説明

部材把持構造及び把持具

【課題】着脱の際に工具を用いることなく部材の把持が可能な部材把持構造及び把持具を提供する。
【解決手段】収容部12にゴム部材3を挿入した後に、止めねじ4を収容部12の雌ねじ部12aを螺合させる。これにより、ゴム部材3は、受け入れ部11から脱落することが防止される。その後、止めねじ4を回して受け入れ部11の奥の方向に進める。そうすると、ゴム部材3は、止めねじ4により圧縮力を受けて、中間部3aが開口部2から突出する。このため、被把持部材5を工具を用いることなく受け入れ部11に着脱可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材を把持する部材把持構造及び把持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電極やフローセル等のメンテナンスが必要な部材を装置内に収容する際には、取り外しが可能であり、かつ容易であることがユーザにとって望ましい。しかし、取り外しの容易さを優先するあまり装置への部材の固定が十分でないと、装置の移送時や作動時の振動によって部材が脱落したり、ガタツキのためにノイズの原因になったりすることが懸念される。また、測定時の姿勢が想定されていたものと異なることになって正常な測定ができないことも懸念される。
【0003】
ビス止めされた電極やフローセルを装置から取り外す作業は、工具を用いて行われる。また、装置のメンテナンスが屋外で行われる場合に、その現場が必ずしも作業性のよい環境であるとは限らず、例えば、固定用のビスを落としてしまうことも想定される。そのような場合には、ビスを探す手間が必要になり、ビスを見つけられなかったり、落とした場所が拾えない場所であったりする。このため、ローレットねじや装置から脱落しない構造のビス等の締結手段を使用することも考えられる。このような締結手段としては、例えば、特許文献1に提案されている。
【0004】
この特許文献1には、頭部と、頭部の一端中央より突出し外周面にねじ山を有する軸部と、で構成されるねじが開示されている。そして、軸部は、頭部側より先端に向かって外周面に主ねじ山を有する主ねじ部と、主ねじ部の外径より小さい外径をもつと共にねじ山が形成されない首部を持っている。また、軸部は、従ねじ山を有すると共に雌ねじとの螺合がしにくい形状を備えた先端ねじ部を持っている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−184636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の締結手段を用いたとしても、取り付けられる側にはビス用の穴を設けるため、測定に直接関与しない構造部分を大きくしなければならないという問題があり、装置の小型化が要請されている昨今のニーズに対応することが困難になる。
【0007】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、着脱の際に工具を用いることなく部材の把持が可能な部材把持構造及び把持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもと、本発明が適用される部材把持構造は、把持すべき部材の形状に対応する形状に形成された受け入れ部と、受け入れ部に隣接して形成され、弾性部材を収容するための収容部と、を含み、収容部に弾性部材が収容されると、弾性部材の一部が受け入れ部に位置するように受け入れ部と収容部との間が部分的に開口していることを特徴とするものである。
【0009】
収容部は、受け入れ部に部材が受け入れられる方向とは異なる方向に延びていることを特徴とすることができる。また、単一の受け入れ部について複数の収容部を含むことを特徴とすることができる。
【0010】
他の観点から捉えると、本発明が適用される把持具は、把持すべき被把持部材を受け入れる受け入れ空間を形成するベース部材と、受け入れ空間に受け入れられる被把持部材の把持に用いられる弾性体と、を含み、ベース部材は、受け入れ空間に隣接し弾性体を収容する収容空間を備え、かつ、収容空間に収容される弾性体の一部が受け入れ空間に位置するように受け入れ空間と収容空間とを互いに連通させるための開口部を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
ベース部材の収容空間に収容されている弾性体と係合する係合部材を更に含み、係合部材は、弾性体がベース部材の収容空間からの脱落を防止することを特徴とすることができる。そして、この係合部材は、弾性体が受け入れ空間に位置する弾性体の部分が増えるように、弾性体を変形させることを特徴とすることができる。
【0012】
また、ベース部材は、板状部材であり、受け入れ空間は、板状部材の厚さ方向に延びて板状部材を貫通して形成され、収容空間は、板状部材の端面から厚さ方向に交差するように延びて形成されていることを特徴とすることができる。また、ベース部材は、受け入れ空間を複数含み、かつ、複数の受け入れ空間の各々に対応する収容空間を含むことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、着脱の際に工具を用いることなく部材の把持が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る部材把持構造及び把持具(以下、部材把持構造という)の固定板1を説明するための概略構成図であり、(a)は固定板1の平面図であり、(b)は固定板1の正面図である。
図1に示す固定板(ベース部材)1は、部材把持構造の一部を成すものであり、把持される部材(例えば電極やフローセル等)の外形形状に対応するように形成された受け入れ部11,13,15を有する。受け入れ部11,13,15は、固定板1の厚さ方向に貫通して形成されている。そして、これら受け入れ部11,13,15は、把持すべき部材を受け入れる受け入れ空間を形成している。
【0015】
受け入れ部11は、固定板1の端面1aの一部を切り欠いて形成されている。すなわち、受け入れ部11は、円弧部分11aと、円弧部分11aの各端から固定板1の端面1aに延びる直線部分11bと、を有する。また、受け入れ部13は、円形状に形成され、受け入れ部15は、四角形状(矩形状、正方形)に形成されている。
【0016】
また、固定板1は、端面1aに穿設された穴形状の収容部12,14,16を有する。収容部12,14,16は、端面1aとは反対側に位置する端面1bに貫通して形成されていない。このようにして、収容部12,14,16は、受け入れ空間に隣接して収容空間を形成している。この収容空間は、後述するゴム部材(弾性部材、弾性体)3を収容するための空間である。更に説明すると、収容部12,14,16は、固定板1の端面1aから固定板の厚さ方向に交差するように延びて形成されている。
収容部12は、受け入れ部11に隣接して形成されている。収容部14は、受け入れ部13に隣接して形成されている。収容部16は、受け入れ部15に隣接して形成されている。
【0017】
図2は、図1の矢印Aの方向から固定板1の受け入れ部11及び収容部12を見た図である。なお、受け入れ部13,15については、図2に示す受け入れ部11の構造と略同一ゆえ、その説明を省略する。また、収容部14,16については、図2に示す収容部12の構造と略同一ゆえ、その説明を省略する。
図2に示すように、受け入れ部11と収容部12とは、開口部(スリット)2で互いに連通している。すなわち、受け入れ部11による受け入れ空間と収容部12による収容空間とが開口部2を通じて互いに連通している。更に説明すると、開口部2は、収容部12の長手方向の途中に位置している。
【0018】
ここで、収容部12には、端面1aから所定の区間に雌ねじ部12aが形成されている。雌ねじ部12aの奥側端は、開口部2の手前に位置している。
【0019】
図3は、部材把持構造の構成部材を説明するための図である。なお、説明の便宜のため、図3には、図1の受け入れ部11及び収容部12のみを図示している。
図3に示すように、部材把持構造は、上述した固定板1のほかに、ゴム部材3及び止めねじ4を含んで構成されている。
ゴム部材3は棒状部材であり、固定板1の受け入れ部11に端面1a側から挿入されるものである。ゴム部材3としては、例えば、シリコン、バイトン(登録商標)等のフッ素系ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴムなどを用いることができる。なお、耐候性の点では、シリコン、フッ素系ゴム、エチレンプロピレンゴムが好ましいが、耐熱性、耐寒性、耐薬品性、耐水性、耐油性等の優劣があるので、使用環境に合わせて適宜選択すればよい。
【0020】
止めねじ4は、固定板1の受け入れ部11に収容されているゴム部材3の抜け防止のために受け入れ部11に取り付けられるものである。更に説明すると、この止めねじ4は、受け入れ部11においてゴム部材3を押し込むのに用いられる。
止めねじ4としては、例えば六角穴付き止めねじ又はすりわり付き止めねじ等の所謂いもねじ(雌ねじ部12aの穴の中に雄ねじの一部又は全部が入り込むねじ)を用いることができる。なお、これらの頭のないねじの代わりに、十字穴つき小ねじやすりわり付き小ねじ(普通の皿ねじやなべ小ねじ)を用いてもよい。
【0021】
図4〜図6は、部材把持構造の構成部材を組み立てる手順を説明するための図である。
図4に示すように、まず、収容部12にゴム部材3を挿入する。そして、図5に示すように、止めねじ4を収容部12の雌ねじ部12aに螺合させる。これにより、ゴム部材3は、収容部12から脱落することが防止される。その後、止めねじ4を回して収容部12の奥の方向に進める。
そうすると、図6に示すように、ゴム部材3は、止めねじ4により圧縮力を受けて、中間部3aが開口部2から突出する。すなわち、ゴム部材3の一部が受け入れ部11に位置する。別の言い方をすると、ゴム部材3は、受け入れ空間の一部を占めるように変形する。これにより、部材把持構造の構成部材の組み立てが完了する。
なお、止めねじ4の収容部12における位置を変更することにより、中間部3aの受け入れ部11への突出量を調整することができる。
【0022】
図6に示すように、破線で示す被把持部材(例えば電極やフローセル等)5が受け入れ部11に受け入れられると、開口部2から突出するゴム部材3の中間部3aは、被把持部材5の外面と当接(摩擦係合)し、これによって、被把持部材5は把持される。
【0023】
ここで、被把持部材5が重量物であるときには、太いゴム部材3を用いることで対応可能である。太いゴム部材3を用いると、止めねじ4で押圧しない状態でも中間部3aが開口部2から突出するようになる。
【0024】
このように本実施の形態では、固定板1の、例えば電極やフローセル等を挿入する穴としての受け入れ部11,13,15を形成し、これら受け入れ部11,13,15と接した別のスリットとしての収容部12,14,16を設け、その収容部12,14,16内にシリコンゴム等の弾性体としてのゴム部材3を挿入することで、フリクション機構を構成している。そして、フリクション機構で電極やフローセル等を固定している。したがって、被把持部材5を固定板1に取り付ける際には、工具がなくても行うことができる。また、被把持部材5を固定板1から取り外すときにも工具を必要とせずに行うことができる。すなわち、被把持部材5の着脱を工具なし(工具レス)で行うことができる。
【0025】
また、本実施の形態では、従来のような締結手段のためのビス用の穴を設ける必要がないため、省スペース化にも寄与するものであり、装置の小型化を容易に実現することが可能になる。
【0026】
更には、本実施の形態では、受け入れ部11を固定板1の端面1aを切り欠く構成にすることにより、固定板1の外形を小さくすることが可能であり、また、受け入れ部11に把持されている被把持部材5を遮る部分を減らすことができるので、被把持部材5をユーザが観察する必要がある場合には、好ましい形態である。
【0027】
ここで、本実施の形態の変形例を説明する。本実施の形態では、1つの受け入れ部11,13,15に1つの収容部12,14,16が設けられているが、1つの受け入れ部11,13,15の各々に複数の収容部12,14,16を設ける構成を採用することができる。その場合には、重量物を把持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態に係る部材把持構造及び把持具の固定板を説明するための概略構成図である。
【図2】図1の矢印Aの方向から固定板の受け入れ部及び収容部を見た図である。
【図3】部材把持構造の構成部材を説明するための図である。
【図4】部材把持構造の構成部材を組み立てる手順を説明するための図である。
【図5】部材把持構造の構成部材を組み立てる手順を説明するための図である。
【図6】部材把持構造の構成部材を組み立てる手順を説明するための図である。
【符号の説明】
【0029】
1…固定板、1a…端面、11,13,15…受け入れ部、11a…円弧部分、11b…直線部分、12,14,16…収容部、12a…雌ねじ部、2…開口部、3…ゴム部材、4…止めねじ、5…被把持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持すべき部材の形状に対応する形状に形成された受け入れ部と、
前記受け入れ部に隣接して形成され、弾性部材を収容するための収容部と、
を含み、
前記収容部に弾性部材が収容されると、当該弾性部材の一部が前記受け入れ部に位置するように当該受け入れ部と当該収容部との間が部分的に開口していることを特徴とする部材把持構造。
【請求項2】
前記収容部は、前記受け入れ部に部材が受け入れられる方向とは異なる方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の部材把持構造。
【請求項3】
単一の前記受け入れ部について複数の前記収容部を含むことを特徴とする請求項1に記載の部材把持構造。
【請求項4】
把持すべき被把持部材を受け入れる受け入れ空間を形成するベース部材と、
前記受け入れ空間に受け入れられる前記被把持部材の把持に用いられる弾性体と、
を含み、
前記ベース部材は、前記受け入れ空間に隣接し前記弾性体を収容する収容空間を備え、かつ、当該収容空間に収容される前記弾性体の一部が当該受け入れ空間に位置するように当該受け入れ空間と当該収容空間とを互いに連通させるための開口部を備えていることを特徴とする把持具。
【請求項5】
前記ベース部材の前記収容空間に収容されている前記弾性体と係合する係合部材を更に含み、
前記係合部材は、前記弾性体が前記ベース部材の前記収容空間からの脱落を防止することを特徴とする請求項4に記載の把持具。
【請求項6】
前記係合部材は、前記弾性体が前記受け入れ空間に位置する当該弾性体の部分が増えるように、当該弾性体を変形させることを特徴とする請求項5に記載の把持具。
【請求項7】
前記ベース部材は、板状部材であり、
前記受け入れ空間は、前記板状部材の厚さ方向に延びて当該板状部材を貫通して形成され、
前記収容空間は、前記板状部材の端面から前記厚さ方向に交差するように延びて形成されていることを特徴とする請求項4に記載の把持具。
【請求項8】
前記ベース部材は、前記受け入れ空間を複数含み、かつ、当該複数の受け入れ空間の各々に対応する前記収容空間を含むことを特徴とする請求項4に記載の把持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−8392(P2008−8392A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179028(P2006−179028)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】