部分的に生分解可能な温度およびpH感受性ヒドロゲル

pHおよび温度の変化に応答してその体積および形状が変化する、部分的に生分解可能なヒドロゲルを、デキストラン−マレイン酸モノエステルおよびN−イソプロピルアクリルアミドを含む組成物のUV照射によって製造する。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、The National Textile Center との二次契約に従って、United States Department of Commerce Prime Grant Award No. 99-27-07400 下で、少なくとも一部分米国政府の支援を得た。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連明細書の相互参照
本明細書は、米国仮特許出願第 60/440,355 号(2003年1月16日出願)に基づく権利を主張している。
【0003】
技術分野
本発明は、多糖類をベースとした、例えばデキストランをベースとしたバイオマテリアルに温度感受性を与えることに関する。
【0004】
本発明の背景
デキストラン−マレイン酸モノエステル・ヒドロゲル前駆体を光架橋することによって形成される生分解ヒドロゲルは、米国特許第 6,476,204 号に記載されている。これらのヒドロゲルはpH感受性であるが、温度感受性ではなく、すなわちその体積および構造は温度変化に影響されない。
【0005】
温度感受性ヒドロゲルは既知である。最も広く研究されているこれらのヒドロゲルは、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)ヒドロゲルである。これらのヒドロゲルは、約33℃で低臨界溶液温度(lower critical solution temperature)(LCST)を示すことが示されている。PNIPAAmヒドロゲルは、生分解性ではない。
【0006】
本発明の要約
多糖類−マレイン酸モノエステル前駆体、例えばデキストラン−マレイン酸モノエステル前駆体は、ヒドロゲル前駆体としてだけではなく架橋剤としても機能する多糖類−マレイン酸モノエステルとの共前駆体(co-precursor)として、温度感受性ヒドロゲル前駆体N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)と共に用いて、部分的に生分解可能な有用なハイブリッド・ヒドロゲルを、すなわち温度の上昇に伴って水の保持が減少し、かつpHの増加に伴って膨張率が増大する、部分的に生分解可能なヒドロゲルを形成することが可能であることが見出されている。このことは、体内で、ヒドロゲル中で、(a)特に低臨界溶液温度(LCST)が体温より低い場合、体温もしくは体温付近への温度の上昇、および(b)pHの増大に際して、捕捉されている薬物の生体内での放出を可能とする。従って、ここでいう有用なハイブリッド・ヒドロゲルは、外面温度の上昇に対して、または外面pHの増加に対して感受性である。たとえポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)鎖がそうでなくとも、多糖類−マレイン酸モノエステルが形成した架橋結合が生分解性であるため、当該ヒドロゲルは in vivo で時間をかければ分解することになり、本品は部分的に生分解可能である。また、2つのタイプの前駆体の添加組成比を変化させることによって、ハイブリッド・ヒドロゲルの放出性は制御可能であり、LCSTは体温もしくは体温付近に調節され得ることが見出されている。
【0007】
本発明における1つの態様において、本発明は、部分的に生分解可能であり、かつpHの変化に応答して、かつ/または温度変化に応答してその形状と体積が変化するヒドロゲルであって、10から75重量%のデキストラン−マレイン酸モノエステルおよび90重量%から25重量%のN−イソプロピルアクリルアミドを含み、デキストラン−マレイン酸モノエステルとN−イソプロピルアクリルアミドの総量が100%である組成物中で、デキストラン−マレイン酸モノエステルおよびN−イソプロピルアクリルアミドを光架橋することを含む方法によって形成されるヒドロゲルに関する。
【0008】
別の態様において、本発明は、デキストラン−マレイン酸モノエステルおよびN−イソプロピルアクリルアミドの総量を100%として、10から75重量%のデキストラン−マレイン酸モノエステルおよび90から25重量%のN−イソプロピルアクリルアミドの溶液を含むヒドロゲル形成系に関する。
【0009】
“ヒドロゲル”という用語は、ここでは、水中で膨張することができ、かつ溶解することなくその構造中に有意な量の水を保持し得るポリマー物質を意味する。
【0010】
“生分解ヒドロゲル”という用語は、ここでは、水および/または天然に見出される酵素によって分解されるポリマーの架橋結合によって形成されるヒドロゲルを意味する。デキストラン−マレイン酸モノエステル・ユニットは生分解性であるが、N−イソプロピルアクリルアミド・ユニットはそうではないために、“部分的に生分解可能なヒドロゲル”という用語が、ここで用いられる。
【0011】
“ヒドロゲル前駆体”という用語は、ここでは、媒体中の溶液において光架橋によってヒドロゲルを形成するポリマーもしくはその他の組成物を意味する。
“光架橋”という用語は、ここでは、照射エネルギーの適用によってビニル結合を切断し、架橋を形成させることを意味する。
ヒドロゲルの低臨界溶液温度(LCST)は、吸熱の開始温度であり、そしてヒドロゲルが崩壊し、ヒドロゲルの体積が急激に縮小する温度である。
【0012】
図面の簡単な記載
図1は、Dex−MA:PNIPAAmの重量比に対するLSCT(℃)のグラフであり、実施例の結果を示している。
図2は、個々のサンプルに対する膨張率のグラフであり、実施例の結果を示している。
図3は、種々のサンプルにおける時間に対する水分保持値を表記し、実施例の結果を示している。
図4は、サンプルにおける時間に対する水取り込み値を表記し、実施例の結果を示している。
図5は、サンプルにおけるpHに対する膨張率を表記し、実施例の結果を示している。
【0013】
詳細な説明
1例として、20から65重量%のデキストラン−マレイン酸モノエステルおよび80重量%から35重量%のN−イソプロピルアクリルアミドを含む組成物中で、そして別の場合において、25から40重量%のデキストラン−マレイン酸モノエステルおよび75重量%から60重量%のN−イソプロピルアクリルアミドを含む組成物中で、デキストラン−マレイン酸モノエステル(Dex−MAと記載されることもある)およびN−イソプロピルアクリルアミドを光架橋することによって、ヒドロゲルを形成する。
N−イソプロピルアクリルアミドは容易に購入し得る。
【0014】
デキストラン−マレイン酸モノエステルは、米国特許第 6,476,204 号(その全体が、引用により本明細書に取り込まれる)に記載されており、そしてデキストランのそれぞれのα−D−グルコピラノシルのそれぞれのグルコース・ユニットの、マレイン酸による平均置換度が0.60から1.6の範囲であり、かつ40,000から80,000の範囲の重量平均分子量(デキストランに基づく)を有するデキストラン−マレイン酸モノエステルである。
【0015】
“置換度”という用語は、ここでは、デキストランのα−D−グルコピラノシル部分のグルコース・ユニットにおいて、マレイン酸とエステルを形成しているヒドロキシル基の数を意味する。それぞれのグルコース・ユニットは、3個のヒドロキシル基を含むことから、最大置換度は3.0である。平均置換度は、ヒドロゲル前駆体の分子における全てのグルコース・ユニットに基づく平均置換度を意味する。
【0016】
“デキストランに基づく”という用語は、ここでは、言及される重量平均分子量が、デキストラン−マレイン酸モノエステルを製造するためにデキストラン−マレイン酸モノエステルのデキストラン部分を提供するデキストラン出発物質の重量平均分子量であることを意味する。ここで記載の重量平均分子量は、単分散ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。
【0017】
1例として、デキストラン−マレイン酸モノエステルは、0.85から0.95の範囲の平均置換度を有し、65,000から75,000の範囲の重量平均分子量を有する。
【0018】
デキストラン−マレイン酸モノエステル前駆体は、ルイス塩基触媒の存在下で、デキストランをマレイン酸無水物と反応させることによって容易に製造される。
デキストランとマレイン酸無水物との反応は、好ましくは、双極性非プロトン性溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中で行われる。LiClは、好ましくは、DMFへのデキストランの溶解性を増大させるために、DMF反応溶媒中に含まれる。LiClはDMFと塩を形成し、それによってDMFの極性を増加させることによって、デキストランの溶解性を増大させる。
ルイス塩基触媒は、好ましくはトリエチルアミン(TEA)である。
【0019】
該反応は、例えば0.3:1から3.0:1の範囲のマレイン酸無水物:デキストランのヒドロキシル基のモル比で、0.001:1.0から0.10:1.0の範囲のトリエチルアミン(TEA):マレイン酸無水物のモル比で、20℃から80℃の範囲の反応温度で、1時間から20時間もしくはそれ以上の範囲の反応時間で行うことができる。
【0020】
0.85から0.95の範囲の平均置換度および65,000から75,000の範囲の重量平均分子量を有するデキストラン−マレイン酸モノエステル・ヒドロゲル前駆体の製造は、米国特許第 6,476,204 号の4欄13−29行に記載されている。米国特許第 6,476,204 号に記載されている改良方法が、LiCl/ジメチルホルムアミド(50wt%)溶媒系、マレイン酸無水物1モルに対して0.10モルのトリエチルアミンに代えてマレイン酸無水物1モルに対して0.06モルのトリエチルアミンを、そして8時間に代えて16時間の反応時間を用いることによって達成されることが見出されている。
【0021】
我々は、ここで、デキストラン−マレイン酸モノエステルおよびN−イソプロピルアクリルアミド・ヒドロゲル前駆体からの、ヒドロゲルの製造について述べる。この製造は、次のように行われ得る:ヒドロゲル前駆体は、適切な重量比で蒸留水に溶解し、上記の濃度、すなわち10〜30%(w/v)濃度の溶液とし、次に、例えばプロトン性溶媒(例えばN−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、またはジメチルスルホキシド)中の、光開始剤(例えば2,2−ジメトキシ 2−フェニル アセトフェノン、すなわちDMPAP)(例えばヒドロゲル前駆体の2〜10%(w/w)の量で)の溶液を、この溶液に加え、例えば室温で、5から30時間UVを照射することによって、光架橋を行う。次に未反応の化学物質を、得られたヒドロゲルから好ましくは浸出して除く。ヒドロゲルの乾燥を、好ましくは2時間熱水(50℃)に浸すことによって行い、収縮させ、そして、真空オーブンで、部分的に収縮したヒドロゲルを60℃で、5から15時間、例えば終夜乾燥させる。
【0022】
本発明のヒドロゲルは、温度感受性であり、すなわち、温度の上昇が、収縮および水の喪失を起こす。
本発明のヒドロゲルは、pH感受性であり、すなわち、ヒドロゲルの膨張率は、pHの増大に伴って増大する。“膨張率”という用語は、米国特許第 6,476,204 号で示されている定義で用いる。
【0023】
ここに記載するヒドロゲルは、米国特許第 6,476,204 号のヒドロゲルと同じ目的に有用である。温度およびpH感受性、および添加組成物を変更することによってこれらを変化させる能力は、より大きな制御を可能とする。
【0024】
本発明のヒドロゲルの低臨界溶液温度(LCST)は、デキストラン−マレイン酸モノエステル・ヒドロゲル前駆体のパーセンテージの増加に伴って上昇する。本明細書のヒドロゲルは、ここにいうヒドロゲルがヒトの生物医学的適用のために用いられる場合は、該ヒドロゲルが体温未満もしくはその付近(例えば2℃以内)のLCSTを有することが望ましい。
【0025】
本発明は、実験および結果によって支持され、その結論は、米国仮特許出願 60/440,355 号(その全体が引用によって本明細書に組み込まれている)の一部である、“Design and Synthesis of Biodegradable and Intelligent Hydrogels”と題された明細書に記載されている。
本発明は、下記の実施例によって説明される。
【実施例】
【0026】
実施例I〜V
それぞれの実施例において、デキストラン−マレイン酸モノエステルは、5%分枝した重量平均分子量69,800のデキストラン(Sigma Chemical Companyから購入)2gを、LiCl/ジメチルホルムアミド(50wt%)溶媒系中で、90℃で、窒素下で溶解させることによって得た。デキストランを清澄に溶解させた後、溶液を60℃に冷却し、次に、トリエチルアミンを、添加されるべきマレイン酸無水物に対して6mol%とする量で加えた。溶液を15分間撹拌した。次に、この溶液に、マレイン酸無水物を、3.63gmの量で、ゆっくりと加えた。反応は、60℃で、窒素下、16時間行った。冷イソプロピルアルコールで反応生成物を沈殿させ、濾過し、イソプロピルアルコールで数回洗浄し、次に真空オーブン中室温で乾燥した。置換度0.9を有するデキストラン−マレイン酸ヒドロゲル前駆体を、すなわちデキストランのグルコース環1個当たり0.9個のヒドロキシル基がマレイン酸とエステルを形成している前駆体を得た。
【0027】
下記の表1に示した異なる重量比のデキストラン−マレイン酸・ヒドロゲル前駆体(Dex−MA)およびN−イソプロピルアクリルアミド・ヒドロゲル前駆体(NIPAAm)を、蒸留水に溶解し、20%(w/v)の濃度の溶液を製造した。光開始剤、すなわち2,2−ジメトキシ 2−フェニル アセトフェノン(ヒドロゲル前駆体に対して5%(w/w))を、先ず、N−メチルピロリドン(NMP)に溶解させ、次にヒドロゲル前駆体の溶液と混合した。得られた均一な透明な混合物を、ポータブル長波長UVランプ (365nm, 8W)を用いて、室温で、22時間照射した。得られたヒドロゲルを、先ず、テトラヒドロフラン(THF)に、室温で12時間浸漬した。この間、未反応の化学物質を浸出除去するために、THFは、定期的に新鮮なTHFと交換した。次に、ヒドロゲルを、蒸留水で、少なくとも48時間さらに精製し、蒸留水は、数時間毎に交換し、精製したヒドロゲルを特性決定するために平衡に到達させた。前駆体の添加組成物および他の化学物質は、下記の表1に挙げられている。ここで、サンプルは、全てDMN(D=デキストラン、M=マレイン酸無水物、およびN=NIPAAm)と表記され、そしてサンプル DMN1、DMN2、DMN3、DMN4、およびDMN5は、それぞれ実施例I、II、III、IV、およびVを構成し、NIPAAmはN−イソプロピルアクリルアミド・ヒドロゲル前駆体であり、デキストラン−MAはデキストラン−マレイン酸モノエステル・ヒドロゲル前駆体であり、そしてNMPはN−メチルピロリドンであり、そして転換率は、モノマーから合成されたゲルの重量パーセントである。
【0028】
【表1】

DMN5は製造されたが、本品は水溶媒中で速やかに、通常24時間以内に崩壊および/または溶解するので、それに続く特性決定はできなかった。
【0029】
比較の目的で、100%のポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)ヒドロゲルを、Zhang, X.Z., et al., J. Colloid Interface Sci 246, 105-111 (2002) の記載に従って合成し、精製した。要約すれば、100mgのNIPAAmを1.2mlの水に溶解し、2.0mgの架橋リンカー、すなわちN,N’−メチルビスアクリルアミドの存在下で、過硫酸アンモニウムを開始剤とし、N,N,N',N'−テトラメチルエチレン ジアミンを触媒として用いて、重合を室温で50分間行った。
【0030】
ヒドロゲルサンプルのLCSTの特性を、示差走査熱量分析計(TA2920 Modulated DSC, TA Instruments, USA)を用いることによって測定した。全てのサンプルを、室温で少なくとも2日間蒸留水に浸漬し、膨潤状態とした。約10mgの膨潤したサンプルを密封用アルミニウム容器にいれ、次に密封用アルミニウム蓋によって密封した。膨潤したヒドロゲルサンプルの熱分析を、25から55℃で、25ml/分の流速の乾燥窒素雰囲気下で、3℃/分の加熱速度で行った。上記の通りに測定したヒドロゲルサンプルのLCSTを、図1に示す。ここで、PNIPAAmに対するDex−MAの重量比の関数としてLCSTを示す。データは、全てのサンプルが純粋なPNIPAAm(約35℃)より高いLSCTを有すること、およびDex−MA比の増加がLCSTの上昇をもたらすことを示している(PNIPAAmのLCST=約35℃, DMN1のLCST=35.9℃;DMN2のLCST=36.5℃;DMN3のLCST=38.1℃;およびDMN4のLCST=39.1℃)。Dex−MA比の増加に伴って観察されるこのLCSTの上昇は、エンタルピーの減少に関連していた(DMN1についてのΔH=0.61mJ/mgから、DMN4についてのΔH=0.14mJ/mg)。
【0031】
ヒドロゲルサンプルの内部形態を次のように決定した。室温で蒸留水中で最大膨張率に達成したサンプルを、液体窒素で急速凍結し、バーチス凍結乾燥機(Gardiner, NY) で、真空下で、−42℃で、全ての水が昇華するまで3日間凍結乾燥した。凍結乾燥したサンプルを、それぞれ液体N温度下で注意深く破砕し、得られた破砕片の内部形態を走査電子顕微鏡(Hitachi S4500SEM, Mountain View, CA)で検討した。SEM観察に先立って、試料をアルミニウム台に固定し、金で被覆した。それぞれの場合において、蜂の巣構造が観察されたが、孔の構造は、PNIPAAmにおける不揃いの円形で、うねった薄い壁を有する緩く浅い孔から、ハイブリッド・ヒドロゲルにおける鋭い明確な角度と4から7員環の硬い壁の孔を有する非常に明確に区画された蜂の巣構造に変化していた。平均孔サイズおよび単位当たりの孔の数を下記の表2に示す。
【0032】
【表2】

表2に示したように、孔のサイズはDex−MA含量の増加に伴って減少した。
【0033】
室温での最大膨張率を、サンプルを蒸留水に48時間浸漬し、重量測定よって決定した。それぞれのサンプルについて3回の測定を行った。ここでは、“膨張率”という用語は、膨潤前のゲルの乾燥重量当たりの膨潤したゲルにおける水の重量を意味する。室温で得られる最大膨潤率を、図2に示す。図2に示したように、ヒドロゲルの最大膨潤率は、Dex−MA含量の増加に伴って減少した。
【0034】
温度応答力学(Temperature response kinetics)を、50℃で重量測定によって決定した。温度をヒドロゲルのLCSTより十分に上となるよう選択し、短時間で、体積および水含量における劇的な変化を得た。測定前に、ヒドロゲルサンプルを蒸留水に室温で24時間浸漬した。次にサンプルを50℃の蒸留水浴に移した。ゲルの重量変化を一定時間間隔で記録した。水分保持値が、そのヒドロゲルの温度感受性を示すために測定された。測定された水分保持値を、図3に示した。水分保持(WR)は、100×[(W−W)/W]{ここで、Wは任意の時間間隔でのヒドロゲルの重量であり、他の記号は室温での膨張率で定義したものと同一である}として定義される。データは、PNIPAAmの、デキストランをベースとしたヒドロゲルへの組み込みが、それ以前には存在しなかった熱応答能力を提供することを示している。熱応答能力の速度は、PNIPAAm前駆体に対するDex−MAの組成比に伴って変化した。熱応答の程度の減少は、Dex−MAの組み込みに伴うと予測したが、DMN2、DMN3、およびDMN4の場合は反対であった。サンプル DMN1は、表面に厚い表皮層を支持する気泡が生じ、これはおそらくDex−MA含量が不十分であるためであり、その結果水分の損失が妨げられるため、例外とすべきと考えられた。
【0035】
ヒドロゲル膨張力学(Swelling kinetics)は、100×[(W−W)/W]{ここで、記号は上記と同一である}として定義される水取り込み(WU)によって定義した。試験は次の通りに行った:膨潤したゲルサンプルを、始めに熱水(50℃)に2時間浸漬し、次に、収縮したヒドロゲルを、さらに、ゲル重量が一定になるまで、真空オーブン中60℃で終夜乾燥した。次に乾燥したゲルの膨潤速度を、22℃で重量測定した。サンプルを、一定時間間隔で、熱水から取り出した。湿らせた濾紙で表面の水をぬぐった後、ゲルの重量を記録した。次に水取り込みを決定した。結果を図4に示す。図4に示したように、Dex−MA含量が高い(DMN3およびDMN4)ときは、ヒドロゲルは水取り込みの最大値に達することなく水中で崩壊する。他のサンプルにおいては、Dex−MAの比が増加するつれて、水取り込み率が増加した。
【0036】
ヒドロゲルをpH 3、7、および10の緩衝溶液に浸漬することによって、ヒドロゲルのpH感受性を検討した。浸漬したヒドロゲルを前もって定めた時間間隔で取り出し、洗浄し、表面の水を濡らせた濾紙でぬぐい、安定した重量が得られるまで秤量を行った。膨張率(上記で定義した通り、そして上記の通りに測定した)の結果を図5に示す。データはpHの増加に伴って膨張率が増加することを示す。
【0037】
データはpH感受性のみならず温度感受性も示しており、そして相転移温度 (LCST)は体温付近に調節され得ることを示している。
【0038】
変法
上記の変法は当業者に明らかである。従って、本発明の範囲は、請求項によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、Dex−MA:PNIPAAmの重量比に対するLSCT(℃)のグラフであり、実施例の結果を示している。
【図2】図2は、個々のサンプルに対する膨張率のグラフであり、実施例の結果を示している。
【図3】図3は、種々のサンプルにおける時間に対する水分保持値を表記し、実施例の結果を示している。
【図4】図4は、サンプルにおける時間に対する水取り込み値を表記し、実施例の結果を示している。
【図5】図5は、サンプルにおけるpHに対する膨張率を表記し、実施例の結果を示している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHの変化に応答して かつ/または温度の変化に応答して、その形状および体積が変化するヒドロゲルであって、10から75重量%のデキストラン−マレイン酸モノエステル、および90から25重量%のN−イソプロピルアクリルアミドを含み、デキストラン−マレイン酸モノエステルおよびN−イソプロピルアクリルアミドの総量が100%である組成物中で、デキストラン−マレイン酸モノエステルおよびN−イソプロピルアクリルアミドの光架橋によって形成されるヒドロゲル。
【請求項2】
20から65重量%のデキストラン−マレイン酸モノエステルおよび80から35重量%のN−イソプロピルアクリルアミドを含む組成物中で、デキストラン−マレイン酸モノエステルおよびN−イソプロピルアクリルアミドを光架橋結合することによって形成される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
デキストラン−マレイン酸モノエステルが、0.85から0.95の範囲の平均置換度、および65,000から75,000の重量平均分子量(デキストランに基づく)を有する、請求項2に記載のヒドロゲル。
【請求項4】
体温より低いかそれに近い低臨界溶液温度(lower critical solution temperature)を有する、請求項3に記載のヒドロゲル。
【請求項5】
デキストラン−マレイン酸モノエステルおよびN−イソプロピルアクリルアミドの総量を100%として、10から75重量%のデキストラン−マレイン酸モノエステル、および90から25重量%のN−イソプロピルアクリルアミドの溶液を含む、ヒドロゲル形成系。


【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【公表番号】特表2006−515640(P2006−515640A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
化学;冶金 | 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物 | 仕上げ;一般的混合方法;サブクラスC08B,C08C,C08F,C08GまたはC08Hに包含されない後処理 | 高分子物質の処理方法または混合方法 | 波動エネルギーまたは粒子線による処理
化学;冶金 | 染料;ペイント;つや出し剤;天然樹脂;接着剤;他に分類されない組成物;他に分類されない材料の応用 | 他に分類されない応用される物質;他に分類されない物質の応用 | 物質であって,他に分類されないもの
【出願番号】特願2004−566918(P2004−566918)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/035985
【国際公開番号】WO2004/064816
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(592035453)コーネル・リサーチ・ファンデーション・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CORNELL RESEARCH FOUNDATION, INCORPORATED
【Fターム(参考)】
高分子物質の処理方法 | 高分子材料(化学構造) | 多糖類、その誘導体
高分子物質の処理方法 | 配合剤又は処理剤(化学構造) | 有機化合物 | 窒素含有化合物 | アミド
高分子物質の処理方法 | 配合剤又は処理剤(機能) | 架橋剤、加硫剤、それらの助剤、促進剤
高分子物質の処理方法 | 架橋(手段) | 波動エネルギー又は粒子線を適用するもの
高分子物質の処理方法 | 架橋(操作) | 架橋、硬化時の条件の特定