説明

部位特異的ドラッグデリバリのためのポリエステルアミドプラットフォーム

本明細書には、特定種のポリ(エステルアミド)(PEA)と、治療薬と、水混和性溶媒とから形成された治療薬デリバリシステムを記載している。また、PEAポリマーと治療薬と水混和性溶媒とから形成された治療薬デリバリシステムを物理的環境にデリバリすることと、治療薬デリバリシステムの相を分離して、ポリマーで膜を形成することで治療薬を生理学的環境内に含有させることとによる、治療薬デリバリシステムのデリバリ方法も記載している。更に、シリンジと、前記シリンジに入った治療薬デリバリシステムとを包含する、キットも開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象内の特定組織へのドラッグデリバリ技術分野に関し、特に、対象内の特定組織内部での薬物の徐放技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかの治療は、治療薬類を対象にデリバリして疾病若しくは症状を治療するため又は疼痛管理のために開発されてきた。大抵の場合、これら治療薬類は、放出制御機構又は徐放機構によってデリバリされる。対象への治療薬の徐放投与を達成するための幾つかのシステム類では、治療薬を入れた生分解性材料、例えば、高分子マトリックスを使用する。前記マトリックスは、治療薬を入れた生分解性微粒子類又はマイクロキャリア類から構成されている。前記微粒子類又はマイクロキャリア類が生物学的環境内で分解すると、それらは治療薬を制御された速度で放出する。一つの好適な生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸―コ―グリコール酸)(PLGA)である。しかしながら、PLGAは典型的に分解時間が短く、PLGAで形成されたマトリックスからの治療薬の放出時間は、広範に調節することが容易ではない。加えて、PLGAは、分解すると高濃度の低分子量酸性種を形成する。このことは、その多くが酸感応性であることから、PLGAポリマーマトリックスの生体適合性や治療薬類との適合性をも阻害する。PLGAポリマーマトリックスの別の短所は、それらが、それらの機械特性、例えば、結晶度又はガラス転位温度を十分な範囲に亙って調節できないことである。このことが、保持力を調節するそれらの能力や、対象内の様々な組織との機械的適合性を調節するそれらの能力を制限している。最後に、PLGAは、生体適合性の高いアルコール溶媒、例えば、エタノールには溶解せず、より強力な有機溶媒を要するが、それら強力な有機溶媒は組織適合性が低いことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特定種のポリ(エステルアミド)(PEA)と治療薬と水混和性溶媒とを含む治療薬のデリバリシステムの実施形態が本明細書に開示されている。PEAポリマーと治療薬と水混和性溶媒とから構成される治療薬デリバリシステムを(生理学的環境へ)デリバリして、前記ポリマーで膜を形成することで、治療薬を生理学環境内に入れることによる治療薬のデリバリ方法もまた記載されている。治療薬をデリバリする別法として、前記と同じ治療薬デリバリシステムをデリバリして、PEAポリマーと治療薬とから構成される層転位徐放性製剤を形成することによる方法もまた記載されている。更に、シリンジと前記シリンジ内の治療薬デリバリシステムとを包含するキットも記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
以下の記述には、非常に多くの実施形態が、本発明の徹底的な理解をもたらすために説明されている。当業者には、これらの実施形態が単に例示であって、本発明の範囲を制限するものではないことが分かるであろう。更に、その他の例証において、既知の加工技術及び装置は、それらが当業者に既知であることから特に詳述していない。
【0005】
特定種のポリ(エステルアミド)(PEA)と治療薬と水混和性溶媒とから形成された治療薬デリバリシステムの実施形態が本明細書に記載されている。PEAポリマーと治療薬と水混和性溶媒とから形成された治療薬デリバリシステムを生理学的環境へデリバリし、そして前記治療薬デリバリシステムの相分離を引き起こして、前記ポリマーで膜を形成することで、治療薬を生理学的環境内に入れることによる治療薬のデリバリ方法もまた記載されている。更には、シリンジと前記シリンジ内の治療薬デリバリシステムとを包含するキットも開示されている。
【0006】
治療薬デリバリシステムには、以下に記載するPEA類の群のうち1つから選択された特定種のPEAを包含することができる。治療薬デリバリシステム中にPEA類を使用することで、幾つかの利点を提供することができる。例えば、PEA類は、内因性構成成分から構成されており、そのため、内因性酵素がそれらを分解することができる。加えて、PEA類の分解速度は、PEA類を形成するのに用いられる構成成分又は構成成分の化学量論を変えることによって制御することも可能である。更に、PEA類の機械特性、及びそれらから形成される徐放性製剤を広範に変化させることも可能である。PEAの変種を以下に更に詳細に説明する。PEAの分解速度を制御する能力は、結果として、治療薬デリバリシステムからの治療薬の放出速度を制御する。放出速度は、治療薬が使用される場合に基づいて調節することができる。これは、PEAの組成を変更することにより、そしてその分子量によって達成することができる。組成と、徐放性製剤を生み出す相転位動力学とによって、放出速度が決定される。放出速度は、何時間、何日、あるいは何ヶ月となるように調節することができる。例えば、放出期間としては、約6時間〜約6ヶ月、約3日〜約3ヶ月、及び約1週間〜約1ヶ月を挙げることができるが、これらに限定されない。有用なPEA分子量は、溶液に好適な粘度を許容するように選択される。重量平均分子量は、10,000ダルトン〜200,000ダルトンまでであろう。
【0007】
幾つかの実施形態では、PEAを、非経口的に是認された溶媒に溶解する。「非経口的」とは、消化管を介する以外の、静脈注射若しくは筋肉内注射によるなどの方法で体内に摂取されるか又は投与されることを意味する。非経口的に是認された溶媒は、完全に又は一部が水混和性である。そのため、生理学的な環境に導入されると、前記溶媒はPEAから発散して、治療薬を含有する膜が後に残される。非経口的に是認された溶媒類の例としては、エタノール、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、n−メチルピロリドン(NMP)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、PEAと溶媒との組み合わせが、不均一な溶液、例えば、コロイド状の懸濁液又はエマルションを形成する場合がある。いくつかの実施形態では、PEAと溶媒の組み合わせが均一な溶液を形成する場合もある。PEAと混合する溶媒の量は、溶液を細いゲージ針から注入するのに好適な粘度とレオロジーを有する溶液を形成するのに要する溶媒の量に応じて変化する。細いゲージ針は、約23ゲージ〜27ゲージの範囲、特に24ゲージのゲージを有しる。
【0008】
治療薬は、治療効果、予防効果、治療効果と予防効果の両方、又は哺乳類に有益な場合がある他の生物学的効果のいずれかに寄与する可能性のあるあらゆるものである。前記薬剤はまた、診断特性を有することも可能である。例えば、治療薬は、医薬品、生物製剤、又は画像増強剤、あるいはこれらのいずれかの組み合わせである。
【0009】
幾つかの実施形態では、治療薬は生物製剤である。生物製剤類としては、細胞類、ヌクレオチド類、オリゴヌクレオチド類、ポリヌクレオチド類、ポリオリゴヌクレオチド類、アミノ酸類、ペプチド類、オリゴペプチド類、ポリペプチド類、タンパク質類、及び抗体類が挙げられるが、これらに限定されない。一例では、生物製剤は、血管平滑筋細胞の活動を抑制する。別の例では、生物製剤は、平滑筋細胞の遊走又は増殖を制御して、再狭窄を抑制する。「再狭窄」とは、狭窄が、見た目では成功したかのように治療された後に血管内で再発生することを指す。
【0010】
治療薬類としては、抗増殖薬類、抗悪性腫瘍薬類、有糸分裂阻害薬、抗炎症薬類、血小板凝集抑制薬類、抗凝固薬類、抗線溶薬類、抗トロンビン類、抗菌剤類、抗アレルギー剤、抗酸化剤、抗遊走剤、及びいずれかのプロドラッグ類、代謝物類、類縁体類、同族体類、同類物類、誘導体類、塩類、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、幾つかのグループ類、サブグループ類、及び個々の治療薬類が本発明の幾つかの実施形態では利用できないことを認識する必要があることを理解すべきである。
【0011】
抗増殖薬類としては、例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI1、アクチノマイシンX1、アクチノマイシンC1、及びダクチノマイシン(コスメゲン(COSMEGEN)(登録商標)、メルク社(Merck & Co., Inc.))が挙げられる。抗悪性腫瘍薬類又は有糸分裂阻害薬としては、例えばパクリタキセル(タキソール(TAXOL)(登録商標)、ブリストル−マイヤーズ・スクイブ社(Bristol-Myers Squibb Co.))、ドセタキセル(タキソテア(TAXOTERE)(登録商標)、アベンティス社(Aventis S.A.))、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩(アドリアマイシン(ADRIAMYCIN)(登録商標)、ファイザー社(Pfizer, Inc.))、及びマイトマイシン(ムタマイシン(MUTAMYCIN)(登録商標)、ブリストル−マイヤーズ・スクイブ社)、及びいずれかのプロドラッグ類、代謝物類、類縁体類、同族体類、同類物類、誘導体類、塩類、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。血小板凝集抑制薬類、抗凝固薬類、抗線溶薬類、及び抗トロンビン類としては、例えば、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン類、ヘパリノイド類、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスラサイクリン類縁体、デキストラン、D−Phe−Pro−Arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、グリコプロテインIIb/IIIa血小板膜受容体拮抗薬抗体、組換えヒルジン、及びトロンビン阻害剤類(アンジオマックス(ANGIOMAX)(登録商標)、バイオゲン社(Biogen, Inc.))、及びいずれかのプロドラッグ類、代謝物類、類縁体類、同族体類、同類物類、誘導体類、塩類、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。細胞分裂阻害薬又は抗増殖薬類としては、例えば、アンジオペプチン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬類、例えばカプトプリル(カポテン(CAPOTEN)(登録商標)及びカポジド(CAPOZIDE)(登録商標)、ブリストル−マイヤーズ・スクイブ社(Bristol-Myers Squibb Co.))、シラザプリル又はリシノプリル(プリニビル(PRINIVIL)(登録商標)及びプリンジド(PRINZIDE)(登録商標)、メルク社(Merck & Co., Inc.));カルシウムチャネル遮断薬、例えばニフェジピン;コルヒチン類;繊維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗薬類、魚油(ω3脂肪酸);ヒスタミン拮抗薬類;ロバスタチン(メバコール(MEVACOR)(登録商標)、メルク社(Merck & Co., Inc.));モノクローナル抗体類、例えば、限定されないが、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体類特異的抗体を包含するもの;ニトロプルシド;ホスホジエステラーゼ抑制剤類;プロスタグランジン抑制剤類;スラミン;セロトニン遮断剤類;ステロイド類;チオプロテアーゼ抑制剤類;PDGF拮抗薬類であって、限定されないが、トリアゾロピリミジンを包含するもの;及び一酸化窒素、及びいずれかのプロドラッグ類、代謝物類、類縁体類、同族体類、同類物類、誘導体類、塩類、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。抗アレルギー剤としては、ペミロラストカリウム(アラマスト(ALAMAST)(登録商標)、参天製薬(Santen, Inc.))、及びいずれかのプロドラッグ類、代謝物類、類縁体類、同族体類、同類物類、誘導体類、塩類、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
本発明で有用なその他の治療薬類としては、遊離基捕捉剤類;一酸化窒素供与体類;ラパマイシン;エベロリムス;タクロリムス;40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン;40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン;40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン;テトラゾール含有ラパマイシン類縁体類、例えば米国特許第6,329,386号に記載されているもの;エストラジオール;クロベタゾール;イドキシフェン;タザロテン;α−インターフェロン;宿主細胞、例えば、上皮細胞類;遺伝子改変された上皮細胞類;デキサメタゾン;及びいずれかのプロドラッグ類、代謝物類、類縁体類、同族体類、同類物類、誘導体類、塩類、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
遊離基捕捉剤類としては、2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニロキシ、遊離基(TEMPO);4−アミノ−2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニロキシ、遊離基(4−アミノ−TEMPO);4−ヒドロキシ−2,2’,6,6’−テトラメチル−ピペリデン−1−オキシ、遊離基(TEMPOL)、2,2’,3,4,5,5’−ヘキサメチル−3−イミダゾリニウム−1−イルオキシメチルサルフェート、遊離基;16−ドキシル−ステアリン酸、遊離基;スーパーオキシドジスムターゼ擬態(SODm)、及びいずれかの類縁体類、同族体類、同類物類、誘導体類、塩類、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一酸化窒素供与体類としては、S−ニトロソチオール類、亜硝酸塩類、N−オキソ−N−ニトロサミン類、一酸化窒素合成酵素の基質類、ジアゼニウムジオレート類、例えばスペルミンジアゼニウムジオレート、及びいずれかの類縁体類、同族体類、同類物類、誘導体類、塩類、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
幾つかの実施形態では、治療薬は、画像増強剤であり、これには、放射線不透過性薬剤又はMRI薬剤を挙げることができる。「放射線不透過性」とは、物質がX線を吸収する能力を指す。MRI薬剤は磁化率を有し、この磁化率は、MRIで視認化することができる。代表的な放射線不透過性薬剤には、生分解性金属粒子類、及び生分解性金属化合物類の粒子であって、例えば生分解性金属酸化物類、生分解性金属塩類、及びフッ素化色素を挙げることができるが、これらに限定されない。ヨウ素化放射線不透過性薬剤には、アセトリオゼート、ジアトリオゼート、ヨージミド、イオグリケート、イオタラメート、ヨーキシタラメート、セレクタン、ウロセレクタン、ジオドン、メトリゾエート、メトリザミド、イオヘキソール、イオキサグレート、イオジキサノール、リピジアル、エチオドール、並びにこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。MRI薬剤類としては、酸化鉄、超常磁性酸化鉄、及びガドリニウム塩類、例えば、ガドジアミド、ガドペンテト酸塩、ガドテリドール及びガドベルセタミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
治療薬デリバリシステムに包含させることができるポリ(エステルアミド類)は、PEA類の幾つかの群のうち1つに由来している。一つの群では、PEAは、二塩基酸と、ジオールと、少なくとも1つのアミノ酸とから構成される。二塩基酸は、好ましくはC2〜C12二塩基酸であって、脂肪族又は不飽和のいずれかである。ジオールもまたC2〜C12であって、分枝及び不飽和を包含してよい。ある実施形態では、トリオール、例えばグリセロールを配合に更に添加して穏やかな架橋を引き起こしてもよく、この場合、前記配合の固形分含有率は低い。第1アミノ酸は、グリシン、バリン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、又はフェニルアラニンなどである。任意の第2アミノ酸を更に包含してもよく、それは、薬理活性のある化合物か又は特性変性剤類を結合するための反応性側鎖基を含有していてもよい。第2アミノ酸は、リシン、チロシン、グルタミン酸、又はシステインであってよい。このPEA群は更に、任意の親水性ジオール又はジアミンを、特性を変性するために含有させる。この構成成分は、ポリマー主鎖にあっても、又はペンダント基として結合される。この任意のジオール又はジアミンは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、又はヒアルロン酸であってよい。
【0016】
別の群では、アミドジオール類系のPEA類を更に治療デリバリシステム(therapeutic delivery system)に使用してもよい。アミドジオール系PEAの構造では、ジアミン、例えばプトレシン又はカダベレン(cadaverene)は、ヒドロキシ酸、例えばグリコール酸若しくは乳酸で末端保護されている。ヒドロキシ末端アミドジオールは、その後、二塩基酸と、エステル交換反応によって又は酸クロライドなどの活性形態を介して反応する。
【0017】
治療薬デリバリシステムは、ポリ(エステルアミド)と治療薬と水混和性溶媒とを包含しており、生理学的環境内の治療部位にデリバリすることができる。デリバリされると、治療薬デリバリシステムは相分離を生じて、治療薬を含有するポリ(エステルアミド)の膜を生理学的環境内に形成する。治療薬は、PEA膜内に閉じ込められており、PEAが分解するにつれて、予め決められた時間に亙って膜から拡散する。治療薬は、線形的に又は間欠的に放出されてよい。
【0018】
幾つかの実施形態では、治療薬デリバリシステムは、カテーテルを用いた部位特異的デリバリによって生理学的環境にデリバリされてもよい。使用できるカテーテルの例としては、針付きカテーテル及びバルーンカテーテルが挙げられる。部位特異的注射を用いて不安定プラーク、糖尿病、疼痛管理、関節炎、又は環状脈疾患を処置してもよいが、これに限定されない。治療薬デリバリシステムを注入し得る他の治療部位は、当業者には既知である。幾つかの実施形態では、治療薬デリバリシステムは、生理学的環境内の治療部位に、シリンジ注射によってデリバリされてもよい。
【0019】
治療薬デリバリシステムは、カテーテル又はシリンジを包含するキットの一部であってもよい。幾つかの実施形態では、キットは、シリンジと、前記シリンジに入れた、PEAポリマーと治療薬と溶媒とを含む治療薬デリバリシステムとを包含する。シリンジは、約23ゲージ〜27ゲージまでの範囲のゲージの細いゲージ針を有していてよい。
【0020】
PEA類の少なくとも2つの群の合成を本明細書に記載する。用語「ポリ(エステルアミド)」又は「PEA」は、少なくとも1つのエステル結合(I)と少なくとも1つのアミド結合(II)とを有する縮合コポリマーと定義される:
【化1】

【0021】
用語「縮合コポリマー」とは、2つのモノマーの重縮合法の生成物であるコポリマーと定義される。「重縮合」とは、IUPAC(国際純正応用化学連合(the International Union for Pure and Applied Chemistry)”で用いられる定義に従って定義される。IUPACでは「重縮合」を、重合法であって、ポリマー鎖の成長が、あらゆる重合度の分子間で縮合反応によって進行するものと定義している(定義3.7)。「縮合反応」とは、化学反応であって、2つの分子又は部分が反応して互いに共有結合を成すと同時に、小さな分子、多くの場合は、水、メタノール、又はハロゲン化水素種、例えば塩酸がなくなることである。
【0022】
PEA類を得るために使用できる合成技術を以下に記載する。一般に、A群の1つの薬剤とB群の1つの薬剤とが反応してPEA類を形成する。幾つかの実施形態によれば、A群の薬剤には様々なジオール−ジアミン類が包含され、そしてB群の薬剤には様々なジカルボン酸類が包含される。幾つかの実施形態では、コーティングは、いかなる特定のポリ(エステルアミド)も含まない可能性がある。A群及びB群の薬剤は次のように特徴付けられる。
【0023】
A.A群薬剤−ジオール−ジアミン類
本発明の実施形態に従って使用できるA群薬剤を構成するジオール−ジアミン類は、一般式(III)を有する化合物である:
【化2】

前記式中、Rは、水素、メチル、イソプロピル、sec−ブチル、イソ−ブチル、ベンジル、メチルメルカプトエチル(CH2−CH2−S−CH3)、メチレンアミド(CH2−CO−NH2)、又はエチレンアミド(CH2−CH2−CO−NH2)でであり、そしてxは、2〜16の整数である。
【0024】
式(III)で示される薬剤は、ジオール−ジアミン類であって、アミノ酸とジオールとの縮合によって合成できるものである。合成は、アミノ酸のカルボキシル基を介したアミノ酸のエステル化を促進する条件下で行うことができる。この反応は脱水条件下で行うことができ、無水環境及び高温、例えば約50℃〜約120℃が包含される。この反応は、強酸又は強塩基、例えば、p−トルエンスルホン酸によって触媒作用することができる。無水条件は、反応溶媒、例えばトルエン又はベンゼンの共沸蒸留によって水を除去することで得ることができる。
【0025】
式(III)のジオール−ジアミン類を作製するのに使用できるジオール類は、式HO−(CH2x−OHを有し、ここでxは、先に定義したものである。使用できるジオール類の代表例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
式(III)のジオール−ジアミン類を調製するのに使用できるアミノ酸類は、式H2N−CHR−COOHを有し、ここで、Rは、先に定義したものである。表1にこれらアミノ酸類の幾つかを提示する。
【表1】

【0027】
表1に挙げたアミノ酸類に加えて、その他のアミノ酸、例えば、プロリン(2−ピロリジンカルボン酸)も使用することができる。
【0028】
1つのアミノ酸又は2つの異なるアミノ酸類のいずれかを使用して、式(III)のジオール−ジアミン類を合成することができる。1つのアミノ酸を使用する場合、それは、先に記載したジオール1モル当量につき2モル当量のアミノ酸を含む。2つの異なるアミノ酸類を使用する場合、それらは、ジオール1モル当量につき1モル当量の第1アミノ酸に加えて1モル当量の第2アミノ酸をも含む。それらはまた、それらがジオール1当量に対して2当量まで添加されるのであれば、様々な比で存在してもよい。2つのアミノ酸類をいずれかの比で使用する場合、3つまでの異なるジオール−ジアミン生成物を得ることができる。
【0029】
B.B群薬剤−ジカルボン酸類
B群薬剤を構成する有用なジカルボン酸類は、一般式(IV)1を有する化合物である:
【化3】

前記式中、yは、0〜16の整数である。式(IV)で示されるジカルボン酸類のいくつかの例を表2にまとめる。表2に提示されるカルボン酸類の混合物もまた、必要に応じて使用可能である。
【表2】

【0030】
B群薬剤を構成するその他のジカルボン酸類は、一般式(IV)2を有する化合物類である:
【化4】

前記式中、nは、炭素原子数0〜16の直鎖若しくは分枝の脂肪族部分、炭素原子数2〜16のいずれかのアルケン部分、又は炭素原子数6〜12のいずれかの芳香族部分である。例としては、テトラフタル酸、イソフタル酸、及びフタル酸、並びに1,4−、1,3−及び1,2−フェニレン二酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
上述の通り、PEA類を合成するために、A群の少なくとも1つの薬剤をB群の少なくとも1つの薬剤と反応させることができる。ジオール−ジアミン類とジカルボン酸類との直接結合は、酸又は触媒を用いて脱水条件下で達成することが可能である。副反応をほとんど生じさせずに結合プロセスを行うために、ジカルボン酸をカルボジイミド、たとえば1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又は1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)で予備的に活性化することができる。あるいは、ジカルボン酸の代わりに、その誘導体、例えば二塩基酸塩化物、二塩基酸臭化物、又はp−ニトロフェノール誘導体を使用することができる。
【0032】
一実施形態によれば、合成の結果として、一般式(V)を有する生物学的に吸収可能なPEA類を得ることができる。
【化5】

前記式中、R、x及びyは先に定義された通りであり、そしてnは、約35〜約1100、例えば90〜650の値を有する整数である。
【0033】
別の実施形態によれば、使用されるアミノ酸がプロリンである場合、一般式(VI)の生物学的に吸収可能なPEA類を得ることができる:
【化6】

前記式中、x、y、及びnは先に定義された通りである。
【0034】
一般式(V)を有するポリ(エステルアミド)の合成の一例は、アラニンとアジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとに基づく、以下の手順によるポリ(エステルアミド)の合成である。
【0035】
先ず、2当量のL−アラニンを1当量の1,6−ヘキサンジオール及び少なくとも2当量のp−トルエンスルホンと共にベンゼン溶液に混合することができる。ベンゼンの代わりに、トルエン又はクロロホルムを必要に応じて使用することができる。この混合液を加熱して還流し、ディーン−スターク・トラップを用いて共沸蒸留させて、水を除去することができる。結果として、ビス−(L−アラニン)−1,6−へキシレンジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩(モノマー1)を得ることができる。
【0036】
次に、アジピン酸は、1当量のアジポイルクロライド及び2当量のp−ニトロフェノールを、テトラヒドロフラン(THF)溶液中で少なくとも2当量のトリエチルアミンと反応させることによって活性化して、ジ−p−ニトロフェニルアジペート(モノマー2)を得ることができる。THFの代わりに、ジエチルエーテル又はp−ジオキサンを必要に応じて使用することができる。モノマー1とモノマー2は共に、およそ1:1までの化学量論を有することが可能である。この化学量論が1:1の比に近づくほど、ポリマーの分子量が高くなる。
【0037】
最後に、1当量のモノマー1を、1当量のモノマー2及び少なくとも2当量のトリエチルアミンと乾燥N,N−ジメチルアセタミド(DMAC)中で反応させることができる。あるいは、ジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルスルホキシド(DMSO)をDMACの代わりに使用することができる。モノマー1と2との比は、1:1であるが、必ずしもそうでなくてもよい。一般に、前記2つのモノマーのモル比は、互いに10%以内であって、最終ポリマーの所望の分子量に左右される。この比は、1:1から外れることもあるが、外れた場合、重合が更に低い分子量で停止する場合がある。
【0038】
反応物類を室温で混合した後、混合物を約80℃において約16時間加熱することができる。粘稠な反応混合物を室温まで冷却し、大量のアルコール(例えば、メタノール又はエタノール)で希釈して、水に流し入れることができる。結果として、最終ポリマーであるコ−ポリ−[N,N’−アジポイル−ビス−(L−アラニン)−1,6−ヘキシレンジエステル]が生成され得る。沈殿したポリマーを単離して、水洗いして、真空乾燥させることができる。
【実施例】
【0039】
以下の実施例を、本発明の実施形態を更に例示するために提供する。
【0040】
実施例1
コポリマーである、式(VII)のコ−ポリ−{N,N’−セバコイル−ビス−(L−ロイシン)−1,6−ヘキシレンジエステル}を合成して、本発明の実施において使用することができる:
【化7】

前記式中、nは85〜95、例えば90である。
【0041】
コポリマー(VII)を合成するために、式(III)の群のジオール−ジアミン物質を、式(IV)の群のジカルボン酸物質と反応させることができる。
【0042】
ジオール−ジアミン物質は、ビス−(L−ロイシン)−1,6−へキシレンジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩でであり、そしてL−ロイシンと1,6−ヘキサンジオールとをp−トルエンスルホン酸触媒を用いて縮合することによって合成することができる。
【0043】
ジカルボン酸物質は、セバシン酸のジ−p−ニトロフェニル誘導体であってもよく、p−ニトロフェノールとセバコイルクロライドとの縮合によって合成することができる。ジオール−ジアミンとジカルボン酸物質類の合成条件は、当業者が決定することができる。
【0044】
コポリマー(VII)の合成は、次の手順に従って行うことができる。約100.3g(0.15モル)のビス−(L−ロイシン)−1,6−へキシレンジエステルのジ−p−トルエンスルホントルエンスロニック(toluensulfonic toluensulonic)酸塩を約105mlの乾燥DMACと混合し、そして約66.67g(0.15モル)のジ−p−ニトロフェニルセバシネートと反応させる。これら薬剤は、機械式攪拌機、窒素導入口、及び加熱した油浴を装備した1リットルの丸底フラスコにおいて室温で混合することができる。
【0045】
次いで、約46.2ml(0.33モル)の乾燥トリエチルアミンをこのフラスコに攪拌しながら加えることができる。反応混合物の温度を約80℃まで上げ、そして溶液を約10時間攪拌させることができる。その後、粘稠な反応混合物を室温まで冷却させて、約250mlのエタノールで希釈して、約2リットルの脱イオン水に攪拌しながら徐々に加えることができる。次に、ポリマーをろ過によって単離して、約1リットルの脱イオン水中に再懸濁させて、ろ過によって再度単離することができる。再懸濁及びろ過の前記プロセスは繰り返すことができる。最後に、ポリマーを約30℃において減圧下で約8時間〜24時間乾燥させることができる。
【0046】
実施例2
コポリマーである、式(VIII)のコ−ポリ−{N,N’−セバコイル―ビス―(L−ロイシン)−1,4−ブチレンジエステル}を合成して、本発明の実施において使用することができる:
【化8】

前記式中、nは140〜160、例えば150である。
【0047】
コポリマー(VIII)は、1,4−ブタンジール誘導体を1,6−ヘキサンジオール誘導体の代わりに使用することができること以外は、実施例1に記載したコポリマー(VII)と同様の方法で合成することができる。具体的には、以下の合成手順を使用することができる。
【0048】
約99.13g(0.15モル)のビス−(L−ロイシン)−1,4−ブチレンジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩を約105mlの乾燥DMACと混合することができ、そして約66.67g(0.15モル)のジ−p−ニトロフェニルセバシネートと反応させることができる。これら薬剤は、機械式攪拌機、窒素導入口、及び加熱した油浴を装備した1リットルの丸底フラスコにおいて室温で混合することができる。
【0049】
次いで、約46.2ml(0.33モル)の乾燥トリエチルアミンをこのフラスコに攪拌しながら加える。反応混合物の温度を約80℃まで上げ、そして溶液を約12時間攪拌させる。その後、粘稠な反応混合物を室温まで冷却させて、約250mlのエタノールで希釈して、約2リットルの脱イオン水に攪拌しながら徐々に加える。次に、ポリマーをろ過によって単離して、約1リットルの脱イオン水中に再懸濁させて、ろ過によって再度単離する。再懸濁及びろ過の前記プロセスは繰り返すことができる。最後に、ポリマーを約30℃において減圧下で約8時間〜24時間乾燥させることができる。
【0050】
実施例3
コポリマーである、式(IX)のコ−ポリ−{N,N’−アジポイル―ビス―(L−ロイシン)−1,4−ブチレンジエステル}を合成して、本発明の実施において使用することができる:
【化9】

前記式中、nは140〜160、例えば150である。
【0051】
コポリマー(IX)は、アジピン酸をセバシン酸の代わりに使用することができる以外は、実施例2に記載したコポリマー(VIII)と同様の方法で合成することができる。具体的には、以下の合成手順を使用することができる。
【0052】
約99.13g(0.15モル)のビス−(L−ロイシン)−1,4−ブチレンジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩を約76mlの乾燥DMACと混合し、そして約58.2g(0.15モル)のジ−p−ニトロフェニルアジペートと反応させる。これら薬剤は、機械式攪拌機、窒素導入口、及び加熱した油浴を装備した1リットルの丸底フラスコにおいて室温で混合することができる。
【0053】
次いで、約46.2ml(0.33モル)の乾燥トリエチルアミンをこのフラスコに攪拌しながら加える。反応混合物の温度を約80℃まで上げ、そして溶液を約10時間攪拌させる。その後、粘稠な反応混合物を室温まで冷却させて、約220mlのエタノールで希釈して、約2リットルの脱イオン水に攪拌しながら徐々に加える。次に、ポリマーをろ過によって単離して、約1リットルの脱イオン水中に再懸濁させて、ろ過によって再度単離する。再懸濁及びろ過の前記プロセスは繰り返す。最後に、ポリマーを約30℃において減圧下で約8時間〜24時間乾燥させる。
【0054】
実施例4
コポリマーである、式(X)のコ−ポリ−{N,N’−アジポイル―ビス―(L−アラニン)−1,4−ブチレンジエステル}を合成して、本発明の実施において使用する:
【化10】

前記式中、nは250〜300、例えば275である。
【0055】
コポリマー(X)を合成するために、式(III)の群のジオール−ジアミン物質を、式(IV)の群のジカルボン酸物質と反応させる。
【0056】
ジオール−ジアミン物質は、ビス−(L−アラニン)−1,4−ブチレンジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩でであり、L−アラニンと1,4−ブタンジオールとをp−トルエンスルホン酸触媒を用いて縮合することによって合成する。
【0057】
ジカルボン酸物質は、アジピン酸のジ−p−ニトロフェニル誘導体でであり、そしてp−ニトロフェノールとアジポイルクロライドとの縮合によって合成する。ジオール−ジアミン及びジカルボン酸物質類の合成条件は、当業者が決定する。
【0058】
コポリマー(X)の合成は、次の手順に従っておこなうことができる。約86.4g(0.15モル)のビス−(L−アラニン)−1,4−ブチレンジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩を約72mlの乾燥DMACと混合し、そして約58.2g(0.15モル)のジ−p−ニトロフェニルアジペートと反応させる。これら薬剤は、機械式攪拌機、窒素導入口、及び加熱した油浴を装備した1リットルの丸底フラスコにおいて室温で混合する。
【0059】
次いで、約46.2ml(0.33モル)の乾燥トリエチルアミンをこのフラスコに攪拌しながら加える。反応混合物の温度を約80℃まで上げ、そして溶液を約16時間攪拌させる。その後、粘稠な反応混合物を室温まで冷却させて、約205mlのエタノールで希釈して、約2リットルの脱イオン水に攪拌しながら徐々に加える。次に、ポリマーをろ過によって単離して、約1リットルの脱イオン水中に再懸濁させて、ろ過によって再度単離する。再懸濁及びろ過の前記プロセスは繰り返すことができる。最後に、ポリマーを約30℃において減圧下で約8時間〜24時間乾燥させる。
【0060】
一実施形態では、組成物の調製に使用できるポリマーはPEAであって、エステル基の不安定な性質のために、PEA構造を生分解性にする。PEAは、少なくとも1つのアミド基と少なくとも1つのエステル基を含み、その結果、多種多様な分子構造を有する。かかるポリマーは、例えば、ステントコーティング用途に十分な機械強度、及び哺乳類によって分解、吸収、再吸収、あるいは排出される能力を発現する。本発明の目的のために、ポリマー又はコーティングは「生分解性」であって、その場合、それは、哺乳類内の生体内環境のものとほぼ同様の物理的、化学的、又は生物学的特徴を有する生体内環境又は生体外環境のいずれかに暴露されると、完全に又は実質的に分解若しくは腐食する可能性がある。ポリマー又はコーティングは、分解又は腐食し、その場合、それは、例えば哺乳類内での加水分解、酵素分解、代謝過程、バルク若しくは表面腐食などによって徐々に分解、再吸収、吸収、又は排出される。ポリマーの痕跡又は残渣は、装置追従型生分解では残っている場合があると認識すべきである。用語「生体吸収性」及び「生分解性」は、本明細書内では互換的に用いられる。
【0061】
本発明で使用されるポリマーは、生分解性であってよく、そして縮合コポリマー類を挙げることができるが、これらに限定されない。ただし、PEA以外のポリマー類は、治療薬デリバリシステムのポリマー構成成分の少なくとも数パーセントを構成する場合があると認識すべきである。幾つかの実施形態では、これら他のポリマー類もまた、PEAとブレンドするか又は例えばイソシアネート又はジイソシアネートを用いて架橋する。これら他のポリマー類もまた生分解性である場合、混入される量を、生分解性ポリマーから形成される生成物の所要の性能パラメータに対するそれらの影響によって制限する必要がある。かかる性能パラメータ類としては、例えば、コーティングの機械強度、又は哺乳類からのコーティングの生分解及び排出速度を挙げることができる。他のポリマー類が非生分解性の場合、生分解中に生成されるポリマー断片の分子量は、前記断片が哺乳類から排出され得る大きさでなければならない。幾つかの実施形態では、ポリマー断片の分子量は、約40,000ダルトン以下、又はその範囲内のいずれかであるべきである。他の実施形態では、前記断片の分子量は、約300ダルトン〜約40,000ダルトンまで、約8,000ダルトン〜約30,000ダルトンまで、約10,000ダルトン〜約20,000ダルトンまでの範囲、又はその範囲内のいずれかである。
【0062】
PEAと混合できるポリマー類の例としては、ポリアクリレート類、例えば、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、及びポリ(エチルメタクリレート−コ−ブチルメタクリレート);フッ素化ポリマー類又はコポリマー類、例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)、及びポリ(フッ化ビニリデン―コ―ヘキサフルオロプロペン);ポリ(N−ビニルピロリドン);ポリ(ヒドロキシ吉草酸);ポリ(L−乳酸);ポリカプロラクトン;ポリ(ラクチド―コ―グリコライド);ポリ(ヒドロキシ酪酸);ポリ(ヒドロキシ酪酸―コ―吉草酸);ポリジオキサノン;ポリオルトエステル;ポリ酸無水物;ポリ(グリコール酸);ポリ(D,L−乳酸);ポリ(グリコール酸―コ―トリメチレンカーボネート);ポリリン酸エステル;ポリリン酸エステルウレタン;ポリ(アミノ酸類);シアノアクリレート類;ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(イミノカーボネート);コ−ポリ(エーテル−エステル類);ポリアルキレンオキサラート類;ポリホスファゼン類;生体分子類、例えば、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、及びヒアルロン酸;ポリウレタン類;シリコーン類;ポリエステル類;ポリオレフィン類;ポリイソブチレン、及びエチレン−αオレフィンコポリマー類;ハロゲン化ビニルポリマー類及びコポリマー類、例えば、ポリ塩化ビニル;ポリビニルエーテル類、例えば、ポリビニルメチルエーテル;ポリ塩化ビニリデン;ポリアクリロニトリル;ポリビニルケトン類;ポリビニル芳香族類、例えば、ポリスチレン;ポリビニルエステル類、例えば、ポリ酢酸ビニル;ビニルモノマー類同士のコポリマー及びビニルモノマーとオレフィン類とのコポリマー、例えば、ポリ(エチレン―コ―ビニルアルコール)(EVAL)、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー類、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂類、及びエチレン−酢酸ビニルコポリマー類;ポリアミド類、例えば、ナイロン66、及びポリカプロラクタム;アルキド樹脂類;ポリカーボネート類;ポリオキシメチレン類;ポリイミド類;ポリエーテル類;エポキシ樹脂類;ポリウレタン類;レーヨン;レーヨン−トリアセテート;セルロース、酢酸セルロース;酪酸セルロース;酢酸酪酸セルロース;セロファン;硝酸セルロース;プロピオン酸セルロース;セルロースエーテル類;並びにカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
PEA−薬剤の組み合わせ
本発明の治療薬類は、PEAにペンダント基として又は鎖内の基として結合するか、あるいはPEAポリマーと物理的に混合する。前記薬剤は、高分子量の薬剤でであり、それをペンダント基として又は鎖内の基として結合させることもできると認識すべきである。
【0064】
I.ペンダント基としての前記薬剤
本発明のポリマーは、A部分(A)、B部分(B)、及びAとBをつなぐ任意の結合(L1)を有するポリマー部分を含むことができる。ポリマーの残部は、薬剤(X)、及びXとポリマーとをつなぐ結合(L2)を含む。このPEA−治療薬の組み合わせは一般に式(XI)で表すことができる:
【化11】

【0065】
式(XI)中、A及びBはいずれも独立して選択され、そしてモノマー類のいずれかの組み合わせを含むことができ、そうすることで、ポリマーは少なくとも1つのエステル基と1つのアミド基を有する。幾つかの実施形態では、エステルとアミドが隣接している。場合により、AとBはL1で結合し、これらは、置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、分枝脂肪族ラジカル、環状脂肪族ラジカル、飽和脂肪族ラジカル、又は不飽和脂肪族ラジカル;並びに置換若しくは非置換の芳香族ラジカルである。幾つかの実施形態では、L1は、約0個〜約50個の炭素原子、約2個〜約40個の炭素原子、約3個〜約30個の炭素原子、約4個〜約20個の炭素原子、約5個〜約10個の炭素原子、及びこの中のいずれかの範囲を含むことができる。他の実施形態では、L1は、あるいは、非炭素種、例えばジスルフィドを代替的に含む。別の実施形態では、Rは、置換又は非置換のポリ(アルキレングリコール類)を含み、例えば、PEG、PEG誘導体、例えばmPEG、ポリ(エチレンオキサイド)、PPG、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(エチレンオキサイド−コ−プロピレンオキサイド)、又はこれらのコポリマー類及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、ポリ(アルキレングリコール)はPEGである。他の実施形態では、ポリ(アルキレングリコール)は、PEG誘導体、例えばmPEGを含んでいてよい。別の実施形態では、Rは、PEGのコポリマー、又はPEG誘導体、例えばmPEGのコポリマーを含むことができる。
【0066】
幾つかの実施形態では、Xはまた任意であり、そしてL2によってポリマーに結合することも可能であって、いずれかのユニット間結合、例えば、エステル、無水物、アセタール、アミド、ウレタン、尿素、グリコシド、ジスルフィド、及びシロキサン結合である。当業者は、これらの結合のうち幾つかが、本発明の幾つかの実施形態で使用できないことを認める必要があると認識すべきである。
【0067】
2の選択により、Xとポリマー部分との間の結合の相対的な強度又は安定性を、ポリマー部分内の結合の強度又は安定性と比較して制御する。この相対的な強度又は安定性に関する制御は、治療薬をポリマー部分から放出することを可能にするものであり、前記治療薬は結合分子を実質的に含まない。薬剤Xは、生物学的に有益であるか、生物活性があるか、診断に役立つか、又はこれらの特徴の組み合わせを有し、また先に詳述している。
【0068】
幾つかの実施形態では、Aは、式(XII)で表すことができ:
【化12】

そして他の実施形態では、Bは式(XIII)〜(XV)のうちいずれかで表すことができる;
【化13】

【化14】

【化15】

前記式中、R1及びR5は任意でであり、そして更に、置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、分枝脂肪族ラジカル、環状脂肪族ラジカル、飽和脂肪族ラジカル、又は不飽和脂肪族ラジカル;あるいは置換芳香族ラジカル、非置換芳香族ラジカル、又はヘテロ−芳香族ラジカルから独立して選択することも可能であり;R3及びR8は、置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、分枝脂肪族ラジカル、環状脂肪族ラジカル、飽和脂肪族ラジカル、又は不飽和脂肪族ラジカル;あるいは置換芳香族ラジカル、非置換芳香族ラジカル、又はヘテロ−芳香族ラジカルから独立して選択することも可能であり;R2及びR4は、水素;置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、分枝脂肪族ラジカル、環状脂肪族ラジカル、飽和脂肪族ラジカル、又は不飽和脂肪族ラジカル;あるいは置換芳香族ラジカル、非置換芳香族ラジカル、又はヘテロ−芳香族ラジカルから独立して選択することも可能であり;R6は、置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、又は分枝脂肪族ラジカルから選択することも可能であり;R7及びR9は、水素;置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、分枝脂肪族ラジカル、環状脂肪族ラジカル、飽和脂肪族ラジカル、又は不飽和脂肪族ラジカル;及び置換又は非置換の芳香族ラジカルから独立して選択することも可能であり;R10〜R15は、水素;置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、分枝脂肪族ラジカル、環状脂肪族ラジカル、飽和脂肪族ラジカル、又は不飽和脂肪族ラジカル;あるいは置換芳香族ラジカル、非置換芳香族ラジカル、又はヘテロ−芳香族ラジカルから独立して選択することも可能であり;mは、約4〜約1400まで、約10〜約800まで、約20〜約400までの範囲、又はこの範囲内のいずれかの範囲であることができ;nは、約3〜約1400まで、約10〜約800まで、約20〜約400までの範囲、又はこの範囲内のいずれかの範囲であることができ;mとnとの和は、約30〜約1600まで、約50〜約1200まで、約75〜約900まで、約100〜約600までの範囲、又はこの範囲内のいずれかの範囲である。幾つかの実施形態では、R10基〜R15基は、水素に限定される。他の実施形態では、R1はR5と等しくない。
【0069】
本発明のポリマー類は、一般に次の方法で調製する;ポリエステル系付加物は、アミノ酸をジオールと混合することによって調製される。幾つかの実施形態では、アミノ酸は、二官能アミノ酸である。前記ポリエステル付加物は、多官能アミノ酸、二塩基酸又は二塩基酸の誘導体、及び薬剤と混合する。ペプチド系付加物が望ましい実施形態では、2つのアミノ酸を、例えば、一方のアミノ酸が二官能であり、そして他方が多官能であるように独立して選択して混合する。多官能アミノ酸の一例は、三官能アミノ酸である。三官能アミノ酸の例としては、リシン、チロシン、アルギニン、又はグルタミン酸が挙げられるが、これらに限定されない。二塩基酸の例としては、先に列挙したジカルボン酸類が挙げられるが、これらに限定されない。二塩基酸の誘導体類の例としては、二塩基酸クロライド、二無水物、又はジ−p−ニトロフェニルエステルが挙げられるが、これらに限定されない。ジカルボン酸を使用する場合、前記反応は、1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)又は1,3−ジシクロヘキシルカルボイジイミド(DCC)の存在下、溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)又はテトラヒドロフラン(THF)の中で行ってよい。二塩基酸クロライド又はジ−p−ニトロフェニルエステルを使用する場合、過剰のピリジン又はトリエチルアミンを含む必要がある。使用できる他の溶媒の例としては、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、及びジオキサンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
前記反応条件は、無水であって、アミノ酸のカルボキシル基のエステル化を促進する必要がある。幾つかの実施形態では、反応溶媒類には、トルエン及びベンゼンが挙げられ、蒸留して水を除去する必要がある。前記反応は、強酸又は強塩基、例えば、p−トルエンスルホン酸(TsOH)によって触媒作用する。幾つかの実施形態では、反応温度は、約25℃〜約150℃まで、約35℃〜約100℃まで、約50℃〜約80℃までの範囲、又はこれらの中のいずれかの範囲である。幾つかの実施形態では、反応時間は、約1時間〜約24時間まで、約6時間〜約18時間まで、約10時間〜約14時間までの範囲、又はこれらの中のいずれかの範囲である。上述のあらゆる薬剤を使用する。
【0071】
三官能アミノ酸類は、第三の官能基を、後で取り外す保護基を用いて保護することで、ポリマー中に組み込むことができる。保護基の例は、リシンカルボキシルの場合はベンジルエステル類、又はアミノ基、例えばグルタミン酸中のアミノ基の場合はt−ブトキシカルボニルである。幾つかの実施形態では、アミノ酸は、薬剤と結合するように選択されるものであるが、リシンではない。
【0072】
ベンジルエステル保護基は、リシンカルボキシルから、水素ガスを用い、触媒、例えばパラジウム担持炭素又は白金担持炭素による水素化分解によって取り外される。好適な溶媒の例としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、及びTHFが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、前記反応は、約1気圧の水素の下で約6時間〜約24時間、約8時間〜約16時間、約10時間〜約14時間、又はこれらの中のいずれかの範囲で行われる。保護基を取り外した後、アミノ、ヒドロキシル、チオール、又はこれらの組み合わせを含む薬剤を、カルボキシル基に結合する。薬剤を結合するのに用いられる結合剤としては、EDC及びDCCが挙げられるが、これらに限定されない。塩化チオニル又は五塩化リンは、酸クロライド誘導体を調製する選択性の低いプロセスで使用されてもよい。
【0073】
アミン官能性化合物、例えば4−アミノ−TEMPOは遊離カルボキシル類、例えばリシン由来のカルボキシル類を含有するポリマーと、最初にカルボキシル類を活性化してアミンを溶媒中で攪拌しながら結合することにより、結合されてよい。カルボキシル類は、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及びDCCを用いて、溶媒、例えば、THF又はクロロホルム中で活性化され、これにより、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルが生成される。アミンをカルボキシル類に結合するのに使用できる溶媒の例としては、THF及びDMFが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、前記反応は、約5℃〜約50℃まで、約15℃〜約35℃まで、約20℃〜約30℃までの範囲、又はこれらの中のいずれかの範囲の温度で行われる。幾つかの実施形態では、反応時間は、約0.5時間〜約24時間まで、約1時間〜約18時間まで、約4時間〜約16時間まで、約6時間〜約12時間までの範囲、又はこれらの中のいずれかの範囲である。
【0074】
一実施形態では、PEA類の群は、ジオールと、二塩基酸と、2つの独立して選択されたアミノ酸類と、薬剤とを反応させることによって、調製する。得られる生成物は、式(XVI)で表されるPEAである:
【化16】

前記式中、R1及びR5は任意であり、そして更に、置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、分枝脂肪族ラジカル、環状脂肪族ラジカル、飽和脂肪族ラジカル、又は不飽和脂肪族ラジカル;あるいは置換又は非置換の芳香族ラジカルから独立して選択することも可能である。R3基は、置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、分枝脂肪族ラジカル、環状脂肪族ラジカル、飽和脂肪族ラジカル、又は不飽和脂肪族ラジカル;あるいは置換芳香族ラジカル、非置換芳香族ラジカル、又はヘテロ−芳香族ラジカルから選択する。R2及びR4基は、水素;置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、分枝脂肪族ラジカル、環状脂肪族ラジカル、飽和脂肪族ラジカル、又は不飽和脂肪族ラジカル;あるいは置換又は非置換の芳香族ラジカルから独立して選択する。R6基は、置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、又は分枝脂肪族ラジカルである。X基は薬剤であり;並びにn及びmは0ではない整数である。
【0075】
ただし、幾つかの実施形態では、本発明のポリマー類が、式(XVII)で表されるように、A−部分とB−部分とL2とXとの次の組み合わせを含まないことに留意する:
【化17】

【0076】
式(XVII)では、R1基、R3基、及びR5基は、炭素原子数2〜20の直鎖若しくは分枝の飽和脂肪族ラジカルから独立して選択される。R2基及びR4基は、炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝の飽和脂肪族ラジカル;2〜6個の炭素原子と少なくとも1つの不飽和炭素−炭素結合とを有する直鎖若しくは分枝脂肪族ラジカル;2〜6個の炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素三重結合とを有する直鎖若しくは分枝脂肪族ラジカル;フェニルラジカル類;6〜10個の炭素原子と少なくとも1つの芳香環とを有するオルト融合二環式炭素環状ラジカル;又は水素から独立して選択される。X基は、炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝の飽和脂肪族ラジカル;フェニルラジカル;6〜10個の炭素原子と少なくとも1つの芳香環とを有するオルト融合二環式炭素環状ラジカル;又は水素である。下付き文字m及びnは0ではない整数である。
【0077】
本発明の幾つかの実施形態では、エポキシ基を含む二塩基酸は、PEA類を生成するのに使用されない。別の実施形態では、エポキシ基を含む二塩基酸は、PEA類を生成するのに使用されず、その場合、Xと結合するように選択されたアミノ酸はリシンであり、そしてXは4−アミノ−TEMPO又はラパマイシンである。他の実施形態では、R1及びR5がエポキシ基で置換されない場合があり、その場合、R1及びR5は直鎖ブチレン又は直鎖へキシレンラジカルである。他の実施形態では、R1及びR5がエポキシ基で置換されない場合があり、その場合、R1及びR5は直鎖ブチレン又は直鎖へキシレンラジカルであり、またXはTEMPO又はラパマイシンである。その他の実施形態では、R1及びR5がエポキシ基で置換されない場合があり、Xが4−アミノ−TEMPO又はラパマイシンであれば、R1及びR5は直鎖ブチレン又は直鎖へキシレンラジカルであり、そしてL2は、XをL2に結合する以前は、次に述べるエステル結合である:
【化18】

【0078】
その他の実施形態では、R1及びR5がエポキシ基で置換されない場合があり、その場合、R1及びR5は直鎖ブチレン又は直鎖へキシレンラジカルであり、そして
(i)XはTEMPOであり、及びL2は次のもの:
【化19】

であるか、又は(ii)Xはラパマイシンであり、そしてL2は次のものである:
【化20】

【0079】
その他の実施形態では、PEAがポリカルボン酸から生成されない場合があり、ポリカルボン酸は2,3−エポキシコハク酸、3,4−エポキシアジピン酸、又はジエポキシアジピン酸であって、その場合、Xと結合するように選択された前記アミノ酸はリシンであり、そしてXは4−アミノ−TEMPO又はラパマイシンである。別の実施形態では、R1はR5と同じではない。
【0080】
式(XVII)中、L2はエステルであり、これは、幾つかの実施形態では望ましくない場合がある。以下に例示及び説明するように、L2を注意深く選択することで、ポリマーの生分解中にXの誘導体の生成を引き起こす規制問題の緩和に役立つ。L2の例としては、アミド類、エステル類、無水物類、ケタール類、アセタール類、オルトエステル類、及びあらゆる芳香族カーボネート類が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、L2はエステル、無水物、ケタール、アセタール、オルトエステル、又はあらゆる芳香族カーボネートである。幾つかの実施形態では、L2は無水物、ケタール、アセタール、オルトエステル、又はあらゆる芳香族カーボネートである。幾つかの実施形態では、L2はケタール、アセタール、オルトエステル、又はあらゆる芳香族カーボネートである。幾つかの実施形態では、L2はアセタール、オルトエステル、又はあらゆる芳香族カーボネートである。幾つかの実施形態では、L2はオルトエステル又はあらゆる芳香族カーボネートである。幾つかの実施形態では、L2はあらゆる芳香族カーボネートでであり、これには、式(XVIII)で表される部分を含む結合が包含される:
【化21】

前記式中、Rは任意であって、例えば、置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、分枝脂肪族ラジカル、環状脂肪族ラジカル、飽和及び不飽和の脂肪族ラジカル;置換及び非置換の芳香族ラジカル;ならびにこれらの組み合わせから独立して選択する。下付き文字nは、0ではない整数である。
【0081】
幾つかの実施形態では、PEAは、式(XIX)で表される:
【化22】

前記式中、n、m及びrは、0ではない整数である。式(XIX)中、ジオールはヘキサン−1,6−ジオールであり、二塩基酸はセバシン酸であり、一方のアミノ酸はロイシンであり、他方のアミノ酸はリシンであり、そして薬剤はmPEGである。mPEGは、B−部分にアミド結合によって結合されており、これは、ポリマーの残部の安定性と比べると安定な結合である。
【0082】
式(XX)は、アミド結合を有するポリマーを表す。ただし、幾つかの実施形態では、式(XX)で表されるPEAは、本発明の範疇ではないことに留意する:
【化23】

前記式中、n及びmは0ではない整数である。式(XX)中、ジオールはブタン−1,6−ジオールであり、二塩基酸はセバシン酸であり、一方のアミノ酸はロイシンであり、他方のアミノ酸はリシンであり、そして薬剤はTEMPOである。TEMPOは、B−部分にアミド結合によって結合されており、これは、ポリマーの生分解中に影響を受けず、結果として別の分子をTEMPOに結合し、これがエステル結合でのポリマーの分解を引き起こした。その結果、こうして放出される薬剤は、TEMPOよりむしろTEMPOの誘導体であって、規制問題を引きこす可能性がある。
【0083】
幾つかの実施形態では、PEAは式(XXI)で表される:
【化24】

【0084】
前記式中、n及びmは0ではない整数である。式(XXI)中、ジオールはブタン−1,6−ジオールであり、二塩基酸はセバシン酸であり、一方のアミノ酸はロイシンであり、他方のアミノ酸はリシンであり、そして薬剤はTEMPOである。TEMPOは、エステル結合によってB−部分に結合されており、これはアミド結合よりも更に不安定で、ポリマーからの薬剤の放出を可能にする。L2エステルの切断は、PEAエステル類の切断と競って、別の分子を、エステル結合でのポリマーの分解から派生したTEMPOと結合させる。
【0085】
幾つかの実施形態では、PEAは式(XXII)で表される:
【化25】

【0086】
前記式中、n及びmは0ではない整数である。式(XXII)中、ジオールはブタン−1,6−ジオールであり、二塩基酸はセバシン酸であり、一方のアミノ酸はロイシンであり、他方のアミノ酸はリシンであり、そして薬剤はTEMPOである。TEMPOは、無水物結合によってB−部分に結合されており、これはエステル結合よりも更に不安定であり、そしてそれ故に、エステル結合でのポリマーの生分解に由来する別の分子を結合させずに薬剤を放出させる場合がある。
【0087】
別の実施形態では、ジペプチド断片を含むPEA類の群は、ジオールと二塩基酸と2つの異なるアミノ酸と薬剤とを反応させることによって調製する。得られる生成物は、式(XXIII)で表されるPEAである:
【化26】

前記式中、R1及びR5は任意でであり、そして更に、置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、分枝脂肪族ラジカル、環状脂肪族ラジカル、飽和又は不飽和の脂肪族ラジカル;あるいは置換芳香族ラジカル、非置換芳香族ラジカル、又はヘテロ−芳香族ラジカルから独立して選択することも可能であり;R3は、置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、分枝脂肪族ラジカル、環状脂肪族ラジカル、飽和脂肪族ラジカル、又は不飽和脂肪族ラジカル;あるいは置換芳香族ラジカル、非置換芳香族ラジカル、又はヘテロ−芳香族ラジカルから独立して選択することも可能であり;R2、R4、及びR7は、水素;置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖脂肪族ラジカル、分枝脂肪族ラジカル、環状脂肪族ラジカル、飽和又は不飽和の脂肪族ラジカル;あるいは置換芳香族ラジカル、非置換芳香族ラジカル、又はヘテロ−芳香族ラジカルから独立して選択することも可能であり;R6は、置換脂肪族ラジカル、非置換脂肪族ラジカル、ヘテロ脂肪族ラジカル、直鎖又は分枝脂肪族ラジカルから選択することも可能であり;Xは薬剤であることができ;mは、約4〜約1400までの範囲であることができ;nは、約3〜約1400までの範囲であることができ;そしてmとnとの和は、約30〜約1600までの範囲である。
【0088】
幾つかの実施形態では、PEAは式(XXIV)で表される:
【化27】

【0089】
前記式中、n、m、及びrは0ではない整数である。式(XXIV)中、ジオールはヘキサン−1,6−ジオールであり、二塩基酸はセバシン酸であり、一方のアミノ酸はロイシンであり、他方のアミノ酸はリシンであり、XはMpegであり、そしてL2はアミドであって、これはポリマーの残部の安定性と比べると安定である。
【0090】
いくつかの実施形態では、PEAは式(XXV)で表される:
【化28】

前記式中、n及びmは0ではない整数である。式(XXV)中、ジオールはブタン−1,4−ジオールであり、二塩基酸はセバシン酸であり、一方のアミノ酸はロイシンであり、他方のアミノ酸はリシンであり、Xはエストラジオールであり、そしてL2は、3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ―[5,5]―ウンデカン(DETOSU)として既知のオルトエステルであって、これはエステルよりも更に不安定である。
【0091】
ポリマーを作製するために、オリゴ−又はポリエステル系ジアミノ付加物を、先に説明したようにしてロイシンとブタン−1,4−ジオールとを混合して、作製する。1当量のグリセロールを2当量のロイシンと混合して、アミノ末端処理されたポリマーサブユニットを得ることができる。次いで、このポリエステル系ジアミノ付加物を、セバシン酸及びアミノ末端処理したポリマーサブユニットと混合して、ヒドロキシ官能性PEAを得ることができる。エストラジオールは、3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ―[5,5]―ウンデカン(DETOSU)と混合することで、エストラジオール−DETOSU付加物を形成する。ヒドロキシ官能性PEAは、エストラジオール−DETOSU付加物と反応してPEA−薬剤の組み合わせを形成する。
【0092】
高分子量の薬剤、例えばヘパリンは、PEAにグラフトコポリマーとして結合する。ポリマー主鎖にペンダントアミノ基を有するPEAは、方法であって、ビス−(L−ロイシン)−1,6−へキシレンジエステルをジ−p−ニトロフェニルセバケート及びε−カルボベンゾキシ−L−リシンと、好適な溶媒、例えば、DMF又はTHFの中で重合させることを含んで成る方法で生成される。反応温度は、約25℃〜約150℃まで、約50℃〜約125℃まで、約80℃〜約100℃までの範囲、又はこの中のいずれかの範囲である。この反応は、約1時間〜約24時間まで、約6時間〜約18時間まで、約10時間〜約14時間までの範囲、又はこれらの中のいずれかの範囲の時間行う。カルボベンゾキシ保護基は、パラジウム担持炭素触媒による水素化分解によって、上述の方法を用いて取り外すことができる。ヘパリン−アルデヒド付加物は、還元アミノ化により、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)とDMF/水溶媒を用いて結合することもできる。
【0093】
II.ポリマーブロックとしての薬剤
高分子量の薬剤は、PEAにブロックコポリマーとして結合する。PEA類にポリマーブロックとして組み込むことができる薬剤の例としては、ヘパリン、ヒアルロン酸、及びポリ(エチレングリコール)(PEG)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
1.ヘパリン又はヒアルロン酸ブロック(類)を含むPEA類
PEAとヘパリンのブロックコポリマーは、アミノ末端処理されたPEAをヘパリン−アルデヒド付加物と混合することによって調製する。ヘパリン−アルデヒド付加物の例は、式(XXVI)で表される:
【化29】

前記式中、mは0ではない整数である。
【0095】
ヘパリン−アルデヒド付加物は、アミノ末端処理されたPEAとDMF/水溶媒中で混合した後、NaCNBH3で還元して、式(XXVII)で表される次のPEA−ヘパリンコポリマー構造物を生成する。
【化30】

前記式中、mは0ではない整数である。
【0096】
アミノ末端処理されたPEAを調製する一つの方法は、アミノ末端処理されたサブユニットの合計と二塩基酸又は二塩基酸誘導体との1対1の化学量論から生成することを含む。最も高い分子量を得るためには、二塩基酸又は二塩基酸誘導体の化学量論を、アミノ末端処理されたサブユニット類の合計に対して1対1に維持する。というのも、どちらかの構成成分が過剰であれば、より低分子量のアミノ末端処理されたPEAがもたらされるためである。
【0097】
アミノ末端処理されたPEAを調製する別の方法は、アミノ末端処理されたサブユニットと二塩基酸又は二塩基酸誘導体との化学量論を1対1に維持することを含み、重合は、予め決められた時間で進行させる。重合は、過剰の反応性ジアミン、例えば1,4−ブタンジアミンを導入することで停止する。全てのカルボキシル末端基は末端処理されており、そしてあらゆる未反応の二塩基酸又は二塩基酸誘導体は使い果たされる。あらゆる低分子量材料は、前記ポリマーを当業者に既知の好適な溶媒に再沈殿させることによってポリマーから分離する。
【0098】
先に示したPEA−ヘパリンコポリマーは、AB−ブロックコポリマーである。AB−型コポリマーは、これら2つのポリマーが単一活性末端部のみを有する場合にもたらされる。本発明の方法では、薬剤ポリマー及びPEAポリマーのうち一方の又は両方の末端部を活性化させることによってABコポリマー、ABAコポリマー、又はABABAB…マルチブロックコポリマーを製造するように設計する。ABA型コポリマーは、一方のポリマーが1つの活性末端部を有し、そして他方のポリマーが2つの活性末端部を有する場合にもたらされる。ABABAB…型コポリマー類は、両方のポリマーが2つの活性末端部を有する場合にもたらされる。
【0099】
PEAとヘパリンとのブロック−コポリマーは、カルボキシル末端処理されたPEAをヘパリン−アルデヒド付加物と混合することによって調製する。ヘパリンは、最初に、例えばEDC又はDCCで活性化した後、大過剰のアジピン酸ジヒドラジドと混合することで、アミノ官能化ヘパリンが調製される。あるいは、ヘパリン−アルデヒド付加物は、アンモニア又はn−ブチルアミンを用いて、還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素カリウム(KBH4)、又はNaCNBH3の存在下で処理することもできる。このカルボキシル末端処理されたPEAを、例えばEDC又はDCCを用いて活性化して、アミノ官能性ヘパリンと混合する。
【0100】
本発明の幾つかの実施形態では、薬剤は、PEAポリマーの生体適合性又は非吸着抑制(non-fouling)特性を増強するいずれかの生物学的に役に立つ薬剤であってよいと認識すべきである。例えば、ヒアルロン酸は、PEA−ヒアルロン酸コポリマーを形成するのに用いられる高分子量の薬剤である。ヒアルロン酸は遊離カルボキシル基を有するため、ヒアルロン酸−アルデヒド付加物は、例えば、ヒアルロン酸を亜硝酸又は過ヨウ素酸塩で酸化することによって作製することも可能である。ヒアルロン酸−アルデヒド付加物は、その後、上述のようにしてPEAと混合する。
【0101】
カルボキシル末端処理とアミノ末端処理を両方行ったPEAは、標準分析法を用いて分析して、カルボキシル基とアミノ基との比を求めることができる。この比を知ることで、当業者は、高分子量の薬剤をPEAのアミノ末端部に結合するか又はPEAのカルボキシル末端部に結合するかを決定する。当業者は、PEA上のアミノ基を、例えば無水酢酸で保護して、カルボキシル末端処理されたPEAをヘパリン−アルデヒド付加物と混合する際に望ましくない付随的な共役(side conjugation)を軽減する。
【0102】
2.ポリ(エチレングリコール)ブロック(類)含有PEA類
PEAとPEGとのブロックコポリマーは、様々な技術を用いて調製する。一実施形態では、アミノ末端処理されたPEAを、カルボキシル末端処理されたPEA(ネクター社(Nektar Corp.))と、例えばEDC又はDCCの存在下で混合して、式(XXVIII)で表される次の構造物を形成する:
【化31】

前記式中、mは0でない整数である。
【0103】
別の実施形態では、mPEGのスクシンイミジル誘導体(ネクター社(Nektar Corp.))又はイソシアネート末端処理されたmPEG(ネクター社)のいずれかを、アミノ末端処理されたPEAと、当業者に既知の条件下で反応させる。別の実施形態では、カルボキシル末端処理されたPEAのカルボキシル基を、例えばEDC又はDCCで活性化して、アミノ末端処理されたmPEG(ネクター社)と化合する。別の実施形態では、アミノ末端処理されたmPEGを高分子量のPEAと酸性又は塩基性触媒の存在下で高分子量PEA中のエステル基をアミノ化することによって化合する。別の実施形態では、アミノ末端処理されたPEAを、メタクリレート末端処理されたmPEG(ネクター社)と、熱的な遊離基分解又は光分解性の遊離基分解を行うことが可能な反応開始剤の存在下で化合する。好適な反応開始剤類の例としては、ベンジル−N,N−ジエチルジチオカルバメート又はp−キシレン−N,N−ジエチルジチオカルバメートが挙げられる。別の実施形態では、アミノ末端処理されたPEAをエチレンオキサイドとリビング重合反応で化合し、前記リビング重合反応は、活動し続ける終わりのないアニオン性重合であって、純粋な系を維持することによって制御される。リビング重合反応は、末端処理剤、例えば水を加えることによって停止する。
【0104】
以下の実施例を、本発明の実施形態を更に例示するために提示する。
【0105】
実施例1
式(XXIV)のPEAは、次の手順に従って調製する:
L−ロイシン―ε―L−リシンベンジルエステル−2TosOHの調製方法
【0106】
L−ロイシン―ε―L−リシンHCl(ニュー・イングランド・ペプチド社(New England Peptide, Inc.))(73.86グラム、0.25モル)と、p−トルエンスルホン酸(152.15グラム、0.80モル)と、ベンジルアルコール(100.9ml、0.97モル)と、ベンゼン200mlとを、機械的攪拌機、ディーン・スターク・トラップ、温度計、及びアルゴン導入口を装備した1リットルの反応フラスコに加える。この混合物を80℃で8時間加熱して、縮合物をディーン・スターク・トラップに回収する。この混合物を2リットルのフラスコに移して、酢酸エチル1リットルをこの混合物に攪拌しながら添加する。この混合物を4℃で一晩貯蔵して、L−ロイシン―ε―L−リシンベンジルエステル−2TosOHをろ過により単離する。
【0107】
コ−ポリ−{[N,N’−セバコイル―ビス―(L−ロイシン)−1,6−へキシレンジエステル]−[N,N’−セバコイル―L−ロイシン−L−リシンmPEGアミド}の調製方法
乾燥トリエチレンアミン(61.6ml、0.44モル)を、ビス−(L−ロイシン)−1,6−ヘキシレンジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩(120.4グラム、0.18モル)と、L−ロイシン−ε―L−リシンベンジルエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩(13.863グラム、0.02モル)と、ジ−p−ニトロフェニルセバシネート(88.88グラム、0.2モル)との乾燥DMC(110ml)中の混合物に加える。この混合物を80℃で12時間攪拌して加熱する。この混合物を、次に室温まで冷却し、エタノール(300ml)で希釈して、水1リットルに流し入れる。ポリマーを分離し、水洗いして、真空乾燥させる。遊離カルボキシル基が、パラジウム触媒による水素化分解によって生じる。エタノール(1200ml)とポリマー(100mg)を、2リットルのフラスコに、パラジウム担持炭素触媒(5グラム)(アルドリッチ(Aldrich))と共に加える。水素をバブリングさせて、混合物全体を24時間攪拌して、パラジウム担持炭素触媒を遠心分離法によって分離して溶液を残す。
【0108】
この溶液をヘキサン/酢酸エチル(50/50混合物10リットル)に攪拌しながら加えることで、コ−ポリ−{[N,N’−セバコイル―ビス―(L−ロイシン)−1,6−へキシレンジエステル]−[N,N’−セバコイル―L−ロイシン−L−リシン]}を沈殿させる。このポリマーをろ過して、2リットルのフラスコ内でTHF(1500ml)に攪拌及びアルゴンパージしながら溶解した(50グラム)後、N−ヒドロキシスクシンイミド(1.32グラム、0.0115モル)及びジクロロヘキシルカルボジイミド(2.37グラム、0.0115モル)と混合する。この組み合わせを周囲温度で24時間攪拌し、ろ過して1,3−ジシクロヘキシルウレアを除去する。濾液を、アミノ末端処理されたmPEG(MW5000、46グラム、0.0092モル)(ネクター社(Nektar Corp.))と、2リットルのフラスコ内で混合し、アルゴン下で6時間攪拌する。コ−ポリ−{[N,N’−セバコイル―ビス―(L−ロイシン)−1,6−へキシレンジエステル]−[N,N’−セバコイル―L−ロイシン−L−リシンmPEGアミド]}は、ヘキサン/酢酸エチル(50/50)溶液を攪拌しながら徐々に加えることで沈殿する。理論又は作用機序に束縛されたくはないが、本発明の一実施形態に従って式(XVII)のポリ(エステルアミド)(PEA)を調製するための推奨される反応機構を図1に示す。
【0109】
実施例2
式(XIX)で表されるコポリマーは、式(XXIV)で表されるコポリマーを調製するのに用いられる方法と類似した方法において、L−ロイシン−ε―L−リシンHClをL−リシンHClと置き換えることで調製する。理論又は作用機序に束縛されたくはないが、本発明の一実施形態に従って式(XIX)のPEAを調製するための推奨される反応機構を図2に示す。
【0110】
実施例3
式(XXII)のPEAは、次の手順に従って調製する:
コ−ポリ−{[N,N’−セバコイル―ビス―(L−ロイシン)−1,4−ブチレンジエステル]−[N,N’−セバコイル―L−リシン−4−カルボキシ−TEMPO無水物]}の調製方法
【0111】
乾燥トリエチルアミン(61.6ml、0.44モル)を、ビス−(L−ロイシン)−1,4−ブチレンジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩(118.82グラム、0.18モル)と、L−リシンベンジルエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩(11.603グラム、0.02モル)と、ジ−p−ニトロフェニルセバシネート(88.88グラム、0.2モル)との乾燥DMAC(110ml)中の混合物に加える。この混合物を、80℃で12時間攪拌及び加熱して、室温まで冷却して、エタノール(300ml)で希釈して、水(1リットル)に流し入れる。ポリマーを分離し、水洗いして、真空乾燥させる。遊離カルボキシル基が、パラジウム触媒による水素化分解によって生じる。エタノール(1200ml)を、ポリマー(100g)及びパラジウム担持炭素触媒と2リットルのフラスコ中で混合する。水素をバブリングさせて、溶液全体を24時間攪拌する。触媒を遠心分離法によって分離して溶液を残す。この溶液を、ヘキサン/酢酸エチル(10リットル、50/50)に攪拌しながら徐々に加えることで、コ−ポリ−{[N,N’−セバコイル―ビス―(L−ロイシン)−1,6−へキシレンジエステル]−[N,N’−セバコイル―L−リシン]}を沈殿させる。このポリマー(50グラム)をろ過して、2リットルのフラスコ内で乾燥1,1,2−トリクロロエタン(1600ml)に溶解して攪拌し、そして無水酢酸(2.24グラム、0.022モル)及び4−カルボキシル−TEMPO(4.01グラム、0.02モル)をこの2リットルのフラスコに加える。この混合物を真空蒸留してDMFを80℃で除去し、そして十分な量の熱を加えて、約5ml/分の蒸留速度を達成する。この溶液を2時間攪拌させて、室温まで冷却し、そしてコ−ポリ−{[N,N’−セバコイル―ビス―(L−ロイシン)−1,4−ブチレンジエステル]−[N,N’−セバコイル―L−リシン−4−カルボキシ−TEMPO無水物]}を、ヘキサン/酢酸エチル(4リットル、50/50)にこの溶液を攪拌しながら徐々に加えることで沈殿させる。
【0112】
実施例4
式(XXV)のPEAは、次の手順に従って調製する:
エストラジオールと3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−[5,5]−ウンデカン(DETOSU)との複合物の調製方法
【0113】
乾燥THF(40ml)を、DETOSU(5グラム、0.0236モル)及びTHF中1%のp−トルエンスルホン酸6滴と、100mlフラスコ内で混合する。エストラジオール(6.42グラム、0.0236モル)のTHF(20ml)溶液を1時間かけて攪拌しながら徐々に加える。エストラジオール−DETOSU複合物を回転蒸発により単離する。
【0114】
ビス−(L−ロイシン)−1,3−プロピレンジエステル−2−オンの調製方法
L−ロイシン(32.80グラム、0.25モル)と、p−トルエンスルホン酸(104.6グラム、0.55モル)と、1,3−ジヒドロキシアセトン二量体(22.53グラム、0.125モル)と、ベンゼン200mlとを1リットルフラスコに加える。この溶液を80℃で8時間加熱して、縮合物をディーン・スターク・トラップに回収する。固体を溶媒から回転蒸発により分離して、ブフナー漏斗において水(2回、1回1リットル)ですすぎ、そして真空オーブン内で乾燥させる。
【0115】
コ−ポリ−{[N,N’−セバコイル―ビス―(L−ロイシン)−1,4−ブチレンジエステル]−[N,N’−セバコイル―L−ロイシン−1,3−プロピレンジエステル−2−オン]}の調製方法
【0116】
乾燥トリエチルアミン(61.6ml、0.44モル)を、ビス−(L−ロイシン)−1,4−ブチレンジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩(118.82グラム、0.18モル)と、ビス−(L−ロイシン)−1,3−プロピレンジエステル−2−オンのジ−p−トルエンスルホン酸塩(13.20グラム、0.02モル)と、ジ−p−ニトロフェニルセバシネート(88.88グラム、0.2モル)との乾燥DMAC(110ml)中の混合物に加える。この混合物を、80℃で12時間攪拌及び加熱して、室温まで冷却して、エタノール(300ml)で希釈して、水(1リットル)に流し入れる。ポリマーを分離し、水洗いして、真空乾燥させる。このポリマー(80.35グラム)と、乾燥THF(250ml)と、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(10.49グラム、0.167モル)と、THF中のp−トルエンスルホン酸(1%溶液を6滴)とを500mlフラスコに加える。この混合物を周囲温度で2時間攪拌させて、クロロホルム(500ml)に流し入れ、重炭酸ナトリウム水溶液(250ml、1回1M)で3回抽出する。クロロホルムを回転蒸発により除去し、残りの溶媒は、真空オーブン中で周囲温度において一晩乾燥させて除去する。ポリマー(60グラム)と、乾燥THF(250ml)と、エストラジオール−DETOSU複合物(6.64グラム、0.0137モル)とを500mlフラスコに加えて、室温で2時間攪拌する。ポリマーは、ヘキサン/酢酸エチル(2リットル、50/50)にこの溶液を攪拌しながら徐々に加えることで沈殿する。
【0117】
実施例5
アミノ末端処理されたPEA又はカルボキシル末端処理されたPEAの調製方法
PEAの調製に使用されるモノマー類は、アミノ末端鎖と活性化カルボキシ末端鎖とのおよそ50/50の分布を、重合中のいずれかの点で提供する。アミノ末端処理されたPEA類は、生体適合性を有する低分子量の連鎖停止剤である、1,4−ジアミノブタン(プトレシン)を用いて調製し、前記1,4−ジアミノブタンを大過剰で添加することで、重合終了時、又は重合が所望の分子量に達した時に、鎖を全てアミノ基で末端処理する。カルボキシル末端処理されたPEA類は、幾つかの方法で調製する。一つの方法では、ジカルボン酸化合物、例えば、ジ−p−ニトロフェニルセバシネートを過剰のPEAと化合する。この実施形態は扱い易いが、ポリマーの最終分子量を低くするという、潜在的な欠点を有する。別の方法は、アミノ末端鎖と活性化カルボキシル末端鎖との50/50の分布を含有するPEAを、このPEAを薬剤、例えば無水コハク酸と反応させることで更に誘導体化して、アミノ基をカルボキシル基に変換するものである。
【0118】
アミノ末端されたコ−ポリ−{[N,N’−セバコイル―ビス―(L−ロイシン)−1,6−へキシレンジエステル]−[N,N’−セバコイル―L−リシンベンジルエステル]}の調製方法
【0119】
乾燥トリエチルアミン(61.6ml、0.44モル)を、ビス−(L−ロイシン)−1,6−ヘキシレンジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩(123.86グラム、0.18モル)と、L−リシンベンジルエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩(11.603グラム、0.02モル)と、ジ−p−ニトロフェニルセバシネート(88.88グラム、0.2モル)との乾燥DMAC(110ml)中の混合物に加える。この混合物を、80℃で4時間攪拌及び加熱し、4時間後に1,4−ジアミノブタン(15グラム、0.17モル)を加えて、混合物を80℃で更に1時間攪拌する。この溶液を室温まで冷却して、エタノール(300ml)で希釈して、リン酸緩衝液(2リットル、0.1M、pH7)に流し入れる。ポリマーをろ過によって回収して、クロロホルム(1リットル)中に懸濁して、リン酸緩衝液(0.1M、pH7、1回1リットル)で3回抽出する。クロロホルムを回転蒸発により除去して、アミノ末端処理されたコ−ポリ−{[N,N’−セバコイル―ビス―(L−ロイシン)−1,6−へキシレンジエステル]−[N,N’−セバコイル―L−リシンベンジルエステル]}を、真空オーブン内で周囲温度において一晩乾燥させる。
【0120】
カルボキシ末端処理されたコ−ポリ−{[N,N’−セバコイル―ビス―(L−ロイシン)−1,6−へキシレンジエステル]−[N,N’−セバコイル―L−リシンベンジルエステル]}の調製方法
【0121】
乾燥トリエチルアミン(61.6ml、0.44モル)を、ビス−(L−ロイシン)−1,6−ヘキシレンジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩(123.86グラム、0.18モル)と、L−リシンベンジルエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩(11.603グラム、0.02モル)と、ジ−p−ニトロフェニルセバシネート(88.88グラム、0.2モル)との乾燥DMAC(110ml)中の混合物に加える。この混合物を、80℃で4時間攪拌及び加熱し、4時間後に無水コハク酸(17グラム、0.17モル)を加えて、混合物を80℃で更に1時間攪拌する。この溶液を室温まで冷却して、エタノール(300ml)で希釈して、リン酸緩衝液(2リットル、0.1M、pH7)に流し入れる。ポリマーをろ過によって回収して、クロロホルム(1リットル)中に懸濁して、リン酸緩衝液(0.1M、pH7、1回1リットル)で3回抽出する。クロロホルムを回転蒸発により除去して、カルボキシ末端処理されたコ−ポリ−{[N,N’−セバコイル―ビス―(L−ロイシン)−1,6−へキシレンジエステル]−[N,N’−セバコイル―L−リシンベンジルエステル]}を、真空オーブン内で周囲温度において一晩乾燥させる。この調製によりポリマーが得られるが、この場合、末端基は全てカルボキシルであり、そして末端基の幾つかはp−ニトロフェノール基で更に活性化されている。この基は、例えば、アミノ末端部分とのその後の結合工程に適している。末端基を全て遊離カルボン酸末端基に変換することが望ましい場合、次の工程を合成に加える:無水コハク酸を添加して1時間攪拌してから、L−ロイシン(11.2グラム、0.085モル)とトリエチルアミン(8.59グラム、0.085モル)を添加して、更に1時間攪拌する。
【0122】
実施例6
ヘパリンをアミノ末端処理されたPEAと結合することによる、PEA−ヘパリン複合物の調製方法
PEA−ヘパリン複合物は、アミノ末端処理されたPEAを、ヘパリンの酸化解裂によって形成されたヘパリン−アルデヒド付加物と結合することで調製する。アミノ末端処理されたPEA(50g)を、DMAC/水(1リットル、40:1)を入れた反応器に窒素下で加える。ヘパリン−アルデヒド付加物(7.5g)とシアノ水素化ホウ素塩(0.2g;3.2ミリモル)とをこの溶液に加えて、60℃で12時間窒素下で加熱して、室温まで冷却し、そしてメタノールに滴下する。PEA−ヘパリン複合物をろ過して、水(1回250ml)で3回洗浄して、真空乾燥させる。
【0123】
ヘパリンのD−グルコロン(glucoronic)酸又はL−イズロン酸官能基との、DMAC/水媒体中でのEDCの結合による、PEA−ヘパリン複合物を調製する別法
【0124】
ヘパリン(20g)を、DMAC/水の溶液(450g)及びN−(3’−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(0.2g、1.0ミリモル)と混合する。この溶液を、室温において窒素下で2時間攪拌し、そしてPEA−アミン(50g)をDMAC/水の溶液(40/1; 500g)に加えて、pH4.75で4時間混合する。この溶液を水酸化ナトリウム(0.1M)でpH7.5まで中和して、窒素下で一晩攪拌する。PEA−ヘパリン複合物を、この溶液をTHFに加えることで沈殿させて、ろ過して、水洗いする。
【0125】
実施例7
アミノ末端処理されたPEAを用いたPEA−PEG複合物の調製方法
アミノ末端処理されたPEAは、アルデヒド結合/イミン還元、カルボキシル末端処理されたPEGのカルボジイミド結合、及びPEG−マレイミドとアミン末端処理されたPEAとの結合によってペグ化する。
【0126】
アミノ末端処理されたPEAを、アルデヒド結合/イミン還元により、PEGに結合する。PEA(50g)は、PEGをアミノ末端処理されたPEAと結合させているときに、無水DMAC(230g)に溶解する。PEG−ブチルアルデヒド(MW1000〜50,000、7.5g)をシアノ水素化ホウ素ナトリウム(1.0g)と混合し、室温において窒素下で一晩攪拌する。ポリマーは、この溶液を攪拌しながらメタノールに加えることで沈殿させ、DMAC中に再度溶解し、水中で再沈殿させて、真空乾燥させる。
【0127】
アミノ末端処理されたPEAは、カルボキシル末端処理されたPEGの、DCC/NHS結合を用いたカルボジイミド結合によって、PEGに結合する。アミノ末端処理されたPEA(50g)を無水THF(116g;1〜35%w/w)に加える。無水THF(116g)及びカルボキシル末端処理されたPEG(10kD、7.0g、0.7ミリモル)と、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.15g;7.1ミリモル)(DCC)とを、N−ヒドロキシスクシンイミド(0.10g/8ミリモル)(NHS)を入れた反応器に加えて、混合物を形成する。この混合物を窒素下において室温で2時間攪拌し、そしてアミノ末端処理されたPEA溶液をこの混合物に滴下して、室温で一晩攪拌し、そしてメタノールに滴下して、PEA−PEG沈殿物を形成する。この沈殿物をろ過して、真空乾燥させる。
【0128】
III.PEAポリマーとの物理的ブレンドとしての薬剤
本発明のポリマーは、活性剤とPEAポリマーとの物理的ブレンドである。活性剤は、PEAを溶解するのに用いられる溶媒(単数又は複数)に完全に溶解されてよい。更に、活性剤は、微粒子の懸濁液又は分散液として存在していてよい。水混和性溶媒を使用して、PEAを溶解させる。その結果、活性剤もまた、PEA相中に存在する別の非混和性溶媒相に溶解又は懸濁してもよい。
【0129】
開示された具体的な実施形態は、本発明を単に例示することを意図するものであって、当業者は、特徴を置き換える能力又は開示された特徴を排出する能力をよく理解している。そのようなものとしての本出願人の発明の範囲は、次に述べる添付の特許請求の範囲によって規制されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)二塩基酸とジオールと第1アミノ酸との反応生成物を含む第1ポリ(エステルアミド)ポリマー及び(ii)アミドジオールと二塩基酸との反応生成物を塩基性構成成分として含む第2ポリ(エステルアミド)ポリマーとから成る群より選択されるポリマーと、
治療薬と、
少なくとも一部が水混和性の溶媒と
を含む、組成物。
【請求項2】
前記治療薬が、100グラム/モル〜200,000グラム/モルまでの範囲の低い分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記治療薬が、医薬品、生物製剤、又は画像増強剤のうち少なくとも1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記生物製剤が、細胞、タンパク質、ペプチド、モノクローナル抗体、アミノ酸、又はポリオリゴヌクレオチドのうち1つである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記医薬品が、抗炎症薬、血小板凝集抑制薬、抗凝固薬、抗線溶薬、抗血栓薬、有糸分裂阻害薬、抗菌剤、抗アレルギー剤、抗酸化剤、抗増殖薬、又は抗遊走剤のうち1つである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記画像増強剤が、放射線不透過性色素又は磁気共鳴画像形成剤のうち1つである、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記治療薬が、アクチノマイシンD、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI1、アクチノマイシンX1、アクチノマイシンC1、ダクチノマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩 マイトマイシン、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン類、ヘパリノイド類、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン、プロスラサイクリン類縁体、デキストラン、D−Phe−Pro−Arg−クロロメチルケトン、ジピリダモール、グリコプロテインIIb/IIIa血小板膜受容体拮抗薬抗体、組換えヒルジン、トロンビン阻害剤類、アンジオペプチン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬類、シラザプリル、リシノプリル、ニフェジピン、コルヒチン類、繊維芽細胞増殖因子拮抗薬類、魚油、ω3脂肪酸、ヒスタミン拮抗薬類、ロバスタチン、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体類特異的抗体、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ抑制剤類、プロスタグランジン抑制剤類、スラミン、セロトニン遮断剤類、ステロイド類、チオプロテアーゼ抑制剤類、トリアゾロピリミジン、一酸化窒素、ペミロラストカリウム、遊離基捕捉剤類、一酸化窒素供与体類、ラパマイシン、タクロリムス;40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン;40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン;40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン;テトラゾール含有ラパマイシン類縁体類、エストラジオール、クロベタゾール、イドキシフェン、タザロテン、α−インターフェロン、上皮細胞類、遺伝子改変された上皮細胞類、デキサメタゾン、遊離基2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニロキシ、遊離基4−アミノ−2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニロキシ、遊離基、遊離基4−ヒドロキシ−2,2’,6,6’−テトラメチル−ピペリデン−1−オキシ、遊離基2,2’,3,4,5,5’−ヘキサメチル−3−イミダゾリニウム−1−イルオキシメチルサルフェート、遊離基16−ドキシル−ステアリン酸、スーパーオキシドジスムターゼ擬態、S−ニトロソチオール類、亜硝酸塩類、N−オキソ−N−ニトロサミン類、一酸化窒素合成酵素の基質類、ジアゼニウムジオレート類、スペルミンジアゼニウムジオレート、アセトリオゼート、ジアトリオゼート、ヨージミド、イオグリケート、イオタラメート、ヨーキシタラメート、セレクタン、ウロセレクタン、ジオドン、メトリゾエート、メトリザミド、イオヘキソール、イオキサグレート、イオジキサノール、リピジアル、エチオドール、ガドジアミド、ガドペンテト酸塩、ガドテリドール及びガドベルセタミド、並びにプロドラッグ、代謝物、類縁体、同族体、同類物、誘導体、塩、又はこれらの組み合わせのうち1つである、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記治療薬が、トリエンマクロライド抗生物質又はタキサン抗増殖薬である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記医薬品が、シロリムス、エベロリムス、ABT−578、又はパクリタキセルを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物がコロイド状懸濁液又はエマルションを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が均一な溶液である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1ポリ(エステルアミド)ポリマーの前記二塩基酸が、2〜12個の炭素を有し、そして脂肪族二塩基酸及び不飽和二塩基酸のうち一方を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1ポリ(エステルアミド)ポリマーの前記ジオールが、2〜12個の炭素を有し、そして分枝ジオール及び不飽和ジオールのうち一方を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記第1ポリ(エステルアミド)ポリマーの前記第1アミノ酸が、グリシン、バリン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、又はフェニルアラニンから成る群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記第1ポリ(エステルアミド)ポリマーの第2アミノ酸が、リシン、チロシン、グルタミン酸、及びシステインから成る群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記ジオール及びジアミンのうち一方を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記ジオール又はジアミンが、前記第1ポリ(エステルアミド)ポリマーの主鎖内にあるか又は前記第1ポリ(エステルアミド)ポリマーにペンダントされている、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記第2ポリ(エステルアミド)ポリマーの前記アミドジオールが、ジアミンとヒドロキシ酸との反応生成物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記ジアミンが、プトレシン又はカダベリンのうち一方を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
(a)(i)二塩基酸とジオールと第1アミノ酸との反応生成物を含む第1ポリ(エステルアミド)ポリマー、及び(ii)アミドジオールと二塩基酸との反応生成物を含む第2ポリ(エステルアミド)ポリマーから成る群より選択されるポリマーと、
(b)治療薬と、
(c)少なくとも一部が水混和性の溶媒と
を含む組成物を生理学上の環境へデリバリすることと、
前記ポリ(エステルアミド)ポリマーを含む膜を形成するために前記組成物を相分離させることと
を含み、前記治療薬が前記膜内に含有されていることを特徴とする方法。
【請求項21】
前記治療薬を前記膜から予め決められた期間に亙って前記膜の拡散又は分解のうち一方によって放出することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記治療薬を前記膜から予め決められた期間に亙って前記膜の分解によって放出することが、前記膜からの前記治療薬の線形放出を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記治療薬を前記膜から予め決められた期間に亙って前記膜の分解によって放出することが、前記膜からの前記治療薬の間欠的な放出を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物をデリバリすることが、カテーテルを用いた注射を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記注射が、不安定プラーク、糖尿病、疼痛管理、関節炎、吻合部の肥厚化、又は冠動脈疾患を処置するためである、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物をデリバリすることが、前記組成物をシリンジを用いて皮下又は筋肉内に注射することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
シリンジと、
(a)(i)二塩基酸とジオールと第1アミノ酸とを含む第1ポリ(エステルアミド)ポリマー、及び(ii)アミドジオールと二塩基酸とを含む第2ポリ(エステルアミド)ポリマーから成る群より選択されるポリマーと、(b)治療薬と、(c)溶媒とを含む組成物と
を含み、前記組成物が前記シリンジ内に収容されている、キット。
【請求項28】
カテーテルを更に含む、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
23ゲージ〜27ゲージまでの範囲内のゲージを有する細いゲージ針を更に含む、請求項27に記載のキット。

【公表番号】特表2009−536159(P2009−536159A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506531(P2009−506531)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/009290
【国際公開番号】WO2007/123872
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(307020763)アボット・カーディオヴァスキュラー・システムズ・インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】