説明

都市スラッジ、産業スラッジ、コンポストおよびタバコ廃棄物から得られる触媒作用性吸着媒、およびその製造方法

【課題】産業廃棄物由来吸着媒を、下水スラッジ、金属スラッジ、廃油スラッジおよびタバコ廃棄物をいくつかの組み合わせで熱分解させることによって得ること。
【解決手段】産業廃棄物由来吸着媒を、下水スラッジ、金属スラッジ、廃油スラッジおよびタバコ廃棄物をいくつかの組み合わせで熱分解させることによって得た。この物質を、水分の存在下室温で硫化水素を除去するための媒体として用いた。初期吸着媒、および破過試験後の消尽吸着媒を、窒素の吸着、熱分析、XRD、ICP、および表面pH測定を用いて特性評価した。タバコとスラッジを混ぜると強い相乗作用をもたらし、吸着媒の触媒特性を向上させる。熱分解の際に新規な鉱物相が、各スラッジ成分間の固相反応の結果として生成する。高温の熱分解は、炭素質相の活性化が増大され、無機相が化学的に安定化されるので、吸着媒に対して効果がある。低温で得られたサンプルは水に対して感受性があり、これは、その触媒中心を非活性化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々のタイプのスラッジを単独で、またはコンポスト用材料と組み合わせて熱分解することによって生成される触媒作用性吸着媒の生成に関する。スラッジとしては、都市スラッジ、産業スラッジ、廃油スラッジおよび金属系スラッジが挙げられる。コンポスト用材料としては、タバコ廃棄物を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2005年9月8日に出願した米国仮出願第60/715,788号;2006年3月14日に出願した同第60/782,593号;および2006年5月17日に出願した同第60/801,545号;の優先権を主張するものである。これらの出願の全体を参照により本明細書に組み込む。
【0003】
環境に関する懸念が深まっている結果、環境に優しい新規な技術、新規な材料、および廃棄物を減らしてその量をできる限り少なくする新規な方法が開発されてきた。現代社会で大量に生じた廃棄物の1つが都市の下水スラッジ(バイオソリッドと呼ばれることが多い)である。バイオソリッドは、都市下水の有機成分の好気性および嫌気性消化で発生する排バイオマスが砂や金属酸化物などの無機物質と一緒になった混合物である。他のスラッジとしては、造船工業、鋳物工業、あるいは製紙工業のような産業からの廃棄物が挙げられる。合衆国では約1000万乾燥トンの下水スラッジが生じていると推定される。さらには、スウェーデンのみで、欧州連合から生じる800〜1000万トン乾燥スラッジに対して220,000乾燥トンスラッジがもたらされている。
【0004】
都市の下水スラッジを処理するまたは利用するのには、焼却、埋め立て、道路舗装(骨材)、肥料への変換、建築ブロックへの圧縮、および炭素化を含めて、さまざま方法が用いられてきた。1976年以降、下水スラッジの炭素化およびその最終物質のさまざま用途についての特許がいくつか発行されている。塩化亜鉛や硫酸のような化学的活性化剤の存在下でのスラッジの炭素化は新規な吸着剤を造りだし、浄水の最終段階での有機物の除去や塩素化有機物の除去のような方法での用途が特許されている。脱水工程/乾燥工程の後の産業スラッジは、埋め立てとして用いられるか、または大部分は有害廃棄物として処理される。
【0005】
スラッジを炭素化して気相からまたは液相から汚染物質を除去することは、活性炭が典型的に選ばれているという事実に基づいている。これは、その表面積が大きいこと、およびポアの体積が大きいことによる。多くの場合、活性炭のこれらの特性は、ある種の分子、特に炭素表面との分散相互作用がかなり弱い小さい分子を留めておくのには十分強力なものではない。そのような場合、その特定の相互作用が生じるように炭素の表面を改質しなければならない。そのような相互作用としては、水素結合、錯化、酸/塩基反応またはレドックスプロセスが挙げられる。幸いにも、炭素の場合、改質表面をもたらすさまざま技術があり、比較的容易に達成される。例としては、強酸、オゾン、または空気などの各種の酸化剤による酸化、触媒作用性金属または還元性/酸化性化合物の含浸、塩素または窒素化合物等などのヘテロ原子源の存在下での熱処理などがある。
【0006】
上記した処理の結果とし、表面に新しい官能基/化学種が導入される。これらによって、遊離されるべき化学種とのその特定のおよび/または化学的な相互作用が生じる。遊離プロセスを効率的なものとするためには、この化学種の化学的状態および表面におけるその分散が重要な課題である。もう1つの重要な難題は、汚染物質の保持/蓄積にとっての重要な長所である炭素の多孔性を保全することである。つまり、表面改質は、表面積/ポアの最低限の低下が起こるような方法で行わなければならない。
【0007】
上記の要件を考慮しても、炭素表面の改質は、一部のケースでは、難題であること以外にも、特に貴金属または触媒金属が関わる場合、高い費用を伴うこともある。造船所や他の重金属工業から出てくるものなどの産業スラッジは、触媒作用性の遷移金属に富んでいる。これらの材料を熱分解すれば、廃棄物の体積が減らされることのみならず、環境に有害な廃棄物をリサイクルし、価値ある生成物に変換することもできる。これらの生成物は、高温の固相反応によるそのような金属の無機化によって物質の浸出が顕著に低減されているので、使用されたときは安全に廃棄することができる。
【0008】
下水スラッジを炭素化する方法はこれまでに詳細に研究されていて、文献に報告されている。処理の結果として得られる物質は、100〜500m2/gの表面積を有している。硫化水素、二酸化硫黄、塩基性もしくは酸性染料、フェノールまたは水銀の吸着媒としてのそれらの性能は、活性炭のそれと同等またはそれより優れている。多くの方法において、これら物質の優れた吸着能力は、その最終生成物中にさまざま形態で存在している金属の触媒作用に関係している。表面における位置とともにその化学的な形態が、汚染物質除去容量を支配している重要な因子であると報告された。一部のケースでは、廃棄物を混ぜ、その各成分間の相乗作用により、より効果的な吸着媒を得た。
【0009】
スラッジの熱分解によって得られる吸着媒は、複雑な擬混成物質とみなすことができる。にも関わらず、バイオソリッドを炭素化する方法は、これまでに詳細に研究されていて、文献に報告されている。都市下水スラッジ由来の肥料であるTerrene(登録商標)の単純な熱分解により、含硫黄ガスを除去するための特に優れた吸着媒を得ることができることが最近示された。その除去容量は、ヤシ殻系活性炭のそれの2倍である。しかしながら、これは、鉄、銅、亜鉛またはカルシウムなどの金属の無機酸化物の特定の組み合わせによるものとされた。硫化水素酸化または二酸化硫黄吸着の触媒としても非常に一般的に用いられている無機相または酸化物の組み合わせによる支配的な影響は、硫黄含有ガスの除去での純粋な無機相の性能を根拠に、ないものとされた。950℃で加熱した純粋な無機相の容量は、無視できるほどであった。このデータはまた、硫化水素の酸化は、すべてのミクロポア(サイズは主として約6Å)が反応生成物で満たされるまで、おそらく炭素質の沈着物内または炭素/酸化物の界面上で起こることも示した。この炭素質沈着物の形態は重要であり、その沈着物は吸着容量に影響を与え得る。
【0010】
表面に固定された酸化の生成物はそこに蓄積される。表1は、下水スラッジ由来物質の、硫黄含有ガスの吸着媒としての容量を示している。還元された硫黄を含有している有毒ガスの除去では、その容量は、活性炭のそれよりもはるかに大きい。これは、その炭素含量が少なく(約20%)、且つポア体積も炭素のそれよりもはるかに少ないという事実にも拘らず起こっている。
【0011】
【表1】

【0012】
ポア体積は、下水スラッジ由来物質の容量の制限因子であると思われるので、触媒的に活性な相の所望含量を維持しながら炭素質沈着物の含量およびポアの体積を増大させることが将来の研究の望ましい方向であると思われる。最近の研究により、硫化水素などの化合物の除去で活性なポア体積は、サイズが吸着分子と同じようなポアにある必要がないことが示された。触媒酸化が吸着の支配的な機構であるので、酸化の生成物が蓄積されるところであるポア(メソポアおよびマクロポア)がより大きいことは効果的であることが見出された。
【0013】
もう1つの重要な因子は、触媒相の化学組成、その分散、その表面における位置、炭素相との適合性、および両相の除去プロセス(吸着/触媒酸化/蓄積)への影響である。高価な脱硫触媒であるUS FilterのカーボンMidas(登録商標)の優れた容量は、その微多孔質活性炭内に分散しているカルシウム、マグネシウムの酸化物の存在に関係していることが見出された。この触媒上では、硫化水素は、アルカリ土類金属酸化物の塩基性中心で酸化されて、硫黄が生成する。この炭素は最大60重量%までの硫黄を保持することができるという事実は、MgOおよびCaOの反応性が限られていることに関係している。これらの表面では、そのpHが塩基性であること、および水分が存在していることにより、硫黄が生成し、そして炭素の相がごく近傍にあることから、この硫黄は高エネルギー吸着中心である小ポアへと移動する。このようにして触媒中心は更新され、吸着は、すべての小ポアが硫黄で満たされるまで働く。
【0014】
下水スラッジ系物質は、廃水および銅から水銀を除去するのにも効果的な吸着媒であることが見出された。これらの物質を用いて効率的に除去できる他の一般的な産業汚染物質は、塩基性および酸性の染料である。これらの被吸着物のケースでは、その高い容量は、表面の化学的特質(酸性および塩基性のサイト)、および有機染料の分子とサイズが同様の比較的大きなポアに関係している。
【0015】
高温では、有機物質は蒸発し、脱水素化が起こり、炭素が元の無機支持体の表面にカーボンナノチューブのフィラメントとして沈着し得る。これは、高度に分散された触媒的に活性な金属の存在によって起こると考えられる。このプロセスは化学蒸着(CVD)に似ているので、自己賦課型化学蒸着(self-imposed chemical vapor deposition:SICVD)と呼ばれている。ニッケルまたはコバルトを含有している触媒上でのカーボンナノチューブの成長のプロセスはよく知られており、文献に記載されている。このナノチューブおよびカーボンフィラメントは金属「シード」上で成長し、その有効サイズはシードのサイズによって決まる。CVDのプロセスでは、より多くの炭素相を導入すると多孔性を上昇させることができ、酸化生成物を蓄積するための空間がより多くもたらされ得るとともにより大きな量の新規な炭素実体の生成がもたらされ得る。図1は、下水スラッジ由来物質の表面上で成長させたカーボンナノチューブのSEM画像を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国仮出願第60/715,788号
【特許文献2】米国仮出願第60/782,593号
【特許文献3】米国仮出願第60/801,545号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
スラッジの炭素および窒素の含量は、吸着媒の生成およびその特性に影響を与える。都市下水スラッジは、他の廃棄物スラッジと一緒にして基材として用いるのに有望な材料であるが、他の炭素または窒素系廃棄物も用いることができる。触媒作用性金属の存在下での熱処理の結果としての新規な炭素実体の生成以外に、新規なスピネル様/鉱物様活性成分が生成し得る。最近、鉄およびカルシウムを含有している一部の下水スラッジに対して、触媒的に重要な実体は、ダイカルシウムフェライト(Ca2Fe2O5)であることが明らかにされた。
【課題を解決するための手段】
【0018】
定義
用語「吸着」とは、気体または液体環境からの分子の濃縮物が固体の表面に蓄積される現象を言う。
【0019】
用語「吸着媒」とは、所定の条件下で気体または蒸気を吸着することができる物質を言う。
【0020】
用語「熱分解」とは、不活性雰囲気中での有機物由来材料の熱処理(例えば、400℃以上の温度での)を言う。
【0021】
用語「化学活性化」とは、ある種の化学物質による有機前駆体の、熱分解の際の処理を言う。
【0022】
用語「活性炭」とは、有機前駆体(例えば、石炭、木材、ピート他)の高温での熱分解と、続いての各種の物理的または化学的作因を用いてのその活性化(例えば、約600℃〜1000℃の温度で)によって得られた炭素質物質を言う。
【0023】
用語「苛性剤含浸炭素」とは、炭素のpHおよび酸性ガスに対するその吸着容量を上昇させるためにKOHおよびNaOHを含浸させた活性炭を言う。
【0024】
用語「破過容量」とは、物質が流出空気中で所定濃度レベルで検出されるまでの、吸着剤表面に吸着された物質の量を言う。
【0025】
用語「酸性ガス」とは、酸に変換することができるガス、または酸として相互作用することができる(例えば電子受容体)ガスを言う。
【0026】
用語「比表面積」とは、さまざまな分子の吸着が起こり得る部分であると考えられている、吸着媒の表面積を言う。
【0027】
用語「ポア体積」とは、沸点にある窒素分子に利用可能であると計算される、吸着媒のポア体積を言う。
【0028】
用語「酸化」とは、電子の消失を伴う物質の化学的な状態における変化を言う。その化学種の電荷はより陽性になる。
【0029】
用語「滞留時間」とは、試薬分子が反応器を通過するのに要する平均時間を言う。
【0030】
用語「コンポスト材料」とは、コンポストにされる個々の材料を言う。
【0031】
用語「コンポスト」とは、分解した有機物質から大部分がなる混合物か、またはコンポスト材料をコンポストに変換する作用のいずれをも意味し得る。
【0032】
廃油スラッジ、廃金属スラッジ(いずれも造船所からのものであるが、スラッジの発生源は、鉄、亜鉛、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属が使われている任意の重工業施設からのものであり得る)を都市下水スラッジと種々の割合で混ぜた後、650℃および950℃の窒素雰囲気中で、2つの異なる時間(半時間と1時間)熱分解した。さらなるサンプルを、低い温度(例えば、約600℃、625℃、650℃、675℃、または700℃以下)の窒素雰囲気中、および高い温度(例えば、約900℃、925℃、950℃、または975℃、1,000℃、1,100℃以上)の窒素雰囲気中で熱分解した。本明細書で使用される用語「産業スラッジ」には、家庭廃水のスラッジではないあらゆるスラッジが含まれる。これには、原材料、中間生成物、最終生成物の製造または加工、あるいは非家庭廃水源からの汚染物質が含まれている他の活動からの廃水スラッジが含まれる。「都市」つまり「家庭」廃水スラッジは、一般住民を対象にしている処理場で発生し得、「10 State Standards(米国10州基準)」に適合していると思われる。
【0033】
コンポスト/コンポスト材料と都市/産業スラッジの組み合わせ、窒素雰囲気中での熱分解により、新規な吸着媒の生成をもたらし得る。この新規な吸着媒は、無機相(70〜95%および80〜98%)と、炭素質相(5〜30%および10〜30%)とからなり得る。この無機相は、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、クロムなどの高度に分散された触媒金属、ならびにカルシウムおよびマグネシウムの酸化物、アルミナ、シリカ他を含み得る。
【0034】
相乗作用の結果として、セラミック/鉱物様の相が生成する。この相は、高い温度にさらされると、窒素ガスと反応する。その比表面積は約10m2/g〜約200m2/gである。比表面積は、例えば、約10m2/g、20m2/g、30m2/g、40m2/g、50m2/g、60m2/g、70m2/g、80m2/g、90m2/g、100m2/g、110m2/g、120m2/g、130m2/g、140m2/g、150m2/g、160m2/g、170m2/g、180m2/g、190m2/g、200m2/g、またはこれ以上であり得る。比ポア体積は約0.002cm3/g〜約0.074m2/gである。比ポア体積は、例えば、約0.002cm3/g、0.005m2/g、0.015m2/g、0.025m2/g、0.035m2/g、0.045m2/g、0.055m2/g、0.065m2/g、0.074m2/g、またはこれ以上である。これの表面形状の重要な一態様は、約0.8cm3/gに届く、メソポアの体積がかなり大きいことである。すべての物質は、塩基性のpH、例えば、9超のpHを有している。これらは、最大約10、15、20、25、または30重量%の硫化水素を、主に元素の硫黄として吸着することができる。
【0035】
この発見された固相反応は、セラミック/鉱物様の結晶相を生成する。都市/産業スラッジを950℃で熱分解させると、ウルツ鉱[wurtzite](ZnS)、フェロアン[ferroan](Ca2(Mg、Fe)5(SiAl)8O22(OH)2)、輝銅鉱[chalcocite](Cu1.96S)、スピネル[spinel](MgAl2O4)、およびフェロキシハイト[feroxyhite](FeO(OH))のようなスピネル様化合物が生成し得ることを見出した。廃油系物質では金属鉄以外に、斑銅鉱[bornite](Cu5FeS4)、ヒボナイト[hibonite](CaAl12O19)、紅亜鉛鉱[zincite](ZnO)、アンケル石[ankerite](Ca(Fe、Mg)(CO3)2)が存在する。金属スラッジ系吸着媒では、アルミニウム、金属鉄、銅、亜鉛、クバンザクロ石[pyrope](Mg3Al2(Si04)3)、ペロホタイト[perrohotite](Fe7S8)、黄銅鉱[Chalocopyrite](CuFeS2)、トリオライト[Triolite](FeS)およびフェルシリサイト[Fersilicite](FeSi)が存在する。産業スラッジとコンポストまたはコンポスト材料を混ぜると相乗作用が生じ、触媒特性が向上し得る。これは、サファーリン[sapphirine](Mg3.5Al9Si1.5O20)、磁赤鉄鉱[maghemite](Fe203)、コーエナイト[cohenite](Fe3C)、ローソン石[lawsonite](CaAl2Si2O7(OH)2H2O)、菱亜鉛鉱[smithsonite](ZnCO3)、閃亜鉛鉱[sphalerite](ZnS)、および赤鉄鉱[hematite](Fe2O3)のような新規な実体の生成に関係付けされ得る。
【0036】
この新規な実体は、窒素ガスと反応させる熱分解の間に高い温度(200〜600℃)にさらされたとき生成され得る。これは、0〜3%の重量の増加を生じ得る。このような実体の一部は窒化物であり得る。この吸着媒の比表面積および全ポア体積は、それぞれ10〜210m2/gおよび0.15〜0.85cm3/gである。これの表面形状の重要な一態様は、0.8cm3/g(0.14〜0.77cm3/g)に届くメソポアのかなり大きい体積である。すべての物質は、7〜12の塩基性のpHを有している。これらは、最大30重量%までの硫化水素を主に元素の硫黄として吸着することができる。硫化水素にさらし、硫黄が沈着すると、大ポア中に沈着した硫黄同士間に新規なポア空間が形成される結果として、最大25%までのメソポアの体積増加が生じる。アルカリ土類金属および遷移金属以外の重要な成分は、鉄酸化物および鉄ヒドロキシ酸化物である(しかしこれらだけではない)。これらは、硫化水素の元素硫黄への酸化に寄与するからである。この開発された物質は、陽イオン性または陰イオン性の染料および重金属の優れた吸着媒(最大80mg/gまでの銅、および最大130mg/gまでの染料)でもある。熱分解の間に生成したスピネル様の相が、陽イオン交換反応、錯化反応および析出反応に寄与している。これらの反応の間、ほんの少量のカルシウムおよび亜鉛が、溶体に、陽イオン交換プロセスの結果として遊離される。
【0037】
本発明は、コンポストおよび/またはコンポスト材料と都市および/または産業廃棄物スラッジとの組み合わせを用いて吸着媒を生成させるものである。吸着媒を生成させるのに肥料と都市スラッジとを用いても、それらが、1つには、大量の炭素および窒素を含んでいるので、好成績が得られた。炭素および窒素に富んでいる他の廃棄物も、基材材料として用いるのに利用可能である。廃棄物の1つは、コンポストおよびコンポスト材料である。コンポスト材料は、2つの種類、すなわち炭素が高い「茶色」の種類と、窒素が高い「緑色」の種類とに分けることができる。
【0038】
茶色コンポスト材料は、落ち葉、廃草木、わらや干し草、松葉、小さい小枝や木片、ノコ屑やカンナ屑、寸断された新聞、卵の殻、トウモロコシの穂軸、パンやグレイン、木灰、古くなった植木鉢用土、食べ物で汚れたペーパータオルやナプキン、ドライフラワー、醸造の廃棄物、ホップおよび搾りカス、食べ物で汚れた厚紙(きれいならリサイクルするが、汚いならコンポストにする)、古くなった小麦粉、シリアル、スパイス、ビーンズ、堅果殻、肉、ならびに魚の切り屑であり得る。
【0039】
緑色コンポスト材料は、果物や野菜の屑、コーヒーかすおよびフィルター、ティーバッグ、生の葉、緑色の植物、剪定屑や生垣切り屑、芝生刈り込み屑、雑草、花束、海草、羽毛、馬の糞尿、ハムスターやウサギのような愛玩動物の糞尿や床敷き、コーンスターチまたは他の有機包装材、および不良品のジュースであり得る。
【0040】
さらには、70,000トン超のタバコ廃棄物が、毎年、シガレット生産の際に発生する。20年以上前、インドだけで、ほぼ100,000トンのタバコ廃棄物が発生し、そして毎年もっと多くが発生している。タバコ廃棄物は、今では、コンポスト材料や肥料として用いられている。タバコ廃棄物は、生育、収穫から最終の生産までの全シガレット製造工程にわたって出る。タバコの収穫前および収穫後の作業の間に発生する廃棄物の種類としては、わき芽、茎、中茎、廃葉っぱおよび葉くずが挙げられる。例えば、葉柄および/または葉が収穫されるときにも、また葉がその葉柄から分離されて乾燥されるときにも緑色の切り屑が発生する。乾燥の後、タバコの種類にもよるが、ある種のタバコは脱穀(葉の中茎を分けることによって)されて粒状の廃棄物を発生し、また葉柄もこの段階で除去することができる。乾燥されて熟成されたタバコから茎が取り除かれ、その葉および茎は切り刻まれてブレンドされる。この切り刻みおよびブレンドの段階の間に、タバコ粉末が生成され得る。切り刻みタバコがタバコロッドに成形されるとき、また最後に紙の中に包まれるときにもさらなる粉末が発生し得る。タバコ廃棄物の化学特性の一部を表2に掲載しておく。
【0041】
【表2】

【0042】
コンポストおよび/またはコンポスト材料の使用は、都市下水スラッジと産業スラッジと都市スラッジと古紙との組み合わせを用いた研究から決定された。古紙は、その高い炭素含量が理由で用いられる。古紙は細かく粉砕して、スラッジに加えた。コンポスト材料は古紙と同じように粉砕することができ、タバコ粉末は粒子状/粒状の形態にある。ノコ屑は、既に粒子状/粒状の形態にあるもう1つのコンポスト材料である。ノコ屑は、炭素を多く含む茶色コンポスト材料である。木炭/灰も、その炭素含量から、用いることができる。
【0043】
本発明では、コンポスト/コンポスト材料を、産業スラッジまたは都市スラッジと産業スラッジとの混合物と組み合わせることができる。コンポスト/コンポスト材料は、それが混ぜられるときに湿潤化してもよく、そうでなければ直接混ぜられるべき天然の水分を十分含んでいると思われる。スラッジに対するコンポストの割合は、25%〜75%であってよい。追加的に、硫化水素の解離に影響を及ぼすことを助けるために水酸化カルシウムを加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】先行技術の下水スラッジ由来吸着媒の表面にあるカーボンナノチューブのSEM画像である。
【図2】A:産業スラッジと都市スラッジの混合物から誘導された吸着媒のメソポアの計算された体積と実測された体積を図示するグラフである。B:産業スラッジと都市スラッジの混合物から誘導された吸着媒のミクロポアの計算された体積と実測された体積を図示するグラフである。
【図3】産業および都市スラッジ由来吸着媒中のメソポアの体積への、H2Sの分離容量の依存関係を図示するグラフである。
【図4】下水および産業スラッジ系吸着媒の計算されたH2S破過容量と実測されたH2S破過容量の比較を図示するグラフである。
【図5】選択された吸着媒の初期サンプルおよびH2S曝露サンプル(E)の窒素中DTG曲線を図示するグラフである。
【図6】選択された吸着媒の初期サンプルおよびH2S曝露サンプル(E)の窒素中DTG曲線を図示するグラフである。
【図7】A:650℃でのX線回折パターンを図示している。B:950℃でのX線回折パターンを図示している。
【図8】H2S吸着後のポアサイズ分布の変化を図示している。
【図9】初期サンプルおよび消尽サンプルの窒素中DTG曲線を図示している。
【図10】650℃で得られたサンプルのX線回折パターンを示している。
【図11】さまざまな条件で得られたWOSSサンプルの実測されたメソポア体積と計算されたメソポア体積の比較を図示している。
【図12】さまざまな条件で得られたサンプルの実測されたH2S破過容量と計算されたH2S破過容量の比較を図示している。
【図13】650℃で得られた吸着媒のH2S破過容量を図示している。
【図14】950℃で得られた吸着媒のH2S破過容量を図示している。
【図15】前吸着された水の量へのH2S破過容量の依存関係を図示している。
【図16】実測されたH2S破過容量と計算された(各成分の物理的な混合を仮定しての)H2S破過容量の比較を図示している。
【図17】タバコ由来サンプルのXRDパターンを図示している。
【図18】廃金属および廃油スラッジ由来吸着媒のXRDパターンを図示している。
【図19】混成タバコ/金属スラッジ系吸着媒のXRD回折パターンを図示している。
【図20】650℃で熱分解されたサンプルの窒素吸着等温線を図示している。
【図21】950℃で熱分解されたサンプルの窒素吸着等温線を図示している。
【図22】単一成分サンプルのポアサイズ分布を図示している。
【図23】650℃で熱分解されたサンプルのポアサイズ分布を図示している。
【図24】950℃で熱分解されたサンプルのポアサイズ分布を図示している。
【図25】実測されたメソポア体積と、各成分の物理的な混合を仮定して計算されたメソポア体積の比較を示している。
【図26】実測されたミクロポア体積と、各成分の物理的な混合を仮定して計算されたミクロポア体積の比較を示している。
【図27】(2つの異なる温度で熱分解されたサンプルのミクロポアおよびメソポア)ポア体積へのH2S破過容量の依存関係を図示している。
【図28】単一成分サンプルの窒素中DTG曲線を図示している。
【図29】650℃で熱分解されたサンプルの窒素中DTG曲線を図示している。
【図30】950℃で熱分解されたサンプルの窒素中DTG曲線を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の上記目的およびなおさらなる、特徴および利点は、本発明の特定の実施形態についての以下の詳細な説明を、特に添付の図面と一緒にして考察すると明白になるであろう。添付の図面では、いくつかの図面にある同じ参照符号は、同じものを表すのに用いられている。
【0046】
廃油スラッジおよび金属スラッジなどの産業スラッジは、熱分解を用いて新規な触媒作用性吸着媒を生成させるのに利用することができる。混ぜることの重要な結果は、上記した下水スラッジ系吸着媒の特性が向上することである。廃油スラッジのみが、30重量%の除去容量で脱硫するという並外れた能力を有する吸着媒をもたらすことができるが、下水スラッジを存在させるというのは、この豊富にある材料を利用する1つの経済的に実現可能な方法である。
【0047】
スラッジを混ぜて熱分解させると、単一の成分を熱分解したものを物理的に混合した場合に比較して、特性が向上するという結果が得られた。図2Aおよび図2Bは、廃油スラッジ(WO)、下水スラッジ(SS)および金属スラッジ(MS)を物理的に混合したものの、実測されたポア体積と計算されたポア体積の比較を示している。観察される大体の傾向として、スラッジを混ぜることでさらなるポア体積の成長がもたらされることを示している。このポア体積、特にメソポアの体積は、吸着容量を支配している因子の1つであることが明らかにされた。図3は、メソポア体積へのH2S除去容量の依存関係を示している。物質のpHおよび熱脱着の分析により、酸化生成物が元素の硫黄であることが示されたことから、メソポアのみが、H2S破過容量試験から明らかにされたような硫黄の量(最大30重量%まで)を蓄積することができる。
【0048】
多孔性以外に表面化学組成も、単一の成分に比べると、スラッジ混合物の熱分解の間に変化する。図4は、実測された容量と、個々の成分の性能に基づいて、物理的な混合を仮定して計算された容量との比較を示している。発見された100%に届く大きな向上は、組成が変化したこと、および無機相が表面に分布していることの結果である。検討したスラッジは、鉄、銅、ニッケル、亜鉛、カルシウム、クロムほか他の金属を相当な量で含んでいる。炭素相の存在下でのこれらのものの高温での反応は、上記した酸化反応で活性な、独特のスピネル/鉱物様成分をもたらし得る。
【0049】
図5は、高温熱分解によって得られたサンプルの質量増加を図示している。図5は、選択された吸着媒の初期サンプルおよびH2S曝露サンプル(E)の窒素中DTG曲線を示している。この現象は、低温で熱分解されたサンプルでは観察されなかった。理論によって縛られることを意図するものではないが、この増加は、窒化物生成の結果であると思われる。ある種のセラミック物質は、炭の存在下で窒素にさらされると窒化物を生成できることが過去において分かっている。このセラミックの生成は、触媒性能にとってはきわめて重要であり得る。
【0050】
最良の吸着媒は約650℃で得られるが、相乗作用は、鉱物様/セラミック相が生成される約950℃で最も支配的である。さらに、約600℃の窒素下では、サンプルの質量が増加することは、吸着媒のセラミック成分が、炭素の存在下では、窒化物を生成することを示している。図6は、選択された吸着媒の初期サンプルおよびH2S曝露サンプル(E)の窒素中DTG曲線を図示している。硫化水素および水に曝露した後は、質量の増加が顕著に低下したことから、このセラミックは、H2S吸着媒プロセスでは活性であるはずである。約950℃で処理された吸着媒の表面は、非常に低い水保持親和性(疎水性)を有する。温度も最終生成物の密度に対して影響があり、密度は、650℃で約0.25から、950℃で約0.50まで変化する。
【0051】
上述したように、独特の化合物が結晶相として存在しており、それらは、カルシウム、マグネシウム、アルミナ、銅、鉄、亜鉛のような金属と、酸素、硫黄、炭素およびシリカなどの非金属とからなっている。鉱化のレベルは、熱分解温度および時間の増加とともに高くなる。より高い温度では、金属が低酸化状態にある二成分金属-非金属結晶化合物の生成がもたらされる。図7Aおよび図7Bは、異なる温度で得られたサンプルのX線回折パターンの変化を示している。図7Aは650℃でのX線回折パターンを図示しており、図7Bは950℃でのものである。
【0052】
本発明の特長として、産業スラッジから得られる吸着剤は、改質されていない炭素よりも5倍高い硫化水素除去容量を有しているという事実が挙げられる。その容量は、下水処理場で硫化水素吸着媒として世界中で使用されている苛性剤含浸炭素のそれに匹敵する。さらには、除去プロセスの反応速度が非常に速くて、熱が放出されない。加えて、吸着の間に、H2Sが無機物質と反応し、元素の硫黄に酸化される。この生成物は、環境的に不活性である。重要なことには、使用済みの物質のpHは塩基性であるので、安全に廃棄することができる。ほんの少量のSO2が放出される。本発明のもう1つの特長は、吸着剤は廃棄物スラッジから得られるので、産業および都市廃棄物の相当な量をリサイクルすることができ、且つ下水処理場で再使用することができることである。この吸着剤は、ガス燃料の脱硫に(燃料電池用途用)、また熱水ベントにも使用することができる。この吸着剤には、廃水から水銀を除去するというもう1つの環境的な用途もある。さらには、約300℃に加熱すると元素の硫黄が脱離されることを用いた、使用済み物質の再生という可能性もある。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
表3に掲載されているように廃棄物スラッジの均質混合物を調製し、120℃で乾燥させた。次にこの乾燥サンプルを押しつぶして、950℃の水平式炉の中で30分間熱分解した。温度勾配は10度/分であった。不活性雰囲気は、10mL/分の窒素流によって供給した。物質の収率、アッシュ含量および密度を表3に掲載してある。
【0054】
【表3】

【0055】
硫化水素吸着剤としての物質の性能は、実験室で開発した破過試験器を用いて評価した。吸着媒サンプルをカラム(長さ60mm、直径9mm、ベッド体積6cm3)の中に充填し、湿潤空気(25℃で相対湿度80%)で、1時間、予加湿した。吸着された水の量は、予加湿後のサンプル重量の増加から推算した(吸着剤をカラムから取り出し、秤量した)。次いで0.3%(3,000ppm) のH2Sを含有する湿潤空気を吸着媒カラムに1.4L/分で通した。H2Sの破過は、コンピュータデータ収集プログラムがインターフェイスされているInterscan LD-17 H2S連続モニタリング装置を用いてモニタリングした。この試験は、350ppmの破過濃度で停止させた。物質1グラムあたりのH2Sグラム数での各吸着剤の吸着容量は、破過曲線より上にある面積を積分して、流入ガス中のH2S濃度、流量、破過時間、および吸着剤の質量から計算した。得られた結果は表4に集めてある。
【0056】
【表4】

【0057】
調製した物質のポアサイズおよび吸着容量の特性評価は、物理吸着測定法を用いて行った。N2平衡吸着等温線を容量分析法により測定した。この等温線から、ポアサイズ分布(PSD)を、密度汎函数理論(Density Functional Theory:DFT)を用いて評価した。表面積は、BET法を用いて計算し、ミクロポアの体積は、Dubinin-Radushkevichの式(DR)を用いて計算した。結果を表5に示す。記号「Δ」は、硫黄が沈着される前および後の比ポア体積の差を表している。元素硫黄の沈着、そしてその沈着物内での新規ポアの生成の結果、MSを除くすべてのサンプルについてメソポアの体積が増加していることが見出された。PSDの例を図8に示す。
【0058】
【表5】

【0059】
酸化生成物を同定するために、また表面に沈着した硫黄の量を秤量するために熱分析を行った。結果は以下の表6にある。図9に図示されている200〜450℃間にあるピークは、元素の硫黄の遊離を表している。
【0060】
【表6】

【0061】
X線蛍光分析を用いて、鉄、および消尽後の硫黄の含量を評価した。結果を表7に示す。全体の量は示されていないが、任意の単位でのピークインテンシティーはその特定の種の量に相関していた。
【0062】
【表7】

【0063】
[実施例2]
表8に掲載されているように、廃棄物スラッジの均質混合物を調製し、120℃で乾燥させた。次にこの乾燥サンプルを押しつぶして、650℃の水平式炉の中で30分間熱分解した。温度勾配は10度/分であった。不活性雰囲気は、10mL/分の窒素流によって供給した。物質の収率、アッシュ含量および密度を表8に掲載してある。
【0064】
【表8】

【0065】
硫化水素吸着剤としての物質の性能は、実験室で開発した破過試験器を用いて評価した。吸着媒サンプルをカラム(長さ60mm、直径9mm、ベッド体積6cm3)の中に充填し、湿潤空気(25℃で相対湿度80%)で、1時間、予加湿した。吸着された水の量は、予加湿後のサンプル重量の増加から推算した(吸着剤をカラムから取り出し、秤量した)。次いで0.3%(3,000ppm) のH2Sを含有する湿潤空気を吸着媒カラムに1.4L/分で通した。H2Sの破過は、コンピュータデータ収集プログラムがインターフェイスされているInterscan LD-17 H2S連続モニタリング装置を用いてモニタリングした。この試験は、350ppmの破過濃度で停止させた。物質1グラムあたりのH2Sグラム数での各吸着剤の吸着容量は、破過曲線より上にある面積を積分して、流入ガス中のH2S濃度、流量、破過時間、および吸着剤の質量から計算した。得られた結果は表9に集めてある。
【0066】
【表9】

【0067】
調製した物質のポアサイズおよび吸着容量の特性評価は、物理吸着測定法を用いて行った。N2平衡吸着等温線は容量分析法により測定することになる。この等温線から、ポアサイズ分布(PSD)を、密度汎函数理論(Density Functional Theory:DFT)を用いて評価した。表面積は、BET法を用いて計算し、ミクロポアの体積は、Dubinin-Radushkevichの式(DR)を用いて計算した。結果を表10に示す。記号「Δ」は、硫黄が沈着される前および後の比ポア体積の差を表している。
【0068】
【表10】

【0069】
酸化生成物を同定するために、また表面に沈着した硫黄の量を秤量するために熱分析を行った。結果を表11Aおよび表11Bに掲載してある。2つの異なる温度範囲に注目されたい。
【0070】
表11Aおよび表11B-H2S破過容量試験から得られたさまざまな温度範囲での重量消失[%]および吸着された硫黄の量[%]。H2S破過試験で吸着された量に対して重量消失は補正されている(破過容量);(LT=低温、650℃;E=H2Sに曝露後)。
【0071】
【表11】

【0072】
【表12】

【0073】
[実施例3]
表12に掲載されているように、廃棄物スラッジの均質混合物を調製し、120℃で乾燥させた。次にこの乾燥サンプルを押しつぶして、950℃の水平式炉の中で60分間熱分解した。温度勾配は10度/分であった。不活性雰囲気は、10mL/分の窒素流によって供給した。物質の収率および密度を表12に掲載してある。
【0074】
【表13】

【0075】
硫化水素吸着剤としての物質の性能は、実験室で開発した破過試験器を用いて評価した。吸着媒サンプルをカラム(長さ60mm、直径9mm、ベッド体積6cm3)の中に充填し、湿潤空気(25℃で相対湿度80%)で、1時間、予加湿した。吸着された水の量は、予加湿後のサンプル重量の増加から推算した(吸着剤をカラムから取り出し、秤量した)。次いで0.3%(3,000ppm) のH2Sを含有する湿潤空気を吸着媒カラムに1.4L/分で通した。H2Sの破過は、コンピュータデータ収集プログラムがインターフェイスされているInterscan LD-17 H2S連続モニタリング装置を用いてモニタリングした。この試験は、350ppmの破過濃度で停止させた。物質1グラムあたりのH2Sグラム数での各吸着剤の吸着容量は、破過曲線より上にある面積を積分して、流入ガス中のH2S濃度、流量、破過時間、および吸着剤の質量から計算した。得られた結果は表13に集めてある。
【0076】
【表14】

【0077】
[実施例4]
標準的な粉末回折法を用いて、X線回折の測定を、WO、SS、MS、WOSSおよびWOSSMSの吸着媒サンプルに対して行った。吸着媒は、小さなメノウ乳鉢中でメタノールを用いて粉砕した。吸着媒を手によって粉砕すると、5〜10μmの粒子サイズが保証され、これは、回折ピークの線が広くなることを防ぐ。混合物は、Philips標本ホルダーのゼロバックグラウンド石英窓にスミア法で取り付け、空気乾燥させた。サンプルは、Phillips XRG 300 X-ray回折計で発生させたCu Kαradiationにより分析した。機器のふらつきを調べるために、また2θピークの正確な位置を得るために、石英製標準スライドを試した。
【0078】
650℃で加熱された廃油系スラッジサンプル(WO650)では、金属銅のみが独立した結晶相として検出された。図10を参照されたい。SS650のケースでは、石英(SiO2)、クリストバル石(SiO2)、トラスコット石(Ca14Si24)O58(OH)8 2 H20)、および金属鉄が存在する。2つの成分を混ぜて650℃で加熱した後は、石英以外に、クリストバル石ならびに金属の鉄および銅、灰長石(CaAl2Si2O8) およびダイアスポア(AlO(OH))が検出されている。
【0079】
図10にある回折パターンを比較すると、物質の化学組成における相乗効果をはっきりと示している。その源が、シリカ(下水スラッジから来ている)ならびに廃油スラッジからの鉄および亜鉛が加えられたことにある、新規な成分が生成した。この結果は、熱分解の温度を上げて熱分解の時間を延ばしていくと新規な相が生成することを示したものである。図10は、650℃で半時間熱分解した後の化学組成の変化を示しており、図7Aおよび7Bは、950℃で熱分解したサンプルを比較している。
【0080】
さまざまな条件で熱分解したサンプルに対して確認された結晶相の例を表14および15に示す。一番上の段は、サンプルの組成、それを熱分解した温度、および熱分解の時間を表している。例えば、SS650-0.5は、650℃で30分間熱分解された下水スラッジである。
【0081】
【表15】

【0082】
【表16】

【0083】
このように、950℃で得られた下水スラッジ由来物質には、ウルツ鉱(ZnS)、第一鉄(Ca2(Mg,Fe)5(SiAl)8O22(OH)2)、輝銅鉱(Cu1.96S)、スピネル(MgAl2O4)、およびフェロキシハイト(FeO(OH)) のようなスピネル様化合物が確認された。廃油系物質では金属鉄以外に、斑銅鉱(Cu5FeS4)、ヒボナイト(CaAl12O19)、紅亜鉛鉱(ZnO)、アンケル石(Ca(Fe,Mg)(CO3)2) が存在している。金属スラッジ系吸着媒では、アルミニウム、金属鉄、銅、亜鉛、クバンザクロ石(Mg3Al2(SiO4)3)、ペロホタイト(Fe7S8)、黄銅鉱(CuFeS2)、トリオライト(FeS)およびフェルシリサイト(FeSi) が存在している。スラッジ同士を混ぜると触媒特性を向上させる相乗作用が生じる。そしてこれは、サファーリン(Mg3.5Al9Si1.5O20)、磁赤鉄鉱(Fe2O3)、コーエナイト(Fe3C)、ローソン石(CaAl2Si2O7(OH)2H2O)、菱亜鉛鉱(ZnCO3)、閃亜鉛鉱(ZnS)、および赤鉄鉱(Fe203)のような新規な実体の生成に関係している。
【0084】
650℃で得られた物質は、950℃で得られたものとは大きく異なる。後者では、より多くの複成分の結晶相(金属-非金属)が存在し、金属はより低い酸化状態にある。650℃で熱分解されたサンプルは、カルシウム、マグネシウムおよび鉄の陽イオンを有する、より多くのアルミケイ酸塩を含んでいる。
【0085】
[実施例5]
650℃、950℃で0.5時間または1時間の条件で得られた、H2S除去媒体としての吸着媒の性能を比較した。結果を表16〜18に示す。
【0086】
【表17】

【0087】
【表18】

【0088】
【表19】

【0089】
この結果は、廃油スラッジと下水スラッジの混合物から価値ある脱硫化触媒を得るという可能性を示している。その表面には最大30重量%までの硫化水素を保持することができる。多孔性、選択性、あるいは触媒活性などの表面特性は、熱分解条件を変えることで改質することができる。触媒活性および硫化水素除去容量は、熱分解の際の固相反応によって形成される新規な界面化学組成に直接関係している。この化学組成は、前駆体混合物の組成を変えることによってある程度制御することもできる。スラッジ成分間の相乗作用の結果、新規な化学組成および多孔性が形成され、これが本物質の物理化学的特性およびその性能のいずれをも向上させる。図11は、メソポアの計算された(個々の成分の組成および収率に基づいて)および実測された体積の比較を示しており、図12は、計算された、および実測されたH2S破過容量を比較している。
【0090】
[実施例6]
アシッドレッドおよび塩基性フクシンの吸着についての平衡に関する検討を、293Kにあるシリーズになった100mLエルレンマイヤーフラスコ中で行った。各フラスコを、濃度が10〜1000mg/Lの染料(dye)溶液10mLで満たした。平衡化の後、サンプルを濾過し、その染料濃度を分析し、平衡吸着容量を計算した。平衡データを、いわゆるラングミュア-フロイントリッヒ単一溶質等温線にフィッティングした。結果を表19に示す。変数qmは吸着媒単位グラムあたりの吸着容量であり、Kはラングミュア型の平衡定数であり、そして指数項nはサイトエネルギーの異質性パラメータである。
【0091】
【表20】

【0092】
吸着容量は、市販の活性炭のそれよりもはるかに高い。これは、メソポアの高体積、およびイオン交換反応ならびに析出反応に関与し得る鉱物様構造の存在によるものと考えられる。
【0093】
[実施例7]
サンプル多孔性に対する水への曝露の影響を調べるために、本物質を水に分散させ、室温にて24時間震盪した。表面部分を乾燥させた後、ポア体積および平均ポアサイズを測定した。結果はメソポア体積の増加を示したが、これは、無機酸化物/塩と水が反応した結果によるものである。結果を表20に示してある。Δは平均ポアサイズである。
【0094】
【表21】

【0095】
[実施例8]
銅の吸着についての平衡の検討を、20℃にあるシリーズになった100mLエルレンマイヤーフラスコ中で行った。各フラスコを、濃度が10〜1000mg/Lの塩化銅溶液10mLで満たした。平衡化の後、サンプルを濾過し、その銅含量を分析し、平衡吸着容量を計算した。平衡データを、いわゆるラングミュア-フロイントリッヒ単一溶質等温線にフィッティングした。結果を表21に示す。変数qmは吸着媒単位グラムあたりの吸着容量であり、Kはラングミュア型の平衡定数であり、そして指数項nはサイトエネルギーの異質性パラメータである。吸着容量、特に650℃で得られたサンプルのものは、活性炭のものよりもはるかに高かった。
【0096】
【表22】

【0097】
[実施例9]
各単一成分サンプル中のFe、Ca、Cu、Zn、およびMgの含量を測定し、そして混ぜ合わせたサンプルの組成に基づいて、これら元素の含量数値を求めた。結果を表22に示す。
【0098】
【表23】

【0099】
[実施例10]
物質
2種の産業スラッジ、すなわちNewport News Shipyardから得た廃油スラッジ(WO)および金属スラッジ(M)を、乾燥タバココンポストと混ぜ、均質化し、120℃で48時間乾燥させ、次いで水平式炉の中で窒素中650℃および950℃で炭素化した。加熱速度は10度/分で、保持時間は1時間であった。各湿潤産業スラッジ(それらには75%の水が含まれている)の重量を調整して、産業スラッジ成分が乾燥質量を基準にして10%および50%になるようにした。得られた吸着媒の名前、それらの収率、アッシュ含量および嵩密度ならびに組成を表23に集めてある。タバコ廃棄物は、TCと記載されている。
【0100】
廃油スラッジは、CaCl2、Na3PO4、NaOHおよび明礬で処理した。金属スラッジの処理履歴としては、pH調整のための硫酸または水酸化ナトリウム、凝結のためのAl2SO4、陰イオン性ならびに陽イオン性のポリマー、クロム還元のための亜硫酸水素ナトリウム、石灰、およびCaCl2の添加が挙げられる。したがって、アルカリまたはアルカリ土類元素含有化合物および鉄以外に、廃油スラッジは、0.4%のCu、2%のZn、ならびに200〜1000ppmのクロム、鉛およびニッケルも含んでいる。金属スラッジには、1%未満のカドミウム、クロム、銅、鉛、マンガン、セレン、バナジウムおよび亜鉛がそれぞれ存在している。廃油スラッジおよび金属スラッジの双方における揮発性化合物の含量は、その乾燥質量の40%に届き、受け入れ時の材料中の水含量は、約75%であった。
【0101】
【表24】

【0102】
H2S吸着容量の評価
上述したように、特注設計の動的試験を用いて、ガス流からのH2S吸着に対する吸着媒性能を評価した。吸着媒サンプルを粉砕し(1〜2mm粒子サイズ)、ガラス製カラム(長さ370mm、内径9mm、ベッド体積6cm3)に充填して、湿潤空気(相対湿度25℃で80%)で1時間予加湿した。吸着された水の量は、サンプル重量の増加から推算した。0.3%(3,000ppm) のH2Sを含有する湿潤空気(相対湿度25℃で80%)を吸着媒のカラムに0.5L/分で通した。流量は、Cole Parmerの流量計を用いて制御した。H2Sの破過は、MultiRaeの光イオン化センサーを用いてモニタリングした。試験は、破過濃度100ppmで停止した。吸着媒1gあたりの硫化水素mgでの各吸着媒の吸着容量は、破過曲線より上にある面積を積分して、流入ガス中のH2S濃度、流量、破過時間、および吸着剤の質量から計算した。試験は各サンプルに対して少なくとも2回繰り返した。H2S以外に流出ガス中のSO2の含量もMultiRaeの光イオン化センサーを用いてモニタリングした。H2Sを吸着した後の消尽吸着媒は、その名前に追加の文字Eを加えることで示されている。
【0103】
吸着媒ポア構造の特性評価
得られた物質に対して、ASAP 2010(Micromeritics社) を用いて、沸点にある窒素の吸着を行った。実験の前に、サンプルは、120℃で、一定真空(10〜4トール)に気体抜きをした。等温線からは、表面積(BET法)、全ポア体積(Vt)を、(相対圧力が0.99に等しいところにおける最後の等温線ポイントからは)、ミクロポアの体積(Vmic(DR))、メソポア体積Vmes、全ポア体積(Vt)を、ポアサイズ分布と並んで計算した(DFT)。
【0104】
pH
炭素質サンプル懸濁液のpHは、表面の酸性および塩基性についての情報を与える。乾燥炭素質粉末サンプル0.4gを20mLの蒸留水に加え、この懸濁液を一晩攪拌して、平衡にもっていった。その後、懸濁液のpHを測定した。
【0105】
熱分析
TA Instrument Thermal Analyzerを用いて熱分析を行った。機器の設定は、10℃/分の加熱速度、および100mL/分の流量による窒素雰囲気であった。各測定では、約25mgの粉砕吸着媒サンプルを用いた。結果の解析には、一次微分熱重量測定曲線(DTG曲線)を用いる。アッシュ含量は、800℃でサンプルを空気中で加熱した後に残っている残渣から測定した。
【0106】
元素分析
吸着媒中の金属含量は、LSL labs, Syracuse, NYにあるICPを用いて測定した。
【0107】
XRD
X線回折測定は、標準的な粉末回折法を用いて行った。吸着媒は、小さなメノウ乳鉢中でメタノールを用いて粉砕した。吸着媒を手によって粉砕すると、5〜10μmの粒子サイズが保証され、これは、回折ピークの線が広くなることを防ぐ。混合物は、Philips標本ホルダーのゼロバックグラウンド石英窓にスミア法で取り付け、空気乾燥させた。サンプルは、Phillips XRG 300 X-ray回折計で発生させたCu Kαradiationにより分析した。機器のふらつきを調べるために、また2θピークの正確な位置を得るために、石英製標準スライドを試した。
【0108】
H2S破過曲線を図13および14に示す。破過曲線における急激な上昇から分かるように、タバコ由来物質はすべて拡散域が短く、流出ガス中にH2Sが検出されたほぼ直後に、吸着媒は機能するのを停止し、攻撃ガスが化学的に乱されずにベッドを通過するのを許す。SO2濃度は検出されなかったので、これは、H2Sはすべて硫黄に変換されたことを意味する。金属および油スラッジ由来の物質のケースでは、最大数ppmまでの少ない二酸化硫黄濃度が、流出ガス中に硫化水素が現れるのと同時に測定された。50%のタバコ廃棄物と50%の廃油とを混ぜた後でも、その曲線の勾配形状が、廃油由来吸着媒に対して得られたものに似ていないことから、タバコに特有の硫化水素保持の速度論が、なお支配的であった。
【0109】
H2S破過容量の測定結果を表24にまとめてある。表には、吸着媒1グラムあたりの、およびベッドの単位体積あたりの質量で表された容量以外に、予加湿の間に吸着された水の量、および吸着過程の前および後の表面pHも記載されている。
【0110】
表24から分かるように、最も高い容量は、950℃で熱分解されたタバコ廃油スラッジ組成に対して認められる。この性能には油スラッジの含量がより高い方が効果があるが、たったの10%の廃油スラッジでも、他の物を混ぜ合わせていないタバコ廃棄物系の物質に比較して、性能を約100%上げる。CTC物質に対しては、高温の熱分解も、容量を大きく向上させる。廃油スラッジ由来の物質は低い温度で最良の容量をもつと報告されたことから、この結果は、この性能に対するタバコ廃棄物の支配的な影響を示唆している。実際、950℃で得られたタバコおよび廃油スラッジ系物質のそれぞれに対して得られた容量を比較すると、明らかに相乗効果を示している。すなわち、混合物に対して得られた容量は、その各成分に対して得られたいずれのものよりもはるかに高かった。
【0111】
【表25】

【0112】
表24から分かるように、最も高い容量は、950℃で熱分解されたタバコ廃油スラッジの混合物に対して認められる。この性能には油スラッジの含量がより高い方が効果があるが、たったの10%の廃油でも、他の物を混ぜ合わせていないタバコ廃棄物系の物質に比較して、性能を約100%上げる。CTC物質に対しては、高温の熱分解も、容量を大きく向上させる。廃油スラッジ由来の物質は低い温度で最良の容量をもつと報告されたことから、これらの結果は、この性能に対するタバコ廃棄物の支配的な影響を示唆している。実際、950℃で得られたタバコおよび廃油スラッジ系の物質のそれぞれに対して得られた容量を比較すると、明らかに相乗効果を示している。すなわち、混合物に対して得られた容量は、その各成分に対して得られたいずれのものよりもはるかに高かった。
【0113】
廃油スラッジ成分の含量が高い廃油スラッジ/タバコ混合物の650℃での熱分解では、容量に対して悪い影響がある。このサンプルの表面には高含量の水が吸着されたが、その容量はごくわずかである。650℃で熱分解された廃油スラッジから得られた物質は容量が非常に高かった(30重量%に届く)ことから、タバコ成分は、低温度の処理が適用されるとその容量を小さくする。それに反して、金属スラッジを用い、混合物を低温度で熱分解させると、その容量は、他の物を混ぜ合わせていないタバコまたは他の物を混ぜ合わせていない金属のスラッジに比較して向上する。これらの2つの混合物を高温で熱分解させると、低スラッジ含量に対して容量を向上させることは、混成吸着媒上での硫化水素除去に対するタバコ相の重要性をここでも示している。
【0114】
それぞれの熱分解温度内でのサンプル挙動の変動を考慮して、前吸着された水の量とH2S破過容量との間における関係を分析した。図15から分かるように、低温度で熱分解されたサンプルにとっては、H2S破過容量に対して悪い影響がある。これは、表面の鉱化度および反応性が低いことに関係していると思われる。水への曝露は、金属酸化物とのその反応および水酸化物の生成を引き起こすものと考えられ、これは、前に観察されたことである。小さいポアが存在する場合は、この水酸化物は、H2Sの進入を阻み、その結果H2Sの吸着および硫黄の蓄積に利用可能な空間を小さくし得る。この問題は、多孔性を考察する、以下にあらためて取り上げる。
【0115】
950℃で熱分解されたサンプルのケースでは、水が明らかに容量を上げている。これは、表面への水の物理的な保持および水膜の形成と関係していると考えられ、そしてこの水膜には塩基性pHが存在している。これは、HS-イオンが高濃度で存在することを可能にしている、つまり元素の硫黄へそれが酸化されることを可能にしている。
【0116】
すべてのサンプルは塩基性のpHであり、これは、硫化水素の除去に役立っている。最も低いpHは、CTCWO-2Aのサンプルに対して認められ、このサンプルのH2S除去容量も非常に低い。このpHは、その成分のpHよりもはるかに低い。この理由は、炭素質相が酸化されたことにあるか、または混成成分間の相乗効果の結果として生成された独特の化学組成にあると考えられる。
【0117】
H2Sの破過容量に対する相乗効果を調べるために、実測された値を、各成分の物理的な混合を仮定して、且つその収率も考慮して計算された値と比較した。結果を図16に示す。金属スラッジのケースでは、混合の結果としてほんの少しの容量の増加が観察されるが、廃油スラッジ/タバコ混成材では、大きな相乗効果が認められ、CTCWO-2Bの容量は4倍に増加している。
【0118】
この相乗効果は、各材料が混ぜられ、そして高温に曝露されたときに生成される新規な触媒相か、酸化生成物の物理吸着と蓄積を増大させる新規ポアの生成か、触媒相分散の向上か、または、よりありそうなのは、これら要因すべての組み合わせの結果であると考えられる。
【0119】
X線回折を用いることによって、吸着媒の結晶度の変化、および固相反応の結果としての新規な相の生成のいずれをも見ることができる。図17には、650℃および950℃で得られたCTC吸着媒のXRDパターンの比較が示されている。アッシュ含量の分析(表23)から分かるように、すべての吸着媒は、タバコ廃棄物のみから誘導されたものでさえ、その大部分が無機相である。CTCAのケースでは、石英、およびフェロシライトのマグネシア((Fe,Mg)SiO3)のみが確認されている。950℃での加熱は、バイヤライト(Al(OH)3)、配向灰長石(CaAl2Si2O8)、鉄直閃石((Mg、Fe)7Si8O22(OH)2)、およびバリゲライト(Fe2P) と確認されたさらなる結晶相の生成をもたらす。バリゲライトのようないくつかの鉱物が下水スラッジ由来の物質でも確認されたが、ここではH2S吸着の向上が認められた。これらの鉱物中にあるマグネシウム、カルシウムおよび鉄は、硫化水素の硫黄への触媒酸化に寄与し得る。CWOBのケースでは、金属鉄、斑銅鉱(Cu5FeS4)、ヒボナイト(CaAl12O19)、紅亜鉛鉱(ZnO) およびアンケル石(Ca(Fe Mg)(CO3)2) が検出されている(図18)。金属スラッジを950℃まで加熱すると数多くの結晶相の生成(マルチピークパターン)をもたらしたが、これらには磁硫鉄鉱(Fe1-xS)、トロイライト(FeS)、クバンザクロ石(Mg3Al2(SiO4)3)、ならびに金属銅、亜鉛および鉄が存在している可能性が高い。
【0120】
マルチピークパターンは、2つの異なる温度で熱分解された、さまざまな組成のタバコと金属スラッジの混合物でも観察される。図17、図18および図19を比較すると、新規な相が検出されていることを明らかに示している。CTCM-1Aについてのこれらの新規な相の例は、スピネル(MgAl2O4)、マーガライト(CaAl2(Si2Al2)O10(OH)2)、くじゃく石(Cu2CO3(OH)2、方解石(CaCO3)、菫青石(Mg2Al4Si5O18)、ピジオン輝石(Fe,Mg,Ca)SiO3)、鋼玉石(Al203)、黒銅鉱(CuO)、マグネシオフェライト(MgFe2O4)、モアッサナイト(SiC) および金属鉄である。950℃で熱分解させることによって、金属スラッジをより多く含む混合物由来の相は、化学組成がさらにもっと複雑になるという結果になり、カルシウム鉄とマグネシウムケイ酸塩とアルミノケイ酸塩とが混合された構造が支配的となる。フェロシライト、灰長石のように、これらのうちのいくつかは、CTC-A中に存在していた。例は、フォステライト(Mg2SiO4)、ハント石(Mg3Ca(CO3)4)、霰石(CaCO3)、珪灰石(CaSiO3)、白雲石(CaMg(CO3)2、コーエナイト(Fe3C)、フェルシリサイト(FeSi)、銅藍(CuS)、斑銅鉱(Cu5FeS4)、グリュネル閃石(Fe7Si8O22(OH)2)、ハージストン石(Ca2ZnSi2O7) またはアカーマナイト(Ca2MgSi2O7) である。650℃で熱分解されたサンプルに比較すると、このケースでは、より多くの炭酸塩が存在しており(おそらく炭素のガス化の結果)、結晶相にはより少ないアルミニウムが含まれており、そしてより多くの二元素化合物が現れている。
【0121】
CTCWO-2Bでは非常に複雑且つ異なる形態の親化合物構造が得られた(図19)。このケースでは、相当な量の石英以外に、50を超える新規な化合物が検出された。それらは、大部分が、マグネシウム、カルシウム、鉄、ナトリウム、銅および鉛を含むアルミノケイ酸塩である。例としては、灰長石のソディアン((Ca,Na)(Al,Si)2Si2O8)、苦土橄欖石(Mg2SiO4)、ソーダ長石(CaAl2Si2O8)、リヒター閃石(KNaCaMg5Si8O22(OH)2)、レンハーハナイト(Ca3(Si3O8(OH)2)、ダーライト(Ca9.35Na1.07(PO4)5.46CO3)、ロックブリッジ石(Fe5(PO4)3(OH)5) が挙げられる。
【0122】
検討した物質の表面での硫化水素の酸化過程では表面化学組成は決定的な役割を演じ得るが、その影響については、多孔質構造の説明と分離しては考察できるものではない。図20および図21に窒素の吸着等温線を集めてある。それらの形状および窒素取り込み量は、ポアのサイズおよび体積に差があることを示している。タバコ由来吸着媒はいずれも非常に微多孔質であるが、廃油スラッジ、金属スラッジ成分の添加は、メソ多孔性の増加を引き起こす。窒素の吸着等温線から計算した構造パラメータを表25に集めてある。廃油スラッジか、または金属スラッジの添加は、別々に熱分解された各成分の表面積のいずれもがはるかにより小さいという事実にも関わらず、950℃で得られたサンプルの表面積を増大する。これは、その有益な相乗効果を示している。この多孔性の成長は、スラッジ中に存在しているアルカリ土類金属による炭素質相のガス化によって引き起こされ得、そしてこれは自己活性化とみなすことができる。より多くの廃油スラッジを加えると、表面積、ミクロポアの体積、およびメソポアの体積を大きくする。後者は、CWOB吸着媒にははるかにより高い量で存在しているが、この新規なミクロポア体積は、熱分解の際の活性化の結果である。それに対して、金属スラッジの添加は、ほんの少量でさえ、タバコ/金属スラッジ混合物では最も効果があるように思われる。これらの物質は、新規に形成されたメソポア体積を有しており、これは、タバコまたは金属スラッジのみをベースとする物質のいずれにも存在していない。ここではガス化が重要であると思われる。廃油スラッジ中よりもはるかにより多くあるアルカリ土類金属(表26)により、炭素質沈着物中により大きなポアの生成がもたらされる。最も小さい表面積およびポア体積が、650℃で熱分解された、組成が50/50比の金属スラッジ/タバコ混合物に対して得られていることは、興味あるところである。これは、このサンプルの硫化水素除去の容量が低いことと一致している。いずれのタバコ由来サンプルもほとんど同じ構造パラメータを有しているので、硫化水素吸着媒としての性能の差は、上述した表面化学組成の差によるものに違いないと考える。
【0123】
【表26】

【0124】
H2S除去の後、ミクロポアの表面積および体積は大きく減っている。CTC-BE、CTCWO-1AEおよびCTCM-2BEを除く大部分のサンプルについては、メソポアの体積は増えている。この現象は前に観察されており、容量が高かった場合は大ポア中の硫黄沈着物内での新規なポアの生成か、または/および予加湿の際の水への曝露の結果としてのその表面での水酸化物の生成によるものとされた。CTCM-2BEのケースではH2Sの量が比較的高くてほんの少量の水が吸着されたが、このサンプルの表面積が小さいことを考慮すると、かなり大きい、ほとんど100%のメソポア体積の増加は、この硫黄の沈着によるものとすることができる。この物質の大ポア中の表面は、強烈なガス化がその表面での触媒の高分散に役立っているので、活性であるに違いないと考える。CTCWO-1AEについては、この増加は、その表面が活性であり、大量の水が吸着されていることから、水酸化物の生成によるもの、およびさらに硫黄の沈着にもよるものとすることができる。これらの水酸化物は、より多くのスラッジ由来の相が存在し、サンプルが雰囲気からの水分に曝露される場合は、炭素沈着物中の多孔性を完全に封鎖することができる。H2S吸着の過程では完全に不活性であったCTCWO-2Aのケースでは、前に容量がかなり大きいと認められ、それが、メソポアの体積が大きいこと(これは、そのサイズが大きいことから、水酸化物によって封鎖されることはない)によるものであるとされた廃油スラッジのみをベースとするサンプルとは相違して、これが起こっているものと考えられる。表25から分かるように、Dubinin-Astakhov法を用いて計算された平均ポアサイズは、特性吸着エネルギーの値に相関しており、この値は、CTC-A、CTCWO-1A、およびCTCM-1Aで最も高かった。これらの物質は低温で得られたものであるので、それらは、炭または「低活性化」炭素とみなすことができる。
【0125】
【表27】

【0126】
本発明サンプルの多孔性の差についての詳細を、図22、図23AとB、および図24AとBにポアサイズ分布として示す。分布に関してはすべてのサンプルに対して2つの区域が認められる。1つはミクロポアからなり、これは、そのサイズが、CTCおよびCTWOシリーズのサンプルの方が、CTCMのよりもはるかにより不均質である。これに対して、メソポアの不均質性は、後者のサンプル群の方がはるかにより大きい。H2Sの吸着の後は最も小さいポアはもはや見られないが、これは、そこにか、またはその入り口のところに硫黄が沈着されていることを示しており、そして特に50〜200Åのサイズ範囲を有する新規なポアが現れている。同じケースで、これは、マクロポアの犠牲で起こる。これは、硫化水素の酸化過程に対しての、触媒的に活性な表面を有する大きな多孔性の重要性を示している。もし物理吸着のみが支配的であるとすると、これらのポアはなんら役割を演じないであろうし、またベッドの単位体積を基準にした物質の性能に対して負の影響があるであろう。つまり、この物質群のケースでは、非常に軽い吸着媒を用いることができ、これは、除去プロセスのコスト効果を向上させ得る。
【0127】
本発明物質中での多孔性成長の相乗効果を図25および図26に示す。ここでは、ミクロポアおよびメソポアの実測された体積が、各成分の物理的な混合を仮定して、且つその材料の収率も考慮して計算された値と比較されている。上記で考察したように、最終生成物活性化に対する各スラッジ成分の相乗効果が明らかに認められ、ミクロポア体積に対しては廃油スラッジが最もはっきりした効果があり、メソポア体積に対しては金属スラッジがある。
【0128】
H2S吸着に対する多孔性の役割を調べるために、ポア体積への容量の依存関係を分析した。結果を図27に示す。見て分かるように、ミクロポアの体積に対しては見事な関係が認められる。それらは、その起源が、タバコ由来の炭素相にあるものと考える。つまりH2S吸着過程のこの成分は、すべてのタバコ含有サンプルに対して同じような作用を有しているに違いないと考える。直線関係はメソポア体積に対しても見られるが、950℃で得られた物質に対してだけである。上記で示したように、水は、低温熱分解サンプルの化学組成に対しては悪い影響がある。つまり、直線関係は、このケースでは、期待されていない。容量とメソポア体積間のこの直線関係は、硫化水素の触媒酸化の過程では大ポアが活性であることを示している。
【0129】
硫化水素の吸着の前および後のDTG曲線の比較を図28、図29、および図30に示す。曲線上のピークは、表面化学種の分解/脱着による重量消失を表している。CTCB、CTCM-1A、CTCM-1Bのようないくつかの初期サンプルでは、150〜400℃、および600〜800℃で、重量の増加(負のピーク)が認められる。後者の負のピークは、CTCWO-2Bでも認められる。この不思議な挙動は、前にいくつかの金属スラッジ、廃油スラッジおよびさらに下水スラッジ系の吸着媒で認められた。窒素のみが存在していたので、窒化物の生成が、唯一のもっともらしい説明として示された。H2Sの吸着の後は、負のピークは、CTCM-2BEの高温域でのみ存在している。他のサンプルでは、200〜400℃での、沈着された硫黄の脱離によって引き起こされる重量消失によりそれは相殺されている。この重量消失/ピーク強度は、650℃で熱分解された物質のケースではその表面に沈着した硫化水素の量に比例するはずであるが、この重量消失への付加が、600℃よりも低い温度での表面の脱ヒドロキシル化の結果、起こる。この水酸化物は、サンプルが、予加湿およびH2S吸着の際に水に曝露されたときに生成したものである。
【0130】
廃タバココンポストと重工業由来産業スラッジの熱分解は、空気脱硫用の有効な触媒の成長をもたらす。廃タバコから誘導された炭素質相の重要な役割は、その炭素含量が比較的高いことにある。この炭素が、ミクロポア域およびメソポア域のいずれもの多孔性の成長を引き起こす。これは、熱処理の際に無機物質の分解によって遊離されたアルカリ土類金属および水による、炭素物質の自己活性化によって起こる。高温での固相反応の結果、新規な触媒化学種が、吸着媒の表面に、各スラッジ成分間の相乗作用の結果として生成する。これらの化学種のメソポア中での位置は、脱硫過程に対して効果的である。これらのポアの表面は水の膜を保持しており、ここにおいて硫化水素はその塩基性環境中で解離することができる。酸化反応で生成した硫黄は、立体障害によって触媒中心が急速に非活性化されることもなく、大きな量でそこに蓄積され得る。高温の熱分解は、炭素質相の活性化が増大され、無機相が化学的に安定化されるので、吸着媒に対して効果がある。低温で得られたサンプルは水に対して感受性があり、これは、その触媒中心を非活性化する。
【0131】
本発明は、本明細書で述べた特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書で述べた実施形態に加えての、本発明のさまざまな変形態が、当業者には、上記詳細な説明および添付の図面から明らかとなるであろう。そのような変形態は、添付の特許請求の範囲内に入るものとする。
【0132】
さらに、数値はすべておよそであって、説明のために提供されていることを理解されたい。
【0133】
特許、特許出願、文献、製品説明書、およびプロトコルがこの出願全体にわたって引用されているが、これらの開示内容を、あらゆる目的のために、その全体を参照により本明細書に明確に組み込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 有機窒素種が組み込まれた多孔質炭素20〜30%と、
b) 無機物質70〜80%と
を含む、コンポストまたはコンポスト材料の1つとスラッジとから誘導された吸着媒であって、
該スラッジが、産業スラッジまたは都市スラッジの少なくとも1つである、吸着媒。
【請求項2】
前記無機物質が、高度に分散された触媒作用性酸化物を含む、請求項1に記載の吸着媒。
【請求項3】
前記触媒作用性酸化物が、酸化銅、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化カルシウム、シリカおよびアルミナのうちの1つ以上である、請求項2に記載の吸着媒。
【請求項4】
前記窒素種が、アミンまたはピリジン基を含む、請求項1に記載の吸着媒。
【請求項5】
前記吸着媒の表面積が、100〜500m2/gである、請求項1に記載の吸着媒。
【請求項6】
前記吸着媒の表面積が、100〜200m2/gである、請求項5に記載の吸着媒。
【請求項7】
前記吸着媒がミクロポアを含み、該ミクロポアの体積が少なくとも0.03cm3/gある、請求項1に記載の吸着媒。
【請求項8】
前記吸着媒のpHが10よりも大きい、請求項1に記載の吸着媒。
【請求項9】
前記吸着媒のpHが7と10の間である、請求項1に記載の吸着媒。
【請求項10】
前記吸着媒のpHが4と7の間である、請求項1に記載の吸着媒。
【請求項11】
a) コンポスト材料をコンポストにするステップ;
b) 脱水した下水スラッジを熱的に乾燥させて、粒状にした有機肥料を生成させるステップ;
c) 前記有機肥料と前記コンポストとを混合するステップ;および
d) 該混合物を600℃と1000℃の間である温度で熱分解させるステップ
を含む、吸着媒の生成方法。
【請求項12】
加熱速度が5℃/分と10℃/分の間であり、保持時間が60分と90分の間である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記熱分解の温度が800℃と1000℃の間である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記熱分解の温度が900℃と1000℃の間である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱分解の温度が600℃と900℃の間であり、前記吸着媒を15〜20% HClでさらに処理する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記熱分解の温度が800℃と900℃の間である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物を約5重量%と約30重量%の間の鉱油で処理するステップをさらに含み、該鉱油が、軽質鉱油、重質鉱油、天然鉱油、合成鉱油、使用済みエンジンオイル、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
有機窒素種が組み込まれた多孔質炭素20〜30%と下水スラッジから誘導された無機物質70〜80%とを含む吸着媒を湿潤空気流れと接触させるステップと、該吸着媒に酸性ガスを吸着させるステップとを含む、湿潤空気流れから酸性ガスを除去する方法。
【請求項19】
前記酸性ガスが、硫化水素、二酸化硫黄、シアン化水素、および二酸化窒素のうちの1種または複数である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記酸性ガスが硫化水素であり、これが無機物質と反応して、二酸化硫黄または元素の硫黄さらにはこれらの塩の形態に酸化される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記湿潤空気流れが、下水処理プラントからの放出ガス、ガス燃料、または熱水ベントからのガスである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
コンポスト材料をコンポストにするステップ;
脱水した下水スラッジを熱的に乾燥させて、粒状にした有機肥料を生成させることによって吸着媒を生成させるステップ;
前記コンポストと前記有機肥料を混合するステップ;および
該混合物を600℃と1000℃の温度で熱分解させ、前記吸着媒を湿潤空気流れと接触させて、吸着媒に酸性ガスを吸着させるステップ
を含む、湿潤空気流れから酸性ガスを除去する方法。
【請求項23】
前記酸性ガスが、硫化水素、二酸化硫黄、シアン化水素、および二酸化窒素のうちの1つ以上である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記熱分解の温度が800℃と1000℃の間である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記熱分解の温度が900℃と1000℃の間である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記熱分解の温度が600℃と900℃の間であり、前記吸着媒を15〜20 % HClでさらに処理する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記熱分解の温度が800℃と900℃の間である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記吸着媒が、300〜500℃に加熱して元素の硫黄および二酸化硫黄を遊離させることによって再生可能である、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
第1のスラッジと、第2のスラッジおよびコンポスト材料のうちの少なくとも1つとを組み合わせて混合物を生成させるステップ;
該混合物を熱的に乾燥させるステップ;
該混合物を約600℃〜1100℃の温度で熱分解させるステップ;および
該熱分解のステップの間に、ウルツ鉱、フェロアン、輝銅鉱、尖晶石(スピネル)、フェロキシハイト、斑銅鉱、ヒボナイト、紅亜鉛鉱、アンケル石、クバンザクロ石、ペロホタイト、黄銅鉱、トリオライト、フェルシリサイト、サファーリン、磁赤鉄鉱、コーエナイト、ローソン石、菱亜鉛鉱、閃亜鉛鉱、針鉄鋼、ハント石、灰長石、ダイアスポア、バテライト、鱗繊石、バイヤライト、モグヘマイト、ピロホタイト、赤鉄鉱、スファレライト、鉄礬柘榴石、およびヘマタイトのうちの少なくとも1つを生成させるステップ
を含む、吸着媒の製造方法。
【請求項30】
前記コンポスト材料が、タバコ廃棄物、古紙および木材炭のうちの少なくとも1つ、またはそれらの組み合わせであり、
前記第1のスラッジが、都市スラッジまたは産業スラッジであり、
前記第2のスラッジが、都市スラッジまたは産業スラッジであり、且つ第1のスラッジとは異なっている、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−66890(P2013−66890A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−276759(P2012−276759)
【出願日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【分割の表示】特願2008−530212(P2008−530212)の分割
【原出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(508071180)リサーチ・ファウンデーション・オブ・ザ・シティー・ユニヴァーシティー・オブ・ニュー・ヨーク (6)
【Fターム(参考)】