説明

配向積層ポリエステルフィルムおよびその製造方法

【課題】エッジ単層部と中央部の境目に発生する厚み斑を抑制し、切断や厚薄の問題を回避でき、結果生産性を向上できる配向積層ポリエステルフィルムの製造方法の提供。
【解決手段】ポリエステル(A)からなるフィルム層(A)と、ポリエステル(B)からなるフィルム層(B)とを積層し、それら積層方向および製膜方向に直交する方向(幅方向)の両端部にポリエステル(B)からなるエッジ単層部を設けた未延伸シートを押し出し、少なくとも幅方向に延伸した後にエッジ単層部をトリミングする配向積層ポリエステルフィルムの製造方法であって、
ポリエステル(A)とポリエステル(B)とは、繰り返し単位の80モル%以上が同じ繰り返し単位であり、かつ固有粘度の差が0.03dl/g以下である配向積層ポリエステルフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配向積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、フィルムの品質性能に対する多様化に伴い、種々の用途に用いられるようになってきた。そして、各主要との要求に応えるため、異なる特性を有するフィルム層を積層した配向積層ポリエステルフィルムが提案されて着ている。この配向積層ポリエステルフィルムは、各層の組成、性質が異なることにより、さまざまな特徴を発現できる反面、次のような問題がある。
【0003】
すなわち、通常のポリマーフィルムの製造において、供給した原料が全て製品になる分けではない。具体的には、製膜中にクリップなどで把持されるフィルムの両端部、製膜中に破断したフィルム、製膜されたが品質が要求に満たないフィルム、また製膜途中の未延伸フィルムなどは、製品にならず、再度チップ化され再利用される。そして、単層のフィルムであれば、これらを回収したそのまま再利用することができるが、配向積層ポリエステルフィルムでは、それぞれの層の組成、品質が異なることから、これら異なる各層を混合して再利用すると、組成が変わってしまい、その回収や再利用は大幅に制限される。
【0004】
そこで、特許文献1(特開平1−118428号公報)や特許文献2(特開平6−91719号公報)では、配向積層ポリエステルフィルムの両端部(以下、エッジと称することがある。)を単層とし、エッジの単層部をトリミングして、再生利用することが提案されている。しかし、中央部とエッジ単層のポリマー構成が異なることから、異なるポリマー境界での延伸工程での剥離切断が発生したり、中央部より両端部のポリマーの粘度が低い場合には、その部分の強度が弱く過延伸されやすくなり、切断の原因になる問題がある。また、切断しないとしても、単層部と中央部の境目に厚み斑が発生し、製品化できる幅に制約を受け歩留まりが大幅に低下する問題がある。上記文献には明示されていないが、再生したポリマーの自己再利用に関し、再生ポリマーは熱劣化したり、押出し工程でのせん断負荷により固有粘度が低下しているので、製品の主たる特性を発現する層(本発明においてはフィルム層(A))には含有させず、エッジ単層部に供される樹脂層に含有させるのが合理的である。この場合、エッジ単層部のポリマーの粘度は自ずと中央部より低くなり、上記の問題を発生しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−118428号公報
【特許文献2】特開平6−91719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のごとき従来技術の有するエッジ単層部と中央部の境目に厚み斑が発生するという新たな課題を見出し、その厚み斑を抑制し、切断や厚薄の問題を回避でき、結果生産性を向上できる配向積層ポリエステルフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のごとき従来技術が潜在していた課題を解決すべく鋭意研究した結果、積層フィルムの両端部を単一層にする際に、各層に供される樹脂、およびそれらの固有粘度を規定することで、単層部と中央部の境目に生じる厚み斑を抑制できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
かくして本発明によれば、ポリエステル(A)からなるフィルム層(A)と、ポリエステル(B)からなるフィルム層(B)とを積層し、それら積層方向および製膜方向に直交する方向(幅方向)の両端部にポリエステル(B)からなるエッジ単層部を設けた未延伸シートを押し出し、少なくとも幅方向に延伸した後にエッジ単層部をトリミングする配向積層ポリエステルフィルムの製造方法であって、
ポリエステル(A)とポリエステル(B)とは、繰り返し単位の80モル%以上が同じ繰り返し単位であり、かつ固有粘度の差が0.03dl/g以下である配向積層ポリエステルフィルムの製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、その好ましい態様として、フィルム層(B)の厚みが、フィルム層(A)とフィルム層(B)の厚みの合計に対して、5〜70%の範囲にあること、未延伸フィルムの製膜方向に直交する断面を見たとき、両エッジ単層部の幅(片側)が、未延伸フィルムの全幅に対して、3〜20%の範囲にあること、未延伸シートの厚みが200μm以下であること、未延伸シートを幅方向に3倍以上の延伸倍率で延伸すること、ポリエステル(B)が少なくとも一部にトリミングされたエッジ単層部を含有すること、および溶融押出する前のポリエステル(A)の固有粘度が0.60〜0.65dl/gの範囲であることの少なくともいずれか一つを具備する配向積層ポリエステルフィルムの製造方法も提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エッジ単層部と中央部の境目に発生する厚み斑を抑制でき、結果切断や厚薄などの厚み斑の押さえ、配向積層ポリエステルフィルムの生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の一例であり、2層シートの押出装置のうち押出機からキャスティングドラムまでを示している。
【図2】本発明の一つの実施形態の例示であり、2層の積層状態を作り出すフィードブロック8を図1の矢印A方向から見た断面を示している。
【図3】本発明の一つの実施形態の例示であり、製膜方向に直交する方向(幅方向)の両端部にエッジ単層部を設けるフィードブロック9を図1の紙面手前側から見た断面を示している。
【図4】図1〜3の実施形態を用いて製膜した未延伸フィルムの製膜に直交する方向の断面図を示す。
【図5】図4に示した未延伸フィルムの幅方向の厚みグラフの一例である。
【図6】本発明により得られた未延伸フィルムを、縦、横方向に延伸して得られた2軸延伸フィルムの幅方向の厚みグラフの一例である。
【図7】本発明によらない状態で得られた未延伸フィルムを、同様に2軸延伸したフィルムの幅方向の厚みグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を引用して本発明を説明する。
図1は、本発明の一つの実施形態の一例である。2層シートの押出装置のうち押出機からキャスティングドラムまでを示している。2層シートの押出装置は、2層シートのフィルム層(B)となるポリエステル(B)の流れ方向の上流側から順に押出機1、ギアポンプ2、フィルター3、ポリマーパイプ4a、同様に2層シートのフィルム層(A)となるポリエステル(A)の流れ方向の上流側から順に押出機5、ギアポンプ6、フィルター7、ポリマーパイプ4bとなっており、フィードブロック8の内部で2つの溶融樹脂を積層させ、フィードブロック9にてフィルム層(A)とフィルム層(B)の積層方向および製膜方向に直交する方向(幅方向)の両端部にエッジ単層部を設け、ダイ10からシート状に溶融樹脂11を2層シートとして押し出す構成となっている。ダイ10は単層のサイドフィード式であり、ダイの片側に樹脂の供給口を有するものを例示している。
【0013】
ポリエステル(A)および(B)に用いる樹脂としては、フィルムに製膜可能なポリエステルであれば特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートが挙げられ、これらを用いる場合には、さらにキャスティングドラム12で冷却して未延伸積層フィルムとし、図示しない延伸装置によって縦延伸および/または横延伸を施して配向積層フィルムとすることができる。
【0014】
なお、説明の便宜上、本発明では、フィルム層(A)とフィルム層(B)の積層方向を、積層方向、厚み方向またはz方向と称することがある。また、製膜中の進行する方向に沿ったフィルムの方向を、製膜方向、長手方向、縦方向またはMD方向と称することがある。さらにまた、製膜方向および積層方向に直交する方向を、幅方向、横方向またはTD方向と称することがある。
【0015】
図2は本発明の一つの実施形態の例示であり、2層の積層状態を作り出すフィードブロック8を図1の矢印A方向から見た断面を示している。13aはポリエステル(A)であり、ポリエステル(A)の流路を示している。13bはポリエステル(B)であり、ポリエステル(B)の流路を示している。14はポリエステル(B)からなるフィルム層(B)の層厚調整具であり、フィルム層(B)の全体の厚み、幅方向の層厚プロファイルを調整する部材である。
【0016】
図3は本発明の一つの実施形態の例示であり、製膜方向に直交する方向(幅方向)の両端部にエッジ単層部を設けるフィードブロック9を図1の紙面手前側から見た断面を示している。15はポリエステル(A)とポリエステル(B)の積層樹脂である。16はポリエステル(B)のダイ先端側エッジ単層幅調整具であり、17はポリエステル(B)のダイ根元側エッジ単層幅調整具である。
【0017】
図4に図1〜3の実施形態を用いて製膜した未延伸フィルムの製膜に直交する方向の断面図を示す。11aがフィルム層(A)、11bがフィルム層(B)、11cがエッジ単層である。
【0018】
図5は図4に示した未延伸フィルムの幅方向の厚みグラフの一例である。矢印B部は単層境界での厚み変化部を示している。この厚み変化の大きさは、フィルム層(A)とエッジ単層部の樹脂の固有粘度差に応じて変化し、粘度差が大きいほど厚み変化も大きくなることが実験により明らかになっている。
【0019】
図6は本発明により得られた未延伸フィルムを、縦、横方向に延伸して得られた2軸延伸フィルムの幅方向の厚みグラフの一例である。矢印Cの位置が単層境界部であるが、厚み変化は殆ど見られない。
【0020】
それに対し図7は本発明によらない状態で得られた未延伸フィルムを、同様に2軸延伸したフィルムの幅方向の厚みグラフの一例である。単層境界の位置(矢印C)には大きな厚み変化が発生し、その外側の矢印Dでは過剰に延伸された結果、厚みが中央部より薄くなっている。
【0021】
以下、さらに本発明を詳細に説明する。
前述のとおり、本発明は、ポリエステル(A)からなるフィルム層(A)と、ポリエステル(B)からなるフィルム層(B)とを積層し、それら積層方向および製膜方向に直交する方向(幅方向)の両端部にポリエステル(B)からなるエッジ単層部を設けた未延伸シートを押し出し、少なくとも幅方向に延伸した後にエッジ単層部をトリミングする配向積層ポリエステルフィルムの製造方法である。
【0022】
本発明の特徴の一つは、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とが、その繰り返し単位の80モル%以上が同じ繰り返し単位であることである。同じ繰り返し単位の割合が下限未満では、後述の固有粘度の差を制御しても、前述の図5の矢印Bで示される厚み斑を縮小することが困難となる。好ましい同じ繰り返し単位の割合は、85モル%以上、さらに90モル%以上、特に95モル%以上である。
【0023】
また、本発明のもう一つの特徴は、ポリエステル(A)とポリエステル(B)との固有粘度の差が0.03dl/g以下であることである。これにより、前述の図5の矢印Bで示される厚み斑を縮小することができる。そのような観点から、固有粘度の差は0.02dl/g以下であることが好ましい。また、固有粘度の差の下限は、前述の厚み斑を抑える観点から小さいほど好ましいことから制限されないことは容易に理解されるであろう。
【0024】
本発明におけるポリエステル(A)および(B)としては、フィルムへの製膜が可能なものであれば、それ自体公知のものを採用でき、例えば、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸成分との重縮合によって得られる芳香族ポリエステルが好ましい。かかる芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸などの6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸が挙げられる。また、かかるジオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。
【0025】
これらの中でも、高温での加工時の寸法安定性の点からは、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするものが好ましく、特にエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするものが好ましい。ここでいう主たるとは、好ましくは80モル%以上、さらに90モル%以上を意味する。
【0026】
本発明におけるポリエステル(A)または(B)のいずれか固有粘度の高い方のポリエステルは、その溶融押出する前の固有粘度が0.60〜0.65dl/gの範囲にあることが、フィルムに製膜する際の溶融状態での樹脂の積層状態や、製膜後のフィルムの機械的特性を高度に維持しやすいことから好ましい。なお、後述の回収ポリマーを使用する場合、回収ポリマーはポリエステル(B)として使用することが、エッジ単層部に用いれることから好ましく、そのため、ポリエステル(A)の固有粘度は、ポリエステル(B)の固有粘度よりも高いことが好ましい。
【0027】
ところで、本発明の配向積層フィルムは、フィルム層(A)または(B)の少なくともいずれかに不活性粒子を含有させることが好ましい。この不活性粒子の粒子サイズや粒子量は、配向積層フィルムを用いる用途に応じて適宜決めればよい。このような不活性粒子を含有させることで、フィルムに白度、光沢性、隠蔽性を待たせたり、フィルムの巻き取り性を向上させることができる。含有させる不活性粒子としては、例えば、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、硫酸バリウム、酸化シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、タルクのような無機不活性粒子、シリコーン、架橋ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のような有機不活性粒子をあげることができる。また、含有させる不活性粒子の平均粒径は0.01〜8μmが好ましい。
【0028】
本発明では、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを押出機から押し出してから、ダイから吐出されるまでの間で、厚み方向に積層した、すなわち、フィルム層(A)とフィルム層(B)を積層する。この際、ポリエステル(A)は組成や固有粘度を異にする、例えばポリエステルA1、ポリエステルA2・・・といった複数のポリエステルとそれぞれ押し出す押出機を用意し、それぞれでフィルム層(A1)、フィルム層(A2)・・・を形成してもよい。具体的な積層構造としては、フィルム層(A)とフィルム層(B)を積層した2層積層フィルム、フィルム層(A)の両面にフィルム層(B)を積層した3層フィルム、フィルム層(B)の両面にフィルム層(A)を積層した3層フィルム、フィルム層(A1)とフィルム層(A2)とフィルム層(B)とを積層した3層フィルム、フィルム層(A)とフィルム層(B)とを交互に積層した多層積層フィルムなどが挙げられる。
【0029】
ところで、本発明の製造方法では、上記(B)の厚みが、フィルム層(A)とフィルム層(B)の厚みの合計に対して、5〜70%の範囲にあることが好ましい。フィルム層Bの厚みの好ましい下限は、10%以上、さらに20%以上、特に30%以上である。フィルム層Bの厚みが下限以上であることで、エッジ単層部と接合するポリエステル(A)の割合が少なくなり、厚み斑を抑制しやすくなる。他方、フィルム層Bの厚みの好ましい上限は、60%以下、さらに50%以下である。フィルム層Bの厚みが上限以下であることで、前述の厚み斑の改善効果がより発現される。また、回収ポリマーをポリエステル(B)に使用する場合、フィルム層(B)の厚みが上限を超えると、単層フィルムに近づき、エッジ単層部を設けなくても、回収ポリマーのほとんどを自己回収で使用することができ、生産性の向上効果が乏しくなる。
【0030】
つぎに、本発明の製造方法では、上記フィルム層(A)とフィルム層(B)を積層した後、その幅方向の両端部にエッジ単層部を設ける。このとき、押し出すダイの幅にもよるが、未延伸フィルムの断面積で見たときの、それぞれの端部に設けられるエッジ単層部の断面積の割合の下限は、5%以上、さらに7%以上、特に8%以上であることが、ダイからの押し出しを安定させつつ、幅方向に延伸する際に把持される幅方向の端部を十分に確保する点から好ましい。他方、それぞれの端部に設けられるエッジ単層部の断面積の割合の上限は、製品とされる部分を効率的に確保する観点から、25%以下、さらに20%以下、特に15%であることが好ましい。
【0031】
また、未延伸フィルムの製膜方向に直交する断面を見たとき、両エッジ単層部の幅(片側)が、未延伸フィルムの全幅に対して、3〜20%の範囲にあることが好ましい。両エッジ単層部の幅(片側)が、未延伸フィルムの全幅に対して、下限以上あることで、ダイからの押し出しを安定させつつ、幅方向に延伸する際に把持される幅方向の端部を十分に確保しやすい。他方、両エッジ単層部の幅(片側)が、未延伸フィルムの全幅に対して、上限以下であることで、製品とされる部分を効率的に確保でき、またダイからの押し出しを安定化させやすい。そのような観点から、好ましい下限は4%以上、さらに8%以上であり、好ましい上限は15%以下、さらに12%以下である。
【0032】
このようにしてダイから押し出される未延伸シートの幅方向の中央部における厚みは特に制限されないが、後述の幅方向に延伸する際に、厚み斑による破断が薄いほど顕著に発現する、すなわち本発明の厚み斑の改良による効果がより発現されやすいことから、200μm以下、さらに160μm以下であることが好ましい。未延伸シートの幅方向の中央部における厚みの下限は、特に制限されないが、押し出しを安定化しやすいことから、10μm以上、さらに50μm以上、特に80μm以上であることが好ましい。
【0033】
なお、上述の未延伸シートの製造は、例えば、ポリエステル(A)と、ポリエステル(B)とを用意し、これらを溶融状態で積層してダイからシート状に共押出する工程、得られたシート状物を冷却固化する工程で製造できる。溶融状態で押し出す工程での温度は、未溶融物がなく、過度にポリエステルの熱劣化が進まない温度であれば特に制限されず、例えば、最も融点の高いポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度で行うことが好ましい。つぎに、冷却については、得られる積層未延伸ポリエステルフィルムの平坦性を維持しつつ、厚み斑も少なくするために、フィルム製膜方向に沿ってダイの下方に設置された回転する冷却ドラムを用い、それにシート状物を密着させて冷却するのが好ましい。
【0034】
このようにして得られた未延伸シートは、少なくとも幅方向に延伸、好ましくは製膜方向と幅方向に延伸する。以下では、製膜方向に延伸し、つづいて幅方向に延伸する逐次二軸延伸を例にとって説明する。まず、未延伸シートを、製膜方向にもっともガラス転移温度の高いポリエステルのガラス転移温度(Tg)−10)℃〜(Tg+70)℃の温度で延伸し、次いで幅方向にTg〜(Tg+70)℃の温度で延伸する。この際、通常、製膜方向の延伸は回転速度の異なるロール間で行われ、幅方向の延伸はテンター法と言われる、フィルムの幅方向の端部を把持部で把持して延伸する方法が行われる。そして、冒頭で述べたとおり、未延伸シートのエッジ単層部の境界に厚み斑があると、この幅方向の延伸の際に、延伸斑が生じたり、過度に延伸された部分が破断したりするのである。そのため、幅方向の延伸倍率が高いほど、上記厚み斑による影響は大きく、そういった観点から本発明の製造方法は、幅方向の延伸倍率が3倍以上、さらに3.5倍以上であるときに、より効果的である。
【0035】
また、さらに必要に応じて縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。このように延伸したときの全延伸倍率は、面積延伸倍率(縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率)として9倍以上が好ましく、12〜35倍がさらに好ましく、15〜30倍が特に好ましい。さらにまた、延伸後のフィルムは、(Tg+70)〜(Tg−10)℃の温度で熱固定することができ、例えば180〜250℃で熱固定するのが好ましい。熱固定時間は1〜60秒が好ましい。また、前述の延伸は逐次二軸延伸で説明したが、縦方向と横方向に同時に延伸する同時二軸延伸を用いても良い。
【0036】
このようにして幅方向に延伸されたフィルムは、熱固定処理の前もしくは後に、エッジ単層部をトリミングして、製品として巻き取られる。なお、エッジのトリミングは、フィルムの両端部をレザーカッターやロータリーカッター等で切り取る工程である。
また、本発明の製造方法では、必要に応じて、積層フィルムの製造工程中または製造後にフィルムに塗液を塗布し乾燥する工程を設けても良い。塗膜の種類や塗布方法などはそれ自体公知の方法を任意に採用できる。
【0037】
ところで、本発明の製造方法は、冒頭で述べたとおり、回収ポリマーを再利用するのに極めて有効であり、以下、回収ポリマーの作成方法や投入方法について説明する。
まず、トリミングされたエッジ単層部や、製品とならなかった配向積層フィルム、また未延伸シートなどは粉砕され、乾燥され、溶融押出されて再生チップとして再利用する。なお、ポリエステル(A)と(B)とで組成が異なる場合、エッジ単層部と配向積層フィルムとは別々に回収して、別々に再生チップとするのが、後に再生チップを使用する場合の品質の変化を押える上で好ましい。そのため、前述の未延伸シートなども、エッジ単層部と切り分けてから回収するのが好ましい。すなわち、本発明においてはトリミングされたフィルムエッジ部分を回収した樹脂と、フィルム中央部を回収した樹脂では、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の含有率が異なるので、それぞれ独立した回収系を用意するのが好ましく、このような回収系を用意しても付加価値の高いフィルムの生産においてはコストダウン効果が大きい。
【0038】
このようにして製造された例えば再生チップは、ポリエステル(B)に投入する。この際、回収系の異なる回収ポリエステルでは、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の含有率が異なるため、それぞれの含有率に応じて配合比を調整し、バージンポリマーと適量混合することで、所望の組成や固有粘度とすることが可能となる。
【0039】
また、本発明では、ポリエステル(A)およびポリエステル(B)を溶融状態で押し出す際に、水を含有させて固有粘度の調整に対して有効である。本発明で指定しているポリエステル(A)とポリエステル(B)の固有粘度の差は、それぞれを構成する原料の固有粘度によってほぼ決まる。しかし所望とされる特性を得る為の配合比とすると、固有粘度の差が0.03dl/g以下にできない場合も考えられる。それに対し、それぞれのポリエステルを押出す際に一定量の水を含有させることで、製膜した積層フィルム各層の固有粘度の調整を行うことができる。水を含有させるのは、乾燥機内部でも良いし、押出機の直前の樹脂溜り部でも良い。なお、乾燥機の乾燥条件を変えることでもある程度固有粘度の調整をすることは可能だが、調整幅は小さい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例によって本発明を更に説明する。尚、実施例中の物性値の測定および製膜性の評価は下記の方法とした。
【0041】
(1)固有粘度
製膜前の原料および製膜後のフィルムを、それぞれ溶媒に溶解させオストワルド式粘度計を応用した自動粘度計を用いて測定した。なお、測定は35℃で行い、溶媒はo−クロロフェノールを用いた。なお、o−クロロフェノールでは十分に溶けない場合は、P−クロロフェノール/テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いた。
【0042】
(2)各フィルム層の厚みおよびエッジ単層部の幅ならびにそれらの断面積比
キャスティングドラム12で冷却固化した未延伸サンプルを三角形に切り出し、包理カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包理した。そして、包理されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT―S)で縦方向に平行な断面をおよそ50nm厚みの薄膜切片にしたあと、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電子100kvにて観察・投影し、写真から各層の厚みを測定し、各層の厚みを測定した。また、未延伸フィルムの幅方向に同様な測定を行い、エッジ単層部の幅ならびにそれらの断面積比を求めた。
【0043】
(3)製膜性
以下の4つの基準について、どのように判断するのか記載下さい。
安定:24時間無切断
切断多発:1時間以内で切断発生し、製品が取れない。
不安定:3〜4時間は連続通膜でき製品は取れるが、稼働率が悪い。
厚み斑悪化:エッジ単層境界部の厚み段差が製品部にまで影響し、歩留まりが低下する状態
【0044】
(4)実施例、比較例で用いた樹脂は以下の通りである。
・PET:固有粘度0.59dl/gのポリエチレンテレフタレート。 再生したポリマーを含まないバージンポリマーでのみ構成され、表面活性付与の為、平均粒径0.6μmの不活性粒子を0.05質量%含有している。
・PEN1:固有粘度0.62dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートであり、再生したポリマーを含まないバージンポリマーのみで構成されている。表面活性付与の為、平均粒径0.1μmの無機粒子を0.2重量%含有している。
・PEN2:固有粘度0.60dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートであり、再生したポリマーを60重量%含み、再生ポリマーのうち35重量%がトリミングされたエッジ単層部を再生したポリマーを使用している。表面活性付与の為、平均粒径0.4μmの不活性粒子を0.05重量%含有している。
・PEN3:固有粘度0.58dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートであり、再生したポリマーを80重量%含み、再生ポリマーのうち45重量%がトリミングされたエッジ単層部を再生したポリマーを使用している。表面活性付与の為、平均粒径0.4μmの不活性粒子を0.05重量%含有している。
・PEN4:固有粘度0.64dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートであり、再生したポリマーを含まないバージンポリマーのみで構成されている。表面活性付与の為、平均粒径0.1μmの無機粒子を0.2重量%含有している。
・PEN5:固有粘度0.62dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートであり、再生したポリマーを含まないバージンポリマーのみで構成されている。表面活性付与の為、平均粒径0.4μmの不活性粒子を0.05重量%含有している。
・PEN6:固有粘度0.61dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートであり、再生したポリマーを含まないバージンポリマーのみで構成されている。表面活性付与の為、平均粒径0.1μmの無機粒子を0.2重量%含有している。
・PEN7:固有粘度0.59dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートであり、再生したポリマーを70重量%含み、再生ポリマーのうち50重量%がトリミングされたエッジ単層部を再生したポリマーを使用している。表面活性付与の為、平均粒径0.4μmの不活性粒子を0.05重量%含有している。
・10%共重合PEN:固有粘度0.62dl/gの6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を全酸成分のモル数を基準として10モル%共重合したポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであり、再生したポリマーを含まないバージンポリマーのみで構成されている。表面活性付与の為、平均粒径0.1μmの無機粒子を0.2重量%含有している。
・30%共重合PEN:固有粘度0.62dl/gの6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を全酸成分のモル数を基準として30モル%共重合したポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであり、再生したポリマーを含まないバージンポリマーのみで構成されている。表面活性付与の為、平均粒径0.1μmの無機粒子を0.2重量%含有している。
【0045】
[実施例1]
まず、図1に示す構成の押出装置、図2,3に示すフィードブロックを用い2層フィルムを製膜した。
フィルム層(A)側の原料PEN1を押出機5に投入し、ギアポンプ6で計量、続くフィルター7で濾過しおよそ280℃の温度で積層フィードブロック8に導いた。一方、フィルム層(B)側の原料PEN2は押出機1に投入し、ギアポンプ2で計量、続くフィルター3で濾過しおよそ280℃の温度で積層フィードブロック8に導いた。
積層フィードブロック8にて図2に示すごとく、ダイから吐出された後フィルム層(B)がキャスティングドラムに接触する側に積層するように、ポリエステル(A):PEN1の片側にポリエステル(B):PEN2を合流させた。
次いで、エッジ単層フィードブロック9にて図3に示すごとく、ポリエステル(A):PEN1とポリエステル(B):PEN2の積層樹脂の幅方向の両端部に、ポリエステル(B):PEN2を合流させダイ10に送り込んだ。
次いで単層ダイ10から押し出してキャスティングドラム12で冷却固化し、エッジ単層付きの800mm幅の積層未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムの層構成を測定すると、フィルム全厚が130μm、エッジ単層の幅が両側とも80mm、フィルム層(B)の厚み比率は37%であり、フィルム層(A)の断面積と、フィルム層(B)およびエッジ単層部の合計の断面積は同率であった。エッジ単層の境界部の段差高さは、中央部のフィルム対比約3%であった。
得られた未延伸フィルムを160℃、4.6倍で縦延伸した後、155℃、5.4倍で横延伸し、更に220℃で熱固定して、冷却後エッジ単層部をトリミングし、連続24時間の間、製品部となるフィルムが破断することなく安定して2軸延伸フィルムを得ることができた。また、トリミングする前の2軸延伸フィルムをサンプリングし、幅方向の厚みを計測すると、図6に示すような概ね平坦なパターンとなっていて、エッジ単層境界部にも殆ど段差は見られなかった。
【0046】
[実施例2]
フィルム層(B)の厚み比率を50%にし、フィルム層(A)の断面積と、フィルム層(B)およびエッジ単層部の合計の断面積とが、3:4.3にしたこと以外は、実施例1と同様に未延伸フィルムを得た。エッジ単層の境界部の段差高さは、中央部のフィルム対比約5%であった。
得られた未延伸フィルムを実施例1と同様に2軸延伸、熱固定を実施し、冷却後エッジ単層部をトリミングし、安定して2軸延伸フィルムを得ることができた。また、トリミングする前の2軸延伸フィルムをサンプリングし幅方向の厚みを計測すると、図6に示すような概ね平坦なパターンとなっていて、エッジ単層境界部にも殆ど段差は見られなかった。
【0047】
[実施例3〜6]
実施例1において、表1に示すとおり、用いる樹脂、エッジ単層部の幅、未延伸フィルムの厚み、横延伸倍率を変更したは同様な操作を繰り返した。得られた2軸延伸フィルムをサンプリングし幅方向の厚みを計測すると、図6に示すような概ね平坦なパターンとなっていて、エッジ単層境界部にも殆ど段差は見られなかった。
【0048】
[比較例1]
ポリエステル樹脂の組み合わせを、ポリエステル(A)をPEN1、ポリエステル(B)をPETとしたこと以外は、実施例1と同様に未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムの層構成を測定すると、フィルム全厚が130μm、エッジ単層の幅が両側とも80mm、全厚に対するフィルム層(B)の厚み比率は37%であり、フィルム層(A)の断面積と、フィルム層(B)およびエッジ単層部の合計の断面積は同率であった。エッジ単層の境界部の段差は、中央部のフィルム対比約10%であった。
得られた未延伸フィルムを実施例1と同様に2軸延伸を試みたが、横延伸工程での切断が多発し連続的な安定製膜はできなかった。この2軸延伸フィルムをサンプリングし幅方向の厚みを計測すると、図7に示すような不均一なパターンとなっていて、エッジ単層境界部の段差は延伸により増大し、その外側部が過剰に延伸されて中央部より薄い状態になっていた。また、切断の状況を観察すると、エッジ単層境界部から切断が発生している場合が多いことが分かった。
【0049】
[比較例2]
ポリエステル樹脂の組み合わせを、ポリエステル(A)をPEN1、ポリエステル(B)をPEN3としたこと以外は、実施例1と同様に未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムの層構成を測定すると、フィルム全厚が130μm、エッジ単層の幅が両側とも80mm、フィルム層(B)の厚み比率は37であり、フィルム層(A)の断面積と、フィルム層(B)およびエッジ単層部の合計の断面積は同率であった。エッジ単層の境界部の段差は、中央部のフィルム対比約12%であった。
得られた未延伸フィルムを実施例1と同様に2軸延伸を試み、連続24時間の間、フィルムが破断することなく安定して2軸延伸フィルムを得ることができた。この2軸延伸フィルムをサンプリングし幅方向の厚みを計測すると、エッジ単層境界部の段差は延伸によりやや増大し、その影響が製品部にも影響を及ぼしていたため、幅方向の歩留まりが非常に悪化した。
【0050】
[比較例3]
ポリエステル(A)およびポリエステル(B)の吐出量を変更し、積層フィードブロック8のポリエステル(B)の層厚調整具を調整し、エッジ単層フィードブロック9のエッジ単層幅調整具を調整し、全厚に対するフィルム層(B)の厚み比率を60%、エッジ単層の幅を両側とも200mmとすることで、フィルム層(A)の断面積と、フィルム層(B)およびエッジ単層部の合計の断面積の比を、3:13とした以外は、比較例2と同様に未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムのエッジ単層境界部の段差は中央部の15%ほどで比較例2よりも悪化した。
得られた未延伸フィルムを実施例1と同様に2軸延伸を試み、連続3〜4時間の間、フィルムが破断することなく2軸延伸フィルムを得ることができたが、稼働率は実施例1より大幅に低下した。この2軸延伸フィルムをサンプリングし幅方向の厚みを計測すると、図7に示すような不均一なパターンとなっていて、その外側部が過剰に延伸されて中央部より薄い状態になっていた。またエッジ単層境界部の段差は延伸によりやや増大し、その影響が製品部にも影響を及ぼしていたため、幅方向の歩留まりが非常に悪化した。
【0051】
[比較例4]
実施例1において、表1に示すとおり、用いる樹脂を変更したは同様な操作を繰り返した。得られた2軸延伸フィルムをサンプリングし幅方向の厚みを計測すると、エッジ単層境界部の段差は延伸によりやや増大し、その影響が製品部にも影響を及ぼしていたため、幅方向の歩留まりが非常に悪化した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1中のポリエステル(A)/(B)構成の欄にある、PEN1〜7、10%共重合PENおよび30%共重合PENおよびPETは、上記(4)で作成した樹脂であり、ポリエステル(A)の固有粘度、ポリエステル(B)の固有粘度、ポリエステル(A)と(B)の固有粘度差は、それぞれ製膜後のフィルムから測定した固有粘度で、フィルム層(B)厚/全厚とは未延伸フィルム中のフィルム層(A)とフィルム層(B)の厚みを測定し、フィルム層(A)と(B)の厚みの合計で、フィルム層(B)の厚みを割った値であり、未延伸フィルムの幅は延伸前の未延伸フィルムの幅であり、フィルム層(A)断面積:フィルム層(B)+エッジ単層断面積は、未延伸フィルム中のフィルム層(A)の断面積と、フィルム層(B)とエッジ単層の断面積の合計断面積との比であり、未延伸フィルム中の断面積比にあるフィルム層(B)、フィルム層(A)、エッジ単層部は、それぞれ未延伸フィルム中のフィルム層(A)と(B)の合計断面積を100%としたときの、それぞれの断面積であり、エッジ単層部の断面積は、片側ずつの断面積を現したものであり、エッジ単層部の幅/未延伸フィルムの幅は、片側ずつのエッジ単層部の幅を、未延伸フィルムの全幅で割ったものであり、未延伸厚みとは延伸前の未延伸フィルムの幅方向の中央部における厚みであり、横延伸倍率とは横延伸前のフィルム中央部の厚みを、横延伸後のフィルム中央部の厚みで割った値であり、未延伸境界段差は図5で示した境界位置に発生する段差である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、配向積層ポリエステルフィルムの製造方法として利用でき、両端部をエッジ単層部にした場合でも、高い稼働率、高い歩留まりでの製膜が可能となり、大幅に生産性を向上できる製造方法として極めて有益である。
【符号の説明】
【0055】
1:ポリエステル(B)の押出機
2:ポリエステル(B)のギアポンプ
3:ポリエステル(B)のフィルター
4a:ポリエステル(B)側のポリマーパイプ
4b:ポリエステル(A)側のポリマーパイプ
5:ポリエステル(A)の押出機
6:ポリエステル(A)のギアポンプ
7:ポリエステル(A)のフィルター
8:積層フィードブロック
9:エッジ単層フィードブロック
10:単層ダイ
11:未延伸フィルム
11a:フィルム層(A)
11b:フィルム層(B)
11c:エッジ単層
12:キャスティングドラム
13a:ポリエステル(A)の流路、またはポリエステル(A)
13b:ポリエステル(B)の流路、またはポリエステル(B)
14:ポリエステル(B)の層厚調整具
15:ポリエステル(A)とポリエステル(B)の積層樹脂
16:ポリエステル(B)のダイ先端側エッジ単層幅調整具
17:ポリエステル(B)のダイ根元側エッジ単層幅調整具
矢印A:フィードブロック8の下方から上方への方向
矢印B:未延伸フィルムの単層境界位置に発生する段差位置を示す
矢印C:延伸されたフィルムの単層境界位置に発生する段差位置を示す
矢印D:延伸されたフィルムの単層境界位置に発生する段差の外側の過延伸により薄くなった部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル(A)からなるフィルム層(A)と、ポリエステル(B)からなるフィルム層(B)とを積層し、それらの積層方向および製膜方向に直交する方向(幅方向)の両端部にポリエステル(B)からなるエッジ単層部を設けた未延伸シートを押し出し、少なくとも幅方向に延伸した後にエッジ単層部をトリミングする配向積層ポリエステルフィルムの製造方法であって、
ポリエステル(A)とポリエステル(B)とは、繰り返し単位の80モル%以上が同じ繰り返し単位であり、かつ固有粘度の差が0.03dl/g以下である配向積層ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
フィルム層(B)の厚みが、フィルム層(A)とフィルム層(B)の厚みの合計に対して、5〜70%の範囲にある請求項1記載の配向積層ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項3】
未延伸フィルムの製膜方向に直交する断面を見たとき、両エッジ単層部の幅(片側)が、未延伸フィルムの全幅に対して、3〜20%の範囲にある請求項1記載の配向積層ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項4】
未延伸シートの厚みが200μm以下である請求項1記載の配向積層ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項5】
未延伸シートを幅方向に3倍以上の延伸倍率で延伸する請求項1記載の配向積層ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項6】
ポリエステル(B)が少なくとも一部にトリミングされたエッジ単層部を含有する請求項1記載の配向積層ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項7】
溶融押出する前のポリエステル(A)の固有粘度が0.60〜0.65dl/gの範囲である請求項1記載の配向積層ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の配向積層ポリエステルフィルムの製造方法によって得られた配向積層ポリエステルフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−6313(P2013−6313A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139441(P2011−139441)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】