説明

部品移送用の湾曲通路部材

【課題】部品の方向変換量を最小化することのできる部品移送用の湾曲通路部材を提供する。
【解決手段】本体部2から外方に突出した突起部4を有するとともに、本体部2の横側外側面5が対向する平行面となっている部品を移送の対象とするものであって、湾曲した通路部材12に通路空間部22が形成され、この通路空間部22の内面に対向しているガイド面24とそれに連続した箇所に拡幅部25が形成され、ガイド面24によって本体部2の平行面をガイドして本体部2の方向変換量を最小化し、突起部4が拡幅部25を通過するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品の移送姿勢を正常に維持することのできる部品移送用の湾曲通路部材に関している。
【背景技術】
【0002】
パーツフィーダ等からの部品、例えばプロジェクションナットが湾曲通路部材を通過して供給ロッドに供給されるものが、特許第3944778号公報に記載されている。
【特許文献1】特許第3944778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の先行技術においては、プロジェクションナットが湾曲したガイド管を通過するようになっているが、このガイド管はほぼ平面方向において湾曲したものではない。以下の説明において、プロジェクションナットを単にナットと表現する場合もある。
【0004】
図5は、本体部から外方に突出した突起部を有するとともに、前記本体部の横側外側面が対向する平行面となっている部品を示す斜視図と平面図である。この部品は鉄製のプロジェクションナット1であり、正方形の本体部2の中央にねじ孔3が設けられ、本体部2の片側の四隅に溶着用突起4が形成されている。そして、本体部2の横側外側面5は対向する面が平行になっている。前記溶着用突起4は図5(B)に示すように、ねじ孔3の直径方向に尖った状態で突出している。つまり、本体部2から外方に突出した突起部になっている。この突出量は符号L1で示されている。
【0005】
このような形状のナット1を図4(A)に示すように、ほぼ平面方向に湾曲した湾曲通路部材6を通過させる従来の場合には、同図(B)に示すような断面形状の通路空間部7を通過させるのであるが、ここの通路幅L2はナット1の全幅L3よりも大きく設定されている。幅寸法がこのように設定されているので、通路空間部7を通過するナット1は通路幅L2内で許されるだけ向きを変える状態になり、それによって隣り合うナット1の溶着用突起4同士が噛み合ったりして円滑な移送に支障を来している。このような噛み合いにより、(A)図の下側のナット1の溶着用突起4とその上側のナット1の溶着用突起4とが通路空間部7の内壁面8に強く接触して、最悪の場合には部品詰まりが発生する。湾曲部を通過させるために通路幅L2を大きく設定する必要があり、それによって上述の問題が大きく現れるという事情がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、部品の方向変換量を最小化することのできる部品移送用の湾曲通路部材の提供を目的とする。
【問題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、本体部から外方に突出した突起部を有するとともに、前記本体部の横側外側面が対向する平行面となっている部品を移送の対象とするものであって、湾曲した通路部材に通路空間部が形成され、この通路空間部の内面に対向しているガイド面とそれに連続した箇所に拡幅部が形成され、前記ガイド面によって前記本体部の平行面をガイドして本体部の方向変換量を最小化し、前記突起部が前記拡幅部を通過するように構成したことを特徴とする部品移送用の湾曲通路部材である。
【発明の効果】
【0008】
前記ガイド面によって前記本体部の平行面をガイドして本体部の方向変換量を最小化し、同時に、前記突起部が前記拡幅部を自由に通過するものである。つまり、本体部の横側外側面とガイド面との間隔をできるだけ狭くすることにより、本体部の方向変換量を最小化するものである。これによって、突起部の位置ずれの量が最小化され、隣り合う部品の突起部同士が異常な状態で噛み合うような現象が回避でき、湾曲通路部材を円滑に移送させることが可能となる。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記通路空間部の底面に少なくとも2本の突条が形成されている請求項1記載の部品移送用の湾曲通路部材である。
【0010】
このように少なくとも2本の突条の上を部品が滑動するので、部品表面と通路空間部の内面との接触面積が少なくなり、摩擦抵抗が低下する。これにより、円滑に通過させにくい湾曲通路部材における部品移送が高い信頼性の下に実現する。また、防錆油等によって部品が通路空間部の底面に粘着するのを防止することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記部品はプロジェクションナットであり、その本体部が四角い形状とされ、前記突出部が本体部の片側の四隅に形成された溶着用突起である請求項1または請求項2記載の部品移送用の湾曲通路部材である。
【0012】
したがって、外方に尖った状態で突出した溶着用突起があっても、本体部はガイド面で確実に案内され、溶着用突起の部分は拡幅部を通過し、ナット全体の向きがガイド面の延びる方向に整然と配列されて、円滑なナット移送が可能となる。とくに、溶着用突起が尖った状態で外方に突出していると、溶着用突起同士が噛み合ったりしてナット詰まりを起こしやすくなるのであるが、上述のようなガイド機能が果たされることにより、円滑なナット移送が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の部品移送用の湾曲通路部材を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1〜図3は実施例1を示す。この実施例において搬送の対象とされる部品は、図5に示すプロジェクションナット1である。
【0015】
パーツフィーダ10から送り出されたプロジェクションナット1は、供給ホース11を通って湾曲通路部材12に送られる。ナット1が供給される目的箇所としては色々なものがあるが、ここでは部品供給装置13の供給ロッド14である。供給ロッド14は、静止部材15に固定されたガイド筒16内に進退自在な状態で収容され、ガイド筒16の端部に結合したエアシリンダ17によって供給ロッド14が進退動作をするようになっている。
【0016】
供給ロッド14の先端部には、ナット1を収容する保持凹部18が設けられ、湾曲通路部材12からここに入ったナット1を保持するために、永久磁石19が保持凹部18の内面に埋め込んである。
【0017】
湾曲通路部材12はステンレス鋼製であり、その端部に断面矩形の接手管21が溶接してある。前記供給ホース11は柔軟性のあるウレタン樹脂製であり、これも矩形断面である。供給ホース11を接手管21内に差し込んで、供給ホース11と湾曲通路部材12の通路空間部22が連通している。この湾曲通路部材12も静止部材15に固定されている。
【0018】
図2は、図1の(2)矢視図である。図2に示すように、湾曲通路部材12は保持凹部18に向かって下り傾斜となっている。つまり、湾曲通路部材12は水平面に対してわずかに傾斜している。この傾斜角度は比較的緩やかで、ここでは15度である。
【0019】
湾曲通路部材12の断面形状を説明する。
【0020】
図3(A)と(C)は平面図であり、理解しやすくするために、同図(B)に示した蓋板23を外した状態で図示してある。通路空間部22の内面に対向しているガイド面24が形成され、このガイド面24の間の空間を本体部2が通過するようになっている。同図(B)や(C)に示すように、本体部2の横側外側面5とガイド面24との間隔はできるだけ小さく設定され、これによってナット1の方向変換量を最小化している。また、ガイド面24の上側に連なった状態で拡幅部25が形成され、ここを溶着用突起4が通過するようになっている。なお、図示していないが蓋板23はボルト付けで固定されている。
【0021】
前記通路空間部22の底面に、少なくとも2本の突条26が湾曲通路部材12の湾曲形状に沿って2本平行に形成されている。したがって、ナット1は突条26の上面を滑動し、通路空間部22の幅方向にはガイド面24によって過大な移動が禁止された状態で移送されて行く。
【0022】
各部の寸法はつぎのとおりである。
【0023】
ナット1の本体部2の一辺の長さは12mm、ねじ孔3の軸方向の厚さは5mm、前記L1は1mm、ねじ孔3の内径は5mmである。また、図3(B)や(C)に見られる対面したガイド面24の間隔は13mmである。さらに湾曲通路部材12は、ナット1が9個並ぶことができる通路長さとなっている。
【0024】
以上に説明した実施例では、ナット1の溶着用突起4が上方を向いたいわゆる裏向きの状態であるから、図3(B)に示すように、ガイド面24が下側に配置され、その上側に拡幅部25が配置されている。これとは逆に溶着用突起4が下方を向いたいわゆる表向きの状態である場合には、ガイド面24と拡幅部25の上下関係を逆転させる。
【0025】
また、上述のナット1は本体部2が正方形であるが、これを六角形にして横側外側面の対向する平行面にガイド面24を接近させて、回り止めを行うようにすることができる。
【0026】
なお、上記のエアシリンダに換えて、進退出力をする電動モータを採用することもできる。また、上記の永久磁石を電磁石に置き換えることも可能である。
【0027】
上述の供給ロッド14の進退動作は、一般的に採用されている制御手法で容易に行わせることが可能である。制御装置またはシーケンス回路からの信号で動作する空気切換弁や、エアシリンダの所定位置で信号を発して前記制御装置に送信するセンサー等を組み合わせることによって、所定の動作を確保することができる。
【0028】
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0029】
前記ガイド面24によって、前記本体部2の対向している平行な横側外側面5をガイドして本体部2の方向変換量を最小化し、同時に、前記溶着用突起4が前記拡幅部25を自由に通過するものである。つまり、本体部2の横側外側面5とガイド面24との間隔をできるだけ狭くすることにより、本体部2の方向変換量(回転方向の移動量)を最小化するものである。これによって、溶着用突起4の位置ずれの量が最小化され、隣り合うナット1の溶着用突起4同士が異常な状態で噛み合うような現象が回避でき、ナット1は湾曲通路部材12を円滑に移送することが可能となる。
【0030】
前記通路空間部12の底面に少なくとも2本の突条26が形成されている。
【0031】
このように少なくとも2本の突条26の上をナット1が滑動するので、ナット表面と通路空間部22の内面との接触面積が少なくなり、摩擦抵抗が低下する。これにより、円滑に通過させにくい湾曲通路におけるナット移送が高い信頼性の下に実現する。また、防錆油等によってナット1が通路空間部22の底面に粘着するのを防止することができる。
【0032】
前記部品はプロジェクションナット1であり、その本体部2が四角い形状とされ、前記突出部が本体部2の片側の四隅に形成された溶着用突起4である。
【0033】
したがって、外方に尖った状態で突出した溶着用突起4があっても、本体部2はガイド面24で確実に案内され、溶着用突起4の部分は拡幅部25を通過し、ナット全体の向きがガイド面24の延びる方向、すなわち湾曲通路部材12の中心線に沿って整然と配列されて、円滑なナット移送が可能となる。とくに、溶着用突起4が尖った状態で外方に突出していると、溶着用突起4同士が噛み合ったりしてナット詰まりを起こしやすくなるのであるが、上述のようなガイド機能が果たされることにより、溶着用突起4同士の噛み合いが発生せず、円滑なナット移送が行われる。さらに、上述のような円滑なナット移送が可能であるから、湾曲通路部材12の下り傾斜角度が15度のようにわずかであっても、停滞することなくナット移送が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
上述のように、本発明によれば、部品の方向変換量を最小化することのできる部品移送用の湾曲通路部材がえられるので、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】部品供給装置全体を示す平面図である。
【図2】図1の(2)矢視図である。
【図3】湾曲通路部材の各部を示す平面図や断面図である。
【図4】従来例を示す平面図や断面図である。
【図5】プロジェクションナットの斜視図と平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 プロジェクションナット
2 本体部
4 溶着用突起
5 横側外側面
12 湾曲通路部材
22 通路空間部
24 ガイド面
25 拡幅部
26 突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部から外方に突出した突起部を有するとともに、前記本体部の横側外側面が対向する平行面となっている部品を移送の対象とするものであって、湾曲した通路部材に通路空間部が形成され、この通路空間部の内面に対向しているガイド面とそれに連続した箇所に拡幅部が形成され、前記ガイド面によって前記本体部の平行面をガイドして本体部の方向変換量を最小化し、前記突起部が前記拡幅部を通過するように構成したことを特徴とする部品移送用の湾曲通路部材。
【請求項2】
前記通路空間部の底面に少なくとも2本の突条が形成されている請求項1記載の部品移送用の湾曲通路部材。
【請求項3】
前記部品はプロジェクションナットであり、その本体部が四角い形状とされ、前記突出部が本体部の片側の四隅に形成された溶着用突起である請求項1または請求項2記載の部品移送用の湾曲通路部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−1155(P2010−1155A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186525(P2008−186525)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000196886)
【Fターム(参考)】