説明

部材の嵌め合せ構造

【課題】部材同士を位置決めした際に、位置決め箇所に異音が発生することがない部材の嵌め合せ構造を提供する。
【解決手段】穴部11に突起部13を嵌め込むことによって見返し部材5(第1の部材)と透視板6(第2の部材)とを位置決めするようにした部材の嵌め合せ構造に於いて、穴部11を覆うように緩衝材7を配置すると共に、穴部11に対応する緩衝材7箇所に切れ目14を設け、この切れ目14上から突起部13を穴部11に嵌め合せた際に、切れ目14を設けることによって形成された切れ片15の一部分が穴部11と突起部13との間に挟み込まれるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の部材に設けた穴部に他方の部材に設けた突起部を嵌め合せることによって、両部材を位置決めするようにした部材の嵌め合せ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部材同士を積み重ねる際、位置決めを行って積み重ねるのが一般的である。位置決めとしては、例えば下記特許文献1に記載されているような方法を採用することが多い。即ち、特許文献1の第1図に示されている様に、一方の部材(文字板18)に係合孔部22を設け、他方の部材(見返し板20)に位置決めピン23を設けて、位置決めピン23を係合孔部22に嵌め合わせることによって見返し板20と文字板18とを位置決めするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−153199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の様な位置決め構造の場合、各部材の収縮あるいは変形が有ると文字板18の係合孔部22に見返し板20の位置決めピン23が入らないことがある。そこで、文字板18の係合孔部22の内径寸法を見返し板20の位置決めピン23の外径寸法より僅かに大きくしてある。すると、振動が加わった際に位置決めピン23が係合孔部22の内壁面と擦れて異音が発生することがあった。
【0005】
本発明はこの様な点に鑑みなされたもので、部材同士を位置決めした際に、位置決め箇所に異音が発生することがない部材の嵌め合せ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するため、穴部を有する第1の部材と、突起部を有する第2の部材とを備え、前記穴部に前記突起部を嵌め込むことによって前記第1の部材と前記第2の部材とを位置決めするようにした部材の嵌め合せ構造に於いて、前記穴部を覆うようにシート状の緩衝材を配置すると共に、前記穴部に対応する前記緩衝材箇所に切れ目を設け、この切れ目上から前記突起部を前記穴部に嵌め合せた際に、前記切れ目を設けることによって形成された切れ片の一部分が前記穴部と前記突起部との間に挟み込まれるものである。
【0007】
また、前記切れ目が十字状からなるものである。
【発明の効果】
【0008】
部材同士を位置決めした際に、位置決め箇所に異音が発生することがない部材の嵌め合せ構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用した第1実施形態を示す計器装置の部分断面図である。
【図2】同計器装置に用いられる緩衝材を第1の部材に配置した状態を示す要部正面図である。
【図3】同計器装置に備えられる部材の位置決め箇所を示し、位置決め前の状態を示す要部断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示し、緩衝材を第1の部材に配置した状態を示す要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の部材の嵌め合せ構造を適用した車両用の計器装置を実施形態として説明する。なお、本実施形態に於いては、第1の部材を見返し部材とし、第2の部材を透視板として説明する。
【0011】
計器装置は、液晶表示器1と、この液晶表示器1の背後に配置され液晶表示器1を駆動する駆動手段などを備えた硬質の回路基板2と、液晶表示器1の前面側に配置され例えば液晶表示器1に関する表示、或いは車両の作動状態などが表示される表示板3と、この表示板3と回路基板2との間に配置され表示板3が支持されるケース部材4と、表示板3周縁の前面側に配置された見返し部材5と、この見返し部材5に位置決めされた状態で表示板3や見返し部材5の前方側を被う透視板6と、見返し部材5と透視板6との位置決め箇所に配置された緩衝材7と、回路基板2の裏面側を覆う合成樹脂製のカバー8などを備えている。
【0012】
液晶表示器1は、詳細な説明および図示は省略するが、周知の液晶表示素子を備えており、例えば車両の速度や燃料などが表示されるものである。この液晶表示器1は液晶表示素子の他に、図示しないが液晶表示素子を保持する押さえ枠やバックライト光源などを備えている。
【0013】
ケース部材4は、遮光性のある例えば白色の合成樹脂からなり、周壁9を有しており、この周壁9の前端側と見返し部材5との間に表示板3が挟持される。
【0014】
見返し部材5(第1の部材)は、例えば黒色の合成樹脂であるABS樹脂からなり、表示板3の可視領域以外を覆うものである。見返し部材5には周縁部に複数の台座部10が設けられており、この台座部10に透視板6との位置決めとなる穴部11が設けてある。穴部11の形状は、図2に破線で示す様に正面から見た際、長円形となっている。この見返し部材5は、図示しないが、ケース部材4にビスを用いたねじ止め、或いは所謂フック止めされる。
【0015】
透視板6(第2の部材)は、例えば無色透明な合成樹脂であるアクリル樹脂からなり、内部に水や埃が入らないように表示板3や見返し部材5の前方側を被うものである。見返し部材5の穴部11に対応した透視板6箇所には、見返し部材5の台座部10に当接するフランジ部12と、穴部11に嵌め込まれ見返し部材5との位置決めとなる略円錐状の突起部13が設けてある。
【0016】
緩衝材7は、柔軟性を有する薄いシート状であり、不織布や合成ゴムなどからなる。この緩衝材7は図2に斜線で示す様に、見返し部材5に設けられた台座部10の穴部11を覆うように接着テープによって台座部10に貼り付けられている。また、穴部11に対応した箇所には穴部11の長手方向に沿う切れ目14が中央に設けてある。緩衝材7に切れ目14を設けることによって切れ目14を境に2個の切れ片15が形成される。
【0017】
前述した様に、透視板6に設けられた突起部13を見返し部材5に設けられた穴部11に嵌め込むことによって、透視板6と見返し部材5とが位置決めされる。図3に示す様に、見返し部材5の台座部10に緩衝材7が貼り付けられた(配置された)状態から突起部13を穴部11に嵌め込む。すると、図1に示す様に、緩衝材7の周縁部が台座部10と透視板6のフランジ部12との間に挟み込まれると共に、2個の切れ片15が台座部10の前面16(緩衝材7の配置面)と穴部11の内壁面17との角から折れ曲がり、切れ片15の一部分が穴部11の内壁面17と突起部13との間に挟み込まれる。
【0018】
透視板6は、見返し部材5に位置決めされた状態で、図示しないが、見返し部材5やケース部材4にビスを用いたねじ止め、或いは所謂フック止めされる。
【0019】
この様に、穴部11を有する見返し部材5と、突起部13を有する透視板6とを備え、穴部11に突起部13を嵌め込むことによって見返し部材5と透視板6とを位置決めするようにした部材の嵌め合せ構造に於いて、穴部11を覆うようにシート状の緩衝材7を配置すると共に、穴部11に対応する緩衝材7箇所に切れ目14を設け、この切れ目14上から突起部13を穴部11に嵌め合せた際に、切れ目14を設けることによって形成された切れ片15の一部分が穴部11と突起部13との間に挟み込まれるようにしたことにより、透視板6と見返し部材5とを位置決めした際に、振動が加わったとしても緩衝材7の存在によって突起部13と穴部11の内壁面17とが直接擦れ合うことがなくなり、従来の様に位置決め箇所に異音が発生することがない部材の嵌め合せ構造を得ることができる。
【0020】
本発明の第2実施形態を図4に基づいて説明する。本実施形態は前記第1実施形態とは見返し部材5に設けられた穴部11と緩衝材7の形状が異なる。なお、前記第1実施形態と同一もしくは相当箇所については同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0021】
見返し部材5(第1の部材)は、例えば黒色の合成樹脂であるABS樹脂からなる。前記第1実施形態と同様に見返し部材5には周縁部に複数の台座部10が設けられており、この台座部10に透視板6との位置決めとなる穴部11が設けてある。本実施形態に於ける穴部11の形状は、図4に破線で示す様に正面から見た際、真円形となっている。
【0022】
緩衝材7は、柔軟性を有する薄いシート状であり、不織布や合成ゴムなどからなる。この緩衝材7は図4に斜線で示す様に、見返し部材5に設けられた台座部10の穴部11を覆うように接着テープによって台座部10に貼り付けられている。また、穴部11に対応した箇所には十字状の切れ目14が設けてある。緩衝材7に切れ目14を設けることによって切れ目14を境に4個の切れ片15が形成される。
【0023】
図示しないが、本実施形態に於いても前記第1実施形態と同様に、見返し部材5の台座部10に緩衝材7が貼り付けられた(配置された)状態から突起部13を穴部11に嵌め込む。すると、緩衝材7の周縁部が台座部10と透視板6のフランジ部12との間に挟み込まれると共に、4個の切れ片15が台座部10の前面16(緩衝材7の配置面)と穴部11の内壁面17との角から折れ曲がり、切れ片15の一部分が穴部11の内壁面17と突起部13との間に挟み込まれる。
【0024】
この様に、穴部11が真円形であると共に、緩衝材7に設けた切れ目14が十字状であるために、突起部13と穴部11の内壁面17との間のほぼ全周に緩衝材7が存在することとなり、全周に渡って突起部13と穴部11の内壁面17とが直接擦れ合うことがなくなり、前記第1実施形態と同様に、位置決め箇所に異音が発生することがない部材の嵌め合せ構造を得ることができる。
【0025】
また、切れ目14を十字状とすることで各切れ片15が折れ曲がりやすくなると共に、突起部13を穴部11に嵌め込んだ際に各切れ片15が穴部11の内壁面17に沿いやすくなって、突起部13の嵌め込みがスムーズとなる。
【0026】
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではない。例えば穴部11の形状は長円形,真円形でなくとも角形でも良く、切り欠き穴(正面から見た場合、U字形の穴)であっても良い。同様に、突起部13の形状も任意である。要は、突起部13を嵌め合わせることによって透視板6と見返し部材5とが位置決めされる機能を有していれば良いものである。
【0027】
また、見返し部材5に設けた複数の穴部11は、前記第1実施形態の様な長円形と前記第2実施形態の様な真円形が混在していても良い。また、位置決め部の全ての箇所に緩衝材7を配置する必要はなく、必要に応じて設ければ良い。
【0028】
また、透視板6と見返し部材5とを位置決めする実施形態としたが、透視板6とケース部材4同士、或いは見返し部材5とケース部材4同士であっても良い。その際、前記各実施形態を含めて、どちらか一方の部材に穴部を設け、他方の部材に突起部を設けて両部材を嵌め合わせて位置決めするようにすれば良い。
【符号の説明】
【0029】
5 見返し部材(第1の部材)
6 透視板(第2の部材)
7 緩衝材
10 台座部
11 穴部
13 突起部
14 切れ目
15 切れ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴部を有する第1の部材と、突起部を有する第2の部材とを備え、前記穴部に前記突起部を嵌め込むことによって前記第1の部材と前記第2の部材とを位置決めするようにした部材の嵌め合せ構造に於いて、前記穴部を覆うようにシート状の緩衝材を配置すると共に、前記穴部に対応する前記緩衝材箇所に切れ目を設け、この切れ目上から前記突起部を前記穴部に嵌め合せた際に、前記切れ目を設けることによって形成された切れ片の一部分が前記穴部と前記突起部との間に挟み込まれることを特徴とする部材の嵌め合せ構造。
【請求項2】
前記切れ目が十字状からなることを特徴とする請求項1に記載の部材の嵌め合せ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−223334(P2010−223334A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71261(P2009−71261)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】