説明

部分めっき方法及びその装置

【課題】必要とする部分だけにめっきを行うことを簡便に且つ高速に行う。
【解決手段】被めっき物1におけるめっきを施したい箇所11に電極4を近接させて配置するとともに、上記電極4と該電極4に近接しているめっきを施したい箇所11とにめっき液を接触させ、この状態で電気めっきを行う。電極の近傍に位置しているとともにめっき液が接触する上記めっきを施したい箇所にのみ、めっきを行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被めっき物の一部のみにめっきを行うための部分めっき方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被めっき物の一部のみにめっきを行うめっき方法として、ブラシめっき法やスパージャーめっき法が知られている。これらの中で部分めっきという点について着目されたものとして、前者では特許文献2に、後者では特許文献1に示されたものがある。
【0003】
しかし、被めっき物が例えば図4に示すように、対向している肩部をコンタクト部11,11としている端子1が図の紙面と直交する方向に0.4mmピッチというような狭ピッチで並ぶコネクター用のフープ材である場合、スパージャめっき法では、コンタクト部11部分だけにめっき(金めっき)をすることはできない。
【0004】
ブラシめっき法ではそのブラシ(筆)に該当する部材の形状を端子1の形状に合わせることで、図3に示すようにコンタクト部11部分だけにめっき(金めっき)をすることが可能であるが、フープ材の状態で供給される各端子に均一なめっきを行うことは難しく、更には単位時間当たりの処理数を多くすることは困難である。
【特許文献1】特開2000−345385号公報
【特許文献2】特開平5−132795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、必要とする部分だけにめっきを行うことを簡便に且つ高速に行うことができる部分めっき方法及びその装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る部分めっき方法は、被めっき物におけるめっきを施したい箇所に電極を近接させて配置するとともに、上記電極と該電極に近接しているめっきを施したい箇所とにめっき液を接触させ、この状態で電気めっきを行うことに特徴を有している。電極の近傍に位置して電極との間の電気抵抗が低い上にめっき液が接触する上記めっきを施したい箇所にのみ、めっきを行うことができる。なお、めっき液との接触は、めっき液槽への浸漬で行ってもめっき液の流れを当てることで行ってもよい。
【0007】
被めっき物としては、互いにつながっているとともに対向しているコンタクト部を有する端子であり、該端子におけるコンタクト部がめっきを施したい箇所であるものを好適に用いることができる。
【0008】
そして本発明に係る部分めっき装置は、被めっき物を保持する保持体と、保持体で保持された被めっき物におけるめっきを施したい箇所の近傍に電極を位置させる電極保持体と、上記被めっき物におけるめっきを施したい箇所と該箇所の近傍に位置する電極とにめっき液を接触させるめっき液供給手段とからなることに特徴を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極の近傍に位置する部分だけにめっき処理を行うことができるものであり、めっきを施したくない箇所にはめっきがなされないために、貴金属めっきを行う場合の貴金属の使用量を削減することができる上に、不要な部分にまで付着しためっきを剥がすというようなことをする必要もなく、また短時間に多くの処理を行うことに何ら困難はなく、必要とする部分だけにめっきを行うことを簡便に且つ高速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、図1は被めっき物である端子1を示しており、対向している肩部をコンタクト部11,11としたコネクター用の該端子1は、0.4mmピッチというような狭ピッチで多数が並ぶフープ材の状態でそのコンタクト部11に対し、めっきが施される。図中12は対向するコンタクト部11,11を連結しているばね弾性を備えた片、13は一方のコンタクト部11側から伸びるとともにコネクターボディ(図示せず)などに固定される固定片、14は固定片13から更に延出された外部接続用の接続片である。該接続片14はコネクターボディから外側方に突出して、回路基板上の回路パターンに半田付けなどによって接続される。
【0011】
このコネクター用の端子1は、対応するコネクターの端子におけるコンタクト部が上記コンタクト部11,11に嵌り込んでコンタクト部11に接触することによってコネクター間の電気的接続及び機械的連結がなされる。
【0012】
図2は上記端子1(フープ材)を保持する保持体2を示しており、該保持体2は、端子1における上記接続片14側の端部間を相互に連結してフープ材としている部分を保持するもので、この保持体2で保持されている各端子1における対向しているコンタクト部11,11間に先端を位置させる電極(陽極電極)4を各端子1毎に設けている。図中7は電極4を保持している電極保持部材である。
【0013】
上記端子1のコンタクト部11,11へのめっきは、端子1を電気的な陰極とするとともに電極4をコンタクト部11,11間に位置させた状態でコンタクト部11にめっき液を接触させることで行う。このめっき液への接触は、めっき液に浸漬することで行っても、めっき液の流れをコンタクト部11に当てることで行ってもよい。
【0014】
この時、電極4に印加する電圧及び電極4からめっき液を通じて端子1へと流れる電流を適宜調節することにより、電極4の近傍に位置するコンタクト部11のみにめっきを施すことができる上に、1分間に7〜8mのめっき処理を行うことができ、しかもコンタクト部11に形成されるめっき層10は、図3に示すように電極4と対向する対向面での厚みをコンタクト部11の背面側よりも厚くすることができる。
【0015】
このために上記固定片13や片12などにめっきがなされることがないものであり、また、固定片13にめっき層10があると、上記接続片14を回路パターンに半田付けする際に固定片13上のめっき層10によって半田の這い上がりが生じてトラブルを起こすことがあるが、このような事態を招くこともない。
【0016】
なお、図示例では被めっき物が対向するコンタクト部11,11を有する端子1である場合を示したが、対向していない部分へのめっき処理、例えば上記端子1における接続片14へのめっき処理にも適用することができる。また、端子1がコネクター用のものであるものを示したが、これに限定されるものでないことはもちろんである。
【0017】
また、ここではバッチ処理でめっき処理を行う形態のものを示したが、上記保持体2として、フープ材をリールトゥリールで送る際のガイドとして機能する形状とし、各電極4を連続的に送られるフープ材と同速度で同方向に送ることができるものとすることで、連続処理を行うことができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の一例の要部斜視図である。
【図2】(a)は同状の側面図、(b)は同上の拡大側面図である。
【図3】本発明によってめっき処理した端子の側面図である。
【図4】従来のめっき処理を行った端子の側面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 端子
4 電極
10 めっき層
11 コンタクト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき物におけるめっきを施したい箇所に電極を近接させて配置するとともに、上記電極と該電極に近接しているめっきを施したい箇所とにめっき液を接触させ、この状態で電気めっきを行うことを特徴とする部分めっき方法。
【請求項2】
被めっき物が互いにつながっているとともに対向しているコンタクト部を有する端子であり、該端子におけるコンタクト部がめっきを施したい箇所であることを特徴とする請求項1記載の部分めっき方法。
【請求項3】
被めっき物を保持する保持体と、保持体で保持された被めっき物におけるめっきを施したい箇所の近傍に電極を位置させる電極保持体と、上記被めっき物におけるめっきを施したい箇所と該箇所の近傍に位置する電極とにめっき液を接触させるめっき液供給手段とからなることを特徴とする部分めっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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