説明

部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液

本発明は、部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液、その製造方法、そして動物飼料、食品および食品サプリメントならびに化粧用組成物および医薬組成物に対する添加物としてのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液、その製造方法、ならびに、動物飼料、食品および食品サプリメントと、化粧用組成物および医薬組成物に対する添加物としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドクラスの物質は、カロテンおよびキサントフィルの2つの主要な群に分類される。例えばβ-カロテンまたはリコペンなどの純粋なポリエン炭化水素であるカロテンとは異なり、キサントフィルには、ヒドロキシル基、エポキシ基および/またはカルボニル基などの酸素官能基も存在する。この群の典型的なメンバーは、とりわけ、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテインおよびゼアキサンチンである。
【0003】
合成によってのみでは取得することができないが、天然供給源からも単離することができるこれらのポリエンは、食品・飼料産業のための、および製薬産業のための重要な着色剤および活性成分であり、例えばそのプロビタミンA活性のために、注目されている。
【0004】
カロテンおよびキサントフィルの両者は水に不溶であり、油脂にもわずかな溶解性しか見出されていない。この制限された溶解性および酸化に対する高い感受性は、食品および飼料の着色での、化学合成により取得された比較的粗粒の生成物の直接的な使用の障害となり、これは、粗い結晶状態の物質は、保存安定性を欠き、弱い着色しかもたらさないためである。カロテノイドの実用に対する欠点であるこれらの作用は、カロテノイドが水性媒体にほぼ不溶であるため、水性媒体で特に顕著に表れる。
【0005】
微粉化形態でカロテノイドが存在し、場合によっては保護コロイドにより酸化から保護されている特製の調合物によってしか、食品の着色での改善された着色力は達成されない可能性がある。さらに、飼料で用いられるそのような調合物は、例えば卵黄または魚の着色において、カロテノイド(カロテンまたはキサントフィル)のより高いバイオアベイラビリティをもたらす、つまり間接的によりよい着色効果をもたらす。
【0006】
着色力を改善し、吸収性および/またはバイオアベイラビリティを増大させるために、様々な方法が報告されており、これらは全て、活性成分の結晶サイズを低下させ、10μm未満の粒径範囲にするという目的を有する。
【0007】
報告された多数の方法、とりわけ、Chimia 21, 329 (1967)、WO 91/06292およびWO 94/19411に記載された方法は、コロイドミルを用いるカロテノイドの粉砕を利用し、それにより部分的には2μm未満の粒径を達成する。
【0008】
例えば、WO 2007/003543には、スクロースまたはグルコースおよび加工デンプンの存在下で粉砕し、続いてカロテノイド含有懸濁液を乾燥粉末に変換することにより、β-カロテンを、懸濁液として約0.6μmの粒径に粉砕する、粉砕方法が記載されている。
【0009】
粉砕方法に加えて、DE-A-12 11 911またはEP-A-0 410 236に記載されているものなどの、多数の乳化/噴霧乾燥複合法が存在する。
【0010】
欧州特許第EP-B-0 065 193号では、高温で、必要であれば高圧で、揮発性水混和性有機溶媒中にカロテノイドを溶解させ、溶液を保護コロイドの水溶液と混合することによりカロテノイドを沈殿させ、続いて溶液を噴霧乾燥させることにより、微粉化粉末カロテノイド調製物を製造する。
【0011】
水非混和性溶媒を使用する、微粉化粉末カロテノイド調製物を製造するための同様の方法が、EP-A-0 937 412に記載されている。
【0012】
飲料産業では、添加物は、一般的に、原液の形態で飲料に添加される。カロテノイドなどの着色剤の液体調合物のみが提供されるのではなく、対応する水溶性粉末調合物も提供され、飲料製造業者の施設での製造工程において、着色剤の水性分散液がその調合物から最初に製造される。
【0013】
EP 0 239 086には、油に溶解されたカロテノイドのエマルジョンが記載され、この場合、油滴の安定化のために、長鎖脂肪酸とアスコルビン酸とのエステルと、例えばオクテニルコハク酸デンプンなどの冷水溶解性デンプン生成物との混合物が用いられる。これらのエマルジョン中でのカロテノイド濃度は、0.1〜2%である。
【0014】
EP 0 551 638では、脂溶性ビタミンまたはカロテノイドの安定性液体エマルジョンを製造し、この場合、外相はグリセロールまたはグリセロール-水混合物であり、乳化剤および安定化剤として、アスコルビン酸と長鎖脂肪酸とのエステルを用いる。β-カロテンの場合、調製物は鮮やかな黄色によって区別される。
【0015】
WO 93/04598には、油中のカロテノイド、水分散性のマトリックス形成剤(例えば、糖)の分散物および安定化剤(例えば、ゼラチンまたはカゼイン)、ならびに乳化剤、そして場合により、グリセロールなどの非油性溶媒を含むカロテノイド組成物の製造が記載されている。
【0016】
WO 97/26802には、天然由来の疎水性色素が親水コロイドを含む水相中で界面活性剤の添加なしに分散形態で存在する、即時使用水分散性色素組成物が記載されている。
【0017】
EP 0 795 585には、保護コロイドを含まないが、少なくとも1種の特定の乳化剤を含む、微粉化カロテノイドの水性懸濁液が記載されている。得られる懸濁液の色は、粒径によって異なる。
【0018】
EP 0 832 569には、カロテノイド含有冷水分散性乾燥粉末の製造が記載され、微粉化カロテノイドの分散物を、所望の色にするために熱処理する。
【0019】
WO 2008/087140には、少なくとも1種のカロテノイド、少なくとも1種の親水性保護コロイドおよび少なくとも1種の水混和性アルコールを含む液体調合物が記載されている。
【0020】
カロテノイドの市販の粉末調合物は、良好な保存安定性を有し、様々な飲料用途(例えば、フルーツジュース、レモネード、スポーツドリンク、乳飲料またはビタミンドリンクなど)で良好な着色性を示す。ミネラル豊富なスポーツドリンクでの使用のために、または高含量のカルシウムイオンもしくはマグネシウムイオンを有する飲料水を用いる場合、ボトル詰めされた飲料は、リング形成(クリーム化)を示してはならず、ボトル壁へのカロテノイド成分の沈着も示してはならない。
【0021】
カロテノイドの粉末調合物の使用における欠点は、ダスト形成のリスク、およびそれと併せて、環境汚染のリスク、輸送工程での粉末の静電帯電のリスク、ならびに水への粉末の溶解の際の発泡または塊形成のリスクである。カロテノイドの粉末調合物が約0.1重量%のカロテノイド含有量を有する水性ストック溶液として通常用いられ、その結果、著しい量の水も常に着色対象の食品に添加されることは、同様に不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、カロテノイドの即時使用安定性調合物を提供することであった。この調合物は、例えば、保存中の微生物侵入に関する良好な保存安定性、色安定性、良好な熱安定性およびカルシウムもしくはマグネシウム含有飲料での使用に対するかまたは高含量のカルシウムイオンもしくはマグネシウムイオンを有する飲料水を用いる場合の非感受性などの市販粉末調合物の望ましい性質を有するが、粉末調合物の処理上の欠点を示さない。本発明のさらなる目的は、上記の性質を有するカロテノイドの調合物を提供することであって、この場合、調合物は、橙色のプロビタミンA富化食品(特に飲料)を製造するために用いることができ、色は黄色がかった橙色〜橙色〜赤色がかった橙色に及ぶべきである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的は、以下の成分:
1〜20重量%の少なくとも1種のカロテノイド、
0.2〜20重量%の食用油、
3〜60重量%の親水性保護コロイド、
5〜60重量%の生理学的に許容される多価アルコール、および
5〜60重量%の水
を含む部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液により達成され、ここで、重量%は該即時使用安定性懸濁液に対し、カロテノイド、食用油、保護コロイド、生理学的に許容される多価アルコールおよび水を併せた部分の合計が少なくとも80重量%であり、カロテノイドと食用油との重量比は1:0.01〜1:2である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
「即時使用」との特徴は、本発明の文脈では、本発明の懸濁液が、ユーザーによりその目的のために直接用いられることができ、したがって、食品を着色するために、または食品にプロビタミンA(β-カロテン)を富化するために、該懸濁液を食品産業で直接的に計量投入(meter)することができる特性を意味すると理解され、β-カロテンの場合、黄色がかった橙色〜赤色がかった橙色の色が生成され得る。
【0025】
「安定性」との特徴は、本発明の文脈では、微生物安定性、コロイド安定性および化学的安定性を意味すると理解される。微生物安定性とは、静菌的効果である。コロイド安定性は、相分離および色特性の変化の発生の欠如に関する。化学的安定性は、安定な色特性およびカロテノイド含有量に関する。
【0026】
本発明の即時使用安定性懸濁液は、1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%、特に好ましくは5〜10重量%のカロテノイドを含む。
【0027】
本発明の即時使用安定性懸濁液で用いることができるカロテノイドは、天然供給源から、または合成により取得できる公知の典型例である。その例は、個別の、または混合物としての、β-カロテン、リコペン、ルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、シトラナキサンチン、カンタキサンチン、エキネノン、ビキシン、β-アポ-4-カロテナール、β-アポ-8-カロテナール、β-アポ-4-カロテン酸のエステルである。好ましくは、合成的に製造した精製カロテノイドを用いる。特に好ましくは、本発明の即時使用安定性懸濁液中に存在するカロテノイドは、β-カロテン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、シトラナキサンチン、リコペンおよびルテインからなる群より選択される。非常に特に好ましくは、本発明の即時使用安定性懸濁液中に存在するカロテノイドは、特に合成により生成された、β-カロテンである。
【0028】
本発明の即時使用安定性懸濁液は、0.2〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%の食用油を含む。
【0029】
考慮に入れられる食用油は、原則として、合成油、鉱油、植物または動物由来の生理学的に許容される油である。例としては、ゴマ油、トウモロコシ胚芽油、綿実油、ダイズ油、ピーナッツ油、中鎖植物性脂肪酸のエステル、オレオステアリン、パラフィン油、ステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチルステアリル、水添ポリイソブテン、カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド、ヤシ油、パーム核油、ラノリンおよびPUFA(多価不飽和脂肪酸)(エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびα-リノレン酸など)がある。
【0030】
好ましくは、本発明の即時使用安定性懸濁液中の食用油は、植物または動物由来のものであり、30℃で液体である、ヒマワリ油、ヤシ油、パーム核油、ゴマ油、トウモロコシ胚芽油、綿実油、ダイズ油、ピーナッツ油、中鎖トリグリセリドのエステル(MCT油と称される)、魚油(サバ油、スプラット油またはサーモン油など)などである。
【0031】
特に好ましくは、本発明の即時使用安定性懸濁液中の食用油は、植物油である。非常に特に好ましくは、植物油は、中鎖トリグリセリド(MCT油)である。中鎖トリグリセリドは、非常に多くの場合、例えば、パーム核油またはココナッツ油中に存在するものなどの飽和脂肪酸のみしか含まない。
【0032】
本発明の即時使用安定性懸濁液では、カロテノイドと食用油との重量比は、1:0.01〜1:2、好ましくは1:0.05〜1:1.5、特に好ましくは1:0.2〜1:1、特に1:0.3〜1:0.7である。カロテノイドと食用油との記載した重量比の場合、通常は、用いるカロテノイドの50%超が固体として存在し、用いるカロテノイドの少ない部分(すなわち、50%未満)は、存在する食用油中に溶解している。
【0033】
カロテノイドおよび食用油は、本発明の懸濁液の疎水相の主要成分を占め、現状の技術常識では、油の一部が固体のカロテノイド粒子と結合し、油の一部が油滴状で存在し、これらの油滴は分子的に溶解したカロテノイドしか含まず、カロテノイド粒子を含まない。
【0034】
固体のカロテノイド粒子は、完全に結晶ではなく、部分的に非晶質である。本発明では、部分的に非晶質とは、95%未満の結晶化度、好ましくは70%未満の結晶化度を意味すると理解される。カロテノイド粒子の結晶部分および非晶質部分は、例えば、X線回折測定により、決定することができる。本発明の懸濁液中のカロテノイド粒子のX線非晶質部分は、好ましくは50〜100%、特に60〜100%である。
【0035】
本発明の即時使用安定性懸濁液は、3〜60重量%、好ましくは5〜40重量%、特に7〜30重量%の親水性保護コロイドを含む。
【0036】
親水性保護コロイドとして、水溶性または水膨潤性のコロイドが考慮に入れられる。好ましくは、保護コロイドは、タンパク質ベースの保護コロイド、加工デンプン誘導体および加工セルロース誘導体である。タンパク質ベースの保護コロイドは、特にカゼイン、カゼイン塩、ウシゼラチン、ブタゼラチンまたは魚ゼラチン、特に0〜250のブルーム値を有する、酸性または塩基性条件下で分解されたゼラチン、およびそれらの混合物である。加工デンプン誘導体およびセルロース誘導体は、特に、エステル、例えば、オクテニルコハク酸デンプンである。対応する製品が、Purity Gum 2000の商品名でNational Starch社から、またはClear Gum CO 01の商品名でRoquette社から、Hi Cap 100もしくはCapsulの商品名でNational Starch社から市販されている。
【0037】
好ましくは、本発明の即時使用安定性懸濁液は、親水性保護コロイドとして、化工デンプンを含む。
【0038】
化工デンプンとは、化学的および/または酵素的に生成された、デンプンの変換生成物を意味すると理解される。これらは、デンプンエーテル、デンプンエステルまたはリン酸デンプンであり得る。この群の好ましい典型例は、デンプンエステル、特にオクテニルコハク酸デンプン、例えば、Capsul(登録商標)(オクテニルコハク酸デンプンナトリウム)(National Starch社)、Cleargum CO 01(Roquette社)またはPurity(登録商標)Gum 2000(オクテニルコハク酸デンプンナトリウム)(National Starch社)など、特に、Purity(登録商標)Gum 2000などのオクテニルコハク酸デンプンナトリウムである。
【0039】
特に好ましくは、本発明の即時使用安定性懸濁液は、親水性保護コロイドとして、オクテニルコハク酸デンプンを含む。
【0040】
本発明の即時使用安定性懸濁液は、5〜60重量%、好ましくは15〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%、特に30〜40重量%の生理学的に許容される多価アルコールを含む。
【0041】
本発明の懸濁液中に存在する生理学的に許容される多価アルコールは、通常は、大気圧で、150℃を超える、好ましくは180℃を超える、特に200℃を超える沸点を有する。
【0042】
生理学的に許容される多価アルコールは、好ましくは、グリセロール、グリセロールとC1〜C5-モノカルボン酸とのモノエステル、グリセロールのモノエーテル、プロピレングリコールまたはソルビトールである。特に好ましくは、グリセロールが、生理学的に許容される多価アルコールである。
【0043】
本発明の即時使用安定性懸濁液は、5〜60重量%、好ましくは15〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%、特に30〜40重量%の水を含む。
【0044】
本発明の即時使用安定性懸濁液では、カロテノイド、食用油、保護コロイド、生理学的に許容される多価アルコールおよび水を併せた部分の合計は、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%である。
【0045】
本発明の即時使用安定性懸濁液では、親水性保護コロイド(高分子量化合物またはポリマー)に加えて、界面活性剤(低分子量化合物)のクラスからの乳化活性を有するさらなる物質の含有量は、通常、2重量%未満、好ましくは1重量%未満である。乳化活性を有する物質としての界面活性剤は、例えば、パルミチン酸アスコルビル、脂肪酸のポリグリセロールエステル(3-ポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR 90)など)、脂肪酸のソルビタンエステル(モノステアリン酸ソルビタン(Span 60)など)、PEG(20)-モノオレイン酸ソルビトール、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、長鎖脂肪酸のスクロースエステル(例えば、モノパルミチン酸スクロース)など、またはリン脂質(レシチンなど)である。
【0046】
乳化活性を有するさらなる物質がパルミチン酸アスコルビルである場合、パルミチン酸アスコルビルの含有量は、好ましくは0.5重量%未満、特に好ましくは0.25重量%未満、特に0.1重量%未満であり、重量%は懸濁液の総重量に対する。
【0047】
酸化的腐敗に対する本発明の即時使用安定性懸濁液中のカロテノイドの安定性を増大させるために、抗酸化剤として、d,l-α-トコフェロール、第三級ブチル化ヒドロキシトルエン、第三級ブチル化ヒドロキシアニソール、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩またはエトキシキンなどの安定化剤を添加するのが有利である。
【0048】
好ましくは、本発明の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液は、さらに、0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜4重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、重量%は即時使用安定性懸濁液に対する。特に好ましくは、0.5〜2.0重量%のd,l-α-トコフェロールを、抗酸化剤として、本発明の即時使用安定性懸濁液に添加する。
【0049】
特に好ましいのは、以下の成分:
3〜10重量%のβ-カロテン(カロテノイドとして)、
1〜5重量%の中鎖トリグリセリド(食用油として)、
0.5〜2.0重量%のd,l-α-トコフェロール、
10〜24重量%のオクテニルコハク酸デンプン(親水性保護コロイドとして)、
30〜40重量%のグリセロール(生理学的に許容される多価アルコールとして)、および
30〜40重量%の水
を含む、本発明の即時使用安定性懸濁液であり、ここで、β-カロテン、中鎖トリグリセリド、d,l-α-トコフェロール、オクテニルコハク酸デンプン、グリセロールおよび水を併せた部分の合計は、少なくとも95重量%であり、β-カロテンと中鎖トリグリセリドとの重量比は、1:0.3〜1:0.7である。
【0050】
本発明の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液では、部分的に非晶質のカロテノイド粒子は、好ましくは、ナノ粒子として存在する。
【0051】
ナノ粒子とは、フラウンホーファー回折により決定した粒径中央値D[4,3]=0.02〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、特に好ましくは0.05〜20μm、非常に特に好ましくは0.05〜5μm、特に0.05〜1.0μmを有する粒子を意味すると理解される。D[4,3]との表現は、フラウンホーファー回折により決定することができる体積加重直径中央値を表す(Malvern Mastersizer S, Malvern Instruments Ltd., UKについてのハンドブックを参照されたい)。
【0052】
好ましくは、本発明の懸濁液中のカロテノイド粒子は、0.05〜0.8μm、好ましくは0.1〜0.7μm、特に0.4〜0.6μmの粒径中央値D[4,3]を有する。
【0053】
特に好ましくは、本発明の即時使用安定性懸濁液中のカロテノイド粒子は、0.05〜0.8μm、好ましくは0.1〜0.7μm、特に0.4〜0.6μmの粒径中央値を有し、50〜100%、好ましくは60〜100%の平均X線非晶質部分を有する。
【0054】
本発明はさらに、以下の成分:
1〜20重量%の少なくとも1種のカロテノイド、
0.2〜20重量%の食用油、
3〜60重量%の親水性保護コロイド、
5〜60重量%の生理学的に許容される多価アルコール、および
5〜60重量%の水
を含む部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液の製造方法にも関し、ここで、重量%は該即時使用安定性懸濁液に対し、カロテノイド、食用油、保護コロイド、生理学的に許容される多価アルコールおよび水を併せた部分の合計は、少なくとも80重量%であり、カロテノイドと食用油との重量比は、1:0.01〜1:2であり、該方法は、以下のステップ:
a1) カロテノイドを、食用油と共に、水混和性有機溶媒中に、もしくは水と水混和性有機溶媒との混合物中に、30℃を超える温度で溶解させるステップ、または
a2) カロテノイドを、食用油と共に、水非混和性有機溶媒中に溶解させるステップ、
b) ステップa1)またはa2)に従い取得した溶液と、保護コロイドの分子的分散溶液またはコロイド分散溶液とを、水と生理学的に許容される多価アルコールとの混合物中で混合するステップであって、カロテノイド含有疎水相をナノ分散相として生成するステップ、
c) ステップa1)またはa2)で用いた有機溶媒を除去し、形成される懸濁液を所望のカロテノイド含有量まで濃縮するステップ
を含む。
【0055】
成分であるカロテノイド、食用油、親水性保護コロイド、生理学的に許容される多価アルコールおよび水、ならびにそれらの用いられる量に関する好ましい実施形態は、初めに既にした説明に見出すことができる。
【0056】
本発明の方法の段階a1)で用いられる水混和性溶媒は、アルコール、エーテル、エステル、ケトンまたはアセタールなどの、炭素、水素および酸素のみを含む、第一に水混和性であり、熱安定性、揮発性の溶媒である。好都合には、少なくとも10%まで水混和性であり、200℃以下の沸点を有し、かつ/または10個未満の炭素原子を有するそれらの溶媒を用いる。特に好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1,2-ブタンジオール1-メチルエーテル(1-メトキシ2-ブタノール)、1,2-プロパンジオール1-nプロピルエーテル(1-プロポキシ-2-プロパノール)、テトラヒドロフランまたはアセトンを用いる。
【0057】
本発明の文脈での「水非混和性有機溶媒」との表現は、大気圧で10%未満の水溶性を有する有機溶媒である。この場合に考慮に入れられる可能性ある溶媒は、とりわけ、ハロゲン化脂肪族炭化水素であり、例えば、塩化メチレン、クロロホルムおよび四塩化炭素、カルボン酸のエステル(炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピルなど)、およびエーテル(メチルtert-ブチルエーテルなど)などである。好ましい水非混和性有機溶媒は、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよびメチルtert-ブチルエーテルからなる群より選択される化合物である。
【0058】
本発明において、好ましくは、方法ステップa1)が行なわれ、この場合、30℃を超える温度、好ましくは50℃〜240℃、特に100℃〜200℃、特に好ましくは140℃〜180℃で、必要であれば圧力下で、カロテノイドを、食用油と共に、水混和性有機溶媒中に、または水と水混和性有機溶媒との混合物中に溶解させる。
【0059】
一部の状況では、高温の作用が、カロテノイド、特にβ-カロテンの望ましいオールトランス異性体の高い割合を減少させ得るので、カロテノイドは、できる限り迅速に、例えば、数秒の範囲で、例えば0.1〜10秒で、特に好ましくは1秒未満で、溶解させる。分子的分散溶液の迅速な製造のために、高圧(例えば、20bar〜80barの範囲、好ましくは30〜60barの範囲)の使用が有利であり得る。
【0060】
結果として得られる分子的分散溶液を、続いて、方法ステップb)で、可能であれば冷却された保護コロイドの分子的分散溶液またはコロイド分散溶液と、水と生理学的に許容される多価アルコールとの混合物中で直接的に混合し、ここで、方法ステップa1)からの溶媒成分は水相に移動し、カロテノイドと食用油の疎水相が、ナノ分散相として形成される。好ましくは、方法ステップb)で、混合物の温度を約35℃〜80℃とする。
【0061】
上記の分散液のための方法および装置のより詳細な説明に関して、現時点では、EP-B-0 065 193が参照される。
【0062】
本発明の方法において、方法ステップc)で、方法ステップa1)またはa2)で用いられる有機溶媒を除去し、形成される懸濁液を、過剰な水を除去することによりカロテノイドの所望の含有量まで濃縮する。用いる生理学的に許容される多価アルコールは、その高い沸点のために、この濃縮ステップではほとんど除去されない。
【0063】
本発明の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液は、粉末カロテノイド調合物から製造することができる水性ストック溶液と比較して、カロテノイド含有量に関して、著明により濃縮されている点で区別され、したがって、非常に少量の水しか許容しない飲料ベースにも添加することができる。本発明の懸濁液は、問題なく計量投入(meter)することができ、望ましくない沈殿を示さない。
【0064】
さらに、本発明の懸濁液は、細菌侵入に関して、また保存中の色調安定性に関して、良好な保存安定性を有する。さらに、本発明の懸濁液は、良好な熱安定性を示し、カルシウムもしくはマグネシウム含有飲料中での使用において、または高含量のカルシウムイオンもしくはマグネシウムイオンを有する飲料水を用いる場合に、必要な非感受性を示す。本発明の懸濁液と混合された飲料は、望ましくないリング形成(クリーム化)に関して、良好な安定性を有する。
【0065】
本発明の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液は、とりわけ、例えば飲料などの食品を着色するための食品調製物に対する添加物として、医薬組成物および化粧用組成物を製造するための、かつ食品サプリメント製剤(例えばヒトおよび動物分野のマルチビタミン製剤)を製造するための組成物として、好適である。好ましくは、本発明の即時使用安定性懸濁液は、飲料に対する添加物として好適である。
【0066】
本発明の懸濁液は、カロテノイドであるβ-カロテンの場合、橙色の色調を有し、黄色がかった橙色〜赤色がかった橙色の色範囲で食品を着色するために好適である。さらに、β-カロテン含有懸濁液は、食品にプロビタミンAを富化するために機能する。
【0067】
したがって、本発明は、動物飼料、食品、食品サプリメントならびに化粧用組成物および医薬組成物に対する添加物としての、特に飲料の製造における添加物としての、上記の本発明の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液の使用にも関し、ここで、本発明の懸濁液は、好ましくは、飲料に直接的に添加される。
【0068】
同様に、本発明は、本発明の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液を含む動物飼料、食品および食品サプリメント、特に飲料に関する。
【0069】
さらに、本発明は、動物飼料、食品および食品サプリメント、ならびに化粧用組成物および医薬組成物にプロビタミンAを富化するための、カロテノイドがβ-カロテンである上記の即時使用安定性懸濁液の使用に関する。
【0070】
同様に、本発明は、カロテノイドがβ-カロテンである本発明の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液を添加することによる、動物飼料、食品および食品サプリメント、ならびに化粧用組成物および医薬組成物、特に飲料にプロビタミンAを富化するための方法に関する。
【0071】
以下で実施例により本発明を説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0072】
実施例1:β-カロテン懸濁液の製造
耐熱フラスコ中で30℃の温度で、57gの結晶β-カロテン、27gのMCT油および8.4gのα-トコフェロールを、315gの共沸性イソプロパノール/水混合物に懸濁した。続いて、活性成分懸濁液を、3.4kg/hの流速で、73℃まで加熱し、混合チャンバ中で、235℃の温度および4.8kg/hの流速のさらなるイソプロパノール/水共沸混合物と継続的に混合し、ここで、β-カロテンは、171℃、65barの圧になった混合物温度で溶解した。この活性成分溶液を、第2の混合チャンバ中で、60kg/hの流速で、6646gの蒸留水中の227gのPurity Gum 2000および286gのグリセロールの水溶液と、すぐに混合した。
【0073】
混合で得られた活性成分粒子は、イソプロパノール/水混合物中で、E1/1値115(E1/1:1cmキュベット中での1重量%強度の懸濁液の吸光係数)での粒径438nmを有した。
【0074】
続いて、活性成分懸濁液を、薄膜蒸発器で活性成分含有量約6.2重量%の濃度まで濃縮した。
【0075】
約6.2重量%のβ-カロテン含有量を有する実施例1で製造された懸濁液は、以下の使用実験では、OLとの名称で示される。
【0076】
実施例2:無果汁スポーツドリンク(15ppmのβ-カロテン)
成分 使用量(g/l)
アスコルビン酸 0.150
リン酸水素カルシウム 0.215
カルボキシメチルセルロース 2.000
リン酸二水素カリウム 0.350
クエン酸三ナトリウム 0.486
安息香酸ナトリウム 0.150
ソルビン酸カリウム 0.200
クエン酸(無水) 2.500
スクロース 61.000
H2O 1000まで
OL(β-カロテンとして計算) 0.015
成分を混合した後、飲料を90℃で60秒間、低温殺菌した。
【0077】
比較例2b
実施例2に記載されているのと同様の方法でスポーツドリンクを調製し、この場合、本発明の実施例1の懸濁液OLの代わりに、β-カロテン供給源として、市販の粉末製品であるLucarotin(登録商標)10 CWD/O(10重量%のβ-カロテン)から調製した0.1重量%のβ-カロテン含有量を有するストック溶液を用いた。
【0078】
結果:
実施例2で調製されたスポーツドリンクの化学的安定性(β-カロテン含有量、色)は、比較例2bで調製されたスポーツドリンクと比較して、不利な点を有していないことが観察された。
【0079】
実施例3:乳飲料(5ppmのβ-カロテン)
成分 使用量(g/l)
H2O 1000まで
オレンジ果汁濃縮液(54°Brix) 15.046
低脂肪乳(脂肪分0.1%) 3.636
安定化剤ペクチン 3.314
クエン酸(無水) 6.179
リンゴ酸 1.612
塩化カルシウム 1.075
クエン酸三ナトリウム 1.881
スクロース 107.464
ソルビン酸カリウム 0.445
安息香酸ナトリウム 0.493
OL(β-カロテンとして計算) 0.005
混合後、飲料を200barで高圧にてホモジナイズし、90℃で60秒間、低温殺菌した。
【0080】
実施例4:アルコポップ(3.5ppmのβ-カロテン)
成分 使用量(g/l)
中性スピリッツ(23.8%vol) 188.810
スクロース 49.260
オレンジ果汁濃縮液(54°Brix) 98.820
クエン酸 1.000
OL(β-カロテンとして計算) 0.0035
アスコルビン酸 0.150
安息香酸ナトリウム 0.500
ソルビン酸カリウム 0.500
H2O 1000まで
混合後、飲料を200barで高圧にてホモジナイズし、65℃で60秒間、低温殺菌した。
【0081】
比較例4b
実施例4に記載されているのと同様の方法でアルコポップを調製し、この場合、本発明の実施例1の懸濁液OLの代わりに、β-カロテン供給源として、市販の粉末製品であるLucarotin(登録商標)10 CWD/Oから調製した0.1重量%のβ-カロテン含有量を有するストック溶液を用いた。
【0082】
結果:
実施例4で調製されたアルコポップの化学的安定性(β-カロテン含有量、色)は、比較例4bで調製されたアルコポップと比較して、不利な点を有していないことが観察された。
【0083】
実施例5:果汁30%のビタミン飲料(15ppmのβ-カロテン)
成分 使用量(g/l)
スクロース 85.300
ペクチン 0.200
安息香酸ナトリウム 0.200
ソルビン酸カリウム 0.200
アスコルビン酸 0.300
クエン酸(50重量%) 5.000
乳酸カルシウム5水和物 4.500
H2O 1000まで
オレンジ果汁濃縮液(54°Brix) 64.230
OL(β-カロテンとして計算) 0.015
ビタミンE 500 BG 0.070
混合後、飲料を200barで高圧にてホモジナイズし、90℃で60秒間、低温殺菌した。
【0084】
実施例6:果汁100%のビタミン飲料(30ppmのβ-カロテン)
成分 使用量(g/l)
オレンジ果汁濃縮液(54°Brix) 220.000
H2O 1000まで
安息香酸ナトリウム 1.000
アスコルビン酸 0.400
OL(β-カロテンとして計算) 0.03
混合後、飲料を100barの高圧にてホモジナイズし、90℃で60秒間、低温殺菌した。
【0085】
実施例7:低温混合法でのオレンジジュースベース(30ppmのβ-カロテン)
成分 使用量(g/l)
オレンジ果汁濃縮液(54°Brix) 840.000
安息香酸ナトリウム 3.500
H2O 1000まで
アスコルビン酸 1.500
OL(β-カロテンとして計算) 0.030
低温混合法では、オレンジジュースベースの製造のための全ての成分を、-2℃でオレンジ果汁濃縮液に投入した。飲料媒体の高粘度および低温が、安定性および加工性に関してβ-カロテン調合物の特別な要求を課した。
【0086】
実施例8:サラダドレッシング(6.2ppmのβ-カロテン)
成分 使用量(g/l)
キサンタン 30.000
マスタードパウダー 12.500
塩化ナトリウム 40.000
酢 90.000
スクロース 115.000
H2O 1000まで
植物油 360.000
OL(β-カロテンとして計算) 0.0062
成分を混合し、Ultra-Turraxを用いてホモジナイズし、加熱した。
【0087】
実施例9:プリン(2ppmのβ-カロテン)
成分 使用量(g/l)
コーンスターチ 64.000
スクロース 72.000
牛乳(脂肪分3.5%) 1000まで
OL(β-カロテンとして計算) 0.002
【0088】
実施例10:アイス調製物(3ppmのβ-カロテン)
成分 使用量(g/l)
牛乳(脂肪分3.5%) 1000まで
クリーム(脂肪分34%) 43.103
スクロース 196.55
乳化剤レシチン 2.586
脱脂粉乳 41.379
塩化ナトリウム 0.862
OL(β-カロテンとして計算) 0.003
【0089】
実施例11:ヨーグルト(5ppmのβ-カロテン)
成分 使用量(g/l)
牛乳(脂肪分3.5%) 1000まで
ヨーグルト 150.000
OL(β-カロテンとして計算) 0.005

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
1〜20重量%の少なくとも1種のカロテノイド、
0.2〜20重量%の食用油、
3〜60重量%の親水性保護コロイド、
5〜60重量%の生理学的に許容される多価アルコール、および
5〜60重量%の水
を含む、部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液であって、重量%は該即時使用安定性懸濁液に対し、カロテノイド、食用油、保護コロイド、生理学的に許容される多価アルコールおよび水を併せた部分の合計が、少なくとも80重量%であり、カロテノイドと食用油との重量比が、1:0.01〜1:2である、上記即時使用安定性懸濁液。
【請求項2】
カロテノイドが、β-カロテン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、シトラナキサンチン、リコペンおよびルテインからなる群より選択される、請求項1に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液。
【請求項3】
カロテノイドがβ-カロテンである、請求項1または2に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液。
【請求項4】
食用油が植物油である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液。
【請求項5】
生理学的に許容される多価アルコールがグリセロールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液。
【請求項6】
親水性保護コロイドが化工デンプンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液。
【請求項7】
親水性保護コロイドがオクテニルコハク酸デンプンである、請求項6に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液。
【請求項8】
0.1〜5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液。
【請求項9】
以下の成分:
3〜10重量%のカロテノイドとしてのβ-カロテン、
1〜5重量%の食用油としての中鎖トリグリセリド、
0.5〜2.0重量%のd,l-α-トコフェロール、
10〜24重量%の親水性保護コロイドとしてのオクテニルコハク酸デンプン、
30〜40重量%の生理学的に許容される多価アルコールとしてのグリセロール、および
30〜40重量%の水
を含む、請求項1に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液であって、β-カロテン、中鎖トリグリセリド、d,l-α-トコフェロール、オクテニルコハク酸デンプン、グリセロールおよび水を併せた部分の合計が、少なくとも95重量%であり、β-カロテンと中鎖トリグリセリドとの重量比が、1:0.3〜1:0.7である、上記即時使用安定性懸濁液。
【請求項10】
カロテノイド粒子が、0.05〜0.8μmの粒径中央値を有し、50〜100%の平均X線非晶質部分を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液。
【請求項11】
以下の成分:
1〜20重量%の少なくとも1種のカロテノイド、
0.2〜20重量%の食用油、
3〜60重量%の親水性保護コロイド、
5〜60重量%の生理学的に許容される多価アルコール、および
5〜60重量%の水
を含む、部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液の製造方法であって、重量%は該即時使用安定性懸濁液に対し、カロテノイド、食用油、保護コロイド、生理学的に許容される多価アルコールおよび水を併せた部分の合計が、少なくとも80重量%であり、カロテノイドと食用油との重量比が、1:0.01〜1:2であり、以下のステップ:
a1) カロテノイドを、食用油と共に、水混和性有機溶媒中に、もしくは水と水混和性有機溶媒との混合物中に、約30℃の温度で溶解させるステップ、または
a2) カロテノイドを、食用油と共に、水非混和性有機溶媒中に溶解させるステップ、
b) ステップa1)またはa2)に従い取得された溶液と、保護コロイドの分子的分散溶液またはコロイド分散溶液とを、水と生理学的に許容される多価アルコールとの混合物中で混合するステップであって、カロテノイド含有疎水相が、ナノ分散相として生成されるステップ、
c) ステップa1)またはa2)で用いた有機溶媒を除去し、形成される懸濁液を所望のカロテノイド含有量まで濃縮するステップ
を含む、上記方法。
【請求項12】
動物飼料、食品および食品サプリメント、ならびに化粧用組成物および医薬組成物に対する添加物としての、請求項1〜10のいずれか1項に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液の使用。
【請求項13】
飲料の製造での添加物としての、請求項1〜10のいずれか1項に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液の使用。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液を、飲料に直接的に添加する、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液を含む、動物飼料、食品および食品サプリメント。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液を含む飲料。
【請求項17】
動物飼料、食品および食品サプリメント、ならびに化粧用組成物および医薬組成物にプロビタミンAを富化するための、請求項3に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液の使用。
【請求項18】
請求項3に記載の部分的に非晶質のカロテノイド粒子の即時使用安定性懸濁液を添加することによる、動物飼料、食品および食品サプリメント、ならびに化粧用組成物および医薬組成物、特に飲料に、プロビタミンAを富化する方法。

【公表番号】特表2012−521774(P2012−521774A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502590(P2012−502590)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053965
【国際公開番号】WO2010/112406
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】