説明

部品取付方法および部品取付構造

【課題】 製造工程が簡単で、外力によって基板が撓み変形しても、チップ部品の破損を抑制することができる部品取付方法および部品取付構造を提供する。
【解決手段】 基板1の上面に設けられた電極ランド4上に半田層5を設け、この半田層5を溶融させて、チップ部品2の接続電極3と基板1の電極ランド4とを電気的に接続した状態で、チップ部品2を基板1に取り付ける部品取付方法において、半田層5を溶融させる際に、半田層5の表面張力を部分的に異ならせた。従って、溶融した半田層5の部分的に異なる表面張力によってチップ部品2を基板1上に立ち上がるように傾けて取り付けることができる。これにより、チップ部品2の曲げ強度を向上させることができるほか、外力によって基板1が撓み変形する際に、チップ部品2の接続電極3に発生するストレスを分散させて、チップ部品2の内部にクラックが発生するのを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体チップ、チップコンデンサ、チップ抵抗素子、チップビーズ(チップインダクタ素子)などのチップ部品を基板に取り付けるための部品取付方法およびその部品取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、チップコンデンサなどのチップ部品を基板上に取り付ける方法としては、特許文献1に記載されているように、基板に貫通孔をチップ部品の接続電極に対応させて設け、この貫通孔にチップ部品の接続電極を挿入または対応させた状態で、チップ部品を基板の表面に接着により固定し、この基板の裏面に回路パターンを導電性インクによって印刷する際に、貫通孔内に導電性インクを充填させて、回路パターンとチップ部品とを電気的に接続した状態で、チップ部品を基板に取り付ける方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−24721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような部品取付方法では、チップ部品を基板に接着によって強固に固定することができても、基板に貫通孔を設け、この貫通孔に回路パターを形成するための導電性インクを充填させる必要があるため、その製造工程が煩雑であるばかりか、チップ部品を基板に接着により固定しているため、外力によって基板が撓み変形した際に、以下のような問題が生じる。
【0005】
例えば、基板がフレキシブルなフィルム基板である場合には、外力によって基板が撓み変形する際に、その外力がチップ部品にそのまま加わるため、チップ部品が破損し易いという問題がある。また、基板がエポキシ樹脂などの硬質基板である場合には、外力によって基板が撓み変形すると、チップ部品の接続電極にストレスが発生し、このストレスによってチップ部品の内部にクラックが生じるという問題がある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、製造工程が簡単で、外力によって基板が撓み変形しても、チップ部品の破損を抑制することができる部品取付方法および部品取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、チップ部品が搭載される箇所における基板の一面に設けられた電極ランド上に半田層を設け、この半田層を溶融させて、前記チップ部品に設けられた接続電極と前記基板の前記電極ランドとを電気的に接続した状態で、前記チップ部品を前記基板に取り付ける部品取付方法において、前記半田層を溶融させる際に、前記半田層の表面張力を部分的に異ならせたことを特徴とする部品取付方法である。
【0008】
また、この発明は、チップ部品が搭載される箇所における基板の一面に設けられた電極ランド上に半田層を設け、この半田層を溶融させて、前記チップ部品に設けられた接続電極と前記基板の前記電極ランドとを電気的に接続した状態で、前記チップ部品を前記基板に取り付ける部品取付方法において、前記半田層を溶融させる際に、前記半田層の溶融速度を部分的に異ならせたことを特徴とする部品取付方法である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、基板の一面に設けられた電極ランド上に半田層を設け、この半田層を溶融させてチップ部品の接続電極と基板の電極ランドとを接続する際に、溶融状態が部分的に異なる半田層によって、チップ部品を基板の一面から部分的に異なる高さで押し上げることができるので、チップ部品を基板の一面に、その一面に対する垂直方向(高さ方向)に傾けた状態で、立ち上がるように取り付けることができる。
【0010】
このため、チップ部品の曲げ強度を向上させることができると共に、外力によって基板が撓み変形する際に、チップ部品の接続電極にストレスが発生しても、そのストレスを分散させることができるので、チップ部品の内部にクラックが発生するのを抑制することができる。これにより、簡単な製造工程で容易にチップ部品を取り付けることができると共に、外力によって基板が撓み変形しても、チップ部品が破損するのを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明を適用した部品取付構造の実施形態1を示した拡大斜視図である。
【図2】図1に示された部品取付構造のA―A矢視における要部の拡大断面図である。
【図3】図1に示された部品取付構造の製造工程において、基板上に電極ランドを設けた状態を示し、(a)はその拡大平面図、(b)はそのB―B矢視における拡大断面図である。
【図4】図3に示された基板上の電極ランド上に半田層を設け、この半田層上にチップ部品を配置する状態を示し、(a)はその拡大平面図、(b)はそのC―C矢視における拡大断面図である。
【図5】図4に示された半田層を溶融させて、チップ部品を基板に取り付ける状態を示し、(a)はその拡大平面図、(b)はそのD―D矢視における拡大断面図である。
【図6】図1に示された部品取付構造において、基板が外力によって撓み変形した状態を示した拡大斜視図である。
【図7】この発明を適用した部品取付方法の実施形態2において、基板上に電極ランドを設けた状態を示し、(a)はその拡大平面図、(b)はそのE―E矢視における拡大断面図である。
【図8】図7に示された電極ランド上に半田層を設け、この半田層上にチップ部品を配置する状態を示し、(a)はその拡大平面図、(b)はそのF―F矢視における拡大断面図である。
【図9】図8に示された半田層を部分的に異なる加熱温度で溶融させて、チップ部品を基板に取り付ける状態を示し、(a)はその拡大平面図、(b)はそのG―G矢視における拡大断面図である。
【図10】この発明の部品取付方法における変形例を示し、(a)は基板上に電極ランドおよび半田層を積層させて設けた状態を示した拡大平面図、(b)はそのH―H矢視における拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
以下、図1〜図6を参照して、この発明を適用した部品取付方法およびその部品取付構造の実施形態1について説明する。
この部品取付構造は、図1および図2に示すように、基板1を備えている。この基板1は、プリント配線基板であり、その一面である上面にチップ部品2が搭載されるように構成されている。
【0013】
この場合、チップ部品2は、図2に示すように、その内部に導電層2aが絶縁層2bを介して多数積層されたチップコンデンサであり、図1および図2に示すように、全体がほぼ直方体形状に形成されている。このチップ部品2は、その両端部における下面、両側面、上面、および先端面に亘る各外周面に、接続電極3がそれぞれ形成されている。
【0014】
また、基板1の上面には、図2に示すように、複数の電極ランド4がチップ部品2の各接続電極3にそれぞれ対応して設けられている。この場合、複数の電極ランド4は、図4(a)に示すように、チップ部品2の接続電極3の下面に相当する長方形状の面積よりも広い面積の台形状に形成されている。すなわち、この台形状の電極ランド4は、図4(a)に示すように、その上底部4a(図4(a)では下辺部)の長さが接続電極3の下面における長方形の短辺部3aの長さと同じか、それよりも少し短く形成されている。
【0015】
また、この台形状の電極ランド4は、図4(a)に示すように、その下底部4b(図4(a)では上辺部)の長さが接続電極3の下面における長方形の短辺部3aの長さよりも十分に長く形成されている。さらに、この台形状の電極ランド4は、図4(a)に示すように、その上底部4aから下底部4bまでの距離(図4(a)では上下方向の長さ)が、接続電極3の下面における長方形の長辺部3bの長さよりも十分に長く形成されている。
【0016】
また、複数の電極ランド4は、図4(a)に示すように、その各上面にチップ部品2の各接続電極3が後述する半田層5を介して配置される際に、チップ部品2の両側に位置する各接続電極3の一方(図4(a)では下側)の各短辺部3aが各電極ランド4の各上底部4aにほぼ対応し、且つ各接続電極3の他方(図4(a)では上側)の各短辺部3aが各電極ランド4の各下底部4bから各上底部4a側に向けて離れ、この状態でチップ部品2が基板1に対して配置されるように形成されている。
【0017】
この場合、チップ部品2は、図4(a)に2点鎖線で示すように、その各接続電極3の一方の(図4(a)では下側)の各短辺部3aが各電極ランド4の各上底部4aから少し下側にずれた状態で、各接続電極3の他方(図4(a)では上側)の各短辺部3aが各電極ランド4の各下底部4bから各上底部4a側に向けて大きく離れた状態で配置されることにより、各電極ランド4の各下底部4b側に位置する半田層5を広く露出させた状態で、各電極ランド4上に半田層5を介して配置されるように構成されている。
【0018】
すなわち、この複数の電極ランド4の上面には、図2および図4に示すように、半田層5がそれぞれ設けられている。この半田層5は、クリーム半田や半田ペーストからなり、図2に示すように、基板1の電極ランド4とチップ部品2の接続電極3との間に位置する半田層5の厚みが部分的に異なった状態で、電極ランド4と接続電極3とを接合するように構成されている。
【0019】
この場合、半田層5は、図1および図2に示すように、基板1上の各電極ランド4における各下底部4b(図2では左側)に位置する半田層5の厚みが厚く、基板1上の各電極ランド4における各上底部4a(図2では右側)に位置する半田層5の厚みが薄くなるように形成されている。
【0020】
これにより、チップ部品2は、図1および図2に示すように、基板1上の各電極ランド4における各下底部4bに位置するチップ部品2の長辺部3bが半田層5によって基板1の上面に高く押し上げられ、基板1上の各電極ランド4における各上底部4aに位置するチップ部品2の長辺部3bが半田層5によって基板1の上面に、各電極ランド4の各下底部4bに対応するチップ部品2の長辺部3bよりも、低い高さで接合されている。
【0021】
この結果、チップ部品2は、図1および図2に示すように、チップ部品2の長手方向に沿う1つの角部(図2では右下の角部)を中心に回転するように、チップ部品2の全体が後部上がり(図2では左上がり)に傾斜した状態で、基板1の上面に立ち上がって取り付けられるように構成されている。
【0022】
次に、このようなチップ部品2を基板1に取り付ける部品取付方法について説明する。
まず、図3(a)および図3(b)に示すように、チップ部品2が搭載される箇所における基板1の上面に、チップ部品2の各接続電極3に対応する電極ランド4をそれぞれ形成する。このときには、各電極ランド4をそれぞれチップ部品2の各接続電極3における下面の長方形の面積よりも大きい面積の台形状にパターン形成する。
【0023】
すなわち、この台形状の電極ランド4は、図4(a)に示すように、その上底部4a(図4(a)では下辺部)の長さが接続電極3の下面における長方形の短辺部3aの長さと同じか、それよりも少し短く形成され、下底部4b(図4(a)では上辺部)の長さが接続電極3の下面における長方形の短辺部3aの長さよりも十分に長く形成され、さらに上底部4aから下底部4bまでの距離が接続電極3の下面における長方形状の長辺部3bの長さよりも十分に長く形成されている。
【0024】
次いで、図4(a)および図4(b)に示すように、基板1の上面に設けられた各電極ランド4上に半田層5を印刷によってそれぞれほぼ均一な厚みで形成する。この後、各半田層5上にチップ部品2の各接続電極3を対応させた状態で、基板1の上面側にチップ部品2を配置する。
【0025】
このときには、チップ部品2の両側に位置する各接続電極3の一方(図4(a)では下側)の各短辺部3aを各電極ランド4の各上底部4aにほぼ対応させると共に、各接続電極3の他方(図4(a)では上側)の各短辺部3aを、各電極ランド4の各下底部4bから各上底部4a側に向けて離した状態で、チップ部品2を基板1の上面側に配置する。
【0026】
この状態で、各半田層5を加熱して溶融させる。このときには、図4(a)および図4(b)に示すように、チップ部品2の各接続電極3における一方(図4(a)では下側)の各短辺部3aが各電極ランド4の各上底部4aから少し下側にずれた状態で、各接続電極3の他方(図4(a)では上側)の各短辺部3aが各電極ランド4の各下底部4bから各上底部4a側に向けて大きく離れた状態で配置されていることにより、各電極ランド4の各下底部4b側に位置する半田層5が広く露出している。
【0027】
このため、図5(a)および図5(b)に示すように、各半田層5を加熱して溶融させると、チップ部品2の各接続電極3の外側に露出する広い面積の半田層5の表面張力が、それよりも狭い面積の表面張力よりも大きくなり、この広い面積の表面張力によってチップ部品2が狭い面積の表面張力よりも高く押し上げられる。このときに、チップ部品2は広い面積の表面張力によって引き寄せられる方向に移動しながら押し上げられる。
【0028】
これにより、チップ部品2は、基板1上の各電極ランド4における各下底部4b(図5(b)では右側部)に位置するチップ部品2の短辺部3aが、半田層5によって基板1の上面上に高く押し上げられると共に、基板1上の各電極ランド4における各上底部4a(図5(b)では左側部)に位置するチップ部品2の短辺部3aが、半田層5によって基板1の上面上に、各電極ランド4の各下底部4bに対応するチップ部品2の短辺部3aよりも、低い高さで接合される。
【0029】
この結果、半田層5は、図1および図2に示すように、基板1上の各電極ランド4における各下底部4b側(図2では左側部)に位置する半田層5の厚みが厚く、基板1上の各電極ランド4における各上底部4a側(図2では右側部)に位置する半田層5の厚みが薄く形成されている。これにより、チップ部品2は、図1および図2に示すように、全体が後部上がり(図2では左上がり)に傾斜した状態で、基板1の上面に立ち上がって取り付けられる。
【0030】
このように、この実施形態1の部品取付方法によれば、基板1の電極ランド4上に設けられた半田層5を溶融させて、チップ部品2の接続電極3と基板1の電極ランド4とを電気的に接続した状態で、チップ部品2を基板1に取り付ける際に、半田層5の溶融時における表面張力を部分的に異ならせることにより、チップ部品2を基板1の上面にその上面に対する垂直方向に傾けた状態で立ち上がるように取り付けることができ、これにより製造工程が簡単で、外力によって基板1が撓み変形しても、チップ部品2が破損するのを抑制することができる。
【0031】
すなわち、この実施形態1の部品取付方法では、基板1の電極ランド4上に設けられた半田層5を溶融させて、チップ部品2の接続電極3と基板1の電極ランド4とを接続する際に、溶融した半田層5における部分的に異なる表面張力によって、チップ部品2を基板1の上面から部分的に異なる高さで押し上げることができるので、チップ部品2を基板1の上面に、その上面に対する垂直方向(高さ方向)に傾けた状態で、立ち上がるように取り付けることができる。
【0032】
このため、製造工程が簡単で、容易にチップ部品2を取り付けることができると共に、チップ部品2の曲げ強度を向上させることができる。これにより、図6に示すように、外力によって基板1が撓み変形する際に、チップ部品2の接続電極3にストレスが発生しても、そのストレスを、基板1の上面に対するチップ部品2の傾きによって、分散させることができるので、チップ部品2の内部にクラックが発生するのを抑制することができる。
【0033】
これにより、外力によって基板1が撓み変形しても、チップ部品2が破損するのを確実に抑制することができるので、基板1に取り付けられたチップ部品2を駆動させた際に、動作不良や異常加熱の発生を抑えることができ、これにより製品としての信頼性を向上させることができ、品質の向上を図ることができる。
【0034】
この場合、半田層5の溶融時における表面張力を部分的に異ならせる方法として、チップ部品2の接続電極3に対する半田層5の接触面積を部分的に異ならせることにより、半田層5の表面張力を部分的に異ならせているので、半田層5全体をほぼ均一に加熱して溶融させると、チップ部品2の各接続電極3に対する広い接触面積の半田層5の表面張力が狭い接触面積の表面張力よりも大きくなり、この広い接触面積の表面張力によってチップ部品2を、狭い接触面積側に位置する箇所よりも、高く押し上げることができる。
【0035】
このため、溶融した半田層5における部分的に異なる表面張力によって、チップ部品2を基板1の上面から部分的に異なる高さで、確実に押し上げることができるので、チップ部品2を基板1の上面に、その上面に対する垂直方向(高さ方向)に傾けた状態で、確実に立ち上がるように取り付けることができ、これにより製造工程が煩雑にならず、チップ部品2の曲げ強度を向上させることができる。
【0036】
また、この部品取付構造では、基板1の電極ランド4上に設けられた半田層5が溶融されることによって、チップ部品2に設けられた接続電極3と基板1の電極ランド4とが電気的に接続された状態で、チップ部品2が基板1に取り付けられた際に、チップ部品2が基板1の上面にその上面に対する垂直方向(高さ方向)に傾いた状態で取り付けられているので、チップ部品2を基板1上に立ち上がるように取り付けることができ、これによりチップ部品2の曲げ強度を向上させることができるので、外力によって基板1が撓み変形しても、チップ部品2が破損するのを確実に抑制することができる。
【0037】
この場合、基板1の電極ランド4とチップ部品2の接続電極3との間に位置する半田層5は、その厚みが部分的に異なっていることにより、チップ部品2を基板1の上面にその上面に対する垂直方向(高さ方向)に傾けた状態で確実に立ち上がるように取り付けることができる。このため、チップ部品2の曲げ強度を向上させることができ、外力によって基板1が撓み変形しても、チップ部品2が破損するのを確実に抑制することができるので、基板1に取り付けられたチップ部品2を駆動させた際に、動作不良や異常加熱の発生を抑えることができ、これにより製品の信頼性および品質の向上を図ることができる。
【0038】
(実施形態2)
次に、図7〜図9を参照して、この発明を適用した部品取付方法の実施形態2について説明する。なお、図1〜図6に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この部品取付方法は、図7〜図9に示すように、半田層5を溶融させる際に、その半田層5の溶融速度を部分的に異ならせた方法であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ方法である。
【0039】
この実施形態2の部品取付方法では、予め、チップ部品2が搭載される箇所の基板1の上面に、実施形態1と同様、チップ部品2の各接続電極3に対応する電極ランド7をそれぞれ形成する。この場合、各電極ランド7はそれぞれチップ部品2の各接続電極3における下面の長方形状の面積よりも大きい面積の四角形状にパターン形成されている。
【0040】
すなわち、この四角形状の電極ランド7は、図8(a)に示すように、その上辺部7aと下辺部7bとの各長さが、接続電極3の下面における長方形状の短辺部3aの長さよりも、それぞれ十分に長く形成され、また上辺部7aから下辺部7bまでの距離(図8(a)では上下方向の長さ)が、接続電極3の下面における長方形状の長辺部3bの長さよりも十分に長く形成されている。
【0041】
次いで、図8(a)および図8(b)に示すように、基板1の上面に設けられた各電極ランド7上に半田層5を印刷によってそれぞれほぼ均一な厚みで形成する。この後、各半田層5上にチップ部品2の各接続電極3を対応させた状態で、基板1の上面にチップ部品2を配置する。
【0042】
このときには、図8(a)および図8(b)に示すように、チップ部品2の両側に位置する各接続電極3の各短辺部3aを、各電極ランド7の各上辺部7aおよび各下辺部7bよりも内側、つまり各電極ランド7の領域内に向けて少し離し、且つ各接続電極3の各長辺部3bを各電極ランド7の互いに対向する内側の各側辺部7cに対応させ、この状態でチップ部品2を基板1の上面に配置する。
【0043】
これにより、チップ部品2を基板1上に配置した状態では、図8(a)および図8(b)に示すように、チップ部品2の各接続電極3が各電極ランド7の領域内に対応する半田層5上に配置されるので、チップ部品2の各接続電極3における各外周側に位置する各電極ランド7上の半田層5が十分な広さをもって露出している。
【0044】
この状態で、各半田層5を加熱して溶融させる。このときには、図9(a)および図9(b)に示すように、半田層5の溶融速度を部分的に異ならせて半田層5を溶融させる。すなわち、半田層5を溶融させる方法としては、熱風によって半田を溶融させる方法、または赤外線によって半田を溶融させる方法がある。
【0045】
この場合、熱風による方法は、半田層5に熱風を吹き付ける際に、その熱風を半田層5の部分ごとに異なる温度で吹き付ける方法であり、例えば図9(a)においてチップ部品2の上辺側の半分と下辺側の半分との各部分ごとによって、異なる温度で吹き付けることにより、半田層5の溶融速度を部分的に異ならせる方法である。
【0046】
また、赤外線による方法は、半田層5に赤外線を照射する際に、赤外線を半田層5の部分ごとに異なる温度で照射させる方法であり、例えば図9(a)においてチップ部品2の上辺側の半分と下辺側の半分との各部分ごとによって異なる温度で照射させることにより、半田層5の溶融速度を部分的に異ならせる方法である。
【0047】
このように、半田層5を溶融させる際には、図9(a)および図9(b)に示すように、チップ部品2の上辺側に位置する半田層5の上側半分(図9(b)では右側半分)を、チップ部品2の下辺側に位置する半田層5の下側半分(図9(b)では左側半分)よりも、高い温度で加熱する。
【0048】
すると、チップ部品2の上辺側に位置する半田層5の上側半分(図9(b)では右側半分)が、チップ部品2の下辺側に位置する半田層5の下側半分(図9(b)では左側半分)よりも、早く溶融する。これにより、図9(b)に示すように、早く溶融した箇所の半田層5が遅く溶融した箇所の半田層5よりもチップ部品2を高く押し上げる。
【0049】
このため、チップ部品2は、基板1上の各電極ランド7における各上辺部7a側に位置するチップ部品2の短辺部3aが、半田層5によって基板1の上面に高く押し上げられると共に、基板1上の各電極ランド7における各下辺部7b側に位置するチップ部品2の短辺部3aが、半田層5によって基板1の上面に、各電極ランド7の各上辺部7aに対応するチップ部品2の短辺部3aよりも、低い高さで接合される。
【0050】
この結果、半田層5は、図9(a)および図9(b)に示すように、基板1上の各電極ランド7における各上辺部7a側(図9(b)では右側)に位置する半田層5の厚みが厚く、基板1上の各電極ランド7における各下辺部7b側(図9(b)では左側)に位置する半田層5の厚みが薄く形成される。
【0051】
これにより、チップ部品2は、図9(a)および図9(b)に示すように、チップ部品2の長手方向に沿う1つの角部(図9(b)では左下の角部)を中心に回転するように、チップ部品2の全体が後部上がり(図9(b)では右上がり)に傾斜した状態で、基板1の上面に立ち上がって取り付けられる。
【0052】
このように、この実施形態2の部品取付方法によれば、基板1の電極ランド7上に設けられた半田層5を溶融させて、チップ部品2に設けられた接続電極3と基板1の電極ランド7とを電気的に接続した状態で、チップ部品2を基板1に取り付ける際に、半田層5の溶融速度を部分的に異ならせることにより、チップ部品2を基板1の上面にその上面に対する垂直方向(高さ方向)に傾けた状態で立ち上がるように取り付けることができ、これにより実施形態1と同様、製造工程が簡単で、外力によって基板1が撓み変形しても、チップ部品2が破損するのを抑制することができる。
【0053】
すなわち、この実施形態2の部品取付方法では、基板1の電極ランド7に設けられた半田層5を溶融させて、チップ部品2の接続電極3と基板1の電極ランド7とを接続する際に、部分的に溶融速度が異なった半田層5によって、チップ部品2を基板1の上面に部分的に異なる高さで押し上げることができるので、チップ部品2を基板1の上面に、その上面に対する垂直方向(高さ方向)に傾けた状態で、立ち上がるように取り付けることができる。
【0054】
このため、製造工程が簡単で、容易にチップ部品2を取り付けることができると共に、チップ部品2の曲げ強度を向上させることができる。これにより、外力によって基板1が撓み変形する際に、チップ部品2の接続電極3にストレスが発生しても、そのストレスを、基板1の上面に対するチップ部品2の傾きによって、分散させることができるので、実施形態1と同様、チップ部品2の内部にクラックが発生するのを確実に抑制することができる。
【0055】
これにより、外力によって基板1が撓み変形しても、チップ部品2が破損するのを確実に抑制することができるので、基板1に取り付けられたチップ部品2を駆動させた際に、動作不良や異常加熱の発生を抑えることができ、これにより製品としての信頼性を向上させることができ、品質の向上を図ることができる。
【0056】
この場合、半田層5を溶融させる際に、半田層5に対する加熱温度を部分的に異ならせることにより、半田層5の溶融速度を部分的に異ならせているので、半田層5を溶融させる際に、加熱温度の高い箇所の半田層5を、加熱温度の低い箇所の半田層5よりも、早く溶融させることができ、これにより早く溶融した箇所の半田層5が遅く溶融した箇所の半田層5よりもチップ部品2を高く押し上げることができる。
【0057】
このため、溶融速度が部分的に異なって溶融した半田層5によって、チップ部品2を基板1の上面から部分的に異なる高さで押し上げることができるので、製造工程が複雑で且つ煩雑にならず、チップ部品2を基板1の上面に、その上面に対する垂直方向(高さ方向)に傾けた状態で、確実に立ち上がるように取り付けることができる。
【0058】
なお、上述した実施形態2では、基板1の電極ランド7を単純な四角形状に形成した場合について述べたが、必ずしも電極ランド7は単純な四角形状である必要はなく、例えば図10(a)および図10(b)に示す変形例のような形状で、電極ランド8を形成しても良い。すなわち、この電極ランド8は、全体が四角形状をなし、チップ部品2の上辺側の半分に対応する電極ランド8の箇所に、半田層5の表面積を広くするための複数のスリット溝8aを設けた構成である。
【0059】
このように電極ランド8を形成すれば、複数のスリット溝8aが設けられた電極ランド8の半分と、この電極ランド8の他の半分とで、これらの上面に設けられた半田層5の表面積が異なるので、半田層5を溶融させる際に、半田層5全体を同じ温度で加熱しても、半田層5の溶融速度を複数のスリット溝8aが設けられた電極ランド8の半分と、この電極ランド8の他の半分とで部分的に異ならせることができる。このため、このような電極ランド8を形成しても、実施形態2と同様の作用効果がある。
【0060】
また、上述した実施形態1、2およびその変形例では、チップ部品2として、チップコンデンサに適用した場合について述べたが、これに限らず、例えば半導体チップ、チップ抵抗素子、チップビーズ(チップインダクタ素子)などの各種のチップ部品に広く適用することができる。
【0061】
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0062】
(付記)
請求項1に記載の発明は、チップ部品が搭載される箇所における基板の一面に設けられた電極ランド上に半田層を設け、この半田層を溶融させて、前記チップ部品に設けられた接続電極と前記基板の前記電極ランドとを電気的に接続した状態で、前記チップ部品を前記基板に取り付ける部品取付方法において、前記半田層を溶融させる際に、前記半田層の表面張力を部分的に異ならせたことを特徴とする部品取付方法である。
【0063】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の部品取付方法において、前記チップ部品の前記接続電極に対する前記半田層の接触面積を部分的に異ならせることにより、前記半田層の表面張力を部分的に異ならせることを特徴とする部品取付方法である。
【0064】
請求項3に記載の発明は、チップ部品が搭載される箇所における基板の一面に設けられた電極ランド上に半田層を設け、この半田層を溶融させて、前記チップ部品に設けられた接続電極と前記基板の前記電極ランドとを電気的に接続した状態で、前記チップ部品を前記基板に取り付ける部品取付方法において、前記半田層を溶融させる際に、前記半田層の溶融速度を部分的に異ならせたことを特徴とする部品取付方法である。
【0065】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の部品取付方法において、前記半田層を溶融させる際に、前記半田層に対する加熱温度を部分的に異ならせることにより、前記半田層の溶融速度を部分的に異ならせることを特徴とする部品取付方法である。
【0066】
請求項5に記載の発明は、チップ部品が搭載される箇所における基板の一面に設けられた電極ランド上に半田層が設けられ、この半田層が溶融されることによって、前記チップ部品に設けられた接続電極と前記基板の前記電極ランドとが電気的に接続された状態で、前記チップ部品が前記基板に取り付けられた部品取付構造において、
前記チップ部品は、前記基板の前記一面にその一面に対する垂直方向に傾いた状態で取り付けられていることを特徴とする部品取付構造である。
【0067】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の部品取付構造において、前記基板の前記電極ランドと前記チップ部品の前記接続電極との間に位置する前記半田層は、その厚みが部分的に異なっていることを特徴とする部品取付構造である。
【符号の説明】
【0068】
1 基板
2 チップ部品
3 接続電極
3a 接続電極の短辺部
3b 接続電極の長辺部
4、7、8 電極ランド
4a 電極ランドの上底部
4b 電極ランドの下底部
5 半田層
7a 電極ランドの上辺部
7b 電極ランドの下辺部
8a スリット溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ部品が搭載される箇所における基板の一面に設けられた電極ランド上に半田層を設け、この半田層を溶融させて、前記チップ部品に設けられた接続電極と前記基板の前記電極ランドとを電気的に接続した状態で、前記チップ部品を前記基板に取り付ける部品取付方法において、
前記半田層を溶融させる際に、前記半田層の表面張力を部分的に異ならせたことを特徴とする部品取付方法。
【請求項2】
請求項1に記載の部品取付方法において、前記チップ部品の前記接続電極に対する前記半田層の接触面積を部分的に異ならせることにより、前記半田層の表面張力を部分的に異ならせることを特徴とする部品取付方法。
【請求項3】
チップ部品が搭載される箇所における基板の一面に設けられた電極ランド上に半田層を設け、この半田層を溶融させて、前記チップ部品に設けられた接続電極と前記基板の前記電極ランドとを電気的に接続した状態で、前記チップ部品を前記基板に取り付ける部品取付方法において、
前記半田層を溶融させる際に、前記半田層の溶融速度を部分的に異ならせたことを特徴とする部品取付方法。
【請求項4】
請求項3に記載の部品取付方法において、前記半田層を溶融させる際に、前記半田層に対する加熱温度を部分的に異ならせることにより、前記半田層の溶融速度を部分的に異ならせることを特徴とする部品取付方法。
【請求項5】
チップ部品が搭載される箇所における基板の一面に設けられた電極ランド上に半田層が設けられ、この半田層が溶融されることによって、前記チップ部品に設けられた接続電極と前記基板の前記電極ランドとが電気的に接続された状態で、前記チップ部品が前記基板に取り付けられた部品取付構造において、
前記チップ部品は、前記基板の前記一面にその一面に対する垂直方向に傾いた状態で取り付けられていることを特徴とする部品取付構造。
【請求項6】
請求項5に記載の部品取付構造において、前記基板の前記電極ランドと前記チップ部品の前記接続電極との間に位置する前記半田層は、その厚みが部分的に異なっていることを特徴とする部品取付構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−227465(P2012−227465A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95925(P2011−95925)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】