説明

都市ガス製造方法及び装置

【課題】本発明は、高カロリー液化ガスの気化用熱源を確保するための専用のヒーター及びヒーター用電源や給湯器を用意することなく、都市ガスが要求する所定熱量を満足させることが可能な都市ガス製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ガス冷却器21で除去した反応熱により加熱された熱媒体としての温水を高カロリー液化ガス気化手段としての熱媒体流路に供給し、この温水でLPGタンク30内のLPGを加温し、気化させる高カロリー液化ガス気化工程と、水分除去手段としての除湿器22で水分が除去された精製ガスに、前記高カロリー液化ガス気化工程で気化したLPGを加えて、前記水分が除去された精製ガスの熱量を所定熱量となるように増加させる熱量増加工程と、を有したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガスから都市ガスを製造する都市ガス製造方法及び装置に関する。ここで「バイオガス」とは、バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるものであり、原油、天然ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品を除くもの)から発生するまたは由来する可燃性ガスを言う。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥や生ごみといった有機性廃棄物や食品工場排水などの有機性排水等のバイオマスをメタン発酵させることにより得られるバイオガスが、新しいエネルギーとして注目されている。このメタン発酵処理され、発生したバイオガスは通常「消化ガス」と呼ばれ、この消化ガス中の成分は、メタンが約60容量%及び二酸化炭素が約40容量%である。さらに、微量の不純物として、通常100〜3000ppmの硫化水素(以下、「HS」という)等の硫黄系不純物や約0.3容量%の酸素も含まれている。
【0003】
また、近年、消化ガスを精製し、都市ガスとして供給されることが待ち望まれている。しかし、この消化ガスを精製し、都市ガスとして利用するためには、上記HS等の硫黄系不純物、二酸化炭素や酸素等(以下、「不純物成分」と言う)を都市ガスが要求する所定基準値以下の濃度まで低減させなければならない。この要求を満足させるための優れた技術の一つとして、例えば、特許文献1に記載されたような技術が提案されている。
【0004】
この特許文献1に開示された技術は、吸収塔内でバイオガスと水とを高圧状態で接触させることにより、バイオガス中から硫黄系不純物と二酸化炭素を分離し、高濃度なメタンガスを精製するバイオガス精製工程と、このバイオガス精製工程で得られた精製ガスに水素を添加する水素添加工程と、この水素添加工程で水素が添加された精製ガスを触媒が充填された酸素除去触媒塔へ供給し、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換する工程と、を備えた構成である。さらに、上記特許文献1には、触媒反応により水に変換する工程で発生した反応熱を精製ガスから除去する反応熱除去工程と、この反応熱除去工程で反応熱が除去された精製ガスから水分を除去する水分除去工程が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−180197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された技術によれば、水分除去工程で水分が除去された精製ガスは、すでに都市ガスが要求する所定成分の組成と濃度に近づいているが、熱量が低く(例えば、39MJ/mN)、まだ都市ガスが要求する所定熱量(例えば、45MJ/mN)を満足するには至っていない。したがって、高カロリーな液化ガスであるLPG(例えば、99.2MJ/mN程度)を気化させ、添加して、前記所定熱量となるように調整する必要がある。この熱量調整のためには、まずLPGをベーパーライザーに供給し、ベーパーライザー用熱源で加温しながらLPGを気化させなければならない。このベーパーライザー用熱源としては、通常、電熱や給湯器により加熱された温水が用いられるため、専用のヒーター及びヒーター用電源や給湯器を必ず用意しなければならないという問題点があった。
【0007】
本発明の目的は、高カロリーな液化ガスの気化用熱源を確保するための専用のヒーター及びヒーター用電源や給湯器を用意することなく、都市ガスが要求する所定熱量を満足させることが可能な都市ガス製造方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、
バイオガス中から少なくとも硫黄系不純物を分離し、高濃度なメタンガスを精製するバイオガス精製工程と、このバイオガス精製工程で得られた精製ガスを都市ガスが要求する所定成分の組成と濃度に調整する成分調整工程と、この成分調整工程で得られた精製ガスの熱量を都市ガスが要求する所定熱量に調整する熱量調整工程と、を備え、
前記成分調整工程は、
前記バイオガス精製工程で得られた精製ガスに水素を添加する水素添加工程と、
この水素添加工程で水素が添加された精製ガスを触媒が充填された酸素除去触媒塔へ供給し、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換する工程と、
この触媒反応により水に変換する工程で発生した反応熱を精製ガスから除去する反応熱除去工程と、
この反応熱除去工程で反応熱が除去された精製ガスから水分を除去する水分除去工程と、を有し、
前記熱量調整工程は、
前記反応熱除去工程で除去した反応熱により加熱された熱媒体で、前記水分除去工程で水分が除去された精製ガスより高カロリーな液化ガス(以下、「高カロリー液化ガス」と称す)を加温し、気化させる高カロリー液化ガス気化工程と、
前記水分除去工程で水分が除去された精製ガスに、前記高カロリー液化ガス気化工程で気化した高カロリー液化ガスを加えて、前記水分が除去された精製ガスの熱量を前記所定熱量となるように増加させる熱量増加工程と、を有したことを特徴とする都市ガス製造方法である。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記水素は、水を電気分解して得たものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、
バイオガス中から少なくとも硫黄系不純物を分離し、高濃度なメタンガスを精製するためのバイオガス精製装置と、
このバイオガス精製装置で得られた精製ガスを都市ガスが要求する所定成分の組成と濃度に調整するための成分調整手段と、
この成分調整手段で得られた精製ガスの熱量を都市ガスが要求する所定熱量に調整するための熱量調整手段と、を備え、
前記成分調整手段は、
前記バイオガス精製装置で得られた精製ガスに水素を添加するための水素供給手段と、
この水素供給手段により水素が添加された精製ガスを受入れ、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換するための触媒が充填された酸素除去触媒塔と、
この酸素除去触媒塔で触媒反応により発生した反応熱を精製ガスから除去するためのガス冷却器と、
このガス冷却器で反応熱が除去された精製ガスから水分を除去するための水分除去手段と、を有し、
前記熱量調整手段は、
前記ガス冷却器で除去した反応熱により加熱された熱媒体で、前記水分除去手段で水分が除去された精製ガスより高カロリーな液化ガス(以下、「高カロリー液化ガス」と称す)を加温し、気化させるための高カロリー液化ガス気化手段と、
前記水分除去手段で水分が除去された精製ガスに、前記高カロリー液化ガス気化手段で気化した高カロリー液化ガスを加えて、前記水分が除去された精製ガスの熱量を前記所定熱量となるように増加させるための熱量増加手段と、を有したことを特徴とする都市ガス製造装置である。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記水素供給手段は、水電解装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る都市ガス製造方法によれば、
バイオガス中から少なくとも硫黄系不純物を分離し、高濃度なメタンガスを精製するバイオガス精製工程と、このバイオガス精製工程で得られた精製ガスを都市ガスが要求する所定成分の組成と濃度に調整する成分調整工程と、この成分調整工程で得られた精製ガスの熱量を都市ガスが要求する所定熱量に調整する熱量調整工程と、を備え、
前記成分調整工程は、
前記バイオガス精製工程で得られた精製ガスに水素を添加する水素添加工程と、
この水素添加工程で水素が添加された精製ガスを触媒が充填された酸素除去触媒塔へ供給し、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換する工程と、
この触媒反応により水に変換する工程で発生した反応熱を精製ガスから除去する反応熱除去工程と、
この反応熱除去工程で反応熱が除去された精製ガスから水分を除去する水分除去工程と、を有し、
前記熱量調整工程は、
前記反応熱除去工程で除去した反応熱により加熱された熱媒体で、前記水分除去工程で水分が除去された精製ガスより高カロリーな液化ガス(以下、「高カロリー液化ガス」と称す)を加温し、気化させる高カロリー液化ガス気化工程と、
前記水分除去工程で水分が除去された精製ガスに、前記高カロリー液化ガス気化工程で気化した高カロリー液化ガスを加えて、前記水分が除去された精製ガスの熱量を前記所定熱量となるように増加させる熱量増加工程と、を有しているため、高カロリー液化ガスの気化用熱源を確保するための専用のヒーター及びヒーター用電源や給湯器を用意することなく、都市ガスが要求する所定熱量を満足させることが可能な都市ガス製造方法を実現できる。
【0013】
また、本発明に係る都市ガス製造装置によれば、
バイオガス中から少なくとも硫黄系不純物を分離し、高濃度なメタンガスを精製するためのバイオガス精製装置と、
このバイオガス精製装置で得られた精製ガスを都市ガスが要求する所定成分の組成と濃度に調整するための成分調整手段と、
この成分調整手段で得られた精製ガスの熱量を都市ガスが要求する所定熱量に調整するための熱量調整手段と、を備え、
前記成分調整手段は、
前記バイオガス精製装置で得られた精製ガスに水素を添加するための水素供給手段と、
この水素供給手段により水素が添加された精製ガスを受入れ、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換するための触媒が充填された酸素除去触媒塔と、
この酸素除去触媒塔で触媒反応により発生した反応熱を精製ガスから除去するためのガス冷却器と、
このガス冷却器で反応熱が除去された精製ガスから水分を除去するための水分除去手段と、を有し、
前記熱量調整手段は、
前記ガス冷却器で除去した反応熱により加熱された熱媒体で、前記水分除去手段で水分が除去された精製ガスより高カロリーな液化ガス(以下、「高カロリー液化ガス」と称す)を加温し、気化させるための高カロリー液化ガス気化手段と、
前記水分除去手段で水分が除去された精製ガスに、前記高カロリー液化ガス気化手段で気化した高カロリー液化ガスを加えて、前記水分が除去された精製ガスの熱量を前記所定熱量となるように増加させるための
熱量増加手段と、を有しているため、高カロリー液化ガスの気化用熱源を確保するための専用のヒーター及びヒーター用電源や給湯器を用意することなく、都市ガスが要求する所定熱量を満足させることが可能な都市ガス製造装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る都市ガス製造方法の一実施の形態を説明するための都市ガス製造装置構成の模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る都市ガス製造方法の一実施の形態を説明するための都市ガス製造装置構成の模式説明図である。
【0016】
図1において、1は下水汚泥や生ごみといった有機性廃棄物や食品工場排水などの有機性排水等のバイオマスをメタン発酵させるための消化タンク、2は消化タンク1から発生した消化ガス中から少なくとも硫黄系不純物を分離し、高濃度なメタンガスを精製するためのバイオガス精製装置、3はバイオガス精製装置2で精製された精製ガスが供給され約0.6〜1.0MPaGの範囲の圧力で貯蔵するための中圧ガスホルダー、4は中圧ガスホルダー3内の精製ガスの圧力を計測するための圧力計である。
【0017】
また、図1において、10は精製ガスを都市ガスが要求する所定基準値未満の二酸化炭素濃度(例えば、0.5容量%)まで低減させるための二酸化炭素除去器、11は二酸化炭素除去器10で所定値まで二酸化炭素濃度が低減された精製ガスの流量を計測するための流量計、12は流量計11で流量が計測された精製ガスの酸素濃度を測定するためのガスクロマトグラフ(型式:GC−20B−3S、株式会社島津製作所製)、13は水素供給手段としての水電解式高純度水素酸素発生装置{株式会社神鋼環境ソリューション製の水電解式高純度水素酸素発生装置(商品名:HHOG)}、14は水電解式高純度水素酸素発生装置13から供給される水素(H)の流量を計測するための流量計、15は流量制御装置、16は流量調整弁である。ここで、水素量調整手段は、流量制御装置15と流量調整弁16から構成される。水素供給手段は、上記水電解式高純度水素酸素発生装置13に限定されるものではなく、通常の水電解装置を用いることも可能である。
【0018】
また、図1において、20はパラジウム(Pd)が充填された酸素除去触媒塔、21は酸素除去触媒塔20で酸素が除去された精製ガス中の反応熱を除去するためのガス冷却器、22はガス冷却器21で冷却された精製ガス中の水分を除去するための水分除去手段としての除湿器、23は除湿器22で水分が除去された精製ガスに付臭剤(例えば、TBM+DMS)を用いて都市ガスとしての付臭を行なうための付臭装置、24は付臭装置23で付臭された精製ガスの流量を計測するための流量計、25は流量計24で流量が計測された精製ガスの流量を調整するための流量調整弁、26は遮断弁、27は減圧弁、28は都市ガス導管である。また、前記ガス冷却器21に用いる水としては、下水や排水を処理した処理水を用いることが好ましい。
【0019】
また、水電解式高純度水素酸素発生装置13と酸素除去触媒塔20とガス冷却器21と除湿器22とからバイオガス精製装置2で得られた精製ガスを都市ガスが要求する所定成分の組成と濃度に調整するための成分調整手段が構成されている。
【0020】
尚、ガス冷却器21には、ガス冷却器21で生成された凝縮水を排出するためのドレントラップ(図示せず)が付設されていてもよい。
【0021】
また、図1において、30は高カロリー液化ガスとしてのLPGが貯蔵されるLPGタンク、31はLPGタンク30から取り出された気化したLPGの流量を計測するための流量計、32は流量制御装置、33は流量調整弁である。また、前記LPGタンク30の周囲には、高カロリー液化ガス気化手段としての熱媒体流路(図示せず)が配設されている。さらに、上記ガス冷却器21で除去した反応熱により加熱された熱媒体(例えば、温水)が前記熱媒体流路に供給され、この温水でLPGタンク30に貯蔵されたLPGが加温され、LPGが気化するように構成されている。また、流量計31と流量制御装置32と流量調整弁33とから熱量増加手段が構成されている。また、上記熱媒体流路と前記熱量増加手段とから上記成分調整手段で得られた精製ガスの熱量を都市ガスが要求する所定熱量に調整するための熱量調整手段が構成されている。
【0022】
また、図1において、40は都市ガス導管へ供給する精製ガスの酸素濃度を測定するためのガスクロマトグラフ(型式:GC−20B−3S、株式会社島津製作所製)、41は都市ガス導管28へ供給する精製ガスのその他の成分濃度を測定するための分析計、50は遮断弁、52はガス燃焼装置、60は流量制御装置である。
【0023】
次に、本発明に係る都市ガス製造装置における都市ガス製造方法について、図1を参照しながら工程別に説明する。
1)バイオガス精製工程
消化タンク1から発生したバイオガス(消化ガス)は、バイオガス精製装置2で硫黄系不純物と二酸化炭素が分離され、高濃度なメタンガスが精製される。そして精製ガスは、中圧ガスホルダー3に中圧貯蔵される。尚、バイオガス精製装置2としては、少なくとも硫黄系不純物を分離(除去)できるものであればよく、水とバイオガスを高圧下で接触させる装置、水とバイオガスを常圧下で接触させる装置、生物脱硫装置等が挙げられる。
2)成分調整工程
前記バイオガス精製工程で得られた精製ガスを都市ガスが要求する所定成分の組成と濃度に調整する。この工程には、以下の4つの工程が含まれる。
2−1) 水素添加工程
バイオガス精製装置2で精製された後、中圧ガスホルダー3を経由して供給された精製ガスから二酸化炭素除去器10を用いて、都市ガスが要求する所定基準値未満の二酸化炭素濃度(例えば、0.5容量%)まで低減され、さらに水電解式高純度水素酸素発生装置13から水素が添加される。
2−2) 触媒反応により水に変換する工程
水電解式高純度水素酸素発生装置13から水素が添加された精製ガスを触媒が充填された酸素除去触媒塔20へ供給し、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換する。
2−3) 反応熱除去工程
ガス冷却器21で、触媒反応により水に変換する工程で発生した反応熱を精製ガスから除去する。
2−4) 水分除去工程
除湿器22で、反応熱が除去された精製ガスから水分を除去する。
3)熱量調整工程
前記成分調整工程で得られた精製ガスの熱量(例えば、39MJ/mN)を都市ガスが要求する所定熱量(例えば、45MJ/mN)に調整する。この工程には、以下の2つの工程が含まれる。
3−1) 高カロリー液化ガス(LPG)気化工程
ガス冷却器21で除去した反応熱により加熱された温水をLPGタンク30の周囲に配設された熱媒体流路に供給することで、LPGタンク30に貯蔵されるLPGを加温し、気化させる。
3−2) 熱量増加工程
前記成分調整工程で得られた精製ガス(すなわち、前記水分除去工程で水分が除去された精製ガス)に、前記LPG気化工程で気化したLPG(熱量:例えば、99.2MJ/mN程度)を加えて、前記水分が除去された精製ガスの熱量を前記所定熱量となるように増加させる。より詳細には、以下の通りである。すなわち、流量計24で計測された精製ガスの流量と流量計31で計測された気化したLPGの流量を流量制御装置32に入力し、これらのデータに基づいて、流量調整弁33を調節し、この流量調整弁33で調節されたガス(気化したLPG)を前記水分除去工程で水分が除去された精製ガスに加えることにより、前記水分が除去された精製ガスの熱量を前記所定熱量となるように増加させる。
【0024】
上述したような工程を有した都市ガス製造方法を採用することにより、高カロリー液化ガスの気化用熱源を確保するための専用のヒーター及びヒーター用電源や給湯器を用意することなく、都市ガスが要求する所定熱量を満足させることが可能である。また、ガス冷却器21で除去した熱量と、都市ガスが要求する所定熱量を満足させるために、高カロリー液化ガス気化手段(例えば、熱媒体流路)に供給する熱媒体でLPGを気化させるために必要な熱量との間には、正の相関がある。したがって、本発明の構成ならば、バイオガス精製工程で得られた精製ガスの量が変動したとしても、高カロリー液化ガス気化手段でLPGを気化させるために必要な熱量も十分に確保できるという作用効果も有する。
【0025】
なお、本実施の形態においては、バイオガス精製装置2で精製された後、中圧ガスホルダー3を経由して供給された精製ガスから二酸化炭素除去器10を用いて、都市ガスが要求する所定基準値未満の二酸化炭素濃度(例えば、0.5容量%)まで低減させる例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。すなわち、都市ガスが要求する所定基準値未満の二酸化炭素濃度(例えば、0.5容量%)まで低減させるのは、少なくとも都市ガス導管へ供給する前までに達成されていればよい。好ましくは、上記熱量調整工程が実施されるまでに完了しているのがよい。
【0026】
また、本実施の形態においては、熱量増加工程として、成分調整工程で得られた精製ガス(すなわち、水分除去工程で水分が除去された精製ガス(熱量:例えば、39MJ/mN))に、LPG気化工程で気化したLPG(熱量:例えば、99.2MJ/mN程度)を加えて、前記水分が除去された精製ガスの熱量を都市ガスが要求する所定熱量(例えば、45MJ/mN)にする例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。すなわち、本発明を採用したならば、成分調整工程で得られる低熱量な精製ガス(例えば、39MJ/mN)に、前記低熱量な精製ガスより高カロリーな気化した液化ガス(例えば、LNG)を適宜選択し加えることにより、ガス事業者等によって定められた都市ガスが要求する所定熱量(例えば、45MJ/mN)に調整することが可能である。
【0027】
また、本実施の形態においては、ガス冷却器21で除去した反応熱により加熱された熱媒体として、温水を用いる例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、様々な液体(オイル等)を熱媒体として使用することが可能である。また、本実施の形態においては、ガス冷却器21で除去した反応熱により加熱された熱媒体(例えば、温水)をLPGタンク30の周囲に配設された熱媒体流路に供給することで、LPGタンク30に貯蔵されるLPGを加温し、気化させる例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、ガス冷却器21で除去した反応熱により加熱された熱媒体(例えば、温水)と水電解式水素発生装置13で発生した熱により加熱された熱媒体(温水)を集約して、LPGタンク30の周囲に配設された熱媒体流路に供給することで、LPGタンク30に貯蔵されるLPGを加温し、気化させることも可能である。
【0028】
また、反応熱除去工程で得られた温水は、高カロリー液化ガス気化工程で熱交換により冷却され温度が低下するので、この温度が低下した水を、再度、反応熱除去工程に供給することも可能である。
【0029】
また、本実施の形態においては、高カロリー液化ガス気化手段としてLPGタンク30の周囲に配設された熱媒体流路を用いた例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、高カロリー液化ガス気化手段として例えばベーパーライザーを用い、このベーパーライザーにガス冷却器21で除去した反応熱により加熱された熱媒体(例えば、温水)を供給し、この熱媒体により高カロリー液化ガス(例えば、LPG)を加温し、高カロリー液化ガスを気化させる構成とすることも可能である。さらに、水電解式水素発生装置13で発生した熱を冷却した冷却水をLPGの気化に使用することも可能である。
【0030】
尚、ベーパーライザーは、間接式熱交換機と気化圧力調整器から構成されている。
【符号の説明】
【0031】
1 消化タンク
2 バイオガス精製装置
3 中圧ガスホルダー
4 圧力計
10 二酸化炭素除去器
11 流量計
12 酸素計
13 水電解式高純度水素酸素発生装置
14 流量計
15 流量制御装置
16 流量調整弁
20 酸素除去触媒塔
21 ガス冷却器
22 除湿器
23 付臭装置
24 流量計
25 流量調整弁
26 遮断弁
27 減圧弁
28 都市ガス導管
30 LPGタンク
31 流量計
32 流量制御装置
33 流量調整弁
40 酸素計
41 分析計
50 遮断弁
52 ガス燃焼装置
60 流量制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオガス中から少なくとも硫黄系不純物を分離し、高濃度なメタンガスを精製するバイオガス精製工程と、このバイオガス精製工程で得られた精製ガスを都市ガスが要求する所定成分の組成と濃度に調整する成分調整工程と、この成分調整工程で得られた精製ガスの熱量を都市ガスが要求する所定熱量に調整する熱量調整工程と、を備え、
前記成分調整工程は、
前記バイオガス精製工程で得られた精製ガスに水素を添加する水素添加工程と、
この水素添加工程で水素が添加された精製ガスを触媒が充填された酸素除去触媒塔へ供給し、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換する工程と、
この触媒反応により水に変換する工程で発生した反応熱を精製ガスから除去する反応熱除去工程と、
この反応熱除去工程で反応熱が除去された精製ガスから水分を除去する水分除去工程と、を有し、
前記熱量調整工程は、
前記反応熱除去工程で除去した反応熱により加熱された熱媒体で、前記水分除去工程で水分が除去された精製ガスより高カロリーな液化ガス(以下、「高カロリー液化ガス」と称す)を加温し、気化させる高カロリー液化ガス気化工程と、
前記水分除去工程で水分が除去された精製ガスに、前記高カロリー液化ガス気化工程で気化した高カロリー液化ガスを加えて、前記水分が除去された精製ガスの熱量を前記所定熱量となるように増加させる熱量増加工程と、を有したことを特徴とする都市ガス製造方法。
【請求項2】
前記水素は、水を電気分解して得たものであることを特徴とする請求項1に記載の都市ガス製造方法。
【請求項3】
バイオガス中から少なくとも硫黄系不純物を分離し、高濃度なメタンガスを精製するためのバイオガス精製装置と、
このバイオガス精製装置で得られた精製ガスを都市ガスが要求する所定成分の組成と濃度に調整するための成分調整手段と、
この成分調整手段で得られた精製ガスの熱量を都市ガスが要求する所定熱量に調整するための熱量調整手段と、を備え、
前記成分調整手段は、
前記バイオガス精製装置で得られた精製ガスに水素を添加するための水素供給手段と、
この水素供給手段により水素が添加された精製ガスを受入れ、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換するための触媒が充填された酸素除去触媒塔と、
この酸素除去触媒塔で触媒反応により発生した反応熱を精製ガスから除去するためのガス冷却器と、
このガス冷却器で反応熱が除去された精製ガスから水分を除去するための水分除去手段と、を有し、
前記熱量調整手段は、
前記ガス冷却器で除去した反応熱により加熱された熱媒体で、前記水分除去手段で水分が除去された精製ガスより高カロリーな液化ガス(以下、「高カロリー液化ガス」と称す)を加温し、気化させるための高カロリー液化ガス気化手段と、
前記水分除去手段で水分が除去された精製ガスに、前記高カロリー液化ガス気化手段で気化した高カロリー液化ガスを加えて、前記水分が除去された精製ガスの熱量を前記所定熱量となるように増加させるための
熱量増加手段と、を有したことを特徴とする都市ガス製造装置。
【請求項4】
前記水素供給手段は、水電解装置であることを特徴とする請求項3に記載の都市ガス製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−107921(P2013−107921A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251374(P2011−251374)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【特許番号】特許第4934230号(P4934230)
【特許公報発行日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)