説明

部品をろう付けする方法、ろう付けした発電システム部品及びろう付け

【課題】発電システムにおいて部品を現場でろう付けする方法を提供すること。
【解決手段】 発電システムの補修を改善するため、発電システムの部品をろう付けする方法、ろう付けした発電システム部品及びろう付けが提供される。本方法は、表面に特徴部を有する部品を準備するステップと、粒状材料をフィラー材料でコーティングして被覆粒状材料を得るステップとを含む。本方法は、特徴部を調製して処理領域を得るステップと、部品の表面の処理領域を被覆粒状材料で充填するステップとを含む。本方法は、処理領域及び周囲の部品をろう付け温度まで加熱するステップと、処理領域に酸化保護膜を適用するステップとを含む。本方法は、ろう付け温度に達した後、処理領域及びスクリーンをろう付けするステップと、部品を冷却してろう付け接合部を得るステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に発電システムに関し、より具体的には発電システムにおいて部品をろう付けする方法、並びに結果として得られるろう付けされた部品及びろう付けに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンケーシング、ブレード又はバケット及びベーンのようなターボ機械部品は、動作中に高温及び高応力に曝される。このような条件下では、部品は、物理的に摩耗し、亀裂、空隙及び摩耗した表面を形成する結果となる。溶接、ろう付け、ギャップろう付けを用いて、部品をより最適な動作条件にまで修復することができる。しかし、現場において幾らか幅広のギャップをろう付けして、表面に深い窪みを備えた部品を補修することは困難である。
【0003】
従って、現場で部品をろう付けする安価な実行可能な方法、ろう付けされた発電システム部品及び上述の欠点を受けないろう付けが当該技術分野において望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7789288号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明の幾つかの実施形態について要約する。これらの実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲を限定するものではなく、本発明の可能な形態を簡単にまとめたものである。実際、本発明は、以下に記載する実施形態と同様のものだけでなく、異なる様々な実施形態を包含する。
【0006】
本開示の例示的な実施形態によれば、部品をろう付けする方法が提供される。本方法は、表面に特徴部を有する部品を準備するステップと、粒状材料をフィラー材料でコーティングして被覆粒状材料を得るステップとを含む。本方法は、特徴部を調製して処理領域を得るステップと、部品の表面の処理領域を被覆粒状材料で充填するステップとを含む。本方法は、処理領域及び周囲の部品をろう付け温度まで加熱するステップと、処理領域に酸化保護膜を適用するステップとを含む。本方法は、ろう付け温度に達した後、処理領域をろう付けするステップと、部品を冷却してろう付け接合部を得るステップとを含む。
【0007】
本開示の別の例示的な実施形態によれば、ろう付けされた発電システム部品が提供される。ろう付けされた発電システム部品は、発電システム部品の表面の特徴部に適用される被覆粒状材料と、特徴部に適用される酸化保護層と、ろう付け中に前記特徴部に塗工される粉体フラックスとを含む。被覆粒状材料は、フィラー材料で被覆粒状材料を含む。加熱時には、被覆粒状材料、酸化保護層及び粉体フラックスが、発電システム部品の表面の特徴部を充填するろう付け部を形成するよう構成される。
【0008】
本開示の別の例示的な実施形態によれば、ろう付けが提供される。ろう付けは、発電システム部品の表面の特徴部に適用される被覆粒状材料と、特徴部に適用される酸化保護層と、特徴部に塗工される粉体フラックスとを含む。被覆粒状材料は、フィラー材料で被覆粒状材料を含む。
加熱時には、被覆粒状材料、酸化保護層及び粉体フラックスが、発電システム部品の表面の特徴部を充填するよう構成される。
【0009】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点については、図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の発電システムの断面図。
【図2】本開示の発電システムの部品における特徴部の断面図。
【図3】本開示の発電システムの部品における処理領域の断面図。
【図4】本開示の部品の処理領域に配置された被覆粒状材料の断面図。
【図5】本開示の部品の処理領域の被覆粒状材料の上部に配置されるスクリーン及び酸化保護膜の断面図。
【図6】被覆粒状材料をその固相線温度未満に冷却したときのろう付け接合部を示す図。
【図7】本開示の処理領域をろう付けするための方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を通して、同様の部材にはできるだけ同様の符号を付した。
【0012】
現場で部品をろう付けする安価な実行可能な方法、ろう付けされた発電システム部品及び上述の欠点を受けないろう付けが提供される。本開示の実施形態の1つの利点は、作動中に作製される亀裂又は窪みを有するダクタイル鉄ケーシングを現場で補修する方法を含む。別の利点は、発電システム部品を補修して部品の耐用年数を延ばすことを可能にする現場補修方法である。別の利点は、発電システム部品の大きな亀裂又は大きなギャップの補修を可能にする方法である。
【0013】
以下、本発明の1以上の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態を簡潔に説明するため、現実の実施に際してのあらゆる特徴について本明細書に記載しないこともある。実施化に向けての開発に際して、あらゆるエンジニアリング又は設計プロジェクトの場合と同様に、実施毎に異なる開発者の特定の目標(システム及び業務に関連した制約に従うことなど)を達成すべく、実施に特有の多くの決定を行う必要があることは明らかであろう。さらに、かかる開発努力は複雑で時間を要することもあるが、本明細書の開示内容に接した当業者にとっては日常的な設計、組立及び製造にすぎないことも明らかである。
【0014】
本発明の様々な実施形態の構成要素について紹介する際、単数形で記載したものは、その構成要素が1以上存在することを意味する。「含む」、「備える」及び「有する」という用語は内包的なものであり、記載した構成要素以外の追加の要素が存在していてもよいことを意味する。
【0015】
発電システムは、限定ではないが、ガスタービン、蒸気タービン及び他のタービン組立体を含む。特定の用途において、ターボ機械(例えば、タービン、圧縮機及びポンプ)及び他の機械を含む発電システムは、激しい摩耗条件に曝される。例えば、ブレード、ケーシング、ロータホイール、シャフト、ノズルなどの特定の発電システム部品は、高熱環境及び高回転環境で作動する可能性がある。極めて厳しい環境での動作条件の結果として、部品の表面上に亀裂、窪み、キャビティ又はギャップが生じ、補修を必要とする場合がある。これらのギャップの一部は、ギャップ又は亀裂のサイズに起因した幅広ギャップ又は深いギャップと考えられる。例えば、一部のギャップは、約3mm以上の幅もしくは長さ又は3mm以上の深さを有するギャップを含むことができる。大きなギャップ及び深いギャップは一般に、従来の溶接又はろう付け法を用いて現場で補修するには好適ではない。
【0016】
次に図1を参照すると、タービンシステムとして図1に示される発電システム10の圧縮機は、補修又は接合が必要な場合がある。発電システム10のような機械的システムは、作動条件中に機械的及び熱的応力を受け、特定の部品の定期的な補修を必要とする場合がある。発電システム10の作動中、天然ガス又はシンガスのような燃料は、1以上の燃料ノズル12を通って燃焼器16に送ることができる。空気は、空気吸入セクション18を通って発電システム10に流入し、圧縮機14によって加圧することができる。圧縮機14は、空気を加圧する一連の段20、22及び24を含むことができる。各段は、固定ベーン26及びブレード28の1以上のセットを含むことができる。ブレード28が回転して圧力を漸次的に増大させ、加圧空気を提供し、該ブレード28は、シャフト32に接続された回転ホイール30に取り付けることができる。圧縮機14からの加圧された吐出空気は、ディフューザセクション36を通って圧縮機14から流出し、燃焼器16に配向されて燃料と混合することができる。特定の実施形態では、発電システム10は、環状配列で配置された複数の燃焼器16を含むことができる。各燃焼器16は、高温の燃焼ガスをタービン34に配向することができる。
【0017】
図1に示すように、タービン34は、ケーシング56によって囲まれた3つの独立した段40、42及び44を含む。各段40、42及び44は、シャフト54に取り付けられたそれぞれのロータホイール48、50及び52に結合されたブレード又はバケット46のセットを含む。高温燃焼ガスによりタービンブレード46の回転が生じると、シャフト54が回転して、圧縮機14及び発電器などの他の何れかの好適な負荷を駆動する。最終的には、発電システム10は、排気セクション60を通じて燃焼ガスを拡散し排出する。ノズル12、吸気口18、圧縮機14、ベーン26、ブレード28、ホイール30、シャフト32、ディフューザ36、段40、42、44、ブレード46、シャフト54、ケーシング56及び排気口60などの発電システム部品は、以下の図2に関してより詳細に説明するように、開示される方法を用いて何らかの亀裂、窪み、キャビティ又はギャップを補修することができる。
【0018】
図2は、特徴部76を含む表面72を有する部品70の一実施形態を示す断面図である。特徴部76は、部品70の表面72に何らかの亀裂、窪み、キャビティ又はギャップを含む。特徴部76は、部品70の表面72から深さDs(例えば、mm)を含むことができる。部品70は、あらゆる数の金属、金属合金及び/又はメタライズセラミックスを含む材料組成を有することができる。例えば、部品70がケーシング56の表面72である場合、部品70の材料は、鋳鉄又は鋳造56に好適な他の何れかの材料とすることができる。部品70は、高温に曝されて長期間使用され又は過度に使用された後、部品70の表面72に亀裂、窪み、キャビティ又はギャップなどの特徴部76を生じる可能性がある。図2に示すように、特徴部76は、およそW1(例えば、mm)の長さとD1(例えば、mm)の深さがある。W1及びD1は、アーク溶接又は標準的なろう付けのような他の補修方法を使用するには好適ではないサイズのものとすることができる。例えば、W1及びD1は、およそ3mmよりも大きいとすることができる。場合によっては、D1はDsにほぼ等しい。すなわち、特徴部76は、部品70を二部品に分割する結果となる場合がある。従来の溶接及びろう付け法を用いて、部品70の特徴部76のような損傷を必ずしも成功裏に補修できるとは限らず、従って、部品の修復を成功させるために本明細書で説明されるろう付け法を用いることが望ましい。
【0019】
図3は、部品70の特徴部76を調製することによって構築される処理領域80の一実施形態を示す断面図である。処理領域80を得るための特徴部76の調製は、ニッケルメッキ、マイクロブラスト、機械加工、研削、洗浄及びこれらの組合せを含む。図示の実施形態では、処理領域80の縁部82及び84は、ろう付け法においてより好適な実質的に均一な壁を得るために、例えば、特徴部76に対してアングルグラインダーを用いて機械加工されている。また、処理領域80の縁部82及び84を得るために特徴部76を機械加工することにより、図2の特徴部76において存在していた可能性のある何らかの腐食、酸化及び他の汚染物質が排除される。処理領域80は、特徴部76の幅W1及び深さD1よりも大きな幅W2及び深さD2を含む。より大きな幅W2及び深さD2は、処理領域80により均一な縁部82及び84を得るために機械加工などの好適な方法による特徴部76の調製により及び何らかの望ましくない微粒子を部品70から取り除くことにより生じる。特定の実施形態では、処理領域80は、僅かに酸性の溶液などの洗浄溶液を加えた後、何らかの酸性反応を止めるよう設計された別の洗浄溶液を加えることにより更に洗浄することができる。他の何れかの好適な化学処理剤又は洗浄溶液を用いてもよい点は理解されたい。他の洗浄作業を利用することもでき、例えば、ワイヤブラシ又はサンドブラストを用いて、化学処理剤の前に粒状物を取り除くことができる。
【0020】
図4に示すように、被覆粒状材料94が処理領域80を充填している。被覆粒状材料94は、フィラー材料92が粒状材料90を完全に囲むようにフィラー材料92で粒状材料90をコーティングすることによって得られる。被覆粒状材料94の調製において、所望の量の粒状材料90及びフィラー材料92が容器内に提供される。容器は、シールされ、回転タンブルミキサを用いて綿密な混合又は振とうを受ける。被覆粒状材料におけるフィラー材料92に対する粒状材料90の容積比は、ほぼ15:1又はほぼ10:1、或いはほぼ8:1である。
【0021】
ある実施例では、粒状材料90の材料組成は、部品70の母材74の組成及び/又は部品70の期待供用用途に基づいて選択される。或いは、粒状材料90の材料組成は、部品70のフィラー材料92を「濡れ」させ、ろう付け温度及び供用温度を耐え抜く材料の能力に基づいて選択される。「濡れ」は、溶融ろう付けフィラー材料と結合する粒状材料90の能力に関連する。粒状材料90用の材料の幾つかの実施例には、限定ではないが、ステンレス、鋼ビード、低炭素鋼ビード、ニッケル合金ビード及びこれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、粒状材料90の平均直径は、約0.254mm(0.010インチ)〜約2.032mm(0.080インチ)又は、約0.508mm(0.020インチ)〜約1.524mm(0.060インチ)、或いは、約0.508mm(0.020インチ)〜約1.016mm(0.040インチ)である。フィラー材料92は、銀を含む粉体粒子から選択される。一実施形態では、フィラー材料92は、約50〜60重量%の銀、約16〜28重量%の銅、約11〜23重量%の亜鉛及び約1〜8重量%のスズを含む粉体粒子から選択される。フィラー材料92の粉体粒子の平均直径は、約100メッシュ(約150μm)〜約400メッシュ(約38μm)又は、約170メッシュ(約90μm)〜約325メッシュ(約45μm)、或いは、約200メッシュ(約75μm)〜約270メッシュ(約53μm)である。
【0022】
図4に示すように、処理領域80は、被覆粒状材料94が中央処理領域80に僅かな隆起部を形成するように被覆粒状材料94で過充填される。一実施形態では、被覆粒状材料94は、処理領域80に適用され、該被覆粒状材料94が部品70の表面と同じ高さになるように平滑にされる。その後、被覆粒状材料94は、処理領域80の既存の被覆粒状材料94に適用され、処理領域80の中央に小さな隆起部が形成されるようになる。加熱時には、被覆粒状材料94が処理領域80において毛細管作用を受けて、溶融した被覆粒状材料94が処理領域80全体をより均一に流れることができ、結果として、被覆粒状材料94がその固相線温度(すなわち、材料が固相に入る温度)未満に冷却されたときにより強固なろう付け接合部200(図6を参照)又は補修部がもたらされる。
【0023】
一実施形態では、図5〜図6に示すように、任意選択的に、スクリーン102が、被覆粒状材料94で充填された処理領域80を覆って部品70の表面72に適用される。スクリーン102は、取り付け手段104(例えば、限定ではないが、仮付け溶接、磁気手段又は他の固定手段)によって部品70の表面72に取り付けられる。
【0024】
一実施形態では、図5に示すように、スクリーン102は処理領域80を覆って配置される。スクリーン102は、必ずしも現行の方法において必須ではないが、該スクリーン102は、処理領域80内部での被覆粒状材料94及び酸化保護膜110の拘束、並びにろう付け作業中のガス抜けを可能にするのに好適な特性を含む。一実施形態では、スクリーン102は、部品70の輪郭に手動で成形又は「曲げ」ることが可能なメッシュもしくは有孔シート金属から選択される。別の実施形態では、スクリーン102は、手動で孔加工される孔又はろう付けガス又は蒸気のガス抜けを可能にし且つ被覆粒状材料94及び酸化保護膜110を閉じ込めるのに好適な気孔を含むセラミックスクリーンである。
【0025】
図5に示すように、ろう付け温度まで加熱する前に、酸化保護膜110が処理領域80に適用される。酸化保護膜110を適用する段階は、液体フラックス112を処理領域80に塗工した後、加熱の前にペースト状フラックス114を処理領域80に塗工する段階を含む。液体フラックス112は、限定ではないが、スプレー、コーティング又はダウシングなどの何れかの好適な方法で塗工され、液体フラックス112が処理領域80に浸透して、処理領域80を充填している被覆粒状材料94内のあらゆるギャップ又は空隙96(図4を参照)を満たすようになる。
【0026】
図5に描かれるように、スクリーン102を有する実施形態では、液体フラックス112がスクリーン102を浸透して被覆粒状材料94を囲む。次に、ペースト状フラックス114が処理領域80又は存在する場合にはスクリーン102に塗工される。ペースト状フラックス114は、限定ではないが、スプレー又は塗装などのあらゆる好適な方法で塗工される。幾つかの実施形態では、スクリーン102(図示せず)が存在しないと、ペースト状フラックス114は、被覆粒状材料94が充填された処理領域80を覆う層を形成する。図5に示すように、ペースト状フラックス114は、スクリーン102をコーティングし、また、スクリーン102の気孔に応じてスクリーン102に浸透することができる。
【0027】
液体フラックス112は、約25〜40重量%の水、約50〜63重量%のホウ酸カリウム、約10〜20重量%のフッ化カリウム、約1〜3重量%のホウ素及び約1〜3重量%のホウ酸を含む。ペースト状フラックス114は、約15〜25重量%の水、約50〜75重量%のホウ酸カリウム、約10〜20重量%のフッ化カリウム、約1〜3重量%のホウ素及び約1〜3重量%ホウ酸を含む。
【0028】
次に、処理領域80を覆うスクリーン102の有無に関わらず、処理領域80並びに処理領域80の周りの部品70は、誘導コイル又は他の好適な加熱操作を用いて、約5370℃(10000°F〜約9820℃(18000°F)又は約5930℃(11000°F)〜約8710℃(1600°F)、或いは、約6480℃(12000°F)〜約7600℃(14000°F)のろう付け温度まで加熱される。処理領域80を囲む区域は、断熱材料で覆われて、部品70及び処理領域80を所望のろう付け温度に維持する。一実施形態では、誘導コイルを用いた加熱及び断熱材による部品の取り囲みにより、2時間足らずのうちにろう付け温度に到達することが可能になる。
【0029】
図5に示すように、ろう付け温度まで加熱している間、粉体フラックス116が処理領域80に適用される。理論には制約されないが、ろう付け温度まで加熱している間にガス抜けが生じ、粉体フラックス116が追加の酸化保護膜を提供して、ろう付け温度まで加熱している間にガス抜けした酸化フラックス110に補充されると考えられる。粉体フラックス116は、約75〜85重量%のホウ酸カリウム、約15〜25重量%のフッ化カリウム、約2〜4重量%のホウ素及び約2〜4重量%のホウ酸を含む。粉体フラックス116は、液体フラックス112(約25〜40重量%の水)又はペースト状フラックス114(15〜25重量%の水)のような水分含有がない。加熱中に粉体フラックス116を処理領域80に適用することにより、処理領域80の温度を低下させることなく処理領域80に追加の酸化保護が提供される。粉体フラックス116は、乾燥オーブン中で、約30分〜約10時間にわたり約1200℃〜約2000℃の温度でペースト状フラックス114をオーブン乾燥させ、ペースト状フラックス中の水分含有量に応じた含水を全て取り除くことにより得られる。
【0030】
約5370℃(1000°F〜約9820℃(18000°F)のろう付け温度に達すると、処理領域80がろう付けされる。ろう付け段階は、ろう付けトーチ124又は酸素燃料トーチなどの局所的熱源を用いて処理領域80に熱を加えガスフラックス120を適用する段階を含む。ろう付けトーチ124は、処理領域80に直火を加え、限定ではないが、アセチレン、ガソリン、ブタン、プロパン、プロピレン、或いは、メチルアセチレン(プロピレン)とプロパジエン(MAPP)ガスの安定化混合物などの幾つかの燃料を用いて熱を加えることを含む。また、図5に示すように、フラックスワイヤ122が処理領域80に加えられ、ろう付けトーチ124により溶融される。ろう付け中、粉体フラックス116もまた、処理領域80に適用される。本開示を用いることにより、幅広のギャップ又は亀裂の現場でのろう付けが可能になる。
【0031】
一実施形態では、ろう付けフィラーワイヤー122は、約50〜60重量%の銀、約16〜28重量%の銅、約11〜23重量%の亜鉛及び約1〜8重量%のスズを含む。別の実施形態では、ろう付けフィラーワイヤー122は、ペースト状フラックス114でコーティングされる。
【0032】
ろう付け中、ろう付けトーチ124及びガスフラックス120を併用したろう付け温度は、被覆粒状材料94及び周囲の酸化保護膜110を溶融させる。従って、被覆粒状材料94が溶融すると、毛細管支配のスペースは、毛細管力により被覆粒状材料94を「引き寄せる」。毛細管作用は、溶融した被覆粒状材料94が処理領域80の隙間を通ってより均一に流すことができ、部品70の母材74とのより強固な金属結合の形成を可能にする上で有利である。
【0033】
図6に示すように、ろう付け後、部品70及び処理領域80が冷却できるようにされ、ろう付け接合部200及びろう付けされた発電システム部品202が得られる。冷却後、任意選択的に、ろう付け部品202及びろう付け接合部200が仕上げ又は機械加工され、何らかの追加の材料が表面204から除去される。ろう付け部品202の表面204から除去される材料は、スクリーン102(使用された場合)及びろう付け部品202の表面204から延びるろう付け接合部200の一部を含む。
【0034】
図7は、図2〜図6に概略的に示されたろう付け方法700を説明するフローチャートである。ろう付け方法700は、限定ではないが、工場内補修のために取り外し及び輸送するのが困難なケーシング56のような大型の発電システム部品の現場補修用途での使用に好適である。ろう付け方法700は、部品70の表面72に特徴部76を有する部品70を提供するステップを含む(ステップ701)(図1を参照)。実験室又は現場の何れかにおいて、粒状材料90がフィラー材料92でコーティングされ、被覆粒状材料94を得る(ステップ703)。特徴部76が調製されて処理領域80を得る(ステップ705)(図3を参照)。調製ステップ705は、あらゆる腐食、酸化及び他の望ましくない材料を取り除くため、限定ではないが、ニッケルメッキ、マイクロブラスト、研削、洗浄及びこれらの組合せなどの工程を含み、この結果として処理領域80が得られる。処理領域80は、被覆粒状材料94で充填される(ステップ707)(図4を参照)。一実施形態では、処理領域80は、粒状材料94で過充填され、部品70の表面72上に少量の被覆粒状材料94が形成される(図4を参照)。代替の実施形態では、処理領域80が被覆粒状材料94で充填されている間、該処理領域80は、約約50℃〜約100℃まで予熱されている。任意選択的に、一実施形態では、スクリーン102が粒状材料94を収容する処理領域80に適用される(ステップ708)(図5を参照)。
【0035】
被覆粒状材料94を収容する処理領域80に酸化保護膜が適用される(ステップ709)(図5を参照)。酸化保護膜の適用(ステップ709)は、スクリーン102の有無に関わらず、最初に液体フラックス112を処理領域80に塗工した後、ペースト状フラックス114を処理領域80に塗工するステップを含む(図5を参照)。酸化保護膜110で覆われた被覆粒状材料94及び周囲の部品を含む処理領域80がろう付け温度まで加熱される(ステップ711)。ろう付け温度に達すると、処理領域80がろう付けされる(ステップ713)(図5を参照)。ろう付け(ステップ713)は、粉体フラックス116を塗工し、ろう付けトーチ124を用いてガスフラックス120及びフラックスワイヤ122を処理領域80に塗工し、被覆粒状材料94を溶融するステップを含む(図5を参照)。ろう付け(ステップ713)の後、部品70が冷却し、ろう付け接合部200が得られる(ステップ715)(図6を参照)。ろう付け接合部200は、部品70の母材74をろう付け接合部200と接合しろう付け部品202を形成する。ろう付け部品202の供用要件によっては、任意選択的に、ろう付け接合部200は機械加工され、ろう付け部品202の表面204から過剰な材料が除去される(テップ717)。例えば、グラインダーを用いて、ろう付け接合部200及び/又はスクリーン102(存在する場合)に研削をかける。他の実施形態では、ろう付け接合部200が補修される発電システム部品の他の何れかの部品又は工程を妨げない場合には、機械加工は必要ではない。
【0036】
本発明を好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、その要素を様々に変化させることができ、均等物で置換することができることは当業者には明らかであろう。さらに、特定の状況又は材料に適応させるために、その本質的範囲から逸脱することなく、本発明の教示に多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するための最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。
【符号の説明】
【0037】
10 発電システム
12 燃料ノズル
14 圧縮機
16 燃焼器
18 空気吸入セクション
20, 22, 24 空気を加圧する一連の段
26 固定ベーン
28 ブレード
30 回転ホイール
32 シャフト
34 タービン
36 ディフューザセクション
40, 42, 44 3つの別個の段
46 バケット(ブレード)
48, 50, 52 ロータホイール
54 シャフト
56 ケーシング
60 排気セクション
70 部品
72 部品の表面
74 部品の母材
76 特徴部
80 処理領域
82, 84 縁部(処理領域の)
90 粒状材料(ステンレス鋼BB(ビーズ)
92 フィラー材料
94 被覆粒状材料
96 空隙
102 スクリーン
104 スクリーン用の仮付け溶接
110 酸化保護膜
112 液体フラックス
114 ペースト状フラックス
116 粉体フラックス
120 ガスフラックス
122 ろう付けフィラーワイヤー
200 ろう付け接合部(ろう付け部)
202 ろう付けされた発電システム部品
204 ろう付け部品の表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品をろう付けする方法であって、
表面に特徴部を有する部品を準備するステップと、
粒状材料をフィラー材料でコーティングして、被覆粒状材料を得るステップと、
前記特徴部を調製して処理領域を得るステップと、
前記部品の表面の前記処理領域を被覆粒状材料で充填するステップと、
前記処理領域及び周囲の部品をろう付け温度まで加熱するステップと、
前記処理領域に酸化保護膜を適用するステップと、
ろう付け温度に達した後、前記処理領域をろう付けするステップと、
前記部品を冷却してろう付け接合部を得るステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記調製ステップが、ニッケルメッキ、マイクロブラスト、研削、洗浄及びこれらの組合せを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記冷却ステップの後、前記部品のろう付け接合部を機械加工する追加のステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記充填ステップの後、前記処理領域及び被覆粒状材料を覆って前記部品の表面にスクリーンを取り付ける追加のステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記加熱ステップの間に、粉体フラックスを前記処理領域に添加する追加のステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ろう付けステップの間に、粉体フラックスを前記処理領域に添加する追加のステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記粒状材料が、複数の鋼ビード、低炭素鋼ビード、ニッケル合金ビード及びこれらの組合せを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記粒状材料の平均直径が、約0.020インチ〜約0.040インチである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記フィラー材料が銀を含む粒子である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記酸化保護膜を適用するステップが、前記処理領域に液体フラックスを塗工した後、ペースト状フラックスを前記処理領域に塗工するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記液体フラックスが、約25〜40重量%の水、約50〜63重量%のホウ酸カリウム、約10〜20重量%のフッ化カリウム、約1〜3重量%のホウ素及び約1〜3重量%ホウ酸を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ペースト状フラックスが、約15〜25重量%の水、約50〜75重量%のホウ酸カリウム、約10〜20重量%のフッ化カリウム、約1〜3重量%のホウ素及び約1〜3重量%ホウ酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記粉体フラックスが、約75〜85重量%のホウ酸カリウム、約15〜25重量%のフッ化カリウム、約2〜4重量%のホウ素及び約2〜4重量%ホウ酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ガスフラックスが、約30〜40重量%の四ホウ酸カリウム、約20〜30重量%のホウ酸、約20〜30重量%のフッ化水素カリウム、約1〜5重量%の過炭酸カリウム、約0〜0.5重量%のドデシル硫酸ナトリウム及び約1〜5重量%のホウ素を含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記処理領域をろう付けするステップが、ろう付けワイヤを含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記ろう付けワイヤが、約50〜60重量%の銀、約16〜28重量%の銅、約11〜23重量%の亜鉛及び約1〜8重量%のスズを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記ろう付けワイヤが、ペースト状フラックスでコーティングされる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
ろう付けされた発電システム部品であって、
前記発電システム部品の表面の特徴部に適用される、フィラー材料で被覆粒状材料を含む、被覆粒状材料と、
前記特徴部に適用される酸化保護層と、
ろう付け中に前記特徴部に塗工される粉体フラックスと
を備え、加熱時には、前記被覆粒状材料、前記酸化保護層及び前記粉体フラックスが、前記発電システム部品の表面の特徴部を充填するろう付け部を形成するよう構成される、ろう付けされた発電システム部品。
【請求項19】
前記粒状材料が、複数のステンレス鋼ビーズを含み、前記フィラー材料が、銀を含む粒子である、請求項17記載のろう付けされた発電システム部品。
【請求項20】
ろう付けであって、
前記発電システム部品の表面の特徴部に適用される、フィラー材料で被覆粒状材料を含む、被覆粒状材料と、
前記特徴部に適用される酸化保護層と、
ろう付け中に前記特徴部に塗工される粉体フラックスと、
を備え、前記被覆粒状材料を加熱するときに、前記酸化保護層及び前記粉体フラックスが、前記発電システム部品の表面の特徴部を充填するよう構成される、ろう付け。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−86182(P2013−86182A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−231272(P2012−231272)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)