説明

還元された酸化グラフェン層及びコーティング層が順次に積層されたグラフェンペーパー及びその製造方法

【課題】コーティング層及び還元された酸化グラフェン層が順次に積層されたグラフェンペーパーを提供する。
【解決手段】本発明による方法で製造されたグラフェンペーパーは、電気伝導度及び機械的性質が優れているのみならず、大面積のグラフェンペーパーを経済的に形成することができる。よって、薄膜電極、可撓性電極、スーパーキャパシタ、半導体導電膜の補強剤、TFT半導体層電極などの電子材料製造に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化グラフェン層及びコーティング層が順次に積層されたグラフェンペーパー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にグラファイトは、炭素原子を6角形模様で連結した板状の2次元グラフェンシートを積層した構造を有している。近年、グラファイトから一又は複数のグラフェンシートの層を剥ぎ取ってその特性を調査した結果、既存の物質とは異なる非常に有用な特性が発見された。最も注目される特徴として、グラフェンシートから電子が移動する場合に電子の質量がゼロになる点が挙げられ、これは、真空中の光が移動する速度、即ち、光束で電子が流れることを意味する。また、グラフェンシートは、電子と正孔とに対して非正常的な半整数量子ホール効果を有する。
【0003】
グラフェンシートの移動度は約20,000〜50,000cm/Vsであることが知られている。グラフェンシートに類似するカーボンナノチューブの場合、合成後に精製されたときの収率が非常に低いことから、安価な材料を用いても最終的には製品価格が高くなってしまう。一方で、グラファイトは非常に安価である。単一壁カーボンナノチューブの場合、そのキラル性及び直径に応じて金属特性や半導体特性等が変化するだけではなく、同一な半導体特性を有していてもバンドギャップがすべて異なるという特徴を有している。このため、提供された単一壁カーボンナノチューブから特定の半導体性質又は金属性性質を利用するには、各単一壁カーボンナノチューブをすべて分離する必要がある。このような作業は、非常に難しい作業である。
【0004】
一方、グラフェンシートの場合、所定の厚さのグラフェンシートの結晶方向性に応じて電気的特性は変化する。このため、使用者は、選択した方向で電気的特性を発現させることができ、素子を容易に設計することができる。このようなグラフェンシートの特徴は、今後の炭素系電気素子又は炭素系電磁気素子等において非常に有効に用いることができる。
【0005】
しかしながら、グラフェンシートは非常に有用な性質を有しているにもかかわらず、再現性良く、かつ経済的に大面積のグラファイトシートを製造することができなかった。現在まで開発された方法として、三種類に分類することができ、具体的には、マイクロメカニカル方法、SiC結晶熱分解方法、及び化学気相蒸着方法等が挙げられる。
【0006】
マイクロメカニカル法は、グラファイト試料にスコッチテープを貼り付けた後、スコッチテープを剥すことによって、スコッチテープ表面にグラファイトから離れたグラフェンシートを得る方法である。しかしながら、この方法によれば、剥ぎ取られたグラフェンシートの層の数が一定せず、また、紙が破れたようになり、一定の形状のものが得られない。つまり、大面積のグラフェンシートを形成することはできない。
【0007】
SiC結晶熱分解法では、SiC単結晶を加熱すると、表面のSiCが分解されてSiが除去され、残存するカーボン(C)によってグラフェンシートが生成される。しかしながら、この方法によれば、原料となるSiC単結晶が非常に高価であり、大面積のグラフェンシートを形成することが非常に困難である。
【0008】
化学気相蒸着法では、高温で炭素を吸着できるニッケル(Ni)や銅(Cu)等の転移金属を触媒層として用い、メタン及び水素の混合ガスと反応させて炭素を吸着させる。その後、吸着後の炭素を冷却し触媒層中の炭素原子を表面で結晶化して、グラフェンが形成される。しかしながら、この方法によれば、結晶性が均一で大面積のグラフェンを形成できるものの、常時基板上に転写され独立した形態でグラフェンを存在させることが困難であった。
【0009】
最近、化学的方法を用いてグラフェンを製造することが試みられている。しかしながら、グラフェンの製造を完全に制御することは、依然として困難である。他の方法として、酸化グラフェンを形成して分散させる方法がある。グラファイトを酸化物形態にすれば分散が容易になるため、薄膜の形成が容易となる。このように、酸化されたグラフェンを再び還元して、グラフェンを形成することが試みられている。
【0010】
特許文献1は、酸化グラフェン還元物薄膜の製造方法を開示する。この製造方法は、基板上に酸化グラフェン分散溶液を塗布して酸化グラフェン層を形成する工程、酸化グラフェン層が形成された基板を還元剤含有溶液に浸漬して酸化グラフェンを還元する工程、及び還元された酸化グラフェンに有機系ドーパント及び/又は無機系ドーパントをドーピングする工程を備えている。
【0011】
特許文献2は、層間化合物を含むグラフェンシート及びその製造方法を提供する。この文献には、グラフェンシート固有の透過度及び可撓性などを維持しながら、層間化合物を通じてグラフェンシートの電気的特性、光学的特性、量子特性を制御することが開示されている。
【0012】
特許文献3は、大面積のグラフェンフィルムを製造する方法を開示する。この方法よれば、グラフェン酸化物を親水性溶媒で分散させて分散液を製造する工程、分散液を回転乾燥する工程、及び回転乾燥によって得られたグラフェン酸化物フィルムを還元する工程を備えている。更に、この方法によれば、親水性溶媒で分散したグラフェン酸化物を回転して得られた乾燥物が還元される。
【0013】
しかしながら、上述した方法ではいずれも、グラフェンの機械的性質と電気的性質とを完全には再現できなかった。本発明者は、本発明による製造方法により製造される還元された酸化グラフェン層及びコーティング層を順次積層してなるグラフェンペーパーの電気伝導度及び機械的性質が優れていることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国特許出願10−2007−0126947号
【特許文献2】韓国特許出願10−2009−0013137号
【特許文献3】韓国特許出願10−2009−0054708号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、還元された酸化グラフェン層及びコーティング層が順次に積層されたグラフェンペーパー、及びグラフェンペーパーの製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、グラフェンペーパーを含む薄膜電極、及びグラフェンペーパーを含む可撓性電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、還元された酸化グラフェン層である第1層、及び下記化学式(1)で表わされる化合物の重合体を還元された酸化グラフェン層にコーティングしたコーティング層である第2層が、順次に繰り返し積層され、下記化学式(1)で表わされる化合物が酸化グラフェンを還元して第1層を形成するのと同時に第2層が形成されることを特徴とするグラフェンペーパーを提供する。
【0017】
【化1】

式(1)中、Rは−H、−OHまたはC1−3のアルコールであり、Rは−OH、−NHまたは−NHCHであり、Rは−Hまたは−OHである。
【0018】
また、本発明は、化学式(1)で表わされる化合物、酸化グラフェン及び緩衝液を混合して混合物を調製する工程1、工程1で調製した混合物を、下部へ溶媒のみを選択的に排出することのできる成形ツールに入れてろ過し、濡れた状態のグラフェンペーパーを得る工程2、及び工程2で得た濡れた状態のグラフェンペーパーを乾燥する工程3を備えるグラフェンペーパーの製造方法を提供する。さらに、本発明は、上記のグラフェンペーパーを備えた薄膜電極を提供する。また、本発明は、上記のグラフェンペーパーを備えた可撓性電極を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるコーティング層及び還元された酸化グラフェン層を順次に積層したグラフェンペーパーは、電気伝導度及び機械的性質が優れているだけでなく、大面積のグラフェンペーパーを経済的に形成することができる。よって、薄膜電極、可撓性電極、スーパーキャパシタ、半導体導電膜の補強剤、TFT半導体層電極などの電子材料において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態によって製造されたグラフェンペーパーを示す図。
【図2】本発明によるドーパミンで還元された酸化グラフェンを効果的に示すため、21.2μmの厚さに製造したグラフェンペーパーの側面を示すSEM写真。
【図3】本発明の実施例によって製造されたグラフェンペーパーを示す写真。
【図4】本発明の比較例によって製造されたグラフェンペーパーを示す写真。
【図5】本発明の実施例によるグラフェンペーパーをIR分光器で測定した結果を示すグラフ。
【図6】本発明の実施例によるグラフェンペーパーの電気伝導度を示すグラフ。
【図7】本発明の実施例によるグラフェンペーパーの延伸率を示すグラフ。
【図8】本発明の実施例によるグラフェンペーパーの強度を示すグラフ。
【図9】本発明の実施例によるグラフェンペーパーの剛性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明では、酸化グラフェンを、下記化学式(1)で表わされる化合物で処理して還元するのと同時にコーティングして、還元された酸化グラフェンペーパーを製造する。このように製造されたグラフェンペーパーでは、電気伝導度及び機械的特性が向上するため、各種表示素子または可撓性電極に有用であり、TFT半導体層などに適用することができる。
【0022】
本明細書で「酸化グラフェン」は、グラファイトを酸化して得られた酸化物であり、酸化グラフェンは、グラファイトと異なり分散溶液を調製可能であるため、薄膜化が可能である。したがって、酸化グラフェンの分散溶液を用いて酸化グラフェンを薄膜化した後に還元することで、シート形状のグラフェンを形成することができる。本明細書中、「還元された酸化グラフェン」とは、酸化グラフェンを還元して得られた還元物を意味している。
【0023】
「グラフェン」は、複数の炭素原子が互いに共有結合で連結されているポリサイクリック芳香族分子を意味している。「グラフェン」では、共有結合で連結された炭素原子が基本反復単位として6員環を形成するが、5員環及び/または7員環をさらに含むことも可能である。グラフェンは、互いに共有結合した炭素原子(通常sp結合)の単一層として見なされる。グラフェンは、多様な構造を有することができ、このような構造は、グラフェン内に含まれる5員環及び/または7員環の含量によって変化する。グラフェンは、単一層からなることもできるが、複数の単一層を互いに積層して形成することもでき、最大100nmまでの厚さを有することができる。通常、グラフェンの側面末端部は、水素原子により飽和されている。還元された酸化グラフェンは、上述したようなグラフェンと類似の形態及び物性を有する。しかしながら、還元された酸化グラフェンの電気伝導度が低下するといった欠点を有している。
【0024】
本発明によれば、化学式(1)で表わされる化合物を用いて酸化グラフェンを還元するのと同時にコーティングすることで、還元された酸化グラフェンの電気的性質を補うだけでなく、機械的特性を向上させることができる。
【0025】
以下、本発明のグラフェンペーパー及びその製造方法を詳しく説明する。
本発明は、還元された酸化グラフェン層である第1層、及び下記化学式(1)で表わされる化合物の重合体を還元された酸化グラフェン層にコーティングしたコーティング層である第2層が、順次に繰り返し積層される。本発明は、下記化学式(1)で表わされる化合物が酸化グラフェンを還元して第1層を形成するのと同時に第2層が形成されることを特徴としている。
【0026】
【化2】

式(1)中、Rは−H、−OHまたはC1−3のアルコールであり、Rは−OH、−NHまたは−NHCHであり、Rは−Hまたは−OHである。好ましくは、Rは−Hまたは−OHであり、Rは−NHまたは−NHCHで、Rは−Hまたは−OHである。さらに好ましくは、化学式(1)で表わされる化合物は、ドーパミン、ノルエピネフリンまたはエピネフリンである。より一層好ましくは、化学式(1)で表わされる化合物はドーパミンである。
【0027】
本発明によるグラフェンペーパーにおいて、第2層の重合体は、酸化グラフェンを還元するのと同時にグラフェン層間にコーティングされて各グラフェン層をペーパー状にして接合する。その結果、グラフェンペーパーの電気伝導度及び機械的特性は向上する。ここで、前記第2層の重合体は、下記化学式(2)で表わされる単量体からなる重合体である。
【0028】
【化3】

式(2)中、R、R及びRは化学式(1)で定義したものと同じであり、
【0029】
【化4】

上記記号は、C1−10の直鎖または側鎖アルキルであり、nは整数であり、製造されるグラフェンペーパーの大きさに応じて決められる。好ましくは、化学式(2)で表わされる単量体からなる重合体は、ポリドーパミン、ポリノルエピネフリンまたはポリエピネフリンである。さらに好ましくは、化学式(2)で表わされる単量体からなる重合体は、ポリドーパミンである。
【0030】
本発明によるグラフェンペーパーは、可撓性を有することを特徴としている。グラフェンペーパーは、所望の厚さに作製することができる。電子材料に使用するとの観点から、グラフェンペーパーの厚さは1〜10,000μmであることが好ましい。
【0031】
また、本発明は、下記の工程を含むグラフェンペーパーの製造方法を提供する。本発明によるグラフェンペーパーの製造方法は、下記化学式(1)で表わされる化合物、酸化グラフェン及び緩衝液を混合して混合物を製造する工程1、工程1で製造した混合物を下部へ溶媒のみを選択的に排出することのできる成形ツールに入れてろ過し、濡れた状態のグラフェンペーパーを得る工程2、及び工程2で得た濡れた状態のグラフェンペーパーを乾燥する工程3を備えている。
【0032】
【化5】

式中、R、R及びRは上述したとおりである。
【0033】
以下、本発明を、図1とともに工程別にさらに詳しく説明する。
本発明によるグラフェンペーパーの製造方法において、工程1は酸化グラフェン、化学式(1)の化合物及び緩衝液を混合する工程である。具体的には、緩衝液によりpH7〜10の弱塩基の環境が形成されると、化学式(1)の化合物が水素原子を排出しながら酸化重合が進行し、この過程で表面積が広い酸化グラフェンをコーティングしながら酸化グラフェンを還元して、還元されたグラフェンペーパー、化学式(1)の化合物の重合体、還元されたグラフェンペーパーが順次に積層されて、グラフェンペーパーが製造される(図1参照)。
【0034】
ここで、緩衝液には、トリス緩衝液などを使用できるが、pH7〜10のものを使用することが好ましい。緩衝液の酸度がpH7未満の場合、溶液が酸性を帯びて化学式(1)の化合物から水素が排出されなくて重合が進行しない虞がある。pHが10を超える場合、化学式(1)の化合物の重合速度と重合度とが非常に高くなって、グラフェンのコーティングが行われずに重合のみが進行する虞がある。
【0035】
一方、酸化グラフェンは、ハマーズ法(Hummers w.Offeman r. Preparation of graphite oxide.J Am Chem Soc,1958年,第80巻,p.1339)、シュタウデンマイヤ法(Staudenmaier L.Verfahren zurdarstellung der graphitsaure、Ber Dtsch Chem Ges,1898年,第31巻,p.1481−99))、ブロディ法(BrodieBC.Sur le poids atomique graphite.Ann Chim Phys,1860年,第59巻,p.466−72)等を用いて得られる。
【0036】
本発明によるグラフェンペーパーの製造方法において、工程2は、工程1で製造されたグラフェンペーパーを含む溶液を成形ツールに入れてろ過し、濡れた状態のグラフェンペーパーを得る工程である。具体的には、工程1で製造したグラフェンペーパーを含む溶液を、下部へ溶媒のみを選択的に排出することのできる成形ツールに入れてろ過し、溶媒を除去する。そして、成形ツールにおいて、濡れた状態のグラフェンペーパーを得る。ここで、成形ツールとして、下部へ溶媒のみを選択的に排出できるものであれば、任意の形状及び大きさのものを使用することができる。
【0037】
本発明によるグラフェンペーパーの製造方法において、工程3は、工程2で得た濡れた状態のグラフェンペーパーを乾燥する工程である。ここで、濡れた状態のグラフェンペーパーを乾燥する方法として、常温で48時間以上自然乾燥する方法や、真空オーブンを用いて低圧で水分を蒸発させる方法などがある。
【0038】
さらに、本発明は、グラフェンペーパーを備えた薄膜電極を提供する。また、本発明は、グラフェンペーパーを備えた可撓性電極を提供する。本発明によるコーティング層及び還元された酸化グラフェン層を順次に積層したグラフェンペーパーは、電気伝導度及び機械的性質が優れているだけでなく、大面積のグラフェンペーパーを経済的に形成することができる。よって、薄膜電極、可撓性電極、スーパーキャパシタ、半導体導電膜の補強剤、TFT半導体層電極などの電子材料製造に有用である。
【0039】
以下、本発明を、下記の実施例によってさらに詳しく説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するものであって、下記の実施例によって本発明は限定されない。
<製造例1>酸化グラフェンの製造
純粋グラファイト(製造社:Sigma Aldrich)12g、硫酸50ml、過硫酸カリウム10g、五酸化リン10g及び蒸留水1lを丸いフラスコに入れて、常温で12時間混合した。混合溶液をろ過して、前処理されたグラファイトを得た。そして、前処理されたグラファイト4gを、五酸化リン58g、過マンガン酸カリウム24g及び蒸留水80mlと再び混合して、酸化グラファイトを得た。
【0040】
次に、Mnを除去するため、塩酸200ml、エチルアルコール200ml及び蒸留水200mlを加えて3時間混合した。その後、混合溶液を、遠心分離機を用いて精製した後、この過程を2回繰り返した。最後に、メタノールとエーテルとを3:2の割合で混合した溶液で中和して、酸化グラフェンを得た(3.8g)。
<実施例1>ドーパミンコーティング層を含む還元された酸化グラフェンペーパーの製造
製造例1で得られた酸化グラフェン10mg、ドーパミン0.5mg及びトリス緩衝液(pH8.5、10ml)を撹拌して、下部へ溶媒のみを選択的に排出することのできる円型の成形ツール(直径47mm)に入れた。そして、下部へ溶媒を排出して、濡れた状態のドーパミンにより還元された酸化グラフェンペーパーを得た。次に、常温で2日間乾燥し、ドーパミンで還元された酸化グラフェンペーパーについて、直径47mm、厚さ3.2μmの大きさのものを得た。
【0041】
図1は、本発明によるグラフェンペーパーを簡潔に表わしたイメージを示す。図2は、本発明によるドーパミンで還元された酸化グラフェンを効果的に示すため、21.2μmの厚さに製造したグラフェンペーパーの側面を示すSEM写真である。図3は、本発明の実施例によって製造されたグラフェンペーパーの写真である。
<比較例1>酸化グラフェンペーパーの製造
製造例1で得られた酸化グラフェン10mg及び蒸留水10mlを2時間の間撹拌した後、実施例1で用いたものと同じ成形ツールに入れた。そして、下部へ溶媒を排出し、濡れた状態の酸化グラフェンペーパーを得た。次に、常温で2日間乾燥して、酸化グラフェンペーパーについて、直径47mm、厚さ3.0μmの大きさのものを得た。図4は、本比較例で製造した酸化グラフェンペーパーを示す。
<実験例1>IR分光分析
ドーパミンが酸化グラフェンを還元してコーティングされることを調べるために、IR分光器を用いて次のように実験した。具体的には、実施例1で製造したドーパミンにより還元された酸化グラフェンペーパーと、比較例1で製造した酸化グラフェンペーパーとをそれぞれIR分光器で測定した。そして、ドーパミンが酸化グラフェンを還元することを確認した。その結果を図5に示す。図5は、本発明の一実施例によるグラフェンペーパーをIR分光器で測定した結果を示すグラフである。ここで、図5で「pDop/rGO Paper(NaOH treated)」は、純粋にポリドーパミン(pDop)によって還元された酸化グラフェンペーパー(rGO paper)のみを分析するためにNaOHでポリドーパミンを除去した後、IR分光器で測定したピークである。
【0042】
図5に示すように、実施例1で製造したドーパミンコーティング層を含む還元された酸化グラフェンペーパー(pDop/rGO Paper)では、比較例1で製造した酸化グラフェンペーパーに比べて、波数1718cm−1に示されるカルボキシルC=Oピークが低くなり、波数1615cm−1に示される芳香族C=Cピークが高くなり、波数1515cm−1に示されるN−Hピークが消滅した。これにより、実施例1で製造したグラフェンペーパーでは、ドーパミンが酸化グラフェンを還元してコーティングが行われたことが、確認された。
<実験例2>電気伝導度評価
実施例1及び比較例1で製造したグラフェンペーパーの電気伝導度を調べるために、次のように実験を行なった。具体的には、実施例1及び比較例1で製造したグラフェンペーパーを、常温、100、150、200℃にそれぞれ3時間加熱した後、4探針面抵抗測定機(製造社:Napson、モデル:Cresbox)を用いて、面抵抗を測定した。その結果を図6に示す。図6は、本発明の一実施例によるグラフェンペーパーの電気伝導度を測定した結果を示すグラフである。
【0043】
図6に示すように、実施例1で製造したドーパミンコーティング層を含む還元された酸化グラフェンペーパーでは、常温で、電気伝導度が現われた。これに比べ、比較例1で製造した酸化グラフェンペーパーでは、常温で、電気伝導度が現われなかった。この結果から、実施例1では、ドーパミンによって十分に還元されたことが、確認された。また、それぞれの熱処理に対して、実施例1で製造したpDop/rGOペーパーでは、比較例1で製造したGOペーパーに比べて、100℃のときに350倍、150℃のときに450倍、200℃のときに12倍、電気伝導度が向上した。したがって、本発明によるpDop/rGOペーパーは、電気伝導度が非常に優れているため、薄膜電極、可撓性電極、スーパーキャパシタ、半導体導電膜の補強剤、TFT半導体層電極などの電子材料に有用である。
<実験例3>機械的特性評価
実施例1及び比較例1で製造したグラフェンペーパーの機械的特性を調べるために、次のような実験を行なった。具体的には、実施例1で製造したグラフェンペーパー(pDop/rGO Paper)を、幅3mm、標点距離15mm、厚さ3.2μmにしてサンプルを作製した。また、比較例1で製造したグラフェンペーパーを、幅3mm、標点距離15mm、厚さ3.0μmにしてサンプルを作製した。次に、50Nロードセルの引張試験機(製造社:Instron、モデル:Instron−5543)を用いて、上記各サンプルを延伸率、強度及び剛性を、10μm/分のローディング速度で測定した。延伸率測定結果を図7に示し、強度測定結果を図8に示し、剛性測定結果を図9に示す。
【0044】
図7は、本発明の実施例によるグラフェンペーパーの延伸率を測定した結果を示すグラフである。図8は、本発明の一実施例によるグラフェンペーパーの強度を測定した結果を示すグラフである。図9は、本発明の一実施例によるグラフェンペーパーの剛性を測定した結果を示すグラフである。
【0045】
図7に示すように、実施例1で製造したグラフェンペーパーの延伸率は約1.4%であり、比較例1で製造したグラフェンペーパーの延伸率は約0.8%であり、本発明によるグラフェンペーパーの延伸率が約70%増加することが分かった。図8に示すように、実施例1で製造したグラフェンペーパーの強度は約134MPaであり、比較例1で製造したグラフェンペーパーの強度は約93MPaであり、本発明によるグラフェンペーパーの強度が約45%増加することが分かった。図9に示すように、実施例1で製造したグラフェンペーパーの剛性は約17GPaであり、比較例1で製造したグラフェンペーパーの剛性は約15GPaであり、本発明によるグラフェンペーパーの剛性が約12%増加することが分かった。したがって、本発明によるグラフェンペーパーは、延伸率、強度及び剛性が優れていて、薄膜電極、可撓性電極、スーパーキャパシタ、半導体導電膜の補強剤、TFT半導体層電極などの電子材料に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元された酸化グラフェン層である第1層、及び
下記化学式(1)で表わされる化合物の重合体を前記還元された酸化グラフェン層にコーティングしたコーティング層である第2層が、順次に繰り返し積層され、
下記化学式(1)で表わされる化合物が酸化グラフェンを還元して前記第1層を形成するのと同時に前記第2層が形成されることを特徴とするグラフェンペーパー。
【化1】

(式中、Rは−H、−OHまたはC1−3のアルコールであり、Rは−OH、−NHまたは−NHCHであり、Rは−Hまたは−OHである)。
【請求項2】
前記Rは−Hまたは−OHであり、Rは−NHまたは−NHCHであり、Rは−Hまたは−OHであることを特徴とする請求項1に記載のグラフェンペーパー。
【請求項3】
前記化学式(1)で表わされる化合物が、ドーパミン、ノルエピネフリンまたはエピネフリンであることを特徴とする請求項1に記載のグラフェンペーパー。
【請求項4】
前記還元された酸化グラフェン層が、下記の化学式(1)で表わされる化合物によって還元されたことを特徴とする請求項1に記載のグラフェンペーパー。
【化2】

(式中、R、R及びRは、請求項1における定義と同じである)。
【請求項5】
前記第2層の重合体は、下記化学式(2)で表わされる単量体からなる重合体であることを特徴とする請求項1に記載のグラフェンペーパー。
【化3】

(式中、R、R及びRは、請求項1における定義と同じであり、
【化4】

上記記号は、C1−10の直鎖または側鎖アルキルであり、nは整数であり、製造されるグラフェンペーパーの大きさによって決定される)。
【請求項6】
前記化学式(2)で表わされる単量体からなる重合体は、ポリドーパミン、ポルリノルエピネフリンまたはポルリエピネフリンであることを特徴とする請求項5に記載のグラフェンペーパー。
【請求項7】
前記グラフェンペーパーは可撓性であることを特徴とする請求項1に記載のグラフェンペーパー。
【請求項8】
下記の化学式(1)で表わされる化合物、酸化グラフェン及び緩衝液を混合して混合物を製造する工程(工程1)と、
前記工程1で製造した混合物を、下部へ溶媒のみを選択的に排出することのできる成形ツールに入れてろ過して、濡れた状態のグラフェンペーパーを得る工程(工程2)と、
前記工程2で得た濡れた状態のグラフェンペーパーを乾燥する工程(工程3)と
を備えるグラフェンペーパーの製造方法。
【化5】

(式中、R、R及びRは、請求項1における定義と同じである)。
【請求項9】
前記工程1の緩衝液が、pH7〜10の緩衝液であることを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1によるグラフェンペーパーを備えた薄膜電極。
【請求項11】
請求項1によるグラフェンペーパーを備えた可撓性電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−56815(P2013−56815A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248535(P2011−248535)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)発行者名:社団法人韓国複合材料学会 刊行物名:2011年度春季学術発表大会論文集 発行年月日:2011年5月13日(2)発行者名:社団法人韓国複合材料学会 刊行物名:第18回国際複合材料会議 発行年月日:2011年8月21日(3)発行者名:ナノコリア組織委員会 刊行物名:ナノ コリア 2011 発行年月日:2011年8月24日
【出願人】(594058838)コリア インスティチュート オブ マシーナリー アンド マテリアルズ (6)
【Fターム(参考)】