説明

部品実装基板の製造方法

【課題】簡便に基板の導電部と電子部品との接合部を補強することができ、環境の変化によって、前記の接合部から電子部品が剥離することを防止することができる部品実装基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の部品実装基板の製造方法は、基板1の一方の面1aに、ポリマー型導電インクを塗布して、導電部をなす塗膜2を形成する工程Aと、導電部の一対の電極をなす塗膜2に電子部品11の端子12、12が当接するように、基板1の一方の面1aに電子部品11を配置する工程Bと、基板1の他方の面1bと電子部品11との間に電界を掛けて、塗膜2に含まれる導電微粒子を、電子部品11の端子12、12の周囲に移動させる工程Cと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装基板の製造方法に関し、さらに詳しくは、基板の導電部と電子部品との接合部を補強する部品実装基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子などの電子部品を、その端子を下向き(基板側)にして、基板上に設けられた導電部に接続するフェイスダウン方式による電子部品の実装方法を用いた部品実装基板の製造方法では、まず、電子部品と導電部を電気的に接続した後、電子部品を樹脂で被覆する方法(例えば、特許文献1参照)、あるいは、電子部品と基板の間に、熱硬化性樹脂を注入して補強する方法(例えば、特許文献2参照)が用いられている。
【特許文献1】特開2006−32478号公報
【特許文献2】特開2006−100457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電子部品を樹脂で被覆する方法は、例えば、基板に複数の半導体素子を一括で樹脂封止できるという点では生産性に優れているものの、製造工程が煩雑であることや、被膜が不均一になるという問題があった。
また、電子部品と基板の間に熱硬化性樹脂を注入する方法は、衝撃信頼性を向上することができるものの、部品実装基板の稼働による発熱、あるいは、部品実装基板の高温環境への曝露により、樹脂と端子を形成する金属との熱膨張係数の違いから、樹脂が端子よりも大きく膨張するため、端子に歪みが発生し、結果として、基板の導電部と電子部品との接合部から電子部品が剥離するという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡便に基板の導電部と電子部品との接合部を補強することができ、環境の変化によって、前記の接合部から電子部品が剥離することを防止することができる部品実装基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の部品実装基板の製造方法は、基板と、該基板の一方の面に設けられた導電部と、該導電部に接続され、前記基板の一方の面に実装された電子部品とを備えた部品実装基板の製造方法であって、基板の一方の面に、ポリマー型導電インクを塗布して、導電部をなす塗膜を形成する工程Aと、前記導電部の一対の電極をなす塗膜に電子部品の一対の端子が当接するように、前記基板の一方の面に前記電子部品を配置する工程Bと、前記基板の他方の面と前記電子部品との間に電界を掛けて、前記塗膜に含まれる導電微粒子を、前記一対の端子の周囲に移動させる工程Cと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の部品実装基板の製造方法によれば、基板と、該基板の一方の面に設けられた導電部と、該導電部に接続され、前記基板の一方の面に実装された電子部品とを備えた部品実装基板の製造方法であって、基板の一方の面に、ポリマー型導電インクを塗布して、導電部をなす塗膜を形成する工程Aと、前記導電部の一対の電極をなす塗膜に電子部品の一対の端子が当接するように、前記基板の一方の面に前記電子部品を配置する工程Bと、前記基板の他方の面と前記電子部品との間に電界を掛けて、前記塗膜に含まれる導電微粒子を、前記一対の端子の周囲に移動させる工程Cと、を有するので、導電微粒子と電子部品の端子とが接合し、この接合によって、電子部品を基板の導電部に強固に固定することができる。したがって、熱などによる環境の変化によって、導電部と電子部品との接合部から電子部品が剥離することを防止することができる。また、基板の一方の面に電子部品を配置した後、基板の他方の面と前記導電部の最表面の間に電界を掛けるだけであるので、複雑な製造工程を経ることなく、簡便に基板の導電部と電子部品との接合部を補強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の部品実装基板の製造方法の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0008】
本発明の部品実装基板の製造方法は、基板と、該基板の一方の面に設けられた導電部と、該導電部に接続され、前記基板の一方の面に実装された電子部品とを備えた部品実装基板の製造方法であって、基板の一方の面に、ポリマー型導電インクを塗布して、導電部をなす塗膜を形成する工程Aと、前記導電部の一対の電極をなす塗膜に電子部品の一対の端子が当接するように、前記基板の一方の面に前記電子部品を配置する工程Bと、前記基板の他方の面と前記電子部品との間に電界を掛けて、前記塗膜に含まれる導電微粒子を、前記一対の端子の周囲に移動させる工程Cと、を有する方法である。
【0009】
以下、図1〜図5を参照して、本発明の部品実装基板の製造方法の一実施形態を説明する。
まず、図1に示すように、印刷法により、基板1の一方の面1aにポリマー型導電インクを塗布して、所定の形状の導電部をなす未乾燥の塗膜2を形成する(工程A)。
この工程Aにおいて、未乾燥の塗膜2の形状は、所定の回路やアンテナなどからなる導電部の形状をなしている。
また、印刷法としては、インクジェット法、スクリーン印刷法などが用いられる。
【0010】
基板1としては、少なくとも表層部には、ガラス繊維、アルミナ繊維などの無機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたもの、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたものや、あるいはこれらに樹脂ワニスを含浸させて成形した被覆部材や、ポリアミド系樹脂基材、ポリエステル系樹脂基材、ポリオレフィン系樹脂基材、ポリイミド系樹脂基材、エチレン−ビニルアルコール共重合体基材、ポリビニルアルコール系樹脂基材、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、ポリ塩化ビニリデン系樹脂基材、ポリスチレン系樹脂基材、ポリカーボネート系樹脂基材、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合系樹脂基材、ポリエーテルスルホン系樹脂基材、(ガラス)エポキシ樹脂基材などのプラスチック基材や、あるいはこれらにマット処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、フレームプラズマ処理、オゾン処理、または各種易接着処理などの表面処理を施したものなどの公知のものから選択して用いられる。
【0011】
ポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば100〜150℃程度で導電部をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。導電部をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜をなす導電微粒子が互いに接触することによる形成され、この塗膜の抵抗値は10-5Ω・cmオーダーである。
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0012】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは、熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型かあるいは架橋/熱可塑併用型(ただし熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型かあるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0013】
次いで、図2に示すように、電極部2a、2aをなす未乾燥の塗膜2に電子部品11の端子12、12が当接するように、言い換えれば、電子部品11の端子12、12が電極部2a、2aにめり込むように、基板1の一方の面1aに電子部品11を配置する(工程B)。
【0014】
電子部品11としては、ICチップ、CCD素子などの光素子などが挙げられる。
【0015】
次いで、図3に示すように、基板1の他方の面1bに陽電極21を当接するように配置するとともに、電子部品11の基板1と対向している面とは反対の面(最表面)11aに陰電極22を当接するように配置した後、陽電極21と陰電極22に所定の電圧を印加して、基板1の他方の面1bと電子部品11との間に、基板1の一方の面1aと電子部品11の最表面11aに対して垂直に、かつ、基板1の一方の面1aから電子部品11の最表面11aに向かう方向(図中の矢印方向)に電界を掛ける。これにより、図4に示すように、塗膜2を形成するポリマー型導電インクの樹脂組成物3中に含まれる導電微粒子4を、電子部品11の端子12、12の周囲に移動させる(工程C)。
【0016】
陽電極21と陰電極22に印加する電圧の大きさは、ポリマー型導電インクにおける導電微粒子4の含有量や、電子部品11の体積抵抗率などに応じて適宜調整されるが、電子部品11の端子12、12の周囲に導電微粒子4が十分に移動するとともに、電子部品11が破壊されない程度であることが好ましい。
また、陽電極21と陰電極22に電圧を印加する時間は、特に限定されないが、電子部品11の端子12、12の周囲に導電微粒子4が十分に移動するとともに、電子部品11が破壊されない程度であることが好ましい。
【0017】
この工程Cでは、エレクトロマイグレーションまたはイオンマイグレーションを利用して、電子部品11の端子12、12の周囲に導電微粒子4を移動させている。
エレクトロマイグレーション(electromigration)とは、電界の影響により、金属成分が非金属媒体の上や中を横切って移動する現象である。この現象では、移動の前後で金属成分は金属状態であり、導電性を示す。その意味においては、金属の腐食(酸化やハロゲン化など)により染みが滲み出たように見える現象(腐食性生成物(corrosion−product)の発生)はエレクトロマイグレーションではないと言える。しかしながら、腐食性生成物はその発生状況がエレクトロマイグレーションと類似している(例えば、デンドライト状)ため、しばしば混同されることがある。2つのマイグレーションの大きな違いは、電界の有無にある。腐食性生成物は電界がなくても発生するが、エレクトロマイグレーションは電界がないと発生しない。
【0018】
イオンマイグレーションについて説明する。
ポリマー型導電インクが、導電微粒子として、例えば、銀(Ag)粒子を含む場合を例示する。
陽電極21と陰電極22の電位差と、周辺雰囲気から塗膜2の表面に吸着された水の存在とによって、下記の式(1)に示すように銀粒子の電離が生じるとともに、下記の式(2)に示すように水の電離が生じる。
Ag→Ag (1)
O→H+OH (2)
【0019】
AgとOHとは、下記の式(3)に示すように陽電極21側でAgOHとなって析出する。
Ag+OH→AgOH (3)
さらに、AgOHは、下記の式(4)に示すように分解して、陽電極21側でAgOとなり、コロイド状に分散する。
2AgOH⇔AgO+HO (4)
【0020】
この後、下記の式(5)に示すように水和反応が生じる。
AgO+HO⇔2AgOH⇔2Ag+2OH (5)
上記の式(5)に示す反応が進行すると、Agが陰電極22側に移動し、結果として、電子部品11の端子12、12の周囲においてAgのデンドライト状の析出が進行する。
【0021】
次いで、未乾燥の塗膜2を加熱、乾燥させて導電部5およびその電極5a、5aを形成する(工程D)。
【0022】
次いで、図5に示すように、基板1の一方の面1aと電子部品11との間に所定量の接着剤6を塗布し、加熱、あるいは、紫外線などの電子線の照射などの所定の方法により、接着剤6を硬化させる(工程E)。
【0023】
以上の工程A〜Eにより、基板1と、基板1の一方の面1aに設けられた導電部5と、導電部5の電極5a、5aに、端子12、12を介して接続され、基板1の一方の面1aに実装された電子部品11とを備えた部品実装基板10が得られる。
【0024】
この実施形態の部品実装基板の製造方法によれば、電極部2a、2aをなす未乾燥の塗膜2に電子部品11の端子12、12が当接するように、基板1の一方の面1aに電子部品11を配置した後、陽電極21と陰電極22を用いて、基板1の他方の面1bと電子部品11との間に、基板1の一方の面1aと電子部品11の最表面11aに対して垂直に、かつ、基板1の一方の面1aから電子部品11の最表面11aに向かう方向に電界を掛けることにより、塗膜2を形成するポリマー型導電インクに含まれる導電微粒子4を、電子部品11の端子12、12の周囲に移動させたので、導電微粒子4と端子12、12とが接合し、この接合によって、電子部品11を基板1の導電部5に強固に固定することができる。したがって、熱などによる環境の変化によって、導電部5と電子部品11との接合部から電子部品11が剥離することを防止することができる。また、基板1の一方の面1aに電子部品11を配置した後、陽電極21と陰電極22を用いて、基板1の他方の面1bと電子部品11の最表面11aの間に電界を掛けるだけであるので、複雑な製造工程を経ることなく、簡便に基板1の導電部5と電子部品11との接合部を補強することができる。
【0025】
なお、この実施形態では、電極部2a、2aをなす未乾燥の塗膜2に電子部品11の端子12、12が当接するように、基板1の一方の面1aに電子部品11を配置した後、塗膜2が未乾燥の状態にて、基板1の他方の面1bと電子部品11との間に電界を掛けて、端子12、12の周囲に導電微粒子4を移動させたが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、未乾燥の塗膜に電子部品の一対の端子を当接させ、この状態で塗膜を乾燥させた後、基板の他方の面と電子部品との間に電界を掛けてもよい。また、基板の一方の面に、ポリマー型導電インクを塗布して塗膜を形成した後、この塗膜を乾燥させて導電部を形成し、その導電部の電極に電子部品の一対の端子を当接させた後、基板の他方の面と電子部品との間に電界を掛けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の部品実装基板の製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の部品実装基板の製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明の部品実装基板の製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の部品実装基板の製造方法の一実施形態を示す概略断面図であり、図3の破線Aで囲んだ領域を拡大した図である。
【図5】本発明の部品実装基板の製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1・・・基板、2・・・塗膜、3・・・樹脂組成物、4・・・導電微粒子、5・・・導電部、6・・・接着剤、10・・・部品実装基板、11・・・電子部品、12・・・端子、21・・・陽電極、22・・・陰電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の一方の面に設けられた導電部と、該導電部に接続され、前記基板の一方の面に実装された電子部品とを備えた部品実装基板の製造方法であって、
基板の一方の面に、ポリマー型導電インクを塗布して、導電部をなす塗膜を形成する工程Aと、
前記導電部の一対の電極をなす塗膜に電子部品の一対の端子が当接するように、前記基板の一方の面に前記電子部品を配置する工程Bと、
前記基板の他方の面と前記電子部品との間に電界を掛けて、前記塗膜に含まれる導電微粒子を、前記一対の端子の周囲に移動させる工程Cと、を有することを特徴とする部品実装基板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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