説明

還元糖およびアミンの安定な反応性熱硬化性配合物

【課題】貯蔵安定性に優れる耐水性バインダーを提供するのに適する添加用組成物の提供。かかる組成物の添加されたバインダーは、例えば、ガラス、ガラス繊維、木材もしくは木質材料などから物品を製造するために使用される。
【解決手段】1種以上の還元糖、1種以上の第一級アミン化合物、および8.5以下のpKaを有する1種以上の安定化剤酸もしくは塩を含む、延長した貯蔵寿命を有する安定な水性熱硬化性バインダー組成物であって、前記バインダー組成物の全固形分量が15重量%以上であり、さらに、第一級アミンの当量数:還元糖におけるカルボニル(アルデヒドもしくはケトンとして)基の当量数が0.125以上:1〜10以下:1の範囲であり、並びにさらに、使用される安定化剤の合計量が、バインダー中に存在する第一級アミンの合計モル数を基準にして5〜200mol%の範囲である、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素早くまたは低いエネルギー入力要求で硬化する、ホルムアルデヒドを含まない炭水化物およびアミンからの熱硬化性バインダーの保存安定性高固形分組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最も一般的な熱硬化性樹脂は、フェノールホルムアルデヒド(PF)、尿素ホルムアルデヒド(UF)、メラミンホルムアルデヒド(MF)および組み合わせのようなホルムアルデヒド縮合体である。一旦硬化したら、これら熱硬化性樹脂でコーティングされた基体は濡れに耐える。これら熱硬化性樹脂は非常に反応性である。鉱酸のアンモニウム塩のようなアクチベータの添加によってその反応性はさらに増強される。しかし、一旦活性化されたら、ホルムアルデヒド縮合体樹脂は特に制限された「ポットライフ(pot−life)」を有し、活性化および配合したすぐ後に適用されなければならない。これらポットライフの問題に取り組むために、これら樹脂は冷蔵で輸送および貯蔵され、そしてその使用に近い場所で一般的に製造される。
【0003】
一般的に、ホルムアルデヒド縮合体、アクリル熱硬化性樹脂、および再生可能資源からの熱硬化性樹脂からの熱硬化性配合物の製造者は、使用の直前に希釈されることができかつ必要な場合には活性化されうる濃厚な(>50重量%固形分)均質な水溶液の形態でその製品を提供する。
【0004】
より安全でかつより低い毒性でホルムアルデヒドを含まない第1世代の熱硬化性樹脂、特に水性の再生可能熱硬化性樹脂、例えば、メラノイジン生産および炭水化物含有熱硬化性物質が許容可能な安定性を有する。これら樹脂は、断熱材、木質複合体および積層体、並びにガラス繊維マット製品のような、あらかじめホルムアルデヒド熱硬化性物質が多くを占める多くの用途に使用されることができる。しかし、この炭水化物含有熱硬化性樹脂は経済的な条件下では非常にゆっくりとしか硬化せず、そして適用されて硬化された後は、濡れに耐えるのに不充分な能力を有するコーティングされた基体を提供する。例えば、米国特許出願公開第2007/0123679号、および第2007/0123680号は、還元糖を伴う有機酸のアンモニウム塩のメラノイジンを開示する。この熱硬化性バインダーは50重量%を超える固形分で安定性を享受するが、たいして反応性ではなく、よって硬化および硬化して得られる機械的特性を確実にするために多量のエネルギーを必要とする。また、これら硬化した樹脂でコーティングされた基体は濡れに対して耐性ではない。さらに、これら文献は低エネルギー硬化性バインダーを特定していない。
【0005】
より最近では、本発明者はジアミン、例えば、1,6−ヘキサメチレンジアミン(HMDA)と一緒にされたときに反応性熱硬化性溶液を形成する、還元糖、特にデキストロースシロップおよびキシロースもしくはヘミセルロース(例えば、木糖からの)を含む熱硬化性バインダーを開示した。このキシロース−ジアミン配合物が特に反応性である。しかし、より高い固形分、例えば25重量%超の水性配合物中にこの熱硬化性樹脂を提供するのは困難である。実際、濃厚な、例えば、HMDAとの30重量%超のキシロースおよびデキストロース配合物はいずれも調製後直ちにもしくは1〜2時間以内にゲル化する。このことは、これら新規の熱硬化性配合物の製造および輸送についての重大な問題を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0123679号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0123680号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に従って、本発明者は再生可能材料から、低エネルギー硬化性で、充分な貯蔵安定性で、高固形分の熱硬化性バインダー配合物を提供する課題を解決することに努めてきた。この解決策は、最終使用者への速硬化熱硬化性配合物の経済的な長距離供給を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従うと、延長した貯蔵寿命を有する安定な水性熱硬化性バインダー組成物は、1種以上の還元糖、好ましくは、5−炭素もしくは6−炭素単糖、1種以上の第一級アミン化合物、好ましくは、ジ第一級ジアミン、ポリ第一級アミン、並びに8.5以下、好ましくは7.5以下のpKaを有する1種以上の安定化剤酸もしくは塩を含み、第一級アミンの当量数:還元糖におけるカルボニル基、例えば、アルデヒドもしくはケトン基としてのカルボニル基の当量数が0.125:1〜10:1の範囲である。
【0009】
安定化剤は有機安定化剤もしくは無機安定化剤であることができる。有機安定化剤はモノカルボン酸、ジカルボン酸、C12〜C36脂肪酸、酸官能性C12〜C36脂肪酸エステル、酸官能性C12〜C36脂肪酸エーテル、およびこれらの混合物、好ましくはモノカルボン酸、酸官能性脂肪酸エステル化合物、例えば、これに限定されないが、モノ−およびジ−グリセリド、酸官能性脂肪酸エーテル化合物から選択されうる。無機安定化剤は、鉱酸、鉱酸アミン塩、鉱酸アンモニア塩、およびルイス酸、好ましくはアルミニウムルイス酸、並びにこれらの混合物から選択されうる。好ましくは、無機安定化剤は無機酸のアミンもしくはアンモニウム塩、例えば、炭酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよび硫酸アミンである。より好ましくは、安定化剤は使用条件下で揮発性である一時的(fugitive)酸安定化剤、例えば、酢酸、炭酸水素アンモニウムおよびクエン酸である。安定化剤のいずれかは脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル化合物と混合されてもよい。
【0010】
使用される1種以上の無機および/または有機安定化剤の合計量は、バインダー中に存在する第一級アミンの合計モル数を基準にして5〜200mol%、もしくは10mol%以上、もしくは好ましくは20mol%以上、もしくは好ましくは125mol%以下、もしくはより好ましくは100mol%以下の範囲でありうる。
【0011】
本発明の組成物は、15重量%以上、もしくは20重量%以上、もしくは好ましくは30重量%以上、もしくは45重量%以上、もしくは90重量%以下、もしくは好ましくは70重量%以下の全固形分量を有する濃厚形態で存在しうる。
【0012】
耐水用途のためには、好ましい安定化剤はC12〜C36脂肪酸、酸官能性C12〜C36脂肪酸エステル、酸官能性C12〜C36脂肪酸エーテルと、何らかの他の安定化剤との混合物である。用語「脂肪酸」とは、飽和脂肪酸、例えば、これに限定されないがココナツ酸、並びに不飽和脂肪酸、例えば、オレインリノール酸およびα−リノレン酸の双方が挙げられる。
【0013】
この組成物はエキステンダー、例えば、リグノスルホナート、デンプン、ガム、セルロース系物質、タンパク質もしくは植物油を全バインダー固形分を基準にして25重量%以下、好ましくは20重量%以下の量でさらに含むことができる。
【0014】
本発明の別の形態においては、安定な水性熱硬化性バインダー組成物を使用する方法は、このバインダー組成物を基材に適用するか、もしくはこのバインダー組成物を基材と混合し、次いでこのように処理された基材もしくは混合物を、例えば、100〜400℃で加熱してバインダーを硬化させることを含んでいた。好適な基材には、繊維、薄片、チップ、粒子、膜、シートおよびこれらの組み合わせが挙げられうる。好適な基材材料には、例えば、ガラス、ガラス繊維、石、ストーンファイバー、複合材料および複合繊維、または有機および無機基材のもの、木材、もしくは木質材料が挙げられうる。
本発明のさらに別の形態においては、生成物は本発明の方法に従って製造された硬化したバインダーおよび基材を含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において使用される場合、語句「アルキル」とは、1以上の炭素原子を有するあらゆる脂肪族アルキル基を意味し、このアルキル基には、n−アルキル、s−アルキル、i−アルキル、t−アルキル基が挙げられる。脂肪族アルキル基は飽和していてよく、または不飽和を含んでいてもよく、同様にこれは、飽和であるかもしくは不飽和を含む5、6もしくは7員環構造を1以上含む環式脂肪族であってもよい。
【0016】
本明細書において使用される場合、語句「水性」とは、水、並びに水と水混和性溶媒とから実質的に構成される混合物を含む。
【0017】
本明細書において使用される場合、語句「全バインダー固形分を基準にして」とは、バインダー中の全ての不揮発性成分(例えば、糖、第一級アミン、キャッピング剤、シラン、エマルションコポリマー、ポリオール、など)の全重量と比較した何らかの所定の成分の重量をいう。
【0018】
本明細書において使用される場合、語句「エマルションポリマー」とは、水もしくは水性溶媒と一緒にされたときに、水性エマルションの分散相を形成するポリマーをいう。
【0019】
本明細書において使用される場合、安定化剤の「pKa」は酸安定化剤の最も酸性のプロトンのpKaとして、または酸もしくは塩安定化剤の最も低いpKaとして扱われ、すなわち、最も強いプロトンもしくは塩基共役のpKaが理解される。
【0020】
本明細書において使用される場合、用語「ポリ(第一級アミン)」とは、トリス(2−アミノエチル)アミン、およびポリエチレンイミンのような3つ以上の第一級アミン基を有するあらゆる化合物を意味する。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語「ポリマー」は用語「コポリマー」を含み、他に示されない限りは、用語「コポリマー」とは、2種以上の異なるモノマーから製造されるポリマーをいい、例えば、ターポリマー、ペンタポリマー、生成物コポリマー中に2種以上の異なる官能基が存在するように重合後に官能化されたホモポリマー、ブロックコポリマー、セグメント化コポリマー、グラフトコポリマー、およびこれらの混合物または組み合わせ物が挙げられる。(コ)ポリマーとはホモポリマーもしくはコポリマーを意味する。
【0022】
本明細書において使用される場合、語句「ホルムアルデヒドを実質的に含まない」とは、添加されたホルムアルデヒドを組成物が含まず、かつ組成物が乾燥および/または硬化の結果として実質的なホルムアルデヒドを発生させないことをいう。好ましくは、このようなバインダーもしくはこのバインダーを組み込む材料は、このバインダーを乾燥および/または硬化させる結果として、100ppm未満のホルムアルデヒドしか、より好ましくは50未満の、最も好ましくは25ppm未満のホルムアルデヒドしか遊離させない。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「ポリカルボン酸を実質的に含まない」とは、組成物が、全バインダー固形分を基準にして1.0重量%未満しか、ポリプロトン性ポリカルボン酸をはじめとするポリカルボン酸、例えば、クエン酸、およびポリマー系ポリカルボン酸、例えば、10重量%を超える共重合されたカルボキシル基含有モノマーを有するアクリル系もしくはビニル溶液ポリマーを含まないことを意味する。本明細書において使用される場合、用語「ポリカルボン酸」は、10重量%以下の共重合されたカルボキシル基含有モノマーを有するエマルションポリマーを除外する。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「木材もしくは木質材料」は、あらゆる木材供給材料、木材のあらゆる部分およびあらゆる木質植物材料、例えば、針葉樹、広葉樹、パルプ、樹皮、竹、種子殻、ナッツの殻および他の硬質植物、またはリグノセルロース系材料からの、細断された材料、おがくず、チップ、かんなくず、フレークもしくは砕かれた材料をはじめとするあらゆる形態の微粉砕材料を含む。
【0025】
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、用語「重量平均分子量」とはサイズ排除ゲルクロマトグラフィー(SEC)によって決定される物質の分子量をいう。
【0026】
本明細書において使用される場合、「重量%」もしくは「wt.パーセント」とは、混合され、かつ何らかの硬化の前のバインダー組成物の全バインダー固形分を基準にした重量パーセントを意味する。無水還元糖はそれが組成物に添加される形態では未硬化であると見なされる。
【0027】
他に特定されない限りは、本明細書において使用される科学技術用語は当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0028】
他に示されない限りは、丸括弧書きを含む用語は、その丸括弧が存在しないとした全体の用語、およびその丸括弧内に含まれる事項がない用語、およびそれぞれの選択肢の組み合わせを選択的に意味する。よって、用語「(メタ)アクリラート」とは、選択的に、メタクリラート、またはアクリラート、またはこれらの混合物を包含する。
【0029】
同じ成分もしくは特性に関する全ての範囲の端点はその端点を含み、独立して組み合わせ可能である。よって、例えば、0.125以上:1、および10以下:1、好ましくは0.4以上:1、または好ましくは0.8以上:1、または好ましくは1.0以上:1、または好ましくは4以下:1の開示された比率の範囲は、0.125:1〜10:1、0.125:1〜1.0:1、0.125:1〜4:1、0.125:1〜0.4:1、0.4:1〜10:1、0.4:1〜1.0:1、0.4:1〜4:1、0.4:1〜0.8:1、0.125:1〜0.8:1、0.8:1〜1.0:1、0.8:1〜4:1、1.0:1〜4:1、0.8:1〜10:1、1.0:1〜10:1、および4:1〜10:1のいずれかおよび全てを意味する。
【0030】
他に示されない限りは、温度および圧力の条件は室温(〜20−22℃)および標準圧力であり、「周囲条件」とも称される。水性バインダー組成物は周囲条件以外の条件下で乾燥させられうる。
【0031】
植物原料のような天然のソースからの再生可能材料を多く含むバインダーの安定性は本発明の水性バインダー組成物によって可能にされる。この水性バインダー組成物は、この組成物を安定化するのに充分酸性の安定化剤を全バインダー固形分を基準にして固形分量20重量%以上、もしくは好ましくは30重量%以上でさえ有する。本明細書において使用される場合、用語「貯蔵安定性」とは目に見える沈殿を有さず、その水性媒体中に微細に分散されもしくは溶解されたままであり、かつ周囲条件下で流動可能なままの組成物をいう。この水性組成物は30重量%の固形分で、1日以上、もしくは5日以上、もしくはさらには14日以上の貯蔵安定性を有しうる。さらに、脂肪酸、酸官能性脂肪酸エステル、および酸官能性脂肪酸エーテルである安定化剤は、再生可能材料からの熱硬化性バインダーの耐水性を向上させる要件を満足させる。さらに、本発明は、何ら安定化剤を含まないその同等物と比較したときに硬化の発現が悪影響を受けないような安定化された組成物を提供する。最終的に、本発明の組成物は硬化の際に非毒性もしくは害のない気体状放出物、例えば、水および二酸化炭素を生じさせ、かつ硬化の際により限定された量のアンモニアしか生じさせず、もしくは全くアンモニアを生じさせないように調整されうる。
【0032】
本発明は、水性バインダーの全重量を基準にして25〜95重量%、好ましくは30重量%以上、または好ましくは40重量%以上、またはより好ましくは45〜70重量%の全固形分を含む安定な水性熱硬化性バインダー組成物。
【0033】
使用される安定化剤の量は、その安定化剤化合物のpKaに反比例する。好ましい安定化剤は7.5以下、またはより好ましくは7.0以下のpKaを有する。
【0034】
好適な無機安定化剤には、例えば、ルイス酸、例えば、硫酸アルミニウム、鉱酸、例えば、硫酸;アミン酸塩およびアンモニア酸塩が挙げられうる。本発明において有用なルイス酸には、金属塩、例えば、アルミニウム塩が挙げられるが、アルカリ金属塩、鉄塩もしくは亜鉛塩を含まない。好ましくは、無機安定化剤は炭酸水素アンモニウム、硫酸、硝酸アンモニウムもしくは硫酸アルミニウムである。
【0035】
好適な有機安定化剤には、例えば、水性媒体中に分散されうる化合物もしくは材料、例えば、モノ−およびジ−カルボキシル有機酸安定化剤、例えば、酢酸、ブチル酸、およびアジピン酸など;脂肪酸、酸官能性脂肪酸エステルもしくはエーテルなどが挙げられうる。好ましい有機安定化剤は、酢酸、アジピン酸および脂肪酸、例えば、ココナツ酸およびオレイン酸である。
【0036】
低い温度で硬化しうる、またはより短い時間で硬化する、または低い硬化エネルギーを有する組成物を提供するために、適用条件下でなくなる1種以上の一時的安定化剤が安定化剤として使用されうる。クエン酸、酢酸および炭酸水素アンモニウムが一時的安定化剤の例である。一時的安定化剤は、ガラス繊維、ストーンウール基材および熱感受性基材、例えば、プラスチック繊維もしくは粒子を含むものをはじめとする、本発明のバインダーが使用されうるあらゆる基材のためのバインダー用途に有用である。一時的安定化剤は実際には、バインダーを熱硬化することにより生じる排ガスを低減させ、それにより高密度基材および木材複合材料における適用に有用であり得る。
【0037】
バインダーの耐水性を向上させるために、好適な有機安定化剤は、C12〜C36、好ましくはC12〜C24脂肪酸、または酸官能性C12〜C36、好ましくはC12〜C24脂肪酸エーテルもしくはエステルでありうる。この分子は何らかの天然ソース、例えば、植物油もしくは動物油から加水分解されうる。好適な化合物もしくは分子は不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸およびリノール酸、または飽和酸、例えば、ステアリン酸でありうる。例としては、これに限定されないが、ココナツ油からのココナツ酸、パーム核油からのミリスチン酸、ナツメグバターからの酸、および亜麻油、綿実およびトウモロコシ油からの酸が挙げられる。
【0038】
水性バインダー組成物は1種以上のジ第一級ジアミンもしくは第一級アミン基含有化合物、例えば、リシンおよび1,6−ヘキサメチレンジアミン(HMD)のようなジ第一級ジアミン、5,000以下、好ましくは3,800以下、またはより好ましくは2,500以下の重量平均分子量を有するポリアミン、例えば、ポリエチレンイミンのようなポリ(第一級アミン)と、還元単糖および二糖、その天然もしくは合成立体異性体もしくは光学異性体、ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシもしくはカルボニル置換還元単糖および二糖、並びに還元単糖および二糖の無水物形態から選択される還元糖とを含む。
【0039】
好ましいジ第一級ジアミンもしくはオリゴ(第一級アミン)は400以下、好ましくは200以下のアミン当量(equivalent weight)を有することができる。
【0040】
他のジ第一級ジアミンはアミノグアニジンおよびオリゴマージ第一級ジアミンから選択されうる。
【0041】
ポリ(第一級ジアミン)は10重量%以上、好ましくは20重量%以上の、エチルアミンのような第一級アミン基を有するポリマーを含むことができる。
【0042】
好適な第一級ジアミンおよびポリ第一級ポリアミンには、例えば、アルキルジ第一級もしくはより高次の第一級ジアミン、例えば、脂肪族第一級ジアミン、例えば、アミノグアニジンおよびその塩、例えば、塩酸アミノグアニジン、プトレシン、n−アルキレンジアミン、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、および他のアルキレンジアミン;環式脂肪族第一級ジアミン、例えば、ジ−アミノエチルピペラジン;第一級アミン官能性アミノ酸、例えば、リシンおよびアミノグリシン;並びに芳香族ジ第一級アミン、例えば、ビス−(アミノメチル)シクロヘキサン(bisAMC)、m−キシレンジアミン(MXD);所望の分子量のポリアミンポリマー、例えば、ポリエチレンイミン、10重量%以上の第一級アミン基を有するポリエチレンイミン含有コポリマーおよびブロックコポリマー、メタクリル酸アミノエチルのような(メタ)アクリル酸n−アミノアルキルの(コ)ポリマー、ポリグアニジン、および少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%の第一級アミン基を有する他の(コ)ポリマーが挙げられうる。1つの好適な環式脂肪族第一級ジアミンは、以前はロームアンドハースカンパニーであったダウアドバンストマテリアルズ(フィラデルフィア、ペンシルベニア州)からのPRIMENE商標MDである。
【0043】
第一級アミンの当量数:還元糖におけるカルボニル(アルデヒドもしくはケトンとして)基の当量数は、0.125以上:1.0かつ10以下:1、好ましくは0.4以上:1、または好ましくは0.8以上:1、または好ましくは1.0以上:1、または好ましくは4以下:1の範囲であるべきである。第一級アミン:還元糖におけるカルボニルの1:1当量比は、1つのカルボニル基を有する還元糖、例えば、デキストロース1モルあたりの50mole%のジ第一級ジアミンに等しい。
【0044】
ある用途、特にガラスマット用途においては、第一級アミン基:カルボニル基の当量比は0.15:1〜0.25:1の範囲であり得る。
【0045】
本発明の水性バインダー組成物は1種以上の還元糖を含み、この還元糖は単糖;二糖;オリゴ糖もしくはより高次の糖を含む混合物;並びに、例えば、植物および木質原料からの還元糖;並びにこれらの混合物でありうる。本明細書において、還元糖は開放鎖形態でアルデヒドもしくはケトンを有するあらゆる糖である。これは、その糖が、例えば、アミンとの反応において、還元剤として機能することを可能にする。糖は、そのアノマー炭素(2つの酸素原子に結合した炭素)がフリーの形態である場合には還元糖であり得る。糖は鎖構造および環構造で存在することができ、そしてこれら2つの形態の間の平衡を有することが可能である。さらに、ある種のケト糖は還元糖である、というのはそれらはカルボニルを鎖の末端に移動させる一連の互変位性変位を介してアルデヒドに変換されることができるからである。この径路は熱硬化プロセス中に使用可能になることができた。
【0046】
アルドース(アルデヒドを含む)もしくはケトース(ケトンを含む)に関わらず、還元糖には全ての単糖が挙げられる。還元糖には、グルコース、キシロース、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノースおよびマルトースが挙げられる。よって、本発明の還元糖成分は、そのアルドースもしくはケトース形態の単糖、例えば、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソースもしくはヘプトースでありうる。グリセルアルデヒドおよびジヒドロキシアセトンはそれぞれアルドースおよびケトース糖であるとみなされる。アルドテトロース糖の例には、エリスロースおよびスレオースが挙げられ;並びに、ケトテトロース糖にはエリスルロースが挙げられる。アルドペントース糖にはリボース、アラビノース、キシロースおよびリキソースが挙げられ;並びに、ケトペントース糖にはリブロース、アラブロース、キシルロースおよびリキスロースが挙げられる。アルドヘキソース糖の例には、グルコース(例えば、デキストロース)、マンノース、ガラクトース、アロース、アルトロース、タロース、グロースおよびイドースが挙げられ;ケトヘキソース糖には、フルクトース、プシコース、ソルボースおよびタガトースが挙げられる。ケトヘプトース糖にはセドヘプツロースが挙げられる。ほとんどの二糖も還元糖である。還元糖の他の天然もしくは合成の立体異性体もしくは光学異性体も、水性バインダー組成物の還元糖成分として有用であり得る;例えば、デキストロースはグルコースの光学異性体の1種である。水性バインダー組成物の還元糖成分は場合によっては、例えば、ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシもしくは他の置換基で置換されていてもよく;例えば、ジヒドロキシアセトンは好適なケト置換ケトースである。さらに、還元糖は還元性単糖もしくは二糖の無水物形態、例えば、脱水されたグルコースからのヒドロキシメチルフルルラールを含むことができる。
【0047】
還元糖は場合によっては、例えば、ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシ、カルボニルもしくは他の置換基で置換されていてもよい。
【0048】
好適な還元糖には、例えば、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マルトース、グルコース、デキストロース、キシロースおよびレブロースが挙げられうる。さらに、多くの好適な還元糖ソース、例えば、トウモロコシシロップ、高フルクトーストウモロコシシロップ;トウモロコシの穂軸、脱リグニン化した木材および竹からのヘミセルロース系物質;並びに他のフルクトース、キシロースおよびデキストロース同等物が使用されうる。
【0049】
好ましい還元糖は5−炭素および6−炭素還元糖である。
【0050】
本発明の5−炭素還元糖は500以下の原子質量単位の式量を有しうる。好ましい5−炭素還元糖には、例えば、キシロース、アラビノースおよびリボースが挙げられる。他の5−炭素還元糖には、例えば、デオキシリボースが挙げられる。
【0051】
好ましくは、5−炭素還元糖はより大きな式量を有する多糖を含む混合物、例えば、5−炭素還元糖を含む植物原料または5−炭素糖を生じさせうる他のアラビノキシラン原料などの形態であることができる。これらには、例えば、醗酵もしくは化学処理ヘミセルロース、例えば、木材もしくは竹からの醗酵もしくは化学処理ヘミセルロース、酵素分解小麦ブラン、酵素分解トウモロコシ穂軸、酵素分解トウモロコシ繊維、およびこれら植物原料のいずれかの酸加水分解生成物が挙げられうる。
【0052】
水性バインダー組成物は1種以上のキャッピング剤、例えば、チタナート、ジルコナートまたはアルミナート、例えば、乳酸チタニウムをさらに含むことができる。このようなキャッピング剤は全バインダー固形分を基準にして0.5〜5重量%の量で使用されうる。
【0053】
水性バインダー組成物は硬化中の発熱を抑制するために、例えば、(メタ)ビスルフィットもしくはビシニルジオール、例えば、グリセリン、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどの1種以上の還元剤をさらに含むことができる。
【0054】
水性バインダー組成物はさらに1種以上のエキステンダー、例えば、リグニン、リグノセルロース系物質、デンプン、タンパク質、例えば、ダイズタンパク質もしくは脱脂ダイズ粉体、並びに植物油などを含むことができる。
【0055】
水性バインダー組成物は共重合されたモノマーの全重量を基準にして10重量%以下の共重合されたカルボキシル基含有モノマーを有するビニルエマルションもしくは分散ポリマーをさらに含むことができる。このようなポリマーは共重合されたモノマーの全重量を基準にして5重量%以下、もしくは好ましくは3重量%以下の共重合されたカルボキシル基含有モノマー、例えば、メタクリル酸を有する(メタ)アクリラートコポリマーであることができる。
【0056】
水性バインダー組成物は全バインダー固形分を基準にして0.2重量%以上、または好ましくは5重量%以下の有機シランをさらに含むことができる。好適なシランの例は、カップリング剤、例えば、シラン、特にシルクェスト(Silquest商標)A−187(GEシリコーンズ−OSiスペシャリティーズ、ウイルトン、コネティカット州により製造);他のアミノシラン、例えば、3−アミノプロピルジアルコキシシラン、および3−(2−アミノエチル)アミノプロピルシラン;エポキシシラン、例えば、グリシドキシプロピルシラン、ビニルシランおよび疎水性シランを含む。
【0057】
さらに別の実施形態においては、水性バインダー組成物はリン含有促進剤もしくはエステル化触媒、例えば、ジ亜リン酸アルカリ金属、およびホスホン酸水素アルカリ金属、ホスホン酸モノおよびジアルカリ金属、アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸またはホスフィン酸(そのアルカリ金属塩も包含する)をさらに含むことができる。好適な触媒は全バインダー固形分を基準にして0.1重量%以上、または30重量%以下、好ましくは4.0重量%以上、または20重量%以下の量で使用されうる。
【0058】
水性組成物のホルムアルデヒド含量を最小限にするために、ポリマー含有でホルムアルデヒドを含まない硬化性組成物を製造する際に、重合添加剤、例えば、開始剤、還元剤、連鎖移動剤、硬化剤、殺生物剤、界面活性剤、乳化剤、カップリング剤、消泡剤、制塵剤、フィラーなどを使用するのが好ましく、この重合添加剤はそれ自体がホルムアルデヒドを含まず、またはバインダー形成、適用または硬化中にホルムアルデヒドを含まずもしくは発生させない。
【0059】
別の形態においては、本発明は、バインダーを基材に適用し、乾燥させおよび/または硬化させることを含むバインダーを使用する方法を提供する。乾燥(水性形態で適用される場合)および硬化においては、硬化性組成物、加熱の期間および温度は乾燥の速度、処理もしくは取り扱いの容易さ、並びに処理された基材の特性発現に影響を及ぼすであろう。好適な熱処理温度は100℃以上かつ400℃以下の範囲であることができる。好ましい処理は基材に応じて変化する。セルロース繊維のような感熱性基材は130〜175℃で処理されうるが、熱に対して感受性が低い複合材料は150〜200℃の基材温度で処理されることができ、鉱物繊維のような耐熱性基材は硬化をもたらすのに必要な所望の時間、220〜300℃で処理されうる。好ましくは、熱処理温度は150℃以上の範囲であり、このような好ましい熱処理温度は225℃以下、もしくはより好ましくは200℃以下、もしくは150℃以下の範囲であり得る。この使用方法においては、組成物成分は、バインダーを基材に適用する前に全てあらかじめ混合される必要はない。例えば、1以上の成分は不織基材に適用されることができ、次いで、本発明の他のバインダー成分が水性形態もしくは乾燥形態で適用されうる。適用後、バインダーがその基材上で硬化するのに充分な温度までコーティングされた不織物を加熱することにより、バインダーが硬化されうる。
【0060】
バインダーは、好適な手段、例えば、エアスプレイ、エアレススプレイ、パディング、飽和、ロールコーティング、カーテンコーティング、ビーター堆積、凝集、またはディップおよびスクイーズ適用などによって、例えば、繊維のウェブなどの基材に適用されることができ、支持ワイヤまたはスクリーン上にある得られた飽和湿潤ウェブは1以上の真空ボックス上を通されて、生成物もしくは処理された基材において望まれるバインダー含量を達成するのに充分なバインダーを除去する。
【0061】
乾燥および硬化は所望の場合には2以上の別個の工程で行われることができる。例えば、硬化性組成物は最初に、組成物を少なくとも部分的に乾燥させるのに充分であるが、完全に硬化させない時間および温度で加熱されることができ、次いで、硬化をもたらすために、より高い温度で、および/またはより長い時間で2回目の加熱をすることができる。「B−ステージング」と称されるこのような手順は、この硬化プロセスと同時に具体的な形状への形成もしくは成形を伴うかまたは伴わず、後に硬化されることができる、例えばロール形態のバインダー処理された不織物を提供するために使用されうる。
【0062】
木材もしくは木質材料含有物品の製造においては、本発明の方法は水性バインダー組成物を微粉砕木材もしくは木質材料と混合し、次いで加圧し、加熱して生成物を形成することを含む。この方法は、微粉砕木材もしくは木質材料を20〜185℃、好ましくは75〜125℃の温度で乾燥させ、その後それらを水性バインダー組成物と混合させることを含むことができる。合板は、水性バインダー組成物が木材層もしくはシートに適用され、そしてそれに木材層もしくはシートが適用され、次いで加圧し、加熱し、場合によっては所望の合板厚みを達成するように繰り返すという別の方法で製造されうる。
【0063】
バインダー適用に好適な基材には、例えば、繊維、例えば、綿、リネン、羊毛およびポリエステル、レーヨンもしくはナイロンからの合成繊維、並びに超吸収繊維;植物もしくはセルロース系繊維、例えば、ジュート、サイザル、亜麻、綿および動物繊維;並びに、耐熱性基材、例えば、金属;プラスチック;合成繊維、例えば、ポリエステル、レーヨン、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリオレフィン、2種以上の繊維形成性ポリマー、例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタラートなどを含む2成分繊維;鉱物繊維、例えば、ガラスおよび鉱物繊維、スラグもしくはストーンウール、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、並びにそれらから製造された織物および不織布;並びに、感熱基材、例えば、木材および木質材料、紙およびボール紙が挙げられうる。
【0064】
さらに別の形態においては、本発明は、本発明の方法に従って処理された基材を含む物品を提供する。
【0065】
本明細書に記載される各基材について、乾燥したもしくは硬化した形態の水性バインダー組成物が複合材料もしくは生成物中に存在する本発明の対応する形態も存在する。本明細書において定義される場合、用語「複合材料」とは、(a)繊維、薄片、チップ、粒子、膜、シートおよびこれらの組み合わせから選択される基材材料、並びに(b)記載された形態のバインダー組成物;を含む材料をいう。
【0066】
本発明は、本発明の方法に従って製造された木材もしくは木質材料含有物品を提供する。この物品には、例えば、チップボード、パーティクルボードもしくは繊維板、配向ストランドボード、合板、竹の合板および複合材料、および他の集成材、例えば、中密度繊維板(MDF)などが挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下の材料に付された名称が以下の実施例において使用された:
ADM97/71:(トウモロコシシロップ97/71、71重量%固形分で97のデキストロース当量を有するとして表示されている;イリノイ州、デカターのArcher Daniels Midland(アーチャーダニエルズミッドランド));
1,6HMD:(1,6−ヘキサメチレンジアミン)、99.5%、ACROS Organics(アクロスオーガニクス)ベルギー国;
酢酸:氷酢酸、HOAc、EMサイエンス、ニュージャージー州ギブスタウン;
キシロース:D+、99+%、アクロスオーガニクスニュージャージー;
デキストロース:D+、99+%、無水物、アクロスオーガニクスニュージャージー;
ビス−CHA:1,3シクロヘキサンビス(メチルアミン)99%シス/トランス、アクロスオーガニクス、ベルギー国;
トリフルオロ酢酸(TFA):99%TFA、シグマアルドリッチ、ワイオミング州ミルウォーキー;
DYTEK商標70:70重量%固形分の1,6−ヘキサメチレンジアミン、INVISTA(インビスタ)、カンザス州ウィヒタ;
DYTEK商標A:2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、インビスタ、カンザス州ウィヒタ;
硫酸:(HSO、93〜98%)、Fisher Scientific(フィッシャーサイエンティフィック)ペンシルベニア州ピッツバーグ;
炭酸水素アンモニウムすなわちABC:フィッシャーサイエンティフィック、ペンシルベニア州ピッツバーグ;
硝酸アルミニウム9水和物すなわちAl(NO・9HO:>99%シグマアルドリッチ、ワイオミング州ミルウォーキー;並びに
ARBO商標SO1:リグノスルホン酸ナトリウム、Tembec Inc.(テムベクインコーポレーティド)、ケベック州テミスカミング。
【0068】
実施例1:
スターラーバーを備えた25mlのガラスバイアルに、6.8gの水、次いで2.5g(21.5mmol)の1,6HMD、あらかじめ60℃のオーブンで一晩貯蔵された10.7g(40.9mmol)のADM97/71が添加された。この溶液は激しく攪拌されて均質性を確保した。得られた溶液の流動性が時間の関数として表1に記録された。
【0069】
実施例2:
スターラーバーを備えた25mlのガラスバイアルに、6.8gの水、次いで2.5g(21.5mmol)の1,6HMDを入れた。次いで、この攪拌された溶液に、1.3gの氷酢酸(21.7mmol)がゆっくりと滴下添加された。酢酸の添加の後で、すでに示されたように60℃のオーブンで一晩貯蔵された10.7g(40.9mmol)のADM97/71が添加された。得られた溶液は激しく攪拌されて均質性を確保した。得られた溶液の流動性が時間の関数として表1に記録された。
【0070】
実施例3(比較):
スターラーバーを備えた25mlのガラスバイアルに、6.0gの水、次いで6.3g(21.5mmol)のキシロース(42.0mmol)を入れた。10〜12分間激しく攪拌した後で、2.5gの1,6−HMD(22.4mmol)を添加した。この水性混合物は1,6HMDを全て添加した後5分以内にゲル化した。
【0071】
実施例4:
スターラーバーを備えた25mlのガラスバイアルに、3.0gの水、次いで6.3g(21.5mmol)のキシロース(42.0mmol)を入れた。このスラリーは60℃のオーブン中に30分間置かれた。次いで、スターラーバーを備えた25mlのガラスバイアルに、5.0gの水、次いで2.5gの1,6HMD(22.4mmol)を添加した。次いで、注意しつつ、2.4gのトリフルオロ酢酸(TFA)が非常にゆっくりと滴下添加された。次いで、この攪拌された溶液は、室温に冷却されていたキシロース水のスラリーと一緒にされた。この溶液は密封され振とうされた。この混合物は1時間の間流動性で均質なままであって、次いでゲル化した。
【0072】
実施例5:
スターラーバーを備えた25mlのガラスバイアルに、6.8gの水、次いで3.1g(18.8mmol)のDYTEK商標70%および1.3gのDI水を入れた。このバイアルは氷浴中に配置され、攪拌を維持した。次いで、かなり注意しつつ、1.4gの濃硫酸が滴下添加された。かなりの発熱の後で、このスラリーは冷却浴から取り出され、室温で均質かつ流体となった。次いで、このDYTEK商標70水および硫酸の溶液が、6.6gのキシロース(43.9mmol)および3.0gの水を含むスラリーに添加された。この合わせたバイアルは激しく均質になるまで振とうされて、室温で静置された。この溶液は暗くなったが、それは少なくとも2週間は流体のままであった。
【0073】
実施例6:
スターラーバーを備えた25mlのガラスバイアルに、7gのDI水、次いで3.6gのDYTEK商標70を入れた。この混合物を攪拌しつつ、4.1gの硝酸アルミニウム9水和物がゆっくりと添加された。このバイアルは蓋をされ、振とうされて、次いで静置されて、均質な溶液を達成した。この溶液に、10.8gの高温(〜60℃)のADM 97/71を混合しつつ添加した。この材料はゆっくりと暗くなったが少なくとも1ヶ月の間は流体のままであった。
【0074】
実施例7:
25mlのガラスバイアルに、1.32g(16.7mmol)の炭酸水素アンモニウム、次いで2.76gのDYTEK商標70(16.7mmolの1,6HMD)を入れた。得られたスラリーに、キシロースの50%水溶液10g(33.3mmolのキシロース)を添加した。このバイアルは蓋をされ、振とうされて、均質な溶液を生じさせ、これは少なくとも2週間は流体のままであった。
【0075】
実施例8:
25mlのガラスバイアルに、1.05g(13.3mmol)の炭酸水素アンモニウム、次いで2.76gのDYTEK商標70(16.7mmolの1,6HMD)を入れた。得られたスラリーに、キシロースの50%水溶液10g(33.3mmolのキシロース)を添加した。このバイアルは蓋をされ、振とうされて、均質な溶液を生じさせ、これは30分間は流体のままであった。
【0076】
実施例9:
25mlのガラスバイアルに、0.26g(3.29mmol)の炭酸水素アンモニウム、次いで2.76gのDYTEK商標70(16.7mmolの1,6HMD)を入れた。得られたスラリーに、キシロースの50%水溶液10g(33.3mmolのキシロース)を添加した。このバイアルは蓋をされ、振とうされて、均質な溶液を生じさせ、これは30分間は流体のままであった。
【0077】
実施例10:
25mlのガラスバイアルに、1.01gの脱イオン水、次いで2.36g(16.6mmol)のビス−CHAを入れた。得られた溶液に、キシロースの50%水溶液10g(33.3mmolのキシロース)を添加した。このバイアルは蓋をされ、振とうされて、均質な溶液を生じさせ、これは3.5日以内にゲル化した。
【0078】
実施例11:
25mlのガラスバイアルに、1.31g(16.6mmol)の炭酸水素アンモニウム、次いで1.01gの脱イオン水、および2.36g(16.6mmol)のビス−CHAを入れた。得られたスラリーに、キシロースの50%水溶液10g(33.3mmolのキシロース)を添加した。このバイアルは蓋をされ、振とうされて、均質な溶液を生じさせ、これは少なくとも2週間流体のままであった。
【0079】
実施例12:
25mlのガラスバイアルに、0.83gの脱イオン水、次いで1.93g(16.6mmol)のDYTEK商標Aを入れた。得られた溶液に、キシロースの50%水溶液10g(33.3mmolのキシロース)を添加した。このバイアルは蓋をされ、振とうされて、均質な溶液を生じさせ、これは3.5日以内にゲル化した。
【0080】
実施例13:
25mlのガラスバイアルに、1.31g(16.6mmol)の炭酸水素アンモニウム、次いで、0.83gの脱イオン水、および2.36(16.6mmol)のDYTEK商標Aを入れた。得られたスラリーに、キシロースの50%水溶液10g(33.3mmolのキシロース)を添加した。このバイアルは蓋をされ、振とうされて、均質な溶液を生じさせ、これは少なくとも2週間流体のままであった。
【0081】
実施例14:
25mlのガラスバイアルに、2.30gのDYTEK商標70(13.9mmolの1,6HMD)を入れた。この溶液に、デキストロースの50%水溶液10g(27.8mmolのデキストロース)を添加した。このバイアルは蓋をされ、振とうされて、均質な溶液を生じさせ、これは3.5時間以内にゲル化した。
【0082】
実施例15:
25mlのガラスバイアルに、1.10g(13.9mmol)の炭酸水素アンモニウム、次いで、2.76gのDYTEK商標70(13.9mmolの1,6HMD)を入れた。得られたスラリーに、デキストロースの50%水溶液10g(27.8mmolのデキストロース)を添加した。このバイアルは蓋をされ、振とうされて、均質な溶液を生じさせ、これは少なくとも2週間流体のままであった。
【0083】
第一級アミンの全当量を基準にした安定化剤からの酸のmol%は、ジ第一級ジアミンの場合には、安定化剤中の酸当量数を、モルあたり第一級2当量を有するジ第一級ジアミン中の第一級アミンの当量数で割った値に等しい。以下の表1に示されるように、対照例3のキシロース、1,6HMD溶液は対照例1における対応するデキストロース、1,6HMD配合物よりも安定性は低い。実施例2および4それぞれにおけるHOAcおよびTFAのような有機酸の添加は、デキストロース配合物の貯蔵寿命安定性を非常に向上させ;実施例4対例3におけるTFA安定化剤は、実施例2対例1においてデキストロース配合物に対する酢酸の影響よりも、より反応性のキシロース配合物に対してより少ない影響を有する。キシロース配合物は鉱酸、例えば、硫酸の添加によって非常に安定化される;実施例5を参照。実施例7〜9,11、13および15における炭酸水素アンモニウムの有効性は、アミンのプロトン化を可能にするように酸のpKaが選択されるべきであり、かつその酸は第一級アミン全当量を基準にして20mol%より多い量で存在すべきことを示唆する。
【0084】
例1〜15のそれぞれにおいては、以下の表1において、第一級アミンの当量数:還元糖におけるカルボニル(アルデヒドもしくはケトンとして)基の当量数の比率は約1:1である。
【0085】
【表1】

1.当量比;対照
【0086】
実施例16〜25:エキステンダーに関連する実施例
デキストロース/1,6HMD/ABCのストック溶液:
完全に希釈されるまで、穏やかな加温下で291.5gのデキストロースが291.5gの水に添加された。別に、71.5gの水および85.5gのABCが、1,6HMDの60%溶液208.25gに添加された。デキストロース溶液を冷却する際に、この2つの溶液が一緒にされて、デキストロース/1,6HMD/ABCの〜50%固形分ストック溶液948.25gを形成した。第一級アミン基:還元糖カルボニル基の当量比は1.33:1であった。
【0087】
キシロース/1,6HMD/ABCのストック溶液:
完全に希釈されるまで、穏やかな加温下で291.5gのキシロースが291.5gの水に添加された。別に、71.5gの水および85.5gのABCが、1,6HMDの60%溶液208.25gに添加された。キシロース溶液を冷却する際に、この2つの溶液が一緒にされて、キシロース/1,6HMD/ABCの〜50%固形分ストック溶液948.25gを形成した。第一級アミン基:還元糖カルボニル基の当量比は1.11:1であった。
【0088】
以下の表2に示される配合物はストック溶液とARBO SO1とを磁気攪拌バーで攪拌プレート上で約10分間単に混合することにより製造された。
【0089】
【表2】

【0090】
上記表2における配合物のそれぞれは貯蔵安定であった。
【0091】
以下の表3に示されるように、上記表2における配合物はろ紙に適用され、そして以下に記載されるような機械的特性について試験された。バインダー添加量も報告された。
【0092】
バインダーが含浸されたマイクロファイバーフィルターシート(ワットマンインターナショナルインコーポレーティド、英国メイドストン、GF/A、カタログ番号1820 866、20.3cm×25.4cm)は、12重量%のあらかじめ混合された水性バインダー溶液〜300グラムで満たされた容器にこの紙を入れて引き出すことにより準備され、この含浸サンプルを2枚のボール紙シートの間に挟んで過剰なバインダーを吸収させ、2枚のボール紙シートをBirch Bros.Padderで68.9Paの圧力および2.5m/分の速度で加圧した。得られたサンプルは90℃で90秒間マチス(Mathis)オーブン(脱揮発装置でベントされた)内で乾燥させられ、次いでこの当初乾燥の直後に、同じ種類のマチスオーブン内で、以下の表3および4に示される時間および温度で硬化させられた。硬化したろ紙は、次いで、引っ張り試験のための2.54cm×10.16cmの試験片に切り出された。乾燥試験片は以下のように試験された。各試験片は空気駆動式グリップ上に取り付けられ、2.54cm/分のクロスヘッドスピードで試験された。それぞれの引張強さは、各試験される試験片を2つに分裂もしくは破壊する際に測定されたピーク力として記録された。1つの実施例に付き8枚の試験片が試験された。湿潤試験については、試験前に、8枚の試験片は85℃の水に30分間浸漬された。これらサンプルは次いで水から取り出され、軽くたたいて乾燥させ、直ちに、乾燥試験で指示される通りに試験された。上記手順は表2における全てのバインダー配合物について繰り返され、結果は表3および4にまとめられた。
【0093】
添加量%:硬化後のそのままの基材の重量で割った基材上のバインダーの重量%として決定される。未処理の基材の重量はバインダーで処理する前に測定される。
【0094】
【表3】

N:ニュートン、比較例
【0095】
【表4】

N:ニュートン、比較例
【0096】
上記表2、3および4に示されるように、本発明に従って、全バインダー固形分を基準にして10〜20重量%の低コストエキステンダー(リグノスルホナート)を添加することは、このシステムの安定性(表2)、並びに表3および4の実施例16〜18および21〜24におけるバインダーシステムの乾燥および湿潤強さの機械的特性を維持することが可能である。上記表3における例19〜20および24〜25に示されるように20重量%を超えると、依然として安定なシステムを維持できるが、湿潤強さの機械的特性が低下し始める。上記表4には示されていないが、より軽度に硬化したバインダー(190℃で3分間の硬化)は、50重量%エキステンドされたシステムにおいては適切な乾燥および湿潤引張強さを提供しなかった;そして、このデータは示されていない。
【0097】
実施例25〜38:一時的酸安定化剤の硬化に対する影響
スターラーバーを備えた25mlのガラスバイアルに、水および1,6HMD(ヘキサメチレンジアミン)チャージを入れることにより、一時的酸安定化剤を含む以下の表5に示される配合物、および比較の配合物が形成された。次いで、この攪拌された溶液に安定化剤がゆっくりと滴下添加された。最後に、デキストロースチャージが添加され、得られた溶液は攪拌されて均質性を確保した。以下の表において、HOAcは氷酢酸としての酢酸を表し、ABCは炭酸水素アンモニウムを表す。クエン酸、酢酸および炭酸水素アンモニウム安定化剤は使用中になくなり、一時的安定化剤と見なされる。
【0098】
【表5】

比較例;**一時的酸安定化剤を含まない例。
【0099】
上記表5における配合物はその安定性を決定するために周囲温度に置かれており、以下に説明される動的機械的分析すなわちDMAによって試験された:
DMA:硬化速度を測定するために使用される試験。小さな角度の振動性歪みが反応サンプルに適用され、生じた応力が「インフェース(in phase)」(G’固体状応答)および「アウトオブフェース(out of phase)」成分(G’’液体状応答)に分解された。応力応答が歪みより遅れることによる相角度はデルタdとして知られており、tan(d)はG’’:G’の比率である。小さな適用歪みについては、このシステムは液体−固体遷移を通じて連続的に測定されうる。使用される装置は、TAユニバーサルアナリシス2000ソフトウェアを使用して行われる数学的解析を伴う、デュアルカンチレバークランプを備えたTAインスツルメンツDMA Q800、モデル♯2980(TAインスツルメンツインコーポレーティド、ニューカッスル、デラウェア州)であった。試験においては、以下のパラメーターが使用された。
温度勾配:4℃/分、30℃〜250℃。
基材:12.7mm×34.0mmワットマン(Whatman登録商標)GF/B濾紙(サンドウィッチとしての2枚の試験片)。
サンプル添加:50重量%溶液を0.500g(試薬混合物の30重量%水溶液を約4滴/試験片)。
【0100】
TAユニバーサルアナリシス2000における以下の方法によって、特有の硬化温度が分析された。温度に対する貯蔵弾性率(G’)プロットにおいて、硬化開始領域および最終硬化領域におけるG’の「シグナル最大値」に対応する点が示された。次いで、シグナル最大点に対してタンジェントのラインと「ガラス/ステップ遷移」を使用する変曲点に対するタンジェントのラインとの切片として硬化開始温度Tonsetが決定された。ピーク弾性率(G’)での点に対してタンジェントの水平ラインと変曲点に対してタンジェントのラインとの切片として最終硬化温度Tfinalが決定された。硬化時間は4℃/分の加熱速度での硬化の開始から終わりまでの時間であった。
【0101】
DMAおよび安定性の結果は以下の表6に示される。
【0102】
【表6】

比較例;**一時的酸安定化剤を含まない例。
【0103】
上記表6に示されるように、全ての酸含有組成物は、室温で7日間置いた後で実際は安定であるが、酸を含まない例26の組成物は7日後に安定ではなかった。全ての一時的酸安定化剤含有実施例33、34、35、36、37および38は、実施例27、28、29、30、31および32における酸安定化された組成物と比べて低い硬化開始温度を可能にした。一時的酸安定化剤を含んでいない酸含有実施例27〜32と比較して、酢酸(実施例34〜35)は硬化開始温度を著しく低下させ;並びに炭酸水素アンモニウム(実施例36、37および38)は、比較の安定化されない例26のバインダーと比較してさえ、硬化時間を長くすることなく硬化開始温度を劇的に低下させた。このデータは安定化剤の試験された範囲の比率全体にわたって一貫していた。よって、一時的酸安定化剤は、低減された硬化エネルギー、並びにより低い温度での硬化および/または短時間での硬化を可能にするバインダーを生じさせた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の還元糖、1種以上の第一級アミン化合物、および8.5以下のpKaを有する1種以上の安定化剤酸もしくは塩を含む、延長した貯蔵寿命を有する安定な水性熱硬化性バインダー組成物であって、
前記バインダー組成物の全固形分量が15重量%以上であり、
さらに、第一級アミンの当量数:還元糖におけるカルボニル(アルデヒドもしくはケトンとして)基の当量数が0.125以上:1〜10以下:1の範囲であり、並びに
さらに、使用される安定化剤の合計量が、バインダー中に存在する第一級アミンの合計モル数を基準にして5〜200mol%の範囲である、
組成物。
【請求項2】
還元糖が5−炭素もしくは6−炭素単糖である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第一級アミン化合物がジ第一級ジアミンもしくはポリ第一級アミンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
安定化剤酸もしくは塩のpKaが7.5以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
安定化剤が(i)モノカルボン酸、ジカルボン酸、脂肪酸、酸官能性脂肪酸エステル化合物、酸官能性脂肪酸エーテル化合物、およびこれらの混合物から選択される有機安定化剤、(ii)鉱酸、鉱酸アミン塩、鉱酸アンモニア塩、およびルイス酸から選択される無機安定化剤、(iii)一時的酸安定化剤、または(iv)上述のいずれかと、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル化合物との混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
安定化剤の量がバインダー中に存在する第一級アミンの合計モル数を基準にして20mol%以上である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
バインダー組成物の全固形分量が20重量%以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
全バインダー固形分を基準にして25重量%以下の量でリグノスルホナートをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の安定な水性熱硬化性バインダー組成物を基材に適用するか、または基材と混合する工程;並びに
このようにして処理された基材もしくは混合物を加熱してバインダーを硬化させる工程;
を含む、請求項1に記載の安定な水性熱硬化性バインダー組成物を使用する方法。
【請求項10】
基材が、繊維、薄片、チップ、粒子、膜、シート、木材、もしくは木質材料、並びにこれらの組み合わせである、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2012−117045(P2012−117045A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−233503(P2011−233503)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】