017】
本発明の態様は、少なくとも約100℃の温度で安定であるような還元された
誘導体化された多糖の酸化鉄錯体を与える。好ましい態様において、そのような
錯体は約121℃の温度で安定である。還元多糖の酸化鉄錯体のなお一層好まし
い側面において、そのような錯体は、該錯体を滅菌するのに十分な時間、少なく
とも121℃の温度で安定である。本態様の更なる側面において、酸化鉄は超常
磁性である。
【0018】
本発明の好ましい態様は、対応する未処理デキストランの酸化鉄に比べて増大
したpH安定性を有する還元多糖の酸化鉄錯体を、薬の用途のために配合する方
法であり、該方法は、デキストランを与えること、及びデキストランを硼水素化
塩又は水素化触媒の存在下で水素と反応させ、還元デキストランを鉄塩と反応さ
せて安定なpHを有する調合物を与えること、を含む。
【0019】
本発明の好ましい態様は、対応する未処理デキストランの酸化鉄に比べて増大
したpH安定性を有する還元された誘導体化された多糖の酸化鉄錯体を、薬の用
途のために配合する方法であり、該方法は、デキストランを与えること、及びデ
キストランを硼水素化塩又は水素化触媒の存在下で水素と反応させ、還元デキス
トランを鉄塩と反応させて安定なpHを有する調合物を与えること、を含む。
【0020】
もう1つの態様において、本発明は、薬の用途のための還元された誘導体化さ
れたデキストラン組成物(ここで、該組成物は、未処理デキストランに比べ減少
した毒性を有する)を配合する方法を提供し、還元された誘導体化された多糖を
製造すること、及び生成物をオートクレーブ処理で滅菌することを含む。この方
法によると、還元多糖は、未処理多糖を、硼水素化塩から成る群から選択される
いくつかの還元剤の1つ又は水素化触媒の存在下の水素と反応させることにより
得られる。本態様の好ましい側面において、多糖はデキストランである。該組成
物を製造することは、カルボキシアルキル化(例えば、ここではカルボキシアル
キル化はカルボキシメチル化である)によって還元多糖を誘導体化することを含
むことができる。更に、本方法によると、還元多糖は還元デキストランであり得
る。誘導された還元多糖は、ナトリウム塩として単離され得、1650乃至18
00cm−1の領域内に赤外吸収ピークを含まない。本方法の1つの側面におい
て、誘導体化された還元多糖の製造は、約50℃未満の温度で達成される。本方
法のもう1つの側面において、誘導体化された還元多糖の製造は、約40℃未満
の温度で達成される。
【0021】
本発明の一態様は、該組成物が減少した毒性を与えるように還元された誘導体
化された多糖を、哺乳類の被験体に投与する改良された方法を提供し、ここで該
改良は組成物の調合に還元多糖を利用することを含む。
【0022】
本発明の一態様は、還元多糖を提供し、ここで還元多糖は誘導体化され、例え
ば、還元された誘導体化された多糖はカルボキシアルキル多糖である。カルボキ
シアルキルは、カルボキシメチル、カルボキシエチル、及びカルボキシプロピル
から成る群から選択される。更に、還元多糖は、還元デキストランであり得る。
本発明の本態様の更なる側面は、還元デキストランの誘導体化の濃度が、多糖1
g当たりカルボキシル基が少なくとも750マイクロモルであり、ここで、該組
成物は、誘導体化のレベルがより低い組成物に比べ減少した毒性を有することで
ある。
【0023】
本発明のもう1つの態様は、薬の用途のための、未処理デキストランに比べ減
少した毒性を有するデキストラン組成物を調合する方法であり、該方法は、デキ
ストランを提供すること、及び提供されたデキストランを、硼水素化塩又は水素
化触媒の存在下での水素と反応させ、それに続いてカルボキシメチル化をするこ
と、減少した毒性を有する還元されたカルボキシメチル化されたデキストラン、
を含む。
【0024】
本発明のもう1つの態様は、該組成物が減少した毒性を与えるように該組成物
がデキストランを含むという種類の多糖組成物を、哺乳類の被験体に投与する改
良された方法であり、ここで該改良は、配合物中においてデキストランの代わり
に還元されたカルボキシメチル化されたデキストランを利用することを含む。も
う1つの側面において、本発明の一態様は、該組成物が減少した毒性を与えるよ
うに多糖を哺乳類の被験体に投与する改良された方法であり、ここで該改良は、
該組成物の調合において還元されたカルボキシメチル化された多糖を利用するこ
とを含む。
本発明の一態様は、還元された誘導体化されたデキストランの血液増量剤とし
ての使用の方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例5で得られたカルボキシメチル還元デキストラン(CMRD)のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトル分析を示す。
【図2】実施例31で得られたCMRDナトリウム塩で被覆された超微粒な超常磁性の酸化鉄(USPIO、米国特許第5,055,288を参照)のFTIRスペクトル分析を示す。
【図3】出発物質の還元デキストランとの反応に用いられた臭化酢酸の量mg/グラム(横座標)の関数として、生成物1グラム当たりのカルボキシメチル基の量(マイクロモル)(縦座標)を表すグラフである。
【図4】体重1kg当たり2.2mgの鉄の静脈内投与後、三匹の雄性ラットの血液中でのCMRD被覆USPIOの薬物動態を示す。血液試料(0.25ml)は、横座標で示された時間に採取され、緩和時間は、BruckerMinispec分光計で測定された。
【図5】ラット血液中でのCMRD被覆USPIOの半減期(67分)を決定するために用いられたグラフを示す。図4のデータは、図5中のグラフを作るために用いられた。61乃至75分の半減期の範囲は、95%の信頼性係数内にある。
【図6A】ラットのMRI(造影剤の投与前(A)及び投与後(B)、上が前方部)を示す。投与後の造影像を取る前に、CMRD被覆USPIO(体重1kg当たり5mgの鉄)が大腿静脈に投与された。図は、CMRD被覆USPIOの投与によって引き起こされた心臓及び周辺の動脈と静脈の高められた視覚化を例証する。映像化は、ジェネラル・エレクトリック社2テルサ磁気共鳴画像化機を用いて行われた。
【図6B】ラットのMRI(造影剤の投与前(A)及び投与後(B)、上が前方部)を示す。投与後の造影像を取る前に、CMRD被覆USPIO(体重1kg当たり5mgの鉄)が大腿静脈に投与された。図は、CMRD被覆USPIOの投与によって引き起こされた心臓及び周辺の動脈と静脈の高められた視覚化を例証する。映像化は、ジェネラル・エレクトリック社2テルサ磁気共鳴画像化機を用いて行われた。
【図7A】豚のMRI像(造影剤の投与前(A)及び投与後(B)、上が前方部)を示す。投与後の造影像を取る前に、CMRD被覆USPIO(実施例31、体重1kg当たり4mgの鉄)が大腿静脈に投与された。図は、CMRD被覆USPIOの投与によって引き起こされた心臓及び周辺の動脈と静脈の高められた視覚化を例証する。映像化は、ジーメンス社1.5T MagnatomVison磁気共鳴画像化機を用いて行われた。
【図7B】豚のMRI像(造影剤の投与前(A)及び投与後(B)、上が前方部)を示す。投与後の造影像を取る前に、CMRD被覆USPIO(実施例31、体重1kg当たり4mgの鉄)が大腿静脈に投与された。図は、CMRD被覆USPIOの投与によって引き起こされた心臓及び周辺の動脈と静脈の高められた視覚化を例証する。映像化は、ジーメンス社1.5T MagnatomVison磁気共鳴画像化機を用いて行われた。
【図8A】造影画像剤の投与前(A)及び投与後(B)の、正常な人被験体の前方部のMRI像を示す。造影化後の画像を取る前に、CMRD被覆USPIO(実施例31、体重1kg当たり4mgの鉄)が腕の静脈に塊薬として投与された。造影剤の投与後15乃至30分間、映像化が行われた。画像は、心臓及び周辺の動脈と静脈の高められた視覚化を例証する。
【図8B】造影画像剤の投与前(A)及び投与後(B)の、正常な人被験体の前方部のMRI像を示す。造影化後の画像を取る前に、CMRD被覆USPIO(実施例31、体重1kg当たり4mgの鉄)が腕の静脈に塊薬として投与された。造影剤の投与後15乃至30分間、映像化が行われた。画像は、心臓及び周辺の動脈と静脈の高められた視覚化を例証する。
【図9】人における画像化剤の血液クリアラス速度を示す。血液試料を取る前に、CMRD被覆USPIO(体重1kg当たり4mgの鉄)が腕の静脈に塊薬として投与された。CMRD被覆USPIOの血中濃度を決定するために、1/T2緩和について試料が分析された。グラフは、時間(横座標)の関数としてCMRD被覆USPIOの濃度(縦座標)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
特定の態様の詳細な説明
表1は、前に記載したMRI造影剤の2つの類の特徴を要約し、そしてそれら
の特徴の理想的な造影剤の特徴に対する比較を示す。本発明の薬剤は、本明細書
中に示されているように、理想的な特徴を具体化する。
【0027】
驚くべきことに、本明細書中に示されているような望ましい特性を有する薬剤
のような、多糖還元デキストラン及び還元デキストラン誘導体で被覆された極小
超常磁性酸化鉄(ultrasmall superparamagnetic
iron oxide)(USPIO)の製剤の開発及び合成は、1つの成分
、即ち、デキストランT10、の化学的性質の変化から導かれる。この変化は、
アルコールへのその合成において使用される多糖の末端アルデヒド基のアルコー
ルへの還元を含んだ(図解1)。図解1は、硼水素化ナトリウムによる処理時の
デキストランのような多糖における化学的変化を図で説明する。多糖のヘミアセ
タール形態(構造1)は、多糖のアルデヒド形態(構造2)と平衡状態にある。
構造2は平衡混合物の0.01%未満を構成する(Brucker,G.(19
74)Organic Chemistry: Amino Acids, P
eptides and Carbohydrates., Tankonyk
iado Press, Budapest, p.991)。構造2の硼水素
化ナトリウムによる処理は、多糖の線状ポリオール形態(構造3)への非可逆的
な転化をもたらす。構造1と2の間の動的平衡は、硼水素化ナトリウムで処理さ
れたとき、線状ポリオール(構造3)への完全な転化を可能にする。
【0028】
図式1:
【化1】

【0029】
デキストラン被覆された超常磁性酸化鉄粒子は、肝臓及びリンパの像の画質を
高めるそれらの能力のために、核磁気共鳴映像法(MRI)造影剤として特別の
重要性を有する。Feridex I.V.(登録商標)(マサチューセッツ州
ケンブリッジのAdvanced Magnetics, Inc.)は、デキ
ストラン被覆された超常磁性酸化鉄MRI造影剤であり、人において使用するこ
とが認可されている。Combidex(登録商標)(Advanced Ma
gnetics, Inc.)は、デキストラン被覆された極小超常磁性酸化鉄
(USPIO)であり、これは肝臓の映像化及びリンパの映像化に対するフェー
ズIIIの臨床試験を終了している。Combidex(登録商標)はFeri
dex I.V.(登録商標)(60nm)よりも小さい平均直径(20nm)
を有し、このことはCombidex(登録商標)に人体中における異なる生体
分布(biodistribution)を与える。Combidex(登録商
標)は、デキストラン、塩化第二鉄、及び塩化第一鉄の溶液への塩基の添加によ
って製造される。この合成プロセスは、成分を組み合わせること、加熱すること
、及び限外濾過によって精製することを含む。しかしながら、反応中の粒子に付
加されるデキストランの収率は効率的ではない。薬品グレードのデキストランは
、Combidex(登録商標)の合成の最も高価な成分である。Combid
ex(登録商標)の合成におけるデキストランのより効率的な使用が、製造コス
トを下げるために望ましい。
【0030】
最終的滅菌(オートクレーブ処理)は注入用の薬剤を滅菌するための好ましい
方法である。しかしながら、MRI造影剤として使用される多くの超常磁性酸化
鉄コロイドは、これらのコロイドの生体分布と除去に影響するポリマーの被覆(
coating)及び外被(covering)を使用して合成される。オート
クレーブ処理プロセスの間に熱にさらされると、ポリマー被覆は酸化鉄の芯から
分離する可能性がある。酸化鉄からのポリマーの分離の機能的な帰結は、凝集、
生体分布の変化(プラズマ半減期の変化)、及び毒性の変化(有害な事象の潜在
的増加)のような材料の物理的変化である。例えば、溶液のpHの実質的な低下
が、鉄デキストラン粒子のオートクレーブ処理後に検出される可能性があり、p
Hはその後の貯蔵時に低下し続ける。
【0031】
熱応力に対する抵抗性を付与することから成るこの問題の幾つかの解決方法が
記載されている。Palmacciらの米国特許第5,262,176号(引用
によって本明細書中に組み入れられている)は、オートクレーブ処理の前に酸化
鉄粒子上の外被を安定化させるために、架橋されたデキストランを使用した。架
橋プロセスは、エピクロロヒドリン及びエピブロモヒドリンのような有毒の薬剤
を使用し、これらは架橋反応後にコロイドから除去されなければならない。
【0032】
被覆の分離に影響しない熱応力によって引き起こされるコロイドの凝集を防ぐ
ための方法も記載されている。これらの方法は、一般的に、オートクレーブ処理
中の添加剤の使用を含む。Gromanらの米国特許第4,827,945号及
びLewisらの米国特許第5,055,288号(両方の特許が引用によって
本明細書中に組み入れられている)は、被覆が分離するとき粒子の凝集を防ぐた
めにシトレートを使用する。しかしながら、熱と組み合わされた高濃度のシトレ
ートの使用は毒性を生じる可能性がある。Gromanらの米国特許第5,10
2,652号(引用によって本明細書中に組み入れられている)は、オートクレ
ーブ処理中の凝集を防ぐためにマンニトールのような低分子量炭水化物を使用す
る。これらの添加剤は製品の製造のコストと複雑さを増加させ、しかも鉄粒子か
らのポリマーの分離の問題を解決しない。
【0033】
Josephsonらの米国特許第5,160,726号(引用によって本明
細書中に組み入れられている)は、コロイドを滅菌するために熱よりもむしろフ
ィルター滅菌を使用することによって、被覆への熱応力を避ける。フィルター滅
菌は、滅菌プロセスと容器の封止の両方を微生物を含まない環境中で行わなけれ
ばならないため、費用がかかる。さらに、フィルター滅菌はオートクレーブ処理
のプロセスよりも失敗の率が高く、これは完全に微生物を含まない濾過工程のた
めの環境を得ることが不可能であることを反映している。
【0034】
Muranoらの米国特許第5,204,457号は、延長された期間80℃
まで改善された安定性を有するカルボキシメチル−デキストラン被覆された粒子
を記載しているが、オートクレーブ処理による最終的滅菌の使用を教示していな
い。Hasegawaら(Japan J. Appl. Phys., Pa
rt I, 37(3A):1029−1032,1998)は、80℃におい
て熱安定性を有するカルボキシメチルデキストラン被覆された鉄粒子を記載して
いるが、カルボキシメチル還元デキストランで被覆された粒子の使用も、オート
クレーブ処理による最終的滅菌の使用も教示していない。
【0035】
磁気共鳴画像化剤(magnetic resonance imaging
agents)は、主に水のプロトンについて、通常緩和時間に影響すること
によって作用する。2つのタイプの緩和が存在し、1つはスピン−スピン又はT
1緩和として知られ、そして第2のものはスピン−格子又はT2緩和として知ら
れている。T1緩和は、一般的に、シグナルの増加によって生じた像を明るくす
る。T1プロセスは、脈管系の映像化において最も有用である。T2緩和は、一
般的に、シグナルの減少によって生じた像を暗くする。T2プロセスは、腫瘍の
ような病巣を含む肝臓、脾臓、又はリンパ節のような器官の映像化において最も
有用である。全ての造影剤がT1及びT2特性の両方を有するが、T1又はT2
緩和のいずれかが特定の造影剤の優勢な緩和特性を特徴付けることができる。低
分子量のガドリニウムに基づく造影剤はT1剤であり、そして脳卒中及び動脈瘤
のような血管に関係した医学上の問題及び脳の映像化において主要な用途を有す
る。酸化鉄に基づくコロイド状造影剤はT2剤であり、肝臓及びリンパ節の腫瘍
(前立腺及び胸部のガン)の映像化において主要な用途を有する。T1及びT2
特性の両方を有する造影剤が望ましいだろう。そのような造影剤の使用は、T1
又はT2造影剤のいずれかの使用を必要する場合と比較して、(i)全ての用途
に対して単一の薬剤を提供し、そして薬剤室の在庫品を簡単化し、(ii) MR
I一式における映像化を簡単化し、そして(iii) 1回の検査の間に一人の患者
の複数の医学上の問題を同時に検査できることにより患者の看護を改善するだろ
う。
【0036】
デキストランは、人の静脈内に(i.v.)投与されたとき、致命的なアナフ
ィラキシー反応を引き出すことがあり得る(Briseid, G.ら,Act
a Pharmcol. et Toxicol., 1980,47:119
−126;Hedin, H.ら,Int.Arch. Allergy an
d Immunol., 1997:113:358−359)。関連する有害
な反応が、磁性デキストラン被覆酸化鉄コロイドの投与についても観察された。
造血剤として、特に最終段階の腎臓の透析患者用のエリトロポエチン治療に対す
る付加物として有用性を有する非磁性デキストラン被覆酸化鉄コロイドも同様な
副作用を有する可能性がある。
【0037】
脈管系内の解剖学的特徴に関する情報は、2つの方法で造影剤を使用して得る
ことができる。造影剤が塊薬(bolus)として最初に投与されるとき、造影
剤は初めに細かく分岐した管を比較的まとまった塊として通過する。所望の解剖
学的特徴の映像化の時間を塊薬がその特徴を通過する時間に調整することによっ
て、有用な情報を提供することができる。造影剤の使用のこの技術は、一次通過
映像化(first pass imaging)と呼ばれる。後に、塊薬は混
合によって希釈され、そして脈管系中において平衡濃度に達する。特定環境下に
おいて、この平衡又は定常状態は有用な情報を提供することができる。映像化は
、初期の段階、即ち、造影剤の注入後数分以内(「一次通過」)、及び後の段階
、即ち、造影剤の注入後約10分から(平衡段階)、において行うことができる
。ガドリニウム剤は、脈管系から組織の細胞間空間への拡散が容易であるため、
一次通過映像化に対してのみ適している。前述のコロイド状酸化鉄は、延長され
た期間にわたって希釈されて投与される必要があるため、平衡に対して有用であ
る。コロイド状酸化鉄は細胞間空間中に漏れず、数時間にわたって脈管系中に残
ることができる。一次通過映像化及び平衡映像化の両方を行う機会を提供する造
影剤が望ましいだろう。
【0038】
「一次通過」映像化用の造影剤の医療セッティングにおける投与中に、映像化
のタイミングと造影剤の「一次通過」の通過と映像化のタイミングは一致しない
かもしれない。有用な像が得られなかった場合、もう1つの別の「一次通過」像
を得るために造影剤の2回目の投与が望ましくなる。その他の場合において、放
射線医学者は、関芯のある複数の部位の各々において「一次通過」像を得るため
に、造影剤の複数回の投与計画を必要として、患者において幾つかの体積を試験
することが有用であることを見出す。ガドリニウム造影剤を使用した場合、この
複数回投与「一次通過」の適用は可能ではない。なぜならば、ガドリニウムは血
管空間から漏れ出して、関芯のある血管のまわりにぼやけたバックグラウンドを
形成するからである。現在の酸化鉄コロイドに基づく造影剤は適していない。な
ぜならば、それらは塊薬として投与されずに、長時間にわたって希釈溶液として
投与され、「一次通過」の用途を避けているからである。
【0039】
ガン患者において腫瘍の進行の診断は、病気の段階を特徴付けるため、及び処
置の決定のために重要である。コストと患者の不快感を最小化するために、MR
I検査において、病気によって影響を受けている可能性のある複数の器官系の評
価を可能にする単一回分の造影剤の投与が望ましい。例えば、主に胸部のガンに
おいては、胸部中の腫瘍の状態、及び肝臓、脾臓、骨髄、及びリンパ節を含む複
数の転移部位における腫瘍の状態を評価するのが望ましい。ガドリニウムに基づ
く造影剤の投与は、それらの人体中における短い半減期、それらの脈管系中への
漏れ、及び関芯のある器官内にそれらが集中できないことのために、この要件を
満たすことができない。Combidex(登録商標)のような酸化鉄コロイド
に基づく造影剤はこの多様な機能において役立つことができるが、もう1つの酸
化鉄コロイド造影剤であるFeridex I.V.(登録商標)は肝臓と脾臓
の映像化に限定される。
【0040】
小体積(5ml未満)の造影剤の投与が望ましい。なぜならば、小体積の投与
は一次通過映像化から得られる分解能を改善し、注入時間と患者の不快感を最小
化するからである。ガドリニウムに基づく造影剤は、これらの薬剤の溶解度と効
能によって生じる制約のために、約30mlの体積で投与される。現在、酸化鉄
に基づく造影剤は、大体積(50〜100ml)の希釈溶液として延長された期
間(30分間)にわたって投与される。これらの制約は、酸化鉄に基づく薬剤の
急激で濃縮された投与に関係する安全上の問題に起因する。塊薬注入は、一次通
過映像化を可能にし、そして患者とヘルスケアプロバイダーとの間の接触時間を
短縮する点で望ましい。さらに、塊薬注入は、被験者が検査中にMRI装置中に
入っている間に、施術者が造影剤を投与することを可能にし、これによって装置
の映像化時間の効率的な使用を最適化する。ガドリニウムに基づく造影剤は塊薬
として投与できる。
【0041】
ガドリニウムに基づく造影剤はキレート化分子とガドリニウムカチオンとから
成る。ガドリニウムは毒性の元素であり、毒性を防ぐために体から排出されなけ
ればならない。コロイド状酸化鉄は体から排出されないが、肝臓及びその他の器
官中で、ヘモグロビン中の鉄のような、代謝可能な鉄へ処理される。従って、本
発明の組成物は、貧血症に悩んでいる患者のための鉄補給物として役立つことが
でき、そしてエリトロポエチンによる処置を受けている患者に対して特に有用で
ある。
【0042】
本発明の1つの態様は、材料が熱応力にさらされたときに被覆が酸化鉄から分
離するのを軽減するように水溶性多糖被覆と結合した酸化鉄のコロイドを合成す
る方法を提供する。
【0043】
本明細書及び添付の請求の範囲中において使用されるとき、「熱応力」は、中
性のpHにおいて約30分間約121℃以上にコロイドを加熱することとして、
又は注入可能な薬剤をオートクレーブ処理する(又は最終的に滅菌する)ために
本技術分野においてよく知られている時間、温度、及びpHのその他の組み合わ
せとして定義される。
【0044】
本発明の1つの態様である方法は、多糖を硼水素化塩のような還元剤又はPt
又はPdのような適当な水素化触媒の存在下に水素で処理して還元された多糖を
得る工程を含み、それによって末端の還元性の糖が還元されて開鎖多価アルコー
ル構造を生じる。還元された多糖は、アラビノガラクタン、澱粉、セルロース、
ヒドロキシエチル澱粉(HES)、イヌリン、又はデキストランでよい。さらに
、多糖は粒子形成の前にさらに官能化されてもよい。この方法は、さらに、還元
された多糖を第二鉄塩、第一鉄塩、又は第二鉄塩と第一鉄塩の混合物を含む群か
ら選択される酸性溶液中の鉄塩と混合すること、溶液を冷却すること、溶液を塩
基で中和すること、及び被覆された酸化鉄コロイドを収集することを含む。
【0045】
本発明のさらなる態様によれば、コロイドを中和する工程のために使用できる
塩基は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、そしてより好ましくは水酸化アン
モニウムである。本発明のさらなる態様においては、多糖誘導体は還元されたデ
キストランであり、そして鉄塩は第二及び第一鉄塩でよく、これらは最終的滅菌
中の熱応力下に酸化鉄の芯から分離しない水溶性被覆を有する超常磁性酸化鉄コ
ロイドを製造する。
【0046】
本発明のもう1つの態様において、第二鉄塩のみが使用され、非超常磁性粒子
を生成する。
【0047】
もう1つの態様において、多糖を酸化鉄ゾル(液体中のコロイド分散体)に添
加し、pHを6〜8に調整し、そして被覆された酸化鉄コロイドを収集すること
によって、被覆されたコロイドを調製することができる。
【0048】
本明細書及び添付の請求の範囲中において使用される「コロイド」という用語
は、約250nm未満のサイズを有するマクロ分子又は粒子を包含するものであ
る。本発明の酸化鉄多糖コロイドは、前に記載された材料と比較して、実質的に
改善された物理的特性と製造性を有する。改善された物理的特性は、コロイドを
121℃の温度に30分間さらすことによって測定される、コロイドの熱応力に
抵抗する能力において明白である。本発明に従って製造されたコロイド粒子は、
応力下に多糖の分離のより少ない証拠しか示さず、コロイド状のままであり、そ
して容易に検知可能な程度のサイズの変化を示さない。不安定な多糖被覆を有す
るコロイドの例はCombidex(登録商標)を含み、これは、熱応力にさら
されたとき、そのデキストラン被覆の43%を失い、粒子の直径サイズが21n
mから587nmまで増加し、材料のかなりの凝集が目視による分析時に観察さ
れた。米国特許第4,770,183号に従って調製された、もう1つの超常磁
性酸化鉄デキストランコロイドであるFeridex(登録商標)も、121℃
でわずか30分間の熱処理後に、熱処理されたコロイドが0.8μmの細孔サイ
ズを有するフィルターを通過できないことによって示されるように、粒度の増加
を示した。
【0049】
製造中に、本発明の1つの態様である方法は、典型的には、非還元多糖を使用
する従来の製造において必要な量と比較して十分の一以下の量の多糖しか使用せ
ず、本発明の方法の改善された効率によりかなりの原料コストの節約をもたらす

【0050】
多糖誘導体濃度、塩基濃度、及び/又はFe(III)/Fe(II)濃度の
ような要素の変更によって、異なる磁化率及びサイズを有するコロイドを製造す
ることができる。Fe(III)/Fe(II)比率の変更は粒度を変え、そし
て磁化率を変える。より高い比率(例えば、2.0モル/モル)は磁化率を低下
させる傾向があり、一方より低い比率(1.5モル/モル未満)は粒度を増加さ
せる傾向がある。
【0051】
この方法は、多糖のタイプを変えることによって、そして合成後に粒子をさら
に誘導体化することによって、異なる生物学的特性を有するコロイドを生成する
ように調整することができる。
【0052】
本発明の1つの態様であるコロイドは、核磁気共鳴映像法(MRI)用の造影
剤として、又は細胞の磁気分別、免疫アッセイ、磁気により目標に向けられる薬
品の供給において、及び治療目的の注入可能な鉄補給物として使用することがで
きる。これらのコロイドは非経口的投与に特に適している。なぜならば、最終の
滅菌が典型的にはオートクレーブ処理(これはバクテリアの胞子、及びウイルス
を含む全ての細胞状生命形態の生存能力を除去するので好ましい方法である)で
あるからである。従来のコロイドの製造方法は、オートクレーブ処理プロセス中
に安定剤としてシトレート又は低分子量多糖のような添加物の添加を必要とした
(米国特許第4,827,945号及び米国特許第5,102,652号を参照
のこと)か、又はフィルター滅菌の使用によって熱応力を完全に避けた(米国特
許第5,150,726号を参照のこと)。従って、コロイドの合成方法である
本発明の態様、及びコロイド組成物を含む本発明の態様は、有意に改善されたM
RI造影剤、及び鉄補給物である造血剤としての有用性を提供する。従来技術に
対するこれらの薬剤において提供される改良点は、本明細書中の実施例において
示される以下の事実中に見出される:本発明の態様である薬剤がオートクレーブ
処理によって加熱滅菌され、そして従って環境温度での長期間の貯蔵に対して最
適化されていること;これらの薬剤が滅菌又は貯蔵プロセス中に安定性を維持す
るための添加剤の添加を必要としないこと;これらの薬剤が人を含む哺乳類に対
して非毒性であること;映像化のために使用される薬剤の有効投与量が、本技術
分野において記載された薬剤よりも少ない量であること;及び投与後の薬物動態
が、診療所への1回の訪問と映像装置の1回の使用中に追加の像を得るために、
最初の投与分の投与後の短い間隔の後に投与される繰り返しの継続的な投与分を
使用できるようなものであること。
【0053】
デキストラン及びその誘導体の場合、この方法によって調製された配合物は、
ラットモデルを使用して得られたデータによって、及び人間の被験者における臨
床試験において示されているように、哺乳類における免疫反応が比較的小さい。
デキストラン及びデキストラン誘導体で被覆された鉄粒子は、3つの哺乳類種、
ラット、ブタ、及び人間において、心臓、肺、腎臓、及びその他の器官及び系の
映像化を改善した。デキストラン及びデキストラン誘導体で被覆された鉄粒子は
、また、透析患者、ガン患者、胃腸炎患者、及びエリトロポエチンの摂取者のよ
うな、慢性的に鉄の不足している患者の群に対して、真の経口鉄補給剤よりもよ
り効率的に吸収される形態の鉄を供給するために、造血剤としても使用すること
ができる。誘導体化された還元デキストランは、また、血漿増量剤としても使用
することができ、これは、血液及び血液画分とは異なり、免疫学的にクロスマッ
チさせる必要がなく、そして人の血清アルブミン製剤と異なり、肝炎、CMV及
びHIVの種、スポンジ状(spongiform)脳炎、及びその他の伝染性
の作用物を含むウイルスを破壊するように滅菌することができる。本発明の血漿
増量剤は冷凍したり光や熱から遠ざけて貯蔵する必要がなく、従って、熱帯性気
候においてさえ、外傷のような血液の損失によるショックの治療のような、緊急
の医療的状況において有利である。
【0054】
実施例1、2、及び3は、それぞれタイプT1、T5、及びT10の還元デキ
ストランを製造する方法を示す。実施例4は、還元プルランの製造を記載する。
【0055】
実施例5〜9は、未処理デキストランT10からの、様々な程度のカルボキシ
メチル化を有するカルボキシメチル還元デキストランT10の合成を記載する(
表2)。
【0056】
実施例10〜15は、還元デキストランT10から出発して、様々な程度のカ
ルボキシメチル化を有するカルボキシメチル還元デキストランT10の合成を記
載する(表3)。
【0057】
実施例16〜18は、未処理デキストランからの、カルボキシメチルデキスト
ランT10、T40、及びT70の合成を記載する。
【0058】
実施例19〜26は、還元デキストラン及び未処理デキストランで被覆された
酸化鉄の製造を記載する。これらの実施例中の反応の条件は、還元多糖又は非還
元多糖のいずれかで被覆されたUSPIOを製造するように選択された。未処理
デキストラン酸化鉄製剤用の反応条件は、粒子の被覆における各々のデキストラ
ンの有効性の比較を可能にするために、同じ分子量の還元デキストラン製剤用の
ものと同じであった。(これらの実施例中において製造された)未処理多糖と比
較された還元多糖を使用して得られた酸化鉄製剤の平均体積直径(MVD)及び
磁化率を表4中にまとめる。
【0059】
実施例27〜29は、30nm未満の粒子直径を有する酸化鉄コロイドを得る
ための、未処理T1、T5、及びT10デキストランを使用するUSPIOの製
造手順を記載する。酸化鉄コロイドの合成と特性における未処理デキストラン(
実施例27〜29)とそれらの各々の還元デキストラン(実施例19、21、及
び23)の効果の比較を表5に示す。
【0060】
実施例30〜31は、カルボキシメチル未処理デキストランT10及びカルボ
キシメチル還元デキストランT10で被覆されたUSPIOの製造を記載する。
【0061】
実施例32〜41は、様々な程度のカルボキシメチル化を含むカルボキシメチ
ル還元デキストランT10製剤で被覆されたUSPIOの製造を記載する。US
PIOのコロイドサイズに対するCMRDのカルボキシメチル化の程度の影響を
表6に示す。塩化第二鉄/塩化第一鉄溶液の溶解度に対するCMRDのカルボキ
シメチル化の程度の影響を表7に示す。
【0062】
実施例42〜48は、未処理デキストラン及び還元デキストラン及びCMRD
を使用する酸化鉄ゾルの合成及びそれらの安定化を記載する。実施例49は、塩
化第二鉄とCMRDの塩基析出(base precipitation)を使
用するCMRD被覆された非磁性酸化鉄コロイドの製造を記載する。
【0063】
実施例50は、還元デキストラン及び未処理デキストランで被覆されたUSP
IOの様々な製剤のオートクレーブ処理による滅菌のプロセスのこれらの粒子の
特性に対する影響を試験する。結果は表8及び9に示されている。
【0064】
実施例51は、様々な造影剤の緩和特性を報告し、ガドリニウムに基づく造影
剤と未処理デキストラン及びカルボキシメチル還元デキストランT10を使用し
て製造されたUSPIOの緩和特性を比較している(表10)。
【0065】
実施例52〜53においては、還元デキストラン及び非還元(未処理)デキス
トランで被覆されたUSPIOのラットに対する毒性の徴候の存在が、アナフィ
ラキシー型反応に関して、確認された。アナフィラキシー型反応の程度は、脚の
浮腫の体積によって決定される。同様の研究を、未処理デキストラン、還元デキ
ストラン、及びカルボキシメチル還元デキストランを使用して行った。結果を表
11〜14にまとめる。
【0066】
実施例54及び図4及び5は、ラットの血液循環からのCMRD被覆されたU
SPIOのクリアランスの速度を示す。薬剤の半減期が決定される。
【0067】
CMRD被覆されたUSPIOの投与の後の改善されたMRIスキャンが実施
例55及び図6中に示されており、このスキャンはラットの心臓、大動脈、及び
その他の心臓に関連した動脈の像を示している。実施例56及び図7は、ブタの
前面部のCMRD被覆USPIOで高められたMRIスキャンを示す。実施例5
7は、臨床試験の一部として、人の被験者へのCMRD被覆USPIOの注入が
悪影響を生じないことを示す。実施例57は、生体分布(図8)、映像化速度(
図9及び表15)、及び人中でのこの材料のMRI使用におけるバックグラウン
ドの不存在を記載する。この実施例中のデータは、本発明の実施者が、診療室へ
の訪問又はMRI施設への訪問の実際の時間内に複数回の投与を行うことができ
そして続けて複数の映像を得ることができることを示す。
【実施例】
【0068】
実施例
還元多糖の合成のための一般的手順
過剰の硼水素化ナトリウムによる処理によって還元された多糖を製造し、5サ
イクルの限外濾過によって一般的に精製した。実施例全体を通して蒸留水を使用
する。多糖プルラン(pullulan)の場合、さらに精製することなく還元
混合物を使用した。全ての場合において、生成物は5%未満の残留アルデヒド含
有率を示した。残留アルデヒド濃度は、改良されたテトラゾリウムブルー(te
trazolium blue)アッセイを使用して決定した(Jue, C.
K.ら, J. Biochem. Biophys. Methods, 1
985,11:109−15)。デキストラン濃度はフェノール/硫酸アッセイ
によって決定した(Kitchen, R., Proc. Sugar Pr
ocess. Res. Conf., 1983, 232−47)。限外濾
過が省かれた場合、デキストランT1を除いて、残留ボレート塩は粒子形成に影
響しないことが示された。実施例1から4までは、それぞれ、還元多糖T1、T
5、及びT10、及びプルランの合成方法を提供する。保持時間は、20mMの
燐酸塩緩衝食塩水、0.4ml/分の流速で、WatersのUltrahyd
rogel250カラムであるSN T52262A33を使用して決定した。
【0069】
実施例1.還元デキストランT1
デキストランT1(10g)を25℃の100mlの水中に溶解し、1.0g
の硼水素化ナトリウムを添加し、そして混合物を12時間撹拌した。6MのHC
lを使用してpHを5.0にして、200mlのエタノール(無水)を添加した
。析出物を遠芯分離によって収集した。エタノール/水層をデカンテーションし
、そして残渣を100mlの水中に溶解した。200mlの無水エタノールを添
加して2回目の析出を生じさせ、エタノール/水を再びデカンテーションした。
析出した生成物を水中に溶解し、減圧下に凍結乾燥させて60%の収率で白色固
体を生成した。観察されたHPLC保持時間(分)は、還元デキストランについ
ては24.4であり、そして未処理デキストランについては24.4だった。
【0070】
実施例2.還元デキストランT5
デキストランT5(4g)を25℃の25mlの水中に溶解し、83mgの硼
水素化ナトリウムを添加し、そして混合物を12時間撹拌した。6MのHClを
使用してpHを5.0にした。混合物を1kDaの分子量カットオフの(mol
ecular weight cut−off)(MWCO)膜フィルターに対
して限外濾過した。生成物を減圧下に凍結乾燥させて白色固体を生成し、70%
の収率が得られた。観察されたHPLC保持時間(分)は、還元デキストランに
ついては22.9であり、そして未処理デキストランについては21.9だった

【0071】
実施例3.還元デキストランT10
デキストランT10(5,003g)を26,011gの水中に溶解した。硼
水素化ナトリウム(52.5g)を添加し、そして混合物を24時間撹拌した。
6NのHClを使用してpHを7.1に調整した。生成物を、3kDaの限外濾
過膜に対して繰り返し限外濾過することによって精製し、減圧下に凍結乾燥させ
て白色固体を生成した。収量:3129g。観察されたHPLC保持時間(分)
は、還元デキストランについては21.6であり、そして未処理デキストランに
ついては21.1だった。
【0072】
実施例4.還元プルラン
プルラン(90mg)を25℃の0.8mlの水中に溶解し、1mgの硼水素
化ナトリウムを添加した。混合物を12時間撹拌し、USPIOの製造において
直接的に使用した。
【0073】
基質として未処理デキストランT−10を使用するカルボキシメチル還元デキ
ストランの合成のための一般的手順
実施例5〜9は、未処理デキストランからのカルボキシメチル還元デキストラ
ンの合成を記載する。2つの一般的合成方法、即ち、未処理デキストランの出発
濃度が70mg/gであった低デキストラン濃度法(実施例5)、及び未処理デ
キストランの出発濃度が240mg/gであった高デキストラン濃度法(実施例
6〜9)が示される。
【0074】
実施例5.低デキストラン濃度法によって調製されたカルボキシメチル還元デ
キストランT10
以下の溶液を調製し、5℃に冷却した:溶液Aは10.5リットルの水中に4
,200gの水酸化ナトリウムを含み、そして溶液Bは5,700mlの水中に
2,310gのブロモ酢酸を含んだ。溶液Cは7,500mlの水中に3,00
0gのデキストランT10を含み、38℃に加熱された。
【0075】
水酸化ナトリウム(600g)を7.5リットルの水中に溶解し、38℃まで
暖めた。硼水素化ナトリウム(60g)を添加して、混合物を2分間撹拌し、そ
の後溶液Cを添加し、続いて直ちに2回目の60gの部分の硼水素化ナトリウム
を添加した。混合物を38℃で30分間撹拌し、その後15℃まで冷却した。溶
液の温度を25℃未満に維持しながら、溶液Aを添加した。溶液Bを添加し、溶
液の温度を25℃未満に維持した。混合物を室温で2時間撹拌し、そして溶液温
度を35℃未満に維持しながら、5℃に冷却された6MのHClを使用してpH
7.5まで中和した。混合物を0.2μmのフィルターを通して濾過し、そして
80リットルまで希釈した。3kDaのMWCO限外濾過膜を通して繰り返し限
外濾過することによって生成物を精製し、0.2μmのフィルターを通して再び
濾過して、減圧下に凍結乾燥させた。
【0076】
回収された固体、即ち、2,560gのカルボキシメチル還元デキストランT
10(ナトリウム塩)は、滴定によって決定して、生成物1g当たり約1,26
5マイクロモルのカルボキシルのカルボキシル含有率を示した。ブロモ酢酸の使
用は、クロロ酢酸の使用と比較して、より低い温度での反応の進行を可能にし、
そしてそのFTIRスペクトル(図1)によって証明されるようにより清浄な生
成物を製造した。図1は、クロロ酢酸を使用して製造された米国特許第5,20
4,457号中の生成物のFTIRとは異なり、1600cm−1におけるカル
ボキシレートのもの以外のカルボニル吸収を示さない。
【0077】
実施例6.高デキストラン濃度法によって調製されたカルボキシメチル還元デ
キストランCMRD T10
硼水素化ナトリウム(0.4g)及び水中の水酸化ナトリウムの50%重量/
重量溶液の0.5gを50gの水中の25gのデキストランの溶液に添加した。
混合物を室温で4時間撹拌し、1:1の水酸化ナトリウム溶液の19.5g及び
6.2gのブロモ酢酸を添加し、そして氷浴を使用して温度を25℃未満に保っ
た。混合物をその後室温で16時間撹拌した。
【0078】
生成物を精製するために、混合物のpHを6MのHClを使用してpH6.2
に調節し、そして120mlのエタノールを添加した。析出物が形成し、これを
沈降させ、そして上澄液をデカンテーションによって除去した。残渣を60ml
の水中に溶解し、そして200mgの塩化ナトリウムを添加し、続いて30ml
のエタノールを添加し、そしてカルボキシメチル還元デキストランを沈降させた
。水と塩化ナトリウムの添加、それに続く析出物の溶解、及びエタノール析出の
順序をさらに2回繰り返した。残渣を60mlの水中に溶解し、そして1リット
ルのエタノールを添加した。カルボキシメチル還元デキストランを再び沈降させ
、そして固体を中ガラス濾過器(medium frit glass fil
ter)上で収集した。白色固体を50℃で24時間乾燥させた。収量は、滴定
によって決定して、1g当たり1108マイクロモルのカルボキシルを有する生
成物27gであった(表2)。
【0079】
実施例7.高デキストラン濃度法によって調製されたカルボキシメチル還元デ
キストランT10
硼水素化ナトリウム(0.4g)及び50%水酸化ナトリウムの0.5gを5
0gの水中の25gのデキストランの溶液に添加した。混合物を室温で4時間撹
拌し、50%水酸化ナトリウムの20.0g及び6.95gのブロモ酢酸を添加
し、そして混合物を室温で16時間撹拌しながら、氷浴を使用して温度を25℃
未満に保った。生成物を実施例6に記載したように精製した。収量は、滴定によ
って決定して、1g当たり1262マイクロモルのカルボキシルを有する生成物
23.9gであった(表2)。
【0080】
実施例8.高デキストラン濃度法によって調製されたカルボキシメチル還元デ
キストランT10
硼水素化ナトリウム(0.4g)及び50%水酸化ナトリウムの0.5gを5
0gの水中の25gのデキストランの溶液に添加した。混合物を室温で4時間撹
拌し、そして氷浴を使用して温度を25℃未満に維持しながら、50%水酸化ナ
トリウムの20.67g及び7.65gのブロモ酢酸を添加した。混合物を室温
で16時間撹拌した。生成物を実施例6に記載したように精製した。収量は、滴
定によって決定して、1g当たり1404マイクロモルのカルボキシルを有する
生成物24.5gであった(表2)。
【0081】
実施例9.高デキストラン濃度法によって調製されたカルボキシメチル還元デ
キストランCMRD T10
硼水素化ナトリウム(0.4g)及び50%水酸化ナトリウム溶液の0.5g
を50gの水中の25gのデキストランの溶液に添加した。混合物を室温で4時
間撹拌し、そして氷浴を使用して温度を25℃未満に維持しながら、50%水酸
化ナトリウムの20.67g及び7.65gのブロモ酢酸を添加した。混合物を
室温で16時間撹拌し、そして生成物を実施例6に記載したように精製した。収
量は、滴定によって決定して、生成物の1g当たり1528マイクロモルのカル
ボキシルを有する生成物23.4gであった(表2)。
【0082】
合成において使用されたブロモ酢酸の量とデキストランへのカルボキシル基の
組み込みマイクロモル量の結果の関係を高デキストラン濃度法を使用して試験し
た。この関係は線形であることが判明した(表2及び図3を参照のこと)。実施
例6から9の反応体の質量とカルボキシメチルの収量を表2に示す。
【0083】
低デキストラン高塩基法による還元デキストランT−10を使用するカルボキ
シメチル還元デキストラン製剤の合成
実施例10〜14は、低濃度の還元デキストランを使用して開始する様々な程
度の置換を有するカルボキシメチル還元デキストランの合成を記載する。この方
法においては、還元デキストランの開始濃度は70mg/gであり、そしてNa
OHは少なくとも約107mg/gであった。表3は、反応中に使用されるブロ
モ酢酸の量が増加するにつれて、カルボキシメチル置換の程度が増加したことを
示す。
【0084】
【表2】

【0085】
実施例10.低デキストラン高塩基法を使用するカルボキシメチル還元デキス
トランCMRD T10
還元デキストランT10(15g)を72mlの水中に溶解し、そして8Mの
水酸化ナトリウムの72mlを添加した。混合物を25℃にし、そして3mlの
水中の1.15gのブロモ酢酸の溶液を添加した。混合物を室温で1時間撹拌し
、その後75mlの体積の粉砕された氷に添加した。溶液のpHを6MのHCl
を使用してpH6.0にした。3kDaの限外濾過膜に対して繰り返し限外濾過
した後、生成物を減圧下に凍結乾燥させた。収量は13.25gの生成物だった
。回収された固体、カルボキシメチル還元デキストランT10(ナトリウム塩)
は、滴定によって決定して、1g当たり約110マイクロモルのカルボキシルの
カルボキシル含有率を示した(表3)。
【0086】
実施例11.低デキストラン高塩基法を使用するカルボキシメチル還元デキス
トランT10
還元デキストランT10(150g)を720mlの水中に溶解し、そして8
Mの水酸化ナトリウムの720mlを添加した。混合物を25℃にし、そして1
40mlの水中の11.5gのブロモ酢酸の溶液を添加した。混合物を室温で1
時間撹拌し、その後750mlの体積の粉砕された氷に添加し、溶液のpHを6
MのHClを使用してpH6.0にした。3kDaのMWCO限外濾過膜に対し
て繰り返し限外濾過した後、生成物を減圧下に凍結乾燥させた。収量は、滴定に
よって決定して、生成物1g当たり約130マイクロモルのカルボキシルのカル
ボキシル含有率を有する、回収された固体カルボキシメチル還元デキストランT
10(ナトリウム塩)の126.21gであった(表3)。
【0087】
実施例12.低デキストラン高塩基法を使用するカルボキシメチル還元デキス
トランCMRD T10
還元デキストランT10(150g)を720mlの水中に溶解し、そして8
Mの水酸化ナトリウムの720mlを添加した。混合物を25℃にし、そして1
40mlの水中の26.6gのブロモ酢酸の溶液を添加し、混合物を室温で1時
間撹拌し、その後750mlの体積の粉砕された氷に添加した。溶液のpHを6
MのHClを使用してpH6.0にした。3kDaのMWCO限外濾過膜に対し
て繰り返し限外濾過した後、生成物を減圧下に凍結乾燥させた。収量は測定しな
かった。回収された固体、カルボキシメチル還元デキストランT10(ナトリウ
ム塩)は、滴定によって決定して、生成物1g当たり約280マイクロモルのカ
ルボキシルのカルボキシル含有率を示した(表3)。
【0088】
実施例13.低デキストラン高塩基法を使用するカルボキシメチル還元デキス
トランCMRD T10
還元デキストランT10(15g)を72mlの水中に溶解し、そして8Mの
水酸化ナトリウムの72mlを添加した。混合物を25℃にし、そして8mlの
水中の3.45gのブロモ酢酸の溶液を添加した。混合物を室温で1時間撹拌し
、その後75mlの体積の粉砕された氷に添加した。溶液のpHを6MのHCl
を使用してpH6.0にした。3kDaのMWCO限外濾過膜に対して繰り返し
限外濾過した後、生成物を減圧下に凍結乾燥させた。収量は、滴定によって決定
して、生成物1g当たり約450マイクロモルのカルボキシルのカルボキシル含
有率を有する、回収された固体カルボキシメチル還元デキストランT10(ナト
リウム塩)の9.4gであった(表3)。
【0089】
実施例14.低デキストラン高塩基法を使用するカルボキシメチル還元デキス
トランCMRD T10
還元デキストランT10(150g)を720mlの水中に溶解し、そして8
Mの水酸化ナトリウムの720mlを添加した。混合物を25℃にし、そして1
40mlの水中の58.8gのブロモ酢酸の溶液を添加した。混合物を室温で1
時間撹拌し、その後750mlの体積の粉砕された氷に添加した。溶液のpHを
6MのHClを使用してpH6.0にした。3kDaのMWCO限外濾過膜に対
して繰り返し限外濾過した後、生成物を減圧下に凍結乾燥させた。収量は、滴定
によって決定して、生成物1g当たり約580マイクロモルのカルボキシルのカ
ルボキシル含有率を有する、回収された固体カルボキシメチル還元デキストラン
T10(ナトリウム塩)の127.88gであった(表3)。
【0090】
表3は、観察されたカルボキシメチル置換の程度が、反応中に使用されたブロ
モ酢酸の量の関数であったことを示す。データは、一般的に反応中のブロモ酢酸
の量の増加が生成物中のCOOHの濃度の増加をもたらしたことを示す。カルボ
キシメチルの組み込みの収率は、例えば、実施例13及び14のように、反応の
規模のような条件によっても影響された。
【0091】
【表3】

【0092】
実施例15.市販の源からのカルボキシメチル還元デキストランT10
カルボキシメチル還元デキストランをAmersham−Pharmacia
から購入した。この固体は、滴定によって決定して、生成物1g当たり約188
7マイクロモルのカルボキシルのカルボキシル含有率を示した。
【0093】
実施例16〜18は、それぞれ、未処理、非還元デキストランT−10、T−
40、及びT−70からのカルボキシメチルデキストランの合成を記載する。
【0094】
実施例16.カルボキシメチルデキストランT10
以下の溶液を調製し、5℃に冷却した:溶液A:250mlの水中の105.
2gの水酸化ナトリウム;溶液B:142.5mlの水中の58.0gのブロモ
酢酸;及び溶液C:187.5mlの水中の75.7gのデキストランT10。
【0095】
溶液の温度を25℃未満に維持しながら、溶液Cと溶液Aに187.5mlの
水中に溶解された水酸化ナトリウム(14.4g)を添加した。温度を25℃未
満に維持しながら、溶液Bを添加し、得られた溶液を室温で2時間撹拌し、その
後溶液温度を35℃未満に維持しながら、(5℃に冷却された)6MのHClを
使用してpH7.5まで中和した。混合物を0.2μmの細孔サイズのフィルタ
ーに通して、そして2リットルまで希釈した。生成物を、3kDaのMWCO限
外濾過膜に対して繰り返し限外濾過することによって精製し、0.2μmのフィ
ルターで再び濾過し、そして減圧下に凍結乾燥させた。収量は53.17gであ
り、回収された固体カルボキシメチルデキストランT10(ナトリウム塩)は、
滴定によって決定して、生成物1g当たり約1220マイクロモルのカルボキシ
ルのカルボキシル含有率を示した。
【0096】
実施例17.カルボキシメチルデキストランT40
以下の溶液を調製し、5℃に冷却した:溶液A:480mlの水中の154g
の水酸化ナトリウム;溶液B:260mlの水中の77gのブロモ酢酸;及び溶
液C:400mlの水中の100gのデキストランT40。
【0097】
溶液をAを溶液Cに一度に全て添加した。5分後、溶液Bを添加し、温度を2
0℃と25℃との間に維持しながら、一緒にされた溶液を120分間撹拌した。
混合物を6MのHClで中和し、0.2μmのフィルターで濾過し、そして2リ
ットルまで希釈した。生成物を、3kDaのMWCO限外濾過膜に対して繰り返
し限外濾過することによって精製し、0.2μmのフィルターで濾過し、そして
減圧下に凍結乾燥させた。収量は105.1gの回収された固体カルボキシメチ
ルデキストランT40(ナトリウム塩)であり、これは、滴定によって決定して
、生成物1g当たり約1390マイクロモルのカルボキシルのカルボキシル含有
率を示した。
【0098】
実施例18.カルボキシメチルデキストランT70
以下の溶液を調製し、5℃に冷却した:溶液A:480mlの水中の154g
の水酸化ナトリウム;溶液B:260mlの水中の77gのブロモ酢酸;及び溶
液C:400mlの水中の100gのデキストランT70。
【0099】
溶液をAを溶液Cに一度に全て添加した。5分後、溶液Bを添加し、氷浴を使
用して温度を20℃と25℃との間に維持しながら、一緒にされた溶液を撹拌し
た。120分後、溶液を6MのHClで中和した。溶液を0.2μmのフィルタ
ーで濾過し、そして2リットルまで希釈した。生成物を、3kDaのMWCO限
外濾過膜に対して繰り返し限外濾過することによって精製し、0.2μmのフィ
ルターで再び濾過し、そして減圧下に凍結乾燥させた。収量は、滴定によって決
定して、生成物1g当たり約1380マイクロモルのカルボキシルのカルボキシ
ル含有率を有する、回収された固体カルボキシメチルデキストランT70(ナト
リウム塩)の106.9gであった。
【0100】
還元多糖又は非還元多糖のいずれかで被覆されたUSPIO製剤の特性を比較
するための超常磁性コロイドの製造のための一般的手順
実施例19〜26は、同一の分子量の未処理多糖と還元多糖のペアから得られ
る多糖被覆された酸化鉄生成物を比較するために行った。同一の分子量の未処理
多糖と還元多糖の各々のペアに対するUSPIOコロイドの製造のために同一の
手順を使用した。より詳細に述べると、各々の分子量のペアに対して、同じ多糖
の鉄に対する比率と鉄濃度を使用した。各々の未処理多糖と還元多糖のペアに対
して使用された多糖の鉄に対する比率と鉄濃度は、還元多糖を使用して30nm
未満の直径及び20,000×10−6cgsより大の磁化率を有する0.2μ
mのフィルターを通して濾過可能なUSPIOを生成するように選択された。
【0101】
一般的手順は、鉄塩(Fe+3/Fe+2)及び多糖の溶液への過剰の水酸化
アンモニウムの添加、それに続く加熱、及び100kDaのMWCO膜フィルタ
ーを使用する水に対する限外濾過の6サイクルの実施を含んだ。限外濾過後、還
元多糖を使用して形成されたUSPIO製剤を0.2μmのフィルターを通して
濾過し、4℃で貯蔵した。
【0102】
未処理多糖を使用して製造された酸化鉄については、未処理デキストランT1
0で被覆された酸化鉄のみが0.2μmのフィルターを通して濾過可能であった
。粒状材料を含むこれらのサンプルを除いて、サイズと磁化率をその後測定した
。粒度は、Microtrac(登録商標)UPA装置(ペンシルバニア州、フ
ォート・ワシントンのHoneywell IAC Microtrac製)中
において動的光散乱を測定することによって決定し、平均体積直径(mean
volume diameter)(MVD)として報告した。磁化率は、Ma
they Johnson磁化率天秤を使用して決定した。鉄濃度はビピリジル
アッセイを使用して決定した(Kumar K., J. Liq. Chro
matgr. Relat. Technol., 1997, 20, 33
51−3364)。
【0103】
実施例19.還元デキストランT1被覆USPIOの製造
還元デキストランT1(1.7g)を20mlの水中に溶解し、32gの水中
の3gの六水和塩化第二鉄及び1.5gの四水和塩化第一鉄の溶液を添加した。
混合物を窒素で30分間パージし、5℃まで冷却し、そして12.7gの28%
水酸化アンモニウムを2分間撹拌しながら添加した。混合物を60℃に加熱し、
この温度で40分間維持し、その後80℃で2時間インキュベートした。生成物
に100kDaのMWCO膜フィルターを使用する水に対する6サイクルの限外
濾過を施した。限外濾過後、生成物を0.2μmのフィルターを通して濾過し、
4℃で貯蔵した。生成物は以下の特性を有することが観察された:平均体積直径
(Microtrac粒度分析器を使用して決定された)は18nmであった。
磁化率は13,323×10−6cgs/gFeであった。
【0104】
実施例20.未処理デキストランT1被覆酸化鉄の製造
未処理デキストランT1を還元デキストランT1の代わりに使用したことを除
いて、実施例19において還元デキストランについて上で記載した方法によって
、未処理デキストランT1酸化鉄を製造した。生成物は以下の特性を有すること
が観察された:平均体積直径(Microtrac粒度分析器を使用して決定さ
れた)は2764nmであった。磁化率は1,953×10−6cgs/gFe
であった。
【0105】
実施例21.還元デキストランT5被覆USPIOの製造
還元デキストランT5(0.45g)を13mlの水中に溶解し、4.5gの
水中の0.5gの六水和塩化第二鉄及び0.25gの四水和塩化第一鉄の溶液を
添加した。混合物を窒素で30分間パージし、5℃まで冷却し、そして1.42
gの28%水酸化アンモニウムを2分間撹拌しながら添加した。混合物を80℃
で2時間加熱し、実施例19に記載されたようにして精製した。生成物は以下の
特性を有することが観察された:平均体積直径(Microtrac粒度分析器
を使用して決定された)は16nmであった。磁化率は33,943×10−6
cgs/gFeであった。
【0106】
実施例22.未処理デキストランT5被覆酸化鉄の製造
未処理デキストランT5を還元デキストランT5の代わりに使用したことを除
いて、実施例21において還元デキストランについて上で記載した方法によって
、未処理デキストランT5酸化鉄を製造した。生成物は以下の特性を有すること
が観察された:平均体積直径(Microtrac粒度分析器を使用して決定さ
れた)は1,916nmであった。
【0107】
実施例23.還元デキストランT10被覆USPIOの製造
還元デキストランT10(2.7g)を70mlの水中に溶解し、27gの水
中の2.0gの六水和塩化第二鉄及び1.0gの四水和塩化第一鉄の溶液を添加
した。混合物を窒素で30分間パージし、5℃まで冷却し、そして8.5gの2
8%水酸化アンモニウムを2分間撹拌しながら添加した。混合物を80℃で2時
間加熱し、実施例19に記載されたようにして精製した。生成物は以下の特性を
有することが観察された:平均体積直径(Microtrac粒度分析器を使用
して決定された)は12nmであった。磁化率は31,743×10−6cgs
/gFeであった。
【0108】
実施例24.未処理デキストランT10被覆酸化鉄の製造
未処理デキストランT10を還元デキストランT10の代わりに使用したこと
を除いて、実施例23において還元デキストランについて上で記載した方法によ
って、未処理デキストランT10酸化鉄を製造した。生成物は以下の特性を有す
ることが観察された:平均体積直径(Microtrac粒度分析器を使用して
決定された)は757nmであった。磁化率は31,252×10−6cgs/
gFeであった。
【0109】
実施例25.還元プルラン被覆USPIOの製造
還元プルラン(0.045g)を0.4mlの水中に溶解し、1.3gの水中
の0.106gの六水和塩化第二鉄及び0.05gの四水和塩化第一鉄の溶液を
添加した。混合物を窒素で30分間パージし、5℃まで冷却し、そして0.04
4gの28%水酸化アンモニウムを2分間撹拌しながら添加した。混合物を80
℃で0.67時間加熱し、実施例19に記載されたようにして精製した。生成物
は以下の特性を有することが観察された:平均体積直径(Microtrac粒
度分析器を使用して決定された)は20nmであった。磁化率は27,066×
10−6cgs/gFeであった。
【0110】
実施例26.未処理プルラン被覆酸化鉄の製造
未処理プルランを還元プルランの代わりに使用したことを除いて、実施例25
において還元プルランについて上で記載した方法によって、未処理プルラン酸化
鉄を製造した。生成物は以下の特性を有することが観察された:平均体積直径(
Microtrac粒度分析器を使用して決定された)は1,184nmであっ
た。
【0111】
未処理多糖との比較において還元多糖を使用して得られた酸化鉄製剤の特性(
実施例19〜26から得られたデータの比較)
MRI造影剤に関して一般的に、小サイズの酸化鉄造影剤粒子、例えば、10
乃至50nmの範囲内の直径を有する粒子が好ましい。さらに、より大きい磁化
率の、そしてより大きい同質性の酸化鉄が好ましい。
【0112】
実施例19〜26のデータから、酸化鉄を被覆するために使用される多糖の還
元された末端糖の存在(還元多糖)が、未処理非還元多糖を使用して同様に製造
された酸化鉄と比較して、各々の得られるコロイドの粒子の直径に対して予期さ
れなかったかなりの影響を有することが観察された。表4は、平均体積直径(M
VD)によって示される、未処理多糖と還元多糖の各々のペアについて形成され
た粒子のサイズを示す。還元多糖と未処理多糖の濃度は、各々の分子量のグルー
プ内において一定に保たれた。濃度は、還元多糖によるUSPIOの合成を最適
化するように選択された。全ての多糖に関して、未処理非還元多糖の使用は、一
貫して還元多糖を使用した場合よりも大きい粒子を製造し、従って還元多糖は一
貫して好ましいより小さい粒子を与えた。
【0113】
さらに、合成され試験された所定分子量の多糖の各々のペアに関して、還元多
糖で被覆されたUSPIO製剤は、デキストランT10を使用して得られたコロ
イド(これについては還元されたものの被覆と未処理のものの被覆の磁化率は同
等だった)を除いて、未処理多糖を使用して合成された対応する酸化鉄製剤より
も高い磁化率を示した。
【0114】
これらのデータは、被覆されたUSPIOコロイドの製造における還元多糖の
使用が、磁化率の損失を伴うことなく、小サイズの好ましい粒子を生成すること
を示す。これらのデータは、多糖で被覆されたUSPIOの合成に対して多糖の
アルデヒドの還元が有する驚くべき効果を示す。
【0115】
【表4】

【0116】
30nm未満の平均体積直径の未処理非還元T1、T5、及びT10デキスト
ランを使用して製造された酸化鉄の特性
実施例27から29は、未処理デキストランT1、T5、及びT10から得ら
れた酸化鉄の製造を示す。コロイドは還元デキストラン(実施例19、21、及
び23)に関して記載したようにして非還元(未処理)デキストランを使用して
製造されたが、但し、これらの未処理非還元デキストラン粒子の製造は、対応す
るサイズの酸化鉄を製造するために、それらの対応する還元デキストラン同等物
よりも約10乃至34倍のデキストランを必要とした。デキストラン使用量の増
加の必要性は、示されている酸化鉄の対応する分子量のペアに関して生成物のデ
キストランの鉄に対する比率を比較することによって示される(表5)。
【0117】
データは、未処理デキストランT1、T5、及びT10の各々を使用して製造
された酸化鉄粒子の磁気特性及び合成中のデキストランの使用の効率が、各々の
同等の還元デキストランを使用して製造された粒子の対応する特性と比較して劣
っていたことを示す。
【0118】
実施例27.未処理T1デキストランで被覆された酸化鉄の製造
0.42gの六水和塩化第二鉄、0.21gの四水和塩化第一鉄、及び7.2
7gの水の混合物を0.2μmのフィルターを通して濾過した。この混合物の1
gの部分を0.1gデキストランT1/g水の水溶液の10mlに添加した。混
合物を窒素でパージし、その後28%水酸化アンモニウム溶液の0.22mlを
添加した。混合物を80℃で1時間加熱し、室温まで冷却し、そして0.2μm
のフィルターを通して濾過した。生成物は以下の特性を有することが観察された
:平均体積直径(Microtrac粒度分析器を使用して決定された)は27
nmであった。磁化率は2325×10−6cgs/gFeであった。
【0119】
実施例28.未処理T5デキストランで被覆された酸化鉄の製造
デキストランT5(0.8g)を9mlの水中に溶解し、そして9.2mlの
水中の51.8mgの六水和塩化第二鉄及び25.9mgの四水和塩化第一鉄の
0.2μmのフィルターを通して濾過された溶液の0.63mlに添加した。混
合物を窒素でパージし、その後28%水酸化アンモニウム溶液の1.4mlを添
加した。混合物を80℃で1時間加熱し、室温まで冷却し、そして0.2μmの
フィルターを通して濾過した。生成物は以下の特性を有することが観察された:
平均体積直径(Microtrac粒度分析器を使用して決定された)は20n
mであった。磁化率は1285×10−6cgs/gFeであった。
【0120】
実施例29.未処理T10デキストランで被覆された酸化鉄の製造
デキストランT10(9420g)を14915gの水中に溶解した。この混
合物の14915gの部分を0.2μmのフィルターを通して濾過し、反応容器
に添加した。六水和塩化第二鉄(891g)を713gの水中に溶解した。11
29gの部分を0.2μmのフィルターを通して濾過し、デキストランを含む反
応容器に添加した。この混合物に窒素の泡を吹き込みながら、混合物を一晩撹拌
しながら5℃まで冷却した。この窒素のパージの最後の30分間の前に、477
gの水中の359gの四水和塩化第一鉄の0.2μmのフィルターを通して濾過
された溶液の580gの部分を添加した。この混合物に、28%水酸化アンモニ
ウム溶液の786gを添加し、5℃まで冷却した。混合物を80℃に加熱し、8
0℃で2時間インキュベートし、そしてその後80℃に加熱された80リットル
の水中に注ぎ入れた。混合物を一晩放置して冷却させ、0.2μmのフィルター
を通して濾過し、そして100kDa限外濾過膜を使用する限外濾過により精製
した。生成物を0.2μmのフィルターを通して濾過した。生成物は以下の特性
を有することが観察された:平均体積直径(Microtrac粒度分析器を使
用して決定された)は21nmであった。磁化率は32,712×10−6cg
s/gFeであった。
【0121】
【表5】

【0122】
様々な程度のカルボキシメチル化を含むカルボキシメチル未処理デキストラン
T10及びカルボキシメチル還元デキストランT10で被覆されたUSPIOの
製造
実施例30及び31は、それぞれ、カルボキシメチル未処理デキストランT1
0及びカルボキシメチル還元デキストランT10で被覆されたUSPIOの製造
を記載する。実施例32〜36は、様々な程度のカルボキシメチル化を含むカル
ボキシメチル還元デキストランT10製剤で被覆されたUSPIO組成物の合成
を記載する。実施例37〜41は、塩化第二鉄及び様々な程度のカルボキシメチ
ル化を含むカルボキシメチル還元デキストランT10を含む製剤の溶解度を記載
する。
【0123】
実施例30.カルボキシメチルデキストランT10で被覆されたUSPIOの
製造
カルボキシメチルデキストランT10(60g、実施例16の方法によって製
造されたもの)を532gの水中に溶解した。14.7gの六水和塩化第二鉄、
7.2gの四水和塩化第一鉄、及び100mlの水から成る水溶液を0.2μm
のフィルターを通して濾過し、添加した。混合物を10℃まで冷却し、窒素でパ
ージし、そして52.2mlの28%水酸化アンモニウム溶液を撹拌しながら添
加した。混合物を75℃に加熱し、75℃で30分間維持し、2.5リットルの
水で希釈し、そして0.2μmのフィルターを通して濾過した。生成物を100
kDaのMWCO膜に対して繰り返し限外濾過することによって精製し、20m
gFe/mlまで濃縮し、そして0.2μmのフィルターを通して再び濾過した
。生成物は以下の特性を有することが観察された:MVD(Microtrac
粒度分析器を使用して決定された)は19nmであった。磁化率は27,835
×10−6cgs/gFeであった。そしてカルボキシル含有率は、CMRDの
1g当たり1,220マイクロモルであった。オートクレーブ処理に対する安定
性を決定するために、生成物のサンプルを密閉された5mlのガラスバイアルに
入れ、そして121℃で30分間加熱した(表9を参照のこと)。
【0124】
実施例31.カルボキシメチル還元デキストランT10で被覆されたUSPI
Oの製造
還元されたカルボキシメチルデキストランT10(40g、実施例5で製造さ
れたもの)を1,038mlの水中に溶解し、0.2μmの細孔サイズのフィル
ターを通して濾過した。374mlの水中の30gの六水和塩化第二鉄及び15
gの四水和塩化第一鉄の0.2μmのフィルターを通して濾過された溶液を、3
1mlの洗浄水と共に、デキストランに添加した。溶液を10℃まで冷却し、そ
して114gの28%水酸化アンモニウムを添加した。このコロイド混合物を7
8℃に加熱し、その温度で1時間維持した。この溶液をその後水で3リットルま
で希釈し、10℃まで冷却し、そしてYM−100フィルター膜(100kDa
のMWCO)で6回限外濾過した。21.1mgFe/gの最終濃度が得られた
。生成物は以下の特性を有することが観察された:平均体積直径(Microt
rac粒度分析器を使用して決定された)は21nmであった。磁化率は32,
732×10−6cgs/gFeであった。そしてカルボキシル含有率は、CM
RDの1g当たり1,265マイクロモルであった。粒子の内容物は、約50%
のFeと50%のデキストランであることが判明した。オートクレーブ処理に対
する安定性を決定するために、生成物のサンプルを密閉された5mlのガラスバ
イアルに入れ、そして121℃で30分間加熱した(表9を参照のこと)。
【0125】
実施例32.1g当たり110マイクロモルのカルボキシルを有するカルボキ
シメチル還元デキストランT10で被覆されたUSPIOの製造
カルボキシメチル還元デキストランT10(4g、実施例10で製造されたも
の)を85mlの水中に溶解した。これに、2.99gの六水和塩化第二鉄、1
.49gの四水和塩化第一鉄、及び37.3mlの水から成る0.2μmのフィ
ルターを通して濾過された混合物を添加した。混合物を10℃まで冷却し、窒素
でパージし、そして撹拌しながら、11.4gの28%水酸化アンモニウム溶液
を添加した。この混合物を90℃まで加熱し、78℃で60分間維持し、その後
混合物に空気の泡を吹き込みながら78℃で維持した。この混合物を1.5リッ
トルの水で希釈し、0.2μmのフィルターを通して濾過した。生成物を100
kDaのMWCO膜に対して繰り返し限外濾過することによって精製し、そして
0.2μmのフィルターを通して再び濾過した。
【0126】
実施例33.1g当たり130マイクロモルのカルボキシルを有するカルボキ
シメチル還元デキストランT10で被覆されたUSPIOの製造
カルボキシメチル還元デキストランT10(40g、実施例11で製造された
もの)を850mlの水中に溶解した。これに、29.9gの六水和塩化第二鉄
、14.9gの四水和塩化第一鉄、及び373mlの水から成る0.2μmのフ
ィルターを通して濾過された混合物を添加した。混合物を10℃まで冷却し、窒
素でパージし、そして撹拌しながら、114mlの28%水酸化アンモニウム溶
液を添加し、この混合物を90℃まで加熱し、78℃で60分間維持し、その後
混合物に空気の泡を吹き込みながら78℃で維持した。この混合物を1.5リッ
トルの水で希釈し、0.2μmのフィルターを通して濾過した。生成物を100
kDaのMWCO膜に対して繰り返し限外濾過することによって精製し、20m
gFe/mlまで濃縮し、そして0.2μmのフィルターを通して再び濾過した

【0127】
実施例34.1g当たり280マイクロモルのカルボキシルを有するカルボキ
シメチル還元デキストランT10で被覆されたUSPIOの製造
カルボキシメチル還元デキストランT10(4g、実施例12で製造されたも
の)を85mlの水中に溶解した。これに、2.99gの六水和塩化第二鉄、1
.49gの四水和塩化第一鉄、及び37.3mlの水から成る0.2μmのフィ
ルターを通して濾過された混合物を添加した。混合物を10℃まで冷却し、窒素
でパージした。この混合物に撹拌しながら、11.4gの28%水酸化アンモニ
ウム溶液を添加し、この混合物を90℃まで加熱し、78℃で60分間維持し、
その後混合物に空気の泡を吹き込みながら78℃で維持した。この混合物を1.
5リットルの水で希釈し、0.2μmのフィルターを通して濾過した。生成物を
100kDaのMWCO膜に対して繰り返し限外濾過することによって精製し、
その後0.2μmのフィルターを通して濾過した。
【0128】
実施例35.1g当たり450マイクロモルのカルボキシルを有するカルボキ
シメチル還元デキストランT10で被覆されたUSPIOの製造
カルボキシメチル還元デキストランT10(4g、実施例13で製造されたも
の)を85mlの水中に溶解した。これに、2.99gの六水和塩化第二鉄、1
.49gの四水和塩化第一鉄、及び37.3mlの水から成る0.2μmのフィ
ルターを通して濾過された溶液を添加した。混合物を10℃まで冷却し、窒素で
パージし、その後撹拌しながら、11.4gの28%水酸化アンモニウム溶液を
添加した。この混合物を90℃まで加熱し、78℃で60分間維持し、その後混
合物に空気の泡を吹き込みながら78℃で維持した。この混合物を1.5リット
ルの水で希釈し、0.2μmのフィルターを通して濾過し、そして100kDa
のMWCO膜に対して繰り返し限外濾過することによって精製し、その後0.2
μmのフィルターを通して再び濾過した。
【0129】
実施例36.1g当たり580マイクロモルのカルボキシルを有するカルボキ
シメチル還元デキストランT10で被覆されたUSPIOの製造
カルボキシメチル還元デキストランT10(40g、実施例14で製造された
もの)を85mlの水中に溶解した。これに、29.9gの六水和塩化第二鉄、
14.9gの四水和塩化第一鉄、及び373mlの水から成る0.2μmのフィ
ルターを通して濾過された溶液を添加した。混合物を10℃まで冷却し、窒素で
パージし、その後撹拌しながら、11.4gの28%水酸化アンモニウム溶液を
添加した。この混合物を90℃まで加熱し、78℃で60分間維持し、その後混
合物に空気の泡を吹き込みながら78℃で維持した。この混合物を1.5リット
ルの水で希釈し、0.2μmのフィルターを通して濾過し、そして100kDa
のMWCO膜に対して繰り返し限外濾過することによって精製し、その後0.2
μmのフィルターを通して濾過した。
【0130】
CMRD被覆されたUSPIOのカルボキシメチル化の程度のコロイドサイズ
に対する影響を比較した。実施例31〜36、表6。得られたコロイドのMVD
値は、生成物1g当たり110乃至1265マイクロモルのカルボキシルを含む
CMRD製剤の間でかなり均一であった。
【0131】
実施例37.1g当たり1,108マイクロモルのカルボキシルを有するカル
ボキシメチル還元デキストランT10と塩化第二鉄溶液の混合
粒子の合成における1つの工程として、塩化第二鉄(0.3g)を15mlの
水中に溶解し、0.2μmの細孔サイズのフィルターを通して濾過した。カルボ
キシメチル還元デキストラン(実施例6で調製されたもの)を添加し、混合物を
振盪し、そして10℃まで冷却した。沈殿物は観察されなかった。
【0132】
【表6】

【0133】
実施例38.1g当たり1,262マイクロモルのカルボキシルを有するカル
ボキシメチル還元デキストランT10と塩化第二鉄溶液の混合
塩化第二鉄(0.3g)を15mlの水中に溶解し、0.2μmの細孔サイズ
のフィルターを通して濾過した。カルボキシメチル還元デキストラン(実施例7
で調製されたもの)を添加し、混合物を振盪し、そして10℃まで冷却した。沈
殿物は観察されなかった。
【0134】
実施例39.1g当たり1,404マイクロモルのカルボキシルを有するカル
ボキシメチル還元デキストランT10と塩化第二鉄溶液の混合
塩化第二鉄(0.3g)を15mlの水中に溶解し、0.2μmの細孔サイズ
のフィルターを通して濾過した。カルボキシメチル還元デキストラン(実施例8
で調製されたもの)を添加し、混合物を振盪し、そして10℃まで冷却した。沈
殿物は観察されなかった。
【0135】
実施例40.1g当たり1,528マイクロモルのカルボキシルを有するカル
ボキシメチル還元デキストランT10と塩化第二鉄溶液の混合
塩化第二鉄(0.3g)を15mlの水中に溶解し、0.2μmの細孔サイズ
のフィルターを通して濾過した。カルボキシメチル還元デキストラン(実施例9
で調製されたもの)を添加し、混合物を振盪し、そして5℃まで冷却した。オレ
ンジ白色の沈殿物が観察された。
【0136】
実施例41.1g当たり1,887マイクロモルのカルボキシルを有するカル
ボキシメチル還元デキストランT10と塩化第二鉄の混合
六水和塩化第二鉄(30.3g)及び塩化第一鉄(14.8g)を402.9
mlの水中に溶解し、0.2μmの細孔サイズのフィルターを通して濾過した。
カルボキシメチル還元デキストランT10(1,033ml中40.3g、実施
例15で調製されたもの)を添加し、混合物を振盪し、そして5℃まで冷却した
。オレンジ白色の沈殿物が観察された。
【0137】
CMRD−USPIO合成の第1の工程、即ち、CMRDの水性混合物を塩化
鉄溶液と組み合わせる工程に対するCMRDのカルボキシメチル化の程度を変え
ることの影響を分析した。様々なCMRD製剤を一定の鉄濃度で鉄塩と混合した
が、これらのCMRD製剤は実施例37〜41に記載されているようにカルボキ
シメチル化の程度においてのみ異なっていた。デキストラン1g当たり1,10
8から1,404マイクロモルのカルボキシルまで、CMRDは塩化第二鉄の存
在下に均一な混合物を形成した(表7)。
【0138】
【表7】

【0139】
デキストラン1g当たり1,404マイクロモルのカルボキシルを超えたとこ
ろでは、USPIOの合成の条件及び濃度下での塩化第二鉄のCMRD溶液への
添加は、オレンジ白色の沈殿物を生成した。多くの化合物が可溶性になるより高
い温度においてさえ、沈殿は残った。表7中のデータは、CMRD−USPIO
の合成の好ましい方法中で使用できるCMRDの改質において上位の水準が存在
することを示す。
【0140】
実施例42.酸化鉄ゾルの合成及び未処理デキストラン、還元デキストラン、
及びCMRDによるそれらの安定化:磁性ゾルの製造
磁性ゾルを製造するために、25℃の60gの28%水酸化アンモニウムを、
321gの水中に30.0gの六水和塩化第二鉄及び15.1gの四水和塩化第
一鉄を有する溶液に添加した。5分間の混合後、十分に濃縮されたHClを添加
して1.6のpHを得た。希釈剤として水を使用して、ゾルを100kDaのM
WCO膜フィルターで限外濾過して、3.25のpHを達成した。磁性ゾルを細
孔サイズ0.2μmのフィルターに通し、その後50mgFe/gまで濃縮し、
そして5℃で貯蔵した。鉄の収率は55%であり、そして生成物は16nmのM
VDを有することが観測された。
【0141】
実施例43.酸化鉄ゾルの合成及び未処理デキストラン、還元デキストラン、
及びCMRDによるそれらの安定化:非磁性ゾルの製造
30mlの水中の2.9gの六水和塩化第二鉄の溶液に、10mlの10Mの
NaOHを添加した。混合物を5分間撹拌し、水で200mlまで希釈し、そし
て生成物を濾過によって収集した。残渣を水と再び混合し、そして濾過した。残
渣を40mlの水に添加し、そしてpHを2.0に調節した。生成物は10nm
のMVDを有することが観測された。
【0142】
実施例44.酸化鉄ゾルの合成及び未処理デキストラン、還元デキストラン、
及びCMRDによるそれらの安定化:還元デキストランT10による磁性ゾルの
被覆
還元デキストランT10(60mg;実施例3)を1.74mlの水中に溶解
し、実施例42に従って製造された磁性ゾル(13mgFe)の0.24mlと
組み合わせた。混合物を15分間インキュベートし、そして水酸化ナトリウムで
pHを7.4に調節した。粒度(MVD)は85nmであることが判明した。
【0143】
実施例45.酸化鉄ゾルの合成及び未処理デキストラン、還元デキストラン、
及びCMRDによるそれらの安定化:未処理デキストランT10による磁性ゾル
の被覆
未処理デキストランT10(60.8mg)を1.74mlの水中に溶解し、
実施例42に従って製造された磁性ゾル(13mgFe)の0.24mlと組み
合わせた。混合物を15分間インキュベートし、そして水酸化ナトリウムでpH
を7.4に調節した。粒度(MVD)は1,973nmであることが判明した。
【0144】
実施例46.酸化鉄ゾルの合成及び未処理デキストラン、還元デキストラン、
及びCMRDによるそれらの安定化:CMRD T10による磁性ゾルの被覆
75mgのCMRD T10(実施例5)を1.34mlの水中に溶解し、実
施例42に従って製造された磁性ゾル(33mgFe)の0.66mlに添加し
た。混合物を37℃で15分間インキュベートし、そして水酸化ナトリウムでp
Hを7.95(±0.4)に調節した。300kDaの限外濾過フィルターを使
用して混合物を濃縮した。生成物は41nmのMVDを有することが観測された

【0145】
実施例47.酸化鉄ゾルの合成及び未処理デキストラン、還元デキストラン、
及びCMRDによるそれらの安定化:磁性ゾルのpHの7.4への調節
実施例42において製造された磁性ゾルをpH7.4に調節した。沈殿が観察
された。
【0146】
実施例48.酸化鉄ゾルの合成及び未処理デキストラン、還元デキストラン、
及びCMRDによるそれらの安定化:CMRD T10による非磁性ゾルの被覆
実施例43に従って製造された非磁性ゾル(35ml)を、実施例5に従って
製造されたCMRD T10の50mg/g水溶液の35mlに滴下して加えた
。1NのNaOHを使用してpHを7.0に調節し、溶液を沸騰するまで加熱し
、室温まで冷却し、そして6,000rpmで20分間遠心分離を行った。上澄
液を0.2μmの細孔サイズを有するフィルターに通し、そして121℃で30
分間オートクレーブ処理した。生成物は86nmのMVDを有することが観測さ
れた。
【0147】
実施例42〜48は、デキストランの不存在下、又は未処理デキストランの存
在下においては、大きな鉄の沈殿が形成することを示す。還元デキストランとC
MRDのみが安定なコロイドとして磁性ゾルを産出した。
【0148】
実施例49.塩化第二鉄とCMRDの塩基共沈を使用するCMRDで被覆され
た非磁性酸化鉄コロイドの製造
カルボキシメチル還元デキストランT10(19.2g)(実施例5)を30
0gの水中に溶解し、0.2μmのフィルターを通して濾過し、そして追加の1
60.8gの水を添加した。この溶液を、0.2μmのフィルターで濾過された
0.3Mの六水和塩化第二鉄水溶液の120mlに添加した。この混合物に32
mlの6N水酸化ナトリウム水溶液を添加した。混合物を100℃に3時間加熱
し、室温まで冷却し、50mlの最終体積になるまで限外濾過した。生成物は3
0nmのMVDを有することが観測された。この材料の一部を窒素下のビンに1
21℃で30分間入れた。オートクレーブ処理された生成物は69nmのMVD
を有していた。
【0149】
実施例50.オートクレーブ処理の還元デキストランコロイド及び未処理デキ
ストランコロイドに対する影響:及び未処理デキストラン及び還元デキストラン
及びCMRDで被覆されたUSPIOのオートクレーブ処理に対する安定性
各々が20mgFe/gの濃度の複数のコロイド製剤を121℃で30分間オ
ートクレーブ処理した。オートクレーブ処理に続いて、フェノール/硫酸アッセ
イを使用して、全デキストランと遊離デキストランの差として計算される結合さ
れたデキストランの測定を行った。遊離のデキストランは限外濾過によってコロ
イドから分離された。表8は、還元デキストランで被覆されたUSPIOを有す
るコロイド製剤が、未処理デキストランで被覆されたUSPIOよりも大きい安
定性を有することを示す。還元デキストランで被覆されたUSPIOはオートク
レーブ処理後にその小さいサイズを維持した。なぜならば、オートクレーブ処理
後の材料のMVDは、オートクレーブ処理前の材料のMVDと比較して1.3倍
しか増加していなかったからである。対照的に、未処理デキストランで被覆され
たUSPIOはオートクレーブ処理後にサイズが28倍に増加した。これらのデ
ータは、オートクレーブ処理後に、還元デキストランは、未処理デキストランと
比較して、鉄粒子により緊密に結合したままであることを示す。
【0150】
USPIOを被覆するために還元デキストランを使用することによって本発明
において達成された増加した安定性の第2の種類は、バルク(bulk)溶媒の
pHの特性である。オートクレーブ処理後に還元デキストランで被覆されたUS
PIOのpHは0.9pH単位低下したが、これに対して未処理デキストランで
被覆されたUSPIOについては1.6pH単位低下した。
【0151】
オートクレーブ処理プロセスに対するさらに大きい安定性が、カルボキシメチ
ル未処理デキストランとの比較において、カルボキシメチル還元デキストランで
被覆された粒子に関して観察された。表9中のデータは、カルボキシメチル非還
元未処理デキストランで被覆されたUSPIOがオートクレーブ処理後に粒状物
質の量の10〜50倍の増加を示したことを示している。対照的に、カルボキシ
メチル還元デキストランで被覆されたUSPIOはオートクレーブ処理時にサイ
ズや量の変化を受けなかった。コロイド懸濁液及びバルク溶媒に与えるカルボキ
シメチル還元多糖被覆の安定化効果のもう1つのしるしは、溶媒のpHの安定性
であった。表8及び9の両方中のデータは、還元デキストランで被覆された粒子
が、未処理デキストランで被覆されたものと比較して、オートクレーブ処理後に
かなり改善されたpH安定性を有したことを示す。
【0152】
実施例51.様々な造影剤の緩和特性を決定するための手順
核磁気(NM)測定値(0.47T)を20MHZ(プロトン)で運転される
Bruker Instruments製pc120卓上NMサンプル分析器中
で得た。0.5mlの各々のサンプルをミニスペック(minispec)上の
緩和性(relaxivity)測定用の10mmNM管に入れた。サンプル室
中のサンプルの配置を最適化した。標準サンプルを試験し、それらの値を対数で
記録した。
【0153】
【表8】

【0154】
【表9】

【0155】
T1及びT2測定に対して標準的手順を使用し、それらの値を記録した。T1
は逆転回復(inversion recovery)技術を使用して測定した
。IR技術によれば、磁化を検出の平面に入れるために、サンプルは180°の
パルスにさらされ、その後90°のパルスにさらされる。サンプリング後、18
0°のパルスと90°のパルスとの間の時間が変えられ、そして再びサンプリン
グされる。これは幾つかの期間に対して行われる。得られるシグナルは、式[M
−M(t)]/M=(1−cosθ)exp(−t/T1)によって決定さ
れる。データに対する3つのパラメータ適合が行われるとき、M、θ、及びT
1が計算される。T2はCPMG技術を使用して測定され、可変長さの180°
パルスの線形の列がサンプルに供給される。毎秒ごとのエコーの大きさが測定さ
れる。2つのパラメータ(M及びT2)適合を使用して、蓄積されたデータに
対して適合が行われる。M(t)=Mexp(−t/T2)の場合、tに対す
るln(M(t))のグラフは−1/T2の傾きを有する直線である。T1及び
T2の逆がサンプルの鉄濃度に対してグラフ化された。最良適合線の傾きから、
緩和性が決定された。
【0156】
【表10】

【0157】
実施例52.ラットにおける毒性の研究。ラットにおける還元デキストラン、
非還元デキストラン、及びCMRD被覆されたコロイドの毒性
デキストランに対するアナフィラキシーショック型の反応が、ラットによって
及び小さいが有意の割合の人の群によって示され得る(Squire, J.R
.ら、“Dextran, Its Properties and Use
in Medicine,” Charles C. Thomas, Spr
ingfield, IL, 1955)。その反応はアナフィラキシーショッ
クに似ているが、前もっての感化(sensitization)を必要とせず
、そしてラットにおいては疲労の急速な進行、広がった末梢の血管拡張、及び脚
、鼻、及び舌の浮腫によって特徴付けられる(Voorhee, A.B.ら,
Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 1951, 76:
254)。バルビツール酸塩麻酔が同時に行われる場合、それは著しい血圧低下
及びチアノーゼを生じる(Hanna, C.H.ら, Am. J. Phy
siol. 1957, 191:615)。
【0158】
酸化鉄コロイドの被覆中の、非還元の未処理デキストランよりもむしろ、還元
デキストラン又はそれらの誘導体の存在が、静脈内注入時に可能性のある人の有
害な反応を減少させることができるか又は除去できるかを決定するために、ラッ
トの脚の浮腫反応の程度を測定する手順を使用した。ラットの脚の浮腫は、肢体
容積計(これは示差体積測定装置である)を使用して、試験材料の注入の前後の
脚の体積として測定される。試験材料の投与量を注入し、指示された時間間隔の
後2回目の読み取りを行い、そして脚の体積の変化のパーセントが計算された。
これらの研究において投与された1回分の投与量は、体重1kg当たり100m
gFeであり、ラット、ブタ、及び人において映像化剤として使用される量より
もずっと多い投与量であった(実施例53〜56を参照のこと)。
【0159】
還元デキストランT10及び非還元デキストランT10の各々で被覆された酸
化鉄の投与後に観察された結果を表11に示す。未処理非還元デキストラン被覆
を有するUSPIO製剤を投与されたラットと比較して、被覆として還元デキス
トラン又は還元デキストラン誘導体を有するUSPIO製剤を投与されたラット
においては、浮腫状のアナフィラキシー反応の著しい減少が観察された。
【0160】
【表11】

【0161】
浮腫のパーセントとして測定される、アナフィラキシー反応の程度に対する、
カルボキシメチル置換の増加した水準を有するCMRD−USPIO製造の影響
が、表12に示される。データは、浮腫反応を減少させるためには、ある最低水
準の置換が必要であること、及び一旦この置換最低量が達成された後はラットの
デキストランに対する反応の減少は浮腫反応の消滅という驚くべきものであるこ
とを示す。即ち、1g当たり1,265マイクロモルのカルボキシルにおいては
浮腫は観察されなかった。
【0162】
実施例53.還元デキストラン及び非還元デキストランのラットにおける毒性
の研究
被覆単独、即ち、非還元の未処理デキストランよりもむしろ還元デキストラン
又はそれらの誘導体が、静脈内注入時に可能性のある人の有害な反応を除去でき
るかを決定するために、実施例52において使用された手順を使用した。実施例
52と同様に、ラットの脚の浮腫を注入の前後の脚の体積として測定した。これ
らの研究において投与された1回分の投与量は、上述したように、体重1kg当
たり100mgの試験物質であった。
【0163】
【表12】

【0164】
還元T10デキストラン及び非還元T10デキストランの投与に続いて観察さ
れた結果は、各々の材料について同様であった(表13)。還元デキストランT
10は、未処理デキストランT10と同じ程度の浮腫を引き起こした。浮腫の消
滅又は低減は、デキストランの還元のみに原因があるとすることはできなかった

【0165】
【表13】

【0166】
表14は、浮腫のパーセントとして測定されるアナフィラキシー反応の程度に
対する、還元デキストランのカルボキシメチル置換の水準を増加させることの影
響を示す。これらのデータは、カルボキシメチル置換のある最低水準より上では
、浮腫が減少したか又は消滅したことを示す。置換のこの最低水準より上のデキ
ストランについて、デキストランに対するラットの毒性反応における減少は、反
応の驚くべき消滅であった。即ち、浮腫は観察されなかった。
【0167】
【表14】

【0168】
実施例54.ラットにおけるCMRD被覆されたUSPIOの薬物動態:血液
クリアランス
3匹の雄性のCD(登録商標)ラット(Charles River Lab
oratories,マサチューセッツ州ウィルミングトン;重量範囲272〜
290g)に長時間持続麻酔薬イナクチン(Inactin)(体重1kg当た
り100mg)で腹腔内麻酔を実施した。股動脈及び静脈を腰−大腿関節(hi
p−femur joint)のところで小切開によって露出させ、この動脈に
ヘパリン化された生理的食塩水(1ml当たり10単位)の充填された1mlの
シリンジに接続されたPE50チューブでカニューレを挿入した。基準として役
立てるために、0.25mlの動脈血を時間0で採取し、そしてCMRD被覆さ
れたUSPIO(実施例31)を股動脈に注入した。0.25mlの血液サンプ
ルを図4及び5中に示した時間に採取した。
【0169】
T2磁気緩和時間を各々のサンプルにおいて測定し、そして緩和性(1/T2
)を計算した。一次反応速度論を使用して血液中のサンプルの半減期(t1/2
)を決定した。データの適合に使用した式は、
1/T2−1/T基準=Ae−kt
であり、式中、1/Tは注入後の時刻tにおける血液の緩和性であり;1/T
基準は基準緩和性であり、そしてAe−ktは血液からの試験材料の一次減衰を
表す。この式の各々の側の自然対数を取ると、
ln(1/T2−1/T基準)=−kt+lnA
が得られる。
【0170】
この第2の式によれば、血液からのUSPIOの除去の速度が一次速度論に従
うならば、時間tに対するln(1/T2−1/T基準)のグラフは、傾き−k
(一次速度定数)及び切片lnA(これは時間0でのln(1/T2−1/T
基準)に等しい)を有する直線を与える。図5は、直線が得られたことを示す。
半減期(t1/2)(これは、CMRD被覆USPIOの量が血液中のその濃度
の半分まで減少したときの時間である)は67分であることが決定され、95%
の信頼水準で61〜75分の範囲内である。
【0171】
実施例55.ラットにおけるCMRD被覆USPIOを使用する核磁気共鳴映
像化
体重1kg当たり5mgのCMRD被覆USPIO(実施例31)を投与して
直ぐに取ったラットのMRIスキャンを図6Bに示す。心臓、大動脈、及び冠状
動脈がこの薬剤を使用して容易に映像化されることが判明した。試験物質の投与
によって生じたコントラストの大幅な上昇を示すために、薬剤の投与前に取られ
たラットの映像(図6A)も添付した。
【0172】
実施例56.ブタ中のCMRD被覆USPIOのMRI
図7は、ブタの心臓及びその周りの動脈、並びに肺及び腎臓の改善されたMR
I視覚化を示す。サンプル(実施例31)の体重1kg当たり0.4、0.8、
1.6、及び2.2mgの4種の投与量をそれぞれブタに順次的に投与した。各
々の投与の後に20mlの生理的食塩水を投与し、そしてMRI映像は各々の投
与の後に得た。図7Bに示す像は、各々の投与の後に得られた像を表すものであ
る。薬剤によって生じたコントラストの大幅な上昇を示すために、ブタの投与前
の像(図7A)も添付した。
【0173】
低分子量のガドリニウムに基づく造影剤に関連する問題は、それらが血管空間
から細胞間空間へ漏れ、ぼんやりとしたバックグラウンドを作り出すことである
。このぼんやりとしたバックグラウンドは、単一回の検査中に投与される第2又
は第3の造影剤の注入の有効使用を妨げる。そのような血管外への漏れは、カル
ボキシメチル還元デキストランで被覆されたUSPIOについては、ガドリニウ
ム造影剤の粒子のサイズと比較して、粒子のサイズが比較的大きいため、予想さ
れないのかもしれない。
【0174】
この予想は、ラットの映像化(実施例55)によって及びブタの映像化(図7
B)によって得られたデータにおいて確認された。本発明のCMRD USPI
O組成物の使用の後にぼんやりとしたバックグラウンドは観察されなかった。こ
の観察は、追加の投与量の連続的な投与の後、追加の血管の映像化検査の実施を
可能にする。静脈内投与時に、本発明の態様であるCMRD被覆USPIOは、
塊薬として速やかに動脈、器官、及び静脈に移動し、20分後血液中において均
一な分布を達成した。薬剤の第2の塊薬の投与時に、追加の良好な映像が得られ
た。第3及び第4の注入が同様な結果をともなって投与された(即ち、良好な映
像が得られた)。このようにして、CMRD被覆USPIOの塊薬注入と一次通
過適用のプロセスが示された。さらに、第1の投与後かなり短い時間内の複数回
の注入プロトコル(全体のプロトコルは映像化施設への人の被験者による1回の
訪問に相当する期間内に行われる)の適用も示された。
【0175】
1回の検査中において複数回の塊薬注入を行い得ることの主要な利点は、1回
の注入後に生じる可能性のある映像中の欠陥を修正する機会があること、及び1
回の検査中に体の複数の部分を映像化する機会があることである。このようにし
て、より早期の通過からのスキャンとより早期の映像の分析の後短い期間の内に
、被験者の体の追加の部分を映像化することができ、その後の造影剤の注入を異
なる視界を得るため、又は1つ以上の物理的次元において視界を広げるために使
用することができる。例えば、脚のような肢中の凝血塊の位置と大きさの詳細な
分析を、第1、第2、及びそれに続く通過の各々において取られた連続する視界
を使用して、行うことができる。
【0176】
第1の投与の後、本発明の組成物の投与の追加の複数回の通過を達成し、そし
て追加の循環のMRIデータを得ることができる能力は、本発明の態様である組
成物の強力な利点を提供する。MRI分析は、過去において、映像化の必要な解
剖学的特徴の物理的長さによって、及び所定期間内に単一の検出装置を使用して
映像化できる構造の数によって、制約されてきた。
【0177】
ブタにおいて得られた結果は、人の被験者においても観察された(実施例57
及び58)。
【0178】
実施例57.通常の人の被験者へのCMRD被覆されたUSPIOの静脈内注

この試験計画は、各々が実施例31に従って製造されたCMRD T10被覆
されたUSPIOの1回分の投与量(増加量;体重1kg当たり1〜4mg)を
投与された35人の人間の被験者を使用した。実施例57及び58の目的は、こ
の処置の可能性のある副作用に関して被験者を検査すること、MRI造影剤とし
ての組成物に関するデータを得ること、及び血液中の組成物の半減期を測定する
ことである。
【0179】
最も多い投与量(4mg/kg)を含めて、全ての投与量において処置された
被験者の中に、組成物の投与に原因がある可能性のある有害な反応は観察されな
かった。比較のために述べると、Feridex I.V.(登録商標)の臨床
試験において、Feridex I.V.(登録商標)及び同様な映像化製品は
有害な結果を最小化し有用なコントラストを得るためにずっと少ない投与量(例
えば、体重1kg当たり0.56mg)で投与されるのにもかかわらず、約2〜
3%の処置を受けた患者が背中の痛みを報告した。これらのデータは、有効投与
量の本発明のCMRD被覆USPIO粒子が有効投与量の以前に認可を受けた映
像化剤であるFeridex I.V.(登録商標)よりも安全であることを示
してる。
【0180】
実施例58.人の被験者中の速やかな映像化速度及び生体分布
実施例31と同様にして製造されたCMRD被覆USPIOの人の被験者への
最初の静脈内塊薬注入は、投与後12秒以内に循環系の動脈部分の鮮明なMRI
をもたらした(図8B)。さらに15秒後、MRI露出は、器官と静脈の鮮明な
像をもたらした。血管系全体にわたる薬剤の平衡は20分以内に達成された。
【0181】
本発明のCMRD被覆USPIOの投与に続く初期の段階において映像化され
得る器官は、心臓、動脈、及び静脈を含む。さらに、循環系の比較的大きいこれ
らの要素に加えて、四肢(指、足指)の細動脈及び細静脈を観察できた。この水
準の解像度は、静脈炎の領域の検知と位置測定を含む、四肢内の血液循環におけ
る問題の診断への用途を可能にする。容易に映像化されたその他の器官は、脳、
腎臓、肝臓、脾臓、及び骨髄を含む。リンパ節は、有効投与量の投与の後数時間
までに映像化できた。血液中の薬剤の半減期はおおよそ10〜14時間であるこ
とが観察された(表15及び図9を参照のこと)。
【0182】
粒子は、最終的には、細網内皮系によって吸収されることによって血液循環か
ら除去された。血管系中に初期の段階において組成物が存在している間、及びま
た細網内皮系(RES)中に後の又は血管後の段階において組成物が存在してい
る間、この組成物の細胞間空間への侵入は観察されなかった。従って、その他の
組成物、例えば、Magnevist(登録商標)及びDOTOREM(登録商
標)のようなガドリニウムに基づくMR造影剤の使用にともなって現れることが
判明したぼんやりとしたバックグラウンドは、本明細書の実施例の方法によって
合成されたCMRD−USPIOの使用中には避けられる。
【0183】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−46752(P2011−46752A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275172(P2010−275172)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【分割の表示】特願2000−610523(P2000−610523)の分割
【原出願日】平成12年3月8日(2000.3.8)
【出願人】(509351649)エーエムエージー ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】