説明

部分めっき装置及び部分めっき方法

【課題】金属部材に施した部分めっき領域内でのめっき金属層を可及的に一定厚さとし得る部分めっき装置及び部分めっき方法を提供する。
【解決手段】所定表面が露出するようにマスク部材14が被着されたリードフレームに電解めっきを施し、前記所定表面を所望金属から成るめっき金属層で覆う部分めっき装置において、該マスク部材14には、前記リードフレームに被着されたとき、前記所定表面が臨む空間部18が形成されるように凹部16が形成されていると共に、空間部18内に電解めっき液が供給される供給口20aと、空間部18内の電解めっき液を排出する排出口20bとが凹部16の底部に形成され、且つ空間部18内に供給口20aから噴き込まれた電解めっき液が空間部18内に露出する前記所定表面に対して斜め方向から噴き付けられるように、前記リードフレームの所定表面に対して斜め方向に電解めっき液を噴射する噴射ノズル22が供給口20aの近傍に配設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部分めっき装置及び部分めっき方法に関し、更に詳細には所定表面が露出するようにマスク部材が被着された金属部材に電解めっきを施し、前記所定表面を所望金属から成るめっき金属層で覆う部分めっき装置、及びこの部分めっき装置を用いた部分めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置に用いるリードフレームは、図8に示す様に、帯状金属体11に半導体素子を搭載するステージ10を取り囲むように複数本のリード10a,10a・・が形成されている。
図8に示すリードフレームでは、ステージ10に搭載された半導体素子の各電極端子と対応するリード10aのステージ10側の先端部(以下、単にリード10aの先端部と称することがある)とをワイヤでボンディングして電気的に接続する。この電気的接続を確実に行なうべく、図8に示す斜線部分、すなわちステージ10の全面及び各リード10aの先端部とを電解銀めっき等の部分電解めっきを施すことが行なわれている。
かかる部分電解めっきでは、例えば下記特許文献1において、図9に示す部分めっき装置を用いることが提案されている。
図9に示す部分めっき装置では、リードフレームは、押圧板100とマスク部材102との間に挟まれており、リードフレームのステージ10の全表面及びリード10a,10a・・の各先端部の表面は、リードフレームにマスク部材102を被着したとき、形成される空間部110に露出している。
【0003】
かかるマスク部材102には、マスク板把持部材102a,102cとの間に、電解液の供給口104と排出口106,106とが形成されたマスク板102bが挟まれており、マスク板把持部材102a及びマスク板102bによって凹部108が形成されている。この凹部108は、リードフレームを押圧板100とマスク部材102との間に挟持したとき、空間部110を形成する。
また、マスク板102bに形成された供給口104の直下には、電解めっき液を噴出する噴射ノズル112がマスク板102bに対して直角に設けられている。
更に、マスク板102bとマスク板把持部材102cとの間には、直流電源の陽極に接続された網状の陽極114が把持されている。
尚、リードフレームは、直流電源の陰極に接続されている。
【特許文献1】特開昭58-174589号公報(第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9に示す部分めっき装置によれば、噴射ノズル112から噴出された電解めっき液は、網状の陽極114を通過してマスク板104の供給口104からリードフレームのステージ10の中央部に向かって空間部110内に進入し、露出したリードフレームのステージ10の全表面及びリード10a,10a・・の各先端部の表面にめっき金属を析出しつつ排出口106,106の方向に移動し、排出口106,106から排出される。
しかし、図9に示す部分めっき装置では、特許文献1の第2頁左下欄の第9〜12行目に記載されている如く、ステージ10はリード10a,10a・・の各先端部よりも厚いめっき金属層が形成される。
この様に、図9に示す部分めっき装置では、ステージ10に形成されるめっき金属層とリード10a,10a・・の各先端部に形成されるめっき金属層との厚さにバラツキが存在する。
従って、図9に示す部分めっき装置は、ステージ10とリード10a,10a・・の各先端部とに形成されるめっき金属層の厚さが均一であることが要求される部分めっきには適用できない。
【0005】
また、リードフレームには、図10に示す斜線部分、すなわちステージ10の周縁部及び各リード10aのステージ10側の先端部のみに電解めっきを施したい場合もある。
この場合、図11に示す様に、マスク部材102には、周縁部表面を除くステージ10の表面にめっき金属が析出しないように、先端面がステージ10の表面に当接する柱状部120がマスク部材102に形成されている。かかるマスク部材102と押圧板100との間にリードフレームを挟み込むと、マスク部材102に形成された凹部108によって、柱状部120を取り囲む環状の空間部110が形成される。
図11に示す環状の空間部110内には、リードフレームに対して直角となるように設けた噴射ノズル112から噴射した電解めっき液を供給口104から供給される。空間部110内に供給された電解めっき液は、ステージ10の周縁部の表面及び各リード10aのステージ10側の先端部表面にめっき金属を析出しつつ、排出口106,106から排出される。
しかし、図11に示す部分めっき装置では、ステージ10に形成されるめっき金属層とリード10a,10a・・の各先端部に形成されるめっき金属層との厚さバラツキは更に拡大することが判明した。
そこで、本発明の課題は、金属部材に施した部分めっき領域内でのめっき金属層を可及的に一定厚さとし得る部分めっき装置及び部分めっき方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決すべく、先ず、図11に示す部分めっき装置では、空間部110内に電解めっき液の淀み部が生じるものと考え、図12に示す様に、マスク部材102に複数個の供給口104と排出口106とを形成し、各供給口104に近接して噴射ノズル112を設けた。
この噴射ノズル112,112はノズルプレート116の一面側に立設されており、ノズルプレート116の一面側には陽極プレート118が載置されている。
図12に示す部分めっき装置によれば、図11に示す部分めっき装置に比較して、ステージ10に形成されるめっき金属層とリード10a,10a・・の各先端部に形成されるめっき金属層との厚さバラツキを少なくできる。
しかしながら、ステージ10に形成されるめっき金属層とリード10a,10a・・の各先端部に形成されるめっき金属層との厚さバラツキを更に一層少なくすることが求められている。
【0007】
このため、本発明者等は、ステージ10に形成されるめっき金属層とリード10a,10a・・の各先端部に形成されるめっき金属層との厚さバラツキが生じる原因について検討したところ、図10及び図11に示す部分めっき装置では、空間部110内での電解めっき液のリードフレームに対する流動速度が大切であって、空間部11内の電解めっき液に旋回流を発生させることが有効であることを知り、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、所定表面が露出するようにマスク部材が被着された金属部材に電解めっきを施し、前記所定表面を所望金属から成るめっき金属層で覆う部分めっき装置において、該マスク部材には、前記金属部材に被着されたとき、前記所定表面が露出する空間部が形成されるように凹部が形成されていると共に、前記空間部内に電解めっき液が供給される供給口と、前記空間部内の電解めっき液を排出する排出口とが前記凹部の底部に形成され、且つ前記空間部内に前記供給口から噴き込まれた電解めっき液が、前記空間部に露出する金属部材の所定表面に対して斜め方向から噴き付けられるように、前記金属部材の所定表面に対して斜め方向に電解めっき液を噴射する噴射ノズルが前記供給口の近傍に配設されていることを特徴とする部分めっき装置にある。
また、本発明は、前述した部分めっき装置を用いて、金属部材に部分めっきを施すことを特徴とする部分めっき方法でもある。
【0008】
かかる本発明において、噴射ノズルとして、金属部材の所定表面に対して傾斜して設けられている噴射ノズルを好適に用いることができる。
また、金属部材として、リードフレーム、特に半導体素子を搭載するステージの周縁が複数本のリード先端部で取り囲まれているリードフレームを好適に用いることができる。かかるリードフレームを用いる際には、マスク部材として、前記ステージの周縁部及びリード先端部の表面を除くリードフレームの表面を覆うマスク部材を好適に用いることができる。
更に、マスク部材には、複数個の供給口を設けると共に、前記供給口の各々に対応する噴射ノズルを設けることによって、金属部材の部分めっきを施した領域内でのめっき金属層の厚さを可及的に一定にできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る部分めっき装置では、金属部材の部分めっきを施す所定表面が臨む空間部内に電解めっき液を供給する供給口と、空間部内から電解めっき液を排出する排出口とが設けられており、供給口近傍には、空間部内に露出する金属部材の所定表面に対して斜め方向に電解めっき液を噴射する噴射ノズルが配設されている。
かかる本発明に係る部分めっき装置によれば、噴射ノズルから噴射された電解めっき液は、供給口を経由して金属部材の所定表面に対して斜め方向に噴き付けられるように空間部内に噴き込まれ、空間部内の電解めっき液は排出口を経由して空間部外に排出される。
この様に、金属部材の所定表面に対して斜め方向に噴き付けられるように空間部内に噴き込まれた電解めっき液によって、空間部内の電解めっき液には旋回流が発生し、空間部内の淀み部は解消して金属部材の所定表面に対する電解めっき液の流速を高めることができる。
その結果、空間部内の電解めっき液に形成された淀み部に起因する金属部材の所定表面に形成されるめっき金属層の厚さバラツキを可及的に減少でき、金属部材の所定表面に形成されるめっき金属層の厚さを可及的に一定にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る部分めっき装置の一例を図1に示す。図1は、金属部材としてリードフレームを用いた部分めっき装置の部分断面図である。このリードフレームには、ステージ10の全面と各リード10aのステージ10側の先端部とにめっき金属層を形成する部分めっきを施す。
リードフレームは、押さえ金具12aと押さえゴム12bとから成る板状部材12と、マスクプレート14aとラバープレート14bとから成るマスク部材14との間に挟持されている。
かかるマスクプレート14aには、凹部16が形成されており、板状部材12とマスク部材14との間にリードフレームを挟持したとき、空間部18が形成される。この空間部18には、リードフレームの部分めっきを施すステージ10の全面と各リード10aのステージ10側の先端部とが露出する。空間部18に露出しなかったリードフレームの部分は、押さえゴム12bとラバープレート14bとに密着されて挟持されている。
更に、マスクプレート14aの凹部16の底部には、空間部18内に電解めっき液を供給する供給口20aと、空間部18内の電解めっき液を排出する排出口20b,20bとが形成されている。
【0011】
かかる電解めっき液の供給口20aの入口側近傍には、液セル30内の電解めっき液を空間部18内に噴き込む噴射ノズル22が突出して設けられており、噴射ノズル22はノズルプレート24に傾斜して設けられている。この傾斜して設けられた噴射ノズル22(以下、傾斜噴射ノズル22と称することがある)は、空間部18内に露出するリードフレームの露出面(ステージ10の全面及び各リード10aのステージ10側の先端部面)に対して斜め方向に供給口20aを経由して電解めっき液を噴き込むことができる傾斜角で設けられており、45°程度の傾斜角が適当である。
また、ノズルプレート24のマスクプレート14a側の面には、電源(図示せず)の陽極に接続された陽極プレート28が被着されており、電源の陰極はリードフレームに接続されている。
更に、マスクプレート14aには、空間部18内の空気を抜き出す空気抜き孔26が形成されている。この空気抜き孔26は、ラバープレート14bとの境界近傍に形成された切欠部26aと、この切欠部26aに一端が接続され且つ他端がマスクプレート14aの噴射ノズル22側の面に開口する細孔26bとから構成される。
【0012】
図1に示す部分めっき装置では、電源の陽極に陽極プレート28を接続すると共に、電源の陰極にリードフレームを接続して、傾斜噴射ノズル22からマスクプレート14aの供給口20aを経由して空間部18内に電解めっき液を噴き込むと、空間部18内の空気を空気抜き孔26,26・・を経由して空間部18外に排出しつつ、空間部18内に露出するリードフレームの露出面(ステージ10の全面及び各リード10aのステージ10側の先端部面)にめっき金属層を形成する。
その際に、空間部18内には、供給口20aを経由して傾斜噴射ノズル22から空間部18内に露出するステージ10の全面及び各リード10aのステージ10側の先端部面に対して電解めっき液を斜め方向に噴き込みつつ、空間部22内の電解めっき液を排出口20b、20bから排出して液セル30に戻す。
この様に、空間部18内にリードフレームの露出面に対して斜め方向に電解めっき液を噴き込むため、空間部18内で電解めっき液に旋回流が発生する。これによって、空間部18内のリードフレームの露出面に対して電解めっき液が停滞する淀み部を解消でき、リードフレームの露出面に対する電解めっき液の流速を高めることができる。その結果、電解めっき液の停滞に起因して発生する、リードフレームの露出面に形成されるめっき金属層の厚さバラツキを可及的に減少を図ることができる。
【0013】
一方、従来の図9、図11及び図12に示す部分めっき装置では、リードフレームの露出面に対して直角方向に噴射ノズル112から電解めっき液を噴射するため、噴射ノズル112から噴射された電解めっき液はリードフレームの露出面に衝突して流動方向が反転する。この際に、電解めっき液の流速が零となる領域(淀み部)が形成される。このため、リードフレームの露出面に形成されるめっき金属層に厚さバラツキが発生し易くなる。
【0014】
図1に示す部分めっき装置では、傾斜噴射ノズル22が1個であったが、図2に示す様に、マスクプレート14aの凹部16の底部に、空間部18内に電解めっき液を供給する複数個の供給口20a,20aと、空間部18内の電解めっき液を排出する排出口20bとを形成し、各供給口20aの入口側近傍には傾斜噴射ノズル22を設ける。供給口20a,20aの各近傍に開口する傾斜噴射ノズル22は、その電解めっき液の噴射方向が互いに異なる方向に傾斜して設けられている。
図2に示す部分めっき装置では、供給口20a,20aの各近傍に開口する傾斜噴射ノズル22から空間部18内に噴き込まれた電解めっき液は、互いに異なる方向に噴き込まれている。このため、図2に示す部分めっき装置の空間部18では、傾斜噴射ノズル22が1個の図1に示す部分めっき装置よりも強い旋回流が発生する。
【0015】
図1及び図2に示す部分めっき装置では、図8に示す様に、ステージ10の全面及び各リード10aのステージ10側の先端部面にめっき金属層を形成するものである。
一方、図10に示す様に、ステージ10の周縁部面及び各リード10aのステージ10側の先端部面にめっき金属層を形成する部分めっき装置としては、図3に示す部分めっき装置を用いることができる。
図3に示す部分めっき装置について、図1及び図2に示す部分めっき装置と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図3に示す部分めっき装置では、周縁部表面を除くステージ10の表面にめっき金属が析出しないように、先端面がステージ10の表面に当接する柱状部32がマスクプレート14aに形成されている。この柱状部32の先端面にも、ラバープレート14bが設けられている。
【0016】
図3に示す部分めっき装置では、マスクプレート14aに形成された、先端面がステージ10の表面に当接する柱状部32によって、柱状部32を取り囲む環状の空間部18に形成される。かかる環状の空間部18を形成するマスクプレート14aの凹部16の底部には、電解めっき液を空間部18内に供給する供給口20aと、空間部18内の電解めっき液を排出する排出口20b、20bとが形成されている。
この供給口20aの入口近傍には、噴射ノズル22が設けられており、噴射ノズル22はノズルプレート24に傾斜して設けられている。かかる傾斜して設けられた噴射ノズル22(以下、傾斜噴射ノズル22と称することがある)からは、環状の空間部18内に露出するリードフレームの露出面(ステージ10の周縁部面及び各リード10aのステージ10側の先端部面)に対して斜め方向に電解めっき液が噴射される。
【0017】
図3に示す部分めっき装置では、電源の陽極に陽極プレート28を接続すると共に、電源の陰極にリードフレームを接続して、傾斜噴射ノズル22からマスクプレート14aの供給口20aを経由して環状の空間部18内に電解めっき液を噴き込むと、空間部18内の空気を空気抜き孔26,26・・を経由して空間部18外に排出しつつ、空間部18内に露出するリードフレームの露出面(ステージ10の周縁部面及び各リード10aのステージ10側の先端部面)にめっき金属層を形成する。
その際に、環状の空間部18内には、供給口20aを経由して傾斜噴射ノズル22から空間部18内に露出するステージ10の周縁部面及び各リード10aのステージ10側の先端部面に対して電解めっき液を斜め方向に噴き込みつつ、空間部18内の電解めっき液を排出口20b、20bから排出して液セル30に戻す。
【0018】
この様に、環状の空間部18内にリードフレームの露出面に対して斜め方向に電解めっき液を噴き込むため、環状の空間部18内で電解めっき液に柱状部32の周囲を旋回する旋回流が発生する。このため、環状の空間部18内に露出するリードフレームの露出面に対して電解めっき液が停滞する淀み部を解消でき、リードフレームの露出面に対する電解めっき液の流速を高めることができる。その結果、電解めっき液の停滞に起因して発生する、リードフレームの露出面に形成されるめっき金属層の厚さバラツキを可及的に減少を図ることができる。
図3に示す部分めっき装置では、傾斜噴射ノズル22が1個であったが、図4に示す様に、マスクプレート14aの凹部16の底部に、環状の空間部18内に電解めっき液を供給する複数個の供給口20a,20aと、環状の空間部18内の電解めっき液を排出する排出口20bとを形成し、各供給口20aの入口側近傍には傾斜噴射ノズル22を設ける。供給口20a,20aの各々に設けた傾斜噴射ノズル22は、その電解めっき液の噴射方向が互いに異なる方向に傾斜して設けている。
図4に示す部分めっき装置では、供給口20a,20aの各々に設けた傾斜噴射ノズル22から環状の空間部18内に噴き込まれた電解めっき液は、互いに異なる方向に噴き込まれている。このため、図4に示す部分めっき装置の環状の空間部18では、傾斜噴射ノズル22が1個の図3に示す部分めっき装置よりも強い旋回流が発生する。
【実施例1】
【0019】
図10に示すリードフレームのステージ10の周縁部面及び各リード10aのステージ10側の先端部面に、図4に示す部分めっき装置を使用して銀めっきを施した。この部分めっき装置には、環状の空間部18内に露出するリードフレームのステージ10の周縁部面及び各リード10aのステージ10側の先端部面に対して、4個の供給口20a,20a・・を経由して斜め方向から電解めっき液が噴き込まれる様に、各供給口20aの入口側近傍に傾斜噴射ノズル22が設けられている。かかる4本の傾斜噴射ノズル22の各々は、その噴射方向が互いに異なるように傾斜角45°に傾斜している。
また、比較例として、図10に示すリードフレームのステージ10の周縁部面及び各リード10aのステージ10側の先端部面に、図12に示す部分めっき装置を使用して銀めっきを施した。この部分めっき装置には、環状の空間部110内に露出するリードフレームのステージ10の周縁部面及び各リード10aのステージ10側の先端部面に対して、4個の供給口104,104・・を経由して直角方向から電解めっき液が噴き込まれる様に、各供給口104の入口側近傍に噴射ノズル112が垂直に設けられている。
【0020】
実施例及び比較例のリードフレームに対し、電解めっき液として、市販されている銀めっき液を用い、下記表1に示す電解めっき条件下で銀めっきを行なった。
【表1】

実施例では、銀めっき液を傾斜噴出ノズル22,22・・から噴出し、マスクプレート14aに形成した各供給口20aから環状の空間部18内に吹き込んだ。その噴き込み方向は、環状の空間部18内に露出するリードフレームの露出面に対して斜め方向である。
一方、比較例では、銀めっき液を噴出ノズル112,112・・から噴出し、マスク部材102に形成した各供給口104から環状の空間部110内に吹き込んだ。その噴き込み方向は、環状の空間部110内に露出するリードフレームの露出面に対して直角方向である。
【0021】
実施例及び比較例において、図10に示すリードフレームについて、各辺の中央部に形成されている中央リードLを挟む両リードの先端部、及びステージ10を吊る各サポートバーSを挟む両リードの先端部に形成された銀めっき層の厚さを測定し、その結果を図5に示す。
更に、リード先端部の銀めっきの厚さを測定した部位近傍のステージ10の周縁部についても、その銀めっき層の厚さを測定し、その結果を図5に示す。
図5においては、リードの先端部に形成された銀めっき層の厚さの最大値、最小値及び平均値を示し、ステージ10の周縁部に形成された銀めっき層の厚さの最大値、最小値及び平均値を示す。
図5から明らかな様に、実施例では、リードとステージとの銀めっき層の厚さのバラツキは略同程度であるが、比較例では、リードの銀めっき層の厚さバラツキはステージの銀めっき層の厚さバラツキに比較して大きく、両者の銀めっき層の厚さバラツキは実施例に比較して大きい。
【実施例2】
【0022】
実施例1において、電流量を一定にして電解めっき時間を変化させて、リードフレームに加えた電荷量を変化させた他は実施例1と同様にしてリードフレームのリードの先端部及びステージの周縁部に銀めっきを施した。
銀めっきを施したリードフレームのリードの先端部及びステージの周縁部に形成された銀めっき層の膜厚を測定し、その結果を図6及び図7に示す。
図6は、実施例の部分めっき装置を用いて、リードフレームのリードの先端部及びステージの周縁部に形成した銀めっき層の厚さの最大値と最小値とについて、電荷量に対する変化を示す。電荷量が増加しても(銀めっき層を厚くしても)、銀めっき層の厚さバラツキは略一定である。
これに対し、図7は、比較例の部分めっき装置を用いて、リードフレームのリードの先端部及びステージの周縁部に形成した銀めっき層の厚さの最大値と最小値とについて、電荷量に対する変化を示す。電荷量が増加する(銀めっき層が厚くなる)に従って、銀めっき層の厚さバラツキが拡大している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る部分めっき装置の一例を説明する部分断面図である。
【図2】本発明に係る部分めっき装置の他の例を説明する部分断面図である。
【図3】本発明に係る部分めっき装置の他の例を説明する部分断面図である。
【図4】本発明に係る部分めっき装置の他の例を説明する部分断面図である。
【図5】本発明に係る部分めっき装置を用いて部分めっきを施したリードフレームのリード先端部とステージの周縁部とのめっき金属層の厚さバラツキを示すグラフである。
【図6】本発明に係る部分めっき装置を用いて部分めっきを施したリードフレームに形成されるめっき金属層の厚さバラツキと電荷量との関係を示すグラフである。
【図7】従来の部分めっき装置を用いて部分めっきを施したリードフレームに形成されるめっき金属層の厚さバラツキと電荷量との関係を示すグラフである。
【図8】リードフレームに部分めっきを施す領域の一例を説明する正面図である。
【図9】従来の部分めっき装置を説明する部分断面図である。
【図10】リードフレームに部分めっきを施す領域の一例を説明する正面図である。
【図11】従来の部分めっき装置を説明する部分断面図である。
【図12】図11に示す部分めっき装置を改良した改良部分めっき装置を説明する部分断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 ステージ
10a リード
12 板状部材
12a 押さえ金具
12b 押さえゴム
14 マスク部材
14a マスクプレート
14b ラバープレート
16 凹部
18 空間部
20a 供給口
20b 排出口
22 噴射ノズル
24 ノズルプレート
26 空気抜き孔
26a 切欠部
26b 細孔
28 陽極プレート
30 液セル
32 柱状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定表面が露出するようにマスク部材が被着された金属部材に電解めっきを施し、前記所定表面を所望金属から成るめっき金属層で覆う部分めっき装置において、
該マスク部材には、前記金属部材に被着されたとき、前記所定表面が露出する空間部が形成されるように凹部が形成されていると共に、前記空間部内に電解めっき液が供給される供給口と、前記空間部内の電解めっき液を排出する排出口とが前記凹部の底部に形成され、
且つ前記空間部内に前記供給口から噴き込まれた電解めっき液が、前記空間部に露出する金属部材の所定表面に対して斜め方向から噴き付けられるように、前記金属部材の所定表面に対して斜め方向に電解めっき液を噴射する噴射ノズルが前記供給口の近傍に配設されていることを特徴とする部分めっき装置。
【請求項2】
噴射ノズルが、金属部材の所定表面に対して傾斜して設けられている請求項1記載の部分めっき装置。
【請求項3】
金属部材が、リードフレームである請求項1又は請求項2記載の部分めっき装置。
【請求項4】
複数個の供給口が設けられていると共に、前記供給口の各々に対応する噴射ノズルが設けられている請求項1〜3のいずれか一項記載の部分めっき装置。
【請求項5】
金属部材が、半導体素子を搭載するステージの周縁が複数本のリード先端部で取り囲まれているリードフレームであって、マスク部材が、前記ステージの周縁部及びリード先端部の表面を除くリードフレームの表面を覆うマスク部材である請求項1、請求項2又は請求項4記載の部分めっき装置。
【請求項6】
請求項1記載の部分めっき装置を用いて、金属部材に部分めっきを施すことを特徴とする部分めっき方法。
【請求項7】
金属部材として、リードフレームを用いる請求項6記載の部分めっき方法。
【請求項8】
マスク部材として、複数個の電解めっき液の供給口を設けたマスク部材を用い、前記供給口の各々に対応する噴射ノズルを設ける請求項6又は請求項7記載の部分めっき方法。
【請求項9】
金属部材として、半導体素子を搭載するステージの周縁が複数本のリード先端部で取り囲まれているリードフレームを用い、マスク部材として、前記ステージの周縁部及びリード先端部の表面を除くリードフレームの表面を覆うマスク部材を用いる請求項6又は請求項8記載の部分めっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−328448(P2006−328448A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150625(P2005−150625)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】