部品変位装置
【課題】小型、軽量、低コストで作業性の良好な部品変位装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の入力軸変位量測定装置1は、挟持部11と、押圧部12と、変位部13とを備えている。狭持部材11は、円弧部材11a、11bから構成されている。押圧部12は、エンドカムからなる原動部材12aと、従動部材12bとから構成されている。変位部材13は、偏心カムである原動部材13aと、従動部材13bである原動部材12aとから構成されている。そして、原動部材13aを回動させる一度の動作で、入力軸22aを狭持するとともに、変位させることができる。そのため、従来使用していた専用機のように、アクチュエータを備える必要がなくなり、入力軸変位量測定装置1の作業性を向上させるとともに、小型、軽量、低コスト化することができる。
【解決手段】本発明の入力軸変位量測定装置1は、挟持部11と、押圧部12と、変位部13とを備えている。狭持部材11は、円弧部材11a、11bから構成されている。押圧部12は、エンドカムからなる原動部材12aと、従動部材12bとから構成されている。変位部材13は、偏心カムである原動部材13aと、従動部材13bである原動部材12aとから構成されている。そして、原動部材13aを回動させる一度の動作で、入力軸22aを狭持するとともに、変位させることができる。そのため、従来使用していた専用機のように、アクチュエータを備える必要がなくなり、入力軸変位量測定装置1の作業性を向上させるとともに、小型、軽量、低コスト化することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被変位部材を基準面に対して垂直方向に変位させる部品変位装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動変速機は、トルクコンバータと、減速機構と、主変速機とから構成されている。減速機構は、トルクコンバータを介して入力されるエンジンの回転を減速し、主変速機に伝達する機構である。減速機構は、入力軸と、クラッチと、プラネタリギヤと、ブレーキとを備えている。
【0003】
自動変速機の組付け工程では、減速機構の入力軸を軸方向に変位させ、その変位量に基づいて、構成部品の欠品や噛込みの有無を判定している。この判定は専用機で行われている。専用機は、挟持部と、変位部と、判定部とを備えている。挟持部は、アクチュエータによって作動し、入力軸を挟持する。挟持された入力軸は、アクチュエータによって作動する変位部で軸方向に変位される。入力軸の変位量は、判定部のリニアスケールによって測定される。さらに、判定部のマイクロコンピュータによって、測定結果に基づいて、部品の欠品や噛込みが判定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来使用していた専用機は、挟持部と変位部にそれぞれアクチュエータを備えている。さらに、判定部にリニアスケールやマイクロコンピュータを備えている。そのため、装置が大きくなり、コストも高くなる。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、小型、軽量、低コストで作業性の良好な部品変位装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
そこで、本発明者は、この課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、回動することで挟持手段を押圧して部材を挟持させる押圧手段と、回動することで部材を変位させる変位手段とを組合せることによって、一度の動作で、部材を挟持し変位させられることを思いつき、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の部品変位装置は、基準面に対して垂直方向に変位可能な被変位部材を挟持する挟持手段と、回動することで前記狭持手段を押圧して前記被変位部材を狭持させる押圧手段と、回動することで前記押圧手段を回動させるとともに前記押圧手段を介して前記狭持手段を前記基準面に対して垂直方向に変位させる変位手段とを備えることを特徴とする。これにより、変位手段を回動させる一度の動作で、被変位部材を狭持するとともに変位させることができる。そのため、作業を効率よく進めることができる。さらに、従来の専用機のように、狭持部と変位部にそれぞれアクチュエータを備える必要がなくなり、装置を小型、軽量、低コスト化することができる。
【0008】
また、本発明の部品変位装置は、さらに、前記挟持手段の変位にともなって点灯又は消灯する表示手段を備えるようにしてもよい。これにより、被変位部材の変位量を判定することができる。
【0009】
ここで、前記変位手段は、前記押圧手段を回動させた後、前記狭持手段を変位させるようにしてもよい。これにより、被変位部材を確実に狭持してから、変位させることができる。
【0010】
また、前記変位手段は、回動する第1原動部材と、前記押圧手段に連結され、前記第1原動部材の回動にともなって直線的に変位する第1従動部材とからなるようにしてもよい。これにより、押圧手段を介して狭持手段を確実に変位させることができる。また、前記第1原動部材はカムであってもよい。これにより、第1従動部材を直線的に確実に変位させることができる。
【0011】
また、前記押圧手段は、回動する第2原動部材と、前記第2原動部材の回動にともなって直線的に変位して前記狭持手段を押圧する第2従動部材とからなるようにしてもよい。これにより、狭持手段を確実に押圧し、被変位部材を狭持させることができる。また、前記第2原動部材はカムであってもよい。これにより、第2従動部材を直線的に確実に変位させ、狭持手段を押圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態は、本発明に係る部品変位装置を、自動変速機の減速機構(以下フロントサブアッシーという)の入力軸を変位させることで、構成部品の欠品や噛込みを判定する入力軸変位量測定装置に適用した例を示す。
【0013】
(1)自動変速機の構成
本実施形態における自動変速機の構成を図1及び図2を参照して説明する。図1は、自動変速機の断面図である。図2は、トルクコンバータアッシー組付け前の自動変速機の断面図である。なお、本実施形態における自動変速機は、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)車、または、リアエンジン・リアドライブ(RR)車に適用されるものを挙げている。また、自動変速機の構成については、例えば、特開2000−220704号公報などにより公知であるので、詳細な説明は省略し、ここでは概略のみについて説明する。
【0014】
図1に示すように、自動変速機2は、トルクコンバータアッシー20と、オイルポンプアッシー21と、フロントサブアッシー22と、カウンタギアアッシー23と、リアサブアッシー24と、デフアッシー25とから構成され、ハウジング26に収容されている。フロントサブアッシー22は、トルクコンバータ20を介して入力されるエンジン(図略)の回転を減速し、リアサブアッシー24に伝達するものである。フロントサブアッシー22は、入力軸22aと、プラネタリギヤ22bと、クラッチ22c、22dと、ブレーキ22eとから構成されている。
【0015】
図2に示すように、リアサブアッシー24と、カウンタギアアッシー23と、デフアッシー25が、この順にハウジング26に組付けられる。その後、カウンタギアアッシー23の上側に、フロントサブアッシー22が組付けられる。さらに、フロントサブアッシー22の上側に、オイルポンプアッシー21が組付けられる。このとき、フロントサブアッシー22の入力軸22aは、オイルポンプアッシー21の端面に対して垂直方向である軸方向にわずかに変位可能である。これは、フロントサブアッシー22を構成する部品相互の軸方向の遊びによるものである。全ての部品が正しく組付けられ、噛込みもない場合、入力軸22aの変位量は許容範囲内になる。これに対して部品が欠品した場合、変位量が増加し、許容範囲を超える。また、部品が噛込んだ場合、変位量が減少し、許容範囲未満になる。
【0016】
(2)本発明の入力軸変位量測定装置
(2.1)入力軸変位量測定装置の構成
次に、本発明の入力軸変位量測定装置の一実施形態の構成について、図3〜図14を参照して説明する。図3は、入力軸変位量測定装置の正面図である。図4は、入力軸変位量測定装置の側面図である。図5は、本体部の上面図及び正面図である。図6は、図3におけるA−A矢視断面図である。図7は、押圧部の原動部材と変位部の断面図及び側面図である。図8は、押圧部の従動部材の断面図及び側面図である。図9は、図5におけるB−B矢視断面図である。図10は、挟持部と押圧部と変位部の上面図である。図11は、挟持部と押圧部と変位部の側面図である。図12は、表示部の正面図である。図13は、表示部の上面図である。図14は、表示部の回路図である。
【0017】
図3及び図4に示すように、入力軸変位量測定装置1(部品変位装置)は、本体部10と、挟持部11(挟持手段)と、押圧部12(押圧手段)と、変位部13(変位手段)と、表示部14(表示手段)とから構成されている。
【0018】
本体部10は、挟持部11と、押圧部12と、変位部13と、表示部14とを支持する有底円筒状の部材である。図5に示すように、本体部10の上面には、貫通孔10a〜10cが設けられている。また、上面から側面にかけて切欠き孔10dが設けられている。さらに、開口側の端部には、基部10eが設けられている。基部10eは、入力軸を変位させる基準となる基準面10fを備えている。
【0019】
挟持部11は、自動変速機の入力軸の先端部を挟持する略C字状の部材である。図6に示すように、挟持部11は、円弧部材11a、11bと、支持部材11cと、ばね部材11dとから構成されている。円弧部材11a、11bは、長方形断面の円弧状の部材である。円弧部材11bの一端部は、円弧部材11aの一端部に、支持部材11cで回動可能に支持されている。円弧部材11a、11bの他端部には、切欠き部11e、11fがそれぞれ設けられている。さらに、切欠き部11e、11fから端面に向かって、貫通孔11g、11hが設けられている。貫通孔11hは、大径部11iと、小径部11jとを備えている。円弧部材11aの他端部と円弧部材11bの他端部の間には、それぞれの端面を押圧するばね部材11dが、押圧部材12を介して配設されている。
【0020】
押圧部12は、狭持部材11の円弧部材11bを円弧部材11a側に押圧する部材である。押圧部12は、原動部材12a(第2原動部材)と、従動部材12b(第2従動部材)と、ボルト12cと、ナット12dとから構成されている。図7に示すように、原動部材12aは、円柱状のエンドカムである。原動部材12aの軸心には、軸方向に貫通孔12eが設けられている。原動部材12aの一端面には、先端面12fと、傾斜面12gを経て軸方向に後退する後退面12hとが設けられている。図8に示すように、従動部材12bは、原動部材12aの一端面と当接し、原動部材12aの回動にともなって軸方向に変位する円柱状の部材である。従動部材12bの軸心には、軸方向に貫通孔12iが設けられている。従動部材12bは、大径部12jと、小径部12kとを備えている。大径部12jの端面には、先端面12lと、傾斜面12mを経て軸方向に後退する後退面12nとが設けられている。
【0021】
変位部13は、押圧部12を回動させるとともに、直線的に変位させる部材である。図6に示すように、変位部13は、原動部材13a(第1原動部材)と、従動部材13b(第1従動部材)と、把持部材13cとから構成されている。図7に示すように、原動部材13aは、円板状の偏心カムである。原動部材13aの回動中心である偏心した軸心には、軸方向に貫通孔13dが設けられている。従動部材13bは、原動部材13aの回動にともなって、軸方向に対して直角方向に変位する円柱状の部材である。従動部材13bは、押圧部12の原動部材12aである。従動部材13bは、軸心を原動部材13aの軸心と一致させるようにして、原動部材13aに連結されている。図6に示すように、原動部材13aの外周には、把持部材13cが固定されている。
【0022】
ここで、挟持部材11と、押圧部材12と、変位部材13の関係について説明する。図9に示すように、円弧部材11bの貫通孔11hの大径部11iには、従動部材12bの小径部12kが嵌挿され、上方からねじで固定されている。従動部材12bの大径部12j側の端面には、原動部材12aの端面が当接している。原動部材13aと、原動部材12aと、従動部材12bと、円弧部材11a、11bの貫通孔には、ボルト12cが挿通されている。ボルト12cの端部には、ナット12dが螺合されている。ナット12dの端面は、円弧部材11aの切欠き部11eの壁面に当接している。円弧部材11a、11bの端面の間のボルト12cの外周には、ばね部材11dが配設されている。原動部材12aの連結された原動部材13aは、ボルト12cを介して回動可能に支持されている。
【0023】
このとき、図10に示すように、原動部材12aは、先端面12fを従動部材12bの後退面12nに、後退面12hを従動部材12bの先端面12lに、それぞれ当接させた状態で保持されている。また、図11に示すように、原動部材13aは、軸心の偏心方向を水平方向にした状態で保持されている。
【0024】
表示部14は、挟持部11の変位にともなって点灯又は消灯する部材である。図12及び図13に示すように、表示部14は、可動部材14aと、固定部材14b〜14dと、ばね部材14e〜14gと、接触子14h、14iと、発光ダイオード14j、14kと、保持部材14lとから構成されている。可動部材14aは、金属からなる円板状の部材である。固定部材14b〜14dは。可動部材14aを挟持部11に固定する部材である。固定部材14b〜14dの一端は、挟持部材11に固定されている。固定部材14b〜14dの他端は、本体部10の貫通孔10a〜10cに摺動可能に挿通され、可動部材14aに固定されている。本体部10と挟持部11の間の固定部材14b〜14dの外周には、ばね部材14e〜14gが配設されている。ばね部材14e〜14gは、本体部10に対して、挟持部11を下方に押圧している。可動部材14aは、挟持部11とともに上下方向に変位する。接触子14h、14iは、球面状の先端部14m、14nを備えた金属からなる円柱状の部材である。先端部14m、14nは、軸方向に変位可能な構造となっている。発光ダイオード14j、14kは、電流が流れると発光する素子である。保持部材14lは、接触子14h、14iと、発光ダイオード14j、14kとを保持する絶縁性を有する樹脂からなる板状の部材である。保持部材14lは、可動部材14aを覆うようにして、本体部10の上面に固定されている。接触子14h、14iは、先端部14m、14nを可動部材14a側の中央部に突出させるようにして、保持部材14lに嵌設されている。先端部14mと可動部材14aとの距離は、入力軸の変位量の許容下限値に設定されている。また、先端部14nと可動部材14aとの距離は、入力軸の変位量の許容上限値よりわずかに大きい値に設定されている。発光ダイオード14j、14kは、保持部材14lの上面に配設されている。
【0025】
図14に示すように、発光ダイオード14j、14kのアノードは、接触子14h、14iにそれぞれ接続されている。カソードは、抵抗14o、14pを介して電池14qの負極に接続され、電池14qの正極は可動部材14aに接続されている。可動部材14aが接触子14hに接触すると、発光ダイオード14jが点灯する。さらに、可動部材14aが変位し、接触子14iと接触すると、発光ダイオード14kも点灯する。
【0026】
(2.2)入力軸変位量測定装置の動作
次に、入力軸変位量測定装置の動作について、図15〜図18を参照して説明する。図15は、入力軸変位量測定装置の取付けの説明図である。図16は、入力軸変位量測定装置の動作の説明図である。図17は、別の状態における入力軸変位量測定装置の動作の説明図である。図18は、さらに別の状態における入力軸変位量測定装置の動作の説明図である。なお、図15〜図18において、オイルポンプアッシー21については、一部のみを示し、その他の部分は省略してある。
【0027】
図15に示すように、作業者は、オイルポンプアッシー21の端面21aに対して垂直方向に突出した入力軸22aに、入力軸変位量測定装置1を上方から装着する。このとき、図16(a)に示すように、原動部材12aの先端面12fは、従動部材12bの後退面12nに、後退面12hは、従動部材12bの先端面12lにそれぞれ当接している。そのため、従動部材12bは、円弧部材11b側に変位せず、円弧部材11bを押圧しない。円弧部材11bが押圧されないので、入力軸22aと円弧部材11a、11bの間に隙間ができる。また、図16(b)に示すように、原動部材13aの外周面は、基部10eの基準面10fに当接しない。そのため、挟持部11は、入力軸22aを狭持せず、さらに、軸方向にも変位しない。
【0028】
図17(a)に示すように、作業者が、把持部材13cを上方に回動させると、原動部材13aが回動する。原動部材13aが回動することで、回動中心に連結された原動部材12aも回動する。原動部材12aが回動すると、先端面12fが従動部材12bの先端面12lに当接する。そのため、従動部材12bが、円弧部材11b側に変位し、円弧部材11bを円弧部材11a側に押圧する。円弧部材11bが押圧されると、円弧部材11a、11bが、入力軸22aの外周面に当接し、入力軸22aを挟持する。このとき、図17(b)に示すように、原動部材13aの外周面は、基部10eの基準面10fに当接しない。そのため、挟持部11は、入力軸22aを狭持するのみで、軸方向には変位しない。
【0029】
図18(a)に示すように、作業者が、さらに、把持部材13cを上方に回動させると、原動部材12aも回動する。原動部材12aがさらに回動しても、先端面12fは、従動部材12bの先端面12lと当接したままである。そのため、狭持部11は、入力軸22aを狭持した状態を保持する。このとき、図18(b)に示すように、原動部材13aの外周面が、基部10eの基準面10fに当接し、回動中心に連結された従動部材13bである原動部材12aが、入力軸22aの軸方向上方に変位する。原動部材12aが変位することで、原動部材12aを介して入力軸22aを狭持している狭持部11も軸方向上方に変位する。狭持部材11が変位すると、固定部材14b〜14dを介して、可動部材14aが変位する。
【0030】
ここで、フロントサブアッシーにおいて、構成部品の欠品がある場合、入力軸22aの変位量は、許容上限値より大きくなる。そのため、可動部材14aが、接触子14h、14iと接触し、発光ダイオード14j、14kが点灯する。また、構成部品の噛込みがある場合、入力軸22aの変位量は、許容下限値より小さくなる。そのため、可動部材14aは、接触子14h、14iと接触せず、発光ダイオード14j、14kは消灯する。これに対し、構成部品が正しく組付けられ、欠品や噛込みがない場合、入力軸22aの変位量は、許容上下限値の範囲内になる。そのため、可動部材14aが、接触子14hのみと接触し、発光ダイオード14jのみが点灯する。このようにして、フロントサブアッシーの構成部品の欠品や噛込みを判定することができる。
【0031】
(2.3)入力軸変位量測定装置の効果
次に、入力軸変位量測定装置の効果について説明する。入力軸変位量測定装置1は、変位部13を回動させる一度の動作で、入力軸22aを狭持するとともに軸方向上方に変位させることができる。そのため、作業を効率よく進めることができる。さらに、従来使用していた専用機のように、狭持部と変位部にそれぞれアクチュエータを備える必要がなくなり、装置を小型、軽量、低コスト化することができる。
【0032】
また、入力軸変位量測定装置1は、表示部14により、入力軸22aの変位量を判定することができる。
【0033】
また、入力軸変位量測定装置1は、入力軸22aを確実に挟持してから、変位させることができる。
【0034】
また、入力軸変位量測定装置1は、偏心カムからなる原動部材13aと、押圧部12の原動部材12aでもある従動部材13bとによって、押圧部12を介して挟持部11を確実に変位させることができる。
【0035】
さらに、入力軸変位量測定装置1は、エンドカムからなる原動部材12aと、従動部材12bとによって、挟持部11を確実に押圧し、入力軸22aを挟持させることができる。
【0036】
(3)その他
本実施形態においては、本発明に係る部品変位装置を、フロントサブアッシー22の入力軸22aの変位量に基づいて構成部品の欠品や噛込みを判定する入力軸変位量測定装置1に適用した例を挙げているが、これに限られるものはない。本発明の部品変位装置は、本発明を逸脱しない範囲であれば、被変位部材を変位させる必要のあるあらゆる用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】自動変速機の断面図である。
【図2】トルクコンバータアッシー組付け前の自動変速機の断面図である。
【図3】入力軸変位量測定装置の正面図である。
【図4】入力軸変位量測定装置の側面図である。
【図5】本体部の上面図及び正面図である。
【図6】図3におけるA−A矢視断面図である。
【図7】押圧部の原動部材と変位部の断面図及び側面図である。
【図8】押圧部の従動部材の断面図及び側面図である。
【図9】図5におけるB−B矢視断面図である。
【図10】挟持部と押圧部と変位部の上面図である。
【図11】挟持部と押圧部と変位部の側面図である。
【図12】表示部の正面図である。
【図13】表示部の上面図である。
【図14】表示部の回路図である。
【図15】入力軸変位量測定装置の取付けの説明図である。
【図16】入力軸変位量測定装置の動作の説明図である。
【図17】別の状態における入力軸変位量測定装置の動作の説明図である。
【図18】さらに別の状態における入力軸変位量測定装置の動作の説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1:入力軸変位量測定装置(部品変位装置)、10:本体部、10a〜10c:貫通孔、10d:切欠き部、10e:基部、10f:基準面、11:挟持部(挟持手段)、11a、11b:円弧部材、11c:支持部材、11d:ばね部材、11e、11f:切欠き部、11g、11h:貫通孔、11i:大径部、11j:小径部、12:押圧部(押圧手段)、12a:原動部材(第2原動部材)、12b:従動部材(第2従動部材)、12c:ボルト、12d:ナット、12e:貫通孔、12f:先端面、12g:傾斜面、12h:後退面、12i:貫通孔、12j:大径部、12k:小径部、12l:先端面、12m:傾斜面、12n:後退面、13:変位部(変位手段)、13a:原動部材(第1原動部材)、13b:従動部材(第1従動部材)、13c:把持部材、13d:貫通孔、14:表示部(表示手段)、14a:可動部材、14b〜14d:固定部材、14e〜14g:ばね部材、14h、14i:接触子、14j、14k:発光ダイオード、14l:保持部材、14m、14n:先端部、14o、14p:抵抗、14q:電池、21:オイルポンプアッシー、21a:端面、22:フロントサブアッシー、22a:入力軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、被変位部材を基準面に対して垂直方向に変位させる部品変位装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動変速機は、トルクコンバータと、減速機構と、主変速機とから構成されている。減速機構は、トルクコンバータを介して入力されるエンジンの回転を減速し、主変速機に伝達する機構である。減速機構は、入力軸と、クラッチと、プラネタリギヤと、ブレーキとを備えている。
【0003】
自動変速機の組付け工程では、減速機構の入力軸を軸方向に変位させ、その変位量に基づいて、構成部品の欠品や噛込みの有無を判定している。この判定は専用機で行われている。専用機は、挟持部と、変位部と、判定部とを備えている。挟持部は、アクチュエータによって作動し、入力軸を挟持する。挟持された入力軸は、アクチュエータによって作動する変位部で軸方向に変位される。入力軸の変位量は、判定部のリニアスケールによって測定される。さらに、判定部のマイクロコンピュータによって、測定結果に基づいて、部品の欠品や噛込みが判定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来使用していた専用機は、挟持部と変位部にそれぞれアクチュエータを備えている。さらに、判定部にリニアスケールやマイクロコンピュータを備えている。そのため、装置が大きくなり、コストも高くなる。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、小型、軽量、低コストで作業性の良好な部品変位装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
そこで、本発明者は、この課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、回動することで挟持手段を押圧して部材を挟持させる押圧手段と、回動することで部材を変位させる変位手段とを組合せることによって、一度の動作で、部材を挟持し変位させられることを思いつき、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の部品変位装置は、基準面に対して垂直方向に変位可能な被変位部材を挟持する挟持手段と、回動することで前記狭持手段を押圧して前記被変位部材を狭持させる押圧手段と、回動することで前記押圧手段を回動させるとともに前記押圧手段を介して前記狭持手段を前記基準面に対して垂直方向に変位させる変位手段とを備えることを特徴とする。これにより、変位手段を回動させる一度の動作で、被変位部材を狭持するとともに変位させることができる。そのため、作業を効率よく進めることができる。さらに、従来の専用機のように、狭持部と変位部にそれぞれアクチュエータを備える必要がなくなり、装置を小型、軽量、低コスト化することができる。
【0008】
また、本発明の部品変位装置は、さらに、前記挟持手段の変位にともなって点灯又は消灯する表示手段を備えるようにしてもよい。これにより、被変位部材の変位量を判定することができる。
【0009】
ここで、前記変位手段は、前記押圧手段を回動させた後、前記狭持手段を変位させるようにしてもよい。これにより、被変位部材を確実に狭持してから、変位させることができる。
【0010】
また、前記変位手段は、回動する第1原動部材と、前記押圧手段に連結され、前記第1原動部材の回動にともなって直線的に変位する第1従動部材とからなるようにしてもよい。これにより、押圧手段を介して狭持手段を確実に変位させることができる。また、前記第1原動部材はカムであってもよい。これにより、第1従動部材を直線的に確実に変位させることができる。
【0011】
また、前記押圧手段は、回動する第2原動部材と、前記第2原動部材の回動にともなって直線的に変位して前記狭持手段を押圧する第2従動部材とからなるようにしてもよい。これにより、狭持手段を確実に押圧し、被変位部材を狭持させることができる。また、前記第2原動部材はカムであってもよい。これにより、第2従動部材を直線的に確実に変位させ、狭持手段を押圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態は、本発明に係る部品変位装置を、自動変速機の減速機構(以下フロントサブアッシーという)の入力軸を変位させることで、構成部品の欠品や噛込みを判定する入力軸変位量測定装置に適用した例を示す。
【0013】
(1)自動変速機の構成
本実施形態における自動変速機の構成を図1及び図2を参照して説明する。図1は、自動変速機の断面図である。図2は、トルクコンバータアッシー組付け前の自動変速機の断面図である。なお、本実施形態における自動変速機は、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)車、または、リアエンジン・リアドライブ(RR)車に適用されるものを挙げている。また、自動変速機の構成については、例えば、特開2000−220704号公報などにより公知であるので、詳細な説明は省略し、ここでは概略のみについて説明する。
【0014】
図1に示すように、自動変速機2は、トルクコンバータアッシー20と、オイルポンプアッシー21と、フロントサブアッシー22と、カウンタギアアッシー23と、リアサブアッシー24と、デフアッシー25とから構成され、ハウジング26に収容されている。フロントサブアッシー22は、トルクコンバータ20を介して入力されるエンジン(図略)の回転を減速し、リアサブアッシー24に伝達するものである。フロントサブアッシー22は、入力軸22aと、プラネタリギヤ22bと、クラッチ22c、22dと、ブレーキ22eとから構成されている。
【0015】
図2に示すように、リアサブアッシー24と、カウンタギアアッシー23と、デフアッシー25が、この順にハウジング26に組付けられる。その後、カウンタギアアッシー23の上側に、フロントサブアッシー22が組付けられる。さらに、フロントサブアッシー22の上側に、オイルポンプアッシー21が組付けられる。このとき、フロントサブアッシー22の入力軸22aは、オイルポンプアッシー21の端面に対して垂直方向である軸方向にわずかに変位可能である。これは、フロントサブアッシー22を構成する部品相互の軸方向の遊びによるものである。全ての部品が正しく組付けられ、噛込みもない場合、入力軸22aの変位量は許容範囲内になる。これに対して部品が欠品した場合、変位量が増加し、許容範囲を超える。また、部品が噛込んだ場合、変位量が減少し、許容範囲未満になる。
【0016】
(2)本発明の入力軸変位量測定装置
(2.1)入力軸変位量測定装置の構成
次に、本発明の入力軸変位量測定装置の一実施形態の構成について、図3〜図14を参照して説明する。図3は、入力軸変位量測定装置の正面図である。図4は、入力軸変位量測定装置の側面図である。図5は、本体部の上面図及び正面図である。図6は、図3におけるA−A矢視断面図である。図7は、押圧部の原動部材と変位部の断面図及び側面図である。図8は、押圧部の従動部材の断面図及び側面図である。図9は、図5におけるB−B矢視断面図である。図10は、挟持部と押圧部と変位部の上面図である。図11は、挟持部と押圧部と変位部の側面図である。図12は、表示部の正面図である。図13は、表示部の上面図である。図14は、表示部の回路図である。
【0017】
図3及び図4に示すように、入力軸変位量測定装置1(部品変位装置)は、本体部10と、挟持部11(挟持手段)と、押圧部12(押圧手段)と、変位部13(変位手段)と、表示部14(表示手段)とから構成されている。
【0018】
本体部10は、挟持部11と、押圧部12と、変位部13と、表示部14とを支持する有底円筒状の部材である。図5に示すように、本体部10の上面には、貫通孔10a〜10cが設けられている。また、上面から側面にかけて切欠き孔10dが設けられている。さらに、開口側の端部には、基部10eが設けられている。基部10eは、入力軸を変位させる基準となる基準面10fを備えている。
【0019】
挟持部11は、自動変速機の入力軸の先端部を挟持する略C字状の部材である。図6に示すように、挟持部11は、円弧部材11a、11bと、支持部材11cと、ばね部材11dとから構成されている。円弧部材11a、11bは、長方形断面の円弧状の部材である。円弧部材11bの一端部は、円弧部材11aの一端部に、支持部材11cで回動可能に支持されている。円弧部材11a、11bの他端部には、切欠き部11e、11fがそれぞれ設けられている。さらに、切欠き部11e、11fから端面に向かって、貫通孔11g、11hが設けられている。貫通孔11hは、大径部11iと、小径部11jとを備えている。円弧部材11aの他端部と円弧部材11bの他端部の間には、それぞれの端面を押圧するばね部材11dが、押圧部材12を介して配設されている。
【0020】
押圧部12は、狭持部材11の円弧部材11bを円弧部材11a側に押圧する部材である。押圧部12は、原動部材12a(第2原動部材)と、従動部材12b(第2従動部材)と、ボルト12cと、ナット12dとから構成されている。図7に示すように、原動部材12aは、円柱状のエンドカムである。原動部材12aの軸心には、軸方向に貫通孔12eが設けられている。原動部材12aの一端面には、先端面12fと、傾斜面12gを経て軸方向に後退する後退面12hとが設けられている。図8に示すように、従動部材12bは、原動部材12aの一端面と当接し、原動部材12aの回動にともなって軸方向に変位する円柱状の部材である。従動部材12bの軸心には、軸方向に貫通孔12iが設けられている。従動部材12bは、大径部12jと、小径部12kとを備えている。大径部12jの端面には、先端面12lと、傾斜面12mを経て軸方向に後退する後退面12nとが設けられている。
【0021】
変位部13は、押圧部12を回動させるとともに、直線的に変位させる部材である。図6に示すように、変位部13は、原動部材13a(第1原動部材)と、従動部材13b(第1従動部材)と、把持部材13cとから構成されている。図7に示すように、原動部材13aは、円板状の偏心カムである。原動部材13aの回動中心である偏心した軸心には、軸方向に貫通孔13dが設けられている。従動部材13bは、原動部材13aの回動にともなって、軸方向に対して直角方向に変位する円柱状の部材である。従動部材13bは、押圧部12の原動部材12aである。従動部材13bは、軸心を原動部材13aの軸心と一致させるようにして、原動部材13aに連結されている。図6に示すように、原動部材13aの外周には、把持部材13cが固定されている。
【0022】
ここで、挟持部材11と、押圧部材12と、変位部材13の関係について説明する。図9に示すように、円弧部材11bの貫通孔11hの大径部11iには、従動部材12bの小径部12kが嵌挿され、上方からねじで固定されている。従動部材12bの大径部12j側の端面には、原動部材12aの端面が当接している。原動部材13aと、原動部材12aと、従動部材12bと、円弧部材11a、11bの貫通孔には、ボルト12cが挿通されている。ボルト12cの端部には、ナット12dが螺合されている。ナット12dの端面は、円弧部材11aの切欠き部11eの壁面に当接している。円弧部材11a、11bの端面の間のボルト12cの外周には、ばね部材11dが配設されている。原動部材12aの連結された原動部材13aは、ボルト12cを介して回動可能に支持されている。
【0023】
このとき、図10に示すように、原動部材12aは、先端面12fを従動部材12bの後退面12nに、後退面12hを従動部材12bの先端面12lに、それぞれ当接させた状態で保持されている。また、図11に示すように、原動部材13aは、軸心の偏心方向を水平方向にした状態で保持されている。
【0024】
表示部14は、挟持部11の変位にともなって点灯又は消灯する部材である。図12及び図13に示すように、表示部14は、可動部材14aと、固定部材14b〜14dと、ばね部材14e〜14gと、接触子14h、14iと、発光ダイオード14j、14kと、保持部材14lとから構成されている。可動部材14aは、金属からなる円板状の部材である。固定部材14b〜14dは。可動部材14aを挟持部11に固定する部材である。固定部材14b〜14dの一端は、挟持部材11に固定されている。固定部材14b〜14dの他端は、本体部10の貫通孔10a〜10cに摺動可能に挿通され、可動部材14aに固定されている。本体部10と挟持部11の間の固定部材14b〜14dの外周には、ばね部材14e〜14gが配設されている。ばね部材14e〜14gは、本体部10に対して、挟持部11を下方に押圧している。可動部材14aは、挟持部11とともに上下方向に変位する。接触子14h、14iは、球面状の先端部14m、14nを備えた金属からなる円柱状の部材である。先端部14m、14nは、軸方向に変位可能な構造となっている。発光ダイオード14j、14kは、電流が流れると発光する素子である。保持部材14lは、接触子14h、14iと、発光ダイオード14j、14kとを保持する絶縁性を有する樹脂からなる板状の部材である。保持部材14lは、可動部材14aを覆うようにして、本体部10の上面に固定されている。接触子14h、14iは、先端部14m、14nを可動部材14a側の中央部に突出させるようにして、保持部材14lに嵌設されている。先端部14mと可動部材14aとの距離は、入力軸の変位量の許容下限値に設定されている。また、先端部14nと可動部材14aとの距離は、入力軸の変位量の許容上限値よりわずかに大きい値に設定されている。発光ダイオード14j、14kは、保持部材14lの上面に配設されている。
【0025】
図14に示すように、発光ダイオード14j、14kのアノードは、接触子14h、14iにそれぞれ接続されている。カソードは、抵抗14o、14pを介して電池14qの負極に接続され、電池14qの正極は可動部材14aに接続されている。可動部材14aが接触子14hに接触すると、発光ダイオード14jが点灯する。さらに、可動部材14aが変位し、接触子14iと接触すると、発光ダイオード14kも点灯する。
【0026】
(2.2)入力軸変位量測定装置の動作
次に、入力軸変位量測定装置の動作について、図15〜図18を参照して説明する。図15は、入力軸変位量測定装置の取付けの説明図である。図16は、入力軸変位量測定装置の動作の説明図である。図17は、別の状態における入力軸変位量測定装置の動作の説明図である。図18は、さらに別の状態における入力軸変位量測定装置の動作の説明図である。なお、図15〜図18において、オイルポンプアッシー21については、一部のみを示し、その他の部分は省略してある。
【0027】
図15に示すように、作業者は、オイルポンプアッシー21の端面21aに対して垂直方向に突出した入力軸22aに、入力軸変位量測定装置1を上方から装着する。このとき、図16(a)に示すように、原動部材12aの先端面12fは、従動部材12bの後退面12nに、後退面12hは、従動部材12bの先端面12lにそれぞれ当接している。そのため、従動部材12bは、円弧部材11b側に変位せず、円弧部材11bを押圧しない。円弧部材11bが押圧されないので、入力軸22aと円弧部材11a、11bの間に隙間ができる。また、図16(b)に示すように、原動部材13aの外周面は、基部10eの基準面10fに当接しない。そのため、挟持部11は、入力軸22aを狭持せず、さらに、軸方向にも変位しない。
【0028】
図17(a)に示すように、作業者が、把持部材13cを上方に回動させると、原動部材13aが回動する。原動部材13aが回動することで、回動中心に連結された原動部材12aも回動する。原動部材12aが回動すると、先端面12fが従動部材12bの先端面12lに当接する。そのため、従動部材12bが、円弧部材11b側に変位し、円弧部材11bを円弧部材11a側に押圧する。円弧部材11bが押圧されると、円弧部材11a、11bが、入力軸22aの外周面に当接し、入力軸22aを挟持する。このとき、図17(b)に示すように、原動部材13aの外周面は、基部10eの基準面10fに当接しない。そのため、挟持部11は、入力軸22aを狭持するのみで、軸方向には変位しない。
【0029】
図18(a)に示すように、作業者が、さらに、把持部材13cを上方に回動させると、原動部材12aも回動する。原動部材12aがさらに回動しても、先端面12fは、従動部材12bの先端面12lと当接したままである。そのため、狭持部11は、入力軸22aを狭持した状態を保持する。このとき、図18(b)に示すように、原動部材13aの外周面が、基部10eの基準面10fに当接し、回動中心に連結された従動部材13bである原動部材12aが、入力軸22aの軸方向上方に変位する。原動部材12aが変位することで、原動部材12aを介して入力軸22aを狭持している狭持部11も軸方向上方に変位する。狭持部材11が変位すると、固定部材14b〜14dを介して、可動部材14aが変位する。
【0030】
ここで、フロントサブアッシーにおいて、構成部品の欠品がある場合、入力軸22aの変位量は、許容上限値より大きくなる。そのため、可動部材14aが、接触子14h、14iと接触し、発光ダイオード14j、14kが点灯する。また、構成部品の噛込みがある場合、入力軸22aの変位量は、許容下限値より小さくなる。そのため、可動部材14aは、接触子14h、14iと接触せず、発光ダイオード14j、14kは消灯する。これに対し、構成部品が正しく組付けられ、欠品や噛込みがない場合、入力軸22aの変位量は、許容上下限値の範囲内になる。そのため、可動部材14aが、接触子14hのみと接触し、発光ダイオード14jのみが点灯する。このようにして、フロントサブアッシーの構成部品の欠品や噛込みを判定することができる。
【0031】
(2.3)入力軸変位量測定装置の効果
次に、入力軸変位量測定装置の効果について説明する。入力軸変位量測定装置1は、変位部13を回動させる一度の動作で、入力軸22aを狭持するとともに軸方向上方に変位させることができる。そのため、作業を効率よく進めることができる。さらに、従来使用していた専用機のように、狭持部と変位部にそれぞれアクチュエータを備える必要がなくなり、装置を小型、軽量、低コスト化することができる。
【0032】
また、入力軸変位量測定装置1は、表示部14により、入力軸22aの変位量を判定することができる。
【0033】
また、入力軸変位量測定装置1は、入力軸22aを確実に挟持してから、変位させることができる。
【0034】
また、入力軸変位量測定装置1は、偏心カムからなる原動部材13aと、押圧部12の原動部材12aでもある従動部材13bとによって、押圧部12を介して挟持部11を確実に変位させることができる。
【0035】
さらに、入力軸変位量測定装置1は、エンドカムからなる原動部材12aと、従動部材12bとによって、挟持部11を確実に押圧し、入力軸22aを挟持させることができる。
【0036】
(3)その他
本実施形態においては、本発明に係る部品変位装置を、フロントサブアッシー22の入力軸22aの変位量に基づいて構成部品の欠品や噛込みを判定する入力軸変位量測定装置1に適用した例を挙げているが、これに限られるものはない。本発明の部品変位装置は、本発明を逸脱しない範囲であれば、被変位部材を変位させる必要のあるあらゆる用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】自動変速機の断面図である。
【図2】トルクコンバータアッシー組付け前の自動変速機の断面図である。
【図3】入力軸変位量測定装置の正面図である。
【図4】入力軸変位量測定装置の側面図である。
【図5】本体部の上面図及び正面図である。
【図6】図3におけるA−A矢視断面図である。
【図7】押圧部の原動部材と変位部の断面図及び側面図である。
【図8】押圧部の従動部材の断面図及び側面図である。
【図9】図5におけるB−B矢視断面図である。
【図10】挟持部と押圧部と変位部の上面図である。
【図11】挟持部と押圧部と変位部の側面図である。
【図12】表示部の正面図である。
【図13】表示部の上面図である。
【図14】表示部の回路図である。
【図15】入力軸変位量測定装置の取付けの説明図である。
【図16】入力軸変位量測定装置の動作の説明図である。
【図17】別の状態における入力軸変位量測定装置の動作の説明図である。
【図18】さらに別の状態における入力軸変位量測定装置の動作の説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1:入力軸変位量測定装置(部品変位装置)、10:本体部、10a〜10c:貫通孔、10d:切欠き部、10e:基部、10f:基準面、11:挟持部(挟持手段)、11a、11b:円弧部材、11c:支持部材、11d:ばね部材、11e、11f:切欠き部、11g、11h:貫通孔、11i:大径部、11j:小径部、12:押圧部(押圧手段)、12a:原動部材(第2原動部材)、12b:従動部材(第2従動部材)、12c:ボルト、12d:ナット、12e:貫通孔、12f:先端面、12g:傾斜面、12h:後退面、12i:貫通孔、12j:大径部、12k:小径部、12l:先端面、12m:傾斜面、12n:後退面、13:変位部(変位手段)、13a:原動部材(第1原動部材)、13b:従動部材(第1従動部材)、13c:把持部材、13d:貫通孔、14:表示部(表示手段)、14a:可動部材、14b〜14d:固定部材、14e〜14g:ばね部材、14h、14i:接触子、14j、14k:発光ダイオード、14l:保持部材、14m、14n:先端部、14o、14p:抵抗、14q:電池、21:オイルポンプアッシー、21a:端面、22:フロントサブアッシー、22a:入力軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面に対して垂直方向に変位可能な被変位部材を挟持する挟持手段と、回動することで前記狭持手段を押圧して前記被変位部材を狭持させる押圧手段と、回動することで前記押圧手段を回動させるとともに前記押圧手段を介して前記狭持手段を前記基準面に対して垂直方向に変位させる変位手段とを備えることを特徴とする部品変位装置。
【請求項2】
前記狭持手段の変位にともなって点灯又は消灯する表示手段を備えることを特徴とする
請求項1に記載の部品変位装置。
【請求項3】
前記変位手段は、前記押圧手段を回動させた後、前記狭持手段を変位させることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品変位装置。
【請求項4】
前記変位手段は、回動する第1原動部材と、前記押圧手段に連結され前記第1原動部材の回動にともなって直線的に変位する第1従動部材とからなることを特徴する請求項1〜3のいずれかに記載の部品変位装置。
【請求項5】
前記第1原動部材は、カムであることを特徴とする請求項4に記載の部品変位装置。
【請求項6】
前記押圧手段は、回動する第2原動部材と、前記第2原動部材の回動にともなって直線的に変位して前記狭持手段を押圧する第2従動部材とからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の部品変位装置。
【請求項7】
前記第2原動部材は、カムであることを特徴とする請求項6に記載の部品変位装置。
【請求項1】
基準面に対して垂直方向に変位可能な被変位部材を挟持する挟持手段と、回動することで前記狭持手段を押圧して前記被変位部材を狭持させる押圧手段と、回動することで前記押圧手段を回動させるとともに前記押圧手段を介して前記狭持手段を前記基準面に対して垂直方向に変位させる変位手段とを備えることを特徴とする部品変位装置。
【請求項2】
前記狭持手段の変位にともなって点灯又は消灯する表示手段を備えることを特徴とする
請求項1に記載の部品変位装置。
【請求項3】
前記変位手段は、前記押圧手段を回動させた後、前記狭持手段を変位させることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品変位装置。
【請求項4】
前記変位手段は、回動する第1原動部材と、前記押圧手段に連結され前記第1原動部材の回動にともなって直線的に変位する第1従動部材とからなることを特徴する請求項1〜3のいずれかに記載の部品変位装置。
【請求項5】
前記第1原動部材は、カムであることを特徴とする請求項4に記載の部品変位装置。
【請求項6】
前記押圧手段は、回動する第2原動部材と、前記第2原動部材の回動にともなって直線的に変位して前記狭持手段を押圧する第2従動部材とからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の部品変位装置。
【請求項7】
前記第2原動部材は、カムであることを特徴とする請求項6に記載の部品変位装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−207740(P2006−207740A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22315(P2005−22315)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
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