説明

還元型補酵素Q10含有組成物及びその製法方法

【課題】市場での要望に応えうる、高濃度に還元型補酵素Q10を含有する組成物を、簡便に製造するための製造方法、および高濃度に還元型補酵素Q10を含有する組成物、さらには、還元型補酵素Q10の安定化方法の提供。
【解決手段】p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン及びフィトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のテルペン類の存在下、還元剤を用いて酸化型補酵素Q10を還元することを特徴とする還元型補酵素Q10の製造方法、および、p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン及びフィトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のテルペン類と、還元型補酵素Q10及び還元剤を含有する組成物、さらには該組成とする還元型補酵素Q10の安定化方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元型補酵素Q10を含有する組成物とその製造方法に関する。還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10に比べて高い経口吸収性を示し、優れた食品、健康食品、栄養機能食品、特定保健用食品、サプリメント、栄養補助剤、栄養剤、飲料、飼料、動物薬、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10に比べて高い経口吸収性を示し、抗酸化物質として非常に有用な化合物であり、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得た酸化型補酵素Q10を還元する事で得られる化合物である。これまで、還元剤を共存あるいは利用した還元型補酵素Q10の製造方法や還元型補酵素Q10含有組成物が報告されている(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1には、
1)還元型補酵素Q10と、還元型補酵素Q10が酸化型補酵素Q10に酸化されるのを抑制するために有効な量の還元剤、及び、界面活性剤又は植物油又はこれらの混合物、そして必要に応じて溶媒からなる組成物、
2)上記組成物をゼラチンカプセル又はタブレットに製剤化した経口投与のための組成物、更に、
3)酸化型補酵素Q10並びに還元剤を用いてin situで還元型補酵素Q10を含有する上記組成物を調製する方法が開示されている。
また、還元型補酵素Q10の高濃度溶液組成物としては、リモネンを使用した組成物が報告されている(特許文献2)。
【0004】
特許文献2には、還元型補酵素Q10を安定に維持するための安定化剤や、酸化型補酵素Q10を還元するための還元剤としてα−リポ酸が、また、上記還元型補酵素Q10を溶解するために添加するモノテルペンとしてリモネンや、また、脂肪酸が開示され、それらを含む組成物やその調製方法についても開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2001/52822号公報
【特許文献2】WO2008/113066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の製法で得られる組成物中の還元型補酵素Q10の含有量は、実際には1.5重量%から4重量%の範囲であるが、市場においては摂取の容易性や製剤設計の容易性、あるいはコスト低減の観点より、さらに高濃度の還元型補酵素Q10を含む組成物が求められている。一方、特許文献2に記載のリモネンの場合は、記載されている還元型補酵素Q10の組成物中濃度は最大23.5重量%であり、リモネンは比較的、還元型補酵素Q10を良く溶かすものの、さらに我々が種々検討を行った結果、リモネン中では酸化型補酵素Q10の還元反応が進行しにくいため、酸化型補酵素Q10を還元して高品質の還元型補酵素Q10組成物を得るための溶媒としては必ずしも好適ではない事が判った。
【0007】
そこで本発明は、市場での要望に応えうる還元型補酵素Q10の高濃度組成物を簡便に製造するため、酸化型補酵素Q10及び還元型補酵素Q10に対して高溶解性を持ち、かつ酸化型補酵素Q10の還元反応が良好に進行する溶媒を用いて還元型補酵素Q10含有組成物を製造する方法およびその組成物、さらには、その安定化方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定のテルペン類が還元型補酵素Q10を高濃度で溶解することができ、かつ該特定のテルペン類中では酸化型補酵素Q10の還元反応が良好に進む事、また得られた組成物中で還元型補酵素Q10が安定に保持できる事を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン及びフィトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のテルペン類の存在下、還元剤を用いて酸化型補酵素Q10を還元することを特徴とする還元型補酵素Q10の製造方法に関する。
また本発明は、p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン及びフィトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のテルペン類と、還元型補酵素Q10及び還元剤を含有する組成物、及び、p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン及びフィトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のテルペン類の存在下、還元型補酵素Q10と還元剤を共存させる還元型補酵素Q10の安定化方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定のテルペン類を溶媒として用いることで、製剤中でも酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10へ還元することができ、高濃度に還元型補酵素Q10を含有する組成物とその簡便な製造方法を提供することができる。また、酸化されやすい還元型補酵素Q10の安定化方法も提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の還元型補酵素Q10の製造方法について述べる。本発明の製造方法は、p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン及びフィトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のテルペン類の存在下、還元剤を用いて酸化型補酵素Q10を還元することを特徴とする還元型補酵素Q10の製造方法である。
【0012】
本発明の製造方法において、原料となる酸化型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10単独でも良く、又、還元型補酵素Q10との混合物であっても良い。上記酸化型補酵素Q10が還元型補酵素Q10との混合物である場合、補酵素Q10の総量(すなわち、還元型補酵素Q10及び酸化型補酵素Q10の合計量)に占める酸化型補酵素Q10の割合は、特に制限されないが、例えば1重量%以上、普通5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。その上限は特に限定されないが、原料として酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物を使用する場合には、普通99.9重量%以下である。もちろん、酸化型補酵素Q10を単独で使用してもよい。また、ここで用いる酸化型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得ることができる。好ましくは、発酵、天然物からの抽出により得られたものである。
【0013】
本発明の製造方法においては、還元反応を行う際、酸化型補酵素Q10及び/又は還元型補酵素Q10を高濃度に液相に存在させるために特定のテルペン類を反応溶媒として使用する。本発明の製造方法において、還元反応の反応溶媒として使用するテルペン類としては、p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン、フィトールであり、又これらの混合物を使用することもできる。酸化型補酵素Q10及び還元型補酵素Q10の溶解性及び還元反応の進行性の観点から、p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、カレン、カリオフィレン、ターピネンがより好ましく、特にp−サイメン、ヴァレンセン、ミルセン、カレン、カリオフィレンが好ましく、p−サイメン、カレンが最も好ましい。
【0014】
また上記の溶媒に、酸化型補酵素Q10及び還元型補酵素Q10の溶解性および還元反応の進行に大きく悪影響のない範囲において、他の溶媒を添加する事ができる。本発明の製造方法において使用する他の溶媒としては、特に制限されないが、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、アルコール類、ケトン類、脂肪酸類、ケトン類、窒素化合物類(ニトリル類、アミド類を含む)、硫黄化合物類等の有機溶媒、油脂、水等を挙げることができる。
【0015】
上記炭化水素類としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。特に、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、とりわけ、脂肪族炭化水素が好ましい。
【0016】
脂肪族炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、非環状の脂肪族炭化水素が特に好ましく用いられる。また、通常、炭素数3〜20、好ましくは、炭素数5〜12のものが用いられる。
【0017】
具体例としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン、2−ペンテン、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2、3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ヘプテン、オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、1−ノネン、デカン、1−デセン、p−メンタン、ウンデカン、ドデカン等を挙げることができる。
【0018】
中でも、炭素数5〜8の飽和脂肪族炭化水素が好ましく、ペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、へプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、メチルシクロヘキサン、オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン等が特に好ましい。
【0019】
芳香族炭化水素としては、特に制限されないが、普通、炭素数6〜20、特に炭素数6〜12、とりわけ炭素数7〜10のものが好適に用いられる。具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、スチレン等を挙げることができる。好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼンであり、より好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、テトラリンであり、最も好ましくは、クメンである。
【0020】
ハロゲン化炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、非環状のものが好ましく用いられる。普通、塩素化炭化水素、フッ素化炭化水素が好ましく、特に塩素化炭化水素が好ましい。炭素数1〜6、特に炭素数1〜4、とりわけ炭素数1〜2のものが好適に用いられる。
【0021】
具体例としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン等を挙げることができる。
【0022】
好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンであり、より好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンである。
【0023】
上記脂肪酸エステル類としては、特に制限されないが、例えば、蟻酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、イソ吉草酸エステル、ヘプタン酸エステル、ヘキサン酸エステル等を挙げることができる。特に、酢酸エステル、ギ酸エステルが好ましく、とりわけ、酢酸エステルが好ましい。
【0024】
ギ酸エステルとしては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸sec−ブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソアミル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル等を挙げることができる。好ましくは、ギ酸エチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソアミル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリルであり、最も好ましくは、ギ酸エチルである。
【0025】
酢酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸イソアミル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸アミル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸テルピニル、酢酸l−メンチル、酢酸リナリル等を挙げることができる。好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソアミル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸アミル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸テルピニル、酢酸l−メンチル、酢酸リナリルであり、より好ましくは、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルであり、最も好ましくは、酢酸エチルである。
プロピオン酸エステルとしては、例えば、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、プロピオン酸イソアミル等を挙げることができる。
【0026】
酪酸エステルとしては、例えば、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソペンチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸シクロヘキシル等を挙げることができる。
イソ吉草酸エステルとしては、例えば、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸ブチル、イソ吉草酸イソペンチル、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸アリル等を挙げることができる。
【0027】
ヘプタン酸エステルとしては、例えば、ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸エチル、ヘプタン酸ブチル、ヘプタン酸イソペンチル、ヘプタン酸アリル等を挙げることができる。
ヘキサン酸エステルとしては例えば、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、ヘキサン酸イソペンチル、ヘキサン酸アリル等を挙げることができる。
【0028】
上記エーテル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、飽和のものが好ましく用いられる。
【0029】
具体例としては、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジベンジルエーテル、ベンジルブチルエーテル等を挙げることができる。
【0030】
好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジベンジルエーテル、ベンジルブチルエーテルであり、より好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジベンジルエーテル、ベンジルブチルエーテルであり、さらに好ましくは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジベンジルエーテル、ベンジルブチルエーテル等であり、最も好ましくは、ジイソプロピルエーテルである。
【0031】
上記アルコール類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されない。普通、炭素数1〜20の1価アルコール、2価アルコール、3価アルコールが好ましく、特に炭素数1〜20の1価アルコールが好ましい。
【0032】
1価のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、シンナミルアルコール、フェノール、α−メチルベンジルアルコール等を挙げることができる。
【0033】
好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、シンナミルアルコール、フェノール、α−メチルベンジルアルコールであり、より好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、シンナミルアルコール、フェノール、α−メチルベンジルアルコールであり、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコールであり、最も好ましくは、エタノールである。
【0034】
2価のアルコールとしては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等を挙げることができる。好ましくは、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールであり、最も好ましくは、1,3−ブタンジオールである。
【0035】
3価のアルコールとしてはグリセリン等を好適に用いることができる。
【0036】
上記ケトン類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されない。具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、4−メトキシフェニルアセトン、パラメチルアセトフェノン、メチルβ−ナフチルケトン等を挙げることができ、好ましくは、アセトン、アセトフェノン、4−メトキシフェニルアセトン、パラメチルアセトフェノン、メチルエチルケトンであり、最も好ましくは、メチルエチルケトンである。
【0037】
ニトリル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に飽和のものが好ましく用いられる。普通、炭素数2〜20、特に炭素数2〜12、とりわけ炭素数2〜8のものが好適に用いられる。具体例としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、マロノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプチルシアニド、オクチルシアニド、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、トリデカンニトリル、ペンタデカンニトリル、ステアロニトリル、クロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリル、クロロプロピオニトリル、ブロモプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、トルニトリル、ベンゾニトリル、クロロベンゾニトリル、ブロモベンゾニトリル、シアノ安息香酸、ニトロベンゾニトリル、アニソニトリル、フタロニトリル、ブロモトルニトリル、メチルシアノベンゾエート、メトキシベンゾニトリル、アセチルベンゾニトリル、ナフトニトリル、ビフェニルカルボニトリル、フェニルプロピオニトリル、フェニルブチロニトリル、メチルフェニルアセトニトリル、ジフェニルアセトニトリル、ナフチルアセトニトリル、ニトロフェニルアセトニトリル、クロロベンジルシアニド、シクロプロパンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、シクロヘプタンカルボニトリル、フェニルシクロヘキサンカルボニトリル、トリルシクロヘキサンカルボニトリル等を挙げることができる。
【0038】
好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、ベンゾニトリル、トルニトリル、クロロプロピオニトリルであり、より好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリルであり、最も好ましくは、アセトニトリルである。
【0039】
窒素化合物類としては、前述したニトリル類以外に、例えば、ニトロメタン、トリエチルアミン、ピリジン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
【0040】
硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を挙げることができる。
【0041】
上記脂肪酸類としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸、没食子酸、フェルラ酸、カフェ酸、クロロゲン酸、アジピン酸、安息香酸、グルコン酸、ケイ皮酸、コハク酸、ソルビン酸、ニコチン酸、パラヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、パントテン酸、フマル酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸及びドコサペンタエン酸が好ましく、特に、酢酸、プロピオン酸、L−乳酸、カプリル酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、酒石酸が好ましく、さらには、酢酸、L−乳酸、カプリル酸、ラウリン酸が好ましく、最も好ましくはL−乳酸である。
【0042】
上記油脂としては、動植物からの天然油脂であってもよく、合成油脂や加工油脂であっても良い。植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、オリーブ油、アボガド油、けし油、ごぼう子油等を挙げることができ、動物油脂としては、例えば、豚脂、乳脂、魚油、牛脂等を挙げることができ、さらに、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂(例えば硬化油)も挙げることができる。言うまでもなく、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、脂肪酸の部分グリセリド等も使用しうる。また、これらの混合物を使用しても良い。
【0043】
中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、特に制限されないが、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜12、好ましくは8〜12のトリグリセリド等を挙げることができる。
【0044】
上記油脂のうち、取り扱い易さ、臭気等の面から植物油脂、合成油脂、加工油脂が好ましい。これらの中でも、具体的に、ヤシ油、パーム油、パーム核油、菜種油、米油、大豆油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、脂肪酸の部分トリグリセリド等が好ましく、米油、大豆油、菜種油、サフラワー油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸の部分トリグリセリド等が特に好ましい。
【0045】
さらに本発明においては、上述した特定のテルペン類以外のテルペン類も併用する事ができる。これらのテルペン類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されない。通常、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン等を挙げることができる。
【0046】
具体例としては、例えば、プレノール、3−メチル−3−ブテン−2−オール、チグリン酸、アンゲリカ酸、セネイシオ酸、イソ吉草酸、アロオシメン、β−ブルボネン、δ−カジネン、デヒドロ−p−サイメン、メントール、dl−リモネン、d−リモネン、l−リモネン、cis−3,7−ジメチル−1,3,6,−オクタトリエン、δ−エレメン、β−エレメン、α−ファルネセン、β−ファルネセン、ファルネセン、ゲルマクレンD,β−グアイエン、ロンギフォレン、β−オシメン、α−フェランドレン、ピノカンフォン、サビネン、ターピノレン、ツヨプセン、α−コパエン、ハイドロゲネーティッド リモネンダイマー、イソカリオフィレン、ピネンダイマー、ジペンテンダイマー、ジペンテントリマー、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、1,8−シネオール、ヒドロキシシトロネラール、リナロール、コスメン、ネロール、ミルセノール、ラバンジュロール、イプスエジエノール、ネラール、ゲラニアール、ペリレン、ローズフラン、ゲラニル酸、チオテルピネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、δ−テルピネオール、カルベオール、テルピン、ペリルアルデヒド、ぺリラアルコール、カルボン、アスカリドール、アネトール、ツヨン、ツジャノール、α−イオノン、β−イオノン、γ−イオノン、ファルネソール、ネロリドール、α−シネンサール、β−シネンサール、ビサボール、スクアレン、シトロネリオキシアセトアルデヒド、ミルテナール、ペリラアルデヒド、2−p−シメノール、2−エトキシ−p−サイメン、カルベノール、4−カルボメンテノール、酢酸カルビル、プロピオン酸カルビル、カリオフィレンアルコール、酢酸カリオフィレンアルコール、1,4−シネオール、オイゲノール、d−セリネン、チモール、d−カンフェン、リナロールアセテート等を挙げることができる。
【0047】
好ましくは、プレノール、3−メチル−3−ブテン−2−オール、チグリン酸、アンゲリカ酸、セネイシオ酸、イソ吉草酸、アロオシメン、β−ブルボネン、δ−カジネン、デヒドロ−p−サイメン、dl−リモネン、d−リモネン、l−リモネン、cis−3,7−ジメチル−1,3,6,−オクタトリエン、δ−エレメン、β−エレメン、α−ファルネセン、β−ファルネセン、ファルネセン、ゲルマクレンD,β−グアイエン、ロンギフォレン、β−オシメン、α−フェランドレン、ピノカンフォン、サビネン、ツヨプセン、バレンセン、α−コパエン、ハイドロゲネーティッド リモネンダイマー、イソカリオフィレン、ピネンダイマー、ジペンテンダイマー、ジペンテントリマー、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、1,8−シネオール、ヒドロキシシトロネラール、リナロール、ネロール、ミルセノール、ネラール、ゲラニアール、カルボン、アネトール、ツヨン、スクアレン、オイゲノール、d−セリネン、チモール、リナロールアセテートであり、特に好ましくはδ−カジネン、α−カリオフィレン、dl−リモネン、d−リモネン、l−リモネン、α−フェランドレン、ゲラニオール、シトラール、シトロネロール、1,8−シネオール、リナロール、カルボン、アネトール、ツヨン、オイゲノール、d−セリネン、チモール、リナロールアセテートであり、最も好ましくは、dl−リモネン、d−リモネンである。
【0048】
また、上述した特定のテルペン類又は特定のテルペン類以外のテルペン類を使用する際には、これらを含む精油として使用する事もできる。精油に関して、特に制限されないが、オレンジ油、カプシカム油、からし油、ガーリック油、キャラウエー油、クローブ油、桂皮油、ココア抽出物、コーヒー豆抽出物、ジンジャー油、スペアミント油、セロリー種子油、タイム油、たまねぎ油、ナツメグ油、パセリ種子油、はっか油、バニラ抽出物、ファンネル油、ペニロイヤル油、ペーパーミント油、ユーカリ油、レモン油、ローズ油、ローズマリー油、アーモンド油、アジョワン油、アニス油、アミリス油、アンゲリカルート油、アンブレット種子油、エストラゴン油、オリガナム油、オリス根油、オリバナム油、カシア油、カスカリラ油、カナンガ油、カモミール油、カラムス油、カルダモン油、キャロット種子油、キュベブ油、クミン油、グレープフルーツ油、桂葉油、ケード油、こしょう油、コスタス根油、コニャック油、コパイバア油、コリアンダー油、しそ油、じゃ香、ジュニパーベリー油、スターアニス油、セイジ油、セボリー油、ゼラニウム油、タンゼリン油、ディル油、とうか油、トルーバルサム油、バジル油、バーチ油、パチュリ油、パルマローザ油、ピメント油、プチグレイン油、ベイ葉油、ベルガモット油、ペルーバルサム油、ベンゾイン樹脂、ボアドローズ油、ホップ油、ボロニアアブソリュート、マージョラン油、マンダリン油、ミルトル油、ユズ香料、ライム油、ラベンジン油、ラベンダー油、ルー油、レモングラス油、レチオニン、ロベージ油、ローレルリーフ油、ワームウッド油等を挙げることができる。
【0049】
上記の他の溶媒も使用しうるが、その場合、食品、医薬品、化粧品等に許容できる溶媒が好ましく、食品に許容できる溶媒がより好ましい。反応生成物を加工せずとも直接摂取できるという観点からは、アルコール類、脂肪酸類、水、油脂類、特定のテルペン類以外のテルペン類またはこれらの混合物が好ましく、さらには、油脂、又は、油脂とこれらの混合物がより好ましく、油脂が最も好ましい。
【0050】
また、本発明の製造方法では、還元反応時にその反応系に界面活性剤を添加する事もでき、また添加するのが好ましい場合が多い。
上記界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、サポニン、リン脂質等を挙げることができる。
【0051】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、特に制限されないが、例えば、グリセリンの重合度が1〜10のものを挙げることができる。脂肪酸の炭素数が各々6〜18のグリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基としては特に制限されないが、脂肪酸の炭素数が各々6〜18のものを好ましく使用することができ、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等を挙げることができる。
【0052】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、特に制限されないが、ショ糖の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜22の脂肪酸がエステル結合したものが挙げられ、たとえば、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ベヘン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等を挙げることができる。
【0053】
有機酸モノグリセリドとしては特に限定されないが、モノグリセリンカプリル酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸クエン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸酢酸エステル、モノグリセリンステアリン酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸乳酸エステル、モノグリセリンステアリン酸ジアセチル酒石酸エステル、モノグリセリンオレイン酸クエン酸エステル等を挙げることができる。
【0054】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、特に制限されないが、ソルビタンの水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18の脂肪酸がエステル結合したものが挙げられ、たとえば、ソルビタンモノラウリン酸エステル、ソルビタンモノパルミチン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0055】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、特に制限されないが、たとえば、エチレンオキシド鎖が6〜20モル付加したポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等を挙げることができる。
【0056】
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、モノエステル、ジエステル問わず使用できる。プロピレングリコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基としては特に制限されないが、脂肪酸の炭素数が6〜18のものを好ましく使用することができ、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等を挙げることができる。
【0057】
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとしては、特に制限されないが、たとえば、ポリグリセリンの平均重合度が2〜10、ポリリシノレイン酸の平均縮合度(リシノレイン酸の縮合数の平均)が2〜4であるものが挙げられ、たとえば、テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ペンタグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等が挙げられる。
【0058】
サポニンとしては、特に制限されないが、エンジュサポニン、キラヤサポニン、精製大豆サポニン、ユッカサポニン等を挙げることができる。
【0059】
リン脂質としては、特に制限されないが、例えば、卵黄レシチン、精製大豆レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ジセチルリン酸、ステアリルアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールアミン、カルジオリピン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、及び、これらの混合物等を挙げることができる。言うまでもなく、水素添加、酵素分解等の加工を施したリン脂質も使用できる。還元型補酵素Q10の吸収性向上の観点からは、酵素分解されたリン脂質を使用するのが好ましい。
【0060】
また、本発明の製造方法で使用する還元剤は、酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10に変換できるものであれば特に限定されない。例えば、還元剤として一般的ではないものであっても、酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10に変換できる能力があれば、動植物からの抽出物、色素、動植物の生産物などの天然由来成分であっても、化合物であっても、本発明の製造方法において還元剤として使用できる。
【0061】
本発明の製造方法で還元剤として使用できる動植物からの抽出物としては、例えば、アセロラ抽出物、松皮抽出物、黄杞葉抽出物、チャ抽出物、ドクダミ抽出物、酵素処理ルチン、紅麹抽出物、クランベリー抽出物、ローズマリー抽出物、ウーロン茶抽出物、ノブドウ抽出物、マカ抽出物、インディアンデーツ抽出物等が挙げられ、この中でもアセロラ抽出物、松皮抽出物、黄杞葉抽出物、チャ抽出物、ドクダミ抽出物、酵素処理ルチンが好ましく、特に、アセロラ抽出物、松皮抽出物、黄杞葉抽出物、チャ抽出物が好ましい。
【0062】
本発明の製造方法で還元剤として使用できる動植物由来の色素としては、例えば、カカオ色素、クチナシ色素、ブドウ果皮色素、紅麹色素等が挙げられ、この中でもクチナシ色素が好ましい。
【0063】
本発明の製造方法で還元剤として使用できる動植物の生産物としては、例えば、ローヤルゼリー、香酢等が挙げられる。
【0064】
本発明の製造方法で還元剤として使用できる化合物としては、例えば、L−アスコルビン酸、D−arabo-アスコルビン酸、L−アスコルビルパルミテート、L−アスコルビルステアレート、水素化ホウ素ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、レチナール、β-カロチン、トコトリエノール、NADH、シアノコバラミン、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、セサモール、チアミン塩酸塩等が挙げられ、この中でもL−アスコルビン酸、D−arabo-アスコルビン酸、L−アスコルビルパルミテート、L−アスコルビルステアレート、水素化ホウ素ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、レチナール、β-カロチン、トコトリエノールが好ましく、特にL−アスコルビン酸、D−arabo-アスコルビン酸、L−アスコルビルパルミテート、L−アスコルビルステアレート、水素化ホウ素ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、レチナールが好ましい。
【0065】
本発明の製造方法において、還元反応は、原料となる酸化型補酵素Q10と、還元剤を、必要に応じて上記特定のテルペン類存在下に共存させればよく、その方法は限定されない。その場合の共存とは、原料となる酸化型補酵素Q10と還元剤が反応系において接触しておればよく、その系は均一であっても良く、又、不均一であっても良く、特に制限されない。もちろん、酸化型補酵素Q10と還元剤との接触効率の高い系が、酸化型補酵素Q10の還元には効果的であり、この観点からは、酸化型補酵素Q10と還元剤が同一液相に存在するのが最も好ましい。
【0066】
尚、本発明の製造方法において、反応開始時の酸化型補酵素Q10と還元剤の重量比は特に制限されないが、通常、酸化型補酵素Q10に対する還元剤の重量比(還元剤/酸化型補酵素Q10)として、普通は約1/1000以上、好ましくは約1/100以上、より好ましくは約1/10以上、特に好ましくは約1/1以上である。酸化型補酵素Q10に対する還元剤の重量比の上限は特に制限されないが、経済性及び得られる組成物の栄養素としての有効性の観点から、約10000/1以下、好ましくは約1000/1以下、より好ましくは約100/1以下、特に好ましくは約10/1以下である。
【0067】
本発明の製造方法において、還元反応開始時の反応系(全反応液の全重量)に対する酸化型補酵素Q10の濃度は特に制限されないが、普通、約0.01重量%以上、好ましくは約0.1重量%以上、より好ましくは約0.2重量%以上、特に好ましくは約1%重量以上、さらに好ましくは約2重量%以上、中でも約3重量%以上である。上限は特に限定されないが、普通99重量%以下、好ましくは98重量%以下、さらに好ましくは96%重量%以下である。
【0068】
本発明の製造方法における還元反応時の反応温度としては特に制限されないが、通常、20℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、特に好ましくは60℃以上である。上限は特に限定されないが、普通200℃以下、好ましくは150℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
【0069】
本発明の効果を最大限に発揮するためには、上記還元反応は、例えば、脱酸素雰囲気下において、実施するのが好ましい。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
【0070】
尚、本発明の製造方法において、還元反応は製剤中で行うこともできる。すなわち、酸化型補酵素Q10と還元剤と本発明の特定のテルペン類とを含有する組成物を調製し、該組成物を製剤形態に加工した後に、該形態の製剤中で酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10へと還元し、還元型補酵素Q10を製造するのも本発明の範疇である。この場合の還元は、一定期間以上の保存や加温等によって行われる。本発明において、製剤とは、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセル等)、錠剤、シロップ、飲料等の経口投与形態、あるいは、クリーム、坐薬、練り歯磨き等の形態をいう。製剤中で還元反応を行う場合の製剤は、上記経口投与形態であるものが好ましく、より好ましくはカプセル剤、特に好ましくはソフトカプセルが用いられる。
【0071】
上述したような本発明の製造方法により、簡便に還元型補酵素Q10を製造することができる。このとき(反応終了時)の補酵素Q10の総量(すなわち、還元型補酵素Q10及び酸化型補酵素Q10の合計量)に占める還元型補酵素Q10の割合は、普通約65重量%以上、好ましくは約70重量%以上、より好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、とりわけ95重量%以上、なかんずく98重量%以上である。
【0072】
次に本発明の組成物及び安定化方法について説明する。
本発明の組成物は、p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン及びフィトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のテルペン類と、還元型補酵素Q10及び還元剤を含有する組成物である。また、本発明の安定化方法は、p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン及びフィトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のテルペン類の存在下、還元剤と還元型補酵素Q10を共存させることを特徴とする、還元型補酵素Q10の安定化方法である。すなわち、本発明の組成物とすることで、還元型補酵素Q10を安定化することができる。
【0073】
本発明の組成物及び安定化方法において、組成物中に含有され、安定化の対象となる還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出や酸化型補酵素Q10を還元する等の従来公知の方法により得ることができる。好ましくは、既存の高純度補酵素Q10など酸化型補酵素Q10、あるいは酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物を、一般的な還元剤、例えば、ハイドロサルファイトナトリウム(次亜硫酸ナトリウム)、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸類等を用いて還元することにより得られたものであり、より好ましくは、既存の高純度補酵素Q10など酸化型補酵素Q10、あるいは酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物を、アスコルビン酸類を用いて還元することにより得られたものである。また、言うまでもなく、前記した本発明の製造方法によって得られる、還元型補酵素Q10も好適に使用できる。
【0074】
本発明の組成物及び安定化方法において使用される還元型補酵素Q10は、還元型補酵素Q10単独でも良く、又、酸化型補酵素Q10との混合物であっても良い。上記還元型補酵素Q10が酸化型補酵素Q10との混合物である場合、補酵素Q10の総量(すなわち、還元型補酵素Q10及び酸化型補酵素Q10の合計量)に占める還元型補酵素Q10の割合は、特に制限されないが、普通約65重量%以上、好ましくは約70重量%以上、より好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、とりわけ95重量%以上、なかんずく98重量%以上である。上限は特に限定されないが、普通99.9重量%以下である。
【0075】
本発明の組成物及び安定化方法において使用される還元剤の具体例や詳細な説明は、本発明の製造方法において説明したものと同じであり、L−アスコルビン酸、D−arabo−アスコルビン酸、L−アスコルビルパルミテート、L−アスコルビルステアレート、水素化ホウ素ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、レチナール、アセロラ抽出物、松皮抽出物、黄杞葉抽出物、チャ抽出物、クチナシ色素等がより好ましい例として使用できる。
【0076】
本発明の組成物及び安定化方法において、組成物中に含まれるあるいは安定化に使用される還元型補酵素Q10と還元剤の重量比は特に制限されないが、通常、還元型補酵素Q10に対する還元剤の重量比(還元剤/還元型補酵素Q10)として、普通約1/1000以上、好ましくは約1/100以上、より好ましくは約1/10以上、特に好ましくは約1/1以上である。還元型補酵素Q10に対する還元剤の重量比の上限は特に制限されないが、約10000/1以下、好ましくは約1000/1以下、より好ましくは約100/1以下、特に好ましくは約10/1以下である。
【0077】
本発明の組成物及び安定化方法においては、組成物中で還元型補酵素Q10を高濃度に溶解しうる特定のテルペン類を溶媒として使用する。本発明の組成物及び安定化方法において使用するテルペン類としては、p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン、フィトール、及びこれらの混合物である。還元型補酵素Q10の溶解性及び安定性の観点からは、p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、カレン、カリオフィレン、ターピネンがより好ましく、特にp−サイメン、ヴァレンセン、ミルセン、カレン、カリオフィレンが好ましく、p−サイメン、カレンが最も好ましい。
【0078】
また上記の溶媒に、還元型補酵素Q10の高溶解性および還元型補酵素Q10の酸化に大きく悪影響を及ぼさない範囲において、他の溶媒を添加する事ができる。本発明の組成物及び安定化方法で使用する他の溶媒としては、特に制限されないが、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、アルコール類、ケトン類、脂肪酸類、ケトン類、窒素化合物類(ニトリル類、アミド類を含む)、硫黄化合物類等の有機溶媒、油脂、水等を挙げることができる。本発明の組成物及び安定化方法において使用できるその他の溶媒の具体例や詳細な説明としては、本発明の製造方法において説明したものと同じであり、アルコール類、脂肪酸類、水、油脂、特定のテルペン類以外のテルペン類またはこれらの混合物が好ましく、さらには、油脂、又は、油脂とこれらの混合物がより好ましく、油脂が最も好ましい。
【0079】
また、本発明の組成物及び安定化方法においても、本発明の製造方法と同様に、界面活性剤を添加する事もでき、また添加するのが好ましい場合が多い。本発明の組成物及び安定化方法において、使用する界面活性剤の詳細な種類や好ましい例は、本発明の製造方法において説明したものと同じである。
【0080】
本発明の組成物及び安定化方法において、還元型補酵素Q10と還元剤は、上記特定のテルペン類の存在下、組成物中に共存しているが、ここでいう「共存」とは、両者が何らかの形で接触しておればよい。接触形態としては特に制限されず、組成物の系は均一であっても良く、又、不均一であっても良いが、還元型補酵素Q10と還元剤との接触効率の高い系が、還元型補酵素Q10の安定化に効果的であり、還元型補酵素Q10と還元剤が同一液相に存在するのが最も好ましい。
【0081】
本発明の組成物および安定化方法においては、還元型補酵素Q10と還元剤、特定のテルペン類や上記その他の溶媒、界面活性剤以外の物質として、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、色素、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤、還元型補酵素Q10以外の活性成分等を含むことができ、特に制限されない。
【0082】
上記賦形剤としては、特に制限されないが、例えば、スクロース、ラクトース、グルコース、デンプン、マンニトール、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等を挙げることができる。
【0083】
上記崩壊剤としては、特に制限されないが、例えば、デンプン、寒天、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、トラガント、アルギン酸等を挙げることができる。
【0084】
上記滑沢剤としては、特に制限されないが、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化油等を挙げることができる。
【0085】
上記結合剤としては、特に制限されないが、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、トラガント、シェラック、ゼラチン、プルラン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ソルビトール等を挙げることができる。
【0086】
上記色素としては、特に制限されないが、例えば酸化チタン、合成色素、ベンガラ色素、タール色素等の色素を挙げることができる。
【0087】
上記凝集防止剤としては、特に制限されないが、例えば、ステアリン酸、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ酸等を挙げることができる。
【0088】
上記吸収促進剤としては、特に制限されないが、例えば、高級アルコール類、高級脂肪酸類等を挙げることができる。
【0089】
上記溶解補助剤としては、特に制限されないが、例えば、フマル酸、コハク酸等の有機酸等を挙げることができる。
【0090】
上記安定化剤としては、特に制限されないが、例えば、安息香酸、蜜蝋、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等を挙げることができる。
【0091】
上記還元型補酵素Q10以外の他の活性成分としては特に制限されないが、例えば、アミノ酸、ビタミンCやビタミンE等のビタミン類やその誘導体、β−カロチンやアスタキサンチン等のカロチノイド類、ミネラル、ポリフェノール、有機酸類、糖類、ペプチド、タンパク質等を挙げることができる。
【0092】
上記した物質は、複数の役割を担わせても良い。例えば、でんぷんに賦形剤と崩壊剤の役割を担わせても良い。
【0093】
本発明の組成物及び安定化方法において、組成物の全重量に対する還元剤の含有量は特に制限されないが、還元型補酵素Q10の安定化効果を充分に発揮させるという観点から、組成物全重量に対する割合として、普通約0.01重量%以上、好ましくは約0.1重量%以上、より好ましくは約1重量%以上、特に好ましくは約10重量%以上である。
【0094】
本発明の組成物及び安定化方法において、組成物の全重量に対する還元型補酵素Q10の含有量は特に制限されないが、高濃度溶液組成物を作製するという観点から、普通約10重量%以上、好ましくは約20重量%以上、より好ましくは約23重量%以上、さらに好ましくは25重量%以上、特に好ましくは30重量%以上、とりわけ好ましくは35重量%以上、なかんずく40重量%以上である。
【0095】
本発明の組成物及び安定化方法において、還元型補酵素Q10と還元剤と特定のテルペン類を含有する組成物を調製する方法は、特に制限されない。例えば、外部添加された還元型補酵素Q10を使用する場合、単に還元型補酵素Q10と還元剤と特定のテルペン類を混合するだけでもいいし、これらを混合後、前述したようなその他の溶媒や他の成分をさらに混合しても良い。また、特定のテルペン類中に還元型補酵素Q10を溶解させて得られる溶液に、還元剤やその他の成分を混合しても良い。
【0096】
あるいは、前記本発明の製造方法によって得られた還元型補酵素Q10をそのまま利用する、すなわち、還元反応終了後の還元型補酵素Q10と還元剤が、特定のテルペン類中に共存した混合物を、そのまま、本発明における組成物として利用することもでき、この態様は最も好ましい態様の1つである。
【0097】
本発明の組成物は、上記テルペン類が還元型補酵素Q10を高濃度に溶解しうることに基づいて発明されたものでもあるため、少なくとも、上記テルペン類中に還元型補酵素Q10が高濃度に溶解された状態で含まれている組成物も、本発明の範疇である。具体的には、p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン及びフィトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のテルペン類中に還元型補酵素Q10を25重量%以上含有する液状の組成物もまた本発明の一態様である。上記テルペン中に含まれる還元型補酵素Q10の含有量としては25重量%以上であれば特に限定されないが、27重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましく、33重量%以上が特に好ましい。該組成物中には、前記本発明の組成物において述べたような、特定のテルペン類以外のその他の溶媒、界面活性剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、色素、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤、還元型補酵素Q10以外の活性成分等をも含有させることができる。またそれらの具体例、好ましい例は上記本発明の組成物において述べたものと同じである。該組成物は、例えば、前記本発明の製造方法によって得られた反応物から、必要に応じて、使用した還元剤を除去することによっても得ることができるし、あるいは、本発明の製造方法により得た還元型補酵素Q10を、単離後、上記テルペン類に溶解させることによっても得ることができる。
【0098】
本発明の効果を最大限に発揮するためには、脱酸素雰囲気下において、本発明の安定化方法を実施する、すなわち上記共存を行うのが好ましく、また、本発明の組成物を脱酸素雰囲気下において調製及び/又は保存するのが好ましい。また後述する製剤への加工や加工後の保存も脱酸素雰囲気下に行うのが好ましい。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
【0099】
本発明の組成物は、そのまま使用することもできるが、本発明の製造方法に記載したような製剤、すなわち、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセル)、錠剤、シロップ、飲料等の経口投与形態や、クリーム、坐薬、練り歯磨き等のための形態に加工しても使用しうる。その中でも上記経口投与形態へ加工するのが好ましく、特に好ましくは、カプセル剤の形態であり、とりわけ、ソフトカプセル形態へ加工するのが好ましい。このときの、カプセル基材としては特に制限されず、牛骨、牛皮、豚皮、魚皮等を由来とするゼラチンをはじめとして、他の基材(例えば、食品添加物として使用しうるカラギーナン、アルギン酸等の海藻由来品やローカストビーンガムやグアーガム等の植物種子由来品等の増粘安定剤やセルロース類を含む製造用素材)も使用しうる。
【0100】
本発明の組成物は、有効成分である還元型補酵素Q10が酸化から防護され安定に保持されているだけでなく、特定のテルペン類を使用することで還元型補酵素Q10の高濃度製剤とできる他、栄養素として有効な他の成分も含まれているため、還元型補酵素Q10との相乗効果も期待でき、栄養機能食品、特定保健用食品などの食品やサプリメント、ドリンク剤、医薬品、動物薬、化粧品、ペットフード等として有用な組成物にもなり得る。
【実施例】
【0101】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中の還元型補酵素Q10の純度、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10との重量比は、下記HPLC分析により求めたが、得られた還元型補酵素Q10の純度は本発明における純度の限界値を規定するものではなく、また、同様に、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10との重量比も、その上限値を規定するものではない。なお、本実施例では還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10の重量比を簡便に表記するため、補酵素Q10全量(酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の合計量)中に占める還元型補酵素Q10の割合を「還元型補酵素Q10の重量比」としてパーセントで示す事とする。例えば、「還元型補酵素Q10の重量比が20%」と表記した場合は、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10の重量比が20/80であることを意味する。
【0102】
(HPLC分析条件)
カラム:SYMMETRY C18(Waters製)250mm(長さ)4.6mm(内径)、移動相;COH:CHOH=4:3(v:v)、検出波長;210nm、流速;1ml/min、還元型補酵素Q10の保持時間;9.1min、酸化型補酵素Q10の保持時間;13.3min。
【0103】
(実施例1)
表1に記載のテルペン類(p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン)各3gを、25ml試験管に添加し、ここに還元型補酵素Q10(純度:99.5重量%)を3g(3.48mmol)添加して、容器内を窒素置換した後、60℃、1時間撹拌保持して均一な溶液を得た。この溶液を25℃に冷却した後、16時間撹拌保持し、一部還元型補酵素Q10が析出したスラリーを得た。得られたスラリーをフィルター濾過して溶液部分のみを分離し、この溶液中の還元型補酵素Q10濃度を分析により求めた。得られた分析結果を表1に示す。また、対象としてリモネンの溶解度も表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
(実施例2)
表2に記載のテルペン類(p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン、フィトール)各3gに、酸化型補酵素Q10結晶0.2g(0.23mmol)と、L−アスコルビルパルミテート6当量(576mg、1.39mmol)を添加し、容器内を窒素置換した後、80℃で16時間撹拌した。反応後の反応液中の還元型補酵素Q10の重量比を表2に示す。また、対象としてリモネンを溶媒として用いた場合の結果も表2に示す。
【0106】
【表2】

【0107】
(実施例3)
表3に記載のテルペン類(ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カリオフィレン、ターピネン、フィトール)各3gに、酸化型補酵素Q10結晶0.2g(0.23mmol)と、L−アスコルビン酸6当量(245mg、1.39mmol)を添加し、容器内を窒素置換した後、80℃で16時間撹拌した。反応後の反応液中の還元型補酵素Q10の重量比を表3に示す。また、対象としてリモネンを溶媒として用いた場合の結果も表3に示す。
【0108】
【表3】

【0109】
(実施例4)
表4に記載のテルペン類(p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン、フィトール)各3gに蒸留水0.3gを加えた後、酸化型補酵素Q10結晶0.2g(0.23mmol)と、L-アスコルビルパルミテート6当量(576mg、1.39mmol)を添加し、容器内を窒素置換した後、80℃で16時間撹拌した。反応後の反応液中の還元型補酵素Q10の重量比を表4に示す。また、対象としてリモネンを溶媒として用いた場合の結果も表4に示す。
【0110】
【表4】

【0111】
(実施例5)
表5に記載のテルペン類(ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カリオフィレン、ターピネン、フィトール)各3gに酢酸3gを加えた後、酸化型補酵素Q10結晶0.2g(0.23mmol)と、L−アスコルビン酸6当量(245mg、1.39mmol)を添加し、容器内を窒素置換した後、80℃で16時間撹拌した。反応後の反応液中の還元型補酵素Q10の重量比を表5に示す。また、対象としてリモネンを溶媒として用いた場合の結果も表5に示す。
【0112】
【表5】

【0113】
(実施例6)
カレン26.8kgに、酸化型補酵素Q10結晶20kg(23.2mol)と、L−アスコルビルパルミテート1.8当量(17.3kg、41.8mol)を添加し、反応容器内を窒素置換した後、80℃で24時間撹拌した。反応後に得られた組成物をそのまま内容物とするゼラチンソフトカプセル製剤を、常法により作製した。
【0114】
(実施例7)
実施例2から5で得た反応後の還元型補酵素Q10と還元剤を含む組成物と、実施例6で作成したゼラチンソフトカプセルを、それぞれ、空気中、25℃で1週間保存した。保存後の還元型補酵素Q10の重量比は、保存開始時の値より低下していなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン及びフィトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のテルペン類の存在下、還元剤を用いて酸化型補酵素Q10を還元することを特徴とする還元型補酵素Q10の製造方法。
【請求項2】
還元剤が、L−アスコルビン酸、D−arabo−アスコルビン酸、L−アスコルビルパルミテート、L−アスコルビルステアレート、水素化ホウ素ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、レチナール、アセロラ抽出物、松皮抽出物、黄杞葉抽出物、チャ抽出物及びクチナシ色素からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
還元反応時に、さらに有機溶媒、油脂、水、または、これらの混合物を共存させる請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
有機溶媒が、アルコール類及び/または脂肪酸類である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
油脂が、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、オリーブ油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、アボガド油、けし油、ごぼう子油、豚脂、乳脂、魚油、牛脂、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド及び脂肪酸の部分グリセリドからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
還元反応開始時の反応系における酸化型補酵素Q10濃度が0.01重量%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
製剤中で、還元反応を実施する請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
製剤がカプセル剤である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
カプセル剤がソフトカプセルである請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
還元反応を脱酸素雰囲気下に行う請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン及びフィトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のテルペン類と、還元型補酵素Q10及び還元剤を含有する組成物。
【請求項12】
還元剤が、L−アスコルビン酸、D−arabo−アスコルビン酸、L−アスコルビルパルミテート、L−アスコルビルステアレート、水素化ホウ素ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、レチナール、アセロラ抽出物、松皮抽出物、黄杞葉抽出物、チャ抽出物及びクチナシ色素からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
さらに有機溶媒、油脂、水、または、これらの混合物を含有する請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
有機溶媒が、アルコール類及び/又は脂肪酸類である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
油脂が、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、オリーブ油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、アボガド油、けし油、ごぼう子油、豚脂、乳脂、魚油、牛脂、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド及び脂肪酸の部分グリセリドからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
組成物中の還元型補酵素Q10含有量が10重量%以上である請求項11〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
脱酸素雰囲気下に調製及び/又は保管されることを特徴とする請求項11〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン及びターピネンからなる群より選ばれる少なくとも1種のテルペン類中に、還元型補酵素Q10を25重量%以上含有する液状の組成物。
【請求項19】
p−サイメン、α−ピネン、ヴァレンセン、ミルセン、ビサボレン、カレン、カリオフィレン、ターピネン及びフィトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のテルペン類の存在下、還元剤と還元型補酵素Q10を共存させることを特徴とする還元型補酵素Q10の安定化方法。
【請求項20】
還元剤がL−アスコルビン酸、D−arabo−アスコルビン酸、L−アスコルビルパルミテート、L−アスコルビルステアレート、水素化ホウ素ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、レチナール、アセロラ抽出物、松皮抽出物、黄杞葉抽出物、チャ抽出物及びクチナシ色素からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項19に記載の安定化方法。
【請求項21】
さらに有機溶媒、油脂、水、または、これらの混合物を共存させる請求項19又は20に記載の安定化方法。
【請求項22】
有機溶媒が、アルコール類及び/又は脂肪酸類である請求項21に記載の安定化方法。
【請求項23】
油脂が、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、オリーブ油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、アボガド油、けし油、ごぼう子油、豚脂、乳脂、魚油、牛脂、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド及び脂肪酸の部分グリセリドからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項21に記載の安定化方法。
【請求項24】
脱酸素雰囲気下に共存させることを特徴とする請求項19〜23のいずれか1項に記載の安定化方法。

【公開番号】特開2011−225485(P2011−225485A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97262(P2010−97262)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】