配向膜の成膜方法
【課題】液滴吐出手段を用いて基板上に配向膜材料を含む材料液を塗布する際に材料液の膜厚変動を防止して、基板上に均一な膜厚の配向膜を形成することができる成膜方法を提供する。
【解決手段】基板P上に配向膜材料濃度が低い第1の材料液L1を塗布し、第1の材料液L1が塗布された基板P上に配向膜材料濃度が高い第2の材料液L2を塗布する。
【解決手段】基板P上に配向膜材料濃度が低い第1の材料液L1を塗布し、第1の材料液L1が塗布された基板P上に配向膜材料濃度が高い第2の材料液L2を塗布する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配向膜の成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板の表面に均一な膜厚の薄膜を形成できる成膜方法が知られている。この成膜方法は、ヘッドに並設された複数のノズルから溶液を噴射して、その下側を搬送される基板の表面に上記溶液を塗布する塗布方法において、上記基板を搬送し、その表面に上記ノズルから溶液を噴射塗布する第1の塗布工程と、上記第1の塗布工程終了後、上記基板を所定の角度だけ回転し、その向きを上記ノズルの並設方向に対して相対的に変える回転工程と、上記回転工程終了後、上記基板を再び搬送し、その表面に上記ノズルから溶液を噴射塗布する第2の塗布工程と、を具備するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、各ノズルから基板に溶液をドッドで噴射する工程と、ヘッドと基板とを所定方向に相対的に移動させて所定間隔の一対のノズルから最初に基板に噴射された一対のドット間の部分を複数のドットによって塗り潰す工程とを具備し、最初に基板に所定間隔で噴射された一対のドット間の部分は、最初に噴射塗布されたドットに最後に噴射塗布されるドットが隣接することのない順序で、複数のドットによって塗り潰すものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、基板に溶液をインクジェット方式によって塗布する溶液の塗布方法において、上記基板の上記溶液が塗布される板面を励起処理する工程と、上記基板の励起処理された板面に上記溶液をインクジェット方式によって塗布する工程とを備えているものが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−193232号公報
【特許文献2】特開2005−721号公報
【特許文献3】特開2004−255316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の成膜方法では、液晶装置に用いられる配向膜を成膜するために、ポリイミドを溶解した溶液等、比較的粘度の高い液体を塗布する場合には、以下のような課題がある。
【0007】
特許文献1及び特許文献2では、図11(a)に示されるように、液滴吐出ヘッド34から基板P上に吐出した液滴が基板P上で十分に濡れ拡がらず、基板P上に配向膜の材料液Lがドット状に不連続に塗布されて配向膜の膜厚が不均一となるという課題がある。
【0008】
また、塗布した材料液Lが基板P上で濡れ拡がらないため、例えば、図11(b)に示すように、液滴吐出ヘッド34の改行や複数の液滴吐出ヘッド34を用いることにより、液滴吐出ヘッド34の端部34eが重なる領域X2に液滴が重なって配置される領域X1が発生する。そのため、領域X1において材料液Lの膜厚が変動し、配向膜にスジ状のムラが発生するという課題がある。
【0009】
特許文献3では、基板上に吐出した液滴は濡れ拡がるが、基板の励起処理が必要であり、チャンバ等、基板の励起処理のための特殊な装置が必要であるという課題がある。
【0010】
そこで、この発明は、液滴吐出手段により配向膜を成膜する成膜装置を用いることができ、基板上に吐出した液滴を濡れ拡がらせて均一な膜厚の配向膜を形成することができる配向膜の成膜方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の配向膜の成膜方法は、配向膜材料及び溶媒を含む材料液を液滴吐出手段を用いて基板上に塗布して配向膜を形成する配向膜の形成方法であって、前記基板上に第1の材料液を塗布する第1の塗布工程と、前記基板上に塗布された前記第1の材料液上に、第2の材料液を塗布する第2の塗布工程とを有し、前記第1の材料液の前記配向膜材料の濃度は、前記第2の材料液の前記配向膜材料の濃度より低いことを特徴とする。
【0012】
このように成膜することで、第1の塗布工程において基板上に第1の材料液が塗布されると、第1の材料液に含まれる溶媒の一部が蒸発して、基板上が溶媒の蒸気に覆われた状態となる。この状態で基板上に第2の材料液の液滴を吐出すると、液滴は基板上に塗布された第1の材料液上に着弾する。ここで、第1の材料液は第2の材料液より材料液中の配向膜材料の濃度が低いため、第1の材料液に接触した第2の材料液の液滴の配向膜材料の濃度は低下する。つまり、第2の材料液の粘度が低下する。また、基板上が溶媒の蒸気に覆われているため、基板上に塗布された第2の材料液の乾燥が防止される。これらのことにより、基板上に着弾した液滴を容易に濡れ拡がらせ、均一な膜厚の材料液の膜を形成し、スジ状のムラの発生を防止して均一な膜厚の配向膜を形成することができる。また、液滴吐出手段により配向膜を成膜する成膜装置を用いることができ、チャンバ等を用いる必要がない。
【0013】
また、本発明の配向膜の成膜方法は、前記第1の塗布工程で吐出される第1の材料液の総量は、前記第2の塗布工程で吐出される第2の材料液の総量より少ないことを特徴とする。
【0014】
このように成膜することで、第1の材料液の膜厚が薄くなり、膜全体が乾燥しやすくなるため、膜全体が均一に乾燥する。このため、配向膜材料の移動による周縁部の膜厚の増加(いわゆる「しみ上がり」)を防止できる。
【0015】
また、本発明の配向膜の成膜方法は、前記第1の塗布工程と前記第2の塗布工程とで吐出した液滴の中心位置が異なることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の配向膜の成膜方法は、前記第2の塗布工程は、前記基板上に塗布した前記第1の材料液の前記溶媒が所定量残存した状態で行うことを特徴とする。ここで、所定量とは第1の材料液L1上に着弾した第2の材料液L2が容易に濡れ拡がることができる量を言う。
【0017】
また、本発明の配向膜の成膜方法は、前記第1の塗布工程において前記第1の材料液が塗布される第1の塗布領域が、前記第2の塗布工程において前記第2の材料液が塗布される第2の塗布領域に等しいかまたは含まれることを特徴とする。
【0018】
このように成膜することで、第2の塗布工程において基板上に塗布される第2の材料液が第2の塗布領域の外側へ濡れ拡がることを防止できる。
【0019】
また、本発明の成膜方法は、前記液滴吐出手段と、前記基板を相対的に走査して液滴を前記基板上に塗布することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の成膜方法は、前記液滴吐出手段が、複数の液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出ヘッド群であることを特徴とする。
【0021】
このように成膜することで、膜形成にかかる時間を短縮することができ、膜全体の乾燥状態を均一にすることができる。
【0022】
また、本発明の成膜方法は、前記液滴吐出ヘッド群の長さが、前記第2の塗布領域の走査方向と交差する方向の最大幅より長いことを特徴とする。
【0023】
このように成膜することで、第1の塗布工程及び第2の塗布工程をそれぞれ一回の走査で完了することができる。したがって、複数のヘッドを用いることで、膜形成にかかる時間を短縮することができ、膜全体の乾燥状態を均一にすることができる。
【0024】
また、本発明の成膜方法は、前記材料液が、ポリイミドが溶解した溶液であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す模式図。
【図2】本発明の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの構成を説明する断面図。
【図3】同液滴吐出ヘッドの要部断面図。
【図4】同液滴吐出ヘッドの底面図。
【図5】(a)〜(c)は、第1の塗布工程において、基板上に液滴を塗布する様子を示す断面図。
【図6】第1の塗布工程において、液滴を塗布した基板の様子を示す平面図。
【図7】第2の塗布工程において、液滴を塗布した基板の様子を示す断面図。
【図8】第2の塗布工程において、液滴を塗布した基板の様子を示す平面図。
【図9】第2の塗布工程において、液滴を塗布した基板の様子を示す断面図。
【図10】第1の塗布工程において、液滴を塗布した基板の様子を示す平面図。
【図11】(a)及び(c)は、従来の配向膜の成膜工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0027】
(成膜装置)
図1は、液滴吐出法により基板P上に膜を成膜する成膜装置10の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、成膜装置10は、ベース31と、基板移動手段32と、ヘッド移動手段33と、液滴吐出ヘッド34と、液体供給部35と、制御装置40とを備えて構成されている。ベース31の上には、基板移動手段32と、ヘッド移動手段33とが設置されている。また、成膜装置10は、不図示のクリーニングユニットと、キャッピングユニットとを備えている。
【0028】
基板移動手段32はベース31上に設けられ、Y軸方向に沿って配置されたガイドレール36を有している。この基板移動手段32は、例えばリニアモーター(図示せず)により、スライダー37をガイドレール36に沿って移動させるよう構成されている。
【0029】
スライダー37上にはステージ39が固定されており、このステージ39は、基板Pを位置決めして保持するためのものである。即ち、このステージ39は、公知の吸着保持手段(図示せず)を有し、この吸着保持手段を作動させることにより、基板Pをステージ39の上に吸着保持するように構成されている。基板Pは、例えばステージ39の位置決めピン(図示せず)により、ステージ39上の所定位置に正確に位置決めされ、保持されるようになっている。
【0030】
ヘッド移動手段33は、ベース31の後部側に立てられた一対の架台33a,33aと、これら架台33a,33a上に設けられた走行路33bを備え、この走行路33bをX軸方向、即ち前記の基板移動手段32のY軸方向と直交する方向に沿って配置したものである。走行路33bは、架台33a,33a間に渡された保持板33cと、この保持板33c上に設けられた一対のガイドレール33d,33dとを備え、ガイドレール33d,33dの長さ方向に液滴吐出ヘッド34を搭載するキャリッジ42を移動可能に保持している。キャリッジ42は、リニアモーター(図示せず)等の作動によってガイドレール33d,33d上を移動し、これにより液滴吐出ヘッド34をX軸方向に移動させるように構成されている。
【0031】
ここで、このキャリッジ42は、ガイドレール33d,33dの長さ方向、即ちX軸方向に、例えば、1μm単位で移動可能になっている。キャリッジ42のこのような移動はコンピューター等からなる制御装置40によって制御可能に構成されている。
【0032】
制御装置40は、液滴吐出ヘッド34の位置情報、即ち液滴吐出ヘッド34のガイドレール33d,33d上での位置(X座標)とそのときの各ノズルの位置(X座標)とを検知して記憶するものである。
【0033】
液滴吐出ヘッド34は、キャリッジ42に取付部43を介して回動可能に取り付けられたものである。取付部43にはモーター44が設けられており、液滴吐出ヘッド34はその支持軸(図示せず)がモーター44に連結している。このような構成のもとに、液滴吐出ヘッド34はその周方向に回動可能となっている。また、モーター44も制御装置40に接続されており、これによって液滴吐出ヘッド34はその周方向への回動が、制御装置40に制御されるようになっている。
【0034】
液体供給部35は、インク(材料液)を液滴吐出ヘッド34に供給するものである。液滴吐出ヘッド34に供給する材料液は、溶媒に液晶分子の配向を規制する配向膜の材料を溶解させた溶液である。配向膜の材料としては、例えば、ポリイミドが用いられ、この配向膜材料を溶解可能な溶媒として、例えば、ブチルセロソルブ等の有機溶媒を用いることができる。
【0035】
また、液体供給部35は、配向膜の材料の固形分濃度が低い第1の材料液L1が充填された液体供給容器45Aと、配向膜の材料の固形分濃度が高い第2の材料液L2が充填された液体供給容器45Bと、これら液体供給容器45A及び液体供給容器45Bから液滴吐出ヘッド34に第1の材料液L1を送るための液体供給チューブ46Aと、第2の材料液L2を送るための液体供給チューブ46Bとを備えている。
【0036】
図2は液滴吐出ヘッド34の構成を説明する断面図、図3は液滴吐出ヘッド34の要部断面図である。
本実施形態における液滴吐出ヘッド34は、導入針ユニット117、ヘッドケース118、流路ユニット119及びアクチュエーターユニット120A,120Bを主な構成要素としている。
【0037】
導入針ユニット117の上面にはフィルター121A,121Bを介在させた状態で2本の液体導入針122A,122Bが横並びで取り付けられている。これらの液体導入針122A,122Bには、サブタンク102A,102Bがそれぞれ装着される。また、導入針ユニット117の内部には、各液体導入針122A,122Bに対応した液体導入路123A,123Bが形成されている。
【0038】
この液体導入路123A,123Bの上端はフィルター121A,121Bを介して液体導入針122A,122Bに連通し、下端はパッキン124を介してヘッドケース118内部に形成されたケース流路125A,125Bと連通する。
【0039】
フィルター121A,121Bは、第1の材料液L1及び第2の材料液L2に含まれる異物を除去するために配設され、その材質は、例えば、ステンレス鋼であって、メッシュ状に形成されている。
【0040】
サブタンク102A,102Bは、ポリプロピレン等の樹脂製材料によって成型されている。このサブタンク102A,102Bには、液室127A,127Bとなる凹部が形成され、この凹部の開口面に弾性シート126A,126Bを貼設して液室127A,127Bが区画されている。
【0041】
また、サブタンク102A,102Bの下部には液体導入針122A,122Bが挿入される針接続部128A,128Bが下方に向けて突設されている。サブタンク102A,102Bにおける液室127A,127Bは、底の浅いすり鉢形状をしている。液室127A,127Bの側面における上下中央よりも少し下の位置には、針接続部128A,128Bとの間を連通する接続流路129A,129Bの上流側開口が臨んでおり、この上流側開口には第1の材料液L1及び第2の材料液L2を濾過するタンク部フィルター130A,130Bがそれぞれ取り付けられている。
【0042】
針接続部128A,128Bの内部空間には液体導入針122A,122Bが液密に嵌入されるシール部材131A,131Bが嵌め込まれている。このサブタンク102A,102Bには、それぞれ液体供給チューブ46A及び液体供給チューブ46Bが接続される。液体供給チューブ46Aは、液体供給部35の液体供給容器45Aに貯留された第1の材料液L1を供給する。また、液体供給チューブ46Bは、液体供給部35の液体供給容器45Bに貯留された第2の材料液L2を供給する。従って、液体供給チューブ46A及び液体供給チューブ46Bを通ってきた第1の材料液L1及び第2の材料液L2は、それぞれ液室127A及び液室127Bに流入する。
【0043】
上記の弾性シート126A,126Bは、液室127A,127Bを収縮させる方向と膨張させる方向とに変形可能である。そして、この弾性シート126A,126Bの変形によるダンパー機能によって、第1の材料液L1及び第2の材料液L2の圧力変動が吸収される。即ち、弾性シート126A,126Bの作用によってサブタンク102A,102Bが圧力ダンパーとして機能する。従って、第1の材料液L1及び第2の材料液L2は、サブタンク102A,102B内で圧力変動が吸収された状態で液滴吐出ヘッド34側に供給される。
【0044】
ヘッドケース118は、合成樹脂製の中空箱体状部材であり、下端面に接着剤を介して流路ユニット119を接合し、内部に形成された収容空部137A,137B内にアクチュエーターユニット120A,120Bを収容し、流路ユニット119側とは反対側の上端面にパッキン124を介在した状態で導入針ユニット117を取り付けるようになっている。
【0045】
このヘッドケース118の内部には、高さ方向を貫通してケース流路125A,125Bが設けられている。このケース流路125A,125Bの上端は、パッキン124を介して導入針ユニット117の液体導入路123A,123Bとそれぞれ連通するようになっている。
【0046】
また、ケース流路125A,125Bの下端は、流路ユニット119内の共通液室144A及び共通液室144Bに連通するようになっている。従って、液体導入針122A,122Bから導入された第1の材料液L1及び第2の材料液L2は、液体導入路123A,123B及びケース流路125A,125Bを通じて共通液室144A及び共通液室144B側にそれぞれ供給される。
【0047】
ヘッドケース118の収容空部137A,137B内に収容されるアクチュエーターユニット120A,120Bは、図3に示すように、櫛歯状に列設された複数の圧電振動子138A,138Bと、この圧電振動子138A,138Bが接合される固定板139A,139Bと、制御装置40からの駆動信号を圧電振動子138A,138Bに供給する配線部材としてのフレキシブルケーブル140A,140Bとから構成される。各圧電振動子138A,138Bは、固定端部側が固定板139A,139B上に接合され、自由端部側が固定板139A,139Bの先端面よりも外側に突出している。即ち、各圧電振動子138A,138Bは、所謂片持ち梁の状態で固定板139A,139B上にそれぞれ取り付けられている。
【0048】
また、各圧電振動子138A,138Bを支持する固定板139A,139Bは、例えば、厚さ1mm程度のステンレス鋼によって構成されている。そして、アクチュエーターユニット120A,120Bは、固定板139A,139Bの背面を、収容空部137A,137Bを区画するケース内壁面に接着することで収容空部137A,137B内にそれぞれ収納・固定されている。
【0049】
流路ユニット119は、振動板141、流路基板142及びノズル基板143からなる流路ユニット構成部材を積層した状態で接着剤を介して接合して一体化することにより作製されている。これらは、共通液室144Aから液供給口145A及び圧力室146Aを通りノズル147Aに至るまでの一連の第1液流路と、共通液室144Bから液供給口145B及び圧力室146Bを通りノズル147Bに至るまでの一連の第2液流路とを形成する部材である。
【0050】
圧力室146A,146Bは、ノズル147A,147Bの列設方向に対して直交する方向に細長い室として形成されている。
【0051】
また、共通液室144A、共通液室144Bは、ケース流路125A,125Bと連通し、液体導入針122A,122B側からの第1の材料液L1、第2の材料液L2がそれぞれ導入される室である。そして、この共通液室144A及び共通液室144Bに導入された第1の材料液L1及び第2の材料液L2は、液供給口145A及び液供給口145Bを通じてそれぞれ圧力室146A,146Bに分配供給される。
【0052】
流路ユニット119の底部に配置されるノズル基板143は、図4に示すように、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数のノズル147A,147Bを列状に開設した金属製の薄い板材である。本実施形態のノズル基板143は、ステンレス鋼の板材によって作製され、本実施形態においてはノズル147Aの列及びノズル147Bの列が、それぞれサブタンク102A及びサブタンク102Bに対応して複数形成されている(図4では図示省略)。
【0053】
ノズル基板143と振動板141との間に配置される流路基板142は、第1液流路及び第2液流路となる流路部、具体的には、共通液室144A、共通液室144B、液供給口145A、液供給口145B及び圧力室146A,146Bとなる空部が区画形成された板状の部材である。
【0054】
本実施形態において、流路基板142は、結晶性を有する基材であるSiウェハーを異方性エッチング処理することによって作製されている。振動板141は、ステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工した二重構造の複合板材である。この振動板141の圧力室146A,146Bに対応する部分には、エッチングなどによって支持板を環状に除去することで、圧電振動子138A,138Bの先端面が接合される島部148A,148Bが形成されており、この部分はダイヤフラム部として機能する。即ち、この振動板141は、圧電振動子138A,138Bの作動に応じて島部148A,148Bの周囲の弾性フィルムが弾性変形するように構成されている。また、振動板141は、流路基板142の一方の開口面を封止し、コンプライアンス部149A,149Bとしても機能する。このコンプライアンス部149A,149Bに相当する部分についてはダイヤフラム部と同様にエッチングなどにより支持板を除去して弾性フィルムだけにしている。
【0055】
そして、上記の液滴吐出ヘッド34において、フレキシブルケーブル140A,140Bを通じて駆動信号が圧電振動子138A,138Bに供給されると、この圧電振動子138A,138Bが素子長手方向に伸縮し、これに伴い島部148A,148Bが圧力室146A,146Bに近接する方向或いは離隔する方向に移動する。これにより、圧力室146A,146Bの容積が変化し、圧力室146A,146B内の第1の材料液L1及び第2の材料液L2に圧力変動が生じる。この圧力変動によってノズル147A,147Bからそれぞれ液滴状となった第1の材料液L1及び第2の材料液L2が吐出される。
【0056】
(配向膜の成膜方法)
次に、本実施形態の成膜方法について説明する。本実施形態では、基板Pとして透明基板上に絶縁膜、TFT、電極及び配線等が形成された液晶装置の素子基板を用意し、成膜装置10を用いて基板P上に上述の材料液を吐出して配向膜を成膜する方法について説明する。
【0057】
まず、図1に示すように、ステージ39上に基板Pを位置決めピンにより位置決めして配置し、吸着保持手段に吸着保持する。これにより、基板Pは、ステージ39上に正確に位置決めされた状態で保持される。
【0058】
次に、第1の塗布工程について説明する。基板移動手段32及びヘッド移動手段33により液滴吐出ヘッド34を移動させると共に、取付部43のモーター44を作動させて、図4に示すように、液滴吐出ヘッド34を基板Pに対する初期位置に配置する。
【0059】
第1の塗布工程では、図4に示すように、第2の塗布領域B内に含まれる第1の塗布領域Aに第1の材料液L1を塗布する。本実施形態では、第1の材料液として、N−メチル−2−ピロリドン(N−methylpyrrolidone:NMP)にポリイミドを固形分濃度が1%となるように溶解させた溶液を用いる。ここで、第1の材料液L1として配向膜材料を溶解可能な溶媒を用いた場合では、第2の材料液L2を塗布した際に、第1の材料液L1と第2の材料液L2との固形分濃度の差が大きくなるため、固形分が均一に分散せず、濃度むらが生じる。また、固形分濃度が高い場合では、基板P上に塗布した際に、容易に濡れ広がらず、膜厚にむらが生じる。このため、第1の材料液の固形分濃度は、0.5%〜1.5%の範囲内であることが望ましい。
【0060】
第1の材料液L1を塗布する第1の塗布領域Aは、第2の塗布領域BよりX軸方向及びY軸方向ともにそれぞれ0.5mm小さい領域とする。このようにすると、第2の塗布工程において基板P上に塗布される材料液が第2の塗布領域Bの外側へ濡れ拡がることを防止することができる。
【0061】
次に、基板移動手段32によりステージ39をY軸正方向に移動させることで、液滴吐出ヘッド34を基板Pに対して相対的にY軸負方向に移動させながら、液滴吐出ヘッド34のノズル147から基板P上に、図5(a)に示すように、第1の材料液L1を液滴として吐出して塗布する。ここで、第1の材料液L1の液滴中心間距離Cを、第1の材料液L1の液滴が図5(b)に示すように基板P上に着弾して、図5(c)に示すように基板P上で拡張したときの液滴径Dと略等しくなるように調整することによって、隣接する液滴同士が辛うじて繋がる程度のごく薄い膜を形勢する。このように成膜することで、第1の材料液の膜厚が薄くなり、膜全体が乾燥しやすくなるため、膜全体が均一に乾燥する。このため、配向膜材料の移動による周縁部の膜厚の増加(いわゆる「しみ上がり」)を防止できる。
【0062】
液滴中心間距離Cは公知の技術を用いて調整することができる。例えば、液滴吐出ヘッド34を回動させ、走査方向と直交する方向のノズル間隔を調整することで、液滴中心間距離Cを調整することができる。また、ノズルを選択的に使用し、吐出間隔を変更することで、液滴中心間距離Cを調整することもできる。
【0063】
図4に示すように、初期位置側の縁から吐出開始位置とは反対側の縁まで第1の材料液L1を塗布したら、ヘッド移動手段33により、液滴吐出ヘッド34をX軸正方向に移動させて改行し、基板移動手段32によりステージ39をY軸負方向に移動させる。そして、液滴吐出ヘッド34を基板Pに対して相対的にY軸正方向に移動させながら、液滴吐出ヘッド34のノズル147から基板P上に第1の材料液L1を吐出して塗布する。このように、配向膜の第1の塗布領域Aの外縁でX軸正方向に改行を繰り返しながら、液滴吐出ヘッド34をY軸方向に往復させ、第1の塗布領域の全域に第1の材料液L1を塗布する(第1の塗布工程)。
【0064】
このように塗布すると、図6に示すように、基板P上に第1の材料液L1が隣接する液滴どうしが辛うじて繋がる程度に配置され、薄く塗布された状態となる。但し、この状態では図6の網掛け部で示されるような第1の材料液L1が付与されない箇所が残ることが考えられる。しかし、基板上の液滴の表面張力によって、液滴どうしが間隙を埋めるように繋がり、連続的な膜を形成することができ、第1の材料液L1が薄く塗布された状態となる。
【0065】
そして、基板P上で第1の材料液L1の溶媒が蒸発してその蒸気が発生し、基板P上が第1の材料液L1の溶媒の蒸気によって覆われた状態となる。
【0066】
次に、第2の塗布工程について説明する。第2の塗布工程は、基板P上に塗布された第1の材料液L1に含まれる溶媒が所定量残存した状態で行う。ここで、所定量とは第1の材料液L1上に着弾した第2の材料液L2が容易に濡れ拡がることができる量を言う。
【0067】
まず、液滴吐出ヘッド34を第2の塗布工程における初期位置に移動させる。第2の塗布工程における初期位置は、第1の塗布工程で塗布した液滴の中心と第2の塗布工程で塗布する液滴の中心とをずらすため、第1の塗布工程の初期位置から所定量のオフセットを走査方向と交差する方向にかけた位置とする。一般的に、液滴の中心部は外縁部より膜厚が厚くなるため、液滴の中心をずらすことによって、液滴の中心部が重なる場合より均一な膜厚の配向膜を得ることができる。
【0068】
次に、基板移動手段32によりステージ39をY軸正方向に移動させることで、液滴吐出ヘッド34を基板Pに対して相対的にY軸負方向に移動させながら、液滴吐出ヘッド34のノズル147から基板P上に、図7に示すように、第2の材料液L2を液滴として吐出して第2の塗布領域Bに塗布する。第2の材料液L2として、本実施形態では、N−メチル−2−ピロリドンにポリイミドを固形分濃度が5%となるように溶解させた溶液を用いる。
【0069】
図7に示すように、第2の塗布工程において吐出する液滴の総量は、第1の塗布工程において吐出する液滴の総量より多くなるように塗布する。
【0070】
そして、図8に示すように、液滴吐出ヘッド34を基板Pに対してY軸負方向に移動させながら、液滴吐出ヘッド34のノズル147から基板P上に塗布された第1の材料液L1上に、第2の材料液L2の液滴を吐出して塗布する。そして、第1の塗布工程と同様に、第2の塗布領域Bの外縁でX軸正方向に改行を繰り返しながら、液滴吐出ヘッド34をY軸方向に往復させ、図10に示すように第2の塗布領域B(配向膜の形成領域)の全域に第2の材料液L2を塗布する(第2の塗布工程)。
【0071】
このとき、図7に示すように、基板P上には第1の材料液L1の膜が均一な膜厚で塗布されて、第1の材料液L1の溶媒の蒸気によって覆われた状態となっている。そのため、第2の塗布工程で吐出された第2の材料液L2の液滴は、基板P上に着弾した後の乾燥が防止される。また、第1の材料液L1は、第2の材料液L2よりもポリイミドの固形分濃度が低いため、第2の材料液の液滴が第1の材料液L1に接触すると液滴の固形分濃度が低下し、粘度が低下する。このため、図9に示すように、液滴吐出ヘッド34が繰り返し通過する領域X2内に発生する液滴が重なって配置される領域X1においても液滴が容易に濡れ拡がり、均一な膜厚の配向膜が形成される。
【0072】
次いで、基板P上に塗布された第1の材料液L1及び第2の材料液L2を、例えば、加熱乾燥させることで、基板P上に配向膜が成膜される。本実施例では、膜を80℃のホットプレートで10分間の仮乾燥を行い溶媒を除去し、さらに220℃のクリーンオーブンで60分間の本焼成を行う。
【0073】
以上説明したように、この実施の形態によれば、基板P上に固形分濃度が低い第1の材料液L1を塗布し、その上に固形分濃度が高い第2の材料液L2を吐出することで、液滴が重なって配置される領域X1においても、基板P上に吐出された第2の材料液L2の液滴を容易に濡れ拡がらせ、乾燥を防止して、領域X1において第2の材料液L2の膜厚が大きくなることを防止して膜厚を均一にすることができる。したがって、配向膜の膜厚を均一にすることができる。
【0074】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施形態では単一の液滴吐出ヘッドを備えた成膜装置について説明したが、液滴吐出ヘッドを複数備えた成膜装置を用いてもよい。このような成膜装置を用いる場合、一回の走査で塗布可能な最大幅は、形成領域のX軸方向の寸法と、第2の塗布工程における初期位置のX軸方向のオフセット量の和より大きいことが好ましい。このようにすることで、第1の塗布工程及び第2の塗布工程をそれぞれ一回の走査で完了することができる。したがって、膜形成にかかる時間を短縮することができ、膜全体の乾燥状態を均一にすることができる。
【0075】
また、本実施の形態では、第1の塗布領域を、第2の塗布領域内の領域としたが、第1の塗布領域を第2の塗布領域と等しい領域としてもよい。また、第1の塗布領域の大きさは、適宜設定することができる。
【0076】
また、基板P上に吐出された第2の材料液L2を第1の材料液L1と接触させて粘度を低下させることができるので、第2の材料液の配向膜材料の濃度を上昇させて、第2の材料液L2の粘度を上昇させることができる。これにより、第2の材料液L2の乾燥時における周縁部への配向膜材料の移動を防止して、配向膜の周縁部の膜厚の上昇(所謂、しみ上がり)を防止することができる。また、溶媒は配向膜の材料を溶解可能であれば、特に限定されない。
【0077】
また、本発明の成膜方法は、配向膜以外の膜の成膜にも適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
34…液滴吐出ヘッド、34e…端部、A…第1の塗布領域、B…第2の塗布領域、C…液滴中心間距離、D…液滴径、L1…第1の材料液、L2…第2の材料液、P…基板、X1…液滴が重なって配置される領域、X2…ヘッドが繰り返し通過する領域。
【技術分野】
【0001】
この発明は、配向膜の成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板の表面に均一な膜厚の薄膜を形成できる成膜方法が知られている。この成膜方法は、ヘッドに並設された複数のノズルから溶液を噴射して、その下側を搬送される基板の表面に上記溶液を塗布する塗布方法において、上記基板を搬送し、その表面に上記ノズルから溶液を噴射塗布する第1の塗布工程と、上記第1の塗布工程終了後、上記基板を所定の角度だけ回転し、その向きを上記ノズルの並設方向に対して相対的に変える回転工程と、上記回転工程終了後、上記基板を再び搬送し、その表面に上記ノズルから溶液を噴射塗布する第2の塗布工程と、を具備するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、各ノズルから基板に溶液をドッドで噴射する工程と、ヘッドと基板とを所定方向に相対的に移動させて所定間隔の一対のノズルから最初に基板に噴射された一対のドット間の部分を複数のドットによって塗り潰す工程とを具備し、最初に基板に所定間隔で噴射された一対のドット間の部分は、最初に噴射塗布されたドットに最後に噴射塗布されるドットが隣接することのない順序で、複数のドットによって塗り潰すものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、基板に溶液をインクジェット方式によって塗布する溶液の塗布方法において、上記基板の上記溶液が塗布される板面を励起処理する工程と、上記基板の励起処理された板面に上記溶液をインクジェット方式によって塗布する工程とを備えているものが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−193232号公報
【特許文献2】特開2005−721号公報
【特許文献3】特開2004−255316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の成膜方法では、液晶装置に用いられる配向膜を成膜するために、ポリイミドを溶解した溶液等、比較的粘度の高い液体を塗布する場合には、以下のような課題がある。
【0007】
特許文献1及び特許文献2では、図11(a)に示されるように、液滴吐出ヘッド34から基板P上に吐出した液滴が基板P上で十分に濡れ拡がらず、基板P上に配向膜の材料液Lがドット状に不連続に塗布されて配向膜の膜厚が不均一となるという課題がある。
【0008】
また、塗布した材料液Lが基板P上で濡れ拡がらないため、例えば、図11(b)に示すように、液滴吐出ヘッド34の改行や複数の液滴吐出ヘッド34を用いることにより、液滴吐出ヘッド34の端部34eが重なる領域X2に液滴が重なって配置される領域X1が発生する。そのため、領域X1において材料液Lの膜厚が変動し、配向膜にスジ状のムラが発生するという課題がある。
【0009】
特許文献3では、基板上に吐出した液滴は濡れ拡がるが、基板の励起処理が必要であり、チャンバ等、基板の励起処理のための特殊な装置が必要であるという課題がある。
【0010】
そこで、この発明は、液滴吐出手段により配向膜を成膜する成膜装置を用いることができ、基板上に吐出した液滴を濡れ拡がらせて均一な膜厚の配向膜を形成することができる配向膜の成膜方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の配向膜の成膜方法は、配向膜材料及び溶媒を含む材料液を液滴吐出手段を用いて基板上に塗布して配向膜を形成する配向膜の形成方法であって、前記基板上に第1の材料液を塗布する第1の塗布工程と、前記基板上に塗布された前記第1の材料液上に、第2の材料液を塗布する第2の塗布工程とを有し、前記第1の材料液の前記配向膜材料の濃度は、前記第2の材料液の前記配向膜材料の濃度より低いことを特徴とする。
【0012】
このように成膜することで、第1の塗布工程において基板上に第1の材料液が塗布されると、第1の材料液に含まれる溶媒の一部が蒸発して、基板上が溶媒の蒸気に覆われた状態となる。この状態で基板上に第2の材料液の液滴を吐出すると、液滴は基板上に塗布された第1の材料液上に着弾する。ここで、第1の材料液は第2の材料液より材料液中の配向膜材料の濃度が低いため、第1の材料液に接触した第2の材料液の液滴の配向膜材料の濃度は低下する。つまり、第2の材料液の粘度が低下する。また、基板上が溶媒の蒸気に覆われているため、基板上に塗布された第2の材料液の乾燥が防止される。これらのことにより、基板上に着弾した液滴を容易に濡れ拡がらせ、均一な膜厚の材料液の膜を形成し、スジ状のムラの発生を防止して均一な膜厚の配向膜を形成することができる。また、液滴吐出手段により配向膜を成膜する成膜装置を用いることができ、チャンバ等を用いる必要がない。
【0013】
また、本発明の配向膜の成膜方法は、前記第1の塗布工程で吐出される第1の材料液の総量は、前記第2の塗布工程で吐出される第2の材料液の総量より少ないことを特徴とする。
【0014】
このように成膜することで、第1の材料液の膜厚が薄くなり、膜全体が乾燥しやすくなるため、膜全体が均一に乾燥する。このため、配向膜材料の移動による周縁部の膜厚の増加(いわゆる「しみ上がり」)を防止できる。
【0015】
また、本発明の配向膜の成膜方法は、前記第1の塗布工程と前記第2の塗布工程とで吐出した液滴の中心位置が異なることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の配向膜の成膜方法は、前記第2の塗布工程は、前記基板上に塗布した前記第1の材料液の前記溶媒が所定量残存した状態で行うことを特徴とする。ここで、所定量とは第1の材料液L1上に着弾した第2の材料液L2が容易に濡れ拡がることができる量を言う。
【0017】
また、本発明の配向膜の成膜方法は、前記第1の塗布工程において前記第1の材料液が塗布される第1の塗布領域が、前記第2の塗布工程において前記第2の材料液が塗布される第2の塗布領域に等しいかまたは含まれることを特徴とする。
【0018】
このように成膜することで、第2の塗布工程において基板上に塗布される第2の材料液が第2の塗布領域の外側へ濡れ拡がることを防止できる。
【0019】
また、本発明の成膜方法は、前記液滴吐出手段と、前記基板を相対的に走査して液滴を前記基板上に塗布することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の成膜方法は、前記液滴吐出手段が、複数の液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出ヘッド群であることを特徴とする。
【0021】
このように成膜することで、膜形成にかかる時間を短縮することができ、膜全体の乾燥状態を均一にすることができる。
【0022】
また、本発明の成膜方法は、前記液滴吐出ヘッド群の長さが、前記第2の塗布領域の走査方向と交差する方向の最大幅より長いことを特徴とする。
【0023】
このように成膜することで、第1の塗布工程及び第2の塗布工程をそれぞれ一回の走査で完了することができる。したがって、複数のヘッドを用いることで、膜形成にかかる時間を短縮することができ、膜全体の乾燥状態を均一にすることができる。
【0024】
また、本発明の成膜方法は、前記材料液が、ポリイミドが溶解した溶液であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す模式図。
【図2】本発明の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの構成を説明する断面図。
【図3】同液滴吐出ヘッドの要部断面図。
【図4】同液滴吐出ヘッドの底面図。
【図5】(a)〜(c)は、第1の塗布工程において、基板上に液滴を塗布する様子を示す断面図。
【図6】第1の塗布工程において、液滴を塗布した基板の様子を示す平面図。
【図7】第2の塗布工程において、液滴を塗布した基板の様子を示す断面図。
【図8】第2の塗布工程において、液滴を塗布した基板の様子を示す平面図。
【図9】第2の塗布工程において、液滴を塗布した基板の様子を示す断面図。
【図10】第1の塗布工程において、液滴を塗布した基板の様子を示す平面図。
【図11】(a)及び(c)は、従来の配向膜の成膜工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0027】
(成膜装置)
図1は、液滴吐出法により基板P上に膜を成膜する成膜装置10の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、成膜装置10は、ベース31と、基板移動手段32と、ヘッド移動手段33と、液滴吐出ヘッド34と、液体供給部35と、制御装置40とを備えて構成されている。ベース31の上には、基板移動手段32と、ヘッド移動手段33とが設置されている。また、成膜装置10は、不図示のクリーニングユニットと、キャッピングユニットとを備えている。
【0028】
基板移動手段32はベース31上に設けられ、Y軸方向に沿って配置されたガイドレール36を有している。この基板移動手段32は、例えばリニアモーター(図示せず)により、スライダー37をガイドレール36に沿って移動させるよう構成されている。
【0029】
スライダー37上にはステージ39が固定されており、このステージ39は、基板Pを位置決めして保持するためのものである。即ち、このステージ39は、公知の吸着保持手段(図示せず)を有し、この吸着保持手段を作動させることにより、基板Pをステージ39の上に吸着保持するように構成されている。基板Pは、例えばステージ39の位置決めピン(図示せず)により、ステージ39上の所定位置に正確に位置決めされ、保持されるようになっている。
【0030】
ヘッド移動手段33は、ベース31の後部側に立てられた一対の架台33a,33aと、これら架台33a,33a上に設けられた走行路33bを備え、この走行路33bをX軸方向、即ち前記の基板移動手段32のY軸方向と直交する方向に沿って配置したものである。走行路33bは、架台33a,33a間に渡された保持板33cと、この保持板33c上に設けられた一対のガイドレール33d,33dとを備え、ガイドレール33d,33dの長さ方向に液滴吐出ヘッド34を搭載するキャリッジ42を移動可能に保持している。キャリッジ42は、リニアモーター(図示せず)等の作動によってガイドレール33d,33d上を移動し、これにより液滴吐出ヘッド34をX軸方向に移動させるように構成されている。
【0031】
ここで、このキャリッジ42は、ガイドレール33d,33dの長さ方向、即ちX軸方向に、例えば、1μm単位で移動可能になっている。キャリッジ42のこのような移動はコンピューター等からなる制御装置40によって制御可能に構成されている。
【0032】
制御装置40は、液滴吐出ヘッド34の位置情報、即ち液滴吐出ヘッド34のガイドレール33d,33d上での位置(X座標)とそのときの各ノズルの位置(X座標)とを検知して記憶するものである。
【0033】
液滴吐出ヘッド34は、キャリッジ42に取付部43を介して回動可能に取り付けられたものである。取付部43にはモーター44が設けられており、液滴吐出ヘッド34はその支持軸(図示せず)がモーター44に連結している。このような構成のもとに、液滴吐出ヘッド34はその周方向に回動可能となっている。また、モーター44も制御装置40に接続されており、これによって液滴吐出ヘッド34はその周方向への回動が、制御装置40に制御されるようになっている。
【0034】
液体供給部35は、インク(材料液)を液滴吐出ヘッド34に供給するものである。液滴吐出ヘッド34に供給する材料液は、溶媒に液晶分子の配向を規制する配向膜の材料を溶解させた溶液である。配向膜の材料としては、例えば、ポリイミドが用いられ、この配向膜材料を溶解可能な溶媒として、例えば、ブチルセロソルブ等の有機溶媒を用いることができる。
【0035】
また、液体供給部35は、配向膜の材料の固形分濃度が低い第1の材料液L1が充填された液体供給容器45Aと、配向膜の材料の固形分濃度が高い第2の材料液L2が充填された液体供給容器45Bと、これら液体供給容器45A及び液体供給容器45Bから液滴吐出ヘッド34に第1の材料液L1を送るための液体供給チューブ46Aと、第2の材料液L2を送るための液体供給チューブ46Bとを備えている。
【0036】
図2は液滴吐出ヘッド34の構成を説明する断面図、図3は液滴吐出ヘッド34の要部断面図である。
本実施形態における液滴吐出ヘッド34は、導入針ユニット117、ヘッドケース118、流路ユニット119及びアクチュエーターユニット120A,120Bを主な構成要素としている。
【0037】
導入針ユニット117の上面にはフィルター121A,121Bを介在させた状態で2本の液体導入針122A,122Bが横並びで取り付けられている。これらの液体導入針122A,122Bには、サブタンク102A,102Bがそれぞれ装着される。また、導入針ユニット117の内部には、各液体導入針122A,122Bに対応した液体導入路123A,123Bが形成されている。
【0038】
この液体導入路123A,123Bの上端はフィルター121A,121Bを介して液体導入針122A,122Bに連通し、下端はパッキン124を介してヘッドケース118内部に形成されたケース流路125A,125Bと連通する。
【0039】
フィルター121A,121Bは、第1の材料液L1及び第2の材料液L2に含まれる異物を除去するために配設され、その材質は、例えば、ステンレス鋼であって、メッシュ状に形成されている。
【0040】
サブタンク102A,102Bは、ポリプロピレン等の樹脂製材料によって成型されている。このサブタンク102A,102Bには、液室127A,127Bとなる凹部が形成され、この凹部の開口面に弾性シート126A,126Bを貼設して液室127A,127Bが区画されている。
【0041】
また、サブタンク102A,102Bの下部には液体導入針122A,122Bが挿入される針接続部128A,128Bが下方に向けて突設されている。サブタンク102A,102Bにおける液室127A,127Bは、底の浅いすり鉢形状をしている。液室127A,127Bの側面における上下中央よりも少し下の位置には、針接続部128A,128Bとの間を連通する接続流路129A,129Bの上流側開口が臨んでおり、この上流側開口には第1の材料液L1及び第2の材料液L2を濾過するタンク部フィルター130A,130Bがそれぞれ取り付けられている。
【0042】
針接続部128A,128Bの内部空間には液体導入針122A,122Bが液密に嵌入されるシール部材131A,131Bが嵌め込まれている。このサブタンク102A,102Bには、それぞれ液体供給チューブ46A及び液体供給チューブ46Bが接続される。液体供給チューブ46Aは、液体供給部35の液体供給容器45Aに貯留された第1の材料液L1を供給する。また、液体供給チューブ46Bは、液体供給部35の液体供給容器45Bに貯留された第2の材料液L2を供給する。従って、液体供給チューブ46A及び液体供給チューブ46Bを通ってきた第1の材料液L1及び第2の材料液L2は、それぞれ液室127A及び液室127Bに流入する。
【0043】
上記の弾性シート126A,126Bは、液室127A,127Bを収縮させる方向と膨張させる方向とに変形可能である。そして、この弾性シート126A,126Bの変形によるダンパー機能によって、第1の材料液L1及び第2の材料液L2の圧力変動が吸収される。即ち、弾性シート126A,126Bの作用によってサブタンク102A,102Bが圧力ダンパーとして機能する。従って、第1の材料液L1及び第2の材料液L2は、サブタンク102A,102B内で圧力変動が吸収された状態で液滴吐出ヘッド34側に供給される。
【0044】
ヘッドケース118は、合成樹脂製の中空箱体状部材であり、下端面に接着剤を介して流路ユニット119を接合し、内部に形成された収容空部137A,137B内にアクチュエーターユニット120A,120Bを収容し、流路ユニット119側とは反対側の上端面にパッキン124を介在した状態で導入針ユニット117を取り付けるようになっている。
【0045】
このヘッドケース118の内部には、高さ方向を貫通してケース流路125A,125Bが設けられている。このケース流路125A,125Bの上端は、パッキン124を介して導入針ユニット117の液体導入路123A,123Bとそれぞれ連通するようになっている。
【0046】
また、ケース流路125A,125Bの下端は、流路ユニット119内の共通液室144A及び共通液室144Bに連通するようになっている。従って、液体導入針122A,122Bから導入された第1の材料液L1及び第2の材料液L2は、液体導入路123A,123B及びケース流路125A,125Bを通じて共通液室144A及び共通液室144B側にそれぞれ供給される。
【0047】
ヘッドケース118の収容空部137A,137B内に収容されるアクチュエーターユニット120A,120Bは、図3に示すように、櫛歯状に列設された複数の圧電振動子138A,138Bと、この圧電振動子138A,138Bが接合される固定板139A,139Bと、制御装置40からの駆動信号を圧電振動子138A,138Bに供給する配線部材としてのフレキシブルケーブル140A,140Bとから構成される。各圧電振動子138A,138Bは、固定端部側が固定板139A,139B上に接合され、自由端部側が固定板139A,139Bの先端面よりも外側に突出している。即ち、各圧電振動子138A,138Bは、所謂片持ち梁の状態で固定板139A,139B上にそれぞれ取り付けられている。
【0048】
また、各圧電振動子138A,138Bを支持する固定板139A,139Bは、例えば、厚さ1mm程度のステンレス鋼によって構成されている。そして、アクチュエーターユニット120A,120Bは、固定板139A,139Bの背面を、収容空部137A,137Bを区画するケース内壁面に接着することで収容空部137A,137B内にそれぞれ収納・固定されている。
【0049】
流路ユニット119は、振動板141、流路基板142及びノズル基板143からなる流路ユニット構成部材を積層した状態で接着剤を介して接合して一体化することにより作製されている。これらは、共通液室144Aから液供給口145A及び圧力室146Aを通りノズル147Aに至るまでの一連の第1液流路と、共通液室144Bから液供給口145B及び圧力室146Bを通りノズル147Bに至るまでの一連の第2液流路とを形成する部材である。
【0050】
圧力室146A,146Bは、ノズル147A,147Bの列設方向に対して直交する方向に細長い室として形成されている。
【0051】
また、共通液室144A、共通液室144Bは、ケース流路125A,125Bと連通し、液体導入針122A,122B側からの第1の材料液L1、第2の材料液L2がそれぞれ導入される室である。そして、この共通液室144A及び共通液室144Bに導入された第1の材料液L1及び第2の材料液L2は、液供給口145A及び液供給口145Bを通じてそれぞれ圧力室146A,146Bに分配供給される。
【0052】
流路ユニット119の底部に配置されるノズル基板143は、図4に示すように、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数のノズル147A,147Bを列状に開設した金属製の薄い板材である。本実施形態のノズル基板143は、ステンレス鋼の板材によって作製され、本実施形態においてはノズル147Aの列及びノズル147Bの列が、それぞれサブタンク102A及びサブタンク102Bに対応して複数形成されている(図4では図示省略)。
【0053】
ノズル基板143と振動板141との間に配置される流路基板142は、第1液流路及び第2液流路となる流路部、具体的には、共通液室144A、共通液室144B、液供給口145A、液供給口145B及び圧力室146A,146Bとなる空部が区画形成された板状の部材である。
【0054】
本実施形態において、流路基板142は、結晶性を有する基材であるSiウェハーを異方性エッチング処理することによって作製されている。振動板141は、ステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工した二重構造の複合板材である。この振動板141の圧力室146A,146Bに対応する部分には、エッチングなどによって支持板を環状に除去することで、圧電振動子138A,138Bの先端面が接合される島部148A,148Bが形成されており、この部分はダイヤフラム部として機能する。即ち、この振動板141は、圧電振動子138A,138Bの作動に応じて島部148A,148Bの周囲の弾性フィルムが弾性変形するように構成されている。また、振動板141は、流路基板142の一方の開口面を封止し、コンプライアンス部149A,149Bとしても機能する。このコンプライアンス部149A,149Bに相当する部分についてはダイヤフラム部と同様にエッチングなどにより支持板を除去して弾性フィルムだけにしている。
【0055】
そして、上記の液滴吐出ヘッド34において、フレキシブルケーブル140A,140Bを通じて駆動信号が圧電振動子138A,138Bに供給されると、この圧電振動子138A,138Bが素子長手方向に伸縮し、これに伴い島部148A,148Bが圧力室146A,146Bに近接する方向或いは離隔する方向に移動する。これにより、圧力室146A,146Bの容積が変化し、圧力室146A,146B内の第1の材料液L1及び第2の材料液L2に圧力変動が生じる。この圧力変動によってノズル147A,147Bからそれぞれ液滴状となった第1の材料液L1及び第2の材料液L2が吐出される。
【0056】
(配向膜の成膜方法)
次に、本実施形態の成膜方法について説明する。本実施形態では、基板Pとして透明基板上に絶縁膜、TFT、電極及び配線等が形成された液晶装置の素子基板を用意し、成膜装置10を用いて基板P上に上述の材料液を吐出して配向膜を成膜する方法について説明する。
【0057】
まず、図1に示すように、ステージ39上に基板Pを位置決めピンにより位置決めして配置し、吸着保持手段に吸着保持する。これにより、基板Pは、ステージ39上に正確に位置決めされた状態で保持される。
【0058】
次に、第1の塗布工程について説明する。基板移動手段32及びヘッド移動手段33により液滴吐出ヘッド34を移動させると共に、取付部43のモーター44を作動させて、図4に示すように、液滴吐出ヘッド34を基板Pに対する初期位置に配置する。
【0059】
第1の塗布工程では、図4に示すように、第2の塗布領域B内に含まれる第1の塗布領域Aに第1の材料液L1を塗布する。本実施形態では、第1の材料液として、N−メチル−2−ピロリドン(N−methylpyrrolidone:NMP)にポリイミドを固形分濃度が1%となるように溶解させた溶液を用いる。ここで、第1の材料液L1として配向膜材料を溶解可能な溶媒を用いた場合では、第2の材料液L2を塗布した際に、第1の材料液L1と第2の材料液L2との固形分濃度の差が大きくなるため、固形分が均一に分散せず、濃度むらが生じる。また、固形分濃度が高い場合では、基板P上に塗布した際に、容易に濡れ広がらず、膜厚にむらが生じる。このため、第1の材料液の固形分濃度は、0.5%〜1.5%の範囲内であることが望ましい。
【0060】
第1の材料液L1を塗布する第1の塗布領域Aは、第2の塗布領域BよりX軸方向及びY軸方向ともにそれぞれ0.5mm小さい領域とする。このようにすると、第2の塗布工程において基板P上に塗布される材料液が第2の塗布領域Bの外側へ濡れ拡がることを防止することができる。
【0061】
次に、基板移動手段32によりステージ39をY軸正方向に移動させることで、液滴吐出ヘッド34を基板Pに対して相対的にY軸負方向に移動させながら、液滴吐出ヘッド34のノズル147から基板P上に、図5(a)に示すように、第1の材料液L1を液滴として吐出して塗布する。ここで、第1の材料液L1の液滴中心間距離Cを、第1の材料液L1の液滴が図5(b)に示すように基板P上に着弾して、図5(c)に示すように基板P上で拡張したときの液滴径Dと略等しくなるように調整することによって、隣接する液滴同士が辛うじて繋がる程度のごく薄い膜を形勢する。このように成膜することで、第1の材料液の膜厚が薄くなり、膜全体が乾燥しやすくなるため、膜全体が均一に乾燥する。このため、配向膜材料の移動による周縁部の膜厚の増加(いわゆる「しみ上がり」)を防止できる。
【0062】
液滴中心間距離Cは公知の技術を用いて調整することができる。例えば、液滴吐出ヘッド34を回動させ、走査方向と直交する方向のノズル間隔を調整することで、液滴中心間距離Cを調整することができる。また、ノズルを選択的に使用し、吐出間隔を変更することで、液滴中心間距離Cを調整することもできる。
【0063】
図4に示すように、初期位置側の縁から吐出開始位置とは反対側の縁まで第1の材料液L1を塗布したら、ヘッド移動手段33により、液滴吐出ヘッド34をX軸正方向に移動させて改行し、基板移動手段32によりステージ39をY軸負方向に移動させる。そして、液滴吐出ヘッド34を基板Pに対して相対的にY軸正方向に移動させながら、液滴吐出ヘッド34のノズル147から基板P上に第1の材料液L1を吐出して塗布する。このように、配向膜の第1の塗布領域Aの外縁でX軸正方向に改行を繰り返しながら、液滴吐出ヘッド34をY軸方向に往復させ、第1の塗布領域の全域に第1の材料液L1を塗布する(第1の塗布工程)。
【0064】
このように塗布すると、図6に示すように、基板P上に第1の材料液L1が隣接する液滴どうしが辛うじて繋がる程度に配置され、薄く塗布された状態となる。但し、この状態では図6の網掛け部で示されるような第1の材料液L1が付与されない箇所が残ることが考えられる。しかし、基板上の液滴の表面張力によって、液滴どうしが間隙を埋めるように繋がり、連続的な膜を形成することができ、第1の材料液L1が薄く塗布された状態となる。
【0065】
そして、基板P上で第1の材料液L1の溶媒が蒸発してその蒸気が発生し、基板P上が第1の材料液L1の溶媒の蒸気によって覆われた状態となる。
【0066】
次に、第2の塗布工程について説明する。第2の塗布工程は、基板P上に塗布された第1の材料液L1に含まれる溶媒が所定量残存した状態で行う。ここで、所定量とは第1の材料液L1上に着弾した第2の材料液L2が容易に濡れ拡がることができる量を言う。
【0067】
まず、液滴吐出ヘッド34を第2の塗布工程における初期位置に移動させる。第2の塗布工程における初期位置は、第1の塗布工程で塗布した液滴の中心と第2の塗布工程で塗布する液滴の中心とをずらすため、第1の塗布工程の初期位置から所定量のオフセットを走査方向と交差する方向にかけた位置とする。一般的に、液滴の中心部は外縁部より膜厚が厚くなるため、液滴の中心をずらすことによって、液滴の中心部が重なる場合より均一な膜厚の配向膜を得ることができる。
【0068】
次に、基板移動手段32によりステージ39をY軸正方向に移動させることで、液滴吐出ヘッド34を基板Pに対して相対的にY軸負方向に移動させながら、液滴吐出ヘッド34のノズル147から基板P上に、図7に示すように、第2の材料液L2を液滴として吐出して第2の塗布領域Bに塗布する。第2の材料液L2として、本実施形態では、N−メチル−2−ピロリドンにポリイミドを固形分濃度が5%となるように溶解させた溶液を用いる。
【0069】
図7に示すように、第2の塗布工程において吐出する液滴の総量は、第1の塗布工程において吐出する液滴の総量より多くなるように塗布する。
【0070】
そして、図8に示すように、液滴吐出ヘッド34を基板Pに対してY軸負方向に移動させながら、液滴吐出ヘッド34のノズル147から基板P上に塗布された第1の材料液L1上に、第2の材料液L2の液滴を吐出して塗布する。そして、第1の塗布工程と同様に、第2の塗布領域Bの外縁でX軸正方向に改行を繰り返しながら、液滴吐出ヘッド34をY軸方向に往復させ、図10に示すように第2の塗布領域B(配向膜の形成領域)の全域に第2の材料液L2を塗布する(第2の塗布工程)。
【0071】
このとき、図7に示すように、基板P上には第1の材料液L1の膜が均一な膜厚で塗布されて、第1の材料液L1の溶媒の蒸気によって覆われた状態となっている。そのため、第2の塗布工程で吐出された第2の材料液L2の液滴は、基板P上に着弾した後の乾燥が防止される。また、第1の材料液L1は、第2の材料液L2よりもポリイミドの固形分濃度が低いため、第2の材料液の液滴が第1の材料液L1に接触すると液滴の固形分濃度が低下し、粘度が低下する。このため、図9に示すように、液滴吐出ヘッド34が繰り返し通過する領域X2内に発生する液滴が重なって配置される領域X1においても液滴が容易に濡れ拡がり、均一な膜厚の配向膜が形成される。
【0072】
次いで、基板P上に塗布された第1の材料液L1及び第2の材料液L2を、例えば、加熱乾燥させることで、基板P上に配向膜が成膜される。本実施例では、膜を80℃のホットプレートで10分間の仮乾燥を行い溶媒を除去し、さらに220℃のクリーンオーブンで60分間の本焼成を行う。
【0073】
以上説明したように、この実施の形態によれば、基板P上に固形分濃度が低い第1の材料液L1を塗布し、その上に固形分濃度が高い第2の材料液L2を吐出することで、液滴が重なって配置される領域X1においても、基板P上に吐出された第2の材料液L2の液滴を容易に濡れ拡がらせ、乾燥を防止して、領域X1において第2の材料液L2の膜厚が大きくなることを防止して膜厚を均一にすることができる。したがって、配向膜の膜厚を均一にすることができる。
【0074】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施形態では単一の液滴吐出ヘッドを備えた成膜装置について説明したが、液滴吐出ヘッドを複数備えた成膜装置を用いてもよい。このような成膜装置を用いる場合、一回の走査で塗布可能な最大幅は、形成領域のX軸方向の寸法と、第2の塗布工程における初期位置のX軸方向のオフセット量の和より大きいことが好ましい。このようにすることで、第1の塗布工程及び第2の塗布工程をそれぞれ一回の走査で完了することができる。したがって、膜形成にかかる時間を短縮することができ、膜全体の乾燥状態を均一にすることができる。
【0075】
また、本実施の形態では、第1の塗布領域を、第2の塗布領域内の領域としたが、第1の塗布領域を第2の塗布領域と等しい領域としてもよい。また、第1の塗布領域の大きさは、適宜設定することができる。
【0076】
また、基板P上に吐出された第2の材料液L2を第1の材料液L1と接触させて粘度を低下させることができるので、第2の材料液の配向膜材料の濃度を上昇させて、第2の材料液L2の粘度を上昇させることができる。これにより、第2の材料液L2の乾燥時における周縁部への配向膜材料の移動を防止して、配向膜の周縁部の膜厚の上昇(所謂、しみ上がり)を防止することができる。また、溶媒は配向膜の材料を溶解可能であれば、特に限定されない。
【0077】
また、本発明の成膜方法は、配向膜以外の膜の成膜にも適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
34…液滴吐出ヘッド、34e…端部、A…第1の塗布領域、B…第2の塗布領域、C…液滴中心間距離、D…液滴径、L1…第1の材料液、L2…第2の材料液、P…基板、X1…液滴が重なって配置される領域、X2…ヘッドが繰り返し通過する領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向膜材料及び溶媒を含む材料液を液滴吐出手段を用いて基板上に塗布して配向膜を形成する配向膜の成膜方法であって、
前記基板上に第1の材料液を塗布する第1の塗布工程と、
前記基板上に塗布された前記第1の材料液上に、第2の材料液を塗布する第2の塗布工程とを有し、
前記第1の材料液の前記配向膜材料の濃度は、前記第2の材料液の前記配向膜材料の濃度より低いことを特徴とする配向膜の成膜方法。
【請求項2】
前記第1の塗布工程で吐出される前記第1の材料液の総量は、前記第2の塗布工程で吐出される前記第2の材料液の総量より少ないことを特徴とする請求項1に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項3】
前記第1の塗布工程と前記第2の塗布工程とで吐出する液滴の中心位置が異なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項4】
前記第2の塗布工程は、前記基板上に塗布した前記第1の材料液の前記溶媒が所定量残存した状態で行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項5】
前記第1の塗布工程において前記第1の材料液が塗布される第1の塗布領域は、前記第2の塗布工程において前記第2の材料液が塗布される第2の塗布領域に等しいかまたは含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項6】
前記液滴吐出手段と、前記基板を相対的に走査して液滴を前記基板上に塗布することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項7】
前記液滴吐出手段は、複数の液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出ヘッド群であることを特徴とする請求項6に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項8】
前記液滴吐出ヘッド群の長さは、前記第2の塗布領域の走査方向と交差する方向の最大幅より長いことを特徴とする請求項7に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項9】
前記材料液は、ポリイミドが溶解した溶液であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項1】
配向膜材料及び溶媒を含む材料液を液滴吐出手段を用いて基板上に塗布して配向膜を形成する配向膜の成膜方法であって、
前記基板上に第1の材料液を塗布する第1の塗布工程と、
前記基板上に塗布された前記第1の材料液上に、第2の材料液を塗布する第2の塗布工程とを有し、
前記第1の材料液の前記配向膜材料の濃度は、前記第2の材料液の前記配向膜材料の濃度より低いことを特徴とする配向膜の成膜方法。
【請求項2】
前記第1の塗布工程で吐出される前記第1の材料液の総量は、前記第2の塗布工程で吐出される前記第2の材料液の総量より少ないことを特徴とする請求項1に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項3】
前記第1の塗布工程と前記第2の塗布工程とで吐出する液滴の中心位置が異なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項4】
前記第2の塗布工程は、前記基板上に塗布した前記第1の材料液の前記溶媒が所定量残存した状態で行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項5】
前記第1の塗布工程において前記第1の材料液が塗布される第1の塗布領域は、前記第2の塗布工程において前記第2の材料液が塗布される第2の塗布領域に等しいかまたは含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項6】
前記液滴吐出手段と、前記基板を相対的に走査して液滴を前記基板上に塗布することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項7】
前記液滴吐出手段は、複数の液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出ヘッド群であることを特徴とする請求項6に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項8】
前記液滴吐出ヘッド群の長さは、前記第2の塗布領域の走査方向と交差する方向の最大幅より長いことを特徴とする請求項7に記載の配向膜の成膜方法。
【請求項9】
前記材料液は、ポリイミドが溶解した溶液であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の配向膜の成膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−181674(P2010−181674A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25662(P2009−25662)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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