説明

部分塗装用マスキング材

【課題】作業性に優れるとともに、被塗物が変形した場合であっても、マスク部位に塗料が付着してしまう問題も回避することのできる部分塗装用マスキング材を提供する。
【解決手段】被塗物10の被塗装面15から突出する突状非塗装部たる端縁非塗装部12に取り付けられる部分塗装用マスキング材20であって、軟質の弾性材料よりなり、端縁非塗装部12の突出側先端面12aを覆う被覆部21と、被覆部21の外縁に一体に設けられ、端縁非塗装部12の外側面12b及び端面12cに当接する把持内側面22a及び23aを有して端縁非塗装部12を把持する対峙把持部22及び23と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部分塗装用マスキング材に関し、詳しくは塗装をする際に被塗物の所定部位だけを塗装しないように該所定部位に取り付けられる部分塗装用マスキング材に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装をする際に被塗物の所定部位(マスク部位)だけを塗装したくない場合は、該マスク部位にマスキング材を取り付け、マスク部位以外の被塗装面を塗装する。このとき用いられるマスキング材として、従来、マスク部位の形状に合わせて電鋳により形成した電鋳マスクが知られている。
【0003】
しかし、電鋳マスクは金属製で柔軟性がないため、被塗物の変形に容易には追従できない。そのため、被塗物が変形した場合は、マスク部位に取り付けられた電鋳マスクと被塗物との間に隙間が形成されることを避けられない。そうすると、塗装時にこの隙間に塗装ミストが侵入して、塗装したくない前記マスク部位に塗料が付着してしまい、塗装後にこの塗料を除去する工程が必要になるという問題があった。
【0004】
また、電鋳マスクは硬いことから、被塗物に取り付ける際に慎重に作業しないと被塗物の表面に傷を付けるおそれもあり、作業性が悪いという問題もあった。
【0005】
一方、電鋳マスクと比べれば、被塗物の傷付きを回避し易いマスキング材として、樹脂製のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1に開示された樹脂製のマスキング材は、エンジニアリングプラスチックと他の熱可塑性プラスチックとのポリマーアロイよりなり、被塗物のマスク部位である孔に対応する径を有する円筒容器状挿入部と、該円筒容器状挿入部の周縁部に設けられ、被塗物の該孔の周囲に立設されたフランジ(円筒状突起)に嵌合可能な断面コの字状の嵌合溝とを有している。そして、このマスキング材は、前記円筒容器状挿入部を前記孔内に挿入するとともに、前記嵌合溝を前記フランジに嵌合させることで、被塗物のマスク部位に取り付けられる。
【特許文献1】特開平7−144161号公報(第5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の樹脂製のマスキング材は、エンジニアリングプラスチックと他の熱可塑性プラスチックとのポリマーアロイよりなるものであるから、基本的には柔軟性がない。また、このマスキング材は、前記フランジと前記嵌合溝との凹凸嵌合により、被塗物のマスク部位に取り付けられるものである。このため、被塗物が変形すれば、前記フランジと前記嵌合溝との間に隙間が形成されることを避けられず、前記電鋳マスクと同様、該隙間に塗装ミストが侵入してマスク部位に塗料が付着してしまうという問題がある。
【0008】
なお、前記特許文献1には、前記ポリマーアロイにゴム及び/又はエラストマーを混合することが開示されている。しかし、これらのゴム及び/又はエラストマーは、マスキング材の成形性、靱性、破壊強度及び塗膜との親和性を向上させる目的で混合されるものである。したがって、前記特許文献1は、柔軟性を有するマスキング材を開示するものではない。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、作業性に優れるとともに、被塗物が変形した場合であっても、マスク部位に塗料が付着してしまう問題も回避することのできる部分塗装用マスキング材を提供することを解決すべき技術課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の部分塗装用マスキング材は、被塗物の被塗装面から突出する突状非塗装部に取り付けられる部分塗装用マスキング材であって、軟質の弾性材料よりなり、前記突状非塗装部の突出側先端面を覆う被覆部と、前記被覆部の外縁に一体に設けられ、前記突状非塗装部の外側面に当接する把持内側面を有して該突状非塗装部を把持する把持部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
ここに、前記「軟質の弾性材料」とは、柔軟性を有する弾性変形可能な材料のことをいう。この軟質の弾性材料は、JIS K 6253規格の硬さ試験によるショアA(デュロメータ タイプA)硬さが50〜90程度であることが好ましく、70〜80程度であることがより好ましい。ショアA硬さが50未満であると、柔らかすぎてかえって作業性が低下するおそれがある。一方、ショアA硬さが90を超えると、被塗物の変形に対して十分に追従することが困難となる。
【0012】
この部分塗装用マスキング材は、被塗物の突状非塗装部に取り付けられて、塗装の際にこの突状非塗装部をマスキングする。そして、この部分塗装用マスキング材は軟質の弾性材料よりなる。このため、被塗物の突状非塗装部が変形すれば、その変形に対応して部分塗装用マスキング材が変形可能である。
【0013】
したがって、この部分塗装用マスキング材によれば、たとえ被塗物が変形したとしても、把持部の把持内側面と突状非塗装部の外側面とを密着させることができ、把持部の把持内側面と突状非塗装部の外側面との間に隙間が形成されることを良好に抑えることが可能である。よって、被塗物が変形したときにマスク部位に塗料が付着してしまう問題を回避することができ、塗装後にマスク部位に付着した塗料を除去する工程が不要になる。
【0014】
また、この部分塗装用マスキング材は、把持部が被塗物の突状非塗装部を把持することで確実に被塗物に保持されることから、作業中の取り扱い性が向上する。さらに、この部分塗装用マスキング材は、軟質の弾性材料よりなるため、作業中に被塗物を傷付けるおそれが少ない。
【0015】
したがって、この部分塗装用マスキング材によれば、作業性の向上を図ることができる。
【0016】
本発明の部分塗装用マスキング材の好適な態様において、前記被塗装面と前記突状非塗装部の前記外側面との境界線が、該突状非塗装部を把持した前記把持部で覆われずに表出するような形状・寸法とされている。
【0017】
この部分塗装用マスキング材が被塗物の突状非塗装部に取り付けられた状態では、被塗装面と突状非塗装部の外側面との境界線(塗装見切り線)が把持部で覆われることなく表出する。このため、この境界線を含む被塗装面に確実に塗装を施すことができる。
【0018】
本発明の部分塗装用マスキング材の好適な態様において、前記把持部は、前記把持内側面同士が互いに対向するように対峙して設けられた少なくとも一対の対峙把持部である。
【0019】
この部分塗装用マスキング材では、少なくとも一対の対峙把持部の把持内側面により突状非塗装部の外側面を挟持するように把持することで、突状非塗装部に対して部分塗装用マスキング材を確実に保持させることができる。
【0020】
本発明の部分塗装用マスキング材の好適な態様において、前記突状非塗装部は前記被塗物の端部に設けられた端縁非塗装部であり、前記端縁非塗装部の前記外側面の一つたる端面に前記把持内側面が当接する前記対峙把持部の一方は、該端縁非塗装部の裏面に当接する屈曲先端内面をもつ屈曲先端部を一体に有する折り返し把持部である。
【0021】
この部分塗装用マスキング材は、被塗物の端部に設けられた端縁非塗装部をマスキングする。そして、端縁非塗装部の外側面を挟持するように把持する対峙把持部の一方は、屈曲先端部を一体に有する折り返し把持部とされている。この屈曲先端部を有する折り返し把持部は、端縁非塗装部の端面(端縁非塗装部が設けられた被塗物の端部側の端面)に前記把持内側面が当接するとともに、該端縁非塗装部の裏面に屈曲先端部の屈曲先端内面が当接する。このため、この部分塗装用マスキング材では、折り返し把持部の把持内側面と端縁非塗装部の端面との間及び折り返し把持部の屈曲先端内面と端縁非塗装部の裏面との間で、密着性を確保することができる。したがって、外縁非塗装部の前記端面側において、折り返し把持部と外縁非塗装部とを確実に密着させて両者間に隙間が形成されることを確実に抑えることができるとともに、折り返し把持部により外縁非塗装部に対して部分塗装用マスキング材を確実に保持させることができる。
【0022】
本発明の部分塗装用マスキング材の好適な態様において、前記突状非塗装部は前記被塗物の内部領域に設けられた内部非塗装部であり、前記把持部は、該内部非塗装部の前記外側面たる外周面に当接する環状内周面を前記把持内側面として有する環状把持部である。
【0023】
この部分塗装用マスキング材では、被塗物の内部領域に設けられた内部非塗装部をマスキングすることができる。また、この部分塗装用マスキング材は、環状内周面を内部非塗装部の外周面に当接させつつ環状把持部で内部非塗装部を把持することで、該内部非塗装部に取り付けられる。このため、この部分塗装用マスキング材では、環状把持部の環状内周面と内部非塗装部の外周面との間で、密着性を確保することができる。したがって、環状把持部と内部非塗装部とを確実に密着させて両者間に隙間が形成されることを確実に抑えることができるとともに、環状把持部により内部非塗装部に対して部分塗装用マスキング材を確実に保持させることができる。
【0024】
本発明の部分塗装用マスキング材の好適な態様において、前記把持部は、前記把持内側面を前記突状非塗装部の外側面に弾接させた状態で該突状非塗装部を把持する。
【0025】
ここに、前記「弾接」とは、弾力(変形に抗して原形に復帰しようとする力)を介在させつつ接すること又は接している状態をいう。
【0026】
この部分塗装用マスキング材では、把持内側面を突状非塗装部の外側面に弾接させつつ把持部で突状非塗装部を把持することで、該突状非塗装部に取り付けられる。このため、この部分塗装用マスキング材では、把持部の把持内側面と突状非塗装部の外側面との間で、弾力により密着性や締め付け保持性を向上させることができる。
【0027】
なお、前記折り返し把持部においては、屈曲先端内面も端縁非塗装部の裏面に弾接させることが好ましい。
【0028】
さらに、本発明の部分塗装用マスキング材の好適な態様において、前記把持部は、先端に向かうほど肉厚が薄くなるように先細り形状とされて、前記突状非塗装部の外側面との間に隙を形成する、先細先端部を有している。
【0029】
この部分塗装用マスキング材では、把持部が先端側に先細先端部を有しているので、被塗装面への塗料の付着が把持部の先端側で妨げられることを抑えることができ、塗装見切り線を含む被塗装面の全体に確実に塗料を付着させるのに有利となる。
【0030】
また、部分塗装用マスキング材が突状非塗装部に取り付けられた状態で、把持部の先端側と突状非塗装部の外側面との間に隙がない場合は、突状非塗装部の外側面に塗られた塗膜と、把持部の外表面に塗られた塗膜とが、塗料の表面張力により、繋がってしまう場合がある。そうすると、部分塗装用マスキング材を取り外す時に、突状非塗装部の外側面や被塗装面に形成された塗膜が剥げてしまうおそれがある。
【0031】
その点、この部分塗装用マスキング材では、先細先端部と突状非塗装部の外側面との間に隙が形成されているので、この隙の存在により、突状非塗装部の外側面に塗られた塗膜と把持部の外表面に塗られた塗膜とが繋がることを阻止することができる。このため、部分塗装用マスキング材を取り外す時に、突状非塗装部の外側面や被塗装面に形成された塗膜が剥げてしまうようなことがない。
【0032】
したがって、この部分塗装用マスキング材によれば、塗装見切り線を含む被塗装面により確実に塗装を施すことができる。
【発明の効果】
【0033】
以上の如く、本発明の部分塗装用マスキング材は、軟質で柔軟性を有する弾性材料よりなることから、作業中に被塗物が傷付いたり、マスク部位に塗料が付着したりする問題を回避することができる。したがって、作業が容易になるとともに、塗装後にマスク部位に付着した塗料を除去する工程が不要になるため、塗装工程の作業性を大幅に向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の部分塗装用マスキング材の実施形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0035】
(実施形態1)
図1及び図2に示される本実施形態は、自動車外装部品たるバックガーニッシュを被塗物10とする塗装に本発明の部分塗装用マスキング材20を用いるものである。
【0036】
被塗物10は、樹脂の射出成形品よりなり、一般部11と、被塗物10の一方側(図2の上側)の端部に設けられた、突状非塗装部としての帯状の端縁非塗装部12と、一般部11と端縁非塗装部12との境界部に設けられた、塗装見切り部となる溝部13とを有している(図2参照)。なお、溝部13の端縁非塗装部12側の端縁(端縁非塗装部12と溝部13との境界線)が塗装見切り線14となる。また、この被塗物10では、一般部11の表面(図1の上面)11aと、溝部13の底面13aと、溝部13の一般部11側の内側面13bとが被塗装面15とされ、この被塗装面15から端縁非塗装部12が一定高さで突出している。
【0037】
前記被塗物10を構成する樹脂材料としては、特に限定されず、例えばABS、PC/ABSやPPを採用することができる。
【0038】
また、この被塗装物10は、裏面10a以外の表面全体に予め形成された金属めっき層16を有している。
【0039】
部分塗装用マスキング材20は、軟質で耐熱性の弾性材料としてのオレフィン系熱可塑性エラストマーよりなる一体成形品であり、3mmの一定肉厚を有している。この軟質の弾性材料は、ショアA硬さが70である。
【0040】
ここに、この部分塗装用マスキング材20は、被塗物10の三次元データ(端縁非塗装部12や溝部13等の形状・寸法のデータ)を基に形状、大きさや肉厚を決定して、射出成形により所定形状に形成したものである。
【0041】
なお、本実施形態では、後述する把持内側面22a及び23a同士の間隔は、被塗物10の端縁非塗装部12の幅(図1の左右方向幅)よりも若干小さく設定されている。また、後述する屈曲先端内面24aと被覆部21の内面との間の間隔は、端縁非塗装部12の厚さよりも若干小さく設定されている。
【0042】
そして、この部分塗装用マスキング材20は、端縁非塗装部12の突出側先端面(図1の上面)12aを覆う帯板状の被覆部21と、被覆部21の幅方向(図1の左右方向)における両端縁に一体に設けられた第1及び第2の対峙把持部(把持部)22及び23を有している。これら第1及び第2の対峙把持部22及び23は、被覆部21の両端縁から略直角に屈曲するように連設されており、把持内側面22a及び23a同士が互いに対向するように対峙して設けられている。
【0043】
被覆部21の幅方向における一方側(塗装見切り線14側であって、図1の右側)の端縁に設けられた第1の対峙把持部22は、この部分塗装用マスキング材20が端縁非塗装部12に取り付けられた状態で、端縁非塗装部12の外側面(溝13側の外側面)12bの突出先端側(図1の上側)の部分に把持内側面22aが弾接される。すなわち、第1の対峙把持部22の長さは、溝部13の深さよりも短く設定されており、この部分塗装用マスキング材20が端縁非塗装部12に取り付けられた状態で、前記塗装見切り線14と、端縁非塗装部12の外側面12bの基端側(図1の下側)の部分とが、端縁非塗装部12を把持した第1の対峙把持部22で覆われずに表出する。
【0044】
被覆部21の幅方向における他方側(端縁非塗装部12が設けられた方の被塗物10の端部側であって、図1の左側)の端縁に設けられた第2の対峙把持部23は、端縁非塗装部12の裏面12dに当接する屈曲先端内面24aをもつ屈曲先端部24を一体に有する折り返し把持部とされている。そして、この第2の対峙把持部23は、この部分塗装用マスキング材20が端縁非塗装部12に取り付けられた状態で、端縁非塗装部12の外側面の一つたる端面(被塗物10の端部側の端面)12cの全体に把持内側面23aが弾接されるとともに、端縁非塗装部12の裏面12dに屈曲先端部24の屈曲先端内面24aが弾接される。
【0045】
上記構成を有する本実施形態の部分塗装用マスキング材20は、被塗物10の塗装作業において、以下のように使用した。
【0046】
すなわち、予め金属めっき層16が形成された被塗装物10の端縁非塗装部12に部分塗装用マスキング材20を取り付けた(図1(a)参照)。この取り付け状態では、端縁非塗装部12の突出側先端面12aが部分塗装用マスキング材20の被覆部21で覆われている。また、端縁非塗装部12の外側面12bの突出先端側に第1の対峙把持部22の把持内側面22aが弾接され、かつ、端縁非塗装部12の端面12cに第2の対峙把持部22の把持内側面23aが弾接されるとともに、端縁非塗装部12の裏面12dに屈曲先端部24の屈曲先端内面24aが弾接されている。
【0047】
そして、塗装工程のラインにて、被塗物10の被塗装面15等に所定の塗料を塗布した後、部分塗装用マスキング材20を取り付けたまま乾燥炉に入れて塗料を乾燥することにより、被塗物10の被塗装面15と端縁非塗装部12の外側面12bの一部(基端側の部分)とに塗膜30を形成した。その後、端縁非塗装部12から部分塗装用マスキング材20を取り外して、塗装作業を終えた。こうして、被塗装面15に塗膜30が形成されるとともに、マスク部位としての端縁非塗装部12に金属めっき層16が形成された樹脂部品を得た。
【0048】
このように、本実施形態の部分塗装用マスキング材20は、被塗物10の端縁非塗装部12に取り付けられて、塗装の際にこの端縁非塗装部12をマスキングする。そして、この部分塗装用マスキング材20は軟質の弾性材料よりため、被塗物10の端縁非塗装部12が熱などにより変形すれば、その変形に対応して部分塗装用マスキング材20が変形可能である。
【0049】
また、この部分塗装用マスキング材20は、把持内側面22a及び23aを端縁非塗装部12の外側面12b及び端縁12cに弾接させつつ両対峙把持部22及び23で端縁非塗装部12を幅方向に挟持した状態で把持するとともに、折り返し把持部とされた第2の対峙把持部23の屈曲先端部24の屈曲先端内面24aを端縁非塗装部12の裏面12dに弾接させつつこの屈曲先端部24と被覆部21とで端縁非塗装部12を厚さ方向に挟持した状態で把持することで、該端縁非塗装部12に取り付けられる。このため、この部分塗装用マスキング材20では、対峙把持部22及び23の把持内側面22a及び23aと端縁非塗装部12の外側面12b及び端面12cとの間、並びに屈曲先端部24の屈曲先端内面24aと端縁非塗装部12の裏面12dとの間で、弾力により密着性や締め付け性が向上している。
【0050】
したがって、この部分塗装用マスキング材20によれば、たとえ被塗物10が変形したとしても、部分塗装用マスキング材20の内面と端縁非塗装部12の外面とを確実に密着させることができ、両者間に隙間が形成されることを確実に抑えることが可能である。よって、被塗物10の端縁非塗装部12が変形したときに、マスク部位としての端縁非塗装部12の突出先端面12aに塗料が付着してしまう問題を回避することができ、塗装後にマスク部位に付着した塗料を除去する工程が不要になる。
【0051】
また、この部分塗装用マスキング材20は、対峙把持部22及び23が被塗物10の端縁非塗装部12を把持することで確実に被塗物10に保持されている。特に、本実施形態では、折り返し把持部とされた第2の対峙把持部23により、端縁非塗装部12に対して部分塗装用マスキング材20を確実に保持させることができる。
【0052】
さらに、この部分塗装用マスキング材20は、軟質の弾性材料よりなるため、作業中に被塗物10を傷付けるおそれが少ない。このため、被塗物10の傷付きを防止すべく慎重に作業する必要がなく、部分塗装用マスキング材20の取り扱いも容易である。
【0053】
したがって、この部分塗装用マスキング材20によれば、作業性の向上を図ることができる。
【0054】
また、本実施形態の部分塗装用マスキング材20が被塗物10の端縁非塗装部12に取り付けられた状態では、被塗装面15と端縁非塗装部12の外側面12bとの境界線たる塗装見切り線14が対峙把持部22で覆われることなく表出する。このため、この塗装見切り線14を含む被塗装面15に確実に塗装を施すことができる。
【0055】
加えて、この部分塗装用マスキング材20は、被塗物10の三次元データを基に形状、大きさや肉厚を決定して、成形したものであるから、容易に成形することができる。
【0056】
(実施形態2)
図3及び図4に示される本実施形態における被塗物10は、一般部11と、被塗物10の内部領域に設けられた、突状非塗装部としての矩形状の内部非塗装部17と、一般部11と内部非塗装部17の境界部に設けられた、塗装見切り部となる環状の溝部13とを有している(図4参照)。
【0057】
また、この実施形態に係る部分塗装用マスキング材40は、軟質で耐熱性の弾性材料としてのオレフィン系熱可塑性エラストマーよりなる一体成形品であり、3mmの一定肉厚を有している。この軟質の弾性材料は、ショアA硬さが70である。
【0058】
ここに、この部分塗装用マスキング材40は、実施形態1と同様、被塗物10の三次元データ(内部非塗装部17や溝部13等の形状・寸法のデータ)を基に形状、大きさや肉厚を決定して、射出成形により所定形状に形成したものである。
【0059】
そして、この部分塗装用マスキング材40は、内部非塗装部17の突出側先端面(図3の上面)17aを覆う矩形板状の被覆部41と、被覆部41の外周縁に一体に設けられた環状把持部(把持部)42とを有している。この環状把持部42は、矩形枠状をなし、被覆部41の外周縁から略直角に屈曲するように連設されている。また、この環状把持部42は、この部分塗装用マスキング材40が内部非塗装部17に取り付けられた状態で、内部非塗装部17の外側面たる外周面17bの突出先端側(図3の上側)に弾接される把持内側面たる環状内周面42aを有している。
【0060】
この部分塗装用マスキング材40では、被塗物10の内部領域に設けられた内部非塗装部17をマスキングすることができる。また、この部分塗装用マスキング材40は、環状内周面42aを内部非塗装部17の外周面17bに弾接させつつ環状把持部42で内部非塗装部17を把持することで、該内部非塗装部17に取り付けられる。このため、この部分塗装用マスキング材40では、環状把持部42の環状内周面42aと内部非塗装部17の外周面17bとの間で、弾力により密着性や締め付け性が向上している。したがって、環状把持部42と内部非塗装部17とを確実に密着させて両者間に隙間が形成されることを確実に抑えることができるとともに、環状把持部42により内部非塗装部17に対して部分塗装用マスキング材40を確実に保持させることができる。
【0061】
その他の構成及び作用効果は、前記実施形態1と同様であるため、前記実施形態1を援用することで、その説明を省略する。
【0062】
また、この実施形態2において、矩形枠状の四隅に切断部を設けて環状把持部42を4つに分断することで、環状把持部42の代わりに、把持内側面同士が互いに対向するように対峙して設けられた二対の対峙把持部とすることもできる。
【0063】
(実施形態3)
図5に示される本実施形態は、前記実施形態1において、前記第1及び第2の対峙把持部22及び23のうち前記塗装見切り線14側の第1の対峙把持部22の形状を変形したものである。
【0064】
すなわち、この実施形態に係る第1の対峙把持部22は、先端に向かうほど肉厚が薄くなるように先細り形状とされて、部分塗装用マスキング材20が端縁非塗装部12に取り付けられた状態で端縁非塗装部12の外側面(溝13側の外側面)12bとの間に対峙把持部22の先端に向かうほど幅が大きくなる隙25を形成する、先細先端部26を有している。このため、この第1の対峙把持部22は、部分塗装用マスキング材20が端縁非塗装部12に取り付けられた状態で、端縁非塗装部12の外側面12bの突出先端側(図5の上側)の部分に弾接される把持内側面22aと、この把持内側面22aよりも先端側に隙25を形成する先細先端部26とを有している。
【0065】
したがって、この実施形態の部分塗装用マスキング材20では、第1の対峙把持部22が先端側に先細先端部26を有しているので、溝部13の底面13aへの塗料の付着が第1の対峙把持部22の先端側で妨げられることを抑えることができ、塗装見切り線14を含む溝部13の底面13aの全体に確実に塗料を付着させるのに有利となる。
【0066】
また、部分塗装用マスキング材20が端縁非塗装部12に取り付けられた状態で、第1の対峙把持部22の先端側と端縁非塗装部12の外側面12bとの間に隙25がない場合は、端縁非塗装部12の外側面12bに塗られた塗膜と、第1の対峙把持部22の外表面に塗られた塗膜とが、塗料の表面張力により、繋がってしまう場合がある。そうすると、部分塗装用マスキング材20を取り外す時に、端縁非塗装部12の外側面12bや被塗装面15に形成された塗膜30が剥げてしまうおそれがある。
【0067】
その点、この実施形態の部分塗装用マスキング材20では、塗装見切り線14側の第1の対峙把持部22において、先細先端部26と端縁非塗装部12の外側面12bとの間に隙25が形成されているので、この隙25の存在により、端縁非塗装部12の外側面12bに塗られた塗膜と第1の対峙把持部22の外表面に塗られた塗膜とが繋がることを阻止することができる。このため、部分塗装用マスキング材20を取り外す時に、端縁非塗装部12の外側面12bや被塗装面15に形成された塗膜30が剥げてしまうようなことがない。
【0068】
したがって、この部分塗装用マスキング材20によれば、塗装見切り線14を含む被塗装面15により確実に塗装を施すことができる。
【0069】
その他の構成及び作用効果は、前記実施形態1と同様であるため、前記実施形態1を援用することで、その説明を省略する。
【0070】
(実施形態4)
図6に示される本実施形態は、前記実施形態2において、環状把持部42の形状を変更したものである。
【0071】
すなわち、この実施形態に係る環状把持部42は、先端に向かうほど肉厚が薄くなるように先細り形状とされて、部分塗装用マスキング材40が内部非塗装部17に取り付けられた状態で内部非塗装部17の外周面17bとの間に環状把持部42の先端に向かうほど幅が大きくなる隙43を形成する、先細先端部44を有している。このため、この環状把持部42は、部分塗装用マスキング材40が内部非塗装部17に取り付けられた状態で、内部非塗装部17の外周面17bの突出先端側(図6の上側)の部分に弾接される環状内周面42aと、この環状内周面42aよりも先端側に隙43を形成する先細先端部44とを有している。
【0072】
したがって、この実施形態の部分塗装用マスキング材40では、環状把持部42が先端側に先細先端部44を有しているので、溝部13の底面13aへの塗料の付着が環状把持部42の先端側で妨げられることを抑えることができ、塗装見切り線14を含む溝部13の底面13aの全体に確実に塗料を付着させるのに有利となる。
【0073】
また、この実施形態の部分塗装用マスキング材40では、先細先端部44と内部非塗装部17の外周面17bとの間に隙43が形成されているので、この隙43の存在により、内部非塗装部17の外周面17bに塗られた塗膜と環状把持部42の外表面に塗られた塗膜とが繋がることを阻止することができる。このため、部分塗装用マスキング材40を取り外す時に、内部非塗装部17の外周面17bや被塗装面15に形成された塗膜30が剥げてしまうようなことがない。
【0074】
したがって、この実施形態の部分塗装用マスキング材40によれば、塗装見切り線14を含む被塗装面15により確実に塗装を施すことができる。
【0075】
その他の構成及び作用効果は、前記実施形態2と同様であるため、前記実施形態2を援用することで、その説明を省略する。
【0076】
(その他の実施形態)
前記実施形態1、3における部分塗装用マスキング材20及び前記実施形態2、4における部分塗装用マスキング材40を構成する軟質の弾性材料としては、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーの他に、弾性変形する材質であれば好適に用いることができる。
【0077】
また、部分塗装用マスキング材20及び40の肉厚は、被塗物の形状や非塗装部の面積に応じて適宜設定することができる。部分塗装用マスキング材の肉厚が厚すぎると被塗物の変形に対して十分に追従することが困難となる。一方、部分塗装用マスキング材の肉厚が薄すぎると、マスキング材としての必要な強度を確保することが困難になったり、取り扱い性が低下して作業性が低下したりするおそれがある。
【0078】
なお、前記実施形態1〜4では、金属めっき層16を予め形成する例について説明したが、この金属めっき層16をなくしてもよい。
【0079】
また、前記被塗物10は金属製品であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態1に係り、(a)は部分塗装用マスキング材を被塗物に取り付けた状態を示す要部断面図であり、(b)は被塗装面に塗膜を形成した状態を示す要部断面図であり、(c)は塗装後に被塗物から部分塗装用マスキング材を取り外した状態を示す要部断面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係り、被塗物の平面図である。
【図3】本発明の実施形態2に係り、(a)は部分塗装用マスキング材を被塗物に取り付けた状態を示す要部断面図であり、(b)は被塗装面に塗膜を形成した状態を示す要部断面図であり、(c)は塗装後に被塗物から部分塗装用マスキング材を取り外した状態を示す要部断面図である。
【図4】本発明の実施形態2に係り、被塗物の平面図である。
【図5】本発明の実施形態3に係り、部分塗装用マスキング材を被塗物に取り付けた状態を示す要部断面図である。
【図6】本発明の実施形態4に係り、部分塗装用マスキング材を被塗物に取り付けた状態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0081】
10…被塗物 11…一般部
12…端縁非塗装部(突状非塗装部) 13…溝部
14…塗装見切り線 15…被塗装面
16…内部非塗装部(突状非塗装部)
20、40…部分塗装用マスキング材
21、41…被覆部 22…対峙把持部(把持部)
23…対峙把持部(把持部、折り返し把持部)
22a、23a…把持内側面
24…屈曲先端部 24a…屈曲先端内面
25、43…隙 26、44…先細先端部
42…環状把持部(把持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物の被塗装面から突出する突状非塗装部に取り付けられる部分塗装用マスキング材であって、
軟質の弾性材料よりなり、
前記突状非塗装部の突出側先端面を覆う被覆部と、
前記被覆部の外縁に一体に設けられ、前記突状非塗装部の外側面に当接する把持内側面を有して該突状非塗装部を把持する把持部と、を備えていることを特徴とする部分塗装用マスキング材。
【請求項2】
前記被塗装面と前記突状非塗装部の前記外側面との境界線が、該突状非塗装部を把持した前記把持部で覆われずに表出するような形状・寸法とされていることを特徴とする請求項1記載の部分塗装用マスキング材。
【請求項3】
前記把持部は、前記把持内側面同士が互いに対向するように対峙して設けられた少なくとも一対の対峙把持部であることを特徴とする請求項1又は2記載の部分塗装用マスキング材。
【請求項4】
前記突状非塗装部は前記被塗物の端部に設けられた端縁非塗装部であり、
前記端縁非塗装部の前記外側面の一つたる端面に前記把持内側面が当接する前記対峙把持部の一方は、該端縁非塗装部の裏面に当接する屈曲先端内面をもつ屈曲先端部を一体に有する折り返し把持部であることを特徴とする請求項3記載の部分塗装用マスキング材。
【請求項5】
前記突状非塗装部は前記被塗物の内部領域に設けられた内部非塗装部であり、
前記把持部は、該内部非塗装部の前記外側面たる外周面に当接する環状内周面を前記把持内側面として有する環状把持部であることを特徴とする請求項1又は2記載の部分塗装用マスキング材。
【請求項6】
前記把持部は、前記把持内側面を前記突状非塗装部の外側面に弾接させた状態で該突状非塗装部を把持することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の部分塗装用マスキング材。
【請求項7】
前記把持部は、先端に向かうほど肉厚が薄くなるように先細り形状とされて、前記突状非塗装部の外側面との間に隙を形成する、先細先端部を有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の部分塗装用マスキング材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate