説明

部材の結合構造

【課題】 第1部材および第2部材それぞれの形状で相対的な位置精度の厳密な管理が困難な場合であっても、第1部材および第2部材を所定の位置で強固に溶接することが可能な部材の結合構造を提供する。
【解決手段】 第1部材11の開口11aの一対の縁部を第2部材12の挿入方向に折り曲げて結合フランジ11c,11dを形成し、一対の縁部間の距離a2,b2を第2部材12の一対の壁面間の距離a1,b1よりも大きくし、一対の結合フランジ11c,11d間の距離a3,b3を前記一対の壁面間の距離a1,b1よりも小さくしたので、第1部材11および第2部材12が相対的に位置ずれしていても、結合フランジ11c,11dを変形させながら第1部材11の開口11aに第2部材12を挿入することができ、第1部材11および第2部材12の位置公差の吸収が容易になる。そして挿入後に結合フランジ11c,11dにおいて第1部材11および第2部材12を溶接w1することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材に形成した開口に第2部材を挿入し、前記開口の周囲で前記第1部材および前記第2部材を溶接により結合する部材の結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のカウルトップメンバの車幅方向端部に水平面内に延びるI字状断面の取付片、あるいは水平面内および鉛直面内に延びるL字状断面の取付片を設けるとともに、ボディサイドアウタパネルに形成した開口の縁部に前記取付片に当接可能なI字状断面あるいはL字状断面の接合用フランジを設け、取付片および接合用フランジを相互に当接させて溶接することでカウルトップメンバおよびボディサイドアウタパネルを結合するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−297596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記特許文献1に記載された発明は、カウルトップメンバの取付片およびボディサイドアウタパネルの接合用フランジが水平面内に延びるI字状断面を有する場合には、取付片および接合用フランジの剛性が低いために結合部の強度が充分に得られないだけでなく、カウルトップメンバおよびボディサイドアウタパネルが鉛直方向に位置ずれしていると取付片および接合用フランジが密着しないために溶接が困難になる問題がある。
【0005】
またカウルトップメンバの取付片およびボディサイドアウタパネルの接合用フランジが水平面内および鉛直面内に延びるL字状断面を有する場合には、取付片および接合用フランジの剛性が高まって結合部の強度も増加するが、カウルトップメンバおよびボディサイドアウタパネルが水平方向あるいは鉛直方向に位置ずれしていると取付片および接合用フランジが密着しないために溶接が困難になる問題がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、第1部材および第2部材それぞれの形状で相対的な位置精度の厳密な管理が困難な場合でも、第1部材および第2部材を所定の位置で強固に溶接することが可能な部材の結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、第1部材に形成した開口に第2部材を挿入し、前記開口の周囲で前記第1部材および前記第2部材を溶接により結合する部材の結合構造において、前記第1部材は前記開口の相互に対向する一対の縁部にて前記第2部材の挿入方向に折り曲げられて相互に接近する方向に突出する一対の結合フランジを備え、前記一対の縁部間の距離は前記第2部材の相互に対向する一対の壁面間の距離よりも大きく、前記一対の結合フランジ間の距離は前記一対の壁面間の距離よりも小さいことを特徴とする部材の結合構造が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記第2部材の前記壁面と前記結合フランジとは、前記第2部材の挿入方向に対する順方向側あるいは逆方向側から溶接されることを特徴とする部材の結合構造が提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記開口および前記結合フランジを有する当て板が前記第1部材と別体に構成されており、前記当て板は前記第1部材に形成された第2開口に溶接により結合されることを特徴とする部材の結合構造が提案される。
【0010】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、前記第1部材の前記第2開口に予め遊嵌された前記第2部材に前記当て板の開口を嵌合し、前記第1部材および前記当て板を溶接するとともに、前記第2部材および前記結合フランジを溶接することを特徴とする部材の結合構造が提案される。
【0011】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記第1部材は相互に平行な二つの壁面を有する二重壁部材であり、前記二つの壁面に形成された二つの前記開口に前記第2部材が挿入されて結合されることを特徴とする部材の結合構造が提案される。
【0012】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項1〜請求項5の何れか1項の構成に加えて、前記第1部材の前記開口に前記第2部材を挿入した状態で、前記結合フランジは前記第2部材に弾発的に当接することを特徴とする部材の結合構造が提案される。
【0013】
また請求項7に記載された発明によれば、請求項5の構成に加えて、前記第1部材は、アウタパネルおよびインナパネルを有して前記二重壁部材を構成する自動車のサイドパネルアセンブリのフロントピラーアッパであり、前記第2部材は、自動車のダッシュパネルアセンブリの閉断面部材の鋼管で構成されたダッシュパネルクロスメンバであることを特徴とする部材の結合構造が提案される。
【0014】
尚、実施の形態の第1、第2結合フランジ11c,11dは本発明の結合フランジに対応し、実施の形態の第2壁面11f,11f′は本発明の第1部材の相互に平行な二つの壁面に対応し、実施の形態の第1、第2壁面12b,12cは本発明の第2部材の相互に対向する一対の壁面に対応する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の構成によれば、第1部材の開口の相互に対向する一対の縁部を第2部材の挿入方向に折り曲げて相互に接近する方向に突出させることで一対の結合フランジを形成し、一対の縁部間の距離を第2部材の相互に対向する一対の壁面間の距離よりも大きくし、一対の結合フランジ間の距離を前記一対の壁面間の距離よりも小さくしたので、第1部材および第2部材が相対的に位置ずれしていても、結合フランジを変形させながら第1部材の開口に第2部材を挿入することで、第1部材および第2部材間の隙間が大きく開くことがない。そして挿入後に相互に接触する第2部材と結合フランジとを溶接することで、第1部材および第2部材を所定の位置で強固に結合することができる。
【0016】
また請求項2の構成によれば、第2部材の壁面と結合フランジとは、第2部材の挿入方向に対する順方向側あるいは逆方向側から溶接されるので、MIG溶接のような片側溶接手法を用いることで、第1部材に邪魔されることなく溶接作業を容易に行うことができる。
【0017】
また請求項3の構成によれば、開口および結合フランジを有する当て板が第1部材と別体に構成されており、当て板は第1部材に形成された第2開口に溶接により結合されるので、第1部材が高強度の部材であって結合フランジが変形し難い場合や、第1部材の板厚が大きくて結合フランジが変形し難い場合であっても、容易に変形する結合フランジを有する別体の当て板を用いることで、第1部材および第2部材を支障なく結合することができる。
【0018】
また請求項4の構成によれば、第1部材の第2開口に予め遊嵌された第2部材に当て板の開口を嵌合し、第1部材および当て板を溶接するとともに、第2部材および結合フランジを溶接するので、第1部材および第2部材が大きく位置ずれしている場合であっても、第1部材に対する当て板の溶接位置を調整することで、第1部材および第2部材の大きな位置ずれを吸収することができ、しかも各結合フランジの変形量が減少することで当て板の板厚や材質の自由度が増加する。
【0019】
また請求項5の構成によれば、第1部材は相互に平行な二つの壁面を有する二重壁部材であり、二つの壁面に形成された二つの開口に第2部材が挿入されて結合されるので、二つの壁面に挟まれた第2部材を二重壁部材の隔壁として機能させることで、第1部材および第2部材の結合部の剛性を高めることができる。
【0020】
また請求項6の構成によれば、第1部材の開口に第2部材を挿入した状態で、結合フランジは第2部材に弾発的に当接するので、第1部材および第2部材を摩擦力で仮組みした状態を保持することができ、溶接で固定されるまでの作業性を高めることができる。
【0021】
また請求項7の構成によれば、第1部材はアウタパネルおよびインナパネルを有して二重壁部材を構成する自動車のサイドパネルアセンブリのフロントピラーアッパであり、第2部材は自動車のダッシュパネルアセンブリの閉断面部材で構成されたダッシュパネルクロスメンバであるので、サイドパネルアセンブリにダッシュパネルアセンブリを組付ける際に.両者の位置ずれを許容しながら結合強度を高めて自動車の車体前部の剛性向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1部材および第2部材の結合部の斜視図。(第1の実施の形態)
【図2】第1部材および第2部材の結合前の状態を示す図。(第1の実施の形態)
【図3】第1部材および第2部材の結合後の状態を示す図。(第1の実施の形態)
【図4】前記図3に対応する、第1、第2部材の中心がずれた状態を示す図。(第1の実施の形態)
【図5】第1部材および第2部材の結合部の斜視図。(第2の実施の形態)
【図6】図5の6−6線断面図。(第2の実施の形態)
【図7】第1部材および第2部材の結合部の斜視図。(第3の実施の形態)
【図8】図7の8−8線断面図。(第3の実施の形態)
【図9】第1部材および第2部材の結合部の斜視図。(第4の実施の形態)
【図10】図9の10−10線断面図。(第4の実施の形態)
【図11】自動車のダッシュパネルアセンブリおよびサイドパネルアセンブリの斜視図。(第5の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1〜図4に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0024】
図1〜図3に示すように、本実施の形態は、板状の第1部材11に閉断面の部材よりなる第2部材12を貫通させて溶接により結合するための構造に関する。第2部材12は矩形状の断面を有しており、その一つの長辺の中央部に該第2部材12の長手方向に沿う溝状のビード12aが形成される。第2部材12の相互に対向する一対の短辺を構成する第1壁面12b,12b間の距離はa1であり、第2部材12の相互に対向する一対の長辺を構成する第2壁面12c,12c間の距離、厳密に言うと、一方の長辺の壁面およびビード12aの底部の壁面間の距離はb1である。
【0025】
一方、第1部材11には第2部材12が嵌合する開口11a(鎖線参照)が形成される。第1部材11の開口11aの形状は基本的に第2部材12の断面形状に対して、位置公差+両部材それぞれの形状公差+貫通させるために必要な所定のクリアランス分だけ大きい矩形状であるが、その四隅に形成された切欠き11b…の部分では、フランジを形成するために第2部材12の断面形状よりもかなり大きくなっている。そして開口11aの相互に対向する一対の短辺間の距離a2は、前記a1よりも大きく設定され、また開口11aの相互に対向する一対の長辺間の距離b2は、前記b1よりも大きく設定される。
【0026】
開口11aの相互に対向する一対の短辺部分に、一対の第1結合フランジ11c,11cが、第2部材12の挿入方向に折り曲げられるように形成される。一対の第1結合フランジ11c,11c間の最小の距離a3は、前記a1よりも小さく設定される。同様に、開口11aの相互に対向する一対の長辺部分に、一対の第2結合フランジ11d,11dが、第2部材12の挿入方向に折り曲げられるように接続される。一対の第2結合フランジ11d,11d間の最小の距離b3は、前記b1よりも小さく設定される。
【0027】
つまり、第2部材12および第1部材11の開口11aの縦方向の寸法関係はa2>a1>a3であり、また横方向の寸法関係はb2>b1>b3である。そして第2部材12の外周面と第1部材11の開口11aの内周面との間には、隙間α1=(a2−a1)/2および隙間α2=(b2−b1)/2が形成される。
【0028】
次に、上記構成を備えた本発明の第1の実施の形態の作用を説明する。
【0029】
第1部材11の開口11aに第2部材12を挿入するとき、第2部材12の縦方向寸法a1は、第1部材11の開口11aの縦方向寸法a2よりも小さく、かつ第1部材11の第1結合フランジ11c,11c間の縦方向寸法a3よりも大きいので、第2部材12は第1部材11の第1結合フランジ11c,11cを押し開きながら開口11aに挿入される。同様に、第1部材11の開口11aに第2部材12を挿入するとき、第2部材12の横方向寸法b1は、第1部材11の開口11aの横方向寸法b2よりも小さく、かつ第1部材11の第2結合フランジ11d,11d間の横方向寸法b3よりも大きいので、第2部材12は第1部材11の第2結合フランジ11d,11dを押し開きながら開口11aに挿入される。
【0030】
このようにして第1部材11の開口11aに第2部材12を挿入した状態で、第1部材11の第1結合フランジ11c,11cおよび第2結合フランジ11d,11dと第2部材12とが、MIG溶接w1により溶接される。MIG溶接w1は被溶接部の片側から溶接可能であるため、図3(B)に実線で示すように第1部材11の挿入方向に対して逆方向から溶接することも、図3(B)に鎖線で示すように第1部材11の挿入方向に対して順方向から溶接することも可能となり、溶接作業の作業性が向上する。
【0031】
ところで、第1部材11の開口11aに第2部材12を挿入するとき、第1部材11の中心Pと第2部材12の中心Qとが一致していれば、つまり第2部材12の外周面と第1部材11の開口11aの内周面との距離α1、α2がそれぞれ均一であれば、第1結合フランジ11c,11cおよび第2結合フランジ11d,11dはそれぞれ均等に変形する。一方、図4に示すように、第1部材11の中心Pと第2部材12の中心Qとがずれていても、そのずれ量が前記隙間α1、α2の範囲内であれば、第1結合フランジ11c,11cおよび第2結合フランジ11d,11dを不均等に変形させながら、第1部材11の開口11aに第2部材12を挿入することができる。
【0032】
従って、第1部材11および第2部材12を組み立てるときに、それぞれの形状で相互の位置関係が厳密に管理できなくても、第1部材11および第2部材12を所定の位置で結合することが可能となる。しかも第1部材11の第1結合フランジ11c,11cおよび第2結合フランジ11d,11dと、第2部材12の第1壁面12b,12bおよび第2壁面12c,12cとの隙間が部材間のずれ量に対して小さくなるので、第1部材11および第2部材12を四面において確実にMIG溶接w1して結合強度を確保することができる。
【0033】
次に、図5および図6に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0034】
第1の実施の形態は第1部材11が板状部材で構成されているが、第2の実施の形態は第1部材11が矩形状の閉断面を有する部材で構成されている。第1部材11は相互に対向する一対の第1壁面11e,11eと、相互に対向する一対の第2壁面11f,11f′とを備えており、第2壁面11f,11f′に形成された開口11a,11aに第2部材12が挿入されてMIG溶接w1される。二つの開口11a,11aの構造は第1の実施の形態の開口11aの構造と同じであるが、第1部材11の第2壁面11fと第2部材12とは、挿入方向の順方向側でMIG溶接w1され、第1部材11の第2壁面11f′と第2部材12とは、挿入方向の逆方向側でMIG溶接w1されている。つまりMIG溶接w1を閉断面の第1部材11の外側から行うことで、そのMIG溶接w1を支障なく行うことができる。
【0035】
この第2の実施の形態によれば、第1部材11の内部に嵌合する第2部材12の第1壁面12b,12bおよび第2壁面12c,12cが、第1部材11の内部で隔壁として機能するため、第2部材12が第1部材11に対して角度変位するような荷重が入力したときに、第1部材11の断面が変形し難くなって結合部の剛性が高められる。
【0036】
次に、図7および図8に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0037】
第3の実施の形態は第1の実施の形態の変形であって、第1部材11の構造が第1の実施の形態と異なっている。すなわち、第1部材11には前記開口11aよりも一回り大きい矩形状の第2開口11gが形成されており、第1部材11と別部材の矩形状の当て板11′が前記第2開口11gを覆うようにスポット溶接w2される。当て板11′には、第1の実施の形態と同じ開口11a、第1結合フランジ11c,11cおよび第2結合フランジ11d,11dが設けられる。
【0038】
第1部材11および第2部材12を結合するには、予め第1部材11の第2開口11gの周縁に当て板11′をスポット溶接しておき、この状態から第1の実施の形態と同様に、第1結合フランジ11c,11cおよび第2結合フランジ11d,11dを変形させながら開口11a内に第2部材12を挿入した後、第1部材11および第2部材12をMIG溶接w1すれば良い。
【0039】
第1部材11が高強度の材料で構成されている場合や、第1部材11の板厚が大きい場合には、第1結合フランジ11c,11cおよび第2結合フランジ11d,11dの剛性が高くなり、第2部材12を挿入するときに第1結合フランジ11c,11cおよび第2結合フランジ11d,11dが変形し難くなる問題がある。しかしながら、本実施の形態によれば、当て板11′の強度や板厚を第1部材11の強度や板厚よりも小さくすることで、上記問題を解決することができる。
【0040】
尚、当て板11′の強度や板厚を小さくすると、第1結合フランジ11c,11cおよび第2結合フランジ11d,11dを第2部材12にMIG溶接w1するだけでは溶接強度が不足する可能性がある。この場合には、MIG溶接w1が第2部材12から第1結合フランジ11c,11cおよび第2結合フランジ11d,11dを経て第1部材11に跨がるようにすれば、溶接強度を充分に確保することができる(8(B)参照)。
【0041】
次に、図9および図10に基づいて本発明の第4の実施の形態を説明する。
【0042】
第4の実施の形態は第3の実施の形態の変形であって、その構造は同一であるが組付け時の順序が異なっている。
【0043】
すなわち、第3の実施の形態では、第1部材11に予め当て板11′を取り付けておき、そこに第2部材12を挿入しているが、第4の実施の形態では、先ず第2部材12を第1部材11の第2開口11gに挿入する。このとき、第2部材12と第2開口11gとの間の隙間βは前記隙間α1、α2よりも遥かに大きいので、第1部材11および第2部材12の相対位置が大きくずれていても挿入が可能となり、位置公差の許容範囲が更に大きくなる。続いて、第2部材12の先端側から当て板11′の開口11aを嵌合させる。このとき、当て板11′は特に拘束されていないため、第1結合フランジ11c,11cおよび第2結合フランジ11d,11dは均等に変形し、第2部材12の中心Qに対して当て板11′の中心P′は自動的に略一致する。この状態で当て板11′を第1部材11の第2開口11gの周囲にスポット溶接w2した後、当て板11′の第1結合フランジ11c,11cおよび第2結合フランジ11d,11dを第2部材12にMIG溶接w1する。
【0044】
この実施の形態によれば、第1部材11および第2部材12の位置ずれが隙間βの範囲内であれば組付けが可能になるため、位置公差の許容範囲が更に大きくなる。しかも第1結合フランジ11c,11cおよび第2結合フランジ11d,11dの変形量が均等になるため、当て板11′の板厚や材質の自由度が増加する。
【0045】
次に、図11に基づいて本発明の第5の実施の形態を説明する。
【0046】
第5の実施の形態は、本発明の結合構造を、自動車のダッシュパネルアセンブリ13およびサイドパネルアセンブリ14の結合部に適用したものである。
【0047】
ダッシュパネルアセンブリ13は、車幅方向に延びるダッシュパネルクロスメンバ15と、ダッシュパネルクロスメンバ15に上縁を接続されて下方に延びるダッシュパネル16とを備えており、ダッシュパネルクロスメンバ15は本発明の第2部材12に対応する。サイドパネルアセンブリ14は、フロントピラーアッパ17と、フロントピラーアッパ17の下部から下方に延びるフロントピラーロア18と、フロントピラーロア18の下端に前端を接続されたサイドシル19とを備えており、フロントピラーアッパ17のアウタパネル20およびインナパネル21がそれぞれ本発明の第1部材11に対応する。
【0048】
ダッシュパネルアセンブリ13にサイドパネルアセンブリ14を結合するとき、ダッシュパネルクロスメンバ15の車幅方向端部がフロントピラーアッパ17のアウタパネル20およびインナパネル21の開口20a,21a(本発明の開口11aに対応)に嵌合して溶接される。このとき、その結合部に本発明の結合構造を適用することで、ダッシュパネルアセンブリ13およびサイドパネルアセンブリ14の位置公差を吸収しながら、両部材を強固に結合することが可能になる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0050】
例えば、本発明の結合構造を適用することが可能な場所は、実施の形態に限定されるものではない。
【0051】
また本発明の溶接w1,w2は、実施の形態のMIG溶接やスポット溶接に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
11 第1部材
11′ 当て板
11a 開口
11c 第1結合フランジ(結合フランジ)
11d 第2結合フランジ(結合フランジ)
11f 第2壁面(壁面)
11f′ 第2壁面(壁面)
11g 第2開口
12 第2部材
12b 第1壁面(壁面)
12c 第2壁面(壁面)
13 ダッシュパネルアセンブリ
14 サイドパネルアセンブリ
15 ダッシュパネルクロスメンバ
17 フロントピラーアッパ
20 アウタパネル
21 インナパネル
a1,b1 距離
a2,b2 距離
a3,b3 距離
w1 溶接
w2 溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材(11)に形成した開口(11a)に第2部材(12)を挿入し、前記開口(11a)の周囲で前記第1部材(11)および前記第2部材(12)を溶接(w1)により結合する部材の結合構造において、
前記第1部材(11)は前記開口(11a)の相互に対向する一対の縁部にて前記第2部材(12)の挿入方向に折り曲げられて相互に接近する方向に突出する一対の結合フランジ(11c,11d)を備え、前記一対の縁部間の距離(a2,b2)は前記第2部材(12)の相互に対向する一対の壁面(12b,12c)間の距離(a1,b1)よりも大きく、前記一対の結合フランジ(11c,11d)間の距離(a3,b3)は前記一対の壁面(12b,12c)間の距離(a1,b1)よりも小さいことを特徴とする部材の結合構造。
【請求項2】
前記第2部材(12)の前記壁面(12b,12c)と前記結合フランジ(11c,11d)とは、前記第2部材(12)の挿入方向に対する順方向側あるいは逆方向側から溶接(w1)されることを特徴とする、請求項1に記載の部材の結合構造。
【請求項3】
前記開口(11a)および前記結合フランジ(11c,11d)を有する当て板(11′)が前記第1部材(11)と別体に構成されており、前記当て板(11′)は前記第1部材(11)に形成された第2開口(11g)に溶接(w2)により結合されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の部材の結合構造。
【請求項4】
前記第1部材(11)の前記第2開口(11g)に予め遊嵌された前記第2部材(12)に前記当て板(11′)の開口(11a)を嵌合し、前記第1部材(11)および前記当て板(11′)を溶接(w2)するとともに、前記第2部材(12)および前記結合フランジ(11c,11d)を溶接(w1)することを特徴とする、請求項3に記載の部材の結合構造。
【請求項5】
前記第1部材(11)は相互に平行な二つの壁面(11f,11f′)を有する二重壁部材であり、前記二つの壁面(11f,11f′)に形成された二つの前記開口(11a)に前記第2部材(12)が挿入されて結合されることを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の部材の結合構造。
【請求項6】
前記第1部材(11)の前記開口(11a)に前記第2部材(12)を挿入した状態で、前記結合フランジ(11c,11d)は前記第2部材(12)に弾発的に当接することを特徴とする、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の部材の結合構造。
【請求項7】
前記第1部材(11)は、アウタパネル(20)およびインナパネル(21)を有して前記二重壁部材を構成する自動車のサイドパネルアセンブリ(14)のフロントピラーアッパ(17)であり、前記第2部材(12)は、自動車のダッシュパネルアセンブリ(13)の閉断面部材で構成されたダッシュパネルクロスメンバ(15)であることを特徴とする、請求項5に記載の部材の結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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