説明

部品の部材への取付構造

【課題】部品の部材からの取付作業が容易であると共に取り付けた部品が部材から不用意に外れることがなく、更に部品の部材からの取外し作業が容易である部品の部材への取付構造を得る。
【解決手段】フォグランプカバー12の裏面には、車両後方側へ向けて突出され車両幅方向へ弾性変形する支持部36及びその先端部から張り出された爪部38を含む樹脂製の係合部28が一体形成されている。これに対応して、フロントバンパカバー10の取付部13の底部には、嵌合部32を含む被係合部31が設定されている。取付時には、スロープ38B、38C、42Aが設定されているために容易に取り付けることができる。取付後は、爪部38の基端側張出し部38Aが一対の規制面50に係止されることで不用意に外れない。取外し時には、受圧面38Dを押せば容易に外れるので、片手で簡単に取外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の部材への取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ワイヤハーネス取付構造に関する技術が開示されている。簡単に説明すると、インストルメントパネルに固定される樹脂部品である空調用ダクトの端部には、ワイヤハーネスを収容可能で上部が開放されたワイヤハーネス収容部が一体に形成されている。さらに、ワイヤハーネス収容部の上端部には、インテグラルヒンジにより回動可能な蓋体が一体に形成されている。蓋体の先端部には先端中央部がU字状に切り込まれた矢印形状の固定手段が一体に形成されており、これに対応してワイヤハーネス収容部には当該固定手段が挿入されて係合される係止部が一体に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−197235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術による場合、固定手段を係止部から取り外す場合、当該固定手段の先端部に形成された一対の係合爪を二本の指で摘んで互いに接近する方向へ荷重を加える必要がある。このため、作業性が非常に悪い。特に、固定手段による固定箇所が複数箇所ある場合には、片手で全ての箇所を同時に解除することは困難である。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、部品の部材からの取付作業が容易であると共に取り付けた部品が部材から不用意に外れることがなく、更に部品の部材からの取外し作業が容易である部品の部材への取付構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係る部品の部材への取付構造は、取付対象となる部品から立設され、板厚方向に弾性変形可能とされた支持部と、この支持部の先端部から張り出すように形成されると共に当該支持部の弾性変形に伴い一体に変位しかつ支持部の先端部から張り出した基端側張出し部並びに係合を解除するための解除操作力を一方向から受ける受圧面を備えた爪部と、を含んで構成された係合部と、取付相手となる部材に形成されると共に前記係合部が挿入される組付用開口部の周縁部に設けられ、当該係合部の挿入に伴い前記爪部と干渉して前記支持部を解除方向へ弾性変形させるガイド部と、当該爪部が当該ガイド部を乗り越えたときに当該係合部が嵌合されると共に前記基端側張出し部と係合し前記係合部の挿入方向と反対方向への移動を規制する規制面を備えた嵌合部と、を含んで構成された被係合部と、を有している。
【0007】
請求項2記載の本発明に係る部品の部材への取付構造は、請求項1記載の発明において、前記嵌合部は、前記爪部を受入れる第1開口部を備えている。
【0008】
請求項3記載の本発明に係る部品の部材への取付構造は、請求項2記載の発明において、前記嵌合部は、前記第1開口部の開口面に対して交差する方向に開口面が形成されると共に第1開口部よりも開口幅が狭く更に第1開口部と連通されて前記支持部を受入れる第2開口部を備えており、前記規制面は当該第2開口部の幅方向に隣接して配置されている。
【0009】
請求項4記載の本発明に係る部品の部材への取付構造は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記被係合部には、前記ガイド部を挟んで前記規制面と反対側に、前記爪部が前記ガイド部を乗り越えた際に前記係合部と当接し当該係合部の挿入方向への移動を停止させるストッパ部が形成されている。
【0010】
請求項5記載の本発明に係る部品の部材への取付構造は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記取付相手となる部材は樹脂製のバンパカバーであり、前記取付対象となる部品は樹脂製のフォグランプカバーである。
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、取付対象となる部品を取付相手となる部材に取付ける際には、当該部品から立設された係合部を当該部材に形成された被係合部に係合させればよい。具体的には、まず、係合部を組付用開口部内へ挿入させる。このとき、組付用開口部の周縁部に設けられたガイド部に係合部の爪部が干渉し、係合部の支持部が解除方向へ弾性変形される。そして、爪部がガイド部を乗り越えると、係合部は被係合部の嵌合部に嵌合されると共に、爪部が備える基端側張出し部が嵌合部の規制面に当接し、係合部の挿入方向と反対方向への移動が規制される。
【0012】
このように部品の取付時には、係合部を組付用開口部内へ挿入して、爪部をガイド部に干渉させれば自動的に支持部が撓み、係合部を被係合部に係合させることができる。従って、部品を部材に容易に取り付けることができる。また、部品の取付後は、爪部が備える基端側張出し部が嵌合部の規制面に当接し、係合部の挿入方向と反対方向への移動が規制される。従って、部品に挿入方向と反対方向(即ち、部品の外れ方向)への外力が作用しても、係合部が被係合部から不用意に外れることはない。さらに、部品の取外し時には、係合部の爪部に設けられた受圧面に片手で解除操作力を一方向から加えるだけで、係合部と被係合部との係合状態が解除される。従って、部品を部材から容易に取り外すことができる。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、爪部が嵌合部に嵌合された状態では、係合部に設けられた受圧面を第1開口部から外部に露出させることが可能となる。このため、受圧面に解除操作力を直接加えることができ、その分、解除操作力を軽くすることができる。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、係合部を被係合部に嵌合させると、係合部の爪部は第1開口部に嵌合され、係合部の支持部は第1開口部と連通された第2開口部に嵌合される。同時に、第2開口部の幅方向に隣接して配置された規制面に爪部の基端側張出し部が当接される。このように第1開口部の開口面に対して交差する方向に開口面が形成されかつ第1開口部よりも開口幅が狭く設定された第2開口部を形成することにより、必然的に形成される第2開口部の幅方向の隣接部位を規制面として利用することが可能になる。
【0015】
請求項4記載の本発明によれば、被係合部にはガイド部を挟んで規制面と反対側にストッパ部が形成され、爪部がガイド部を乗り越えると、係合部の組付用開口部への挿入動作を停止させる。このため、爪部の先端部側に上記ストッパ部を設定する場合に比し、爪部にストッパ部との当接による反力が作用しない。
【0016】
請求項5記載の本発明によれば、樹脂製のバンパカバーに組付用開口部及び被係合部が形成されており、かかる組付用開口部に樹脂製のフォグランプカバーの係合部が挿入されて、係合部が被係合部に係合される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る部品の部材への取付構造は、部品の部材からの取付作業が容易であると共に取り付けた部品が部材から不用意に外れることがなく、更に部品の部材からの取外し作業が容易であるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項2記載の本発明に係る部品の部材への取付構造は、受圧面を外部に露出させない場合に比し、解除操作性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項3記載の本発明に係る部品の部材への取付構造は、少ないスペースで係合部の被係合部への嵌合と係合部の被係合部からの外れ防止を両立させることができ、スペースを有効に活用することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項4記載の本発明に係る部品の部材への取付構造は、爪部ひいては係合部の耐久性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項5記載の本発明に係る部品の部材への取付構造は、フォグランプカバーのバンパカバーへの取付作業が容易であると共に、取り付けたフォグランプカバーが不用意にバンパカバーの組付用開口部から外れることがなく、更にフォグランプカバーのバンパカバーからの取外し作業が容易であるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】フロントバンパカバーにフォグランプカバーを組付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【図2】(A)は図1に示される係合部を車両幅方向内側から見た要部拡大斜視図であり、(B)は当該係合部を車両幅方向外側から見た要部拡大斜視図である。
【図3】図1に示される被係合部を車両幅方向内側から見た要部拡大斜視図である。
【図4】(A)は係合部が被係合部に嵌合固定された状態を車両幅方向の内側から見て示す要部拡大斜視図であり、(B)はその状態を車両幅方向の外側から見て示す要部拡大斜視図である。
【図5】図1に示される係合部を成形するための第1金型から第3金型までの配置を示す平断面図である。
【図6】係合部が被係合部に係合されるまでの様子を連続図で示したものであり、(A)は係合部の係合前の状態を示す斜視図であり、(B)は(A)の(B)―(B)線断面図である。
【図7】係合部が被係合部に係合されるまでの様子を連続図で示したものであり、(A)は係合部が被係合部のスロープを登った状態を示す斜視図であり、(B)は(A)の(B)―(B)線断面図である。
【図8】係合部が被係合部に係合されるまでの様子を連続図で示したものであり、(A)は係合部が被係合部のスロープを登りきって爪部が第1開口部に係合される直前の状態を示す斜視図であり、(B)は(A)の(B)―(B)線断面図である。
【図9】係合部が被係合部に係合されるまでの様子を連続図で示したものであり、(A)は係合部が被係合部に係合された状態を示す斜視図であり、(B)は(A)の(B)―(B)線断面図である。
【図10】(A)は対比例に係る係合部を示す斜視図であり、(B)はその平面図である。
【図11】(A)は図10(A)に示される係合部がフロントバンパカバーに係合された状態を示す縦断面図であり、(B)は当該係合部がフロントバンパカバーから外れる様子を示す縦断面図である。
【図12】(A)は係合部が被係合部に係合されることで係合部は二方向に拘束されることを示す斜視図であり、(B)は更に90度異なる方向に係合部及び被係合部を設定すると部品の部材に対する動きを合計三方向に拘束することが可能になることを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1〜図12を用いて、本発明に係る部品の部材への取付構造の一実施形態について説明する。なお、図1示される矢印FRは車両前方側を示しており、又矢印UPは車両上方側を示している。さらに、矢印INは車両幅方向内側を、又矢印OUTは車両幅方向外側をそれぞれ示している。
【0024】
図1には、フロントバンパカバーにフォグランプカバーを組付ける前の状態の分解斜視図が示されている。この図に示されるように、部材としてのフロントバンパカバー10は車両幅方向を長手方向として形成された長尺状の板材であり、図示しないフロントバンパの前端部に意匠面を形成するべく配置される樹脂製の部材である。フロントバンパカバー10の長手方向の両端部近傍には車両後方側へ向けて略直方体形状に凹む取付部13が一体に形成されており、この取付部13に部品としてのフォグランプカバー12が取り付けられている。具体的には、取付部13の底部には比較的大きな略矩形状の組付用開口部14が形成されている。さらに、組付用開口部14の左右の周縁部には、後述するフォグランプ62を支持する左右一対の第1支持部16及び第2支持部18が平行に立設されている。第1支持部16及び第2支持部18は左右一対の壁として形成されており、車両幅方向に対向して配置されている。第1支持部16の上端部16A及び下端部16Bは車両後方側へ向けて平行に突出されている。上端部16Aの端部にはボルト挿通孔17が形成されており、又下端部16Bの端部には円柱状の突起19が形成されている。一方、第2支持部18は枠体状に形成されており、その上端部18A及び下端部18Bには車両幅方向外側に開口する矩形状の差込み部21が一体に形成されている。
【0025】
一方、フォグランプの前面を覆うフォグランプカバー12は、略矩形平板状に形成された基部20と、この基部20の車両幅方向外側部分に設けられかつ車両後方側へ向けて円筒状に立設された円筒部22と、この円筒部22の周囲から車両後方側へ向けて枠状に立設された枠状部24と、枠状部24の内側壁から車両幅方向中央側へ向けて平行に延出された複数のリブ26と、を含んで構成されている。円筒部22には、全体の形状が略半球体状に形成されたフォグランプ62から照射された光が投光されるようになっている。なお、フォグランプ62のハウジングの左右両側部には、車両幅方向へ各々延出されると共に先端部に透孔が形成された上下一対の取付用脚部62A、62Bが一体に形成されている。また、枠状部24は車両幅方向外側が開放されたU字状に形成されている。そして、この枠状部24の四隅に、車両後方側へ突出する1本の突起状の係合部28と3本のガイド突起30とがそれぞれ一体に形成されている。各ガイド突起30の先端部には、その板厚方向である車両上下方向に弾性変形可能な爪が形成されている。ガイド突起30は、枠状部24の車両幅方向内側の縦壁の上端部及び下端部に隣接する位置及び枠状部24の上壁の車両幅方向外側の端部に隣接する位置の合計3箇所に設定されている。係合部28は、枠状部24の下壁の車両幅方向外側の端部に隣接する位置の一箇所のみに設定されている。
【0026】
上述したフォグランプカバー12の係合部28に対応して、フロントバンパカバー10の取付部13の底部の四隅には、ガイド突起30に対応して形成された3個の係止孔29と、係合部28に対応して形成された被係合部31とが形成されている。係止孔29は、ガイド突起30が挿通可能でかつ爪が弾性的に係合可能な矩形状の孔として形成されている。一方、被係合部31は、第1支持部16の下端部16Bの根元部から当該根元部に隣接して形成された後述する棚部42に亘る範囲に設定されている。被係合部31には係合部28が嵌合される嵌合部32が形成されており、この嵌合部32に係合部28が嵌合されることにより、フォグランプカバー12がフロントバンパカバー10にボルト・ナット等を用いることなく固定されている。以下、フォグランプカバー12のフロントバンパカバー10への取付構成について詳細に説明する。
【0027】
図2(A)、(B)には、係合部28を車両幅方向の内側及び外側から見た斜視図がそれぞれ示されている。これらの図に示されるように、係合部28は、基部20に一体に形成された直方体形状の台座34と、この台座34の後壁部34Aから車両後方側へ垂直に立設された支持部36と、この支持部36の先端部から車両上下方向に張り出すように形成された略矩形平板状の爪部38と、を含んで構成されている。台座34の内部は空洞とされており、平断面視で見ると車両幅方向内側の側部のみがフォグランプカバー12の基部20に接続されている(図7(B)、図8(B)参照)。支持部36はその板厚方向である車両幅方向に弾性変形可能とされている。また、支持部36及び爪部38の背面(車両幅方向内側の面)側には、上下一対の補強用リブ40が一体に形成されている。補強用リブ40は支持部36の前後方向の全範囲と爪部38の前後方向の中間までの範囲に形成されている。また、補強用リブ40の前端部は台座34に接続されている。さらに、補強用リブ40は、平面視で前端部から後端部に向かうにつれて幅が狭くなる先細り形状に形成されている。
【0028】
上記爪部38には、複数の機能が付加されている。第一に、支持部36の先端両側には爪部38の基端側張出し38Aが配置されており、これらの基端側張出し38Aが第1支持部16との係合部位とされている。また、爪部38の幅方向両側部(車両上下方向の両端部)及び先端部の表面側(車両幅方向外側)は面取りされており、これにより複数の面で構成された(三面から成る)スロープ(傾斜面)38B、38Cが形成されている。さらに、爪部38の表面側には、爪部38の基端部から延出方向の中間部に亘って解除操作時に指で押す受圧面38Dが形成されている。受圧面38Dの面直角方向が解除操作時の押圧方向とされている。
【0029】
図3には、第1支持部16の下端部16Bをその車両幅方向内側から見た斜視図が示されている。また、図4(A)、(B)には、係合部28が被係合部31に係合された状態が車両幅方向の内側及び外側のそれぞれから見た状態が示されている。これらの図に示されるように、第1支持部16の下端部16Bは、前述したようにフロントバンパカバー10の組付用開口部14の周縁部に立設されており、組付用開口部14側へ延設された棚部42と、この棚部42の内周縁から車両後方側へ立ち上げられた保持壁44と、を含む嵌合部32を備えている。保持壁44には、爪部38を受入れ可能な大きさの開口を有する第1開口部46が形成されている。第1開口部46は車両幅方向から見て矩形状に形成されている。
【0030】
一方、棚部42の中央部には、第1開口部46の開口面に対して交差(直交)する方向に開口面が形成されかつ第1開口部46と連通された第2開口部48が形成されている。第2開口部48は車両前後方向に見て矩形状に形成されている。第2開口部48の開口幅は、支持部36を受入れ可能な幅に設定されている。従って、第2開口部48の開口幅は第1開口部46の開口幅よりも狭くなっている。この開口幅の広狭の設定により、棚部42には第1開口部46の上下両側(第2開口部48の幅方向に隣接する側)に一対の規制面50が形成されている。これらの規制面50に爪部38の基端側張出し38Aが当接係止されることで、係合部28が第1支持部16の嵌合部32に嵌合固定(係合)されるようになっている。
【0031】
さらに、棚部42の規制面50が形成された部位に隣接する位置には、前述した爪部38に形成されたスロープ38B、38Cが干渉して支持部36をその板厚方向(車両幅方向の内側)へ弾性変形させるガイド部としてのスロープ42A(傾斜面)が一体に形成されている。これら上下一対のスロープ42Aは棚部42と一体に形成されており、更にスロープ42Aを挟んで規制面50と反対側には、爪部38がスロープ42Aを乗り越えた際に係合部28の土台34の上壁面34Aに当接し係合部28の挿入方向への移動を停止させ、係合部28のそれ以上の挿入を阻止するストッパ部42Bが設定されている。係合部28を組付用開口部14内へ挿入し第1支持部16へ係合させていくと、係合部28の土台34の上壁面34Aが一対のストッパ部42Bに面当たりするようになっている。
【0032】
図5には、上述した係合部28を成形するための金型の配置が示されている。これらの図に示されるように、係合部28は、三種類の第1金型52、第2金型54及び第3金型56によって成形されている。第1金型52と第2金型54、第3金型56との間には所定の板厚の隙間58が形成されており、フォグランプカバー12の基部20が形成されるようになっている。また、第2金型54と第3金型56との間には前記隙間58と略直交する別の隙間60が形成されており、フォグランプカバー12の係合部28が形成されるようになっている。なお、第1金型52は車両基準で車両前方(図5の矢印A方向)が抜き方向とされており、第2金型54は車両基準で車両後方(図5の矢印B方向)が抜き方向とされており、第3金型56は車両基準で車両幅方向外側(図5の矢印C方向)が抜き方向とされている。
【0033】
(本実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0034】
図6〜図9には、係合部28が第1支持部16に嵌合固定されるまでの様子が連続図で示されている。なお、各図番の(A)は斜視図であり、(B)は支持部をその幅方向中間部で切断したときの平断面図である。
【0035】
図6(A)、(B)に示されるように、まずフォグランプカバー12がフロントバンパカバー10の組付用開口部14(取付部13)の前方に配置される。次いで、フォグランプカバー12から立設された3本のガイド突起30をフロントバンパカバー10の取付部13に形成された係止孔29に差込みつつ、係合部28を第1開口部46、第2開口部38側へ挿入させる。つまり、車両基準で車両後方側である矢印P方向を組付方向として係合部28が組付用開口部14と連通された第1開口部46、第2開口部38内へ挿入される。このとき、3箇所に設定されたガイド突起30が第1支持部16及び第2支持部18の壁面上を摺接することで、フォグランプカバー12の組付動作がガイドされる。係合部28を組付用開口部14内へ挿入し始めた時点では、爪部38は第1支持部16に対して非接触の状態にある。
【0036】
この状態から係合部28の組付用開口部14内への挿入量が増加すると、図7(A)、(B)に示されるように、係合部28のスロープ38B、38Cが第1支持部16側のスロープ42Aに干渉する。このため、係合部28はスロープ42Aによって車両幅方向内側へ押圧されて、支持部36がその板厚方向(図7の矢印Q方向)へ弾性変形する。そして、図8(A)、(B)に示されるように、爪部38がスロープ42Aを乗り越えるまで支持部36は弾性変形し続ける。なお、係合部28の台座34の後壁部34Aが第1支持部16のストッパ部42Bに当接すると、係合部28はそれ以上第1支持部16側へ挿入されることはない。
【0037】
そして、図9(A)、(B)に示されるように、支持部36がスロープ42Aを乗り越えると、支持部36の弾性復元力によって爪部38は弾性変形方向と反対方向(図9の矢印R方向)へ変位する。これにより、爪部38は第1開口部46に嵌合されると共に支持部36が第2開口部48に嵌合される。この状態では、爪部38の基端側張出し38Aが嵌合部32の規制面50に当接し、爪部38の外れ方向(図4(A)の矢印S方向)への移動が規制面50によって規制(阻止)される。
【0038】
フォグランプカバー12をフロントバンパカバー10から取り外す際には、第1開口部46に受圧面38Dが露出しているので、この受圧面38Dを1本の指で車両幅方向内側(図4の矢印T方向側)へ押圧すればよい。受圧面38Dが車両幅方向内側へ押圧されると、爪部38の基端側張出し38Aが規制面50から外れる。これにより、爪部38が第1開口部46から離脱し、支持部36が第2開口部48から離脱する。その結果、係合部28が被係合部31から離脱され、フォグランプカバー12がフロントバンパカバー10の取付部13から取り外すことができる。
【0039】
このように本実施形態によれば、フォグランプカバー12の取付時には、係合部28を組付用開口部14内へ挿入して、爪部38のスロープ38B、38Cを第1支持部16側のスロープ42Aに干渉させてそのまま挿入すれば自動的に支持部36が撓み、係合部28を第1支持部16に係合させることができる。従って、フォグランプカバー12をフロントバンパカバー10に容易に取り付けることができる。
【0040】
また、フォグランプカバー12の取付後は、爪部38が備える基端側張出し38Aが嵌合部32の規制面50に当接し、係合部28の挿入方向と反対方向への移動が規制される。従って、フォグランプカバー12に挿入方向と反対方向(即ち、フォグランプカバー12の外れ方向)への外力が作用しても、係合部28が第1支持部16から不用意に外れることはない。このことを対比例を用いて説明すると、図10(A)、(B)及び図11(A)、(B)に示されるように、支持部100の先端部に支持部100の板厚方向へ突出してフロントバンパカバー102に係止される爪104Aが形成された構造の係合部104を採用した場合、撓む部位(支持部100)と引っ掛ける部位(爪104A)とが係合部104の中心線CL上に存在しており、かつ爪104Aの断面形状も山形形状とされている。このため、支持部100が弾性変形すると同時に爪104Aがフロントバンパカバー102から外れる。従って、対比例に係る係合部104を採用した場合、爪104Aをフロントバンパカバー102に係合させやすい反面、取付後に爪104Aが外れやすいといえる。これに対し、本実施形態の係合部28は、爪部38が備える一対の基端側張出し38Aが支持部36の中心線CL上にはなく、撓む部位(支持部36)と引っ掛ける部位(基端側張出し38A)とが分離しており、かつ基端側張出し38Aと規制面50とが外れ方向の外力に対して直交する平面上にて面当たりする。このため、充分な嵌合力が確保される。
【0041】
さらに、フォグランプカバー12の取外し時には、係合部28の爪部38に設けられた受圧面38Dに片手で解除操作力を一方向から加えるだけで、係合部28と第1支持部16との係合状態が解除される。従って、フォグランプカバー12をフロントバンパカバー10から容易に取り外すことができる。
【0042】
総括すると、上記構成の本実施形態によれば、フォグランプカバー12のフロントバンパカバー10への取付作業が容易であると共にフロントバンパカバー10に取り付けたフォグランプカバー12が不用意に外れることがなく、更にフォグランプカバー12のフロントバンパカバー10からの取外し作業が容易である。
【0043】
また、本実施形態では、爪部38が嵌合部32に嵌合された状態では、係合部28に設けられた受圧面38Dを第1開口部46から外部に露出させることが可能となる。このため、受圧面38Dに解除操作力を直接加えることができ、その分、解除操作力を軽くすることができる。従って、受圧面を外部に露出させない場合(例えば、第1開口部46が形成された部位を底部の厚さが非常に薄い凹部にして、受圧面は外部に露出されていないが、板厚の薄い底部を押すと、押圧力が底部を介して受圧面に伝わる構造)に比し、解除操作性を向上させることができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、係合部28を嵌合部32に嵌合させると、係合部28の爪部38は第1開口部46に嵌合され、係合部28の支持部36は第1開口部46と連通された第2開口部48に嵌合される。同時に、第2開口部48の幅方向に隣接して配置された規制面50に爪部38の基端側張出し38Aが当接される。このように第1開口部46の開口面に対して交差する方向に開口面が形成されかつ第1開口部46よりも開口幅が狭く設定された第2開口部48を形成することにより、必然的に形成される第2開口部48の幅方向の隣接部位を規制面50として利用することが可能になる。よって、本実施形態によれば、少ないスペースで係合部28の第1支持部16への嵌合と係合部28の第1支持部16からの外れ防止を両立させることができ、スペースを有効に活用することができる。
【0045】
また、本実施形態では、第1支持部16にはスロープ42Aを挟んで規制面50と反対側にストッパ部42Bが形成され、爪部38がスロープ42Aを乗り越えると、係合部28の組付用開口部14への挿入動作を停止させる。このため、爪部38の先端部側に上記ストッパ部を設定する場合に比し、爪部38にストッパ部42Bとの当接による反力が作用しない。よって、本実施形態によれば、爪部38ひいては係合部28の耐久性を向上させることができる。
【0046】
なお、上述した本態様に係る部品の部材への取付構造によれば、係合部70と第1被係合部74の被係合部72を一箇所に設定すれば、直交する二方向に係合部70の動きを規制することができる。例えば、図12(A)に示されるように、係合部70が第1被係合部74の被係合部72に係合されると、車両前後方向と車両幅方向に係合部70は規制される。このため、係合部70のこれら二方向へのガタつきが抑制又は防止される。よって、図12(B)に示されるように、係合部70及び第1被係合部74の被係合部72と係合方向が90度異なる方向に設定された係合部70’及び被係合部72’を設定すれば、車両上下方向にも係合部70’の動きが規制される。従って、二箇所以上に係合部70、70’と第1被係合部74、74’の被係合部72、72’とを直交するように設定することにより、車両前後方向、車両幅方向、車両上下方向の三方向のガタつきを抑制又は防止することができる。
【0047】
また、上述した本実施形態では、棚部42にガイド部としてのスロープ42Aを設定したが、これに限らず、爪部の嵌合固定状態が解除される方向へ支持部を弾性変形することができる構造であればよい。従って、例えば棚部42にスロープ42Aに替えて側面視で半円形状の突起を設定するようにしてもよい。
【0048】
さらに、上述した本実施形態では、フォグランプカバー12のフロントバンパカバー10への取付構造に対して本発明を適用したが、これに限らず、他の樹脂部品の樹脂部材への取付構造に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 フロントバンパカバー(部品)
12 フォグランプカバー(部材)
14 組付用開口部
28 係合部
31 被係合部
32 嵌合部
36 支持部
38 爪部
38A 基端側張出し部
38D 受圧面
42A スロープ(ガイド部)
42B ストッパ部
46 第1開口部
48 第2開口部
50 規制面
70 係合部
70’ 係合部
72 被係合部
72’ 被係合部
74 第1被係合部
74’ 第1被係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象となる部品から立設され、板厚方向に弾性変形可能とされた支持部と、この支持部の先端部から張り出すように形成されると共に当該支持部の弾性変形に伴い一体に変位しかつ支持部の先端部から張り出した基端側張出し部並びに係合を解除するための解除操作力を一方向から受ける受圧面を備えた爪部と、を含んで構成された係合部と、
取付相手となる部材に形成されると共に前記係合部が挿入される組付用開口部の周縁部に設けられ、当該係合部の挿入に伴い前記爪部と干渉して前記支持部を解除方向へ弾性変形させるガイド部と、当該爪部が当該ガイド部を乗り越えたときに当該係合部が嵌合されると共に前記基端側張出し部と係合し前記係合部の挿入方向と反対方向への移動を規制する規制面を備えた嵌合部と、を含んで構成された被係合部と、
を有する部品の部材への取付構造。
【請求項2】
前記嵌合部は、前記爪部を受入れる第1開口部を備えている、
請求項1記載の部品の部材への取付構造。
【請求項3】
前記嵌合部は、前記第1開口部の開口面に対して交差する方向に開口面が形成されると共に第1開口部よりも開口幅が狭く更に第1開口部と連通されて前記支持部を受入れる第2開口部を備えており、
前記規制面は当該第2開口部の幅方向に隣接して配置されている、
請求項2記載の部品の部材への取付構造。
【請求項4】
前記被係合部には、前記ガイド部を挟んで前記規制面と反対側に、前記爪部が前記ガイド部を乗り越えた際に前記係合部と当接し当該係合部の挿入方向への移動を停止させるストッパ部が形成されている、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の部品の部材への取付構造。
【請求項5】
前記取付相手となる部材は樹脂製のバンパカバーであり、
前記取付対象となる部品は樹脂製のフォグランプカバーである、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の部品の部材への取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−247037(P2012−247037A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120976(P2011−120976)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】