説明

部品洗浄装置

【課題】小径貫通穴3aを有する部品3に付着した加工残留物を確実に除去するとともに、部品3の洗浄工程による部品3の滞留をなくした小径貫通穴洗浄方法およびその装置を提供する。
【解決手段】小径貫通穴3aを有する部品3の小径貫通穴3aに、高圧噴流を噴射するノズル1を、一対一対応で接触させ、ノズル1から高圧噴流を噴射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバコネクタのフェルールや、自動車のインジェクションノズルや、注射針等の小径貫通穴を有する部品の洗浄方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバコネクタのフェルールや、自動車のインジェクションノズルや、注射針等の小径貫通穴を有する部品の製造には、表面研削、端面研削、内面研削等のいくつかの研削工程がある。内面研削の工程においては、ワイヤラップと呼ばれる研削方法がよく使用される。このワイヤラップは、小径貫通穴を有する部品の小径貫通穴にワイヤを通し、ワイヤを上下させることによって、内面を研削するものである。研削中においては、研磨粒子をしみこませた油をワイヤ表面に添加してワイヤを上下させるので、小径貫通穴には、研磨粒子や油やワイヤの切りくず等の加工残留物が残留する。この加工残留物は、部品に傷をつけてしまう原因となり、製品に不具合が生じる恐れがあるので、十分に除去される必要がある。
【0003】
そこで、従来は、アルカリや酸で満たされた洗浄槽20に部品をある程度まとまった数投入し、超音波でアルカリや酸を振動させることにより洗浄することが試みられていた。図7は、アルカリや酸により超音波洗浄を行う工程図である。図7に示す洗浄槽20は、底部に超音波発振機21が設置され、上部には、洗浄かご22が着脱される。この洗浄かご22には、トレー23が複数段積み重なって設置されており、このトレー23に部品がセットされている。この状態で超音波発振機21から超音波を発生させ、洗浄槽20のアルカリや酸を振動させることにより、部品に付着している加工残留物を除去するものである。この超音波による洗浄は、第1工程101として、アルカリや酸による超音波洗浄し、第2工程102および第3工程103として、アルカリや酸を除去するための水やアルコールによるプレリンスとリンスが行われ、最後に第4工程104として、エアー等により乾燥させるといったプロセスを経て完了する(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0004】
このような超音波による洗浄は、上述のように、ある程度まとまった数の部品を一度に洗浄するものである。しかしながら、超音波が、洗浄槽20に均一に振動を与えることができず、部品のセット位置によっては、洗浄した各部品の加工残留物の除去にムラができてしまう欠点がある。さらに、通常、部品の製造は、一つ一つの部品が工場の製造ライン上の様々な工程を流れていくものだが、この洗浄工程で、ある程度の数の部品が確保されるまで、部品が滞留してしまう。
【0005】
また、このような超音波による洗浄は、上述のように、部品をアルカリや酸による超音波洗浄で洗浄するものである。しかしながら、このような超音波による洗浄は、図8に示すように、アスペクト比の高い小径貫通穴を洗浄する場合、穴内の壁面流が非常に小さくなってしまう。このような場合、加工残留物が付着している小径貫通穴の内壁面に洗浄力が発揮されず、加工残留物が完全に除去されずに残ってしまう。
【0006】
また、このような超音波による洗浄は、上述のように最終段階で熱風乾燥されるものである。しかしながら、最終の熱風乾燥において水分が部品に残留しているとシミになってしまう恐れがある。
【0007】
また、この洗浄工程は、ある程度の数の部品をトレー23にセットする時間を必要とし、洗浄、プレリンスとリンス、乾燥といった4工程を経なくてはならず、洗浄工程を完了させるのに一時間程度がかかってしまう。
【0008】
したがって、このような超音波による洗浄は、部品に付着している加工残留物の除去不足や水分のシミによる製品品質の低下やムラといった製品品質の信頼性に問題があった。また、このような超音波による洗浄は、部品の長時間の滞留による生産効率の低下といった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−355623号公報 (第1図)
【0010】
【特許文献2】実開平6−63181号公報 (第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、上述の問題点を解決し、小径貫通穴を有する部品に付着した加工残留物を確実に除去して製品品質の信頼性向上を図るとともに、生産効率の向上を図った小径貫通穴洗浄方法および装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するために、この発明の部品洗浄方法は、小径貫通穴を有する部品を洗浄する小径貫通穴洗浄方法であって、高圧噴流を噴射するノズルを、上記小径貫通穴に一対一対応で接触させ、上記ノズルから高圧噴流を噴射すること、を特徴とする。
【0013】
また、上述の課題を解決するために、この発明の部品洗浄装置は、小径貫通穴を有する部品を洗浄する部品洗浄装置であって、上記小径貫通穴に一対一対応で接触して高圧噴流を噴射するノズルを備えること、を特徴とする。
【0014】
上述のような構成により、小径貫通穴の加工残留物は、確実に除去され、また一つ一つの部品の洗浄力に差ができにくく、加工残留物の除去にムラができてしまう心配もないから、製品品質の信頼性を向上させることができる。さらに、部品を個別に洗浄することができ、洗浄工程において部品が滞留することなく、生産効率の向上を図ることができる。
【0015】
尚、この発明において、小径貫通穴とは、直径約0.5mm以下の穴をさす。直径0.5mm以下の穴の場合は超音波洗浄による部品に付着した加工残留物の除去不足が深刻であり、この発明が効果的である。この発明において高圧噴流とは、約1Mpa程度が効率的で望ましいが、もちろん噴射時間の調節や高圧噴流の種類の変更により自由に変更できる。高圧噴流の種類としては、界面活性剤やスチーム、蒸留水、純水等のほか、周知の洗浄剤を使用することができる。
【0016】
この発明の部品洗浄方法は、小径貫通穴を有する部品を洗浄する小径貫通穴洗浄方法であって、高圧噴流を噴射するノズルを上記部品方向に移動させ、上記小径貫通穴を洗浄する場合は、上記ノズルを、上記小径貫通穴に一対一対応で接触させ、上記部品の外周囲を洗浄する場合は、上記ノズルを、上記部品に一対一対応で所定距離離間させ、上記ノズルから高圧噴流を噴射すること、を特徴とする。
【0017】
この発明の部品洗浄装置は、小径貫通穴を有する部品を洗浄する部品洗浄装置であって、上記部品方向に移動可能に設置されるとともに、高圧噴流を噴射するノズルを備え、上記ノズルは、上記小径貫通穴を洗浄する場合には、上記小径貫通穴に一対一対応で接触して高圧噴流を噴射し、上記部品の外周囲を洗浄する場合には、上記部品に一対一対応で所定距離離間して高圧噴流を噴射すること、を特徴とする。
【0018】
上述のような構成により、部品の外周囲および小径貫通穴の両方において加工残留物を確実に除去できるとともに、両方の洗浄を一度に行うことができ、効率的であるから、製品品質の更なる向上および生産効率の向上を図れる。
【0019】
この発明の部品洗浄方法は、上記部品の外周囲を洗浄する場合は、上記ノズルを、上記小径貫通穴に一対一対応で所定距離離間させるようにしてもよい。
【0020】
この発明の部品洗浄装置は、上記ノズルは、上記部品の外周囲を洗浄する場合には、上記小径貫通穴に一対一対応で所定距離離間して高圧噴流を噴射するようにしてもよい。
【0021】
上記のような構成により、部品の外周囲および小径貫通穴の両方の洗浄を、より簡便に行うことができ、生産効率の向上をさらに図ることができる。
【0022】
この発明の部品洗浄方法は、上記部品は、部品セット台に、上記部品の外周囲と隙間を設けられてセットされ、上記ノズルの噴射口の外周囲を覆うノズルカバーを、上記部品セット台に押し当てて、上記噴射口と上記部品とを同一空間に収納することもできる。
【0023】
この発明の部品洗浄装置は、上記部品洗浄装置は、上記部品が、上記部品の外周囲と隙間を設けられてセットされる部品セット台と、上記ノズルの噴射口の外周囲を覆い、かつ上記ノズルに沿って摺動可能に設置されるノズルカバーと、をさらに備え、上記部品セット台に上記ノズルカバーが押し当てられることより、上記噴射口と上記部品とを同一空間に収納する収納空間が形成されることもできる。
【0024】
上記のような構成により、高圧噴流は、部品に付着している加工残留物に効率よく当たり、さらなる製品品質の向上を図ることができる。
【0025】
この発明の部品洗浄方法は、上記ノズルが噴射する高圧噴流は、スチームであるようにしてもよい。
【0026】
この発明の部品洗浄装置は、上記ノズルが噴射する高圧噴流は、スチームであるようにしてもよい。
【0027】
上記のような構成により、部品に付着した加工残留物をより確実に除去することができるとともに、プレリンス、リンス、乾燥の3工程を省き1工程で部品の洗浄が完了し、しかも短時間で済むから、製品品質の向上を呼び生産効率の向上を図るに好適である。
【0028】
この発明の部品洗浄装置は、上記部品洗浄装置は、上記部品がセットされる部品セット台と、上記部品を上記部品セット台に移送する部品移送手段と、をさらに備えることもできる。
【0029】
上記のような構成により、部品を個別に洗浄することができるとともに、工場での加工工程の連続として、洗浄工程を配することができるから、生産効率の向上を図るに好適である。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、この発明の部品洗浄方法およびその装置は、小径貫通穴を有する部品に、高圧噴流を噴射するノズルを一対一対応で接触させ、ノズルから高圧噴流を噴射するようにしたから、小径貫通穴の加工残留物は、確実に除去され、また一つ一つの部品の洗浄力に差ができにくく、加工残留物の除去にムラができてしまう心配もないから、製品品質の信頼性を向上させることができる。さらに、部品を個別に洗浄することができ、洗浄工程において部品が滞留することなく、生産効率の向上を図ることができる。
【0031】
また、この発明の部品洗浄方法およびその装置は、高圧噴流を噴射するノズルを部品方向に移動させるようにし、小径貫通穴を洗浄する場合は、ノズルを、小径貫通穴に一対一対応で接触させ、部品の外周囲を洗浄する場合は、ノズルを、部品に一対一対応で所定距離離間させるようにしたから、部品の外周囲および小径貫通穴の両方において加工残留物を確実に除去でき、製品品質の更なる向上を図れるとともに、両方の洗浄を一度に行うことができ効率的であるから、生産効率の向上を図れる。
【0032】
また、この発明の部品洗浄方法およびその装置は、部品の外周囲を洗浄する場合は、ノズルを、小径貫通穴に一対一対応で所定距離離間させるようにしたから、部品の外周囲および小径貫通穴の両方の洗浄を、より簡便に行うことができ、生産効率の向上をさらに図ることができる。
【0033】
また、この発明の部品洗浄方法およびその装置は、部品の外周囲と部品セット台との間に隙間を設けてセットし、ノズルカバーを、部品セット台に押し当てて、噴射口と部品とを同一空間に収納するようにしたから、高圧噴流は、スムーズに流れ、高圧噴流を加工残留物に効果的に当てることができ、よりいっそうの製品品質の向上を図ることができる。
【0034】
また、この発明の部品洗浄方法およびその装置は、ノズルが噴射する高圧噴流をスチームにしたから、部品に付着した加工残留物をより確実に除去することができ、製品品質の更なる向上を図ることができるとともに、プレリンス、リンス、乾燥の3工程を省き1工程で部品の洗浄が完了し、しかも短時間で済むから、生産効率の向上を図るに好適である。
【0035】
また、この発明の部品洗浄装置は、部品がセットされる部品セット台と、部品を部品セット台に移送する部品移送手段と、をさらに備えるようにしたから、部品を個別に洗浄することができるとともに、工場での加工工程の連続として、洗浄工程をラインに配置することができるから、生産効率の向上を図るに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施形態を示す縦断面図。
【図2】この発明の部品の小径貫通穴を洗浄する場合の実施形態を示す縦断面図。
【図3】この発明の部品の小径貫通穴を洗浄する場合の実施形態を示す部品付近の拡大縦断面図。
【図4】この発明の部品の外周囲を洗浄する場合の実施形態を示す縦断面図。
【図5】この発明の部品の外周囲を洗浄する場合の実施形態を示す部品付近の拡大縦断面図。
【図6】この発明の部品の小径貫通穴内での加工残留物と高圧噴流の粒子との関係図。
【図7】従来の超音波洗浄による部品の洗浄を示す工程図。
【図8】従来の超音波洗浄による部品の小径貫通穴内の流速説明図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る部品洗浄方法およびその装置の実施形態について、図1乃至図6を基に詳細に説明する。尚、本実施形態の部品洗浄装置は、洗浄される部品が小径貫通穴を有する部品であると、従来の超音波による洗浄と比べて特に効果的な洗浄力を有するので、本実施形態においては、以下、部品とは、小径貫通穴を有する部品をさす。また、この小径貫通穴とは、直径0.5mm以下の穴であると、洗浄力においてさらに効果的であるから、以下、小径貫通穴とは、直径0.5mm以下の貫通穴をいう。
【0038】
図1は、この発明の一実施形態を示す縦断面図である。図1に示す部品洗浄装置は、高圧噴流を噴射するノズル1と、部品3がセットされる部品セット台2と、部品3をセットする移送手段18とで構成されており、ノズル1の下方に部品セット台2を配置し、ノズル1と部品セット台2の間には、移送手段18が介在可能に配置されてなる。
【0039】
まず、ノズル1周辺について、その構成を詳細に説明する。ノズル1は、先端が略円錐体になった円筒形状を有しており、後端から円錐体頂点まで貫通穴が貫設されており、円錐体頂点が噴射口1aとなる。
【0040】
このノズル1は、ノズル1の後端において噴射側継手4と接続されており、噴射側継手4は、図示しない高圧噴流供給装置からノズル1へ高圧噴流を導入する。ノズル1の後端側には、ノズル支持部1dが配設され、図示しないノズル駆動ユニットにより上下動されるノズル取付け部6に、ノズル支持部1dが当設される。このノズル支持部1dにより、ノズル1が支持され、ノズル1駆動ユニットがノズル取付け部6を上下動させると、ノズル1が上下動することになる。また、ノズル1とノズル取付け部6との間には、滑り軸受6bが設置されており、後述するように、ノズル1が相対的にノズル取付け部6よりも上方に移動することができるようになっている。
【0041】
ノズル1の先端側には、摺動溝1eが軸方向に穿設されている。ノズル1の噴射口1a外周囲には、抜け止め5aを有するノズルカバー5が、抜け止め5aを摺動溝1eに摺動可能に嵌め込むことによって、ノズル1の噴射口1a外周囲を覆うように付設される。ノズルカバー5は、ノズル1から高圧噴流が噴射される際に、高圧噴流の漏れを防止するものである。
【0042】
また、ノズル取付け部6の底部とノズルカバー5上部には、それぞれバネ受け6a,5bが設置されており、バネ受け6a,5b間にバネ体15が配置されている。このバネ体15は、ノズル1が部品3方向へ移動した際に、その付勢力によりノズルカバー5を部品セット台2に押圧させるものである。
【0043】
さらに、ノズル取付け部6の底部とノズル1の外周の所定位置には、それぞれバネ受け6a,1cが設置されており、バネ受け6a,1c間にバネ体16が配置されている。このバネ体16は、ノズル1が部品3に接触した際に、その付勢力によりノズル1全体を支持するものである。
【0044】
また、ノズル1とノズルカバー5の当設付近には、パッキン1bが配され、高圧噴流の漏れを完全に防いでいる。尚、ノズル1が上下動される際には、上述のノズル1周辺の構成も一緒に上下動される。
【0045】
次に、部品セット台2周辺について、その構成を説明する。まず、部品セット台2は、貫通穴が貫設されたフレーム7の貫通穴にはめ込まれてボルト13で固定されている。この部品セット台2は、貫通穴が貫設されており、貫通穴の上部は、部品3の外周囲と隙間2aが設けられる程度の大きさの形状で、部品3の長さより少し浅めの形状となっている。部品3は、この部品セット台2の貫通穴の上部にセットされる。
【0046】
部品セット台2の貫通穴下部には、排出側継手8が接続される。また、部品セット台2の貫通穴の上部の直下には、無数の穴が貫設された部品受けシート9が配されており、部品受けシート9が部品3を下部から支持している。この部品受けシート9は、スラストカラー10によって支持されている。スラストカラー10は、Oリング14をはさんで排出側継手8に支持されている。また、部品セット台2の上部には、上述のノズルカバー5が当設される際に、高圧噴流の漏れを完全に防ぐために、パッキン2bが設置されている。
【0047】
次に、移送手段18について、その構成を詳細に説明する。移送手段18は、図示しない駆動装置により移動自在に設置されている。この移送手段18は、シリンダ11とフィンガー12からなり、シリンダ11は、フィンガー12を開閉させ、またフィンガー12は、部品3を把持している。
【0048】
本実施形態における部品洗浄装置は、上述のように構成されており、移送手段18により部品セット台2に部品3がセットされ、ノズル1が部品3の方向に移動して、高圧噴流を噴射する際には、上述した噴射側継手4とノズル1と部品3と部品セット台2と排出側継手8の貫通穴のすべてが連通する構成となる。
【0049】
次に、本実施形態における部品洗浄方法について上述の部品洗浄装置の動作に基づき詳細に説明する。また、本実施形態における部品洗浄は、部品3の小径貫通穴3a内を洗浄することができるとともに、また部品3の外周囲を洗浄することもできる。したがって、部品3の小径貫通穴3a内を洗浄する場合と、部品3の外周囲を洗浄する場合に分けて説明する。
【0050】
部品3の小径貫通穴3a内を洗浄する場合
部品3の小径貫通穴3a内を洗浄する場合について、図1乃至図3に基づき説明する。図2は、本実施形態における部品3の小径貫通穴3a内を洗浄する場合の部品洗浄装置の縦断面図であり、図3は、図2の部品付近の拡大縦断面図である。
【0051】
まず、図1に示すように、移送手段18のシリンダ11によりフィンガー12が部品3を把持すると、移送手段18は、ノズル1と部品セット台2の間に移動し、部品セット台2に部品3をセットする。
【0052】
部品3がセットされると、図2に示すように、図示しない駆動ユニットが駆動し、ノズル取付け部6が下降し、ノズル取付け部6にノズル支持部1dによって支持されているノズル1も下降する。ノズル1の下降は、部品3方向に下降されるように位置決めされている。尚、噴射側継手4やノズルカバー5もノズル1に配されていることにより、一緒に下降を開始されている。ある程度ノズル1が下降されると、ノズルカバー5が部品セット台2に当設する。さらに、ノズル1が下降されると、摺動溝1eを抜け止め5aが上方へ摺動し、ノズルカバー5は相対的にノズル1の上方へ移動し、バネ体15の付勢力により、ノズルカバー5は、部品セット台2を押圧する。こうして、ノズルカバー5と部品セット台2に囲まれる密閉空間17は、各部の貫通穴を除いて密閉される。このとき、この密閉空間17には、噴射口1aと部品3が収容されている。
【0053】
さらに、ノズル1が下降され、ノズル1が部品3の小径貫通穴3aに接触されると、ノズル取付け部6は、さらにある程度下降する。このとき、バネ体16は、その付勢力によりノズル1を部品3の小径貫通穴3aに押し当てて、ノズル1の下降を停止させる。
【0054】
ノズル1が小径貫通穴3aの開口に接触された状態に位置するとノズル1と部品3の小径貫通穴3aは連通された状態になる。さらに、この状態では、部品洗浄装置の各部の貫通穴は、一直線に連通した状態となっている。この状態において、図示しない高圧噴流供給装置から、高圧噴流が供給される。高圧噴流は、本実施形態においては、約200度に加熱され、1Mpaまで圧縮された約2ccのスチームである。2ccのスチームは、4秒から10秒程度で噴射が完了する。
【0055】
この高圧噴流は、噴射側継手4に導入され、ノズル1内部に導入される。ノズル1内部に導入された高圧噴流は、ノズル1の噴射口1aから、噴射口1aと部品3が収容された密閉空間17へ噴射される。ノズル1と部品3の小径貫通穴3aは連通しているので、噴射される高圧噴流は、部品3の小径貫通穴3aに導入される。尚、バネ体16の付勢力により、ノズル1は、ノズル1の自重以上に、部品3の小径貫通穴3aに十分に押し当てられているので、噴射の反動で上方に飛び上がることはない。
【0056】
このとき、図6に示すように、小径貫通穴3a内部では、部品3の小径貫通穴3aの内壁に付着されている加工残留物に、高圧噴流のスチームの粒子が激しく衝突している。高圧噴流であるスチームは、上述のように加熱され、加圧されており、十分な運動量を有している。したがって、スチームの粒子が加工残留物に衝突すると、加工残留物は、小径貫通穴3aの内壁からはがれ、高圧噴流とともに、小径貫通穴3aから押し流される。
【0057】
小径貫通穴3aに導入された高圧噴流は、上述のように加工残留物を押し流し、加工残留物とともに、部品3の小径貫通穴3aから排出される。小径貫通穴3aから排出された、高圧噴流および加工残留物は、部品受けシート9に貫設された無数の穴を通り、スラストカラー10を通り、排出側継手8に導入される。排出側継手8に導入された高圧噴流および加工残留物は、部品洗浄装置から排出される。以上の動作により、部品3の小径貫通穴3aから加工残留物は完全に除去される。
【0058】
この部品洗浄は、上述のように、一対一対応でノズル1を部品3の小径貫通穴3aに接触させて、部品3の小径貫通穴3aに直接高圧噴流を噴射させるようにしたから、小径貫通穴3aの加工残留物は、確実に小径貫通穴3aから除去される。高圧噴流にスチームを用いた場合は、スチームの粒子が加工残留物に衝突し、小径貫通穴3aから加工残留物をはがすのにさらに効果的である。しかも、高圧噴流にスチームを用いた場合には、スチームは、一瞬にして蒸発するので、水分のシミができにくい。また、上述のように一対一対応でノズル1を部品3の小径貫通穴3aに接触させて、高圧噴流を噴射させるから、一つ一つの部品3の洗浄力に差ができにくく、加工残留物の除去にムラができてしまう心配もない。このように、部品3の小径貫通穴3aから加工残留物は、確実に除去され、製品品質の信頼性は向上する。
【0059】
さらに、この部品洗浄は、上述のように、様々な加工工程が終わると、一つずつ移送手段18により部品セット台2に運ばれ、かつ一対一対応で洗浄されるものである。また、上述のようにこの部品洗浄は、2ccのスチームを一気に噴射するから、洗浄は一瞬で終わる。スチームは一瞬で蒸発するので、乾燥も必要はない。さらにスチームにアルカリや酸、または界面活性剤等を添加する必要はなく、スチームの粒子が加工残留物に衝突するだけで、加工残留物をはがし、排出できるから、洗浄工程は1工程で済む。また、移送手段18により一つずつ部品セット台2に運ばれ、かつ一対一対応で洗浄されるから、洗浄工程で部品3が滞留することがなく、しかも部品3の加工工程の連続として装置を配置することができる。したがって、本実施形態における部品洗浄を行うことで部品3の生産効率が向上する。
【0060】
部品の外周囲を洗浄する場合
部品の外周囲を洗浄する場合について、図1、図4、および図5に基づき説明する。図4は、本実施形態における部品3の外周囲を洗浄する場合の部品洗浄装置の縦断面図であり、図5は、図4の部品付近の拡大断面図である。
【0061】
まず、図1および図3に示すように、部品3の小径貫通穴3aを洗浄する場合と同様にして、部品3が部品セット台2にセットされ、ノズル取付け部6の下降とともに、ノズルが下降し、噴射口1aと部品3が収容される密閉空間17が形成される。
【0062】
さらに、ノズル1が下降され、ノズル1が部品3の小径貫通穴3aに所定距離離間した位置まで近づくと、ノズル取付け部6は下降を停止し、ノズル1も下降を停止する。この状態において、図示しない高圧噴流供給装置から、高圧噴流が供給される。本実施形態においては、高圧噴流にスチームを用い、4秒から10秒間、供給される。
【0063】
この高圧噴流は、ノズル1の噴射口1aから、密閉空間17へ噴射されるが、部品3の外周囲を洗浄する場合は、上述のように、ノズル1と部品3の小径貫通穴3aは所定距離離間しているので、噴射される高圧噴流は、部品3の小径貫通穴3aに導入されることなく、部品3の外周囲を流れる。尚、本実施形態において、ノズル1の噴射口1aと部品3の小径貫通穴3aは一直線上に配される。このような場合でも、部品3の小径貫通穴3aが十分に小さいことと、ノズル1と部品3の小径貫通穴3aが所定距離離間していることとにより、噴射された高圧噴流の大部分が部品3の外周囲に流れる。
【0064】
部品セット台2と部品3の外周囲は、ある程度の隙間2aが設けられており、またノズルカバー5の内壁と部品セット台2により各部の貫通穴を除いて密封されている。高圧噴流は、ノズルカバー5の内壁と隙間2aを流れ、部品3の外周囲に付着する加工残留物を除去する。そして、高圧噴流および加工残留物は、隙間2aを通り、部品受けシート9に貫設された無数の穴を通り、スラストカラー10を通り、排出側継手8に導入され、部品洗浄装置から排出される。以上の動作により、部品3の外周囲から加工残留物は完全に除去される。
【0065】
この部品洗浄は、上述のように、ノズル1と部品3の小径貫通穴3aとの距離を一対一対応で所定距離離間させて高圧噴流を噴射させるようにしたから、高圧噴流は、部品3の外周囲を流れて、部品3の外周囲に付着している加工残留物は、確実に除去される。また、ノズルカバー5と部品セット台2による密閉空間17と、部品3と部品セット台2との隙間2aにより、部品3の外周囲を高圧噴流がスムーズに流れ、効果的に部品3の外周囲の加工残留物を取り除くことができる。したがって、部品3の外周囲の洗浄に関しても、部品3の小径貫通穴3aを洗浄する場合と同様の効果により、製品品質の向上、生産効率の向上を図ることができる。
【0066】
上述のように、本実施形態における部品洗浄装置は、部品3の外周囲の洗浄と小径貫通穴3aの洗浄の両方を一つの装置で、効率よく確実に行うことができる。部品3の外周囲と小径貫通穴3aの両方を洗浄する場合には、例えば、部品セット台2に部品3をセットした後、ノズル1を部品3の小径貫通穴3aと所定距離離間した位置まで下降させて、外周囲を洗浄し、次に、ノズル1を部品3の小径貫通穴3aに接触させて、小径貫通穴3aを洗浄すればよい。したがって、本実施形態における部品洗浄装置は、小径貫通穴3aを有する部品3の洗浄に特に威力を発揮する。
【0067】
尚、本実施形態においては、部品3の外周囲および小径貫通穴3aの両方を一つの装置で洗浄する方法として説明したが、もちろん、部品3の外周囲のみ、または小径貫通穴3aのみを洗浄するようにしてもよい。また、本実施形態においては、ノズルを上下動させる形態として説明しているが、もちろんこれに限らず、部品3の方向にノズルが移動できるようにすればよく、例えば、部品3がノズルに対して水平方向にセットされていれば、ノズルを水平方向へ移動させるようにしてもよい。また、本実施形態における高圧噴流は、圧力、温度、高圧噴流の種類等について、噴射時間の調節や高圧噴流の種類により変更することができる。たとえば、本実施形態において使用したスチームの代わりに、界面活性剤や蒸留水、純水、その他周知の洗浄剤等を適宜圧力や温度をかえて使用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ノズル
1a 噴射口
1b,2b パッキン
1c,5b,6a バネ受け
1d ノズル支持部
1e 摺動溝
2 部品セット台
2a 隙間
3 部品
3a 小径貫通穴
4 噴射側継手
5 ノズルカバー
5a 抜け止め
6 ノズル取付け部
6b 滑り軸受
7 フレーム
8 排出側継手
9 部品受けシート
10 スラストカラー
11 シリンダ
12 フィンガー
13 ボルト
14 Oリング
15,16 バネ体
17 密閉空間
18 移送手段
20 洗浄槽
21 超音波発振機
22 洗浄かご
23 トレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小径貫通穴を有する部品を洗浄する部品洗浄方法であって、
高圧噴流を噴射するノズルを、上記小径貫通穴に一対一対応で接触させ、
上記ノズルから高圧噴流を噴射すること、
を特徴とする部品洗浄方法。
【請求項2】
小径貫通穴を有する部品を洗浄する部品洗浄方法であって、
高圧噴流を噴射するノズルを上記部品方向に移動させ、
上記小径貫通穴を洗浄する場合は、上記ノズルを、上記小径貫通穴に一対一対応で接触させ、
上記部品の外周囲を洗浄する場合は、上記ノズルを、上記部品に一対一対応で所定距離離間させ、
上記ノズルから高圧噴流を噴射すること、
を特徴とする部品洗浄方法。
【請求項3】
上記部品の外周囲を洗浄する場合は、上記ノズルを、上記小径貫通穴に一対一対応で所定距離離間させること、
を特徴とする請求項2に記載の部品洗浄方法。
【請求項4】
上記部品は、部品セット台に、上記部品の外周囲と隙間を設けられてセットされ、
上記ノズルの噴射口の外周囲を覆うノズルカバーを、上記部品セット台に押し当てて、上記噴射口と上記部品とを同一空間に収納すること、
を特徴とする請求項2乃至3に記載の部品洗浄方法。
【請求項5】
上記ノズルが噴射する高圧噴流は、スチームであること、
を特徴とする請求項1乃至4に記載の部品洗浄方法。
【請求項6】
小径貫通穴を有する部品を洗浄する部品洗浄装置であって、
上記小径貫通穴に一対一対応で接触して高圧噴流を噴射するノズルを備えること、
を特徴とする部品洗浄装置。
【請求項7】
小径貫通穴を有する部品を洗浄する部品洗浄装置であって、
上記部品方向に移動可能に設置されるとともに、高圧噴流を噴射するノズルを備え、
上記ノズルは、
上記小径貫通穴を洗浄する場合には、上記小径貫通穴に一対一対応で接触して高圧噴流を噴射し、上記部品の外周囲を洗浄する場合には、上記部品と一対一対応で所定距離離間して高圧噴流を噴射すること、
を特徴とする部品洗浄装置。
【請求項8】
上記ノズルは、
上記部品の外周囲を洗浄する場合には、上記小径貫通穴に一対一対応で所定距離離間して高圧噴流を噴射すること、
を特徴とする請求項7に記載の部品洗浄装置。
【請求項9】
上記部品洗浄装置は、
上記部品が、上記部品の外周囲と隙間を設けられてセットされる部品セット台と、
上記ノズルの噴射口の外周囲を覆い、かつ上記ノズルに沿って摺動可能に設置されるノズルカバーと、
をさらに備え、
上記部品セット台に上記ノズルカバーが押し当てられることより、上記噴射口と上記部品とを同一空間に収納する収納空間が形成されること、
を特徴とする請求項7乃至8に記載の部品洗浄装置。
【請求項10】
上記部品洗浄装置は、
上記部品がセットされる部品セット台と、
上記部品を上記部品セット台に移送する部品移送手段と、
をさらに備えること、
を特徴とする請求項6乃至8に記載の部品洗浄装置。
【請求項11】
上記ノズルが噴射する高圧噴流は、スチームであること、
を特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の部品洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−154161(P2009−154161A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98816(P2009−98816)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【分割の表示】特願2003−83264(P2003−83264)の分割
【原出願日】平成15年3月25日(2003.3.25)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】