説明

還元型補酵素Q10の製造方法、安定化方法及びそれを含有する組成物

【課題】本発明は、酸化型補酵素Q10に対する還元能力、還元型補酵素Q10を安定化させる能力だけでなく、栄養素、味、汎用性なども兼ね備えた成分とその利用方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、生体にとって安全な天然物由来成分として、アセロラ抽出物、チャ抽出物、ローズマリー抽出物、松皮抽出物及び苔桃抽出物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の成分を用いて、酸化型補酵素Q10を還元する、還元型補酵素Q10の安全かつ簡便な製造方法に関する。また、天然物由来成分の共存下に還元型補酵素Q10を安定化する方法、及び安定化された組成物にも関する。上記天然物由来成分は、栄養素としての働きも期待できるため、本発明の組成物は、特に、種々の効果が求められている医薬品、サプリメント、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、化粧品、治療薬等として有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元型補酵素Q10の製造方法、安定化方法及びそれを含有する組成物に関する。還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10に比べて高い経口吸収性を示し、優れた食品、健康食品、栄養機能食品、特定保健用食品、サプリメント、栄養補助剤、栄養剤、飲料、飼料、動物薬、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10に比べて高い経口吸収性を示し、抗酸化物質として非常に有用な化合物である。
【0003】
還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得た酸化型補酵素Q10に対し、還元反応を行うことにより取得できる(特許文献1)。
【0004】
酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10に還元する効果を発揮する成分(還元剤)としては、水素化ホウ素ナトリウム(非特許文献1)、亜ジチオン酸ナトリウム(非特許文献2)、亜硫酸系物質(亜硫酸ナトリウム等)(非特許文献3)、アスコルビン酸類やその他多くの成分(特許文献2)等が報告されている。
【0005】
しかしながら、これらの成分は、発火する危険性があるため製造や取扱いに注意を要する化合物であったり、高価であったり、生体への安全性に懸念があったり、食品用途として使用される場合に風味に影響を与えたりするなど、要求される条件を好適に満たしているわけではなく、多くの場合、還元反応終了後に、還元型補酵素Q10と上記還元剤やその副産物を分離除去する工程が必要となる。そのため、還元反応終了後、還元剤やその副産物をそのまま安定化にも効果を発揮する成分として使用することもでき、あるいは食品、健康食品、サプリメントなどにも適用できる成分が強く望まれていた。
【0006】
ところで、酸化型補酵素Q10の還元に効果を発揮する成分の中には、還元型補酵素Q10の安定化に効果を発揮する成分、すなわち抗酸化剤として利用できるものもある。
【0007】
還元型補酵素Q10は、空気中の酸素により、酸化型補酵素Q10に容易に酸化されてしまうことが知られている。このため、還元型補酵素Q10の製剤や合剤を酸化から保護し、安定化する方法は極めて重要である。
【0008】
還元型補酵素Q10を安定化する効果がある化合物としては、クエン酸、アスコルビン酸類が知られている(特許文献3)。また、還元型補酵素Q10を安定化する溶媒としては、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類及びニトリル類が好適であることが知られている(特許文献4)。
【0009】
しかしながら、これらの還元型補酵素Q10の安定化に効果を発揮する成分及び溶媒は、それ自体やあるいはその副産物が生体への安全性に懸念があったり、食品用途として使用される場合に風味に影響を与えたり、高価であったりするなど、要求される条件を好適に満たしているわけではなく、ニーズによってはさらなる安定化が望まれることもある。
【0010】
このような背景の下、酸化型補酵素Q10の還元に効果を発揮する成分及び/又は還元型補酵素Q10の安定化に効果を発揮する成分として使用することが可能で、製造取扱い上の危険性も少なく、安価で、さらには機能性を有する、といった特徴を好適に満たす成分が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−109933号公報
【特許文献2】WO01/52822号公報
【特許文献3】WO03/032967号公報
【特許文献4】WO03/006408号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Journal of Applied Toxicology,28(1),55−62,2008
【非特許文献2】Pharmaceutical Research,23(1),70−81,2006
【非特許文献3】第7版食品添加物公定書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記に鑑み、安全性が高く、食品、健康食品、栄養機能食品、特定保健用食品、サプリメント、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、ペットフード、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等へも適用し易く、製造後分離除去する必要のない成分を利用した還元型補酵素Q10の製造方法と、さらにはその還元型補酵素Q10を、酸化から防護して安定化することのできる好適な方法、及び安定化された組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らが鋭意研究した結果、従来報告されている酸化型補酵素Q10に対する還元剤の中には、実際には還元能力に乏しく実用的ではないものも多く存在することが判明した。一方、驚くべきことに、従来還元能力があるとは考えられていなかった特定の天然物由来成分が、酸化型補酵素Q10を還元して還元型補酵素Q10を生成する能力を有すること、及び、該特定の天然物由来成分の存在下で還元型補酵素Q10が分子酸素による酸化から好適に防護されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、天然物由来成分を用いて、酸化型補酵素Q10を還元することを特徴とする還元型補酵素Q10の製造方法であって、天然物由来成分が、アセロラ抽出物、チャ抽出物、ローズマリー抽出物、松皮抽出物及び苔桃抽出物からなる群より選択されるいずれか一つ以上である製造方法に関する。
【0016】
さらに、本発明は、還元型補酵素Q10と、還元型補酵素Q10の安定化に効果を発揮する成分として、アセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物とを共存させることを特徴とする還元型補酵素Q10の安定化方法にも関し、また該安定化方法によって得られる、還元型補酵素Q10と、アセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物を含有する組成物にも関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、生体にとって安全な成分を用いて酸化型補酵素Q10を還元する、還元型補酵素Q10の簡便な製造方法を提供することができ、また、該成分を用いた還元型補酵素Q10の安定化方法を提供することができる。さらには、本発明で用いる、それら酸化型補酵素Q10の還元に効果を発揮する成分及び/又は還元型補酵素Q10の安定化に効果を発揮する成分は、栄養素、サプリメント素材としての働きも期待できるため、上記製造方法及び/又は上記安定化方法で得られる組成物は、特に、種々の効果が求められている医薬品、サプリメント、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、化粧品、治療薬等として非常に有益となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を詳細に説明する。まず、本発明の還元型補酵素Q10の製造方法について述べる。本発明の製造方法は、特定の天然物由来成分を用いて、酸化型補酵素Q10を還元することを特徴とする還元型補酵素Q10の製造方法である。
【0019】
本発明の製造方法で原料となる酸化型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10単独でも良く、又、還元型補酵素Q10との混合物であっても良い。上記酸化型補酵素Q10が還元型補酵素Q10との混合物である場合、補酵素Q10の総量(すなわち、還元型補酵素Q10及び酸化型補酵素Q10の合計量)に占める酸化型補酵素Q10の割合は、特に制限されないが、例えば、1重量%以上、普通5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、最も好ましくは80重量%以上である。その上限は特に限定されないが、酸化型補酵素Q10として還元型補酵素Q10との混合物を使用する場合には、普通99.9重量%以下である。もちろん、酸化型補酵素Q10が100重量%の場合、すなわち酸化型補酵素Q10を単独で使用してもよい。また、ここで用いる酸化型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得ることができる。好ましくは、発酵、天然物からの抽出により得られたものである。
【0020】
本発明の製造方法においては、酸化型補酵素Q10を還元して還元型補酵素Q10とするための成分として、特定の天然物由来成分を使用する。本発明の製造方法において酸化型補酵素Q10を還元するために使用される天然物由来成分は、アセロラ抽出物、チャ抽出物、ローズマリー抽出物、松皮抽出物又は苔桃抽出物である(以下、これら5種を総称して「本発明の天然物由来成分」ということもある)。ここで、チャ抽出物としては、特に限定されないが、具体的には、緑茶抽出物、ウーロン茶抽出物、甜茶抽出物等が挙げられる。松皮抽出物としては市販のピクノジェノール、フラバンジェノール等を使用することもできる。苔桃抽出物の原料となる苔桃としては、カウベリー(Cowberry)、リンゴンベリー(Lingonberry)のいずれでもよい。
【0021】
上記本発明の天然物由来成分は、いずれも植物由来の抽出物であるが、その抽出方法は特に限定されず、公知の抽出方法によって得られた抽出物が利用でき、なかでもサプリメント素材として使用実績のある抽出物を使用するのが好ましい。上記天然物由来成分はいずれかを単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0022】
本発明の製造方法においては、上記天然物由来成分のうち、その還元能力又は該成分自体の有効性から、アセロラ抽出物又は苔桃抽出物が好ましい。
【0023】
尚、本発明の製造方法において、酸化型補酵素Q10に対する上記本発明の天然物由来成分の重量比(天然物由来成分として複数を併用する場合はその合計量としての重量比)は酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10に還元しうる有効量であれば特に制限されないが、通常、酸化型補酵素Q10に対する天然物由来成分の重量比、すなわち、使用される天然物由来成分の重量/原料となる酸化型補酵素Q10の重量として、普通は約1/1000以上、好ましくは約1/100以上、より好ましくは約1/10以上、特に好ましくは約1/1以上である。その上限は特に制限されないが、経済性及び栄養素としての有効性の観点から、約10000/1以下、好ましくは約1000/1以下、より好ましくは約100/1以下、特に好ましくは約10/1以下である。
【0024】
本発明の製造方法において、原料となる酸化型補酵素Q10と上記本発明の天然物由来成分は反応系において接触しておればよく、その系は均一であっても良く、又、不均一であっても良く、特に制限されない。例えば、酸化型補酵素Q10と本発明の天然物由来成分が各々固体として接触している場合、一方が溶媒等に溶解した液層に、他方がその液層に固体として存在する場合、酸化型補酵素Q10が融液として存在し、本発明の天然物由来成分がその融液中に固体として存在する場合、各々が液相に存在し、液−液2層を形成する場合、各々が同一液相に存在する場合等を挙げることができる。言うまでもなく、酸化型補酵素Q10と本発明の天然物由来成分との接触効率の高い系が、酸化型補酵素Q10の還元には効果的であり、この観点からは、酸化型補酵素Q10と本発明の天然物由来成分が同一液相に存在するのが最も好ましい。
【0025】
上記観点から、本発明の製造方法において還元反応を行う際、酸化型補酵素Q10及び/又は本発明の天然物由来成分を液相に存在させるために溶媒を使用するのが好ましい。本発明の製造方法において、還元反応時に使用する溶媒としては、特に制限されないが、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、アルコール類、ケトン類、窒素化合物類(ニトリル類、アミド類を含む)、硫黄化合物類、脂肪酸類、テルペン類等の有機溶媒、油脂、水等を挙げることができ、これらは単独で用いても、また2種類以上の混合溶媒として用いてもよい。
【0026】
上記炭化水素類としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。特に、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、とりわけ、脂肪族炭化水素が好ましい。
【0027】
脂肪族炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、非環状の脂肪族炭化水素が特に好ましく用いられる。また、通常、炭素数3〜20、好ましくは、炭素数5〜12のものが用いられる。
【0028】
脂肪族炭化水素の具体例としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン、2−ペンテン、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2、3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ヘプテン、オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、1−ノネン、デカン、1−デセン、p−メンタン、ウンデカン、ドデカン等を挙げることができる。
【0029】
中でも、炭素数5〜8の飽和脂肪族炭化水素が好ましく、ペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、へプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、メチルシクロヘキサン、オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン等が特に好ましい。
【0030】
芳香族炭化水素としては、特に制限されないが、普通、炭素数6〜20、特に炭素数6〜12、とりわけ炭素数7〜10のものが好適に用いられる。芳香族炭化水素の具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、スチレン等を挙げることができる。好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼンであり、より好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、テトラリンであり、最も好ましくは、クメンである。
【0031】
ハロゲン化炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、非環状のものが好ましく用いられる。普通、塩素化炭化水素、フッ素化炭化水素が好ましく、特に塩素化炭化水素が好ましい。炭素数1〜6、特に炭素数1〜4、とりわけ炭素数1〜2のものが好適に用いられる。
【0032】
ハロゲン化炭化水素の具体例としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン等を挙げることができる。
【0033】
好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンであり、より好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンである。
【0034】
上記脂肪酸エステル類としては、特に制限されないが、例えば、プロピオン酸エステル、酢酸エステル、ギ酸エステル等を挙げることができる。特に、酢酸エステル、ギ酸エステルが好ましく、とりわけ、酢酸エステルが好ましい。特に制限されないが、一般に、エステル基としては、炭素数1〜8のアルキルエステル又はアラルキルエステル、好ましくは炭素数1〜6のアルキルエステル、より好ましくは炭素数1〜4のアルキルエステルが好ましく用いられる。
【0035】
プロピオン酸エステルとしては、例えば、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチルを挙げることができる。
【0036】
酢酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル等を挙げることができる。好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシルであり、より好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルであり、最も好ましくは、酢酸エチルである。
【0037】
ギ酸エステルとしては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸sec−ブチル、ギ酸ペンチル等を挙げることができる。好ましくは、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチルであり、最も好ましくは、ギ酸エチルである。
【0038】
上記エーテル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、飽和のものが好ましく用いられる。普通、炭素数3〜20、特に炭素数4〜12、とりわけ炭素数4〜8のものが好適に用いられる。
【0039】
エーテル類の具体例としては、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等を挙げることができる。
【0040】
エーテル類として好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルであり、より好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルであり、さらに好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール等であり、最も好ましくは、メチルtert−ブチルエーテルである。
【0041】
上記アルコール類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、飽和のものが好ましく用いられる。普通、炭素数1〜20、特に炭素数1〜12、とりわけ炭素数1〜6、なかでも炭素数1〜5の1価アルコールが好ましく、又、炭素数2〜5の2価アルコールが好ましく、又、炭素数3の3価アルコールが好ましい。
【0042】
1価のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。
【0043】
1価のアルコールとして好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、シクロヘキサノールであり、より好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコールであり、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコールであり、最も好ましくは、エタノールである。
【0044】
2価のアルコールとしては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等を挙げることができる。好ましくは、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールであり、最も好ましくは、1,2−エタンジオールである。
【0045】
3価のアルコールとしてはグリセリン等を好適に用いることができる。
【0046】
上記ケトン類としては、特に制限されず、普通炭素数3〜6のものが好適に用いられる。ケトン類の具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等を挙げることができ、好ましくは、アセトン、メチルエチルケトンであり、最も好ましくは、アセトンである。
【0047】
ニトリル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に飽和のものが好ましく用いられる。普通、炭素数2〜20、特に炭素数2〜12、とりわけ炭素数2〜8のものが好適に用いられる。ニトリル類の具体例としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、マロノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプチルシアニド、オクチルシアニド、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、トリデカンニトリル、ペンタデカンニトリル、ステアロニトリル、クロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリル、クロロプロピオニトリル、ブロモプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、トルニトリル、ベンゾニトリル、クロロベンゾニトリル、ブロモベンゾニトリル、シアノ安息香酸、ニトロベンゾニトリル、アニソニトリル、フタロニトリル、ブロモトルニトリル、メチルシアノベンゾエート、メトキシベンゾニトリル、アセチルベンゾニトリル、ナフトニトリル、ビフェニルカルボニトリル、フェニルプロピオニトリル、フェニルブチロニトリル、メチルフェニルアセトニトリル、ジフェニルアセトニトリル、ナフチルアセトニトリル、ニトロフェニルアセトニトリル、クロロベンジルシアニド、シクロプロパンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、シクロヘプタンカルボニトリル、フェニルシクロヘキサンカルボニトリル、トリルシクロヘキサンカルボニトリル等を挙げることができる。好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、ベンゾニトリル、トルニトリル、クロロプロピオニトリルであり、より好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリルであり、最も好ましくは、アセトニトリルである。
【0048】
ニトリル類を除く窒素化合物類としては、例えば、ニトロメタン、アセトニトリル、トリエチルアミン、ピリジン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
【0049】
硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を挙げることができる。
【0050】
上記脂肪酸類としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸等を挙げることができるが、ギ酸、酢酸、カプリル酸、カプリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸が好ましく、特に、酢酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸が好ましく、さらには、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸が好ましく、最も好ましくはオレイン酸である。
【0051】
上記テルペン類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されない。通常、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン等を挙げることができる。
【0052】
テルペン類の具体例としては、例えば、プレノール、3−メチル−3−ブテン−2−オール、チグリン酸、アンゲリカ酸、セネイシオ酸、イソ吉草酸、アロオシメン、α−ビサボレン、ビサボレン、β−ブルボネン、δ−カジネン、δ−3−カレン、α−カリオフィレン、β−カリオフィレン、p−サイメン、デヒドロ−p−サイメン、メントール、リモネン、d−リモネン、l−リモネン、cis−3,7−ジメチル−1,3,6,−オクタトリエン、δ−エレメン、β−エレメン、α−ファルネセン、β−ファルネセン、ファルネセン、ゲルマクレンD,β−グアイエン、ロンギフォレン、ミルセン、β−オシメン、α−フェランドレン、α−ピネン、β−ピネン、ピノカンフォン、サビネン、α−ターピネン、γ−ターピネン、ターピノレン、ツヨプセン、バレンセン、α−コパエン、ハイドロゲネーティッド リモネンダイマー、イソカリオフィレン、ピネンダイマー、ジペンテンダイマー、ジペンテントリマー、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、1,8−シネオール、ヒドロキシシトロネラール、リナロール、コスメン、ネロール、ミルセノール、ラバンジュロール、イプスエジエノール、ネラール、ゲラニアール、ペリレン、ローズフラン、ゲラニル酸、チオテルピネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、δ−テルピネオール、カルベオール、テルピン、ペリルアルデヒド、ぺリラアルコール、カルボン、アスカリドール、アネトール、ツヨン、ツジャノール、α−イオノン、β−イオノン、γ−イオノン、ファルネソール、ネロリドール、α−シネンサール、β−シネンサール、ビサボール、フィトール、スクアレン、シトロネリオキシアセトアルデヒド、ミルテナール、ペリラアルデヒド、2−p−シメノール、2−エトキシ−p−サイメン、カルベノール、4−カルボメンテノール、酢酸カルビル、プロピオン酸カルビル、カリオフィレンアルコール、酢酸カリオフィレンアルコール、1,4−シネオール、オイゲノール、d−セリネン、チモール、d−カンフェン、リナロールアセテート等を挙げることができる。
【0053】
テルペン類として好ましくは、プレノール、3−メチル−3−ブテン−2−オール、チグリン酸、アンゲリカ酸、セネイシオ酸、イソ吉草酸、アロオシメン、α−ビサボレン、ビサボレン、β−ブルボネン、δ−カジネン、δ−3−カレン、α−カリオフィレン、β−カリオフィレン、p−サイメン、デヒドロ−p−サイメン、リモネン、d−リモネン、l−リモネン、cis−3,7−ジメチル−1,3,6,−オクタトリエン、δ−エレメン、β−エレメン、α−ファルネセン、β−ファルネセン、ファルネセン、ゲルマクレンD,β−グアイエン、ロンギフォレン、ミルセン、β−オシメン、α−フェランドレン、α−ピネン、β−ピネン、ピノカンフォン、サビネン、α−ターピネン、γ−ターピネン、ターピノレン、ツヨプセン、バレンセン、α−コパエン、ハイドロゲネーティッド リモネンダイマー、イソカリオフィレン、ピネンダイマー、ジペンテンダイマー、ジペンテントリマー、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、1,8−シネオール、ヒドロキシシトロネラール、リナロール、ネロール、ミルセノール、ネラール、ゲラニアール、カルボン、アネトール、ツヨン、フィトール、スクアレン、オイゲノール、d−セリネン、チモール、リナロールアセテートであり、特に好ましくはα−ビサボレン、ビサボレン、δ−カジネン、α−カリオフィレン、β−カリオフィレン、リモネン、d−リモネン、l−リモネン、ミルセン、α−フェランドレン、α−ピネン、β−ピネン、α−ターピネン、γ−ターピネン、ゲラニオール、シトラール、シトロネロール、1,8−シネオール、リナロール、カルボン、アネトール、ツヨン、オイゲノール、d−セリネン、チモール、リナロールアセテートであり、最も好ましくは、リモネン、d−リモネンである。
【0054】
また、上記テルペン類を含む精油を溶媒として、使用する事もできる。精油に関して、特に制限されないが、オレンジ油、カプシカム油、からし油、ガーリック油、キャラウエー油、クローブ油、桂皮油、ココア抽出物、コーヒー豆抽出物、ジンジャー油、スペアミント油、セロリー種子油、タイム油、たまねぎ油、ナツメグ油、パセリ種子油、はっか油、バニラ抽出物、ファンネル油、ペニロイヤル油、ペーパーミント油、ユーカリ油、レモン油、ローズ油、ローズマリー油、アーモンド油、アジョワン油、アニス油、アミリス油、アンゲリカルート油、アンブレット種子油、エストラゴン油、オリガナム油、オリス根油、オリバナム油、カシア油、カスカリラ油、カナンガ油、カモミール油、カラムス油、カルダモン油、キャロット種子油、キュベブ油、クミン油、グレープフルーツ油、桂葉油、ケード油、こしょう油、コスタス根油、コニャック油、コパイバア油、コリアンダー油、しそ油、じゃ香、ジュニパーベリー油、スターアニス油、セイジ油、セボリー油、ゼラニウム油、タンゼリン油、ディル油、とうか油、トルーバルサム油、バジル油、バーチ油、パチュリ油、パルマローザ油、ピメント油、プチグレイン油、ベイ葉油、ベルガモット油、ペルーバルサム油、ベンゾイン樹脂、ボアドローズ油、ホップ油、ボロニアアブソリュート、マージョラン油、マンダリン油、ミルトル油、ユズ香料、ライム油、ラベンジン油、ラベンダー油、ルー油、レモングラス油、レチオニン、ロベージ油、ローレルリーフ油、ワームウッド油等を挙げることができる。
【0055】
上記有機溶媒のうち、アルコール類、脂肪酸類、テルペン類が好ましく、アルコール類がより好ましく、アルコール類の中でもエタノールがもっとも好ましい。
【0056】
上記油脂としては、動植物からの天然油脂であってもよく、合成油脂や加工油脂であっても良い。植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、オリーブ油、アボガド油、けし油、ごぼう子油等を挙げることができ、動物油脂としては、例えば、豚脂、乳脂、魚油、牛脂等を挙げることができ、さらに、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂(例えば硬化油)も挙げることができる。言うまでもなく、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、脂肪酸の部分グリセリド等も使用しうる。また、これらの混合物を使用しても良い。
【0057】
中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、特に制限されないが、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜12、好ましくは8〜12のトリグリセリド等を挙げることができる。
【0058】
上記油脂のうち、取り扱い易さ、臭気等の面から植物油脂、合成油脂、加工油脂が好ましい。これらの中でも、具体的に、ヤシ油、パーム油、パーム核油、菜種油、米油、大豆油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、脂肪酸の部分トリグリセリド等が好ましく、米油、大豆油、菜種油、サフラワー油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸の部分トリグリセリド等が特に好ましい。
【0059】
上記溶媒の中でも、食品、医薬品、化粧品等に許容できる溶媒が好ましく、食品に許容できる溶媒がより好ましい。反応生成物を加工せずとも直接摂取できるという観点や反応性の観点からは、アルコール類、水、油脂、脂肪酸類、テルペン類またはこれらの混合物が好ましく、エタノール、油脂、テルペン類又はその混合物が最も好ましい。
【0060】
本発明の製造方法においては、原料となる酸化型補酵素Q10と、本発明の天然物由来成分を、必要に応じて上記溶媒存在下に共存させて還元反応を実施すればよく、その方法は限定されない。
【0061】
また、本発明の製造方法では、還元反応時にその反応系に界面活性剤を添加する事もでき、あるいは添加するのが好ましい場合が多い。
【0062】
上記界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、縮合リシノレイン酸グリセリド、サポニン、リン脂質等を挙げることができる。
【0063】
上記グリセリン脂肪酸エステルとしては、特に制限されないが、例えば、グリセリンの重合度が1〜10のものを挙げることができる。グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基としては特に制限されないが、脂肪酸の炭素数が各々6〜18のものを好ましく使用することができ、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等を挙げることができる。
【0064】
上記ショ糖脂肪酸エステルとしては、特に制限されないが、ショ糖の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜22の脂肪酸がエステル結合したものが挙げられ、たとえば、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ベヘン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等を挙げることができる。
【0065】
上記有機酸モノグリセリドとしては特に限定されないが、モノグリセリンカプリル酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸クエン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸酢酸エステル、モノグリセリンステアリン酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸乳酸エステル、モノグリセリンステアリン酸ジアセチル酒石酸エステル、モノグリセリンオレイン酸クエン酸エステル等を挙げることができる。
【0066】
上記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、特に制限されないが、ソルビタンの水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18の脂肪酸がエステル結合したものが挙げられ、たとえば、ソルビタンモノラウリン酸エステル、ソルビタンモノパルミチン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0067】
上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、特に制限されないが、たとえば、エチレンオキシド鎖が6モル〜20モル付加したポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等を挙げることができる。
【0068】
上記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとしては、特に制限されないが、たとえば、ポリグリセリンの平均重合度が2〜10、ポリリシノレイン酸の平均縮合度(リシノレイン酸の縮合数の平均)が2〜4であるものが挙げられ、たとえば、テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ペンタグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等が挙げられる。
【0069】
上記プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、モノエステル、ジエステル問わず使用できる。プロピレングリコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基としては特に制限されないが、脂肪酸の炭素数が6〜18のものを好ましく使用することができ、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等を挙げることができる。
【0070】
上記リン脂質としては、特に制限されないが、例えば、卵黄レシチン、精製大豆レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ジセチルリン酸、ステアリルアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールアミン、カルジオリピン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、及び、これらの混合物等を挙げることができる。言うまでもなく、水素添加、酵素分解等の加工を施したリン脂質も使用できる。還元型補酵素Q10の吸収性向上の観点からは、酵素分解されたリン脂質を使用するのが好ましい。
【0071】
上記サポニンとしては、特に制限されないが、エンジュサポニン、キラヤサポニン、精製大豆サポニン、ユッカサポニン等を挙げることができる。
【0072】
本発明の製造方法において、還元反応開始時の反応系(全反応液の全重量)に対する酸化型補酵素Q10の濃度は特に制限されないが、普通、約0.01重量%以上、好ましくは約0.1重量%以上、より好ましくは約0.2重量%以上、特に好ましくは約1%重量以上、さらに好ましくは約2重量%以上、中でも約3重量%以上である。
【0073】
本発明の製造方法における還元反応時の反応温度としては特に制限されないが、通常、20℃以上、好ましくは30℃以上,より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、特に好ましくは60℃以上、最も好ましくは75℃以上で実施するのが好ましい。
【0074】
本発明の効果を最大限に発揮するためには、上記還元反応は、例えば、脱酸素雰囲気下において、実施するのが好ましい。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
【0075】
尚、本発明の製造方法において、還元反応は製剤中で行ってもよい。すなわち、酸化型補酵素Q10と本発明の天然物由来成分と、必要に応じて溶媒を含有する混合物を調製し、該混合物を製剤形態に加工した後に、該形態の製剤中で酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10へと還元し、還元型補酵素Q10を製造するのも本発明の範疇である。この場合の還元は、一定期間以上の保存や加温等によって行われる。本発明において、製剤とは、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセル)、錠剤、シロップ、飲料等の経口投与形態、あるいは、クリーム、坐薬、練り歯磨き等の形態をいう。製剤中で還元反応を行う場合の製剤は、上記経口投与形態であるものが好ましく、より好ましくはカプセル剤、特に好ましくはソフトカプセルが用いられる。
【0076】
上述したような本発明の製造方法により、簡便に還元型補酵素Q10を製造することができる。このとき(反応終了時)の補酵素Q10の総量(すなわち、還元型補酵素Q10及び酸化型補酵素Q10の合計量)に占める還元型補酵素Q10の割合は、普通約5重量%以上、好ましくは約10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、特に好ましくは30重量%以上、とりわけ40重量%以上、なかんずく50重量%以上、さらには70重量%以上である。
【0077】
本発明の製造方法によって得られた還元型補酵素Q10は、還元反応終了後、適宜溶媒除去や単離・精製操作を行って、粗精製あるいは純粋な還元型補酵素Q10を得ることもできるし、還元反応終了後の混合組成物を、還元型補酵素Q10と天然物由来成分を含有する組成物として、そのままあるいは製剤化して、医薬品、食品などの分野で使用することもできる。
【0078】
次に、本発明の安定化方法について説明する。本発明では、組成物中に還元型補酵素Q10と特定の天然物由来成分を共存させることで、還元型補酵素Q10を安定化することができる。
【0079】
本発明の安定化方法において、安定化の対象となる還元型補酵素Q10は、還元型補酵素Q10単独でも良く、又、酸化型補酵素Q10との混合物であっても良い。上記還元型補酵素Q10が酸化型補酵素Q10との混合物である場合、補酵素Q10の総量(すなわち、還元型補酵素Q10及び酸化型補酵素Q10の合計量)に占める還元型補酵素Q10の割合は、特に制限されないが、例えば3重量%以上、普通約10重量%以上、好ましくは約20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、特に好ましくは40重量%以上、とりわけ50重量%以上、なかんずく60重量%以上、さらには80重量%以上である。上限は特に限定されないが、普通99.9重量%以下である。もちろん、還元型補酵素Q10が100重量%の場合、すなわち還元型補酵素Q10を単独で使用してもよい。
【0080】
本発明の安定化方法で使用する還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等や酸化型補酵素Q10を還元するなどの従来公知の方法を利用して得ることができる。好ましくは、既存の高純度補酵素Q10など酸化型補酵素Q10、あるいは酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物を、一般的な還元剤、例えば、ハイドロサルファイトナトリウム(次亜硫酸ナトリウム)、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸類等を用いて還元することにより得られたものであり、より好ましくは、既存の高純度補酵素Q10など酸化型補酵素Q10、あるいは酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物を、アスコルビン酸類を用いて還元することにより得られたものである。また、言うまでもなく、前記した本発明の製造方法によって得られる、還元型補酵素Q10も好適に使用できる。
【0081】
本発明の安定化方法で使用される天然物由来成分は、アセロラ抽出物又は苔桃抽出物である。又この2成分を併用しても良い。苔桃抽出物の詳細な説明としては、上記本発明の製造方法で説明したものと同じである。
【0082】
本発明の安定化方法において、安定化の対象となる還元型補酵素Q10と、上記アセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物の重量比は特に制限されないが、通常、還元型補酵素Q10に対する上記抽出物の重量比、すなわち、使用される上記抽出物の合計重量/還元型補酵素Q10の重量比として、普通約1/1000以上、好ましくは約1/100以上、より好ましくは約1/10以上、特に好ましくは約1/1以上である。その上限は特に制限されないが、約10000/1以下、好ましくは約1000/1以下、より好ましくは約100/1以下、特に好ましくは約10/1以下である。
【0083】
本発明の安定化方法において、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物は、組成物中に共存していることを特徴とする。ここでいう「共存」とは、両者が何らかの形で接触しておればよい。接触形態としては特に制限されず、組成物の系は均一であっても良く、又、不均一であっても良い。例えば、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物が各々固体として接触している場合、一方が溶媒等に溶解した液層に、他方がその液層に固体として存在する場合、還元型補酵素Q10が融液として存在し、アセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物がその融液中に固体として存在する場合、各々が液相に存在し、液−液2層を形成する場合、各々が同一液相に存在する場合等を挙げることができる。言うまでもなく、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物の接触効率の高い系が、還元型補酵素Q10の安定化に効果的であり、この観点からは、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物が同一液相に存在するのが最も好ましい。
【0084】
上記観点から、本発明の安定化方法においては、組成物中の還元型補酵素Q10、及び/又はアセロラ抽出物或いは苔桃抽出物を液相に存在させるために溶媒を共存させるのが好ましい。本発明の安定化方法において使用する溶媒としては、特に制限されず、その具体例や好ましい例としては本発明の製造方法で述べたものが援用できる。
【0085】
また、本発明の安定化方法でも、本発明の製造方法と同様、さらに界面活性剤を共存させる事もでき、又共存させるのが好ましい場合が多い。本発明の安定化方法で使用される界面活性剤の詳細な種類や好ましい例は、本発明の製造方法において説明したものと同じである。
【0086】
本発明の安定化方法において、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物を共存させる方法としては特に制限されない。例えば、外部添加された還元型補酵素Q10を使用する場合、単に還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物を混合するだけでもいいし、両者を混合後、前述したような溶媒をさらに混合しても良い。また、前述した溶媒中に還元型補酵素Q10を含有する溶液に、アセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物を混合しても良いし、前述した溶媒中にこれら抽出物を含有する溶液に、還元型補酵素Q10を混合しても良いし、これら還元型補酵素Q10を含有する溶液とこれら抽出物を含有する溶液を混合してもよい。
【0087】
あるいは、前記本発明の製造方法によって得られた還元型補酵素Q10をそのまま利用する、すなわち、還元反応終了後の還元型補酵素Q10と本発明の天然物由来成分が共存した混合物を、そのまま、本発明の安定化方法に利用することもでき、この態様は最も好ましい態様の1つである。
【0088】
本発明の安定化方法においては、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物、その他必要に応じて溶媒、界面活性剤以外の物質として、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、色素、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤、香料、還元型補酵素Q10以外の活性成分等をさらに共存させることもでき、特に制限されない。
【0089】
上記賦形剤としては、特に制限されないが、例えば、スクロース、ラクトース、グルコース、デンプン、マンニトール、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等を挙げることができる。
【0090】
上記崩壊剤としては、特に制限されないが、例えば、デンプン、寒天、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース、トラガント、アルギン酸等を挙げることができる。
【0091】
上記滑沢剤としては、特に制限されないが、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化油等を挙げることができる。
【0092】
上記結合剤としては、特に制限されないが、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、トラガント、シェラック、ゼラチン、プルラン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ソルビトール等を挙げることができる。
【0093】
上記色素としては、特に制限されないが、例えば酸化チタン、合成色素、ベンガラ色素、タール色素等の色素を挙げることができる。
【0094】
上記凝集防止剤としては、特に制限されないが、例えば、ステアリン酸、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ酸等を挙げることができる。
【0095】
上記吸収促進剤としては、特に制限されないが、例えば、高級アルコール類、高級脂肪酸類等を挙げることができる。
【0096】
上記溶解補助剤としては、特に制限されないが、例えば、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸等を挙げることができる。
【0097】
上記安定化剤としては、特に制限されないが、例えば、安息香酸、蜜蝋、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等を挙げることができる。
【0098】
上記香料としては特に制限されないが、オレンジ油、カプシカム油、からし油、ガーリック油、キャラウエー油、クローブ油、桂皮油、ココア抽出物、コーヒー豆抽出物、ジンジャー油、スペアミント油、セロリー種子油、タイム油、たまねぎ油、ナツメグ油、パセリ種子油、はっか油、バニラ抽出物、ファンネル油、ペニロイヤル油、ペーパーミント油、ユーカリ油、レモン油、ローズ油、ローズマリー油、アーモンド油、アジョワン油、アニス油、アミリス油、アンゲリカルート油、アンブレット種子油、エストラゴン油、オリガナム油、オリス根油、オリバナム油、カシア油、カスカリラ油、カナンガ油、カモミール油、カラムス油、カルダモン油、キャロット種子油、キュベブ油、クミン油、グレープフルーツ油、桂葉油、ケード油、こしょう油、コスタス根油、コニャック油、コパイバア油、コリアンダー油、しそ油、じゃ香、ジュニパーベリー油、スターアニス油、セイジ油、セボリー油、ゼラニウム油、タンゼリン油、ディル油、とうか油、トルーバルサム油、バジル油、バーチ油、パチュリ油、パルマローザ油、ピメント油、プチグレイン油、ベイ葉油、ベルガモット油、ペルーバルサム油、ベンゾイン樹脂、ボアドローズ油、ホップ油、ボロニアアブソリュート、マージョラン油、マンダリン油、ミルトル油、ユズ香料、ライム油、ラベンジン油、ラベンダー油、ルー油、レモングラス油、レチオニン、ロベージ油、ローレルリーフ油、ワームウッド油等を挙げることができる。
【0099】
上記した物質は、複数の役割を担わせても良い。例えば、でんぷんに賦形剤と崩壊剤の役割を担わせても良い。
【0100】
本発明の安定化方法において、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物が共存する組成物の全重量に対する、アセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物の含有量(両者を併用する場合はその合計量)は特に制限されないが、還元型補酵素Q10の安定化効果を充分に発揮させるという観点から、組成物全重量に対する割合として、普通約0.01重量%以上、好ましくは約0.1重量%以上、より好ましくは約1重量%以上、特に好ましくは約5重量%以上である。上限は、特に制限されないが、経済的、又は、栄養素としての有効性等の観点から、普通約99重量%以下、好ましくは約95重量%以下、より好ましくは約90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。
【0101】
本発明の安定化方法において、上記組成物全重量に対する還元型補酵素Q10の含有量は特に制限されないが、組成物中の還元型補酵素Q10の有効性を確保するという観点から、普通、約0.001重量%以上、好ましくは約0.01重量%以上、より好ましくは約0.1重量%以上、特に好ましくは約0.5重量%以上である。上限は、特に制限されないが、好ましくは約50重量%以下、より好ましくは約40重量%以下、特に好ましくは約30重量%以下である。
【0102】
本発明の効果を最大限に発揮するためには、脱酸素雰囲気下において、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物を共存させて本発明の安定化方法を実施するのが好ましい。該脱酸素雰囲気下による共存は、本発明の安定化方法の組成物の調製、保存、製剤への加工や加工後の保存のいずれの段階に実施してもよく、複数のあるいはすべての段階で実施してもよい。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
【0103】
次に、本発明の組成物について説明する。本発明の組成物は、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物を含有する組成物である。
【0104】
本発明の組成物は、組成物中の有効成分である還元型補酵素Q10が、アセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物によって酸化から防護され、安定に保持されているだけでなく、安全性に優れ栄養素としても有効な天然物由来成分も含まれているため、安全でかつ還元型補酵素Q10との相乗効果も期待でき、栄養機能食品、特定保健用食品などの食品やサプリメント、ドリンク剤、医薬品、動物薬、化粧品、ペットフード等として有用な組成物にもなり得る。
【0105】
また、上記本発明の製造方法を利用して本発明の組成物を製造した場合、原料として安価な酸化型補酵素Q10を利用できるだけでなく、酸化型補酵素Q10の還元に利用した本発明の天然物由来成分は、生体への安全性が証明されているため、還元反応終了後に分離除去する必要が無く、また組成物中に残存する天然物由来成分をそのまま還元型補酵素Q10の安定化のためにも利用できるため、製造上の観点からそのメリットは高い。このような、in situで還元型補酵素Q10を含有する組成物を得ることも出来る本発明を利用することで、還元型補酵素Q10含有組成物の製造コストが抑えられ、安価に還元型補酵素Q10含有組成物を提供することが可能となり得る。
【0106】
本発明の組成物に含有される還元型補酵素Q10の具体例や詳細な説明は、本発明の安定化方法において説明したものと同じであるが、上記の点から、酸化型補酵素Q10をアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物により還元することで得られたものであることが、製造上の観点から特に好ましい。
【0107】
また、本発明の組成物に含有されるアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物の詳細な説明としては、本発明の製造方法及び安定化方法において説明したものと同じである。
【0108】
本発明の組成物において、組成物中に含まれる還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物の量比は特に制限されないが、通常、還元型補酵素Q10の重量/上記抽出物の合計重量の比として、普通約1000/1以上、好ましくは約100/1以上、より好ましくは約10/1以上、特に好ましくは約1/1以上であり、約1/10000以下、好ましくは約1/1000以下、より好ましくは約1/100以下、特に好ましくは約1/10以下の範囲内である。
【0109】
本発明の組成物において、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物は、組成物中で共存している。ここでいう「共存」とは、両者が何らかの形で接触しておればよい。接触形態としては特に制限されず、組成物の系は均一であっても良く、又、不均一であっても良い。例えば、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物が各々固体として接触している場合、一方が溶媒等に溶解した液層に、他方がその液層に固体として存在する場合、還元型補酵素Q10が融液として存在し、これら抽出物がその融液中に固体として存在する場合、各々が液相に存在し、液−液2層を形成する場合、各々が同一液相に存在する場合等を挙げることができる。言うまでもなく、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物との接触効率の高い系が、還元型補酵素Q10の安定化に効果的であり、この観点からは、還元型補酵素Q10とこれら抽出物とが同一液相に存在するのが最も好ましい。
【0110】
上記観点から、本発明の組成物中においては、還元型補酵素Q10、アセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物を液相に存在させるために溶媒を使用し、組成物中に含有させるのが好ましい。本発明の組成物において使用される溶媒としては、特に制限されず、その具体例や詳細な種類、好ましい例としては、上述の本発明の製造方法や安定化方法で述べたものと同じである。
【0111】
また、本発明の組成物においても、本発明の製造方法及び安定化方法と同様に、組成物中にさらに界面活性剤を含有する事もでき、また含有するのが好ましい場合が多い。本発明の組成物で、使用される界面活性剤の具体例や詳細な種類、好ましい例は、上述の本発明の製造方法及び安定化方法において説明したものと同じである。
【0112】
本発明の組成物において、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物を含有する組成物を調製する方法は、特に制限されない。例えば、外部添加された還元型補酵素Q10を使用する場合、単に還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物を混合するだけでもいいし、両者を混合後、前述したような溶媒をさらに混合しても良い。また、前述した溶媒中に還元型補酵素Q10を含有する溶液に、アセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物を混合しても良いし、前述した溶媒中にこれら抽出物を含有する溶液に、還元型補酵素Q10を混合しても良いし、これら還元型補酵素Q10を含有する溶液とこれら抽出物を含有する溶液を混合してもよい。
【0113】
あるいは、前記本発明の製造方法によって得られた還元型補酵素Q10をそのまま利用する、すなわち、還元反応終了後の還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物が共存した混合物を、そのまま、本発明における組成物として利用することもでき、この態様は最も好ましい態様の1つである。
【0114】
本発明の組成物においては、組成物中に、還元型補酵素Q10とアセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物、その他必要に応じて溶媒、界面活性剤以外の物質として、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、色素、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤、香料、還元型補酵素Q10以外の活性成分等を含むことができ、特に制限されない。これらの具体例や詳細な種類、好ましい例は、本発明の安定化方法において説明したものと同じである。
【0115】
本発明の組成物中の、アセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物の含有量(両者を併用する場合はその合計量)は特に制限されないが、還元型補酵素Q10の安定化効果を充分に発揮させるという観点から、組成物全重量に対する割合として、普通約0.01重量%以上、好ましくは約0.1重量%以上、より好ましくは約1重量%以上、特に好ましくは約5重量%以上である。上限は、特に制限されないが、経済的、又は、栄養素としての有効性等の観点から、普通約99重量%以下、好ましくは約95重量%以下、より好ましくは約90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。また、組成物中の還元型補酵素Q10の含有量も特に制限されないが、組成物中の還元型補酵素Q10の有効性を確保するという観点から、普通、約0.001重量%以上、好ましくは約0.01重量%以上、より好ましくは約0.1重量%以上、特に好ましくは約0.5重量%以上である。上限は、特に制限されないが、好ましくは約50重量%以下、より好ましくは約40重量%以下、特に好ましくは約30重量%以下である。
【0116】
また、本発明の組成物は、そのまま使用することもできるが、本発明の製造方法で記載したような製剤、すなわち、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセル)、錠剤、シロップ、飲料等の経口投与形態や、クリーム、坐薬、練り歯磨き等のための形態に加工しても使用しうる。その中でも上記経口投与形態へ加工するのが好ましく、特に好ましくは、カプセル剤の形態であり、とりわけ、ソフトカプセル形態へ加工するのが好ましい。このときの、カプセル基材としては特に制限されず、牛骨、牛皮、豚皮、魚皮等を由来とするゼラチンをはじめとして、他の基材(例えば、食品添加物として使用しうるカラギーナン、アルギン酸等の海藻由来品やローカストビーンガムやグアーガム等の植物種子由来品等の増粘安定剤やセルロース類を含む製造用素材)も使用し得る。
【実施例】
【0117】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中の還元型補酵素Q10の純度、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10との重量比は、下記HPLC分析により求めたが、得られた還元型補酵素Q10の純度は本発明における純度の限界値を規定するものではなく、また、同様に、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10との重量比も、その上限値を規定するものではない。なお、本実施例では還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10の重量比を簡便に表記するため、補酵素Q10全量(酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の合計量)中に占める還元型補酵素Q10の割合を、「還元型補酵素Q10の重量比」としてパーセントで示す事とする。例えば、「還元型補酵素Q10の重量比が20%」と表記した場合は、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10の重量比が20/80であることを意味する。
【0118】
(HPLC分析条件)
カラム:SYMMETRY C18(Waters製)250mm(長さ)4.6mm(内径)、移動相;C25OH:CH3OH=4:3(v:v)、検出波長;210nm、流速;1ml/min、還元型補酵素Q10の保持時間;9.1min、酸化型補酵素Q10の保持時間;13.3min。
【0119】
(実施例1)
酸化型補酵素Q10結晶0.1gと、表1に記載の天然物由来成分(植物抽出物)1.0g(10倍重量)をそれぞれ99%エタノール15gに加え、窒素雰囲気下、78℃で16時間撹拌した。反応後の反応液中の還元型補酵素Q10の重量比を表1に示す。
【0120】
(比較例1)
酸化型補酵素Q10結晶0.1g(0.12mmol)と、表1に記載の化合物 (0.69mmol)を、それぞれ99%エタノール15gに加え、窒素雰囲気下、78℃で16時間撹拌した。反応後の反応液中の還元型補酵素Q10の重量比を表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
(実施例2、比較例2)
酸化型補酵素Q10結晶0.1gと、表2に記載の天然物由来成分(植物抽出物)1.0g(10倍重量) または化合物 (0.69mmol)を、それぞれリモネン15gに加え、窒素雰囲気下、85℃で16時間撹拌した。反応後の反応液中の還元型補酵素Q10の重量比を表2に示す。
【0123】
【表2】

【0124】
(実施例3、比較例3)
酸化型補酵素Q10結晶0.1gと、表3に記載の天然物由来成分(植物抽出物)1.0g(10倍重量) または化合物 (0.69mmol)を、それぞれSpan80(0.12g)、グリセリン(0.09g)、Tween80(1.49g)及びMCT(0.43g)の混合液に加え、窒素雰囲気下、80℃で16時間撹拌した。反応後の反応液中の還元型補酵素Q10の重量比を表3に示す。
【0125】
【表3】

【0126】
(実施例4、比較例4)
酸化型補酵素Q10結晶0.1gと、表4に記載の天然物由来成分(植物抽出物)1.0g(10倍重量)を、それぞれ縮合リシノール酸エステル(CR−310、阪本薬品工業製)(1.25g)とMCT(1.25g)の混合液に加え、窒素雰囲気下、80℃で16時間撹拌した。反応後の反応液中の還元型補酵素Q10の重量比を表4に示す。
【0127】
【表4】

【0128】
(実施例5)
還元型補酵素Q10結晶0.02gと、表5に記載の天然物由来成分(植物抽出物)0.2g(10倍重量)を、それぞれ99%エタノール3.0gに加えた後、空気中、25℃で24時間静置した。保存後の反応液中の還元型補酵素Q10の重量比を表5に記載する。また、比較対照として天然物由来成分を添加しなかった結果も合わせて記載する。
【0129】
【表5】

【0130】
(実施例6)
還元型補酵素Q10結晶0.02gと、表6に記載の天然物由来成分(植物抽出物)0.2g(10倍重量)を、それぞれSpan80(0.17g)、グリセリン(0.13g)、Tween80(2.10g)及びMCT(0.61g)の混合液に加えた後、空気中、25℃で24時間静置した。保存後の反応液中の還元型補酵素Q10の重量比を表7に記載する。また、比較対照として天然物由来成分を添加しなかった結果も合わせて記載する。
【0131】
【表6】

【0132】
(実施例7)
還元型補酵素Q10結晶0.02gと、アセロラ抽出物0.2g(10倍重量)を、縮合リシノール酸エステル(CR−310、阪本薬品工業製)(1.50g)とMCT(1.50g)の混合液に加えた後、空気中、25℃で24時間静置した。保存後の反応液中の還元型補酵素Q10の重量比を表7に記載する。また、比較対照として天然物由来成分を添加しなかった結果も合わせて記載する。
【0133】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元型補酵素Q10と、アセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物を含有する組成物。
【請求項2】
組成物中に、有機溶媒、油脂、水、またはこれらの混合物をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
有機溶媒が、アルコール類、脂肪酸類及びテルペン類から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
油脂が、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、オリーブ油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、アボガド油、けし油、ごぼう子油、豚脂、乳脂、魚油、牛脂、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド及び脂肪酸の部分グリセリドからなる群より選択される少なくとも1種である請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の還元型補酵素Q10含量が、0.01重量%以上である請求項1〜4いずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物中の還元型補酵素Q10は、外部添加されたものである請求項1〜5いずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物中の還元型補酵素Q10は、アセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物によって酸化型補酵素Q10が還元されたものである請求項1〜5いずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
還元型補酵素Q10と、アセロラ抽出物及び/又は苔桃抽出物とを共存させる、還元型補酵素Q10の安定化方法。

【公開番号】特開2012−31195(P2012−31195A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235500(P2011−235500)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【分割の表示】特願2011−512771(P2011−512771)の分割
【原出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】