説明

部品把持ユニット

【課題】 所望部品の把持位置に影響する構成部品を最小限にした部品把持ユニットの提供を目的とする。
【解決手段】 前記部品90を支持可能な固定挟持部40,41と、往復動作可能なエアシリンダ27と、このエアシリンダ27の駆動により揺動可能な一対の可動挟持部30,31とからなる部品把持ユニット10において、前記エアシリンダ27に連結され往復移動可能なブロック21を備え、このブロック21に前記可動挟持部30,31を対向かつ揺動自在に係止するとともに可動挟持部30,31を常時閉じる方向へ付勢するばね22a,22bを配し、前記可動挟持部30,31をそれぞれ拡開する拡開操作手段の一例であるシャフト45,46を前記可動挟持部30,31の移動経路上に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望部品の把持位置を正確に決定できるとともに、段替えあるいは調整せず高さの異なる前記部品を把持できる部品把持ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の部品把持ユニットは、一般的に特許文献1に示すものが知られており、往復動作可能なシリンダと、このシリンダの可動部に固定され前記部品を挟持する可動クランプ把持部と、前記シリンダの往復動作を受けて揺動可能な揺動クランプ把持部と、前記シリンダの可動部に固定されガイド溝が形成されたガイド板とから構成される。前記可動クランプ把持部は、前記部品の幅方向をガイド可能な可動挟持部を有しており、前記部品の形状に合わせて形成される。また、前記揺動クランプ把持部は、その一端に配され前記部品を挟持可能な揺動挟持部と、他端に配された回転自在なローラとをそれぞれ備える。さらに、前記揺動クランプ把持部の中間部には、ピンが配されており、このピンは前記シリンダの本体に固定されたフレームに係止されている。また、前記ガイド板は、前記シリンダの可動部の伸縮方向と角度を有してなる傾斜溝および同方向と平行な平行溝とが連通されたガイド溝が形成されており、このガイド溝には前記ローラが係合している。つまり、前記シリンダの可動部の伸張に伴って前記ローラは、前記ガイド溝の前記傾斜部から前記平行溝へ案内されるように移動可能に構成される。次に、従来の部品把持ユニットの作用について説明する。前記シリンダの可動部が伸張すると、前記可動クランプ把持部の可動挟持部が前記部品に近づくとともに前記ガイド板も前進する。これにより、前記ローラは前記傾斜部を移動するため、前記揺動挟持部は徐々に閉じる方向に揺動する。さらに前記ガイド板の前進が進むと、前記ローラは前記傾斜部から前記平行部へ案内されるため、前記揺動挟持部の揺動が停止する一方、前記可動挟持部は、前記部品に接近してやがて前記部品を前記揺動挟持部に押圧する形で把持する。したがって、前記揺動挟持部の閉じた位置は、把持した前記部品の位置を認識する上で重要な要素となっており、これを挟持基準位置として制御装置(図示せず)等で管理している。また、この挟持基準位置は、前記揺動挟持部の揺動動作に係わる構成部品である前記ローラ、前記ガイド溝、前記ピン、前記揺動挟持部の寸法によって決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-39839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば前記構成部品の摩耗等により前記挟持基準位置が変化すれば、その修正のために摩耗した前記構成部品を特定して交換しなければならない。しかしながら、上述のように多種の構成部品から交換すべき構成部品を特定するためには時間を要する問題があった。また、前述の摩耗した構成部品を早く交換して設備を早期に復旧するため、前記揺動挟持部の揺動動作に係わる構成部品をあらかじめ製作し予備部品として保管しておくことが考えられる。しかしながら、多種の予備部品を製作することとなるため、製作および保管に掛かるコストが増大する問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、前記挟持基準位置に影響する構成部品を最小限にして、挟持基準位置が変化した際に交換すべき構成部品を容易に特定できる部品把持ユニットの提供を目的とする。この目的を達成するために、本発明は、所望部品を支持可能な固定挟持部と、往復動作可能な往復駆動源と、この往復駆動源の駆動により揺動可能な一対の可動挟持部とからなる部品把持ユニットにおいて、前記往復駆動源に連結され往復移動可能なブロックを備え、このブロックに前記可動挟持部を対向かつ揺動自在に係止するとともに可動挟持部を常時閉じる方向へ付勢するばねを配し、前記可動挟持部をそれぞれ拡開する拡開操作手段を前記可動挟持部の移動経路上に設けたことを特徴とする。なお、前記可動挟持部は、鉤状あるいはコ字状に形成することが好ましい。また、前記拡開操作手段は、可動挟持部の閉じる方向への揺動を規制できるよう構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の部品把持ユニットは、前記部品を前記固定挟持部に支持した状態から前記可動挟持部が閉じる方向に揺動した後、前記ブロックの軸線に対して平行に引き込まれるため、前記挟持基準位置は、前記固定挟持部の位置によって決定される。したがって、前記挟持基準位置に影響を及ぼす構成部品は、前記固定挟持部のみとなるため、交換すべき前記構成部品を特定する時間が短くなる利点がある。また、不測の事態に備えて製作する前記予備部品の種類は大幅に減少するため、前記予備部品の製作および保管に掛かるコストを削減できる利点もある。さらに、前記可動挟持部は、前記部品の上面に対してほぼ平行に引き込まれるため、正規の部品よりも厚みの薄い部品を段替えあるいは調整せず確実に把持できる利点もある。一方、把持した部品にトルクを負荷した場合であっても、前記固定挟持部がこのトルクを受けるため、前記可動挟持部は完全に開くことがなく、把持した部品の落下等の発生を防止できる利点もある。このため、前記ばねの力は、必要以上高く設定しなくてもよく、部品把持ユニットを小型化できる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係わる部品把持ユニットの一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係わる部品把持ユニットの動作前を示す一部切欠断面図である。
【図3】図2から把持動作が進行した状態を示す一部切欠断面図である。
【図4】図3から把持動作が進行した状態を示す一部切欠断面図である。
【図5】図4から把持動作が進行した状態を示す一部切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1ないし図5に基づき本発明の一実施例を説明する。本発明の部品把持ユニット10は、前記部品90を支持可能な固定挟持部40,41と、往復駆動源の一例であるエアシリンダ27と、このエアシリンダ27に連結され昇降可能なブロック21と、このブロック21に係止され揺動可能な一対の可動挟持部30,31と、この可動挟持部30,31を閉じる方向に常時付勢するばね22a,22bと、前記可動挟持部30,31をそれぞれ拡開する拡開操作手段とから構成される。
【0009】
前記固定挟持部40,41は、上部に凹部40b,41bが形成されており、この凹部40b,41bの幅は、前記部品90の幅よりも若干大きく設定されている。また、前記凹部40b,41bの下部には、U字状の溝40a,41aが形成される。また、前記固定挟持部40と前記固定挟持部41は、それぞれ同じ寸法で形成されている。
【0010】
前記エアシリンダ27の下面には、ベース24が固定されており、このベース24は、その両側面にそれぞれ連結された板材25a,25bが垂直方向に延びるように配されている。また、これら板材25a,25bの上部には、前記固定挟持部40,41がそれぞれ固定されており、固定挟持部40および固定挟持部41は、所定の隙間を有するようにかつ前記凹部40bと凹部41bとが水平方向に並ぶように配されている。
【0011】
一方、前記ブロック21はコ字部が形成されており、このコ字部は、前記固定挟持部40,41を挟み込むように配され、前記ブロック21は、後述する前記可動挟持部30,31を揺動自在に係止するピン26を備えている。このピン26は、前記ブロック21のコ字部および前記固定挟持部40,41の溝40a,41aをそれぞれ挿通しており、前記ブロック21は、前記溝40a,41aに沿って昇降可能に構成される。
【0012】
前記可動挟持部30,31は、断面形状がコ字状あるいは鉤状に形成されており、可動挟持部30は、内壁面30a,30bを、可動挟持部31は、内壁面31a,31bをそれぞれ備えている。また、前記可動挟持部30,31は、両者とも同一形状であるとともに、前記ピン26によって共に係止され互いに向き合って配される。なお、以下の説明のおいて、可動挟持部30,31の断面形状は、図2ないし図5に図示するようにコ字状として説明する。
【0013】
前記ばね22a,22bは、前記ブロック21の両側面に配されたばね受け23a,23bに設置されており、このばね受け23a,23bにはそれぞれ前記ばね22aあるいはばね22bを設置可能な設置穴が配設されている。この設置穴の深さは、前記ばね22aを設置した際、前記ばね22aの上部が前記設置穴から突出するように設定されており、前記設置穴に設置されたばね22aは、その突出側端面に前記可動挟持部30が当接している。このため、前記可動挟持部30は、前記ピン26を支点にして常時閉じる方向に付勢されている。なお、前記ばね22bおよび前記可動挟持部31についても上述と同様の構成となるため説明を省略する。
【0014】
前記拡開操作手段の一例であるシャフト45,46は、上述の固定挟持部40,41の隙間に配され、前記固定挟持部40,41にそれぞれねじ止めされており、ねじ止め位置は、前記固定挟持部40,41の前記凹部40b,41bの下方に設定されている。また、図2に示すように、前記ブロック21が上昇していれば、前記シャフト45は、前記可動挟持部30の内壁面30aと、前記シャフト46は、前記可動挟持部31の内壁面31aとそれぞれ当接するように配されている。このため、前記可動挟持部30,31は、前記ばね22a,22bに閉じる方向に付勢されながらも開いた姿勢を維持できる。一方、図3ないし図5に示すように、前記ブロック21が下降する過程において、前記シャフト45は、前記内壁面30bと、前記シャフト46は、前記内壁面31bとそれぞれ当接するように配されている。このため、前記可動挟持部30,31は、それぞれ前記シャフト45,46に閉じる方向への揺動を規制される。
【0015】
次に、本実施例の部品把持ユニット10の作用について、図2ないし図5に基づき説明する。図2は、前記エアシリンダ27の上昇端における状態を示すものである。この状態であれば、前記ピン26は、前記溝40a,41aの奥方に位置しているため、前記内壁面30aは、前記シャフト45に当接する一方、前記内壁面31aは、前記シャフト46に当接する。よって、前記可動挟持部30,31の先端は、開いた状態となるため、前記固定挟持部40,41に前記部品90を供給できる。
【0016】
次に、前記固定挟持部40,41に前記部品90が供給されると、作業者(図示せず)によりスタートスイッチ(図示せず)が押され、前記エアシリンダ27は、制御装置(図示せず)から発せられる作動指令を受けて引き込み側に作動する。これにより、前記ピン26は、前記溝40a,41aの下方へ後退するが、前記ばね22a,22bが常時伸びる方向に作用しているため、前記可動挟持部30,31は、閉じる方向に揺動する。さらに、これら可動挟持部30,31の揺動が進むと図3に示す状態となり、前記シャフト45の当接部は、前記内壁面30aから前記内壁面30bに移行し、同様に前記シャフト46の当接部は、前記内壁面31aから前記内壁面31bに移行する。これにより、前記可動挟持部30,31は、さらに閉じる方向への揺動を規制されるため、揺動動作から下降動作へと自動的に切り替わる。つまり、前記シャフト45および前記内壁面30a、前記シャフト46および前記内壁面31a、それぞれが当接状態であれば、前記可動挟持部30,31は旋回動作可能である一方、前記シャフト45および前記内壁面30b、前記シャフト46および前記内壁面31b、それぞれが当接状態であれば、前記可動挟持部30,31は垂直方向に動作可能となる。
【0017】
やがて、図4および図5に示すように、前記可動挟持部30,31の先端は、正規の部品90の上面に対してほぼ平行に当接するため、高さの異なる部品であっても可動挟持部30,31等の段替えや調整等を必要とせず確実に把持できる。また、上述の説明からも分かるように把持した部品90の前記挟持基準位置は、前記固定挟持部40,41の凹部4b,41bの位置により決定されため、挟持基準位置に影響を与える構成部品は、従来の部品把持ユニットに比べて少ない。したがって、前記挟持基準位置が構成部品の摩耗等により正規の位置にない場合であっても、交換すべき構成部品の特定に時間を要しない。
【0018】
また、前記可動挟持部30,31によって把持された部品90は、その側面に加工されているめねじへねじ(図示せず)が所定のトルクに到達するまで螺入される。このねじの螺入により前記部品90は、前記ねじの回転方向と同一の方向に回転しようとするが、前記部品90の両側面が前記固定挟持部40,41の凹部40b,41bによってガイドされているため、前記可動挟持部30,31は完全に開くことがない。したがって、前記部品90にトルクが負荷された場合であっても、前記固定挟持部40,41および前記可動挟持部30,31から前記部品90が外れる等の不具合を生じない。
【0019】
なお、把持した部品の高さを判別(以下、機種判別という)するため、前記シリンダ27にシリンダスイッチ(図示せず)を高さの異なる部品毎に複数取付けてもよい。これにより、前記部品90の把持直後に前記機種判別あるいは把持異常判別(例えば、部品無しや不確実な把持状態)が簡単に行える。
【0020】
以上説明したように、本発明の部品把持ユニット10は、前記部品90を前記固定挟持部40,41に支持した状態から前記可動挟持部30,31が閉じる方向に揺動した後、前記ブロック21の軸線に対して平行に引き込まれるため、前記挟持基準位置は、前記固定挟持部40,41の位置によって決定される。したがって、前記挟持基準位置に影響を及ぼす構成部品は、前記固定挟持部40,41のみとなるため、交換すべき前記構成部品を特定する時間が短くなる利点がある。また、不測の事態に備えて製作する前記予備部品の数は大幅に減少するため、前記予備部品の製作および保管に掛かるコストを削減できる利点もある。さらに、前記可動挟持部30,31は、前記部品90の上面に対してほぼ平行に引き込まれるため、正規の部品90よりも厚みの薄い部品を段替えあるいは調整せず確実に把持できる利点もある。一方、把持した部品90にトルクを負荷した場合であっても、前記固定挟持部40,41がこのトルクを受けるため、前記可動挟持部30,31は完全に開くことはなく、把持した部品90の落下等の発生を防止できる利点もある。このため、前記ばね22a,22bの力は、必要以上高く設定しなくてもよく、部品把持ユニット10を小型化できる利点もある。
【符号の説明】
【0021】
10 部品把持ユニット
21 ブロック
22a ばね
22b ばね
26 ピン
27 エアシリンダ
30 可動挟持部
30a 内壁面
30b 内壁面
31 可動挟持部
31a 内壁面
31b 内壁面
40 固定挟持部
40a 溝
40b 凹部
41 固定挟持部
41a 溝
41b 凹部
45 シャフト
46 シャフト
90 部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望部品を支持可能な固定挟持部と、往復動作可能な往復駆動源と、この往復駆動源の駆動により揺動可能な一対の可動挟持部とからなる部品把持ユニットにおいて、
前記往復駆動源に連結され往復移動可能なブロックを備え、このブロックに前記可動挟持部を対向かつ揺動自在に係止するとともに可動挟持部を常時閉じる方向へ付勢するばねを配し、前記可動挟持部をそれぞれ拡開する拡開操作手段を前記可動挟持部の移動経路上に設けたことを特徴とする部品把持ユニット。
【請求項2】
前記可動挟持部は、鉤状あるいはコ字状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の部品把持ユニット
【請求項3】
前記拡開操作手段は、可動挟持部の閉じる方向への揺動を規制できるよう構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の部品把持ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−82027(P2013−82027A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223095(P2011−223095)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】