部分電気めっきに用いる無端環状マスクベルトおよびそれを用いた部分めっき方法

【課題】無端環状マスクベルトを順次密着させてマスクしながら、連続的にめっきを施すことにより、帯板状の条材の両面または片面の一部にめっきを施す場合に、にじみの発生を抑制できる、無端環状マスクベルトおよび、それを用いためっき方法を提供する。
【解決手段】複数の層からなり、被めっき材と接する面を有する層(表面層)の材質が硬度20°〜40°のシリコンスポンジである無端環状マスクベルトを用いて、被めっき材の一部に該無端環状マスクベルトを押圧して順次密着させて覆いながら、被めっき材にめっきを施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部分電気めっきに用いる無端環状マスクベルトおよび前記マスク治具を用いた連続部分電気めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被めっき材の一部にめっきを施す方法として、予め被めっき材のめっきを施さない部分(非めっき領域)にテープを貼り、このテープによって被めっき材の一部がマスキングされた状態で被めっき材にめっきを施し、めっき後にテープを除去する方法が知られている。
【0003】
しかし、この方法では、消耗品としてテープが必要になり、また、テープを貼る工程とテープを除去する工程が必要になるので、被めっき材の全面にめっきする場合と比べてコストが高くなり、また、めっき後の被めっき材にテープの粘着剤が残留する不良が生じる場合もある。
【0004】
そのため、テープを使用しないで被めっき材の一部にめっきを施す方法として、めっき浴槽内で搬送される帯板状の条材の両面の非めっき領域に無端環状マスクベルトを順次密着させてマスクしながら、連続的にめっきを施すことにより、帯板状の条材の両面にストライプ状のめっきを施す方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−192280号公報
【特許文献2】特開2000−345385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2に記載の方法では、被めっき材に無端環状マスクベルトを密着させた部分に、薄いめっき層が巾0.05mm以上形成された部分(にじみ)が発生することがあり、生産性を向上するために、めっき液流速を上げて50A/dm2程度の高電流密度において高速めっきを行う際に、にじみの発生が顕著になるという問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、無端環状マスクベルトを順次密着させてマスクしながら、連続的にめっきを施すことにより、帯板状の条材の両面または片面の一部にめっきを施す場合に、にじみの発生を抑制できる、無端環状マスクベルトおよび、それを用いためっき方法提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、搬送される被めっき材の一部に、無端環状マスクベルトを順次密着させて覆いながら、連続的に被めっき材をめっき液中を通過させることにより、被めっき材の一部にめっきを施す方法において、無端環状マスクベルトの材質を後述する複数層の構造とすることにより、被めっき材に生じるにじみを抑制できることができることを見出し、本発明を完成するに至った。なお、本願では、めっきを施した部分とマスクベルト密着させて覆った部分の境界付近に、めっきを施した部分の中央部分のめっき厚さを(a)とした場合、厚さが(a/100)〜(a/2)である薄いめっき層が存在し、その幅(にじみの幅)が0.05mm超の場合、にじみがあると判定する。
【0009】
すなわち、本発明による無端環状マスクベルトは、複数の層からなり、被めっき材と接する面を有する層(表面層)の材質がシリコンスポンジであることを特徴とする。本発明による無端環状マスクベルトは、1層以上の基材層を有する。基材層は、無端環状マスクベルトをめっき装置で回転駆動させた場合、マスクベルトの形状を保つために必要な強度を有すればよく、めっき液に対して化学的に安定であることが好ましい。基材層の材質の好ましい一例として、PVC系材質やガラスエポキシ積層材がある。表面層と基材層を接着し貼り合わせることにより、本発明の無端環状マスクベルトを得ることができる。
【0010】
また、本発明によるめっき方法は、搬送される被めっき材の一部に、前記の無端環状マスクベルトの表面層を順次密着させて覆いながら、連続的に被めっき材に向けてめっき液を流して、被めっき材の一部にめっきを施すことを特徴とする。このとき、無端環状マスクベルトの表面層を被めっき材に押圧し密着させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無端環状マスクベルトを順次密着させてマスクしながら、連続的にめっきを施すことにより、帯板状の条材の両面または片面の一部にめっきを施す場合に、にじみの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
無端環状マスクベルトは、複数の層からなり、被めっき材と接する面を有する層(表面層)の材質がシリコンスポンジであることを特徴とする。後述する比較例で示すとおり、表面層がシリコンスポンジ以外の材質の場合、にじみが発生する。JISK6253に準拠して測定した表面層の硬度は、20°〜40°の範囲であることが好ましい。硬度が、20°未満の場合や40°を超えるとにじみが発生することがある。表面層の厚さは、2〜4mmであることが好ましい。2mm未満の場合には、にじみの発生を抑制できない場合があり、4mmを超える場合には、押圧により表面層が変形し、にじみが発生する場合がある。
【0013】
本発明による無端環状マスクベルトは、1層以上の基材層を有する。基材層は、無端環状マスクベルトをめっき装置で回転駆動させた場合、マスクベルトの形状を保つために必要な強度を有すればよく、めっき液に対して化学的に安定であることが好ましい。基材層の材質の好ましい一例として、PVC系材質やガラスエポキシ積層材がある。基材層の厚さは、1mm〜5mmであることが好ましい。1mm未満では、十分な強度が得られない場合があり、5mm超としても特に効果はなく、ベルトのコストが高くなる。表面層と基材層を接着し貼り合わせることにより、本発明の無端環状マスクベルトを得ることができる。表面層と基材層の間に層を有する構造としてもよいが、ベルト製造コストの点では、表面層と基材層の2層とするのが有利である。
【0014】
本発明によるめっき方法の実施の形態では、搬送される被めっき材としての帯板状の条材の両面のめっきを施さない部分(非めっき領域)に前記の無端環状マスクベルトの表面層を順次密着させて覆いながら、めっき液中に前記条材を通過させる。このとき、無端環状マスクベルトを被めっき材に密着させるために、無端環状マスクベルトを被めっき材に押圧するが、この押圧の圧力(片側)は、0.2kgf/cm〜1kgf/cmであることが好ましい。0.2kgf/cm未満の場合には、密着不十分により、にじみが発生する場合があり、1kgf/cmを超える場合には、押圧により表面層が変形し、めっきの寸法精度に悪影響が出る場合がある。前記押圧は、ローラー等の部材を介して行う方法、空気等を吹付けて行う方法等の方法によることができるが、本願の実施例では、空気を吹付けることによりおこなった。また、連続的に条材に向けてめっき液を流して、条材の一部にめっきを施し、条材の搬送方向と逆方向に所定の角度だけ傾けて、好ましくは条材の搬送方向と逆方向から15°〜50°だけ傾けて、条材に向けてめっき液を流すようにすることが好ましい。これにより、めっき部分の厚さの均一性が向上する。
【0015】
本実施の形態のめっき装置は、めっき液を貯留するめっき槽と、このめっき槽内に収容されためっきセルと、このめっきセル内に設けられた複数のノズルと、前記めっきセル内の前記ノズルの上方に配置された整流板支持体によって支持された複数の整流板と、めっきセル内に導入された被めっき材としての帯板状の条材の一部を両側から挟み込んで条材の一部を非めっき領域として覆うために、めっきセル内の上部に対向して配置された一対の無端環状マスクベルトと、これらのマスクベルトを条材に押し付ける一対の押圧部材とを備えている。
【0016】
前記めっき槽内のめっき液は、ポンプによって前記めっきセル内のノズルに汲み上げられた後、ノズルから各整流板の間を通過して条材の非めっき領域に向けて噴出され、めっきセルからオーバーフローしためっき液がめっき槽内に流れ出して循環するようになっている。
【0017】
前記整流板支持体は、めっきセルの長手方向に延びる略矩形の帯体状の部材からなり、所定の間隔、好ましくは等間隔で離間して配置された複数の略矩形の整流板を支持している。これらの整流板は、整流板支持体の幅方向に延びるとともに、条材の搬送方向と逆方向に所定の角度だけ傾斜、好ましくは条材の搬送方向と逆方向から15°〜50°だけ傾斜するように、整流板支持体の長手方向から傾斜して配置されている。したがって、ノズルから各整流板aの間を通過して条材の非めっき領域に向けて噴出されるめっき液の流れの方向は、条材の搬送方向と逆方向から15°〜50°だけ傾斜するようになっている。
【0018】
本実施の形態のめっき装置によりめっきを行う場合には、一対の無端環状マスクベルトを駆動させると同時に、帯板状の条材をマスクベルトと同じ速度で搬送し、条材をマスクベルトで挟み込んで、帯板状の条材の両面のめっきを施さない部分(非めっき領域)にマスクベルトを順次密着させて覆いながら、条材の両面のめっきを施す部分である露出部分(めっき領域)をめっき液に浸してめっき層を形成する。
【実施例】
【0019】
以下、本発明による無端環状マスクベルトおよびめっき方法の実施例について詳細に説明する。
【0020】
[実施例1]
まず、被めっき材としてSUS製の帯板状プレス材を用意し、このプレス材にめっきを施す前に、前処理として、アルカリ脱脂、電解脱脂、塩酸による洗浄を行った。この前処理を行った後、下地めっきの密着性を向上させるために、塩化物をベースとしたストライク浴中においてニッケルストライクを行った。その後、下地めっきとして、スルファミン酸をベースとしたニッケルめっき浴中において、電流密度10A/dm2で膜厚0.5〜1.0μm程度の無光沢ニッケルめっきを施した。この下地めっきを施した後、アルカノールスルホン酸をベースとした錫めっき浴中において、電流密度50A/dm2で膜厚3μmになるように幅4.0mmの錫めっきを施した。なお、下地めっきと錫めっきは、上述した実施の形態のめっき装置を使用して、整流板の角度を20°として行った。ノズルから噴出するめっき液の流速は3.2m/秒とした。無端環状マスクベルトを被めっき材に押圧する圧力は、0.45kgf/cmとした。
【0021】
無端環状マスクベルトとして、表面層が、厚さ2mmのシリコンスポンジで、JISK6253に準拠して測定した硬度(以下、硬度と記載)が25°であり、基材層が厚さ2.6mmであるPVC製(日本ジークリング社製、E8/2V5/V5STR/GL(G))である2層を接着したものを用いた。
【0022】
このようにして部分的に錫めっきが施された被めっき材について、にじみの幅、有無を調べた。にじみの幅は、蛍光X線膜厚計(SIIナノテクノロジー社製、SFT3200)を用いて、下記の(a)および、めっきを施した部分とマスクベルト密着させて覆った部分の境界付近のSnめっき厚さを測定した。めっきを施した部分とマスクベルト密着させて覆った部分の境界付近に、めっきを施した部分の中央部分のめっき厚さを(a)とした場合、厚さが(a/100)〜(a/2)である薄いめっき層が存在し、その幅(にじみの幅)が0.05mm超の場合、にじみがあると判定した。にじみの幅の測定結果と試験条件を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
[実施例2〜4]
無端環状マスクベルトを被めっき材に押圧する圧力を、0.3kgf/cm、0.6kgf/cm、0.8kgf/cm、とした以外は、実施例1と同様の方法によりSnめっきを施し、得られた被めっき材について、実施例1と同様の方法により、にじみの幅を求めた。その結果を表1に示す。
【0025】
[実施例5]
無端環状マスクベルトの表面層の厚さを3mmとした以外は、実施例1と同様の方法によりSnめっきを施し、得られた被めっき材について、実施例1と同様の方法により、にじみの幅を求めた。その結果を表1に示す。
【0026】
[実施例6]
無端環状マスクベルトの表面層の硬度を35°のシリコンスポンジとした以外は、実施例1と同様の方法によりSnめっきを施し、得られた被めっき材について、実施例1と同様の方法により、にじみの幅を求めた。その結果を表1に示す。
【0027】
[実施例7,8]
無端環状マスクベルトの基材層の厚さを1.6mm、1mmとした以外は、実施例1と同様の方法によりSnめっきを施し、得られた被めっき材について、実施例1と同様の方法により、にじみの幅を求めた。その結果を表1に示す。
【0028】
[実施例9]
Snめっきの電流密度を20A/dmとした以外は、実施例1と同様の方法によりSnめっきを施し、得られた被めっき材について、実施例1と同様の方法により、にじみの幅を求めた。その結果を表1に示す。
【0029】
[比較例1]
無端環状マスクベルトを被めっき材に押圧する圧力を、0.1kgf/cmとした以外は、実施例1と同様の方法によりSnめっきを施し、得られた被めっき材について、実施例1と同様の方法により、にじみの幅を求めた。その結果を表1に示す。
【0030】
[比較例2,3]
無端環状マスクベルトの表面層の厚さを1mm、5mmとした以外は、実施例1と同様の方法によりSnめっきを施し、得られた被めっき材について、実施例1と同様の方法により、にじみの幅を求めた。その結果を表1に示す。
【0031】
[比較例4]
無端環状マスクベルトの表面層の硬度を15°のシリコンスポンジとした以外は、実施例1と同様の方法によりSnめっきを施し、得られた被めっき材について、実施例1と同様の方法により、にじみの幅を求めた。その結果を表1に示す。
【0032】
[比較例5]
無端環状マスクベルトの材質を、硬度が25°のシリコンゴムとした以外は、実施例1と同様の方法によりSnめっきを施し、得られた被めっき材について、実施例1と同様の方法により、にじみの幅を求めた。その結果を表1に示す。
【0033】
[比較例6]
無端環状マスクベルトの材質を、硬度が25°のシリコンゴムとした以外は、実施例9と同様の方法によりSnめっきを施し、得られた被めっき材について、実施例1と同様の方法により、にじみの幅を求めた。その結果を表1に示す。
【0034】
表1に示すように、実施例1〜9のように、上述した実施の形態の無端環状マスクベルト、めっき方法を使用して、マスクベルトを使用した部分めっきを施すと、無端環状マスクベルトを用いた部分めっきにより、にじみ幅を0.05mm以下であるめっきが部分的に施された被めっき材を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、無端環状マスクベルトを順次密着させてマスクしながら、連続的にめっきを施すことにより、帯板状の条材の両面または片面の一部にめっきを施す場合に、にじみの発生を抑制できる無端環状マスクベルトおよび部分めっき方法を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と基材層を有する複数の層で構成される無端環状マスクベルトであって、前記マスクベルトの表面層の材質が、硬度20°〜40°であるシリコンスポンジであることを特徴とする無端環状マスクベルト
【請求項2】
表面層の厚さが、2mm〜4mmであることを特徴とする請求項1に記載の無端環状マスクベルト
【請求項3】
基材層の厚さが1mm〜5mmであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の無端環状マスクベルト
【請求項4】
搬送される被めっき材の一部に、請求項1〜3のいずれかに記載の無端環状マスクベルトを被めっき材に押圧して、順次密着させて覆いながら、連続的に被めっき材をめっき液中を通過させることにより、被めっき材の一部にめっきを施すことを特徴とする部分めっき方法
【請求項5】
無端環状マスクベルトを被めっき材に押圧する圧力を、0.2kgf/cm〜1kgf/cmとすることを特徴とする請求項5に記載の部分めっき方法



【公開番号】特開2011−26654(P2011−26654A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172607(P2009−172607)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(506365131)DOWAメタルテック株式会社 (109)
【Fターム(参考)】