説明

部分的空気分離を備えた低排出型ガスタービンサイクルを使用するシステム及び方法

【課題】ガスタービン酸化窒素排出量を低減するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】本システム(30)及び方法は、希釈剤で低質化させた空気を燃焼させて、第1の燃焼段生成物(48)を発生させるように構成された第1の燃焼段(44)を含む。第2の燃焼段(50)は、濃縮酸素(36)と組合せて第1の燃焼段生成物(48)を燃焼させて、低質化空気だけでの又は燃焼多段化だけによる燃焼によって達成可能であるものよりも低い酸化窒素排出レベルを有する第2の燃焼段生成物を発生させるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはガスタービン発電プラントに関し、より具体的には、燃焼効率又は一酸化炭素(CO)排出のいずれかに関連する不利な状態を招かずにガスタービン酸化窒素(NOx)排出を低減するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年において、ガスタービン発電プラントからの汚染物質排出(エミッション)が大きな関心事になってきた。これらの排出、特に酸化窒素を1けたに低下させるような厳しい規制が設定されてきた。最近では、これらのNOx排出量を低減するのに使用する解決策の1つは、選択的触媒反応器(SCR)を使用している。選択的触媒反応器は、望ましくないことに、高価であり、大きな取付けスペースを有しかつアンモニアスリップに関する付加的な問題を提起する。
【0003】
低質化空気での燃焼は、NOx動力学機構に影響を与え、火炎構造を変化させかつピーク火炎温度を低下させることによって、NOx排出量を低減する実証された方法である。燃焼多段化もまた、例えば軸方向多段化、遅れリーン及び連続燃焼システム(再熱)を含む用途におけるNOx排出量の低減を示してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7513100号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃焼効率又はCO排出に関する不利な状態を招かずに、公知の方法を使用して達成可能である限界値以下にNOx排出量をさらに低減するシステム及び方法を提供することは、望ましいと言える。
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡潔に言うと、一実施形態によると、ガスタービン燃焼システムは、希釈剤で低質化させた空気を燃焼させて、第1の燃焼段生成物を発生させるように構成された第1の燃焼段と、濃縮酸素と組合せて第1の燃焼段生成物を燃焼させて、低質化空気だけでの又は燃焼多段化だけによる燃焼によって達成可能であるものよりも低い酸化窒素排出レベルを有する第2の燃焼段生成物を発生させるように構成された第2の燃焼段とを含む。
【0007】
別の実施形態によると、ガスタービン酸化窒素排出量を低減する方法は、希釈剤で空気を低質化させるステップと、低質化空気をガスタービンの第1の燃焼段に導入しかつ該第1の燃焼段により第1の燃焼段燃焼生成物を発生させるステップと、第1の段による燃焼の生成物を第2の段において酸素で濃縮するステップと、濃縮酸素ガスと組合せて第1の段による燃焼の生成物を燃焼させて、低質化空気だけでの又は燃焼多段化だけによる燃焼によって達成可能であるものよりも低い酸化窒素排出レベルを有する第2の燃焼段生成物を発生させるステップとを含む。
【0008】
本発明のこれらの及びその他の特徴、態様及び利点は、図面全体を通して同じ参照符号が同様な部品を表している添付図面を参照しながら以下の詳細な記述を読むことにより、一層良好に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態による、部分的空気分離を備えた低排出型単純ガスタービンを示す簡略ブロック図。
【図2】一実施形態による、一体形ガス化複合サイクルを使用した低排出型単純ガスタービンを示す簡略ブロック図。
【図3】一実施形態による、DLE燃焼器システムを利用したNOx排出量の低減を示すグラフ図。
【図4】一実施形態による、DLN燃焼器システムを利用したNOx排出量の低減を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記の図面の図は、幾つかの代替的な実施形態を表しているが、以下の説明において述べるように本発明のその他の実施形態もまた考えられる。全てのケースにおいて、本開示は、本発明の例示した実施形態を限定としてではなく説明として提示している。当業者には、多くのその他の変更形態及び実施形態を案出することができるが、それらもまた、本発明の原理の技術的範囲及び技術思想の範囲内に属する。
【0011】
本明細書では、産業環境内で使用するガスタービンエンジンの関連で本方法及び装置を説明しているが、本明細書に説明した本方法及び装置は、それに限定されないが、航空機内に据付けたタービンを含むその他の燃焼タービンシステム用途に有用性を見出すことができる。さらに、本明細書に記載した原理及び教示は、それに限定されないが、天然ガス、ガソリン、ケロシン、ディーゼル燃料及びジェット燃料のような各種の可燃性燃料を使用するガスタービンエンジンに適用可能である。
【0012】
図1は、一実施形態による、部分的空気分離を備えた低排出型単純ガスタービンシステム10を示す簡略ブロック図である。ガスタービンシステム10は、空気圧縮機18によって酸素濃縮ガス流14及び窒素濃縮ガス流16内に供給された加圧空気を分離するように作動する部分的空気セパレータ12を使用している。入力空気は、空気圧縮機18によって加圧され、かつ加圧空気は、部分的空気セパレータ12に供給される。
【0013】
窒素濃縮ガス流16は、加圧されかつ次に空気圧縮機18からの加圧空気と混合されて、空気ミキサ19によって低質化空気を発生させる。希釈剤で低質化させた得られた空気20は、第1の燃焼段22に送られ、第1の燃焼段22において、空気20は、燃焼しかつ第1の段の燃焼の生成物を生成する。酸素濃縮ガス流14は、加圧されかつ第2の燃焼段24において第1の段の燃焼の生成物と共に混合される。しかしながら、本発明は、そのように限定されるものではなく、丁度2つの燃焼器段を越えた付加的な燃焼器段を本明細書に説明した原理により使用して、所望のNOx排出レベルを達成するか又はその他の所望の結果を達成することができる。
【0014】
本発明者達は、上記したように空気低質化及び燃焼多段化を組合せることにより、空気低質化だけ又は燃焼多段化だけのいずれかによるのでは達成することができない非常に低い限界値にNOx排出量が低減されることを見出した。より具体的には、この構造により、乾式低排出(DLE)燃焼器又は乾式低NOx(DLN)燃焼器のいずれかを使用することができるガスタービンシステムに適用した場合に、燃焼効率又はCO排出量に関連する不利な状態を招かずNOx排出量を非常に低い限界値に低減するような信頼性がある方法が得られることが判明した。
【0015】
図3は、本明細書に説明した原理を利用してDLE燃焼器システムコンセプトを利用したNOx排出量の低減を示すグラフ図である。
【0016】
図4は、本明細書に説明した原理を利用してDLN燃焼器システムコンセプトを利用したNOx排出量の低減を示すグラフ図である。
【0017】
酸素濃縮ガスはこれまで従来型の燃焼多段化プロセスのいかなる段内にも噴射されることはなかったことに、注目されたい。それは、燃焼プロセスの音響及び不安定エネルギー放出の組合せに通常関連するダイナミックスと呼ばれる圧力振動がない状態に維持しながら、安定した作動、許容可能なNOx排出量及びCO排出量を達成するような燃焼条件を注意深く管理する必要性があることに起因している可能性がある。
【0018】
DLN燃焼器は、始動から全負荷にわたるガスタービン運転を可能にする複数独立制御燃料噴射ポイント又は燃料ノズルを1以上の並列同一燃焼器内に必要とすることが特に多い。さらに、DLN燃焼システムは、燃料流量、燃料通路流れ面積、及び燃料ノズルの前後におけるガスタービンサイクル圧力の関数である燃料噴射装置圧力比の比較的狭い範囲にわたって良好に機能することが多い。燃料ノズル通路面積の適当な選択及び幾つかの燃料ノズルグループに対する燃料流量の調整が、それらの圧力比限界値を管理するために必要となる。正確な燃料ノズル通路面積は、名目上は一定と見なされる実際の燃料性状に基づいている。
【0019】
本発明者達は、実験を通して、低質化空気(N2及びCO2のような希釈剤と混合させて全体の酸素濃度を低下させた空気)で燃料を燃焼させることのガスタービン性能及び汚染物質排出量に対する効果を、特に、希釈剤で低質化させた空気を燃焼させて第1の燃焼段生成物を発生させる第1の燃焼段並びに濃縮酸素と組合せて第1の燃焼段生成物を燃焼させて、低質化空気だけでの又は燃焼多段化だけによる燃焼によって達成可能であるものよりも低い酸化窒素排出レベルを有する第2のつまりその後の燃焼段生成物を発生させるように構成された1以上の付加的燃焼段を組合せたガスタービン燃焼システムにおいて発見しただけである。
【0020】
この実験により得られた、NOx排出量を成功裏に低下させる1つのシステム及び方法を、図1に示しており、この図1では、空気流が部分的空気分離ユニットに流入し、部分的空気分離ユニットは、N2濃縮流(低質化させた空気)及び窒素濃縮流を含む2つの出口流を生成する。この実験により得られた、NOx排出量を成功裏に低下させる別のシステム及び方法を、図2に示しており、以下でさらに詳細に説明する。このシステム及び方法は、空気分離ユニットが所定の位置に設けられかつ空気分離ユニット(ASU)からのN2が燃焼空気と混合されて低質化燃焼空気を形成するようになったIGCC発電プラントで有用である。
【0021】
図2は、一実施形態による、一体形ガス化複合サイクルを使用した低排出型単純ガスタービンシステム30を示す簡略ブロック図である。空気が圧縮機32に流入し、圧縮機32において、空気は加圧されかつ空気分離ユニット34に送られる。空気分離ユニット34は、酸素濃縮ガス流36及び窒素濃縮ガス流38を含む2つのガス流を発生させる。窒素濃縮ガス流38は、空気ミキサ40によって加圧空気と混合されて、低質化空気混合気42を発生させる。低質化空気42は、燃焼器46の第1の段44に送られ、第1の段44において、低質化空気42は、合成ガス燃料54と組合せて燃焼されて第1の段の燃焼生成物48を発生させる。これらの第1の段の燃焼生成物48は、第2の燃焼器段50に送られ、第2の燃焼器段50において、第1の段の燃焼生成物48は、合成ガス燃料54及び濃縮酸素36と混合されかつ燃焼されて、非常に低いNOx排出燃焼生成物52を生じる。本明細書に記載した原理及び教示は、それに限定されないが天然ガス、ガソリン、ケロシン、ディーゼル燃料及びジェット燃料のような各種の可燃性燃料を使用するガスタービンエンジンに適用可能である。
【0022】
説明を要約すると、ガスタービンシステムは、希釈剤で低質化させた空気を燃焼させて、第1の燃焼段生成物を発生させるように構成された第1の燃焼器段と、濃縮酸素と組合せて(混合して)第1の燃焼段生成物を燃焼させて、空気低質化又は燃焼多段化技術だけを使用して達成可能であるものよりも大幅に低い酸化窒素排出量を有する第2の燃焼段生成物を発生させるように構成された第2の燃焼器段とを含む。これらのNOx排出量の低減は、燃焼効率又はCO排出量における不利な状態なしに得られる。
【0023】
本明細書に説明した実施形態は、選択的触媒反応器を使用する必要性を排除し、或いはそれとは別に従来型の燃焼器で達成可能であるものよりも低いNOx排出量を生じさせる燃焼器を使用することにより選択的触媒反応器の寸法及びコストを減少させることができる利点を有する。さらに、酸素濃度のような別の制御パラメータを加えることによって、本明細書に説明した実施形態により燃焼ダイナミックスを減少させることができる。
本明細書に説明した実施形態はさらに、アドオンエミッションシステム制御装置を必要とせずに、NOx排出量の低減を達成するコスト効果のある技術を提供する。
【0024】
本発明者達は、本明細書に説明した実施形態が、燃焼器への蒸気/水噴射を使用した又は高い予混合効率を有する乾式低NOx燃焼システムを利用したシステム及び方法よりも
NOx排出量を低減するのに一層効果的であることを見出した。
【0025】
本明細書では本発明の一部の特徴のみを例示しかつ説明してきたが、当業者には多くの修正及び変形が想起されるであろう。従って、提出した特許請求の範囲は、全てのそのような修正及び変形を本発明の技術思想の範囲内に属するものとして保護しようとしていることを理解されたい。
【符号の説明】
【0026】
10 低排出型単純ガスタービンシステム
12 部分的空気セパレータ
14 酸素濃縮ガス流
16 窒素濃縮ガス流
18 空気圧縮機
19 空気ミキサ
20 空気ミキサ出力空気
22 第1の燃焼段
24 第2の燃焼段
30 低排出型単純ガスタービンシステム
32 空気圧縮機
34 空気分離ユニット
36 酸素濃縮ガス流
38 窒素濃縮ガス流
40 空気ミキサ
42 低質化空気混合気
44 第1の燃焼段
46 燃焼器
48 第1の燃焼段からの出力生成物
50 第2の燃焼段
52 第2の燃焼段からの燃焼生成物
54 合成ガス燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン燃焼システム(30)であって、
希釈剤で低質化させた空気を燃焼させて、第1の燃焼段生成物を発生させるように構成された第1の燃焼段(44)と、
濃縮酸素と組合せて第1の燃焼段生成物を燃焼させて、前記低質化空気だけでの又は燃焼多段化だけによる燃焼によって達成可能であるものよりも低い酸化窒素排出レベルを有する第2の燃焼段生成物を発生させるように構成された第2の燃焼段(50)と
を備えるガスタービン燃焼システム(30)。
【請求項2】
酸素濃縮ガスを発生させるように構成されかつ窒素濃縮ガスを発生させるようにさらに構成された部分的空気セパレータ(34)をさらに含む、請求項1記載のガスタービン燃焼システム(30)。
【請求項3】
前記窒素濃縮ガスで低質化させた空気を発生させるように構成された空気ミキサ(40)をさらに含む、請求項2記載のガスタービン燃焼システム(30)。
【請求項4】
前記希釈剤で低質化させた空気が、前記窒素濃縮ガスで低質化させた空気を含む、請求項3記載のガスタービン燃焼システム(30)。
【請求項5】
前記濃縮酸素が、前記酸素濃縮ガスを含む、請求項2記載のガスタービン燃焼システム(30)。
【請求項6】
第1の燃焼段(44)が、前記低質化空気と組合せて所定の燃料を燃焼させて、第1の燃焼段生成物を発生させるようにさらに構成される、請求項1記載のガスタービン燃焼システム(30)。
【請求項7】
第1及び第2の燃焼段(44、50)が、乾式低排出型燃焼器(46)と統合される、請求項1記載のガスタービン燃焼システム(30)。
【請求項8】
第1及び第2の燃焼段(44、50)が、乾式低酸化窒素燃焼器(46)と統合される、請求項1記載のガスタービン燃焼システム(30)。
【請求項9】
前記低酸化窒素レベルが、第2の燃焼段生成物の10ppmよりも低い、請求項1記載のガスタービン燃焼システム(30)。
【請求項10】
第2の燃焼段生成物(52)が、前記低質化空気だけでの又は燃焼多段化だけによる燃焼によって達成可能であるレベルに燃焼効率及び一酸化炭素排出量を維持した状態で、発生される、請求項1記載のガスタービン燃焼システム(30)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−74917(P2011−74917A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212956(P2010−212956)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】