配合推定方法
【課題】 硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を効果的に除去し、得られた骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を精度良く行うことができる硬化コンクリートの配合推定方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備え、セメント成分が除去された骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を行う配合推定方法であって、前記セメント除去工程は、セメント成分が付着した骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬する浸漬工程と、セメント成分が付着した骨材を加熱する加熱工程とを備え、浸漬工程を行った後に加熱工程を行う操作を複数回繰り返すことを特徴とする。
【解決手段】 硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備え、セメント成分が除去された骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を行う配合推定方法であって、前記セメント除去工程は、セメント成分が付着した骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬する浸漬工程と、セメント成分が付着した骨材を加熱する加熱工程とを備え、浸漬工程を行った後に加熱工程を行う操作を複数回繰り返すことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化コンクリートから骨材を分離し、斯かる骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート構造物を構成する硬化したコンクリート(以下、硬化コンクリートという)の配合(具体的には、単位水量,単位セメント量,単位細骨材量,単位粗骨材量など)を推定することで、硬化コンクリートの力学的特性(耐久性など)の評価が行われている。
【0003】
硬化コンクリートの配合推定を行う方法としては、例えば、硬化コンクリートから分離した骨材に対して各種の質量測定を行い、得られた測定結果を用いて推定される配合(単位骨材量等)の算出が行われている。しかし、硬化コンクリートから分離された骨材には、セメント成分が付着しているため、配合推定を精度良く行うためには、骨材からセメント成分を除去する必要がある。骨材からセメント成分を除去する方法としては、セメント成分が付着した骨材を希塩酸溶液からなる浸漬液に浸漬し、骨材に付着したセメント成分を溶解させて除去する方法が用いられている(非特許文献1参照)。
【0004】
また、骨材に付着したセメント成分を除去する他の方法としては、セメント成分が付着した骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬して加温しつつ撹拌する方法が用いられている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】(社)セメント協会コンクリート専門委員会:F−18およびF−23硬化コンクリートの配合推定に関する共同実験報告(1974)
【非特許文献2】硬化コンクリートの単位セメント量判定試験方法に関する研究−グルコン酸ナトリウムによる試験方法の確立−(日本建築学会構造系論文集,第460号,第1〜10頁,1994年6月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1のように、希塩酸溶液を用いてセメント成分を除去する方法では、骨材自体が希塩酸溶液に溶解してしまう虞がある。また、非特許文献2のように、グルコン酸ナトリウム溶液を用いてセメント成分を除去する方法は、希塩酸溶液を用いる場合よりも骨材自体の溶解を抑制することができるものの、セメント成分を溶解する作用が低く、骨材からセメント成分を十分に除去することができない場合がある。
【0007】
このように、希塩酸溶液によって浸食され、又は、セメント成分が効果的に除去されていない骨材を用いて配合推定に必要な各種質量測定を行うと、正確な測定結果を得ることができず、推定される硬化コンクリートの配合が実際の配合から大きく外れてしまう虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を効果的に除去し、得られた骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を精度良く行うことができる硬化コンクリートの配合推定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る配合推定方法は、硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備え、セメント成分が除去された骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を行う配合推定方法であって、前記セメント除去工程は、セメント成分が付着した骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬する浸漬工程と、セメント成分が付着した骨材を加熱する加熱工程とを備え、浸漬工程を行った後に加熱工程を行う操作を複数回繰り返すことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る配合推定方法は、硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備え、セメント成分が除去された骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を行う配合推定方法であって、前記セメント除去工程は、セメント成分が付着した骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬する浸漬工程と、セメント成分が付着した骨材を加熱する加熱工程とを備え、加熱工程を行った後に浸漬工程を行う操作を複数回繰り返すことを特徴とする。
【0011】
斯かる構成によれば、グルコン酸ナトリウム溶液を用いて浸漬工程を行うことで、骨材自体の溶解を抑制しつつ骨材に付着したセメント成分の溶解を行うことができる。また、セメント成分が付着した骨材に対して加熱工程を行うことで、セメント成分を脆化させることができると共に、骨材とセメント成分との熱膨張係数の相違によって両者に温度ひずみの差が生じ、両者の界面に剥離を生じさせることができる。これにより、セメント成分を骨材から剥がれ易くすることができる。
【0012】
そして、浸漬工程後に加熱工程を行う操作、又は、加熱工程後に浸漬工程を行う操作を複数回繰り返すことで、加熱工程後に浸漬工程が行われるため、骨材とセメント成分との間に浸漬液を浸透させることができる。このため、セメント成分と浸漬液との接触面積が増加し、セメント成分を効果的に溶解させることができる。
【0013】
以上のように、骨材の表面に付着したセメント成分を効果的に除去することができるため、斯かる骨材を用いた硬化コンクリートの配合推定を精度良く行うことができる。
【0014】
前記加熱工程におけるセメント付き骨材の加熱温度は、500℃以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を効果的に除去し、得られた骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
本発明に係る配合推定方法は、コンクリート構造物のように、既に硬化した状態のコンクリート(硬化コンクリート)の配合推定を行う方法である。具体的には、硬化コンクリートから分離された骨材を用いて配合推定を行うものである。本実施形態では、表乾状態の各種単位量、具体的には、単位粗骨材料G、単位細骨材量S、単位セメント量C、単位水量Wが推定されると共に、水セメント比W/Cが推定されるものである。
【0018】
本発明に係る配合推定方法は、コンクリート構造物から硬化コンクリートを採取する工程と、硬化コンクリートの絶乾単位体積質量ρdを求める工程と、硬化コンクリートの強熱減量Lcを求める工程と、骨材に付着したセメント成分を除去する工程(セメント除去工程)と、粗骨材および細骨材の吸水率Gw,Swおよび不溶残分率Scを求める工程と、粗骨材、細骨材および骨材全体の強熱減量Lg,Ls,Laを求める工程と、前記各種単位量を算出する工程とから構成されている。
【0019】
<硬化コンクリートの採取>
コンクリート構造物から所定サイズ(φ75mm×150mm程度)の硬化コンクリート(以下、コンクリート試料と記す)を採取する。コンクリート試料の重量としては、1500g以上であることが好ましく、2000g以上であることがより好ましい。
【0020】
そして、前記コンクリート試料を所定温度(具体的には、20℃)の水中に所定時間(具体的には、24時間以上)載置する。その後、コンクリート試料の水中での質量を測定し、次にコンクリート試料を水中から取り出して気中での表乾状態における質量I20を測定する。そして、これらの結果からコンクリート試料の体積Vdを求める。
【0021】
<硬化コンクリートの絶乾単位体積質量ρd>
次に、上記のコンクリート試料をビニール袋などの容器に入れて密閉し、ハンマー等で約25mm以下の大きさに粉砕する。粉砕したコンクリート試料(以下、コンクリート片と記す)をステンレスの容器(パット)に入れ、所定温度(具体的には、105℃)で所定時間(具体的には、48時間)加熱する。その後、コンクリート片を20℃の室温で静置冷却し、室温と略等しくなってから質量(即ち、コンクリート試料の質量)I105を測定する。そして、コンクリート試料の質量I105と、上記で求めたコンクリート試料の体積Vdとを用い、下記(1)式によりコンクリート試料(即ち、硬化コンクリート)の絶乾単位体積質量ρdを求める。
ρd=I105/Vd・・・(1)
【0022】
<硬化コンクリートの強熱減量Lc>
前記コンクリート片をステンレスの容器(パット)に入れ、所定温度(具体的には、500℃)で所定時間(具体的には、24時間)加熱する。その後、コンクリート片を20℃の室温で静置冷却し、室温と略等しくなってから質量(即ち、コンクリート試料の質量)I500を測定する。そして、前記コンクリート試料の質量I105を基準として、下記(2)式により硬化コンクリートの強熱減量Lcを求める。
Lc=[(I105−I500)/I105]×100・・・(2)
【0023】
<セメント除去工程>
前記コンクリート片を乳鉢等に入れ、骨材が破砕されない程度に粉砕する。これにより得られるコンクリート片の粉砕物(以下、コンクリート粉砕物と記す)は、セメント成分が付着した骨材から構成されたものとなっている。そして、斯かるコンクリート粉砕物の全量(即ち、セメント成分が付着した骨材の全量)をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬し、所定時間(具体的には、24時間)振とうさせる(浸漬工程)。なお、コンクリート粉砕物の質量に対するグルコン酸ナトリウム溶液の容積は、3L/kg以上となるのが望ましく、5L/kg以上がより望ましい。
【0024】
グルコン酸ナトリウム溶液の濃度としては、10〜20%であることが好ましく、15%であることがより好ましい。浸漬液の温度としては、例えば、55±5℃であることがより好ましい。浸漬液を振とうさせる際には、例えば、振れ幅50mm、振動数130回/minとすることができる装置(例えば、宮本理研工業製 溶出振とう試験装置MW−YS)を用いることができる。
【0025】
その後、浸漬液からコンクリート粉砕物を取り出して水洗した後、所定の温度で所定時間加熱する(加熱工程)。加熱工程の温度としては、500℃以下であることが好ましく、250〜350℃であることがより好ましい。加熱時間としては、2〜4時間が好ましく、3〜4時間であることがより好ましい。
【0026】
そして、上記のように浸漬工程後に加熱工程を行う操作を複数回(例えば、3〜5回)繰り返し行い、最後に浸漬工程を行う。そして、最後の浸漬工程における浸漬液を45μm目の篩いに通し、篩い上に残った残差(具体的には、セメント成分が除去された骨材)を水洗いして骨材を採取する。
【0027】
<粗骨材および細骨材の吸水率Gw,Sw>
上記で採取された骨材を所定温度(具体的には、20℃)の水中で所定時間(具体的には、24時間以上)静置した後、5mm目および75μm目の篩いを用いて篩い分けを行う。そして、5mm目の篩い上にある骨材を粗骨材、5mm目の篩を通過し75μm目の篩い上にある骨材を細骨材とし、斯かる粗骨材および細骨材の質量Igs,Issを測定する。その後、粗骨材および細骨材を105℃で恒量となるまで乾燥し、その質量Ig105,Is105を測定する。そして、下記(3)および(4)式により、粗骨材および細骨材の吸水率Gw,Swを求める。
Gw=[(Igs−Ig105)/Ig105]×100・・・(3)
Sw=[(Iss−Is105)/Is105]×100・・・(4)
【0028】
<不溶残分率Sc>
105℃で恒量になるまで乾燥した際の前記コンクリート試料の質量I105と、粗骨材および細骨材の質量Ig105,Is105とから下記(5)式により、不溶残分率Scを求める。即ち、不溶残分率Scは、後述する硬化コンクリート中の骨材の質量割合A0と同一である。
Sc=[(Ig105+Is105)/I105]×100・・・(5)
【0029】
<粗骨材、細骨材および骨材全体の強熱減量Lg,Ls,La>
前記質量Ig105,Is105を測定した粗骨材および細骨材を所定温度(具体的には、500℃)で所定時間(具体的には、12時間程度)加熱した後、20℃の室温で静置冷却し、室温と略等しくなってから粗骨材および細骨材の質量Ig500およびIs500を測定する。そして、前記粗骨材および細骨材の質量Ig105,Is105を基準として、下記(6)および(7)式により、粗骨材および細骨材の500℃までの強熱減量Lg,Lsを求める。また、下記(8)式により、骨材全体の500℃までの強熱減量Laを求める。
Lg=[(Ig105−Ig500)/Ig105]×100・・・(6)
Ls=[(Is105−Is500)/Is105]×100・・・(7)
La=[Lg×Ig105/(Ig105+Is105)]
+[Ls×Is105/(Ig105+Is105)]・・・(8)
【0030】
<各種単位量の算出>
1.硬化コンクリート中のセメント成分の質量割合C0
500〜1000℃におけるセメントペーストの結合水の減量kを8.0%と仮定し、前記硬化コンクリートの強熱減量Lcと、前記不溶残分率Scとを用いて、下記(9)式により、硬化コンクリート中のセメント成分の質量割合C0を求める。
C0=(100−Lc−Sc)×(100−k)/100・・・(9)
【0031】
2.硬化コンクリート中の骨材の質量割合A0
硬化コンクリート中の骨材の質量割合A0は、前記不溶残分率Scと同一であるため、下記(10)式により硬化コンクリート中の骨材の質量割合A0を求める。
A0=Sc・・・(10)
【0032】
3.硬化コンクリート中の結合水の質量割合W0
前記硬化コンクリートの強熱減量Lcと、前記骨材全体の500℃までの強熱減量Laと、前記硬化コンクリート中のセメント成分の質量割合C0と、前記硬化コンクリート中の骨材の質量割合A0と、上記の結合水の減量kとを用いて、硬化コンクリート中の結合水の質量割合W0を下記(11)式により求める。
W0=Lc+C0×k/100−A0×La/100・・・(11)
【0033】
4.セメント成分、骨材および結合水の合計量に対する割合
前記硬化コンクリート中のセメント成分の質量割合C0、前記骨材の質量割合A0、前記結合水の質量割合W0を用いて、それぞれの合計に対するセメント成分の質量割合C1、骨材全体の質量割合A1および結合水の質量割合W1を下記(12)〜(14)式により求める。
C1=C0/(C0+A0+W0)×100・・・(12)
A1=A0/(C0+A0+W0)×100・・・(13)
W1=W0/(C0+A0+W0)×100・・・(14)
【0034】
5.絶乾状態の単位骨材量Adおよび単位結合水量Wd
前記骨材全体の質量割合A1と、前記結合水の質量割合W1と、前記硬化コンクリートの絶乾単位体積質量ρdとを用いて、105℃で乾燥した絶乾状態の単位骨材量Adおよび単位結合水量Wdを(15)および(16)式により求める。
Ad=A1×ρd/100・・・(15)
Wd=W1×ρd/100・・・(16)
【0035】
6.絶乾状態の単位粗骨材量Gd、単位細骨材量Sdおよび骨材の吸水量Aw
前記絶乾状態の単位骨材量Adと、前記粗骨材および細骨材の質量Ig105,Is105とを用いて、105℃で乾燥した絶乾状態の単位粗骨材量Gdおよび単位細骨材量Sdを下記(17)および(18)式より求める。また、前記単位粗骨材量Gdと、前記単位細骨材量Sdと、前記粗骨材および細骨材の吸水率Gw,Swとを用いて、骨材の吸水量Awを下記(19)式により求める。
Gd=Ad×Ig105/(Ig105+Is105)・・・(17)
Sd=Ad×Is105/(Ig105+Is105)・・・(18)
Aw=(Gd×Gw+Sd×Sw)×100・・・(19)
【0036】
7.表乾状態の単位粗骨材量G,単位細骨材量S,単位セメント量C,単位水量Wおよび水セメント比W/C
前記単位粗骨材量Gdと、前記単位細骨材量Sdと、前記粗骨材および細骨材の吸水率Gw,Swと、前記硬化コンクリートの絶乾単位体積質量ρdと、前記セメント成分の質量割合C1とを用いて、表乾状態の単位粗骨材量G,単位細骨材量S,単位セメント量C,単位水量Wおよび水セメント比W/Cを下記(20)〜(24)式により求める。
G=Gd×(100+Gw)/100・・・(20)
S=Sd×(100+Sw)/100・・・(21)
C=ρd×Cl/100・・・(22)
W=W20+Wd−Aw・・・(23)
W/C=W/C・・・(24)
なお、上記W20は、前記コンクリート試料の表乾状態の質量I20と、前記コンクリート試料の質量I105と、前記硬化コンクリートの絶乾単位体積質量ρdとを用いて、下記(25)式により求まるものである。
W20=[(I20−I105)/I105)]×ρd・・・(25)
【0037】
以上のように、本発明に係る配合推定方法によれば、硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を効果的に除去し、得られた骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を精度良く行うことができる。
【0038】
即ち、グルコン酸ナトリウム溶液を用いて浸漬工程を行うことで、骨材自体の溶解を抑制しつつ骨材に付着したセメント成分の溶解を行うことができる。また、セメント成分が付着した骨材に対して加熱工程を行うことで、セメント成分を脆化させることができると共に、骨材とセメント成分との熱膨張係数の相違によって両者に温度ひずみの差が生じ、両者の界面に剥離を生じさせることができる。これにより、セメント成分を骨材から剥がれ易くすることができる。
【0039】
そして、浸漬工程後に加熱工程を行う操作、又は、加熱工程後に浸漬工程を行う操作を複数回繰り返すことで、加熱工程後に浸漬工程が行われるため、骨材とセメント成分との間に浸漬液を浸透させることができる。このため、セメント成分と浸漬液との接触面積が増加し、セメント成分を効果的に溶解させることができる。
【0040】
これにより、骨材の表面に付着したセメント成分を効果的に除去することができ、斯かる骨材を用いた硬化コンクリートの配合推定を精度良く行うことができる。
【0041】
なお、本発明に係る保持具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0042】
例えば、骨材からセメント成分を除去し難い場合には、初めの浸漬工程後、1.2mm目の篩いで篩い分けを行い、篩い上と篩い下を別々に浸漬工程を行い、その後、篩い上と篩い下のそれぞれに対して加熱工程を行うようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、初めに浸漬工程を行った後、加熱工程が行われているが、これに限定されるものではなく、まず始めにコンクリート粉砕物(即ち、セメント成分が付着した骨材)に対して加熱工程を行い、その後に浸漬工程を行うようにしてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0045】
1.第一試験(配合推定)
<硬化コンクリートの供試体の作製>
φ100×200mmの硬化コンクリートからなる供試体(約3.7kg)を作製するべく、下記表1に示す配合(元配合)のコンクリートと水とを混練して型枠に投入し、型枠をポリエチレンシートで密封した。そして、材齢28日となるまで恒温恒湿(温度:20℃、湿度:90%以上)の容器内で保管して供試体を作製した。なお、細骨材としては、石灰砕砂(密度2.65g/cm3)を使用し、粗骨材としては、石灰砕石(密度2.69g/cm3)を使用した。
【0046】
<実施例1>
上記実施形態に示す方法で供試体の配合推定(表乾状態の各種単位量の推定)を行った。なお、上記の供試体から形成されるコンクリート粉砕物を1.85kgずつ2つに分けてセメント除去工程を行った。具体的なセメント除去工程の条件としては、15%グルコン酸ナトリウム溶液9.25L(供試体1kgに対して5L)を浸漬液として用い、浸漬液の温度を55±5℃で管理し、1回の浸漬時間を24時間として浸漬工程を行った。一方、加熱工程では、加熱温度を300℃とし、1回の加熱時間を3時間とした。そして、浸漬工程後に加熱工程を行う操作を4回繰り返した。配合推定の結果については、下記表1に示す。
【0047】
<比較例1>
浸漬工程後に行われる加熱工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同一条件で供試体の配合推定(表乾状態の各種単位量の推定)を行った。配合推定の結果については、下記表1に示す。
【0048】
<比較例2>
上記の非特許文献2に記載の方法を用いて、供試体の配合(具体的には、セメント成分の単位量)の推定を行った。配合推定の結果については、下記表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
<まとめ>
実施例1と比較例1とを比較すると、各単位量において実施例1の方が元配合に近い値となっていることが認められる。つまり、加熱工程を行うことで、骨材からのセメント成分の除去を効果的に行うことができ、配合推定を精度良く行うことができることが認められる。
また、実施例1と比較例2とを比較すると、実施例1の単位セメント量の方が元配合の単位セメント量に近いことが認められる。つまり、本願発明による方法の方が、従来技術である非特許文献2に記載の方法よりも配合推定を精度良く行うことができることが認められる。
【0051】
2.第二試験(配合推定)
<硬化コンクリートの供試体の作製>
下記表2に示す元配合1〜3のコンクリートと水を混練し、材齢91日としたこと以外は、第一試験と同一条件で供試体を作製した。なお、元配合1〜3で使用した粗骨材および細骨材の種類については、下記表3に示す。
【0052】
<配合推定>
第一試験の実施例1の方法によって、元配合1〜3の供試体の配合推定(表乾状態の各種単位量の推定)を行った。
第一試験の比較例1の方法によって、元配合2および3の供試体の配合推定(表乾状態の各種単位量の推定)を行った。
第一試験の比較例2の方法によって、元配合2および3の供試体の配合推定(表乾状態の各種単位量の推定)を行った。
比較例3として、希塩酸(1+100)を浸漬液として用いたこと以外は実施例1と同一条件で、元配合1の供試体の配合推定(表乾状態の各種単位量の推定)を行った。
比較例4として、上記の非特許文献1に記載の方法を用いて、元配合1の供試体の配合の推定を行った。
各配合推定の結果については、下記表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
<まとめ>
元配合1の試験結果において、実施例1と比較例3とを比較すると、各単位量において実施例1の方が元配合に近い値となっていることが認められる。つまり、浸漬液として希塩酸を使用するよりもグルコン酸ナトリウム溶液を使用した方が、骨材自体の溶解を抑制しつつ骨材からのセメント成分の除去を効果的に行うことができ、配合推定を精度良く行うことができることが認められる。
また、実施例1と比較例4とを比較すると、実施例1の単位セメント量の方が元配合の単位セメント量に近いことが認められる。つまり、本願発明による方法の方が、従来技術である非特許文献1に記載の方法よりも配合推定を精度良く行うことができることが認められる。
【0056】
元配合2および3の試験結果において、実施例1と比較例1および比較例2とを比較すると、各単位量において実施例1の方が比較例1よりも元配合に近い値となっていると共に、実施例1の方が比較例2よりも単位セメント量が元配合に近い値となっていることが認められる。つまり、加熱工程を行うことで、骨材からのセメント成分の除去を効果的に行うことができ、配合推定を精度良く行うことができることが認められる。また、配合の異なる供試体に対しても実施例1の方が配合推定を精度良く行うことができることが認められる。
【0057】
3.第三試験(元配合で使用した骨材とセメント除去工程後の骨材との比較)
第一試験で用いた元配合の粗骨材および細骨材(原粗骨材および原細骨材)と、実施例1のセメント除去工程で得られた粗骨材および細骨材(回収粗骨材および回収細骨材)とについて、吸水率Gw,Swおよび500℃までの強熱減量Lg,Lsを上記実施形態と同様の手順で算出した。また、原粗骨材および原細骨材と、回収粗骨材および回収細骨材とについて、密度を求めた。
「吸水率Gw,Sw」、「500℃までの強熱減量Lg,Ls」および「密度」を下記表4および5に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
<まとめ>
表4および5の結果を見ると、回収粗骨材および回収細骨材における「吸水率Gw,Sw」、「500℃までの強熱減量Lg,Ls」および「密度」の数値が原粗骨材および原細骨材のものと略同等の数値となっていることが認められる。つまり、実施例1のようにグルコン酸ナトリウム溶液を用いた浸漬工程と、加熱工程を行うことで、骨材からセメント成分を効果的に除去することができ、原骨材と同等の物性を有する回収骨材を得ることができることが認められる。このため、回収骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を精度良く行うことができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化コンクリートから骨材を分離し、斯かる骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート構造物を構成する硬化したコンクリート(以下、硬化コンクリートという)の配合(具体的には、単位水量,単位セメント量,単位細骨材量,単位粗骨材量など)を推定することで、硬化コンクリートの力学的特性(耐久性など)の評価が行われている。
【0003】
硬化コンクリートの配合推定を行う方法としては、例えば、硬化コンクリートから分離した骨材に対して各種の質量測定を行い、得られた測定結果を用いて推定される配合(単位骨材量等)の算出が行われている。しかし、硬化コンクリートから分離された骨材には、セメント成分が付着しているため、配合推定を精度良く行うためには、骨材からセメント成分を除去する必要がある。骨材からセメント成分を除去する方法としては、セメント成分が付着した骨材を希塩酸溶液からなる浸漬液に浸漬し、骨材に付着したセメント成分を溶解させて除去する方法が用いられている(非特許文献1参照)。
【0004】
また、骨材に付着したセメント成分を除去する他の方法としては、セメント成分が付着した骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬して加温しつつ撹拌する方法が用いられている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】(社)セメント協会コンクリート専門委員会:F−18およびF−23硬化コンクリートの配合推定に関する共同実験報告(1974)
【非特許文献2】硬化コンクリートの単位セメント量判定試験方法に関する研究−グルコン酸ナトリウムによる試験方法の確立−(日本建築学会構造系論文集,第460号,第1〜10頁,1994年6月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1のように、希塩酸溶液を用いてセメント成分を除去する方法では、骨材自体が希塩酸溶液に溶解してしまう虞がある。また、非特許文献2のように、グルコン酸ナトリウム溶液を用いてセメント成分を除去する方法は、希塩酸溶液を用いる場合よりも骨材自体の溶解を抑制することができるものの、セメント成分を溶解する作用が低く、骨材からセメント成分を十分に除去することができない場合がある。
【0007】
このように、希塩酸溶液によって浸食され、又は、セメント成分が効果的に除去されていない骨材を用いて配合推定に必要な各種質量測定を行うと、正確な測定結果を得ることができず、推定される硬化コンクリートの配合が実際の配合から大きく外れてしまう虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を効果的に除去し、得られた骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を精度良く行うことができる硬化コンクリートの配合推定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る配合推定方法は、硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備え、セメント成分が除去された骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を行う配合推定方法であって、前記セメント除去工程は、セメント成分が付着した骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬する浸漬工程と、セメント成分が付着した骨材を加熱する加熱工程とを備え、浸漬工程を行った後に加熱工程を行う操作を複数回繰り返すことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る配合推定方法は、硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備え、セメント成分が除去された骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を行う配合推定方法であって、前記セメント除去工程は、セメント成分が付着した骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬する浸漬工程と、セメント成分が付着した骨材を加熱する加熱工程とを備え、加熱工程を行った後に浸漬工程を行う操作を複数回繰り返すことを特徴とする。
【0011】
斯かる構成によれば、グルコン酸ナトリウム溶液を用いて浸漬工程を行うことで、骨材自体の溶解を抑制しつつ骨材に付着したセメント成分の溶解を行うことができる。また、セメント成分が付着した骨材に対して加熱工程を行うことで、セメント成分を脆化させることができると共に、骨材とセメント成分との熱膨張係数の相違によって両者に温度ひずみの差が生じ、両者の界面に剥離を生じさせることができる。これにより、セメント成分を骨材から剥がれ易くすることができる。
【0012】
そして、浸漬工程後に加熱工程を行う操作、又は、加熱工程後に浸漬工程を行う操作を複数回繰り返すことで、加熱工程後に浸漬工程が行われるため、骨材とセメント成分との間に浸漬液を浸透させることができる。このため、セメント成分と浸漬液との接触面積が増加し、セメント成分を効果的に溶解させることができる。
【0013】
以上のように、骨材の表面に付着したセメント成分を効果的に除去することができるため、斯かる骨材を用いた硬化コンクリートの配合推定を精度良く行うことができる。
【0014】
前記加熱工程におけるセメント付き骨材の加熱温度は、500℃以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を効果的に除去し、得られた骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
本発明に係る配合推定方法は、コンクリート構造物のように、既に硬化した状態のコンクリート(硬化コンクリート)の配合推定を行う方法である。具体的には、硬化コンクリートから分離された骨材を用いて配合推定を行うものである。本実施形態では、表乾状態の各種単位量、具体的には、単位粗骨材料G、単位細骨材量S、単位セメント量C、単位水量Wが推定されると共に、水セメント比W/Cが推定されるものである。
【0018】
本発明に係る配合推定方法は、コンクリート構造物から硬化コンクリートを採取する工程と、硬化コンクリートの絶乾単位体積質量ρdを求める工程と、硬化コンクリートの強熱減量Lcを求める工程と、骨材に付着したセメント成分を除去する工程(セメント除去工程)と、粗骨材および細骨材の吸水率Gw,Swおよび不溶残分率Scを求める工程と、粗骨材、細骨材および骨材全体の強熱減量Lg,Ls,Laを求める工程と、前記各種単位量を算出する工程とから構成されている。
【0019】
<硬化コンクリートの採取>
コンクリート構造物から所定サイズ(φ75mm×150mm程度)の硬化コンクリート(以下、コンクリート試料と記す)を採取する。コンクリート試料の重量としては、1500g以上であることが好ましく、2000g以上であることがより好ましい。
【0020】
そして、前記コンクリート試料を所定温度(具体的には、20℃)の水中に所定時間(具体的には、24時間以上)載置する。その後、コンクリート試料の水中での質量を測定し、次にコンクリート試料を水中から取り出して気中での表乾状態における質量I20を測定する。そして、これらの結果からコンクリート試料の体積Vdを求める。
【0021】
<硬化コンクリートの絶乾単位体積質量ρd>
次に、上記のコンクリート試料をビニール袋などの容器に入れて密閉し、ハンマー等で約25mm以下の大きさに粉砕する。粉砕したコンクリート試料(以下、コンクリート片と記す)をステンレスの容器(パット)に入れ、所定温度(具体的には、105℃)で所定時間(具体的には、48時間)加熱する。その後、コンクリート片を20℃の室温で静置冷却し、室温と略等しくなってから質量(即ち、コンクリート試料の質量)I105を測定する。そして、コンクリート試料の質量I105と、上記で求めたコンクリート試料の体積Vdとを用い、下記(1)式によりコンクリート試料(即ち、硬化コンクリート)の絶乾単位体積質量ρdを求める。
ρd=I105/Vd・・・(1)
【0022】
<硬化コンクリートの強熱減量Lc>
前記コンクリート片をステンレスの容器(パット)に入れ、所定温度(具体的には、500℃)で所定時間(具体的には、24時間)加熱する。その後、コンクリート片を20℃の室温で静置冷却し、室温と略等しくなってから質量(即ち、コンクリート試料の質量)I500を測定する。そして、前記コンクリート試料の質量I105を基準として、下記(2)式により硬化コンクリートの強熱減量Lcを求める。
Lc=[(I105−I500)/I105]×100・・・(2)
【0023】
<セメント除去工程>
前記コンクリート片を乳鉢等に入れ、骨材が破砕されない程度に粉砕する。これにより得られるコンクリート片の粉砕物(以下、コンクリート粉砕物と記す)は、セメント成分が付着した骨材から構成されたものとなっている。そして、斯かるコンクリート粉砕物の全量(即ち、セメント成分が付着した骨材の全量)をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬し、所定時間(具体的には、24時間)振とうさせる(浸漬工程)。なお、コンクリート粉砕物の質量に対するグルコン酸ナトリウム溶液の容積は、3L/kg以上となるのが望ましく、5L/kg以上がより望ましい。
【0024】
グルコン酸ナトリウム溶液の濃度としては、10〜20%であることが好ましく、15%であることがより好ましい。浸漬液の温度としては、例えば、55±5℃であることがより好ましい。浸漬液を振とうさせる際には、例えば、振れ幅50mm、振動数130回/minとすることができる装置(例えば、宮本理研工業製 溶出振とう試験装置MW−YS)を用いることができる。
【0025】
その後、浸漬液からコンクリート粉砕物を取り出して水洗した後、所定の温度で所定時間加熱する(加熱工程)。加熱工程の温度としては、500℃以下であることが好ましく、250〜350℃であることがより好ましい。加熱時間としては、2〜4時間が好ましく、3〜4時間であることがより好ましい。
【0026】
そして、上記のように浸漬工程後に加熱工程を行う操作を複数回(例えば、3〜5回)繰り返し行い、最後に浸漬工程を行う。そして、最後の浸漬工程における浸漬液を45μm目の篩いに通し、篩い上に残った残差(具体的には、セメント成分が除去された骨材)を水洗いして骨材を採取する。
【0027】
<粗骨材および細骨材の吸水率Gw,Sw>
上記で採取された骨材を所定温度(具体的には、20℃)の水中で所定時間(具体的には、24時間以上)静置した後、5mm目および75μm目の篩いを用いて篩い分けを行う。そして、5mm目の篩い上にある骨材を粗骨材、5mm目の篩を通過し75μm目の篩い上にある骨材を細骨材とし、斯かる粗骨材および細骨材の質量Igs,Issを測定する。その後、粗骨材および細骨材を105℃で恒量となるまで乾燥し、その質量Ig105,Is105を測定する。そして、下記(3)および(4)式により、粗骨材および細骨材の吸水率Gw,Swを求める。
Gw=[(Igs−Ig105)/Ig105]×100・・・(3)
Sw=[(Iss−Is105)/Is105]×100・・・(4)
【0028】
<不溶残分率Sc>
105℃で恒量になるまで乾燥した際の前記コンクリート試料の質量I105と、粗骨材および細骨材の質量Ig105,Is105とから下記(5)式により、不溶残分率Scを求める。即ち、不溶残分率Scは、後述する硬化コンクリート中の骨材の質量割合A0と同一である。
Sc=[(Ig105+Is105)/I105]×100・・・(5)
【0029】
<粗骨材、細骨材および骨材全体の強熱減量Lg,Ls,La>
前記質量Ig105,Is105を測定した粗骨材および細骨材を所定温度(具体的には、500℃)で所定時間(具体的には、12時間程度)加熱した後、20℃の室温で静置冷却し、室温と略等しくなってから粗骨材および細骨材の質量Ig500およびIs500を測定する。そして、前記粗骨材および細骨材の質量Ig105,Is105を基準として、下記(6)および(7)式により、粗骨材および細骨材の500℃までの強熱減量Lg,Lsを求める。また、下記(8)式により、骨材全体の500℃までの強熱減量Laを求める。
Lg=[(Ig105−Ig500)/Ig105]×100・・・(6)
Ls=[(Is105−Is500)/Is105]×100・・・(7)
La=[Lg×Ig105/(Ig105+Is105)]
+[Ls×Is105/(Ig105+Is105)]・・・(8)
【0030】
<各種単位量の算出>
1.硬化コンクリート中のセメント成分の質量割合C0
500〜1000℃におけるセメントペーストの結合水の減量kを8.0%と仮定し、前記硬化コンクリートの強熱減量Lcと、前記不溶残分率Scとを用いて、下記(9)式により、硬化コンクリート中のセメント成分の質量割合C0を求める。
C0=(100−Lc−Sc)×(100−k)/100・・・(9)
【0031】
2.硬化コンクリート中の骨材の質量割合A0
硬化コンクリート中の骨材の質量割合A0は、前記不溶残分率Scと同一であるため、下記(10)式により硬化コンクリート中の骨材の質量割合A0を求める。
A0=Sc・・・(10)
【0032】
3.硬化コンクリート中の結合水の質量割合W0
前記硬化コンクリートの強熱減量Lcと、前記骨材全体の500℃までの強熱減量Laと、前記硬化コンクリート中のセメント成分の質量割合C0と、前記硬化コンクリート中の骨材の質量割合A0と、上記の結合水の減量kとを用いて、硬化コンクリート中の結合水の質量割合W0を下記(11)式により求める。
W0=Lc+C0×k/100−A0×La/100・・・(11)
【0033】
4.セメント成分、骨材および結合水の合計量に対する割合
前記硬化コンクリート中のセメント成分の質量割合C0、前記骨材の質量割合A0、前記結合水の質量割合W0を用いて、それぞれの合計に対するセメント成分の質量割合C1、骨材全体の質量割合A1および結合水の質量割合W1を下記(12)〜(14)式により求める。
C1=C0/(C0+A0+W0)×100・・・(12)
A1=A0/(C0+A0+W0)×100・・・(13)
W1=W0/(C0+A0+W0)×100・・・(14)
【0034】
5.絶乾状態の単位骨材量Adおよび単位結合水量Wd
前記骨材全体の質量割合A1と、前記結合水の質量割合W1と、前記硬化コンクリートの絶乾単位体積質量ρdとを用いて、105℃で乾燥した絶乾状態の単位骨材量Adおよび単位結合水量Wdを(15)および(16)式により求める。
Ad=A1×ρd/100・・・(15)
Wd=W1×ρd/100・・・(16)
【0035】
6.絶乾状態の単位粗骨材量Gd、単位細骨材量Sdおよび骨材の吸水量Aw
前記絶乾状態の単位骨材量Adと、前記粗骨材および細骨材の質量Ig105,Is105とを用いて、105℃で乾燥した絶乾状態の単位粗骨材量Gdおよび単位細骨材量Sdを下記(17)および(18)式より求める。また、前記単位粗骨材量Gdと、前記単位細骨材量Sdと、前記粗骨材および細骨材の吸水率Gw,Swとを用いて、骨材の吸水量Awを下記(19)式により求める。
Gd=Ad×Ig105/(Ig105+Is105)・・・(17)
Sd=Ad×Is105/(Ig105+Is105)・・・(18)
Aw=(Gd×Gw+Sd×Sw)×100・・・(19)
【0036】
7.表乾状態の単位粗骨材量G,単位細骨材量S,単位セメント量C,単位水量Wおよび水セメント比W/C
前記単位粗骨材量Gdと、前記単位細骨材量Sdと、前記粗骨材および細骨材の吸水率Gw,Swと、前記硬化コンクリートの絶乾単位体積質量ρdと、前記セメント成分の質量割合C1とを用いて、表乾状態の単位粗骨材量G,単位細骨材量S,単位セメント量C,単位水量Wおよび水セメント比W/Cを下記(20)〜(24)式により求める。
G=Gd×(100+Gw)/100・・・(20)
S=Sd×(100+Sw)/100・・・(21)
C=ρd×Cl/100・・・(22)
W=W20+Wd−Aw・・・(23)
W/C=W/C・・・(24)
なお、上記W20は、前記コンクリート試料の表乾状態の質量I20と、前記コンクリート試料の質量I105と、前記硬化コンクリートの絶乾単位体積質量ρdとを用いて、下記(25)式により求まるものである。
W20=[(I20−I105)/I105)]×ρd・・・(25)
【0037】
以上のように、本発明に係る配合推定方法によれば、硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を効果的に除去し、得られた骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を精度良く行うことができる。
【0038】
即ち、グルコン酸ナトリウム溶液を用いて浸漬工程を行うことで、骨材自体の溶解を抑制しつつ骨材に付着したセメント成分の溶解を行うことができる。また、セメント成分が付着した骨材に対して加熱工程を行うことで、セメント成分を脆化させることができると共に、骨材とセメント成分との熱膨張係数の相違によって両者に温度ひずみの差が生じ、両者の界面に剥離を生じさせることができる。これにより、セメント成分を骨材から剥がれ易くすることができる。
【0039】
そして、浸漬工程後に加熱工程を行う操作、又は、加熱工程後に浸漬工程を行う操作を複数回繰り返すことで、加熱工程後に浸漬工程が行われるため、骨材とセメント成分との間に浸漬液を浸透させることができる。このため、セメント成分と浸漬液との接触面積が増加し、セメント成分を効果的に溶解させることができる。
【0040】
これにより、骨材の表面に付着したセメント成分を効果的に除去することができ、斯かる骨材を用いた硬化コンクリートの配合推定を精度良く行うことができる。
【0041】
なお、本発明に係る保持具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0042】
例えば、骨材からセメント成分を除去し難い場合には、初めの浸漬工程後、1.2mm目の篩いで篩い分けを行い、篩い上と篩い下を別々に浸漬工程を行い、その後、篩い上と篩い下のそれぞれに対して加熱工程を行うようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、初めに浸漬工程を行った後、加熱工程が行われているが、これに限定されるものではなく、まず始めにコンクリート粉砕物(即ち、セメント成分が付着した骨材)に対して加熱工程を行い、その後に浸漬工程を行うようにしてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0045】
1.第一試験(配合推定)
<硬化コンクリートの供試体の作製>
φ100×200mmの硬化コンクリートからなる供試体(約3.7kg)を作製するべく、下記表1に示す配合(元配合)のコンクリートと水とを混練して型枠に投入し、型枠をポリエチレンシートで密封した。そして、材齢28日となるまで恒温恒湿(温度:20℃、湿度:90%以上)の容器内で保管して供試体を作製した。なお、細骨材としては、石灰砕砂(密度2.65g/cm3)を使用し、粗骨材としては、石灰砕石(密度2.69g/cm3)を使用した。
【0046】
<実施例1>
上記実施形態に示す方法で供試体の配合推定(表乾状態の各種単位量の推定)を行った。なお、上記の供試体から形成されるコンクリート粉砕物を1.85kgずつ2つに分けてセメント除去工程を行った。具体的なセメント除去工程の条件としては、15%グルコン酸ナトリウム溶液9.25L(供試体1kgに対して5L)を浸漬液として用い、浸漬液の温度を55±5℃で管理し、1回の浸漬時間を24時間として浸漬工程を行った。一方、加熱工程では、加熱温度を300℃とし、1回の加熱時間を3時間とした。そして、浸漬工程後に加熱工程を行う操作を4回繰り返した。配合推定の結果については、下記表1に示す。
【0047】
<比較例1>
浸漬工程後に行われる加熱工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同一条件で供試体の配合推定(表乾状態の各種単位量の推定)を行った。配合推定の結果については、下記表1に示す。
【0048】
<比較例2>
上記の非特許文献2に記載の方法を用いて、供試体の配合(具体的には、セメント成分の単位量)の推定を行った。配合推定の結果については、下記表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
<まとめ>
実施例1と比較例1とを比較すると、各単位量において実施例1の方が元配合に近い値となっていることが認められる。つまり、加熱工程を行うことで、骨材からのセメント成分の除去を効果的に行うことができ、配合推定を精度良く行うことができることが認められる。
また、実施例1と比較例2とを比較すると、実施例1の単位セメント量の方が元配合の単位セメント量に近いことが認められる。つまり、本願発明による方法の方が、従来技術である非特許文献2に記載の方法よりも配合推定を精度良く行うことができることが認められる。
【0051】
2.第二試験(配合推定)
<硬化コンクリートの供試体の作製>
下記表2に示す元配合1〜3のコンクリートと水を混練し、材齢91日としたこと以外は、第一試験と同一条件で供試体を作製した。なお、元配合1〜3で使用した粗骨材および細骨材の種類については、下記表3に示す。
【0052】
<配合推定>
第一試験の実施例1の方法によって、元配合1〜3の供試体の配合推定(表乾状態の各種単位量の推定)を行った。
第一試験の比較例1の方法によって、元配合2および3の供試体の配合推定(表乾状態の各種単位量の推定)を行った。
第一試験の比較例2の方法によって、元配合2および3の供試体の配合推定(表乾状態の各種単位量の推定)を行った。
比較例3として、希塩酸(1+100)を浸漬液として用いたこと以外は実施例1と同一条件で、元配合1の供試体の配合推定(表乾状態の各種単位量の推定)を行った。
比較例4として、上記の非特許文献1に記載の方法を用いて、元配合1の供試体の配合の推定を行った。
各配合推定の結果については、下記表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
<まとめ>
元配合1の試験結果において、実施例1と比較例3とを比較すると、各単位量において実施例1の方が元配合に近い値となっていることが認められる。つまり、浸漬液として希塩酸を使用するよりもグルコン酸ナトリウム溶液を使用した方が、骨材自体の溶解を抑制しつつ骨材からのセメント成分の除去を効果的に行うことができ、配合推定を精度良く行うことができることが認められる。
また、実施例1と比較例4とを比較すると、実施例1の単位セメント量の方が元配合の単位セメント量に近いことが認められる。つまり、本願発明による方法の方が、従来技術である非特許文献1に記載の方法よりも配合推定を精度良く行うことができることが認められる。
【0056】
元配合2および3の試験結果において、実施例1と比較例1および比較例2とを比較すると、各単位量において実施例1の方が比較例1よりも元配合に近い値となっていると共に、実施例1の方が比較例2よりも単位セメント量が元配合に近い値となっていることが認められる。つまり、加熱工程を行うことで、骨材からのセメント成分の除去を効果的に行うことができ、配合推定を精度良く行うことができることが認められる。また、配合の異なる供試体に対しても実施例1の方が配合推定を精度良く行うことができることが認められる。
【0057】
3.第三試験(元配合で使用した骨材とセメント除去工程後の骨材との比較)
第一試験で用いた元配合の粗骨材および細骨材(原粗骨材および原細骨材)と、実施例1のセメント除去工程で得られた粗骨材および細骨材(回収粗骨材および回収細骨材)とについて、吸水率Gw,Swおよび500℃までの強熱減量Lg,Lsを上記実施形態と同様の手順で算出した。また、原粗骨材および原細骨材と、回収粗骨材および回収細骨材とについて、密度を求めた。
「吸水率Gw,Sw」、「500℃までの強熱減量Lg,Ls」および「密度」を下記表4および5に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
<まとめ>
表4および5の結果を見ると、回収粗骨材および回収細骨材における「吸水率Gw,Sw」、「500℃までの強熱減量Lg,Ls」および「密度」の数値が原粗骨材および原細骨材のものと略同等の数値となっていることが認められる。つまり、実施例1のようにグルコン酸ナトリウム溶液を用いた浸漬工程と、加熱工程を行うことで、骨材からセメント成分を効果的に除去することができ、原骨材と同等の物性を有する回収骨材を得ることができることが認められる。このため、回収骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を精度良く行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備え、セメント成分が除去された骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を行う配合推定方法であって、
前記セメント除去工程は、セメント成分が付着した骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬する浸漬工程と、セメント成分が付着した骨材を加熱する加熱工程とを備え、浸漬工程を行った後に加熱工程を行う操作を複数回繰り返すことを特徴とする配合推定方法。
【請求項2】
硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備え、セメント成分が除去された骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を行う配合推定方法であって、
前記セメント除去工程は、セメント成分が付着した骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬する浸漬工程と、セメント成分が付着した骨材を加熱する加熱工程とを備え、加熱工程を行った後に浸漬工程を行う操作を複数回繰り返すことを特徴とする配合推定方法。
【請求項3】
前記加熱工程におけるセメント付き骨材の加熱温度は、500℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化コンクリートの配合推定方法。
【請求項1】
硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備え、セメント成分が除去された骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を行う配合推定方法であって、
前記セメント除去工程は、セメント成分が付着した骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬する浸漬工程と、セメント成分が付着した骨材を加熱する加熱工程とを備え、浸漬工程を行った後に加熱工程を行う操作を複数回繰り返すことを特徴とする配合推定方法。
【請求項2】
硬化コンクリートから分離した骨材に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備え、セメント成分が除去された骨材を用いて硬化コンクリートの配合推定を行う配合推定方法であって、
前記セメント除去工程は、セメント成分が付着した骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる浸漬液に浸漬する浸漬工程と、セメント成分が付着した骨材を加熱する加熱工程とを備え、加熱工程を行った後に浸漬工程を行う操作を複数回繰り返すことを特徴とする配合推定方法。
【請求項3】
前記加熱工程におけるセメント付き骨材の加熱温度は、500℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化コンクリートの配合推定方法。
【公開番号】特開2012−208071(P2012−208071A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75349(P2011−75349)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(594018267)株式会社中研コンサルタント (10)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(594018267)株式会社中研コンサルタント (10)
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