説明

部品保持具

【課題】粘着層を交換する際の部品点数の削減等を図ることのできる部品保持具を提供する。
【解決手段】保持板1と、保持板1の表面に着脱自在に積層されて小型の電子部品を粘着保持する可撓性の粘着層20と、保持板1に粘着層20の最周縁部を押圧して保持する中空の押さえ保持枠30とを備え、保持板1の表面周縁部に包囲壁2を立設してその内周面には複数の係止凹部3を切り欠き形成し、押さえ保持枠30を包囲壁2内に着脱自在に嵌入可能な形としてその外周面には複数の係止凸部31を突出形成し、包囲壁2の係止凹部3と押さえ保持枠30の係止凸部31とを嵌合させる。保持板1、粘着層20、及び押さえ保持枠30が別部品であり、しかも、粘着層20と押さえ保持枠30とを着脱自在な構成とすることができるので、例え薄い粘着層20が裂けたり、損傷等が生じても、問題の粘着層20のみを交換でき、廃棄物を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ等の部品を粘着保持して搬送、輸送、保管等される部品保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ等からなる小型の電子部品を保持する従来の部品保持具(特許文献1、2参照)は、様々なタイプがあるが、例えば収納容器に内蔵されたネット上に、繰り返して使用される粘着性のシリコーンゲルが積層され、このシリコーンゲルの表面に小型の電子部品を着脱自在に粘着保持するタイプが知られている。シリコーンゲルは、例えば厚さ150μmの薄いフィルムに成形され、周縁部が収納容器に接着されている。
【特許文献1】特開平07‐297306号公報
【特許文献2】特開2000‐109170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における部品保持具は、以上のように構成され、収納容器、ネット、及びシリコーンゲルが一体化しているので、繰り返しの使用に伴い、薄いシリコーンゲルが裂けたり、損傷等が生じると、シリコーンゲルのみを交換することができず、その結果、容器本体やネットと共にシリコーンゲルを廃棄しなければならないという問題がある。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたもので、粘着層を交換する際の部品点数の削減等を図ることのできる部品保持具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記課題を解決するため、保持板と、この保持板に着脱自在に積層されて部品を粘着保持する可撓性の粘着層と、保持板に粘着層の少なくとも略周縁部を押さえ付けて保持する中空の押さえ保持部材とを含んでなることを特徴としている。
【0006】
なお、粘着層の略周縁部に中空の押さえ保持部材を重ねて一体化することができる。
また、保持板上に包囲壁を設け、押さえ保持部材を保持板の包囲壁内に着脱自在に嵌め入れ可能な形とすることができる。
また、包囲壁の内周面に係止凹部を形成するとともに、押さえ保持部材の外周面に係止凸部を形成し、包囲壁の係止凹部と押さえ保持部材の係止凸部とを嵌め合わせることができる。
【0007】
また、保持板上に、包囲壁に包囲される複数の突部を設けて粘着層を支持させるようにし、保持板に、保持板と粘着層との間の気体を外部に排気する排気孔を設けることが可能である。
また、保持板の包囲壁内に粘着層用の伸長突起を設け、この伸長突起に、押さえ保持部材の対向面に形成した切り欠き溝を粘着層の略周縁部を介し嵌め入れることが可能である。
【0008】
また、保持板の包囲壁内に、伸長突起の内側に位置する突部用の包囲突起を設けることが可能である。
さらに、押さえ保持部材の内部に、部品の収容領域を複数に区画形成する区画材を設けえても良い。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における保持板は、例えば平坦な板でも良いし、断面略皿形等でも良く、又平面視で矩形、多角形、円形、楕円形等とすることができる。部品には、少なくとも単数複数の半導体チップ、バイオチップ、MEMS、回路素子、レンズ、光学モジュール、レーザ素子等が含まれる。また、粘着層は、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。この粘着層の略周縁部には、周縁部と最周縁部のいずれもが含まれる。
【0010】
粘着層の略周縁部には、中空の押さえ保持部材を着脱自在に一体化しても良いし、固定して一体化することもできる。また、押さえ保持部材は、例えばリング形、枠形、多角形の枠形等に適宜形成することができる。また、係止凹部と係止凸部とは、単数複数を特に問うものではない。包囲壁は、エンドレスでも良いし、そうでなくても良い。さらに、区画部材は、例えば格子形や略蜂の巣形等とすることができる。
【0011】
本発明によれば、部品を保持する粘着層が損傷した場合には、保持板から押さえ保持部材を取り外し、粘着層と押さえ保持部材とを分解した後、痛んだ粘着層を新規な粘着層と交換すれば良い。この際、粘着層と押さえ保持部材とが分解不能な場合には、痛んだ粘着層と押さえ保持部材とをまとめて新規なタイプと交換すれば良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、痛んだ粘着層を交換する際の部品点数の削減等を図ることができるという効果がある。
また、粘着層の略周縁部に中空の押さえ保持部材を重ねて一体化すれば、単独では扱いにくい粘着層の取り扱いが容易化し、粘着層のハンドリングや保管時等の作業性が向上する。
また、保持板上に包囲壁を設け、押さえ保持部材を保持板の包囲壁内に着脱自在に嵌め入れ可能な形とすれば、包囲壁により、押さえ保持部材の位置ずれやがたつきを防ぐことができる。
【0013】
また、包囲壁の内周面に係止凹部を形成するとともに、押さえ保持部材の外周面に係止凸部を形成し、包囲壁の係止凹部と押さえ保持部材の係止凸部とを嵌め合わせれば、保持板の包囲壁内に押さえ保持部材を強固に嵌め合わせることができ、しかも、簡易な構成で脱落を防止することができる。
【0014】
また、保持板上に、包囲壁に包囲される複数の突部を設けて粘着層を支持させるようにし、保持板に、保持板と粘着層との間の気体を外部に排気する排気孔を設ければ、保持板と粘着層との間の気体を排気孔から外部に排気し、突部に応じて粘着層を変形させ、粘着層に対する電子部品の粘着面積を減少させて簡易に剥離することが可能になる。
【0015】
また、保持板の包囲壁内に粘着層用の伸長突起を設け、この伸長突起に、押さえ保持部材に形成した切り欠き溝を粘着層の略周縁部を介し嵌め入れれば、粘着層に皺や弛み等が生じるのを抑制することが可能になる。
【0016】
さらに、押さえ保持部材の内部に、部品の収容領域を複数に区画形成する区画材を設ければ、粘着層に複数の電子部品を整然と保持することができるとともに、区画材を粘着層に粘着させて押さえとすることができる。したがって、例え部品保持具を上下逆等にしても、粘着層の中央部等が容易に弛むことがなく、粘着層が弛むことにより、粘着した部品が安易に脱落することが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る部品保持具の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における部品保持具は、図1ないし図5に示すように、合成樹脂製の保持板1と、この保持板1の表面に積層されて電子部品10を粘着保持する可撓性の粘着層20と、保持板1に粘着層20の最周縁部を押圧して保持する中空の押さえ保持枠30とを備えている。
【0018】
保持板1と押さえ保持枠30とは、例えばABS、PC/ABS、PC等を含む成形材料により成形され、電子部品10の粘着保持、搬送、輸送、保管に適する大きさとされる。
【0019】
保持板1は、図2ないし図4に示すように、例えば平面略矩形の板に形成され、表面の周縁部には平面枠形の包囲壁2が立設されており、この包囲壁2の内周面周方向には、平面略半円形を呈する複数の係止凹部3が所定の間隔をおき切り欠き形成される。この保持板1の表面上には、包囲壁2に包囲される複数の突部4が所定の間隔をおいて配列され、この複数の突部4が対向する粘着層20を下方から支持する。各突部4は、円柱形、円錐台形、あるいはピン形等とされ、包囲壁2よりも低い高さに形成される。
【0020】
粘着層20は、図1や図5に示すように、可撓性を有する所定の薄いフィルム材料を使用して平面矩形に形成され、中空の押さえ保持枠30の裏面に粘着されており、保持板1の表面に対向して半導体チップ等からなる小型の電子部品10を着脱自在に必要数粘着保持するよう機能する。
【0021】
粘着層20の所定のフィルム材料としては、特に限定されるものではないが、例えば(1)支持基材上に粘着性に優れるウレタンゲルが積層されたタイプ、(2)粘着剤の移行が少ないミクロ吸盤を表面に備えたタイプ(商品名μ‐フィット等)、(3)引張破断強度が5MPa以上、引張破断伸びが500%以上、曲げ弾性率が10〜100MPaで20〜200μmの厚さを有する繰り返し使用が可能な弾性タイプ、(4)上記を支持基材としてその表面にアクリル系の再剥離粘着層が粘着されたタイプ等があげられる。
【0022】
押さえ保持枠30は、図1や図5に示すように、例えば保持板1の包囲壁2内に着脱自在に嵌入可能な平面枠形に形成され、粘着層20の表面最周縁部に上方から粘着される。この押さえ保持枠30の外周面周方向には、平面略半円形を呈する複数の係止凸部31が所定の間隔をおき突出形成され、各係止凸部31が包囲壁2の係止凹部3と着脱自在に嵌合するよう機能する。
【0023】
上記構成において、電子部品10を着脱自在に粘着保持して搬送する場合には、保持板1の包囲壁2内に押さえ保持枠30を嵌入して包囲壁2の係止凹部3と押さえ保持枠30の係止凸部31とを相互に嵌合させ、複数の突部4に粘着層20を下方から支持させれば、粘着層20の表面に必要数の電子部品10を着脱自在に粘着保持して搬送、輸送、保管することができる。
【0024】
粘着層20が繰り返しの使用により損傷した場合には、保持板1の包囲壁2から押さえ保持枠30を取り外し、粘着層20を押さえ保持枠30から剥離して分解した後、痛んだ粘着層20を新規な粘着層20と交換すれば良い。
【0025】
上記構成によれば、保持板1、粘着層20、及び押さえ保持枠30が別部品であり、しかも、粘着層20と押さえ保持枠30とを着脱自在な構成とすることができるので、例え薄い粘着層20が裂けたり、損傷等が生じても、問題の粘着層20のみを交換することができ、廃棄物を減少させることができる。したがって、保持板1、粘着層20、押さえ保持枠30をまとめて廃棄する必要が全くなく、保持板1と押さえ保持枠30とを継続して効率的、かつ有効に使用することができる。
【0026】
また、保持板1の表面が平坦ではなく、表面から突出した複数の突部4により粘着層20を少々凹凸とするので、粘着層20上の電子部品10を簡単に剥離することができる。また、粘着層20として、シリコーンゲルを敢えて使用する必要がないので、シリコーンゲルの低分子シロキサンが電子部品10に転写され、この転写に伴い、電子部品10のハンドリフロー工程でハンダ接着の不良を来たすことがない。さらに、粘着層20のフィルム材料として、支持基材の表面にアクリル系の再剥離粘着層が粘着されたタイプを使用すれば、電子部品10に最適な粘着力を容易に選定することができる。
【0027】
次に、図6ないし図9は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、保持板1の中央部厚さ方向に、真空ポンプ40の駆動に基づいて保持板1と粘着層20との間の空気(矢印参照)を外部に排気する排気孔41を穿孔し、包囲壁2内の前後左右には、粘着層20用の伸長リブ42を隣接状態で複数立設するとともに、包囲壁2内には、伸長リブ42の内側に隣接して位置する突部4用の包囲突起43を平面略枠形に立設するようにしている。
【0028】
包囲壁2、複数の伸長リブ42、包囲突起43は、包囲壁2よりも複数の伸長リブ42と包囲突起43とが低く、複数の伸長リブ42が包囲突起43と同じ高さか、あるいは包囲突起43を超える高さに形成される。また、包囲壁2と包囲突起43との間には、押さえ保持枠30が着脱自在に介在する。押さえ保持枠30の裏面には、断面略半円形の切り欠き溝44が複数切り欠かれ、この複数の切り欠き溝44が対向する伸長リブ42に粘着層20の周縁部を介し上方から嵌入し、粘着層20の皺や弛みを抑制防止するよう機能する。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0029】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、真空ポンプ40を駆動させて保持板1と粘着層20との間の空気を排気孔41から外部に排気すれば、複数の突部4に応じて粘着層20を凹凸に変形させ、粘着層20に対する電子部品10の粘着面積を減少させてさらに簡単に剥離することができるのは明らかである。
【0030】
また、包囲壁2内に、複数の伸長リブ42の内側に隣接する包囲突起43をエンドレスに周設するので、粘着層20にテンションを絶えず作用させ、皺や弛みを防ぐことが可能になる。また、包囲突起43により、突部4と突部4との間に密封空間を適切に形成することができるので、複数の突部4に応じて粘着層20を円滑に追従変形させることが可能になる。
【0031】
次に、図10は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、押さえ保持枠30に、電子部品10用の大きな収容領域50を複数の小さい収容領域50に区画形成する区画材51を内蔵し、この区画材51を粘着層20の表面に粘着させるようにしている。この区画材51は、例えば押さえ保持枠30の内部に、複数のバー52がXY方向に間隔をおき交差して配列されることにより略格子形に形成される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0032】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、粘着層20に複数の電子部品10を整然と保持することができるほか、区画材51を粘着層20の表面に粘着させて押さえとするので、例え部品保持具を表裏逆にしても、粘着層20の中央部等が弛むことがない。したがって、例え電子部品10が重い場合でも、粘着層20の中央部等が弛むことにより、粘着した電子部品10の安易な脱落を防止することができる。さらに、外部からの衝撃に対し、区画材51により粘着層20を有効に保護することができる。
【0033】
なお、本発明に係る部品保持具は、上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では粘着層20のフィルム材料として、(1)、(2)、(3)、(4)のタイプを示したが、フィルム材料が(3)のタイプの場合には、フィルムの裏面に帯電防止層を積層しても良い。また、特に問題がなければ、複数の突部4上に粘着層20を粘着しても良い。また、粘着層20の最周縁部に押さえ保持枠30を着脱自在に粘着しても良いし、着脱が不能なように固定しても良い。さらに、包囲突起43の上面角部を丸く面取りして接触する粘着層20の損傷を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る部品保持具の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図2】本発明に係る部品保持具の実施形態における保持板を模式的に示す平面説明図である。
【図3】本発明に係る部品保持具の実施形態における保持板を詳細に示す平面説明図である。
【図4】本発明に係る部品保持具の実施形態における保持板を模式的に示す側面説明図である。
【図5】本発明に係る部品保持具の実施形態における粘着層と押さえ保持部材とを模式的に示す裏面説明図である。
【図6】本発明に係る部品保持具の第2の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図7】図6のVII‐VII線断面図である。
【図8】本発明に係る部品保持具の第2の実施形態を模式的に示す要部断面説明図である。
【図9】本発明に係る部品保持具の第2の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図10】本発明に係る部品保持具の第3の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 保持板
2 包囲壁
3 係止凹部
4 突部
10 電子部品(部品)
20 粘着層
30 押さえ保持枠(押さえ保持部材)
31 係止凸部
40 真空ポンプ
41 排気孔
42 伸長リブ(伸長突起)
43 包囲突起
44 切り欠き溝
50 収容領域
51 区画材
52 バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持板と、この保持板に着脱自在に積層されて部品を粘着保持する可撓性の粘着層と、保持板に粘着層の少なくとも略周縁部を押さえ付けて保持する中空の押さえ保持部材とを含んでなることを特徴とする部品保持具。
【請求項2】
粘着層の略周縁部に中空の押さえ保持部材を重ねて一体化した請求項1記載の部品保持具。
【請求項3】
保持板上に包囲壁を設け、押さえ保持部材を保持板の包囲壁内に着脱自在に嵌め入れ可能な形とした請求項1又は2記載の部品保持具。
【請求項4】
包囲壁の内周面に係止凹部を形成するとともに、押さえ保持部材の外周面に係止凸部を形成し、包囲壁の係止凹部と押さえ保持部材の係止凸部とを嵌め合わせるようにした請求項3記載の部品保持具。
【請求項5】
保持板上に、包囲壁に包囲される複数の突部を設けて粘着層を支持させるようにし、保持板に、保持板と粘着層との間の気体を外部に排気する排気孔を設けた請求項3又は4記載の部品保持具。
【請求項6】
保持板の包囲壁内に粘着層用の伸長突起を設け、この伸長突起に、押さえ保持部材の対向面に形成した切り欠き溝を粘着層の略周縁部を介し嵌め入れるようにした請求項3、4、又は5記載の部品保持具。
【請求項7】
押さえ保持部材の内部に、部品の収容領域を複数に区画形成する区画材を設けた請求項1ないし6いずれかに記載の部品保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−23725(P2009−23725A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191805(P2007−191805)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】