説明

還元型PQQの安定化方法

【課題】還元型ピロロキノリンキノン類の着色・変色を抑制する組成物及びその方法を提供することによって、健康補助食品、化粧品などに有用な物質として注目を集めている還元型ピロロキノリンキノン類を安定化する組成物及びその方法を提供する。
【解決手段】還元型ピロロキノリンキノン類に、重量平均分子量が6000〜3000000であるポリビニルピロリドンなどの水溶性ポリマーを、還元型ピロロキノリンキノン又はその塩に対して0.001〜1000重量倍含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(1)で表される還元型ピロロキノリンキノン構造又は式(2)で表される酸化型ピロロキノリンキノン構造の物質に関する。
【化1】


【化2】

【背景技術】
【0002】
酸化型PQQ(一般的には単にPQQと記されることが多い)は新しいビタミンの可能性があることが提案されて、健康補助食品、化粧品などに有用な物質として注目を集めている。さらには細菌に限らず、真核生物のカビ、酵母に存在し、酸化還元系の補酵素として重要な働きを行っている。また、酸化型PQQについて近年までに細胞の増殖促進作用、抗白内障作用、肝臓疾患予防治療作用、創傷治癒作用、抗アレルギ−作用、逆転写酵素阻害作用およびグリオキサラーゼI阻害作用−制癌作用、カンジダの治療、心臓の治療など多くの生理活性が明らかにされている。さらにキノンを還元した還元型PQQは高い抗酸化能力があることが報告されている(非特許文献1)。そのため、還元型PQQを含む食品、医薬品、化粧品もしくは還元型PQQを発生させる組成物が求められている。
【0003】
還元型PQQは純粋である場合、黄色の固体であることが報告されている(非特許文献2)。しかし、実際には還元操作後、未精製では黒く変色物質である。特に、アスコルビン酸を使用して還元する場合、還元すると黒く変色させると同時に沈殿を形成させる。そのため、水溶液として提供は困難である。変色を起こすといった問題から、製剤への使用の自由度が狭められていた。
【0004】
これまで口腔用組成物として抗菌剤と水溶性ポリマーが組み合わされた例が知られている(特許文献1)が還元型PQQではない。また、これらの組成物において酸化型PQQは主成分でなく、安定性や使用量に関する情報もない。このように還元型PQQ形成に伴う問題を解決できる方法については知られておらず、その問題解決が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−508346号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K. Mukai, A. Ouchi, M. Nakano, J. Agric. Food Chem. 2011,59,1705.
【非特許文献2】J. A. Duine et Al. Eur.J. Biochem.118, 395-399(1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、PQQ類を安定化する組成物及びその方法を提供する。特に、還元型PQQ類の着色・変色を抑制する組成物及びその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、以下に示す項目によって、解決できることを見出した。
〔1〕水溶性ポリマーと、
式(3):
【化3】


(式中R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基、を表す)
で表される還元型ピロロキノリンキノン又はその塩を含有することを特徴とする組成物。
〔2〕還元型ピロロキノリンキノンの塩がアルカリ金属塩又はアンモニウム塩であることを特徴とする〔1〕記載の組成物。
〔3〕水溶性ポリマーの重量平均分子量が、6000〜3000000である〔1〕又は〔2〕いずれか記載の組成物。
〔4〕水溶性ポリマーがポリビニルピロリドンである〔1〕から〔3〕いずれか記載の組成物。
〔5〕水溶性ポリマーを、還元型ピロロキノリンキノン又はその塩に対して0.001〜1000重量倍含有する〔1〕〜〔4〕いずれかに記載の組成物。
〔6〕式(4):
【化4】


(式中R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基、を表す)
で表される酸化型ピロロキノリンキノン又はその塩を含むことを特徴とする〔1〕記載の組成物。
〔7〕酸化型ピロロキノリンキノン、還元型ピロロキノリンキノン又はそれらの塩の合計重量に対して、還元剤を0.1から100重量倍含む〔1〕〜〔6〕いずれかに記載の組成物。
〔8〕形態が粉末又は溶液である〔3〕〜〔7〕のいずれか1に記載の組成物。
〔9〕ピロロキノリンキノン又はその塩に対して水溶性ポリマーを加えることを特徴とするピロロキノリンキノンの安定化方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、PQQ類の安定化、特に還元型PQQ類の着色・変色を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の組成物は、還元型PQQ類と水溶性ポリマーを含むことを特徴とする。
還元型PQQ類とは、下記の式(3)に記載される還元型PQQ又はその塩である。
【化5】


(式3においてR、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基を表す)より好ましくはRが水素である還元型PQQ、該アルカリ金属塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩である。さらに好ましくは還元型PQQのアルカリ金属塩、より好ましくはジアルカリ金属塩である。さらに好ましくはナトリウム塩、カリウム塩である。
【0011】
本発明に用いられる水溶性ポリマーは、還元型PQQ類の着色を効果的に抑制する観点から、重量平均分子量が、6000以上が好ましく、60000以上がより好ましい。また、水不溶性複合体が塊状の凝集物となることを抑制し微細な水不溶性複合体を得る観点から、3000000以下が好ましく、2000000以下がより好ましい。重量平均分子量は、一般的な重量平均分子量測定法である粘度法、あるいは、光散乱法等によって測定された値である。尚、ポリマーがポリビニルピロリドン(以下PVPと略記する場合がある)である場合は、粘度の測定値からFikentscherの公式に基づいて計算されたK-値によって重量平均分子量を決定する。
【0012】
本発明に用いられる水溶性ポリマーの具体的例としては、物質名として、PVP、ペクチン、タマリンドガム、カードラン、グアーガム、ポリビニルアルコール、キトサン、デンプン、寒天、カルボキシメチルセルロース等があげられる。好ましくはPVP、ペクチン、タマリンドガム、カードラン、グアーガム、ポリビニルアルコール、キトサンで、特に好ましくはPVPである。
【0013】
本発明において、水溶性ポリマーの添加量は、還元型PQQ類の着色を効果的に抑制する観点から、還元型PQQ類に対して0.001〜1000重量倍が好ましく、0.005〜100重量倍がより好ましい。特に好ましくは0.05から20重量倍である。水溶性ポリマーの添加量が少ないと還元剤と酸化型PQQ類により変色が進行し、沈殿が生じる。多すぎると変色は抑えられるが、粘度が上がり取り扱いしにくくなる。また、添加量による効果の上昇も小さく、費用面で意味をなさない。
【0014】
本発明の組成物は、糖類、多価アルコール等の水溶性有機化合物や、着色剤、防腐剤、水溶性香料等の成分を含有していてもよい。糖類としてはグルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、マンニトール、サッカロース、マルトース、ラクトース等が挙げられる。多価アルコールとしては、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、オリゴサッカライド等が挙げられる。
【0015】
本発明の組成物は式(4)に示す酸化型PQQ類が含まれていても構わない。還元型PQQ類と酸化型PQQ類が混合して存在していて構わない。
【化6】


(式4おいてR、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基を表す)より好ましくはRが水素である還元型PQQ、該アルカリ金属塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩である。さらに好ましくは還元型PQQのアルカリ金属塩、より好ましくはジアルカリ金属塩である。さらに好ましくはナトリウム塩、カリウム塩である。
水溶性ポリマーを加えることで還元型PQQ類のみならず、酸化型PQQ類の沈殿生成も抑えることができる効果があり、酸化型PQQ類の安定化にも非常に有効である。
【0016】
還元剤を使用して還元型PQQ類を発生させる場合、酸化型PQQ類と還元型PQQ類は多くの場合共存する。より効果的には還元型PQQ類がより変色、沈降しやすいことから、還元型PQQ類の割合が10%から100%が好ましく、より好ましくは30から100%である。
【0017】
本発明の組成物は、酸化型PQQ類を還元する還元剤を含んでいても良い。酸化型PQQ類に対して還元剤は0.001から1000倍モルまで存在する環境で有効である。還元剤がこの範囲より少ない場合は、生成される還元型PQQ類も少ない為、変色の影響が小さく、問題になりにくい。また、この範囲より多い場合は技術的には改善できるが、必要以上の還元剤の存在は経済的でない。
【0018】
本発明で使用できる還元剤は酸化型PQQ類を還元できるのであれば特に制限がない。具体的にはボロハイドライト類、ボラン類、ヒドラジン類、チオール化合物、ジ亜硫酸類、生体還元性物質(NADPH,NADH,アスコルビン酸)等が使用できる。より好ましくは毒性の低い還元剤で、経口投与しても問題にならない物質である。具体的にはグルタチオン、アスコルビン酸、NADPH,NADH,システイン等が挙げられる。手に入れやすいアスコルビン酸は使用される頻度が高いため、本発明の適用範囲として有効である。
【0019】
本発明の水溶性ポリマーが還元型PQQ類の着色や変色予防に有効である理由は以下のように考えられる。還元型PQQ類形成時の着色や沈殿形成の原因は、還元型PQQ類と酸化型PQQ類が共存するときに電荷移動錯体を形成するためと考えられる。酸化型PQQ類は原料であり、還元型PQQ類が空気中で酸化により生成、還元反応が完全でないために存在すると考えている。
NMR分析では黒色の物質に不純物が検出されるわけでなく、微量でも着色させてしまうと考えている。水溶性ポリマーは分子間の接近を阻害し、結晶化による析出、着色を抑制していると予想される。
【0020】
本発明の組成物は粉末、溶液どちらでも良い。本発明の組成物の混合は粉末状態で行ってもよく、溶液状態で混合して溶媒を除去して固体にしてもよい。粉末と溶液とを混合してもどの方法を採用してもよい。
【0021】
本発明の組成物は飲食品、機能性食品、飼料、医薬、医薬部外品、化粧品等に使用することが出来る。
飲食品、機能性食品、飼料は、任意のPQQ類の生理作用に基づく効果、例えば、細胞増殖促進、肝臓疾患予防治療、メラニン産生抑制、神経成長因子産生促進等の効果を企図して、その旨を表示した健康食品、機能性飲食品、特定保健用飲食品、病者用飲食品、家畜、競走馬、鑑賞動物等のための飼料、ペットフード等であり得る。
【0022】
機能性食品、飲食品又は飼料には、機能性食品や飲食品や飼料の製造に用いられる他の素材、例えば、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸、各種油脂、種々の添加剤(例えば、呈味成分、甘味料、有機酸等の酸味料、保存料、増粘安定剤、発色剤、漂白剤、防菌防黴剤、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、色素、フレーバー)等を配合して、常法に従って製造することができる。或いは、通常食されている飲食品又は飼料に本発明の組成物を配合することにより、本発明の飲食品又は飼料を製造することができる。
【0023】
飲食品、機能性食品、飼料の形態は特に制限されず、例えば、粉末、固形、半固形または液状であり得、あるいは、錠剤、チュアブル錠、粉剤、カプセル、顆粒、ドリンク、ゲル、シロップ、経管経腸栄養用流動食等の各種形態が挙げられる。
具体的な飲食品の形態の例としては、緑茶、ウーロン茶や紅茶等の茶飲料、コーヒー飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、アルコール飲料、精製水等の飲料、味噌、醤油、インスタントみそ汁、ラーメン、焼きそば、カレー、コーンスープ、マーボードーフ、マーボーなす、パスタソース、プリン、ケーキ、バター、ジャム、ふりかけ、マーガリン等のスプレッド類、マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、牛乳、ヨーグルト、スープ又はソース類、菓子(例えばビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)等が挙げられる。本発明の飼料は飲食品や機能性食品と同様の組成や形態で利用できる。
【0024】
医薬又は医薬部外品には、医薬として許容される担体を含有していても良い。当該担体としては、例えば、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、界面活性剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、湿潤剤、増粘剤、アルコール、水、水溶性高分子、又は製剤に色や香り、風味を付けるための着色剤、香料、矯味剤、矯臭剤等、が挙げられる。これらの担体は、医薬又は医薬部外品の剤型に応じて、単独又は任意の組み合わせで適宜使用され得る。
【0025】
医薬又は医薬部外品に用いる場合の剤型としては、経口又は経皮投与のための剤型が好ましい。経口製剤の剤型の例としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤等が挙げられ、経皮製剤の剤型の例としては、ローション、ゲル、クリーム、スプレー、軟膏、パッチ、貼布剤等が挙げられる。
経口薬として製剤化する場合には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、抗菌剤等の添加剤を用いることができる。
【実施例】
【0026】
原料の酸化型PQQジナトリウムは三菱ガス化学社製の試薬を使用した。そのほかの試薬は和光純薬製を使用した。紫外可視吸収の分析はHITACHI製Uー2000spectrometerを使用した。
【0027】
参考例1 還元型PQQの生成確認
酸化型PQQジナトリウム1.53gを水500gに溶かし0.01mol/L濃度にした。また、L-アスコルビン酸 3.51gを水100gに溶かし0.2mol/L濃度にした。上記の各液について酸化型PQQジナトリウム溶液0.01mol/L濃度20gとL-アスコルビン酸溶液0.2mol/L濃度20gを混合した。
酸化型PQQ1に対してL-アスコルビン酸は20倍のモル量である。この2つの溶液を室温で混合し、70℃2時間反応した。固体が析出し、塩酸を加えてpHを1以下にした。これを遠心分離し、上澄みを捨てた。脱気した塩酸水溶液で洗い、窒素気流によって乾燥した。ここに重ジメチルスルホキシドを加え、窒素気流下でNMR管につめた。
【0028】
NMR測定
JEOL製500MHz NMR, JNM−ECA500 スペクトルメーターを使用し、13C−NMRを室温測定した。その結果、105.7, 111.0, 119.4, 122.9, 123.6, 128.1, 131.3, 134.2, 137.8, 140.9, 142.6, 162.2, 165.5, 170.1 ppm (DMSO−d6: 39.5 ppm基準)
この値は非特許文献2 Eur.J. Biochem.118, 395-399(1981)に記載の還元型PQQと一致しており、還元型PQQの生成が確認できた。この測定データにはキノン構造に由来する173.3、178.0ppmのピークは存在しなかった。
【0029】
PVP存在下での還元反応
PVP存在下で還元反応を行った。表1に示す様に試料を調製した。水溶液50mlを75℃で1日反応させ、2N塩酸を2ml加え、エバポレーターで水を除去した。得られた固体に重ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)を加え、1H−NMR測定を行った。表1に結果を示す。
【表1】

表1中、brはブロード、mはマルチプレット、dはダブレットを示す。ブロードなシグナルはPVP,マルチプレットなシグナルはアスコルビン酸に由来する。
参考例1では、反応後、還元型PQQが黒色の固体として析出していたのに対し、実施例1では析出物がなく、均一な赤色溶液の還元型PQQが生成していた。
これよりPVP存在下でも還元反応は進行しており、生成した還元型PQQが安定していることが分かった。比較例1,2では還元型PQQは出来ていなかった。還元型PQQ、酸化型PQQともにPVPが存在すると、弱い相互作用の為ややケミカルシフトが動いていた。
【0030】
添加物の効果
表2に示す各添加物に2g/L PQQジナトリウム水溶液 1mlと10%アスコルビン酸0.2mlを加え、変化を観察した。使用した試薬はすべて和光純薬製である。結果を表2に示す。
【表2】

比較例4は無添加で混合した状態で室温2時間で黒色の固体を析出した。また、有機溶媒であるピロリドンでは室温2時間では赤色を維持しているが70℃に加温すると黒い固体を析出した。これに対し、実施例2,3,5,6,7の水溶性ポリマーではゲル化するが70℃でも赤色系統の色を維持していた。しかし、塩酸を加えさらに加熱すると黒く変色した。PVPはゲル化もせず、赤色溶液で黒い析出物も生じない。さらに塩酸を加えても変色せず、高い安定性を維持していた。
【0031】
PVPの添加量
10mlの3g/L 酸化型PQQジナトリウム溶液と1mlの10%アスコルビン酸水溶液を混合し、添加量を変えた10%PVP K90を混合した。このときのアスコルビン酸は酸化型PQQジナトリウムの3.3重量倍であった。1日以上室温で反応させ、遠心分離を行い、上澄みを1/20にしてUV測定を行い、400nmでの吸光度を測定した。結果を表3に示す。
【表3】

比較例5でPVPを添加しない場合は黒色固体が析出して吸光度が減少していた。PVPの添加量がより多い方が効果的で、酸化型PQQジナトリウムに対して0.5倍以上、さらには1.5倍以上で析出をおさえ、変性を抑制していた。PVPを添加すると均一な赤色溶液を維持できた。なお、この波長ではPVPの吸収はない。
【0032】
PVP添加時期
アスコルビン酸と反応後に添加
1mlの3g/L 酸化型PQQジナトリウムと0.1mlの10%アスコルビン酸水溶液を混合後、表4に示す様に、PVPを添加する際の温度、時間を変え、反応させた。0.1mlの10%PVPを添加し、さらに75℃1時間反応後、遠心して上澄みと固体に分ける。上澄みを1/20にしてUV測定を行い、吸光度400nmでの結果を表4に示す。
【表4】

表4中、RTは室温を示す。PVPはアスコルビン酸と酸化型PQQジナトリウムが反応した後に添加しても効果があるが、反応が進んでいない状態で加えることが好ましいことが分かる。この結果より水溶性ポリマーと酸化型PQQが均一に溶ける可能性は低く、錠剤にしたときには同一の錠剤内にあればよく、予め混合しておく必要性は低いことが分かる。
【0033】
実施例 PQQの溶解促進効果
酸化型PQQジナトリウムを15g/Lになるように水に加え、遠心分離した。上澄みを480nmの吸収より、溶解量を測定した。このときの溶解度は2.9g/Lであった。5%PVP水溶液に溶解すると5.7g/Lであり、溶解を促進する効果があった。これは溶液の安定化に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の組成物は、飲食品、機能性食品、飼料、医薬品、医薬部外品、化粧品として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリマーと、
式(3):
【化1】


(式中R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基、を表す)
で表される還元型ピロロキノリンキノン又はその塩を含有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
還元型ピロロキノリンキノンの塩がアルカリ金属塩又はアンモニウム塩であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
水溶性ポリマーの重量平均分子量が、6000〜3000000である請求項1又は2いずれか記載の組成物。
【請求項4】
水溶性ポリマーがポリビニルピロリドンである請求項1から3いずれか記載の組成物。
【請求項5】
水溶性ポリマーを、還元型ピロロキノリンキノン又はその塩に対して0.001〜1000重量倍含有する請求項1〜4いずれかに記載の組成物。
【請求項6】
式(4):
【化2】


(式中R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基、を表す)
で表される酸化型ピロロキノリンキノン又はその塩を含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項7】
酸化型ピロロキノリンキノン、還元型ピロロキノリンキノン又はそれらの塩の合計重量に対して、還元剤を0.1から100重量倍含む請求項1〜6いずれかに記載の組成物。
【請求項8】
形態が粉末又は溶液である請求項3〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ピロロキノリンキノン又はその塩に対して水溶性ポリマーを加えることを特徴とするピロロキノリンキノンの安定化方法。

【公開番号】特開2013−53116(P2013−53116A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193951(P2011−193951)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】