説明

配位子としてビタミンB12を有する金属錯体

本発明は、一般式M(L)n(式中、それぞれのLは独立して選択され、配位子を表し、少なくとも1個のLは、そのシアニド基の窒素原子を介して、遷移金属から選択される元素であるMに結合し、よって、[Co]がシアニドを除くビタミンB12を表すM-NC-[Co]部分を形成する、ビタミンB12(シアノコバラミン)またはその誘導体であり、そして、nが1、2、3、4、5または6である)の金属錯体に関する。該錯体は、前駆分子とビタミンB12を混合することによって製造され得る。該金属錯体は、放射線診断、化学療法または放射性核種療法に使用され得る。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は配位子としてビタミンB12を含む金属錯体に関する。本発明は更に、放射線診断、放射性核種療法、化学療法において、または触媒としてのこれらの錯体の使用に関する。
【0002】
背景技術
シスプラチン等の現在の抗癌剤は、また、正常で、健康な細胞に対し毒性を示す。患者に投与する必要がある比較的高用量では、重篤な副作用の原因となる。癌細胞を標的とすることにより選択性を高められれば、治療係数及び患者の生活の質に対し利益となり得る。
【0003】
放射性核種療法での使用において、組織へ治療的放射線量を送達するには、放射性医薬品の代謝的蓄積が必要である。放射性核種療法の成功についての重要な因子は、正常組織に対する標的組織での蓄積であり、これまでに知られている全ての方法においては、5乃至100の範囲である。この例外としては、かなりの成功を収めている甲状腺疾患のヨウ素代謝治療がある。正常組織に対する標的組織での蓄積の比率が低いことによって、患者の正常組織の放射線負荷は、しばしば比較的に高くなる。したがって、放射性核種を標的組織に特異的に送達する方法の対する需要が存在する。
【0004】
部位特異的取り込みへ導く興味深い候補化合物は、ビタミンB12である。増殖速度の速い癌細胞は、いわゆるB12の高消費者である。この大変高い需要により、ビタミンB12は治療薬運搬の為の「トロイの木馬」となる潜在性がある。
【0005】
シアノコバラミン(ビタミンB12)はよく知られており、その化学は包括的に調べられてきた。コバルト、コリン環またはリボース部位におけるビタミンB12の誘導体については、多くの特許及び文献が存在する。これらのビタミンB12誘導体のいくつかは、癌の治療または診断への適用が提案されてきたが、未だに上市されたものはない。
【0006】
例えば、US2004/224921は、コバラミンと共有結合的に結合する、蛍光、リン光、ルミネッセンス発光、または光−産生化合物からなる蛍光コバラミン類に関する。これらの蛍光コバラミン類は、健康な細胞及び組織から癌細胞及び組織を区別する為の、及びコバラミンを基とする治療バイオコンジュゲートを用いる化学療法に、個体が肯定的に反応するか否かを決定する為の、診断及び予後マーカーとして使用され得る。該蛍光の、リン光の、または光−産生化合物は、コバラミンのコバルト原子、コリン環、またはリボース部位に共有結合し得る。この型の誘導体は、また非蛍光化合物についても記載されている。
【0007】
コバルト部位直接の誘導体化は、ビタミンB12活性の90%以上を保持する化合物を導く。したがって、その部位の誘導体化は明らかな選択肢である。しかしながら、これらの化合物はまた欠点を有する。例えば、コバルトアルキル化化合物は、光感受性である。
【0008】
リボース部位またはコリン骨格上の部位での誘導体は、開裂不可能という欠点を有し、よって、ビタミンB12の生物学的挙動に重大な影響を及ぼす。
【0009】
したがって、癌の診断及び処置に有用で、重篤な副作用を起こさず、高い放射線負荷を導かない、薬剤に対する需要が存在する。
【0010】
発明の要約
本発明によれば、ある種の金属錯体はビタミンB12のシアニド基(cyanide group)に直接配位できることが見出された。この型の結合は、特に錯体[Tc(N∩O)(OH2)(CO)3] (N∩O = 二座配位子)に対して起こり、ここで、シアニドの窒素原子は直接Tc金属中心に結合し、[Co]-CN-Tc部分を形成する。これは、ビタミンB12が金属(この場合はTc)に対する配位子として作用する錯体の典型例である。しかしながら、ビタミンB12がそのシアニドを介して金属と結合する配位子である、他の金属錯体は、また、本発明の一部である。これら全ての金属錯体において、ビタミンB12は配位子として作用する。
【0011】
本発明は、初めて、ビタミンB12を、そのシアニドを介して金属に配位させ、[Co]-CN-M錯体(式中、[Co]はシアニドを除くビタミンB12を示す)を形成することを提案する。本発明は、係るビタミンB12誘導体が、化学的に安定で、容易に製造できることを見出している。
【0012】
CN部位を除き、文献では、ビタミンB12における他の全ての部位が、標識化について提案されてきた。配位子基(ligand group)として作用するとは予想されなかったので、シアニドはこれまでに用いられなかった。
【0013】
よって、本発明は、一般式M(L)n'{式中、それぞれのLは独立に選択され、1個の配位子であり、少なくとも1個のLは、そのシアニド基の窒素原子を介して、遷移金属から選択される元素であるMに結合し、よって、M-NC-[Co]部分(式中、[Co]はシアニドを除くビタミンB12またはその誘導体を示す)を形成する、ビタミンB12(シアノコバラミン)及びその誘導体から選択され、nは1、2、3、4、5または6である}の金属錯体に関する。
【0014】
1個の金属錯体中の異なる配位子Lは、同一である必要はなく、それぞれのLは独立して選択される。
【0015】
Mはテクネチウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、パラジウム、白金、イリジウム及び銅から選択されるような、遷移金属であり得る。
【0016】
癌の診断及び/または治療における適用については、金属は有利に、99mTc、188Re、186Re、105Rhから選択されるような、ReまたはTcの放射性同位体である。
【0017】
Mがテクネチウムまたはレニウムのとき、他の配位子Lは、好適には、3個のカルボニル基(CO's)及び、場合によっては、二座配位子であり、該二座配位子は、場合によっては、更に1個の金属、生物活性分子、または、蛍光物質のような更に1個の分子と結合している。1個の二座配位子の代わりに、2個のH2OまたはClのような単座配位子を有することも、また可能である。他の単座配位子は、モノカルボン酸誘導体、モノチオレート誘導体、脂肪族/芳香族アミン等であり、場合によっては、生物活性分子によって置換されている。
【0018】
二座配位子は、好適には、2個の脂肪族及び/または芳香族アミン部分、または1個の脂肪族または芳香族アミン部分、及びカルボン酸、チオレートまたはヒドロキシレート等の陰イオン基から選択される。
【0019】
配位子Lはまた、生物活性分子であり得る。
【0020】
Mが白金のとき、Lは、金属への配位に利用される、金属結合原子または、1対の非結合電子対の他のドナーとして、N、S、P、O、Cを含む配位子から選択され、場合によっては、生物活性分子に結合する。
【0021】
生物活性分子または他の分子は、蛍光物質、細胞毒性もしくは細胞増殖抑制もしくは他の薬理活性を有するファーマコフォア、光学色素、NIR色素、またはリン光色素(例えば、US-6,180,085及びUS-6,641,798に開示されているようなもの)から選択される。蛍光物質は、例えば、フルオロセイン、ピレン、アクリジン、ダンシルまたはその他である。これらは、診断及び予後目的で使用され得る。細胞毒性または細胞増殖抑制剤は、例えば、タモキシフェン、メトトレキサート及びシクロホスファミドまたは他の既知の薬理活性(治療用の)を有する他の化合物である。あるいは、他の分子は、診断及び治療目的の放射活性化合物であり得る。生物活性分子は、また、RNAまたはDNAのような核酸、特にアンチセンスRNAまたはDNAであり得る。
【0022】
本発明は、更に、ビタミンB12またはその誘導体を配位子として含む、これらの金属錯体の製造方法に関し、該方法は、ビタミンB12と前駆錯体を混合することを含み、ここで、Mは遷移金属であり、nは2、3、4、5または6であり、Lは安定な[Co]-CN-M架橋を有する金属錯体を得る為の配位子である。前駆錯体は、一般式M(L)n-1L'を有し、式中L'は、ビタミンB12によって置換される配位子である。遷移金属は、好適には、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、パラジウム、白金、イリジウム及び銅から選択される。
【0023】
本発明は、更に、一般式M(L)n-1(式中、Mは遷移金属であり、好ましくは、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、パラジウム、白金、イリジウム及び銅から選択され、nは2、3、4、5または6であり、Lは配位子である)を有する前駆錯体に関する。
【0024】
本発明は、また、診断または治療薬として使用する為の本発明の金属錯体に関し、及び、本発明の金属錯体を含む医薬組成物に関する。
【0025】
更に、本発明は、本発明の金属錯体に関し、式中、Mはルテニウム、パラジウム、イリジウム、白金またはロジウム等の触媒活性を有する金属である。
【0026】
発明の詳細な説明
よって、本発明は、ビタミンB12、及びその誘導体の1つを配位子として含む、金属錯体に関する。一実施態様として、該金属は、例えば、癌の診断及び放射性核種治療での放射性医薬適用の為の、99mTcまたは188Re等の、放射性核種であり得る。他の実施態様として、シアニドを介したビタミンB12と他の金属フラグメント(例えば、Rh、Pt、Pd)の結合により得られる金属錯体は、化学療法または立体特異的及び/またはエナンチオマー選択的な触媒の為に使用され得る。
【0027】
ビタミンB12と金属錯体の、d3、d6またはd8電子配置での反応は、安定な[Co]-CN-M架橋の形成を導く。Mが99mTcのとき、これは、ビタミンB12を標識化する便利な方法である。Mが例えば、Rh(I)のとき、ビタミンB12が立体特異的環境を付与するので、対応する錯体は触媒として使用され得る。
【0028】
Mが99mTcまたは188Reのとき、前駆錯体は、適切には[Tc (N∩O) (OH2) (CO)3]であり、式中、OH2は[Co]-CNで置換される。配位子N∩O(または他のドナーの組合せ)は可変である。他の(単座-または二座の)配位子が存在しないとき、ビタミンB12のみが金属に配位する。二座N∩O配位子または他のドナーの組合せの二座配位子が存在しないとき、水1がビタミンB12によって置換され、Tcの残りの2の位置はH2OまたはClで占められている。Reに対する固体としての単離収率は低い(実験部分参照)が、溶液中では、99mTc及びReとの錯体b1-b4は定量的収率で入手される。
【0029】
配位子N∩O(または他)はまた、二価性であり得る。1の官能基は、金属との配位に用いられ、2番目の官能基は、例えば、標的ベクターと付加的に結合し得る。これは、標識化ビタミンB12の受容体標的化、内在化及び捕捉の組合せを可能にする。係る誘導体は、また、付加的な官能基が、例えば、細胞内で酵素的に切り離されているとき、「トロイの木馬」と呼ばれる。そして、機能的に活性または不活性なビタミンB12化合物を放出する。
【0030】
二価性配位子の例は、1,4-ジピコリン酸、1,5-ジピコリン酸、1,2-イミダゾールジカルボン酸、1,2-ピペラジンジカルボン酸、グルタミン酸、リジンのようなアミノ酸である。
【0031】
したがって、ビタミンB12のシアニドに結合できる相違する錯体の構造的及び機能的変化は、[Co]-CN-M(L)n-1錯体の一般的作用及び生体分布を微調整し、改善することを可能にする。
【0032】
配位子としてのビタミンB12は、本発明の錯体中で予想外の安定性を示す。それは、天然のビタミンB12として配位する。他の配位子での置換により、それが本発明の金属錯体から放出されるとき、それは、天然のビタミンB12として放出され、したがって、生体に害がなく、安全である。
【0033】
ビタミンB12が毒性化合物に配位するとき、その毒性は減弱されると予想される。文献においては、アデノシルトランスフェラーゼのようなある種の酵素が、[Co]-CNからビタミンB12中のコバルトに結合したシアニドまたは他の基を切り離すことが知られている。このことは、また、金属錯体M(L)n-1が、ビタミンB12から切断され、放出されることを示す。金属錯体または金属錯体に結合した分子であり得る、毒性部分の放出においては、該毒性部分は、ビタミンB12錯体を取り込んだ癌細胞内で、非標的細胞で有害な副作用を惹起することなく、その作用をする。
【0034】
更に、本発明により示唆されるシアニドを介した結合の種類は、ビタミンB12のトランスコバラミンI(TCI)、トランスコバラミンII(TCII)及び内在性因子(TF)との結合には影響を与えない。したがって、それは、更に細胞に取り込まれ、したがって、トロイの木馬として上手く用いることができる。
【0035】
他の配位子LのMへの結合は、S、N、C、O、Pから選択される結合原子、または1対の非結合電子対を含む他の原子を介する。したがって、結合原子はより大きい部分Lの一部である。
【0036】
ビタミンB12骨格の誘導体化の必要がないので、本発明の金属錯体の合成は簡単である。生成物は大変高い収率で、容易に得られる。ビタミンB12の誘導体を配位子として用いるときは、ビタミンB12の誘導体化は金属錯体の合成の前に実施することができる。
【0037】
図1及び2で示される化合物は、本発明の化合物である。
【0038】
生成物b1−b4を得るために、錯体[M(OH2)(L2)(CO)3](M=185,187Re, 99mTc)はビタミンB12と配位する。錯体[M(OH2)(L2)(CO)3]はB12の導入の前に、fac-[99mTc(OH2)3(CO)3]+錯体、[ReBr3(CO)3]2-錯体それぞれに、二座配位子L2を反応させて、合成される。これは、いわゆる、混合配位子[2+1]-アプローチである。配位子L2は可変であるが、結合している金属は、ビタミンB12とその配位子L2の媒介者として考えられる。
【0039】
b1−b4のジアステレオマー(a)及び(b)は互いに分離され得る。純粋なジアステレオマーは、速度論的に安定であり、互いへの変換は、あるとしても、大変遅い。ジアステレオ異性体のHPLC保持時間の顕著な相違は、金属錯体を触媒として用いる反応において、エナンチオ選択性またはジアステレオ選択性を導入するためのキラル配位子としてのビタミンB12の使用可能性を示している。
【0040】
本発明の金属錯体において、ビタミンB12は、例えば、塩素化合物、アセトニトリル、水、または他の自然発生配位子基等の競合配位子によって置換されない。
【0041】
Co-C (C≡アルキル)結合を含む補酵素B12化合物における光感受性が、Co-C結合の破壊に関係するので、本発明の錯体は全く光感受性ではない。このことは、保存及び取り扱いを容易にするので、大きな利益である。
【0042】
診断または放射性核種治療における使用を目的として、主題の金属錯体をホストに、多くの場合は哺乳類のホストに、通常は、注入、静脈内、動脈内、腹腔内、腫瘍内、または金属錯体を胃内で放出する投与形態によって経口で、投与され得る。投与ルートは、放射性核種が望まれる特定部位に依存する。一般には、ホストの体重に依存して、約0.1から2mlがホストに注入される。通常は、処置計画は、処置する患者の体重、腫瘍の型、年齢等に依存するので、テイラーメイドである。本分野の当業者は、必要な放射活性用量を決定することができる。放射性核種の投与後、その目的に応じて、ホストは、放射性核種が特異的に結合する部位または複数の部位からの放射線放出を検出することにより、診断または治療のための種々の方法で処置され得る。
【0043】
金属錯体がプラチナ錯体であるとき、それらは化学療法の薬学的組成物に用いられ得る。投与ルートは通常静脈内である。ここで、再度、投与に必要な金属錯体の量は、患者それぞれに、別々に決められる。
【0044】
化合物b1は、ビタミンB1299mTc誘導体の典型例である。それは、特定のビタミンB12輸送蛋白に対する結合を示す。
【0045】
化合物b2は、M(CO)3-部分への配位に関与しないL2の付加的なカルボキシル基により、より脂溶性ではない。フリーなカルボキシル基は、他の生体分子(例えば、ペプチド)または生物活性分子または蛍光マーカーが結合するアンカーとして考えられる。
【0046】
化合物b3及びb4は、より低い収率(〜30%)で得られるが、あらゆるタイプの人工的または天然のα−アミノ酸とビタミンB12を[2+1]-アプローチを介して結合させる能力を示す。
【0047】
b4のマウスメラノーマ細胞株(B16F1)での細胞毒性試験は、100μMの濃度で、17%の増殖阻害を示した。同じ濃度で、天然のコバラミン(ビタミンB12)は全く効果を示さなかった。
【0048】
シスプラチン化合物b5-b7は、ビタミンB12が、また、Tc及びReと異なる金属に対する配位子として作用できる可能性を示す。錯体b5の塩素化合物は、変化しやすく、例えば、メチルグアニンb6またはグアノシンb7等の、より安定な配位子により置換され得る。このことは、翻訳及び転写を抑制するために、細胞及び細胞核内にアンチセンスRNAまたはDNA配列を送達する、トロイの木馬としてビタミンB12を適用する可能性を提供する。
【0049】
マウスメラノーマ細胞株(B16F1)を用いた細胞毒性試験により、増殖細胞のパーセンテージは、b5の場合20%、b6の場合30%を示した。
【0050】
その配位子が、テクネチウムまたはレニウムトリカルボニル(ここで、OH2部分の1個がビタミンB12により置換され、残りのOH2部分で、更に誘導体化され得る)、または、シスプラチンのようなプラチナ化合物(ここで、塩素原子の1個がビタミンB12で置換され、他の塩素原子が、場合によっては他の分子である)を形成する化合物を参照して、本発明を説明する。
【0051】
しかしながら、基礎となる発明の着想は、ビタミンB12上のシアニドを誘導体化に用いることである。この着想に基づいて、当業者は、本明細書で開示されていないが、本発明の着想を依然として使用する、他の誘導体を決めることが、十分できる。そのような化合物も、また、本発明の一部である。
【0052】
本発明は更に以下の非限定的な実施例により説明され、その中で、以下の図が参照される。
【0053】
図1はビタミンB12に結合する前の前駆錯体を示す。番号は、実施例で用いられている番号に相当する。
【0054】
図2は、本発明の金属錯体の例を示す。番号は、実施例で用いられている番号に相当する。
【0055】
図3は、99mTc(VitB12)(H2O)(CO)3のHPLCクロマトグラムを示す。
【0056】
図4は、ビタミンB12の構造式を示す。
【0057】
図5は、化合物b1、b4、b5及びb6のX線構造を示す。
【実施例】
【0058】
材料及び方法
全ての化学物質は、Merck、Dietikon (CH)、Aldrich、FlukaまたはBuchs (CH)から、販売されている最高品質のもので購入し、他に言及しない限り、更なる精製なしで使用した。
【0059】
全ての反応は、窒素またはアルゴン雰囲気下で実施された。反応をHPLCによりモニターした。
【0060】
HPLC解析は、ダイオードアレーUV/Vis検出器及びEG&G Berthold LB 508放射分析検出器を装備した、Merck-Hitachi L-7000システムで実施した。Macherey Nagel Nucleosil C-18ec RPカラム(5μm粒子サイズ、100Åポアサイズ、250x3mm)及びMerck C-18e RP Supersphere(登録商標)カラム(100Åポアサイズ、250x4mm)及びWaters XTerra RP8カラム(5μm粒子サイズ、3.0x100mm)が分離用に用いられた。異なるHPLC溶媒系及びグラジエントを用いた:溶媒系1:0.1% AcOH及び10% CH3CN水溶液、pH3(A)及びメタノール(B)。溶媒系2:0.1% 酢酸トリエチルアンモニウム及び10% CH3CN水溶液、pH8。溶媒系3:トリフルオロ酢酸、0.1%水溶液(A)及びメタノール(B)。グラジエント1:0-3 分 100% A、3.1-9 分 75% A、9.1-20 分 66%→0%A、20-25 分 0% A ;0.5 ml/分、または記載通り。 グラジエント2:0-40 分 100%→0% A、30.1-40 分 0% A、40.1-42 分 0%→100% A、42-50 分 100% A グラジエント3:0-5 分 100% A、5.1-40 分、100%→65% A、40.1-45 分、0% A, 45.1-53 分 100% A グラジエント4:0-5 分 0%→20% B、5-45 分 20%→65% B グラジエント5:0-10 分 20% B、 10-30 分 20%-40% B グラジエント6:0-30 分 25%→65% B グラジエント7:0-5 分 25% B、5.1-30 分 25%→100% B
【0061】
分取HPLC分離は、2台のProstar215ポンプ及びProstar320UV/Vis検出器を備えたVarian Prostar systemにおいて、Macherey Nagel Nucleosil C-18ec RPカラム(7μm粒子サイズ、100Åポアサイズ、250x20mm、10ml/分 流速、及び250x40mm、40ml/分流速)及びWaters XTerra Prep RP8カラム(5μm粒子サイズ、100x30mm、30ml/分 流速)を用いて実施された。
【0062】
電気スプレイイオン化マススペクトル(ESI-MS)は、Merck Hitachi M-8000スペクトロメーターで記録した。
【0063】
UV/Visスペクトルは、Varian Cary 50スペクトロメーターで記録した。
【0064】
IRスペクトルは、異なる言及をしない限り、圧縮されたKBrピル中での資料を用いて、Bio-Rsd FTS-45スペクトロメーターで記録した。
【0065】
RAMANスペクトルは、波長514nm、633nm及び785nmの3レーザーを備えたRenishaw Ramanscope連続波機器で記録した。
【0066】
NMRスペクトルは、Varian Gemini 200MHzまたは300MHz及びBruker DRX 500MHzスペクトロメーターで記録した。化学シフトは、残存する溶媒のプロトンを内部標準として用いて、TMSに対して報告する。31P NMRスペクトルの化学シフトは0ppmでのオルトリン酸に対して報告する。14N NMRスペクトルの化学シフトは、0ppmでのニトロメタンに対して報告する。コバラミン誘導体のピーク値の割り当ては、H COESY、C-H相関、DEPT及び(ある場合には)ROESYスペクトルの解釈により決定した。
【0067】
MALDI-ToFマススペクトルは、a-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸をマトリックスとして、Voyager-DEPROで測定した。CV測定は、室温で、ガラス状炭素(Metrohm)を、作用電極及び補助電極として、Ag/AgClを基準電極として用いて、757 VA Computrace Metrohm シクロボルタメーターを用いて実施した。化合物は、0.1Mテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートのメタノール溶液中で1mM溶液として測定した。
【0068】
結晶のデータは、183(2)Kで、graphite-monochromated Mo Kα 輻射(λ=0.71073Å)を用いて、Stoe IPDS回折計で収集する。好適な結晶をParaton N oilで被覆し、ガラスファイバー上でマウントし、即座にStoe IPDS回折計に移した。データは、183(2)Kで、graphite-monochromated Mo Kα 輻射(λ=0.71073Å)を用いて収集した。全制限球上に分布した8000の反射を、プログラムSELECTで選抜し、そして、プログラムCELL[1]を単位格子パラメータの精緻化に用いた。データを、ローレンツ及び偏光効果及び吸収に対して修正した(数値的に)。構造をSHELXS-97[2]またはSIR97[3]を用い直接法により解析し、SHELXL-97[4]を用いて、F2上でfull-matrix least-squares法で精緻化した。
【0069】
元素分析は、Leco CHNS-932元素分析計で実施した。
【0070】
[NEt3]2[ReBr3(CO)3][5]及びfac-[99mTc(OH2)3(CO)3]+[6]は以前報告した通りに製造した。
【0071】
一般的な標識化方法
ゴムストッパー付きの10mlガラスバイアルを二窒素でフラッシュした。50mlの10-3Mコバラミン誘導体または配位子含有水溶液及び450mlの0.1M [99mTc (OH2)3 (CO)3]+リン酸緩衝液(pH7.4)を添加し、反応混合物を75℃で、30-45分間保持した。
【0072】
シアニド架橋コバラミン誘導体を以下のように製造した:50mlの二座配位子の10-3M水溶液及び450mlの[99mTc (OH2)3 (CO)3]+リン酸緩衝液(pH7.4)を、二窒素でフラッシュしたバイアル(上記の通り)に添加し、反応混合物を90℃で、30分間保持した。この溶液100mlを100mlの10-2MビタミンB12水溶液を含む他のバイアルに添加した。この反応混合物を37℃で、60分間保持した。
【0073】
γ-検出を用いたHPLC解析を、99mTc種の全変換を確認するために実施した。
【0074】
[Re (imc) (OH2) (CO)3] (1)の合成
(NEt4)2 [ReBr3 (CO)3] (488 mg, 0.63 mmol)を水(5ml)に溶解し、水(3ml)中の4-イミダゾールカルボン酸(imc) (71 mg, 0.63 mmol)の溶液に添加した。2時間後、還流下で、生成物が室温で、白色粉末として沈殿した。濾過、ジエチルエーテルでの洗浄及び高圧吸引での乾燥により1を186mg得た(73%)。
【0075】
1H NMR (300, DMSO-D6) δ8.40 (s, 1H, imc), 7.68 (s, 1H, imc), 7.08 (br s, 1H, imc)
IR (KBr, cm-1): 2039, 1936 νc=o(st)
MS (ESI+, MeOH) m/z: 764 (2M-2H2O), 382 (M-H2O)+
分析計算値 C7H5N2O6Re : C, 21.05; H, 1.26 ; N, 7.02 実測値: C, 21.15 ; H, 1.41 ; N, 6.97
【0076】
[Re (2,4-ジピク) (OH2) (CO) 3] (2)の合成
(NEt4)2[ReBr3(CO)3] (101 mg, 0.13 mmol)を水(10 ml)に溶解した。AgNO3 (70 mg, 0.4 mmol)を添加し、室温で3時間攪拌した後、AgBrを濾過により取り除き、そして、ピリジン-2,4-ジカルボン酸(2,4-ジピク)(24 mg, 0.13 mmol)を無色溶液に添加し、続いて、50℃で2時間攪拌した。次に黄色溶液を冷却し、生成物を4℃で、12時間結晶化させた。濾過、水での洗浄及び高圧吸引での乾燥により、黄色結晶を収集し、収量38mg(65%)の生成物を得た。
【0077】
1H NMR (300, DMSO-D6) δ8.96 (d, 1H, ピリジン), 8.34 (s, 1H, ピリジン), 8.15 (d, 1H, ピリジン), 7.50 (s, 1H, ピリジン) IR (KBr, cm-1): 2036, 1920 νc=o(st)
MS (ESI+, MeOH) m/z: 438 (M-H2O)+
分析計算値 : C10H6NO8Re: C, 26.45; H, 1.33 ; N, 3.07 実測値: C, 26.15 ; H, 1.67 ; N, 3.07
【0078】
[99mTc (ser) (OH2) (CO) 3] (3)の合成
複合体3を材料及び方法の章で記載した標準的な標識化方法に従って製造した。セリンをr.m.で10-3Mの濃度で標識化した。99mTcを90℃で、40分後完全に変換した。
【0079】
[Re (dmg) (OH2) (CO)3] (4)の合成
(Et4N) 2 [ReBr3 (CO)3] (100 mg, 0.13 mmol)を、メタノール/水混合物(4:1, 10ml)に溶解した。N,N-ジメチルグリシン(70mg, 0.7mmol)を添加し、混合物を12時間、50℃で攪拌した。溶液を室温にまで平衡化し、短いC18フィルター上で濃縮化し、精製した。収量:20mg(40%)。
1H NMR (500, DMSO-D6) δ 4.18 (s, 2H), 3.46 (s, 3H), 3.15 (s, 3H)
分析計算値 C21H24N3O15Re3(三量体): C, 22.58 ; H, 2.17 ; N, 3.76 実測値: C, 23.19 ; H, 2.78 ; N, 3.84
IR (KBr, cm-1): 2022, 1911, 1890, 1866
MS (ESI+, MeOH) m/z: 1117.0 ([M]+) (三量体)
【0080】
化合物(b1)の合成
ビタミンB12(100 mg, 73.8 mmol)及び1(50 mg, 0.125 mmol)の10mlメタノール溶液を室温で一晩攪拌した。反応をHPLC測定(溶媒系1、グラジエント2)により制御した。もはやビタミンB12を検出しなくなったとき、溶媒を蒸発させ、粗生成物を水に再溶解し、0.2μmフィルター上で濾過し、過剰な1を取り除いた。濾液を分取HPLC精製(溶媒系1、グラジエント2、30ml/分流速)に供した。2つの異性体を互いから分離した。異性体は、赤色粉末として等量〜(1:1)で得られた。全収量:96%。完全なキャラクタリゼーションは結晶データを参照。b1(b)の結晶を、b1(b)の水溶液中へのアセトンの蒸気拡散により得た。
31P NMR (81, CD3OD) δ0.68
IR (KBr, cm-1): 3400, 2926, 2179, 2023, 1900, 1667, 1627, 1572, 1401, 1366, 1213, 1056
MS (ESI+, MeOH) m/z: 1737 (M + 1)+, 869 (M + 2)2+
CV: E1/2= -652mV vs. Ag+/AgCl, 約 90% 可逆的
【0081】
化合物(b2)の合成
3mlメタノール中のビタミンB12 (50 mg, 36.9 mmol)及び 2 (19.8 mg, 0.074 mmol)を室温で48時間攪拌した。反応をHPLC測定(溶媒系1、グラジエント2)で制御した。ビタミンB12がもはや検出されなくなったとき、溶媒を蒸発させ、そして、粗生成物を分取HPLC精製(溶媒系1、グラジエント2、30ml/分流速)に供した。異性体を別々に赤色粉末として、等量〜(1:1)得た。全収率:76%。
【0082】
1H NMR (500, D2O) δ0.43 (s, 3H, C20), 0.95-0.98 (m, 1H, C41'), 0.99 (s, 3H, C46), 1.08 (s, 3H, C54), 1.17-1.20 (m, 1H, C60'), 1.23 (d, 3H, Pr3, J= 6.3 Hz), 1.42 (s, 3H, C36), 1.44 (s, 3H, C47), 1.65-1.80 (m, 2H, C42', C48'), 1.83 (s, 3H, C25), 1.88-2.10 (m, 6H, C30, C37, C41, C42, C48), 2.25 (s, 3H, B10), 2.28 (s, 3H, B11), 2.37-2.38 (m, 2H, C26), 2.41 (s, 3H, C53), 2.45-2.53 (m, 6H, C31, C49, C55), 2.56 (s, 3H, C35), 2.58-2.65 (m, 3H, C56, C60), 2.75-2. 81 (m, 3H, C18, C37, Prl'), 3.15 (d, 1H, C13, J = 9.9 Hz), 3.63 (d, 1H, Prl, J = 13.7 Hz), 3.70 (dd, 1H, R5', J = 12.6 and 4.2 Hz), 3.78 (d, 1H, C19, J = 11. 4 Hz), 3.86-3.90 (m, 2H, C8, R5), 4.00-4.02 (m, 1H, R4), 4.15 (t, 1H, R2, J=4.2 and 4.1 Hz), 4.26-4.33 (m, 1H, Pr2), 4.39 (d, 1H, C3, J=8.6 Hz), 4.63 (dt, 1H, R3, J = 8.5 and 4.3, 4.0 and 3.6 Hz), 6.08 (s, 1H, C10), 6.23 (d, 1H, R1, J = 3.0 Hz), 6.51 (s, 1H, B4), 7.02 (s, 1H, B2), 7.24 (s, 1H, B7), 8.13 (dd, 1H, L3, J = 5.4 and 1.7 Hz), 8.51 (s, 1H, L1), 8.71 (d, 1H, L2, J = 5.4 Hz)
【0083】
13C NMR (125, D2O) δ15.8, 16.5, 17.5, 18.4, 19.7, 19.9, 20.3, 20.4, 20.9, 21.1, 27.6, 27.7, 29.5, 32.4 (3C), 33.1 (2C), 33.7, 35.2, 36.3, 40.2, 42.8, 43.9, 46.9, 48.2-52.6 (2C 溶媒シグナル下), 52.6, 55.3, 55.8, 58.4, 60.6, 62.7, 70.8, 73.7, 75.5, 76.9, 83.9, 86.7, 88.3, 96.1, 105.1, 108.1, 112.9, 117.6, 128.0, 129.6, 131.5, 134.3, 136.1, 138.0, 143.3, 152.0, 154.4, 166.4, 167.1, 168.0, 174.2 (3C), 175.3 (2C), 176.6 (3C), 177.6 (2C), 178.2, 180.7, 182.5, 193.4, 196.3 (2C)
MS (ESI+, MeOH) m/z: 1793 (M + 1)+, 1116 (フラグメント) IR (KBr, cm-1) : 3411, 2972, 2179, 2027, 1918, 1903, 1665, 1611, 1572, 1498, 1402, 1214, 1154, 1061, 571
【0084】
M=99mTcである化合物(b3)の合成
3の10-4MPBS溶液、pH7.4、500mlをビタミンB12の0.01M水溶液500mlと混合し、40℃で1.5時間攪拌した。反応の後、HPLC(溶媒系1、グラジエント2)を行った。60%のターンオーバーの後、反応は平衡に達した。
【0085】
化合物(b4)の合成
ビタミンB12 (50 mg, 0.04 mmol)をメタノール(10ml)に溶解した。[Re(dmg)(CO)3]3 4 (45 mg, 0.04 mmol)を添加し、反応を室温で12時間攪拌した。2個の付加化合物(HPLCにより明らかに区別される)を形成した(収率25%及び36%)。これらを、分取HPLC(溶媒系3、グラジエント7)により単離、精製した。収率:10mg、14%(付加化合物1)、12mg、17%(付加化合物2)。x-線解析に好適なb4(b)の結晶を、錯体の水溶液中でのアセトンの蒸気拡散により得た。完全なキャラクタリゼーションは、結晶データを参照。
【0086】
分析計算値: C70H96CoN15O19PRe, C, 48.66 ; H, 5.60 ; N, 12.16
実測値: C, 48.42 ; H, 5.01 ; N, 12.04 (b4 (b))
IR (KBr, cm-1) : 2033, 1928, 1904
MS (ESI+, MeOH) m/z : 1728.7 (M + 1)+
【0087】
化合物(b5)の合成
水(6ml)中で、シス-ジアミンジクロロ白金(II) (5) (66.4 mg, 0.221 mmol)及び硝酸銀(37.6 mg, 0.221 mmol)の混合物を35℃、2時間攪拌した。沈殿物を遠心により除去し、水(4ml)で洗浄した。溶液にシアノコバラミン(300 mg, 0.221 mmol)を添加し、得られた溶液を50℃で16時間攪拌した。HPLC解析によりコバラミンの全変換が示された。減圧により溶媒を除去し、粗生成物を分取HPLC(溶媒系3、グラジエント4)で精製した。生成物画分の凍結乾燥によりb5を赤色粉末として得た。収率:259.8mg、72.6%。b5の結晶を、b5の飽和水溶液中にアセトン蒸気を拡散させることにより得た。
UV/Vis: λ/nm (log ε/mol 1-1cm-1)=279.9 (4.1), 361.9 (4.4), 519.9 (3.8), 550.9 (3.8).
IR (KBr, cm-1) : νCN (st) 2199
195Pt NMR (107, CD3OD) δ-2340
MALDI-ToF MS m/z : 1607 [M-Cl + Na]+, 1591 [M-Cl-NH3+Na]+, 1571 [M-Cl-2NH3+Na]+
CV: E1/2 = -515 mV vs. Ag+/AgCl, 約50% 可逆的
【0088】
化合物(b6)の合成
水(2ml)中のb5 (37.4 mg, 23.1μmol)及び9-メチルグアニン(6) (4.2 mg, 25μmol)の溶液を50℃で攪拌した。4日後、HPLC解析により出発原料のほぼ完全な変換が示された。溶媒を減圧により除去し、そして、粗生成物を分取HPLC(溶媒系3、グラジエント5)により精製した。生成物画分の凍結乾燥により、赤色粉末としてb6を得た。収率:32.0mg、79%。b6の結晶を、b6の飽和水溶液へのアセトン蒸気の拡散により得た。
31P NMR (202, CD3OD):δ0.73
MALDI-ToF MS: 1736 [M-CH3]+, 1715 [M-NH3-CH3]+
【0089】
化合物(b7)の合成
水(5ml)中のb5(58.5 mg, 36.1μmol)及び2'-デオキシグアノシン(7) (11.6 mg, 43.3μmol)の溶液を30℃で攪拌した。4日後、HPLC解析は、出発原料のほとんど完全な変換を示した。溶媒を減圧により除去し、粗生成物を分取HPLC(溶媒系3、グラジエント6)により精製した。生成物画分の凍結乾燥により、b7を赤色粉末として得た。収率:45.3mg、67.7%。
【0090】
UV/Vis: λ/nm (log ε/mol 1-1cm-1)=278.0 (4.2), 361.9 (4.2), 521.0 (3.7), 546.0 (3.7).
31P NMR (202, CDOD) : δ0.71 (94%), 0.21(6%)
195Pt NMR (107, CDOD) : δ-2475 (ライン 約1.5 kHz)
MALDI-ToF MS: 1723 [M-リボース-2NH3+Na]+
【0091】
99mTc (VitB12) (X)2 (CO)3 [X= Cl, H2O]の製造
99mTc (H2O)3 (CO)3+を1ml(50mCi、しかし、放射活性の濃度は50mCi/mlである必要はなく、それより低濃度であっても、高濃度であっても機能する)の99mTc-過テクネチウム酸をIsoLink(商標)バイアルに添加し、得られた溶液を20分間煮沸することにより、製造した。該トリカルボニル反応混合物を冷却し、1N HClでpH3に酸性化した。
【0092】
その後、ビタミンB12の10mM水溶液を、68.0mgの該ビタミンを5mlの酸素不含注射用水に溶解することにより製造した。0.1mlの99mTc-トリカルボニル溶液及び0.9mlの10mMビタミンB12溶液の混合物を窒素雰囲気下、100℃で30分間反応させた。
【0093】
186Re (VitB12) (X)2 (CO)3 [X = Cl, H2O]の製造
予め酸性化した(pH2.5)Re-186-過レニウム酸の溶液を、NH3BH3及びアスコルビン酸の混合物を含む、窒素雰囲気下で密封したバイアルに添加した。反応を室温で10分後に終了した。これを前還元段階と呼ぶ。
【0094】
ビタミンB12の10mM水溶液を、68.0mgのビタミンB12を5mlの酸素不含注射用水に溶解することにより製造した。還元レニウム溶液から、1mlをIsoLink(商標)バイアルに添加し、100℃で15分間反応させた。得られた186Re(H2O)3(CO)3+を含む溶液を冷却した。
【0095】
0.1mlのレニウムトリカルボニル溶液及び0.9mlの10mMビタミンB12溶液を100℃で45分間保持した。
【0096】
図3は、99mTc (Vit B12) (H2O)2(CO)3のHPLCクロマトグラムの例である。
【0097】
結晶データ
化合物b1(b)のX-線テーブル
実験式 C70 H106 Co N16 028 P Re
式量 1895.81
温度 183 (2) K
波長 0.71073Å
結晶系 斜方晶系
空間群 P212121
単位格子寸法 a = 15.9578 (10) Å α=90°
b = 21.2328 (12) Å β=90°
c = 27.9776 (13) Å γ=90°
容積 9479.6(9) Å3
Z 4
密度(計算上) 1.328Mg/m3
吸収係数 1.545mm-1
F(000) 3916
結晶サイズ 0.57 x 0.15 x 0.04 mm3
結晶種類 赤色板状
データ収集のためのシータ範囲 2.16乃至25.00°
インデックス範囲 -18<=h<=18, 0<=k<=25, 0<=1<=32
収集した反射 16557
独立した反射 16557 [R (int) = 0.0000]
観察された反射 10604
観察のための基準 >2sigma (I)
シータ完全性=25.00° 98.8 %
吸収補正 数値
最大及び最小透過率 0.9331及び0.5508
精密化方法 F2のフルマトリックス最小二乗
データ/制限/パラメーター 16557/40/1026
F2の適合度 0.954
最終Rインデックス[I>2sigma (I)] R1= 0.0990, wR2 = 0.2370
Rインデックス(全データ) R1 = 0.1297, wR2 = 0.2549
絶対構造パラメーター -0.007 (11)
最大ディフ ピーク及びホール 1.975 及び-0.854 e.Å-3
【0098】
化合物b4(b)のX-線テーブル
実験式 C73 H112.60 Co N15 O27.30 P Re
式量 1913.28
温度 183 (2) K
波長 0.71073Å
結晶系 斜方晶系
空間群 P212121
単位格子寸法 a = 15.8758 (7) Å α=90°
b = 21.8451 (10) Å β=90°
c = 26.3673 (14) Å γ=90°
容積 9144.4(8) Å3
Z 4
密度(計算上) 1.390Mg/m3
吸収係数 1.601mm-1
F(000) 3964
結晶サイズ 0.46 x 0.08 x 0.07 mm3
データ収集のためのシータ範囲 1.86乃至26.00°
インデックス範囲 -19<=h<=19, -26<=k<=26, -32<=1<=32
収集した反射 68628
独立した反射 17853 [R (int) = 0.1048]
シータ完全性=26.00° 99.5 %
吸収補正 数値
最大及び最小透過率 0.9257及び0.7060
精密化方法 F2のフルマトリックス最小二乗
データ/制限/パラメーター 17853/2/1071
F2の適合度 0.900
最終Rインデックス[I>2sigma (I)] R1= 0.0662, wR2 = 0.1588
Rインデックス(全データ) R1 = 0.1159, wR2 = 0.1742
絶対構造パラメーター -0.014 (8)
最大ディフ ピーク及びホール 2.044 及び-1.063 e.Å-3
【0099】
化合物b5のX-線データ及び構造精密化
実験式 C137H184C12Co2F3N32O56P2Pt2
式量 3873.04
温度 183 (2) K
波長 0.71073Å
結晶系 P1
空間群 三斜晶系
単位格子寸法 a = 16.9434 (17) Å, α= 111.999(10)°
b = 17.3115 (15) Å, β=99.721(11)°
c = 18.0814 (17) Å, γ=90.580(11)°
容積 4831.2(8) Å3
Z 1
密度(計算上) 1.331Mg/m3
吸収係数 1.741mm-1
F(000) 1979
結晶サイズ 0.34 x 0.14 x 0.10 mm3
データ収集のためのシータ範囲 2.31乃至28.05°
インデックス範囲 -22<=h<=22, -22<=k<=22, -23<=1<=23
収集した反射 46915
独立した反射 38480 [R (int) = 0.0685]
シータ完全性=28.05° 92.0 %
最大及び最小透過率 0.8545及び0.7101
精密化方法 F2のフルマトリックス最小二乗
データ/制限/パラメーター 38480/61/1937
F2の適合度 0.914
最終Rインデックス[I>2sigma (I)] R1= 0.0720, wR2 = 0.1731
Rインデックス(全データ) R1 = 0.1138, wR2 = 0.1925
絶対構造パラメーター -0.015 (5)
最大ディフ.ピーク及びホール 1.144 及び-1.967 e.Å-3
【0100】
引用文献
[1] 2.87版 , STOE & Cie, GmbH, Darmstadt, Germany, 1998.
[2] G. M. Sheldrick, Acta Cryst. 1990, A46, 467.
[3] A. Altomare, M. C. Burla, M. Camalli, G. L.
Cascarano, C. A. Guagliardi, A. G. G.
Moliterni, G. Polidori, R. Spagna, J. Appl. Cryst.
1999, 32, 115.
[4] G. M. Sheldrick, University Gottingen, 1997.
[5] R. Alberto, A. Egli, U. Abram, K. Hegetschweiler,
P. A. Schubiger, J. Chem. Soc. Dalton Trans. 1994, 2815.
[6] R. Alberto, K. Ortner, N. Wheatley, R. Schibli,
A. P. Schubiger, J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 3135.
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1はビタミンB12に結合する前の前駆錯体を示す。番号は、実施例で用いられている番号に相当する。
【図2】図2は、本発明の金属錯体の例を示す。番号は、実施例で用いられている番号に相当する。
【図3】図3は、99mTc(VitB12)(H2O)(CO)3のHPLCクロマトグラムを示す。
【図4】図4は、ビタミンB12の構造式を示す。
【図5】図5は、化合物b1、b4、b5及びb6のX線構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式M(L)n
{式中、Lはそれぞれ独立して選択され、配位子を意味し、かつ、少なくとも1個のLは、そのシアニド基の窒素原子を介してM(遷移金属から選択される元素である)に結合し、それによって、M-NC-[Co](式中、[Co]はシアニドを有しないビタミンB12を意味する)部分を形成しているビタミンB12(シアノコバラミン)またはその誘導体であり、nは1、2、3、4、5または6である}
の金属錯体。
【請求項2】
遷移金属が、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、パラジウム、白金、イリジウム及び銅から選択される、請求項1に記載の金属錯体。
【請求項3】
金属が、99mTc、188Re、186Re等のReまたはTc元素の放射性同位体である、請求項1または2に記載の金属錯体。
【請求項4】
Mがテクネチウムまたはレニウムのとき、他の配位子が3個のカルボニル基(CO's)及び、場合によっては二座配位子(場合によっては更に1個の金属錯体、または生物活性分子または蛍光物質のような他の分子と結合している)を含む、請求項1−3のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項5】
二座配位子が、2個の脂肪族及び/または芳香族アミン部分、または1個の脂肪族及び/または芳香族アミン部分、及びカルボキシレート、チオレートまたはヒドロキシレートのような陰性基から選択される、請求項4に記載の金属錯体。
【請求項6】
二座配位子が、α−アミノ酸またはピコリン酸誘導体から選択される、請求項5に記載の金属錯体。
【請求項7】
Mが白金のとき、Lは、金属への配位に利用される、金属結合原子または、1対の非結合電子対の他のドナーとして、独立してN、S、P、O、Cを含む配位子から選択され、場合によっては更なる金属錯体または、生物活性分子または蛍光分子等の更なる分子と結合している、請求項1−3のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項8】
他の分子が、蛍光物質、細胞毒性もしくは細胞増殖抑制もしくは他の薬理活性を有するファーマコフォア、光学色素、NIR色素、またはリン光色素から選択される、請求項4または7のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項9】
蛍光物質が、フルオレセイン、ピレン、アクリジンまたはダンシルから選択される、請求項8に記載の金属錯体。
【請求項10】
細胞毒性剤が、タモキシフェン、メトトレキサート、またはシクロホスファミドである、請求項8に記載の金属錯体。
【請求項11】
図2で示される構造式を有する、請求項1−10のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項12】
ビタミンB12と一般式M(L)n-1L'(式中、Mは遷移金属であり、nは2、3、4、5または6であり、L'はビタミンB12またはその誘導体により置換される配位子であり、それぞれのLは独立して選択され、安定な[Co]-CN-M架橋を有する金属錯体を得る為の配位子である)の前駆錯体を混合することを含む、請求項1−11のいずれか一項に記載の金属錯体の製造法。
【請求項13】
一般式M(L)n-1L'(式中、Mは遷移金属であり、nは2、3、4、5または6であり、L'は置換される配位子であり、それぞれのLは独立して選択され、請求項1−11のいずれか一項に記載の金属錯体の製造に使用される配位子である)を有する、前駆錯体。
【請求項14】
図1で示される構造式を有する、請求項13に記載の前駆錯体。
【請求項15】
放射線診断、化学療法または放射性核種療法に使用される、請求項1−11のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項16】
Mが触媒反応に使用する、触媒活性を有する金属である、請求項1−11のいずれか一項に記載の金属錯体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2007−518727(P2007−518727A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548244(P2006−548244)
【出願日】平成17年1月10日(2005.1.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000168
【国際公開番号】WO2005/068483
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(501393966)ウニヴェルジテート・チューリッヒ (13)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET ZUERICH
【Fターム(参考)】